支援図書館(γ)

目が覚めたら女神!?

2011/05/20 06:41:25
最終更新
サイズ
109.49KB
ページ数
1
閲覧数
1548
評価数
4/90
POINT
7510
Rate
16.56


俺は半透明のぶよぶよした物体を睨み付ける。
それがいくつもの半透明の触手を操り襲い来るのを避ける。
避け切れない分は両手で抱えた大鎌で切り払う。
身長と同程度の長さの柄と刃を備えた禍々しい代物だ。
今の俺が持つにはあまりにも不釣合いではある。
ちなみに、つい数時間前までは身長175cmの普通の…
すまん見栄張った。小太りのおっさんだった。
それが今では…測った訳じゃないから正確には言えないが、
どう頑張っても中学生、普通に見たら小学生に見られる身長になっている。
それだけならまだいいが、いやそれだって決して良くはないんだが、
そのやたら縮んだ身長の体を包む衣服がワンピースなのも、
百歩譲ってまぁ良しとしよう。裸で居る訳にもいかないし。
え、チビデブなおっさんがそんなワンピースを着てるなんて視覚の暴力だって?
安心しろ俺もそう思う。そんな公害は誰の目にも留まらないよう隔離しとけ。
そう、問題は…
『隙見て本体に近寄って殺らないと終わらないわよ。それどころか時間かけたらまた増えていくからね』
肩にしがみ付いている黒猫からそんな台詞が頭の中に響く。
「わぁーってるよ!けどこちとら初めてなんだからしょうがないだろ!」
返す声はこの外見から連想される通りに可愛らしく細く高い。
…そう、問題は、今俺が動かしているこの体が、
そんな格好が似合ってしまうょぅι゙ょである事な訳だ。

その日、職場の都合で早番を任された俺はAM4:00に家を出た。
微妙に眠い目を擦りつつ誰も居ない道路を軽自動車で軽快に走り抜ける。
煙草を燻らせる都合で寒くても窓を全開にしてるんだが、
左右に畑が広がる細道に差し掛かった時に、肌に当たる空気に違和感を感じた。
今思い返せば、それは嫌な予感と呼べるモノだったと分かる。
この道を進んではいけないと本能が叫んでいたのだろう。
しかし平和ボケした日本に暮らす一介のおっさんに過ぎなかった俺はそれに気付かなかった。
畑を突っ切る様に走り抜ける、その目の端に人影が映った様な気がした次の瞬間。
柔らかく、巨大な物を轢いた…というより、それに飛び込んだ様な。
…そんな経験はないから想像になるが、海に車でダイブしたら近いかもしれない。
全身を襲う衝撃と歪むバンパー、ボンネット。ヘッドライトも1つ砕けて消える。
シートベルトのおかげで頭をどこかにぶつけたとかそういった事はなかったが。
そのかわり頭が激しく揺さぶられる事になり、意識が朦朧とする。
我に返った時、全開の窓から半透明な液状の何かが飛び込んでくるのを認識した。
ゼリー?粘土?卵の白身?クラゲ?
似た物を連想するのが難しい、粘着質の何か。
それは紐の様な形で、何十本もあって、俺の全身に巻き付いていく。
事態を認識して、いや全然何が起こってるのか理解できてないんだけど、
とにかく逃げなければと思い至った頃には身動きが取れなくなっていた。
足、膝、腿、腰、腹、胸、腕、手、首、と幾重にも絡み付き、やがて顔も、頭も。
息が出来なくなる。口や鼻からそれがゆっくりと体内に侵入してくる。
頭の中に、一緒になろう、一つになろう、という大合唱が響く。
何だって言うんだ一体。
…ガキの頃ガチャでポリバケツ型の容器に入ってた玩具がこんな感触だったな…
どうでもいい記憶を思い出しながら意識を手放す直前、視界が白く染まった。
眩しい光の中、20代半ば位のどえらい美女が、俺に手を差し伸べている。
そんな光景が何故かくっきりと見えた。
酸欠でぼぉっとしていた俺は、こんなお迎えなら悪くない…
なんて思いながら、動かせない筈の右手を差し出した。
美女の手と俺の手が触れたと思った瞬間、
浮遊感と開放感に包まれて、俺は今度こそ意識を失った。

『…き…』
声が聞こえる。
頬をぽふぽふと小さい何かが叩いている。
『お…て…』
眠いんだよ。もっと寝かせてくれよ…
『おきて…』
さみぃ…動きたくない。まだ目覚まし鳴ってないんだから起きなくてもいいだろ?
『起きて…』
頬にちくっと痛み。だがその程度で目覚める程俺の眠りは温くないのだふはは。
『起きなさい!』
段々痛みが無視出来なくなって…ってか、いた、痛、いてて、痛いって!
目が覚めた。超どアップで黒猫の顔面が映る。
『やっと起きた。随分な寝呆助さんね』
猫の周囲に見える空はまだ暗い。俺は地面に仰向けに寝転がっている様だ。
…まだ頭がうまく動いてくれない。俺は何でこんな所で寝てたんだっけ?
尋常じゃない脱力感を堪えて上体を起こし、見回して声の主を探す…誰も居ない。
猫が俺の膝の上に飛び乗る。また声が聞こえる。もふもふの毛皮があったかい。
『何をきょろきょろしてるのよ』
「はて、声はすれども姿は見えず…」
ん、何だか声の調子がおかしい?自分の声に聞こえない。
『あんたの目の前に居るわよ』
膝の上の猫と目が合った。改めて見ると随分でかい。首輪はない。野良か?
それにしては警戒心が少なそうだ。かつて飼われていた猫なのかも知れない。
脇の下に両手を差し込み抱き上げる。
大人しい性質なのか暴れない。股間を見るに雌らしい。
…何か違和感。何がおかしいか良く分からないが、何かがおかしい。
「目の前にはお前しか居ないよな?」
声の出方が何か違う。妙に高い声になってしまう。
『だからそう言ってるじゃない』
呟いただけだったんだが、それに返答が返ってきた。めっちゃびっくり。
「…まじで?」
『真面目よ?』
「猫って日本語喋れるのか?」
『んー、無理じゃない?いわゆる怪猫とか猫又になれば喋れるかも知れないけど』
「ところで猫モドキ。眠気も覚めて状況を思い出したんだが、お前は関係者か?」
『猫モドキって何!女神に対して不遜よ!?』
「や、お前どう見ても猫だし。んで自分で自己否定してるんだからモドキだろ?」
『そもそもあんたが結界を無視してあの邪神に飛び込んだりするからよ!』
「ほーん女神に邪神ねぇ。そーいや昔ゲームであったな。どんどこ合体させる奴」
『何他人事みたいに言ってるのよ』
「他人事だし…って、時間!遅刻しちまう!俺の車、どこ行ったんだ!?」
俺のぼろっちい愛車が見当たらない。
最も定価の安い国産車にして現行型最軽量の極一部でマニアな人気を誇る軽が。
『…車なら消化されたわよ。あんたの体と一緒に』
「はぁ?」
今何か聞き捨てならない台詞が聞こえた様な。第一俺はこうしてここに居る。
しかしさっきから感じている違和感の正体がわかった気はする。
猫を抱え上げた姿勢のまま視点を下にずらしていく。
まず目に入ったのがやたら白く滑らかな皮膚の、僅かに盛り上がった胸。
その先端には桜色の、見慣れた物とは明らかに違う形状の乳首。
猫を抱える腕も指も、肩幅も、脚も、細く白い。中でも腰は一際細く括れている。
それに対して尻はやや横に広く見える。後にも少し張り出している感じがする。
そして肝心な股間はというと。
生まれた時からの付き合いであるでっぱりも玉二つを収納した袋も。
ジャングルの様に生い茂っていた剛毛も、何一つ見当たらない。
毛の一本も生えていないそこには代わりに一本の縦筋があるだけ。
うーん、シンプル。
…ひょっとして、この猫がでかいんじゃなくて、俺が小さい…?
どう見てもょぅι゙ょです本当にありがとうございました。
…なんてネタが頭を過ぎった。
ついでに言うならそれが一目でわかる状況というのはつまり現在全裸な訳で…
「…ワァオ♪」
アメリカンな感じに肩を竦めて見る。
『変わった感想ね』
「…これでも十分驚いてる。ただ現実逃避したくなっただけだ。
それとも『な、何を言ってるのか以下略』な反応すれば良かったか?」
『ネタが古いわよ』
「ほっとけ。全く…猫モドキといい、体といい、中々極上な悪夢だな」
目線を猫に戻しながら言う。
『中々なのか極上なのかはっきりしなさいよ。どっちにしても夢じゃないけど』
よく見ると実際にこの猫の口から言葉が放たれている訳ではない様だ。
どちらかというと耳の内側で囁かれて頭の中に響いてる感じだ。
「あぁ、夢じゃ無さそうだってわかったからこそ悪夢だと言ってるんだがね」
『表現がひねてるわねぇ』
「素直に受け入れてたら頭がおかしくなりそうなんだよ。
確かに偶に幽霊が見えたりしてたから世の中不思議な事もあると分かってはいたが。
…まぁ、何か尋常じゃない事態に巻き込まれた事は理解した。
仕事を放るのは気が引けるが…
このナリじゃ顔も出せなきゃ電話も無理だしなぁ。
とりあえず、着る物を調達してから説明して貰うぞ」
『着る物は多分すぐに何とか出来るけど説明は後回し。
アレに逃げられたら後々面倒な事になるからここで確実に滅しないと。
…という訳で、行くわよ。あ、まだ名前言ってなかったわね。
あたしは…エリ…うん、エリ。あんたの名前は?』
「俺?水際楸(みぎわひさぎ)…って、ちょっと待て。行くわよって何だよ」
自然に言われた為に素直に答えてしまってから、その発言に突っ込みを入れる。
『言葉通り。あたしの体はあんたが今使ってるんだからあんたの役割よ』
「ん、これお前の体なのか。何で俺が使っててお前が猫な訳?」
『邪神に取り込まれたあんたを助けようとしたら、
あんたの霊体が飛び込んできたせいであたしが弾き飛ばされちゃったから、
仕方なく近くに居たこの子の体を借りてるのよ』
「…仮にも女神を名乗る輩が何でただの人間の俺に体追い出されてるんだよ」
『仕方ないでしょ。あんたを助けようと無理して力使い切った所だったんだから。
その肉体、作りたての上、相性がいまいちだったのか微妙に馴染んでなかったし』
「俺のせいだってのかよ?」
『そうは言わないけどね。結局あんたの肉体は助けられなかったんだし。
弾き出された時の衝撃と、その肉体があんたに合わせて変化する際の力の放出で、
敵が粗方吹き飛んだのは不幸中の幸いだったわ。
ただ、取りこぼしを放っておくとまた周囲の存在を取り込みまくって、
巨大化していくから確実に全部潰さなきゃいけないの』
「ふむ…つまり俺はあのねばねばお化けに捕まって消化されそうになってて。
お前は俺を助けようと無茶したけど俺の体は手遅れで、
とりあえず心だけでもと思ったら体を乗っ取られてしまった、と。
体はともかく、心はお前に助けられた訳だな。
一応、礼は言っておこう。ありがとう。
そんであのねばねばお化けはまだ生きてる、と。
いいだろう。俺自身の体と愛車の仇、取ってやろうじゃねぇか…
は、いいんだが。やれって言うからには俺に出来るんだろうな?」
『あんたはあたしが張った人払いの結界内に侵入出来たんだし、
力を殆ど使い切ってたとはいえあたしを弾き飛ばしたんだから霊力はある筈。
で、あんたの魂は体に合わせた形になったから、霊力は神力に変換される。
本来のあたしと比べれば弱いけど滅びかけの邪神程度なら問題なく倒せるわよ』
「…霊力とか言われてもさっぱりわかんねぇんだけど」
『まず天地の力の流れを知覚して、そこに自分の力を流し込む。
馴染んだらその力を吸い上げて、現象を具現化するの。簡単でしょ?
ちょうどいいわ。服を構成してみましょ』
「わかんねぇよ!?」
まず天地の力の流れって何だよ。次に自分の力を流し込むって何だよ。
どうやって吸い上げるんだよ。想像を具現化ってどんなだよ。全然簡単じゃねぇ。
『あぁもう…使えないわねぇ…触れていれば声が届くんだから同調はしてる筈ね。
あたしがやってみるから感じなさい。そして覚えなさい』
エリがそう言うと、俺の肩に乗る…ちょっと重い。ってかこの体が非力なのか。
まず体から何かが抜けていく様な脱力感。
その何かが、別の大きな何かと混ざる一体感、安堵感。
そして抜けていった何かが、大きな何かを加えて戻ってくる充足感。
エリと俺の全身が光り輝き、その光が形を成していく。
「ち、ちょっと待て…この展開は、まさか…」
なんかこう、この絵面は、特定ジャンルアニメの変身シーンを彷彿とさせるんだ。
まともに見た事はないんだが、詳しい友人が居るので多少は知っていたりする。
それは遠慮したい。激しく遠慮したい。土下座してもいいから勘弁。
光が収まる。恐々と体を見下ろしてみると、ある意味予測通りの服装だった。
ゴテゴテしてないだけマシっちゃあマシなのかも知れない、が…
白を基調としてて、袖がないワンピース。靴だけが血の様に赤い。
襟とネクタイが一体化したような飾りが首と肩を覆っている。
下半身はスカートが足首の辺りまで届いている…が。
何ですかこの切れ込み。太股のかなり上の方までありますよ?
太股の半ばまでを覆う…なんてったっけ。
確か膝越靴下を直訳して、オーバーニーソックスだっけか。丸見えですよ?
下半身がすっかすかで、丸出しみたいでめっちゃ頼りない。
ってーか限りなく丸出しじゃね?これ。
ホント、この通りですから止めて下さいお願いしますorz
『えー、似合ってるのに』
「こういうのが似合うのはもっと上の年齢じゃないかと思うんだが。
主にこの切れ込み具合とかが」
ひらひら揺れている裾を摘んで言ってみる。
『仕方ないじゃない。本来その体はもっと大人の女だったんだから』
「…大体何でこんなに縮んでるんだよ?」
『簡単に言うと、あんたの魂の器があたしの器の半分以下くらいの容量だから』
「いや、簡単すぎて訳わかんねーよ」
『あらゆる生物の肉体っていうのはね、魂を収める容器なの。
肉体と魂は相互に干渉しあうけど、生物の魂は希薄で肉体に影響を及ぼす事は稀。
神の肉体は、霊的物質を凝縮して作られるから、内包する魂の影響を受けやすい。
あたしがその体を使ってた時は20代くらいに見えてたでしょ?
それが容量が半分以下の魂に合う形に変化したから外見的にもそうなったって事』
「年齢的な部分はわかったが、魂の形に合わせるならなんで女のままなんだよ」
『そりゃ、サイズは容量の問題。姿形はまた別の問題。
それは女神の肉体として構成されてるもの。
あんたの魂が神に匹敵する強度だったら性別も変化したかもしれないけど。
人間の魂じゃ希薄過ぎてそういう本質は変えられないわよ』
「わかった。どうやら俺には理解出来ないだろう事がよぉくわかった」
『考えるな感じろ。とりあえず実践あるのみ。
その服が嫌なら自分で構成すれば練習がてら丁度良いでしょ?』
それで暫く練習してみたんだが、やっぱ駄目だった。
感覚はさっきので何となくわかったんだけど、
取っ掛かりが掴めないから出来ない、そんな感触。
暫くあーでもないこーでもないとやっていたらエリが痺れを切らしたのか、
『これ以上は待てないわ。仕方ないから武器だけ出して行くわよ』
と言ってきて、もう一度女神の力とやらで件の大鎌を召喚した。
「エリ…お前、死神?」
『違うわよ。女神だって言ってるでしょ』
「じゃあ何故に大鎌?すげぇ取り回し悪いし、武器としては使いづらいと思うんだが」
『兄…になるのかな?一応…から賜った神殺しの力を備えてる由緒正しい武器よ。
ある意味、今のあんたに相応しい武器でもあるわ』
「ふーん…まぁいいけど。これでぶった切ればいいんだな?」
『そうよ。敵はあっちに這って逃げていったわ。追いかけましょ』
で、標的を発見、戦闘開始して冒頭へと至る。

