### 1.目覚めの朝と日常 ###
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
朝の知らせ。それと共にけたたましく目覚まし時計が起床命令を発している。
寝ぼけ眼で意識もはっきりしていない中、そのうるさい目覚まし時計をとりあえず停止させる。
ベッドから手の届くところにおいておくのは二度寝するからあまりよくないというけど、俺の場合はあまり二度寝しないタイプだ…と思う。
まあ、特に今日の場合は二度寝はしないだろう。
「………」
まず最初に気がつくのは胸にかかる圧迫感。いつもとは違う重みが胸にかかっている。
原因は布団をめくれば一目瞭然。俺のお休みスタイルはパジャマと無難なところ。
その薄い寝巻きを内側から持ち上げている物体、それが重みの原因だ。
こんもりとふくらんでる物体は肉まんよりも一回りも二回りでかいか。それが左右に一つずつ計二つ。
ためしに触ってみる。心地よい柔らかさと弾力、それと共に触られたという感触。
確かめるまでもないけど、念のため足をもじもじとすりよせてみる。
うん、やっぱりない。いつもならば朝になると起立しているあの物体の存在を感じられない。
ようやくベッドから抜け出す。体を起こすとふわりと頭にかかるものが。髪の毛だ。
俺の場合は髪もちゃんと伸びる。ウェーブのないストレートの柔らかな髪の毛。
そしていつものようにパジャマを脱ぎ捨てていく。
下に着ているのは男のときはタンクトップとトランクス。つまり、パジャマを脱ぎ捨てたからその姿になった。
そして部屋に添えつけの姿見で自分の今の状態を確認する。
あえて確認するほどでもないけど、今日は女の子だ。
そこに現れたのはタンクトップとトランクス姿の可愛い女の子。マニアにはなかなかそそる姿だ。
おまけに胸のボリュームが結構ある。だからタンクトップの開かれた胸元から谷間がくっきりして余計にそそる。
そしてそのトランクスも、タンクトップも脱ぎ捨てる。全裸になる。
その姿も鏡で堪能する。はりのある大きなバストにくびれたウエスト。適度に豊かな腰周りにすらっとした手足。
今日もスタイルは抜群にいい。もっとも、俺たちにとっては平均的な、ごくごく当たり前なスタイルではあるけど。
しばし観賞した後は引き出しからショーツとブラジャーを取り出す。白色のシンプルなデザイン。
ショーツに足を通し、腰まで引き上げる。下腹部を包み込むぴったりとした感触にはもう慣れた。最初の頃は違和感があったけど。
ブラをつけるのも慣れたものだ。後ろで止めたらカップの中にきちんと乳房を集めて入れるのも忘れない。
今度はソックス。長いと絶対領域が発生してそれがいいというやつがいるけど、俺は短い方がいい。
改めて鏡で確認。うん、下着姿にソックスだけというスタイルも悪くない。自分の体だというのに、これをおかずにいくらでも自家発電できてしまうから大したものだ。
やば、ちょっと濡れてきたか? 朝からいきなり下着を汚すのはまずいな。
そして制服。白いシャツに袖を通し、胸にリボンを結ぶ。最後にスカート、丈は自分でちょっと短くした。
鏡で見る間でもないが、そこに映っていたのは可愛い女子学生。
さて、今日も女の子で頑張るか。
俺、蔵本竜介(クラモト リュウスケ)は私立帝越高校に通う2年生。れっきとした男子だ。そして高校も一応男子校。
ただし、その登校風景には普通の男子校にはない特色がある。
まあ、一見するとごくごく普通に見えるけど、ここが男子校だと考えると特色になるだろう。
登校する生徒のうち、半数が女子だということは。
正確には女子になった男子生徒、なのだが。
この学校に通う生徒は半周期的に女子になる。期間は短いと2日、長いと2週間ぐらいの間か。
寝ている間に体が切り替わるらしい。だからぐっすり寝て、朝になってみると女の子になっているというパターン。
詳しくは分からないけど、入学時に打たれた注射にナノマシンが入ってて、そいつが体を半周期的に女にしているらしい。
そうなったら次に男に戻るまでは女子として生活しなければならない。
制服は当然女子用、スカートは当然で下着もきちんと女子のショーツとブラジャーにしなければならない。
この学校の教育方針は男子自ら女子として生活することで女性の苦労を知ることにあるのだと。
そんな説明を受けたのが入学して直後、その前の学校説明会では一言も話されなかった。
道理で共学に見えたのに入学式に出席した生徒が全員男なわけだ。
入学直後はクラスの生徒は全員男子。そこはやはり興味のある年頃というやつで女になる日を今か今かと待ち望んでいたりする。
入学して約1ヵ月後、クラスの半数が一気に女になった。
俺はその中にはいなかったが始めて女になったやつらは女子の制服を身につけて、キャピキャピやっていた。
女になっていない男のクラスメート相手にスカートをたくし上げて中のショーツもしくは何も穿いてないのを見せたり、胸元をチラッと見せたり、はたまたがばっと制服をオープンにして胸をあらわにして見せびらかしたりしてからかってやがった。
俺が始めて女になったのはそんなことがあった数日後。目が覚めたら女になっていた。
長く伸びた髪、豊かに実った乳、白い肌、そして男の証は消失して代わりにある小さな割れ目。
分かっていたとはいえ、やはり初めてのときはいろいろと興味がわいてくるんだよ。ええ、そうですよ、その日は遅刻ぎりぎりでしたよ。
女子になった生徒はこれがもう全員例外なく可愛い外見で、さらにはスタイルもいい。
胸は全員が巨乳の領域で、小さくてもDはある。ちなみに俺はF。
そうなった時はお互いに乳をもみ合ったり、乳を重ねあったり、見せ合いっこしたりでいろいろとやりましたわ。
ただし、大体その2ヵ月後に訪れる生理ってやつでみんな釘を指されるのだが。
あの衝撃ときたらもう……めまい起こしてぶっ倒れそうになったよ。
それがあると大体のやつは大人しくなる。おかげで「あ、あいつ今生理なんだな」っていうのがバレバレだったり。
それでも普通の女子に比べたら周期は空いてて、2ヶ月に1回ぐらい。とどのつまりは女でいる期間の合算だが、だとしても男にとっては一大事だ。
しかも、そうなったら最低数日間は女のまま。腹痛と頭痛と貧血によって苦しまなければならない。
『男子自ら女子として生活することで女性の苦労を知る』っていうのはこういうことだったんだな、と痛感する瞬間だった。
まあ、2年になったら女としての生活も慣れたもので、性的な興味も少しは大人しくなる。
といってもそれはあくまで派手なことはしないという話であって、そこそこのことはやっていたりするのだが。
「よう、おはよう」
いつもの自分の席に着くと声をかけてきたのは隣の席に座る友人の石井常久(イシイ ツネヒサ)。
一昨日までは女だったが、今日は男だ。
「ああ、お早う」
「竜介、今日から女なんだね」
「…まあね」
期間と周期はランダム、とはいったがクラスのうち大体半分が女になるようになっているらしい。
だから誰かが女になったら誰かは男に戻る、という具合。必ずそうなるわけじゃないけど、男女の比率がほぼ半々になるようになっている。
それが意図的に制御されているのかどうかは定かではない。女に切り替わるタイミングとかきっかけはっきりとは知らないからだ。
「それにしても今回は遅かったな。前に比べたら結構期間が空いてない?」
「うん、二週間ぐらいか。平均的だけど、長いほうだな確かに」
いつ女になるかはタイミングとして全く読めない。はっきりするのは女でいる間も、男でいられる期間も大体二週間以内ということだけ。
それでも確実に女になる、もしくは男に戻るのははっきりしている。
だから中には次に性別が変わるのがいつなのか賭けをしているやつもいるぐらいだ。ヒマなやつら。
徐々にクラスの席が埋まっていく。ちょっと前まで女だったやつ、今日になって女になったやつ、毎日毎日クラスの顔ぶれは変わっていく。
それでも男が女になったとしても誰が誰なのかはすぐにわかる。
これもどういう仕組みなのかは分からない。ブサイクなやつがとびっきり可愛い女の子になっていても、しっかりわかるのは不思議だ。
「で、早速放課後どうですか?」
常久が声のトーンを落とし、俺にそっと尋ねてくる。
「……お前、俺が女になった途端にいきなりそれか」
「ふふっ、この前は散々僕のことを持て遊んでくれたからね。たっぷり御礼をしなきゃ」
俺は呆れながらもまあいいか、と思った。何のことはない、いつものことだ。
その会話が終わったところで先生が入ってきた。今日の一日の始まりだ。
生徒達は学校内にいろいろと秘密の場所があることを知っている。
一般教室から離れたところにあるトイレだったり、開き部室だったり、体育倉庫だったり、各種教科準備室だったり。
俺と常久はいろいろ使っているが、今日は屋上の入り口の影になるところ。
「んっ、んっ、んんっ……」
ちゅぱちゅばと音を立てる俺の口。唾液が絡み合っていやらしい音を立てている。
対象は常久のペニス。はだけた俺のFカップがそこそこのサイズの常久のやつを挟み込む。
常久は壁にもたれかかり、荒い息をしながら俺による快感という攻撃を受け止めている。
くちゅ、くちゅ、とバストを動かすと先走った液体が別の音を立てている。
口の中に伝わっていたペニスの熱さは俺の谷間によってさらに熱くなっている気がした。
「ああっ、やっぱりパイズリっていいねぇ」
「ったく、女になったばっかの俺にこんな事頼むか普通」
「その割には嫌がらずにやっているじゃん、竜介」
「うるせえ、俺とお前の付き合いだろ」
こんな感じだ。俺と恒久はある意味付き合っている。
もちろん互いに男同士だって自覚はしている。だから恋愛感情に発展することはない、と思う。
あくまでエッチなことをするだけの組み合わせ。こういうのなんていうんだっけ。えーと……忘れた。
まあ、この学校じゃこんなことしているやつは珍しくもない。
お互いに男になったり女になったりどっちの性も楽しめるのだからという開き直りでエッチしているやつらがほとんど。
大体のやつは男でも女でも体験済みじゃねえのか?
ちなみに俺と常久が"付き合い"始めたのは一年の最初の頃。常久が先に女になって、その時に「興味ねえか?」と常久の方から誘ってきた。
で、それ以来の付き合いってやつだよ。
それからというものの、お互いにどっちかが女になった時にはエッチするっていうのがお決まりになっていた。
どっちも女になった時にもやっていたな。いわゆるレズプレイってやつ。
ちなみに昨この前も俺が男で、常久が女の時に抱いてやった。その時はトイレでやったっけ。
いっとくけど両方男のときは何もしないぞ。さすがにホ○の気はないからな。
といってもこうして今、何の抵抗もなく常久のをパイズリしてフェラしているってのは、まあ不思議な気はするけどね。
最初は当然抵抗あったけど、もう慣れちまったよ本当に。
く、くどいかもしれないが俺はヤオ○な関係じゃないからな。男の体の時にこんな事したいと思わないからな!
「ぶわっ!!」
いきなり白い液体が先端から解き放たれた。予告なくいきなり発射されたせいで俺はそれを思いっきり顔面に浴びてしまった。
白濁の液体は鼻につく臭いを放ちながら俺の豊かなバストにも降りかかってくる。
「つ、常久っ! 出すならちゃんと言えよ!」
「いやあ、ごめんごめん。気持ちよかったからつい……」
相変わらずひょうひょうとしたやつだ。これが憎めないからなお悪い。
ぺろっと常久から放たれた液体を舐めてみた。これを悪くないと思ってしまうとは、女の味覚って一体どうなってるんだ。
「んじゃ、そろそろいいかな?」
「あーはいはい。どうぞお使いください」
常久が壁側だったが、今度は俺が壁側へ移動する。
それとともにスカートをたくし上げ、後ろを常久に向ける。そこにあらわになったのは俺のまあるいお尻ちゃん。
「ん、いいねぇ。相変わらずいいお尻してるねぇ」
「ほざけ」
常久はどうやら尻フェチらしい。今日もやっぱり俺の尻をいとしそうにぺたぺた触っている。
今日もやっぱりバックですか。いつものことながら、常久には俺のトロトロになったあそこが丸見えになっていることだろう。
さっきのフェラですっかり俺のテンションも上がっている。体が火照っていい感じだ。
こうなるとあそこは結構簡単に濡れてしまう。それを予期してあらかじめショーツは膝まで下げてあった。
さすがに濡れまくった下着を家まで我慢して穿くのは酷だからな。
俺は壁に手をつける。注射もそうだけど、突き刺さる瞬間が見えないってのはあんまりいいものじゃない。
「んっ!」
ゆっくりと常久のが入ってくる。何度も味わっているこの感じ、女の挿入の感覚。
挿入する側とされる側では感覚が全く違う。自分の体内に入ってくる異物に不思議な感覚を味わうのは相変わらずだ。
そこに昨日まで男の物体があったとならば、なおさらだ。
「あ、ゆっくり……いいっ………」
ストロークを続ける常久。相変わらず的確に俺の感じやすいところを攻めてくる。上手いんだよ。
攻撃的ではなく、優しく、ゆっくりと。それでいて時折意表をつくように感じやすいところを攻める。
何度も俺とやってるからわかるんだろうな、俺の感じやすいところ。それは俺も同じで、常久の感じやすいところはよーく分かっているけど。
こうなると女になってしまった俺はなす術がない。ただただ身を任せ、喘ぐだけ。
「あ、あんっ、あぁっ………いいっ…」
身をくねらせ、快感をより増幅させる。突いてくる常久に身を任せ、ひたすらに快感に流される。
前後上下に動くと共にプルプルと自慢のバストも揺れる。それがまた快感を増幅させる。
女の体ってやつはもう、気持ちよすぎてしょうがない。
だから止められないんだよ、くそう。
「あぁっ……ふあぁ、常久ぁ……」
「甘い声出しちゃって。可愛いね竜介」
「ばかやろぉ、分かってるだろうがぁ……」
熱い、あそこが燃えるように熱いと感じる。
挿入された常久のペニスが熱を持ち、俺の体をどんどんヒートアップしていく。
くちゃくちゃとやらしい音を立てているのが分かる。これもまたいい。
突き上げているそれが、俺の中からそれを表に噴出させようとしている。
「あ、やばい。イクっ、イっちゃうっ……」
どんどん表に出てこようとしているそれ、イクのが分かる。
「いい? 僕も一緒に、思いっきり出すよ」
息が荒くなる。それがやって来る。殻を突き破って、表に一気に表れる。
「あ、ふあぁぁぁぁっっっっ………!!」
最高潮に達する。体がどくどくと脈打ち、吹き出た快感という波が一気に体中を駆け巡る。
それと同時に接合部からあふれる透明の液体。不思議な、いまだ謎の多い液体、愛液。
それと混ざって常久がそそいだ精液も。俺の中はその両方でいっぱいになっていた。
波が収まり、とろんとしたところでそれが抜かれた。ごぽり、と音を立てたかのようにして俺の中の液体がとろりとこぼれ落ちる。
気持ちいい。そして幸せな気分。何度やってもそう思う。
これが俺たちの日常。普通の男子高校ではありえない光景だった。
### 2.部活動 ###
女でいる期間はランダムで、短ければ2日で長いときは2週間になる。
今回の俺は結構短い方で、3日だった。3日目の朝になったら男に戻っていて、何だもう戻っちまったのかという感じ。
ただこうなると次の女になる時の期間が短い。女になっている間と男に戻っている間の期間は同じぐらいになるようで、女の時間が短いと男でいられる時間は短くなってしまう。
例えば今回は3日で戻ったから、次に女になるのは3日後ぐらいになるだろう、と言う事になる。
とにかく、今は戻ってしまった以上"男子高校生"として生活する。
「ふぅ……」
この瞬間って落ち着くよな、本当に。こうして立ちションするのも久しぶりだよ。
男子校といっても先の特殊な事情ゆえに半数が女子となっている。
したがってトイレや更衣室は男女別。といっても体育の授業は男女混在だが。
そんなわけで俺がいるのは当然男子トイレ。昨日までは女子だったからこの隣の女子トイレを使っていたのだが。
昔は女子トイレってだけでどぎまぎしていた頃もあったか。ウブな話だよなぁ。
まさか自分がその女子トイレを使うことになろうとは思いもよらなかったけど。まあ、使ったところでどうしたって感じだし。
なお、しつこいかもしれないがここは男子校であって女子はあくまでその男子が化けた存在。
元は男子であり中身は男子。したがって男子トイレだとか女子トイレだとかそういうのに羞恥心を全く感じないやつもいるということだ。
「おう、いたのか蔵本」
その代表格がやってきたよ。
すらっと伸びた長身、細い引き締まった胴体、そして何よりも圧倒するのが不必要なまでにでかいPカップというバストが特徴。
辻牧人(ツジ マキト)だ。
元の姿は極度に肥満というわけではないがちょいと太っていて、ある意味男のときも体格がいいといえる。
そして女になったら、これだ。
こいつの胸は学校内でも有名で、そのサイズはPカップと巨乳ばっかの女子の中でも群を抜いている。
何ゆえこんな体系になったのかは定かではないが、一説によると普段の余計なお肉が全て胸に移動したのではないか、といわれている。
当の本人はそんなことは気にもしてないが、自身の胸にはご満悦のようだ。
俺と辻は悪友同士、もしくは腐れ縁、そんな言葉で表現するのが適切だろう。
小学校5年の時だったか、同じクラスになったのは。それ以来中学高校とずっと同じクラスだった。
それは今も同じ。ここに入学してもやっぱり同じクラスだった。
だからといってお互いに嫌悪しているわけではない。所詮は"悪友"にすぎないが、それでもそこそこ仲良くはやっている。
性格も決して悪いものではない。世間では太っている人を「デブ」だの「キモイ」だの嫌悪する傾向がどういうわけかある。
俺にとって見ればそんなやつらこそ嫌悪したい。人当たりのいい正確は誰とでも仲良くできそうだ。
ただ、しいて言うならばかなりのマニアック振りを発揮するというか、凝り性というか。
今まではそんなこと思わなかったけど、ここで女になってそれが開花してしまったような気がする。
「辻、お前女の時にここに入るなよ」
「別にいいじゃないか。中身は男に変わりないだろ?」
そりゃそうだけど、ルールというか気分の問題というか。たしかに罰則があるわけじゃないけどさ。
そんな話はもう既に何百回もしたと思う。こいつは女になっていたとしてもしっかりと男子トイレに入ってきてしまう。
そしていつもの光景が展開される。
「よっ、と」
前かがみになる辻。破壊的なバストがそれにあわせてぷるんとゆれるのがはっきりくっきり。
そのまま極限にまで短くしたスカートの中に手を突っ込んで、捕らえたのは自身のショーツ。
捕らえた真っ黒で魅惑のデザインなショーツをするすると下ろしていき、足首まで一気に下げる。
そして完全に足首をくぐらせ、脱ぎきってしまった。
そいつをどうするのかというと、腰の辺りに位置する部分を口にくわえた。よく見たらヒモパンじゃないか。
で、空いた手はどうするのかというと……両手でしっかりとスカートをつかんでがばっと持ち上げた。
腰から下、下半身が丸出しの状態。そしてそのまま男子用小便器に近づいて……
「ふぅっ……」
用を足し始めた。俺はそれを呆れながら見ているしかない。
もう幾度となく繰り返されてきた光景。最初はそれこそどぎまぎしたさ、女性がこんな大胆なこと目の前でするのはさ。
しかもこいつ自分から「トイレ行こう」と誘って来て見せびらかしているしさぁ。
だがこれが何回もされてはもう慣れた。少なくとも俺は免疫ができた。
まあ、知らないやつが見たらやっぱり驚くのは当然で、時々こいつが用を足している最中に入ってきたやつが仰天して出直してくるなんて事があったけどな。
「んっ…」
用が終わると腰を振って器用に残りを振り落とす。これだけでも結構エロい。
そしてそのまま個室の方へと足を運んで……
「お前さ、結局拭くんだったら最初から女子トイレでやれよ」
「いいじゃん。これが俺のポリシーなの」
俺にしっかり反論しながら個室のトイレットペーハーで振り落としきれなかった残りを拭いている。
それが終わると目の前の便器にぽいと捨てて、咥えていたショーツを穿き始める。
付き合いきれん。とっくに用を済ませている俺はさっさと退散するのみ。どうでもいい話だし俺には。
「あ、そうそう今日部活するからな」
手を洗っていたらあっという間に追いついてきた。洗面台でさっと手を洗って俺に告げる。
「……やるの?」
「やるよ。よろしくな」
あっという間に去っていった。あいつ、妙に手際がいいところあるんだよなぁ。
帝越高校の場合、部活動として正式に承認されるには部員がいること、専属の顧問がいること、生徒会の承認が出されることの3つが必要になる。
辻の言う部活動はこのうち条件を満たしているのは部員のみ。顧問もいないし、生徒会からの承認は得られていない。
したがってレベルとしては同好会と言う事になるが、同好会のレベルであれば生徒自身が好きなように発足することができる。
辻が発足させた部活は「服飾同好会」と呼んでいる。一見すると聞こえはいい、まっとうな同好会のように思える。
しかしここは男子校だ。女子だったらともかく男子がせっせとお洋服をミシンで縫っている図はあまり想像できない。
ましてや同好会長はやや巨漢の辻だ。そいつがミシンでお洋服など、ありえん。
ここまで言われれば一般に言われている服飾部とは異なることぐらい想像できるだろう。
しかも先ほどの事をやった辻だ。そうなるとこの同好会の主旨は……
「お待たせしましたぁっ! 本日もこの帝越高校服飾同好会にようこそぉっ!!」
何かのイベント司会よろしく辻がもったいぶった仕方で俺たちに宣言する。
場所は使用頻度の少ない小教室。十数人も入ったら一杯になってしまいそうなコンパクトな教室だ。
使うのは選択科目とかで人数が少ない場合で、それ以外はほとんど空いている。
非公式の同好会はこういうところを間借りして使わせてもらっているのだが、これでも借りれるだけマシな方だ。
今のこいつの姿は首だけ出して体は真っ黒なマントに覆われている。
「待ってましたぁっ! いよっ、美の巨匠っ!」
さっさと帰りたいところを我慢してここに来て、呆れながらも座っている俺とは対照的に拍手して声援を送っているのは後輩で1年の山瀬皇(ヤマセ コウ)。
男だというのに小柄で、どこか可愛らしい印象を感じてしまう。いわゆる弟系キャラ(ショタ属性混入)。
いやいやながら入会させられた俺とは違ってこいつは自らこの同好会に参加したそうだ。
何でも入学式に部活動勧誘で多くの先輩方がビラ配りしているときに目撃した辻の姿(もち女の時の)に魅了されたとか。
大方のやつは一歩引いてしまうか、魅了されたとしてもすぐに目が覚めるかどちらかなのだが、こいつの場合は目が覚めなかったらしい。
さらにはよく懐いてくれるだけに辻もまんざらでもないらしく、結構この後輩を可愛がっている。
つまりはいい先輩後輩の関係ということ。いいかげん目を覚ませ後輩。
「ではではっ、早速行ってみましょう。今日のコスチュームっっ!」
宣言と同時に一気にマントを脱ぎ捨てる辻。そしてその下があらわになる。
「ぐっっ……!」
「おおっ、すごいッス!!」
引き気味になった俺とは異なり、山瀬の表情は感動を表している。
「本日の衣装はご覧の通り、ハートのコーディネートですっ」
コーディネートなんていっているが、ハート柄の服を着ているのではない。
左右の乳首、下の股間、その三箇所の大事なところにハートの形をした赤いシールが張られているだけの姿だった。
「極限にまで肌を露出させ、見えてはいけないところを隠す。隠されたところの形はハートをあしらって可愛らしさをアピールしております」
「すごいッス! さすが先輩っっ!」
何がすごいだよ。裸同然じゃないか。
これはもう服とか極限まで肌を露出させたというレベルじゃねえ。一歩間違えば変質者だ。
しかもそれを辻みたいな体でやられたらもう悲惨だ。
結局のところ、これが辻の行う服飾同好会の実態。
お裁縫を楽しむというものではなく、自ら各種様々な衣装を着て楽しむ、いうならばコスプレ研究会といった方が話が早い。
しかもそのコスプレはかなりエロい方向。メイド服(超ミニスカート)とか、ナース服(下着着けてない体が透けてる)とか、バニーガール(やたらと肌の露出が大きい)とか、チャイナ服(丈が短くスリットがきわどい所まで入っている)とか。
当然こんな衣装着るのだから辻自身が女の時でなければ話にならないが、いつ行うかは辻の気分次第。
今日みたいに唐突に「やる」といわれるのがほとんどだ。
ここに出席させられるだけでも疲れるのだが、自分が女の時に「やる」となったらもう悲惨だ。
「ほらっ、石井も恥ずかしがってないで出てこいよ」
「くそぅ、なんで僕がぁぁ……」
ついたての向こうから辻が引っ張り出してきたのは同じような格好の女になった石井常久。
辻とちょっと違うのはそのシールが黄色い星になっているというところだけ。基本コンセプトは全く変わっていない。
そう、女の時にやるといわれたら同じようにコスプレさせられるのだ。
「うわぁ、いいですいいですっ! 二人ともいいッスよおぉぉっ!!」
テンションが上がり様々な色っぽいポーズを決めている辻に対して常久は顔を引きつらせ、いかにも恥ずかしそう。
そんなものお構いなしに後輩の山瀬は辻持参の一眼レフカメラのシャッターを切りまくっている。
コスプレしたら様々な角度からの撮影は必須。撮影者はその日男になっている部員が行うことになっている。
その写真を辻がどうしているのかというと、何でも秘密のウェブページに公開しているとかしていないとか。
どっちにしても嫌々やっている俺や常久にしてみれば羞恥プレイ以外の何物でもない。
本当に今日は男でよかった。この前のフンドシ姿+ぎりぎりのサラシも辛かったが、今日に比べたらはるかにマシに思える。
「いいですねぇ。僕も今日のコレ、着てみたかったッス。今日に限って男なんだもんなぁ」
一方で山瀬はどういうわけか積極的にコスプレを楽しみたいご様子。
毎回毎回この活動日には、女の時は「今日女でよかったッス。こんないいもの着れたんですからぁ」と言い、男の時は「残念ッス。何で今日に限って男なんでしょお」と言うのがお決まりになっている。
しかしさあ、そのセリフ。今日みたいに羞恥プレイさせられている俺や常久に言われたらちょっと殺意を感じるぞ。
言葉には気をつけろよ、後輩。
### 3.教職員 ###
生徒達は半周期的に女になる、とは言ったが実のところこれは教職員にも該当する。
「はい、皆さん授業始めますよぉ」
甘ったるい声で教室内の生徒達に宣言したのは植松鉄平(ウエマツ テッペイ)、40代いまだ独身のここ最近体重と髪の毛の後退具合が気になり始めている担任教師である。
専門教科は国語。なんとも絵に描いたようなしょぼい担任と言う感じだが、現時点はちょっと違う。
「じゃあ、今日はまず102ページのところからですねぇ♪」
アニメ長の甘ったるい声、背中にかかるロングヘア、ちょっと無理してきているような一回り大きいスーツ、子供っぽい顔、さらには小柄というロリ属性が一部混入していながらも出るところは出ている可愛らしいと言う言葉が似合う女の姿だった。
かのルールは教師にも適用されている。したがって担任であろうとその他各科目の教師達も例外なく半周期的に女になる。
もちろん中身がそれで変わるわけではない。それは生徒達も同じで外見は女になるものの、中身の性格が変わってしまうとか、別人格が出現するとかそういう事は全くない。
現在の俺、蔵本竜介も同じだ。
例え今がこの学校の人間達に適用されるとおり女になっていて、そしてちょうど普通の女性に出る一月一回のあれが来て、ちょっと下腹部が痛くて頭痛がして気分がいらいらしているとしても、俺であることには全く変わりはない。
それによって性格が激変して、ドジっ子にも清楚なお姉様キャラにもツンデレっ娘にもタカビーなお嬢様キャラにもならない。
俺は俺、男のときと全く変わらない。
だというのにこの教師は全く違う。
「先生、そこのところは前回やりました」
「あ、そうでしたね。てへっ♪」
女子生徒(に、なっている男子生徒)からの指摘を受けて自分で頭をこつん、とぶっているこの姿。
普段は無愛想で淡々と授業をこなしていて、ちょっとやる気ないんじゃないかと思うこの教師は何故か女になるとこれだ。
外見相応の、大人なのにやたら子供っぽい女の子の性格になってしまう。
もちろん他の教師にはこんなことはない。普段と同じ、ごくごく普通の性格のままで全く変化はない。
うわさによるとこの担任の場合は40代いまだ独身のせいで女に飢えて自分で理想の女性像を演じてしまうのではないかとか、注射されたナノマシンが暴走しているのではないかとか、年だと脳が作りかえられておかしくなっているんじゃないかとか、単に馬鹿なんじゃないかとか、これが先生の本性なのではないかとかいろいろ言われている。
だからといって授業に差しさわりがあるわけじゃない。むしろ普段に比べたら明るく元気にやっているから授業を受ける分には女の時の方が見てて気分がいい。
しかし外見は変わっても中身が変わるわけではないはずなのにここまで性格が変わってしまうのはどうにも気になる。
さらには生理期間中特有のいらいら感がつのり、こういう茶目っ気のあるしぐさもなんだかわざとらしく見えて余計にいらだつ。
駄目だ、頭痛に痛みがひどい。初日だから余計だ。
「先生、保健室に行ってきます」
手を上げ、断りを入れた上で席を立った。すると……
「あらぁ、蔵本さん大丈夫ぅ? 誰か一緒に……」
「いえ、一人で大丈夫です」
「そお? 先生心配しちゃうよぉ」
しなくていい。俺は一刻も早くあんたの茶目っ気オーラから逃れたいだけなんだ。
保健室の先生も当然男だ。ただし、今は女。
「生理痛の薬は持ってる? 出そうか?」
「お願いします」
その姿はよく青春マンガやドラマに出てくる絵に描いたような美人の保健室の先生だった。
まあ、この学校の生徒も先生も女になればみんな例外なく美人か可愛い、そしてプロポーションがいい。
この先生も例外ではなく、美人に抜群のプロポーション、そしてアクセントにメガネ。
竹の短いスカートからストッキングに包まれた、すらっと伸びた足もまた魅力的。
残念ながら今の俺にはそんなすばらしいものを観賞している余裕はない。とにかく生理痛が辛い。
薬と水を受け取り、それを飲んでベッドに横になる。
「しばらく大人しく寝ていいからね」
「ふぁい」
お言葉に甘え、ここは大人しくしていよう。
普通の女性に比べたら頻度は少ないとはいえ、やっぱり二ヶ月に一回のこれはこたえる。
朝目が覚めてみたら女になっているのを自覚、それと同時に生理痛も自覚してしまう。
起きたら既に下着が(それもトランクスが)赤くなっていて、あわてて生理用品一式を手にトイレに駆け込んだのが今日の朝。
どばどばと出てくる血と部分的に混じっている生レバーみたいな塊は何度見てもうんざりしてしまう。
さっきもここに来る前にトイレに立ち寄って交換したけど、べっとりついた血を見るのはどうにも。
それと同時に始まる不快感。頭痛と痛みと苛立ち。
人によって症状は異なるみたいだが、自分の場合は初日の今がピーク。
その時は辛くて辛くてなかなか授業に集中できない。仕方ないのでそういう時はこうして保健室に逃げ込んでいる。
こうなると生理の終わるまで、数日間は男に戻ることが出来ない。
さっさと男に戻って逃げ出したい気分だけど、そういうわけにはいかない。これはある意味拷問。
こんなの毎月我慢している女性ってえらいと思ってしまう。それと同時にもっと女性をいたわらなきゃって思うよ。
まあ、そう思ってもらうことが俺たちを女にしている目的なんだろうけどね。
気がつけば結構時間が経ったようだ。チャイムが鳴り、授業の終わりを告げる。
今から昼休みで昼食の時間だが、この調子だとあんまり食べれそうにない。
まあ、寝てればいいか。せめてもの頭痛がおさまれば食欲も回復するだろう。
「蔵本さぁん、大丈夫ぅ?」
頭痛の種がやってきた。この声は間違いなく担任の植松鉄平!
予想通りの声の人物が保健室のベッドにかかる仕切られたカーテンを開けた。
その表情は確かに心配している様子なのだが……
「……大丈夫です」
「もう蔵本さん調子が悪いって言ったから先生心配で心配で……」
キーの高いアニメ声で話かけないでください。頭にキンキン響く。
本当に普段の、男のときの無愛想な性格とは真逆だな。心配してくれるのはいいけど、今はそっとしておいてほしい。
「蔵本さんお昼食べれないかもって心配してたの。だから先生ね、持って来たんだ♪」
そういって取り出したのはなにやら可愛らしい動物の形をしたタッパ。
パカッとフタを開けてみると、中に入っていたのは果物各種?
りんごとかみかんとかカキとか、きちんと切ってある果物類。それの一つに先生はフォークを刺す。
「はい、あーん」
「……」
俺の看病を買って出たつもりなのだろうか。この場合は素直に甘えておけばいいのだろうか。戸惑う。
そして何ゆえ一担任がこんなことしているのだろうか。
「あれ? やっぱり食欲ない?」
俺が口を開かなかったことに不思議に思っているようだ。
俺はそれよりもあなたの行動が不思議で仕方ないですよ。
### 4.休みの過ごし方 ###
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
学校が休みであっても朝はきちんとやってくる。目覚ましがならないのが普段の違いか。
といってもここは俺の部屋ではない。常久の部屋。
昨日、常久が「僕の部屋、寄ってくか?」と誘ってきた。
明日は学校も休みのことだし、まあ二人でだらだらするのもいいかと思って行ったのだった。
常久の両親は共働きで現在は海外赴任中。そしてこいつには兄弟はいない。
つまり家には常久以外だれもおらず、現在は一人暮らしも同然という状態だった。
当然生活費は親から送られてくるが、それでもちゃんと自炊しているあたり、こいつの真面目なところが伺えるな。
そんな一人しかいない3LDKのマンションの一室、そこに常久は俺を呼んだわけだ。
そしたらまあ、魂胆はこういうことだったわけだ。
その時俺は女で常久は男。よくよく考えてみれば男が女を部屋に誘う要件って、決まってるじゃないか。
二人で甘いキスをし、火照る体。
俺の衣服を一つ一つ脱がして行く常久。
それに合わせて常久も脱いでいく。
ついには二人で生まれたままの姿になってベッドイン。
抱き合い、キスを繰り返し、何度も何度も繰り返される挿入。
常久を受け入れ、注がれて喘ぐ女の俺。
激しく乱れ、二人の攻防は一晩中続いた。
そして朝を迎えたわけだ。いやはや、学校の中ではしょっちゅうやっていたけど、常久の部屋で一晩中やっていたのって初めてかもしれないなぁ。
正直俺は最初乗る気ではなかった。先輩方に注意されていたのだ、「学校の外ではあまりやるなよ。特に家ではな」って。
理由は分かる。寝ている間に性別が切り替わっては大変だからだ。
二人で一晩中乱れてぐっすり寝て、朝起きたら性別が切り替わっていたら大変だ。
これが女同士になっていればめくるめく百合の世界でそれもまたいいかもしれないけど、男同士になってホモの世界になっていたら最悪だ。
いくら何度も女の体で男に抱かれているとはいえ、男同士の絵面はいやだ。
それが頭にあったから乗り気ではなかったけど、常久の性欲は強かった。
ついでに「そう簡単に切り替わらないだろうよ」という常久の言葉もあって、結局俺も飲まれてやる羽目に。
確かに今女になったのは3日前。その前に女になっていたのは4日間だから今回は長めのはず。だったら別に明日男に戻るって事はないだろう。
連続して短期間になるって事はないわけじゃないけど確率は低い。早々都合よくタイミングよく切り替わるわけが……
「あるなぁ……」
目が覚めて気がついてみれば、俺は男に戻ってました。
柔らかい胸が硬い胸板に、散々挿入された部分には朝立ちした立派なやつが。
最悪だ。はっとなって同じベッドに寝ている常久を見ると……
「すー……」
静かな寝息を立てて寝ている常久は昨日は男だったのに、今日は可愛らしい女の子になっていました。
セーフ、セーフです。少なくともホモは回避できました。
俺の焦りなど露知らず、未だにくーすか寝ている常久。こういう寝姿も結構可愛い。
幸せなやつめ、そういえばこいつ寝起きが悪かったよな。……別にいいよな?
そっと布団を剥ぎ取る。昨晩のままだから当然裸。スタイルのいい女の子の裸だ。
起こさないようちょっと注意しながらその上にまたがる。
常久の体に備わる二つの柔らかそうな乳。見てると既に朝立ちで硬くなっている俺のブツがさらにいきり立ってくる。
そっと触ってみる。柔らかな感触、そして程よい弾力。
「ん……」
おっと、さすがに起きたかな? と思ったけどまだ寝続けている。なかなか神経図太いやつめ。
んじゃ、これはどうか。
常久の上にまたがり、そっと谷間に俺のペニスを接近させる。そしてきゅっと挟み込んでみる。
常久も女になれば例外にもれずスタイルはいい。それは胸の大きさも当然でしっかりとしたEカップ。
それだけあればパイズリするには十分だ。
ゆっくりと動き出す。弾力が俺のペニスを包み込み、最良の心地よさを演出する。
先走った液体が俺のペニスから漏れ出し、それが音を立てる。
結構大きい音にも思えた。だというのにこいつは未だに夢の中。
「やばっ!」
久々の男の体。それもあってか俺はすぐに達してしまった。
どくどくと放たれる精液。挟み込まれた常久の谷間に注がれ顔にもちょっとかかってしまう。
久々だけにこれが結構出る。常久の胸はどろどろの精液まみれになってしまった。
そして鼻につく匂い。男ってのは果てて、この匂いを嗅ぐと大体我に返ってしまうんだよなぁ。
俺も同じように力が抜け、次第に冷静な頭になっていく。
その一方で目の前の常久はというと
「んぅっ……」
まだ寝てる。いいかげん起きろよここまでやったんだからさあ。
しかしその寝顔、そして精液にまみれた姿を見ていたらまたしても俺の中でスイッチが入ってしまった。
出したばっかりだというのに再び下半身は元気に。
……別にいいよね、やっちゃいますか。
そっと下に移動。わずかに開いた足の中に入り口を発見。
うん、ちょっと濡れている。ひょっとして匂いで無意識に反応しているのだろうか。
ゆっくりと近づく、そしてゆっくりと挿入。
濡れているそこは抵抗することなく、滑らかに俺を受け入れていく。
久々の挿入感。常久の温かな内壁が俺のペニスを包み込んでいく。
「んぅっ……ってふあっ!? り、竜介っ!」
「おう、やっと起きたかお姫様」
寝ぼけた表情が一発で消し飛んだ。まあ、いくら寝起きが悪いといってもいきなりこの状況じゃ目が覚めるか。
昨晩は男で、女の俺を散々犯していたのに、朝起きてみたらいきなり女になって、いきなり教われてて立場逆転、だからかなぁ。
焦りか混乱か、はたまた別の感情か。
「な、僕女になって……っておっぱいに精液が! 何してんだよ竜介っっ!」
自分の体の変化と今の状況にようやく気がついたようだ。焦っているその顔も可愛い。
「何って寝起きの一発」
「人が寝ている間に襲うって、ふあっ!」
抗議の声を上げようとしたが、俺の軽い突きでそれも中断される。
実体験済みだから分かるけど、女の感じ方って男のとは絶対的に違うからな。こうされれば力抜けるんだよ。
ゆっくりと、まったりと動いていく。常久の弱いところは知りつくしている。だからこう動けば抵抗はできまい。
巧みに腰を動かして、その弱いところを攻めてやる。
「ふあっ、あぁっ…馬鹿っ、やめっ……」
抵抗する力もすっかり抜けてされるがまま。ちょっと意地悪してやろう。
簡単なこと、ちょっと手を止めて(腰を止めて?)すっと引いてみた。
「あ……」
止めちゃうの? と顔に書いてある。
「止めろって言ったよな?」
決まり文句のように尋ねてみた。
「……ああ、言ったよ。ったく、目が覚めたらいきなりこんなことされてたまったもんじゃねえよ」
おっと、すねちゃったか? ぷいと目をそむけて言うセリフは子供がすねてる時そのもの。
素直じゃねえな。でもまあ、面白い。
当然のようにこのまま終わらせるわけもなく再び挿入。
「ふにぁあっ!?」
可愛い声出しやがって、こいつは。
そして抵抗することなくすんなり受け入れた常久に再開するピストン運動。
「止めるんじゃなかったのかよぉっ!?」
「だってこの状況で止めるのもったいないし」
「朝っぱらから……このエロ魔人っ!」
そういうお前もまんざらじゃない様子だけどな。
深いところに侵入する俺に、きゅっと締め付ける常久。
柔らかく、そして時折きつく締める常久もしっかり受け入れているのが分かる。
ぎゅっとシーツをつかみ、喘ぐ常久。強気に言っていたが、結局は男と女で気負けるのは女の方。
快感が強く、それにのまれてしまう。こうなったらもう流されるのみ。
「ふぁっ、あぁっ……」
甘美な声を上げ、喘いでいる姿は色っぽく、そして可愛い。
ふにゃっとした顔、刺激が強いとこんな感じて顔が崩れて、弱々しくなってしまう。
そういうところに可愛さを感じてしまう。元の男のときの面影は感じられない。
それを見ると俺も余計に頑張ってしまう。だがそれも限度がある。
「あぁっ……イクっ、イっちゃうぅぅっっっ………」
先に達したのは常久。それに合わせるように俺も達する。
どくどくと注がれる精液。さっき胸の谷間に思いっきり出したのにまだ出てくる。
ある程度我慢すれば一緒にイクことができるように調整、ていうか我慢できる。
やっぱり一緒にイクのがお互いに一番いいしね。共同作業って感じ?
