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朱鬼蒼鬼 淫行三昧

2011/07/04 14:58:57
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さて、ここはアダルトTSF支援所だという。
クゥが言ってたが俺にはサッパリだ、よく解らない。…というかメタ視点を習得すると正気度が減りそうなので解りたくない。
しかし思いをはせると、アダルト。18歳未満お断り。大人な雰囲気。
そういった単語が頭をよぎるわけで…。
そして俺は大人だ。社会的にも、肉体的にも。
肉体で物を言うと年齢3ケタの老齢に行くわけだが、人間と同じではないので適応するべきではない。
細かいことを打っ遣っても、俺はまだまだ20歳。元気も性欲も有り余ってるわけで…。
まぁ、あんだ。今回は俺達がやってるアダルトなことを話していこうと思う。


壱談目 蒼鬼と朱鬼の場合



「ぬふふははは…」
あぁ全く朱那め、また人の酒を横取りして悪酔いしやがった。
「んっ…! ぷはー!」
「おーい、お銚子返せー」
「断るっ。もはや貴様は徳利から酒を飲ませんっ」
俺に死ねと。
いや正確には死ぬわけがないのだが、鬼の嗜みとして行う晩酌を取り上げられていい気は全くしない。
「じゃあ俺はどうやって飲むんだよ。そこから出さないと飲めないじゃないか」
「大丈夫だ問題ない。方法なら…、ほぉれ」
おぉ、胸に垂らして身体を伝って…、三角地帯に溜めやがった。
「あすなに聞いたのだが、わかめ酒と言うらしいぞ。ここからなら飲むことを許すっ」
変な入れ知恵しやがって。
あぁでもな、わかめ酒か。ちょっと気が引けるが飲みたいな。酒が欲しい。
酒が欲しい、酒が、酒、酒、酒酒酒酒酒酒酒。
仕方ない、この欲求を満たすためにも。存分にいただくとしよう。
「それじゃあ遠慮なくいただくとしようかな」
湯船から立ち上がり裸身を外気に晒す。
最初に酒がかかった胸にむしゃぶりつき、肌に付いた酒を舐めとっていく。
「ひゃっ、こら蒼火っ、いきなりそこは…っ! ふふ、酒が欲しくてたまらんか?」
朱那の声は無視して胸を啄ばみ、皮膚の隙間に入った分さえ舐め取らん勢いで吸っていく。
胸を舐めきった後、三角地帯へと向けて皮膚を舌でなぞっていく。
当然通過地点も酒の通った道であり、そこ以外を舐める気は現状無い。
臍を通り過ぎると、脚をぴったりと閉じて溜まっている珠玉の池に到達した。
「…ほぉれ蒼火、早く飲むがいい」
追加で頼んでおいた徳利から、酒が足されて池が水かさを増した。
朱那の女陰に生えている陰毛が、酒溜りの中でゆらゆらと揺れている。
「……ど、どうしたのだ?」
だが俺は動かない。じっとそれを見ている。
酒は何も口から飲むだけが方法じゃない。粘膜と接触しているとアルコールの吸収がとても早いのだ。
「は、早く、しろ…っ、我慢、できん…っ」
もじもじしだし、太ももを擦り合わせている朱那のそこを見る。
ほんの少しだけ酒とは別の、汗とも違う雫がわかめ酒に交じり始めている様子だ。
「んっ、ふぅん…っ。何をしておるのだ…っ、蒼火、ぁ…っ」
どう見ても朱那は感じ始めている。アルコールすげぇ。
水気で皮膚がふやけるように、女陰の口が開き始めているのをじっとこらえて観察中。
「はっ、は、んっぅ…!」
太ももの締め付けが緩んだと思しき刹那。酒が零れ落ちる前に顔をそこに寄せ、思い切り吸った。飲んだ。いただいた。
酒と同時に朱那の愛液、その全てを口中に含んで、舌の上で味わう。
だがこれだけでは終わらない。
「はぅ、ようやく飲んだか…っ、ぬわっ!?」
気が緩んでいた朱那の脚を開いて、女陰に口をつける。
唇を突き出して中に差し入れ、さらに朱那の中へと含んだ酒を流し込んだ。
「ふひゃぁぁっ!?」
直接粘膜に叩きつけられるアルコールに大声を上げるが、無視。
注ぎこんだ酒を、さらに愛液で嵩増しして飲み込む。
「んぐ、ごきゅ、ぢゅるっ」
そのまま愛液を単品でいただく為に、クンニリングスを開始する。
酒でふやけた女陰はすっかりと開かれており、舌を突っ込んでかき回せばそれだけで涎を零してきて。
「ひゃうっ! はっ、ひゃっ、そ、そう、かぁあんっ!?」
それを美味しくいただきながら、最後のものを貰うためにクリトリスに歯を立てる。
軽く噛み、舌で舐め、吸うと、
「ひゃっ、ふぁ、はぁぁぁぁ…っ!?」
達して吹き上がった潮を飲み干し、ようやく口を離す。
男の時より細く滑らかになった口で、じゅるり、と舌なめずり。
「うまかったぜ、朱那」
行為に興奮しないわけが無く、俺の乳房と乳首も張り詰め、ほんのり下は濡れていた。
その後は当然、湯船の中で百合コース。
もうちょっとまともに風呂に入りたかったな、という考えは、女湯では達成されるはずが無かった。


弐談目 蒼鬼と罪人の場合

「正直辛抱たまらねぇんだ」
とかいきなり、安斎に切り出された。
夜の仕事が終って寝ようと思ったら、俺の布団にもぐりこんで来たのだ。
「忌乃さんの肢体がたまらないんです。最近ずっとそっちだろ?」
いやまぁ確かに、最近はずっと女の姿で居るわけだが。
水商売のヘルプという仕事を受けてる都合上、こっちの姿で居続けないと“女性”の感覚を忘れてしまいそうなんだ。
「私の体は少女のだけど、俺の自意識はまだ男のもあるんだよ。たまらないんですよ、抱きてぇんだよ。心のチンポがビンビンなんですよ」
「そんなに扇情的な格好してたか? してなかったと思うんだけど…」
「してるよ、してますよ。ネグリジェ姿が好みでな、どうしても気になっちゃうんですよ」
そうだったのか。知らなかった。
「それで…、安斎は俺の体を抱きたいんだよな?」
「あぁ」
首の動きもあわせて、力強く頷かれた。
これは引く気がないと察し、軽く頭をひと掻き。
「はぁ…、仕方ねぇな。おいで…?」
両手を広げて迎え入れるポーズをとると、待ってましたといわんばかりに飛び込んできた。
顔が胸の谷間に入り込み、ぐりぐりとこすり付けてくる。
この構図だけを見ていると、年上の女性に甘える妹のように見えなくもないが…。
「んぅ、はぁ…。やっぱりやわらけぇ…」
挙動が性的なそれだというと、やっぱりそうとは見えないわけだ。
胸の合間に顔を突っ込んで、左右から来る柔らかさを堪能しているわけで。
「む、んむ…!」
面白そうだったので左右から胸を押して、顔を圧迫してみた。
確かこれ、“ぱふぱふ”だったよな。言葉の初出はどこだったか。
「ほーれほれ、どうだー?」
「むっ」
苦しそうな嬉しそうな声と共に、胸元にかかってくる息がこそばゆい。
なんとなく気持ち良いが、やりすぎると安斎が窒息しかねないので手を離して行為を止める。
「ぷはぁ…っ。苦しかったです…」
やっぱり。ちょっとやりすぎてたかな?
「わり、胸に顔突っ込まれたらやってみたくなっちまって」
「良いよ、気持ちよかったですし。もっとしても良いか?」
「ここで拒否するってのも悪いしな。…どこでも良いぞ」
安斎を変な気分にさせたのは確かだし、胸の圧迫で辛そうにさせてしまったのも確かなので、拒否するわけにはいかないのだ。
ネグリジェに隠された胸元や太ももを軽く晒して、誘いをかけてみる。
「どこでもだな? それじゃあここに失礼しますっ」
そういって飛び掛ってきたのは太もも部分。先ほどと同じく顔を押し付けてすりすりしてくる。
「なぁ安斎…、太もも、好きなのか?」
「スラッとした太ももが好きなんだ。忌乃さんの太ももは特にすべすべしてて至高の肌触りですもの」
「地獄で膝枕した影響かねぇ…?」
「それがあるかもしんねぇな」
意識が無い時での体験も記憶にある、というのは不思議だな。
人体の不思議に思いをはせてると、ふと股間に息が当たったのを感じる。
視線をそちらに向けると、安斎が今度は太ももの間に顔を突っ込んでいた。
「なぁ忌乃、おっぱいも良いけどこっちも見せてくださいよー」
「いきなりだなー…。ムードとか無いの…?」
「そんなの後々。今は忌乃さんの身体を探るのに忙しいんですっ」
がっついてるなぁ、安斎は。
40男(元)の性欲に呆れつつ、脚を開いてショーツを見せてみる。
寝る時用の真っ白な、色気の少ないものだが、色素の薄さとあいまってちょうどいい感じに見えてくる。
「はぁ…、はぁ…っ」
「おーい、息荒いぞ…?」
仄かに熱を帯びた息が当てられて、少しだけむずがゆくなってくる。変な気分になりそうだが、抱かれるからにはならなければ意味が無い。
ということで、ショーツの前をずらして秘所を露出させてみた。
「うぁ…、パイパンだ…っ」
言うな、言わないでくれ。
しかしこう、なんだなぁ。真正面から秘所を見られてくると、何度もシている訳だがやっぱり気恥ずかしい…。
「おぉ…っ、濡れてきてます…」
濡れてるのか、そうなのか。
感覚をそちらに集中させると、なるほど確かに、秘所から漏れる愛液の感触がする。
それと同時に、濡れてると自認すれば恥ずかしさが増し、ひゃっ!
「中も綺麗なピンク色だ…。おいしそうですよ忌乃さんっ、はむっ」
割り開かれて中を見られ、直後に吸い付かれる。
いきなりのことなので感じるより驚く方が大きいが、それでも止まらず、安斎の舌が中に入ってくる。
「ふむ、んっ、はふ…っ」
「んっ、はぁ…、中、舐められて…っ」
小さい舌で舐められて、少しもどかしくなりながら。性器を弄られて確かに感じ始めている。
男としての経験に裏打ちされた、大きくない道具での行為。
それでも確かに女を高みに、緩慢ながら押し上げていく。
「は、ぁ…。なぁ、安斎…?」
「…?」
ふと思って声をかけると、不思議そうに見上げてくる。
太ももの間から除いてくる顔は、小さな疑問の表情に彩られていた。
「俺だけ気持ち良いのも悪いから…、一緒に舐めよう?」
「…いいのか? 私も気持ちよくなって良いの?」
「1人だけっていうのが嫌なんだよ。…ほら、おいで」
先ほどと同じ言葉で、安斎を受け入れる姿勢を見せて。
幼い下半身を露出させた安斎が、こちらに秘所を向けてきた。
「ふふ、可愛いなぁ。まだ誰にもされてないだろ?」
「くぅ…、それはそうですけど、男とするのは恐くて、ふわぁっ!」
先ほどされたときと同じように、突然口をつける。
まだ濡れていないはずのそこは、未成熟が持ついけない魅力に満ちている。
「んぅ…っ、…っ」
舌を突き入れると、ぴったりと閉じた秘所が侵入を防いでくる。
こりゃ肉棒を入れるのは無理だな、と思いながら、入り口付近を入念に舐め続け。
「ちゅ、んむ、はむ…っ」
「ひぁ…っ、“俺”が恐がって、皮のときとぜんぜんちが、はふぁ…!」
皮のときとは感覚が違う、というのは当たり前だろう。
皮は借り物で、今回は正真正銘自分の肉体。感じ方が違って当然であり、これが安斎の感じ方なのだ。
まぁもっとも、成長してない性器ではティーンエイジのようにはいかないのだが。
「くそぉ、お返しです!」
「んぅ…っ?」
しかし脳は経験済みのためか、少ししたら反撃の手をさしてきた。
明らかに口だけでは届かない秘所へ、今度は手も交えて。
「ん…っ、ぴちゅ、ちゅ…っ」
「れる、はぅ…っ、んふぁ…!」
女同士の喘ぎ声が続く中、少しだけ違和感を感じる。
安斎の矯正はやや少なく、俺を責めてる意思を持った息のほうが多いのだ。
「なぁ安斎…、やっぱあんまり感じないか?」
「え…? 確かにちょっと物足りない気もしますけど、時間はかかりそうだけどイケるイケる」
「とはいってもなぁ…っ、あっ、ちょ、ちょっと待った」
制止の声を投げかけ、安斎を引き剥がして部屋の片隅に置いた薬箱へ手を伸ばす。
「確かここに…」
一番下の段にある引き出しを抜ききって、その下へと隠してある隙間に手を伸ばす。
取り出したのは2cm程度の丸薬。見た目的には飴玉に近いが、とても柔らかい感触がする。
「これ飲んで。そうすると、ちゃんと俺を抱けるよ」
「これは? まさか男になる薬とかですか?」
「秘文書が足りないから完全じゃないんだ。一時を限定的に性別を反転させる、っていう薬だよ」
「…危険性は?」
「ないない。効果を限定的にしてる代わりに、毒性を消してるんだから」
自分が受けた影響で疑り深くなった安斎をなんとか説得し、丸薬を飲み込んでもらう。
効果は直ぐに現れた。
「くぉ…っ! なにぃ、またぐらがいきり勃つ…っ、おちんぽ勃っちゃう…!」
安斎のクリトリスが、まるで高速再生される画像のように、起き上がり、膨れ、伸びる。
先端にカリ首が形成されて、内部にまで欠陥が走り皮膚の膜ができる。
それだけではなく、性感の高ぶりによって、それは子供のそれとは言えないほどに隆々と、大人のものとして勃起した。
「すげぇ…、私の身体にこんなのが…。なんか前のよりデカいような…? ひゃっ!」
呆けている様子を見つつ、具合を確かめるためにちょっと触れてみる。
…うん、これなら挿れても問題ないな。
「ほら、こっちに入れて良いよ…。さっきから欲しくてたまらないんだ…」
ねだって、秘所を割り開いて見せつける。
とろりと漏れる愛液が涎のように端から毀れ、尻へと渡る。
「…良いんだな? 挿れますよ忌乃さん…、お前のまんこに、私のおちんぽ…!」
「あぁ…、おいで…」
正常位で熱い欲望の塊を押し付けられる。お互いに経験はあるわけで、挿入はスムーズに行われた。
「ふぁ…っ! は、ひぃ…っ!」
「んふぅ…っ」
やっぱりこれ、子供の大きさじゃない…。
子宮口まで届くかもしれないサイズに、俺の膣も確かに悦んでいる。
「久しぶりだ…っ、こんなに温かいの初めてぇ…。まんこ気持ちいい…、おちんぽ良い…っ!」
男としては久しぶりの、女の意識は初めての挿入に、安斎の腰は動き始めていく。
乱暴だけれど、どこか膣壁を抉るような動きで、ぐちゅぐちゅと。
「はっ、はぁ…っ、んぅ、そこ、良い…っ」
「すげぇ…、すごい…っ、えろい顔してる、忌乃さんえっちぃ…っ!」
シックスナイン中では見えなかったろうこちらの表情を見て、安斎は嬉しそうだ。
正直に言うと俺も嬉しい。嬉しくて、胎内が精液を搾り取ろうとして喘いでくるからだ。
「気持ちいいんだな、おちんぽ良いんですね…っ。お前のまんこ、さっきから締め付けてくるんですもん…!」
腰を叩きつけられる。欲望のままに腰を振りたくる少女の顔は、確かに男のそれに近い。
抽送で体が揺らされるたびに、胸もふるふると揺れる。
「へへ、忌乃さんのおっぱい…♪」
「ふひゃ…っ!」
胸を吸われ、乳首を口の中でいじくられる。
セックスで上り詰めかけていた肉体が、それを契機としてさらに上がっていく。
「お…! 先っぽ当たる! 子宮に当たってるぜ…!」
「んっ、は…っ、はぁん…っ! 奥、届く…っ!」
降りてきた子宮口を叩かれ、限界が近い。もう、これは…。
「お、ふぅ…っ、イくぜ…、イきます…っ! 中にたっぷり、出しますよ…!」
「あぁ…っ、きてっ、出して良い…! 思いっきり…!」
絶頂を察し、今まさに吐き出さんとしていた肉棒が、膨らんだ。
雄の本能のままに腰を突き出しきり、子宮口に当たったのが、契機となった。
「イく…っ、はぁぁぁっ、くふぅ…!」
「ん…っ、んふぅぅぅ…っ!」
胎内に白濁液を注がれ、安斎は男として、俺は女として、申し分なく達した。
頭の中は絶頂の余韻で満ちており、ふわふわと意識を揺らしている。
すると、いきなり胸に安斎の頭が落ちてきた。
「あれ、おい安斎…?」
「…………」
反応は無い。
いや正確に言うとするならば、動かないだけで。
「ぐぅ…、くぅ…」
寝ておりました。
さすがに肉体が子供だと、この深夜帯に動くのは無理があったか。
「しょうがねぇなぁ…。俺も疲れたし、このまま寝ようかな…」
後処理はせず、子宮に安斎が吐き出した子種汁の温かさを感じたまま布団に入り込んだ。
ちなみにまだ俺の中には挿入されたままであり、栓をするかのように勃起している。
落ち着いてくれるまではこのままでいこう。俺1人だけ気持ちよくなるのも悪いからな…。
あ、そうそう。行為から一晩たった後の布団は、漏れた精液でガビガビでした。
うひー、洗うの手間かかるー。


参談目 蒼鬼と狗神の場合

「んむ、はむ…っ、はぁ…っ」
仕事も入ってない昼下がり。適度に乾いた洗濯物を取り込み終えて、いざ夕飯の準備まで何をしてようかと悩んでる時間帯。
そろそろスーパーに出掛けて必要なものでも買ってこようかと思い始める頃合だが…、
「はぁ、むちゅ…っ、ちゅむ…っ」
何故かあすなが息を荒げて、しかも素っ裸で俺のペニスをしゃぶってる。
止めようと声をかけても身体をゆすっても、全く止めようとしない。
「はっ、はぁ、はぅ…っ」
ついでに言うと人語を喋ってくれやしない。その挙動はまるで、骨にかじりつきしゃぶりつく犬のそれだ。
「ぁう…っ、く…っ!」
「はぁ…っ。まむっ、んむっ、もぅっ、はむ…っ」
少し甘噛みをされてしまい、刺激を受け続けてたペニスはそれで射精してしまう。
咥えて飲み干し、軽く飛び散った分さえ舐め取った後も、萎えてないと見るや否やフェラチオを続けだす。
まったく、厄介なことをしてくれたよ…。

時間はちょっと前に遡る。
洗濯物を取り込んでる最中、あすなが蔵の方から小さな桐の箱を持ってきたのだ。
「蒼火さん蒼火さん、この箱なんですけど…。封印の呪符が剥がれかけてますよ?」
「ホントだ。そろそろ張り直しておかないとマズいな」
「…一応封印されてるのは見て解るんですけど、何が入ってるんです?」
「それはなぁ…。紀元前のものなんだが、元は犬の霊なんだ」
「ほぅ」
あ、少しだけ目の色が変わった。
「世にも奇妙な色狂いの犬でさ。輪廻の輪に突っ込んでも、犯持戒人で大焦熱地獄に落とされても変わりそうにないってんで封印したんだ」
「なんでまた?」
「その符の力で、霊が持つ淫気を放出させ、浄化して外に出さないといけないほど、周りに影響を与えるんだよ。
具体的には放置すれば周辺の人物全員がホテルに入って延長する位?」
「それはまた、強力なものですねぇ…」
「だから封印して、徐々に弱らせて行くしかないんだ。ちゃんと輪廻の輪に乗せられるようにな」
「この霊も大変ですねぇ…」
と言いつつも、その場はそれで終わった。
件の箱は、洗濯物が終った後で再封印するために俺の部屋へ持っていくように指示して。

さて洗濯物取り込み終了後。
畳んで揃えて箪笥に仕舞おうとした瞬間、むわっと。そう、むわっとした淫気が溢れてきた。
「んがっ!? あのバカ…っ!」
脳を蕩けさせるような、官能弛緩吐息のように濃密な気配に思考を持っていかれかけるも、気合を込めて意識を戻す。
慌てて封印の符を貼り付けるために自室へ行くと、
「はっはっはっはっは…っ!」
あすなが、見事に犬化しておりました。
耳や尻尾が生えてるわけではないのだが、挙動は完全に犬のそれだ。
「わぅーんっ♪」
俺の姿を見るや否や突っ込み、股座に顔を寄せて頬擦りしてきやがる。
濃密過ぎる淫気に当てられてただの雌犬と化したあすなに押し倒されるのは、その10秒後だった。
そこから先はさもありなん、慣れた手つきでペニスを露出させられ、強制的に舐められ、勃起させられる。
しかもそれを見て目を輝かせた上で舐めてくるわけだから、淫気の程は推し量ってくれ。
ついでに言うと、周囲からたくさん盛った動物達が上げる交配の声も聞こえてきた訳で。だいぶ早い春の季節が到来していた。
まぁ、ちゃんと封印の札は張ったので、これ以上の流出は防いだ訳だけど。

そういうわけで現在に戻る。
あすなが何度もしゃぶりつつも、全く満足してないようで。かれこれ10回目の飲精をしても止まらない。
鬼の俺が絶倫で助かってるわけだが、これ以上しゃぶられるとペニスがふやける。というかもうふやけてる。
「これ以上はちょっと待て、あすな…!」
「きゃんっ! くぅん、くぅん…!」
押し留めてペニスから顔を離すと、途端に切なげな声をあげてくる。
挙動から何から犬だろ、この現状は。しょうがない。
「あすな、お座り!」
「わんっ!」
座った。一発で座りやがった。
さすがに元犬神使い、犬の挙動を知り尽くしてるが故に、その動きをマスターしてやがる。
とは言えど、
「きゅーんきゅーん…っ」
その視線は俺のペニスと、そして俺の顔を交互に見つめてくる。おあずけが辛いのか、よしを今か今かと待ちわびているようだ。
こいつはちゃんと満足させないとダメだ…。というかどれだけすれば満足するんだか…。
とりあえず薬棚から取り出した、この即効性の避妊薬を飲ませて、と。
「よしあすな、あーん。……よし、伏せっ!」
号令をかけるとやっぱり伏せた。行動の全てが犬と化している状態は、ある意味で助かる。
「よーしよしよし、そのまま、そのままな…?」
切なげな視線を向けられつつも、ゆっくりとあすなの背後へ回る。
完全に後に行くと、大きなお尻と、大洪水になってるヴァギナが見える。
もう女の匂いで溢れかえっているお尻を掴み、高く持ち上げて、
「行くぞ?」
とだけ声をかけ、後背位で一気にヴァギナへと挿し込んだ。
「きゃうぅぅんっ!」
嬉しそうな声をあげて、侵入者であるペニスを責めるように膣壁が蠢いている。
あすなの中は知っているつもりだが、それとはまた違った感触が、今のヴァギナからやってきてる。
まるで受精をする為だけに、そこが進化したかのような。
「ぁ、うく…っ。マジか、あの淫気がここまで…?」
「きゅぅんっ、きゃんっ、わぅんっ♪」
「仕方ねぇ…、付き合ってやる…!」
驚きつつも、喜んで腰を振りたくるエロ犬あすなの行動に負けないよう、あすなの腰を掴んで、俺も抽送を始めた。

「はっ、ふぅ…っ! っく、出すぞ!」
「きゅぅんっ、くぅんっ♪」
そうして何度目かの膣内射精をするも、エロ犬あすなは嬉々としてそれを受け止めている。
外に出すのを許してくれないあすなの膣は、その精液のほとんどを子宮で受け、腹を膨らませている。
自分で出しておいて言うのもなんだが、普通の人間相手なら確実に妊娠してるだろうという量だ。
「はっはっはっは…っ、わんっ!」
だと言うのにインターバル無しで続きをねだってくるこのエロ犬は。
ちょっとだけ、立ててはいけないムカっ腹が立ってきた。
「…このエロ犬が。ちょっとは満足とか覚えろっ!」
とても手加減してはいるが、ぴしゃり、とお尻を叩く。
「きゃいんっ!」
鳴き声が悲鳴のそれに近かったので、わかってくれたかなと思う。
2発目はあすなの行動を待ってからで…。
「…くぅん、くぅん」
さらに腰を動かしてきた。こいつぜんぜんわかってねぇ。
「こら、あすなっ」
ぴしゃり。
「きゃいんっ!」
止めようとして怒っても、変わらず動かしてくるこのエロ犬を叩くこと数回。
白くも上気していた尻は、それとはまったく別の理由で赤くなっている。
正確に言うと、腫れていた。
「……叩きすぎたかな」
とは言うものの、やっぱりあすなの動きは止まらない。
「だーかーらーっ、止まれってば!」
ぴしゃり。
「きゃうぅぅんっ♪」
……あれ? なんだか声に艶が入ってきたぞ。
しかも続きをねだるように、腰を左右に振って…。
試しに一発、ぴしゃり。
「きゅうぅぅんっ♪」
「悦んでるー!?」
まさかここまで酷いとは。封印され続けてた淫気は生身の人間にこれだけの影響を及ぼすのか。
絶倫で淫乱なだけでなく、ドMと化したあすなを治めるのに、後どれだけかかるのか。
さすがに不安になってきたよ。