いくつもの触手に阻まれて中々切り込めずに居る内に息が上がってきた。
『もう、この程度なら一人で殺れる様になってよね』
エリが好き勝手な事を抜かしているが反論している余裕がない。
『20秒だけ身体強化するからその間にカタ付けなさいよ』
その言葉が終わると共に女神の力を使われる感覚。
途端、世界がスローモーションになった。
まるで時間が遅くなったかの様だが、
身体強化と言っているのだからこの肉体の反応速度が上がったのだろう。
知覚も強化されたのか、対応しきれなかった八方からの攻撃も全て把握出来る。
全てが遅くなった世界の中で俺だけが普通に動ける。
息切れしかかっていたのが嘘の様に体が軽い。
森の中、邪魔な枝を払いながら歩く感覚で、触手の攻撃をかい潜り接近する。
ぶよぶよの物体に手が届く位置で、大鎌を振るう。
真っ二つに裂ける。見た目的に痛みなんて感じなさそうだが苦悶の意思が伝わる。
『あと30回位ぶった切って』
「へいへいっと…こんな便利な技があるなら最初から使えよ」
『簡単に言わないでよ。消耗激しいのよこれ。
それに効果時間切れたら暫く体に力が入らなくなるからあまり使いたくないのよ』
ざかざか刻みながら零すと反論される。
「…この体が?」
『そうよ。今あんたが動かしてるその体が』
不思議な事に、敵は刻む度に目に見えて小さくなっていく。
「そういう事は先に言え!」
『言ってたら何か変わったとでも?』
「…確かにそうかもしれんが、心の準備ってもんがだな」
『結果が変わらないなら無駄は省いた方が効率的でしょ』
「人使いの荒い猫だな」
『あたし猫じゃないし。あんた今ヒトじゃないし』
「や、お前猫じゃんどう見ても…終わったぞ」
ぶよぶよの物体…エリ曰く邪神は綺麗さっぱり消えた。
『そして時は動き出す…なんちゃって。ぎりぎりだったわね』
その言葉と共に、スローモーションだった世界が元に戻る。
目覚めた時以上の脱力感に襲われて動けなくなりへたり込む。
「さっきも思ったんだが…自称女神がなんで漫画や映画のネタ知ってるんだよ」
喉や顎にも力が入らない為、震えるような掠れ声しか出ない。
『暇な時に見てたから』
「俗っぽいな…てか今倒したのも神って言ってたが随分違うな?」
『一緒にしないで。神というのは[人間には届かない領域の存在]の総称なの。
人間の信仰心を糧とし、その見返りにヒトに奇跡をもたらすのが、
あんた達人間が一般的に使う意味での神。
あたしはそういう存在。ここまではわかった?』
「何となくは」
『今倒したのは、単体では大した力を持たない存在が寄せ集まって群体となり、
ヒトの手には負えない域にまで成長したモノ。
同種のモノで結びつくだけならさしたる脅威でもないんだけど、
他の存在を取り込み自らの一部とする能力を持っていると恐ろしく厄介』
「なるほど、今回のがそれに該当する訳だ?」
『そう。成長がそのまま多くの意思を内包する事を意味するから、
意思の統一が出来なくなって無軌道な行動をする様になり、
大抵はこの世界に害を成すから邪神と呼称される。
この地に封印されていた邪神が復活したから滅する為に来たのがあたし。
邪神が厄介なのは、存在を構成しているのが複数…
数千とか下手をすれば数十万とかの意思の集合体だから。
その全ての意思を破壊しないと滅びない。面倒でしょ?』
「30回くらいってのはそういう事か…うわっ!?」
突然、背後から何かが胴体に巻き付いた。ってかこのキショイ感覚は覚えがある。
『なっ…分裂したままのがまだ居たの!?』
振り払おうにも体が思うように動かない。
肩に乗っていた猫を弾き飛ばしながら首にも巻き付いてくる。
じゅうじゅうと、焼石に水をかけて蒸発させた時の音をさせ蒸気を巻き散らす。
あまりの生臭さに顔をしかめる。
腕ごと胴体を締めつけられながら持ち上げられ、大鎌が手から離れ地面に転がる。
「く…このっ…おい、暫くってどの位なんだよ!?」
しかし返答はにゃーにゃーという猫の声のみで、頭の中に響いてこない。
触れていないと声が聞こえないのか?…女神の力も触れていないと使えない?
…絶体絶命?同じ相手に二度殺される事になるのか俺。嫌な未来予想図だ。
エリがこちらに近寄ろうとして、触手の一本に弾かれて木に激突し動かなくなる。
俺にはそれを気遣う余裕はなかった。
胴体に巻き付いている触手が一旦離れる。首に体重の全てがかかる。
呼吸と血液が一瞬で塞き止められ気が遠くなる。
首の触手を両手で掴む。引き剥がす事は出来ないが少しだけ呼吸と血液が通る。
別の触手が両手両足に巻きつき、大の字に広げられる。四肢の関節が痛い。
首の触手が緩んだ。咳き込みながら呼吸を繰り返す。
蒸発はいまだ続いている。触手は細く、あるいは短くなる度に肉体を締め直す。
…俺本来の体の時にはこんな現象は起こらなかった。
この肉体に仕込まれている防御機能なのかも知れない。
だが…くっそ、女神の肉体とか抜かすなら外見はともかく、
中身まで人間的である必要ねえんじゃねーのか?呼吸とか血液とか関節とか。
呼吸するので手一杯になっている内に、触手が俺の服の下に潜り込んできた。
「ち、ちょっ…ひっ!?」
べちゃっと音を立て、粘液を擦りつけながら首や袖から侵入される。
足首を捕らえている触手も、膝から腿へと這い上がってくる。
「うあ…くっ、は、うひゃあっ!?ひっ…ふぅっ…はっ…んあっ…やめっ…!?」
触手と、そこから発生する蒸気が体中を撫で回す。
蒸発するより遥かに多い量の粘液を塗り付けられていて体は既にべたべただ。
気色悪ぃのに腹が勝手に痙攣する…くすぐってぇ!
折角整えた呼吸がまた乱れて…うぁ、口が閉じられねぇ。
涎が一筋顎を伝い、既にべとべとにされている胸へと垂れる。
「こ、のぉ…いい、かげん、に…んくぅっ」
狙いすました様に、開いた口に直径3cm程の触手が捻じ込まれる。
この小さな体に見合ったサイズでしかない口が、限界近くまで開かされる。
吐き気を催す生臭さと、塩辛苦いとでも表現するしかない味が口の中に広がる。
噛み千切ってやる!と気合を込めるものの、
未だ続く脱力感と腹筋の痙攣で力が入らず、精々が甘噛み程度にしかならない。
しかも噛んだ分がぶちゅっという汚らしい音と共に先端から粘液となって迸り、
喉の奥に流し込まれるに至っては歯を立てる事は断念せざるを得なかった。
その間に全身を這う触手が服を引き裂く。下着が露になる。
ちょっ…総面積がエラく少ない上に総レースでシースルーの白って何だよ?
ょぅι゙ょに着せるシロモノじゃないだろ何考えてるんだあの馬鹿猫は!?
いやまぁ、気付かなかった俺も鈍いんだろうけどよ。
スカート…それも露出狂と言われても否定しづらいワンピースなんて代物を、
いきなり着せられて戸惑ってたし、その格好に馴染む間も無く闘わされたんだぜ。
そこまで気付けって方が酷ってもんだろ?
それはともかく…俺はノーマルでロリでもペドでもないつもりなんだが…
無駄にセクシーなランジェリーが粘液でべったりと張り付き、
白い生地にピンクの乳首や無毛の割れ目が透けてるのは妙にエロい。
粘液に濡れた体がまるで湿布を貼った時の様に、
熱いんだか冷たいんだかわからない異様な感覚を伝えてくる。
元の俺が襲われた時にも聞こえた、取り込んで消化しようという意思を感じる。
しかし、それが思うようにいかずに戸惑っている気配も同時に感じる。
くすぐったさに慣れてきたのか、最初ほどには苦しくなくなってきている。
酸欠でぼぉっとしているせいか、息苦しさも気にならなくなってきた。
「んぅっ…ふぅっ…もあぁ…あぁっ!?」
その時、すっきりしたというか寂しくなった股間の割れ目に沿って触手が這った。
全身、手から足の指先まで一気に痺れる様な異様な衝撃に見舞われた。
背筋を駆け上がり、脳天にもがつんと来た。何が起こったのかわからない。
ただ、この肉体にある何かが、まるで皮を剥く様に一つ失われたと思った。
どうやら気のせいではないらしい。触手が蒸発する量が目に見えて減っている。
戸惑っていた触手が悦びの意思と共に活発に蠢き始めた。
既に下着としての機能は完全に失われているブラとショーツも剥ぎ取られた。
ささやかな胸の膨らみを触手が這うと、先端が痛い位尖り張り詰めていく。
そこを触手が掠める度に全身が勝手にびくびく震える。
眉間でばちばちと火花が散っている。痛くはない。どちらかというとむず痒い。
ただ実際に痒い訳ではなく…名状しがたい感覚だ。しかしどこか懐かしくもある。
そうだ。もう二十五年くらいは前になるだろうか。
今は影も形も無くなってしまった出っ張りから初めて白濁液を発射した時。
強いて挙げるならその時の刺激が一番近いか。
あの頃はまだ皮被ってたんだよなぁ…というのはどうでもいい記憶だ。
…つまり、初めての感覚でそれと認識出来ていないだけで、これは快感なのか…?
擦られる度に、体が震える度に、何かが削られていく。触手の動きが活発になっていく。
下腹部がぎゅっと絞られるような、下の方へ押し下げられるような、未知の感覚。
じわっと、何か液体が腹の中から股間へと流れていく。
それに気付いたのか、表面を滑っているだけだった触手が先端を割れ目に向ける。
感触と手応えを確かめる様に緩急をつけて弄られる。
突然発生した激痛にも似た鋭い刺激で、腰と腿が勝手に屈もうとする。
四肢を広げた形で拘束されているから果たせずにかくかくと震えるだけだが。
充血し、割れ目から少しだけはみ出していた豆の部分に触れられたのだろう。
いくつかの触手の先端がその周辺に集まる。
「んくっ…ほおはっ…やへ…」
直径1cm程の細い触手が二本、先端で未成熟な膣口を開く。
そして一本の触手がその先端で露になった豆を転がす。
「はっ…ふっ…っ…!!…!!!!」
器用な事をする…と思う余裕も無い。
そのままの刺激でも強すぎるのに、皮を剥かれ、直接嬲られてしまう。
全身が反り返り、筋肉が硬直する。悲鳴すら上げられない。
二十年くらい前の、初めて男の象徴の皮が剥けた時の事を思い出す。
鋭すぎる快感が、苦痛でしかないと初めて知った頃だ。
記憶にあるそれより遥かに強烈に感じるのは性差なのか、この体故か。
口を塞いでいるのと同じ程度の太さの触手が二本、更に下腹部に寄っていく。
開かされている幼い膣口と、後ろの排泄器官にもその先端が押し付けられる。
「んぅっ…ぅぁあっ…!」
やめろそんな所に触れるな!という叫びはくぐもった呷き声にしかならない。
二つの触手が、ゆっくりと、押し込まれてくる。
後の穴の方が入り易かったのか先に侵入してくる。
全く、そんな感覚わかりたくもない。
めりめりと音を立てている気がする。勿論、気のせいなのだろうが。
それまでのくすぐったさや熱さ冷たさ、認めたくはないが快感も、全て吹き飛ぶ。
本来は出すだけの器官に侵入される違和感、直後に体を縦に引き裂かれる様な激痛。
「ふぐぅっ…んぼぉっ…!!」
みちみちと断裂する音が聞こえそうだ。
恐らく前は処女の証、後ろは括約筋が悲鳴を上げているのだろう。
刹那の時間で気絶と覚醒を繰り返す。異様なまでに時間が間延びする。
いっそ一思いに殺してくれ、そう思えてしまう程の責め苦。
先に限界を超えたのは後ろの方だった。
ぶつん、という体内に響く音と共に苦痛箇所が広がり、液体…恐らくは血液が腿を伝う。
その瞬間、この体の何かが完全に失われたのがわかった。もう蒸気は発生していない。
中へ中へと潜り込んでいた触手の動きが止まる。
女神の力が使われた時と似た、強引に力を引き摺り出される感覚。力を奪われている。
このままだと邪神に体も心も溶かされてしまう。
だが、それは俺に一つのチャンスをもたらした。
肌に感じる風に、無限に広がる空に、紐をつけた自分の力を放つイメージ。
自然界に満ちる力がそれに吸い寄せられる。充分に吸い込んだ力を、紐を手繰り取り込む。
この、力を放つ感覚が、どうしても理解出来なかった。
それはエリが体に負担が掛からない様丁寧に力を使ったからなのだろう。
邪神により負担軽減もへったくれもなく強引に力尽くで行われている今、
逆にはっきりとその感覚が掴めたのだ。
取り込んだ力を全身から放射する。
力は光となって迸り、全身に絡み付いている触手を消し飛ばす。
地面に降り立つが、激痛と疲労で倒れる。
塞ぐ物が消えた二つの穴がごぷっと音を立てる。
辛うじて操を守れたらしい膣口から粘液がどろりと零れる。
尻の穴からも粘液と血液と汚物が混ざり合ったものが噴出する。
自由は取り戻したがこのままでは闘うどころか立つ事もままならない。
力のベクトルを変えて裂けた括約筋を繋ぎ、治癒し、体力を補充して立ち上がる。
ついでに浄化も行う。その余波で着用していた衣服が再生される。
絡め取られた位置から動かされていたらしく、大鎌は離れた位置にある。
しかし今の俺にはそんな事は些細な問題だ。
力を繋げれば、唸りを上げて回転しながら俺の手の中に飛び込んでくる。
鎌本来の力に女神の力が上乗せされ、強烈な波動を放つ。
神殺しというのが誇張ではないようだと初めて思えた。
触手を消滅させられた本体が、自らの身を縮めながら新たな触手を幾重にも生やす。
見える。あれは20から成る意識体。本当に残りカスだ。
もはや神の力でなくても滅する事が出来る。
…だからと言って見逃したり、他人に任せたりするつもりなど毛頭ないが。
襲い来る触手を切り払いながら近付き、一閃。
「これで…終わりだ!」
まとめて20の意識を刈り取る。断末魔の意思を震わせて邪神が消滅した。
それを背中で感じつつ、エリの元へ。覚えたばかりの力を治癒力として流し込む。
もうすぐ完了という段階になって、突然力が途切れた。
紐を付けて放つ為のそもそもの力がない。使い切ってすっからかんになったらしい。
エリの命に別状はない。だが気絶したまま目覚める様子もない。
「うぉい、どーすんだよこれから…」
傍から見たら、途方に暮れている大鎌を抱えた小娘、独り。
俺の疑問に答えてくれる奴は、生憎とどこにもいないのだった…