「ふあぁ、竜介ぇ……」
昨晩の強かった男の常久とは全然違う姿。ずいぶんとギャップもあるがそれもまた魅力的に見える。
そして再びスイッチオン。結局朝から二人して何回もやってしまいました。
### 5.休みの過ごし方、その2 ###
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
学校が休みであっても朝はきちんとやってくる。目覚ましがならないのが普段の違いか。
といってもここは俺の部屋ではない。常久の部屋。
昨日、常久が「僕の部屋、寄ってく?」と誘ってきた。
その時俺は男で常久は女。男女二人っきり。
二人で生まれたままの姿になってベッドイン。
抱き合い、キスを繰り返し、何度も何度も繰り返される挿入。
常久は俺を受け入れ、乱れ色っぽく喘ぐ。
激しく乱れ、二人の攻防は一晩中続いた。
今回俺が男に戻ったのは3日前。女になっていた期間は一週間と平均的。
時期としては怪しい感じがするけど、そういえば前回はタイミングよくこういう場面で翌朝互いに性別が変わっていたっけ。
いくらなんでもこう続くわけがないだろう。そう思っていたんだが……
「……ふっ」
都合よすぎだ。俺は女になっていた。
そしてふと隣を見てみると……まぁーったく、都合よすぎだよ。しっかり男になってやがる。
そういやこいつ、今回は女になっている期間長かったな。2週間ぐらいか?
つまり久々の男の体というわけだ。それのせいか、はたまた男の普通の生理現象か、下はしっかりとテントを張ってました。
俺たちが被っているのは薄い毛布一枚。それをしっかりと持ち上げているんだからまあ、立派なもの。
一応めくって確認する。
「おおぅ」
いやはや、立派ではありませんか。常久はどちらかというと小柄な体系の方だが、ここだけは立派なんだよなぁ。
俺のとどっちが大きいか。そんなもの比較はできんから分からん。
しかし、だ。
ボッキしてるペニス
↓
見つめる女
↓
昨晩の情事を連想
↓
濡れる下半身
↓
増して行く女の性欲
↓
発散したい気分
↓
目の前にいきり立つ絶好のもの
簡単な連想ゲームだった。ていうか、俺って馬鹿ぁ?
いやいや、別にいいよな? 折角だし。
どっちにしても相変わらず寝起きが悪いやつだ。いまだにくーすかと寝ているこいつをちょっとからかってやらねば。
「よっ…と」
目の前に立派にボッキしてるペニスは熱かった。血流が集中しているから必然だけど。
そいつを俺ご自慢のおっぱいではさんでやった。
ぷにゅっと音を立てたかのようでやっぱりいい。この前はこいつが女で、寝ているときにこっそりとこいつの胸でやったけど、今回は立場が逆。
こいつが男で、寝ているときにこっそのと俺の胸でパイズリ、というわけだ。
寝込みを襲うことに変わりはないな。しかし目を覚まさないことに変わりはない。
常久のは結構立派な方だけど、それを挟み込む俺の胸も見事なものだ。
さすがFカップ。大きくないとやり応えがないな、うん。
胸の柔らかな双球、それに挟まれる硬いペニス。
柔らかいものと硬いもの、相反する物体同士の相互関係は心地よいものを生み出す。
胸の中に包まれたそいつはさらに熱くなっていき、段々と反応を示ししていく。
寝ている状態であったとしても体は自然と反応している。さらに硬くなって、熱くなって、先走った汁があふれてきた。
くちゅくちゅと音を立て始める。俺の胸の中で奏でるメロディ。
ちょっと小休止、その先っちょをぺろっと舐めてみた。
「んっ…」
わずかに反応する常久。しかし未だにこいつは夢の中。
まったく、こんな美女(?)がせっかくご奉仕してあげているというのに、寝ているなんて失礼じゃないか。
まあ、俺自身も今はご奉仕というよりもいたずらといったほうが気分的に近いけど。
そのいたずらは続く。胸でマッサージを続けながらその先端を優しく愛撫する。
美味くもまずくもない味、しかし女の体になると時折無性に欲しくなってしまうことのある味。
舌先で優しく舐めていく。その先に少しずつあふれてくるそいつをなめている時、感じ取った。
わずかな振動。谷間で感じ取った振動でそれを察知した。
俺は反射的に胸で包み込む。完全に谷間に埋まった時、振動が大きくなり、熱いものが噴出してくる。
「くっ…!」
激しくペニスが鼓動し、精が放たれる。常久の男のダムが決壊し俺の女の胸に注がれる。
熱くなる谷間。ねっとりとした感触が胸の中に広がっていく。
決壊が収まり、離れてみると俺の胸は洪水状態。精液がべっとりとかけられている。
やれやれ、なかなかすごい惨状じゃないか。とっさの判断で胸に出させたけど、口で受け止めてもよかったか?
指先でちょっとすくってみて、ペろっと舐めてみる。うん、美味くもなくまずくもない。
胸にしたのはこいつに対するあてつけだ。目が覚めたらよくもこんなにしてくれたな、ぐらいいってやろうと思って。
で、肝心の常久はというと
「んぅ……」
いまだ夢の中。いい根性だ。
さっきの射精も結局こいつには夢精でしかないようだ。今頃どんな夢見ているんだか。
いいじゃねえか。そこまで寝ているっていうんならこっちも実行しちゃうよ。
夢精して若干しぼんでいたそいつを軽くなでてやるとあっという間に復活。こいつもいい反応するなぁ。
でもそのほうが好都合。しっかりと上を向いてるそいつを手に、俺はその上にまたがる。
俺も俺で既に下はしっかりと濡れている。挿入準備は万全、ってか?
ぴたり、とあてがう。亀頭の硬くも柔らかくも感じる感触が内壁に伝わる。
昨日はここにあった自分のペニスを通して常久に侵入していたというのに、今度は逆に常久のそれが侵入する立場に。
存在感のある突起物は裏返して内側にもぐりこんでしまった、そんな感じ。
毎度の事ながらこの瞬間はドキドキする。陽が陰に、突起が受け側になる。
ゆっくりと腰を下ろしていき、男を迎えれていく。
「あ、はぁ……」
入ってく感じ、たまらない。自分の体の中に侵入していくペニスが心地よい。
ちゅぷ、とか、にちゅ、とかそういう音が聞こえる。いやらしい。
熱い、ドキドキする。楽しくも嬉しくもある感覚。女の体で男を受け入れるのはたまらなくいい。
すっかりペニスを飲み込んでしまった。あっさり男を迎え入れてしまった俺のヴァギナも結構淫乱。
「あ、んんっ、んぅっ……」
ゆっくりと腰を動かし始めた。俺の中でうごめくペニスは別の生き物のようだ。
上下に動くペニスは俺の奥をそっとつつく。奥の入り口に当たる度にぞくっとする感じがする。
やりすぎると変になっちゃいそうな気がして、だから今はそっと、包み込んで……
「ん……ってうわっ!?」
常久がやっと目を覚ましたようだ。
「お早う、寝坊だぞ」
「お早うってお前…うわっ! 俺男に戻ってる!?」
気がつくのが遅いっての。男に戻っての第一発は既にいただきだよ。
それは俺の胸を見てすぐに気がついたようだ。たっぷり降りかかっていたザーメンもいまやカピカピに乾いている。
まるで俺の胸を固めてくれる糊みたいな感じだけど、残念ながら俺の胸はそれよりもはるかに柔らかい。
こうやって上下に動けばぷるんぷるんと上下にゆれる。この時の常久からの視線ならばすげえエロく映っているはずだ。
「ひゃっ!? い、いきなり何しやがるっ!」
いきなり常久が腰を突き上げてきた。不意打ちに驚き、俺はずいぶんと可愛い声を出してしまったような。
「逆レイプしておいてそういう事言うか? 男と女じゃどっちが強いかぐらい分かるだろ?」
「な、なんだとぉ。女性蔑視は反対…きゃあぁっ!?」
二度、三度俺を突き上げてくる。俺の腰をしっかりとつかみ、俺が逃げ出せないようにまでして。そして徹底的に攻め始める。
その度に常久のペニスは奥に達し、子宮の入り口を突き上げてくる。
こ、こんなして子宮口攻められたら、もう……
「ま、待て、そんなにしたら、俺……」
「人が寝ているときを襲っておいてまだ言う?」
常久は手を緩めることなく連続して、休むことなく腰を突き上げる。
こうなると俺も強気でいられなくなる。もはや体は力を失い、常久にされるがままに。
「あはぁ……あんっ、あぁっ………ふあぁ…」
無意識に喘ぎ声が次第に大きくなって、部屋に色っぽい声が響き渡る。
反響し、自分の色っぽい声で俺の中の男の部分が興奮し、女の体でさらに欲情する。
体が揺れ、胸が揺れる。大きな重量感のある胸が揺れて重心が移動すると体全体が揺さぶられるかのようだ。
何も触れていないのに胸が揉み解されているかのよう。
「あぁっ……やぁあんっ、常久ぁ…」
自然と下半身に力が入る。下腹部の力がペニスを締め付け、その存在によって俺自身に力がフィードバックする。
きゅっと締め付けられたペニスはさらに熱くなって、暴れて俺を内側から滅茶苦茶にしようとする。
そのせいで俺はとっくに制御しきれなくなって、快感にもまれている。
だめぇ、気持ちいいよぉ……
「あぁっ……常久ぁ、だめぇ、俺…イっちゃうぅぅっ!」
「おう、行けっ。僕も思いっきり、竜介の中にっ!」
押し寄せてくるのが、快感が押し寄せてくるのが分かる。
そして一気に爆発する。俺の体の中で爆発したかのように、快感が一気に噴出していく。
それが合図となっていたかのように常久のペニスからも白い粘液がびゅるびゅると噴出してくる。
さっき俺の胸に思いっきり出されたはずなのに、まだこんなに出てくる。
そいつは俺の中に一気に噴出され、あっという間に満たしていった。
快感は続き、俺は常久に腕を捕まれたまま体をのけぞってそれに耐えていた。
「あぁ、ふぁぁ……」
荒い息を整え、落ち着かせる。そして見つめあう。
落ち着いたとはいえ、互いに火がついたことに変わりはなかった。だから
「もう1回やる?」
「当然」
結局そのまま第二ラウンド、第三ラウンドへと突入していく。
やっていることはあんまり変わっていなかった。
### 6.休みの過ごし方、その3 ###
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
俺の部屋ではない、常久の部屋で迎える朝も回数が多くなった。
昨日、常久が「僕の部屋、、寄ってくか?」と誘ってきて、ベッドイン。
俺が女で、常久が男。昨晩もやっぱりお互いに乱れあい、男と女を楽しんだ。
なんだかデジャヴになっている気がするけど、今回も案の定……
「またですか」
俺は女のままだったが、常久が女になっていた。
女同士、裸でベッドに寝ている姿は悪くないかもしれない。
しかしこうも連発して、これまたタイミングよく性別が切り替わっているってのはどうなのよ?
ひょっとして学校以外の場所でこういうことしたら性別切り替わるように設定でもされているのか?
そう物事はうまくいかないよ、といわんばかりにお仕置き、ってか?
まあいい。なっちまったものはしょうがないし。
それはそうと常久は女になったからどうかわからないけど、俺は昨日同様女のまま。
だから昨晩常久がたっぷり注いでくれたアレの感じが残ってる。それと挿入感も。
そのせいなのかわからないがいまだ下腹部に残るエッチの雰囲気。ぐっすり寝たとしても残っているこの気持ち、どうしてくれよう。
「……やっちゃいますか」
裸で寝る常久の体、こんなの見ていたら男だったら妖しい気持ちを抱いたっておかしくはない。
無論今の俺は女だが、それでも中身は男だから仕方ない。
常久の上にまたがり、ちょうどさかさまになるような形でそっと常久のあそこに接近する。
昨晩はここにあった兵器で俺を攻めまくっていたが、今は可愛いピンクのアレがある。
綺麗な形、女になった俺たちはここまでかといわんばかりに可愛い、もしくは綺麗になっている。文字通りの意味でも。
他のやつらは知らないけど、少なくとも俺も常久も何度も使い込んでいるのは間違いない。
にもかかわらずそこは綺麗なピンク色で、処女のようだった。性転換するたびにここは再生しているのだろうか。
まあ、さすがに処女膜までは再生してはいないようだが。
ちゅっ、と口づけしてみた。
「んんっ…」
後ろから声が聞こえてきたが、相変わらず夢の中。
こうなるとイタズラ心が芽生えてくる。いつまで起こさないようにしながら攻めることができるかどうか。
ひだひだに触れてみた。すると敏感に反応してか、そこはひくひくと動く。
なるほど、無意識のうちに反応しているのか。頭は寝ていてもここは起きているらしい。
そしてじわりと濡れていく。その過程はまるで潮で満ちていく浜辺のようだ。
その先っちょ、クリトリスもまた血流が集中し、充血しているのか。
男のペニスの神経がすべてここに集中しているというけど、本当はどうだか。
しかし実際に女になって比較してみると分かるが、全てかどうかは分からないがかなり敏感であることには違いない。
そこに軽く触れたぐらいだったら起きないだろうな、と思っていた矢先。
「ひあっ!?」
体中に流れた電撃。常久のではない、俺のクリトリスからの衝撃だ。
「お前ってやつは…また人が寝ているときに」
俺の股間から声が聞こえる。丁度そこに頭がある常久からのだ。
「あ、お早う。起きた?」
「こんなことされてたらさすがに起きるに決まってるだろ」
うん、それもそうか。しかし裏を返せばここまでされないと目を覚まさないということではないのか?
「で? お前は一体何をやってるのさ」
「何って、ナニに決まってるだ、ろっ!」
「ひあぁっ! い、いきなり何するんだよおぉっ!!」
何って常久のクリちゃんを軽くぴんと指ではじいただけだ。
ちゃんと軽くだぞ。俺だって強くはじいたらどれだけ体にダメージがいくかぐらい分かってるから、ちゃんと加減はしている。
とはいえ、軽くであってもやはり衝撃は大きかったようだが。
「まあ、目覚めの一発、ってやつ?」
てへ、とちょっと舌を出して照れ笑いしてみた。
「こ、こんのやろおぉぉぉっっっ。仕返ししてやるっ!」
「ひゃあぁぁぁっっっ!?」
常久が俺のクリトリスを仕返しとばかりに舌で攻めてきた。多分舌先でぎゅっと押し付けたんだろう。
体制的に丁度目の前にそれがあるんだから、そういう攻撃の仕方をするのがある意味自然。
突発的だったこともあり、俺はそれに対処するのがわずかに遅れ予期しない体の電撃に再びひるんでしまった。
「ふっ、こんな体勢とっているって事はこういうこと期待していたんじゃないのか?」
図星。俺が取っているのは互いに上下逆になっている、いわゆる69という体勢。
寝ている常久にこんな形で攻めていったのは起きたらいきなり目の前に俺のヴァギナがあってびっくりさせるって事と、起きたら攻めてきてくれるんじゃないかという期待。
なし崩しにお互い気持ちよくなろう、ってわけだ。
「だったらたっぷり期待に答えてやろうじゃん」
両手で俺のプリティなお尻をしっかりつかんで逃がさないようにした上で、常久が再び攻めてくる。
「ん、やっぱり竜介のお尻ってプリプリで可愛くていいねぇ」
「こ、こんの尻フェチがぁぁっ!」
舌で攻めている間も俺のお尻をふにふにぺたぺたふにゅふにゅ触って楽しんでやがる。
俺はどっちかというと自身のFカップの美乳が自慢だったりするのだが、そうではなくあまり気にしていなかった尻の方がいいといわれるとちょっと複雑になる。
まあ、どのみちこの体制だとFカップの美乳はあまり役に立たないが。
一方的な攻めは続いている。俺だってされるがままじゃない。
「あんっ……はは、ようやく再開したか」
「うるせえっ、されるがままってしゃくだからな」
俺も負けじと常久の太ももをがっちり腕で組んで逃がさないようにし、おクチで攻めていく。
常久のヴァギナは愛液で濡れ、すっかりトロトロになっている。
濡れているところに、今度はさらに俺の唾液がそこを濡らしていく。
「んっ、んんっ……んふぅっ………」
一方的に強く攻めていたのは最初だ。あれはあくまで互いにイタズラ気分でやったに過ぎない。
今は違う。互いに優しく、丁寧に、愛しいように愛撫している。
お互いに体は火照って、お互いの体温でお互いをさらに温めあって。
もうエッチなことしか頭にない。ぴちゃぴちゃと唾液と愛液のいやらしい音が部屋に響いて。
「んあっ、竜介ぇ……」
「はふぅ、常久ぁ……」
竜介は今朝女になったばかりだからまだ体がなれてないだけに感じ方も大きいだろうと思われる。。
一方で昨日も女だった俺の方は多少有利と思っていたけどそうでもないようだ。
あそこも気持ちもお互いにトロトロになって、エッチに酔いしれている。
「あっ、あぁっ…イクよ、イっちゃうよ竜介ぇ……」
「あっ…お、俺も、イクっ、イっちゃうぅっ!」
ああ、今日も、二人で一緒に……
「イっくうぅぅぅぅっっっっっ……………!!」
朝からお互い女の体でレズプレイでエッチなことして、ちょっと不安になっちゃったりして。
でも、気持ちいいからエッチなことしか考えられなかった。
今日もお互い疲れ果てるまでエッチなことして楽しんでいた。
### 7.休みの過ごし方、その4 ###
「ふぎゃあぁぁぁぁっっっっ!!?」
絶叫で目が覚めた。
昨日、常久が「僕の部屋、寄ってく?」と誘ってきて、ベッドイン。
その時はお互いに女の体。ちょと前に女同士でやってクセになって、昨日の夜も女同士でずいぶん盛り上がっちゃったなぁ。
で、今聞こえてきたのは常久の声。寝起きの悪い常久がめずらしく俺よりも早く起きて、男としては高めだけどそれでも女の声ではない男の声で絶叫していた。
……男の声?
眠い目をこすりつつ、寝ぼけた頭で状況を確認してみたら……バッチリ目が覚めた。
「……男?」
二人でベッドの中、身を起こし絶叫して固まっている常久は、男の体。
一方で俺の体は……男になっていた。
つまり、図的には禁断の男同士でベッドイン、ホモの世界。
今になってようやく先輩方に注意されていたお言葉、「学校の外ではあまりやるなよ。特に家ではな」ってのを思い出していた。
「……ヤッチマッタダー」
以来、二人で夜を明かすって事はなくなった。
(学校の外では時々やっちゃったりしていたけど…な)
### 8.水泳授業と水着 ###
よくマンガやアニメで体育の時間、女子更衣室での女の子同士のキャピキャピした情景が描かれることがある。
着替えながらおしゃべりに花を咲かせる華のある世界。
時折お互いの下着を見ては「あっ、可愛いブラじゃん」といってみたり、後ろから襲って胸を揉んでは「おっ、成長してるねぇ。うらやましいわ、あたしはペッタンコなのに」といってる光景もあったり。
しかし現実的にはそんな光景多分ありえないだろう。
案外年頃の女子は着替え中は干渉しない。普段はアイドルや芸能人の話題できゃいのきゃいのしている女子も着替えは黙々としているとか。
極力お互いの下着姿を見せないように見ないようにし、さっさと着替えてさっさと授業へと向かっていく、それが現実だと誰かが言っていた。
したがって仮に俺たちの誰かが女子になって、本物の女子達の更衣室に忍び込み、本物の女子達に混じって着替えをしていたところでそういう光景は発生しない。
仮にそういうのを期待して忍び込んだとしたらがっかりするだけで忍び込んだ苦労が報われない。
まあ、根本的に忍び込むなんて愚かなことするやつはいないだろう。近所にそういう女子校とかないし。
現実がそうであるのは本物の女子がそういう考えを持っているからだということなのだが。
しかし、そういう妄想をわずかでも持っている男子が女子になっていて、更衣室にそういう女子(元男子)が100%いる中で全員が着替えをしていたらどうなるか。
「うりゃっ、成長しているか竜介ぇ」
「どわあぁぁぁっ! いきなり胸揉むなぁぁぁっっっっ!!」
……こうなる。
「お前らいつまでもイチャついてないでさっさと来んかっ!」
で、体育教師(元男、現在女の体で競泳水着着用済)からの一喝が入る。
今日から体育の授業は夏休みに突入するまでの間、プールで水泳となる。
俺たち女子がプールに全員集合したのは授業開始のチャイムが鳴って5分経過してから。その前に男子は全員集合しているし、教師もとっくに来ている。
女子が遅れた原因は明白。女子は着替えに時間がかかるのよ……ではなく、女の体でイチャついていたから。
最も着替えに時間がかかるのは事実。この学校の水着は指定されており、男子の水着は海パンで女子は競泳水着。
男子はスパッと終わるが、女子の競泳水着は着辛い。女になって自らこれを着ることになって始めて理解したが、これを着るためには水着の首のところから足を通し、一気に上げなければならない。
おまけに水着って体にフィットさせるために結構きつい。それが全身にだから結構時間がかかる。胸が大きいと余計にだ。
補足だが、トイレで用を足す場合にはこれを全部脱いで足首まで下げなければならないので、これが結構面倒くさい。
実質裸で用を足さなければならないなんてエロい……ではなく、女の体って苦労する。
さらには髪の毛が長い場合にはまとめなければならない。俺の場合は女になると髪の毛が長くなるのでこの作業が必要になってしまう。
どおりで時間がかかるわけだ女子の着替えって。まあ、実際には着替え中の無駄なおしゃべりも原因の一つかもしれないが。
で、これに加えてさっきの襲撃……教師の言うところのイチャついていたが加わる。
別に俺はイチャつくつもりはさらさらない。さっさと着替えてさっさとプールに来たかったのだ。さっきの髪の毛で時間がかかるからな。
だがいかんせん妨害が容赦なく入ってしまう。そうなってはどうにもならない。そのせいで着替えが遅れ、余計な叱責を食らってしまったのだ。
「くそう、何で怒られなきゃいけないんだ」
ぼやくがそんな不満の声が教師の耳に届いて理解していただけるわけもない。遅れたことは事実として残っている。
そして原因を作った生徒、俺を背後から襲って胸を揉んできたやつも同様に俺のぼやきなど耳に入らないだろう。
結局怒られ損、何で俺がこんな目に……ってやつだ。
「うむ」
ふと見れば辻がなんかうなっていた。
この学校の生徒教職員は半周期的に性別が変わる。したがって授業も男女別で分けるなんて事はしない。そんなことしたら授業についていくことができないからな。
従って体育も男女混在で同じ内容の授業を受ける。まあ、女なった時の体力低下による成績不信は多少考慮されるけど。
そんなわけで今ここで男の辻が隣にいても何の不思議もないわけだ。
ちなみに今回の水泳の授業は一部男子にとっては辻の水着姿を楽しみにしていたらしい。
なにせ辻が女になった時は爆乳を超えた領域のPカップの持ち主。そんな体が着る水着は確かに見ものかもしれない。
が、残念ながら今日は男。バストの代わりに腹の肉がボリュームいっぱいになっています。残念でしたぁ。
「どうした辻、我慢しているんだったらさっさとトイレ行ってこいよ」
「トイレを我慢してるんじゃない!」
びしっ、とした表情。現在辻は男の体、チョイとデブの体だった。
腹の肉がボリュームいっぱいとは言ったが、無駄に脂肪がついているという感じはしない。どっちかというと相撲取りのような実用的でパワーが出せそうな太い体格といった方がいいかもしれない。
引き締まったデブ? そういえばいいのか分からないがある意味では格好いいかもしれない。
「で、何をうなっていたんだ?」
「いや、やはり学校指定の紺色スクール水着はこれはこれでいいのだが……やはり今ひとつ映えないなと思ってな」
訂正、外見はどうあれ頭の中はやっぱり変人でした。
「映えない、かよ」
「うむ。やはり女になって、それも魅力的な体になっている以上水着も魅力的なものにしないともったいないではないか」
そういうものなのか? もったいないって。
「うむ、決めた。今度の休みに我ら服飾同好会で海に行くぞ! そして女の水着を堪能するのだ」
ああ、早々に決定してしまった。海に行くといってもその目的は泳ぐのでもなく、かといって日に焼かれるためでもなく、ただ単に水着を着るためなのが辛い。
しかも他人の水着姿を干渉するのならまだしも、自ら着てさらし者になれってのは、なぁ……。
それに付き合わなきゃいけないのか。めんどくさい。
「ってちょっと待てよ。言っとくけどそれは無理があるぞ」
「なんで?」
「何でって、その頃には俺は男に戻ってるぞ」
男と女の性別が切り替わるのは半周期的で、長くても二週間が限度だ。
俺が今回女になったのは一週間前。一方で海に行こうとしているのは数日後。となるとその頃には俺は女ではなく男に戻っている可能性が高い。
男に戻っては女の水着を着ることなど出来ない。着たら変態だ。
そうなれば一安心。わざわざ女の水着を公衆の面前でさらす必要も無くなる。安心安心。
「その心配は無用だ。俺の研究によればそれまで男に戻らずに確実に女でいられる方法がある」
くッ、こいつも一筋縄ではいかないか。通常期間ぎりぎりまで確実に女でいられる方法とは、裏技編み出しやがったか。
男に戻ってバンバンザイ、というわけにはいかなかったか。こいつ妙なところで一枚上手だな。
「で、女でいられる方法ってなんだよ」
「ふっ、よくぞ聞いてくれた。俺たちは性別が切り替わるのは深夜の寝ている間。俺が自らの睡眠中に記録した映像では変化は時間的に見てちょうど就寝から15分から30分後、つまりはノンレム睡眠に突入した深い眠りの時に、わずか数分間で体の性別が変換される」
「お前そんなことやっていたのかよ。研究熱心というかなんというか……で、肝心の方法って?」
「簡単な話だ、方法は二つ。一つは寝ないでいるということ。寝ている間にのみ体が変換されるのだから寝なければ変換は起こらない。しかしそんなことをしていては体は疲れ、身体的負担が大きい。それに日中であっても寝ていれば性別の変換は発生するからこれは方法としてはあまりよくない」
「なるほど。で、もう一つの方法は?」
「体の変換が起ころうとする時にちょっとした妨害を仕掛けるだけだ。そうすれば安全装置のようなものが働くようで、それに対抗して無理矢理体を変換しようとはしない。もっとも、これは女の時に男に戻らないようにする方法しかないけどな」
「ふむ、なるほど。で、そのちょっとした妨害って?」
きっとした目線で俺と目をあわせ、辻はこう語った。
「あそこにディルドーをつっこんだまま寝ること」
頭を抱えてしまった。なんだか頭痛がしてきたよ。
俺は勝ち誇ったように笑みを浮かべて語った辻にこういった。
「お前バカだろ?」
下腹部が痛い。主に女の子のデリケートなところが。
夏、青い海、白い砂浜、まぶしい太陽。人によってはそれを見れば疲れが吹き飛んでしまうかも知れないが、残念ながら痛みは飛んでくれないようだ。
あの日以来、辻より貸し出されたディルドーを毎晩のようにあそこに突っ込んで寝る羽目になった。
毎晩ベッドの上でショーツをちょっと下ろして自らあそこにディルドーを突っ込み、眠りにつくのはどういう姿なんだか。
ついでに入れるたびに喘ぎ声が漏れ、時にはちょっとイッちゃったりしているのはどうなのか。クセになったらどうすんだよ。
突っ込んだ状態でショーツを穿く時に少しエッチなスイッチ入っちゃってなかなか寝付けなかったし。まあそれ以前に下半身の異物感は辛かった。
初心者向けのソフトなやつだ、といって辻から貸し出されたのだがこいつに初心者も何もあるのか?
まあ、辻に言われてそれを毎晩守っている俺も俺だけど。
どっちにしてもその甲斐あってか、今現在俺は女の姿でこの海に来ている。
ああ、やっぱし異物感が残る。まだ何かあそこに入っているんじゃないかという違和感が残っている。
それとともに別の違和感というか、痛みがあったりするのだが。
俺が推測するに、それは多分男に戻ろうとしている体の反応じゃないかと思っている。
男に戻ろうとして女の子宮の中から男の物体、というかペニスとかいろんなものが出てこようとしたんだけどディルドーが邪魔して出れなくて、それでも必死に抵抗してそのせいで痛いんじゃないかと思っている。
その痛みは寝起きの時が一番強くて、ちょっと辛かったけど今は大分収まっている。
とりあえず今日一日乗り切れば明日は男に戻っているだろう。仕方ない、辻には今日一日だけ付き合ってやるか。
「竜介ぇ」
「お、常久か」
浜辺にて常久の姿を発見。それと一緒に後輩の山瀬の姿もあった。
俺もそうだが二人とも既に水着に着替えている。更衣室では見なかったなと思ったら、どうやらとっくに二人は到着して水着に着替えていたようだ。
「常久はそういう水着なわけだ」
「ああ、いろいろ突っ込みたいところはあるけどな」
俺たち全員が着ている水着は辻から貸し出されたものだった。
俺が着ているのはマイクロビキニというやつか。上下分かれたセパレートの、マゼンダ色の布面積がずいぶんと小さいやつ。
ブラは首と背中で紐を結んでつけるのだが、これが簡単にほどけそうで怖い。
それ以前に布面積がバストに比較して明らかに小さいため、ちょっと激しく動いたら簡単にこぼれてしまいそうな気がしてならない。
下も下で前は申し訳程度だし、後ろは完全にTバック。左右で結び目を作るのがすんごく面倒くさかった。
一般女性はこんな水着どうやって着ているんだ? 誰か着用方法をレクチャーしてくれよ。
一方で常久は緑色のワンピースタイプで着やすそうだ。しかし露出はかなり大きい。
おなかはぱっくり開いて、胸元も谷間くっきり。胸から出た紐が首の後ろまでのびてそこで結ばれているようだけどそれをほどいたら前はオープンになりそうだ。ある意味金太郎が着ていたやつと同じ。
まあ、それは俺も同じだけど。
問題のディルドーも辻からの貸し出し物だったが、あいつは何でこういうものを持っているんだ? 一体どこからこんな水着調達したんだか。
で、残る後輩の山瀬はというと……
「犯罪だな」
「うん、ある意味犯罪だな」
「え? 何がですかぁ?」
本人は俺たちの言ってることを理解し切れてないようだ。できれば理解してほしい。今の自分の姿がかなり危険だということを。
女になった山瀬は身長146cm(辻による情報)の小柄ながらバストは94cmのIカップ(辻による情報)らしい。
身長165cmに直したらバストは106cmのJかKという恐ろしい数値になってしまう。つまりはロリで爆乳。
そんな体で着る水着というのが……旧式スクール水着。
恐らくこれも辻からの支給物なのだろう。紺色のありふれた色で、布面積の多さと話には聞いた事のある旧スク水特有の構造である下が開く仕組み。
これとロリ爆乳の組み合わせは破壊的。歩くたびに旧スク水の下で揺れる爆乳にはちっちゃい子が趣味でない野郎にとってもぶっ倒れてしまうほど。
二次元の世界ではブルマと旧式スクール水着はいまだ現役だが、現実世界ではこんなものとっくに過去の遺物。
こんなものをどっから調達してきたか知らないが、本当に何でも持っているなあいつ。そのうちどこでもドアが出てくるんじゃないのか?
「いいですねぇ先輩たちは。そんなカッコイイ水着でぇ」
格好いいのか? どっちにしてもうらやましがられても俺たちにとっては突き刺す言葉でしかないぞ。
「で、でもほら。山瀬も結構可愛いからいいんじゃないのか?」
常久が気を使ってか、それとも自分がいじられたくないためか山瀬の水着へと話題を変える。ナイスだ、俺もこれ以上自分の水着姿をあれこれいわれたくないと思っていたのだ。
「そ、そうっすよね。辻先輩が選んでくれたんだから……ぽっ」
あっさり納得してしまった後輩の気持ちの切り換えの早さに驚嘆するか、それとも照れてるしぐさが可愛いといっておくべきか、それとも何故そこで照れるのだと突っ込むべきか。
「あ、ああそうだな。お前の愛する辻先輩が選んだわけだしな」
からかうつもりで言ったセリフだったが、そのせいでとんでもないことを山瀬は言い出した。
「は、はい。先輩、僕のこと本当に愛してくれたしぃ」
「はい?」
「いえ、僕に変身阻止のためのディルドー渡してくれた時なんですけど……」
ああ、山瀬にもしっかり渡したのね。あのディルドー。
「僕は女の体じゃ処女だったんですよぉ。だからこれ入れたら処女膜やぶれて処女喪失になっちゃいますねぇ、なんていったら『じゃあ処女喪失は俺で経験しておくか?』って、辻先輩が言ってくれたんですよぉ。そしてその晩、辻先輩が部屋に招いてくれて、先輩の匂いのする部屋のベッドの上で……ぽっ(*/▽\*)」
聞いてはいけないことを聞いてしまった。なんて事をしたんだ辻の馬鹿野郎。
もういい。とりあえず今の話は聞かなかったことにしよう。とりあえず三人集まったんだから問題の同好会会長の元へと行こう。
早くもうんざりした顔の俺と常久と一人顔を赤くしている山瀬のご一行は辻の指定された場所へと移動する。
そこに可愛い後輩の処女を奪った憎き強姦魔……もとい辻がいるはずなのだが。
「遅かったな、諸君」
いた、辻だ。
案の定、といえるかもしれない辻の姿。
毎度おなじみのPカップ超乳の体を包んでいるのはこれまた布面積の少ない上下セパレートタイプのスカイブルーの水着。
上は乳首をかろうじて隠し、下も大事なところを何とか隠している。後ろは間違いなくTバックだな。
とりあえず俺はこいつのことだからヒモだけの水着を着てくるんじゃないかと不安だったがそれよりはましだった。
が、露出が多いことに変わりはない。
「ふむ、ようやく全員揃ったわけだな」
シートを敷いて横になっていた辻が起き上がる。その時乳が大きく揺れた。
こいつが着ている水着は胸を首の後ろで縛ってあるヒモから斜め下に向かって伸びて、そこで縛り固定している。
従って下方向の支えは弱い。ということはそのまま乳が下に落下してぽろり、ということも十分ありえる。
多くのギャラリーが辻を含めた俺たちに注目している。理由など分かっている、この悩殺的な肉体のせいだ。
グループで来た男達が品定めしていたり、カップルの男のほうがこっちを見て彼女からひっぱたかれていたり、子供が面白そうにこっちを指差して母親が見ちゃ駄目といっていたり。
今の段階でもかなり注目され、ある意味周囲を混乱させている。この状況下でぽろりなどしようものなら周囲一体鼻血の海が出来上がってしまう。
それは回避させなければならない。それは自分もだし、辻もぽろりをさせないようにしなければ。
しかしひょっとしてこの男(?)はそれすらも狙っているかもしれない。そう考えると油断ならない。
「では諸君、折角の女の体で水着着用イベントを無事迎えたのだ。今日は存分に楽しもうではないか」
なにがイベントだよ。
「もちろん撮影会もあるぞ」
といって取り出したのは立派な一眼レフカメラ。結局それが目的かい。
「はぅぅ、先輩に撮られるぅぅ。僕も先輩のこと綺麗に撮ってあげますからぁ」
一人感動しているのは辻を唯一慕っている後輩、山瀬皇。一方で俺と常久はなるようになれと諦めモードだが。
「ねぇ彼女たち。俺たちと遊んでいかないか?」
ああ、もう来たか。絶対に一人か二人は来るだろうなと覚悟していたが、やっぱり来たよ、ナンパが。ていうか早すぎ。
来たのはにやついただらしない顔した三人組。とりあえずデブではないが、あまり筋肉がなく、ひょろっとしている体格は特に運動をしていないことはバレバレだ。
一方でこっちは自分で言うのもなんだが全員極上の女体なんだぞ。それに見合ったスタイルを身につけてからナンパしろってんだ。
もっとも定番過ぎる声のかけ方の時点で俺は失格と言い放ってやりたい。だらしのないしゃべり方も失格だ。
「君達綺麗だし、カワイイし、楽しめると思うんだけどなぁ」
ほうら来た。口説きの上等文句。可愛いとか綺麗とか適当に褒めてりゃ気を許すとでも思ってんのか。
せめて飯でもおごるぐらい言ってみろ、けちんぼ。まあ、おごってもらうつもりもさらさらないけどな。
それと何でお前ら上から目線な話し方なんだよ。普通人に物を頼む時は下手に出るだろうが。
そんな俺の気持ちは顔に出ていたのだろうか。少なくとも常久や山瀬はすっごく不機嫌になっているのが顔に出ている。
して、一応このグループのリーダでもある辻はというと。
「ふむ、残念だが失格だ」
ずい、と一歩前に出てはっきり断った。
「君達が私達につり合うとでも思っているのか?」
おおうっ、挑戦的な発言だな。つまりはお前達は俺たちの美貌の前ではカス同然なんだよボケぇ、といってるも同然か。
そのやり取りを聞いてか、回りではくすくすと笑い声が聞こえている。どうやらギャラリーの皆さんもこのナンパ男たちが俺たち美女達(?)には合わないと思っていたのかもしれない。失敗は最初から決まっていたようだ。
その意味合いはナンパ男たちも十分理解できたようだ。
「こ、こんのアマぁ!! 調子乗ってんじゃねえよ!」
「あんだよこのブスが!」
「てめえのムネ、どうせシリコンだろうがデブが!!」
そして逆ギレ、こいつら最低だな。
しかしこれはこれで危ない。こういう逆上した馬鹿なヤンキーは一体何をするか分かったものではない。
だが辻はこうなることは当然予測できたはずだ。あんなことを言えばこのナンパ男たちのおバカな脳ミソだったらすぐにキレるだろうぐらいは。
となると何らかの策を講じているはず。一体どうするつもりだ?
