いとこの双葉姉ちゃんは、天才発明家を自称するマッドサイエンティスト。
占拠した廃アパートを改造した自宅兼ラボで、毎日怪しい発明に没頭している。
その発明とやらは毎回毎回ろくでもないもので、実験対象は……いつも僕。
今回もそうだった。休日の朝、眠りから覚めた時最初に目にしたのは、うねうねと蠢く肉の塊へと変えられた自分の姿。
うわあっ!! 何だこれ!?
変わり果てた自分の身体を見て、僕は叫んだ。身体のどこを見渡しても目に付くのは毒々しい色をした肉、目玉、そして肉。
これは何かの病気なのか呪いなのか……? お父さんお母さんごめんなさい。僕は怪物になってしまいました。
ああ……これからの人生どうしたらいいんだ。この姿じゃ学校に行くことも、友達と遊ぶこともできない。
ましてや恋人なんて、出来るはずがない。
溢れる絶望と悲しみに、僕の魂が超光速で底なしの重力井戸へ深く深く沈んでいこうとしたとき。
「おっはよっ!! きよ君!! 気分はどうかなぁ!?」
これまた底なしに明るい声が部屋に響きわたった。ああ耳が痛い。
振り向くとそこにはあられもない下着姿の美少女が、仁王立ちでこっちを見下ろしていていた。
後ろから差し込む朝の光が、後光のごとく神々しく彼女の体を照らし出す。ま、眩しい。
「気分が悪い……なんてわけはないよね? 何せあなたは人を超えた、究極の生命体として生まれ変わったんだからっ」
ひとかけらの邪気を見せることなく、少女はカラカラと甲高く笑った。
「良いわけあるかっ!!」
僕は反射的に事の元凶、双葉姉ちゃんに怒鳴り返した。
やっぱり犯人はアンタだったか!! この人非人!!
ああもう胸くそ悪い。楽しいはずの休日の始まりが台無しですよ。
身体は勝手に恐ろしい怪物の姿に変えられ、人生が絶たれる絶望まで味わうことになった。
減った!! この3分で僕の正気度はごっそりと減ったよ!!
全く持って不条理だ!! 僕はこの所業に謝罪と補償を要求する!!
あと身体を元に戻して!!
「まあまあきよ君ったら大声出して……。嬉しいのはわかるけどさ」
嬉しくなんかないっ!! ていうか何でこんなことするのさ!?
「よくぞ聞いてくれました!! これはね、あたしの考えた理想の人類の姿なの」
僕の質問に顔をうっとりさせ、双葉姉ちゃんは一人語り始めた。
この人は喋りモードに入ると止まらなくなる。
どうやらしばらくの間、元に戻しては貰えなさそうだ。
「今のあなたは、煮えたぎる溶岩の中でも生き続けることが出来るの」
そんなとこ、行く気アリマセン。
「そして宇宙空間の真空や宇宙線にも耐えることが出来るわ」
だから行きませんそんなとこ。
休日オワタ。僕はあきらめムードで姉ちゃんの喋りに付き合うことになった。
「これから遠くない未来、人類は試練の時を迎えるわ。
人口爆発、グローバル経済、環境汚染、食糧危機、エネルギー危機、紛争にテロ。
今のままでは地球の中で人類は死に絶えてしまう。互いが互いを喰らい尽くしてね。
だから人は新たな生存圏を求めて、地球というゆりかごから宇宙へと巣立っていかなければいけないと思うの」
なんか某ロボットアニメの指導者みたいな話だね……。地球に隕石でも落とすつもり?
「でも人の身体はとっても脆弱。危険がいっぱいの宇宙の環境には耐えられない。
人類は進化する必要があるのよ。
高温に低温、高圧に低圧、真空、そして容赦なく降り注ぐ宇宙線。
それらに耐えてかつ少ないエネルギーで活動できる肉体。
暗黒の宇宙で理性を保つ強靭な精神。
そして私の出した結論は……」
この醜い肉の塊ってことですか!?
「そうだよ。かわいいでしょ?」
かわいくないっ!! いつもながらアンタの美的感覚はどうなってるんだ……?
「まあ、というわけで……改めてきよ君にお願いしたいんだけど……?」
ニヤリ、と双葉姉ちゃんが微笑んだ。
ああ、嫌な予感がする、というか嫌な予感しかしない。
「一週間の間、この身体で実っけ……もとい試験に付き合って欲しいの。
いいデータが取れたら学会で発表するわ」
言い直した!! 今『実験』って言いかけてた!!
やっぱりか……予感的中。
トホホ……結局断りきれずに実験に付き合うことになってしまった。
しかし、姉ちゃんのいう『学会』って、なんの学会なんだろ?
この日の実験は簡単な耐久テストだけで、昼前には全部が終わった。
内容は熱湯で一時間茹でられたり、氷水の中に一時間沈められたり、って普通死ぬよね。
姉ちゃんは容赦なく僕をその中に突き落としてくれたけど。
まあ自分はなんともないからいいか。
「お疲れ様。今日の実……試験はこれで終わりね。
後は一日自由にしてていいから。ハイ今日のお駄賃」
あ、ありがとう。ところで姉ちゃんもう一つお願いがあるんだけど、この格好何とかならないかなぁ?
これで学校に行ったら、怪物呼ばわりされていじめられちゃうよ。
「ええそうかなあ? あたしはニュルニュルしててかわいいと思うんだけど……」
姉ちゃん、ニュルニュルはかわいい擬音じゃないと思う。
「一応対策は取ってあるよ。待ってて」
言うが早いか実験室の角にあるガラクタの山に入り、ゴソゴソと中を探る。
「ええと……あれでもないこれでもない……あ、あった!!」
某猫型ロボットのような台詞を口にしながら、姉ちゃんが取り出したのは金属製の大きなコンテナ。
蓋を開け、中から出てきたのは、頭のてっぺんから手足の指先までの全身を覆いつくす、人型をした肌色のウエットスーツ状の何か。
人間の頭に相当する部分からは、長い髪の毛のようなものが伸びているのがわかる。
「名付けてミミクリースキン。これを着たら人間そっくりに擬態できるわ」
そんな便利なモノがあるなら先に言ってよ。
姉ちゃんからスーツをひったくり、ぱっくりと開いたそれの背中に、
僕は身体を圧縮しながらズルズルと体を収め込んでいった。
うんしょ、うんしょ。せ、狭い、苦しい。
でも不思議なことに、これからどうやればいいのか僕は知っていた。
触手を束ねて手足を作り、思考中枢を集約させて頭部を持ち上げ、スーツの末端へと体を行き渡らせる。
スーツはムクムクと膨らみ、人の形を取りながら起き上がった。
はみ出たままの身体を力任せに皮の中に押し込め、内側から体をぴったりと密着させてやると、皺だらけだった皮膚の表面が、滑らかでみずみずしい人肌の質感へと変化していく。
それとともに背中に開いていた切れ目が、ぴったりと塞がっていった。
「流石はきよ君、飲み込みが早いわ。見て、これが今のあなた」
姉ちゃんはよいしょと声をあげ、実験機材とおぼしき大きな鏡を持ってくる。
それ、不便すぎない。もっと小さい鏡は持ってないの?