2章

仕方がないから目立たないよう、近くの林の中にエリを抱えて退避。
日が昇って空が明るくなり、朝の慌しい雰囲気もやり過ごし、
落ち着きを取り戻した頃…多分10時頃か。ようやくエリが起きた。
見た目は猫で自称女神のエリは目覚めて曰く
『殺った?それとも犯られた?』
とふざけた台詞をのたまいやがりましたよこんちくしょう。
猫だけに畜生なのはしょうがないと諦めるしかないのかねぇ。
読みが同じなのに意味が違う漢字の部分までニュアンスが伝わってきやがった。
「とりあえず殺った。女神の力とやらも使い方はわかった。
で、質問なんだが…この肉体、作りたてって言ってたよな?」
『そうよ』
「だったら元の俺に似せた体作ってくれよ」
『いずれは作れるけど無理…無意味?』
「なんでさ!?」
『神の肉体を作るには結構な力が入用なのよ。今から始めたら完成は数十年から数百年。
ちなみに、現実時間での話ね。神の国は時間の経過が違うから一概に言えないけど』
「や…別に神の肉体なんて大それたシロモノじゃなくていいんだ。
人間の男の肉体でいいんだ。いやそれがいいんだ」
『確かに人間の肉体ならそこまではかからない。数日あれば作れるけど…』
「…けど?」
『さっきも言ったけど無意味よ?
一回説明したと思うけど、その肉体は魂の容量に合わせて縮んだわけね。
で、性別が女なのは、神の肉体の強度が人間の魂の強度に勝ったから』
「そーいやそんな話したっけか」
『つまり楸の魂は今のその肉体と同じ形になってる訳。だから無意味』
「だからの繋がりが見えねぇってば」
『その姿になった時点で、楸の魂自体が既にその形になってるの。
で、今の楸が人間の男の肉体に入っても、肉体がその形になってしまう。
んー…つまり、楸がその肉体に入った時の状況は、
鋼鉄製の鋳型に粘土を詰め込んだようなものな訳。鋳型が肉体で粘土が魂ね。
今、楸が言ってるのは間逆。
鋼鉄製の像を粘土の鋳型で包めって言ってる訳。この場合像が魂で鋳型が肉体』
「ちょっと待て。確か人間の魂は希薄だっつってなかったか?」
『あら、よく覚えてたわね。なら補足。肉体と魂は相互に干渉しあう。
神の肉体に入って、その形で固定化されたから楸の魂も神域に踏み込んでるわよ』
「ぐっ…つ、つまり…」
『そう、人間の肉体は魂の形に引きずられるから無意味。
男性形の神の肉体を作れば男の姿にはなれるけど、
人間界換算で数十年から数百年は必要になるわ』
「あー…どの道人生終わってるのな、俺…」
『人としての生が終了してるのは確かね。
神の血を引いた人間が神の座に登る事は結構あるけど、
神の肉体に入り込んだ為に神の座に登ったのは初めてじゃないかしら。
ようこそ新たに生まれた女神よ。貴女の誕生を心から嬉しく思うわ』
「…それは皮肉か嫌味か?」
『まぁ、思うところがない訳ではないわね』
「俺のせいじゃねえだろ!?」
『だから直接的な表現はしてないじゃない。お互い運が悪かったと思いましょ。
あたしもいつまでもこの体を借りてる訳にもいかないし、帰ろっか』
「…帰るって、何処へ?」
『そりゃー神の国よ』
「…俺も行くのか?」
『あたしだけ送ってくれてもいいけど…
今後の身の振り方を落ち着いて考える必要があるんじゃない?
この世界で身元不明の少女ってかなり生活しにくいと思うわよ』
「あー…まぁ神の力を使えば何とかなりそうな気はするが」
『短期ならね。でも限度はあるわよ。この世界じゃあんまり神力回復しないし』
「え、そうなのか。寝れば回復するんじゃないのか?」
『MPじゃないからね。近いけど』
「近いのかよ。ってかゲームまでわかるのかよ」
『神をナメないでね。時間は腐る程余ってるのよ…で、どうする?来ないの?』
「行くっきゃないか…」
肩に飛び乗りながらエリが言う。
『力が使える様になったって言っても座標知らないだろうからあたしがやるわね』
「やるはいいけど、空っぽだぞ今」
『ちょっと待って…すっからかん?逆さにして絞って振っても何も出てこない?』
「出てこない…何か問題あるのか?」
『あるっちゃあるわねぇ。
何でかってーと、神力を回復させるには神の国に行って休息を取るのが一番早いの。
で、神の国には神力を使って転移する…要するにルー○でないと行けない訳。
だから最低、ル○ラ1回分は残しておくのが常識』
「んな常識知らんがな。ってか○ーラ言うな。ドラク○かよ」
『言ってなかったしね。わかりやすいでしょ?
んー、すると次に回復力が高いのは精気の吸収なんだけど…』
「…何かすげー嫌な予感しかしねぇ言葉が聞こえた気がするが」
『そうよねー。ちなみに予感通り、男と寝r…』
「あーあー聞こえなーい!」
『ちっ…じゃあ信仰心が集まるあたしの神殿…は、この国にはないし。
んー、楸は方向性が決定されてないから能率は悪いけど信仰心なら何でもいいかな…』
「舌打ち!?今舌打ちしたな!?」
『気のせいよ…人の信仰心を糧に奇跡を起こすというのも既に言ったでしょ。
だからちょっと適当にその辺の神域で信仰心を掠め取りに行くわよ』
「言葉悪ぃなおい」
『事実は端的かつ明確に、がモットーなの』
「まぁいいけど…確か近くに神社があったな、行ってみるか…は、いいんだが。
なぁ、コレ持ってないと駄目か?すげぇ悪目立ちする事が予測されるんだが」
『んー、確かに力を使って喚べば来るけど。他人に触れられるのも問題ね。
一応曲がりなりにも神宝な訳だし…んー…よし、ここに埋めちゃおっか』
うぉい、神宝を触られたくないってのはわかるんだが。だからって埋めていいのか?
『まぁ、大丈夫でしょ』
いいならいいけど。ちょいちょいと大鎌を埋めてから人目を忍んで移動開始。
「そういやさぁ、釣り上げてる自然の力を直接取り込んだりは出来ないのか?」
道すがら、思いついた疑問を口にしてみる。
『出来るけど、お薦めはしないわよ』
「何かそればっかりだな」
『自然の力を直接取り込むと、自然の意思が自我に紛れ込む…
要するに自我が侵食されるの。だから自分が自分でありたいならやらない方がいいわ』
「神の力を介すると安全なのか?」
『うん。それならあくまで核は自分の力だからね』
「そうすると、自然の力を取り込む必要性は?」
『1の力で1の効果より1の力で10の効果が出る方がいいでしょ』
「なるほど…もう一つ疑問が浮かんだんだがいいか?」
『ん、何?…あ、一つ言っておくわ。この世界の創造主の事なんだけどね、
普段は設定厨な癖に一枚の絵に惚れたせいでノリと勢いだけでこの世界を創っちゃって、
色々設定に矛盾があるから後付けに四苦八苦してるらしいから答えられない事もあるわよ?』
「うぉい、その発言はメタ過ぎんぞ…俺は人間の体に入ってもこの姿になるって言ったな?」
『言ったわね』
「じゃあエリが入った猫はエリの姿になるんじゃないのか?」
『あぁ、元々獣は構造が違い過ぎるからあたしの魂とこの肉体は干渉率が低いのよ。
ついでに猫そのものが種族特性として霊的素養高いから器もおっきいしね』
「なんかわかったよーなわからんよーな…
と、無駄話をしている内に到着したがどうすりゃいいんだ?」
『へぇ、稲荷神社ねぇ』
「ん、何か問題あるのか?敵対してるとか」
『邪神が封印されてた位置から近いから、本来ここが管轄だと思う。
ただ、邪神を殺すだけの戦闘力を有する神格が存在してないんじゃないかな。
討伐要請は多分ここから来てるわね。
回復はとりあえず中に居れば体が吸収してくれるわよ』
「どん位居ればいいんだ?」
『信仰心の濃度によるけど…1日居れば帰れる位の力にはなるでしょ』
「作法とか知らねぇけどいいんかな?」
『隅っこで大人しくしてればいいんじゃない?あたしの流儀じゃないけど』
「エリの流儀ってどんなだよ」
『正面から堂々と乗り込むわよ。当然でしょ』
「うっわー態度でけぇ」
『まぁそもそもアクシデントがなかったら寄ってないから』
「それもそうか」
そんな会話をしながら鳥居をくぐる。
つい、でっけぇ!と思ってしまうんだが、
その一瞬後に自分が縮んだんだと思い至って凹む訳だ。
…畑のど真ん中とか林の中じゃ比較する物がなかったからなぁ…
建築物を見てやっと実感する。だって2割増し位ででかく見えるんだぜ!?
175の2割だから単純計算で35、引くと140とかか…
あれ、何か既視感。前…ここじゃないどこか…にもこんな数字があったような。
『創造主がその数字が好きなのよきっと…放って置いてあげなさい』
「だからメタ発言はするなと…」
『今回の発端は楸よ』
む、確かに…しかし内心の既視感まで悟るなよ。心読まれてるのか?
それとも俺どこかの口○の魔術師みたいに思考に没頭すると垂れ流す癖でもあるのか?
『さてどっちだろうね。ふふふふ…』
ヤな含み笑いすんな。
「あら、珍しいお客様方ですこと。くすくすくす…」
賽銭箱の前で漫才じみた会話をしていたら、後ろから声をかけられて振り向く。
巫女服を着た、20代前半程に見えるやや釣り目がちな純和風美女が立っている。
『この神域の守り神ね。邪神討伐の依頼を出したのはここ?』
「そうです。わたくし、戦いには向いておりませんので。くすくすくす…」
『邪神は滅ぼしたけど、ちょっとアクシデントがあって寄らせて貰ったわ。
神力が多少回復するまで、休ませて貰いに来たのだけれど構わないかしら?』
「あら…それは大変でしたわね。どうぞごゆるりとお休み下さいな。くすくすくす…」
「あ、あぁ…すんません。隅っこの方で目立たないようにしとくんで…」
「まぁまぁ、そう仰らず…部屋を準備しますからこちらにどうぞ。くすくすくす…」
んで、神社の裏にある建物の中のがらんとした12畳の広い部屋に通された。
「本日はお疲れでしょう。ちょっと早いですが昼食を準備しますから、
是非お召し上がり下さいな。くすくすくす…」
「あ、ありがとうございます…」
「そんなに恐縮しないで下さいな。お願いしたのはこちらなのですから。
おもてなしくらいさせて下さいましね?くすくすくす…」
そう言ってねーちゃんは俺達を部屋に残し出て行った。多分台所へ向かったのだろう。
部屋の隅に積んであった座布団を二枚降ろして適当に敷き、俺とエリがそれぞれ座る。
「んー良い匂いがするなぁ、腹減った…ってそういやぁ飯要るのかこの体?」
『神力があれば食べなくても何とかなるけど食べた方がいいわよ』
「そりゃまたどうして」
『人間が欲求をいきなり止めると精神に負担かかるしね』
「ってか構造が人間と変わらない気がするんだがその辺どうよ?」
『正確には逆ね。神は自らに似せて人間を創った、ってどっかで言ってたでしょ』
「それ聖書だった気がするが…ふぁ…ねみぃ…くぅ」
『ちょっと、寝ちゃダメ…あれ、あたしも…これ、おかしい…うにゃ…ん』
そして不自然かつ強烈な睡魔に負けて俺達は眠りに落ちたのだった。