と思っていたら……
「せ、先輩に手を出すなぁぁっ!」
以外にも前に出たのは山瀬だった。ナンパ男たちの前に立ちはだかり、ちょうど辻を守っているかのようで。
その表情はちょっと弱気の子供がいじめっ子の前に勇気を出して立ちはだかっている時の、まさにその表情。
相手に怖がって怖気づいているような、しかしその一方で強い意志を持っているような。
「あんだよチビ」
「お子ちゃまには最初っから興味ないからね、ほら退いたどいた」
「あん? 君無理してパッド詰めてんの? やめとけって、デブの素だよ」
完全に山瀬を馬鹿にしているナンパ男たち。げらげらと笑っているがその響きは本当に下品。
ギャラリーも同じ事を思っているようだ。ナンパ男たちに怒りとか、侮蔑とか、とにかくゴミを見るような目線。
一方で辻は相手を見下した姿勢を崩さない。時折不敵な笑みを浮かべてナンパ男達と後輩の山瀬を見比べている。
そして山瀬の方は……
「ば、バカにするなぁぁぁぁっっっ!!」
あっさりキレた。
後から知ったのだが山瀬は実は空手、柔道、合気道、太極拳各種格闘技の有段者なのだそうだ。
普段の子供っぽくはしゃいでいる表情からは全く想像できなかった。まあ、普通は結びつかないし。なお辻はそのことはバッチリ知っていたらしい。
あの後何が起こったのかというと、キレた山瀬がナンパ男たちをちぎっては投げちぎっては投げの大暴れ。
運動などしていない貧弱ナンパ男たちは身長146cmのロリ爆乳の女の子相手に全く持って歯が立たず、されるがまま。
山瀬はその小さい体一つで誰の手も借りずにそのナンパ男たちをけちょんけちょんにやっつけてしまったのだ。
その様子に制止に入るギャラリーは一人もいなかった。ほぼ全員がナンパ男たちに対して自業自得、鉄槌が下されたのだ、と誰も哀れには思わなかった。
辻はどうしていたのかというと、この様子をバッチリ一眼レフを使って動画で記録していたり。
「うむ、やはり山瀬君の動きはすばらしいねぇ」
数日後のとある教室。いつものように服飾同好会のメンバーが揃っていた。
辻は今だ女のままだが、それ以外の俺と常久、そして山瀬は既に男に戻っている。
アレで男に戻るのを止めていたせいなのか、翌日には全員男に戻ったようだ。
問題の海に行った時の山瀬が大暴れした映像、今はそれを辻が持ちこんだポータブルプレーヤーで観賞していた。
画面にはまさにナンパ男相手に大暴れする旧スク水姿の山瀬がバッチリ映っていた。
辻はその画面上で暴れている後輩の山瀬の動きが実にいい、さすがは各種格闘技の有段者、と褒めちぎっていた。
「いや、恥ずかしいっス。こんなやつら相手にキレるだなんてぇ……」
感心する辻の一方で山瀬本人は反省しているのか、言葉数が少ない。
まあ普通あれだけ暴れて相手に怪我負わせたら警察の厄介になるよな。ましてや有段者が素人相手に暴れたんだし。
しかしその時の山瀬は本来の『有段者である男』の山瀬皇ではなく、山瀬皇という『ロリ爆乳の女の子』だったのだ。その時は、ある意味有段者ではない(ちょっと強引)。
それに相手にも非があるのは明らかで、さらにはナンパ男たちがこんな子供の女の子相手に怪我したなんて恥ずかしくて言うことできなかったらしい。
仮に言ったところで警察の方々からは「こんな子供に罪を着せるのか」と逆に非難されるようなことをいわれただろう。
まあ、そもそも言うほど大きな怪我してないしあいつら。
とはいえ有段者として山瀬はあんなやつら相手に……の言葉を繰り返していた。
ここを励ますのは山瀬が信頼している先輩の辻の言葉だけなのだが、それは辻も分かっているはず。
さて、どうするのか。様子をうかがっていると……
「いつまでもすねている必要はないよ、山瀬君」
「先輩……わふっ!?」
隣に座っていた山瀬を強引に抱き寄せ、自らのPカップのバストに山瀬の頭を埋めた。
そしてきゅっと抱きしめている。
「君があそこでナンパ男たちを撃退してくれなかったら、俺たちはどうなっていたと思う? あの頭の悪い男たちのことだ。俺たちを襲って危害を加えていただろう。つまり山瀬は俺たちを守ってくれたんだぞ、あのナンパ男たちから」
「守る?」
「そうだ、山瀬のおかげで俺たちは無事だったんだ。有段者であるからこそ俺たちを守ることができたんだから、本当に感謝しているよ」
「先輩……」
その言葉に山瀬は安心してか、辻の胸の中で穏やかな表情を浮かべていたように見えた(胸が邪魔でよく見えん)。
俺たちが襲われそうに、ってその根本原因を作ったのは辻の挑発的な言葉のせいなのだが、今はいわないでおこう。
ひょっとすると辻のやつは全てがこうなると踏んで行動しているかもしれない。ナンパ男たちが襲ってきそうになったのも、それに対して山瀬が前に出たことも。
まあ、今のは推測でしかない。何はともあれ落ち込んでいた山瀬がこれで元気を取り戻してくれればそれでいいのだが。
「そういう意味でも感謝のお礼をしなくてはいけないな」
しばしの沈黙の後、辻が自身の胸の中で落ち着く山瀬の頭をなでなでしながらそんなことを言った。
「お礼、ですか?」
「そうだな……俺の処女をあげるというのはどうだろうか?」
ぶっっ…!!
「へ?」
「俺は山瀬の処女を奪ってしまったからね。いくらディルドーで処女喪失を経験したくないからという理由で君が言って来たとはいえ、それは紛れもない事実だ。ちょっと申し訳ない気がするからね、だからいい機会だから俺の処女をあげよう。あ、もちろん俺は今までそういうことしたことないからね、紛れもない処女だ」
さいですか。以外にも経験なかったんですか、辻殿。
にしてもなんちゅうお礼だ。他にお礼できるようなまともなものはないのか。
「ってちょと待て! それはおかしいっ!!」
「何が?」
二人の世界にわって入るように俺が抗議の声を上げたのが気に食わなかったらしい。
辻は俺の方に振り返って怪訝な表情をしていた。
「お前女の体固定するためにいろいろ試してディルドー突っ込んでりゃ変身しないっていっただろ? だったらそういう事やってる時点で処女喪失してるんじゃ……」
「甘いな、蔵本君」
ちっちっち、と指をふって見せるのは強気の証拠か。
「何が甘いんだよ?」
「俺がそんなことで処女を傷つけるなんてミスすると思うか?」
……絶句。
「い、いいんですか先輩?」
一方で山瀬はときめいてる。さっきまでの俺たちのやり取りは聞こえていなかったのだろうか。
「その表情は喜んでいただけたようだな。では早速いくとしよう」
「せ、先輩。行くってどこへ?」
「もちろんホテルだよ。雰囲気作りは大切だからな」
「う、嬉しいっす。ついて行くっす!」
「はっはっは、エスコートするのは男の役目だぞぉ」
勝手に話が進展してしまった。二人は呆れて何もできない俺と常久の二人を残してさっさと出て行ってしまった。
後日。
「先輩…普段は勇ましそうな先輩が、ベッドの上ではあんなにも……」
「いやぁ、照れるではないか。そういう山瀬君も以外にも攻めのタイプだったのだな」
「恥ずかしいっす。そんな、先輩ったら!」
「しかし処女喪失とは実に胸がときめいてしまうのだな」
「ぼ、僕のときもそうでしたよ。ちょっと痛かったけど……」
「それはすまなかった。しかし、その痛みがときめきに変わるのだろうね」
「そっか、あれはときめきの痛み……ぽっ」
皆の集まる部室で二人はその時の出来事を辻は自慢調に、山瀬は照れながら(?)語っていた。
やっぱり俺と常久は呆れるしかできなかった。とりあえず俺からは言わせてもらおう。
お前らそろいも揃ってバカだろ?
### 9.ちょっしたやってみたい事 ###
それなりに興味があるといえば興味がある。
時々あの辻に召集されて服飾同好会なんて名前のついたコスプレ同好会(主にエロい系)に参加させられて、変なコスチューム着せられて、恥ずかしい思いはしている。
が、その一方でどうせ女の体になったのだから色々やってみたい事があるのは事実。
あいつはそういうのも他のやつらと共に実行しているが、俺はどちらかというとこっそりやってみたいというタイプ。
まあその、そういう趣味とか嗜好を持ってると思われたくないだけだ。
今日は休日。家族は外出しており誰もいない。実行するには好都合。
外から見られないように自室のカーテンをしっかり締める。念のため外を確認。よし、こっちを見ているやつはいない。
そして身につけている服を脱いでいく。学校があれば下着もきちんと女物にするが、今日は休みだからそのあたりはいい加減で、男物の普段着姿。
普段着を脱ぎ捨てたらその下にあるのは、男物のトランクスを穿いた女体。
ただ、揺れる胸だけは何とかしたいのでブラはつけている。トランクスとブラとはなんともミスマッチ。
それも脱ぎ捨てる。いわゆる生まれたままの姿になった。
それを姿見で確認。見慣れている自分の女の体とはいえ、男の本能のせいで毎度のごとく見るとドキドキしてしまう。
そして手にしたのは、あらかじめ用意してあったエプロン。
白一色の、所々にフリルのあしらわれたある意味王道のタイプ。
それを裸になった自身の体に、身につけた。
そう、男たちがあこがれてやまない裸エプロン!
いやあ、辻にやらされたことはあったけど、あの時は恥ずかしいって思いしかなかったなぁ。
だけど改めてこうして自分でやって、自分のその姿を鏡で観賞すると、いやぁいいね。
くっきり現れた胸の谷間。ちょっと激しく動いたらこぼれてしまいそうでそれがまたそそられる。
下はちょっとめくれてしまえば女の子の大事な世界。
わざと自分でちょっとたくし上げてみて、見えるか見えないかきわどいところで手を離す。きゃっ、恥ずかしい。
そしてゆっくり回ってみれば、後ろはお尻が丸出し。キュートなお尻が魅惑的だ。
こんな姿で彼女が料理作ってくれたら、確かに最高かもね。
もしくはこんな姿で出迎えてあの決め台詞をいうってのも。そ、そうだ、ちょっとやってみよう。
鑑を向き、そちらに視線を飛ばしながら、そのセリフを言ってみた。
「ご飯にするぅ? お風呂にするぅ? それとも、ワ・タ・シ?」
さ、最高だあぁぁっっっ!
「……何してんの?」
「はっ!?」
いつの間にやら俺の部屋の扉を開けて、常久がそこに立っていた。
そして鏡に向かって何かしている裸エプロン姿の俺を見て、呆れてるな。
「な、何故そこに?」
「いや、ノックしても出てこなくて、それで鍵開いてたから入ってきたんだけど……」
し、しまったあぁぁぁぁっっっ! 家の鍵まで確認するのを忘れていたあぁぁぁっっっっ!!
「で、何してんの?」
呆れ顔、そしてこいつ何考えてんのと顔に書いてある常久が改めて俺に尋ねなおしてきた。
「ちょ、ちょっとサービスを……」
「誰に?」
### 10.ちょっしたやってみたい事2 ###
それなりに興味があるといえば興味がある。
どうせ女の体になったのだから色々やってみたい事があるのは事実。
辻はそういうのも他のやつらと共に実行しているが、俺はそういう趣味とか嗜好を持ってると思われたくないからこっそりと。
今日は休日。家族は外出しており誰もいない。実行するには好都合。
外から見られないように自室のカーテンをしっかり締める。念のため外を確認。よし、こっちを見ているやつはいない。
さっき鍵は確認してきた。前回は鍵をかけていなかったせいで常久が入ってきちゃったからな。
安全確認(?)を終えたところで身につけている服を脱いでいく。普段着も下着を脱ぎ捨てて、いわゆる生まれたままの姿になった。
それを姿見で確認。見慣れている自分の女の体とはいえ、男の本能のせいで毎度のごとく見るとどぎまぎしてしまう。
そして手にしたのは、一枚のショーツ。
普段女の体の時にはいているやつだ。用意したのは縞々柄のある意味王道、オーソドックスなデザイン。
大人な柄物もいいけど、こういうのも確かに女の子らしいというか可愛らしくていいよな。
それをどうするか。これを穿くことに変わりはないのだが、今日はちょっと違う。
普通なら当然のように足を通すのだが、そうではなくそれを胸に近づけていく。
俺の自慢のFカップ。左右の果実をショーツの足を通すところにそっと通してやる。と、
こ、これぞおっぱいにパンツで『おっぱんつ』!!
某サイトでたまたま見つけたこのスタイル。普通だったら見てそれで終わりだが、俺は男でありながら女にもなる事のできる体。
それを見た時、実際にやってみたいという思いに駆られてしまったのだ。
実際にやってみると、なかなか上手くフィットしているじゃないか。
元々ショーツは俺の足とお尻を包み込むことのできるサイズ、収縮性をある程度持っている。
俺の足の太さとFカップはほぼ同じサイズなのだろうか、上手いこと通った。
それでいてショーツ自体の収縮性のため俺のおっぱいをきゅっと締め上げる。ブラをつける感覚とは全然違うが、これはこれで支えが利いてそうだ。
なによりも本来はお尻を包み込むショーツがこんなところで機能しているのは、いやはや興奮するねぇ。
が、人がそうして楽しんでいる時にやっぱり邪魔は入る。
「蔵本ぉ、呼んでも出てこなかったし鍵かかってたからピッキングして入ったぞ……って?」
そんな非常識な仕方で入ってくるのは案の定、辻(今日は男)だった。
しばし硬直。突然の珍入者に振り返り、自分の恥ずかしい姿を見られたことへの焦りと恥ずかしさが混みあがってくる。
一方で辻は俺の姿をしばし見つめた後で……
「しまったあぁぁぁっっ! その手があったかあぁぁっっっ!! が、しかし俺の場合は胸がでかすぎて出来ぃぃんっっっ!!」
よかった、こいつがバカで本当によかった。
### 11.異常事態 ###
私立帝越高校の生徒および教職員はその学校に籍を置いている間、半周期的に性別が変わる。
性別が変わるタイミングは朝起きたら…というパターン。クラスメイトの辻によれば寝ている間に変わるのであって、タイミングによっては昼寝でも変わるらしい。
最初の頃はそりゃあ朝起きたら女になっているのはびっくりだったが、今となってはさして驚きはしない。
ああ、今日は女なんだ、ぐらい。
昨日までの男の胸板が実った果実になっていたとしても、下の男のシンボルが消えて女の割れ目になっていたとしても驚きはしない。まあ、興奮はするけど。
だかしかし、今日は違った。
「なんだ、これ?」
いつものように朝起きて、体の違和感を感じ鏡の前に立つ。普段であればそこに見慣れた女になった自分の姿が映るのを確認するだけ。
だがしかし、今日は違った。
目が覚めて女になっていた場合、俺のFカップの胸のせいで胸部が圧迫されるのを感じるのだが、それが今日はやたらと負荷が大きい。
妙な圧迫感を感じ目が覚め、下を見て自分の胸をすると……異常事態が起こっていた。
それを見て多少寝ぼけていた頭は一発で目が覚め、あわてて鏡の前に立って先ほどのセリフを発した。
胸が、とんでもないサイズになっているんですけど。
イメージはビーチボールを二つくっつけたかのようで、とにかくデカイ。
それでいて綺麗な曲線を描いて変に垂れてなくて、先っちょの乳首も綺麗なピンク色で……デカイけど、美乳。
こういう綺麗な乳は好みといえば好み。だけどちょっとでかすぎる。
辻もやたらとでかいが、少なくともそれぐらいはある。ひょっとするとそれよりも大きいかも。
しかしこれはおかしい。俺ら生徒含め教職員が女になった時の姿は基本的に変わらない。
だから俺が女になった場合はすらっとした細身のFカップ美人だし、常久は平均的かわいい女の子だし、辻はPカップ非常識爆乳だし。
つまり俺が女になって、その姿を鏡に映してもこんな姿が映るはずはない。
一体どうなってんだこれ。俺もついに辻と同じレベルまで落ちてしまったのか?
いや、そんなことはいい。とにかく今問題なのは……
「……重い」
こんな胸、支えられるブラなんてねえよ。
登校してみたらこの異常事態は俺だけに起こったものではないことが分かった。
他のクラスメイト達も同様、何かしらの異常事態が体に起こっていた。
俺みたいに胸がやたらとでかくなっているやつ、逆にペッタンコになっているやつ、ずいぶんと身長が伸びて180cmに達しようとしているやつ、逆に妙に小柄になっているやつ、やたらと髪が伸びていたり、妙に筋肉質になっていたりと変化は様々。共通しているのは全員が女になっているということか。
どういう仕掛けかは分からないが、普段は男女比がほぼ同じになっている。例えば誰かが女になったら女になっていたやつは男に戻る、ってな具合に。
もちろん多少のぶれはある。といっても全員が女になっているってのは今まで一度もなかったはずだ。
まあ、今日の出席率はずいぶんと少ないから欠席しているやつがどうなっているかはわからないけど。
多分そいつらも同じように体に何かしらの異常が起こっているんじゃないだろうか。それで登校を止めたといってもおかしくはない。
ちなみに俺も学校を休もうかとは思ったが、何とかなるかと思って登校していた。
まあ、苦労はしたけど。一番の問題はYシャツのボタンがなかなか締まらなかったこと。
もち普段のYシャツはFカップを収めるため胸囲に余裕があるのだが、それでも今の胸(推定Pカップ)を収めることは困難だった。
だからさらしを巻いてブラの代わりとして、何とか締め上げてYシャツを閉じているのだが……やっぱり苦しい。
今になって休んでもよかったかなと思っていた頃、ガラガラと音を立てて教室の扉が開いた。
入ってきたのは当然ホームルームを始めるためにやってきた担任の植松鉄平先生、なのだが……
ぺたぺたぺた。
うん、歩く音はその擬音が似合っているな。
40歳の中年担任も女になると元の印象は全くない、小柄な女の子になるのだが、今日はさらに輪をかけて小柄になっている。
顔の感じが同じだから同一人物で間違いないと思う。しかし、普段は小柄とはいえ45cmぐらいはあるだろう身長もさらに小さくなっている。
目測で130cm、いやもうちょっと低いかも。胸はまっ平だし、背中までのロングヘアが今日は腰の下まで届いてるし、おまけに元の服を相当無理して着ているせいなのか、ぶかぶか状態。
子供が無理して大人の服着ている図そのもの。スカートなんて今にもずり落ちてしまいそうで、心配でしょうがない。
「きゃんっ!」
ああ、いわんこっちゃない。案の定ぶかぶかのヒールがすっぽ抜けてつまづいてるじゃないか。
この姿を可愛らしいと思うやつもいるかもしれないけど、あいにく俺はそういう気持ちよりも頼むからちゃんと体にあった服着てくれと思ってしまう。
あ、人の事いえないか。
とりあえず体制を直して教壇に立ち、一歩隣に移動すればいいものを無理して背伸びして教卓から顔を出してぷるぷる震えてる担任が口を開いた。
「皆さん、大変でし!」
……でし?
「もう分かっているかもしれませんが、皆さんの体に変なことが起こっているでし。みんな女の子になっちゃって、そしていつもの体とは違っているでし。それはナノマシンの暴走でし」
ナノマシン。入学の時に注射されて、俺たちの体の中にいる、女の体にしているやつか?
「そのナノマシンが暴走して、みんなの体に悪さをしているみたいでし。原因は分からないけど、今学校の技術スタッフが総力を上げて調査中でし。だからその間は休校でし。自宅待機でし!」
なるほどね。細かい仕組みは分からないけど、俺たちの体を女にしているなのマシンが一斉におかしくなったと。
ならば納得。そもそも人の体の性別を変えるなんて大仕事しているんだから、ちょっとぐらいおかしくなっても不思議ではない。
まあ、極端に悪い方向にはなってないから今のところは大丈夫か。いや、ひょっとすると今来てないやつらがおかしなことになっているかも。
手が刃物になっていたりとか、動物になっていたりとか、うにょうにょの触手がいっぱいとか……うわ怖っ!
想像するんじゃなかった。仮に自分がそんな姿になっていたりしたら……最悪だ。
そうなっていないことを祈ろう。ひとまずここにいるメンバーで見ればちょっと人より特殊な体系になっているだけだ。そのぐらいなんじゃないかな、ナノマシンの暴走って。
だから後は人それぞれの受け取り用。大事をとって学校休んでいるだけかもしれないし。
うん、余計な心配は止めておこう。これ以上考えたら夜寝れなくなりそうだし。
「ふにゃんっ!」
そんなことを考えていたら教職員室に戻ろうとしていた担任が目の前でまたしても転倒していた。
むしろ今はこっちの方が心配か? この人の場合は頭の中までなのマシンでやられてそうだし。
休校、自宅待機。一部の生徒にはそれは魅力的な言葉に聞こえたりする。
自宅待機といっても生徒たち全員がそれを守るかといえば、そうではない事はよく分かる。
休校にかこつけてどこかに遊びにいってしまうやつなんて一人や二人いるだろう。
まあ、現状だとそんなことできるのはごく一部のやつだけ。その一部のやつは今回の騒動では比較的まともな体になっているやつらだろう。
例えば胸がちょっと小さくなったとか、背がちょっと変わったとか、その程度のやつら。
その範疇だったら一般人と身体的特徴はさほど変わらない。むしろ普段に比べて胸が小さいから目立たなくなったとか?
それとは逆に極端に背が変わったとか、髪が伸びたとか、筋肉質になったとか、俺みたいにやたらと胸がでかくなったとか、そういう場合はむやみに外出できないだろう。
なにせ目立ちすぎる。そんな姿道行く人の視線を集め、気になって仕方ない。
俺もその枠に入る。でかくなりすぎた胸は登校している間でさえ道行く人の視線を集め、気になって仕方がなかった。
だから俺は「休校だって、ヤッター」と喜んで遊びに行くというわけではなく、家で大人しくしていたかった。
なのだが、その願いもかなうことはなく外出し、とある場所にいる。
その理由はというと、例のごとくあいつに呼び出しされたからだ。あいつに。
「いやはや、皆の衆。よくぞ来てくれた」
それが感謝の言葉なのか、はたまたバカにしているのか、それともいつもの通り何も考えてない超マイペースなのかはわからない。
とにかくはっきりしているのは俺たちいつものメンバーは辻に呼び出され、その自宅に集合しているという事実。
知らなかったのだが辻は一人暮らしだった。新しくも古くもない、広くもない狭くもないアパートの一室が辻の現住所。
初めて入った辻の城は意外にもこぎれいできちんと整頓されていた。しかし所々マニアックというか、悪趣味というか、そういう代物があったりするのだが。
何があるかって? そんなの口にもしたくない。
「さてはて、学校側の説明によればナノマシンの暴走によって異常事態に陥ってしまったのだが、いやはやとんでもないことだ」
何がとんでもないことだよ。その顔にははっきりとこんな面白いこと他にはない、って書いてあるじゃないか。
結局今日だって集めたのは俺たちがどんな面白い体になったのか調べたいだけだろうが。
「して、蔵本は爆乳になったのか」
「ああ」
畳にあぐらをかいて座っていた俺はかったるい感じで答えた。
学校ではYシャツに何とかこの胸を収めるため、サラシを巻いて縛っていたのだが苦しかったので今はさらしは外して開放している。
さらにいえば一旦自宅に帰ってからの呼び出しだったので今着ているのは普段着。一応下は女物のショーツに短パンだが上はノーブラでパーカーを直に着ている。
なにせ普通の服は胸が邪魔しすぎて着れない。前開きのやつで多少ゆったりしているやつで強引に収めるのが一番まともだということだ。
それでもチャックを閉めたままにしているのはちょっと苦しくて、おまけにすれ違う野郎共の視線がうざったい。
今は辻の家の中でいつものメンバーということもあってか、チャックは外して楽にしている。まあ、どうせこいつら辻の胸で見慣れているから大丈夫だと思うし。
「では早速サイズを確認」
「どわあぁっ!?」
油断大敵。背後に回った辻が俺のパーカー一気に脱がせやがった。
「な、なにしやが……」
「あー動かないで。サイズが測れないから」
そういって辻はどこからかメジャーを取り出しててきぱきと俺の胸を測ってる。そして本当に手際よくあっという間に測定は終わった。
「うむ、トップが125でアンダーが70。ということはSカップか」
うわ、辻のPを越えた。それにしてもSカップとは、まるでどこかの栄養ドリンクみたいじゃないか。何なんだ俺の胸。
まあ。ここまででかくなるとPとかSとか大差ないような気がしてくるけどな。
「うわぁっ、蔵本先輩すごいにゃっ」
「って、うわっ! やめんか山瀬っ!!」
今まで様子をうかがっていたであろう後輩の山瀬がいきなり抱きついてきた。俺の胸に。
そして俺の谷間に埋もれてふにゅふにゅしている。俺の胸が気持ちいいらしい。
そんな事される俺はたまったものではない。巨乳は感度が悪いとかいわれているけど、やっぱりこんな事されちゃったら感じるものは感じちゃう。
むにむにすりすりしてくる山瀬のせいで俺の頭の中に快感物質がポンプの要領で胸から送られてくるように感じてしまう。
女になった山瀬の体は小さい。だからその姿はまるで優しそうなお姉さんに子猫ちゃんがじゃれついてくるような感じで……
子猫ちゃん?
ふと山瀬の姿に気になるものを見つけた。山瀬の現在の服装は普段着。下はミニスカートにオーバーニーソックス。上は俺みたいなパーカーでフードをかぶっている。
そのミニスカートからぴょこんと出てきているものがあった。
「……尻尾?」
お尻の部分、ミニスカートの中からひゅるりと生え出てきて、ぴょこぴょこと動いているフサフサの黒くて先っちょが白い色したひょろ長いもの。
それはどう見ても、尻尾だった。
「あ、えーっと僕の場合は……こんなのになっちゃったにゃあ」
ぱさ、とフードを取ってみたらその中にあったのは、ネコ耳。
「ネコ娘?」
フードの中にあったのはどう見てもネコ耳。真っ黒だけど尻尾同様に部分的に白い色がある。
髪の毛の間からはえ出てきて、それもやっぱり尻尾同様にぴょこぴょこ動いている。
よく見たら元々耳のあった部分が変化している。うん、どうやら外見だけではなくて、耳の機能もちゃんと猫になってしまっているようだ。
ということは猫同様に聴覚がすんごく良くなっている?
耳は完全に猫になっているものの、さすがに目は猫目にはなっておらず普通の人間の目をしていた。
なんだかやたらと似合っている。元々小柄で子供っぽい感じがしていたからネコ娘が余計に似合っている。
「はっはっは、でかしたぞ山瀬君。こんな見事な姿は普通ないぞ」
やはり俺にむけたのと同様に辻の魔の手が伸びる。興味の対象はやはり耳か。俺も触ってみたいと思っていたのだが。
「ふにゃあぁ……あんまり触らないでにゃあ」
にゃあ?
「うむ、俺が指導した通りちゃんと語尾に『にゃあ』をつけてくれてるようだな。しかし今のはちょっと不自然だ」
「うう、すいません……」
なんだ、辻の演技指導か。俺はてっきり担任の植松鉄平同様に頭がおかしくなったんじゃないかと思ったよ。
ん? そうするとあの担任は一体どういう理由で語尾に「でし」なんて言葉がついてたんだ?
うん、可能性としては山瀬には何の問題もなかったけど担任には脳まで狂わせる何かしらの影響があったのかも。
もしくは同じように意図的に語尾に「でし」をつけていたかもしれない。だとすると一体何故?
「そういえば先輩はどうなったッスか? 体の変化」
普段どおりの「ッス」を語尾につける話し方に戻っているな、山瀬君。
別に語尾が「ッス」だろうと「にゃ」だろうと「ぷぅ」だろうと違和感のある話し方されない限りは別にいい。
まあ、「ッス」っていうのも不自然といえば不自然だが。
「ああ、俺の変化だね。山瀬君ほどではないが少々特異なものにはなったがね」
その話し振りはようやく自分に話がやってきたか、待ってました! という感じ。自分の変化を見せたかった感じが結構強い。
多少の満足感を覚えているような表情を浮かべながら辻は自分の服を脱ぎ始めた。
辻が着用しているのも普段着、やや大きめのYシャツとデニム地のミニスカート組み合わせ。ミニスカートは限界ぎりぎりまで短く、下手すれば中のお尻が見えてしまいそう。
さっきチラッと中が見えてしまったが、かなりえぐい下着を穿いていたような……
そのYシャツのせいでミニスカートが見えるか見えないぐらいかで隠れている。角度によっては裸にYシャツスタイルに見えてしまうが、ひょっとしてそれを狙っているのか?
やや大きめのYシャツを着ているのは自分の馬鹿でかいバストを納めるためだろう。俺もこの胸になってその理由がよく分かった。
ただ、今日はちょっと違っていた。普段なら破壊力のある二つの爆弾が胸を押し上げているのだが、今日はちょっとボリュームが少なくなったように見える。
なんというか、平らになって全体に広がった? ブラジャーをしていないのだろうか。
もっとも、それが辻に起こった体の変化であることはYシャツを脱ぎ捨て、下着を着けていない胸をあらわにしたことによって分かったのだが……
「げ……!」
確かにボリュームは少なくなった。
ビーチボールが二つくっついていたような胸はちょっとしぼんでいる。それでもバレーボールぐらいはあるだろうか。
とは言うものの総体積は多分同じぐらいかもしれない。はっきりくっきりとした綺麗な丸みを帯びた形をした胸が……四つ。
「ふ、複乳……!!」
二次元とか空想の世界でしか存在しないものがそこにあった。
人間の体の乳は二つ、胸の膨らみは二つ、おっぱいは二つと決まっている。動物だったら大きな乳があって乳首が複数、っていうのもあるが。
だが辻は当然人間だ。なのに、そこにある乳は四つもあった。
そんなの現実世界には普通存在するはずもなく、あるとしたら二次元の世界や特殊メイクで作った映画とかでしかない。
しかし辻はそれを現実に持って来てしまった。いや、自分の意思でそうしたわけではないことはわかってはいるけど。
何が山瀬君ほどではない、だ。それ以上に特異じゃないか。
「す、すごいッス。先輩四つもおっぱいがあるなんて」
「はっはっは、うらやましいのかい山瀬君」
後輩の山瀬は喜んでいた。どうやら彼はおっぱい好きらしい。
しかし俺は違う。そりゃあお俺だって男だし(今は女だけど)、女の人のおっぱいを見れはそれは確かにそそられるよ。
だけど非現実的なこういうもの持ってこられては、俺には無理。
やっぱり気色悪い、そうとしか見れない。
「しかし残念なのはここにいる全員が女になっているということだな。」
俺が嫌悪感をあらわにしているのだが、辻もある程度の難色を示していた。
「それのどこが残念なんだよ?」
一応聞いてみる。
「うむ、この胸なら四方向同時パイズリなんてこともできたはずなのだが、全員女ではそれも無理だな」
自分の上二つの胸をもにゅもにゅしながら残念がっている。下二つはあまっている。
こいつの難色はその程度の問題かっ!
「うう、残念ッス。できれば先輩のおっぱいで『一人でダブルパイズリ』を体感したかったっす」
「む、確かにそういう事もできたな。いやしかし残念」
後輩は先輩の辻についていっていた。悪い、俺は無理。
あれを平気で受け入れられる後輩の山瀬はどうやら精神的に強いというよりもバカな部類に属するかもしれない。
俺はある程度は正常だ。リアルのネコ耳娘といい、複乳といい、俺はそれを受け入れられるほどバカでは……いや、精神的に強くはない。
頭を抱えてしまうこの状態に、最後の一人の存在を忘れかけていた。
今までの展開をベッドに腰掛け、唖然としながら見ていたのは常久。
「そういや常久はどうなったんだ?」
「へ?」
俺の言葉に我に返ったのか、ぼうっとした顔からようやく普段の顔に戻ったような気がする。
俺の常久に対する呼びかけに今まで乳繰り合っていた、いや乳いじりしていた辻と山瀬もこちらに注意を向ける。
「え、いや、僕は特に変化はなかったよ。ははは……」
棒読み。怪しい、怪しすぎる。それは俺だけでなく辻と山瀬も気がついたようだ。
確かにこの異常事態は全員に生じたというわけではないかもしれない。人によっては何にも起こらなかったってこともあるかもしれない。
実際常久もこうして見ている分には全く外見的な変化がない。
こちらも同様に制服から着替え、ロングシャツとハーフパンツというスタイル。
しかし、常久の表情はどう見ても何かを隠している。引きつった笑顔、上ずった声、ごまかしているのは明白だ。
そしてさりげなく押さえているハーフパンツ。なるほど、あそこに何かがあるらしい。
それは色々と感のいい辻も悟っていた。
「ゆけ皆の衆! 彼奴の下半身をひん剥くのだ!!」
指図されるのは癪に障るがまあいい。皆の衆といっても俺と山瀬しかいないし、結局辻も参戦しているから3対1だ。
「わああぁっ! 待て、待てえぇぇぇっっっっ!!」
常久もじたばたもがいて何とか抜け出そうとしているが数では圧倒的な差がある。これではどんなに頑張っても結局は時間の問題だ。
そして時間も大してかかることなく、あっさりと常久の下半身をひん剥くことに成功した。そしてあらわになったのは……
ぴーんっ
「………」
「………」
「………男だねぇ」
ぽつり、とつぶやいたのは辻だったか。常久は顔を真っ赤にしてゆでだこ状態。まあ、服脱がされたら誰だってそうだろうけど。
問題のその下はどうなっているかというと、辻がつぶやいたとおり男があった。
そこにあったのはそれはそれはもう立派な男の象徴。おちんちんですか。
皮の向けた、血管の浮き出たそれはそれはもう立派なもので、かなりでかいです。小柄な山瀬の腕ぐらいありそう。
何度か常久とはやっているから分かるが、これって普段の男のときよりもずっと大きいんじゃねえか?
そいつはしっかりとボッキしている。まあ、よく考えれば半裸の女性たちが三人も襲い掛かってきたのだから下半身が反応していてもおかしくはない。
こんなものをしまいこんでいたのか。しかし下着はちゃんと女物のショーツ。何で男物のトランクスじゃなくてこれにしたんだ? 勃起してなくてもさぞかしきつかっただろうに。
「どうなってんだ、これ?」
まじまじと常久のそれを見て俺が一言。
「ふ、フタナリってやつッスか?」
ちょっとワクワクした感じて山瀬がいった。
「ふむ、玉はない、女の部分はちゃんとある。フタナリだな」
よく分からないが、とにかく常久の肉体は男と女が両方ある特異なものになったということは分かった。
しかしまあ、さっきのネコ耳娘とか複乳とかに比べるとこっちの方が妙に現実味を帯びている気がするのは気のせいか?
俺も感覚が麻痺してきたか? この三人のに比べたら俺の爆乳なんて普通に思えてきてしまう。
「これって、男と女を両方同時に味わえるッスよねぇ」
「なるほど、クリトリスが隆起してペニスになっているようだな。お、濡れてきている」
呆れている俺とは異なり、辻と山瀬は盛り上がっていた。こんな非現実的なことで盛り上がっているだなんて、やっぱしこいつら同じような思考回路しているみたいだ。
「……んっ……な…」
ん? なんだか顔を真っ赤にしていた常久がフルフル震えてますよ。そして何かいったような。
「どうした、常久?」
「…………ない」
「へ?」
「我慢、できないっ!!」
下をのぞきこんでいた辻と山瀬を振り払うようにして身を起こし、目の前にいた俺に一気に襲い掛かった。
「どわっ!?」
突然の出来事に俺は対応が遅れ、いとも簡単に常久に押し倒されてしまう。
ていうか、すげえ力が強いんだけど。ひょっとして下半身の一部分だけが男になっているんじゃなくて、身体能力も男になっているとか?
「一度火がついたら、我慢できないんだよっ!」
「へ? え? んっ……!?」
押し倒された俺、そして視界には危ない目をした常久の顔が迫り、無理矢理キスをする。
下にはギンギンにボッキしたペニス、それが俺のお腹に当たっている。
熱い、そして先端からは我慢汁があふれているのが分かる。
「こいつのせいで、朝からおかしくて、抜いても抜いても落ち着かなくて、やっと抑えていたのに、お前ら……」
え? あの、常久さん? 目が怖いんですけど。
「竜介っ! 責任もって犯させろっっ!!」
だあぁぁぁっっ! 責任ってなんだよっ! お前らといっておきながら俺だけかいっ!
「うーむ、石井君がキレてしまった」
「普段大人しいだけに、なんだか怖いねぇ」
こらそこの二人っ! 眺めているだけじゃなくてなんとかせんかっ!!
心の中で叫んだところでこいつらは一向に手助けしてはくれない。そういうやつらだとは分かっていたけどねっ!
結局自分ひとりで何とかしなきゃいけないにしてもどうにもならない。俺は女の体で、常久はどういうわけか女の体なのに力は男のときぐらいあるし。
それ以前に力のあるなしにかかわらず押し倒さて全体重かけられた状態では何もできないことに変わりはない。
俺にまたがる常久は乱暴に俺を襲い始める。
手始めとばかりに攻めてきたのは俺の胸。あまりにも大きい胸だが常久は力を入れ俺の胸を攻めてくる。
強引にこね回すようにして攻めてくるから痛い。しかし、それにもかかわらず俺はわずかに感じてしまっている。
「はぁ、はぁっ。竜介の、胸……」
なおも続く力技。痛みは段々と薄くなって、快感が増えてくる。巨乳って感度悪いと言われているのに、結構感じてるじゃねえか。
やばい、なんか胸が変な感じになってきた。これもしかして、胸でイッちゃう!?
何かがこみ上げてくる。イクのかと思った時……
どぴゅっ
「………」
「………」
「………」
「………へ?」
常久も、辻も山瀬も、そして俺も固まった。
常久が揉み続ける俺の胸の先端から、白い液体が勢いよく吹き出てきたからだった。
とろりと流れる白い液体、あたりに立ち込める甘い香り。
え? ちょっと待て。これまさか、母乳?
「ははっ、すごいな竜介。母乳が出るのかよ」
力を入れて常久が揉むたびに先端から勢いよく出てくる母乳。爆乳になっただけでなくこんなオプションがついてるなんて。
「うっ……」
今だ力を抜くことのない常久が体制を変える。俺の胸に接近して直接口をつけた。
右の胸に吸い付く常久。つまりは、俺のおっぱいを飲んでいる。
「んっ、んんっ……ぷはっ。いい味してるじゃん竜介の」
ぺロリ、と舌で口元を舐めるしぐさは色っぽい。その口元についているのが自分の母乳であることを一瞬忘れ、どきりとしてしまった。
「ぼ、僕も飲ませてほしいっす!」
常久だけじゃない、山瀬も余っていた俺の左胸に吸い付いてきた。
「うわわっ! ちょっと、二人とも……っ!」
二人のでかい赤ちゃんが俺のでかい胸に吸い付く。口で吸い、さらに効率よく出すために俺の胸を力を込めて揉み続ける二人。
しかし俺はたまったものではない。ただでさえ敏感な乳首に二人して攻め立てられ、乳を吸われ、そして経験したことのない射乳の感覚に俺は戸惑っていた。
赤ちゃんに乳を吸われているのってこんな感じなのか? 多分ちょっと違うと思う。赤ちゃんに乳吸われてイキそうになったなんて話は聞いたことないし。
それは下で起こっていることも関係しているかもしれない。山瀬は女の子の割れ目を俺の太ももにこすり付け、常久は男のアレをこすり付けている。
微妙な固さの感触に俺もドキドキし、それが胸の快感へとつなげているのかもしれない。
「んっ、んうっ……ダメだ、出ない」
一方で一人その輪から外れている辻は先ほどから自分の四つの胸を器用に揉み続けていた。
どうやら俺に対抗して自分も母乳が出ないかと思って揉んでいたらしい。いや、出るほうがおかしいから。
それに気がついていたのは俺一人のようだ。二人は俺の乳を吸うのに夢中になっている。
ああ、やべえ、気持ちいい。今度こそ本当に胸だけでイッちゃいそうな気がする。
そう思っていた時、すっと常久が離れて行った。
常久の離れた右胸からは多少の勢いがついたミルクがちょっとだけどぴゅっと出てきた。
終わったのか? と思っていたけど、そう簡単に常久の性欲が収まるわけはない。
「竜介ぇ、今度は俺のミルク、飲んでよ」
今も左胸に吸い付いている山瀬をお構いなしに俺の谷間に物体が突っ込まれる。
「うぐっ」
「早く舐めろよ、僕のおちんちん」
これだけでかい胸の谷間だから普通は埋もれてもおかしくないはずなのに、そいつは谷間の下からあっさりと俺の口にまで届いてしまった。
口元に突き出される常久のペニス。独特のつんとくる匂いが鼻につく。
仕方なしに口を開いてしゃぶり始めるけど、やっぱりでかい。結構口を開けないと入らないんですけど。
「はあっ、あぁっ、竜介のおっぱい、気持ちいい……」
「ちょ、ちょっと! 石井先輩痛いって!」
ぐりぐりと強引にバストがもみこまれているけど、なんか痛いと思ったら今だに吸い付いてる山瀬の頭ごと揉んでるじゃないか。
抗議の声が上がるはずだ。ていうか俺も言いたいよ、痛いって。
「じゃあどけばいいだろ。ほらっ」
「ふにゃんっ!」
あ、山瀬がつまみ出されてしまった。
「ふえぇぇんっ、石井先輩がいじめるよぉ」
泣きついた先は当然のように慕っている辻……の、おっぱい。
「おーよしよし。意地悪な先輩だねぇ。でも俺は優しくしてあげるよ。ほら、ミルクは出ないけど存分に吸いなさい」
「先輩……ふみゅっ」
どうやら山瀬はそれで癒されたらしい。自身を抱き寄せる辻の胸の中で安らかな様子で辻のおっぱいを吸い始めている。
辻も辻でご満悦な様子だ。あれか? 母性本能ってやつか?
なんだかぱっと見は和やかな光景だけど、よく見たら変態的というか、異様な光景にも見える。なにせ複乳だからな。
「あっちはあっちで楽しんでるみたいだな。こっちも楽しむよ、竜介ぇ」
そして目の前の現実に引き戻される。あっちがほのぼのならばこっちは虐待だ!