「うるさいわね。『大は小を兼ねる』のよ。
と、それは置いといて。これなら外出するときも大丈夫でしょ。このスキンも自信作なんだ」
うん、そうだね。ありがとう双葉姉ちゃん。
鏡の中には緑がかった黒髪の、ほっそりとした美少女の姿が映る。
って、姉ちゃん!! 一体全体どうなってるのよこれ!?
「気に入ってくれた? こっちの方も可愛く出来てるでしょ?」
うん、これはかわいい。たしかにすごくかわいいんだけど……ちょっと待って。
この皮女物でしょ!? 僕は男だよ。男型のスキンはないの?
「ふっ……小さい、小さいわねきよ君。今のあなたは人を超えた超存在。
性別などという古い概念なんか既に超越しているの。
あなたは雌雄同体にして両性具有、つまり男の娘であり女の漢でもあるのよ。
だから女の子の格好でも、問題なしの無問題」
問題大ありだっ!! これでどうやって明日から学校行くんだよっ!!
根本的な問題が全然解決してじゃないかっ!! 僕の姿のスーツ、ちゃんと作ってよ。
「つまんない子ねぇ。せっかくお姉ちゃんが新しい世界を教えてあげようとしてるのに」
お断りします。
「しょうがないわね。じゃあ今日の夜までにはあなたのスキンを作っておいてあげるから、
今日のところはその姿で我慢してちょうだい。
ええとスキンの材料はと……」
冷蔵庫の前にしゃがみこんで、双葉姉ちゃんは中をゴソゴソ。
元の姿に戻るまでは、かなり時間がかかりそうな予感がする。
さて、今日一日どうしよう? 僕は姉ちゃんをほったらかして、ラボの外へ出て行った。
■■■
身体が変わってしまったせいか、いつもとは感じが違うなあ。
目は随分遠くまではっきりと見渡せるし、
余分な目玉を後ろ向きに出したら全方位360°の大パノラマが見渡せる。
はは、変なの。何だか自分がモビルスーツになっちゃったみたい。
聞こえる音もそうだ。
周りにいる数十人の人たちの話し声、足音、車のエンジン音、鳥の鳴き声、木が風に吹かれる音、
全部が別々に、そして鮮明に聞き取れる。
もちろん沢山の人の、話す言葉の内容も。
ふふっ、何だか新鮮な感じ。これが進化ってやつなのかな?
見た目さえ目をつぶれば、超存在ってのも悪くないかもね……。
って……いけないいけない。
僕は人間の男の子なんだ。いくら便利でもやっぱり人間の身体に戻りたいよ。
とりあえず、夜までどこかで時間を潰そう。
家には帰りたくないな。この姿じゃ母さんに着せ替え人形にされちゃうかも知れないもんね。
もらったお小遣いも……やっぱり少ない。街中でお金は使いたくないな……。
ひとまず、友達の敏明の家にでも行ってみるか。
あいつなら双葉姉ちゃんのマッドさを知ってるから、この格好でも僕のことはすぐに分かってくれるだろ。
彼は一人っ子だし、ご両親は仕事で海外に出ている。ちょうどいい退屈しのぎができる。
となったら早速連絡……ピッ……ポッ……パッ……。声を男の声にして、と。
あ、もしもし敏明、僕だよ。今近くに着てるんだけど、今ヒマ?
だったら今からそっちに行ってもいいかな?
OK? じゃあ10分くらいで家に行くよ。うん、じゃあね……ピッ……
よしよし、それでは敏明宅へレッツゴー。
■■■
程なくして、僕は敏明の住むマンションに到着した。
彼の部屋は3階の角。玄関の前に立つと、家の中の物音……冷蔵庫の音やPCのファンの音、
そして敏明自身がたてる貧乏ゆすりの音から、内臓の動く音まで鮮明に聞き取ることが出来た。彼の健康状態は……良好そうだね。
ピンポーン。おーい敏明、やってきたぞー。
「おう、来たなキヨ。今開けるわ」
ガチャリと玄関の扉が開き、僕を招き入れようと敏明が顔を出す。
彼が僕を見た瞬間。
「え゛……!? あれ? どちら様? キヨはいずこ……?」
ビンゴ!! 困惑した敏明の視線は、僕と辺りを行ったり来たりしている。
男の声で話しかける。どうしたの? 僕はここだよー。
「声はすれども姿は見えず。一体全体これはどうなってるんだ?
ねぇ君? 扉の前にいた男の子知らない?」
だから……僕が清彦なんだって。
「げぇっ!! 女の子が男の声で喋った!?
……って、その声はキヨ!! 本当にキヨなのか? 随分と可愛くなっちゃってまぁ……」
そうだよー。さっきから言ってるじゃん。敏明はニブいなぁ。
「ちぇ、言ってろ。しかし何でまたそんな格好に? 原因は大方双葉さんなんだろうけど」
当たり。まあ、そこらへんはおいおい話すよ。お邪魔しまーす。
敏明の部屋にお邪魔した僕は、差し出された飲み物を頂きながら、今までの経過を一通り説明した。
飲みなれた筈のジュースは、いつもより味が違うような気がした。
果汁の中で僅かに感じる、薬品みたいな味。保存料かな?
「へぇ……人を超えた超存在……か……?