にゃーにゃーと猫が煩い。頬を撫でられる感触。
「くすくすくす…本当に可愛い…」
そして誰かが囁いてる…
「んー…あと5分…」
「ベタな寝言ね。くすくすくす…」
はっと目を覚ますと、美人なねーちゃんの顔がどアップで映った。
「うわぁっ!?」
がばっと跳ね起きようとするが、体を動かせない。
首は動かせたから視線を巡らせて見ると、どうやら神社の境内らしい。
太陽は地平線に近付いていて、空の雲が赤く染まっている。
正面の遠くに、さっきくぐった鳥居が見える。
近くには携行できる檻と、その中で鳴いているエリの姿。
ちょっと視線が高い。何か台の上に乗せられている様だ。
腕が痛い。股関節もちょっと痛い。
…状況が把握出来た。そして血の気が一気に引く。
今の状況をわかりやすく言うと、賽銭箱の上でM字開脚に縛られている訳だ。
腕は本坪鈴…賽銭箱の上にある鈴付の紐によって頭上で固定されてしまっている。
や、例の切れ込みの深いワンピースも、
総レースシースルーで布面積がやたら少ない下着もまだ身に着けてはいるけど。
…なんの慰めにもなってねぇ。
取らされてる格好の都合上、捲くれ上がって全開、丸見え、ご開帳。
「お、おいこれはどういう事だ!?」
とりあえずもがきながら問いかけてみる。
「神力を回復させたいのでしょう?
そのお手伝いをしたいと思いまして。くすくすくす…」
「こ、こんな場所で、こんな格好にする意味は!?」
「ここが一番信仰心が集まる場所ですから。くすくすくす…格好については」
「うひゃあ!?」
中が透けて見える下着越し一本の縦筋をなぞるように撫でられ悲鳴を上げてしまう。
「御身に穢れを帯びてしまったようですね。
それが回復の邪魔をしている故、浄化しようかと思いまして。くすくすくす…」
確かに、なんか全然貯まってない気がしなくもないが。
「縛る意味は!?」
「わたくしの趣味ですわ。お任せ下さいな。
この世を越えた快楽に誘いましょう。くすくすくす…」
「や、やだっ…やめっ…!?」
「あまりお騒ぎになられますと、何事かと人が見に来てしまいますよ?
それとも、この姿を見ず知らずの方に見せたいのですか?くすくすくす…」
「うくっ…んっ…」
流石にそれは嫌だ。運が悪ければ黙っていても人が来てしまう訳だが。
「純潔の証は護るとお約束しますからご安心を。くすくすくす…」
ナニが安心なんだ!?
「ちょっ…罰当たりなんじゃねーのかこれ!?」
「それを決めるのはわたくしなのですよ?
ですから問題はありませんわ。くすくすくす…」
触れるか触れないかの微妙なタッチでくすぐる様に縦筋に沿って撫でられ続ける。
「くすくすくす…それでは、お清め致しましょう」
持っていた器を咥え、くいっと傾けてから俺の顎をがっしり掴む。
そのまま顔が近付いてきて、むちゅっと唇に唇が押し付けられる。
美女の接吻と考えると嬉しい気もしなくもないんだが。
あぁ、こっちの意思を無視されてる時点でやっぱり嬉しくないような!?
「んっ…んんー…!?」
そのまま口に含まれていた液体が流し込まれてくる。
くわっという感じで口の中が熱くなる。押し返そうとするのだがうまくいかない。
それでも飲み下すのは躊躇われて口の中に溜めていたら、鼻を摘まれてしまった。
暫くは我慢したが、結局は息苦しさに耐え切れずに喉が動いて一口飲んでしまう。
一回飲んでしまったら後はなし崩し的に全て呑んでしまう。
口の中の熱さが喉を通って食道、胃にまで伝わっていく。これ、酒か?
「強情を張られる姿がまた可愛らしいですわね。くすくすくす…」
あー、何か胃から熱が回って全身が熱くなってきた気がする。
同時に目が回ってきた。おかしいな、俺ここまで酒に弱くなかった筈…
って、体違うじゃん。この体は下戸ですかそうですか。なんか全身が熱いよ。
「あぁ…まさかこんな初々しいお方がお出でになられるなんて…
わたくし興奮が抑えられませんわ。くすくすくす…」
「あ、あつぅい…」
「雪の様に白い肌がほんのり赤くなって…あぁ、素敵…くすくすくす…」
酒の入った器を俺の頭上で傾ける。
びしゃびしゃと音を立てて酒が降り注がれ、俺の全身はずぶ濡れになる。
うわぁ…全身から香る酒の匂いでますます酔いそう…
「あぁ、腕を忘れていましたわ…ごめんなさいね。くすくすくす…」
そうして腕にも酒を浴びせられ、全身くまなく酒まみれにされてしまう。
ってーか流石は神の持ち物と言うべきか。器のサイズと内容量が明らかにちげぇ。
あー、白いワンピースが透けてブラがくっきり。
そのブラも透けて乳首もぼんやり浮かび上がってる。
酒に濡れた全身の皮膚がぴりぴりと張り詰めているような気がする。
「くすくすくす…お神酒で穢れを払っていますので、我慢して下さいな。
反発しあう作用の影響で、ちょっと皮膚感覚が鋭敏になってしまいますけれど」
「あ…ひゃっ…そ、んな…撫で、んやぁっ…」
頬から顎、肩、脇腹と指が滑っていくだけで、
剥き出しの性器を撫でられているのとそう変わらない刺激となって俺を襲う。
ぐしょぐしょに濡れた靴を脱がされ、太腿まで覆う靴下もずり下げられる。
「ふあっ…やぁっ…ひいぃんっ!?」
靴下を引っ掛ける指先が触れただけで、縄を一旦解く手と縄がこすれる感覚だけで、
まるで電気でも流されているかのような鋭い快感が走る。
肌触りの良い布が腿、膝、足首から爪先まで、覆ったまま滑り落ちる感触が続く。
快楽という名の沼にそのまま片足を突っ込んでしまった様に気が遠くなる。
抜き取られて一安心する間も無く、改めて肌を直に這う縄に翻弄される。
そして勿論それだけで終わりではない。もう片方の足にも同じ行為が行われる。
ただ脱がされるという行為が既に快楽責めの拷問だ。
「ああぁぁっ…ほんっ…と、に…や、め…えぅんぅっ!」
口の中も…舌先まで過敏になっている。
言葉を発しようとするだけでも口の中が爆発したような強烈な快感が生まれる。
「あ…あ…かっ…」
顔を上げ、大きく口を開けて舌と口腔が接触するのを避ける。
しかし鼻呼吸では既に足りない。どうしても口で呼吸してしまう。
その空気の流れすらも、緩やかな快感となって俺の脳を揺さぶる。
「かっ…はっ…ひゅー…ひゅー…」
正直、直接触れられると刺激が鋭すぎて痛苦しい。
その度に頭の中が真っ白になって意識が朦朧としてしまう。
それと比べると、この過敏になった口腔を空気が通る穏やかな快感は、
俺が男だった頃の自慰行為に近い。徐々に気分が高まっていく。
「くすくすくす…全ての穴で…
いいえ、体の全てで快感を感じる事が出来る様にして差し上げますわ…」
「ほ…ん、あ…こ、と…のぞ、んで…な…」
「くすくすくす…こんなに気持ち良さそうに蕩けた顔をしていらっしゃるのに?」
「や、ら…も…これ、いじょ…はぁ…こわ、れ…ち…ひゃぁあん!?」
うなじから後頭部に手を差し込まれ、強い刺激にまた悲鳴を上げてしまう。
「くすくすくす…本当に、壊してしまいたくなる程可愛らしいですわね」
唇を重ねられる。それだけでは足りないのか、舌を差し込まれる。
「んっ…んくぅ!?…んんんんんんんんっ!!」
再び、口の中で快感が爆発した。
ふわっと浮かび上がる様な浮遊感と、自分が溶けて世界と一つになる様な錯覚。
何か、一つの到達点に辿り着いたような気がした。
そうか、これが女の絶頂なのか…と、どこか現実感に乏しい頭で考える。
けれどどこか物足りない。まだ先がある。そんな気もする。
落ち着く暇もないまま、口腔内を舌が暴れ回り、再び押し上げられる。
男のそれとはまるで違う。こんな連続で再び絶頂を迎えるだなんて信じられない。
「…っ…んぅ…っ…!」
また口移しで酒を流し込まれる。
今回は同時に首を絞められて飲み下す事も出来ない。
逆流し気管にも入ったのか、鼻の奥が痛む。それも熱さに変わる。
首を絞める手はすぐに緩められ、唇も離れた。咳き込む。
鼻腔を通った酒がぽたぽたと雫となって鼻から流れる。
涙で滲む俺の視界には、細い紐を二本取り出し、酒に浸している姿。
それを、両耳の中に差し込まれる。
「やゃあぁあっ…!?」
予想外の…しかし確実に脳に近い場所への突然の刺激で、再び達してしまう。
達する度に、一段高い場所へと登っているのがわかる。
既に痛い程張り詰め、二枚の布越しにでもはっきり見て取れる位に
存在を主張している乳首を摘まれ、扱かれ、抓られる。
耳の中を穿り返していた紐を、鼻の中にまで差し込まれる。
むず痒さと、熱さを煽る快感。
もうこれ以上登りたくないという理性を押し流しながらまた達してしまう。
軽い絶頂が、積み重なって大きく重くなっていく。
俺がイク瞬間毎に、違う場所を弄られる。今度は臍の窪みでイかされた。
頭の中の回線が何本か焼き切れて、元に戻れなくなりそうで怖い。
それなのに、体は貪欲なまでにより高みの快感を求める。
賽銭箱の上部、格子状に組まれて波打っている箇所が尻の窪みに嵌まり込んでいる。
…下腹部が疼く。腰が俺の意識を離れてもぞもぞと蠢き、擦り付けるのを止められない。
邪神に嬲られた時にも感じた、腹の中を掴まれて掻き回される感覚。
「あらあら…我慢出来なくなってきましたか?くすくすくす…」
「も…やめ…くぅっ…る、ち…あぁっ…」
ひょい、と尻の下に手を差し込まれ簡単に持ち上げられてしまう。
「あぁ…み、る…なぁ…うわあぁ…ん…」
ショーツのクロッチ部分をずらされ、秘部と窄まりを露わにされる。
そこも勿論酒まみれではあるのだが、明らかに酒とは違う液体でてらてらと濡れていた。
「きゃあああああぁぁぁっ!?」
酒を含んだ口が押し付けられる。酒を膣内に流し込まれる。
立て続けに尻穴にも酒を吹き込まれる。本当の女の子みたいな悲鳴が俺の口から迸る。
全身がそうなのだが、特に下腹部は地獄の業火で炙られているみたいに熱い。
酒のせいだけではなさそうだが、ょぅι゙ょ初心者の俺にはそれが何だかわからない。
こぷ、ぷしゅ、と粘着質な音と共に酒と体液の混合液が排出される。
その音がひたすら俺の羞恥心を煽る。けれど否定の声は弱々しいものにしかならない。
「あ…や…だ、めぇ…」
女の後ろに控えていた男が、やはり酒浸しの、
等間隔で結び目が結わえられた直径1cm程の縄を女に手渡す。
ソレが尻穴に捻じ込まれていく。ごりごりと、熱く爛れた腸内を逆流していく。
「んっ…はぁっ…き、もち…わる、い…」
この感覚は二度目だが、慣れる事なんて到底出来そうにない。
…え、待て。男?
何時の間にか、境内の中には老若男女取り混ぜた幾人もの人間が居た。
全員が、食い入る様に、いやらしい目で、俺を見ている。
この痴態を見られていた…?
「いやああああぁぁぁぁっ!?み、見るなあああああぁぁぁぁぁっ!?」
今までで一番の激しさで足掻く。
だが頭上で縛られた両手も、曲げさせられた膝も開かされた股間も、
ひくひくと物欲しそうに蠢く膣口も、縄をはみ出させ膨れた尻穴も隠す事が出来ない。
全身の熱が、更に温度を上げて体と共に俺の心を焼いていく。
「見られて感じているのでしょう?こんなに嬉しそうに咽び泣いて…くすくすくす」
「そ、そんあ…ころ、な、いぃ…」
「でしたら、こういう事をされても平気ですわね?くすくすくす…」
女が、乳首と同様に充血し膨れ上がった俺のクリトリスを強く摘みながら、
尻穴の縄をぐぽぽぽっと卑猥な音を響かせて一気に引き抜く。
今までのが単なる余興だったと思える程の、意識を根こそぎ刈り取られる様な絶頂。
意識が真っ白に染め上げられ、ただ虚空を彷徨う。
気絶こそは免れたものの、圧倒的なまでの快楽の余韻に、何も考えられない。
「ほら、貴女は衆人環視に見られながらお尻を弄られて、
感じるどころか達してしまう変態女神なのですよ。くすくすくす…」
「…お…ん…あ…お…い、あう…ぅ…」
呂律の回らない舌は、明確な否定すらしてくれない。
まるで自分が女の言う通りの存在だと認める様で、悔しく、悲しい。
「言いましたでしょう?体の全てで快楽を得られる様にして差し上げますと。
そうそう、その方法なのですけれどね…清めの最中に絶頂を迎えると、
その時触れられていた箇所が鋭敏なまま固定されますのよ。くすくすくす…」
「…は…ぁ…え…?」
「くすくすくす…つまり、貴女の体の至る所は既に性感帯になっているのですよ。
この形の良い耳をくすぐっても…」
「あ、ひゃ、やぁっ」
「今は実践出来ませんが、例えばこの可愛らしい鼻の穴に精液を撃ち込まれても」
ふにっと鼻の頭を押されただけで、確かにむず痒い様な快感を覚える。
「この小さな口に物が入る度に…いいえ、何か話そうとするだけで…」
細長い指が俺の唇を撫でる。
「そぉ、ん…な…だ…やぁっ…」
確かに、舌が口腔内で擦れるだけで脳天を突き上げる様な快感が走る。
これではまともに喋る事も出来そうにない。
「このぷっくり膨らんだ美味しそうな乳首も…」
「うあっ…あぁ…ぁぅ…」
服の上から軽くなぞられるだけで、収まりかけていた熱が再び蘇ってくる。
「この綺麗なお臍も…」
「やっ…め、ろぉ…はぅんっ」
押し込まれくりくりと動かされる。その振動がそのまま下腹部に浸透していく。
ダメだ、こんなのがこんなにキモチイイだなんて、認めちゃいけない…!
「この、美しい菊の門でも…」
「ゆっ…び、を…っ…入れ、う、なあぁ…」
結び目付きの縄を咥え込まされ強引に抜き取られた尻穴は、
柔らかく女の指を受け入れてしまう。
ぐにぐにと中で指が蠢く度に、押し出されるように膣口から蜜が溢れ出る。
違う、俺は尻穴に突っ込まれて快感を得る様な変態じゃない…!
「その全てで至上の快楽を得られるのです。素晴らしいでしょう?くすくすくす…」
「り、りょおらんりゃ…」
「くすくすくす…ところで、疑問には思われませんでした?
ここまでしておきながら、何故一番肝心なこの場所を避けているのかと」
「ひ、ひらにゃ…あぁ…んあっ!」
膨らんで柔らかみを帯びても縦線一本と表現できてしまうのがょぅι゙ょたる所か。
ずっと放置されていたそこは流し込まれた酒と自らの愛液でふやけたのか、
人差指を埋め込まれてもするりと飲み込んでしまう。
痛くないどころか、痒い所に手が届いた様な、
欠けていたパーツが埋まったかの様な快感と安心感さえ感じてしまう。
だめだ。だめだ、だめだだめだだめだ!
この体が何を求めているか理解しちゃいけない。
…わかりきっている。わからない振りが出来る程の余裕はもうない。
欲しいんだ。男の象徴が。ここに。俺の中に。このひくひくと震える膣の中に。
「仕上げはもうすぐ…あぁ、到着された様ですわ。
ごめんなさいね。わたくし達にも色々外交問題があるのですよ。
外津神からの依頼は珍しいですからね。貸しを作っておく事にしたのです。
貴女には迷惑な話でしたでしょうけれどね。くすくすくす…」
空から光が降って来る。ずしんと音を立てて境内に着地したのは…
1や2のター○ネーターの様に膝立ちの姿勢ので俯いている全裸の男性。
…と言うと何となく筋肉むきむきの若い男を想像する所だが。
立ち上がった姿はあいにくとかなり中年太りした髭面のおっさんだった。
あー…元の自分を考えるとちょっと親近感が湧くかも。
女の話から想像するにこいつがこの体の初めての相手だと思うと嫌悪感が湧くが。
「じゅ…ん、けつ…は、ほしょ…する…て…」
「えぇ。ですからわたくしは貴女の純潔を奪ったりはしません。くすくすくす…」
女が名残惜しそうに俺の体から指を離す。
見せ付けるように俺の目の前で酒と愛液に濡れた指を舐めながら、
賽銭箱を…俺を遠巻きにして見物していた連中に向き直り言う。
「ここで見た事は忘れて帰りなさい」
言われた連中は不気味な程大人しく女の言う事を聞き、行列を作って去っていく。
おっさんがエリを勝ち誇った目で見ながら言う。
「王である儂をないがしろにするからじゃ」
エリはエリでおっさんを悔しそうに睨んでいる。
人っ子一人居なくなったのを確認して、女がおっさんに膝を付いた。
「ようこそお越し下さいました、異郷の神王よ。ご注文の品はこちらに」
「うむ。苦しゅうないぞ。大儀であった」
品言うな物扱いかよこんにゃろう。けれどさっきの台詞を鑑みるに、
売られたってか生贄に差し出されたみたいだし、似たようなもんか…
体の全てを曝け出す姿勢で拘束された身を凝視され、羞恥心が煽られる。
さっき多くの者に見られた時も恥ずかしかったが、どこか他人事な感覚だった。
それが今はこんなに辛く感じてしまうのは、絶頂を経験して、
これが自分の体なのだと受け入れてしまったからなのかも知れない。
「ほほぅ、これはこれは…」
こちらを向いたおっさんの股間が…すげぇ。正直舐めてた。すまんおっさん。
この体の手首より太いんじゃないか?かなり長いし。
もうバッキバキ。出っ張った腹、その臍に食い込む勢いでそそり立っている。
さっきちょっと感じた親近感が一発で吹き飛ぶ威容だ。
しかしこれからそれを挿入されるのかと思うと洒落にならない。
…だがこの体は俺の意思とは無関係にそれを求めてしまう。
どくんどくんと心臓の音に合わせる様に、下腹部が疼く。
自分でもはっきりわかってしまう程、愛液の分泌量が増える。
目が離せない。他人の持物なんて見たくもない筈なのに。
おっさんは俺の心情などお見通しだと言わんばかりにそれを揺すってみせる。
…腹の肉も一緒にぶるんぶるんと揺れる様は正直、正視に耐えないが。
「流石は王たるお方。わたくしにもお情けを頂けませんでしょうか?」
何故か、女が俺の方を横目で伺いながらおっさんに懇願する。
「…ふむ、良かろう。日の本の国の女神は経験が無いな。儂も興味がある」
おっさんも何故かこちらを一瞥しながら答える。
そしておっさんと女が絡み始める。
くちゃくちゃと音を立ててディープなキスをかます。
自分でやるより他人にやってもらった方が気持ち良いのは男女関係無いだろう。
今の俺があんな事をしたらどれだけ気持ち良いんだろう…ごくり。
うわぁ…次にアレを咥えるのか。俺は精神的にも物理的な口のサイズ的にも無理だろ。
女は手で扱きながら美味そうに舐めしゃぶっている。
当然、俺にはアレを舐めた経験なんてないが…や、あったらそれはそれでヤだろ?
美味いモンじゃないだろう事くらいは想像が付く。よくやれるよなあんな事…
俺もやってみたい…っな訳ない!気のせい、気の迷い!
…赤い袴を脱ぎ捨てて、でかいソレを受け入れる女。
艶かしい喘ぎ声が俺の体に染み込んでくるみたいだ。
別に見たくなんかない筈なのに、目が離せない。
さっき自覚してしまった、女としての自分の性欲を持て余してるよ大佐。
大佐って誰だっけ。シャ○じゃない事は確かだろうが。
女の声が甲高くなっていく。ぱんぱんと腰を打ち付ける音が大きく早くなっていく。
気持ち良さそうに蕩けた顔を見せ付けられて、我慢が出来なくなっていく。
「では、参るぞ」
おっさんが言い、強く撃ち込んで動きを止める。
同時に一際甲高い声を発し、女ががくりと脱力する。
「ふむ…中々であった」
「稲荷の眷属はあくまでも表の顔、裏では真言立川流を伝えておりますから」
「なるほど」
真言立川流ってーとアレですか。
性交で悟りを開くって教義で邪教認定とか弾圧とかされてませんでしたか。
それであんなに淫乱なんですね。わかります。
けど稲荷と何の関係が?…あ、そっか。荼枳尼天繋がりか。
…や、真女神○生とか好きだったんだよ。
コンシューマ版だけじゃなくてTRPG版も基本、誕生、覚醒とやり込んだし。
就職もしていい加減忙しくなってた時期なんで魔都東京はやってないんだけど。
そんで役に立たん知識が増えたって訳さ。
…ってーか俺自身が女神に転生したようなもんだしなぁ現状。
事実はゲームより奇なりってか。ははは…はぁ。
はて、そうするとこのおっさんとかエリとかどこの神さんなんだ?
この女が和製なのはわかるんだが。
異郷の神王とか言ってるから和製以外の多神教で、一神教系じゃなさそうだ。
エリも何か因縁がありそうだから同族っぽいか。
「かような小娘も初めてであるが故に、また一興」
そんな風に一生懸命気を逸らしていたが、おっさんの台詞で現実に引き戻された。
自分の腰がもぞもぞと物欲しそうに蠢いている事とか、
愛液の分泌が収まらないどころかますますびしょびしょに濡らしている事とか。
男としては決して認めたくない現実だ。
おっさんが女から離れる。ずるりと抜けたソレが愛液と精液でグロテスクに光る。
それでも尚、その勢いは衰える事を知らぬとばかりに天を仰いでいる。
おっさんがゆっくり近付いてくる。まるで俺の心の恐怖心と体の期待感を煽る様に。
「や…く、る…なぁ…そ…ん、な…の…」
「ここはそうは言っておらんぞ」
おっさんがそう言うと、下着が光の粒となって霧散する。
「はぁんっ」
目に見える状態としては僅かに開いているだけの縦筋、
その上部から僅かに顔を出している充血した敏感な部分を撫でられて嬌声が漏れる。
「む、り…そ、なの…はい、らな…」
「女の体は受け入れる様に出来ている」
軽々と持ち上げられ、女の入口に男の象徴があてがわれる。
「次に汝が絶頂に達した時、儂に処女を献上してもらう」
じょ、冗談じゃない。絶対にイッたりするもんか。
腕を吊り上げている縄をしっかりと掴んで懸垂の要領で持ちこたえようとするが、
神力を使えない今は見た目通りの力しかないこの体ではすぐに耐えられなくなる。
「無駄な努力だ。汝はかような行為でも快楽を得られる体になっている」
「ひゃあぁんっ!?」
アレがあてがわれている膣から更に後ろの菊門に指を突き込まれる。
それだけで頭が真っ白になる位、気持ちが良い。
「良い声だ。もっと儂に鳴き声を聴かせよ…ここも既に開発済みであったな」
尻に指を突き込まれたままの手で軽々と支えられ、
もう片手の小指を耳の穴に捻じ込まれ、捻られる。
「はぁんっ…そんな、ことぉ…ないぃ…あぁ…やぇろぉ…」
「立場を弁えるが良い。儂に命令出来ると思っておるのか」
髭面が近付いてくる。耳で押さえられて顔を背ける事も出来ない。
「んふぁっ…くふっ…っ!?…んんんっ!!」
そのまま唇を奪われ、舌を捻じ込まれる。
噛み千切ってやるという意思とは裏腹にこの体はそれを受け入れてしまう。
そして、敏感にさせられた箇所の三点責めで、あっけなくイッてしまう。
同時に、ぶちぶちと音を立てて体を縦に引き裂かれた、気がした。
「…!…っ…!…っ…!!」
筆舌に尽くしがたいというのはこういう事か。
時間がえらいスローモーションで流れる。
処女膜が突き破られていく感触、あまりの太さに許容量オーバーで膣が裂ける感覚。
内臓のあちこちが押し退けられる異物感。それが体の最奥へと進んでいく。
ずしん、と体に響く衝撃と共に侵入が止まる。子宮口に突き当たったのか。
蛇口の壊れた流し台みたいに止まらない愛液で潤わせていたといっても、
何しろモノがぶっといもんだから全然役に立ってない…
立ってるのかも知れないけど焼け石に水という言葉がしっくりきそうだ。
ただ何より怖いのは、この激痛の中に快感が混ざっているのが感じられてしまう事。
何もかもを蹂躙されている屈辱に、燃え上がる様な怒りも確かに感じているのに。
敏感にさせられた体は、激痛を快楽に変換してやり過ごそうとしている。
快楽を受け入れてしまったら、自分が自分で無くなってしまいそうで怖い。
しかしこの苦痛を苦痛のままにしていたら、多分俺は壊れてしまう。
ぐい、と持ち上げられる。竿の部分が俺の中をごりごりと動いていくのがわかる。
痛い。最初のを引き裂かれる痛みとしたら、これは傷口を更に抉られる痛み。
限界一杯に広げられている膣口を更に押し広げ雁口が顔を出す。
見えてる訳じゃないが、手に取る様にわかってしまう。
そして再び打ち込まれる。何となく、杭を打ち込まれる吸血鬼の気分。
治癒の神力を使われている気配がする。引き裂きながら強引に治すのってどうよ。
体がびくびくと痙攣する。苦痛が減って熱と快感が増している。
「あうぅっ…!」
また、最奥を叩かれる。頭の芯につーんと来る衝撃。
おっさんが腰を力任せに振り立て始める。
「おぉ、これは…素晴らしい。絡み付いて締め上げてくる」
一突き毎に痛みが引いていく。気持ち良さが明確になっていく。熱い。
最奥に打ち付けられる度に、衝撃が、広がる波紋の様に全身を痺れさせる。
「ふあぁっ…あぁ、はあぁん…」
こんな、年端も行かない外見をしている癖に。
媚びるような、甘えるような、男の劣情を煽る声だけは立派に一人前だ。
それが自分の口から出ているのでなければ俺も興奮出来るんだが…
「くぅっ…んっ…も…と…あぅう…」
口が勝手に動いた。今、もっと欲しいと口走った自分が信じられない。
駄目だ。快楽に翻弄されて何も考えられなくなってきてる。
「この儂が、これほどまでに…!?」
おっさんが、滑稽なまでに腰を振りながら驚愕とも感嘆ともつかない呻き声を上げる。
ぱんぱんと音を立てて腰を打ち付けられる度に、高みに押し上げられていく。
「あぁっ…だ、め…また、いっ…くぅ…うあぁっ…!?」
「しかと儂の精を受け取るが良い。そして汝は我が物となる」
宣言と共に、熱い液体が迸り、俺の中に叩き付けられる。
それが引き金となり、俺はもう一度意識を飛ばしてしまった。