俺の押し倒された状態は続いている。谷間にペニスを突っ込み、俺に強引にフェラさせているのはどう見たって虐待だ。
多分本人にはそんな意識はないだろう。もう性欲に任せて俺を襲っているようにしか見えない。
多分アレだ、酔いが覚めてものすごく後悔するタイプ。その酔いが覚めるのはいつのことやら。
「んあっ、ふぁっ……ああっ、おちんちんがぁ、おちんちんがいいよぉ」
常久の現在のペニスはとにかくでかい。多分馬並みのペニスってこういうのをいうのだろう。
そんなものが女の子(?)の股間についているのは、どう見ても異様な光景。
その女の子である常久は柔らかい乳房に挟まれる常久のペニス。本人はずいぶんと気持ちいいようだ。
確かに硬いペニスが柔らかいおっぱいに挟み込まれるのはなかなか気持ちいい。お互いに大きいとなってはなおさらなのだろうか。
一方で女の立場、おっぱいの側の俺はどうかというと、もう何もかもがすごすぎる。
妙なまでに熱くなったペニスが俺の谷間の中で暴れまくってて、おっぱいも揉まれ続けて熱くなっている。
さらには口に突きつけられてフェラを強要されている先端も俺をその気にさせていく。
女の体って男の匂いに弱い。相性がいいとその香りもやみつきになってしまって、夢中にさせてしまう。
俺と常久は相性がいいみたいだ。俺は女の体で男の常久に抱かれるたびにこの匂いに魅了されてしまっている。
そして結局今も気がつけば夢中になってフェラしているんだから。
「んっ、くふっ……ふぁぁ………」
ああ、たまらないよこの匂い、味。男の時の冷静な頭で考えると何やってるんだ俺って思うのに女になると結局これなんだから。
胸の中でペニスが小刻みに震えている、そのわずかな変化を察知していた。
ああ、来るぞ。そう思った。
「あはぁっ、やばいっ………イクっ、イッくうぅぅっっっ……!!」
常久が達した。それと同時に先端から俺めがけて大量の精液が発射された。
俺の胸の中でどくどくと脈打ち、白い粘液を噴出していく。その時の常久の表情ときたら、ずいぶんとまあ気持ちよさそうで。
しかしその表情も俺の視界から次第にぼけていく。顔面にどんどん振りかけられていく精液のせいで。
明らかに標準よりも量が多かった。ガンガン顔面にかかってきて、まるで顔が精液で埋まっていく。
口にも入るし鼻にもつく。味やら匂いやらはっきりくっきり分かるほどで、ひょっとしたら顔なんて真っ白になっているんじゃないだろうか。
やっとおさまって来たと思ったら首から上がベトベト。よくもまあこんなに出したものだ。
「ふぁぁ……あぁ………」
とろんとした常久の表情。射精がそんなに気持ちよかったのだろうか。
腕ぐらいあるんじゃないかと思うぐらいでかい自分の馬並みのおちんちんをぎゅっとにぎってる女の子ってのはずいぶんとミステリアス。
「うん、すごい出たねぇ」
「ふむ、玉がないにもかかわらず濃いのが出たようだな。ひょっとして内蔵されているかもしれないな」
何を分析しているんだか外野の二人は。できればやられている俺をちょっとは助けてくれよ。
まあ、期待はしていないけど。
一方で常久の性欲はまだおさまっていない様だ。ここまできたら当然のように次の段階へと移行していく。
戦隊モノのお約束で一度敵を倒したと思ったらその敵が巨大化して、というぐらい定番の展開だ。
するするとバックする。俺の足の間に入り込む。そして馬並みのアレに手をかける。
かちゃかちゃと俺の短パンに手がかかり、脱がされていく。俺はそれを脱がされることに抵抗しなかった。抵抗したところで無駄だろうと思ったからだ。
「ははっ、竜介のココ、洪水じゃないか」
そんなの分かってるよ。さっきから散々俺のおっぱいでえっちいことされてるんだから反応するに決まってるじゃないか。
常久の指が俺のそこに触れるとくちゅくちゅといやらしい音を立てた。定番だな、これも。
定番だと言い放っておきながら俺も俺でちょっと期待していたところはあるし。
それと結構感じちゃってる。さっきの顔射に加え、まさかの射乳で体のスイッチはもう既に入っている。
俺もイキたいよ。いつものように、常久と俺と一つになって……
いや、ちょっと待て。
着々と欲望に従って用意している常久だが、俺はそれを見て現実に舞い戻った。
たしかに俺が女になって、常久が男のときは二人でエッチして、俺が常久のそれを受け入れて一つになっていたけど、今日は状況が違う。
そう、それはいつもの常久のとは違う。いつもの常久ではない。男の体で成人男性として平均的なサイズのそれではない。
今常久は女の体。それでいて下半身にある物体は……馬並み、子供の腕ぐらいの大きさ。
常久の手でにぎられて、俺の下半身に進入しようとして体制を整えているそいつは、かなりでかい。
ちょっと待て。あんなもの、入るのか?
「竜介ぇ、ひとつになろう……」
「い、いや、ちょっと待て。それデカすぎそんなもの俺に入る分けなくて入れたら裂けちゃいそうで……ぐああぁぁっっ!!」
俺の静止などまるで耳に入っていなくて、常久はそれを段取りどおり入れてきた。
「んはぁっ、竜介ぇ、きつい……」
「当たり前だお前のがデカすぎ……痛いっ! 痛いって強引に突っ込むなっ、あだだっっ!!」
ぐいぐいと侵入してくる馬並みの常久。明らかに普段のブツとは違う。
いや、言っておくけど普段のって言えるほど毎回のようにやっているわけじゃないからな。
しかし、痛い。
「あはぁっ……竜介の膣、きゅっと締まってて、気持ちいいよぉ………」
駄目だ、性欲全開で完全にトリップしてる。このデカいブツのせいか?
こりゃもう尽きるまでやらないと正気に戻らないかも。つまり、俺の痛みは早々簡単に終わらなく、勘弁してもらえそうにない。
ならば攻めてこれを気持ちいいように感じることができるよう努力するか?
幸いにして少しは痛みが治まってきた。後はもうちょと落ち着いて続けることができれば……
「んあ゛っ!?」
そうは問屋が卸さなかった。常久がそのデカいブツを突いてきたせいで更なる衝撃が俺の体に。
「竜介ぇ、もっと可愛い声出して喘がなきゃダメだよぉ」
無茶言うな、誰のせいだよ。
ていうか、今まで感じたことのないような快感になりそうな。
今までの標準サイズの常久だったらかろうじて子宮の入り口にたどり着いてその入り口を小突く程度。
しかし今の馬並みの常久は違う。子宮には余裕でたどり着いて(おかげで俺は苦しいが)さらに太いせいで子宮全体が揺さぶられるような感覚。
こんな感覚味わったことがない。衝撃がちょっと強すぎる。
しかしそんな俺の思いなど常久が感じるはずがない。やばい、これ続けてたら俺、おかしくなっちゃいそう。どこかでブレーキをかけてもらわないと……
「ひあっ!?」
と思っていたらブレーキがかけられた。ブレーキをかけたのはその後ろに立つ後輩、山瀬皇。
「ふあぁぁぁっっ。僕の、僕のおマンコに、シッポがあぁぁぁっっ……」
「ううっ、シッポから石井先輩の膣の感触が伝わってくるッス」
ああ、そういうこと。
後ろから何しているのかと思ったら山瀬が常久を犯しているのか。
この状況から察するに、山瀬のふさふさの尻尾をお尻から自分の股を通して前に出し、おちんちんに見立ててバックから、というわけか。
うん。さっき触ってみた尻尾の感触は毛並みがよくて、フサフサで、肌触りがよかったなぁ。
それが中に入ってくるとはどういう感覚だろう。ちょっと試してみた……い、いや、そんなことないぞ!
「はっはっは、いい感じでつながったようだな。美女三人が入り乱れるのは実にいい絵だ」
そして高笑いしている辻。大方こいつが山瀬にこういうことするように指示したのだろう。
まあいい、これでちょっとは常久もペースが落ちて俺も楽になるだろう。
「ダメえぇっ、シッポ気持ちいいっっ……腰が、止まらないよおぉぉぉっっ」
だああぁぁぁっっ。余計火をつけちゃってるじゃないかあぁぁぁっっ!
「うあっ、ふあっ……んあぁっ!」
繰り返されるピストン運動。馬並みによって突き上げられている俺は体の中からかき回されているようで。
今までに感じたことのないような強い衝撃、言葉で表現するならごりごりされているというのが近いか。
それが何倍にも跳ね上がって、痛みもあるけどそれを通り越して快感に化けている。
一線を越えてしまうと傷みも快感になってしまうようだ。Mってやつか? それとは違う気がする。
存在感のありすぎる常久のペニスは今だ健在。それは熱くなっていて、そのせいで俺の下腹部が熱く燃え上がっているようで。
「ふあぁ、駄目えぇぇっ……おちんちんと、おマンコがっ、同時にっっ………」
そういえば俺に挿入している常久は同時に山瀬に挿入されているんだっけ。
男と女を同時に感じてしまっているのか。同時ってどんな感じだろう。試して見たい気もするが、無理だろうな。
とりあえず表情を見ている限りは……気持ちいいんだろうな。
顔が緩みまくっとる。力がなく、しまりがなくて、なんかもう気持ちよさそうで。
「竜介ぇ……いいよぉ、竜介のおマンコいいよぉ」
こっちも気持ちいいらしい。だが俺はそれに痛みも混ざっている。
常久が突き上げてくるたびに俺は内側から強い衝撃を感じていて、それが痛みにも快感にも化けている。
ついでに言うとその衝撃が来るたびに俺の胸のSカップが暴れだす。
これ、仰向けに寝ていると本当に重い。今俺の上でプルプルと震えていて、多分見ているやつはそれに興奮するだろう。
だけど俺にしてみれば重いだけ。しいて利点を挙げると勝手に動くことで乳を揉まれているのと同じような効果が得られるというぐらいか。
そして揉まれているとそこに溜まっている母乳が少しずつあふれてくる。ぴゅっ、ぴゅっ、とちっちゃい噴水のように。
「そういえばこの存在を忘れていたよ。さて、俺も味わうとしよう」
ああ、お前の存在も忘れていたよ辻。とりあえず俺のおっぱいでも大人しく飲んでいろ。
「ああっ、イクっ、イクよおぉぉぉっ……」
唐突にその時は来た。常久が、果てようとしている。
ああ、俺もだ。この感じ、俺の女の体がイキそうだ。
「あっ、あぁっ……ああぁぁぁぁっっっっ!!」
常久が果てる。そして俺もまた。
最高潮の快感が渦巻く俺の体の中に常久の精液がどんどん噴出してくる。
その量はハンパじゃない。一体どこからこんなに出てくるのか、俺のおなかの中は既に精液でいっぱいになっている。
それでもまだでてくる。おなかがふくらんで、パンパンになっていく。しかも出口は常久のペニスで完全にふさがれているから溜まる一方。
まるで妊婦……とはいかないが、それでもずいぶんとお腹が張ってしまった。
ようやく出し終わったのか、ペニスが抜かれると俺の中からどろりと精液があふれ出てくる。
それと同時にふくらんでいた俺のお腹も平常に戻っていく。本当にずいぶんと出たようだ。
「ふあぁぁ……」
俺自身の快感も治まり、ため息がもれる。こんな経験したの初めてだよ。
もうくたくた。しばらくこのまま動かないでじっとしていたい。
「ふーむ、ずいぶんと気持ちよさそうだな。俺も試してみるか」
そんな俺の様子を見てうらやましく思うのは、辻意外にいないな。
とりあえずアドバイスしておく、やめとけ。本当に危ないぞ、これ。
結局ナノマシンの暴走理由はよく分かっていない。
単なるバグなのか、強力な電磁波の影響なのか、神秘の宇宙パワーなのかさっぱり分からないということ。
とにかくあの異常は本当に一時的なもので収まってくれた。
翌日になれば生徒教職員含めて全員が元の正常な体に戻っていた。もち男に戻っていたり女になっていたりと性別は違いがあるけど。
常久の馬並みも元のサイズだし、辻も複乳から元のPカップに、山瀬もシッポとネコ耳が消えているし。
俺もSカップの爆乳からFカップに戻って、まあとりあえず安心安心……と思っていたのだが。
「何故だ?」
なんかこう、胸が苦しいというか張っているというか、そんな感じがあったから鏡の前で触診していたのだが、これはどういうことだ?
きゅっと俺の乳を軽く搾ってやると、その先端から出てくる白い液体……母乳だ。
たしかにSカップの時にどういうわけか出てきてはいた。しかし今は元に戻ったはず。
ひょっとして、あの時出しきっていなかったやつが残っているのか?
うん、まだ出てくるな。とりあえずこれは……
「できるかな?」
そういえばあいつら散々俺のおっぱい飲んでいたけど、俺自身は一口も飲んでいなかったな。
いいよね? 俺のなんだし。
そーっとおっぱいを持ち上げてみる。柔らかいおっぱいが変形して、先っちょの乳首が俺の口元に。
「あ、できる」
自分で自分の乳首に吸い付き、吸ってみる。うん、出てくる。うまい。
その日の朝はひっそりこっそりと、自分のおっぱいの味を堪能していたのでした。
### 12.弟 ###
俺、蔵本翔(クラモトショウ)。れっきとした男です。
自分でいうのもなんですけど、俺も俺で男としていい年になりました。といっても老けてません、まだ高校入学前ですから。
この時期になるとやっぱり健全な青少年として興味のあることがあるんですよ。
思春期ってやつでして、クラスメイトの女の子がちょっと気になってみたり、女子の何の気もないしぐさにドキッとすることもあったり。
そして興味が深くなると女の人が裸でイヤンな格好している本にドキドキしたり、ネットでそういう画像を見てみたり。
すいません、色々やっちゃいけないことやってしまいました。
まあ、今の今まで家族は母親を除いて女性がおらず、そのため女性に対する耐性ってやつが希薄なんですよ。
だからそういうのに余計に興味があって、ドキドキしちゃうんだよ。……すいません、言い訳しました。
ただ、ここ最近になってちょっと状況が変わってきたことがありました。
俺の兄、竜介なのですが……
「ふぃっ、さっぱりしたぁ」
兄が風呂から出てきました。女の姿です。
俺もよく分からないのだが、何でも兄の学校の教育方針として一定周期で女になるのだと。
だからここ最近、兄は男で兄だったり、女でお姉ちゃんになっていたりする。で、今日はお姉ちゃんなのです。
「ふうっ」
どさっと俺の座っているソファの隣に兄……お姉ちゃんは座りました。
ソファに座ってテレビを見ていた俺の視線は必然的にそっちに移ります。
服はちゃんと着ています。中身が男だからといって裸のまま風呂から出てきたことはありません。
そういうイベントを期待していた弟の俺にとってはちょっとがっかりです。見事に期待を裏切ってくれます。
ただ、今の格好は服を着ているとしてもちょっとドキドキします。
風呂上りということもあってかラフな格好。上はタンクトップに下はホットパンツです。
ホットパンツから伸びている生足はすらっとしてて、無駄毛がなくてきれいです。
しかもホットパンツはぴったりのサイズで結構短いので、ちょっとだけお尻が出ているようにも見えます。
しかしそれよりも何よりも俺の視線を釘付けにしてしまうのは、そのタンクトップの中に実る二つの果実。
大きく実った胸の膨らみは男の視線を釘付けにするには十分すぎる。それは弟の俺も例外ではなかった。
タンクトップゆえにくっきりはっきり見えてしまう谷間。
そこから見える果実の白い肌。
そしてなによりも薄い布ごしにはっきり分かる先端のぷっくりとした部分。白のタンクトップだから余計に目立っています。
ブラをしていないことはまる分かりです。以前に「男に戻った時に苦しい」からという理由で寝るときはブラをしていないと言っていました。
俺には何の意味かさっぱり分からなかったけど、エロい想像をかき立てるには十分!
な、なんてすごいものが目の前にあるんだ! これをもしナマで見ることができたら……いや、モミモミすることができたら俺は、どれだけ幸せになれるのだろうかっ!
さ、触ってみたい。けど……。
「ん?」
し、しまった! お姉……い、いや、兄がこっちの視線に気がついた!
「……見てたのか?」
んがあぁぁぁっっっ!! しっかりバレてますがなっ!!
だ、だけど優しいお姉ちゃん(←勝手な妄想)だったら、ちょっとぐらい……触らせてくれるよね?
そう、俺は意を決してあの言葉を言ってしまった。
「さ、触ってみてもいい?」
「………」 (←殺意と腫れ物を見る目が入り混じった複雑な表情)
その瞬間、自分がとんでもないことを言ってしまったことに気がつきました。
沈黙が続く。俺のこの思いなんてよそにテレビでからはおバカな芸人達の下品な笑い声が響いている。
どうしよう、この空気。
しかしお姉ちゃん(←まだ混乱している)はやっぱり優しかった。こう言ってくれた。
「そんなに触りたかったら俺の高校受験しろよ。そうすれば飽きるほど触ることができるぜ、自分の胸をな」
その年、彼は私立帝越高校を受験したのでした。
### 13.卒業した先輩 ###
普通公共にある御手洗というやつは男女別に別れているものだ。
当然男だったら男性用に入るし、女性であれば女性用のところに入るもの。
男性が女性用に入れば通報されるだろうし、女性が男性用のところに入れば白い目で見られるのは間違いない。
ただ、小さめの飲食店や雑貨屋、衣料品店などに行くと分かれておらず、男女兼用になっている場合が少なくない。彼に分かれていたとしても中の造りはほとんど区別がないぐらい。
そこであれば男女問わず、どちらが入ったとしてもそれほど不信がられることはないだろう。
さらには出入りする人が余り周囲に気を使わないようにするためにそういうところは通常目立たないところにある場合も少なくない。
事実ここがそうだった。
規模は大き目の衣料品店、御手洗はちょっと奥まった目立たない所にあり利用する人はほとんどいない。
さらには規模の割に今日のお客さんはそれほど多くはない。だから余計に利用する人は少ないといえる。
男女別に分かれた扉が二つ。とはいってもその扉を開ければそこが直接トイレの個室になっている。
ただ単にトイレの個室が二つあって、それを男性用と女性用に分けているだけ、といったところか。
だからその気になれば男性が女性用に、女性が男性用に入ることは難しくない。
つまり、どちらか一方の方に男女二人で入るのもそれほど難しくないといえる。
そして今、そういう状況にあったりするんだなぁ。
「あっ、んんっ……んはっ、あっ………」
男性用個室。そっちの方に俺と常久が入ってた。
俺は普段着のごくごく無難な格好なのだが、女になっている常久はちょっと気合の入ったかわいい服装。
上に着ているピンクのキャミソールと白のカーディガン、下はこれまたフリルいっぱいの白のミニスカートにピンクと白のストライプのオーバーニーソックス。
おまけにうっすら化粧までして、髪の毛をツインテールにしてリボンで縛っているんだから余計に可愛らしく見えてしまう。
久々に休みの日だから遊びに行くか、と言って待ち合わせして、やってきた常久の姿を見て俺はどきりとした。いや、こんなカワイイ姿していたら男だったらそう思うだろ?
例え中身が男だと分かっていても、本当の男の姿を知っていたとしても、だ。
だが今はそのカワイイ服装も乱れている。大体男女でこんなところにはいっているんたからその理由ぐらい分かるだろ?
責任逃れみたいに聞こえるかもしれないけど、誘ったのは常久の方だ。
この衣料品店でお買い物かと思ったら、服を見るのもそこそこにこのトイレに引っ張り込んだ。
わけが分からなかったけど、とりあえず逆らうことなく連れ込まれたら、これだ。
いきなり俺にぎゅっと抱きついてきて、キスして「しよ♪」と言われたら抵抗できないだろ。
「あんっ、んんっ………竜介のエッチぃ♪」
「どっちがだよ」
外に声が漏れないよう気を使っているから互いに会話はささやきあうようなもの。それでも十分に聞こえる。
そんな会話よりも下半身の方でくちゃくちゃいってる音の方が響いている。これが外に洩れてないかと気ががりになってしまう。
常久を背中からきゅっと抱き、後ろから攻める。常久はのけぞるようにして後ろを向き、俺と下を絡めるキスをする。
喘ぐように常久は身をよじらせ、色っぽい声を出している。まるで誘っているかのよう。
それに答えるように俺は常久を一枚ずつはいでいく。場所が場所だから全裸にはできないが。
キャミソールをたくし上げ、スカートもたくし上げる。驚いたことにそこから現れた下着はずいぶんと派手だ。
黒の下着、おまけに下はTバックじゃないか。これ勝負下着ってやつか? いったい何を考えてこんなもの着てるんだよ。
「お前、まさか普段からこんなもの着てるのか?」
「んなわけないじゃん。お出かけだから気合入れただけだよ」
お出かけで気合入れる理由っていったい……まあいい。
しかしこんなもの見ちゃったら男の本能刺激するじゃないか。特にこのTバック、ほとんどお尻丸出しでこんなの見たら入れたい欲求に駆られてしまう。
そういえばこいつ、尻フェチだっけか? もしかして自分が好きなあまりに自らののお尻も見せびらかしたいとか?
とりあえず触っておこう。うん、フニフニでスベスベでプニプニしてて気持ちいい。
既に露出しているも同然だが、とりあえずショーツに手を突っ込んでみる。後ろ側から女の子の割れ目を攻めておこう。
左手でお尻を揉みながら右手は常久のおっぱいへと伸びる。俺はどっちかというとこっちの方がいいのだが。
ブラの中に手を突っ込み、おっぱいを揉みながらブラを上へずらす。その時に乳首を軽くぴんと指ではじくのを忘れない。
感じたかな? 「あんっ」なんて声出しちゃって。
ぷるんとおとを立ててこぼれたのは常久のおっぱい。Eカップのおっぱいは片手で揉むのに適度な大きさ。
「あはっ、んはぁっ………竜介ぇ…………んっ…」
常久が俺のズボンのチャックを下ろして中でいきり立っていたものを取り出すが、止めることはしなかった。
やらしい手つきで俺のペニスを撫で回し、俺をその気にさせていく。
「準備はいいかな?」
「あんっ、早く来いよぉ♪」
するすると自分でショーツを下ろしていく。その時にとろっ、と愛液がこぼれ落ち、ショーツとの間に糸を引く。
ったく、スケベなやつ。
そういう俺も俺であんまり人のことはいえないけどな。女になったら俺だって色々エッチなことしちゃうし。
「あ、んっ…」
後ろからゆっくりと入っていく。常久は壁に手をついてお尻を突き出していたからバックで来いという意味だと解釈したから。
その突き出されたプニプニのオシリを両手でつかんで、とろとろの愛液が流れ落ちる入り口を進んでいく。
「あ、はあっ……」
接続完了。常久は壁に手をつけたままのけぞっている。このまま抱きついて来て、というサインか。
俺もそれを理解し、常久に覆いかぶさって抱きつくようにし、腰に手を回しぎゅっとする。。
「あぁっ、あはぁ……」
ちょっと後ろを向いて俺と視線を合わせる常久。顔が接近したらやるのは当然のように舌を絡め、唾液を交換するキッス。
抱きしめながら腰を動かし、胸を揉むのを忘れない。
柔らかな常久の女の体。俺の心臓の鼓動は早くなり、欲求が増していく。
男の本能。女を愛撫し、征服し、優越感に浸って最高潮に達してやりたい。
常久を抱く力が増す。ぎゅっと抱きしめて、絶対に逃がさないと行動で伝える。
端から逃げる気なんてない、だから一緒に……常久の顔はそういってそうだった。
「はあっ、あぁっ……イクっ、イキそうっ…!」
「ああ、イかせてやるっ……思いっきり、出してやるっ!」
準備は整った、常久は最高潮に達しようとしている。それに合わせて、俺は自らのストッパーを、外した。
「あっ、ああぁぁっ、んうぅぅぅぅっっっっ………!!」
絶頂に達して、かなりでかい声をあげそうになってあわてて俺は常久の口をふさいだ。
右手が常久の声で震える。一瞬判断が遅かったらこの喘ぎ声がトイレの壁を貫通して店中に響くところだった。
力を込め、常久を押さえつける一方で己の欲望を一気に注ぎ込む。
遠慮することなく、常久の膣内に。
噴出した俺の精液と常久の愛液が交じり合う感触はいつものこと。その後は決まって二人してとろんとした気分になる。
それは常久の方が、女の方が余計に強いか。その表情は幸せそうだ。
女は心で感じ絶頂を迎える、自分も経験しているからそう表現するのが適切かもしれない。
二人で余韻に浸って、冷めるのが早いのは男の方。俺は常久の膣に入ったまま常久がある程度落ち着くのを待つ。
もうそろそろいいかな? というところでそいつを抜いた。
抜いたと同時にぼとぼとと交じり合った体液があふれて流れるのは相変わらず。
こういうときに現実に戻される。これを始末するのは女の負担が大きい。
「ふあぁ、いっぱい出たなぁ」
その声は楽しんでいるような、うんざりしているような。
とりあえず常久が処理している間に俺が先にこのトイレを後にすることにした。
同時に出る事になったらそれを目撃した人が不信がってしまう。多少時間差をつけておいたほうがいいだろう、と思ってのことだ。
常久にそのことを伝え、先にトイレの扉を開ける。と、同時だった。
「君達ぃ、お楽しみのようだったねぇ」
扉を開けたその目の前に、この人がいた。
「は、半田先輩……」
先輩の存在に常久も気がついた。そしてその人物を見て、二人して青くなった。
当の先輩はトイレで盛り上がっていた俺たち二人に睨み付けるようにしたまま、にっこり微笑んでくれた。
それがたまらなく恐怖を感じたのだが。
「まあぁぁぁぁっったく、お盛んな後輩には困ったものねぇ」
その言葉は本当に困っていっているものではなく、からかっているように思える。事実、先輩の顔はにやついているし。
どうやら先輩はあの店で俺たちを見かけ、声をかけようとしたところでなにやら二人で(正確には俺が常久に連行されて)トイレの個室に姿を消したので外から様子をうかがっていたらしい。
で、出てくるのを外で待ち構えていた、というわけだ。
あれから俺たちは先輩に促されてこのファーストフード店へとやってきた。
注文は無難にセットをひとつずつ、とりあえず頼んだだけであまり食は進まない。さっきの件があるからだ。
現場をおさえられて恥ずかしいという気持ちもあるが、常久の場合はエッチしたばかりで体が火照ってて、という理由もあるかもしれない。
俺と常久は並んで座り、先輩はその向かいに座る。俺たちはあまり食欲がわかず、今はドリンクをちびちびと飲む程度。
うつむき、下を向いて先輩に顔を合わせることができない。
「まあ、わたしも色々やったからあんまり人の事は言えないけどね」
さいですか、半田政宗(ハンダマサムネ)……いや、半田瑞希(ハンダミズキ)先輩。
この人は去年俺たちが通う私立帝越高校を卒業していった先輩で、学年で言えば二つ上になる。
当然男だ。今は、女だけど。
知り合ったのは大したことじゃない。去年の文化祭の時なのだが、人員不足で生徒会の手伝いをされたことがあって、その時生徒会副会長を務めていたのが先輩だった。
その時先輩は男の姿で、てきぱきと仕事をしていた姿は実に頼りがいがあったなぁ。
ちなみに文化祭が始まったら先輩は女になっていて、生徒会主催のコスプレ喫茶で奮闘していたっけか。
その時の先輩ときたら……スク水にうさ耳は全く予想もしていませんでしたけどね。
文化祭が実施されるのは毎年10月中頃、だから知り合っていたのは卒業までの半年程度の期間でしかなかったから大した接点があったわけではないが、それでも知り合いと呼ぶには十分な関係だと思う。
卒業式のときは俺も常久も先輩の姿を見つけて、十分に見送った。
女になっていた、先輩の姿を。
「色々、ですか」
「そう、色々。あの時は私も男だったってわけよ」
男だった、それが今の先輩の姿を見ていると重く感じる。
そう、卒業式で先輩は女になっていた。
うちの学校のシステム、半周期的に性別が切り替わるシステムは当然卒業してしまったらその効果はなくなる。
卒業するまでに何でも特殊な処理をして、性別を切り替える要因となっているナノマシンを破壊し活動を停止させるのだそうだ。
どうやるのかは分からないが、聞いた話では特殊な電磁波を当てるとかいわれている。とにかくそうすることでナノマシンは活動を停止、半周期的な性別の切り替えは発生しなくなる。
当然それは男のときに行われる。ナノマシンが行っているのは女の体に維持するのではなく、性別を切り替えること。
従って女の体の時にそれを行ってしまうとそれ以降ナノマシンが活動を停止し、男の体に戻ることがなくなってしまう。
だからその処理を行うのはタイミングが大事。男のときにそれを行わなければならない。人によって男と女の体の周期がずれているから順番どおりに、というわけには行かないのが欠点なのだが。
ただ、もちろん例外もある。
当人が望んだ場合は女の時にその処理を行う、つまり、一生女のままでいたいと思う人には。
男ってやつはエロい生き物で、大体の男は一度は女になってみたいと思うものだ。
理由は千差万別。女湯に入りたいとか、堂々と覗きをしたいとか、カワイイ服を着てみたいとか、もしくは女のエクスタシーを感じたいとか。大体不純な動機だ。
だがそういう動機のやつはさすがに一生女のままでいいかといわれるとそういうわけではない。
特に俺たち生徒の場合、2ヶ月に一回の周期で生理がやってくる。
そいつで現実を味わってしまうのだ。こんなつらい思いなんてしたくない、と大体のやつはそこでそう思うもの。
ついでにいえば女の体はトイレが面倒だし、ブラをしなきゃいけないとか、意外と胸が邪魔だったりとか、そうした不便な現実を知ることになる。それが三年間の間続く。
そうなったら「一生女の体じゃなくていい」という結論に至る。
仮に女の体でエッチを思う存分楽しみたいというやつでも3年間も期間があるのだ、それだけやっていれば「飽きた、もういい」となる。
というわけで実際に一生女でいることを選択するやつは少ない。事実、その卒業式でも卒業生約三百人中、女子つまり一生女でいることを選んだのは二十人弱だった。
その中に、先輩が含まれていたのだが……。
そうした現実を知ってもなお女子であることを選択する理由、それは女に目覚めたとか、ずっと女になりたかったという性同一性障害とかいう心の問題とか、よほどのエロで一生女の体でエッチを楽しみたいとか。
そして他にあるとすると……
「で、あなた達は付き合っているの?」
唐突な先輩の質問に俺も常久もむせた。
「げほっ、ごほっ……つ、付き合うぅ?」
「あら、違うの? あんな所であんなことしているぐらいだから、そうじゃないかと思ったんだけど?」
俺も常久もその質問に顔をあわせて悩んでしまう。
そりゃあある意味では俺たちは付き合ってはいるが、先輩の言う『付き合う』とは男女としての恋愛的な交際をしているのか? って話だ。
そんなこと言われても、俺たちそういう形で付き合っているわけじゃ、なあ?
多分先輩はからかっているんだ。そうは思ったけど、なんだか言葉が詰まる。
だからここは答えるのではなくて、別の手段でお茶を濁す。
「そういう先輩は、どうなんですか?」
「あら、逆に質問してごまかそうってワケ?」
やっぱし見え見えだったか。でも先輩だって分かってて俺たちからかったんだ、おかえしだい。
「もち私はラブラブよ。現在進行形で」
そうですか、今もラブラブだったら何の問題もないですね。
女の苦労を知ってもなお女子として一生を生きようとする理由のひとつ、それは男に惚れたから。
あの色々と頼りになる頼もしい姿に男らしさを見ていた半田先輩が卒業式のとき女になっていたのを見て、俺も常久も驚きを隠せなかった。
式が終わり、在校生と卒業生とが挨拶する中で俺は半田先輩に駆け寄った。そして何故女に? と尋ねたらこう答えた。
「あはは、和馬に惚れちゃったんだよねぇ」
和馬、豊浜和馬(トヨハマカズマ)、生徒会長だった。
そういう噂を聞いたことがあった。生徒会長と副会長ができてるという噂を。
たしかに生徒会室に出入りしていた時にも二人が仲良くやっていた姿を俺も常久も目撃してはいた。
でもそれは共に仕事をこなすもの同士の友情関係だと思っていた。それを見た誰かが適当に想像して噂話で広まったんじゃないかと思っていた。
だが、事実だった。
会長に惚れた半田先輩、一緒になるために男を捨てて一生女でいることを決意した半田先輩。
そんな事実を見て、俺はショックで目の前が真っ暗になったのを覚えている。
男に惚れるというのは、かつて男だった先輩が男を捨てる決意をするほどのことなのか。
俺だってその時は半周期的に女になっていた。自分が女になっても期間がたてば男に戻れるからそれほど大きなことに思っていなかった。
だけど、現実的に自分が一生女のままだったら? 俺はどうなるのだろうか?
目の前で起こっている現実に俺は自分の事と照らし合わせて考え、困惑していた。
もっともその困惑は一時的なものに過ぎない。しばらくすればそんなな悩みも忘れて普段の生活に戻っていたのだが。
でも時々思うことはある。一生女でいるとは、男に戻れないとは、どういうことなんだろう。
軽いことじゃないはず。それを実行した半田先輩って、どうなんだろう。
ふと顔を上げて先輩を見た。
ジャンパーの下はカジュアルシャツ、中から持ち上げている胸はうちの学校標準仕様のように大きなバスト。下はデニム地のスカート、丈は短め。
顔を見れば化粧もきちんとしている。薄めのナチュラルなファンデーション、ピンク色の口紅、マスカラ、そしてイヤリング。
半田先輩は綺麗だった。多分、道行く人の半数が振り返るような、モデルのような美人。
制服を着て生徒会の職務についていた頃とは一味違う。なんだか、先輩は綺麗になっていた。
でも、先輩だって男だったんだ。だから気になっている。
「自分の男を捨ててまで、豊浜先輩が好きだったんですか?」
「なんだかやらしい質問するわねぇ」
それは申し訳ないです。そういおうと思ったけど、先輩が口を開く方が早かった。
「まあ、惚れたきっかけなんて大したものじゃないわ。最初はそれこそ同じクラス同士で仲のいい友達程度だったし。でもさ、あの学校の特殊事情ってやつ? それが火をつけちゃったって感じかな?」
「火を?」
「女の子の体で、エッチなことしてみたいってコト」
ぎくり、とした。
「だって男が女になるんだよ? それも本物の。だったら一度は試してみたいって思うようになるじゃん。皆そう思っていたみたいだし、事実大抵の生徒は一年のうちに経験済みよ」
それはそうかもしれない。俺も一年の時には既に常久と経験しちゃったから。
「で、私も同じく、ってワケ。もち相手は和馬ね。いやもうびっくりしちゃったわ、女の子がこんなに気持ちいいんだって知っちゃってさ、もう二人して女の子になるたびにエッチしてたわ。あ、もち女になった和馬も私がちゃんと処女頂いちゃったけどね。その時の和馬ったら可愛らしいのなんのって」
ちなみにこの会話は互いに小声で話している。さすがにこんな会話周りにいる人達に聞かれたら色々まずいし。
まあ、聞き耳立てられるほどお客さんいないけどな。結構閑散としているし。
「そんな関係がずるずと三年も続いたんだけどね、そんな時ふと思っちゃったのよ。なんだか和馬と一緒にいるとすごく落ち着く、抱かれると胸がキュンってなっちゃうなって。それが恋だって気がついたのは三年の時だったかしら? なんだか私、どうにも切なくなっゃって、恋しくていとしくてたまらなかったの。だから、思い切って告白したの、文化祭の、後夜祭の時に、こっそりと二人っきりで、生徒会室で、ね」
「それで、OKだったんですか?」
今まで静かだった常久だが、会話に参加しようとしてなのか先輩に尋ねた。
「ちょっと戸惑っていたように見えたかな。でも、しばらく静かな時間が流れて、それで和馬、私の事をぎゅっと抱きしめて『俺もだ』って言ってくれたわ。その時はすごく嬉しかったわ、恋が実った、ヤッターってね。まあ、しいて問題を言うんだったら私も和馬もその時女だったってとこかしら」
その時の事を思い出していたようで先輩の顔は赤くなっていて、それでいてくすくすと笑っていた。
その表情に俺たちも自然と笑みがこぼれた。
「で、いざ卒業式が近づいた時に考えたの。このままじゃ男に戻っちゃう、一生女にはなれない、和馬とはもう一緒になれないかもしれない、って。そう思うと怖かった、和馬が遠くに行っちゃうんじゃないかって思って。でも自分か和馬がどっちかが男を捨てて女になれば一緒にいられると思った。けど、そのために男を捨てるっていうのは、男に戻れないっていうのが、一生女として生きていくっていうのが、悩んだわ。でもね、その時は既に私にとっては男を捨てるよりも和馬が遠くに行ってしまうほうが嫌だった。だから、私は和馬に言ったの。私は女になるって、和馬と一緒にいたいって。そしたらまあ、和馬は怒ったわ」
「怒った?」
「まあ、ムキになったって言うのかしら? 俺だって一緒にいたい。だけど、女になるのは自分の方だって」
なるほど、なんとなく想像がつく。
「でも結局私が女になるって事で話は決着したわ。まあ、そこで和馬が言った事は本当にそう思っているんじゃなくて、ちょっとカッとなって言っただけみたいだけど。まあ、その代わりに私からのお願いってことで最後に卒業する前に女の和馬を抱かせてって言っちゃったの。やっぱりこれで男が最後だと思っちゃうと名残惜しい感じがあったからね、せめてもの思い出って感じ。私が男だったことを忘れないようにって。まあ和馬もOKしてくれて男の私の腕の中で何度も可愛らしくイッちゃってたっけ。ああ、あのときの和馬の顔は忘れないわ、可愛かったんだから」
なんだか段々会話がのろけなんだかエロいのだかそういう方向に発展していってるな。そんな心配をしていたが、それを語る半田先輩の表情はどこか悲しげに映っていたような。
「……先輩、ひとついいですか?」
「なあに?」
悲しげではない、そう言っているような笑顔で先輩が返事した。
「女になって、よかったですか?」
それが気になった。
男を捨てて、女として生きて、恋人と共になることが果たして先輩にとっては良かったのか。
「もちろんよ」
そう答えた。
それからしばらくは他愛もない会話が続いた。
「もち和馬とはラブラブなのよねぇ」なんていうのろ気話や「浮気したらあいつを殺して私も死ぬ」なんて物騒な話や「大学卒業したら結婚するつもり」なんて幸せそうな話も。
それともうひとつ気になったのは「さすがに今は中出しはまずいのよねぇ。いま妊娠しちゃうのはまずいし」という話。
公衆の面前でそんな話するなよ、耳に入った人は変な目で見るぞ、と心配したのとは別に思ったこと。
先輩も女性になった。今の俺たちみたいなかりそめではなくて、本当に女として妊娠できるのか、と。
先輩はそんなつもりじゃなくて冗談で言ったのかもしれないけど、俺には妙に重く感じてしまった。
それが女になったことのひとつの証なのだから。
それと別れ際、先輩は一言俺たちに注意した。
「あんた達も気をつけなさいよ、エッチしすぎると私みたいに恋が芽生えちゃうわよ」
そんなことを言った。
それは冗談なのか本気の警告なのか定かではない。俺には判別不能だ。
まあ、それ以前にいくらなんでも俺が常久に恋心抱くなんてことは……
いや、ちょっと待て。
現時点で俺は常久にそんな気持ちを抱いてはいない。もちろん良き友人としては見ているけど。
だけど、常久はどうなのだ?
今日の妙に気合の入った服装、化粧までしている顔、色気の入った勝負下着、俺との積極的なエッチ。
まさかその行動、俺に対して気がある? いや、考えすぎか?
「なあ、竜介」
突然声をかけられびくっとした。驚かすなよ、と言おうとしたがあと一歩のところで止めることができた。
「仮にだけど、僕が竜介に告白したらどうする? 先輩みたいに」
「は?」
な、何を言っているんだこいつは。まさか本気で……
「だ、だから仮にだよ。本気じゃねえよっ!」
全力で否定する常久だが顔は真っ赤になっている。照れているのは明らかだ。
そのそぶり、仕草、反応、まるで本当に女の子を相手にしているみたいだ。
こいつ、本当に本気じゃないだろうな?
「だから……先輩みたいに僕が常久に告白したら、竜介はどうするのかと思って」
語尾が小さい。最後の方はあまりはっきりとは聞こえなかった。
常久はどういうつもりでそんな質問をしたのだろうか。
俺の心境を知りたい? 俺が常久に対してどう思っているか、確かめてみたい?
それとも本当に、ただ単に同じような状況で俺がどう思うか興味があるだけ?