相変わらず双葉さんは突拍子もない事考えるんだな」
敏明は半ば呆れ、半ば感心した様子で僕の話に耳を傾けていた。
こういう話が出来る友達って、敏明だけなんだよなー。
その視線は椅子に座ってる僕の膝のほうに……って、
やば、パンツ見えちゃってるよ。スカートの裾を下げなきゃ。
こらこら敏明。あからさまに残念そうな顔をするんじゃない。
「それで、今のキヨは女の子の皮を着せられて、今の姿になったわけだ」
そうだよー。えへへ、可愛いでしょ? ちょっと着替えは不便だけどね。
「中身、見せてもらっていいかな?」
……いいけど、あまり見てて気分のいいものじゃないよ。
実際ホルモン焼きってレベルじゃないんだからね。今の僕のグロさは。
「大丈夫だって。双葉さんの研究なら、俺だっていつも見せられてんだから」
わかった。でもちょっとだけだよ。
僕は上着を脱ぎ、皮の背中にあたる部分に意識を集中させた。
ペリペリと音がして皮の接合部が外れ、後頭部から背中にかけてバックリと縦に裂ける。
裂け目の淵に指をかけ、僕はそれを左右に広げる。
敏明はごくり……、と固唾を飲んでこっちを見つめている。
なんだか少しこっ恥ずかしい。ストリップショーか何かをやらされてる気分だ。
破かないようにゆっくりと、広げた皮を前に引っ張っていくと、身体との密着が解けてズルリと皮は剥がれ、
抜け殻となった女の子の上半身が、皺だらけになってだらりと垂れ下がった。
「うわ……すげぇ……」
怪物の上半身と少女の下半身。
不気味でアンバランスな姿となった僕の身体を見て、敏明は驚愕を露にした。
僕も数本の触手を広げ、その先にある目玉で敏明を観察。
前後左右上下。彼の姿をいろんな角度から同時に見ることが出来る。
あは、これはこれで結構楽しいかも。
「なぁ、触ってもいいか?」
敏明は怪物の姿に興味しんしんな様子で、僕の方に手を伸ばしてきた。
物好きなやつだなぁ。いいよ、安全性は大丈夫だと思う、たぶん。
実験中、双葉姉ちゃんは始終僕のことを素手で触ったり叩いたりしてたから。
彼の方に一歩前進。彼の指先がペタペタと肉塊に触れる。
どう? やっぱり気持ち悪いかなぁ?
「思った通りの手触りだな。じめじめしててあまり気持ち良くない」
やっぱりね。気持ち悪いなら元に戻ろうか?
「いや、もうちょっとだけ観察させてくれよ」
しばらくの間、敏明は僕の身体をペタペタ触ったり、ペチペチ叩いたり、誰かさんと全く同じ行動をとった。
そして結構な時間が経ってから、彼は満足げな様子で僕の身体から離れた。
「サンキューな、キヨ。なかなか楽しかったぜ。元のカワイコちゃんに戻ってくれ」
オーケー、じゃあ戻るね。ズル……ズル……よいしょっと。
よしっ、これで元通りだ。……いや、違うか。
「キヨ、今度はこっちを触らせてくれよ」
敏明は、女の子の姿に戻った僕の胸に掴みかかった。
きゃんっ!! 何すんだよ!? やめてよ、くすぐったい。
「いいじゃないか、減るもんじゃなし。それにこれはお前の身体じゃないんだろう?」
僕の抗議もどこ吹く風。僕の膨らみをまさぐるように、彼の指がわさわさと動く。
うぅんっ!! 恥ずかしくて……くすぐったいよぅ……でも、何だか気持ちいい。
「うわぁ……キヨの胸、小さいけどすっげぇ柔らかい。本物の女の子の身体も、こんななのかな……?
さて次は、こっちの方の具合を見せてもらおうかな……? キヨ、触るぞ」
敏明の片手が僕の胸から離れて、下へと下りて行く。
その行き先は……スカートの中。
潜り込んだ指先が、ショーツの脇から中へと入り込んでいく。
え!? ちょっと待ってよ!! そ、そこは……。
きゃううっ……!!
今まで感じたことのない感覚に、僕は思わず悲鳴を上げ身じろぎした。
敏明の愛撫を受ける度に、とろけそうな熱い快感が、お腹から背筋へと突き抜けていくのがわかる。
触られた部分は、もちろん究極生物となった僕の生殖器官。
人の皮を着込んだとき、無意識のうちに人間と同じ場所に配置していたんだ。
うわ……中からヌルヌルしたものが出て来た。
こ、これってまさか……愛…液?
「お……!! キヨのここ、濡れてきたぜ。き、気持ち……いいか?」
こくり。無言で僕はうなずき、彼の行為に身を任せる。
彼の指が、粘液でいっぱいになった器の中に、ゆっくりと侵入してくる。
こねこねと彼の指が、僕の中で動くのが分かる。
うう……お腹の中が……熱いよ。
でも……もっと、激しくしてほしいな。
どうしてだろ? 男同士でこんなことするなんておかしいのに。
肉体の変化が、僕の心にも影響しだしているのかな?
ちゅぽん、と敏明の指が僕の中から引き抜かれた。
「ハァハァ……もう我慢できない。キヨ、しても……いいか?」
敏明はカチャカチャとベルトを外し、ズボンとパンツを一気にずり下げる。
うわあ、大きい。
見えたのは黒光りする、敏明の大口径ロングバレル。
いいよ、来て。
僕は微笑みながら無股を広げ、彼を誘う。
「いいんだな? い、いくぞ」
敏明は寝そべる僕の上にのしかかると、ロングバレルを入り口に押し当て、ゆっくりと腰を押し出していく。
ズヌヌ……と、それは粘液滴る僕の体内に呑み込まれていった。
「はぁっ……!! はぁっ……!!」
僕達二人は床の上で激しくもつれ合った。
敏明は猛然と僕に挑みかかり、勢いよく身体を奥へ奥へと突き出す。
僕は彼の勢いに身を任せながら、燃えるような興奮と快感に心震わせていた。
う!! くぅ……!! お腹の中……気持ちいいよう……!!
敏明も僕の中、気持ちよさそうだね。目を剥いてハァハァ喘いじゃって。
うふふ……なんだか可愛い……。
「うう……!! もうだめだー!!」
あれれ? もう出ちゃったの? だらしないなー、敏明は。
僕まだ満足してないよー。
しょうがないなあ。敏明のおちんちん、両手でこねこねしてあげよう。こねこね……。
よぉし、復活。今度は敏明が下になってね。僕が上に乗って動くから。
準備はいい? じゃあ、入れるね。
あぁんっ……入ってくるぅ!! おちんちんさっきより大きいよぉっ!!
敏明ッたら興奮しすぎ。
かわいい女の子とえっちしてるんだから、分からないでもないけどさ。
うくっ、奥に……来てるぅ……。中で敏明の先っちょがピクピクしているの……分かるよ。
う、動くね。
ふぁあっ……!! 凄いっ!!
敏明のおチンチンが奥で引っかかって……腰が抜けそうになっちゃうよっ。
でも、気持ちよすぎて身体が止まらない、止められないよぉ!!
「ちょww き、キヨ!! 激しすぎるよ。ヤバイ、ヤバイって……」
あっ……あっ……!! わっ、分かってるって。だから一緒に……
ああん!! もう駄目……あっ!! ああ!!