目覚めた瞬間、今までの出来事の全てがそれこそ悪い夢であって欲しいと思った。
しかし、現実は甘くなかった。それどころかまだまだ俺が甘かったらしい。
でかいアレは既に抜かれているが、血と愛液と精液でぎっとぎとにぬめっている。
その持ち主である所のおっさんが、神力を掌に集めて物質を具現化させている。
それは直径2cmほどの、金属製に見えるCの形をした輪っかだった。
「これより汝に、我が所有物である証となる術を施す」
何か寝惚けた事を抜かしてやがりますよ?このおっさんは。
「…寝言は、んっ…寝てから、言えよ…」
くそっ、激しい絶頂の直後だからかまだマシだが、舌を動かすだけで高ぶりそうだ。
おっさんが一睨みすると、服が細かい光になって散り散りに弾け飛ぶ。
確かに身を隠す役には立っていなかったが、それでも無くなると心細い。
そして輪っかを俺の乳首に近づけてくるおっさん。
「光栄に思うが良い」
そして、その輪っかで乳首を貫通させる。
「ひぃっ!痛い、いだい、いたいぃっ!」
輪っかの両端がするすると伸びて、両端が繋がり完全な円形となる。繋ぎ目も見えない。
過敏にさせられたそこを貫かれる激痛は説明し辛い。
世の中には爪の間に針を刺す拷問があるそうだ。
勿論そんな事をされた経験がある訳じゃないが、それが近いんじゃないだろうか。
「儂がこの術を施せば、汝は儂に従う様になり、汝は神力を扱う事は出来なくなる。
だが悪い事ばかりではない。その肉体の感度を普通に戻す事も可能だ」
…肉体がこのおっさんの意に従うってんなら、それで感度を落とせるなら、
別に今こんな事しなくても感度を上げればいいんじゃね?と、思ったんだが。
「人間であればその程度は自由自在だがな。
神の肉体は抵抗力が高い。術を施した状態以上には出来ん。
術式を改良せねばな。しかし心配は要らぬぞ。
汝という格好の実験台が手に入るのだからな。さぞかし捗る事であろうよ」
二つ目の輪っかを具現化しながら、相変わらず好き勝手な事をほざいてくれる。
「ふざ、け…ん、な。この、や、ろ…」
悪態もそこまでだった。反対側の乳首を同様に扱われ、二の句が続けられなくなる。
おっさんが三つ目を具現化する。あまりの激痛に失神しそうになりながらも、
これで終わりじゃない事に気が付く。
輪っかを持ったおっさんの手が俺の股間に伸びる。
どこを対象としているかに気付き、絶望と共に俺の心が折れた。
「や、やめ、ゆる、して、そん、な…」
抵抗したいところだが、状況が悪すぎる。
あの女が言っていた事は全てが嘘という訳でもなかったらしく、
自分の中に僅かながら神力が回復しているのがわかる。
…が、状況を引っくり返すにはほど遠い。
一回、何かちょっとした事を行うのが精々だろう。
術とやらが完成する前に一矢報いるか?それも悪くはないが…
このおっさんに向けて放っても、蚊に刺された程度の効果しか見込めない。
どうせならもっと有効に使いたい所だ。
あー…しょうがねぇよなぁ…俺はこんなザマじゃ逃げられないし。
さっきの態度を見るに、このままだとエリも無事じゃ済みそうにない。
双方共倒れするよりかは俺自身希望が持てるし。
そうと決めたら後は実行あるのみ。ほんの僅か回復していた神力を振り絞り、放つ。
力は光弾となりおっさんの脇を抜け、エリを捕らえている檻に着弾。
破壊された檻からエリが飛び出す。
捕まえる為に飛び掛った女が、エリが突如全身から発した光に弾き飛ばされる。
光が収まると、エリの背中に翼が生えているのが見えた。
『楸、大丈夫!?』
触れていないのにエリの声が聞こえた。俺は首を横に振って答える。
『体に合わせて魂の形を変えて神獣に存在変化したわ。
体に収まりきらない分の魂をエネルギーに転化させたから少しは力が使える。
ただ、このままだとあたしが女神じゃなくなって関係が無くなるから、
女神になりつつある楸との同調が失われるの。
だからあたしとの繋がりを保つ為に契約しなさい。
自分独りで何とか出来る自信があるならしなくてもいいけど、どうする?
契約するなら口にする必要も無いわ。ただ頷くだけでいい』
独りでどうにか出来る自信なんて欠片もないから頷く。
『これで最低限の仕込みは出来たわ。
今回の件、色々腑に落ちない点があるとは思ってはいたけど、
どうやらあたし達は嵌められたみたいね。
神獣になると元に戻るのに数百年とかかかるからやりたくなかったんだけど。
どう、あたしが今ある力を渡したとして、このクソ生意気なのから逃げられそう?』
いつの間にか身に着けつつある神としての目でエリとおっさんを見る。
その内包する力を比べる…までもない。ただ首を横に振る。
そのだらしなく弛んだ見た目と違って、内包する力は王を名乗るだけの事はある。
『わかったわ…恨んでくれてもいい。あたしは楸を置いてここから離脱する。
けど、逃がしてくれた恩には報いるわ。必ず助けに行くから、待ってて』
そして、エリが俺に力を使う。俺は神の力と立場を得ていても知識が無い。
だからそれがどんな作用を及ぼすのかはわからない。
『ごめんね。今はこれが精一杯』
まぁ、あれだ。無理に助けにくる必要はないぜ。
その時ゃ、快楽に沈んで何も考えられなくなってんだろうしな。
『そうはさせないよう最大限努力するわ』
エリはそれだけ言うと、再び掴みかかる女をかわして飛び上がり、
光の尾を引いて空の彼方へとかなりの速度で消えた。
おー…期待しないで待ってるぜ。ってか無茶はすんなよ。
折角最後の力振り絞って逃がしたんだからな。
…おっさんは背後で起こっている事に興味など無い様で、
オレの体に印を刻む為にクリトリスを摘み上げる。
「はぅっ…かはあっ…きゃあああああぁぁぁぁぁっ!?」
輪っかに貫通される。生涯においてこれ以上の苦痛はないだろうと断言出来る。
術とやらが完成したのだろう。
さっき掴んだばかりの神力の使い方が、またわからなくなってしまった。
続いておっさんが、占い師が使う水晶玉みたいな透明の球体を具現化しながら言う。
「汝は、この宝玉を所持する者の命に従う」
三箇所に取り付けられた輪っかがびりっと電気を発した様に震え、オレは悶絶する。
それが収まると、馴染んでしまったみたいに痛みも違和感も無くなる。
おっさんが一睨みすると、オレを拘束する腕と膝の縄が消滅する。
ふらりと倒れかかるオレを抱き止める。
「あやつは逃げたか。だが何も出来まい。
儂の目的は達した。感謝するぞ、日の本の国の女神よ」
「異郷の神王よ。恐悦至極に存じますわ」
女が優雅に一礼し、おっさんがそれに頷く。
おっさんの神力が膨れ上がり、オレを抱えたまま飛び上がる。
加速による重力を感じた次の瞬間には雲の上に居て、
更に景色が歪んだと思ったら建物の中に居た。
エリが言っていたルー○を使用したのだろう。
豪華でだだっ広く、ぱっと見、宮殿に見える。部屋は真中辺りに十数段の段差があり、
それを見下ろす様に一際無駄に贅沢な椅子…というより玉座か…が鎮座している。
おっさんが神力を使ってゆったりとした白い貫頭衣を身に纏う。
大儀そうに(重そうに)その玉座に腰掛け、右の掌と肘掛でぱんぱんと打ち鳴らす。
扉が開き、おっさんが着た服に似た女性向けの服を身に着けた女性が現れる。
左腕一本で抱きかかえられているオレは、何とかおっさんから離れようともがく。
「暴れるな。大人しくしておれ」
その言葉で、オレの体はオレの意思を無視して暴れるのを止めてしまう。
これが術とやらの効果って事か…くそっ、好き勝手されてたまるかよ。
え、既にされた後だろうって?言うなよ泣くぞ。号泣したい気分なんだからな。
20代半ば頃に見える女性はしずしずと歩いて段差の前で同時に跪く。
「お呼びですか、王よ」
「汝に、これの教育を任せる」
オレから手を離し、段差に押しやりながらおっさんが言う。
弄ばれたこの体はまだふらついている。
段差はよろけながらも何とか降りたが、直後に足をもつれさせて倒れてしまう。
女がオレを興味深そうにまじまじと見る。
この体を使っていたエリはどえらい美人だったが、この女はそれ以上だ。
女神なのだろうという事を差っ引いてもこの世の物とも思えない。
年端も往かない小娘の、一糸纏わぬ、
それも恥ずかしい場所にピアスを施されているこの体を晒すのが情けなく感じる程だ。
オレがそんな事を思う必要はないってのに。
花も恥らうどころか裸足で逃げ出すだろうその美しさに気圧されてしまう。
顔を背けながら起き上がり、両手で胸と股間を隠し、身を縮める。
今更だが、あれほど過敏だった肉体が今は元通りになっているのに気付く。
「儂の道具として相応しくなる様、躾けよ」
女性の顔が楽しそうに綻んだ。
「まあ、わたくしに任せて頂けるなんて嬉しいですわね。
ところで、この娘は何と呼ぶのですか?」
「ふむ…スペイズと名付けよう」
オレの名前を勝手に決めるなよ…とは思うんだが、
それを自分の名前だと認識してしまう。マジで洒落になってねぇ。
や、向こうも洒落でやってる訳じゃないだろうが。
「これを預ける。活用せよ」
おっさんの手から女の手に宝玉が転移する。
「確かに、お預かり致しましたわ」
女が一礼して立ち上がり、オレに向かって手招きする。
「それではスペイズ、こちらにいらっしゃい?」
優しげな顔と台詞だが…微妙に嫌な視線に感じる気もする。
この女の言う事に従うメリットとデメリットを計る。
メリットは…ねぇな。強いて挙げるならこのおっさんから離れられる事か。
デメリットは…何されるかわからん。
反対に従わないメリットデメリットを考える。
メリット…オレの誇りと意地が守られる。
デメリット…同じく何されるかわからんが、従うより酷い事になるだろう。
…ってか、オレの意思を無視して強制されている時点で、
メリットもへったくれもねぇんだけどな!
まぁだからこそ考え方を変えて、リスクの少ない行動を選ぶべき、だが…
考えあぐねていたら、痺れを切らしたらしい。
「立ちなさいスペイズ。命令がないと動けないなら相応にしか扱いませんよ」
命令に従って体が勝手に立ち上がる。それでも胸と股間は必死に手で隠す。
「両腕の力を抜いて、足を少し開いてわたくしに全てを見せなさい」
見せたくないのに、腕から力が抜け両脇にだらりと垂れ下がる。
そして足も肩幅より少し広い位に開いてしまう。
顔を背け目を瞑っても、じっと観察されているのがわかる。
頬が熱くなっていく。
「…では、わたくしに付いて来なさい」
命令に従わされて玉座の間から連れ出される。
おっさんから離れられる事に少しだけほっとする。
幸いな事に進む先には人気が無く、情けない姿を大勢に晒す事も無かった。
しかしマッパは嫌だ。オレはノーマルで露出癖とかは一切無い。
「なんか服、寄越せ。裸でうろつかせるなよ」
精一杯強がって言う。しかし鼻で笑われた。
…そんな仕草も美しいと感じさせるってのはある意味卑怯だよなぁ。
「道具の分際で服を欲しがるとは生意気な…ですがそうですね、良いでしょう。
スペイズ。貴女が男だったら女に着せてみたいと思う服を連想しなさい」
くっ、そう来たか。元はいっぱしのおっさんだったオレだ。
真っ裸でいるよりそそる服は確かにいくつか思い当たる…が。
大人の女が着てこそな、この体には似合わん事請け合いな服しか思い浮かばん。
露出がまるでないとつまらないのは確かだが高けりゃ良いってもんでもない。
体のラインがはっきりわかるのも良いが、ひらひら感も欲しい。
チラリズムは要るだろやっぱり。
見えそうで見えないけどやっぱり見えるってのが重要だ。
それを言うなら透けて見えるのもポイント高いよな。
けどハナっからそれが前提の、ビニールみたいな透明は萎える。
…考える事まで強制できるのか?何でこんな事真剣に悩んでるんだよオレ。
なんて考えた瞬間、女が神力を使ってオレの服を具現化させた。
全身を確認してみる。
髪の毛は後頭部で一括りに結ばれている様だ。
黒い、滑らかで薄い生地が首の後ろを通って胸を覆いながら広がって、
そのままスカートへと繋がっている。つまり背中がフルオープン。
薄い生地一枚なもんだから乳首とリングがくっきりと浮き出てしまっている。
スカートは本来なら太腿の半ば位まではいくんだろうが、
やたら嵩張る白いひらひらが下に幾重にも巻かれている様で、
斜めに張り出してしまって股下5cm未満とかそんな感じ。
スカートの中からは紐が4本飛び出していて、
太腿までを覆う薄手の黒いストッキングを釣り上げている。
靴も黒く光沢があり、踵がやたら高く細い。歩き辛い事この上無い。
…ちなみにこの下腹部のすかすか感は履いてない。
ちょっと激しく動くだけで丸見えは必至だ。
確かに、何と言うか上記の要素全てを満たした服ではある。
予想通りというか以上というか…orzな気分になる。
実際にorzなポーズを取ると下半身が剥き出しになるからやらないけどな!
「良く似合っていますよスペイズ。それでは参りますよ」
女の命令に従って再び歩き始める。
歩く度に揺れてその存在を主張するリングが、道具という言葉を思い出させる。
冗談じゃない。絶対に屈しない。絶対にこんな立場から抜け出してやる。
体がオレの意思に従わない今、オレの自由になるのは心だけだ。
それだけは守ってみせると誓う。
そうして、オレの、道具としての生活が始まった…


3 章 …は主人公がひたすら調教され続ける展開の都合上、
イラストからの逸脱が著しい為、回想でさっくりと流します。
ダークなエロが書ける様になってびびっと来る絵があったら書くかも?