いったい何故こんな質問をするんだ? 俺に何を言わせたいのだ? そんなこと言われても、俺は、俺には……
「わかんねえよ」
そう答えるのが精一杯だった。
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
朝の知らせ。それと共にけたたましく目覚まし時計が起床命令を発している。
寝ぼけ眼で意識もはっきりしていない中、そのうるさい目覚まし時計をとりあえず停止させる。
ベッドから手の届くところにおいておくのは二度寝するからあまりよくないというけど、俺の場合はあまり二度寝しないタイプだ…と思う。
まあ、特に今日の場合は二度寝はしないだろう。
「………」
まず最初に気がつくのは胸にかかる圧迫感。いつもとは違う重みが胸にかかっている。
原因は布団をめくれば一目瞭然。俺のお休みスタイルはパジャマと無難なところ。
その薄い寝巻きを内側から持ち上げている物体、それが重みの原因だ。
こんもりとふくらんでる物体は肉まんよりも一回りも二回りでかいか。それが左右に一つずつ計二つ。
ためしに触ってみる。心地よい柔らかさと弾力、それと共に触られたという感触。
確かめるまでもないけど、念のため足をもじもじとすりよせてみる。
うん、やっぱりない。いつもならば朝になると起立しているあの物体の存在を感じられない。
ようやくベッドから抜け出す。体を起こすとふわりと頭にかかるものが。髪の毛だ。
俺の場合は髪もちゃんと伸びる。ウェーブのないストレートの柔らかな髪の毛。
そしていつものようにパジャマを脱ぎ捨てていく。
下に着ているのは男のときはタンクトップとトランクス。つまり、パジャマを脱ぎ捨てたからその姿になった。
そして部屋に添えつけの姿見で自分の今の状態を確認する。
あえて確認するほどでもないけど、今日は女の子だ。
そこに現れたのはタンクトップとトランクス姿の可愛い女の子。マニアにはなかなかそそる姿だ。
おまけに胸のボリュームが結構ある。だからタンクトップの開かれた胸元から谷間がくっきりして余計にそそる。
そしてそのトランクスも、タンクトップも脱ぎ捨てる。全裸になる。
その姿も鏡で堪能する。はりのある大きなバストにくびれたウエスト。適度に豊かな腰周りにすらっとした手足。
今日もスタイルは抜群にいい。もっとも、俺たちにとっては平均的な、ごくごく当たり前なスタイルではあるけど。
しばし観賞した後は引き出しからショーツとブラジャーを取り出す。白色のシンプルなデザイン。
ショーツに足を通し、腰まで引き上げる。下腹部を包み込むぴったりとした感触にはもう慣れた。最初の頃は違和感があったけど。
ブラをつけるのも慣れたものだ。後ろで止めたらカップの中にきちんと乳房を集めて入れるのも忘れない。
今度はソックス。長いと絶対領域が発生してそれがいいというやつがいるけど、俺は短い方がいい。
改めて鏡で確認。うん、下着姿にソックスだけというスタイルも悪くない。自分の体だというのに、これをおかずにいくらでも自家発電できてしまうから大したものだ。
やば、ちょっと濡れてきたか? 朝からいきなり下着を汚すのはまずいな。
そして制服。白いシャツに袖を通し、胸にリボンを結ぶ。最後にスカート、丈は自分でちょっと短くした。
鏡で見る間でもないが、そこに映っていたのは可愛い女子学生。
さて、今日も女の子で頑張るか。
俺、蔵本竜介(クラモト リュウスケ)は私立帝越高校に通う2年生。れっきとした男子だ。そして高校も一応男子校。
ただし、その登校風景には普通の男子校にはない特色がある。
まあ、一見するとごくごく普通に見えるけど、ここが男子校だと考えると特色になるだろう。
登校する生徒のうち、半数が女子だということは。
正確には女子になった男子生徒、なのだが。
この学校に通う生徒は半周期的に女子になる。期間は短いと2日、長いと2週間ぐらいの間か。
寝ている間に体が切り替わるらしい。だからぐっすり寝て、朝になってみると女の子になっているというパターン。
詳しくは分からないけど、入学時に打たれた注射にナノマシンが入ってて、そいつが体を半周期的に女にしているらしい。
そうなったら次に男に戻るまでは女子として生活しなければならない。
制服は当然女子用、スカートは当然で下着もきちんと女子のショーツとブラジャーにしなければならない。
この学校の教育方針は男子自ら女子として生活することで女性の苦労を知ることにあるのだと。
そんな説明を受けたのが入学して直後、その前の学校説明会では一言も話されなかった。
道理で共学に見えたのに入学式に出席した生徒が全員男なわけだ。
入学直後はクラスの生徒は全員男子。そこはやはり興味のある年頃というやつで女になる日を今か今かと待ち望んでいたりする。
入学して約1ヵ月後、クラスの半数が一気に女になった。
俺はその中にはいなかったが始めて女になったやつらは女子の制服を身につけて、キャピキャピやっていた。
女になっていない男のクラスメート相手にスカートをたくし上げて中のショーツもしくは何も穿いてないのを見せたり、胸元をチラッと見せたり、はたまたがばっと制服をオープンにして胸をあらわにして見せびらかしたりしてからかってやがった。
俺が始めて女になったのはそんなことがあった数日後。目が覚めたら女になっていた。
長く伸びた髪、豊かに実った乳、白い肌、そして男の証は消失して代わりにある小さな割れ目。
分かっていたとはいえ、やはり初めてのときはいろいろと興味がわいてくるんだよ。ええ、そうですよ、その日は遅刻ぎりぎりでしたよ。
女子になった生徒はこれがもう全員例外なく可愛い外見で、さらにはスタイルもいい。
胸は全員が巨乳の領域で、小さくてもDはある。ちなみに俺はF。
そうなった時はお互いに乳をもみ合ったり、乳を重ねあったり、見せ合いっこしたりでいろいろとやりましたわ。
ただし、大体その2ヵ月後に訪れる生理ってやつでみんな釘を指されるのだが。
あの衝撃ときたらもう……めまい起こしてぶっ倒れそうになったよ。
それがあると大体のやつは大人しくなる。おかげで「あ、あいつ今生理なんだな」っていうのがバレバレだったり。
それでも普通の女子に比べたら周期は空いてて、2ヶ月に1回ぐらい。とどのつまりは女でいる期間の合算だが、だとしても男にとっては一大事だ。
しかも、そうなったら最低数日間は女のまま。腹痛と頭痛と貧血によって苦しまなければならない。
『男子自ら女子として生活することで女性の苦労を知る』っていうのはこういうことだったんだな、と痛感する瞬間だった。
まあ、2年になったら女としての生活も慣れたもので、性的な興味も少しは大人しくなる。
といってもそれはあくまで派手なことはしないという話であって、そこそこのことはやっていたりするのだが。
「よう、おはよう」
いつもの自分の席に着くと声をかけてきたのは隣の席に座る友人の石井常久(イシイ ツネヒサ)。
一昨日までは女だったが、今日は男だ。
「ああ、お早う」
「竜介、今日から女なんだね」
「…まあね」
期間と周期はランダム、とはいったがクラスのうち大体半分が女になるようになっているらしい。
だから誰かが女になったら誰かは男に戻る、という具合。必ずそうなるわけじゃないけど、男女の比率がほぼ半々になるようになっている。
それが意図的に制御されているのかどうかは定かではない。女に切り替わるタイミングとかきっかけはっきりとは知らないからだ。
「それにしても今回は遅かったな。前に比べたら結構期間が空いてない?」
「うん、二週間ぐらいか。平均的だけど、長いほうだな確かに」
いつ女になるかはタイミングとして全く読めない。はっきりするのは女でいる間も、男でいられる期間も大体二週間以内ということだけ。
それでも確実に女になる、もしくは男に戻るのははっきりしている。
だから中には次に性別が変わるのがいつなのか賭けをしているやつもいるぐらいだ。ヒマなやつら。
徐々にクラスの席が埋まっていく。ちょっと前まで女だったやつ、今日になって女になったやつ、毎日毎日クラスの顔ぶれは変わっていく。
それでも男が女になったとしても誰が誰なのかはすぐにわかる。
これもどういう仕組みなのかは分からない。ブサイクなやつがとびっきり可愛い女の子になっていても、しっかりわかるのは不思議だ。
「で、早速放課後どうですか?」
常久が声のトーンを落とし、俺にそっと尋ねてくる。
「……お前、俺が女になった途端にいきなりそれか」
「ふふっ、この前は散々僕のことを持て遊んでくれたからね。たっぷり御礼をしなきゃ」
俺は呆れながらもまあいいか、と思った。何のことはない、いつものことだ。
その会話が終わったところで先生が入ってきた。今日の一日の始まりだ。
生徒達は学校内にいろいろと秘密の場所があることを知っている。
一般教室から離れたところにあるトイレだったり、開き部室だったり、体育倉庫だったり、各種教科準備室だったり。
俺と常久はいろいろ使っているが、今日は屋上の入り口の影になるところ。
「んっ、んっ、んんっ……」
ちゅぱちゅばと音を立てる俺の口。唾液が絡み合っていやらしい音を立てている。
対象は常久のペニス。はだけた俺のFカップがそこそこのサイズの常久のやつを挟み込む。
常久は壁にもたれかかり、荒い息をしながら俺による快感という攻撃を受け止めている。
くちゅ、くちゅ、とバストを動かすと先走った液体が別の音を立てている。
口の中に伝わっていたペニスの熱さは俺の谷間によってさらに熱くなっている気がした。
「ああっ、やっぱりパイズリっていいねぇ」
「ったく、女になったばっかの俺にこんな事頼むか普通」
「その割には嫌がらずにやっているじゃん、竜介」
「うるせえ、俺とお前の付き合いだろ」
こんな感じだ。俺と恒久はある意味付き合っている。
もちろん互いに男同士だって自覚はしている。だから恋愛感情に発展することはない、と思う。
あくまでエッチなことをするだけの組み合わせ。こういうのなんていうんだっけ。えーと……忘れた。
まあ、この学校じゃこんなことしているやつは珍しくもない。
お互いに男になったり女になったりどっちの性も楽しめるのだからという開き直りでエッチしているやつらがほとんど。
大体のやつは男でも女でも体験済みじゃねえのか?
ちなみに俺と常久が"付き合い"始めたのは一年の最初の頃。常久が先に女になって、その時に「興味ねえか?」と常久の方から誘ってきた。
で、それ以来の付き合いってやつだよ。
それからというものの、お互いにどっちかが女になった時にはエッチするっていうのがお決まりになっていた。
どっちも女になった時にもやっていたな。いわゆるレズプレイってやつ。
ちなみに昨この前も俺が男で、常久が女の時に抱いてやった。その時はトイレでやったっけ。
いっとくけど両方男のときは何もしないぞ。さすがにホ○の気はないからな。
といってもこうして今、何の抵抗もなく常久のをパイズリしてフェラしているってのは、まあ不思議な気はするけどね。
最初は当然抵抗あったけど、もう慣れちまったよ本当に。
く、くどいかもしれないが俺はヤオ○な関係じゃないからな。男の体の時にこんな事したいと思わないからな!
「ぶわっ!!」
いきなり白い液体が先端から解き放たれた。予告なくいきなり発射されたせいで俺はそれを思いっきり顔面に浴びてしまった。
白濁の液体は鼻につく臭いを放ちながら俺の豊かなバストにも降りかかってくる。
「つ、常久っ! 出すならちゃんと言えよ!」
「いやあ、ごめんごめん。気持ちよかったからつい……」
相変わらずひょうひょうとしたやつだ。これが憎めないからなお悪い。
ぺろっと常久から放たれた液体を舐めてみた。これを悪くないと思ってしまうとは、女の味覚って一体どうなってるんだ。
「んじゃ、そろそろいいかな?」
「あーはいはい。どうぞお使いください」
常久が壁側だったが、今度は俺が壁側へ移動する。
それとともにスカートをたくし上げ、後ろを常久に向ける。そこにあらわになったのは俺のまあるいお尻ちゃん。
「ん、いいねぇ。相変わらずいいお尻してるねぇ」
「ほざけ」
常久はどうやら尻フェチらしい。今日もやっぱり俺の尻をいとしそうにぺたぺた触っている。
今日もやっぱりバックですか。いつものことながら、常久には俺のトロトロになったあそこが丸見えになっていることだろう。
さっきのフェラですっかり俺のテンションも上がっている。体が火照っていい感じだ。
こうなるとあそこは結構簡単に濡れてしまう。それを予期してあらかじめショーツは膝まで下げてあった。
さすがに濡れまくった下着を家まで我慢して穿くのは酷だからな。
俺は壁に手をつける。注射もそうだけど、突き刺さる瞬間が見えないってのはあんまりいいものじゃない。
「んっ!」
ゆっくりと常久のが入ってくる。何度も味わっているこの感じ、女の挿入の感覚。
挿入する側とされる側では感覚が全く違う。自分の体内に入ってくる異物に不思議な感覚を味わうのは相変わらずだ。
そこに昨日まで男の物体があったとならば、なおさらだ。
「あ、ゆっくり……いいっ………」
ストロークを続ける常久。相変わらず的確に俺の感じやすいところを攻めてくる。上手いんだよ。
攻撃的ではなく、優しく、ゆっくりと。それでいて時折意表をつくように感じやすいところを攻める。
何度も俺とやってるからわかるんだろうな、俺の感じやすいところ。それは俺も同じで、常久の感じやすいところはよーく分かっているけど。
こうなると女になってしまった俺はなす術がない。ただただ身を任せ、喘ぐだけ。
「あ、あんっ、あぁっ………いいっ…」
身をくねらせ、快感をより増幅させる。突いてくる常久に身を任せ、ひたすらに快感に流される。
前後上下に動くと共にプルプルと自慢のバストも揺れる。それがまた快感を増幅させる。
女の体ってやつはもう、気持ちよすぎてしょうがない。
だから止められないんだよ、くそう。
「あぁっ……ふあぁ、常久ぁ……」
「甘い声出しちゃって。可愛いね竜介」
「ばかやろぉ、分かってるだろうがぁ……」
熱い、あそこが燃えるように熱いと感じる。
挿入された常久のペニスが熱を持ち、俺の体をどんどんヒートアップしていく。
くちゃくちゃとやらしい音を立てているのが分かる。これもまたいい。
突き上げているそれが、俺の中からそれを表に噴出させようとしている。
「あ、やばい。イクっ、イっちゃうっ……」
どんどん表に出てこようとしているそれ、イクのが分かる。
「いい? 僕も一緒に、思いっきり出すよ」
息が荒くなる。それがやって来る。殻を突き破って、表に一気に表れる。
「あ、ふあぁぁぁぁっっっっ………!!」
最高潮に達する。体がどくどくと脈打ち、吹き出た快感という波が一気に体中を駆け巡る。
それと同時に接合部からあふれる透明の液体。不思議な、いまだ謎の多い液体、愛液。
それと混ざって常久がそそいだ精液も。俺の中はその両方でいっぱいになっていた。
波が収まり、とろんとしたところでそれが抜かれた。ごぽり、と音を立てたかのようにして俺の中の液体がとろりとこぼれ落ちる。
気持ちいい。そして幸せな気分。何度やってもそう思う。
これが俺たちの日常。普通の男子高校ではありえない光景だった。
### 2.部活動 ###
女でいる期間はランダムで、短ければ2日で長いときは2週間になる。
今回の俺は結構短い方で、3日だった。3日目の朝になったら男に戻っていて、何だもう戻っちまったのかという感じ。
ただこうなると次の女になる時の期間が短い。女になっている間と男に戻っている間の期間は同じぐらいになるようで、女の時間が短いと男でいられる時間は短くなってしまう。
例えば今回は3日で戻ったから、次に女になるのは3日後ぐらいになるだろう、と言う事になる。
とにかく、今は戻ってしまった以上"男子高校生"として生活する。
「ふぅ……」
この瞬間って落ち着くよな、本当に。こうして立ちションするのも久しぶりだよ。
男子校といっても先の特殊な事情ゆえに半数が女子となっている。
したがってトイレや更衣室は男女別。といっても体育の授業は男女混在だが。
そんなわけで俺がいるのは当然男子トイレ。昨日までは女子だったからこの隣の女子トイレを使っていたのだが。
昔は女子トイレってだけでどぎまぎしていた頃もあったか。ウブな話だよなぁ。
まさか自分がその女子トイレを使うことになろうとは思いもよらなかったけど。まあ、使ったところでどうしたって感じだし。
なお、しつこいかもしれないがここは男子校であって女子はあくまでその男子が化けた存在。
元は男子であり中身は男子。したがって男子トイレだとか女子トイレだとかそういうのに羞恥心を全く感じないやつもいるということだ。
「おう、いたのか蔵本」
その代表格がやってきたよ。
すらっと伸びた長身、細い引き締まった胴体、そして何よりも圧倒するのが不必要なまでにでかいPカップというバストが特徴。
辻牧人(ツジ マキト)だ。
元の姿は極度に肥満というわけではないがちょいと太っていて、ある意味男のときも体格がいいといえる。
そして女になったら、これだ。
こいつの胸は学校内でも有名で、そのサイズはPカップと巨乳ばっかの女子の中でも群を抜いている。
何ゆえこんな体系になったのかは定かではないが、一説によると普段の余計なお肉が全て胸に移動したのではないか、といわれている。
当の本人はそんなことは気にもしてないが、自身の胸にはご満悦のようだ。
俺と辻は悪友同士、もしくは腐れ縁、そんな言葉で表現するのが適切だろう。
小学校5年の時だったか、同じクラスになったのは。それ以来中学高校とずっと同じクラスだった。
それは今も同じ。ここに入学してもやっぱり同じクラスだった。
だからといってお互いに嫌悪しているわけではない。所詮は"悪友"にすぎないが、それでもそこそこ仲良くはやっている。
性格も決して悪いものではない。世間では太っている人を「デブ」だの「キモイ」だの嫌悪する傾向がどういうわけかある。
俺にとって見ればそんなやつらこそ嫌悪したい。人当たりのいい正確は誰とでも仲良くできそうだ。
ただ、しいて言うならばかなりのマニアック振りを発揮するというか、凝り性というか。
今まではそんなこと思わなかったけど、ここで女になってそれが開花してしまったような気がする。
「辻、お前女の時にここに入るなよ」
「別にいいじゃないか。中身は男に変わりないだろ?」
そりゃそうだけど、ルールというか気分の問題というか。たしかに罰則があるわけじゃないけどさ。
そんな話はもう既に何百回もしたと思う。こいつは女になっていたとしてもしっかりと男子トイレに入ってきてしまう。
そしていつもの光景が展開される。
「よっ、と」
前かがみになる辻。破壊的なバストがそれにあわせてぷるんとゆれるのがはっきりくっきり。
そのまま極限にまで短くしたスカートの中に手を突っ込んで、捕らえたのは自身のショーツ。
捕らえた真っ黒で魅惑のデザインなショーツをするすると下ろしていき、足首まで一気に下げる。
そして完全に足首をくぐらせ、脱ぎきってしまった。
そいつをどうするのかというと、腰の辺りに位置する部分を口にくわえた。よく見たらヒモパンじゃないか。
で、空いた手はどうするのかというと……両手でしっかりとスカートをつかんでがばっと持ち上げた。
腰から下、下半身が丸出しの状態。そしてそのまま男子用小便器に近づいて……
「ふぅっ……」
用を足し始めた。俺はそれを呆れながら見ているしかない。
もう幾度となく繰り返されてきた光景。最初はそれこそどぎまぎしたさ、女性がこんな大胆なこと目の前でするのはさ。
しかもこいつ自分から「トイレ行こう」と誘って来て見せびらかしているしさぁ。
だがこれが何回もされてはもう慣れた。少なくとも俺は免疫ができた。
まあ、知らないやつが見たらやっぱり驚くのは当然で、時々こいつが用を足している最中に入ってきたやつが仰天して出直してくるなんて事があったけどな。
「んっ…」
用が終わると腰を振って器用に残りを振り落とす。これだけでも結構エロい。
そしてそのまま個室の方へと足を運んで……
「お前さ、結局拭くんだったら最初から女子トイレでやれよ」
「いいじゃん。これが俺のポリシーなの」
俺にしっかり反論しながら個室のトイレットペーハーで振り落としきれなかった残りを拭いている。
それが終わると目の前の便器にぽいと捨てて、咥えていたショーツを穿き始める。
付き合いきれん。とっくに用を済ませている俺はさっさと退散するのみ。どうでもいい話だし俺には。
「あ、そうそう今日部活するからな」
手を洗っていたらあっという間に追いついてきた。洗面台でさっと手を洗って俺に告げる。
「……やるの?」
「やるよ。よろしくな」
あっという間に去っていった。あいつ、妙に手際がいいところあるんだよなぁ。
帝越高校の場合、部活動として正式に承認されるには部員がいること、専属の顧問がいること、生徒会の承認が出されることの3つが必要になる。
辻の言う部活動はこのうち条件を満たしているのは部員のみ。顧問もいないし、生徒会からの承認は得られていない。
したがってレベルとしては同好会と言う事になるが、同好会のレベルであれば生徒自身が好きなように発足することができる。
辻が発足させた部活は「服飾同好会」と呼んでいる。一見すると聞こえはいい、まっとうな同好会のように思える。
しかしここは男子校だ。女子だったらともかく男子がせっせとお洋服をミシンで縫っている図はあまり想像できない。
ましてや同好会長はやや巨漢の辻だ。そいつがミシンでお洋服など、ありえん。
ここまで言われれば一般に言われている服飾部とは異なることぐらい想像できるだろう。
しかも先ほどの事をやった辻だ。そうなるとこの同好会の主旨は……
「お待たせしましたぁっ! 本日もこの帝越高校服飾同好会にようこそぉっ!!」
何かのイベント司会よろしく辻がもったいぶった仕方で俺たちに宣言する。
場所は使用頻度の少ない小教室。十数人も入ったら一杯になってしまいそうなコンパクトな教室だ。
使うのは選択科目とかで人数が少ない場合で、それ以外はほとんど空いている。
非公式の同好会はこういうところを間借りして使わせてもらっているのだが、これでも借りれるだけマシな方だ。
今のこいつの姿は首だけ出して体は真っ黒なマントに覆われている。
「待ってましたぁっ! いよっ、美の巨匠っ!」
さっさと帰りたいところを我慢してここに来て、呆れながらも座っている俺とは対照的に拍手して声援を送っているのは後輩で1年の山瀬皇(ヤマセ コウ)。
男だというのに小柄で、どこか可愛らしい印象を感じてしまう。いわゆる弟系キャラ(ショタ属性混入)。
いやいやながら入会させられた俺とは違ってこいつは自らこの同好会に参加したそうだ。
何でも入学式に部活動勧誘で多くの先輩方がビラ配りしているときに目撃した辻の姿(もち女の時の)に魅了されたとか。
大方のやつは一歩引いてしまうか、魅了されたとしてもすぐに目が覚めるかどちらかなのだが、こいつの場合は目が覚めなかったらしい。
さらにはよく懐いてくれるだけに辻もまんざらでもないらしく、結構この後輩を可愛がっている。
つまりはいい先輩後輩の関係ということ。いいかげん目を覚ませ後輩。
「ではではっ、早速行ってみましょう。今日のコスチュームっっ!」
宣言と同時に一気にマントを脱ぎ捨てる辻。そしてその下があらわになる。
「ぐっっ……!」
「おおっ、すごいッス!!」
引き気味になった俺とは異なり、山瀬の表情は感動を表している。
「本日の衣装はご覧の通り、ハートのコーディネートですっ」
コーディネートなんていっているが、ハート柄の服を着ているのではない。
左右の乳首、下の股間、その三箇所の大事なところにハートの形をした赤いシールが張られているだけの姿だった。
「極限にまで肌を露出させ、見えてはいけないところを隠す。隠されたところの形はハートをあしらって可愛らしさをアピールしております」
「すごいッス! さすが先輩っっ!」
何がすごいだよ。裸同然じゃないか。
これはもう服とか極限まで肌を露出させたというレベルじゃねえ。一歩間違えば変質者だ。
しかもそれを辻みたいな体でやられたらもう悲惨だ。
結局のところ、これが辻の行う服飾同好会の実態。
お裁縫を楽しむというものではなく、自ら各種様々な衣装を着て楽しむ、いうならばコスプレ研究会といった方が話が早い。
しかもそのコスプレはかなりエロい方向。メイド服(超ミニスカート)とか、ナース服(下着着けてない体が透けてる)とか、バニーガール(やたらと肌の露出が大きい)とか、チャイナ服(丈が短くスリットがきわどい所まで入っている)とか。
当然こんな衣装着るのだから辻自身が女の時でなければ話にならないが、いつ行うかは辻の気分次第。
今日みたいに唐突に「やる」といわれるのがほとんどだ。
ここに出席させられるだけでも疲れるのだが、自分が女の時に「やる」となったらもう悲惨だ。
「ほらっ、石井も恥ずかしがってないで出てこいよ」
「くそぅ、なんで僕がぁぁ……」
ついたての向こうから辻が引っ張り出してきたのは同じような格好の女になった石井常久。
辻とちょっと違うのはそのシールが黄色い星になっているというところだけ。基本コンセプトは全く変わっていない。
そう、女の時にやるといわれたら同じようにコスプレさせられるのだ。
「うわぁ、いいですいいですっ! 二人ともいいッスよおぉぉっ!!」
テンションが上がり様々な色っぽいポーズを決めている辻に対して常久は顔を引きつらせ、いかにも恥ずかしそう。
そんなものお構いなしに後輩の山瀬は辻持参の一眼レフカメラのシャッターを切りまくっている。
コスプレしたら様々な角度からの撮影は必須。撮影者はその日男になっている部員が行うことになっている。
その写真を辻がどうしているのかというと、何でも秘密のウェブページに公開しているとかしていないとか。
どっちにしても嫌々やっている俺や常久にしてみれば羞恥プレイ以外の何物でもない。
本当に今日は男でよかった。この前のフンドシ姿+ぎりぎりのサラシも辛かったが、今日に比べたらはるかにマシに思える。
「いいですねぇ。僕も今日のコレ、着てみたかったッス。今日に限って男なんだもんなぁ」
一方で山瀬はどういうわけか積極的にコスプレを楽しみたいご様子。
毎回毎回この活動日には、女の時は「今日女でよかったッス。こんないいもの着れたんですからぁ」と言い、男の時は「残念ッス。何で今日に限って男なんでしょお」と言うのがお決まりになっている。
しかしさあ、そのセリフ。今日みたいに羞恥プレイさせられている俺や常久に言われたらちょっと殺意を感じるぞ。
言葉には気をつけろよ、後輩。
### 3.教職員 ###
生徒達は半周期的に女になる、とは言ったが実のところこれは教職員にも該当する。
「はい、皆さん授業始めますよぉ」
甘ったるい声で教室内の生徒達に宣言したのは植松鉄平(ウエマツ テッペイ)、40代いまだ独身のここ最近体重と髪の毛の後退具合が気になり始めている担任教師である。
専門教科は国語。なんとも絵に描いたようなしょぼい担任と言う感じだが、現時点はちょっと違う。
「じゃあ、今日はまず102ページのところからですねぇ♪」
アニメ長の甘ったるい声、背中にかかるロングヘア、ちょっと無理してきているような一回り大きいスーツ、子供っぽい顔、さらには小柄というロリ属性が一部混入していながらも出るところは出ている可愛らしいと言う言葉が似合う女の姿だった。
かのルールは教師にも適用されている。したがって担任であろうとその他各科目の教師達も例外なく半周期的に女になる。
もちろん中身がそれで変わるわけではない。それは生徒達も同じで外見は女になるものの、中身の性格が変わってしまうとか、別人格が出現するとかそういう事は全くない。
現在の俺、蔵本竜介も同じだ。
例え今がこの学校の人間達に適用されるとおり女になっていて、そしてちょうど普通の女性に出る一月一回のあれが来て、ちょっと下腹部が痛くて頭痛がして気分がいらいらしているとしても、俺であることには全く変わりはない。
それによって性格が激変して、ドジっ子にも清楚なお姉様キャラにもツンデレっ娘にもタカビーなお嬢様キャラにもならない。
俺は俺、男のときと全く変わらない。
だというのにこの教師は全く違う。
「先生、そこのところは前回やりました」
「あ、そうでしたね。てへっ♪」
女子生徒(に、なっている男子生徒)からの指摘を受けて自分で頭をこつん、とぶっているこの姿。
普段は無愛想で淡々と授業をこなしていて、ちょっとやる気ないんじゃないかと思うこの教師は何故か女になるとこれだ。
外見相応の、大人なのにやたら子供っぽい女の子の性格になってしまう。
もちろん他の教師にはこんなことはない。普段と同じ、ごくごく普通の性格のままで全く変化はない。
うわさによるとこの担任の場合は40代いまだ独身のせいで女に飢えて自分で理想の女性像を演じてしまうのではないかとか、注射されたナノマシンが暴走しているのではないかとか、年だと脳が作りかえられておかしくなっているんじゃないかとか、単に馬鹿なんじゃないかとか、これが先生の本性なのではないかとかいろいろ言われている。
だからといって授業に差しさわりがあるわけじゃない。むしろ普段に比べたら明るく元気にやっているから授業を受ける分には女の時の方が見てて気分がいい。
しかし外見は変わっても中身が変わるわけではないはずなのにここまで性格が変わってしまうのはどうにも気になる。
さらには生理期間中特有のいらいら感がつのり、こういう茶目っ気のあるしぐさもなんだかわざとらしく見えて余計にいらだつ。
駄目だ、頭痛に痛みがひどい。初日だから余計だ。
「先生、保健室に行ってきます」
手を上げ、断りを入れた上で席を立った。すると……
「あらぁ、蔵本さん大丈夫ぅ? 誰か一緒に……」
「いえ、一人で大丈夫です」
「そお? 先生心配しちゃうよぉ」
しなくていい。俺は一刻も早くあんたの茶目っ気オーラから逃れたいだけなんだ。
保健室の先生も当然男だ。ただし、今は女。
「生理痛の薬は持ってる? 出そうか?」
「お願いします」
その姿はよく青春マンガやドラマに出てくる絵に描いたような美人の保健室の先生だった。
まあ、この学校の生徒も先生も女になればみんな例外なく美人か可愛い、そしてプロポーションがいい。
この先生も例外ではなく、美人に抜群のプロポーション、そしてアクセントにメガネ。
竹の短いスカートからストッキングに包まれた、すらっと伸びた足もまた魅力的。
残念ながら今の俺にはそんなすばらしいものを観賞している余裕はない。とにかく生理痛が辛い。
薬と水を受け取り、それを飲んでベッドに横になる。
「しばらく大人しく寝ていいからね」
「ふぁい」
お言葉に甘え、ここは大人しくしていよう。
普通の女性に比べたら頻度は少ないとはいえ、やっぱり二ヶ月に一回のこれはこたえる。
朝目が覚めてみたら女になっているのを自覚、それと同時に生理痛も自覚してしまう。
起きたら既に下着が(それもトランクスが)赤くなっていて、あわてて生理用品一式を手にトイレに駆け込んだのが今日の朝。
どばどばと出てくる血と部分的に混じっている生レバーみたいな塊は何度見てもうんざりしてしまう。
さっきもここに来る前にトイレに立ち寄って交換したけど、べっとりついた血を見るのはどうにも。
それと同時に始まる不快感。頭痛と痛みと苛立ち。
人によって症状は異なるみたいだが、自分の場合は初日の今がピーク。
その時は辛くて辛くてなかなか授業に集中できない。仕方ないのでそういう時はこうして保健室に逃げ込んでいる。
こうなると生理の終わるまで、数日間は男に戻ることが出来ない。
さっさと男に戻って逃げ出したい気分だけど、そういうわけにはいかない。これはある意味拷問。
こんなの毎月我慢している女性ってえらいと思ってしまう。それと同時にもっと女性をいたわらなきゃって思うよ。
まあ、そう思ってもらうことが俺たちを女にしている目的なんだろうけどね。
気がつけば結構時間が経ったようだ。チャイムが鳴り、授業の終わりを告げる。
今から昼休みで昼食の時間だが、この調子だとあんまり食べれそうにない。
まあ、寝てればいいか。せめてもの頭痛がおさまれば食欲も回復するだろう。
「蔵本さぁん、大丈夫ぅ?」
頭痛の種がやってきた。この声は間違いなく担任の植松鉄平!
予想通りの声の人物が保健室のベッドにかかる仕切られたカーテンを開けた。
その表情は確かに心配している様子なのだが……
「……大丈夫です」
「もう蔵本さん調子が悪いって言ったから先生心配で心配で……」
キーの高いアニメ声で話かけないでください。頭にキンキン響く。
本当に普段の、男のときの無愛想な性格とは真逆だな。心配してくれるのはいいけど、今はそっとしておいてほしい。
「蔵本さんお昼食べれないかもって心配してたの。だから先生ね、持って来たんだ♪」
そういって取り出したのはなにやら可愛らしい動物の形をしたタッパ。
パカッとフタを開けてみると、中に入っていたのは果物各種?
りんごとかみかんとかカキとか、きちんと切ってある果物類。それの一つに先生はフォークを刺す。
「はい、あーん」
「……」
俺の看病を買って出たつもりなのだろうか。この場合は素直に甘えておけばいいのだろうか。戸惑う。
そして何ゆえ一担任がこんなことしているのだろうか。
「あれ? やっぱり食欲ない?」
俺が口を開かなかったことに不思議に思っているようだ。
俺はそれよりもあなたの行動が不思議で仕方ないですよ。
### 4.休みの過ごし方 ###
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
学校が休みであっても朝はきちんとやってくる。目覚ましがならないのが普段の違いか。
といってもここは俺の部屋ではない。常久の部屋。
昨日、常久が「僕の部屋、寄ってくか?」と誘ってきた。
明日は学校も休みのことだし、まあ二人でだらだらするのもいいかと思って行ったのだった。
常久の両親は共働きで現在は海外赴任中。そしてこいつには兄弟はいない。
つまり家には常久以外だれもおらず、現在は一人暮らしも同然という状態だった。
当然生活費は親から送られてくるが、それでもちゃんと自炊しているあたり、こいつの真面目なところが伺えるな。
そんな一人しかいない3LDKのマンションの一室、そこに常久は俺を呼んだわけだ。
そしたらまあ、魂胆はこういうことだったわけだ。
その時俺は女で常久は男。よくよく考えてみれば男が女を部屋に誘う要件って、決まってるじゃないか。
二人で甘いキスをし、火照る体。
俺の衣服を一つ一つ脱がして行く常久。
それに合わせて常久も脱いでいく。
ついには二人で生まれたままの姿になってベッドイン。
抱き合い、キスを繰り返し、何度も何度も繰り返される挿入。
常久を受け入れ、注がれて喘ぐ女の俺。
激しく乱れ、二人の攻防は一晩中続いた。
そして朝を迎えたわけだ。いやはや、学校の中ではしょっちゅうやっていたけど、常久の部屋で一晩中やっていたのって初めてかもしれないなぁ。
正直俺は最初乗る気ではなかった。先輩方に注意されていたのだ、「学校の外ではあまりやるなよ。特に家ではな」って。
理由は分かる。寝ている間に性別が切り替わっては大変だからだ。
二人で一晩中乱れてぐっすり寝て、朝起きたら性別が切り替わっていたら大変だ。
これが女同士になっていればめくるめく百合の世界でそれもまたいいかもしれないけど、男同士になってホモの世界になっていたら最悪だ。
いくら何度も女の体で男に抱かれているとはいえ、男同士の絵面はいやだ。
それが頭にあったから乗り気ではなかったけど、常久の性欲は強かった。
ついでに「そう簡単に切り替わらないだろうよ」という常久の言葉もあって、結局俺も飲まれてやる羽目に。
確かに今女になったのは3日前。その前に女になっていたのは4日間だから今回は長めのはず。だったら別に明日男に戻るって事はないだろう。
連続して短期間になるって事はないわけじゃないけど確率は低い。早々都合よくタイミングよく切り替わるわけが……
「あるなぁ……」
目が覚めて気がついてみれば、俺は男に戻ってました。
柔らかい胸が硬い胸板に、散々挿入された部分には朝立ちした立派なやつが。
最悪だ。はっとなって同じベッドに寝ている常久を見ると……
「すー……」
静かな寝息を立てて寝ている常久は昨日は男だったのに、今日は可愛らしい女の子になっていました。
セーフ、セーフです。少なくともホモは回避できました。
俺の焦りなど露知らず、未だにくーすか寝ている常久。こういう寝姿も結構可愛い。
幸せなやつめ、そういえばこいつ寝起きが悪かったよな。……別にいいよな?
そっと布団を剥ぎ取る。昨晩のままだから当然裸。スタイルのいい女の子の裸だ。
起こさないようちょっと注意しながらその上にまたがる。
常久の体に備わる二つの柔らかそうな乳。見てると既に朝立ちで硬くなっている俺のブツがさらにいきり立ってくる。
そっと触ってみる。柔らかな感触、そして程よい弾力。
「ん……」
おっと、さすがに起きたかな? と思ったけどまだ寝続けている。なかなか神経図太いやつめ。
んじゃ、これはどうか。
常久の上にまたがり、そっと谷間に俺のペニスを接近させる。そしてきゅっと挟み込んでみる。
常久も女になれば例外にもれずスタイルはいい。それは胸の大きさも当然でしっかりとしたEカップ。
それだけあればパイズリするには十分だ。
ゆっくりと動き出す。弾力が俺のペニスを包み込み、最良の心地よさを演出する。
先走った液体が俺のペニスから漏れ出し、それが音を立てる。
結構大きい音にも思えた。だというのにこいつは未だに夢の中。
「やばっ!」
久々の男の体。それもあってか俺はすぐに達してしまった。
どくどくと放たれる精液。挟み込まれた常久の谷間に注がれ顔にもちょっとかかってしまう。
久々だけにこれが結構出る。常久の胸はどろどろの精液まみれになってしまった。
そして鼻につく匂い。男ってのは果てて、この匂いを嗅ぐと大体我に返ってしまうんだよなぁ。
俺も同じように力が抜け、次第に冷静な頭になっていく。
その一方で目の前の常久はというと
「んぅっ……」
まだ寝てる。いいかげん起きろよここまでやったんだからさあ。
しかしその寝顔、そして精液にまみれた姿を見ていたらまたしても俺の中でスイッチが入ってしまった。
出したばっかりだというのに再び下半身は元気に。
……別にいいよね、やっちゃいますか。
そっと下に移動。わずかに開いた足の中に入り口を発見。
うん、ちょっと濡れている。ひょっとして匂いで無意識に反応しているのだろうか。
ゆっくりと近づく、そしてゆっくりと挿入。
濡れているそこは抵抗することなく、滑らかに俺を受け入れていく。
久々の挿入感。常久の温かな内壁が俺のペニスを包み込んでいく。
「んぅっ……ってふあっ!? り、竜介っ!」
「おう、やっと起きたかお姫様」
寝ぼけた表情が一発で消し飛んだ。まあ、いくら寝起きが悪いといってもいきなりこの状況じゃ目が覚めるか。
昨晩は男で、女の俺を散々犯していたのに、朝起きてみたらいきなり女になって、いきなり教われてて立場逆転、だからかなぁ。
焦りか混乱か、はたまた別の感情か。
「な、僕女になって……っておっぱいに精液が! 何してんだよ竜介っっ!」
自分の体の変化と今の状況にようやく気がついたようだ。焦っているその顔も可愛い。
「何って寝起きの一発」
「人が寝ている間に襲うって、ふあっ!」
抗議の声を上げようとしたが、俺の軽い突きでそれも中断される。
実体験済みだから分かるけど、女の感じ方って男のとは絶対的に違うからな。こうされれば力抜けるんだよ。
ゆっくりと、まったりと動いていく。常久の弱いところは知りつくしている。だからこう動けば抵抗はできまい。
巧みに腰を動かして、その弱いところを攻めてやる。
「ふあっ、あぁっ…馬鹿っ、やめっ……」
抵抗する力もすっかり抜けてされるがまま。ちょっと意地悪してやろう。
簡単なこと、ちょっと手を止めて(腰を止めて?)すっと引いてみた。
「あ……」
止めちゃうの? と顔に書いてある。
「止めろって言ったよな?」
決まり文句のように尋ねてみた。
「……ああ、言ったよ。ったく、目が覚めたらいきなりこんなことされてたまったもんじゃねえよ」
おっと、すねちゃったか? ぷいと目をそむけて言うセリフは子供がすねてる時そのもの。
素直じゃねえな。でもまあ、面白い。
当然のようにこのまま終わらせるわけもなく再び挿入。
「ふにぁあっ!?」
可愛い声出しやがって、こいつは。
そして抵抗することなくすんなり受け入れた常久に再開するピストン運動。
「止めるんじゃなかったのかよぉっ!?」
「だってこの状況で止めるのもったいないし」
「朝っぱらから……このエロ魔人っ!」
そういうお前もまんざらじゃない様子だけどな。
深いところに侵入する俺に、きゅっと締め付ける常久。
柔らかく、そして時折きつく締める常久もしっかり受け入れているのが分かる。
ぎゅっとシーツをつかみ、喘ぐ常久。強気に言っていたが、結局は男と女で気負けるのは女の方。
快感が強く、それにのまれてしまう。こうなったらもう流されるのみ。
「ふぁっ、あぁっ……」
甘美な声を上げ、喘いでいる姿は色っぽく、そして可愛い。
ふにゃっとした顔、刺激が強いとこんな感じて顔が崩れて、弱々しくなってしまう。
そういうところに可愛さを感じてしまう。元の男のときの面影は感じられない。
それを見ると俺も余計に頑張ってしまう。だがそれも限度がある。
「あぁっ……イクっ、イっちゃうぅぅっっっ………」
先に達したのは常久。それに合わせるように俺も達する。
どくどくと注がれる精液。さっき胸の谷間に思いっきり出したのにまだ出てくる。
ある程度我慢すれば一緒にイクことができるように調整、ていうか我慢できる。
やっぱり一緒にイクのがお互いに一番いいしね。共同作業って感じ?