今度こそ僕達は2人で同時にイッた。
■■■
あれから何回やっちゃっただろうか、気がつくと日はどっぷりと暮れていた。
呼吸を整えながらゆっくりと身を起こす。
傍らでは精魂尽き果てた敏明が、屍同然となって倒れている。
床の上は2人の汗と体液でベットベト。
汚いなぁ、後でちゃんと掃除しとかなきゃ。
でもその前に、身体を洗いたいな。敏明、お風呂借りるぞ。
「……おう……」
脱衣所で服を脱ごうとした時、僕は身体の異変に気づいた。
妙にお腹の中が張っているような気がする。食べすぎかな?
いや違う。違和感があるのはもっと下だ。そこにあるものはと言うと……。
しかし、僕が考える間もなく異変は急激に進行していった。
猛烈な圧迫感と共に、僕のお腹が膨らみ始めたんだ。く、苦しい!!
生まれる。
僕は本能的に悟った。僕と敏明の間に出来た、新しい命の誕生だ。
風船のように膨らんだお腹を抱え、僕は空っぽの湯船の中にしゃがみ込む。
お腹の圧迫感は下へと動き、新たな生命がバリバリとお腹の皮を裂いて生まれ出てくる。
最初に出てきたのは真っ赤な、数本の触手だ。
触手は僕の出口を大きく押し広げ、産道の中から真っ赤な肉の塊が姿を現す。
がんばれ。息みながら『赤ちゃん』エールを送る。
苦しそうに、でも確かな足取りで『赤ちゃん』は僕の身体からズボッと抜け出し……。
「まま、ままーっ」
冷たいの浴槽の中で、僕の赤ちゃんは産声を上げた。
数本の触手を広げ、彼(彼女?)は僕に抱きついてくる。
それに応えるように、着込んだ皮の口から這い出し、僕は愛しいわが子を触手でぎゅっと抱きしめる。
こんにちは、赤ちゃん。僕がママだよー。
■■■
こうして、僕は若くして一児の母になったんだ。
この事実に我が家は一時騒然となったけど、
日ごろから双葉姉ちゃんの無茶振りで訓練されていることもあって、
あっという間に事態に馴染んでいった。
生まれた子供は、役所に勤める母親が住民票を偽造し、
養女という形で我が家に受け入れられることになった。
もちろん子供には人の皮を被せ、普段は女の子の姿をとらせている。
結局、その後僕は人間には戻らなかった。
子供のためにも戻るべきじゃないと思ったし、この身体結構気に入ってるんだよね。
ただ学校に行くときだけは、『清彦』の姿でいることにしている。
父親になった敏明は、最初に子供を見たときはモロにドン引きしていたけど、
擬態した我が子をみた途端、「アリだな」と一言漏らしていた。
敏明、君にはもちろん父親としての義務は果たしてもらうよ。
今日、僕は敏明にプロポーズするんだ。
新しい皮を被って、おめかしして、綺麗な服を着て、あいつの家に押しかけちゃおう。
実際に結婚するのは高校、大学を出た後だけど、あらかじめ覚悟は決めて貰わないとね。
「じゃ、行こうか」
『娘』の手を引き、僕は家の扉を開いた。
「はい、まま」
人形のように整った少女の顔が、邪気の無い笑顔で微笑む。
擬態は完璧。皮を着込んだ我が子の姿は、どこから見たって愛らしい人間の女の子だ。
僕は思わず彼女をギュッと抱きしめる。ああ、かわいいなぁ。
カラッと晴れ上がった空の下、僕達二人は未来へ向かって一直線に歩いていくのだった。
ふふふ、敏明の奴どんな顔するかなぁ。
僕たち親子をちゃんと幸せにしてくださいね。あ・な・た☆
■■■
かくして数年の年月が過ぎ、桜の舞う春の初めに僕は敏明と結ばれ、生涯を共に過ごす仲になったんだ。
今の彼は立派で頼りになる、僕の旦那様。
そして、それと同時に可憐で愛しい、僕の嫁でもあるんだよね。
え? どうしてかって?
それはね、敏明もまた、僕や娘と同じ究極生物として感染……もとい覚醒していたからなんだ。
双葉姉ちゃんの言うところ、僕と敏明がエッチしたときに、
僕の体細胞が粘膜を通して、彼の肉体を侵蝕してしまったみたいなの。
肉体の変貌が心の変化をもたらしたのか、敏明は僕と娘を笑顔で受け入れてくれた。
娘もまた優しい父親にすぐに懐き、触手でじゃれ合うようになっていった。
こうして僕達三人の、新しい生活が始まった。
そしてある休日の朝。
家族三人で、遊びに出かけることになっているこの日、
僕は未だに部屋から出てこない敏明を起こしに、彼の部屋へと向かった。
おーい敏明、早くしないと置いてくぞー。
ガチャリと扉を開けると、モゾモゾとベッドの上で蠢く肌色の塊が見える。
「おう、待ってくれキヨ。しかしこの皮はちょっと窮屈だなー」
塊は敏明の声でぼやくと、内側からモコモコと膨らみだした。
それの四隅が細長く伸びて手足を作り、塊は丸みを帯びた人型へと変化していく。
キュッと絞られた胴体にはなだらかで、柔らかい二つの膨らみが出来上がり、
さらにその上には人の頭にあたる部分が盛り上がる。
やがて、ぶよぶよだった表面がぴっちりと締まり、塊はどこから見ても人間そっくりの姿に変貌していた。
初々しい、人間の少女の姿に。
「キヨ、どうかな? おかしなとこ、ないか?」
裸のままの少女は、自分の身体をあちこち観察しながら僕の方に向き直る。
僕は無言で少女に近づき、ほっぺをギュッ。
少女の顔はゴムのように伸びて、カワイイ顔がムニュッと崩れる。
「何すんだよ!? せっかく上手く出来てたのに」
ゴメンゴメン。いつもの癖でつい、ね。
すぐに直してあげるよ。グイグイ・・・ほうら元通りだ。
くすくす・・・・・・。敏明の怒った顔も、すごくかわいいね。
今日は月に一回の反転の日。僕と敏明の、見た目の性別を入れ替える日なんだ。
僕は男の子に、敏明は女の子に。
身体の機能的には意味のない事なんだけど、これが結構新鮮で楽しいんだ。
男の子に戻った僕は、女の子になった敏明にもうメロメロ。
思わず『彼女』の身体を、背中からギュッと抱きしめる。
ああ、女の子の身体……柔らかぁい。
「あ、コラ、キヨ離れろ。くすぐったいじゃないかっ!!」
へへへ、やーだよ。せっかく男の子に戻ったんだから、少しは楽しませてよ。
あ、そうだ。敏明、2人目の子供欲しくなぁい? 僕は欲しいなぁ。
「へ? ちょww、お前どこ触って……!? あぁんっ!!」
約一時間後、敏明は珠のような赤ちゃんを無事に出産したのでしたとさ。(終)
占拠した廃アパートを改造した自宅兼ラボで、毎日怪しい発明に没頭している。
その発明とやらは毎回毎回ろくでもないもので、実験対象は……いつも僕。
今回もそうだった。休日の朝、眠りから覚めた時最初に目にしたのは、うねうねと蠢く肉の塊へと変えられた自分の姿。
うわあっ!! 何だこれ!?