あれからどれだけの時間が流れたのか、思い出すのが難しい程になりました。
多分、現実世界では一年くらいなのでしょうけれど。
神々の国は時間の流れが違う場所も多いので正確には把握出来ませんが、
一万年くらいは過ぎているのではないでしょうか。
あの後、オレは女性としての立ち振る舞いを躾けられ、
道具としての心構えを身にも心にも刻み込まれ、
自分を使用して下さるお方に、如何に悦んで頂けるかを学び、
気が付けば私として思考し行動するようになっていました。
完全な抵抗は体感で1年位でしたでしょうか…思えば一番長い時間でした。
抗えば抗う程責めが辛くなり、やがて許しを請うて泣き叫び、
それでも我に返れば抵抗をする…そんな絶望的な戦いの日々でした。
そもそも勝ち目のない戦いを粘るのは無駄だと、今なら理解出来ます。
表面上は従いつつ内心で抗い続けたのはもう少し長く、5年程でしょうか。
私と言いつつオレと思っていた頃です。
結局は見抜かれて矯正させられてしまいましたが。
私の恥ずかしい三箇所に施されたリングピアスと同質の、
外せない首輪、手枷と足枷を頂いたのはこの頃の事でした。
また、肉体はこの姿で固定されておりまして、神王様の…
その、お持ち物を、三分の二程までしかお包みする事が出来ないので、
体内を、子宮まで貫いて頂ける様に改造して、
根元までお世話する事を可能とさせて頂いたりもしました。
そうして10年の年月をかけてスペイズという性処理用の道具が完成しました。
恐れ多い事に陛下は私を気に入って下さいました。
気前の良いお方でもあられますから、100年ほど私を堪能してからは、
他の方々へ貸し出されたりもなさいました。
ほぼ全ての男性形の方と、一部の女性形の方が、
私をお使いになられたのではないでしょうか。
神王様の奥方様は特に激しくて、使用して頂く度に壊されるかと思う程です。
性欲を開放すると口が軽くなるのでしょうか。
様々な方から、寝物語に様々なお話を聞かせて頂きました。
それらを繋ぎ合わせると、私が道具である理由が浮かんできます。
神王様がとても女性がお好きであられる事。
そして、その…とても絶倫でいらっしゃる事。
あとは…え、と…百発百中に近い精度でいらっしゃる事。
また、神王様の奥方様が大変な悋気持ちでいらっしゃる事。
神王様の御子を身篭った女性達に酷い仕打ちをなさる事。
前王とその勢力を放逐して神王となられたものの、権力構造が完全では無い事。
特に、前王に加担はしなかったものの、前王縁の神々への影響力が低い事。
この体の元の持主は正にそうした女神の一人であったらしく、
その力を削ぎつつ、自らの性欲を処理する為の道具を作り出すという、
一石二鳥の計画をお立てになられた、という事なのだと思います。
勿論、どんな事実があろうとも私は道具ですから持主である神王様に従いますが。
まだ生殖能力を持たない女神に、肉体の状態を固定化する術を施すという、
二重の安全装置があるので私は孕む事がありません。
孕む可能性がないなら、と奥方様は妥協された様です。
ただ当然ながら思う所がない訳では無く、
それで私を見る視線が厳しくなる、という事らしいです。
…ちなみに、生殖能力がないというだけでは孕む可能性があるそうです。
逆に術を施しただけでも孕む可能性があるそうです。
その場合は相当確率は下がるそうですが…流石は神王様、凄過ぎます。
…それを考えると処女を献上した時は危険だったのでは?
と思ったのですが、あの時は体内に残っていた穢れが相殺したのだそうです。
神力を振るえない、元人間の私にはわからない事ばかりです。
奥が深いですね。
それはさておき、神王様がお使いになり、暫くの間貸し出されては返され、
神王様に使用して頂き、また貸し出されるという生活が続きました。
二三千年くらいはそんな生活が続いたでしょうか。
様々な方に私を使用して頂く内に、肉体に変化があった様です。
この体の元の持主の女神も言っていましたが、体内に神力を蓄えるには、
一番は神の国で休息を取り場に満ちる力を取り込む事。
二番に他者の精を取り込む事、な訳です。
本来神々は、神力が容量いっぱいになったらそれ以上は無意味らしいのですが…
一番二番を共に満たし、物凄い量の神力を取り込みながらも、
神力を使えないよう調整されている私は発散しようがなく、
どんどん貯め込んでいるのだそうです。
その結果、霊的要素を圧縮して構成している肉体に影響を及ぼしているのだとか。
外見的な要素が固定されている分、他の要素に強く影響が出ていて、
例えば体臭が芳しくなっているとか、体液が美味しくなっているだとか、
触り心地が良くなっているとか、声が綺麗になっているとか。
私自身には特にそういった変化は感じられないのですが…
皆様が仰るのならそうなのかも知れません。
道具としての私にはありがたい事ではございます。
皆様により悦んで頂ける訳ですから。
その変化に気を良くされました神王様は私を更に活用なさいました。
外交の一環として他神族への貸し出しも始められたのです。
様々な国へ運ばれ、様々な方々に使用されました。
所変われば品変わる、という言葉がありますが、正にその通りでした。
神王様を頂点とする神族の方々しか存じ上げなかった私には、
想像も付かない趣味思考をお持ちの方が結構居られるようです。
世界は広いですね。
ありとあらゆる苦痛と快楽、恥辱と羞恥を経験しました。
性処理用に特化された私は、使用するお方が望む通りの私となる事が出来ます。
外見だけは固定化されているので変えようがないのですが。
例えば、嫌がる女性を無理やり乱暴にするのがお好きな方の時は本気で嫌がります。
従順である事を求められればどこまでも従います。
私自身としては既に知識としてしか覚えていない日の本の国にも赴きました。
私が作られる契機となった稲荷の女神様にもお会いしました。
心ゆくまで私という道具をご堪能された様子でした。
日の本の国の方々はまにあkk…こほん、
シチュエーションにこだわりをお持ちの方が多かったですね。
つんでれ、なるリクエストを頂いた時は勝手が違い過ぎて大変でした。
幸いご満足は頂けた様で、神王様のお顔に泥を塗る羽目に陥る事は免れましたが。
妹プレイなるシチュエーションは神王様の元に返された時に披露したら、
とてもお喜びになられまして、私も嬉しかったものでございます。
異形の神族に貸し出された時も、戸惑う事が多かったです。
それまで貸し出された神族の方々は人型が多く、
またそうでなくとも人型になれる方が大半でしたから。
けれど、触手に拘束され全身を嬲られるのも、輪姦とは違った趣がありますね。
道具になる前の私は嫌がっていましたが、勿体無い事です。
あ、ですがあの時最後まで行為が行われていたら、
神王様に処女を献上する事も出来なかった訳ですからあれで良かったのでしょう。
数多の神族に貸し出されて、多くの方に使用して頂いた経験から申し上げますと、
男性と女性の差が大きいのは人間だけではないようですね。
男性形の大半の方は私を使用される時、己が快楽を追求する傾向が強い様です。
正しい道具の使用法だと思います。
対して女性形の方の多くは、私の反応を見て楽しまれる傾向が強い様に思えます。
使われる為の道具である私としましては、こちらは不得手です。
悦ばせなければならないのに私が攻められてしまって、
訳が分からなくなってしまうのです。精進が足りないと言えばそれまでですが。
何でも、いぢめておーら、を放出しているのだとか。よく分かりません。
他神族への貸出も行われるようになって、肉体の変化は更に進んだそうです。
貸出期間が終わり、神王様の元へ戻り、神王様にご使用頂いていると、
貸出先の神族の、花の女神がゲシュタルト崩壊を起こしたとか、
美の女神が引き篭もってしまわれた等、神王様が楽しそうにお話し下さいます。
何故神王様が私にそのお話をされるのか、真意はわかりませんが。
また、私を貸し出す様になってから、貸し出した神族との諍いが増えたそうです。
神王様は退屈しのぎに良いと仰いますが…
もしかして、貸し出された先で私自身気付かずに何か粗相をしているのでしょうか?
不安になりそう問うと、笑いながら頭を撫でて下さるので違うとは思うのですが。
また、私と同じ様な道具を作ろうとしている神族もあると神王様は仰います。
未だ成功はしていない、とも。
私を作った時にも、配置とタイミング、そして運命の繊細な操作が必要で、
それら全てが揃う機会は神の基準でも滅多にない事なのだと。
私と同じか、より進歩した道具に取って代わられる危険は今のところないようです。
となると、飽きられて捨てられる事の無いよう、もっと精進しなければなりません。
…と、決意を新たにしてから少し経った頃、そんな日々は突然に終わりました。
それは、いつもの様に他神族に貸し出されている最中の事でした。
私を所有する証である宝玉には、コピーを作る能力があります。
コピーは数年で壊れますが、それまではきちんと私の所有権を有します。
その機能を利用して貸出を行っている訳ですね。
私はその時、四足型の方に使用して頂いておりました。
その方は犬に近い構造なのか、根元が膨れ上がって、
ご満足頂けるまで抜けなくなるのが困りものでした。
四つん這いで受け入れるだけでなく、
抜けるまでそのまま後ろ向きに引き回される事になります。
しかも栓をしたに等しい状態で連続で大量に精を放つものですから、
お腹がぽっこり膨らんでしまいます。その姿で大通りを何往復もしました。
もう消えてなくなりたい位恥ずかしかったです。
最初の内は見物の方も多かったのですが、終わる気配がなかった為か、
ご自身は明日にしようとお思いになられたのか、一人減り二人減り…
やがて周囲には誰も居なくなりました。
四つん這いで後ろ向きという不慣れな歩き方と、
まるで妊婦の様に膨れ上がったお腹の痛みで朦朧としてしまっていて、
何が起こったのかすぐには把握出来ませんでした。
私を後ろ向きに引いていた力が突然無くなったのです。
私はその場で崩れ落ちる様に倒れこみました。
私のお尻に、液体がびしゃびしゃとかかりました。
一瞬、男性器が抜けたのかと思ったのですが、
私の秘所を貫き嵌まり込んでいる感触はそのまま残っていました。
しかしそれも徐々に小さくなり、
内圧に耐えかねて勢いよく飛び出しました。
続けて物凄い量の白濁液を噴出しながら、
膨れていたお腹が元に戻っていきました。
何が起きたかもわからず、地面に倒れ伏したまま呆然としている私を、
いつの間にこんな近くに居たのかわかりませんが、
翼を持つ子猫が見下ろしていました。
そして、頭の中に声が響いたのです。
『遅くなってごめんね。助けに来たわよ。楸』
何を言っているのでしょうか。私はスペイズです。
あぁ…ですが、心の裏側で、何かがもぞもぞと蠢いているのがわかります。
…そう、長い長い悪夢の果てに、こうして、俺は目覚めた。
いいえ、違います。
私はこの世に二つとない、神王様がお作りになられた、性処理用の道具。
…ふざけんな。この体は俺のもんだ…とは、あんまり主張したくないんだが…
『駄目よ楸。もっと気を強く持って、体の制御を奪い返して』
…や、気楽に言ってくれるがな。こいつの肉体への定着は尋常じゃないぞ。
『その体を動かしていた時間の差がハンデになるのはしょうがないわ。
けどそんなもん気合で奪い返しなさい。今、楸の体を動かしてるそいつはね。
あの若造に屈服し、折れ、粉々に砕かれ、作り直された、楸のなれの果て。
そんなつぎはぎだらけの歪な代物相手に負ける程、あんたはヤワじゃないわよ。
もしここでそいつに負けてごらんなさい。
そいつの裏側で、意思だけ残って身動き一つ取れないまま、
性処理用の道具として永遠に嬲られ続ける事になるのよ。ヤでしょ?』
…まぁ、それはかなり遠慮したい未来予想図だな。
心の中の声と、私を見下ろす猫が勝手に会話を進めています。
この体に相応しいのは私です。この体を一番上手に使えるのも、私です。
一万年も前に眠ったロートルに今更用はありません。
私の意思は私の体の隅々にまで行き渡っています。
それに対して相手は頭の中の一部に在るだけです。
このまま押し包んで潰してしまえばよいのです。
圧力を高めると、どんどん小さくなっていくのがわかります。
…うわよせなにをするやめろー
断末魔の悲鳴が聞こえてきます。
二度と再び私の中で喚かない様に完膚なきまでに消して差し上げます…!
そして燃え尽きた蝋燭の様にそれは消え、声も聞こえなくなりました。
これで、スペイズとしての、道具としての私を脅かすのはこの猫だけ。
…猫を捕まえる為に起き上がろうとして、手足が動かせない事に気付きました。
あー、まぁ正面からぶつかって逐一制御を奪ってくのは大変そうだったからな。
入り込んで中枢を一気に制圧する方が楽だと思った所だったからラッキーだった。
…そんな事がある筈がありません。消滅するまで力を緩めたりはしませんでした。
だからさ、押し潰されたんじゃなくて、混ぜてっただけだっての。
で、中枢を一気に奪取する。
頭から始めて四肢に至るまで一つずつ取り返してくよか効率的だろ?
…あぁ、消えてしまいます。私が…私の一万年が…
自ら考える事を放棄して、ただ全てを受け入れるからこんな手に引っかかるんだよ。
…いや、です…もっと…神王…様、に…使って、いただ…
あぁ、あいつもお前と同じ所にきっちり送ってやるから思う存分乳繰り合うといいさ。
…い、や…き、え…く…な…
お前越しではあるが俺も覚えてるんだよ。今までの事は。
だからお前が消えても記憶は残る。居たという事実も残る…ま、納得しろとは言わん。
いつかは俺もそこに行ってやる。復讐したいならその時にな。
…神、王…さ、ま…
その言葉を最後に私は消え、俺が残った。


4章

立ち上がろうとするが、手も足も力が入り切らないでがくがく震える。
しかも内股は未だ膣からごぼごぼと音を立てて溢れ出る精液でべったりと濡れ、
尻を見ると血液で真っ赤に染まっている。
あー…アレ切り落としたのか。想像したくねぇなぁ…
スペイズだった俺を弄んでいた犬は、ナニを切り落とされた傷口を神力で塞いだ様だ。
しかし再生する筈のソレが生えてこない事にショックを受け呆然としている。
その両脇に、エリが入っていた頃のこの体とよく似た二人の女が立っている。
一人は手に持つ剣の刃を犬の首にぴたりと当てて牽制している。
もう一人は何故か顔を顰めながら、俺も見覚えのある鎌を振って血を払っている。
「やっぱアタシこれとは相性悪いわ…はい。返すわよ」
ぽいっと、無造作に鎌を俺に向けて放る。
『ちょっ…今渡す事ないでしょ!?』
エリがいつかの様に俺の肩に飛び乗り、神力を振るう。
一瞬で体の疲れが消える…のみならず、浄化と服の具現化までしてしまった。
…ちなみに、相変わらずの深いスリットを有する白いワンピースだ。orz
唸りを上げて飛来する鎌をキャッチする。不思議と手に馴染む。
「ふぅん…この娘がねぇ…」
『話は後にするわよ。ねぇ楸、この犬どうする?』
犬が首に手をやる。そこには巾着袋がある。
拙い。あの中には俺の所有権を有する宝玉のコピーが入っている。
命令されたら手を出せなくなるが、その前に剣を持つ女が動いた。
あっさりとその手首を切り落とし、首にかかっている紐を切り裂き、
巾着袋を鎌を放り投げた女の足元へと転がす。速い。
切り飛ばされた手首を再生させている間に、女が首筋に刃を突き付け直す。
「そんなの、決まってる」
鎌を大きく振りかぶる俺の姿に恐怖を感じたのか後ずさろうとするが、
首元に突き付けられている剣でそれもままならないでいる。
ナニを切り落とされてすっきりした股間から、小便がちょろちょろと垂れる。
大鎌を振り下ろす。クリティカルヒット!いぬのくびがとんだ!
「おー、よーしゃないねー」
剣を突き付けていたのがその剣捌きに似合わぬのんびりした口調で言う。
「受けた辱めを思えば当然だろう…で、説明して貰えるんだろうな?」
「詳しくはそこの羽猫に聞いて。アタシ達は引っ張り出されただけだから」
宝玉のコピーを拾い上げながらもう一人が言う。
『ハネコ言うな!…あの時、逃げる前に楸にかけた術はね。
んー、シンプルに言うと楸の精神をコピーして本体を眠りに就かせた感じ?
で、設定したキーワードを唱えたら本体が目覚めるようにしてたって訳。
それにしても経過時間次第では影響が出ただろうから間に合って良かったわ』
「体感時間で一万年と二千年ぐらい待たされたんだが?」
『アクエリ○ンはともかく、一億と二千年くらいまでは大丈夫よ多分』
「全然ともかくになってねぇ…しかも多分ときたもんだ」
『ちなみに楸の一人称は俺でしょ?
区別する為にコピーの人格はオレにしておいたのよ』
「わかるかんなもん!?」
『ちょっとした伏線みたいなもんよ。
創造主は別の世界でもこれで人物区別してたみたいよ。ワンパターンよね。
…という与太話はともかくとして、それにしても随分と貯め込まされたみたいね。
スペイズの名は伊達じゃなかったって事かな』
「意味、あんのか?」
『うちらの言葉で鞘って意味』
「…なるほど。ムカつく位ぴったりなネーミングセンスだな」
『神獣は契約者の力の一部しか使えない筈なんだけど、
元のあたしのフルパワーを軽く凌駕してたわよ』
「あのデブを殺れるだけの力を出せるか?」
『いけるわね』
「じゃあ、スペイズを嬲った連中、全てを殺れるか?」
『全員を同時に相手取るのは無理だろうねぇ。
一対一を繰り返すなら全員いけるんじゃない?』
「つまりやり方次第って事だな」
『そうね…ふむ。復讐する?』
「あぁ、殺ってやる。幸いな事に全員、きっちり覚えてるからな…
問題は、俺が力を使えなくされてる事なんだが、
エリが俺の代わりに力を使えると思っていいのか?」
『えぇ。契約を結んだ神獣は契約者の力の一部を共有できるわ。
んー、最初に殺った邪神の時と似た状況って事になるわね。
念話は多少離れていても通じるけど、楸の力を使うには接触する必要があるわ』
「デブの術は消せないのか?」
手足と、触った首に未だ残る枷。
そして乳首とクリトリスを貫通する輪を忌々しく思いながら尋ねる。
『術には解除条件もあるんだけど…
褒めたくはないけどやっぱあいつ悪知恵だけは一丁前だわ。
解除条件が結ばれちゃってて普通に解除するのは無理』
「どういう意味だ?」
『AはBが解除されれば解除される。
BはAが解除されれば解除される…ってやり方。
解除条件をループさせてるのよ。だから解除条件を満たせない。
本来は術も永続じゃないから放っておけば自然消滅するんだけど、
術自体が、術式と呪具を肉体の一部として認識する仕組みになってるから、
生きてる限り術式も続く様になってるわね。
新しい体を作って移るのも、術が体と魂を結び付けてるから無理。
切り離す、引きちぎるとかしても肉体の一部と認識されてるから再生する。
…反吐が出るくらい、嫌な方面に隙の無い術式だわ』
「…すると何か。俺はこの先永遠にこのままか」
あー…体感一万年生きたけどやっぱショックでけぇなぁ。
そしてぶっちゃけショックなのが下着の感触を鬱陶しく感じてしまった事。
しょーがないじゃんよ!一万年まともに履かせて貰えなかったんだぜ!?
見せたいとは思ってないから露出癖がついた訳じゃない!…と信じたい。
スペイズだって自分から見せたいとは思ってなかった。
命令でまくって見せた事は数え切れないけどなー。