「ふあぁ、竜介ぇ……」
昨晩の強かった男の常久とは全然違う姿。ずいぶんとギャップもあるがそれもまた魅力的に見える。
そして再びスイッチオン。結局朝から二人して何回もやってしまいました。
### 5.休みの過ごし方、その2 ###
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
学校が休みであっても朝はきちんとやってくる。目覚ましがならないのが普段の違いか。
といってもここは俺の部屋ではない。常久の部屋。
昨日、常久が「僕の部屋、寄ってく?」と誘ってきた。
その時俺は男で常久は女。男女二人っきり。
二人で生まれたままの姿になってベッドイン。
抱き合い、キスを繰り返し、何度も何度も繰り返される挿入。
常久は俺を受け入れ、乱れ色っぽく喘ぐ。
激しく乱れ、二人の攻防は一晩中続いた。
今回俺が男に戻ったのは3日前。女になっていた期間は一週間と平均的。
時期としては怪しい感じがするけど、そういえば前回はタイミングよくこういう場面で翌朝互いに性別が変わっていたっけ。
いくらなんでもこう続くわけがないだろう。そう思っていたんだが……
「……ふっ」
都合よすぎだ。俺は女になっていた。
そしてふと隣を見てみると……まぁーったく、都合よすぎだよ。しっかり男になってやがる。
そういやこいつ、今回は女になっている期間長かったな。2週間ぐらいか?
つまり久々の男の体というわけだ。それのせいか、はたまた男の普通の生理現象か、下はしっかりとテントを張ってました。
俺たちが被っているのは薄い毛布一枚。それをしっかりと持ち上げているんだからまあ、立派なもの。
一応めくって確認する。
「おおぅ」
いやはや、立派ではありませんか。常久はどちらかというと小柄な体系の方だが、ここだけは立派なんだよなぁ。
俺のとどっちが大きいか。そんなもの比較はできんから分からん。
しかし、だ。
ボッキしてるペニス
↓
見つめる女
↓
昨晩の情事を連想
↓
濡れる下半身
↓
増して行く女の性欲
↓
発散したい気分
↓
目の前にいきり立つ絶好のもの
簡単な連想ゲームだった。ていうか、俺って馬鹿ぁ?
いやいや、別にいいよな? 折角だし。
どっちにしても相変わらず寝起きが悪いやつだ。いまだにくーすかと寝ているこいつをちょっとからかってやらねば。
「よっ…と」
目の前に立派にボッキしてるペニスは熱かった。血流が集中しているから必然だけど。
そいつを俺ご自慢のおっぱいではさんでやった。
ぷにゅっと音を立てたかのようでやっぱりいい。この前はこいつが女で、寝ているときにこっそりとこいつの胸でやったけど、今回は立場が逆。
こいつが男で、寝ているときにこっそのと俺の胸でパイズリ、というわけだ。
寝込みを襲うことに変わりはないな。しかし目を覚まさないことに変わりはない。
常久のは結構立派な方だけど、それを挟み込む俺の胸も見事なものだ。
さすがFカップ。大きくないとやり応えがないな、うん。
胸の柔らかな双球、それに挟まれる硬いペニス。
柔らかいものと硬いもの、相反する物体同士の相互関係は心地よいものを生み出す。
胸の中に包まれたそいつはさらに熱くなっていき、段々と反応を示ししていく。
寝ている状態であったとしても体は自然と反応している。さらに硬くなって、熱くなって、先走った汁があふれてきた。
くちゅくちゅと音を立て始める。俺の胸の中で奏でるメロディ。
ちょっと小休止、その先っちょをぺろっと舐めてみた。
「んっ…」
わずかに反応する常久。しかし未だにこいつは夢の中。
まったく、こんな美女(?)がせっかくご奉仕してあげているというのに、寝ているなんて失礼じゃないか。
まあ、俺自身も今はご奉仕というよりもいたずらといったほうが気分的に近いけど。
そのいたずらは続く。胸でマッサージを続けながらその先端を優しく愛撫する。
美味くもまずくもない味、しかし女の体になると時折無性に欲しくなってしまうことのある味。
舌先で優しく舐めていく。その先に少しずつあふれてくるそいつをなめている時、感じ取った。
わずかな振動。谷間で感じ取った振動でそれを察知した。
俺は反射的に胸で包み込む。完全に谷間に埋まった時、振動が大きくなり、熱いものが噴出してくる。
「くっ…!」
激しくペニスが鼓動し、精が放たれる。常久の男のダムが決壊し俺の女の胸に注がれる。
熱くなる谷間。ねっとりとした感触が胸の中に広がっていく。
決壊が収まり、離れてみると俺の胸は洪水状態。精液がべっとりとかけられている。
やれやれ、なかなかすごい惨状じゃないか。とっさの判断で胸に出させたけど、口で受け止めてもよかったか?
指先でちょっとすくってみて、ペろっと舐めてみる。うん、美味くもなくまずくもない。
胸にしたのはこいつに対するあてつけだ。目が覚めたらよくもこんなにしてくれたな、ぐらいいってやろうと思って。
で、肝心の常久はというと
「んぅ……」
いまだ夢の中。いい根性だ。
さっきの射精も結局こいつには夢精でしかないようだ。今頃どんな夢見ているんだか。
いいじゃねえか。そこまで寝ているっていうんならこっちも実行しちゃうよ。
夢精して若干しぼんでいたそいつを軽くなでてやるとあっという間に復活。こいつもいい反応するなぁ。
でもそのほうが好都合。しっかりと上を向いてるそいつを手に、俺はその上にまたがる。
俺も俺で既に下はしっかりと濡れている。挿入準備は万全、ってか?
ぴたり、とあてがう。亀頭の硬くも柔らかくも感じる感触が内壁に伝わる。
昨日はここにあった自分のペニスを通して常久に侵入していたというのに、今度は逆に常久のそれが侵入する立場に。
存在感のある突起物は裏返して内側にもぐりこんでしまった、そんな感じ。
毎度の事ながらこの瞬間はドキドキする。陽が陰に、突起が受け側になる。
ゆっくりと腰を下ろしていき、男を迎えれていく。
「あ、はぁ……」
入ってく感じ、たまらない。自分の体の中に侵入していくペニスが心地よい。
ちゅぷ、とか、にちゅ、とかそういう音が聞こえる。いやらしい。
熱い、ドキドキする。楽しくも嬉しくもある感覚。女の体で男を受け入れるのはたまらなくいい。
すっかりペニスを飲み込んでしまった。あっさり男を迎え入れてしまった俺のヴァギナも結構淫乱。
「あ、んんっ、んぅっ……」
ゆっくりと腰を動かし始めた。俺の中でうごめくペニスは別の生き物のようだ。
上下に動くペニスは俺の奥をそっとつつく。奥の入り口に当たる度にぞくっとする感じがする。
やりすぎると変になっちゃいそうな気がして、だから今はそっと、包み込んで……
「ん……ってうわっ!?」
常久がやっと目を覚ましたようだ。
「お早う、寝坊だぞ」
「お早うってお前…うわっ! 俺男に戻ってる!?」
気がつくのが遅いっての。男に戻っての第一発は既にいただきだよ。
それは俺の胸を見てすぐに気がついたようだ。たっぷり降りかかっていたザーメンもいまやカピカピに乾いている。
まるで俺の胸を固めてくれる糊みたいな感じだけど、残念ながら俺の胸はそれよりもはるかに柔らかい。
こうやって上下に動けばぷるんぷるんと上下にゆれる。この時の常久からの視線ならばすげえエロく映っているはずだ。
「ひゃっ!? い、いきなり何しやがるっ!」
いきなり常久が腰を突き上げてきた。不意打ちに驚き、俺はずいぶんと可愛い声を出してしまったような。
「逆レイプしておいてそういう事言うか? 男と女じゃどっちが強いかぐらい分かるだろ?」
「な、なんだとぉ。女性蔑視は反対…きゃあぁっ!?」
二度、三度俺を突き上げてくる。俺の腰をしっかりとつかみ、俺が逃げ出せないようにまでして。そして徹底的に攻め始める。
その度に常久のペニスは奥に達し、子宮の入り口を突き上げてくる。
こ、こんなして子宮口攻められたら、もう……
「ま、待て、そんなにしたら、俺……」
「人が寝ているときを襲っておいてまだ言う?」
常久は手を緩めることなく連続して、休むことなく腰を突き上げる。
こうなると俺も強気でいられなくなる。もはや体は力を失い、常久にされるがままに。
「あはぁ……あんっ、あぁっ………ふあぁ…」
無意識に喘ぎ声が次第に大きくなって、部屋に色っぽい声が響き渡る。
反響し、自分の色っぽい声で俺の中の男の部分が興奮し、女の体でさらに欲情する。
体が揺れ、胸が揺れる。大きな重量感のある胸が揺れて重心が移動すると体全体が揺さぶられるかのようだ。
何も触れていないのに胸が揉み解されているかのよう。
「あぁっ……やぁあんっ、常久ぁ…」
自然と下半身に力が入る。下腹部の力がペニスを締め付け、その存在によって俺自身に力がフィードバックする。
きゅっと締め付けられたペニスはさらに熱くなって、暴れて俺を内側から滅茶苦茶にしようとする。
そのせいで俺はとっくに制御しきれなくなって、快感にもまれている。
だめぇ、気持ちいいよぉ……
「あぁっ……常久ぁ、だめぇ、俺…イっちゃうぅぅっ!」
「おう、行けっ。僕も思いっきり、竜介の中にっ!」
押し寄せてくるのが、快感が押し寄せてくるのが分かる。
そして一気に爆発する。俺の体の中で爆発したかのように、快感が一気に噴出していく。
それが合図となっていたかのように常久のペニスからも白い粘液がびゅるびゅると噴出してくる。
さっき俺の胸に思いっきり出されたはずなのに、まだこんなに出てくる。
そいつは俺の中に一気に噴出され、あっという間に満たしていった。
快感は続き、俺は常久に腕を捕まれたまま体をのけぞってそれに耐えていた。
「あぁ、ふぁぁ……」
荒い息を整え、落ち着かせる。そして見つめあう。
落ち着いたとはいえ、互いに火がついたことに変わりはなかった。だから
「もう1回やる?」
「当然」
結局そのまま第二ラウンド、第三ラウンドへと突入していく。
やっていることはあんまり変わっていなかった。
### 6.休みの過ごし方、その3 ###
「ん……」
カーテンの隙間からこぼれ、部屋に差し込む朝日。
俺の部屋ではない、常久の部屋で迎える朝も回数が多くなった。
昨日、常久が「僕の部屋、、寄ってくか?」と誘ってきて、ベッドイン。
俺が女で、常久が男。昨晩もやっぱりお互いに乱れあい、男と女を楽しんだ。
なんだかデジャヴになっている気がするけど、今回も案の定……
「またですか」
俺は女のままだったが、常久が女になっていた。
女同士、裸でベッドに寝ている姿は悪くないかもしれない。
しかしこうも連発して、これまたタイミングよく性別が切り替わっているってのはどうなのよ?
ひょっとして学校以外の場所でこういうことしたら性別切り替わるように設定でもされているのか?
そう物事はうまくいかないよ、といわんばかりにお仕置き、ってか?
まあいい。なっちまったものはしょうがないし。
それはそうと常久は女になったからどうかわからないけど、俺は昨日同様女のまま。
だから昨晩常久がたっぷり注いでくれたアレの感じが残ってる。それと挿入感も。
そのせいなのかわからないがいまだ下腹部に残るエッチの雰囲気。ぐっすり寝たとしても残っているこの気持ち、どうしてくれよう。
「……やっちゃいますか」
裸で寝る常久の体、こんなの見ていたら男だったら妖しい気持ちを抱いたっておかしくはない。
無論今の俺は女だが、それでも中身は男だから仕方ない。
常久の上にまたがり、ちょうどさかさまになるような形でそっと常久のあそこに接近する。
昨晩はここにあった兵器で俺を攻めまくっていたが、今は可愛いピンクのアレがある。
綺麗な形、女になった俺たちはここまでかといわんばかりに可愛い、もしくは綺麗になっている。文字通りの意味でも。
他のやつらは知らないけど、少なくとも俺も常久も何度も使い込んでいるのは間違いない。
にもかかわらずそこは綺麗なピンク色で、処女のようだった。性転換するたびにここは再生しているのだろうか。
まあ、さすがに処女膜までは再生してはいないようだが。
ちゅっ、と口づけしてみた。
「んんっ…」
後ろから声が聞こえてきたが、相変わらず夢の中。
こうなるとイタズラ心が芽生えてくる。いつまで起こさないようにしながら攻めることができるかどうか。
ひだひだに触れてみた。すると敏感に反応してか、そこはひくひくと動く。
なるほど、無意識のうちに反応しているのか。頭は寝ていてもここは起きているらしい。
そしてじわりと濡れていく。その過程はまるで潮で満ちていく浜辺のようだ。
その先っちょ、クリトリスもまた血流が集中し、充血しているのか。
男のペニスの神経がすべてここに集中しているというけど、本当はどうだか。
しかし実際に女になって比較してみると分かるが、全てかどうかは分からないがかなり敏感であることには違いない。
そこに軽く触れたぐらいだったら起きないだろうな、と思っていた矢先。
「ひあっ!?」
体中に流れた電撃。常久のではない、俺のクリトリスからの衝撃だ。
「お前ってやつは…また人が寝ているときに」
俺の股間から声が聞こえる。丁度そこに頭がある常久からのだ。
「あ、お早う。起きた?」
「こんなことされてたらさすがに起きるに決まってるだろ」
うん、それもそうか。しかし裏を返せばここまでされないと目を覚まさないということではないのか?
「で? お前は一体何をやってるのさ」
「何って、ナニに決まってるだ、ろっ!」
「ひあぁっ! い、いきなり何するんだよおぉっ!!」
何って常久のクリちゃんを軽くぴんと指ではじいただけだ。
ちゃんと軽くだぞ。俺だって強くはじいたらどれだけ体にダメージがいくかぐらい分かってるから、ちゃんと加減はしている。
とはいえ、軽くであってもやはり衝撃は大きかったようだが。
「まあ、目覚めの一発、ってやつ?」
てへ、とちょっと舌を出して照れ笑いしてみた。
「こ、こんのやろおぉぉぉっっっ。仕返ししてやるっ!」
「ひゃあぁぁぁっっっ!?」
常久が俺のクリトリスを仕返しとばかりに舌で攻めてきた。多分舌先でぎゅっと押し付けたんだろう。
体制的に丁度目の前にそれがあるんだから、そういう攻撃の仕方をするのがある意味自然。
突発的だったこともあり、俺はそれに対処するのがわずかに遅れ予期しない体の電撃に再びひるんでしまった。
「ふっ、こんな体勢とっているって事はこういうこと期待していたんじゃないのか?」
図星。俺が取っているのは互いに上下逆になっている、いわゆる69という体勢。
寝ている常久にこんな形で攻めていったのは起きたらいきなり目の前に俺のヴァギナがあってびっくりさせるって事と、起きたら攻めてきてくれるんじゃないかという期待。
なし崩しにお互い気持ちよくなろう、ってわけだ。
「だったらたっぷり期待に答えてやろうじゃん」
両手で俺のプリティなお尻をしっかりつかんで逃がさないようにした上で、常久が再び攻めてくる。
「ん、やっぱり竜介のお尻ってプリプリで可愛くていいねぇ」
「こ、こんの尻フェチがぁぁっ!」
舌で攻めている間も俺のお尻をふにふにぺたぺたふにゅふにゅ触って楽しんでやがる。
俺はどっちかというと自身のFカップの美乳が自慢だったりするのだが、そうではなくあまり気にしていなかった尻の方がいいといわれるとちょっと複雑になる。
まあ、どのみちこの体制だとFカップの美乳はあまり役に立たないが。
一方的な攻めは続いている。俺だってされるがままじゃない。
「あんっ……はは、ようやく再開したか」
「うるせえっ、されるがままってしゃくだからな」
俺も負けじと常久の太ももをがっちり腕で組んで逃がさないようにし、おクチで攻めていく。
常久のヴァギナは愛液で濡れ、すっかりトロトロになっている。
濡れているところに、今度はさらに俺の唾液がそこを濡らしていく。
「んっ、んんっ……んふぅっ………」
一方的に強く攻めていたのは最初だ。あれはあくまで互いにイタズラ気分でやったに過ぎない。
今は違う。互いに優しく、丁寧に、愛しいように愛撫している。
お互いに体は火照って、お互いの体温でお互いをさらに温めあって。
もうエッチなことしか頭にない。ぴちゃぴちゃと唾液と愛液のいやらしい音が部屋に響いて。
「んあっ、竜介ぇ……」
「はふぅ、常久ぁ……」
竜介は今朝女になったばかりだからまだ体がなれてないだけに感じ方も大きいだろうと思われる。。
一方で昨日も女だった俺の方は多少有利と思っていたけどそうでもないようだ。
あそこも気持ちもお互いにトロトロになって、エッチに酔いしれている。
「あっ、あぁっ…イクよ、イっちゃうよ竜介ぇ……」
「あっ…お、俺も、イクっ、イっちゃうぅっ!」
ああ、今日も、二人で一緒に……
「イっくうぅぅぅぅっっっっっ……………!!」
朝からお互い女の体でレズプレイでエッチなことして、ちょっと不安になっちゃったりして。
でも、気持ちいいからエッチなことしか考えられなかった。
今日もお互い疲れ果てるまでエッチなことして楽しんでいた。
### 7.休みの過ごし方、その4 ###
「ふぎゃあぁぁぁぁっっっっ!!?」
絶叫で目が覚めた。
昨日、常久が「僕の部屋、寄ってく?」と誘ってきて、ベッドイン。
その時はお互いに女の体。ちょと前に女同士でやってクセになって、昨日の夜も女同士でずいぶん盛り上がっちゃったなぁ。
で、今聞こえてきたのは常久の声。寝起きの悪い常久がめずらしく俺よりも早く起きて、男としては高めだけどそれでも女の声ではない男の声で絶叫していた。
……男の声?
眠い目をこすりつつ、寝ぼけた頭で状況を確認してみたら……バッチリ目が覚めた。
「……男?」
二人でベッドの中、身を起こし絶叫して固まっている常久は、男の体。
一方で俺の体は……男になっていた。
つまり、図的には禁断の男同士でベッドイン、ホモの世界。
今になってようやく先輩方に注意されていたお言葉、「学校の外ではあまりやるなよ。特に家ではな」ってのを思い出していた。
「……ヤッチマッタダー」
以来、二人で夜を明かすって事はなくなった。
(学校の外では時々やっちゃったりしていたけど…な)
### 8.水泳授業と水着 ###
よくマンガやアニメで体育の時間、女子更衣室での女の子同士のキャピキャピした情景が描かれることがある。
着替えながらおしゃべりに花を咲かせる華のある世界。
時折お互いの下着を見ては「あっ、可愛いブラじゃん」といってみたり、後ろから襲って胸を揉んでは「おっ、成長してるねぇ。うらやましいわ、あたしはペッタンコなのに」といってる光景もあったり。
しかし現実的にはそんな光景多分ありえないだろう。
案外年頃の女子は着替え中は干渉しない。普段はアイドルや芸能人の話題できゃいのきゃいのしている女子も着替えは黙々としているとか。
極力お互いの下着姿を見せないように見ないようにし、さっさと着替えてさっさと授業へと向かっていく、それが現実だと誰かが言っていた。
したがって仮に俺たちの誰かが女子になって、本物の女子達の更衣室に忍び込み、本物の女子達に混じって着替えをしていたところでそういう光景は発生しない。
仮にそういうのを期待して忍び込んだとしたらがっかりするだけで忍び込んだ苦労が報われない。
まあ、根本的に忍び込むなんて愚かなことするやつはいないだろう。近所にそういう女子校とかないし。
現実がそうであるのは本物の女子がそういう考えを持っているからだということなのだが。
しかし、そういう妄想をわずかでも持っている男子が女子になっていて、更衣室にそういう女子(元男子)が100%いる中で全員が着替えをしていたらどうなるか。
「うりゃっ、成長しているか竜介ぇ」
「どわあぁぁぁっ! いきなり胸揉むなぁぁぁっっっっ!!」
……こうなる。
「お前らいつまでもイチャついてないでさっさと来んかっ!」
で、体育教師(元男、現在女の体で競泳水着着用済)からの一喝が入る。
今日から体育の授業は夏休みに突入するまでの間、プールで水泳となる。
俺たち女子がプールに全員集合したのは授業開始のチャイムが鳴って5分経過してから。その前に男子は全員集合しているし、教師もとっくに来ている。
女子が遅れた原因は明白。女子は着替えに時間がかかるのよ……ではなく、女の体でイチャついていたから。
最も着替えに時間がかかるのは事実。この学校の水着は指定されており、男子の水着は海パンで女子は競泳水着。
男子はスパッと終わるが、女子の競泳水着は着辛い。女になって自らこれを着ることになって始めて理解したが、これを着るためには水着の首のところから足を通し、一気に上げなければならない。
おまけに水着って体にフィットさせるために結構きつい。それが全身にだから結構時間がかかる。胸が大きいと余計にだ。
補足だが、トイレで用を足す場合にはこれを全部脱いで足首まで下げなければならないので、これが結構面倒くさい。
実質裸で用を足さなければならないなんてエロい……ではなく、女の体って苦労する。
さらには髪の毛が長い場合にはまとめなければならない。俺の場合は女になると髪の毛が長くなるのでこの作業が必要になってしまう。
どおりで時間がかかるわけだ女子の着替えって。まあ、実際には着替え中の無駄なおしゃべりも原因の一つかもしれないが。
で、これに加えてさっきの襲撃……教師の言うところのイチャついていたが加わる。
別に俺はイチャつくつもりはさらさらない。さっさと着替えてさっさとプールに来たかったのだ。さっきの髪の毛で時間がかかるからな。
だがいかんせん妨害が容赦なく入ってしまう。そうなってはどうにもならない。そのせいで着替えが遅れ、余計な叱責を食らってしまったのだ。
「くそう、何で怒られなきゃいけないんだ」
ぼやくがそんな不満の声が教師の耳に届いて理解していただけるわけもない。遅れたことは事実として残っている。
そして原因を作った生徒、俺を背後から襲って胸を揉んできたやつも同様に俺のぼやきなど耳に入らないだろう。
結局怒られ損、何で俺がこんな目に……ってやつだ。
「うむ」
ふと見れば辻がなんかうなっていた。
この学校の生徒教職員は半周期的に性別が変わる。したがって授業も男女別で分けるなんて事はしない。そんなことしたら授業についていくことができないからな。
従って体育も男女混在で同じ内容の授業を受ける。まあ、女なった時の体力低下による成績不信は多少考慮されるけど。
そんなわけで今ここで男の辻が隣にいても何の不思議もないわけだ。
ちなみに今回の水泳の授業は一部男子にとっては辻の水着姿を楽しみにしていたらしい。
なにせ辻が女になった時は爆乳を超えた領域のPカップの持ち主。そんな体が着る水着は確かに見ものかもしれない。
が、残念ながら今日は男。バストの代わりに腹の肉がボリュームいっぱいになっています。残念でしたぁ。
「どうした辻、我慢しているんだったらさっさとトイレ行ってこいよ」
「トイレを我慢してるんじゃない!」
びしっ、とした表情。現在辻は男の体、チョイとデブの体だった。
腹の肉がボリュームいっぱいとは言ったが、無駄に脂肪がついているという感じはしない。どっちかというと相撲取りのような実用的でパワーが出せそうな太い体格といった方がいいかもしれない。
引き締まったデブ? そういえばいいのか分からないがある意味では格好いいかもしれない。
「で、何をうなっていたんだ?」
「いや、やはり学校指定の紺色スクール水着はこれはこれでいいのだが……やはり今ひとつ映えないなと思ってな」
訂正、外見はどうあれ頭の中はやっぱり変人でした。
「映えない、かよ」
「うむ。やはり女になって、それも魅力的な体になっている以上水着も魅力的なものにしないともったいないではないか」
そういうものなのか? もったいないって。
「うむ、決めた。今度の休みに我ら服飾同好会で海に行くぞ! そして女の水着を堪能するのだ」
ああ、早々に決定してしまった。海に行くといってもその目的は泳ぐのでもなく、かといって日に焼かれるためでもなく、ただ単に水着を着るためなのが辛い。
しかも他人の水着姿を干渉するのならまだしも、自ら着てさらし者になれってのは、なぁ……。
それに付き合わなきゃいけないのか。めんどくさい。
「ってちょっと待てよ。言っとくけどそれは無理があるぞ」
「なんで?」
「何でって、その頃には俺は男に戻ってるぞ」
男と女の性別が切り替わるのは半周期的で、長くても二週間が限度だ。
俺が今回女になったのは一週間前。一方で海に行こうとしているのは数日後。となるとその頃には俺は女ではなく男に戻っている可能性が高い。
男に戻っては女の水着を着ることなど出来ない。着たら変態だ。
そうなれば一安心。わざわざ女の水着を公衆の面前でさらす必要も無くなる。安心安心。
「その心配は無用だ。俺の研究によればそれまで男に戻らずに確実に女でいられる方法がある」
くッ、こいつも一筋縄ではいかないか。通常期間ぎりぎりまで確実に女でいられる方法とは、裏技編み出しやがったか。
男に戻ってバンバンザイ、というわけにはいかなかったか。こいつ妙なところで一枚上手だな。
「で、女でいられる方法ってなんだよ」
「ふっ、よくぞ聞いてくれた。俺たちは性別が切り替わるのは深夜の寝ている間。俺が自らの睡眠中に記録した映像では変化は時間的に見てちょうど就寝から15分から30分後、つまりはノンレム睡眠に突入した深い眠りの時に、わずか数分間で体の性別が変換される」
「お前そんなことやっていたのかよ。研究熱心というかなんというか……で、肝心の方法って?」
「簡単な話だ、方法は二つ。一つは寝ないでいるということ。寝ている間にのみ体が変換されるのだから寝なければ変換は起こらない。しかしそんなことをしていては体は疲れ、身体的負担が大きい。それに日中であっても寝ていれば性別の変換は発生するからこれは方法としてはあまりよくない」
「なるほど。で、もう一つの方法は?」
「体の変換が起ころうとする時にちょっとした妨害を仕掛けるだけだ。そうすれば安全装置のようなものが働くようで、それに対抗して無理矢理体を変換しようとはしない。もっとも、これは女の時に男に戻らないようにする方法しかないけどな」
「ふむ、なるほど。で、そのちょっとした妨害って?」
きっとした目線で俺と目をあわせ、辻はこう語った。
「あそこにディルドーをつっこんだまま寝ること」
頭を抱えてしまった。なんだか頭痛がしてきたよ。
俺は勝ち誇ったように笑みを浮かべて語った辻にこういった。
「お前バカだろ?」
下腹部が痛い。主に女の子のデリケートなところが。
夏、青い海、白い砂浜、まぶしい太陽。人によってはそれを見れば疲れが吹き飛んでしまうかも知れないが、残念ながら痛みは飛んでくれないようだ。
あの日以来、辻より貸し出されたディルドーを毎晩のようにあそこに突っ込んで寝る羽目になった。
毎晩ベッドの上でショーツをちょっと下ろして自らあそこにディルドーを突っ込み、眠りにつくのはどういう姿なんだか。
ついでに入れるたびに喘ぎ声が漏れ、時にはちょっとイッちゃったりしているのはどうなのか。クセになったらどうすんだよ。
突っ込んだ状態でショーツを穿く時に少しエッチなスイッチ入っちゃってなかなか寝付けなかったし。まあそれ以前に下半身の異物感は辛かった。
初心者向けのソフトなやつだ、といって辻から貸し出されたのだがこいつに初心者も何もあるのか?
まあ、辻に言われてそれを毎晩守っている俺も俺だけど。
どっちにしてもその甲斐あってか、今現在俺は女の姿でこの海に来ている。
ああ、やっぱし異物感が残る。まだ何かあそこに入っているんじゃないかという違和感が残っている。
それとともに別の違和感というか、痛みがあったりするのだが。
俺が推測するに、それは多分男に戻ろうとしている体の反応じゃないかと思っている。
男に戻ろうとして女の子宮の中から男の物体、というかペニスとかいろんなものが出てこようとしたんだけどディルドーが邪魔して出れなくて、それでも必死に抵抗してそのせいで痛いんじゃないかと思っている。
その痛みは寝起きの時が一番強くて、ちょっと辛かったけど今は大分収まっている。
とりあえず今日一日乗り切れば明日は男に戻っているだろう。仕方ない、辻には今日一日だけ付き合ってやるか。
「竜介ぇ」
「お、常久か」
浜辺にて常久の姿を発見。それと一緒に後輩の山瀬の姿もあった。
俺もそうだが二人とも既に水着に着替えている。更衣室では見なかったなと思ったら、どうやらとっくに二人は到着して水着に着替えていたようだ。
「常久はそういう水着なわけだ」
「ああ、いろいろ突っ込みたいところはあるけどな」
俺たち全員が着ている水着は辻から貸し出されたものだった。
俺が着ているのはマイクロビキニというやつか。上下分かれたセパレートの、マゼンダ色の布面積がずいぶんと小さいやつ。
ブラは首と背中で紐を結んでつけるのだが、これが簡単にほどけそうで怖い。
それ以前に布面積がバストに比較して明らかに小さいため、ちょっと激しく動いたら簡単にこぼれてしまいそうな気がしてならない。
下も下で前は申し訳程度だし、後ろは完全にTバック。左右で結び目を作るのがすんごく面倒くさかった。
一般女性はこんな水着どうやって着ているんだ? 誰か着用方法をレクチャーしてくれよ。
一方で常久は緑色のワンピースタイプで着やすそうだ。しかし露出はかなり大きい。
おなかはぱっくり開いて、胸元も谷間くっきり。胸から出た紐が首の後ろまでのびてそこで結ばれているようだけどそれをほどいたら前はオープンになりそうだ。ある意味金太郎が着ていたやつと同じ。
まあ、それは俺も同じだけど。
問題のディルドーも辻からの貸し出し物だったが、あいつは何でこういうものを持っているんだ? 一体どこからこんな水着調達したんだか。
で、残る後輩の山瀬はというと……
「犯罪だな」
「うん、ある意味犯罪だな」
「え? 何がですかぁ?」
本人は俺たちの言ってることを理解し切れてないようだ。できれば理解してほしい。今の自分の姿がかなり危険だということを。
女になった山瀬は身長146cm(辻による情報)の小柄ながらバストは94cmのIカップ(辻による情報)らしい。
身長165cmに直したらバストは106cmのJかKという恐ろしい数値になってしまう。つまりはロリで爆乳。
そんな体で着る水着というのが……旧式スクール水着。
恐らくこれも辻からの支給物なのだろう。紺色のありふれた色で、布面積の多さと話には聞いた事のある旧スク水特有の構造である下が開く仕組み。
これとロリ爆乳の組み合わせは破壊的。歩くたびに旧スク水の下で揺れる爆乳にはちっちゃい子が趣味でない野郎にとってもぶっ倒れてしまうほど。
二次元の世界ではブルマと旧式スクール水着はいまだ現役だが、現実世界ではこんなものとっくに過去の遺物。
こんなものをどっから調達してきたか知らないが、本当に何でも持っているなあいつ。そのうちどこでもドアが出てくるんじゃないのか?
「いいですねぇ先輩たちは。そんなカッコイイ水着でぇ」
格好いいのか? どっちにしてもうらやましがられても俺たちにとっては突き刺す言葉でしかないぞ。
「で、でもほら。山瀬も結構可愛いからいいんじゃないのか?」
常久が気を使ってか、それとも自分がいじられたくないためか山瀬の水着へと話題を変える。ナイスだ、俺もこれ以上自分の水着姿をあれこれいわれたくないと思っていたのだ。
「そ、そうっすよね。辻先輩が選んでくれたんだから……ぽっ」
あっさり納得してしまった後輩の気持ちの切り換えの早さに驚嘆するか、それとも照れてるしぐさが可愛いといっておくべきか、それとも何故そこで照れるのだと突っ込むべきか。
「あ、ああそうだな。お前の愛する辻先輩が選んだわけだしな」
からかうつもりで言ったセリフだったが、そのせいでとんでもないことを山瀬は言い出した。
「は、はい。先輩、僕のこと本当に愛してくれたしぃ」
「はい?」
「いえ、僕に変身阻止のためのディルドー渡してくれた時なんですけど……」
ああ、山瀬にもしっかり渡したのね。あのディルドー。
「僕は女の体じゃ処女だったんですよぉ。だからこれ入れたら処女膜やぶれて処女喪失になっちゃいますねぇ、なんていったら『じゃあ処女喪失は俺で経験しておくか?』って、辻先輩が言ってくれたんですよぉ。そしてその晩、辻先輩が部屋に招いてくれて、先輩の匂いのする部屋のベッドの上で……ぽっ(*/▽\*)」
聞いてはいけないことを聞いてしまった。なんて事をしたんだ辻の馬鹿野郎。
もういい。とりあえず今の話は聞かなかったことにしよう。とりあえず三人集まったんだから問題の同好会会長の元へと行こう。
早くもうんざりした顔の俺と常久と一人顔を赤くしている山瀬のご一行は辻の指定された場所へと移動する。
そこに可愛い後輩の処女を奪った憎き強姦魔……もとい辻がいるはずなのだが。
「遅かったな、諸君」
いた、辻だ。
案の定、といえるかもしれない辻の姿。
毎度おなじみのPカップ超乳の体を包んでいるのはこれまた布面積の少ない上下セパレートタイプのスカイブルーの水着。
上は乳首をかろうじて隠し、下も大事なところを何とか隠している。後ろは間違いなくTバックだな。
とりあえず俺はこいつのことだからヒモだけの水着を着てくるんじゃないかと不安だったがそれよりはましだった。
が、露出が多いことに変わりはない。
「ふむ、ようやく全員揃ったわけだな」
シートを敷いて横になっていた辻が起き上がる。その時乳が大きく揺れた。
こいつが着ている水着は胸を首の後ろで縛ってあるヒモから斜め下に向かって伸びて、そこで縛り固定している。
従って下方向の支えは弱い。ということはそのまま乳が下に落下してぽろり、ということも十分ありえる。
多くのギャラリーが辻を含めた俺たちに注目している。理由など分かっている、この悩殺的な肉体のせいだ。
グループで来た男達が品定めしていたり、カップルの男のほうがこっちを見て彼女からひっぱたかれていたり、子供が面白そうにこっちを指差して母親が見ちゃ駄目といっていたり。
今の段階でもかなり注目され、ある意味周囲を混乱させている。この状況下でぽろりなどしようものなら周囲一体鼻血の海が出来上がってしまう。
それは回避させなければならない。それは自分もだし、辻もぽろりをさせないようにしなければ。
しかしひょっとしてこの男(?)はそれすらも狙っているかもしれない。そう考えると油断ならない。
「では諸君、折角の女の体で水着着用イベントを無事迎えたのだ。今日は存分に楽しもうではないか」
なにがイベントだよ。
「もちろん撮影会もあるぞ」
といって取り出したのは立派な一眼レフカメラ。結局それが目的かい。
「はぅぅ、先輩に撮られるぅぅ。僕も先輩のこと綺麗に撮ってあげますからぁ」
一人感動しているのは辻を唯一慕っている後輩、山瀬皇。一方で俺と常久はなるようになれと諦めモードだが。
「ねぇ彼女たち。俺たちと遊んでいかないか?」
ああ、もう来たか。絶対に一人か二人は来るだろうなと覚悟していたが、やっぱり来たよ、ナンパが。ていうか早すぎ。
来たのはにやついただらしない顔した三人組。とりあえずデブではないが、あまり筋肉がなく、ひょろっとしている体格は特に運動をしていないことはバレバレだ。
一方でこっちは自分で言うのもなんだが全員極上の女体なんだぞ。それに見合ったスタイルを身につけてからナンパしろってんだ。
もっとも定番過ぎる声のかけ方の時点で俺は失格と言い放ってやりたい。だらしのないしゃべり方も失格だ。
「君達綺麗だし、カワイイし、楽しめると思うんだけどなぁ」
ほうら来た。口説きの上等文句。可愛いとか綺麗とか適当に褒めてりゃ気を許すとでも思ってんのか。
せめて飯でもおごるぐらい言ってみろ、けちんぼ。まあ、おごってもらうつもりもさらさらないけどな。
それと何でお前ら上から目線な話し方なんだよ。普通人に物を頼む時は下手に出るだろうが。
そんな俺の気持ちは顔に出ていたのだろうか。少なくとも常久や山瀬はすっごく不機嫌になっているのが顔に出ている。
して、一応このグループのリーダでもある辻はというと。
「ふむ、残念だが失格だ」
ずい、と一歩前に出てはっきり断った。
「君達が私達につり合うとでも思っているのか?」
おおうっ、挑戦的な発言だな。つまりはお前達は俺たちの美貌の前ではカス同然なんだよボケぇ、といってるも同然か。
そのやり取りを聞いてか、回りではくすくすと笑い声が聞こえている。どうやらギャラリーの皆さんもこのナンパ男たちが俺たち美女達(?)には合わないと思っていたのかもしれない。失敗は最初から決まっていたようだ。
その意味合いはナンパ男たちも十分理解できたようだ。
「こ、こんのアマぁ!! 調子乗ってんじゃねえよ!」
「あんだよこのブスが!」
「てめえのムネ、どうせシリコンだろうがデブが!!」
そして逆ギレ、こいつら最低だな。
しかしこれはこれで危ない。こういう逆上した馬鹿なヤンキーは一体何をするか分かったものではない。
だが辻はこうなることは当然予測できたはずだ。あんなことを言えばこのナンパ男たちのおバカな脳ミソだったらすぐにキレるだろうぐらいは。
となると何らかの策を講じているはず。一体どうするつもりだ?