変わり果てた自分の身体を見て、僕は叫んだ。身体のどこを見渡しても目に付くのは毒々しい色をした肉、目玉、そして肉。
これは何かの病気なのか呪いなのか……? お父さんお母さんごめんなさい。僕は怪物になってしまいました。
ああ……これからの人生どうしたらいいんだ。この姿じゃ学校に行くことも、友達と遊ぶこともできない。
ましてや恋人なんて、出来るはずがない。
溢れる絶望と悲しみに、僕の魂が超光速で底なしの重力井戸へ深く深く沈んでいこうとしたとき。
「おっはよっ!! きよ君!! 気分はどうかなぁ!?」
これまた底なしに明るい声が部屋に響きわたった。ああ耳が痛い。
振り向くとそこにはあられもない下着姿の美少女が、仁王立ちでこっちを見下ろしていていた。
後ろから差し込む朝の光が、後光のごとく神々しく彼女の体を照らし出す。ま、眩しい。
「気分が悪い……なんてわけはないよね? 何せあなたは人を超えた、究極の生命体として生まれ変わったんだからっ」
ひとかけらの邪気を見せることなく、少女はカラカラと甲高く笑った。
「良いわけあるかっ!!」
僕は反射的に事の元凶、双葉姉ちゃんに怒鳴り返した。
やっぱり犯人はアンタだったか!! この人非人!!
ああもう胸くそ悪い。楽しいはずの休日の始まりが台無しですよ。
身体は勝手に恐ろしい怪物の姿に変えられ、人生が絶たれる絶望まで味わうことになった。
減った!! この3分で僕の正気度はごっそりと減ったよ!!
全く持って不条理だ!! 僕はこの所業に謝罪と補償を要求する!!
あと身体を元に戻して!!
「まあまあきよ君ったら大声出して……。嬉しいのはわかるけどさ」
嬉しくなんかないっ!! ていうか何でこんなことするのさ!?
「よくぞ聞いてくれました!! これはね、あたしの考えた理想の人類の姿なの」
僕の質問に顔をうっとりさせ、双葉姉ちゃんは一人語り始めた。
この人は喋りモードに入ると止まらなくなる。
どうやらしばらくの間、元に戻しては貰えなさそうだ。
「今のあなたは、煮えたぎる溶岩の中でも生き続けることが出来るの」
そんなとこ、行く気アリマセン。
「そして宇宙空間の真空や宇宙線にも耐えることが出来るわ」
だから行きませんそんなとこ。
休日オワタ。僕はあきらめムードで姉ちゃんの喋りに付き合うことになった。
「これから遠くない未来、人類は試練の時を迎えるわ。
人口爆発、グローバル経済、環境汚染、食糧危機、エネルギー危機、紛争にテロ。
今のままでは地球の中で人類は死に絶えてしまう。互いが互いを喰らい尽くしてね。
だから人は新たな生存圏を求めて、地球というゆりかごから宇宙へと巣立っていかなければいけないと思うの」
なんか某ロボットアニメの指導者みたいな話だね……。地球に隕石でも落とすつもり?
「でも人の身体はとっても脆弱。危険がいっぱいの宇宙の環境には耐えられない。
人類は進化する必要があるのよ。
高温に低温、高圧に低圧、真空、そして容赦なく降り注ぐ宇宙線。
それらに耐えてかつ少ないエネルギーで活動できる肉体。
暗黒の宇宙で理性を保つ強靭な精神。
そして私の出した結論は……」
この醜い肉の塊ってことですか!?
「そうだよ。かわいいでしょ?」
かわいくないっ!! いつもながらアンタの美的感覚はどうなってるんだ……?
「まあ、というわけで……改めてきよ君にお願いしたいんだけど……?」
ニヤリ、と双葉姉ちゃんが微笑んだ。
ああ、嫌な予感がする、というか嫌な予感しかしない。
「一週間の間、この身体で実っけ……もとい試験に付き合って欲しいの。
いいデータが取れたら学会で発表するわ」
言い直した!! 今『実験』って言いかけてた!!
やっぱりか……予感的中。
トホホ……結局断りきれずに実験に付き合うことになってしまった。
しかし、姉ちゃんのいう『学会』って、なんの学会なんだろ?
この日の実験は簡単な耐久テストだけで、昼前には全部が終わった。
内容は熱湯で一時間茹でられたり、氷水の中に一時間沈められたり、って普通死ぬよね。
姉ちゃんは容赦なく僕をその中に突き落としてくれたけど。
まあ自分はなんともないからいいか。
「お疲れ様。今日の実……試験はこれで終わりね。
後は一日自由にしてていいから。ハイ今日のお駄賃」
あ、ありがとう。ところで姉ちゃんもう一つお願いがあるんだけど、この格好何とかならないかなぁ?
これで学校に行ったら、怪物呼ばわりされていじめられちゃうよ。
「ええそうかなあ? あたしはニュルニュルしててかわいいと思うんだけど……」
姉ちゃん、ニュルニュルはかわいい擬音じゃないと思う。
「一応対策は取ってあるよ。待ってて」
言うが早いか実験室の角にあるガラクタの山に入り、ゴソゴソと中を探る。
「ええと……あれでもないこれでもない……あ、あった!!」
某猫型ロボットのような台詞を口にしながら、姉ちゃんが取り出したのは金属製の大きなコンテナ。
蓋を開け、中から出てきたのは、頭のてっぺんから手足の指先までの全身を覆いつくす、人型をした肌色のウエットスーツ状の何か。
人間の頭に相当する部分からは、長い髪の毛のようなものが伸びているのがわかる。
「名付けてミミクリースキン。これを着たら人間そっくりに擬態できるわ」
そんな便利なモノがあるなら先に言ってよ。
姉ちゃんからスーツをひったくり、ぱっくりと開いたそれの背中に、
僕は身体を圧縮しながらズルズルと体を収め込んでいった。
うんしょ、うんしょ。せ、狭い、苦しい。
でも不思議なことに、これからどうやればいいのか僕は知っていた。
触手を束ねて手足を作り、思考中枢を集約させて頭部を持ち上げ、スーツの末端へと体を行き渡らせる。
スーツはムクムクと膨らみ、人の形を取りながら起き上がった。
はみ出たままの身体を力任せに皮の中に押し込め、内側から体をぴったりと密着させてやると、皺だらけだった皮膚の表面が、滑らかでみずみずしい人肌の質感へと変化していく。
それとともに背中に開いていた切れ目が、ぴったりと塞がっていった。
「流石はきよ君、飲み込みが早いわ。見て、これが今のあなた」
姉ちゃんはよいしょと声をあげ、実験機材とおぼしき大きな鏡を持ってくる。
それ、不便すぎない。もっと小さい鏡は持ってないの?