「ん…っ、ふ、はぁ…っ」
「くぅんっ、きゃん…っ♪ わぁんっ♪」
さらに数回、膣内射精を繰り返して。
既に入りきらない精液は、ヴァギナからあふれ出て床に溜まってる。
「ぴちゃぴちゃ、はぁっ、はぁっ」
それを舐めては、エロ犬はまた悦にいっている。
それと同時に尻を叩けば、
「きゃいぃんっ♪」
これまた悦ぶ。
もうどれだけ致してるんだか。すっかり日が落ちちゃったよ。
「…っく、出る!」
ぶびゅるっ、と言わんばかりにまた出す。
新しい精液を注ぎ込まれ、古い精液が出て行った。
「はぁ、はぁ…っ、…あれ?」
呼吸を整えると、ふと気付く。あすなの行動が止まっていた。
幸せそうな笑顔で精液の海に倒れこんでいる辺り、この野郎と思いつつ。
ようやく終わったことに安堵の溜息を吐くのだった。
何発射精したっけ、俺。
畳に精液染みこんじまってるから、全とっかえ決定だわこりゃ。



四談目 朱鬼と海賊の場合

「うぬぁ…っ、ぬかった!」
なんと言うことだ、これ以上の失態は無いぞ。
「アレが無ければ私は…、終わりだ!何が終わりかはあれこれ言わんが、とにかく終わりだ!」
事の起こりは学友との買い物中。カフェテラスで休憩中に、賊にハンドバッグを盗まれたのだ。
幸い学友のは無事だったのだが、それ以上に危険なのが、私の私物を覗かれることだ。
あの中には…、私の魔羅がある! この前あすなに勝手に使われたことで、他人でも使用できることが判明してしまったが為に、持っていかれては危険すぎる!
蒼火がいれば臭いですぐに追跡してもらうのだが、いない相手に頼るわけにはいかん。
魔羅が持つ気配を察し、どこにあるのかを探る。そう遠くはないと理解した私は、学友と別れ一人追跡を開始した。
「この近く…、ここだ!」
カフェテラスから僅かに30mほど離れ、しかし入り組んだ路地裏に魔羅の気配を察知し、そこへと向かう。
曲がった角の先で見たものは…
「よぉよぉいけねぇなぁ兄ちゃん? お前綺麗な手口でスっちまって」
紫髪の女が、私のバッグを持っている犯人と思しき男に因縁を吹っかけている。
「今なら見逃してやるよ。悪いこた言わねぇから寄越しな? ちゃんと俺が返してやっからさぁ」
前門の女、後門の私、という状況に気付いた男は逃げ出そうとするも、
「よっと」
紫髪の女は腕にかけていた帯を男の脚に見事絡め、転ばせた。
男の手から私のバッグが抜け落ち、宙に舞い…、
口が開いてたから中身が飛び出して…。
マズいっ!?
魔羅が飛び出る瞬間に確保しようと跳ぶも、紫髪の女が使う帯が一瞬早くそれを絡み取った。
「ほい確保、っと。……ん? 何だお前?」
そこでようやく俺に気付いた女は、こちらを見てくる。
飛び散った化粧道具が落ちて割れた。あぅぁ、それなりの値が張ったというのに…。
「あぁ…、その、なんだ。そのバッグは私のものなのだ…」
「…ホントか?」
「ホントだ、間違いない。…返してくれないか?」
「じゃあ中に何が入ってるのか教えてくれよ。それが合ってるかどうかで確かめるからさ」
うぐ…っ。
「それは少々…、その、なんだ。見られたくないものがあってな…」
「へぇ…。それじゃあますます見たくなってくるな」
「ぬぉわっ!?」
言うや否や即座に紫髪の女はバッグを覗き込み中身を探ろうと手を突っ込んでかき回す。
「お?」
いかん。
「…おぉ?」
やめろ…っ。
「……おぉぉぉ?」
それ以上探るな…!
「何だこれ? 触り心地も温度もチンポまんまじゃねぇか」
あぁ…、見つかった。もうダメだ…。
膝から力が抜け、「orz」の体勢になってしまう。
「なぁなぁ、これホントにお前のものなのか?
本物にしても妙に生あたたけぇし…、どうなってんだこりゃ?」
こちょこちょ触ってくる感覚が少しむず痒い。
「わ、勃起した? ますます興味がわいてきたぞ…」
これ以上見られるのも、触られるのも、精神的に多大な負荷がかかってくる。
かくなる上はこの女を張り倒してこの場から逃亡する…!たとえ魔羅が無くても、この身は既に鬼! ほんの少しでも撫でれば人は倒せる!
「貴様ぁっ、それを返せ「てりゃっ」ぅぉわっ!?」
が、飛びかかろうとした瞬間、女の持っていた帯に絡め取られる。
どうやって伸びたのか解らないが、私を簀巻きにして事足りるほどの長さになっている。
「だから、お前のものかって聞いてるんだよ。それを答えないで奪うなよ、つまんねぇだろ?」
「何だこれは…、力を込めても破れん…っ!」
「無理無理、物理的な力で切れるようなモンじゃねぇよ。
……で、お前のものなんだよな?」
わざと魔羅を見せて、芋虫状態の私に再度問いかけてくる女。これ以上の抵抗は出来ず…、
「あぁ…」
観念してうなずいてしまった。
「ほへー、すげぇモンもあるんだなぁ…。なぁ、これ貰っていいか?」
「なぬっ!? 呑めるわけ無かろうが!」
「何でだよ、これ見てると欲しくなってきちまったんだ」
「だからと言っておいそれと渡せるものか! それは私の魔羅だ!」
「まら? …あぁなるほど、チンポの古い言葉な」
女は勃起した魔羅を片手に少し悩んでいる。あぁもう、早くこれを解け。そして私に魔羅を返せ…! そうすれば楽に意識を飛ばしてやる…!
「よし、じゃあ交換条件だ」
「む…?」
良い事を思いついたとばかりに笑顔で私に、ある条件を持ち出してきた。
もしや…。
「これを俺に使わせてくれ。そうしたらお前に返してやるよ」
「なん、だと…?」
半ば想像できたことだとは言え、口に出されると恥ずかしくてたまらない。
脳内で悪い想像が流れ始めてくると、ふいに拘束が解かれた。
「悪いようにはしねぇって。単純に俺1人で愉しんでみたいんだしさ」
「…本当だろうな?」
「本当さ。アンジェ=V=ヴィレットの名で誓ってやるぜ」
にっかりと、女は人好きのする笑みを浮かべて、恐らく本音を吐露してきた。

さて、アンジェの言葉を受諾してやってきた先はラブホテル。
女同士で入っていくことに少し疑問を抱いた店員のことは気にしないで置こう。
目の前には、既に服を脱いで裸身を晒したアンジェがいて、その手には私の魔羅が握られている。
明らかに先ほどの帯の力などから、アンジェが人外の領域に踏み込んでいることは察しており、道すがら己の素性を話してしまっていた。
「先ほども言ったが、それは私の魔羅だ。
今までは自分だけしか使えんと思っていたのだが、誰でも使用が可能だとこの前知ってな…」
「へぇ、鬼のチンポとはねぇ。ミイラになってなくてよかったな? で、使い方は?」
「うむ…。でだ、単純に根元の方を股間に近づけろ。そうすればくっ付く」
「……おぉ、マジだ。すっげぇ」
私の誘導通りに接着すると、最初からそこにあったかのように、アンジェの恥部へと私の魔羅が聳え立っている。
先ほどまでは僅かに張っていた魔羅は、アンジェの腰に付くことで勢いを増した。
「…な、なんか、すっげぇムラムラしてきた…っ。健人のチンポでもこうはいかねぇってのに…」
「健人が誰かは知らんが、アンジェ、お前は男を知ってるか?」
「そりゃ、勿論…。なぁ、扱いてみていいか?」
「拒否する理由は無いだろう、見ていてやるから存分に扱け…」
溜息をつきつつ許可を出すと、嬉しそうな顔でアンジェは魔羅を扱き出した。
「おっ、おぉ…っ、こいつぁ…、すげぇな…っ」
私の魔羅と比べると、明らかにアンジェの手は小さい。その小さな、しかし女の手で触れられた魔羅が滾るのは自分で体験して良く知っている。
更に言うと、魔羅が元々の『俺』のものであったためか、こうして離れていても微妙に感覚が繋がっているのだ。
あすなに勝手に使われた時も、股間に発生した謎の疼きや放出感を、那々の家族の前で隠すのに必死だったわけで。
……あすなめ、団欒の時にせんでも良かろうに。
「はぁ、っは…! 俺のままで、チンポしごくなんて…。変な、感じ…」
自身に覚えがあるのか、一定の動作を行うのに慣れてるのか、アンジェは魔羅をしごき続けている。
臨戦態勢となったそれからは、たおやかな手から来る刺激に耐えかねて、鈴口からは先走りが染み出てきている。
「センズリ、すっげぇ良い…! 男のチンポがこんなに、いいなんて…。
あぁ畜生、健司もこんなに良かったのかよ…! 羨ましいなぁ畜生め…っ!」
「……っ」
男の名前を呟きながら、なおも扱く手を止めず、同時にその速度が増していく。
色狂いのように男の刺激を受けて止まらないアンジェと、魔羅から僅かに通ってくる刺激とで、私の“ほと”も濡れ始めていた。
「チンポだもんな…、女の中に入るんだよな…! 手だけでこんなに良いんだし、きっと気持ち良いんだよな…!
やべぇ、してみてぇ…! 健司の中に出してみてぇ、つっこんで、中に出してみてぇ…!」
アンジェの口から出てくる言葉は耳に入らない。ただ魔羅を扱く音と、その手に巻き込まれる先走りの、僅かに粘りを含んだ水音が室内にこだまする。
先走りと、その中へ僅かに含まれる精液の臭いとで、私の頭も僅かに蕩けてしまっていた。
「は、はっ、はふ…! 何か来る、昇ってくる…! ザーメンか? 俺からザーメン出ちまうのか…っ?」
絶頂が近いのだと示すような声も耳に入らず、四つん這いになってアンジェのそこへと近付いていき…。
「あぁダメだ、あぁ畜生っ、まだイきたくねぇのに、我慢してぇのに…っ、出ちまいそう「あむ」ひぅわっ!?」
目の前で自慰を繰り返している『男』の魔羅を、咥え込んだ。
「じゅ、ぢゅるっ、んぢゅるる…っ」
「やぁバカやめろっ、せっかく、せっかく溜めてたのにぃっ、口がぁっ良いのぉぉっ!
ダメっ、出るっ、出ちまうっ! 白いのびゅーって! ザーメンびゅーって! んぅ、んはあぁぁぁっ!」
口内で膨れ上がり、魔羅が勢い良く射精する。
堰を切ったようにあふれ出す私の精液を、久方ぶりに飲み込んでいく。
「んぐ、んむ…っ、ごく、ごく…っ、ぢゅる…っ」
「ん、ぁっ! 吸われて、飲まれてる…っ! ザーメンごくごくって、音立てて飲まれてる…!
はぁ、はぁぁ…っ!」
「じゅる、んぐ…、ぷは…」
喉に絡みつく、粘り気のある白濁液を飲み干してからようやく口を離す。
…何だろう、この感覚は。前は気兼ねなく飲めていたのに、今では…、もっと美味い精液があるような…。
「ふぁー…、……すっげぇ…。海賊やってたのがバカらしく思えてくる…」
目の前ではアンジェが賢者タイムに突入している。先ほどからこいつの言葉はどこかがおかしいのだが、まぁ、まぁ。
「ん、けふ…。…どうだ、使ってみた感想は? 満足したか?」
「え? あー、あぁ…、そのことね…」
ぼぅとしていた目の焦点が次第に合ってきて。
にんまりとした笑顔でアンジェは私に告げてきた。
「これだけで満足できる訳ねぇじゃん」
「なぬ…っ!?」
「チンポがこんなに良いもんだとは知らなかったし、それに俺だって女なんだ。
ぶち込まれることも、ザーメンを中に出されることも知ってるんだぜ」
返すものか、まだ満足していないぞ、と誇示するようにアンジェの腰についた魔羅が再び勃起をしている。
先ほど出した精液と、さらに染み出す先走りが覗き、陰茎を垂れ落ちてくる。
「それをしてる奴がどんなに気持ちよかったか、ってのは今知ったが…。足りねぇな。
そう、足りねぇんだ。まだ俺はチンポの本当の使い方を知ってねぇ。だからまだ返せねぇよ」
「つまり、つまりだ。…貴様はそれを女の“ほと”に突っ込ませろと、そう言うのだな?」
「“ほと”が何かは知らねぇが、マンコだってんなら大正解だ。
なぁ良いだろ? さっきだってザーメン飲んだんだし、お前も嫌いじゃねぇんだろ?」
先ほどのフェラチオをしていた位置関係上、アンジェの真正面にいた私は肩を思い切りつかまれる。
獲物を逃がすものか、と言わんばかりの力の篭りようで、僅かに痛みを感じて…。
「く…、もう一度確認させてもらうぞ。それが出来たのなら、私に魔羅を返すのだな?」
「あぁ、このホテルを出る頃にはきちんと返すぜ」
と、臆面もなく言ってくれたので。
「……仕方あるまい。ならば抱いても構わんぞ」
抱かれることを、許容した。

洋服を脱ぎ、アンジェの前に裸身を晒す。
ほんの少しだけかいた汗を流す為に軽くシャワーを浴びて、いざ事に挑もうというわけだが…。
「ふはー…。おせぇぞー…」
アンジェの奴め、その間にもう一発自家発電しておった。
「すまんな、さすがにあのままでは悪いと思ったのだが。…やはり待ち侘びていたか」
「当たり前だ、さっきからチンポがビンビンなのは変わらないし、しかもこう…んっ、胸とか触ってもこっちに来るからな…。
気持ちよくなっちまって、ついつい2回目をしちまったよ」
乳首を自ら弄りつつも、それによって魔羅はさらに奮起してきて。
すっかり向こうのの準備は出来ていたようだ。身支度に気を遣ってしまう当たり、私はすっかり女になってきたなという想いが半分、アンジェの粗暴さはむしろ一昔前の私を見ている気になった。
「なーあ早くー、突っ込ませてくれよー」
さすがにここまで粗野ではなかった、と思いたい。
ため息を一つ吐いて、アンジェの肩に手をかけて押し倒す。
「お、ぉ?」
「最初は入れるのが少し難しかろう。私が挿れてやるから、そのままでいろ?」
いきり立つ魔羅に手を沿え、軽く扱く。熱を帯びた吐息が、私とアンジェの双方から漏れた。
位置を定め、濡らしておいた“ほと”へと近づけて、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「ん…っ!」
「う、ぁ、あぁぁぁぁ…っ!」
体重をかけて腰を沈み込ませると、それに応じて魔羅が私の胎内へともぐりこみ、アンジェの口から快感の声が溢れ出る。
まず先端。
「あぁ…っ、入ってくぅ…!」
次いで中ごろまで。
「何これ…、何だよこれぇ…っ」
さらには根元まで届くように呑み込んで。
「あぁぁ…っ、熱い…っ、チンポ…、チンポが…っ、とける、うぅぅぅぅっ!?」
子宮口と亀頭が口付けをした瞬間、魔羅が勢いを込めて爆発した。
「くぉ、んっ、くふ…っ、うぅぅぅ…っ!」
胎内へ向けて遠慮無く放たれる射精に、少しだけ眉をしかめてしまう。
自分で致していた頃では無かったような精液の量、それが自分の魔羅から出ていて、しかし出すよう引き金を引いたのはアンジェで。
「出るっ、射精して…っ! う、くふぉぉ…っ! やば、止まらねぇ…っ!
あーっ! はあぁーっ!?」
…正直、これほどまで連続で射精しているのは初めてだ。さすがに人間が鬼の魔羅を使うとここまで違うのか?
一度の射精と思しき量が、既に4回ほど続き、私の胎は妊婦と言わんばかりに膨らんでいる。
さすがにこれ以上は危険だと判断し、腰を引き抜いた。

「あはあぁぁぁぁ…っ!」

それだけで更に快楽に火をつけたせいか、それともそれが意識の残り火であったのか。
ホテルの天井に届きかねない勢いで、もう一度アンジェは魔羅から勢いよく射精して、ベッドに沈み込んだ。
「…お、おーい、アンジェ…?」
軽く頬を叩くが全く動かず、どこか幸せそうな笑みを浮かべて寝ている。
そうか、気絶してくれたか…。自分の魔羅のことながら、あのまま犯されていたらどれだけ時間が経つか解らなかったしな。
安堵の息を吐いて、アンジェから魔羅を引き抜く。手ごたえ無く引っ張られて取れた魔羅は、直前の状況のせいでひどく精液臭い。
「もう一度風呂に入って、臭いを取らんとな。…果たしてコロンで隠しきれるものか。…む?」
これから先の難儀に頭を悩ませていると、アンジェが起き上がってきた。
「えぇと、…あれ、ここは…? それに君は…?」
しかし先ほどと様子が異なり、今いる場のことすら気付いてない状況。
仕方あるまい、覚えておらんのなら伝えておかねば。

お互いの事情説明後。
「あいつがそんな事を…!? すまない、俺がもっと手綱を握っておけばこんなことには…!」
アンジェの中の人、健人と言うらしい、が言うには、あの姿で休日を過ごしていたら突然意識を奪われたのだという。
そして次に気がついたときにはこの状況。目の前には精液だらけの私とラブホテル。
さすがに慌てるも、状況把握と理解が早いなこの御仁は、と思ってしまった。
「いや、私ももっと強気になっていれば良かったんだ。こちらこそすまない…」
「いいや、年上として謝らせてくれ。それに金銭で済む問題だと思わないが、謝礼も…」
「そんな必要ないって…」
とまぁ、お互いに引いて謝っていたら、突然室内の電話が鳴った。
健人と頷き合って、私が電話を取る。
「……もしもし」
『フロントです。お時間の20分前になりましたが、延長なさいますか?』
え?
室内の時計に慌てて目を向けると、なるほど確かに、入ってきた時から時間が経過している。
さすがにこの状態、しかも精液が乾いてガビガビになったまま出るわけにもいかんし、部屋の掃除もある。
「え、延長で…」
『かしこまりました』
フロントが受話器を置き、通話が終了した。
「はぁ…、なんだか気が削がれてしまったな」
「まったくだよ。……朱那さんだっけ。続きは風呂に入りながら話そうか」
「そうだな…、そうしよう」
未だ精液のたまりまくった腹を撫でつつ、2人で一緒に風呂へと入った。
そこでお互い色々な事を話した。
先ほどの簡単な事情説明では言えなかった事を含めて、沢山のことを。
私が鬼であることから話し、那々の体で復活したことを。
健人は家の体質のことから話し、家族四世代で暮らしていることを。
風呂から上がった後は出しすぎた精液を拭き取り、一通り終えた後は延長時間も切れかけていて。
「有耶無耶になってしまった事なんだが、やっぱり謝罪は…」
「構わんよ。こうして気兼ねなく話せる相手が珍しくてね、また会って話してくれれば、それで構わん。気にし過ぎんようにな?」
「……解ったよ、朱那さん」
謝罪のことも簡単に手打ちにした。
健人が如何に思っているかは知らんが、私が気にしていないのだ。気にしすぎるのもこちらに失礼だろう。
携帯のアドレスを交換し、戯れに「アンジェ」の名で登録して。お互いの休みのときにまた会う約束をして、この場を去った。
不思議な人間と言うのはいるものだな、と思いつつ。悪くない人間もいるものだな、と理解して。
自宅に帰った後で、いまだ猛り続けていた魔羅を慰めることに終身してしまったのは秘密だ。