と思っていたら……
「せ、先輩に手を出すなぁぁっ!」
以外にも前に出たのは山瀬だった。ナンパ男たちの前に立ちはだかり、ちょうど辻を守っているかのようで。
その表情はちょっと弱気の子供がいじめっ子の前に勇気を出して立ちはだかっている時の、まさにその表情。
相手に怖がって怖気づいているような、しかしその一方で強い意志を持っているような。
「あんだよチビ」
「お子ちゃまには最初っから興味ないからね、ほら退いたどいた」
「あん? 君無理してパッド詰めてんの? やめとけって、デブの素だよ」
完全に山瀬を馬鹿にしているナンパ男たち。げらげらと笑っているがその響きは本当に下品。
ギャラリーも同じ事を思っているようだ。ナンパ男たちに怒りとか、侮蔑とか、とにかくゴミを見るような目線。
一方で辻は相手を見下した姿勢を崩さない。時折不敵な笑みを浮かべてナンパ男達と後輩の山瀬を見比べている。
そして山瀬の方は……
「ば、バカにするなぁぁぁぁっっっ!!」
あっさりキレた。
後から知ったのだが山瀬は実は空手、柔道、合気道、太極拳各種格闘技の有段者なのだそうだ。
普段の子供っぽくはしゃいでいる表情からは全く想像できなかった。まあ、普通は結びつかないし。なお辻はそのことはバッチリ知っていたらしい。
あの後何が起こったのかというと、キレた山瀬がナンパ男たちをちぎっては投げちぎっては投げの大暴れ。
運動などしていない貧弱ナンパ男たちは身長146cmのロリ爆乳の女の子相手に全く持って歯が立たず、されるがまま。
山瀬はその小さい体一つで誰の手も借りずにそのナンパ男たちをけちょんけちょんにやっつけてしまったのだ。
その様子に制止に入るギャラリーは一人もいなかった。ほぼ全員がナンパ男たちに対して自業自得、鉄槌が下されたのだ、と誰も哀れには思わなかった。
辻はどうしていたのかというと、この様子をバッチリ一眼レフを使って動画で記録していたり。
「うむ、やはり山瀬君の動きはすばらしいねぇ」
数日後のとある教室。いつものように服飾同好会のメンバーが揃っていた。
辻は今だ女のままだが、それ以外の俺と常久、そして山瀬は既に男に戻っている。
アレで男に戻るのを止めていたせいなのか、翌日には全員男に戻ったようだ。
問題の海に行った時の山瀬が大暴れした映像、今はそれを辻が持ちこんだポータブルプレーヤーで観賞していた。
画面にはまさにナンパ男相手に大暴れする旧スク水姿の山瀬がバッチリ映っていた。
辻はその画面上で暴れている後輩の山瀬の動きが実にいい、さすがは各種格闘技の有段者、と褒めちぎっていた。
「いや、恥ずかしいっス。こんなやつら相手にキレるだなんてぇ……」
感心する辻の一方で山瀬本人は反省しているのか、言葉数が少ない。
まあ普通あれだけ暴れて相手に怪我負わせたら警察の厄介になるよな。ましてや有段者が素人相手に暴れたんだし。
しかしその時の山瀬は本来の『有段者である男』の山瀬皇ではなく、山瀬皇という『ロリ爆乳の女の子』だったのだ。その時は、ある意味有段者ではない(ちょっと強引)。
それに相手にも非があるのは明らかで、さらにはナンパ男たちがこんな子供の女の子相手に怪我したなんて恥ずかしくて言うことできなかったらしい。
仮に言ったところで警察の方々からは「こんな子供に罪を着せるのか」と逆に非難されるようなことをいわれただろう。
まあ、そもそも言うほど大きな怪我してないしあいつら。
とはいえ有段者として山瀬はあんなやつら相手に……の言葉を繰り返していた。
ここを励ますのは山瀬が信頼している先輩の辻の言葉だけなのだが、それは辻も分かっているはず。
さて、どうするのか。様子をうかがっていると……
「いつまでもすねている必要はないよ、山瀬君」
「先輩……わふっ!?」
隣に座っていた山瀬を強引に抱き寄せ、自らのPカップのバストに山瀬の頭を埋めた。
そしてきゅっと抱きしめている。
「君があそこでナンパ男たちを撃退してくれなかったら、俺たちはどうなっていたと思う? あの頭の悪い男たちのことだ。俺たちを襲って危害を加えていただろう。つまり山瀬は俺たちを守ってくれたんだぞ、あのナンパ男たちから」
「守る?」
「そうだ、山瀬のおかげで俺たちは無事だったんだ。有段者であるからこそ俺たちを守ることができたんだから、本当に感謝しているよ」
「先輩……」
その言葉に山瀬は安心してか、辻の胸の中で穏やかな表情を浮かべていたように見えた(胸が邪魔でよく見えん)。
俺たちが襲われそうに、ってその根本原因を作ったのは辻の挑発的な言葉のせいなのだが、今はいわないでおこう。
ひょっとすると辻のやつは全てがこうなると踏んで行動しているかもしれない。ナンパ男たちが襲ってきそうになったのも、それに対して山瀬が前に出たことも。
まあ、今のは推測でしかない。何はともあれ落ち込んでいた山瀬がこれで元気を取り戻してくれればそれでいいのだが。
「そういう意味でも感謝のお礼をしなくてはいけないな」
しばしの沈黙の後、辻が自身の胸の中で落ち着く山瀬の頭をなでなでしながらそんなことを言った。
「お礼、ですか?」
「そうだな……俺の処女をあげるというのはどうだろうか?」
ぶっっ…!!
「へ?」
「俺は山瀬の処女を奪ってしまったからね。いくらディルドーで処女喪失を経験したくないからという理由で君が言って来たとはいえ、それは紛れもない事実だ。ちょっと申し訳ない気がするからね、だからいい機会だから俺の処女をあげよう。あ、もちろん俺は今までそういうことしたことないからね、紛れもない処女だ」
さいですか。以外にも経験なかったんですか、辻殿。
にしてもなんちゅうお礼だ。他にお礼できるようなまともなものはないのか。
「ってちょと待て! それはおかしいっ!!」
「何が?」
二人の世界にわって入るように俺が抗議の声を上げたのが気に食わなかったらしい。
辻は俺の方に振り返って怪訝な表情をしていた。
「お前女の体固定するためにいろいろ試してディルドー突っ込んでりゃ変身しないっていっただろ? だったらそういう事やってる時点で処女喪失してるんじゃ……」
「甘いな、蔵本君」
ちっちっち、と指をふって見せるのは強気の証拠か。
「何が甘いんだよ?」
「俺がそんなことで処女を傷つけるなんてミスすると思うか?」
……絶句。
「い、いいんですか先輩?」
一方で山瀬はときめいてる。さっきまでの俺たちのやり取りは聞こえていなかったのだろうか。
「その表情は喜んでいただけたようだな。では早速いくとしよう」
「せ、先輩。行くってどこへ?」
「もちろんホテルだよ。雰囲気作りは大切だからな」
「う、嬉しいっす。ついて行くっす!」
「はっはっは、エスコートするのは男の役目だぞぉ」
勝手に話が進展してしまった。二人は呆れて何もできない俺と常久の二人を残してさっさと出て行ってしまった。
後日。
「先輩…普段は勇ましそうな先輩が、ベッドの上ではあんなにも……」
「いやぁ、照れるではないか。そういう山瀬君も以外にも攻めのタイプだったのだな」
「恥ずかしいっす。そんな、先輩ったら!」
「しかし処女喪失とは実に胸がときめいてしまうのだな」
「ぼ、僕のときもそうでしたよ。ちょっと痛かったけど……」
「それはすまなかった。しかし、その痛みがときめきに変わるのだろうね」
「そっか、あれはときめきの痛み……ぽっ」
皆の集まる部室で二人はその時の出来事を辻は自慢調に、山瀬は照れながら(?)語っていた。
やっぱり俺と常久は呆れるしかできなかった。とりあえず俺からは言わせてもらおう。
お前らそろいも揃ってバカだろ?
### 9.ちょっしたやってみたい事 ###
それなりに興味があるといえば興味がある。
時々あの辻に召集されて服飾同好会なんて名前のついたコスプレ同好会(主にエロい系)に参加させられて、変なコスチューム着せられて、恥ずかしい思いはしている。
が、その一方でどうせ女の体になったのだから色々やってみたい事があるのは事実。
あいつはそういうのも他のやつらと共に実行しているが、俺はどちらかというとこっそりやってみたいというタイプ。
まあその、そういう趣味とか嗜好を持ってると思われたくないだけだ。
今日は休日。家族は外出しており誰もいない。実行するには好都合。
外から見られないように自室のカーテンをしっかり締める。念のため外を確認。よし、こっちを見ているやつはいない。
そして身につけている服を脱いでいく。学校があれば下着もきちんと女物にするが、今日は休みだからそのあたりはいい加減で、男物の普段着姿。
普段着を脱ぎ捨てたらその下にあるのは、男物のトランクスを穿いた女体。
ただ、揺れる胸だけは何とかしたいのでブラはつけている。トランクスとブラとはなんともミスマッチ。
それも脱ぎ捨てる。いわゆる生まれたままの姿になった。
それを姿見で確認。見慣れている自分の女の体とはいえ、男の本能のせいで毎度のごとく見るとドキドキしてしまう。
そして手にしたのは、あらかじめ用意してあったエプロン。
白一色の、所々にフリルのあしらわれたある意味王道のタイプ。
それを裸になった自身の体に、身につけた。
そう、男たちがあこがれてやまない裸エプロン!
いやあ、辻にやらされたことはあったけど、あの時は恥ずかしいって思いしかなかったなぁ。
だけど改めてこうして自分でやって、自分のその姿を鏡で観賞すると、いやぁいいね。
くっきり現れた胸の谷間。ちょっと激しく動いたらこぼれてしまいそうでそれがまたそそられる。
下はちょっとめくれてしまえば女の子の大事な世界。
わざと自分でちょっとたくし上げてみて、見えるか見えないかきわどいところで手を離す。きゃっ、恥ずかしい。
そしてゆっくり回ってみれば、後ろはお尻が丸出し。キュートなお尻が魅惑的だ。
こんな姿で彼女が料理作ってくれたら、確かに最高かもね。
もしくはこんな姿で出迎えてあの決め台詞をいうってのも。そ、そうだ、ちょっとやってみよう。
鑑を向き、そちらに視線を飛ばしながら、そのセリフを言ってみた。
「ご飯にするぅ? お風呂にするぅ? それとも、ワ・タ・シ?」
さ、最高だあぁぁっっっ!
「……何してんの?」
「はっ!?」
いつの間にやら俺の部屋の扉を開けて、常久がそこに立っていた。
そして鏡に向かって何かしている裸エプロン姿の俺を見て、呆れてるな。
「な、何故そこに?」
「いや、ノックしても出てこなくて、それで鍵開いてたから入ってきたんだけど……」
し、しまったあぁぁぁぁっっっ! 家の鍵まで確認するのを忘れていたあぁぁぁっっっっ!!
「で、何してんの?」
呆れ顔、そしてこいつ何考えてんのと顔に書いてある常久が改めて俺に尋ねなおしてきた。
「ちょ、ちょっとサービスを……」
「誰に?」
### 10.ちょっしたやってみたい事2 ###
それなりに興味があるといえば興味がある。
どうせ女の体になったのだから色々やってみたい事があるのは事実。
辻はそういうのも他のやつらと共に実行しているが、俺はそういう趣味とか嗜好を持ってると思われたくないからこっそりと。
今日は休日。家族は外出しており誰もいない。実行するには好都合。
外から見られないように自室のカーテンをしっかり締める。念のため外を確認。よし、こっちを見ているやつはいない。
さっき鍵は確認してきた。前回は鍵をかけていなかったせいで常久が入ってきちゃったからな。
安全確認(?)を終えたところで身につけている服を脱いでいく。普段着も下着を脱ぎ捨てて、いわゆる生まれたままの姿になった。
それを姿見で確認。見慣れている自分の女の体とはいえ、男の本能のせいで毎度のごとく見るとどぎまぎしてしまう。
そして手にしたのは、一枚のショーツ。
普段女の体の時にはいているやつだ。用意したのは縞々柄のある意味王道、オーソドックスなデザイン。
大人な柄物もいいけど、こういうのも確かに女の子らしいというか可愛らしくていいよな。
それをどうするか。これを穿くことに変わりはないのだが、今日はちょっと違う。
普通なら当然のように足を通すのだが、そうではなくそれを胸に近づけていく。
俺の自慢のFカップ。左右の果実をショーツの足を通すところにそっと通してやる。と、
こ、これぞおっぱいにパンツで『おっぱんつ』!!
某サイトでたまたま見つけたこのスタイル。普通だったら見てそれで終わりだが、俺は男でありながら女にもなる事のできる体。
それを見た時、実際にやってみたいという思いに駆られてしまったのだ。
実際にやってみると、なかなか上手くフィットしているじゃないか。
元々ショーツは俺の足とお尻を包み込むことのできるサイズ、収縮性をある程度持っている。
俺の足の太さとFカップはほぼ同じサイズなのだろうか、上手いこと通った。
それでいてショーツ自体の収縮性のため俺のおっぱいをきゅっと締め上げる。ブラをつける感覚とは全然違うが、これはこれで支えが利いてそうだ。
なによりも本来はお尻を包み込むショーツがこんなところで機能しているのは、いやはや興奮するねぇ。
が、人がそうして楽しんでいる時にやっぱり邪魔は入る。
「蔵本ぉ、呼んでも出てこなかったし鍵かかってたからピッキングして入ったぞ……って?」
そんな非常識な仕方で入ってくるのは案の定、辻(今日は男)だった。
しばし硬直。突然の珍入者に振り返り、自分の恥ずかしい姿を見られたことへの焦りと恥ずかしさが混みあがってくる。
一方で辻は俺の姿をしばし見つめた後で……
「しまったあぁぁぁっっ! その手があったかあぁぁっっっ!! が、しかし俺の場合は胸がでかすぎて出来ぃぃんっっっ!!」
よかった、こいつがバカで本当によかった。
### 11.異常事態 ###
私立帝越高校の生徒および教職員はその学校に籍を置いている間、半周期的に性別が変わる。
性別が変わるタイミングは朝起きたら…というパターン。クラスメイトの辻によれば寝ている間に変わるのであって、タイミングによっては昼寝でも変わるらしい。
最初の頃はそりゃあ朝起きたら女になっているのはびっくりだったが、今となってはさして驚きはしない。
ああ、今日は女なんだ、ぐらい。
昨日までの男の胸板が実った果実になっていたとしても、下の男のシンボルが消えて女の割れ目になっていたとしても驚きはしない。まあ、興奮はするけど。
だかしかし、今日は違った。
「なんだ、これ?」
いつものように朝起きて、体の違和感を感じ鏡の前に立つ。普段であればそこに見慣れた女になった自分の姿が映るのを確認するだけ。
だがしかし、今日は違った。
目が覚めて女になっていた場合、俺のFカップの胸のせいで胸部が圧迫されるのを感じるのだが、それが今日はやたらと負荷が大きい。
妙な圧迫感を感じ目が覚め、下を見て自分の胸をすると……異常事態が起こっていた。
それを見て多少寝ぼけていた頭は一発で目が覚め、あわてて鏡の前に立って先ほどのセリフを発した。
胸が、とんでもないサイズになっているんですけど。
イメージはビーチボールを二つくっつけたかのようで、とにかくデカイ。
それでいて綺麗な曲線を描いて変に垂れてなくて、先っちょの乳首も綺麗なピンク色で……デカイけど、美乳。
こういう綺麗な乳は好みといえば好み。だけどちょっとでかすぎる。
辻もやたらとでかいが、少なくともそれぐらいはある。ひょっとするとそれよりも大きいかも。
しかしこれはおかしい。俺ら生徒含め教職員が女になった時の姿は基本的に変わらない。
だから俺が女になった場合はすらっとした細身のFカップ美人だし、常久は平均的かわいい女の子だし、辻はPカップ非常識爆乳だし。
つまり俺が女になって、その姿を鏡に映してもこんな姿が映るはずはない。
一体どうなってんだこれ。俺もついに辻と同じレベルまで落ちてしまったのか?
いや、そんなことはいい。とにかく今問題なのは……
「……重い」
こんな胸、支えられるブラなんてねえよ。
登校してみたらこの異常事態は俺だけに起こったものではないことが分かった。
他のクラスメイト達も同様、何かしらの異常事態が体に起こっていた。
俺みたいに胸がやたらとでかくなっているやつ、逆にペッタンコになっているやつ、ずいぶんと身長が伸びて180cmに達しようとしているやつ、逆に妙に小柄になっているやつ、やたらと髪が伸びていたり、妙に筋肉質になっていたりと変化は様々。共通しているのは全員が女になっているということか。
どういう仕掛けかは分からないが、普段は男女比がほぼ同じになっている。例えば誰かが女になったら女になっていたやつは男に戻る、ってな具合に。
もちろん多少のぶれはある。といっても全員が女になっているってのは今まで一度もなかったはずだ。
まあ、今日の出席率はずいぶんと少ないから欠席しているやつがどうなっているかはわからないけど。
多分そいつらも同じように体に何かしらの異常が起こっているんじゃないだろうか。それで登校を止めたといってもおかしくはない。
ちなみに俺も学校を休もうかとは思ったが、何とかなるかと思って登校していた。
まあ、苦労はしたけど。一番の問題はYシャツのボタンがなかなか締まらなかったこと。
もち普段のYシャツはFカップを収めるため胸囲に余裕があるのだが、それでも今の胸(推定Pカップ)を収めることは困難だった。
だからさらしを巻いてブラの代わりとして、何とか締め上げてYシャツを閉じているのだが……やっぱり苦しい。
今になって休んでもよかったかなと思っていた頃、ガラガラと音を立てて教室の扉が開いた。
入ってきたのは当然ホームルームを始めるためにやってきた担任の植松鉄平先生、なのだが……
ぺたぺたぺた。
うん、歩く音はその擬音が似合っているな。
40歳の中年担任も女になると元の印象は全くない、小柄な女の子になるのだが、今日はさらに輪をかけて小柄になっている。
顔の感じが同じだから同一人物で間違いないと思う。しかし、普段は小柄とはいえ45cmぐらいはあるだろう身長もさらに小さくなっている。
目測で130cm、いやもうちょっと低いかも。胸はまっ平だし、背中までのロングヘアが今日は腰の下まで届いてるし、おまけに元の服を相当無理して着ているせいなのか、ぶかぶか状態。
子供が無理して大人の服着ている図そのもの。スカートなんて今にもずり落ちてしまいそうで、心配でしょうがない。
「きゃんっ!」
ああ、いわんこっちゃない。案の定ぶかぶかのヒールがすっぽ抜けてつまづいてるじゃないか。
この姿を可愛らしいと思うやつもいるかもしれないけど、あいにく俺はそういう気持ちよりも頼むからちゃんと体にあった服着てくれと思ってしまう。
あ、人の事いえないか。
とりあえず体制を直して教壇に立ち、一歩隣に移動すればいいものを無理して背伸びして教卓から顔を出してぷるぷる震えてる担任が口を開いた。
「皆さん、大変でし!」
……でし?
「もう分かっているかもしれませんが、皆さんの体に変なことが起こっているでし。みんな女の子になっちゃって、そしていつもの体とは違っているでし。それはナノマシンの暴走でし」
ナノマシン。入学の時に注射されて、俺たちの体の中にいる、女の体にしているやつか?
「そのナノマシンが暴走して、みんなの体に悪さをしているみたいでし。原因は分からないけど、今学校の技術スタッフが総力を上げて調査中でし。だからその間は休校でし。自宅待機でし!」
なるほどね。細かい仕組みは分からないけど、俺たちの体を女にしているなのマシンが一斉におかしくなったと。
ならば納得。そもそも人の体の性別を変えるなんて大仕事しているんだから、ちょっとぐらいおかしくなっても不思議ではない。
まあ、極端に悪い方向にはなってないから今のところは大丈夫か。いや、ひょっとすると今来てないやつらがおかしなことになっているかも。
手が刃物になっていたりとか、動物になっていたりとか、うにょうにょの触手がいっぱいとか……うわ怖っ!
想像するんじゃなかった。仮に自分がそんな姿になっていたりしたら……最悪だ。
そうなっていないことを祈ろう。ひとまずここにいるメンバーで見ればちょっと人より特殊な体系になっているだけだ。そのぐらいなんじゃないかな、ナノマシンの暴走って。
だから後は人それぞれの受け取り用。大事をとって学校休んでいるだけかもしれないし。
うん、余計な心配は止めておこう。これ以上考えたら夜寝れなくなりそうだし。
「ふにゃんっ!」
そんなことを考えていたら教職員室に戻ろうとしていた担任が目の前でまたしても転倒していた。
むしろ今はこっちの方が心配か? この人の場合は頭の中までなのマシンでやられてそうだし。
休校、自宅待機。一部の生徒にはそれは魅力的な言葉に聞こえたりする。
自宅待機といっても生徒たち全員がそれを守るかといえば、そうではない事はよく分かる。
休校にかこつけてどこかに遊びにいってしまうやつなんて一人や二人いるだろう。
まあ、現状だとそんなことできるのはごく一部のやつだけ。その一部のやつは今回の騒動では比較的まともな体になっているやつらだろう。
例えば胸がちょっと小さくなったとか、背がちょっと変わったとか、その程度のやつら。
その範疇だったら一般人と身体的特徴はさほど変わらない。むしろ普段に比べて胸が小さいから目立たなくなったとか?
それとは逆に極端に背が変わったとか、髪が伸びたとか、筋肉質になったとか、俺みたいにやたらと胸がでかくなったとか、そういう場合はむやみに外出できないだろう。
なにせ目立ちすぎる。そんな姿道行く人の視線を集め、気になって仕方ない。
俺もその枠に入る。でかくなりすぎた胸は登校している間でさえ道行く人の視線を集め、気になって仕方がなかった。
だから俺は「休校だって、ヤッター」と喜んで遊びに行くというわけではなく、家で大人しくしていたかった。
なのだが、その願いもかなうことはなく外出し、とある場所にいる。
その理由はというと、例のごとくあいつに呼び出しされたからだ。あいつに。
「いやはや、皆の衆。よくぞ来てくれた」
それが感謝の言葉なのか、はたまたバカにしているのか、それともいつもの通り何も考えてない超マイペースなのかはわからない。
とにかくはっきりしているのは俺たちいつものメンバーは辻に呼び出され、その自宅に集合しているという事実。
知らなかったのだが辻は一人暮らしだった。新しくも古くもない、広くもない狭くもないアパートの一室が辻の現住所。
初めて入った辻の城は意外にもこぎれいできちんと整頓されていた。しかし所々マニアックというか、悪趣味というか、そういう代物があったりするのだが。
何があるかって? そんなの口にもしたくない。
「さてはて、学校側の説明によればナノマシンの暴走によって異常事態に陥ってしまったのだが、いやはやとんでもないことだ」
何がとんでもないことだよ。その顔にははっきりとこんな面白いこと他にはない、って書いてあるじゃないか。
結局今日だって集めたのは俺たちがどんな面白い体になったのか調べたいだけだろうが。
「して、蔵本は爆乳になったのか」
「ああ」
畳にあぐらをかいて座っていた俺はかったるい感じで答えた。
学校ではYシャツに何とかこの胸を収めるため、サラシを巻いて縛っていたのだが苦しかったので今はさらしは外して開放している。
さらにいえば一旦自宅に帰ってからの呼び出しだったので今着ているのは普段着。一応下は女物のショーツに短パンだが上はノーブラでパーカーを直に着ている。
なにせ普通の服は胸が邪魔しすぎて着れない。前開きのやつで多少ゆったりしているやつで強引に収めるのが一番まともだということだ。
それでもチャックを閉めたままにしているのはちょっと苦しくて、おまけにすれ違う野郎共の視線がうざったい。
今は辻の家の中でいつものメンバーということもあってか、チャックは外して楽にしている。まあ、どうせこいつら辻の胸で見慣れているから大丈夫だと思うし。
「では早速サイズを確認」
「どわあぁっ!?」
油断大敵。背後に回った辻が俺のパーカー一気に脱がせやがった。
「な、なにしやが……」
「あー動かないで。サイズが測れないから」
そういって辻はどこからかメジャーを取り出しててきぱきと俺の胸を測ってる。そして本当に手際よくあっという間に測定は終わった。
「うむ、トップが125でアンダーが70。ということはSカップか」
うわ、辻のPを越えた。それにしてもSカップとは、まるでどこかの栄養ドリンクみたいじゃないか。何なんだ俺の胸。
まあ。ここまででかくなるとPとかSとか大差ないような気がしてくるけどな。
「うわぁっ、蔵本先輩すごいにゃっ」
「って、うわっ! やめんか山瀬っ!!」
今まで様子をうかがっていたであろう後輩の山瀬がいきなり抱きついてきた。俺の胸に。
そして俺の谷間に埋もれてふにゅふにゅしている。俺の胸が気持ちいいらしい。
そんな事される俺はたまったものではない。巨乳は感度が悪いとかいわれているけど、やっぱりこんな事されちゃったら感じるものは感じちゃう。
むにむにすりすりしてくる山瀬のせいで俺の頭の中に快感物質がポンプの要領で胸から送られてくるように感じてしまう。
女になった山瀬の体は小さい。だからその姿はまるで優しそうなお姉さんに子猫ちゃんがじゃれついてくるような感じで……
子猫ちゃん?
ふと山瀬の姿に気になるものを見つけた。山瀬の現在の服装は普段着。下はミニスカートにオーバーニーソックス。上は俺みたいなパーカーでフードをかぶっている。
そのミニスカートからぴょこんと出てきているものがあった。
「……尻尾?」
お尻の部分、ミニスカートの中からひゅるりと生え出てきて、ぴょこぴょこと動いているフサフサの黒くて先っちょが白い色したひょろ長いもの。
それはどう見ても、尻尾だった。
「あ、えーっと僕の場合は……こんなのになっちゃったにゃあ」
ぱさ、とフードを取ってみたらその中にあったのは、ネコ耳。
「ネコ娘?」
フードの中にあったのはどう見てもネコ耳。真っ黒だけど尻尾同様に部分的に白い色がある。
髪の毛の間からはえ出てきて、それもやっぱり尻尾同様にぴょこぴょこ動いている。
よく見たら元々耳のあった部分が変化している。うん、どうやら外見だけではなくて、耳の機能もちゃんと猫になってしまっているようだ。
ということは猫同様に聴覚がすんごく良くなっている?
耳は完全に猫になっているものの、さすがに目は猫目にはなっておらず普通の人間の目をしていた。
なんだかやたらと似合っている。元々小柄で子供っぽい感じがしていたからネコ娘が余計に似合っている。
「はっはっは、でかしたぞ山瀬君。こんな見事な姿は普通ないぞ」
やはり俺にむけたのと同様に辻の魔の手が伸びる。興味の対象はやはり耳か。俺も触ってみたいと思っていたのだが。
「ふにゃあぁ……あんまり触らないでにゃあ」
にゃあ?
「うむ、俺が指導した通りちゃんと語尾に『にゃあ』をつけてくれてるようだな。しかし今のはちょっと不自然だ」
「うう、すいません……」
なんだ、辻の演技指導か。俺はてっきり担任の植松鉄平同様に頭がおかしくなったんじゃないかと思ったよ。
ん? そうするとあの担任は一体どういう理由で語尾に「でし」なんて言葉がついてたんだ?
うん、可能性としては山瀬には何の問題もなかったけど担任には脳まで狂わせる何かしらの影響があったのかも。
もしくは同じように意図的に語尾に「でし」をつけていたかもしれない。だとすると一体何故?
「そういえば先輩はどうなったッスか? 体の変化」
普段どおりの「ッス」を語尾につける話し方に戻っているな、山瀬君。
別に語尾が「ッス」だろうと「にゃ」だろうと「ぷぅ」だろうと違和感のある話し方されない限りは別にいい。
まあ、「ッス」っていうのも不自然といえば不自然だが。
「ああ、俺の変化だね。山瀬君ほどではないが少々特異なものにはなったがね」
その話し振りはようやく自分に話がやってきたか、待ってました! という感じ。自分の変化を見せたかった感じが結構強い。
多少の満足感を覚えているような表情を浮かべながら辻は自分の服を脱ぎ始めた。
辻が着用しているのも普段着、やや大きめのYシャツとデニム地のミニスカート組み合わせ。ミニスカートは限界ぎりぎりまで短く、下手すれば中のお尻が見えてしまいそう。
さっきチラッと中が見えてしまったが、かなりえぐい下着を穿いていたような……
そのYシャツのせいでミニスカートが見えるか見えないぐらいかで隠れている。角度によっては裸にYシャツスタイルに見えてしまうが、ひょっとしてそれを狙っているのか?
やや大きめのYシャツを着ているのは自分の馬鹿でかいバストを納めるためだろう。俺もこの胸になってその理由がよく分かった。
ただ、今日はちょっと違っていた。普段なら破壊力のある二つの爆弾が胸を押し上げているのだが、今日はちょっとボリュームが少なくなったように見える。
なんというか、平らになって全体に広がった? ブラジャーをしていないのだろうか。
もっとも、それが辻に起こった体の変化であることはYシャツを脱ぎ捨て、下着を着けていない胸をあらわにしたことによって分かったのだが……
「げ……!」
確かにボリュームは少なくなった。
ビーチボールが二つくっついていたような胸はちょっとしぼんでいる。それでもバレーボールぐらいはあるだろうか。
とは言うものの総体積は多分同じぐらいかもしれない。はっきりくっきりとした綺麗な丸みを帯びた形をした胸が……四つ。
「ふ、複乳……!!」
二次元とか空想の世界でしか存在しないものがそこにあった。
人間の体の乳は二つ、胸の膨らみは二つ、おっぱいは二つと決まっている。動物だったら大きな乳があって乳首が複数、っていうのもあるが。
だが辻は当然人間だ。なのに、そこにある乳は四つもあった。
そんなの現実世界には普通存在するはずもなく、あるとしたら二次元の世界や特殊メイクで作った映画とかでしかない。
しかし辻はそれを現実に持って来てしまった。いや、自分の意思でそうしたわけではないことはわかってはいるけど。
何が山瀬君ほどではない、だ。それ以上に特異じゃないか。
「す、すごいッス。先輩四つもおっぱいがあるなんて」
「はっはっは、うらやましいのかい山瀬君」
後輩の山瀬は喜んでいた。どうやら彼はおっぱい好きらしい。
しかし俺は違う。そりゃあお俺だって男だし(今は女だけど)、女の人のおっぱいを見れはそれは確かにそそられるよ。
だけど非現実的なこういうもの持ってこられては、俺には無理。
やっぱり気色悪い、そうとしか見れない。
「しかし残念なのはここにいる全員が女になっているということだな。」
俺が嫌悪感をあらわにしているのだが、辻もある程度の難色を示していた。
「それのどこが残念なんだよ?」
一応聞いてみる。
「うむ、この胸なら四方向同時パイズリなんてこともできたはずなのだが、全員女ではそれも無理だな」
自分の上二つの胸をもにゅもにゅしながら残念がっている。下二つはあまっている。
こいつの難色はその程度の問題かっ!
「うう、残念ッス。できれば先輩のおっぱいで『一人でダブルパイズリ』を体感したかったっす」
「む、確かにそういう事もできたな。いやしかし残念」
後輩は先輩の辻についていっていた。悪い、俺は無理。
あれを平気で受け入れられる後輩の山瀬はどうやら精神的に強いというよりもバカな部類に属するかもしれない。
俺はある程度は正常だ。リアルのネコ耳娘といい、複乳といい、俺はそれを受け入れられるほどバカでは……いや、精神的に強くはない。
頭を抱えてしまうこの状態に、最後の一人の存在を忘れかけていた。
今までの展開をベッドに腰掛け、唖然としながら見ていたのは常久。
「そういや常久はどうなったんだ?」
「へ?」
俺の言葉に我に返ったのか、ぼうっとした顔からようやく普段の顔に戻ったような気がする。
俺の常久に対する呼びかけに今まで乳繰り合っていた、いや乳いじりしていた辻と山瀬もこちらに注意を向ける。
「え、いや、僕は特に変化はなかったよ。ははは……」
棒読み。怪しい、怪しすぎる。それは俺だけでなく辻と山瀬も気がついたようだ。
確かにこの異常事態は全員に生じたというわけではないかもしれない。人によっては何にも起こらなかったってこともあるかもしれない。
実際常久もこうして見ている分には全く外見的な変化がない。
こちらも同様に制服から着替え、ロングシャツとハーフパンツというスタイル。
しかし、常久の表情はどう見ても何かを隠している。引きつった笑顔、上ずった声、ごまかしているのは明白だ。
そしてさりげなく押さえているハーフパンツ。なるほど、あそこに何かがあるらしい。
それは色々と感のいい辻も悟っていた。
「ゆけ皆の衆! 彼奴の下半身をひん剥くのだ!!」
指図されるのは癪に障るがまあいい。皆の衆といっても俺と山瀬しかいないし、結局辻も参戦しているから3対1だ。
「わああぁっ! 待て、待てえぇぇぇっっっっ!!」
常久もじたばたもがいて何とか抜け出そうとしているが数では圧倒的な差がある。これではどんなに頑張っても結局は時間の問題だ。
そして時間も大してかかることなく、あっさりと常久の下半身をひん剥くことに成功した。そしてあらわになったのは……
ぴーんっ
「………」
「………」
「………男だねぇ」
ぽつり、とつぶやいたのは辻だったか。常久は顔を真っ赤にしてゆでだこ状態。まあ、服脱がされたら誰だってそうだろうけど。
問題のその下はどうなっているかというと、辻がつぶやいたとおり男があった。
そこにあったのはそれはそれはもう立派な男の象徴。おちんちんですか。
皮の向けた、血管の浮き出たそれはそれはもう立派なもので、かなりでかいです。小柄な山瀬の腕ぐらいありそう。
何度か常久とはやっているから分かるが、これって普段の男のときよりもずっと大きいんじゃねえか?
そいつはしっかりとボッキしている。まあ、よく考えれば半裸の女性たちが三人も襲い掛かってきたのだから下半身が反応していてもおかしくはない。
こんなものをしまいこんでいたのか。しかし下着はちゃんと女物のショーツ。何で男物のトランクスじゃなくてこれにしたんだ? 勃起してなくてもさぞかしきつかっただろうに。
「どうなってんだ、これ?」
まじまじと常久のそれを見て俺が一言。
「ふ、フタナリってやつッスか?」
ちょっとワクワクした感じて山瀬がいった。
「ふむ、玉はない、女の部分はちゃんとある。フタナリだな」
よく分からないが、とにかく常久の肉体は男と女が両方ある特異なものになったということは分かった。
しかしまあ、さっきのネコ耳娘とか複乳とかに比べるとこっちの方が妙に現実味を帯びている気がするのは気のせいか?
俺も感覚が麻痺してきたか? この三人のに比べたら俺の爆乳なんて普通に思えてきてしまう。
「これって、男と女を両方同時に味わえるッスよねぇ」
「なるほど、クリトリスが隆起してペニスになっているようだな。お、濡れてきている」
呆れている俺とは異なり、辻と山瀬は盛り上がっていた。こんな非現実的なことで盛り上がっているだなんて、やっぱしこいつら同じような思考回路しているみたいだ。
「……んっ……な…」
ん? なんだか顔を真っ赤にしていた常久がフルフル震えてますよ。そして何かいったような。
「どうした、常久?」
「…………ない」
「へ?」
「我慢、できないっ!!」
下をのぞきこんでいた辻と山瀬を振り払うようにして身を起こし、目の前にいた俺に一気に襲い掛かった。
「どわっ!?」
突然の出来事に俺は対応が遅れ、いとも簡単に常久に押し倒されてしまう。
ていうか、すげえ力が強いんだけど。ひょっとして下半身の一部分だけが男になっているんじゃなくて、身体能力も男になっているとか?
「一度火がついたら、我慢できないんだよっ!」
「へ? え? んっ……!?」
押し倒された俺、そして視界には危ない目をした常久の顔が迫り、無理矢理キスをする。
下にはギンギンにボッキしたペニス、それが俺のお腹に当たっている。
熱い、そして先端からは我慢汁があふれているのが分かる。
「こいつのせいで、朝からおかしくて、抜いても抜いても落ち着かなくて、やっと抑えていたのに、お前ら……」
え? あの、常久さん? 目が怖いんですけど。
「竜介っ! 責任もって犯させろっっ!!」
だあぁぁぁっっ! 責任ってなんだよっ! お前らといっておきながら俺だけかいっ!
「うーむ、石井君がキレてしまった」
「普段大人しいだけに、なんだか怖いねぇ」
こらそこの二人っ! 眺めているだけじゃなくてなんとかせんかっ!!
心の中で叫んだところでこいつらは一向に手助けしてはくれない。そういうやつらだとは分かっていたけどねっ!
結局自分ひとりで何とかしなきゃいけないにしてもどうにもならない。俺は女の体で、常久はどういうわけか女の体なのに力は男のときぐらいあるし。
それ以前に力のあるなしにかかわらず押し倒さて全体重かけられた状態では何もできないことに変わりはない。
俺にまたがる常久は乱暴に俺を襲い始める。
手始めとばかりに攻めてきたのは俺の胸。あまりにも大きい胸だが常久は力を入れ俺の胸を攻めてくる。
強引にこね回すようにして攻めてくるから痛い。しかし、それにもかかわらず俺はわずかに感じてしまっている。
「はぁ、はぁっ。竜介の、胸……」
なおも続く力技。痛みは段々と薄くなって、快感が増えてくる。巨乳って感度悪いと言われているのに、結構感じてるじゃねえか。
やばい、なんか胸が変な感じになってきた。これもしかして、胸でイッちゃう!?
何かがこみ上げてくる。イクのかと思った時……
どぴゅっ
「………」
「………」
「………」
「………へ?」
常久も、辻も山瀬も、そして俺も固まった。
常久が揉み続ける俺の胸の先端から、白い液体が勢いよく吹き出てきたからだった。
とろりと流れる白い液体、あたりに立ち込める甘い香り。
え? ちょっと待て。これまさか、母乳?
「ははっ、すごいな竜介。母乳が出るのかよ」
力を入れて常久が揉むたびに先端から勢いよく出てくる母乳。爆乳になっただけでなくこんなオプションがついてるなんて。
「うっ……」
今だ力を抜くことのない常久が体制を変える。俺の胸に接近して直接口をつけた。
右の胸に吸い付く常久。つまりは、俺のおっぱいを飲んでいる。
「んっ、んんっ……ぷはっ。いい味してるじゃん竜介の」
ぺロリ、と舌で口元を舐めるしぐさは色っぽい。その口元についているのが自分の母乳であることを一瞬忘れ、どきりとしてしまった。
「ぼ、僕も飲ませてほしいっす!」
常久だけじゃない、山瀬も余っていた俺の左胸に吸い付いてきた。
「うわわっ! ちょっと、二人とも……っ!」
二人のでかい赤ちゃんが俺のでかい胸に吸い付く。口で吸い、さらに効率よく出すために俺の胸を力を込めて揉み続ける二人。
しかし俺はたまったものではない。ただでさえ敏感な乳首に二人して攻め立てられ、乳を吸われ、そして経験したことのない射乳の感覚に俺は戸惑っていた。
赤ちゃんに乳を吸われているのってこんな感じなのか? 多分ちょっと違うと思う。赤ちゃんに乳吸われてイキそうになったなんて話は聞いたことないし。
それは下で起こっていることも関係しているかもしれない。山瀬は女の子の割れ目を俺の太ももにこすり付け、常久は男のアレをこすり付けている。
微妙な固さの感触に俺もドキドキし、それが胸の快感へとつなげているのかもしれない。
「んっ、んうっ……ダメだ、出ない」
一方で一人その輪から外れている辻は先ほどから自分の四つの胸を器用に揉み続けていた。
どうやら俺に対抗して自分も母乳が出ないかと思って揉んでいたらしい。いや、出るほうがおかしいから。
それに気がついていたのは俺一人のようだ。二人は俺の乳を吸うのに夢中になっている。
ああ、やべえ、気持ちいい。今度こそ本当に胸だけでイッちゃいそうな気がする。
そう思っていた時、すっと常久が離れて行った。
常久の離れた右胸からは多少の勢いがついたミルクがちょっとだけどぴゅっと出てきた。
終わったのか? と思っていたけど、そう簡単に常久の性欲が収まるわけはない。
「竜介ぇ、今度は俺のミルク、飲んでよ」
今も左胸に吸い付いている山瀬をお構いなしに俺の谷間に物体が突っ込まれる。
「うぐっ」
「早く舐めろよ、僕のおちんちん」
これだけでかい胸の谷間だから普通は埋もれてもおかしくないはずなのに、そいつは谷間の下からあっさりと俺の口にまで届いてしまった。
口元に突き出される常久のペニス。独特のつんとくる匂いが鼻につく。
仕方なしに口を開いてしゃぶり始めるけど、やっぱりでかい。結構口を開けないと入らないんですけど。
「はあっ、あぁっ、竜介のおっぱい、気持ちいい……」
「ちょ、ちょっと! 石井先輩痛いって!」
ぐりぐりと強引にバストがもみこまれているけど、なんか痛いと思ったら今だに吸い付いてる山瀬の頭ごと揉んでるじゃないか。
抗議の声が上がるはずだ。ていうか俺も言いたいよ、痛いって。
「じゃあどけばいいだろ。ほらっ」
「ふにゃんっ!」
あ、山瀬がつまみ出されてしまった。
「ふえぇぇんっ、石井先輩がいじめるよぉ」
泣きついた先は当然のように慕っている辻……の、おっぱい。
「おーよしよし。意地悪な先輩だねぇ。でも俺は優しくしてあげるよ。ほら、ミルクは出ないけど存分に吸いなさい」
「先輩……ふみゅっ」
どうやら山瀬はそれで癒されたらしい。自身を抱き寄せる辻の胸の中で安らかな様子で辻のおっぱいを吸い始めている。
辻も辻でご満悦な様子だ。あれか? 母性本能ってやつか?
なんだかぱっと見は和やかな光景だけど、よく見たら変態的というか、異様な光景にも見える。なにせ複乳だからな。
「あっちはあっちで楽しんでるみたいだな。こっちも楽しむよ、竜介ぇ」
そして目の前の現実に引き戻される。あっちがほのぼのならばこっちは虐待だ!