「うるさいわね。『大は小を兼ねる』のよ。
と、それは置いといて。これなら外出するときも大丈夫でしょ。このスキンも自信作なんだ」
うん、そうだね。ありがとう双葉姉ちゃん。
鏡の中には緑がかった黒髪の、ほっそりとした美少女の姿が映る。
って、姉ちゃん!! 一体全体どうなってるのよこれ!?
「気に入ってくれた? こっちの方も可愛く出来てるでしょ?」
うん、これはかわいい。たしかにすごくかわいいんだけど……ちょっと待って。
この皮女物でしょ!? 僕は男だよ。男型のスキンはないの?
「ふっ……小さい、小さいわねきよ君。今のあなたは人を超えた超存在。
性別などという古い概念なんか既に超越しているの。
あなたは雌雄同体にして両性具有、つまり男の娘であり女の漢でもあるのよ。
だから女の子の格好でも、問題なしの無問題」
問題大ありだっ!! これでどうやって明日から学校行くんだよっ!!
根本的な問題が全然解決してじゃないかっ!! 僕の姿のスーツ、ちゃんと作ってよ。
「つまんない子ねぇ。せっかくお姉ちゃんが新しい世界を教えてあげようとしてるのに」
お断りします。
「しょうがないわね。じゃあ今日の夜までにはあなたのスキンを作っておいてあげるから、
今日のところはその姿で我慢してちょうだい。
ええとスキンの材料はと……」
冷蔵庫の前にしゃがみこんで、双葉姉ちゃんは中をゴソゴソ。
元の姿に戻るまでは、かなり時間がかかりそうな予感がする。
さて、今日一日どうしよう? 僕は姉ちゃんをほったらかして、ラボの外へ出て行った。
■■■
身体が変わってしまったせいか、いつもとは感じが違うなあ。
目は随分遠くまではっきりと見渡せるし、
余分な目玉を後ろ向きに出したら全方位360°の大パノラマが見渡せる。
はは、変なの。何だか自分がモビルスーツになっちゃったみたい。
聞こえる音もそうだ。
周りにいる数十人の人たちの話し声、足音、車のエンジン音、鳥の鳴き声、木が風に吹かれる音、
全部が別々に、そして鮮明に聞き取れる。
もちろん沢山の人の、話す言葉の内容も。
ふふっ、何だか新鮮な感じ。これが進化ってやつなのかな?
見た目さえ目をつぶれば、超存在ってのも悪くないかもね……。
って……いけないいけない。
僕は人間の男の子なんだ。いくら便利でもやっぱり人間の身体に戻りたいよ。
とりあえず、夜までどこかで時間を潰そう。
家には帰りたくないな。この姿じゃ母さんに着せ替え人形にされちゃうかも知れないもんね。
もらったお小遣いも……やっぱり少ない。街中でお金は使いたくないな……。
ひとまず、友達の敏明の家にでも行ってみるか。
あいつなら双葉姉ちゃんのマッドさを知ってるから、この格好でも僕のことはすぐに分かってくれるだろ。
彼は一人っ子だし、ご両親は仕事で海外に出ている。ちょうどいい退屈しのぎができる。
となったら早速連絡……ピッ……ポッ……パッ……。声を男の声にして、と。
あ、もしもし敏明、僕だよ。今近くに着てるんだけど、今ヒマ?
だったら今からそっちに行ってもいいかな?
OK? じゃあ10分くらいで家に行くよ。うん、じゃあね……ピッ……
よしよし、それでは敏明宅へレッツゴー。
■■■
程なくして、僕は敏明の住むマンションに到着した。
彼の部屋は3階の角。玄関の前に立つと、家の中の物音……冷蔵庫の音やPCのファンの音、
そして敏明自身がたてる貧乏ゆすりの音から、内臓の動く音まで鮮明に聞き取ることが出来た。彼の健康状態は……良好そうだね。
ピンポーン。おーい敏明、やってきたぞー。
「おう、来たなキヨ。今開けるわ」
ガチャリと玄関の扉が開き、僕を招き入れようと敏明が顔を出す。
彼が僕を見た瞬間。
「え゛……!? あれ? どちら様? キヨはいずこ……?」
ビンゴ!! 困惑した敏明の視線は、僕と辺りを行ったり来たりしている。
男の声で話しかける。どうしたの? 僕はここだよー。
「声はすれども姿は見えず。一体全体これはどうなってるんだ?
ねぇ君? 扉の前にいた男の子知らない?」
だから……僕が清彦なんだって。
「げぇっ!! 女の子が男の声で喋った!?
……って、その声はキヨ!! 本当にキヨなのか? 随分と可愛くなっちゃってまぁ……」
そうだよー。さっきから言ってるじゃん。敏明はニブいなぁ。
「ちぇ、言ってろ。しかし何でまたそんな格好に? 原因は大方双葉さんなんだろうけど」
当たり。まあ、そこらへんはおいおい話すよ。お邪魔しまーす。
敏明の部屋にお邪魔した僕は、差し出された飲み物を頂きながら、今までの経過を一通り説明した。
飲みなれた筈のジュースは、いつもより味が違うような気がした。
果汁の中で僅かに感じる、薬品みたいな味。保存料かな?
「へぇ……人を超えた超存在……か……?