五談目 蒼鬼と血液の場合

「私の友人が、相談したいことがあるらしいのだ」
とか朱那に切り出されて、依頼者である少女と対面することになった。
すぐさま身嗜みを整えて出かけ、依頼者の元へと赴いてご対面。
唱導寺静穂。
数ヶ月前に歿した唱導寺財閥の当主が晩年娶ったという少女なのだが…。
「…どうかしました?」
「あぁいや、あんでもないんだ、あんでも」
…あんでこう、俺の周りには人外が来るのかね。
俺か? 俺が人外だからか? ス○ンド使いは引かれ合うのか? スター不埒な!
気を取り直して。
「さてと、本題に入らせてもらいましょう。……相談したい事とは?」
「その前に、忌乃さんにお聞きしたい事が一つあるんですけど」
「…あに?」
意を決するような逡巡の後、静穂さんは口を開いた。
「那々ちゃんに聞いたんですけど、忌乃さんは鬼、なんですよね?」
「間違ってないよ」
即答する。
だってなー、目の前の存在がなー、本体が血液なんだもんなー。
隠す義理も必要性も無いって。
「そうでしたか。じゃあ…」
空気が一変する。本性を現すのだろうか、誰にも気付かれない程度の血臭が、ほんの僅か(やっぱり誰にも気付かれない訳)だが増した。
「気兼ねなく相談してぇんだけどさ。まぁちょいと長くなるから、楽にして聞いてくれよ」
これが素なのだろう、静穂は一気に砕けた男口調になって会話を始めた。
そこから彼女?は語りだした。
自分が現当主である青年の血を基にした存在であること。
想いを寄せていた女性が祖父に破滅させられ、借金のカタに身売りしたこと。
復讐を誓って血を用い、その全てを得たこと。
そうして最近、静穂を娶ったこと。
それらを一通り聞いて、俺の頭には疑問が一つ浮かんだ。
「…あんか、本末転倒じゃね?」
「だよな、やっぱそう思うよな?」
確かに“彼女”は静穂嬢のものであるが、精神は同一人物のものだろうと思う。
つまり彼は彼自身を嫁にしたというわけだが…。それでいいのだろうか、と考えつつ。
そこまで話を聞いて、ふと俺の中に疑問が生まれた。
「…ん? それで君が俺に相談したいことって?」
「その事でちょっと聞きたいんだけどさ…」
言うや否や、彼女は洋服をいきなり肌蹴始めた。視界の中に彼女の肌色が映る。
「ちょっ、いきなりあにをっ!?」
「忌乃さん…、私の体はどう見えます? 綺麗ですか?」
「うぇ?」
えーと、彼女はいきなり何を言ってるのだろう。
あーでも、…。くんくん。この匂いは。
「……もしかして処女?」
「そうです、まだ本体に抱かれてないんです。…そのまま聞いてくれ」
「もぷっ」
聞いてくれと言いつつ、俺の顔を乳房の間に埋めるのは鬼いさんどうかと思うな。
これは襲ってくれという迂遠な伝達方法か? 触るぞこんにゃろうめ。さわさわ。
「ひゃんっ」
さて、彼女のお尻を触りつつ話に耳を傾けるとだ。
分身である彼女は、本体である青年の思考がある程度理解…というか推測できるようで、最終的には自分を本体の制御下に置く腹積もりらしい。
その術式を昨夜体に埋め込まれ、今夜実行に移される手はずらしい。
「ん、ちゅ…、その方法は?」
「処女幕が貫通した時に出る、破瓜の血に乗せて…、『俺』の意識も出すみたいで…、ひぅ…っ」
口元に近い乳首を舐めつつ、手は彼女の熱を帯びてきた秘所を撫でる。
触りつつも術式を探ると、成る程。こういう術式なのな。
その方法を取って分身の意識が無くなれば、後は晴れて本体の言いなりになる人形の出来上がりってか。
「そうすりゃ、「静穂として生きろ」と言えば成る程確かに、“彼女”が自分の物になるわけだな」
「そうやって何でも、ひ…っ、自分の好き勝手に、ぃ、出来ると思うから…、“私”は“彼”が嫌いなのに…。
忌乃さん…、『俺』はこのまま消えたくねぇんだ。その為のいい方法は、無いのか…?
必要なら依頼するし、礼金も払うから…」
「んー…、ちゅる、無いわけじゃ無いかな…?」
指先についた静穂の愛液を舐めつつ、少しだけ思案する。
破瓜をトリガーとして血液の意識を吐き出す他、これは処女幕を破った相手に服従する類の術式もかけられてる。
このまま家に帰せば、夜には『彼』はオサラバになってしまうわけだから…。
「なぁ」
「…なんだ?」
「処女を貰っていいか?」
「なっ! そんなことしたら俺が出ていっちま「あーちょいちょい、そこも含めて聞いてくれ」」
押し出すことを目的としたこの術式には、逆に言えば“それだけ”の用途しか含まれてない。
魔術は基本的に発動させた事以外に、これといった付随効果は発生しない。
例外は自然現象位で、落雷から発生した火炎とか、火炎術式による延焼はその例外に値するわけだ。
「ふん、ふん…っ、んぅ!」
静穂が頷いてるので、秘所を指で捏ね繰り回しながら説明を続ける。
破瓜の血に閉じ込めて押し出すというのなら、その中に『彼』が居るのだろう。
じゃあそれをもう一度取り込ませれば良いじゃん、というのが俺の弁。
後は魔力による攪拌をすれば良い。この辺は実体験からものを言うわけで。
「それで、良いのか…? それで俺は元に戻れるのか…?」
「多分、な。俺の時とは少々勝手は違うが、基本骨子は同じのはずだ」
何をするのかと問われれば、つまりは俺が彼女を寝取るってことで。
……あ、れ?
ちょっと待て俺よ。これは自身で定めた禁忌に抵触してないか?
俺は人殺しをしないのと盗みをしないのを禁忌としているわけで、それを破ったら…。
「…どうしたんだよ、忌乃さん?」
「あぁいや、ちょっと…、なぁ? 自分で言っておきながらこの方法は、自分の中で承服しかねる…!」
「なんでだよ、俺は…、良いんだぜ。抱かれたって…」
「ちょっと待って、ちょっと待った!」
慌てつつも彼女に弁解。かくかくしかじか。
「なぁんだ、じゃあ問題ないよ」
「…あんでさ?」
「その方法しか見付からないってんなら、それを頼むまでさ。それに…、んっ」
顔を上げたところに、静穂から唇に軽い口付けが来た。
「『俺』も『私』も、本体が嫌いだ。あいつに抱かれて従うって考えた方が、よっぽど良いさ。
忌乃さんに服従することになったとしても、まだ納得できるさ」
「……そういう、ものかな…?」
「そーいうもんだよ。それに…」
沈んでいた顔を上げて、静穂の顔を見る。
頬が紅潮し、目が僅かに潤んだ、感じている“女”の顔だ。
「……ここまでしておいて、何もせず終る気ですか?」
「…最初からそうさせる積りだったな?」
その問いに静穂は答えず、ただにんまりとした笑みだけを浮かべている。
ホイホイ誘われてしまったわけか、これは。
「……解った、観念するよ。抱かせてもらう」
体勢は変えぬまま、静穂のショーツを下ろし秘所を露出させる。
それと同時に彼女も俺の社会の窓を開いて、肉棒を出してきた。
「…けど、最終確認はさせてくれ。……良いんだな?」
「存分にやってくれ。…っていうか早くしろよ、心臓がドキドキしっぱなしなんだ…」
「…わり。じゃあ…、行くぞ?」
静穂の腰を掴んで、肉棒の先端へと秘所をあてがう。
少しだけ息を吐いて、挿入を開始。
くちゅり、と水音を立てて、キツい膣内へと潜りこませて行く。
「あっ、はぁ…っ、入って、太いのが入って、くる…!」
処女を抱くときは細心の注意を払い、更に相手が相手なのですぐに破かないよう、亀頭に神経を集中して進ませる。
すると僅かに進行を邪魔する“何か”に突き当たって。すぐさま彼女の目を見て告げる。
「……行くぞ」
「来て…」
腰を上げて、ぐっと、突き破った。
「痛、あ…っ、俺が…下に、意識、が…」
処女幕を突き抜け子宮口についた瞬間、彼女の全身から力が抜けた。
肉体を支配していた意識が急に抜け落ち、まるで肉で出来た人形を抱いているような雰囲気になる。
深く突き刺し固定したまま、結合部へと左手を伸ばし、指先に魔力を込めて、そこから溢れる液体に触れる。
気配を感じるものを巻き取るよう念じ形成した風の力で、血液だけを掬い上げる。
そうして繋がりあって、少し。指先に浮かぶ血の玉を見て、これが『彼』なのだと確信する。
同時に目の前で俺に貫かれてる彼女へ、声をかけた。
「…静穂?」
「はい、ご主人様」
先ほどとは違う、意識を感じさせない無機質な声。排出と服従、確かに両方とも効果を発揮したようだ。
「…あんでも、俺の命令を聞くんだな?」
「はい。処女を破った人物に服従するよう組まれています。なんでもご命令ください」
「じゃあ、最初の命令だ…」
指先に集めた血の玉、意識の凝縮された血液を見せる。
「これを飲み込むんだ。指ごと咥えていい」
「はい、ご主人様。あん、んちゅ…、ちゅる、ちゅ…」
命令に寸分たがわず、俺の指を咥えて血を口に入れた。ついでに嘗め回してる
そして、口を離して、嚥下。
ここまでは良し。後は…、攪拌によって意識が出現するかだ。
クゥみたいに直接ぶつけることはできないので、両手に魔力を纏わせ、放射方向を定めて拍手を1つ打つ。
僅かな魔力振動が起こり、テーブルに置かれていた湯飲みが震えた。
「……あ、れ?」
「さてと、これはあにに見える…?」
じんわりと静穂の目に理性の光が戻ってきたのを確認すると、右手で作って見せたのは、親指と人差し指と薬指だけと立てている「グワシ」。
まことちゃんよくこんなのできたな。
「……何本に見えるかじゃなくて、か?」
残念、通じなかった。
指が痛いので何度も手を握っては開きつつ、彼女の様子を見る。
「…戻れたみたいだな」
「ホントだ。……ありがとうな、忌乃さん」
「どういたしまして」
お互い少しだけはにかむと、途端に彼女がもじもじしだしてきた。
「どした?」
「あぁいや、その…。ずっと挿されっぱなしだな、って…」
そういえば、挿入から即時行動したから入れたままだったなぁ。
「うまく行ったみたいだし、もう抜くか?」
「ん…、ちょっと、やだ…。このまま…」
「このまま?」
「このまま…、しないか? 最後まで…」
頬を染め、少しだけ顔を逸らして、それでも視線はこちらに向いて。
真正面から見れないのか、それとも単純に恥ずかしいのか…。
その様子を見ていると少しだけ楽しくなって、つい意地悪なことを聞いてしまう。
「おいおい、新妻の処女を奪っただけでなく最後までさせるのか。俺に本気で寝取れって?」
「寝取っても、良いんですよ…?」
「…考えとくよ。けど今は」
ぐっと腰を動かし、子宮口を突く。
「ひぁ…っ!」
「依頼人のお望みどおりに、最後までしましょうか…!」
静穂を上にした座位で、膣内を貫いていく。
朱那のこなれてきた感触とも、あすなの包み込むような感触とも違う、初めての感覚。
だいぶ中は濡れてはいるものの、左右からくる膣壁の感触が強く、潰されかねないほどに締め付けてくる。
「んぅ…っ、くふ、きつ…」
「やっぱり最初は辛いか…。じゃあ…っ」
窮屈さを感じているのは静穂も同じようで。というか彼女は初めてだから仕方ないのか。
腰を掴んで、抽送の動きを変えてみる。
「んっ、んふ、ふぅ…」
深いピストン運動ではなく、肉棒の根元で入り口、亀頭で子宮口の2つを小刻みに刺激する、浅い運動に。
「は、はふ…っ、んぁっ」
くちゅくちゅと愛液の水音と、静穂の吐息が部屋の中に響く。
次第に感じてきているようで、先ほどまでのきつさはなりを潜めて、柔らかく搾り取るような動きに変わってきた。
「痛みも和らいできたかな? ならそろそろ…、本気でイかせてみようか」
「え? ほ、本気って、ちょっと心の準備が、ひゃあんっ!」
ここからは動きが変わる。
先ほどの振動並みの動きではなく、もっと大仰に、引いては、突く。
「んぅっ、ふぁっ、はぁ…っ! 忌乃、さん…っ、奥まで来てる…っ」
「あぁ、この奥でぷっくりしてるの、子宮口だよ…。ほら、つんつん」
「ひゃぁっ! んぅ…っ、いじわる…」
子宮口を突くと、それに応じて喘いでくれる。俺を悦ばせようとしているのか、それとも自分でも楽しんでいるのかは解らないが。
そういう表情を見せられると、男として辛抱たまらん訳で。
「いじわるで結構。こっちもついでに、いただきます」
眼前でふるふると揺れる静穂の乳房にむしゃぶりつく。
「はぅっ! そこは、んふぅん…っ!」
問われても答えず、乳首を吸い腰を叩きつける。
勿論単純な前後運動ではなく、グラインドによる横の動きを加えてみたり、時折抜いては、愛液で光る肉棒でクリトリスを突いてみたり。
処女相手に、男としても女としても自分の身で覚えた技術を用いて、快感を叩き込んでいく。
「は…っ、はぅっ、ふぅ…っ! 忌乃、さぁん…っ」
「ちゅ、んふ…、ふぁ、あむっ」
「女」としての顔に目覚めつつある静穂を抱いて、反対側の乳房へと口を移す。
寝取ってるなー、俺。
「はぁっ、んっ、だめ、…っ、クる、キちゃう…っ!」
「そろそろかな…。じゃ、スパートかけるか…!」
膣壁の動きも感じ取り、静穂の絶頂が近いのだと認識する。
ならば、達してもらうためにも腰の動きをより激しくして、一突きごとに高みへと押し込んでいく。
それと同時に俺も達しそうになるが、ここはちょっと我慢、我慢…。
「ダメ…、イく…っ、んっ、ふぁあぁぁぁんっ!」
「ん…っ、く…! ふぅ…!」
搾り取るような動きで、膣が締め付けてきた。
それに釣られてしまうかのように、俺も達しかけるも、気合を入れて何とか射精を阻止する。
「はぁ…、はふ…。あーっぶねー…」
これ以上してしまい、あまつさえ膣内射精してしまえば…。結果は言うまでもないだろう。
もう突っ込んでイかせてしまった俺が言えるような事ではないのだが、寝取りは良くないと思う。そういうのが好みな人、コメントに一言入れてくれ。
「…ほら静穂、起きて。ちゃんと後始末しないと…」
俺の方に寄りかかっている静歩の身体を揺すり、起こすと…。
「ん…っ」
先ほどと同じように、唇にキスをされた。
「…お、おい?」
「へへ…、イかせて貰った礼な。ありがとう…、っ」
腰を浮かして、ちゅぽん、と音を立てて結合が解かれた。
少しぶりに対面するムスコはバッキバキで、よく射精しなかったもんだなと思ったり。
「あ、はいティッシュ。拭いた紙は後で捨てておくから」
「解ったよ。…俺の液が染み付いた紙でオナニーすんなよ?」
「やらねぇよ」
「それにちゃんとイってなかったじゃないか。折角ご主人様に出してもらえると思ったのに…」
…はい?
「えぇと、静歩? 今のは…」
「ん? 俺何か言ったか?」
どうにも本人には意識していなかったようで…。

その後、静歩は戻り(幕は俺が破ったけど)初夜を迎えた。
本体の方は、処女幕が破れていることと、それなのに術式が発動しなかったことを疑問に思っている様だが、未だこちらに追及の手は伸びていない。
静歩が押し留めているのか、追求の手を伸ばせないよう本体の権力を削いでいるのかは定かではないのだが…。
まぁ、本体にはその内報いが来るだろう。
恋慕の情が行き過ぎて、静穂に嫌われるほど。その上強引な手段を使ったとなれば…、どこかしらで反動が来るものだ。
破瓜はしたので同じ術式は使えないし、後は採血に乗じて行うか、大量失血のタイミングを狙うくらいしかないだろう。
それまでに本人に権力が残っているのかは、甚だ疑問ではあるのだが。
静穂が祖父の知識と経験を得ているのなら、そして彼女が本体を嫌っているのなら、その内何もかも取り上げるだろうしな。
…というか、そんな事を漏らしてた。
財政界は恐いな。
そして次なる問題はというと、だ。
「最近静穂が、よく蒼火の話をねだってくるのだが…。貴様静歩に何をした? 何をしたというのだ!?」
朱那が詰め寄ってきたので、肉欲で懐柔したこと。
…いやぁ、俺、どんどんダメな悪人になってきてる気がするよ。


六談目 犬神と老爺の場合

(うーん、ボクは何をしてるんだろう…)
最近常々そう思う。
少女を呪い殺すと言う、退屈かついつもの依頼を受けたのは良かった。しかしそれがケチの付き初めだとは気付かずにだ。
そりゃボクはそれなりに霊感はある、というか無きゃ犬神使いの家で生きていない。
自分達が糧を得るために他人を呪い殺すことには、何の感慨も抱いていない訳で。だってそうしなきゃボク死ぬし。
それが、藪を突付いたら蛇どころかとんでもない鬼が出てきて、ビックリしたよ。
戦ってみても向こうのほうが圧倒的に強くて、死ぬ気は無いから抵抗したけど敵わなくて。
最終的に命は助かったけど、男として&犬神使いとしては再起不能になってしまった。
幸運だったのは“そこまで”で事が終ったことだろうか。犯されたことも、鬼が変わってしまったボクの面倒を見てくれたことも、後から考えればツイてたと思う。
だってそうじゃないか、入れられるのは恐かったけど女の快感は気持ち良いし、衣食住の保障と電話番をしてれば給料まで出してくれる環境下に入ったんだもん。
けれど気付いてしまった。今のボクは無力すぎる。
犬神使いとしての血が消えて、牙も爪も抜かれたボクには、もはや誰かの庇護下に入るしか自分を守る術が無いのだと。
安斎行隆の、いや、久住との件で、気付かされてしまった。
蒼火さんを懐柔できて、ボクの言いなりにする事が出来れば死ぬまで安泰だとは思ったのだけれど。
(そうだよなぁ、この世界は安全なんかじゃないんだ)
決して何かに手を下さず生きることなんて幻想の中にしかないし、それが出来るのだと信じきっている人間はただの夢想主義者だ。
現実はどう足掻いたところで、他者を蹴落としてのし上る。他人を踏みつけて上に位置するしかない。
だが今のボクは、明らかに蹴落とされ、踏みつけられる立場なのだ。
座敷牢からの謹慎を解かれ、一人夜の散歩に出ている。
蒼火さんは新しい偽造戸籍の作成で居ないし、朱那さんも帰宅してるのでいない。誰もいないので、仕方なくボクは一人。
住宅街は寂しいと想い、市街地の方へと向かった。
百貨店さえ閉めようという時間なのに、やっぱり市街地は明かりに満ちている。
コンビニとファーストフード店、ゲームセンターや風俗店が変わらぬままに光を放つ中、
「お姉さん、一人?」
ふと、女子高生らしき人物に声をかけられた。
夜だと言うのにブレザーの制服を纏って、白い素肌が襟元やスカートから覗いてる、美少女と言って差し支えない類の娘だ。
「えぇと、うん。一人だよ」
正直に答えると、少女ははにかみながら、
「この後予定とかある?」
と問うてきた。
「いや、ないけど。どうしてボクに…?」
「淋しそうにしてたから、もしかしたら、って思ったの。一人だったし、視線も一定してなかったから…ね」
そうだったか、ちょっと挙動不審に見えたのかな?
「それならさ、お姉さん。…時間があるなら一緒に来ない? 私も一人だから淋しくって。
一人身の皆が集まって、夜のお茶会をしたいと思うんだけど、ダメ?」
なんとなく、胡散臭いと思った。
明らかに女子高生と見える少女が、ただ見かけた、何の縁もゆかりも無いボクに声をかけてきた。
それが怪しくなくてなんなのだと。
……そう、思ったのだが。
「……そうだね。じゃあ、ご一緒して良いかな?」
なぜか、頷いてしまった。
少女に連れてこられてきた場所は、あるホテルの一室。よく言うラブホテル、別名インモラルモーテル。
彼女も店員もまったく気にした様子がなく、この建物の中で一番大きな部屋へと連れて行かれた。
「みんなお待たせー、…って、もう始めちゃってるか」
鍵のかかっていない扉を勢い良く開けると、そこは異様な…ある意味この場所では正しいかもしれないが…光景が広がっていた。
年齢の程は少しあれど、総じて10代前半から20代後半ごろの女性が、部屋の中に9人ほど。
顔立ちは平均以上で、その殆どが美人の範疇に入るような女性のその全てが、肌をあらわにしたまま、互いに睦みあっている。
むせ返るような女の匂いに、少しだけ顔をしかめて、少女に問いかける。
「これは…、一体…?」
すると、まるで“待ってました”と言うような、邪心を含んだ笑みを向けてきた。
「一人身同士の、夜のお茶会だよ。紅茶の代わりに女の滴を、ケーキの代わりに女の体を。
お互いがお互いに持て成しあう、女同士のお話し合いよ」
閉じられた目が薄っすらと、ほの暗い部屋でもわかるほどの輝きを見せて、気付いた。
あぁ、これはマズった。
「お姉さんも、一緒に“お話”しましょ? “ワシ”も楽しみなんだから…」
一人称が変わっていく彼女の疑問を抱けないまま、僕の意識は融かされていく。
これは、吸血鬼の…、魔、がn…

「……うん、いいよ。ボクも混ぜて欲しいな…」
もう“ボク”は私情を挟まない。この場をおかしいと思わない。
彼女の、ご主人様(マスター)の望むままに。
「よしよし、聞き分けの良い女子は好きじゃぞ? ならばまずは脱いで、裸身をワシに見せてみぃ」
言われるままに服を脱ぐ。ジャケットも、上着も、スカートも、タイツも、ショーツも、ブラも脱いで。
何も隠さず全てを晒して、ご主人様の前に立つ。
「ほぅほぅ…、いいのぉ。お姉さんは綺麗な体をしておる。これは楽しみ甲斐がありそうじゃ」
舐め付けられるように見られている。それが自然なことで、そこに一切の疑問はない。
ご主人様の手がボクの胸に触れ、重さを確かめるように持ち上げた。
「形も肌触りも申し分ないのぉ。楽しめそうじゃ、ぁん…」
「んふ…」
乳房を舐められ、乳首をかまれる。
大きく張り出た犬歯が少しだけ痛くて、けれど蕩けた頭の中では、それさえも快感に置き換えられていく。
「ほぉれ、入江と下原。おぬし等もこちらにきて、彼女を貪ってえぇぞ」
「「…はい」」
後で睦み合っていた女性のうち、2人がこちらにやってくる。
彼女達も今のボクと同じ、ご主人様の忠実な下僕だ。
入江と呼ばれた少女がボクの秘所に口付ける。胸を吸われて感じていたそこは、入江の舌でさらに濡らされる。
下原と呼ばれた女性は後ろからボクの胸を揉んでいる。ご主人様が吸いやすいように持ち上げて、それでいて感じるように。
「ぢゅる、ぢゅ…っ、んぢゅるる…っ」
「あ、あぁ…、はぁ…」
半開きになったままの口から声が漏れる。
胸と秘所から責められていく感覚に、感じてしまうよう仕込んだ鬼のせいで、少し背中を押されただけで、気持ちよくなってしまう。
「んぅ、何じゃ何じゃ、もう感じておるのか? …お姉さんもやっぱり寂しかったんだねぇ」
吸血鬼としての口調で、ご主人様が笑う。
寂しい、のかな。ボクは。寂しい、のかな。
何が寂しいんだろう。あぁいや、今のボクはご主人様の物だ。考えなくていいんだ。望むままに、望まれたように。
「はい…、寂しかったです…。ですから…」
自分から胸を差し出す。胸だけじゃない、全身を僅かに前へと押し出して。
「ご主人様に…、慰めて欲しいんです…。夜が白むまで、ずっと…」
捧げよう。
「かはは…。そうかそうか。ならば…」
入江も下原も、ボクから離れる。ご主人様がきびすを返して、部屋の奥の方へ向かい、服を脱ぎ捨てる。
置かれていた椅子に座り、秘所を広げて見せる。
「ここに口付けをせぃ。ワシの物だと恭順を示し、身も心もワシのものになれ。そうすれば…」

そうすれば。
そうすれば、慰めてもらえる。秘所を舐められ、胸を吸われ、魔眼の力も相俟って火照り出したこの体を。
「あぁ…」
早く行かなきゃ。
「お? …ほぉれ、主がもたもたしておるから、他の者が慰めを求めてきたぞ?」
ボクと同じく、ご主人様に従えられた人達が、ご主人様の秘所に集っていく。
あぁ、ダメ…。そこにはボクが口づけするの…。
「はぁ…、ご主人様…。んちゅ、ぴちゅ…」
「おぉ…っ、そうかそうか、最初は畑野が欲しいか?」



1番最初にそこへむしゃぶりついた少女が、ご主人様に目をかけられてる。
ボクも、ボクも…!
僅かにフラつく体をおして、そこへと向かう。
「ちゅる…、ご主人様ぁ…、私めにお情けを下さい…。皆としても満たされないんです。ご主人様に抱かれたいんですぅ…。はぁ、ぴちゅ…」
「そうじゃろうそうじゃろう…。そう催眠を掛けたからのぉ。ヌシ等は決してワシの手でなければイケぬわ」
そうなのかな。
そうなんだろうな。
じゃあご主人様に慰めてもらわないと。お情けを貰って、この体を味わってもらわないと。
「どいて…っ、ボクが…、ご主人様にはボクが慰めてもらうんだから…!」
次を狙っている彼女達を押しのけ、畑野と呼ばれた少女を押しのけ。
ご主人様の秘所を目の前にして、跪く。
「ほぉ、存外早く来おったな。……ならばほれ、ヌシの意を見せてみぃ?」
肘掛に手を乗せたまま、ご主人様は何もしてこない。
ボクを、ボクの行動を待っているんだ。
それならする事は、ただ一つ。
「ご主人様…、はぁ、んちゅ…」
「ほ、ぉ…っ」
秘所を割り開いて、ディープキスをする。膣肉に唇が挟まれるような勢いで突っ込んで、舌を中にもぐりこませる。
締め付けられるような舌の感覚と、絶えずぶつかってくるご主人様の熱い愛液が、ボクの蕩けた脳髄に届いてくる。
「ふむっ、むぢゅっ、ぢゅる…っ、んぢゅ…!」
「いきなり、激しいのぉ…っ、んっ、良い舌使いじゃぞ…?」
ほめてくれてる、嬉しいな。あぁでも、これだけじゃ足りない。
左手でご主人様の腰を抱き、右手でボクの秘所を弄っていた。
「んっ、んむ、ぢゅる、ふぁ、はむ…っ!」
我慢できない。ご主人様の秘所を味わう度に、火照りが加速度的に上がっていく。
指がクリトリスを弄っても、膣内を抉っても、ただ登っていくばかりで、先が見えない。
…あ、クリトリス? そうか、ご主人様にもあるんだよね。
舌で中を突きながら、上顎を使って、前歯で刺激をしてあげる。
「ふぁ! ほぉ…、そうかそうか、そこまでするか…」
声があがった。ご主人様が悦んでる。ボクの体も熱くなる。
だったらもっと、もっと。
舌使いを変えていって、時折クリトリスを突く。
ご主人様が声をあげるたびに、ボクも気持ちよくなっていく。
指だけじゃ止まらない、あぁ、あぁ…。
「ご主人様ぁ…、ボク、ボク…」
口を離して、ご主人様の顔を見る。
何かを待ち望んでいるように、笑みを浮かべたままこちらを見てきていた。
「……何じゃ? 言うてみぃ」
言わなきゃ…。我慢できない…。
「お情けを…ください…。イかせてください…っ。もう、我慢できません…っ」
きっと誰にも見せたことのない潤んだ目で見ているんだろう。
きっと誰にも見せたことのないメスの顔を見せてるんだろう。
ご主人様の答えはシンプルで、ボクを軽く掴んでは、キングサイズのベッドへ放り投げた。
「かはは…、良かろう。ならば主人として、隷属を誓ったヌシをイかせてやろう」
悠然と歩いてベッドに上がり、そしてボクの上へ、覆いかぶさった。
「お願いします…、ご主人様…」
無抵抗を示してご主人様を迎え入れる。
先ほどと同じように胸に吸い付き、今度は搾り上げるような動きを加えてきた。
「ひんっ! ご主人様…、おっぱい、痛いです…っ」
「と言うても、それさえ気持ち良かろう? 解っておるぞ、奴隷のヌシ等の事なぞ…!」
ぢゅぱ、ぢゅるっ、ぢゅぅっ。
音を立てて乳首を吸われる。犬歯の刺激が甘い疼きになって、胸から何かが出てしまいそうな気もする。
「はぁ、はっ、ふぅぁ…っ!」
それだけで気持ちよくなり、秘所から大量の愛液が漏れてくる。
もっと出るな、と思ったところで、唐突に胸の刺激が止まった。
見ると、ご主人様がボクの秘所の方へと移動していて。
「さて、ヌシに誓いの口付けをしてもらったし、その返礼もした…。
ならば次は、きちんと情けをくれてやらんとなぁ…?」
足を持ち上げられ、ご主人様が股の間に入ってくる。
濡れた秘所同士が、
くちゅる
音を立ててぶつかり合った。
「ひゃ、ぁっ!」
「ん、ふ…。…やはり女同士は心地良いのぉ。男と違って何度でも出来る。
吸血鬼の肉体に間借りしたとしても、やはり変わらんか」
片足を掴んだまま、秘所同士を擦れ合わせてくる。
ぬちゅる、にゅちっ、ぐちゅり。
「あっ、はっ、は、あぁんっ!」
「ぬ、ふ…、はふ…」
抑えることを忘れた声がボクの喉から。抑えつつ快感を愉しむ声が、ご主人様の口から。
女同士の貝合わせを愉しんでいる。ボクも愉しんで、そうしてまた登っていく。
「は、はぅ…っ、おい。ヌシ等も一緒に、『お姉さん』を味わってよいぞ…!」
ご主人様の号令に応えるように、皆が寄ってくる。
胸に吸い付いてくるのが2人。
限界ぎりぎりまで広げられた太股に、自分の秘所をこすり付けてくるのが2人。
ボクの両手に秘所を弄らせてくるのが2人。
頭の上にお尻を突き出して、クンニを要求してくるのが1人。
ご主人様の胸を後から揉んでくるのが1人と、ボクにペッティングをしてくるのが1人。
この2人はそれぞれご主人様に秘所を弄ってもらってる。
ボクとご主人様以外の9人全てが、ベッドの上に集まっている。
ペッティングと、クンニと。愛液が染み擦れる音と、女11人の嬌声が溢れかえる。
「はっ、むぢゅ、ぢゅる…っ、ごひゅぢんひゃま…っ、ボク、ボクゥ…っ!」
全身からたくさんの女性を感じて、それを感じるたびに、体が火照ってきて。
たまらない、もう我慢できない。今すぐにイきたい。
「あぁ…、そうさな…。達したいのじゃろう…?
皆も構わん、ワシとワシから繋がってる『お姉さん』を通じて、皆イくが良い…っ!」
最後の崖から突き落とされるのは、それだけで十分な刺激。
クリトリス同士がこすれ合って、
「おぉ、ほぉぉ…っ、んはあぁぁぁっ!」
『ひゃぁ、ふやあぁぁぁんっ!』
ご主人様と、そしてボク達は、めいめいにイった。
その嬌声はホテルの部屋を揺らして、もしかしたら外に聞こえてしまうほどだったのかもしれない。
みんなが達して気絶した所で、ボク1人だけは意識が朦朧としつつも、まだ覚醒していた。
ボヤけた視界の中で、ご主人様がわらってる…。
「かははは…。大部分の『ワシ』はよぅやっとるのぉ。三条九十九の肉体に迫っておるか。
ならばこの場もこれで終えて、向こうに参加せねばな。
死神の、死を超越した肉体…。吸血鬼の如き死体とは比べ物にならんぞ…。今から楽しみでならんわい」
それだけを呟くと、何かが抜けて、体がくず折れた。