俺の押し倒された状態は続いている。谷間にペニスを突っ込み、俺に強引にフェラさせているのはどう見たって虐待だ。
多分本人にはそんな意識はないだろう。もう性欲に任せて俺を襲っているようにしか見えない。
多分アレだ、酔いが覚めてものすごく後悔するタイプ。その酔いが覚めるのはいつのことやら。
「んあっ、ふぁっ……ああっ、おちんちんがぁ、おちんちんがいいよぉ」
常久の現在のペニスはとにかくでかい。多分馬並みのペニスってこういうのをいうのだろう。
そんなものが女の子(?)の股間についているのは、どう見ても異様な光景。
その女の子である常久は柔らかい乳房に挟まれる常久のペニス。本人はずいぶんと気持ちいいようだ。
確かに硬いペニスが柔らかいおっぱいに挟み込まれるのはなかなか気持ちいい。お互いに大きいとなってはなおさらなのだろうか。
一方で女の立場、おっぱいの側の俺はどうかというと、もう何もかもがすごすぎる。
妙なまでに熱くなったペニスが俺の谷間の中で暴れまくってて、おっぱいも揉まれ続けて熱くなっている。
さらには口に突きつけられてフェラを強要されている先端も俺をその気にさせていく。
女の体って男の匂いに弱い。相性がいいとその香りもやみつきになってしまって、夢中にさせてしまう。
俺と常久は相性がいいみたいだ。俺は女の体で男の常久に抱かれるたびにこの匂いに魅了されてしまっている。
そして結局今も気がつけば夢中になってフェラしているんだから。
「んっ、くふっ……ふぁぁ………」
ああ、たまらないよこの匂い、味。男の時の冷静な頭で考えると何やってるんだ俺って思うのに女になると結局これなんだから。
胸の中でペニスが小刻みに震えている、そのわずかな変化を察知していた。
ああ、来るぞ。そう思った。
「あはぁっ、やばいっ………イクっ、イッくうぅぅっっっ……!!」
常久が達した。それと同時に先端から俺めがけて大量の精液が発射された。
俺の胸の中でどくどくと脈打ち、白い粘液を噴出していく。その時の常久の表情ときたら、ずいぶんとまあ気持ちよさそうで。
しかしその表情も俺の視界から次第にぼけていく。顔面にどんどん振りかけられていく精液のせいで。
明らかに標準よりも量が多かった。ガンガン顔面にかかってきて、まるで顔が精液で埋まっていく。
口にも入るし鼻にもつく。味やら匂いやらはっきりくっきり分かるほどで、ひょっとしたら顔なんて真っ白になっているんじゃないだろうか。
やっとおさまって来たと思ったら首から上がベトベト。よくもまあこんなに出したものだ。
「ふぁぁ……あぁ………」
とろんとした常久の表情。射精がそんなに気持ちよかったのだろうか。
腕ぐらいあるんじゃないかと思うぐらいでかい自分の馬並みのおちんちんをぎゅっとにぎってる女の子ってのはずいぶんとミステリアス。
「うん、すごい出たねぇ」
「ふむ、玉がないにもかかわらず濃いのが出たようだな。ひょっとして内蔵されているかもしれないな」
何を分析しているんだか外野の二人は。できればやられている俺をちょっとは助けてくれよ。
まあ、期待はしていないけど。
一方で常久の性欲はまだおさまっていない様だ。ここまできたら当然のように次の段階へと移行していく。
戦隊モノのお約束で一度敵を倒したと思ったらその敵が巨大化して、というぐらい定番の展開だ。
するするとバックする。俺の足の間に入り込む。そして馬並みのアレに手をかける。
かちゃかちゃと俺の短パンに手がかかり、脱がされていく。俺はそれを脱がされることに抵抗しなかった。抵抗したところで無駄だろうと思ったからだ。
「ははっ、竜介のココ、洪水じゃないか」
そんなの分かってるよ。さっきから散々俺のおっぱいでえっちいことされてるんだから反応するに決まってるじゃないか。
常久の指が俺のそこに触れるとくちゅくちゅといやらしい音を立てた。定番だな、これも。
定番だと言い放っておきながら俺も俺でちょっと期待していたところはあるし。
それと結構感じちゃってる。さっきの顔射に加え、まさかの射乳で体のスイッチはもう既に入っている。
俺もイキたいよ。いつものように、常久と俺と一つになって……
いや、ちょっと待て。
着々と欲望に従って用意している常久だが、俺はそれを見て現実に舞い戻った。
たしかに俺が女になって、常久が男のときは二人でエッチして、俺が常久のそれを受け入れて一つになっていたけど、今日は状況が違う。
そう、それはいつもの常久のとは違う。いつもの常久ではない。男の体で成人男性として平均的なサイズのそれではない。
今常久は女の体。それでいて下半身にある物体は……馬並み、子供の腕ぐらいの大きさ。
常久の手でにぎられて、俺の下半身に進入しようとして体制を整えているそいつは、かなりでかい。
ちょっと待て。あんなもの、入るのか?
「竜介ぇ、ひとつになろう……」
「い、いや、ちょっと待て。それデカすぎそんなもの俺に入る分けなくて入れたら裂けちゃいそうで……ぐああぁぁっっ!!」
俺の静止などまるで耳に入っていなくて、常久はそれを段取りどおり入れてきた。
「んはぁっ、竜介ぇ、きつい……」
「当たり前だお前のがデカすぎ……痛いっ! 痛いって強引に突っ込むなっ、あだだっっ!!」
ぐいぐいと侵入してくる馬並みの常久。明らかに普段のブツとは違う。
いや、言っておくけど普段のって言えるほど毎回のようにやっているわけじゃないからな。
しかし、痛い。
「あはぁっ……竜介の膣、きゅっと締まってて、気持ちいいよぉ………」
駄目だ、性欲全開で完全にトリップしてる。このデカいブツのせいか?
こりゃもう尽きるまでやらないと正気に戻らないかも。つまり、俺の痛みは早々簡単に終わらなく、勘弁してもらえそうにない。
ならば攻めてこれを気持ちいいように感じることができるよう努力するか?
幸いにして少しは痛みが治まってきた。後はもうちょと落ち着いて続けることができれば……
「んあ゛っ!?」
そうは問屋が卸さなかった。常久がそのデカいブツを突いてきたせいで更なる衝撃が俺の体に。
「竜介ぇ、もっと可愛い声出して喘がなきゃダメだよぉ」
無茶言うな、誰のせいだよ。
ていうか、今まで感じたことのないような快感になりそうな。
今までの標準サイズの常久だったらかろうじて子宮の入り口にたどり着いてその入り口を小突く程度。
しかし今の馬並みの常久は違う。子宮には余裕でたどり着いて(おかげで俺は苦しいが)さらに太いせいで子宮全体が揺さぶられるような感覚。
こんな感覚味わったことがない。衝撃がちょっと強すぎる。
しかしそんな俺の思いなど常久が感じるはずがない。やばい、これ続けてたら俺、おかしくなっちゃいそう。どこかでブレーキをかけてもらわないと……
「ひあっ!?」
と思っていたらブレーキがかけられた。ブレーキをかけたのはその後ろに立つ後輩、山瀬皇。
「ふあぁぁぁっっ。僕の、僕のおマンコに、シッポがあぁぁぁっっ……」
「ううっ、シッポから石井先輩の膣の感触が伝わってくるッス」
ああ、そういうこと。
後ろから何しているのかと思ったら山瀬が常久を犯しているのか。
この状況から察するに、山瀬のふさふさの尻尾をお尻から自分の股を通して前に出し、おちんちんに見立ててバックから、というわけか。
うん。さっき触ってみた尻尾の感触は毛並みがよくて、フサフサで、肌触りがよかったなぁ。
それが中に入ってくるとはどういう感覚だろう。ちょっと試してみた……い、いや、そんなことないぞ!
「はっはっは、いい感じでつながったようだな。美女三人が入り乱れるのは実にいい絵だ」
そして高笑いしている辻。大方こいつが山瀬にこういうことするように指示したのだろう。
まあいい、これでちょっとは常久もペースが落ちて俺も楽になるだろう。
「ダメえぇっ、シッポ気持ちいいっっ……腰が、止まらないよおぉぉぉっっ」
だああぁぁぁっっ。余計火をつけちゃってるじゃないかあぁぁぁっっ!
「うあっ、ふあっ……んあぁっ!」
繰り返されるピストン運動。馬並みによって突き上げられている俺は体の中からかき回されているようで。
今までに感じたことのないような強い衝撃、言葉で表現するならごりごりされているというのが近いか。
それが何倍にも跳ね上がって、痛みもあるけどそれを通り越して快感に化けている。
一線を越えてしまうと傷みも快感になってしまうようだ。Mってやつか? それとは違う気がする。
存在感のありすぎる常久のペニスは今だ健在。それは熱くなっていて、そのせいで俺の下腹部が熱く燃え上がっているようで。
「ふあぁ、駄目えぇぇっ……おちんちんと、おマンコがっ、同時にっっ………」
そういえば俺に挿入している常久は同時に山瀬に挿入されているんだっけ。
男と女を同時に感じてしまっているのか。同時ってどんな感じだろう。試して見たい気もするが、無理だろうな。
とりあえず表情を見ている限りは……気持ちいいんだろうな。
顔が緩みまくっとる。力がなく、しまりがなくて、なんかもう気持ちよさそうで。
「竜介ぇ……いいよぉ、竜介のおマンコいいよぉ」
こっちも気持ちいいらしい。だが俺はそれに痛みも混ざっている。
常久が突き上げてくるたびに俺は内側から強い衝撃を感じていて、それが痛みにも快感にも化けている。
ついでに言うとその衝撃が来るたびに俺の胸のSカップが暴れだす。
これ、仰向けに寝ていると本当に重い。今俺の上でプルプルと震えていて、多分見ているやつはそれに興奮するだろう。
だけど俺にしてみれば重いだけ。しいて利点を挙げると勝手に動くことで乳を揉まれているのと同じような効果が得られるというぐらいか。
そして揉まれているとそこに溜まっている母乳が少しずつあふれてくる。ぴゅっ、ぴゅっ、とちっちゃい噴水のように。
「そういえばこの存在を忘れていたよ。さて、俺も味わうとしよう」
ああ、お前の存在も忘れていたよ辻。とりあえず俺のおっぱいでも大人しく飲んでいろ。
「ああっ、イクっ、イクよおぉぉぉっ……」
唐突にその時は来た。常久が、果てようとしている。
ああ、俺もだ。この感じ、俺の女の体がイキそうだ。
「あっ、あぁっ……ああぁぁぁぁっっっっ!!」
常久が果てる。そして俺もまた。
最高潮の快感が渦巻く俺の体の中に常久の精液がどんどん噴出してくる。
その量はハンパじゃない。一体どこからこんなに出てくるのか、俺のおなかの中は既に精液でいっぱいになっている。
それでもまだでてくる。おなかがふくらんで、パンパンになっていく。しかも出口は常久のペニスで完全にふさがれているから溜まる一方。
まるで妊婦……とはいかないが、それでもずいぶんとお腹が張ってしまった。
ようやく出し終わったのか、ペニスが抜かれると俺の中からどろりと精液があふれ出てくる。
それと同時にふくらんでいた俺のお腹も平常に戻っていく。本当にずいぶんと出たようだ。
「ふあぁぁ……」
俺自身の快感も治まり、ため息がもれる。こんな経験したの初めてだよ。
もうくたくた。しばらくこのまま動かないでじっとしていたい。
「ふーむ、ずいぶんと気持ちよさそうだな。俺も試してみるか」
そんな俺の様子を見てうらやましく思うのは、辻意外にいないな。
とりあえずアドバイスしておく、やめとけ。本当に危ないぞ、これ。
結局ナノマシンの暴走理由はよく分かっていない。
単なるバグなのか、強力な電磁波の影響なのか、神秘の宇宙パワーなのかさっぱり分からないということ。
とにかくあの異常は本当に一時的なもので収まってくれた。
翌日になれば生徒教職員含めて全員が元の正常な体に戻っていた。もち男に戻っていたり女になっていたりと性別は違いがあるけど。
常久の馬並みも元のサイズだし、辻も複乳から元のPカップに、山瀬もシッポとネコ耳が消えているし。
俺もSカップの爆乳からFカップに戻って、まあとりあえず安心安心……と思っていたのだが。
「何故だ?」
なんかこう、胸が苦しいというか張っているというか、そんな感じがあったから鏡の前で触診していたのだが、これはどういうことだ?
きゅっと俺の乳を軽く搾ってやると、その先端から出てくる白い液体……母乳だ。
たしかにSカップの時にどういうわけか出てきてはいた。しかし今は元に戻ったはず。
ひょっとして、あの時出しきっていなかったやつが残っているのか?
うん、まだ出てくるな。とりあえずこれは……
「できるかな?」
そういえばあいつら散々俺のおっぱい飲んでいたけど、俺自身は一口も飲んでいなかったな。
いいよね? 俺のなんだし。
そーっとおっぱいを持ち上げてみる。柔らかいおっぱいが変形して、先っちょの乳首が俺の口元に。
「あ、できる」
自分で自分の乳首に吸い付き、吸ってみる。うん、出てくる。うまい。
その日の朝はひっそりこっそりと、自分のおっぱいの味を堪能していたのでした。
### 12.弟 ###
俺、蔵本翔(クラモトショウ)。れっきとした男です。
自分でいうのもなんですけど、俺も俺で男としていい年になりました。といっても老けてません、まだ高校入学前ですから。
この時期になるとやっぱり健全な青少年として興味のあることがあるんですよ。
思春期ってやつでして、クラスメイトの女の子がちょっと気になってみたり、女子の何の気もないしぐさにドキッとすることもあったり。
そして興味が深くなると女の人が裸でイヤンな格好している本にドキドキしたり、ネットでそういう画像を見てみたり。
すいません、色々やっちゃいけないことやってしまいました。
まあ、今の今まで家族は母親を除いて女性がおらず、そのため女性に対する耐性ってやつが希薄なんですよ。
だからそういうのに余計に興味があって、ドキドキしちゃうんだよ。……すいません、言い訳しました。
ただ、ここ最近になってちょっと状況が変わってきたことがありました。
俺の兄、竜介なのですが……
「ふぃっ、さっぱりしたぁ」
兄が風呂から出てきました。女の姿です。
俺もよく分からないのだが、何でも兄の学校の教育方針として一定周期で女になるのだと。
だからここ最近、兄は男で兄だったり、女でお姉ちゃんになっていたりする。で、今日はお姉ちゃんなのです。
「ふうっ」
どさっと俺の座っているソファの隣に兄……お姉ちゃんは座りました。
ソファに座ってテレビを見ていた俺の視線は必然的にそっちに移ります。
服はちゃんと着ています。中身が男だからといって裸のまま風呂から出てきたことはありません。
そういうイベントを期待していた弟の俺にとってはちょっとがっかりです。見事に期待を裏切ってくれます。
ただ、今の格好は服を着ているとしてもちょっとドキドキします。
風呂上りということもあってかラフな格好。上はタンクトップに下はホットパンツです。
ホットパンツから伸びている生足はすらっとしてて、無駄毛がなくてきれいです。
しかもホットパンツはぴったりのサイズで結構短いので、ちょっとだけお尻が出ているようにも見えます。
しかしそれよりも何よりも俺の視線を釘付けにしてしまうのは、そのタンクトップの中に実る二つの果実。
大きく実った胸の膨らみは男の視線を釘付けにするには十分すぎる。それは弟の俺も例外ではなかった。
タンクトップゆえにくっきりはっきり見えてしまう谷間。
そこから見える果実の白い肌。
そしてなによりも薄い布ごしにはっきり分かる先端のぷっくりとした部分。白のタンクトップだから余計に目立っています。
ブラをしていないことはまる分かりです。以前に「男に戻った時に苦しい」からという理由で寝るときはブラをしていないと言っていました。
俺には何の意味かさっぱり分からなかったけど、エロい想像をかき立てるには十分!
な、なんてすごいものが目の前にあるんだ! これをもしナマで見ることができたら……いや、モミモミすることができたら俺は、どれだけ幸せになれるのだろうかっ!
さ、触ってみたい。けど……。
「ん?」
し、しまった! お姉……い、いや、兄がこっちの視線に気がついた!
「……見てたのか?」
んがあぁぁぁっっっ!! しっかりバレてますがなっ!!
だ、だけど優しいお姉ちゃん(←勝手な妄想)だったら、ちょっとぐらい……触らせてくれるよね?
そう、俺は意を決してあの言葉を言ってしまった。
「さ、触ってみてもいい?」
「………」 (←殺意と腫れ物を見る目が入り混じった複雑な表情)
その瞬間、自分がとんでもないことを言ってしまったことに気がつきました。
沈黙が続く。俺のこの思いなんてよそにテレビでからはおバカな芸人達の下品な笑い声が響いている。
どうしよう、この空気。
しかしお姉ちゃん(←まだ混乱している)はやっぱり優しかった。こう言ってくれた。
「そんなに触りたかったら俺の高校受験しろよ。そうすれば飽きるほど触ることができるぜ、自分の胸をな」
その年、彼は私立帝越高校を受験したのでした。
### 13.卒業した先輩 ###
普通公共にある御手洗というやつは男女別に別れているものだ。
当然男だったら男性用に入るし、女性であれば女性用のところに入るもの。
男性が女性用に入れば通報されるだろうし、女性が男性用のところに入れば白い目で見られるのは間違いない。
ただ、小さめの飲食店や雑貨屋、衣料品店などに行くと分かれておらず、男女兼用になっている場合が少なくない。彼に分かれていたとしても中の造りはほとんど区別がないぐらい。
そこであれば男女問わず、どちらが入ったとしてもそれほど不信がられることはないだろう。
さらには出入りする人が余り周囲に気を使わないようにするためにそういうところは通常目立たないところにある場合も少なくない。
事実ここがそうだった。
規模は大き目の衣料品店、御手洗はちょっと奥まった目立たない所にあり利用する人はほとんどいない。
さらには規模の割に今日のお客さんはそれほど多くはない。だから余計に利用する人は少ないといえる。
男女別に分かれた扉が二つ。とはいってもその扉を開ければそこが直接トイレの個室になっている。
ただ単にトイレの個室が二つあって、それを男性用と女性用に分けているだけ、といったところか。
だからその気になれば男性が女性用に、女性が男性用に入ることは難しくない。
つまり、どちらか一方の方に男女二人で入るのもそれほど難しくないといえる。
そして今、そういう状況にあったりするんだなぁ。
「あっ、んんっ……んはっ、あっ………」
男性用個室。そっちの方に俺と常久が入ってた。
俺は普段着のごくごく無難な格好なのだが、女になっている常久はちょっと気合の入ったかわいい服装。
上に着ているピンクのキャミソールと白のカーディガン、下はこれまたフリルいっぱいの白のミニスカートにピンクと白のストライプのオーバーニーソックス。
おまけにうっすら化粧までして、髪の毛をツインテールにしてリボンで縛っているんだから余計に可愛らしく見えてしまう。
久々に休みの日だから遊びに行くか、と言って待ち合わせして、やってきた常久の姿を見て俺はどきりとした。いや、こんなカワイイ姿していたら男だったらそう思うだろ?
例え中身が男だと分かっていても、本当の男の姿を知っていたとしても、だ。
だが今はそのカワイイ服装も乱れている。大体男女でこんなところにはいっているんたからその理由ぐらい分かるだろ?
責任逃れみたいに聞こえるかもしれないけど、誘ったのは常久の方だ。
この衣料品店でお買い物かと思ったら、服を見るのもそこそこにこのトイレに引っ張り込んだ。
わけが分からなかったけど、とりあえず逆らうことなく連れ込まれたら、これだ。
いきなり俺にぎゅっと抱きついてきて、キスして「しよ♪」と言われたら抵抗できないだろ。
「あんっ、んんっ………竜介のエッチぃ♪」
「どっちがだよ」
外に声が漏れないよう気を使っているから互いに会話はささやきあうようなもの。それでも十分に聞こえる。
そんな会話よりも下半身の方でくちゃくちゃいってる音の方が響いている。これが外に洩れてないかと気ががりになってしまう。
常久を背中からきゅっと抱き、後ろから攻める。常久はのけぞるようにして後ろを向き、俺と下を絡めるキスをする。
喘ぐように常久は身をよじらせ、色っぽい声を出している。まるで誘っているかのよう。
それに答えるように俺は常久を一枚ずつはいでいく。場所が場所だから全裸にはできないが。
キャミソールをたくし上げ、スカートもたくし上げる。驚いたことにそこから現れた下着はずいぶんと派手だ。
黒の下着、おまけに下はTバックじゃないか。これ勝負下着ってやつか? いったい何を考えてこんなもの着てるんだよ。
「お前、まさか普段からこんなもの着てるのか?」
「んなわけないじゃん。お出かけだから気合入れただけだよ」
お出かけで気合入れる理由っていったい……まあいい。
しかしこんなもの見ちゃったら男の本能刺激するじゃないか。特にこのTバック、ほとんどお尻丸出しでこんなの見たら入れたい欲求に駆られてしまう。
そういえばこいつ、尻フェチだっけか? もしかして自分が好きなあまりに自らののお尻も見せびらかしたいとか?
とりあえず触っておこう。うん、フニフニでスベスベでプニプニしてて気持ちいい。
既に露出しているも同然だが、とりあえずショーツに手を突っ込んでみる。後ろ側から女の子の割れ目を攻めておこう。
左手でお尻を揉みながら右手は常久のおっぱいへと伸びる。俺はどっちかというとこっちの方がいいのだが。
ブラの中に手を突っ込み、おっぱいを揉みながらブラを上へずらす。その時に乳首を軽くぴんと指ではじくのを忘れない。
感じたかな? 「あんっ」なんて声出しちゃって。
ぷるんとおとを立ててこぼれたのは常久のおっぱい。Eカップのおっぱいは片手で揉むのに適度な大きさ。
「あはっ、んはぁっ………竜介ぇ…………んっ…」
常久が俺のズボンのチャックを下ろして中でいきり立っていたものを取り出すが、止めることはしなかった。
やらしい手つきで俺のペニスを撫で回し、俺をその気にさせていく。
「準備はいいかな?」
「あんっ、早く来いよぉ♪」
するすると自分でショーツを下ろしていく。その時にとろっ、と愛液がこぼれ落ち、ショーツとの間に糸を引く。
ったく、スケベなやつ。
そういう俺も俺であんまり人のことはいえないけどな。女になったら俺だって色々エッチなことしちゃうし。
「あ、んっ…」
後ろからゆっくりと入っていく。常久は壁に手をついてお尻を突き出していたからバックで来いという意味だと解釈したから。
その突き出されたプニプニのオシリを両手でつかんで、とろとろの愛液が流れ落ちる入り口を進んでいく。
「あ、はあっ……」
接続完了。常久は壁に手をつけたままのけぞっている。このまま抱きついて来て、というサインか。
俺もそれを理解し、常久に覆いかぶさって抱きつくようにし、腰に手を回しぎゅっとする。。
「あぁっ、あはぁ……」
ちょっと後ろを向いて俺と視線を合わせる常久。顔が接近したらやるのは当然のように舌を絡め、唾液を交換するキッス。
抱きしめながら腰を動かし、胸を揉むのを忘れない。
柔らかな常久の女の体。俺の心臓の鼓動は早くなり、欲求が増していく。
男の本能。女を愛撫し、征服し、優越感に浸って最高潮に達してやりたい。
常久を抱く力が増す。ぎゅっと抱きしめて、絶対に逃がさないと行動で伝える。
端から逃げる気なんてない、だから一緒に……常久の顔はそういってそうだった。
「はあっ、あぁっ……イクっ、イキそうっ…!」
「ああ、イかせてやるっ……思いっきり、出してやるっ!」
準備は整った、常久は最高潮に達しようとしている。それに合わせて、俺は自らのストッパーを、外した。
「あっ、ああぁぁっ、んうぅぅぅぅっっっっ………!!」
絶頂に達して、かなりでかい声をあげそうになってあわてて俺は常久の口をふさいだ。
右手が常久の声で震える。一瞬判断が遅かったらこの喘ぎ声がトイレの壁を貫通して店中に響くところだった。
力を込め、常久を押さえつける一方で己の欲望を一気に注ぎ込む。
遠慮することなく、常久の膣内に。
噴出した俺の精液と常久の愛液が交じり合う感触はいつものこと。その後は決まって二人してとろんとした気分になる。
それは常久の方が、女の方が余計に強いか。その表情は幸せそうだ。
女は心で感じ絶頂を迎える、自分も経験しているからそう表現するのが適切かもしれない。
二人で余韻に浸って、冷めるのが早いのは男の方。俺は常久の膣に入ったまま常久がある程度落ち着くのを待つ。
もうそろそろいいかな? というところでそいつを抜いた。
抜いたと同時にぼとぼとと交じり合った体液があふれて流れるのは相変わらず。
こういうときに現実に戻される。これを始末するのは女の負担が大きい。
「ふあぁ、いっぱい出たなぁ」
その声は楽しんでいるような、うんざりしているような。
とりあえず常久が処理している間に俺が先にこのトイレを後にすることにした。
同時に出る事になったらそれを目撃した人が不信がってしまう。多少時間差をつけておいたほうがいいだろう、と思ってのことだ。
常久にそのことを伝え、先にトイレの扉を開ける。と、同時だった。
「君達ぃ、お楽しみのようだったねぇ」
扉を開けたその目の前に、この人がいた。
「は、半田先輩……」
先輩の存在に常久も気がついた。そしてその人物を見て、二人して青くなった。
当の先輩はトイレで盛り上がっていた俺たち二人に睨み付けるようにしたまま、にっこり微笑んでくれた。
それがたまらなく恐怖を感じたのだが。
「まあぁぁぁぁっったく、お盛んな後輩には困ったものねぇ」
その言葉は本当に困っていっているものではなく、からかっているように思える。事実、先輩の顔はにやついているし。
どうやら先輩はあの店で俺たちを見かけ、声をかけようとしたところでなにやら二人で(正確には俺が常久に連行されて)トイレの個室に姿を消したので外から様子をうかがっていたらしい。
で、出てくるのを外で待ち構えていた、というわけだ。
あれから俺たちは先輩に促されてこのファーストフード店へとやってきた。
注文は無難にセットをひとつずつ、とりあえず頼んだだけであまり食は進まない。さっきの件があるからだ。
現場をおさえられて恥ずかしいという気持ちもあるが、常久の場合はエッチしたばかりで体が火照ってて、という理由もあるかもしれない。
俺と常久は並んで座り、先輩はその向かいに座る。俺たちはあまり食欲がわかず、今はドリンクをちびちびと飲む程度。
うつむき、下を向いて先輩に顔を合わせることができない。
「まあ、わたしも色々やったからあんまり人の事は言えないけどね」
さいですか、半田政宗(ハンダマサムネ)……いや、半田瑞希(ハンダミズキ)先輩。
この人は去年俺たちが通う私立帝越高校を卒業していった先輩で、学年で言えば二つ上になる。
当然男だ。今は、女だけど。
知り合ったのは大したことじゃない。去年の文化祭の時なのだが、人員不足で生徒会の手伝いをされたことがあって、その時生徒会副会長を務めていたのが先輩だった。
その時先輩は男の姿で、てきぱきと仕事をしていた姿は実に頼りがいがあったなぁ。
ちなみに文化祭が始まったら先輩は女になっていて、生徒会主催のコスプレ喫茶で奮闘していたっけか。
その時の先輩ときたら……スク水にうさ耳は全く予想もしていませんでしたけどね。
文化祭が実施されるのは毎年10月中頃、だから知り合っていたのは卒業までの半年程度の期間でしかなかったから大した接点があったわけではないが、それでも知り合いと呼ぶには十分な関係だと思う。
卒業式のときは俺も常久も先輩の姿を見つけて、十分に見送った。
女になっていた、先輩の姿を。
「色々、ですか」
「そう、色々。あの時は私も男だったってわけよ」
男だった、それが今の先輩の姿を見ていると重く感じる。
そう、卒業式で先輩は女になっていた。
うちの学校のシステム、半周期的に性別が切り替わるシステムは当然卒業してしまったらその効果はなくなる。
卒業するまでに何でも特殊な処理をして、性別を切り替える要因となっているナノマシンを破壊し活動を停止させるのだそうだ。
どうやるのかは分からないが、聞いた話では特殊な電磁波を当てるとかいわれている。とにかくそうすることでナノマシンは活動を停止、半周期的な性別の切り替えは発生しなくなる。
当然それは男のときに行われる。ナノマシンが行っているのは女の体に維持するのではなく、性別を切り替えること。
従って女の体の時にそれを行ってしまうとそれ以降ナノマシンが活動を停止し、男の体に戻ることがなくなってしまう。
だからその処理を行うのはタイミングが大事。男のときにそれを行わなければならない。人によって男と女の体の周期がずれているから順番どおりに、というわけには行かないのが欠点なのだが。
ただ、もちろん例外もある。
当人が望んだ場合は女の時にその処理を行う、つまり、一生女のままでいたいと思う人には。
男ってやつはエロい生き物で、大体の男は一度は女になってみたいと思うものだ。
理由は千差万別。女湯に入りたいとか、堂々と覗きをしたいとか、カワイイ服を着てみたいとか、もしくは女のエクスタシーを感じたいとか。大体不純な動機だ。
だがそういう動機のやつはさすがに一生女のままでいいかといわれるとそういうわけではない。
特に俺たち生徒の場合、2ヶ月に一回の周期で生理がやってくる。
そいつで現実を味わってしまうのだ。こんなつらい思いなんてしたくない、と大体のやつはそこでそう思うもの。
ついでにいえば女の体はトイレが面倒だし、ブラをしなきゃいけないとか、意外と胸が邪魔だったりとか、そうした不便な現実を知ることになる。それが三年間の間続く。
そうなったら「一生女の体じゃなくていい」という結論に至る。
仮に女の体でエッチを思う存分楽しみたいというやつでも3年間も期間があるのだ、それだけやっていれば「飽きた、もういい」となる。
というわけで実際に一生女でいることを選択するやつは少ない。事実、その卒業式でも卒業生約三百人中、女子つまり一生女でいることを選んだのは二十人弱だった。
その中に、先輩が含まれていたのだが……。
そうした現実を知ってもなお女子であることを選択する理由、それは女に目覚めたとか、ずっと女になりたかったという性同一性障害とかいう心の問題とか、よほどのエロで一生女の体でエッチを楽しみたいとか。
そして他にあるとすると……
「で、あなた達は付き合っているの?」
唐突な先輩の質問に俺も常久もむせた。
「げほっ、ごほっ……つ、付き合うぅ?」
「あら、違うの? あんな所であんなことしているぐらいだから、そうじゃないかと思ったんだけど?」
俺も常久もその質問に顔をあわせて悩んでしまう。
そりゃあある意味では俺たちは付き合ってはいるが、先輩の言う『付き合う』とは男女としての恋愛的な交際をしているのか? って話だ。
そんなこと言われても、俺たちそういう形で付き合っているわけじゃ、なあ?
多分先輩はからかっているんだ。そうは思ったけど、なんだか言葉が詰まる。
だからここは答えるのではなくて、別の手段でお茶を濁す。
「そういう先輩は、どうなんですか?」
「あら、逆に質問してごまかそうってワケ?」
やっぱし見え見えだったか。でも先輩だって分かってて俺たちからかったんだ、おかえしだい。
「もち私はラブラブよ。現在進行形で」
そうですか、今もラブラブだったら何の問題もないですね。
女の苦労を知ってもなお女子として一生を生きようとする理由のひとつ、それは男に惚れたから。
あの色々と頼りになる頼もしい姿に男らしさを見ていた半田先輩が卒業式のとき女になっていたのを見て、俺も常久も驚きを隠せなかった。
式が終わり、在校生と卒業生とが挨拶する中で俺は半田先輩に駆け寄った。そして何故女に? と尋ねたらこう答えた。
「あはは、和馬に惚れちゃったんだよねぇ」
和馬、豊浜和馬(トヨハマカズマ)、生徒会長だった。
そういう噂を聞いたことがあった。生徒会長と副会長ができてるという噂を。
たしかに生徒会室に出入りしていた時にも二人が仲良くやっていた姿を俺も常久も目撃してはいた。
でもそれは共に仕事をこなすもの同士の友情関係だと思っていた。それを見た誰かが適当に想像して噂話で広まったんじゃないかと思っていた。
だが、事実だった。
会長に惚れた半田先輩、一緒になるために男を捨てて一生女でいることを決意した半田先輩。
そんな事実を見て、俺はショックで目の前が真っ暗になったのを覚えている。
男に惚れるというのは、かつて男だった先輩が男を捨てる決意をするほどのことなのか。
俺だってその時は半周期的に女になっていた。自分が女になっても期間がたてば男に戻れるからそれほど大きなことに思っていなかった。
だけど、現実的に自分が一生女のままだったら? 俺はどうなるのだろうか?
目の前で起こっている現実に俺は自分の事と照らし合わせて考え、困惑していた。
もっともその困惑は一時的なものに過ぎない。しばらくすればそんなな悩みも忘れて普段の生活に戻っていたのだが。
でも時々思うことはある。一生女でいるとは、男に戻れないとは、どういうことなんだろう。
軽いことじゃないはず。それを実行した半田先輩って、どうなんだろう。
ふと顔を上げて先輩を見た。
ジャンパーの下はカジュアルシャツ、中から持ち上げている胸はうちの学校標準仕様のように大きなバスト。下はデニム地のスカート、丈は短め。
顔を見れば化粧もきちんとしている。薄めのナチュラルなファンデーション、ピンク色の口紅、マスカラ、そしてイヤリング。
半田先輩は綺麗だった。多分、道行く人の半数が振り返るような、モデルのような美人。
制服を着て生徒会の職務についていた頃とは一味違う。なんだか、先輩は綺麗になっていた。
でも、先輩だって男だったんだ。だから気になっている。
「自分の男を捨ててまで、豊浜先輩が好きだったんですか?」
「なんだかやらしい質問するわねぇ」
それは申し訳ないです。そういおうと思ったけど、先輩が口を開く方が早かった。
「まあ、惚れたきっかけなんて大したものじゃないわ。最初はそれこそ同じクラス同士で仲のいい友達程度だったし。でもさ、あの学校の特殊事情ってやつ? それが火をつけちゃったって感じかな?」
「火を?」
「女の子の体で、エッチなことしてみたいってコト」
ぎくり、とした。
「だって男が女になるんだよ? それも本物の。だったら一度は試してみたいって思うようになるじゃん。皆そう思っていたみたいだし、事実大抵の生徒は一年のうちに経験済みよ」
それはそうかもしれない。俺も一年の時には既に常久と経験しちゃったから。
「で、私も同じく、ってワケ。もち相手は和馬ね。いやもうびっくりしちゃったわ、女の子がこんなに気持ちいいんだって知っちゃってさ、もう二人して女の子になるたびにエッチしてたわ。あ、もち女になった和馬も私がちゃんと処女頂いちゃったけどね。その時の和馬ったら可愛らしいのなんのって」
ちなみにこの会話は互いに小声で話している。さすがにこんな会話周りにいる人達に聞かれたら色々まずいし。
まあ、聞き耳立てられるほどお客さんいないけどな。結構閑散としているし。
「そんな関係がずるずと三年も続いたんだけどね、そんな時ふと思っちゃったのよ。なんだか和馬と一緒にいるとすごく落ち着く、抱かれると胸がキュンってなっちゃうなって。それが恋だって気がついたのは三年の時だったかしら? なんだか私、どうにも切なくなっゃって、恋しくていとしくてたまらなかったの。だから、思い切って告白したの、文化祭の、後夜祭の時に、こっそりと二人っきりで、生徒会室で、ね」
「それで、OKだったんですか?」
今まで静かだった常久だが、会話に参加しようとしてなのか先輩に尋ねた。
「ちょっと戸惑っていたように見えたかな。でも、しばらく静かな時間が流れて、それで和馬、私の事をぎゅっと抱きしめて『俺もだ』って言ってくれたわ。その時はすごく嬉しかったわ、恋が実った、ヤッターってね。まあ、しいて問題を言うんだったら私も和馬もその時女だったってとこかしら」
その時の事を思い出していたようで先輩の顔は赤くなっていて、それでいてくすくすと笑っていた。
その表情に俺たちも自然と笑みがこぼれた。
「で、いざ卒業式が近づいた時に考えたの。このままじゃ男に戻っちゃう、一生女にはなれない、和馬とはもう一緒になれないかもしれない、って。そう思うと怖かった、和馬が遠くに行っちゃうんじゃないかって思って。でも自分か和馬がどっちかが男を捨てて女になれば一緒にいられると思った。けど、そのために男を捨てるっていうのは、男に戻れないっていうのが、一生女として生きていくっていうのが、悩んだわ。でもね、その時は既に私にとっては男を捨てるよりも和馬が遠くに行ってしまうほうが嫌だった。だから、私は和馬に言ったの。私は女になるって、和馬と一緒にいたいって。そしたらまあ、和馬は怒ったわ」
「怒った?」
「まあ、ムキになったって言うのかしら? 俺だって一緒にいたい。だけど、女になるのは自分の方だって」
なるほど、なんとなく想像がつく。
「でも結局私が女になるって事で話は決着したわ。まあ、そこで和馬が言った事は本当にそう思っているんじゃなくて、ちょっとカッとなって言っただけみたいだけど。まあ、その代わりに私からのお願いってことで最後に卒業する前に女の和馬を抱かせてって言っちゃったの。やっぱりこれで男が最後だと思っちゃうと名残惜しい感じがあったからね、せめてもの思い出って感じ。私が男だったことを忘れないようにって。まあ和馬もOKしてくれて男の私の腕の中で何度も可愛らしくイッちゃってたっけ。ああ、あのときの和馬の顔は忘れないわ、可愛かったんだから」
なんだか段々会話がのろけなんだかエロいのだかそういう方向に発展していってるな。そんな心配をしていたが、それを語る半田先輩の表情はどこか悲しげに映っていたような。
「……先輩、ひとついいですか?」
「なあに?」
悲しげではない、そう言っているような笑顔で先輩が返事した。
「女になって、よかったですか?」
それが気になった。
男を捨てて、女として生きて、恋人と共になることが果たして先輩にとっては良かったのか。
「もちろんよ」
そう答えた。
それからしばらくは他愛もない会話が続いた。
「もち和馬とはラブラブなのよねぇ」なんていうのろ気話や「浮気したらあいつを殺して私も死ぬ」なんて物騒な話や「大学卒業したら結婚するつもり」なんて幸せそうな話も。
それともうひとつ気になったのは「さすがに今は中出しはまずいのよねぇ。いま妊娠しちゃうのはまずいし」という話。
公衆の面前でそんな話するなよ、耳に入った人は変な目で見るぞ、と心配したのとは別に思ったこと。
先輩も女性になった。今の俺たちみたいなかりそめではなくて、本当に女として妊娠できるのか、と。
先輩はそんなつもりじゃなくて冗談で言ったのかもしれないけど、俺には妙に重く感じてしまった。
それが女になったことのひとつの証なのだから。
それと別れ際、先輩は一言俺たちに注意した。
「あんた達も気をつけなさいよ、エッチしすぎると私みたいに恋が芽生えちゃうわよ」
そんなことを言った。
それは冗談なのか本気の警告なのか定かではない。俺には判別不能だ。
まあ、それ以前にいくらなんでも俺が常久に恋心抱くなんてことは……
いや、ちょっと待て。
現時点で俺は常久にそんな気持ちを抱いてはいない。もちろん良き友人としては見ているけど。
だけど、常久はどうなのだ?
今日の妙に気合の入った服装、化粧までしている顔、色気の入った勝負下着、俺との積極的なエッチ。
まさかその行動、俺に対して気がある? いや、考えすぎか?
「なあ、竜介」
突然声をかけられびくっとした。驚かすなよ、と言おうとしたがあと一歩のところで止めることができた。
「仮にだけど、僕が竜介に告白したらどうする? 先輩みたいに」
「は?」
な、何を言っているんだこいつは。まさか本気で……
「だ、だから仮にだよ。本気じゃねえよっ!」
全力で否定する常久だが顔は真っ赤になっている。照れているのは明らかだ。
そのそぶり、仕草、反応、まるで本当に女の子を相手にしているみたいだ。
こいつ、本当に本気じゃないだろうな?
「だから……先輩みたいに僕が常久に告白したら、竜介はどうするのかと思って」
語尾が小さい。最後の方はあまりはっきりとは聞こえなかった。
常久はどういうつもりでそんな質問をしたのだろうか。
俺の心境を知りたい? 俺が常久に対してどう思っているか、確かめてみたい?
それとも本当に、ただ単に同じような状況で俺がどう思うか興味があるだけ?
いったい何故こんな質問をするんだ? 俺に何を言わせたいのだ? そんなこと言われても、俺は、俺には……
「わかんねえよ」
そう答えるのが精一杯だった。
性指向を馬鹿にしているのか
XJさんの母性感じるおっぱい描写が大好きです。
相変わらずの神仕事(GJ)で、感服するばかりです。
今回の一番のツボはズバリ、『おっぱんつ』。
・・・・・爆笑でした。
可能なら前回の支援図書館に投稿していた作品をこっちにも投稿して欲しいです
二人の中がどうなるか非常に気になる作品ですね!!
残りの-1点は「優しいお姉ちゃんが弟に触らせてやれよ!」と他人事ながら思った事かな。とにかく続きが気になります。GJ