や、記憶にある分は数え切れるんだが万桁近いから面倒臭いんだ。
感度上げられた時は意識飛ばしやすいからその時の記憶は無いんだが、
その間もやらされてると考慮すれば万桁は軽く超えてるだろうな。
…と、スペイズの記憶によると…
「そういやこの宝玉、俺の様子がわかる筈なんだが、
のんびりしてていいのか?…かなり今更な話ではあるんだが」
『この辺り一帯の時間を止めて貰ってるからそれは問題ないわ』
「そんな事まで出来るのか。神力すげーな」
『流石にそんな事まで出来るのは神々でも一握りよ。
ちょっと時間の神に協力して貰ってるの。近くに居る筈なんだけど…
まぁいいわ。楸が復讐するのなら、一つ儀式を行うわ。助けになる筈よ』
「あら、それじゃあアタシ達、ただ働きよね?…あの若造にチクっちゃおっかな?」
『ちょっ…ナニ言い出すのよあんたは!?』
「休暇中だったのに急に呼び出されたのよ?休日手当位欲しいじゃない」
『姉妹のピンチを救おうって気概はないの!?』
「アタシ、ただ働きって大っ嫌いなのよね」
「わたしも、きらいかなー」
『何が欲しいのよ?』
「ねぇそこのアンタ、ヒサギさんだっけ?アタシ達はね、
アンタを助ける為にわざわざこんな所まで来たの。おわかり?」
「お、おぉ」
突然話を振られて慌てて答える…が。
「かんしゃ、してくれてるー?」
「お、おう。感謝する。ありがとう」
「感謝してるなら、何かお礼しなきゃって、思うわよね?」
…何かすげぇ嫌な予感がする。
「マテ。それは親切の押売りじゃないのか?」
「んー、労働に対する正当な報酬を求めてるだけよ?」
『ちょっ…あんた達何する気…こら離しなさい!』
エリを掴んで放り上げる。空中で光の檻が形成され、その中に囚われる。
俺は嫌な予感に背中を押されて逃げようとするが…
「立ち止まりなさい」
一声でその場から動けなくなってしまう。くそ、宝玉を持っての命令か。
「おぉー、ほんとに言う通りになるんだねー」
「こ、のぉっ…!」
「恩を仇で返す様な悪い娘にはお仕置きが必要よねぇ?」
「よ、寄るな…寄らばキルぞ!?」
「あははー、神殺しを持ってKILLは確かに正解だねー」
「そんな危ない物は遠くに放り投げちゃいなさい」
…こいつ等に向けて全力でブン投げてやりたい所なんだが、
俺を縛る術は、基本的には宝玉の所持者を傷付ける行為を許さない。
基本的というからには当然例外もある。所持者が許可を出せばいい。
まぁ…アレだ。マゾな性癖の奴もそれなりに居るって事だ。
今回はそんな許可も出ていない。仕方なく脇に放り投げる。
目にアヤシイ光を浮かべながらにじり寄ってくる美女。とはいえ正直きめぇ。
『あんた等と同じ構成で創った体でしょーが。二人で絡んでればいいじゃない』
「や、ここまで来るともう別物よ?」
「ほんとー、すっごくおいしそー」
「俺は食いモンじゃねぇ!?」
「アンタ達は気付いてないみたいだけど、凄く周囲を惹きつけてるわよ」
「う、嬉しくねぇ…」
怯えを隠して睨み付ける。
命令は立ち止まる事だけだから上半身は自由が利く。殴る為の構えを取る。
実際には手を出せないんだから威嚇にもなりゃしないんだが。
向こうもそれがわかってるのか余裕綽々で近付いてくる。
「この宝玉、親切ねぇ。説明書にヘルプ機能もあるわよ」
「ヘルプ機能なんざ専門用語だらけで基礎を理解してねーと使えない代物だろどうせ」
「じっかんこもってるねー」
「マイク○ソフトのせいでちょっとな…それよりそこのビ○チを止めろ」
「まずは、そうねぇ…その可愛い声で男言葉っていうのも悪くはないんだけど。
口汚く罵られると興醒めだから、口の中の感度を上げておくわね。
これで殆ど喋れなくなるんでしょ?」
「うわ馬鹿よせやめえっ、らあっ…えぇっ…」
更に言い募ろうとしていた舌は止められず、口の中を暴れまわった。
この状態にされると、口腔で膣と変わらない程度にまで感じさせられてしまう。
ちなにに舌はクリトリス並みに敏感になる。まともに喋れる訳がない。
「それから、アンタの持ってる知識を全て使ってアタシを気持ち良くしなさい。
…とは言っても石畳の上じゃ固いから…よいしょっと」
そして具現化されるでかいベッド。いくら時間を止めてあるってったって、
大通りのど真ん中にダブルサイズのベッドってのはシュールな光景だなおい。
『掛け声がオバン臭いわよ』
「大きなお世話よ」
そしてベッドに横たわる。俺の体が命令に従って這い上がる。
いやな?元おっさんとしては悪くはないんだけどな?
自分の意思以外で体を動かされるのは決して良い気分じゃない。
俺の手が女の服を捲り上げて、形の良い乳房を露にする。
体に対して大き過ぎず、かといって小さ過ぎない、絶妙な美しさだ。
…今の俺には圧倒的なまでの大きさに見えるけどな、相対的に。
吸い付く様な感触のそれを両の手でやわやわと揉む。
知識を全て使うという事はスペイズであった頃の経験を使用するという事だ。
まず、相手の反応を確かめつつ色々試す。
そして相手が最も反応した箇所で、今度は強弱を試す。
最適解を発見したらそこを起点に多少前後させながら刺激しつつ次の箇所を探す。
基本はその繰り返しだ。そしてスペイズは忠実にその教えを守り続けた。
一万年その経験だけを積み重ねた結果、最初に触れた時点で大体の事がわかる。
相手が望む通りの快楽を与える為の道具として作られたのがスペイズなのだから。
「はぁっ…この娘、ホントに…すごっ…あぁんっ!」
乳首を口に含んで舌で舐め回しながらそんな台詞を聞き流す。
正直こっちはもっとキツイ。
今の俺にとって舐めるという行為は、股間を擦り付ける行為とそう変わらない。
あっという間に息が切れ、頬が上気する。切なくて、欲しくて仕方が無くなる。
自分の股間に手を伸ばし思う様弄りたくなる。
しかし体は命令を優先して奉仕を続ける。
自然、唯一許された舐める行為に力が入る。より強い快感を求めて強く吸い付く。
結果それが強い刺激となって相手を楽しませる。
指を徐々に女の下半身へと滑らせていく。その間も反応を窺う事は怠らない。
もう片手がこの女特有の弱点を探り当てる。脇腹だ。
くすぐる様に、撫でる様に、時に強く、時に弱く、俺の指が女を翻弄させる。
男としての本能なのか、自分の体の下にある女体を喘がせるのは気分が良い。
到達した時には既に秘所は濡れそぼっていた。
…まぁ、他人の事は言えないんだが。
こっちの下半身はとっくの前からびしょびしょで、既に膝辺りまで垂れている。
サイズを確かめる様に指を一本ずつ増やしながら抜き差ししていく。
…いけそうだ。掌を最も細く丸くなる形にする。
このょぅι゙ょの手をその形にすると、ちょうど太めの男根サイズになる。
それを挿入する前に、もっとほぐしておく事にする。
もっと感じてもらう為、ついでに自分も気持ち良く為に。
素早く女の下半身に移動し、両脚の間に入り込み、秘部に吸い付く。
舌を抜き差ししながら、鼻で陰核を刺激する。
一度軽く達してからの方が、後により高い快感を得られる。
スペイズの知識としてそれを知っているから、このまま一度絶頂へと導く。
一際高い嬌声を上げて女が達したのを確認する。
…同時に俺もイッたんだけどな。
動きが染み付いた体は俺の意思とは無関係に動き続ける。
顔を離し改めて指を添える。しかし女の手が俺の手首を握り、挿入出来なくなる。
気持ち良くなりたいのではなかったのかと疑問に思い顔を上げる。
すると、快感に上気し蕩けた顔でしかし不満そうな複雑な表情を浮かべている。
記憶を探ると、女神の相手を務めた時は結構な確率でこんな表情を浮かべていた。
スペイズ自身は考える事を放棄していてそれが何故なのか理解していなかったが、
今の俺にはその理由を想像する事が出来た。
多分だが、ょぅι゙ょの姿形をした物にイかされる事が屈辱に感じられるのだ。
だから、一度試したら後はこちらを嬲る事でその屈辱を晴らすのだろう。
そしてその想像が的中していたとしたら、この次の展開は…
「ふ…ふふ…アンタ、ホントに凄かったわ…
たっぷり、お礼してあげたくなっちゃった…ふふっ」
うわぁ、予想通り過ぎて厭になりそうだ。
「両手を頭の後ろに、脚は胡坐を組なさい」
体が言われた通りに動き、両手は後頭部に、両脚も胡坐を掻く姿勢になる。
手枷と首輪の後ろ側を繋がれる。
足枷同士も交差した状態で繋がれ、更に短い鎖で首輪の前側と繋がれ動かせなくなる。
その状態でベッドに押し倒される。M字開脚に負けず劣らずな羞恥姿勢だ。
「口の感度を戻してあげるから、これを咥えなさい」
そう言って具現化したのがボールギャグ。正直この状況で逆らっても無意味だ。
手早く済ませる為にも従った方がいいだろう。
どうせ命令されれば従わざるを得ないのだ…が。
だからこそ、自分から屈したくはない。歯を食いしばって逆らう。
そして結局は命令に従わされ、受け入れさせられる。
宣言通りに口腔内の感度は元に戻されたのだが、それから先が地獄だった。
全身の感度を高められた上で、具現化した様々な責め具で全ての穴を弄られた。
何しろこの体は感度を高められると、秘所や尻穴のみならず尿道から耳の穴や鼻の穴、
臍に至るまで性感帯になってしまうのだ。実に簡単に登りつめてしまう。
しかし、絶頂を迎えそうになる度に手を止められる。
拘束された身ではどうにもならない。
気も狂わんばかりの快感。
そして止められる度に膨れ上がるもどかしさと胸が張り裂けそうになる切なさ。
口腔内の感度を戻されたのは、自分で動かして快感を得られない様にする為だ。
ここの感度を上げられたままだったら、自力で絶頂に達する事が出来るのに。
こいつも性格悪いよな。
そしてギャグを外され、命令に拠らない俺自身の言葉でおねだりを強要される。
最初の内は我慢したさ。無駄だとわかっちゃいたけど。
スペイズになる前のオレがそうだった様に。
けど…まぁ、寸止め10回を超える頃からもう数えていられなくなって、
それからも何回かは耐えたんだが…
結局、最後の方は半狂乱で泣き叫びながら懇願した…ってか、させられた。
んで散々焦らされた後は、逆にイかされ続けてもう一回泣き叫ぶ事になった。
勿論それで終わる筈もなく、もう一人を相手に同じ事を繰り返し、
更に隠れていた時間の神…結構な美青年の姿をしたあんちゃんだったんだが、
淫気に中てられたのか姿を顕し手伝いの謝礼を要求、
更に追加でお相手を務める羽目になったのだった。
…途中から最後まで殆ど記憶に残ってねぇよ。
どいつもこいつも欲求不満なんじゃねぇか?
この体が他者を誘ってるなんて認められない。認めたくない。
一通りヤったら満足したらしい。
俺の拘束を解き、エリを捕らえていた光の檻が消滅する。
エリが俺の足に触れ、神力を使って体と衣服を浄化してくれる。
「…ここまでやったからには、あのデブを殺るまでは手伝ってくれるんだろうな?」
「あーはいはいわかったわよ。どの道アイツをこれ以上放置しとくと、
次はアタシ等にタゲが向くだろうしねぇ。その前に手を打っときましょーか」
「や(犯)られるまえにや(殺)れっていうしねー」
くっそ、二人揃ってつやつやしたイイ笑顔浮かべやがって。こっちはへろへろだよ。
『じゃあ、今度こそ儀式を始めるからね!』
エリの宣言と共に二人と一匹が俺を取り囲む。
時間の神のあんちゃんはあまり興味なさそうにちょっと離れた位置に立ち、
ぼんやりと遠くを見つめていたりする。
『復讐の三女神エリニュエスが一柱、アレクトが貴女の復讐を正当と認める』
「復讐の三女神エリニュエスが一柱、メガイラが貴女の復讐を正当と認める」
「復讐の三女神エリニュエスが一柱、ティシポネが貴女の復讐を正当と認める」
周囲から力が流れ込んで来て、目的を果たす為の気力に変換されていく様な感覚。
あー、まぁスペイズだった頃に聞いた話を思い返すにそうじゃないかと思ってたが。
やっぱりこいつらギリシャ系だったか。って事はあのデブが所謂ゼウスか。
「エリはエリニュエスから取ったって事か…アレクトと呼んだ方がいいか?」
『呼びやすい方でいいわよ』
「じゃあエリ。時間の神が何で協力してくれたんだ?
ウラヌスを放逐してゼウスに放逐された農耕神のクロノスなら、
ゼウスには恨みがあるだろうから協力もしてくれるかも知れないが、
クロノスはタルタロスに封印されてるんだろう?
そんで、農耕神のクロノスと時間神のクロノスは字も違うし、
直接的な関係はないって記述を見たんだが」(WIKI調べ)
『よくそんな事まで覚えてるわね。
ちなみにその中には現地の人でも結構混同してるっていう文がなかった?
神が人間の信仰心を糧にしているって話は何度かしたと思うけど。
逆に言えば神は人間の信仰心の影響を受けるのよ。
偶然にも読みが同じ神が二柱居て、信仰が混同していたらどうなると思う?』
「…存在自体が混ざる…とか?」
『その通り。時間神にとっては迷惑な話だと思うわ。
追放され、封印された農耕神に侵食される様なものだからね。
もちろん、ガイアと並ぶ原初神たる時間神が、
一時神王の座についただけの農耕神に簡単に侵食される事はないんだけど。
混ざった分だけあの若造の事を嫌ってるから、
不利益になる様にちょっと手を貸す位の事はしてくれるって訳』
「我が手を貸すのはあと僅かだぞ…
これが時代の流れなら我の力に関わり無く事態は動くのだろうがな。
あやつもまさか今更予言の子が顕れるとは思っておらんであろう」
『予言の子?』
「考えている暇は無いぞ」
『まぁいいわ。楸…まだ暫くスペイズとして行動出来る?』
「やりたくない。このまま不意打ちで攻め込む訳にはいかないか?」
「無理だな。如何に時間を止めて接近しようと、歪みは生じる。
そしてあやつがその歪みを見過ごす事はなかろうな」
「そうか…エリ、スペイズは輸送時、
でかい水晶製の棺みたいなのに封じられて運ばれてたんだが、
開封時まで俺を寝かせてスペイズを起こしておく事は出来るか?」
『神社で掛けた術?出来なくはないけど…
スペイズに主導権を渡すとここでの出来事を言う可能性があるわよ?』
「…その部分の記憶だけ消すとか都合良くいかないか?」
『ふぅむ…それならやれそうだけど、いいの?』
「貸出期間中ずっとスペイズの振りとかまぢ勘弁」
「犬っころの痕跡は完全に消えたわよ」
『じゃあ、満足した犬っころはスペイズをその場に放り出して帰った。
スペイズは途中から意識が飛んでて覚えてない…ってな筋書きでいいわね』
「良くはないが妥協しよう」
言い終わった瞬間にがつっと頭に衝撃を食らい、俺の意識は闇に沈んでいった。
…ってか、最近展開が早くねぇか?え、また冗長になってきたから巻き?
一体、何の話だよ。またって何だよ。
そもそも俺に喋らせないでコメで言やぁいいじゃねぇか手抜きしやがって…