そこから先は、まるで他人事のようだった。
おかしい気配を感じてやってきた蒼火さんは、この惨状を見て大いに驚いていた。
けれども、ボクが驚いたことはもう少し別。
ご主人様だと思っていた女性が吸血鬼なのはまだ良い。その魂が喰われて、既に無かった事。
ボクが主人だと思い込まされていた存在は、吸血鬼の存在に成り代わった“誰か”だったと言う事だ。
魂の無い吸血鬼をホテル内で発見した棺に仕舞いこみ、集められていた女性達は翌日家へ帰した。
その数日後、蒼火さんと居間で向かい合っている。
「……先日のことなんだがな」
言い難そうな口調で、包み隠さず蒼火さんは教えてくれた。
あの吸血鬼の中に入ってた魂は、魔術師・折田真白という男のもの。
死を恐れた奴は延命の法を求めて、死神に手を伸ばしたこと。
返り討ちにあったかに見せかけて、逆にあわせたこと。
そして、人外として成ったことに。
「……で、それをボクに聞かせてどうするつもりですか?」
「単純だ。……俺は奴を殺しにかかる。それに際して、あすなの答えを聞いておきたくてな」
「あぁ良いですよ、ちゃっちゃと殺してください」
ボクの答えは決まってる。
ボクは自分が一番大事だ。誰かを支配することはまぁあっても良いだろうと思うけど、支配されることだけはいけ好かない。
支配されても自分は自分、なんて安っぽいプライドを掲げられるほど、ボクは自分を納得させてるわけじゃない。
「良いんだな?」
「えぇ、そりゃぁもう」
支配するならキッチリと。そして支配しようとする奴はバッサリと。
それがボクの信念だ。
折田真白がボクを支配しようとするのなら、その報いは受けてもらわないといけない。
「それじゃあ、お願いしますね蒼火さん。…炭も残さないでください」
「あ、あぁ…。そんじゃ、行ってくるな?」
たとえそれが出来なくても…。
報復をしてくれる鬼がいるのなら、彼がまだボクの手の届く距離にいるのなら。
もう少し、無力なままでも良いかなと。
そう、思ってしまった。


七談目 蒼鬼と痴漢の場合

「はふぅ…」
夜に差し掛かった夕方、通勤者の帰宅ラッシュの時間。
今俺は女の姿で電車に揺られている。仕事である封印儀式を終えて、体力・精神力共に疲弊した状態なのだ。
どこかのホテルで休み体力回復をしてもいいんだけど、個人的にはベッドより布団派なので、布団で寝たい気分。
「はぁ…」
ため息が出てくるも、その後に待っている至福の時に想い馳せれば、まだ我慢できる。
人波に押し潰されるように壁際へ身を寄りかからせ、手すりに捕まって体を保持していると。
さわり。
「ひゃっ?」
意図せず突き出す形になっていた尻を触られた。不意打ちっ!?
おのれこの状況で痴漢か。あぁいや、この状況だからか? ガラスに映った背景を見れば、スーツ姿の青年壮年中年老年が押し合い圧し合いしている。
そんな中で一輪の花がお尻を突き出してるんだから、そりゃ触りたいだろうなぁ。
とか思いつつも、この撫でてくる手は止まらない。俺のお尻を堪能するように、片手で持ち上げるように触れている。
しかし正直なところを言うと、背筋に寒気が来て気持ち悪い。
痴漢する者の気持ちと、痴漢される側の嫌悪感を同時に感じつつ、早い所駅に着かないかな、と思ってた。

ガタンガタン…。ガタンガタン…。
一定のリズムを刻みつつ列車が進むも、まだ着かない。
(そうだよ、これ通勤快速じゃねぇか…)
ただの快速より特に停車駅が少ない状態は、痴漢にとって恰好の狙い目だ。なぜなら途中で逃げられないから。さすがにすし詰め状態では、俺だって逃げられない。
そうこうする間にも痴漢の手は俺の尻を撫でまくっていた。
(うぅ、ぞわぞわする…。それにコイツ、かなり手馴れてる…)
痴漢霊の事件(by蒼雪恋談)にあった時とは違う、男の太い指で撫でられてる感触が、背筋を通って頭に届いてくる。
頬が熱を帯びてほんの少し顔が赤くなってきてるのだと、気付いてるんだが気付きたくなくて。
「…っ」
それに向こうが感づいたのか、スカートの中にまで手を伸ばしてきた。活動しやすいよう丈を短めにしていた為、容易に中へ潜り込んで来た手は、白いショーツへ直に触れる。
「ぅ、っ…」
当然そこだけで終るはずもなく、痴漢の手は俺のショーツの中へともぐりこんでくる。
こんの野郎、人が大人しくしていれば付け上がりやがって。
使い慣れた携帯を取り出してカメラに設定し、証拠写真を一枚パシャリ。シャッター音は電車の騒音がかき消してくれた。
後はこっそりネットにアップしてやろうと思うと、ちょっとだけ気が晴れた。
「ぁっ」
その瞬間、痴漢の指が俺の秘所に潜り込んできた。まだ濡れていないそこで感じる、男のザラついた指は、俺に僅かな痛みを与えながら敏感な場所に触れてくる。
「……っ」
さすがに声を上げる訳にもいかず、入り口を擦り続けてくる指を感じている。
入り口付近の往復と、指の腹による擦り付けを繰り返されていると。悲しいかな女としての肉体は、それに対して感じ始めてしまうではないか。
とろりと愛液がこぼれ始め、それを潤滑液にして更に指が動く。
「ん、ぅ…」
声を殺して秘所から来る快感の電流に耐えつつも、満足しない痴漢は更に攻撃を加えてきた。
秘所に触れている側と反対の手が、俺の胸を掴んできたのだ。
「ぁ…っ」
ブラ越しに胸を乱暴に捕まれ、揉まれていく。正直に言って痛いのだが、そんなことはお構い無しの様子。上へ下へ右へ左へ、ぐにぐにもみもみとやってきやがる。
胸と秘所とを同時に触られ、ゆっくりと快感の高みへと押し上げられていくと、痴漢の手が“そこ”へと触れてきた。
今まで胸を弄っていた手をクリトリスへと動かして摘み上げる。それと同時に指が2本、ようやく膣内へ挿入された。
「ぁ、っ、ぅ…ぅ…っ」
擬似的な挿入行為に、ほんの僅かだが満足感を得てしまい、さっきより声が漏れてしまう。
あぁ、こりゃ痴漢が調子に乗るなと思った矢先、手が引き抜かれた。
「ぁ…」
ほんの少しの喪失感が心中に沸きあがり、僅かに後ろを向く。
顔の全てはハッキリ見えないが、確かに笑ってる口の端だけが見えた。
(きっとコイツ、「所詮女なんてこんなモンだ」って絶対思ってるよ、思ってるだろうな。クゥが居たら絶対覗いてるぞ)
ほんの少しの思考を終えると、横から不意打ち第2弾が来た。
横から手が伸びてきて、脇に突っ込み胸をもんでくる。鷲掴みというのが正しい程に、握っては放してを繰り返してきた。少し痛い。
(う、く…。こんにゃろぅ…)
相手が人間ゆえに、このままでも殴れば殺しかねない。せめて相手の顔を見ておこうと視線を向けると、ようやく就職したのだろうか、スーツに着られている年若い青年が居て。
あぁこいつ絶対中てられたか。しかも童貞っぽいぞ? でも中てたの俺のこの姿なんだよな…。
乱暴に胸を揉まれると、先ほどまでの愛撫で隆起していた乳首が青年の掌に触れる。
「んぅっ」
やべ、言い訳出来ないほどに声出ちまった。絶対聞こえてるよこれ。
青年を見ている視線にも、体の火照りから艶が入りかけていて、青年も似たような視線でこっちをじっと見てくる。
やっぱり和姦のほうが良いよな…、と。ほんの少し頭の片隅で思考をしていると、同様に耳の中へ一つの音が聞こえてくる。
痴漢をしているのは隣の青年だけではなく、後ろの男もいるわけで。奴めジッパーを降ろしやがった。我慢できなくなって挿れる気だな。汗臭い車内にほんの少し別の匂いが混じりだす。
「んぅ、く、ぁ…、れ?」
既に準備は出来てるのだと言わんばかりに、痴漢の奴め挿入してきやがった。あれ、でもこれ…。
(…………短っ!?)
入れられたことで気付いた。こいつ短小なのだ。指の太さから察するにそれなりのモノかと思ったが、どっこい短いでやんの。奥まで届きやしねぇ。
膣内と入り口だけを延々擦り続けてくるコイツ、更に言うとテクも酷い。ただ抽送を繰り返すだけで、それ以外もそれ以上もしてこないのだ。
ただ粘液の擦れ合う音と、痴漢だけが腰を叩きつけてくる感触が響く。向こうは愉しんでるのだろうが、俺は不満がいっぱいたまり始めてきたところに、
『次は、○○。お出口は左側です』
車内アナウンスが流れてきた。おあつらえ向きに俺が居る側の扉が開くようで、これはバラすには丁度いい。痴漢行為の自業自得だ、乗降中大いに晒し者になるが良い。
痴漢のモノが入りきった所で股に力を込めてホールドすると、向こうは驚いて抜こうと動いてくる。その間に青年の手を抜かせて、小声でコンタクトを取った。
「次の駅で降りるよ?」
「え、も、もしかして痴漢で…」
「いやいや真の痴漢は後ろだから。…それとも、君も痴漢として捕まりたい?」
最悪だよなと思いつつも、青年をちょっぴりかどわかし、次の駅で俺を引っ張って降りていくよう段取りを調整する。
アナウンスからほんの少しだけ経過して、電車は駅に停まった。扉が開いて人が乗り、また降りようとすると、後ろにいる痴漢が焦燥していく。
プシュゥ、と音を立てて扉が開いた瞬間、膣内の力を抜いて準備完了。
「…いこう!」
すぐに青年に手を取られて引っ張られる。あくまで恐がっているように周りに見せかけて、彼の腕に抱きついたりして。
「この痴漢、変態、強姦魔、短小!」
置き土産も忘れずに投下しておくと、乗車しようとする女性が痴漢の粗チンに気付いて悲鳴を上げた。
心中で拍手喝采、俺もコロンビアのポーズを取りたくなるも我慢して、鉄道警察の手から逃げるように駅を出て行った。
さて、降りたことのない駅で電車を降りて、引っ張っていく青年の動きに任せるまま3分間。捲り上げられてたスカートを直し、濡れたままの秘所から零れる愛液も気になりつつ、しかし彼の腕に抱きついたままだ。
延々と引っ張られ続けるのも少し気になるので、青年の顔を見上げてみた。
うわぁい顔真っ赤ー。緊張してるんだろうなぁ、仕方ない。
「おーい青年、青年ー?」
「ひゃいっ!? なっ、なんでひゅかっ!?」
声をかけつつ胸を押し付けると、裏返った声が返ってきた。初々しいー。
「いやまぁ、いい加減駅からも離れたし、もう引っ張らなくていいよと言いたくて」
「あぁはい、そうですか…。えぇとその、なんですけど…っ、は…っ、離れてっ、くれませんかっ? その、胸、が…」
「胸が、…えいっ」
「ひゃー!?」
面白くなったので胸で腕を挟んでみると、更に裏返った声が青年の口から発射された。
…いかん、面白い。今なら俺を弄るクゥの気持ちもきっとわかる。
「あのっ、そのぅっ、離れてくれ、ません…っ!?」
おっぱいむにむにしつつ見上げてると、まるで茹蛸のような青年の顔が見えてくる。これ以上やり過ぎると血管プッツンするかもしれないのでこの辺で止めた。
胸を離し腕を解放して、青年と向き合う。
「さっきはありがと。引っ張ってくれなかったら、俺も鉄道警察のお世話になってたよ」
「あぁいえ、その、そう言ってくれたらありがたいんですけど…、こちらも痴漢するような形になってしまい、すみません…」
「実際しただろうに」
「う…っ」
脇から手を突っ込まれて胸を乱暴にもまれたのは忘れない。ちょっと痛かったし。
青年を見ると、真っ赤になってた顔色がいつの間にか青ざめてる。自分の行為を思い出して突きつけられれば、さすがに有頂天から一気に急降下だわな。
「まぁいいさ、俺は気にしてないよ。それに…、口直しもしたい気分なんだ」
「口直し、ですか…?」
「そゆこと。……君にお相手して欲しいんだけど、どうかな?」
“しな”を作りながら青年に体を見せ付けていく。我ながらわかりやすいおねだり方法だと思うが、さっきまで胸の接触位で茹蛸になってた青年には十分だと思う。
じっと見ていると、ごくりと唾を嚥下する音が聞こえて、青年が口を開いてきてた。
「…良いんですか?」
「良いんだよ。行きずりだから後腐れなく出来るし…。それに、痴漢の罪で今更訴えられるよりは良いんじゃないか?」
やっぱり最近、俺は悪い人間になってきたと思う。オカルト系何でも屋という仕事柄、人間以外からも仕事が入る事もあって。彼らの案件は大なり小なり人間に関連することが殆どだ。
その過程や結果で合法的に、または非合法的に、人間を脅迫することもあった。……というか、覚えざるを得なかった。
相手の弱みを握ってそれを突きつけ、バラされたくない、という恐怖心につけ込んでこちらの言うとおりにさせる。
今回も彼が痴漢をしてきた、という事実を使って同じ事をしている。酷い人間だな、俺は。
「……わかりました。それじゃあ、お相手、お願いします…」
紅潮した顔のまま青年が頷いて、相手を安心させるよう俺も笑顔になる。
「よっし、そんじゃあ行こうか。この辺のホテルは…」
「あ、あのっ」
「んぅ?」
色香の匂いから場所を探ろうとしたが、突然声がかけられる。
「俺が借りてるアパートが近いんで…、できればそこに行きませんか? その、お金とか、かかっちゃいますから…」
なるほど、確かにこの様子では家賃と生活費で色々苦しそうだ。その方がいいかな。
「良いよ。じゃあ案内よろしくね」
手を繋いで、もう一度青年に連れ添う形で、彼のアパートへと向かった。