相変わらず双葉さんは突拍子もない事考えるんだな」
敏明は半ば呆れ、半ば感心した様子で僕の話に耳を傾けていた。
こういう話が出来る友達って、敏明だけなんだよなー。
その視線は椅子に座ってる僕の膝のほうに……って、
やば、パンツ見えちゃってるよ。スカートの裾を下げなきゃ。
こらこら敏明。あからさまに残念そうな顔をするんじゃない。
「それで、今のキヨは女の子の皮を着せられて、今の姿になったわけだ」
そうだよー。えへへ、可愛いでしょ? ちょっと着替えは不便だけどね。
「中身、見せてもらっていいかな?」
……いいけど、あまり見てて気分のいいものじゃないよ。
実際ホルモン焼きってレベルじゃないんだからね。今の僕のグロさは。
「大丈夫だって。双葉さんの研究なら、俺だっていつも見せられてんだから」
わかった。でもちょっとだけだよ。
僕は上着を脱ぎ、皮の背中にあたる部分に意識を集中させた。
ペリペリと音がして皮の接合部が外れ、後頭部から背中にかけてバックリと縦に裂ける。
裂け目の淵に指をかけ、僕はそれを左右に広げる。
敏明はごくり……、と固唾を飲んでこっちを見つめている。
なんだか少しこっ恥ずかしい。ストリップショーか何かをやらされてる気分だ。
破かないようにゆっくりと、広げた皮を前に引っ張っていくと、身体との密着が解けてズルリと皮は剥がれ、
抜け殻となった女の子の上半身が、皺だらけになってだらりと垂れ下がった。
「うわ……すげぇ……」
怪物の上半身と少女の下半身。
不気味でアンバランスな姿となった僕の身体を見て、敏明は驚愕を露にした。
僕も数本の触手を広げ、その先にある目玉で敏明を観察。
前後左右上下。彼の姿をいろんな角度から同時に見ることが出来る。
あは、これはこれで結構楽しいかも。
「なぁ、触ってもいいか?」
敏明は怪物の姿に興味しんしんな様子で、僕の方に手を伸ばしてきた。
物好きなやつだなぁ。いいよ、安全性は大丈夫だと思う、たぶん。
実験中、双葉姉ちゃんは始終僕のことを素手で触ったり叩いたりしてたから。
彼の方に一歩前進。彼の指先がペタペタと肉塊に触れる。
どう? やっぱり気持ち悪いかなぁ?
「思った通りの手触りだな。じめじめしててあまり気持ち良くない」
やっぱりね。気持ち悪いなら元に戻ろうか?
「いや、もうちょっとだけ観察させてくれよ」
しばらくの間、敏明は僕の身体をペタペタ触ったり、ペチペチ叩いたり、誰かさんと全く同じ行動をとった。
そして結構な時間が経ってから、彼は満足げな様子で僕の身体から離れた。
「サンキューな、キヨ。なかなか楽しかったぜ。元のカワイコちゃんに戻ってくれ」
オーケー、じゃあ戻るね。ズル……ズル……よいしょっと。
よしっ、これで元通りだ。……いや、違うか。
「キヨ、今度はこっちを触らせてくれよ」
敏明は、女の子の姿に戻った僕の胸に掴みかかった。
きゃんっ!! 何すんだよ!? やめてよ、くすぐったい。
「いいじゃないか、減るもんじゃなし。それにこれはお前の身体じゃないんだろう?」
僕の抗議もどこ吹く風。僕の膨らみをまさぐるように、彼の指がわさわさと動く。
うぅんっ!! 恥ずかしくて……くすぐったいよぅ……でも、何だか気持ちいい。
「うわぁ……キヨの胸、小さいけどすっげぇ柔らかい。本物の女の子の身体も、こんななのかな……?
さて次は、こっちの方の具合を見せてもらおうかな……? キヨ、触るぞ」
敏明の片手が僕の胸から離れて、下へと下りて行く。
その行き先は……スカートの中。
潜り込んだ指先が、ショーツの脇から中へと入り込んでいく。
え!? ちょっと待ってよ!! そ、そこは……。
きゃううっ……!!
今まで感じたことのない感覚に、僕は思わず悲鳴を上げ身じろぎした。
敏明の愛撫を受ける度に、とろけそうな熱い快感が、お腹から背筋へと突き抜けていくのがわかる。
触られた部分は、もちろん究極生物となった僕の生殖器官。
人の皮を着込んだとき、無意識のうちに人間と同じ場所に配置していたんだ。
うわ……中からヌルヌルしたものが出て来た。
こ、これってまさか……愛…液?
「お……!! キヨのここ、濡れてきたぜ。き、気持ち……いいか?」
こくり。無言で僕はうなずき、彼の行為に身を任せる。
彼の指が、粘液でいっぱいになった器の中に、ゆっくりと侵入してくる。
こねこねと彼の指が、僕の中で動くのが分かる。
うう……お腹の中が……熱いよ。
でも……もっと、激しくしてほしいな。
どうしてだろ? 男同士でこんなことするなんておかしいのに。
肉体の変化が、僕の心にも影響しだしているのかな?
ちゅぽん、と敏明の指が僕の中から引き抜かれた。
「ハァハァ……もう我慢できない。キヨ、しても……いいか?」
敏明はカチャカチャとベルトを外し、ズボンとパンツを一気にずり下げる。
うわあ、大きい。
見えたのは黒光りする、敏明の大口径ロングバレル。
いいよ、来て。
僕は微笑みながら無股を広げ、彼を誘う。
「いいんだな? い、いくぞ」
敏明は寝そべる僕の上にのしかかると、ロングバレルを入り口に押し当て、ゆっくりと腰を押し出していく。
ズヌヌ……と、それは粘液滴る僕の体内に呑み込まれていった。
「はぁっ……!! はぁっ……!!」
僕達二人は床の上で激しくもつれ合った。
敏明は猛然と僕に挑みかかり、勢いよく身体を奥へ奥へと突き出す。
僕は彼の勢いに身を任せながら、燃えるような興奮と快感に心震わせていた。
う!! くぅ……!! お腹の中……気持ちいいよう……!!
敏明も僕の中、気持ちよさそうだね。目を剥いてハァハァ喘いじゃって。
うふふ……なんだか可愛い……。
「うう……!! もうだめだー!!」
あれれ? もう出ちゃったの? だらしないなー、敏明は。
僕まだ満足してないよー。
しょうがないなあ。敏明のおちんちん、両手でこねこねしてあげよう。こねこね……。
よぉし、復活。今度は敏明が下になってね。僕が上に乗って動くから。
準備はいい? じゃあ、入れるね。
あぁんっ……入ってくるぅ!! おちんちんさっきより大きいよぉっ!!
敏明ッたら興奮しすぎ。
かわいい女の子とえっちしてるんだから、分からないでもないけどさ。
うくっ、奥に……来てるぅ……。中で敏明の先っちょがピクピクしているの……分かるよ。
う、動くね。
ふぁあっ……!! 凄いっ!!
敏明のおチンチンが奥で引っかかって……腰が抜けそうになっちゃうよっ。
でも、気持ちよすぎて身体が止まらない、止められないよぉ!!
「ちょww き、キヨ!! 激しすぎるよ。ヤバイ、ヤバイって……」
あっ……あっ……!! わっ、分かってるって。だから一緒に……
ああん!! もう駄目……あっ!! ああ!!