そんな訳で翌日以降、スペイズの裏で息を潜めて待った。
や、知識として知ってはいたけどやっぱ体験は違うわ。
感覚面はシャットアウトしてある筈の俺まで変な気分になった程だ。
神々ってまぢで欲求不満なのか?と疑いたくくらい絶倫が多くてなぁ…
特殊な嗜好の持主も相変わらず多いしな。
ともあれ、ここでの数年をそうしてやり過ごし貸出期間が終わった。
この国は誠実な奴らが多いのか返却の際に揉める事も無かった。
水晶の塊の中に封じられて置物の様に鑑賞されながら帰還するのもいつもの事。
封じられると言っても身動きが取れないってだけで、
寝てるわけじゃないからこうして考えられるし外の様子もわかる。
衣装はスペイズ用のだからこっ恥ずかしいったらありゃしない。
ほんっとに、辱める事だけには抜かりがないよな。
普段は帰ったら即開封されてデブの相手をしなきゃならんのだが…
今回はまたちょっと趣が違った。封印を解く前に術式を更新するんだそうな。
何でも、神力の貯蓄に拠る肉体の変質が次の段階に入って、
自らの体内で神力を生成出来る様になったんだとか。
元人間の俺には実感ないが、これは凄い事で、現存する神としては二柱目なんだとさ。
え、一柱目?皆さんご存知の、基督んとこの唯一神サマらしいぜ。
で、その変化に合わせて所持者が俺の神力を使える様に術式を更新したって訳だ。
しかも宝玉も小型化して、首飾りにしたから手に持つ必要もなくなったとか。
デブ野郎、どこまで俺を便利使いしやがるつもりだよ。
しかし、タイミング良いのか悪いのか…
デブが俺の力を使える様になると、正面からの攻略はまず無理になる。
不意打ちは何度も試せる手段じゃない…ってか、多分チャンスは一回こっきり。
術式の更新でやや疲れを見せている今が絶好の機会と言える。
デブが俺の封印を解く。水晶から滑る様に出ると同時に俺が主導権を取り戻す。
「今回の成果を儂に披露せよ」
「はい。神王様」
内心は嫌々だが、怪しまれないよう嬉しそうな声音で返答する。
早く来てくれよお二人さん…俺がボロ出す前にさ。
ってーか見慣れてるけど相変わらず、すげぇでけぇ。ギンギンのガッチガチ。
いい加減飽きて勃たなくなってもいいんじゃねーか?と、思うんだが。
玉座にふんぞり返っているデブの足元に跪き、ソレを両手で優しく扱く。
俺は嫌悪感しか覚えないが、スペイズにとっては慣れた行為だ。
表向きだけスペイズとして行動するコツが何となく掴めてきた。
スペイズを前に立てて、後ろから覗き込む様なイメージ。
精神的な防衛反応なのかね。
我に返れば自分がやってる事に変わりないと気付くだろうが…
や、そんな事には気付かない気付いちゃいけない。俺とスペイズは別物。
やってるのはスペイズであって俺じゃない。
扱きながら舌を這わせ唾液を塗してるのも、
その後美味しそうに舐め、咥え、しゃぶってるのも、
苦くて不味い筈のソレから出た汁が美味しく感じられるのも、
ケツを後ろに突き出して物欲しそうに蠢かせているのも、
早くも秘所から蜜を溢れさせているのも、うっとりした顔しちゃってるのも、
みんなみんな、スペイズであって俺じゃない…よし、自己暗示完了。
「お邪魔するわよ」
「おっじゃまっしまーすぅ」
背中の方…段差の下から声が聞こえる。聞き覚えあるな。誰だっけ。
「おや、これはこれは…伯母上殿方か。久しいな。
ここは嫌っていたと思ったが、何用かね?」
神王様…じゃない。デブが答えてる。
でも命令で奉仕しなきゃいけないから、内容を聞いてる暇がない。
「わかってると思うけど?アタシ達の姉妹についての件よ」
こうして、髪を絡めて、滑らせながら、舌で先端部分を突付いて…
「さて、彼女も貴女達と同じくここを嫌ってる故、知りかねるな」
「しらばっくれないで。剥き出しのお尻をこっちに向けて、
いやらしく振ってるその娘の事、どう説明するつもり?」
「確かに元は伯母上が構成した肉体ではあるが。
今は別人の魂が使用している故、伯母上とは関係がないな」
「ふぅん…あくまで関係ないと言い張るのね。
…それとも、本当に気付いてないのかしら?」
「何の事だ?」
「こーいうこと、だよ」
ひゅん、と風を切る音。
首根っこを掴まれ、ナニから引き剥がされ、正面に向けられる。
ピンク色に霞む視界に映るのは剣を構えて飛び込んでくるティシポネの姿。
急速に意識がはっきりしてくる…って、このクソデブ。俺を盾にしやがったな。
振り下ろそうとしていた剣を驚異的な反射神経で留め、
そのまま俺の肩に足を掛け跳び上がる。
俺を踏み台にしたぁ!?とお約束な台詞を吐きたくなるが、今はまだ我慢我慢。
そのティシポネの影から更に風切音と細い影。
メガイラが振るった鞭がデブの、俺を盾にした腕とは逆の腕に絡みつく。
それを逆に引っ張り上げ、たわみを作って空中のティシポネを打ち据え弾き飛ばす。
絡ませていた鞭を解きながらメガイラが言う。
「さっすが、親殺しは一味違うわねぇ」
「ほざくな老害。スペイズ、汝にとっては初めての力の行使だな」
莫大な力が、この体の快楽神経を刺激しながら暴れ回る。
内臓を丸ごと愛撫されて、喘ぎ声が止められない。
「うぁっ…はぅっ…こ、んな…あぁっ!?」
そして腕を通してデブに力が流れ出していく。
『残念。あんたよりあたしの方が楸の力を使い慣れてるのよね』
二人が攻めている間に忍び寄っていたエリが俺の頭の上に飛び乗り、
一瞬で俺の力を纏め上げる。爆発的な光が俺の頭上で炸裂する。
それと共に首を掴む腕の力が抜け、デブの腕ごと俺は地面に転がる。
振り向くと、デブの首の付け根から胸の辺りがごっそりと消えていた。
エリは手で顔を覆って地面を転げまわっている。
『め、目が、目がぁっ…あぁ…!』
どうやら目からビームを発射したはいいものの、自分の眼も眩んだらしい。
…つーかムス○大佐の真似とはさり気に余裕だなエリ。
『次からは口からレーザーブレスを吐く事にするわ…』
宝玉…首飾りは鎖が切れてデブの足元、玉座から階段を転がり落ちていく。
「ば、かな…力の行使は、封じた筈…」
『あんたが術式に集中してて気付かなかっただけよ。
術式が完成する瞬間…直前にあたしが神獣の契約を滑り込ませた事にね』
「くっ…スペイズ、その猫を振り払って儂に触れろ!」
傷をほぼ一瞬で修復しながらデブが叫ぶ。俺は立ち上がりながら答える。
「やなこった」
目を剥いて絶句しているデブを尻目に、エリが大鎌を召喚しついでに体を浄化し、
スペイズの恥ずかしい衣装からいつものワンピースに…
個人的にはこれも十分恥ずいんだが…一瞬で着替える。
「一万年の悪夢…終わりにさせて貰うぞ」
俺は鎌を構えながら…や、洒落じゃなくて…宣言する。
「数多の敵を下せしこの神王ゼウスが、ここで消える等ありえぬ…!」
「エリ!身体強化10秒!」
『はいな』
全身が研ぎ澄まされる感覚。世界がスローモーションになる。
鎌を振り上げ、全力で振り下ろす!
「舐めるな!雷神たる儂をその程度の速度で捉えられると思うたか!」
デブが見かけからは想像も出来ない速度の体捌きでこの一撃をかわす。
そして間髪入れずこちらに向けた掌から雷を放つ。
流石にスローモーションの世界でも滅茶苦茶早い。
ただなぁ、あまりその手の台詞は吐いて欲しくない所。
燃え上がっちゃうのがこっちに一匹居てさぁ…巻き込まれるんだよね。
『甘いわね!肉体強化率上昇!あんたには!
情熱思想理想思考気品優雅さ勤勉さ!そして何より速さが足りない!』
あぁほらもう…クー○ー兄貴の名言はいいけどさ。
その速さを体現すんの俺じゃん。勘弁してよ。
マトリッ○スばりに仰け反って回避。舞い上がった髪が一房焼ける。
すぐに再生するから問題はない。
やり過ごしたと思った瞬間、捻じ曲がって鎌に着弾する雷。
「如何な神殺しといえ、金属である以上儂の力からは逃れられぬ!」
閃光が迸り、一瞬何も見えなくなる。
「道具として大人しくしておれば、可愛がってやったものを」
「過去形にするにはちょっとばかり早いぜ」
柄を伝い、俺の体を焼く筈の雷を振り払う俺。ちなみに無傷。
「なにぃっ!?」
「ずっと考えてたんだよ。神を殺すってのがどういう意味なのか。
傷付いても再生出来る筈の神を殺せるのは何故か。
そしてわかったんだよ。神殺しは存在を切る事じゃない。概念を切るって事だ。
雷とはかくあるという固定概念だって切れるさ」
「認めぬ…!儂を凌駕するなど、儂を虚仮にするなど、許さぬ!」
「諦めて現実って奴を受け入れそして消えろ!最大出力で身体強化3秒!」
『神獣使いが荒いわねぇ…』
ぶちぶち言いながらも神力を振るうエリ。
「や、エリに言われたくねーわ」
そしてスローモーションからコマ送りの世界へ。
如何な雷神とて対応出来る速度ではない。
最初にアレを、次に両腕両脚、最後に首を刈る。
身体強化が解ける。まだ動けるだけの力は残してあるが、めっちゃ疲れる。
「ありえぬ…認めぬ…この儂が…」
首だけになったデブがしぶとく呟く。
『予言が成就するだけの事よ。あんたの欲望によって始まり、
あんたが取り込んだメティスの知恵を利用した企ての結果生まれたのがスペイズ。
つまりあんたとメティスの子。
だからあんたはスペイズを女として、道具として躾けた。
けど今この体に居るのはあんたが消し去った筈の楸。楸は女?それとも道具?』
「どっちでもねぇ。俺は男だ…少なくとも心はな」
『だからあんたはあんたの祖父や父と同じ様に自らの息子に放逐されるのよ』
「く…ふはは…そうか。ならば汝にも儂の今際の際の呪いを受けてもらおうか。
汝も儂らの様に自らの子に王座を奪われるだろう、と言うのが定石であろうが…」
「生憎と俺はそんなもんに欠片も興味はない」
「…だろうからの。別の呪いを残す。儂は汝を永遠に縛りつけようぞ…ふははは…」
それだけ言い残してデブは消滅した。
俺は体を見下ろす。手足の枷も相変わらず見えるし首輪の感触も変わらない。
服でぱっと見わからなくなっているが、リングピアスもそのままだ。
術者が消えたら術式も消えるんじゃないかとかちょっと期待したんだが…
そう上手くはいかないか。或いはこの辺りが呪いなのか。
ともあれ、宝玉…首飾りだ。これを確保しないと俺に安息の日々は訪れない。
しかし術式の一環で俺はそれに触れられない。
「エリ、首飾りを頼む」
『そうね…これで一つの時代が終わるわ』
エリが確保する為に触れた瞬間、首飾りは粉々に砕けて飛び散ってしまった。
破片が、世界中にばら撒かれていく。
「ちょっ、頼むとは言ったが砕けとは言ってねぇぞ!?」
『あたしが砕いたんじゃないわ。勝手に砕けたのよ』
「じゃあ、これで終わったのか?」
『…多分、違うわね』
「どういう事だよ?」
『術式も呪具もあんたの存在の一部になってるって説明はしたわね?
首飾りも術式の一環だから楸が存在する限り共に存在する。
だから砕けても再生する筈…ふむ。つまり、逃げたのよ』
「自我があるってのか?」
『まさか。そこまで高度にする必要が無いでしょ。
あれはあくまでコントローラーなんだから。破壊されない為の保険ね』
「ちっ…死んだ後までうぜぇデブだ…
あ、神殺しで切られると再生不可能なんだよな。
俺に付けられてる呪具を切って術式破れないのか?」
『理論上は可能。但しあの鎌じゃ駄目』
「ほぅわーい!?」
『あんたを使い手と定めてるから。使い手を傷つける行為はしないわ』
「ほ、他に神殺しがあれば…?」
『んー、いけるだろうけどねぇ。
うちんとこだけじゃなく余所んとこも当たれば残ってるのもあるだろうけど。
有名な所では北欧系に多いかな。ミストルテインとかレーヴァテインとか』
「あー、あそこの連中かぁ…残ってるかな?」
『残ってるだろうけど…あんたは鎌に選ばれてるから他のは持てないわよ?』
「むぐっ…」
『それらの使い手に切ってもらうってのならアリだろうけど…
呪具だけ切ってくれる親切なのが居るかしらねぇ』
「あー…まぁ微妙だなぁ…」
『…そういう事。あんたがそこまで他者を誘う体になってなければねぇ』
「好きでなった訳じゃねぇ!?エリが女神に戻ってそれらを入手するってのは?」
『神獣じゃなくなってあんたとの契約が切れたら、多分あたしも魅了されるわよ?』
「…ぬぅ、結局ダメか…良い案だと思ったんだが」
『時間は有り余ってるんだから、いつか良い方法も見つかるわよ』
「はぁ…そうだな。そういや疑問なんだが、何で神は人間に存在を明かさないんだ?」
『んー、神は信仰心を糧にするってのは言ったわね?
人間の前で実際に神として姿を顕して力を振るうとね、信仰心って腐るのよ』
「…腐るのかよ」
『まぁわかりやすく言うとね。純度が落ちるってか味が落ちるってか…
祈りとゆーより願望になっちゃってね。
現物が目の前にあるせいなのか、現世的、即物的、俗物的になりやすいのよ。
で、それじゃ糧にならないって神代の時代にわかってからは、
人間の前には姿を出さない様にしてるって訳』
「宝くじみたいなもんか」
『ほほぅ、その心は?』
「もし三億当たったらって夢が膨らむだろ?
でももし、実際当たったとしたら先に欲望が膨れ上がるだろ。
でもってその金で丸々遊んで暮らしたりしてみろよ。
あっという間に人間腐るぜ。現物は無い方が綺麗な夢が見られるんじゃね?」
『何かちょっと違う気もしなくもないけど確かにそんな感じね』
「ま、とりあえず各地を回りながら散った首飾りの情報を集めるか」
『そうね。人にしろ神にしろアレを持たれると厄介な事になるわね。
あんた達ありがとね。後はあたし達で何とかするわ』
「あー…そうねー。がんばってねー…」
「アタシ達は休暇を満喫させてもらうから…(欲しかったなぁアレ…)」
『あんた達…何か良からぬ事考えてない?』
「「ソンナコトナイワヨ」」
妙に棒読みな台詞を残してエリの姉妹達が消える。
俺はふと、手にした大鎌をしげしげと眺める。
初めてこれを手にした時の事を何となく思い出したからだ。
「なぁエリ…俺の知識が正しいなら、これ農耕神クロノスが使った奴だよな?」
『そうだけど』
「ウラヌスのナニ切り落としたんだよな?」
『その時の血からあたし達が生まれてるわね。
だから元々親和性は高いのよ。その体は特に相性良いみたいね』
「…俺に相応しいって、その意味だけじゃないよな?
男じゃなくなった者って意味も込めてなかったか?」
『てへっ』
「笑って誤魔化すな!」
『あたしから見たら体奪われる羽目になったのよ?
ちょっと嫌味の一つ位言いたくなったって仕方ないじゃない』
「…まぁ今更な話なんだけどな。別に許さんって言ってる訳でもない」
『ありがと…って、お礼を言うのも変ね。
うちの身内が迷惑かけてごめんねって言うのも今更だし…』
「エリが色々犠牲を払ってまで俺によくしてくれてるの位わかってるさ。
だから、こんな時に言う台詞は…これからもよろしく、でいいんじゃね?」
『くすっ、そうね。引き続きよろしくね。楸』
「あぁ、頼りにしてるぜ。相棒」


エピローグ

その日、宇宙から怪獣が飛来した。
「どーいうこったよこれは!?」
俺の…自分で言うのもどうかと思うが、可愛らしく細く高い声が響く。
広域にそんな事実は無かったとする記憶操作の神力を展開し、
また極力被害を少なくする為に、埼玉の採石場…は、冗談だが。
ともかく人気の無い場所に怪獣を転移させ、戦いながらエリを問い詰める。
『宇宙は広いからねぇ。
別の星系を支配する神に類する存在が戦争を仕掛けてくる事もあるんじゃない?』
「他人事みたいに言ってんじゃねぇ!?あぁ、折角の隠遁生活がぶち壊しじゃねぇか」
『迎撃出来るだけの戦闘力を有する神々の殆どをあんたがぶっ殺すからでしょ。
…それにあれは隠遁生活とは言わない。引き籠りニート生活って言うのよ』
「うるせ。何にも邪魔されずにMMOに没頭するのが社会人になって以来の夢だったんだよ」
それにあれは正当だったとお前らも認めたじゃないか」
『随分ちゃっちい夢ねぇ…ともあれ、こんな事態は流石に予測してなかったからねぇ』
「神殺しもへし折れたし…どういう構造してやがんだよあいつ」
『霊的要素を受け付けない程強固な物理的要素で構成されてるっぽいわね』
「もしそうなら戦神がなんぼ居ても物の役にも立たんって事じゃないのか?」
『そうねぇ…仕方ない。使いたくなかったけど…最終奥義を使うわ』
「どんな技なんだよ?」
『やる事は変わらないわ。ただ規模を桁違いに大きくして、
この惑星全体から力を集めて一点集中で神殺しを更に強固に再構成するだけよ。
向こうが霊的要素を受け付けない超物理だって言うなら、
こっちは物理要素を超越した超霊的要素で勝負よ!』
「何で使いたくないんだ?」
『使った後、何年かしたらギャ○スが大量発生するかも知れないのよ』
「うぉい、○極超烈火球なんて平成ガ○ラの2と3を見てないと分からんネタ使うなよ。
しかも作中では技名も出てないからわざわざ調べないと分からないんだぞ」
『敵が宇宙怪獣だから適切な表現でしょ…それより、わざわざ調べたんだ?』
「さ、さて…キオクニゴザイマセン」
『数年後の脅威を気にして今滅びる訳にもいかないでしょ』
「まぁそだな。やるか」

…今、俺達はそんな人智の及ばない事件を解決しながら現実世界を流離い過ごしている。
『引き篭もりニート生活の癖にカッコつけちゃって…』
こほん、羽猫の戯言は放置して…
『ハネコ言うな!あんたから離れてもあたしはいいのよ!?困るのはあんただけなんだから』
「ヒキコモニート呼ばわりするからだ!
そもそもお前らの神族の陰謀に巻き込まれたからこうなってるんだけどな?」
『…やっぱ、不毛よね』
「そーだなー」
俺は、他のどの神よりも高い神力を持ってはいる。
…が、俺自身にはその力は使えない。
エリと、今は居ない首飾りの所持者だけが、俺の力を扱える。
エリと組めば最強クラスだが、俺一人だと神として最弱…
どころか、見た目通りの人間の小娘と同等か、それ以下。
何とも極端な存在になってしまった。
しかも、俺を縛る術式が消えた訳じゃない。
首飾りは砕けたが、やがてどこかで再生する。
首飾りを持つ者が現れたら、俺は俺の意思に関わらずそいつに従属してしまう。
そして、所持者は人であれ神であれ、この肉体に狂う可能性が高い。
色んな意味で。ソレこそ色方面から神力方面まで自由に出来るんだからな。
多分、真っ当な事に力を使ってはくれないだろう。
そうなると首飾りを破壊、或いは封印したい所ではあるが、
その意思を以て首飾りに触れると砕け散って世界中に散らばってしまう。
ドラ○ンボールみたいに個数が決まってりゃまだいいんだが、
無数の破片になって飛び散るもんだから手に負えない。
一回砕けば再生に数ヶ月数年かかるからひっきりなしって事はないが…
首飾りの所持者が現れる度に紆余曲折があって、
現在までの所は何とか所有権を破棄させる事に成功している。
手段はまぁ、色々。騙した事もあるし力尽くな時もある。
俺自身は所持者に逆らえないから主にエリが、だが。
しかもスペイズを弄んだ連中全てに復讐を果たした結果として、
世界中の神々の過半数を殺ったもんだから、
世界そのものの護りが弱くなったとかで宇宙怪獣まで飛来してくる始末。
神の国に行けば時間の流れが違うからのんびり出来るんだが、
神力を貯め込むと他者を魅了する特性が強化されてしまうからそうもいかない。
ただでさえ勝手に貯まっちまう体にされて、こまめに使わにゃならんってーのに。
かと言って神力振るいまくるのも世界のバランスを崩す原因になりかねないし。
ってな訳で、前途は多難、先行きは不安いっぱいである。

かつて俺がおっさんだった頃、
日常に膿みながらあくせく働いていた日々と比べれば刺激的と言えなくはない。
…ちなみに人間としての俺は現在絶賛行方不明中だ。
天涯孤独だったから悲しむ家族も居ないし、それは別に構わないんだが。
職場の同僚とか友人まわりには迷惑を掛けちまったから、
エリに頼んで神力を使って貰って運気が良くなる様に仕向けといた。
ちょっとした罪滅ぼしみたいなもんだ。自己満足だけどな。
まぁ、そんな訳で、俺は一応元気?に過ごしている。
あ、ひとつ忠告だ。道端で綺麗な首飾りを見つけても拾ったりすんなよ?
ちょっとの間だけはいい気になれるだろうけどな。
まぢで天下だって取れるぜ。今の俺を隷属させるって事は。
けどそれもエリを出し抜けたら、だけどな。
伊達に長生きしてねぇから簡単じゃねーぜ。当然俺も出来る限り反抗するし。
そいで散々な目に合わされる事になるからな。
それでも俺を求めるってんなら止めない。
力を渇望する奴の元で復元する率が高いみたいだからな。
頑張ってみるのもいいんじゃねーか?
くどい様だが当事者としてはやめとけと言っておくけどなー。

END
3章を書き足してからにしようかと思ったのですが色々あって挫折orz
Nonexistent
0.7110簡易評価
39.無評価きよひこ
GJ 気長に待ちます
40.100きよひこ
点数忘れ
43.100きよひこ
GJ
45.100きよひこ
GJくすくすくす.....
74.100きよひこ
読んでみましたがイイッ!ていうかGJ
微妙に画像がどんなの貼ってたのか気になりまするできれば再うpを希望したいです

3章期待してますね