八談目 蒼鬼と青年の場合

築30年ほどだろうか、駅から徒歩15分ほどのそれなりに年季の入ったアパートに到着し、1階の部屋へと脚が向かう。
表札には「阪東」の文字があり、そこで止まり鍵を開けた。
「それじゃあ、汚いところですけど…、どうぞ」
「お邪魔しまーす」
先を促されて入室し、中を見てみると。それなりに片付いた2Kの屋内。少し気になってキッチンを見ると、
「ぅゎ」
確かに汚く、ごっちゃりとしていた。コンビニ弁当、カップ麺、パンの袋やパックドリンクに空き缶にペットボトルが山積みだ。これで女を連れ込むか。
「あ、あんまり見ないでください…。頭がボーっとしてて、ちょっと忘れちゃってて…」
慌てて弁解しつつも俺を奥へと誘導しようとする阪東青年を少しだけ手で制する。
「はぁ…。しょーがない、ちょっと片付けよう。ゴミ袋持ってきてくれる?」
「え、あ、その」
「速く」
「はいっ!」
声に意気を込めると、阪東青年は飛び跳ねるように動いて、袋を持ってきてくれた。ちゃんと常備してたのか、可燃と不燃の2つが揃ってる。
そこから先はちょっとした台所の大掃除だ。ゴミを洗って分別して袋へ投棄。ペットボトルはパッケージを剥がして、ボトルとキャップは分け、紙パックは洗って再利用しやすいよう開く。
2人で手分けしつつ作業していくと、ほんの少し経過したらキッチンは綺麗になっていた。
「…よし、こんな所で良いかな?」
「あの、すいません、片付けなんてさせちゃって…」
「俺のお節介なんだから気にするなって。…それにしても」
痴漢騒動と阪東青年へのからかい、そしてキッチンの掃除をしていて。気付けばすっかり眠気が冴えてしまった。それに加えて、ほんの少しだけ空腹を告げる腹の音。
しかも俺だけじゃなく、阪東青年の方からも同時に聞こえてきた。
「あ…」
「……あーぁ、どうにも今からスるって雰囲気じゃないな。どうせだしお腹も膨らませておくか。そんじゃ早速冷蔵庫拝見…。ぅぇ」
言うが早いが小さな冷蔵庫を開いてみると、これまた内容量が心細い。というか殆ど無い。
お茶の2Lボトルとヨーグルトが少しと、まだ期限が来てない程度の卵、後は弁当の付属品なのだろう、小袋に入ったソースやら辛子やらがいくつか。
「…………あのさぁ」
「な、なんですか…?」
「さっきのゴミの山からも思ったんだけど、もうちょっと食生活には気を配ろうよ…」
「は、はい、すみません…」
しょぼんと顔を下へ向ける坂東青年を見て、もう一度冷蔵庫の中を見て、溜息一つ。
「しょーがねぇなぁ、買い物行くか」
弁当屋に行けばいいと主張する坂東青年をちょっとだけ黙らせて、近場のスーパーマーケットへ直行、到着。
「さてと、あににするかな。あの卵は使っておきたいし…」
買い物籠を持って悩みつつ、しかし考えれば家主の阪東青年の好みを忘れるわけにもいかない。
「そうそう。君、食べたいものとかってある?」
「えと、その…、あなたが食べたいものなら、なんで「ストップ」え?」
「あんでもいい、って言うと主体性が無いように思われるぞ。……そんなんじゃ、女に嫌われちまうぞ?」
「え、えと、その…、はい…」
少しだけ見上げるように阪東青年の目を見ると、顔を赤くして目を逸らしてしまった。ちょっと気にくわないので、頭を掴んでこっちに向けさせる。
「こーら、ちゃんとこっち見る。……良いな?」
「……はい…」
まだ少し視線が逸れてるが、良いとするか。
「……はぁ、君は初心だなぁ。さっきの痴漢の度胸はどこ行った?」
「えぇっ、そ、その話はしないでくださいよっ!」
「あははは、バラされたくなければちゃんと食べたいものを言うんだな。…余程のものじゃない限り、ちゃんと作ってあげるからさ」
にっこりと笑いかけると、阪東青年の顔がもっと赤くなった。
生鮮食品コーナーを何度か回って、アレが良いか、コレが良いか、と話しつつ。ちゃんとした肉を食べたいという青年の要望と、卵の消費したいという俺の考えも視野に入れて、鶏肉の卵とじを一品として作ることにした。
もちろんそれだけではマズいので、手製のサラダや野菜スープを作るために材料を手にして籠に入れ、小さい袋の米も買って。気付けばそれなりの量になってしまった。
「んー、少し買いすぎたかなぁ」
「そんなこと無いと思います、けど…。良いんですか? お金まで出してもらっちゃって…」
袋は阪東青年が持ってくれたが、米の袋と代金は俺持ち。
「良いの良いの。君の台所を借りるんだし、材料費位は出させてくれ」
喰うのは俺と青年だとしても、作るのは青年の家だ。まさかウチに呼ぶわけにも行くまい。しかしそこでふと、青年が手を繋ぎたいのか、片手を少しだけ差し伸べてるのに気付いた。
「……んぅ、どした?」
「えぇと、その…。これって、デートっぽいですよね」
…スーパーで買い物してるだけの、いささか色気のないデートだけどな。
そんな言葉を飲み込んで、
「…そだね」
とか言って、その手を取った。
さてさて、青年の家に戻れば次は料理という行動が待ってるわけで、俺は台所に立って、勝手は違えど包丁を振るっていた。
出来ることならエプロンが欲しかったが、生憎と青年は持ってないというのでそのまま。…こらそこ、裸エプロンとか言うな、やらないからな。
「んー…、こんな所でいいかな」
野菜スープは塩と胡椒で味をつけただけのシンプルなもので、ゴロゴロとした野菜を煮込み、少しの鶏肉と卵を落して火が通れば完成。
その最中にパスタを茹でてサラダに盛り付けたり、鶏肉の卵とじを作ったり。気分はすっかり家政婦だ。
阪東青年はというと、後ろから俺の作業をじっと見てきている。心なしか視線が尻に向いてるような気がするのは気のせいか?
先ほど炊けたご飯を蒸らしかき混ぜて、簡単だけどそれなりの夕食が出来上がった。
「出来たよー、お待たせっ」
「ありがとうございます…っ。それじゃ、いただきます!」
よほどご飯が嬉しいのか、お椀が置かれたとたんに食べ始める。気にしていた味付けだが、青年にも好評のようで何より。
あっという間に無くなって、次は洗い物をするためにまた台所に立つ訳だが、そこでふと声をかけられた。
「あの、そのですね、…ずっと聞きそびれてたし、こんなときで悪いと思うんですけど、あなたのお名前は…?」
あぁ、そういえば名乗ってねぇな。阪東青年のことも表札から知っただけで、俺も名前を知らない。
正直行きずりでヤってそれで終わり、になる筈だったのだが、気付けばあれよあれよとこの調子だ。いい加減名乗らないとお互いにマズいな。
「あー、えーと、俺は…」
言葉に詰まる。安斎のときは地獄の中での事だったし、普通に名前を名乗っていたが。こちら世間一般的な現実の存在だ、もう少し偽名を名乗らないといけないだろう。
雪姫は却下。いくらこの姿でも本人は既に死んでるし、名前を呼ばれて抱かれるのは納得いかない。生前俺が抱けなかった彼女を抱かれるのは寝取られる気がしてすげぇ嫌だ。
かといって普通に名乗るのもおかしな話だと今更ながら思うわけで…。しかたあるまい。
「……好きな名前で呼んでくれて良いよ。多分、これだけで終る関係だと思うから」
はっきり言おう、逃げた。名前を考える気が無かった訳ではないのだが、
だが青年の方は納得いかなかったみたいで、
「それは、嫌です。ちゃんとあなたを…、その、抱くわけですから…」
「うー…」
墓穴を掘りました。更に悩むことになった俺は、頭を捻る。
…………しかたない。二度と名乗ることの無い『人間』としての名前をちょっと捩って…。
「…しょーがない、名乗るよ。俺は、アキ。そう呼んで?」
「わかりました。それで、あの、アキさん。ご飯、ありがとうございます。美味しかったです」
「そう? いつもやってる味付けなんだけど、君が気に入ってくれて良かったよ。…あ、もしかしてお世辞とか?」
「違いますって! お世辞なんかじゃなく、なんだか家庭の味って気がして…」
「そんなものかなぁ?」
「そういうものですって。アキさんならきっと、良いお母さんになれますって」
…あんでそうなるのだろう。俺が、母親、かぁ?
確かに良く挿されているが、可能な限り避妊はしてるし、何より鬼の受胎・出生率はそんなに高くない。妊娠する可能性は無いわけじゃないが、な。
「はは、ありがと。お世辞として受け取っておくよ。お皿片付けるね?」
既に空になっていた皿を纏めて、流し台に持っていく。スポンジと洗剤も食品と一緒に買っておいたので問題なく皿洗いは終了し手持ち無沙汰になる。
時刻はそろそろ8時近く。忌乃家には買い物途中で今日は帰れないと連絡を入れておいたので、後はいざ致すだけ、なのだが。
「アキさん、お風呂先に入ってください。俺は後でも大丈夫ですから」
と言われると、なんだか悪い気がするので。
「ダメ。時間がもったいないし、一緒に入るぞ?」
有無を言わせず一緒に入ることにした。
「あの、すいません、狭い風呂で…」
と阪東青年は言うが、アパートの風呂は大抵狭い。けれど中に入って色々スるのには問題ない程度の広さはあったりする。
「気にしない気にしない。ほら、体とか洗ってあげるから背中向ける」
ちなみに俺はタオルで隠すという無粋なことはしていない。胸も尻も秘所も全部丸見えなので、さっきから阪東青年がこっちを見てくれない。
おのれ、恥ずかしさこそ薄いが反応してくれないことには遣り甲斐が無いじゃないか。
内心不満をぶつぶつ言いながら阪東青年の背中を、ボディタオルで擦っていく。
「やっぱり男の背中だよな、俺のより広いよ」
「そ、そうですか?」
「うんうん、だからちゃんと自信持てって。…はい、次前ね」
「ちょ、ちょっと待ってアキさん! 前は…」
「前は?」
「前は、その、マズいというか、今は危険というか…」
「うりゃ」
「うふわっ!?」
言い訳に精を出す青年を無視して、手を前に向けて伸ばした。当然それだけじゃ届かないので、背中に胸を密着させる。
「ほーれ、ごっしごっし♪」
「あわわわわわわ」
胸板から始まって、腕、脚と続けて最後に残した下腹部へと手を伸ばす。思ったとおりそこは硬く隆起していた。
「あの、アキさんっ、そこは…っ、う…!」
「そこは? 呻いてちゃわかんないぞー? ほーら、綺麗にしましょうねー」
阪東青年の勃起を、泡を纏わせた手で擦る。これからお世話になる部分を汚れた状態のままにしておきたくないので、念入りにだ。
カリが僅かに引っかかるよう、親指と人差し指で輪を作って擦り、時折傘の内側をなぞる。
「ひっ、う…! そこは…」
「んふふ、敏感でしょう? ここを弄られると、みんな気持ちよくなるんだぜー」
先端から幹へと手を動かし、根元まで行けば、小指と薬指で陰嚢にも触れた。両の玉を指でもむと、やはりそれだけで声が上がってきて。
「あ、アキさん…、なんで、こんな…」
「ん? 隠してる所はちゃんと綺麗にしなきゃいけないし、電車の中でされたことの仕返しもある?」
「そんな、うぁ…! それに、これだけ手馴れてるなんて…」
「そりゃまぁ何度もされてるしな。……それより青年、ほれ」
右手で肉棒弄りを繰り返しつつ、左手は青年の手を取って、ある場所へと向かわせる。彼の手が触れたのは、今俺が握ってる場所と同じ位置の、俺の秘所。
触れられるだけでも、密着した乳首から沸き起こっていた快感が連動して、少しだけ息が漏れる。
「ん…っ」
「……こ、こは…?」
「言わなくてもわかるだろ、青年…? 女の子の大事なところだよ。ほら、ここに君のちんぽが入れられるように、しっかりと触れて…?」
少しだけ艶の混じった囁きを、青年の耳に届かせる。更に手を誘導させて、指先を少しだけ膣内にもぐりこませる。
「あ…っ」
「…っ」
青年の耳元で、ちょっとだけ声が漏れてしまった。彼も逸れに興奮したのか、唾を嚥下した音がする。
「…ね、好きなように、触って?」
また彼の肉棒を弄りながら、了承の声をかけると。とうとう我慢ができなくなったのか、それとも覚悟が決まったのか。阪東青年がようやくこっちを見た。
俺の手を振り払い、血走った目で覆いかぶさってくる。
「は、はぁ…、アキさん…、俺、もう我慢できません…! ん…!」
半ば乱暴に唇を奪われ、同時に体をまさぐってきた。右手は胸を、左手は秘所に触れ指を入れたまま、そこを堪能しようと慣れない手付きで触れてくる。
握るような、搾り取るような手付きで胸を揉んでくると、快感より少しばかり痛みが先行してしまうけれど。
「ん、ふ…、もうちょっと、優しく…して…」
「はい…っ、はい…っ!」
息を荒げながら女体を堪能してくる青年には難しいかな、と、少しだけ苦笑が出てしまった。
「大丈夫、俺は逃げないよ。…ね?」
青年の首元に腕を絡め、目を合わせて微笑む。そしてもう1回、軽いキス。
「……あ、あの」
「ん?」
「俺、へたくそかもしれませんけど…、ちゃんとアキさんを、気持ちよくさせてみせます…!」
「…うん、期待してるよ」
お互いに笑いあうと、胸に触れてくる手の強さが小さくなった。痛みを感じない、優しさを伴った愛撫に変わる。
青年の大きな手の中で、俺の胸がそれに合うよう形を変えていく。やわらかく、誰しもが抱かれる場所が弄ばれる。
「ん、…」
小さく声が出てしまうけど、今は気にしてない。恥ずかしさはほんの少しだけあって、けれどそれ以上に期待が大きくて。
手の動きが変わり、絞り上げるように乳首へ向けて擦り上げてくる。何度も何度も、根元から先端へと。
母乳なんて出ないのに執拗に、まるで何かを欲するように。
次第に手がそこへとやってきた。乳首に触れて、こり、と抓られる。
「ひ、ぅっ」
脳に快楽の電流が届いて、先ほどより強く、また声が出る。痛くなくて、ただ気持ちいい。
「アキさんの胸、やっぱり柔らかいです…」
「そう…? それなら、もっと触っていいよ。電車の中じゃないんだから…」
胸に触れる青年の手に、俺の手を重ね合わせる。少し握れば彼の手も胸を揉む。間接的に自分の胸を揉んでみると、不思議な感覚になってくる。
青年の腕がまた動き出すのはすぐだった。行動は同じだが、その端々が変わってきている。
重さを確かめるように持ち上げてみたり、変形を愉しむように胸を左右から寄せてみたり、乳首同士を擦り合わせてみたり。
「んぅ、ふ、ん…っ、はぁ、良いよ…、気持ち良い…」
偽らざる本音を告げて、紅潮させた顔を向けると。それでも胎の中ではどこか物足りない気がしてきて。
本当に欲しいものを求めてしまうから、青年の一物に手を伸ばす。
「ぅぁ、アキさん、そこは…」
「良いじゃないか、さっきも触れて洗ったんだから。今更触られたことで恥ずかしがっちゃダメだよー?」
しっかりとした硬さを伴って存在を主張する一部は、まるで本懐を遂げさせろと声も無く告げているようだ。
幹の腹を根元から指先を撫で、先端へと進む。むき出しの亀頭に到着すると、掌全体で包み込む。
「あ、う、くぁ…! アキさん、なんでそんなに…!」
「そりゃ慣れるよ。良く触ってるんだし」
自分のを、とは絶対に言わない。絶対にだ。
「ほらほら、胸を触る手が止まってるぞー。えいりゃ」
「はくっ! それ、ずるいです…!」
鈴口を爪で軽くなぞると、我慢できないのだろう、やっぱり声があがる。新鮮な反応が面白い。
「ずるくないよー。知ってることは有効活用しないとね」
風呂場の湯を潤滑液にして、接触面が大きくなるよう握りこみ、ゆるゆると扱き出す。
くちゅり、くちゅりと卑猥な音を立てながら、男性器への愛撫が始まった。
「ふふ、元気だなぁ。そんなに溜まってたか? それとも…、こうされるのが気持ちいいのか?」
俺の行動に気をやってしまっているのか、すっかり胸への愛撫が止まっていて、手から解放されている。
ずっと触るだけと言うのも些かつまらないし、もう一押しするために体を離す。
勿論完全に離れるわけじゃなくて、手で触り続けている場所、青年の股間部分へと顔を寄せ…、
「あ、アキさんっ、そこは汚…っ」
「えりゃー。あー、むっ」
少しだけ残っていた泡を流し、肉棒を咥え込む。洗ったばかりだ、汚いとは言わせないぞっ。
「うわ、ひゃっ、く、口…っ」
「んむ、ぢゅる…、ちゅ、あむ…っ」
染み出てきた先走りを舐めたり、唇で幹を扱いたり。これから感じさせてくれるものに対して、礼を尽くして奉仕をする。
「あ…、俺のがアキさんの口の中に…」
とはいえ、青年の肉棒はそれなりの大きさがある。小さくなった俺の口では、全てを飲み込むには少々心もとない。
「んむー、ひぇいねんのおっきぃな…。ん、ぢゅぅーっ」
肉棒の腹を下から上へ登るように舌を這わせたり、亀頭だけを咥えて舐めまくったり。
手は根元を揉み解しながら、睾丸を手の中で遊ばせる。
「じゅ、じゅるっ、む、ふぅ、ぢゅる…!」
耳元に届くようにわざと音を立てて啜り上げ、僅かに出てきた先走りまで飲み込んでいく。
青年も気持ちいいのか、俺の頭に力を込めた手を添えている。逃がしたくないのだろう、少し押し付けてくるようだ。
何度も舐め続けていると、強く脈打つ肉棒は限界が近いことを告げてくる。それを少しだけ察して、口の中に唾を溜める。
「うは…っ! アキさん、もうダメ…! 出るっ」
瞬間、待ちかねたとばかりに俺の口内に白濁液が溢れ出した。
どびゅぅ、と言わんばかりの音と共に、生臭い精液が噴出する。まだ女を知らない童貞の精液は、もしかしたら女淫魔には垂涎の代物かもしれない。
「…っ、んぐ…、ごきゅ…」
息を吸って飲み込んで。苦味を嚥下して胃の中に送り込む。
出し終えたら、フェラチオより優しく舐め取り、尿道に残った精液も、ちょっとだけいただいた。
「けぷ」
抑えようとしたけど、ゲップも出てしまった。出てきた息はやっぱり精液の臭いがする。
「はぁ、あふ…」
「おーい青年ー、大丈夫かー?」
「はっ、あ、す、すみません…。アキさんの口が気持ちよくって…」
軽くうがいをし、賢者タイム突入の青年を揺すって起こすと、出てきたのは率直な感想(だと思う)。
「それでその、さっきの、飲んじゃったんですか? 俺の精液…」
「うん、いただいた。……美味しいとは言えなかったけど、まぁ、まぁ。出すわけにもいかなかったしね」
「それなら飲まなきゃ良いじゃないですか。我慢して飲む必要なんて…」
「別に我慢なんてしてねぇよ? やりたいな、と思ってやっただけだから、君が気にする必要ないない。
それよりさ、これで満足するつもり?」
そっと近付いて体を寄せる。乳房が青年の胸板に、ふに、と形を変えて触れ合う。
自然と顔も近くなり、顔がさらに赤くなっているのが良くわかってしまう。頬が綻んで、笑みが勝手に浮かんだ。
「どうしたんですか…?」
「あぁいや、君がかわいいと思ってさ。それだけだよ」
「それは、ほめられてるんですか…?」
「うん褒めてる。抱かれたいなって気にもなるし、この一晩はきっと楽しい思い出になるからさ」
「そうですか…。…それでですね、えっと…」
青年は物怖じするように、腕を俺の背に回して、体を抱きしめてきた。
「さっきの口が、すごい気持ちよくって…。情け無いんですけど、もうちょっと休ませてください…」
「…ん、いいよ。俺の体をぎゅっとしてて、青年のちんぽが休めるかどうかは疑問だけどな」
「わぁちょっと、そこ触らないでくださいよっ」
「直には触ってないぞー、キンタマだけキンタマだけ…、ひゃっ」
バスマットの上で横になり、青年の睾丸を指先で弄んでいると、返礼とばかりに尻たぶに手を伸ばされた。
あまり大きくないそこではあるものの、青年が掴んで指が沈み込んでくると同時に、自分の体がそれを跳ね除けようとしているのがわかる。
女性同士の触れ合いより接触面が多いと、ほんの少しだけ気になって。
「もぅ、そっちだって触ってるじゃないかー」
「俺だって女性器には触ってません、お尻だけですお尻だけ」
「そう来るか。そんじゃぁ俺は…、えいっ!」
「あぅ!」
強く抱きついて、乳房を青年の体との間で潰し更に密着する。首に腕を絡ませ、そのまま首筋にもキスをした。
「ん…っ、ちゅ、ちゅ…っ」
「あわわわ…、やめてくださいよアキさん、そんなキスマークだなんてっ」
「明日会社に行けなくなっちゃうってか?」
「そうですっ、だから早く…」
「それじゃもう一回♪」
「はぅっ」
いつの間にか股間から手を離し、肌同士をすり合わせるペッティングに移っていて。洗剤の泡もシャワーのお湯も、気がつけば消えかけていた。
触れていれば確かに暖かい肌なのだが、気化熱でほんの少しだけ冷え始めてきている。
これ以上はマズいかな、と思い至り、体を離した。
「ちょっと冷えてきちゃった。ちゃんと体を洗いなおして、ベッドの上で続きしよう?」
さすがに2人も入れるほどの大きさではないので、洗うのはシャワーだけ。これ以上じらし続けても青年が我慢できるか怪しいし、俺もそろそろ本気で欲しくなってきたわけだから、お互い限界が近いということで、ひとつ。
だが。
「…嫌です。ベッドの上でなんていわずに、この場で続けちゃいましょう」
そう言って腰を押し付けてくると、もう復活しましたよ、と言わんばかりに存在を主張する男性器があった。
「風邪、引いちゃうかもしれないよ?」
「構いません。風邪引いたらアキさんに看病してもらいます」
そのとき俺は直感した、青年の目が据わっていることに。
流石にあおりすぎたかと思いつつも、こういう目をした相手は悪い気がしない。行為のリスクも受け入れるなら、敢えてその道を進ませるのも一つの選択肢だからだ。
当然それは俺も逃れられない。青年を誘ったのも煽ったのも俺なら、風邪を引いたら看病してやらないといけない。ここまできたらヤり逃げする気も失せていた。
「…わかったよ。その気なら良いよ、ここで抱いても」
「わかりました。精一杯抱かせてもらいます!」
抱き合ったまま俺を組み敷き、青年が上に来る。腰同士が触れ合い、性器も互いに擦れ合う。
復活しいざ挿入、そう試みようとしている青年の腰が、しかしどうにも真芯を捉えられずに何度も前後へ往復してくる。
「大丈夫? 入れにくいなら一度体を離して、しっかり見て?」
「はい、えぇと、ここだから…、あぅ!」
「ひぅっ! もう、しょうがないなぁ…」
見ても擦れるもどかしい行為に、ちょっとだけ苦笑をもらして。両の手で秘所を割り開いた。
この間も自分で見たのだが、グロテスクとも取れる淫靡な肉が、愛液をこぼしてヒクついている。
「ほら、ここがそうだから。意地張らないで…」
「は、い…!」
青年がそこを見て、唾を飲む音が一つ。心臓の音が沢山。
今度こそ青年の肉棒がゆっくりと、俺の中に入ってくる。
「あ、あ…っ、入っていく…!」
「んぅぅ…っ」
感極まったような声と、欲していたものを得られての満足げな声が重ね合わせ響きあう。
童貞には抜け出せない、女の穴が持つ魔力に囚われて、青年の肉棒が奥へ奥へと入り込んで。
それと同時に青年の体と顔が近くなる。腰だけではなく、体までも寄せてきたからだ。
「ぅぁ…っ」
最奥にたどり着かれ、子宮口を叩かれた俺の口から、ちょっとだけ息が漏れて。
「はぁ、はぁ…、挿入りました…」
「…うん、童貞喪失おめでと。中に青年のが入ってるって、はっきり解るよ」
「あ、その、でですね、アキさん…」
「ん?」
「俺、我慢できません…。動いていいですか…?」
「うん、いいよ。思うように動いて、その証を俺に頂戴?」
「あ、証って…。……い、いきますよ」
少し慌てながらも、青年が抽送を開始していく。何かを確かめるかのようなゆっくりとした前後の動きが始まり、膣口が擦られていく。
抜けるのが恐いのか、肉棒の中ほどまでで後退運動は終わり、直後にまた突き込まれる。
閉じてきた膣肉を再び押し開くように、貫通してくる肉棒が再び子宮口とキスをする。
「ん…」
「…あの、アキさん?」
「ど、した…?」
「もしかして、気持ちよくないんですか…? 俺が下手だから…」
「いやいや、気持ち良いよ。今青年のが、奥まで入ってきた時とか。気持ちよくて声が出ちゃうの」
「そうなんですか…?」
「確かに女の体は、男より感じてることは解り難いかもしれないけどさ。それでも…」
ぐい、と自分から腰を押し付けて、青年の亀頭と俺の子宮口を擦り合わせる。
脳まで女性の快感が届き、俺は声が漏れそうになるのを抑えたけれど。青年はそうでもなかったようだ。
「あぅ!」
「…こんな風に、生殖器で感じるところは大体おんなじなんだよ。
だから、気持ちよくないんじゃないか? とか心配するのはまだ早いっ」
腰を押し付け、先端と最奥をぶつけ合いながらも笑って。
「まずは女を知って、どうしたら気持ちよく出来るのか知ること。俺の体を貸してあげるから、遠慮せず動いてみな?
安心しとけ、俺は君より経験してるんだからさ」
「……解りました、アキさん。そこまで言うんでしたら…、俺、いっぱいアキさんの体を借ります!」
「え、ひゃっ、あんっ!」
覚悟を決めたといわんばかりの表情をする青年に、左脚を捕まれ背中を押さえられ、逃げられない体制になってしまう。
前後するだけの抽送も、遠慮するように遅かった先ほどとは違い、確かに勢いを増してきている。
引かれる度にGスポットが擦れ、突かれる度に子宮口が叩かれる。
小細工は少ない動きだけれど、確かに女性を悦ばせることのできる動きが、俺の上と中とでされている。
「は、は…っ、アキさん、アキさん…!」
「んふ、ぅぁ、そこ、いいよぉ…」
青年の抽送も更に力強くなり、肌同士のぶつかる音が浴室に響いてくる。
腰を引いては愛液を掻き出され、突き込まれては先走りが注がれる。
ぐちゅぐちゅと音を立てて肌が触れ合い、粘膜が交じり合う。
「は、ぁ…、んっ!」
「むぅ…、じゅ、ちゅる…っ」
ついにはキスまでしてしまった。口内に入ってくる舌に、自分の舌を絡ませあって、唾液も交換し、互いに嚥下していく。
それを今だけは離したくなくて、青年の頭に手を添えて自分からも貪って。
「ちゅ、ちゅむ…、はぁう…」
キスに夢中になっている間に、青年の手が背中から離れ、両足の太ももに添えられた。
「アキさん、…いきますっ!」
「え? ひゃ、あっ!」
短いかけ声一つかけられて、体が宙に浮く。青年の腕に持ち上げ抱えられて、駅弁スタイルに近い形にされてしまう。
先ほどよりも青年の存在感が確かに大きく、また中に入ってくるものの存在感も増してきた。



「あぅっ、は、あ…っ、深いよ、奥まで、ぇ…っ!」
「はは…、アキさん、やっぱり軽いです。それじゃ…っ!」
「ふぁあっ!」
その状態で突き込まれ、先ほどより確かに亀頭が子宮口を突いてきた。自分の体重のせいもあり、嫌でも押し付けられてくる感覚だ。
女の初体験と同じだ。やっぱりこれは、気持ちよすぎる。
「あんっ、やっ、そんなぁ…、ゴンゴン来る、きてるぅ…!」
「はぁ、はぁ…っ、アキさん、顔がだらしなくなってきてる…」
頬に力が入らなくなったのは確かで、口は常に半開き状態だ。こうして抱かれる事に体が喜びを示してしまっている。
ふと、胎内で青年の存在感が更に大きくなってきた。
「イきます…、アキさん、出ちゃいます…!」
どういうことなのかは今語られたとおり、青年の限界が近いのだろう。放出を前にして肉棒の膨張が、俺の胎内をさらに圧迫してきた。
けれど中に出す気は無いのだろうが、青年は腰を引いてきたので、脚を使って引き寄せる。
「…中に、ちょーだい。さっきみたいに白くてどろどろの精液を、俺の中にさ」
「えぇっ、良いんですかっぅはぁ! そんな締めないで、出ちゃいますって…!」
「いーいーのっ」
最後まで欲しいと思ってねだり、もう一度、キスをした。
「…っ!!」
それが防波堤を崩し、青年の理性を砕ききった。
外に出そうとして引いた腰の力が抜け切り、肉棒は膣内に深く埋没したまま、爆発。子宮へ目掛けて多くの精液が流れ込んでいった。
「あっ、は、あぁ…っ、はぁ…」
脈動と共に流れ込んでくる白濁液の熱さに胎内を刺激されながらも、今回は達することは叶わなかった。
少しだけ不完全燃焼だが、今目の前で体を摺り寄せてくる青年を見ていると、そんな気も失せてしまいそうになる。
「ふふ…、童貞卒業おめでとう、青年…」
そっと頭を撫でながらささやく俺の姿は、どう見ても年下好きのする女、という風貌なのだろう。
そういわれてもきっと否定はできないだろうな。口直しのつもりが、ずいぶんと充実したセックスになったのだから。
その後独りでちょっと慰めたのは、君と俺だけの秘密だぞ?