今度こそ僕達は2人で同時にイッた。
■■■
あれから何回やっちゃっただろうか、気がつくと日はどっぷりと暮れていた。
呼吸を整えながらゆっくりと身を起こす。
傍らでは精魂尽き果てた敏明が、屍同然となって倒れている。
床の上は2人の汗と体液でベットベト。
汚いなぁ、後でちゃんと掃除しとかなきゃ。
でもその前に、身体を洗いたいな。敏明、お風呂借りるぞ。
「……おう……」
脱衣所で服を脱ごうとした時、僕は身体の異変に気づいた。
妙にお腹の中が張っているような気がする。食べすぎかな?
いや違う。違和感があるのはもっと下だ。そこにあるものはと言うと……。
しかし、僕が考える間もなく異変は急激に進行していった。
猛烈な圧迫感と共に、僕のお腹が膨らみ始めたんだ。く、苦しい!!
生まれる。
僕は本能的に悟った。僕と敏明の間に出来た、新しい命の誕生だ。
風船のように膨らんだお腹を抱え、僕は空っぽの湯船の中にしゃがみ込む。
お腹の圧迫感は下へと動き、新たな生命がバリバリとお腹の皮を裂いて生まれ出てくる。
最初に出てきたのは真っ赤な、数本の触手だ。
触手は僕の出口を大きく押し広げ、産道の中から真っ赤な肉の塊が姿を現す。
がんばれ。息みながら『赤ちゃん』エールを送る。
苦しそうに、でも確かな足取りで『赤ちゃん』は僕の身体からズボッと抜け出し……。
「まま、ままーっ」
冷たいの浴槽の中で、僕の赤ちゃんは産声を上げた。
数本の触手を広げ、彼(彼女?)は僕に抱きついてくる。
それに応えるように、着込んだ皮の口から這い出し、僕は愛しいわが子を触手でぎゅっと抱きしめる。
こんにちは、赤ちゃん。僕がママだよー。
■■■
こうして、僕は若くして一児の母になったんだ。
この事実に我が家は一時騒然となったけど、
日ごろから双葉姉ちゃんの無茶振りで訓練されていることもあって、
あっという間に事態に馴染んでいった。
生まれた子供は、役所に勤める母親が住民票を偽造し、
養女という形で我が家に受け入れられることになった。
もちろん子供には人の皮を被せ、普段は女の子の姿をとらせている。
結局、その後僕は人間には戻らなかった。
子供のためにも戻るべきじゃないと思ったし、この身体結構気に入ってるんだよね。
ただ学校に行くときだけは、『清彦』の姿でいることにしている。
父親になった敏明は、最初に子供を見たときはモロにドン引きしていたけど、
擬態した我が子をみた途端、「アリだな」と一言漏らしていた。
敏明、君にはもちろん父親としての義務は果たしてもらうよ。
今日、僕は敏明にプロポーズするんだ。
新しい皮を被って、おめかしして、綺麗な服を着て、あいつの家に押しかけちゃおう。
実際に結婚するのは高校、大学を出た後だけど、あらかじめ覚悟は決めて貰わないとね。
「じゃ、行こうか」
『娘』の手を引き、僕は家の扉を開いた。
「はい、まま」
人形のように整った少女の顔が、邪気の無い笑顔で微笑む。
擬態は完璧。皮を着込んだ我が子の姿は、どこから見たって愛らしい人間の女の子だ。
僕は思わず彼女をギュッと抱きしめる。ああ、かわいいなぁ。
カラッと晴れ上がった空の下、僕達二人は未来へ向かって一直線に歩いていくのだった。
ふふふ、敏明の奴どんな顔するかなぁ。
僕たち親子をちゃんと幸せにしてくださいね。あ・な・た☆
■■■
かくして数年の年月が過ぎ、桜の舞う春の初めに僕は敏明と結ばれ、生涯を共に過ごす仲になったんだ。
今の彼は立派で頼りになる、僕の旦那様。
そして、それと同時に可憐で愛しい、僕の嫁でもあるんだよね。
え? どうしてかって?
それはね、敏明もまた、僕や娘と同じ究極生物として感染……もとい覚醒していたからなんだ。
双葉姉ちゃんの言うところ、僕と敏明がエッチしたときに、
僕の体細胞が粘膜を通して、彼の肉体を侵蝕してしまったみたいなの。
肉体の変貌が心の変化をもたらしたのか、敏明は僕と娘を笑顔で受け入れてくれた。
娘もまた優しい父親にすぐに懐き、触手でじゃれ合うようになっていった。
こうして僕達三人の、新しい生活が始まった。
そしてある休日の朝。
家族三人で、遊びに出かけることになっているこの日、
僕は未だに部屋から出てこない敏明を起こしに、彼の部屋へと向かった。
おーい敏明、早くしないと置いてくぞー。
ガチャリと扉を開けると、モゾモゾとベッドの上で蠢く肌色の塊が見える。
「おう、待ってくれキヨ。しかしこの皮はちょっと窮屈だなー」
塊は敏明の声でぼやくと、内側からモコモコと膨らみだした。
それの四隅が細長く伸びて手足を作り、塊は丸みを帯びた人型へと変化していく。
キュッと絞られた胴体にはなだらかで、柔らかい二つの膨らみが出来上がり、
さらにその上には人の頭にあたる部分が盛り上がる。
やがて、ぶよぶよだった表面がぴっちりと締まり、塊はどこから見ても人間そっくりの姿に変貌していた。
初々しい、人間の少女の姿に。
「キヨ、どうかな? おかしなとこ、ないか?」
裸のままの少女は、自分の身体をあちこち観察しながら僕の方に向き直る。
僕は無言で少女に近づき、ほっぺをギュッ。
少女の顔はゴムのように伸びて、カワイイ顔がムニュッと崩れる。
「何すんだよ!? せっかく上手く出来てたのに」
ゴメンゴメン。いつもの癖でつい、ね。
すぐに直してあげるよ。グイグイ・・・ほうら元通りだ。
くすくす・・・・・・。敏明の怒った顔も、すごくかわいいね。
今日は月に一回の反転の日。僕と敏明の、見た目の性別を入れ替える日なんだ。
僕は男の子に、敏明は女の子に。
身体の機能的には意味のない事なんだけど、これが結構新鮮で楽しいんだ。
男の子に戻った僕は、女の子になった敏明にもうメロメロ。
思わず『彼女』の身体を、背中からギュッと抱きしめる。
ああ、女の子の身体……柔らかぁい。
「あ、コラ、キヨ離れろ。くすぐったいじゃないかっ!!」
へへへ、やーだよ。せっかく男の子に戻ったんだから、少しは楽しませてよ。
あ、そうだ。敏明、2人目の子供欲しくなぁい? 僕は欲しいなぁ。
「へ? ちょww、お前どこ触って……!? あぁんっ!!」
約一時間後、敏明は珠のような赤ちゃんを無事に出産したのでしたとさ。(終)