* * *

さてさて、実はこの話にはもう一つオチがある。
風呂場で致した影響が思いのほか大きく、一晩床を共にした翌日に、青年は風邪を引いていた。
やっぱりか、と内心で一人ごちつつ。これも俺とした影響なら仕方ないと思って、看病をすることにしたのだ。
完治までは流石に数日かかったが、青年が寝ている間に一度家に戻っては着替えたり、精のつく物を作ったりしている内に、ある事が起こった。
…青年の同僚達が見舞いに来た時、俺は運悪く彼らと遭遇したのだ。彼女かどうか、とか散々聞かれたわけだが、適当にはぐらかしてその場は何とか終えた訳だが…。

問題がもうひとつ発生した。青年が俺の方を気に入ってしまい、風邪を引いてるのだが、きちんと別れるまでに体を重ねた数は両手で余る。
……最終的には、彼が元気になったと確認できた時に、行きずりの相手じゃなくてちゃんといい人を見つけなさい、と書いて去ったんだけどね。
俺を探してたりしてないよな。……きっと大丈夫だろ、俺は元々男なんだし。

きっと、うん。多分…。そうだといいなぁ。
いくら鬼でも青年の一夜の夢を壊すのはちょっと憚られるわけだが。
衝動というのは怖いな、と自重することに決めたある日。
朱那に対して強く言えねぇや、俺も。



九談目 蒼鬼と幽霊の場合

今現在俺は、大きなキャリングケースを手に電車に乗っている。
先日確保した吸血鬼の抜け殻をどうするか、という話になり、家に奥にしても戻すにしても、この体の所属を確かめないといけない。
その為にまずは奴が根城にしていたラブホテル内から探りを入れることにしたのだ。
ケースの中には件の吸血鬼が収められている。棺桶と同様の効果になるよう施してあり、これは言わば移動可能な棺桶、とも言える代物になっているのだ。
さすがにこれの中身を見られると弁解不可能な訳で、いつも以上に平静を心がけている。壁際に背を向けて、ケースを自分と壁とで挟んで立つ。
優先席が近いため携帯の電源は切っており、暇つぶし代わりの文庫本を読んでいると、明確な意思を持ってこちらへ近付いてくる足音が聞こえた。
本を開いたまま視線を向けると、そこには少しだけ見知った顔がいた。
「忌乃さん、お久し振り」
それは過去に電車の中で見かけ、今は少女の肉体に憑依している元・痴漢の霊。
肉体の名前が「矢田部紀子」で、実際の名前が「椎田新太郎」だと、蘇生後の連絡で知った。
彼女は元気そうで、今日が平日の真昼間だというのに私服を着て嬉しそうにこちらを見ている。
しっかりと本を閉じ、手提げ鞄の中にしまい込んで、きちんと対応することにした。
「ん、お久しぶり。…今日は学校は?」
「ウチの学校、創立記念日なんで。今日はお休みだよ」
なるほど納得。それなら休校で生徒は暇な訳だ。
「そか。…学校生活は順調?」
「二度目なんで、正直楽勝だね。それに女の子としての生活も、結構楽しくって」
「それならあにより」
実は彼女、矢田部の家には住んでいないらしい。再開したときに現状報告を聞かされて驚いたのだが、彼は生前の住居である椎田の家に住んでいるのだそうだ。
曰く、
「あの両親は初対面で嫌いになったから。“紀子”は吐き気を催すくらいなんで、それならいっそ『俺』の家に戻ろうかなって」
とのこと。
椎田の両親は最初こそ驚いていたそうだ。息子を痴漢容疑者にして殺した相手ならば、そうそう受け入れられなかっただろう。
けれど彼が生前得意としていた記憶術を発揮することで、自室の構造把握から親の知らない秘密の隠し場所、さらには両親の過去話などをすることによって、ようやく理解されたらしい。
それからはしっかりと受け入れ、元通りとは言わないものの幸せに暮らしているそうだ。
まるでブラ○クジ○ックの第1作みたいだな。医者はどこだ!
「忌乃さんは今日も仕事か?」
「仕事というよりは野暮用かな。……ちょっと調べることができたんで、ね」
軽くキャリングケースを叩いて、これ関連だ、と暗に告げる。他者に憑依している為に純粋な人間とは言いがたいのもあり、少しだけ口が軽くなる。
俺の隣に紀子が近付き、耳元で囁くために少しだけ背伸びをしてくる。
「……中に何が入ってるんだ?」
電車が鳴らす走行音にかき消されかねない大きさで、耳元に息が吹きかけられる。少しだけこそばゆく思いながら俺も同じように、紀子の耳元に小さく返す。
「嘘だと思うかもしれないけど、吸血鬼が入ってるよ」
「えぇーうっそだぁー♪」
「…そう思うなら、確かめてみる?」
「良いの? いたいけな女子高生をそっちの道に引きずり込むの?」
「元々入り込んでるだろ、その女子高生の体に、さ」
「あそっか、それは確かに」
お互いに電車の中で寄り添いあいながら、くすりと笑い合う。中身がどうこうは今更言わないでいただきたい。
「じゃあ忌乃さんに着いていく事にするよ」
「良いのか? その格好からして出かける途中だったんだろ?」
「買い物の積りだったけど、それより面白そうなのを見つけたからね。忌乃さんは不都合でもあるの?」
そういわれて、少しだけ思考する。着いてこられて不都合…。
「……ねぇな」
「じゃ、そういうことで」
そういうことになった。
とはいえ、当初の目的地はラブホテルな訳で。こうして真正面から入るとなると、ちょっと気後れするっちゃぁする。
「…忌乃さん、ここ?」
「ここだよ?」
道すがら事の経緯を話しているため、どこに行くかも既に説明済みだったのだが。
紀子は少しだけ顔を赤くして、何度かこっちを見てきてる。
「……入るの?」
「入るよ?」
「調べるの?」
「調べるよ?」
「……何を?」
「女体を」
「……優しくしてね?」
残念ながらそっちがメインじゃぁないんだな。
「…ほら、いくよ忌乃さんっ」
しかして紀子に手を引っ張られ、半ば引きずられるようにホテルへチェックインすることに。
まだ日が高く、利用者数は少ないためか、好都合に件の大部屋は開いていた為、そこへ入る。
掃除や消臭剤、香水などで隠されているが、敏感な存在からすれば性臭が溢れている事に気付くだろう。場所が場所なせいもあるが。
ベッドのスプリングを確かめてる紀子を半ば放置し、ケースを開封。中に入っていた吸血鬼を引っ張り出して、ベッドに寝かせる。
「…おぉ、本当に人が入ってたんだ」
そこから信じてなかったんかい。
「人じゃなくて吸血鬼だけどね。ほら」
口を開かせて犬歯を見せると、感嘆の息を吐きながら覗き込んでくる紀子。
「ホントだ、これは最早“牙”だね」
「これを肌に突き立てて、そこから血を吸うんだよ」
「…でもここからどうするの? 途中で聞いたんだけど、この中に魂が入って無いんだよね」
そう、ホテルへ着く前に紀子にも既に事の経緯は伝えてある。
最も簡単なのは“この体”に直接問い質すことだが、今の吸血鬼は魂の入って無い、腐敗と縁遠い抜け殻だ。それも今ではまだ難しい。
「そだね。生憎俺はサイコメトリーができる訳でないし、このままじゃ何もできないから…、この体の中に入るのが最も手っ取り早い」
「……忌乃さんが、入るの? この体に?」
「…そだよ? 幽体離脱とかもできないから、その辺は道具を使う必要があるわけだけど」
「どんな道具があるの?」
「……見る?」
「見たい」
即答されたので、ため息を吐きながら渋々、キャリングケースの中からその道具を取り出し、見せる。
形状は、中央を蛇腹パイプで繋がれた2本の棒。ただしその中央部分はにわかに膨らんでおり、先端はまるでキノコのように傘が張られ、しかしそこまで張り出してもいない。
まどろっこしい事を抜きにして、解りやすい言葉で話すと、双頭バイブ以外の何物でもないわけだが。
紀子はこれを見て、少しだけ顔が引きつっている。しかし見たいと言われた以上は見せるしか無いし、説明も付け加えないといけない。
「名前が『魂送根』。……まぁ所謂、お楽しみをしながら体を入れ替えるための道具だよ。女になってこれを使い、俺の魂を吸血鬼の中に入れるんだ。
使い方は単純で、両の棒をお互いに入れて交われば、絶頂と同時に魂の移送が行われるんだ。隙を突いて魂を入れ替える、みたいなものだからショックはそれなりに大きいんだけど、皮肉なことに人間と人外や、人外同士での交換においても安全性は保障されてるんだ」
元々の『魂送根』はもう少し違ったものだったんだが、数十年ほど前に今の形に改められたのだ。
忌乃家の3代前、つまり雪姫の祖母である所の当代当主が「いっちょやってみっか」と言わんばかりに改造を加え、現在の形にしたのだ。
その結果、男としての肉体を得て自分の体に子を孕ませ、戻って自分が出産したという変な例ができている訳で。
「……男と女でも、体の交換はできるの?」
「……できるよ」
「……どこに、入れるの?
「解ってんだろ、言わせんな恥ずかしい」
「ア、ナルほど」
言うなよオブラートに包んでても! というか見えた、今解りやすくカタカナになってた!
「……まぁ、そういう訳でな。女になった方がまだ精神的に楽なんだよ」
「それはね、こっちも解る気がする…」
ちなみにお互い目線は合わせてない。流石にケツを掘る云々に関しては、男同士での会話はとてつもなく嫌だ。歌舞伎町2丁目にも行きたくない。
……女として掘られるならまだいい気もするんだが。
「そういう訳で、今から体を入れ替えるつもりだ。…正直、見てても面白くないぞ?」
「ふぅん…?」
女の姿に変化して、ダボついた服を脱いで畳む。その間に紀子はじぃと『魂送根』を見て、時折吸血鬼の体を見ていて。
一頻り脱いで裸身をさらすと、まるで意を決したかのような表情でこちらを見てきた。
「ねぇ忌乃さん。これ、使ってみていいかな?」
「…………あんですと?」
そういって指しているのは、『魂送根』と吸血鬼の両方。
「…吸血鬼の体に入りたいのか?」
「少しね。幽霊のままで居るのもいいかもしれないけど、それ以上に吸血鬼にも興味があってさ。なれるもんならなってみたい、と思った位だよ」
言われて、少しだけ考えを巡らせてみる。紀子が、もとい椎田が吸血鬼の肉体に入り込むということ。
それは持ってきた道具を差し置いても、外部協力者の力で労苦無く吸血鬼の所属が調べられる。
…どうにも運が悪いのか、タイミングが良いのか、測りかねていた。
少しだけ逡巡し、出した答えはこうだ。
「解った、それなら入ってもらおう。…ただし」
「ただし?」
「一瞬でも危険だと思ったらすぐに出ること。幽霊の時や人間の肉体と違って、人外が持つ衝動は大きい。
特にそれが、生存に根ざしているものなら特にな」
「…ん、わかったよ。何かあった時は、忌乃さんに全部任せるよ」
紀子はふわりと笑いかけてくる。信頼してくれてるのか、こちらを疑うようなことは全く言ってこない。
「言ったな? けれどその時は手荒になるかもしれない事だけは理解しててくれ。それじゃ、頼む」
「こっちの体は空くけど、その間に好き勝手しないでね?」
「やらねぇよ」
お互いにくすりと微笑みあって、紀子はベッド、吸血鬼の隣に体を横たえた。目を閉じてすぐ、体を起こすように肉体から魂が抜け出てきた。
力の強い霊は総じて『生前の形』を保っているのだが、しかして紀子の体から出てきたのは『紀子』の魂。
そこまで存在を自分のものにしていたのかと少し感心しつつ、魂が吸血鬼に入っていく。
力なく横たえられていた体が瞬時にビクンと跳ねて目が開くと、一泊遅れて端正な唇が大きく開き、牙がさらされる。
ぎらついた目がすぐ隣に眠る紀子を捉えると、大口はさらに一つの意思を持ってそちらへ向いた。
マズイ!

瞬時に変身を解いて男に戻ると、風と共に紀子の肉体を掴み攫って壁際へ寄る。
先ほどの光景は間違いなく捕食者の目をしており、隣に眠る紀子を確かに『餌』として見ていた。
ということは、だ。
「……チッ、呑まれたか…!」
小さく舌打ちをすると、吸血鬼をしかと見る。
ハァハァと肩で息をしており、血走った視線は背中に抱えた紀子を注視している。口はだらしなく開き、涎さえ零れてくる。夜の貴族の名前はどこへやら、そこに居るのはただの餓えた化け物だ。
「喉が…、渇いたよ…。血ぃ、飲ませてよ…。私の体でいいから…、忌乃さんのでも良いからぁ!」
怒涛のように押し流されてきた吸血鬼の衝動に負けた『椎田』は、こちらへ向かってくる。加減すら知らないトップギアでだ。
床板が踏み抜かれ、等身大の砲弾が大口を開けて飛び掛ってくる、刹那。
「仕方ねぇ…、手荒にいくぞ」
紀子を床に降ろし、右腕を突き出した。
「ガッ!?」
大口を開けて突進してくる吸血鬼の顔面を掴み、圧力をかける。人間なら骨が砕けるアイアンクローに、吸血鬼も怯みだした。
苦痛の原因である俺の右腕に気を引かれ、砕こうと自らの腕を、鋭利な爪を伸ばしてくる。
だが、
「ふっ!」
左の掌底に込めた気を、隙だらけの腹へと叩き込んだ。
「ア、ガ…っ!」
内臓が吹き飛ばない程度の力を込めたのは正解のようで、苦悶の声が吸血鬼の喉から漏れた。
ダメージが腹部に行ってるうちに右手を離し、軽く握る。
左手を腹部から離し、勢い良く引き寄せ、身体を軸として回転させて右拳を顎へ叩きつけた。
「ッ、ォ、グ…!?」
やはり吸血鬼は解りやすい。人間としての弱点を持ち合わせているのなら。脳が存在し頭骨に守られているのなら。脳震盪はやはり有効打となりうるのだろう。
脳を揺らされ、おそらくは足元に幾百万という蟻が上ってきているのだろう。
だが、終らん。
「鬼神拳…っ」
右腕を振りぬいた勢いをそのままに、更に体を回転させる。力強く引いて、肘が伸びた左腕が、今度は拳となって吸血鬼の頭部へと降りおろされる。
「旋風(つむじ)…!」
ごぎり。
裏拳が更に叩きつけられ、吸血鬼は床へと潰れ落ちた。
その勢いは自分でも止められず、顔型を床に作ってしまうほどで。
「……っちゃぁ、軽くするつもりだったが、結構手荒になっちまったな…」
この状態を見て、少しだけ頭を抱えることになった。
だが、やってしまったものは仕方ない。自分の尻拭いは自分でしなければいけないのだ。腹を据えるとしよう。
吸血鬼の体を浴室へ持っていき、口を開かせる。
キャリーバッグの中へ予め入れてあった輸血パックに切り口を入れると、そこからつんと鉄の臭いがしてきた。
パックを傾け、切り口から吸血鬼の口へと内容物を垂らしていく。無駄にならないよう少しずつだが、力を込めて握れば出てくる血液も多くなっていく。
吸血鬼の体も反応しているのか、口内に溜まった血液を自分から嚥下していく。先ほど殴られた部分が既に治り、白い肌にも先ほどより僅かに生気(というのも微妙だ)が溢れてきてる。
(砂地に水を撒いたみたいだな、吸収が早い…。棺おけの中とはいえ、しばらく放置していたから?)
2つのパックがあっという間に無くなり、3つ目を開封しようとしたところで、体がぴくりと動き出した。
「ん、く、あれ…、なんで場所が違うんだ…?」
「起きたか? っとと、あんまり無理すんな。加減したとはいえ殴ったんだから、まだ痛むだろ」
「あぁ、すっげぇ、いてぇ…。忌乃さん、こんなに強いんだな…」
「まったく本気じゃないけどな。力が強すぎてもいいことなんて無いぞ?」
体を起こして、口を開けた輸血パックを渡すと、自分から口をつけて飲み始めた。それくらいには回復してるのだろうか。
「……ちょっと薬臭いな、この血。水道水みたい」
そうなのか、初めて知った。
「…もっと新鮮な血を飲んでみたいなぁ」
こっち見んな。
「ねぇ良いでしょー? 手を挙げたお詫びだと思って、血ぃ頂戴よぉ」
「あんか起きたときは任せるとか言っておいてそれか。…事実だから断りはしないけどさ」
「だってー、お腹空いてるんだから仕方ないでしょぉ?」
3つ目のパックを飲み干して更に回復したのか、自らの足で立ち上がって俺にしな垂れかかってきた。
赤い舌を口から出して、何も着ていない俺の胸板を味見するように舐めてくる。
どうにもこうにも、いまだ収まらぬ吸血衝動のせいで、純粋に吸血鬼であるようにしか思えないのだが。
「ん…、肌越しにでもわかるくらい熱いね、忌乃さんのは。飲むと火傷しちゃいそう」
「……飲んでみるか? 腹の中から焼け死んでもしらねぇぞ?」
「そのときは体から出るからいいもん。ねぇ…、ん…」
次第に口の位置が変わってきており、口付けしたのは俺の首筋。許可さえ出れば牙を突き立てます、と言わんばかりに歯の側面を押し当ててきている。
輸血パックはあと7つ。それでどうにかしたい気もするのだが、肥えた舌では水のみで満足できないのも恐らくあるだろう。
これは仕方なし、と腹を括ることにして。
「……わぁった。ただし限界来たらタップするからな」
「はぁーい。それじゃ、いただきまぁす」
行儀良く声をかけられた後に、つぷりと牙が肌に突き刺さってくる。
「ん…っ、んぐ…っ、ごく…!」
傷口から感じられるのは、血潮が強制的に吸い上げられていく感覚。
たとえ毒を吸い出そうとするのでも、ここまで強くは無いだろう。それほどまでに力強く、行為そのものからはまるで生きるための糧を欲しがるような。母乳を欲し吸い出そうとしている赤子のような。
吸血鬼による血液の嚥下。
「もいひぃ…、いむぁわのふぁんのちぃ、もいひぃよぉ…!」
既に400mlは吸われただろうか、少しだけ視界が揺れるが、なおも吸血鬼は血を貪ってくる。
それでも感覚はまだ生きていて。押し付けてくる体は素肌同士故に、立ってきた乳首が俺の胸板に触れてくる。
聞いたことがあるのだが、吸血行為は性交に近しいのだという。詳しい理由も内容も正直俺は知らないのだが。
けれど熱く脈打つ血液という、他者の生命の証を身の内に取り込むということは。吸血鬼によって何よりも代えがたい行為なのだろうと。
押し倒され、足元に零れ落ちてきた愛液を肌に感じ取りながらも、つとにそう思う。
そしてそれは俺にも伝わってきているようで。確かに奪われ吸い取られているはずの血液とその流れが、股間の一部に集中してきているのだ。
けれどそれは、少なくなってきた血液をさらに絞って脳へ回す分を失くすということで。くらりと更に頭が揺れた。
「…ちょい、待った。タップタップ限界近いって。これ以上吸われると流石にマズイ…」
「ん、わかっひゃ。…しゃいごのひとふちぃ、ん、ごくっ」
だからこれ以上吸われるとマズいと言うに。
「は、ぁ…、すっごい、あつぅい…。我慢、できなぃ…」
「おーい…、おぉーい?」
頬を軽く叩くと、ようやく正気を取り戻したようで、目にしっかりと光が入った。
「あ、え、と? …うん、気がついた。ハッキリしてるよぉ?」
「それなら良いんだが、…体の記憶はどうだ、読めるか?」
うん、大丈夫。血の減った頭でも、あくまで入ってもらった本題を忘れてはいない。それもこれも、何よりこの吸血鬼の素性を調べるためなのだ。
「ちょっと待ってねぇ。…………うん、少しずつ読めてきてるよぉ」
「そんじゃぁ、『君』の名前は?」
「ニーナ=ハッセルバッハ」
「苗字からしてドイツ圏か。君の『親』は?」
「知らなぁい。私の血を吸ったのも、戯れみたいだったしぃ」
「“成って”から、どんな出来事が起きた?」
「……95年位前に大きな戦争が始まったかなぁ?」
なるほどな。つまり見た目から逆算して、110歳以上はくだらないと。
「…む、何か変なこと考えてるでしょ。ダメだよぉ、女の子に歳の話をしちゃぁ」
「わり。じゃあ最後の質問だ。……君は、一人か?」
「……うん。寂しかったよぉ。血を吸いたいけど、できなくって。戦死者とか、路地裏とかで死んだ人とかからしか、飲めなかった。
人から飲むのが、恐かった。私とおんなじ存在にするのが、恐かった。喉も心も、ずっと渇いてたの」
記憶を呼んでいるのか、たどたどしくニーナが喋っていく。見た目からして少女といって差し支えない彼女の苦しみを読んで、眦から涙が零れ落ちてきた。
そっと抱きしめて、温もりを伝える。冷たい死者の肌は俺から熱を奪うが、それを気にする筈もない。
小さく泣きじゃくるニーナの冷たさを感じながら、そっと色素の薄い髪を撫でて、血の巡りが少なくなった頭で考える。
これで大体のことは済んでしまった。
そう、事の問題は大きく2つ。
ニーナの背後に何かの組織があるかどうか。
そしてニーナが親の保護下にあるか否か。
答えはどちらもNO。
あすなを誘惑して、俺が拾ったこの吸血鬼は、ただ一人で宵闇をおっかなびっくり歩いていただけの存在だった。
ここに来るまでの想像は全く意味を成さなくて、ちょっとだけため息が漏れる。
「さて、こっからどうしたもんかなぁ…」
顔を胸板に押し付けてくるニーナの頭を撫でながら、発生した余暇をどう過ごすか。考えを巡らせていた。

「……落ち着いたか?」
「…うん」
ベッドの上に戻ってもまだ頭を撫でている。それほどまでに心細かったのだろうか、体を俺から離そうとしない。
ただ時が刻み、流れていく。時間がかかるだろうと踏んで予め宿泊申請はしておいたから、まだ気にする必要は無いのだが。
「椎田くん…?」
「…………」
「矢田部さん?」
「……ニーナ。今はニーナだから、そう呼んで」
果たして体の記憶なのだろうか、そう呼ばれることを望んだ彼女。それに応えて、きちんと名前で呼ぶ。
「ニーナ、これからどうする…? 君の魂は既に無く、体に残った意思に問うけれど。消えたくないのか、存在していたいのか、俺は問わなきゃいけない」
触れている体がびくりとはねる。ほんの小さな動きだったが、その言葉を聞きたくないようで。震える声で小さく口が開いた。
「…存在していたい、な。消えるのは恐いって、思ってる。ニーナは、ずっと一人だった…」
「…そっか」
「…………ねぇ、忌乃さん?」
「んぅ?」
ふと気付けば、ニーナの口調ではなくなっている。語調から中の人である椎田の言葉だとわかるくらいに。
涙も含んで潤んだ瞳を向けて、こちらをじぃと見つめてきている。
「……抱いてくれる?」
「あんでさ?」
「“ニーナ”が求めてくるんだ。優しくされたのもあるし、忌乃さんがあったかいし、血を吸って昂ってきたのも、あって…。一人でするのも、いや、だから…」
こちらの目を見上げるように見てくるのは、大半の男に有効だと思う。事実俺も、この体勢にはかなり弱い。
「あと、そのね。前に抱かれたとき、紀子を優しく抱いてくれたでしょ? その記憶を知って、“ニーナ”も忌乃さんなら良いかなって…、初めてを、あげても…」
そうだったのか。100年以上生きてきて経験なかったのか。
……それなら、というのも少し変な話だが。そうまで言われて退くほど根性無しではないつもりだ。
肩にそっと手を触れると、瞳を見返して告げる。
「解ったよ。…そんじゃ“ニーナ”の初めて、貰うな」
「…うん。また、優しくしてね」
互いに抱き合い、唇を重ねあう。渇いてるはずのニーナの口内へ舌を絡ませ、唾液を送り込んでいく。
「ん、ちゅむ、んぅ…、はぅ…」
舌同士の接触が気持ち良いのか、自分から積極的に触れてくるニーナの行為が少しだけ嬉しい。もっと優しくしてあげたい。そんな気分さえしてくる。
柔らかそうな胸に手を触れると、驚いたのか体が少しだけ跳ねた。
「…もうちょっと帰すだけにしておくか?」
「うぅん、触っていい…。でも、優しくね」
「はいはい」
小さく笑ってからまた口付けをし、乳房を揉んでいく。
やっぱり吸血鬼は解りやすい。人間とほぼ同じ肉体を有しているなら、性感もそれに準じているからだ。
血を吸っていた時より硬くしこっている乳首を、指先で摘まむ。
「んっ、ひぅ…!」
少し声が漏れてきたが気にせず、胸の重さを確かめ、乳首の硬さを確かめる。
それでも口の中の蹂躙は止めない、上半身でのペッティング。BGMなんて存在しないホテルの一室で、衣擦れ、唾液、肌の擦れ合う音と、小さな喘ぎ声が聞こえてくる。
「ん、ぷぁ…」
「はぁ、んぅ…、忌乃さん、えっちぃね…」
「女の子から誘われておいて、えっちにならない奴が居るもんか。椎田くんだって一人のときは何度もしてるんだろ?」
「う…、まぁ、ね。若いから感度もよくって体力もあるし、それに女って気持ちいいし、何度でもできるから…、つい」
「やっぱりなぁ、体が女の子だとついやっちゃうんだよな」
そっとベッドへ寝かせると、お互いにくすりと笑い合ってしまう。
「…あの時も今回も、同じ男に抱かれて嬉しく思えるなんて、“俺”、バイだったのかもな」
「かもな。とすると俺もバイになると思うが…、いいじゃねぇか。嫌じゃないんだろ? それとも嫌なら、後で女同士でもするか?」
「それ、いいかもな。それなら次は“俺”が攻める形にしたいかも」
「いいよ、その時は好きにしてくれ」
そうしてまた笑い合う。朱那の時より、友人という感覚が強いかな、これは。
その瞬間、目から感じる気配が変わった。男としての意思を感じる目から、色を含んだ女の目へと。
「けど今は…、ニーナが抱かれたいの…。ね、忌乃さん…。ニーナの初めての人になって…」
「わかったよ。…痛いかもしれないけど、我慢してくれよ?」
「ひゃっ、…、うん…」
秘所に手を触れると、既にしとどに濡れそぼっていて、感じているのだという証が手に付いてくる。
少しだけ粘り気を持って、けれど唾液よりさらりとしている、女の愛液。けれどそれ以上に指に帰ってくる感触は、ニーナの秘所の大きさ。
「ちょっと小さい、かな…?」
「うっ。……自覚してたのに言うなんて、忌乃さん酷い…」
「あぁわりわり。…けど、このままじゃ挿れられないな。もうちょっと弄ってみるか」
指先に愛液を纏わりつかせて、女性器の溝に沿って指を這わせる。何度も何度も繰り返し、くちゅり、くちゅりと音を立てて。
「あ、ん、っ! ダメ、そこダメ…っ!」
クリトリスへ触れると、愛液の零れる量が増えてくる。きっとまだ受け入れられる状態じゃない。そう考えて、ダメと言われてもそこを重点的に攻める。
「ちゅ、ちゅく…、れる…っ」
「ひゃっ! は、あぅ…っ! おっぱいも、クリも…っ、おま、こも…っ、忌乃さん、慣れてっ、ひぁっ!」
指先を軽く中に挿し入れて、膣壁を擦る。冷たいはずの体なのに、不思議とここだけがとても熱く感じられてくる。
そろそろいいかな、と思いながら、吸血された時より滾ってる我が分身を、ニーナの秘所に軽くあてた。
「それじゃあ、入れるな?」
「うん、来て…」
少しだけ涙目になってるニーナの花びらを割り開いて、亀頭を押し当てる。ほんの少しだけ、ヒヤッとした。
「あぁ…っ」
挿っていく。小さな洞穴を押し開いていくように。けれども内部は閉まっていき、肉棒が締め付けられていく。
「ぃ、…っ!」
それでも奥へと突き進んで、触れたのは純潔の証である、処女膜。
時間をかけて破られることの苦痛は知っているため、できることなら一気に。
腰を押し出し、ずんと突き破り、奥にある子宮口を勢いよく叩いた。
「ぁ、は…っ!」
ニーナの喉から息が漏れたのは、破瓜の痛みか、それとも子宮口を突く圧迫感か。
ぐっと押し込んだまま、震えているニーナの肢体を抱きしめる。
「……痛いか?」
「うぅん…、中に入ってるのが感じられて…、ニーナのが小さいから、ちょっと苦しいかな…?」
「そっか。…ん、ちゅっ」
ひんやりとした肌を抱きながら、首筋に軽くキスをする。火照ってきた肌には心地よくて、できればずっと抱いていたいと思うほどに。
「ぁ、あ、んちゅ…っ、ちゅむ…」
「んむ…、は、ふ…」
小刻みに震えるニーナの唇が、再びのキスを求めてきて、それにも応える。
何度目かになる唾液の交換や舌が接触する度に、肉棒の先端や幹がぎゅぅと締め付けられてきて、これだけで心地よくなってくる。
やはり小さいニーナの膣は、俺の肉棒全てを飲み込むことはできなかったけど。それでも精一杯受け入れようと開いてきて、内心とても嬉しくなる。
「……動いていいか?」
「…うん、動いて。これだけで終らせるなんて、しないでしょ…?」
「ふ…っ。当然、最後までさせてもらうよ」
抱きついたまま腰を動かし始める。最初はゆっくりと引き出して、亀頭が外気に触れたらまた突き込む。
まだまだ拙い相手への、初めての性行為ならば。最初は技巧を凝らさない方がいい。単純な行動を繰り返しての行為に収めたいと思っているわけで。
腰を叩きつけ、子宮口を突付く。粘膜同士の接触は、不思議と吸血鬼と鬼の交わりだというのに、ニーナも俺も、昂ぶってきている。
左腕で腰を抱き寄せ、腕の力も込めての挿入。締め付けられる感覚が強くて、抜かなければ押し潰されてしまいそうなのに、けどやっぱり中に入れてしまいたい。
男としてのサガはやっぱり強暴だ。抑えられる内はまだいいけど、本気で猛り狂ったらどうなってしまうのだろう。
「あっ、は、んぅ…っ! 忌乃さ、ん…っ!」
組み敷かれ、抱かれるニーナの声は甘く響いていて。潤んだ瞳は魅了の魔眼の力さえ覗かせていて。
堪えきれないのかな、と思いながらも、右手の指先をクリトリスへと触れさせた。
「ひぁっ! そこ、だめ…っ、ん、ふぅぅ…っ!」
指で弾くと、それだけで締め付けられてしまう。きゅぅきゅぅと締め付けてくるそこに負けないよう、腰の勢いも強くなっていくのだが。
「だ、め…っ、ダメぇ…っ、キてるのに、イケない…っ、足りない、のぉ…!」
「足りない、か?」
きっと本来なら達しているだろうに、足りない。そして吸血鬼の性的興奮の引き金。
そういう事、かな?。
「解ったよ。……もうちょっとなら、良いから」
「あ、は…、血ぃ、鬼の血ぃ、美味しそぉ…」
腰を叩きつけクリトリスを弾きながらも、体を寄せて首筋をさらす。
唾液が糸引く口を大きく開けて、先ほどまで吸っていた自分の牙の後へ、もう一度突き立ててきた。
「んっ、んふっ、ごく、んもぅ…っ!」
まるで膣の締め付けと連動していますと言わんばかりに勢い良く吸われていく。
けれどそれに合わせて、確かにお互いが高まっていくのが解る。
子宮口は精液を欲しがって降りてきて、俺の肉棒も発射しようと膨らんで。
そしてお互いに、限界が来た。
「…っ、出る! ニーナ、出すぞ…!」
「来て…っ、ニーナの中に出してぇ…っ! んぐっ、ごきゅ…っ!」
これで最後と思い腰を叩きつけ、子宮口と亀頭のキスをした瞬間に、爆発した。
精液が大量に溢れ出て、ニーナの子宮奥にある卵子へと本懐を遂げるために出撃した。
「あ…っ、つい! 精液熱っ、イッちゃ、イッちゃう、あぁ、はあぁぁぁぁー…っ!」
生命が注ぎ込まれたニーナは、吸血と胎内に感じる熱とで、ようやく達せたようだ。涙を流しながら、感極まったような表情で大きく口を開けている。
その口端から覗くのは、先ほど俺から吸っていた血液で。そこがなければただの性交だろうに、逆にそれがあるだけで“吸血鬼との交わり”なんだと認識してしまう。
「あ…、はぁ…、ふぁ…」
ニーナは腕の中で荒く息をついている訳だが…、それ以上に大きな問題が俺には発生していた。

こうして性行為をする前から、新鮮な血が欲しいという理由で俺はニーナに血を与えていた訳だが…。
あの止めた時には既に結構な量が飲まれていたのは想像に難くない。多分1リットルはいかれてた。
そこにきて更に追い討ちといわんばかりの吸血行為。ただでさえ減ってるのが更に減った訳で…。
そして俺は生身だ、血液が無いと脳が死ぬ訳で…。
何が言いたいのかというと、いかん、血が足りん。
GAKURI。


「もぎ取れないなら刈り取ればいいとっ! あぁでもそれは首じゃないかーっ!?」
とてつもなく嫌な夢を見て跳ね起きた。何かがサックリいってしまったような、恐ろしい夢。人間時代にどこかで聞いた曲が元だったような気がする。
…あぁそうだよ、朱那が、というか那々が持ってたじゃないかあのCD。
血液不足でくらりと揺れる頭を振って周りを確認すると、視界に入るのは見事にラブホテル。
「…あぁそっか、ニーナを抱いて吸われたんだっけ」
「あ、忌乃さん起きた?」
吸われた後を指でなぞっていると、浴室から吸血鬼であるニーナが出てきた。どれだけ気絶していたのかは解らないが、女性が一風呂浴びれるだけは寝てたのだろう。
「どうにかね。……満足できた?」
「結構満足した。いっぱい吸って、忌乃さんの色々を知れたしね」
反射的に、もう一度吸われた後を抑えた。
そうだ、吸血鬼の本質を忘れていた。

血を吸って、己のものとすること。
血を得ることによって、相手の存在を己のものとすること。
ならばこそ、知られたのか。
誰にも話すことの無かった事を。誰にも言うつもりの無かった事を。
苦痛の楔を打ち付けて掘り起こすことを否とした。
俺の、記憶を。
「……そんなに脅えた顔をしなくても大丈夫。誰にも話す気は無いからさ」
「……それなら、良いんだけどな…」
脅えた顔を、しているのだろうか。
きっとしているのだろうな。今更ながらに掘り起こされた記憶、まだこんなにも触られることを嫌がってる。
気にしてはいけないんだ、今は。この記憶は今は関係ないから。そしてまた忘れなければ。
今は目の前に居る、吸血鬼のことだ。
表情を作って笑顔に整え、目の前の幽霊に向き直る。
「椎田くん、色々ありがとう。…ニーナの背後関係がまっさらだったから、この話はこれで終了だ」
「…ニーナは、どうなるんだ?」
「どうなる、って?」
「…だって、忌乃さんの言葉だと、これから先は無いんだろ? ……ニーナ、すごい恐がってるよ?」
恐がっている、か。
少しだけ考えを巡らせていれば、行為の前の言動から、ニーナは触れ合うことに餓えていたようだ。
これで終るということは、正直に言えばもう、この体を探る必要性も薄い訳で…。
「…そうだな、この先ニーナを探ることは多分無い。だからこそ…」
「…っ」
だからこそ、どうするのだろう。
少しだけ、考えてしまった。
不安そうなニーナの顔を見て、目を閉じて。また考える。
二の句が告げずに、時間だけが流れていく。呼吸音や、衣擦れの音、ニーナが肌を擦り合わせる音。
15回目の呼吸が終って、16回目の吸気からようやく口を開く。
「……考えつかねぇ」
「…え?」
正直な感想がそれだ。
頼るべき存在、“親”がいない。夜の貴族の領地もない。おそらく吸血鬼同士横の繋がりもない。
そして何より、“魂”がない。
本来なら然るべき手段をとり、地へ返せればそれで良いのだろうが。体を重ねたせいかそんな気も起きない。
「言葉の通りだ。俺はニーナをどうしたらいいのか考えつかねぇ。今は考えが決まるまで蔵の中にしまい込むのが限界だよ」
「…それじゃあさ、俺が“ニーナ”になるのは、どうかな…?」
「君は自分の両親が居るだろっ。…ちゃんと帰ってこれたのに、また別人になるつもりか? それも、吸血鬼に…」
「……忌乃さんだって、帰ろうと思えば帰れるじゃないか」
「…俺は無理だ。もう、鬼という化け物だからな」
体へ進入し、記憶も共有している彼の感情論を止める。確かにそうすれば、“ニーナ”はまた生きられるが、代わりに椎田がまた死ぬことになる。
それだけはダメだ。人間の体であるならまだしも、吸血鬼になってしまうのは、絶対に。
けれども椎田の言ってた事は、ある意味手段としては確かにいいのかもしれない。誰かに“成って”もらうことで、ニーナを蘇生させる。
だがこればかりは、認められなかった。一時的であるならばまだしも、永続的になんて。
「……解ったよ、そう言うならやめておく。紀子に戻るよ」
開かれたままのキャリングケースに体を丸めてしまい込み、椎田の魂が紀子へと戻っていく。
生者の肉体が生気を取り戻し、紀子の手でケースが閉じられた。
「…どうするつもりなの?」
「…どうしたもんかなぁ」
小さい問答だが、今の俺としてはそう答えるのが精一杯だった。
最初の疑念は晴れたが、次の難題が発生した。よくあることだ、本当に。
「…じゃあ、長期的な視野じゃなくて、当座はどうするつもり?」
「当座? …まずは保管だな。定期的に血液を与えつつ、体が完全に消滅しないようにする、つもりだ」
「……それが決まってるなら、今無理に全てを決める必要は、無いんじゃない?」
「え…?」
ふと顔を上げて、紀子のほうを見る。彼女もこめかみに指を当てて何かを悩んでいるような様子で、小さく言葉を繋げていっている。
「長期的なことは常に着地点を見据えていかなきゃいけないけど、今はそれも見えてない。
俺は門外漢だから最終的な部分は忌乃さんに任せるけど、それも無いのなら…、当座を凌ぐしかないよ」
紀子の言葉は、在る意味では今までの経験から来ている言葉なのだろう。先が見えていないなら、今を何とかするしかない。
それは確かに現実的だ。暗中模索の末に“偶然”最善の結果が見える? なにを馬鹿な。
暗闇で先が見えないのならば、足元を固めるしかない。どこへ行けばいいのか、標を探るしかない。
できないことは、できないのだ。

「……そうだな、今の段階で思い付かないんだ。無理に頭を捻っても、出てこないか」
「それじゃニーナのことは…?」
「しばらく保留だ。どうにか出来るまでは、だけどな」
「良かった…。ニーナが死ぬと嫌な気がするし、そう言ってくれると、あの時助けてもらった忌乃さんみたいに思えるよ」
「……って、今まではそう思ってなかったのか」
「ちょっとね」
「…抱いちゃうぞー?」
「きゃーおかされるぅー♪」

もしかしたら気を使ってくれたのだろうか。そう思いながら時間が来るまで、今度は紀子と抱き合った後にホテルを辞した。
ケースの中には眠るニーナ。行きより少しだけ重い気がしたのは、きっと間違いじゃないだろう。どうにかしてニーナを起こし、再び動けるようにしなければいけないという使命の分が。

俺が静穂のこと(本体)を思い出したのは、その翌日、夕食を作っていた時だった。




十談目 蒼鬼と朱鬼の場合 その2

現在から時間を遡って、俺が処女を散らした時の話をしよう。
時期的にはあすなが家に来て2週間程度の、そろそろ彼女が慣れただろう時期。あまりおおっぴらに動き回るなと言っておきつつも、ちょっと出かけてくると言って数日不在になっていた頃だ。
俺と朱那が友人関係であり肉体関係にあるのは皆も良く知るところだろう。今日も今日とて彼女は俺に抱かれていて、ひと段落着いた後の事である。

「一つ聞きたいのだが貴様、変化の術は使えたか?」
布団の中で顔をつき合わせている時に、不意にそう聞かれた。
術という言葉に際して、少しだけ腕を組んで悩んでしまう。
「んー…。使えるんだか、使えないんだか…」
「…何だその曖昧な返答は」
「いやぁ…、そのあんだ、俺の場合はあまりにも特殊なものだから、変化と定義づけるのは若干難しいんだよ…」
鬼の中には変化の術に長けた者もいる。
茨城童子が渡辺綱の乳母にその身を変化させて、切り落とされた自らの腕を取り返した、というエピソードがあったりする。
双転証を発案し、その子孫が改良を加えたりと、俺の氏族『蒼の鬼』はそういった術に長けている鬼、なんだが…。
正直に言えば、俺は術は苦手だ。それこそ簡単なもの位しか使えないし、使おうとすると術式を処理しきれず、不発に終ることが殆どである。
変化として意義付けられるものを、頭の中から思い出そうとする。思い当たるのは、1つだけ。
「俺が変身できるのは、不特定多数の姿じゃなくて…、1つだけなんだわ」
「ほう。…して、どのような姿に変化できる?」
俺が“できる”と知った途端、朱那の瞳がやや大きく見開かれた。それはほんのり、獲物を狙う肉食獣の香りを漂わせるような…。
「……えぇーと…、今じゃなきゃダメか?」
「可能な限り早くして欲しい」
「んじゃ明日の朝にでも「やはり今やれ」早っ!?」
「明日の朝などという寝惚けた事は聞かん。1時間程度なら待つぞ。まだか、まだか?」
「だから早いって。今致したばっかりなんだからちょっと待ってくれよ…」
5回位したのに、一秒経たずに急かす朱那をちょっと待たせ、体を布団に沈み込ませる。
依然ワクテカしたまま止まらない朱那を、少しだけ押し留めるように、疑問に思ったことを開いてみる。
「そんなに言うなんて、朱那? …気になるのか?」
「…何がだ?」
「俺の変化した姿」
「…う、うむ、まぁ、な」
「あんだよその曖昧な答え…」
「先ほど貴様もしたろうに。…しかし、うむ、気になるといえば気になる。具体的に言えば貴様が女の姿に変化できるのかが、な」
「うわ具体的ー」
互いに横になったままのピロートークだが、まだ寝には入れはしなさそうだ。
と、そこまで言ってから、俺の鼻が妙な臭いを嗅ぎつける。
そう、それはとても今この場にマッチする、しかし今この場に存在するものとは異なる臭い。
畳の草の臭い、柱の木の臭い、障子の紙の臭いでもなければ布団の臭いや綿の中で死んだダニの臭いでもない。
そうう、それはとっても嗅ぎ慣れた、栗の花の臭い。子種の臭いだ。
しかしこれは俺のではない。もうちょっと別の、言うなれば1月ほど前にセーフハウスの中で何度も嗅いだ…。
「……なぁ朱那? お前、ムスコが元気になってるだろ」
「む…っ、何を根拠にそのような。そういう蒼火こそ卑猥なことを考えているのではないのか?」
「俺は絶賛賢者タイム中だ。…それに鼻に届くこの臭いだが、別の意味で少し臭うんだ。…ちょっと中で黄色くなってるんじゃ…」
そう、妙な臭いとはそれだ。精液は蛋白質で形成されており、長時間の放置で腐敗する。栗の花とは別種の臭いを、意識するとどんどんキツくなってくる。
「……………………」
「……………………」
そして顔を出してくる沈黙の時間。秒針の音だけが妙に大きく、かち、かちと時間を刻んでいく。
「……………………仕方なかろぅ」
ぽつりと、朱那が口を開いた。寝転がってる俺に覆い被さり、逃がさんとばかりに腕に力を込めてきた。
「仕方なかろうが! 私の男が我慢の限界なんだ! ここ最近女子更衣室では滾って抑えが効かないんだぞっ?
解るか、貴様に解るというのか? 男を迎える準備の出来た女達の無防備な姿があられもなく乱れていることが!
色とりどりの下着に包まれたしなやかでふくよかな膨らみが一人につき胸と尻とで4つずつだぞ。“ほと”からの匂いも届くんだぞ!?
我慢できるか、仮に貴様がそこにいて男が我慢できるというのか?」
「それは外せよパージ可能なんだからさぁ!」
「外しているわ! しかし疼くんだ! 入れさせろ入れさせろとせがんでくるんだぞ!?
自分の中に入れてもあまり良くなれん。貴様が、その、私に女を教え込んでしまったんだから…」
「うひー、そんなに元気なのか…。…うーん」
唾を飛ばしながら大声で訴えてくる朱那だが、内容はそれなりに逼迫しているようだ。
俺が抱く前は、男として自分の女体に興奮していたから達せられたのだろうが、抱かれた後は女としての顔も出来てしまったわけで。
朱那の立ち位置を確立させる為に抱いたつもりだったのだが、男性機能の欲求不満という更なる問題を引き起こしたようだ。
「“私”の学校生活を自ら壊す訳にもいかんだろうし、魔羅の滾りをどこかで留めねばならんのも解っておるが、これ以上は流石に堪えきれん。
何より自分で致しても達せられないんだ! それもこれも完全に貴様としてからなんだぞ!?
責任を取れ蒼火! 潔く女になって私の男を慰めろ! 早く!早く!」
ハリーハリーと聞こえる辺り、昔人間の友人に借りた漫画を思い出す訳だが。
随分エキサイトしてるな朱那は。まだ俺が女の姿になると言ったわけじゃないのに。
手を叩きつけようとしてくる朱那を押し留めて、溜息一つ。
「わぁったわぁった。変化するからまずはそこをどいてく「ダメだ。どいたら貴様が逃げるかもしれんからな。私に跨られたままで変わるといい」
即答ですかそうですか。あぁ全く朱那さんめ、よほど切羽詰ってると見える。
仕方なしに体内の魔力を整える。
息を深く吸い、吐き出すと、それと同時に肉体が変化を始めていく。

自慢じゃないが長い黒髪が色を失い、金色から白へと。
筋肉が落ちて脂肪へと変わり、代わりに肉体を肉体を包み込む。
ググ、と変換された脂肪が胸部と尻たぶに移動すると、乳頭が桜色に戻っていく。
肌や瞳からも色素が抜け落ち、白い肌と赤い瞳になれば。
顔面、骨格、そして内臓も、まるで音を立てるようにして変わっていく。
男性の象徴である肉棒も、まるで存在してはいけないものだと言われるように体内へ吸い込まれ、代わりに女性器が顔を出す。先ほどまで肉棒が滾っていた影響か、愛液がとろりと零れ落ちているのが、敏感になってきた体でよく解ってしまう。
一呼吸を終えたと同時に、ほぼ肉体の変化は終了していた。
「おぉぉぉ…っ」
そして変化の過程をじっと見ていた朱那は、すっかり驚きと喜びの入り混じった表情になっている。
「なるほど、全く別人ではないか。すごいぞ蒼火、一つだけとはいえここまで変われるとは驚きだ。
色が抜けたような白い肌に髪…、寝床の上では眼と、乳首と、“ほと”だけでしかわからんではないか」
「んひゃっ」
唐突に胸に吸い付かれ、驚きの声が上がってしまう。
両の手で挟むように捕まれ、絞り上げられるように持ち上げられ、舐められる。
男だったときにはありえない、女になれるようになっても初めてのことで。少しだけくすぐったい。
「んむ、ちゅ…、はぁ、なんという匂いだ。こんなに濃密に女の匂いを嗅げると…、どうにも我慢できなくなってしまうではないか…!」
近づけた鼻をひくひくと動かし、鼻腔いっぱいに俺の匂いを嗅いでくるわけだが。
一挙動の全てが正直恐いです朱那さん。
「…いかん、私の中に残った男が反応してきたぞ。これは止められん…! 少し待っていろ蒼火!」
一人勝手にエキサイトしている朱那は、飛び跳ねるように俺の上から降りて自分の鞄を取りにいった。
少し触れられただけの俺を置いて、どたどたと足音を響かせ隣の部屋まで行き、同様の足音のまま自分の肉棒を握り締めて戻ってきた。
それと同時に、意識してるからか更に漂う腐りかけた性の臭い。
「よし、よしいくぞっ。蒼火、今から貴様を抱くからなっ? 恐いとか言っても止めんからなっ?」
「正直今の朱那は眼が恐い…」
「もはや問答無用!」
「だぁぁちょっと待て待て待てって!」
「何だ蒼火、今更怖気付いたところで私は我慢の限界なんだぞ?」
「怖気付いたとかじゃなくて! それをそのまま俺に入れるのかよ!」
「できるならそうしたいが…、何か問題でも?」
「大有りだ! マズは一回抜いて、その黄色くなった精液を出させてくれ」
「む…、それも確かに。……ならば頼む」
そう言って股間に装着し、ふたなり状態になった朱那が肉棒を突き出してくる。
こいつ、人が言ったこと理解してるのか? とか思うのだが、まずは出さんとどうしようもない。
本番ナシのソープで鍛えた手管、見せてやろうじゃないか。
「んぅ、れる…」
大量の唾液を手に塗し、朱那の肉棒に触れる。
力強く隆起している幹に触れると、確かに熱を持ち大きく脈打ってる。
「んじゃ行くぞ?」
小さな宣言と同時に手を上下に動かし始めると、ぬちゅり、と音が鳴り始める。
「お、ぅふ…! 私の魔羅が、これだけで悦んでる…」
よほど致されるのが久しぶりなのか、これだけで先走りが漏れてきてる。さすがに早いと思いつつも、溜めてるなら已む無しと思いつつ。扱く手は止めない。
痛くないように握りつつ、しかし感じるところを重点的に指先で突付きながら幹を撫で続ける。
「は、ぁ…っ、手馴れてるでは、ないか…。どこで覚えたというのだ…?」
「あのな、俺は元々男だっての…。そんなことを言うのなら、よ、っと」
「ふひゃっ!?」
先ほどまでの行為もあって、精液と愛液とで濡れていた朱那の女性器に手を添える。
指を二本ほど差し入れ、中で曲げて引っかくように抉り出し、粘液を掻き出す。同時に精液も零れてきてるが、気にすまい。
「あっ、そこ、はんそ、くぅん…っ! 何を、するぅ…!」
女性器をかき回すだけで肉棒が反応しており、それを刺激するようにまたしごき挙げる。
精液がほぼ抜けきり、愛液だけが零れ落ちるようになってきたのを見計らって、手を離した。
「は、ぁ…、何故、いきなり離す…」
朱那の言葉をやや無視して、しごいていたもう片方の手を自分の女性器に触れさせた。
想像通りそこは濡れており、太ももにまで愛液が伝わっていた。
自分の方にも指を入れて、朱那と共にかき回し始める。
「ん、く、ふぅん…っ」
「こ、こら…、そこじゃなくて、魔羅を…、あっ!」
掌に感じ始めてきた液を掬い取ると、すぐに手を抜いて、朱那に見せ付ける。
「ほら…、俺のと朱那のお汁だよ…。今度はこれを使って扱くからな?」
「何をする蒼火、あっ、ひゃ…!」
両手についた愛液を幹にこすり付けると、今何を付けられたのか解ったのだろうか、肉棒が大きく跳ね上がった。
「朱那のちんぽは正直だな、これがどういうのかわかるんだもん。…よっ、と」
「こら、あっ、ひぃ…! そこを掴むな、んぅ…!」
先ほどより滑りやすくなった肉棒を両手で包んだ、簡易オナホールでしごいていけば。当然前後運動の結果として先端へと行き着くことになる。
敏感な亀頭を包み込み、痛みを与えないよう指の腹でぷにぷに触れていくと、それだけで朱那から喘ぎ声が上がってくる。
「ほれほれー、こうされるとやっぱり良いだろ?」
「あぁ…、他人の手でされることがこんなに良いとは…。蒼火、貴様これをどこで覚えた…」
「秘密ー。…ん、いい感じに先走りも溢れてきたな。やっぱり臭うぞ?」
2人分の愛液と、俺の唾液の混合液に、更に別のものが混じり始めてきたのを感じる。
鈴口から染み出てきた先走り。ほんの僅かに臭気を漂わせつつも、自分も混ぜろと言わんばかりに入り込んでくる。
ぱく、ぱくと開いては液を漏らしてくるのは、やっぱり何度見ても面白い。
ただこのまま視点を移さずにいると、白濁ならぬ黄濁した精液をかけられそうなので、体を少し朱那の横へ回す。
「む…、どうしたのだ、久方ぶりに男の方でいけそうだというのに…」
「焦るな焦るな、ちゃんと出させてやるから。あー、んっ」
小さな口を横いっぱいに広げて、横から幹にかぶりつく。表面についた混合液を舐め取るように、舌を根元から先端へと這わせたり、口の外に出てる部分を指先で突付き回してみたり。
亀頭へ触れた手は、当然の如くそこを優しく撫でている。
変則的なフェラチオだが、ここまで高ぶっているのなら効果はある。
「あぅ、く、んぅ…!」
「はむ、ちゅぷ…、あ、む」
先端と根元を弄りながら、そろそろかと思い口を開いて。
かぷ、と幹に軽く歯を立てた。
「あ…っ! く、うあぁぁ…っ!」
朱那の口から出てきたのは、力が抜けていくような嬌声。けれども先端に触れた手から、噴出する力強い感覚はなくて、感じられるのは何かが零れてきたようなもの。
視線だけを動かして見ると、そこからは確かに黄色く濁った精液が噴出してきていた。
けれども溜めすぎていた影響か、半分固体に近いほどの粘性を持って流れ出してきたのだ。
「あんだよ、こんなに溜まってたのか…。もうちょっと出さなきゃ駄目か?」
「あぁ、頼む…、もっと出させてくれ…。出したいんだ、それだけ溜まってるんだ…」
待ちかねていたものを少しずつ吐き出せていることに悦んでいるのか、朱那の瞳は快楽に潤んでいる。ならばお望みどおり、沢山出させないとな。
「あむ…、じゅる、むぢゅ…、んむ、れぅ…」
「あぅ…! は、あぁ…っ! いかん…、搾られるぅ…! 口が、あったかいぃ…!」
幹を咥えたまま、舌で裏筋を撫でるように顔を横へ動かして、しごいていく。
尿道をいざ通らんとする精液は、皮膚越しにもその柔らかさを確かめることが出来てしまうほどで。
根元は女性器に触れて、先端は放出した精液を巻き込んでまたなで上げて。
臭いは確かにきつくなって来てはいるものの、こうして感じて、射精をしている事に、少しだけ嬉しくなった。

* * *

「あっ! あっ! ひぁ、っふぅ! ダメだ、また出る…っ! んひぅぅぅぅ!?」
びゅぅ、と勢いよく精液が噴出して、すっかり精臭の染み付いてしまった手に当たる。
口と手だけで致して、これで朱那は既に7回目の絶頂だ。これだけ出してもまだ精液は薄くもならず減りもしない。
どれだけ溜めてたんだと内心思う反面、これだけ出せばもう平気かなと思うと、咥え続けてすっかり辛くなってきた顎を閉じた。
「あー…、あごがいてぇ。ちょっと休憩…」
「はぅ…、ふぅ、ふぅ…」
「…おーい朱那ー、大丈夫かー?」
「……あぁ、まだ、なんとかな…」
すっかり放出に力を使い、座り込んでいる朱那に声をかけると、息も絶え絶えといった感じで応えてくる。
脚で立つことさえ出来なくなったくせに、肉棒だけは隆々と屹立させやがって。
「だが、まだだ…」
「…あんですと?」
「まだ蒼火の“ほと”に入れておらん…! 貴様を『女』にするまで、私の魔羅は納まらんぞ!」
あー、そういえばそうだったっけ。フェラと手コキも、臭い精液を出すためにしてたんだよな、うん。
だけど今の朱那さんは、仰向けになったまま胸と肉棒だけが大きく存在を主張している。
「…ところで朱那。立てるか?」
「脚に力が入らんな! 腰ならしっかりと入るのだが」
威張んな。
「早くしてくれ蒼火、私の上に跨って自分から肉棒を咥え込むがいい」
「うるせぇよっ! してもらうマグロ状態でよくもまぁそれだけ言えるな…」
こちらも座り込んでいるわけだが、朱那と違って口と腕しか疲れていないので、まだ余裕はあるわけだが。
何はともあれ、手にこびりついた精液を何とかしたい気分でいっぱいだ。
「よ、っと…」
「速く速く! 私の魔羅がまだ満足しきってはいないんだぞ? 入れさせろー、女の中で出させろー」
「ちょっと待てって…。これをまずどうにかしないと…」
立ち上がった俺に対して、やっぱり朱那が急かしてくるわけだが。
溜息を一つ吐いて、左手に魔力を集中させる。そこを中心として風を巻き起こし、朱那の出した精液を限定に絡めとって一まとめにする。
そのまま風呂場の排水溝へ続く風の流れを作り、それに乗せて流していく。これで恐らく精液に関しては大丈夫。
で、朱那の方を見ると。今か今かと俺(の股間)を見ている。そして未だ元気すぎる朱那の男。
「あぁもう仕方ねぇなぁ…」
諦め混じりに朱那の股間の上に乗っかると、太股をがっしり掴まれた。逃がす気は到底無いようだ。
……女としての初めてが騎乗位かよこんにゃろう。後でSMでもやってやろうかと考えたりする。
しかし内心では、挿入される事に多少なりとも恐怖を感じてしまっている訳だ。
「…あー、うー…」
「……どうした、蒼火? まさか入れられるのが恐いのか?」
「そりゃまぁ、なぁ…。状況も状況だし、あにより自分から入れるってのが…」
「何を怖気付いているのだ、貴様らしくもない。……だが、そうだな。自分からするのが恐いというのなら…」
朱那が自分の腰と腕に力を込めると、くちゅり、と音を立てて朱那の肉棒と、俺の女性器が触れ合う。
先ほどまでと違う、けれども同じ男女の営みに少しだけ背筋が固くなった。
「自分から入れる必要はない。……そのまま、入れてやろう」
「あ、くぅ…!」
宣言と同時に、腰が突き出され、また手繰り寄せられる。それと同時に割り開かれ、朱那の『男』を受け入れようとする、俺の『女』。
先ほどまでの行為で確かに濡れてはいるものの、それでも尚、貫いてくる肉棒に体が悲鳴を上げている。
「あう…、く、きつ、い…っ」
「あぁ、中がうねっている…。女に挿れる立場なのはいつぶりだ…?」
あぁくそ、朱那の奴こっちを気にしちゃいねぇ。しかもたっぷり出した後だからまだ余裕がありそうだ。
「朱、那…っ、ちょっと、タン、マ…っ、なか、広がって…」
「あまり耐えると辛いぞ、蒼火。快楽を我慢してはつまらんぞー?」
そりゃお前は開通済みだからな。こっちは想ったより痛くて声を出すのも辛いんだぞ?



「…む?」
と、ゆっくり挿入されていた朱那の腰が半ばの辺りで止まった。何かを確かめるように、小刻みに突いたり、軽く腰を回している。
「どう、したんだよ…。朱那…?」
「いや、ひとつ気になったのだが…。もしや蒼火、処女か?」
「当たり前、だろ…。入れられたことなんて、ねぇよ…」
「……なるほど、蒼火の男も女も私が初めてと言うわけだな! ならば遠慮なく貰ってやろう」
そこはちょっとは遠慮しろよ。
というか処女膜あったんだ、俺。この姿になった由来を考えると、てっきり無いもんだと思ってたけど。
「なに、痛みなのは変わらん。いつもと同じく紛らわれば良いんだ。…進むぞ?」
「ちょっと待て、心の準備がっ!? …っ、くぁ…!」
抗議しようとした瞬間、奥まで貫かれた。自分の体重のせいもあり、これ以上進めないという位置まで、完全にだ。
それと同時に襲ってくるのは、僅かな快感を押し遣るような強烈な痛み。
男だった俺が感じる、破瓜の痛み。
脊髄を通って脳を叩く、『女』になった証。
「ぁ、か…、は、ぅ…!」
正直に言うと、痛い。今まで何度も戦ってきて、何度も体に傷を付けたけど。それらとは全く違う、内側からの痛みが襲ってきた。
無意識に涙がこぼれて、口からは声が出てこず息しか漏れない。
けれども敏感になってしまった女性器は、愛液の中に混じる破瓜の血。その存在を確かに感じ取ってしまっていた。
「はぁ…、久方振りだ。女の中に入るのもだが、これ程までにきつく、しかし魔羅を受け入れられる“ほと”も…」
そんな切羽詰まり気味な俺の下で、朱那さんはとても恍惚そうな顔をしております。
確かに気持ちいいのだろう、中で脈打つ肉棒が膣壁を擦ってくるのが、嫌でも感じ取れてしまう。
でも。
「あぅ、ぅ、動かすなぁ…」
正直こちらに余裕は無いんだよ。痛い。マジ痛い。
これが正常位なら腰を引いてもらうことも出来るんだろうけど、この体勢では自分の体重で嫌でも深く入ってしまう為、無理だ。それだけじゃなく、膣内いっぱいに朱那の肉棒が入り込んでいるのもあって、体の中から強い圧迫感がある。
性行為中の女性はこんな感じなのかと、痛みに鈍る頭の中で思ってしまう。
「はぁ、くぅ…、んっ、つ…」
浅い呼吸を何度か繰り返し、痛みを自分の中で消化していくと、下で朱那がようやくこっちを見たのか、少しだけ眉根を寄せた顔で問うてきた。
「…どうした蒼火、そんなに辛いのか?」
「あぁ、…っ、ほんとに、きつ、くて…っ。朱那の、デカい…!」
「…そうだったか、すまん。……ほれ、少し体を寄せろ」
両腕を開いてくる朱那の胸元へ、力が入らぬままに倒れ込む。
汗が浮かんだ肌同士がぶつかり合い、また乳首同士がこすれあった。
「「ん…っ」」
奇しくも声がハモってしまう。お互いに敏感になっているというのに、まだ快感を高めあうことが出来るから、体というのは不思議なものだ。
「……朱那」
「蒼火……」
見つめあい、はにかみあって。一番最初にしたときのように、口付けをする。
「んむ、ちゅる…、ぁむ…」
「む、ふぅ…、むちゅ…」
舌の長さも形も変わっているため、あの時のようにはいかないけれど。それでも舌同士を絡め合わせることには変わらない。
濃厚な口付けを交わしてしばらく。その間に破瓜の痛みは殆ど引いていた。もしかしたら気にならなくなっただけなのかもしれないが、今更気にはすまい。
それと同時に胸中に去来するのは、先ほどまで痛みに追いやられていた、男に抱かれたいという“女”の欲求。
「……朱那。俺、もう…」
「あぁ…。私もそろそろ、我慢の限界だ。動かせてもらうぞ…?」
知っているのか、察したのか。足首を掴みなおされて、朱那の腰の動きを膣内で感じ始める。
腰を引いては、押し込んで叩き付ける。それによる膣内で感じる粘膜接触。
性欲で猛る暴れん坊の上で揺らされながら、子宮にまで届く快感は初めてのことで。
「ん…っ! く、ぅ…、朱那、奥、深い…!」
「は、はは…! すごい、蒼火の“ほと”はこんなに飲む込むのか…!」
その強さに俺も朱那も、声をあげるしかなかった。
「っく! …なんだ、蒼火め。こんなにも感じているではないか!
奥まで私を感じているのだろう? ならもっと…、腰を押しつけろ…!」
「あっ、ひぅ…!」
腰をつかまれ乱暴に引っ張られ、子宮口が亀頭とぶつかり合う。
胎内で感じるものが体の芯を通って脳に達すると、反射的に体が跳ねる。それと同時に、乳首が痛いくらいに張り詰めているのにも気付いた。
「あぁ…、あぁ、もうダメだ!」
何度も腰を叩きつけている朱那が、突然音を上げた。何かと思った矢先に体を起こされ、彼女の顔が俺の胸へと近付き、いきなり啄ばんできた。
「ひゃっ! あ、あんだよ朱那、いきな、りぃ…っ」
「むーっ、んむっ、ちゅる、ちゅぱっ」
あぁ、もうダメだ。朱那の瞳が欲望に負けて色を失ってきてる。
桜色の乳首を口に含みながら吸い上げてきたり、時には痛いくらいに噛み付いてきて。
「ぃ、ぅ…っ!」
それでも小さな喘ぎ声が照明するように、感じてしまい、膣が肉棒を締め付ける。
狭さを増した蜜壷を更に割り開くかのように押し込まれて、突かれる。ごつごつと体内で音が響き、抱きしめられる腕に力を込められ、痛みを感じてしまう。
乱暴で、暴力的な性交。
だというのに、不思議とそれで感じてしまっている。胸を噛んでくる口が温かく、膣を貫く肉棒が熱い。
「はぁ、はぁ…! 女が…、女の中が…、気持ち良すぎる…!」
「んぅ、は、っ…! 朱那、いた…っ」
更に体を乗り出してきた朱那は、俺を押し倒し正常位まで持ってきてしまう。
破瓜の痛みとは別の、乱暴にされた時に感じる受身の苦痛が、組み敷かれた俺の中に届く。
「蒼火…っ、はぁ、んむ…! 蒼火ぁ…っ! っく、おふぉ…っ!」
どくんっ。
「え…っ? あ、っく、んぅぅぅ…っ!」
抽送を繰り返している肉棒が大きく膨らんだと思うと、いきなり中で爆発した。
肉棒以上に熱を持った白濁液が、子宮の中へと注ぎ込まれていくのをしっかりと感じ取れてしまう。
「はぁ…、は、ふぅ…、お、おーい?」
「あ…、はぁー…。はぁぁ…」
目の前では、覆い被さったまま放心している朱那の顔があった。口が半開きで涎が垂れて、眼の焦点もあってない。
何度も思うけど、今日の朱那は正直恐いよ。
だがしかし、朱那が放心しているのより何より、重大なことが一つあった。彼女の肩を掴んで、今出せる全力で揺すっていく。
「朱那ー、朱那ーっ? 起きろー、お前自分だけさんざっぱらイって終らせる気かよ!?」
そうなのだ、俺はイってない。朱那一人にエキサイトされて、挙句中出しされただけだ。
それより前のフェラチオでも連続で射精していたが、俺を求めてきてそれは無いだろう。俺が純粋な女なら別れ話切り出すぞ。
「…はっ? す、すまん蒼火。意識が切れていたようだ…」
「はぁ…、まぁ起きてくれたらそれで良いけどさ。……あんというか、下手だよな、お前」
「ぬが…っ!?」
蹂躙されて正直に感想を告げると、朱那が一気に硬直した。体だけじゃなく、いまだ膣内に深く挿さっている肉棒まで硬直してるのはどういうことだ。
欲求不満のままでいる俺としては、この感覚に内心嬉しがっているのも確かだったりするのだが。
「久しぶりに男でするので舞い上がって、俺が初めてだというのに気遣うつもりもなく破るわ。
掴んでくる腕の強さも痛いくらいでよく見れば肌が赤くなってるほどだわ。
腰の動きも総じて乱暴だわで…、俺は抱かれてるというより、食い物にされてる気のほうが強かったよ」
「あぅ、あぅ、あぅ…」
「そりゃ朱那も男としてするのは久しぶりだったろうし、鬱憤が溜まってたのは解るよ。
けどこれを人間相手にやってたら、その人が食われて壊されてるぞ、これ。ただでさえ鬼の勢いは強いんだから、子宮が拉げるかもしれない。
…お前、今まで女性を抱いたことってあるのか?」
「……あるには、あるが…。相手は全部、女の鬼で…」
「…だからか、こんなに乱暴なのは。しかもそれで良いタイプっぽいし…」
未だ結合し、覆い被さってくる朱那に組み敷かれながらも、小さな悩みで頭が痛い。
「それにな、朱那。……さっきも確認しただろうが、俺は初めてだ。
…もうちょっと優しくしてくれても、バチはあたんねぇぞ?」
うつむいたままの朱那に体を寄せ、たわわに実った2つの果実を手にとり、口を付ける。
「んぅ…っ!」
それに反応して、体内の肉棒もまた小さく跳ねた。
男と女の体は不思議だ。片方が気持ちよくなれば、もう片方もつられて気持ちよくなる。
性器同士の繋がりの筈なのに、互いを高めようとしてくるのは連綿と続いた生命の本能だろうか。
「はは、朱那のはまだ元気だな。……なぁ?」
「む…? どうしたのだ?」
「俺とお前が最初にしたのも、こんな感じだったな。入ったはいいものの先にイかれて、ちょっと不満だった」
「…そうだったな、あの時もそうだった。二週間ほど前でしかないのだが、とても感慨深かった」
「だからさ、朱那…。イかせてくれるか? 俺を女として、きちんと」
しっかりと彼女の顔を見て、告げた。
あの時にいわれたことを繰り返しているだけなのだが、面食らったような顔をしている朱那。ほんの少しだけ眼を開いていたら、途端に笑って。
「…解ったよ。貴様をきちんと女として、イかせてやろう」
あの時の言葉を、返してくれた。
そうしてもう一度、キスをする。
「んぅ、ちゅ…、はぅ…」
「れる、む、ん…っ」
性器同士でなく、上半身同士をも密着させてのキスは、自然と胸同士も擦れあって。
くすぐったくも敏感な乳房は、秘所にも快感を告げさせた。
「ふぅ…、朱那の、また張りが出てきた…」
「あぁ、私も感じているよ。蒼火の中が嬉しそうに締まってきているのが…」
「…気持ち良いか?」
「あぁ、とてもな…。女の肌で触れる女の体というのが、こうも柔らかいものだというのも、またそれを大きくしてくる…」
離した朱那の唇が、今度は俺の首筋を舐めてきて。少しだけ身が強張るが、それもすぐに解けた。
温かい舌と、すぐに冷えてくる唾液の感覚が、再び火照り始めてきた体には心地良い。
乳房同士がお互いを押し合い、互いの腕は相手の背中を抱きしめ、さする。
「蒼火…、動くぞ?」
「うん…、動いて…」
ゆっくりと朱那の腰が、再び抽送を開始した。先ほどよりも強くなく、再スタートを示すようなゆっくりとした挙動で。
結合した部分から溢れてくる、精液と愛液の混じったものがかき出され、その一部がまた突き込まれて。長く太い肉棒が、こつこつと奥に触れるたび、痛みを伴わぬ快楽が脳に触れていく。
腰が引かれ、また押し込まれていく。ただそれだけの、けれどそれ以上の熱さを伴って、粘膜同士が交わりあう。
「は、…っ、はぁ、胸は…っ!」
「ふぅ、んく…っ、弄られると、また締まってくる…! 貴様、こんなに好きものだったか…?」
「しょうが、ねぇだろ…っ? ぁ、ふぅ…っ、んっ」
乳首を摘ままれる度、胸に甘い疼きが起こって。それだけでは終らない熱の波紋が、秘所まで届く。
快感に反応する膣が収縮を起こして、自分を貫いてくる肉棒の形を浮き彫りにすると、それを待っていたといわんばかりにカリ首が壁を擦る。
とろり、とろりとそこから液が染み出て滑りを良くし、性器同士の結合はさらに快感を高めあう。
乱暴にされたときの痛みは既になく、全身、とりわけ膣から脳へ届くものは、既に女の悦びだけになっていて。
「あぁ…っ、は、ぁ…っ、ダメ、ダメェ…っ。“女”にされるのが、こんなに良い、なんてぇ…っ」
「…ふふ、そうだろうそうだろう? 貴様は私にそれをくれたんだ。…今度は、私がお前を女にしてやる…っ!」
「ひくぅっ!?」
勢いを増した腰の突き込みが、子宮口をごんと突付いた。口から出てきたのは痛みではなく、やはり悦楽の声。
「ほほぅ…、これでも善がるか…! ならば、この調子で良いのだな…?」
「ん…っ、うん…、それで良い…、もっと突いてきて…」
「ならば、応えてやろうではないか…!」
俺の声に、確かに朱那は応えてくれた。腰の勢いが増して、引くのも、突くのも、先ほどとなんら変わらない勢いとなってきたのだ。
「は、ぁっ、はぁ…、んぅぅっ!」
「こ、こら蒼火…っ、何、胸を触るのだ、ひ、ぅんっ!」
「ぁ…っ! 朱那のが、また大きく…っ」
目の前で、体の動きにあわせて揺れる朱那の双丘。男としての性か、それともそこから来る快感を知っているからか、手を伸ばして触れる。
力の抜けた手では持ち上げるのも辛いけど、それでもどうにか支えて、揉んで、摘まんで。
そうする度に胸が震え、肉棒が大きくなり跳ねる。それにつられ、俺の膣もまた締まる。
「あぁ、は、んくぅ…っ、朱那ぁ…」
「は、はは、…蒼火、貴様の体は、どこまで…っ、ん、ひぅ…っ!」
いつしか自分から腰を持ち上げ、抽送を行いやすくしながら。また抱きついてキスをする。
「んむ…っ、ちゅ、ちゅぱ…」
「れる…、んちゅ、はぁ…っ」
高まっていく体の中で、頭の奥底だけが嫌に冷静に言葉をつなげていく。
あぁ、そろそろだ。朱那の勢いは変わってないのに、突き込まれる感覚だけが強くなる。もうじき俺は達してしまう。
「く、ぁ…っ、そう、か…、もう、出てしまいそうだ…!」
「あ…っ、俺も、イきそ、…んうぅっ!」
「はぁ…っ、出る…っ、蒼火の中に、出すぞ…!」
「来て…っ、中に出して…! 全部…っ、朱那の、全部…っ!」
子宮口へ亀頭が触れた瞬間、今までで最も熱いものが奥へ流し込まれ、今までより遥かに鋭いものが脳を叩いた。
「あ…っ、んふあぁぁぁぁっ!?」
感じたことが無いほどの、脳を焼き尽くしてもまだ足りぬほどの電流が、全身を駆け巡った。
四肢の末端にまで力が入らず、ただ痙攣するだけの体になってしまったというのに、胎内に感じる精液の熱だけは酷く新鮮で、熱い。
「出てる…っ、貴様の奥へ全部出してしまう…! おっ、くおぉぉ…っ!」
未だ俺を貫いてる朱なの肉棒は、これでは足りんと言うほどに精液を送り込んできて。熱く濁った奔流がさらに体を押し上げていった。
それは今日、いままで出してきたものの量と比較しても遜色ない多さであり、濃さ。人が注ぎ込まれれば、きっと鬼の子を孕んでしまいかねないほどの量。
「あ、ぁう…っ、朱那、出し、すぎ…」
「はあぁっ、くふぁ…っ、ふぅぅぅ…っ、んぅぅ!」
目の前で抗議をしてもこんな調子で、未だ射精をやめない。俺の腹は既に妊婦と言わんばかりに精液で膨らんでいる。
出そうと思っても今まさに栓をされている為、それもできないのだが…。
「…おーい朱那ー、俺、このままだと妊娠しちゃうぞー…?」
「あぉっ、ひふぅっ、あ゛っ、あ゛はぁぁぁ…っ」
この野郎、止まりゃしねぇ。

結局、そこから大きく2回、小さく5回ほど俺の胎内に注ぎ込んで、ようやく朱那の射精は止まった。

* * *

場所を変えて、家の風呂。寝所では精液を抜くことが出来ないし、何より大量だったので移動したのだ。
同時に体を洗いたかったのも大きい。
一頻り洗い終え、肩を寄せ合い熱い湯に浸かっている。

「……で、どうだ朱那。スッキリしたか?」
「うむ。溜まっていた分は抜けたので、しばらくは持ちそうだ」
「そりゃ良かった」
「それで、なのだがな、蒼火…」
「……たまに俺を女として抱かせろ、ってか?」
「ぬぉっ、何故解ったというのだ!?」
「アレだけ嬉しそうに人の体を貪っといてわからいでか。後立ち上がるな、湯に波が立つだろ」
「すまん。……そんなに頻繁でなくても良いのだ。半月に一夜程で構わん、また私の魔羅が暴れそうになった時に、吸ってくれれば…」
少しだけ言いにくそうに告げてくる朱那を見て、少しだけ、こいつ馴染み早いよな、と考えた。
こんなにしおらしく言ってくるなんて、二人暮しをしていた時には無かったわけで。大体ずけずけと、無遠慮に言ってきた事が殆どだ。
これも自分を『女』と認めたからなのか、それとも那々本人の体なのかは、今のところ判別がついてない。
少しだけ疑問に思いながらも、その仕草が少しだけ可愛いと思ってしまって、ついこんな事を言ってしまう。
「それは構わないが…、吸うだけで良いのか? ちゃんと気持ちよくさせてくれるなら、また抱いても良いんだけどなぁ?」
「む…っ、…それは本当か?」
「当たり前だろ? それとも朱那は口だけで…、我慢できるのか?」
「無理だな!」
「宣言はえー。だとしたら吸われた後どうすんだよ、我慢できなくなって夜の街に犠牲者を求めて飛び立つのか?」
「はっ、それはありえんな。やるとするなら蒼火を組み敷いて後ろから…」
「……俺、カマ掘られたくねぇぞ?」
「私も男の貴様を掘るのは嫌だな。女の時なら全く気にも留めんのだが」
「いやそこは止めろよ、どの道変わらないだろが」
「きっと中の感覚が違う、と思う…!」
「…かもなぁ」
前はともかく、後ろを掘られる可能性がはみ出てきたのでわざと話題を打ち切って物思いにふける振りをする。
一発目から突っ込まれた者の大きさ故か、未だ股座はじんわりとした異物感に苛まれている。
まだ女性への変化を解いておらず、湯船の中で“女性らしさ”をかなぐり捨てて大股開きで座ってるわけだが。
処女を奪われたことにも、女として貫かれたことにも、精液を注ぎ込まれたのも。
不思議と悪い気はしなかった。


* * *

「…思い返してみれば、我々は好き勝手しておるな」
「まぁなぁ…。今回話したのも、記憶に新しいものとか、印象深いものとか、そういうのばっかりだし」
「実際はこれの数十倍はしてますよね。僕だって挿したり挿されたりしてますし」
「俺はまだ挿しただけで、挿されてはいないんですよね…」
「蒼火さんヤってあげないんですか? 望まれてるっぽいんですけど?」
「一回してみようと思ったけど、濡らしてても裂けそうだったんで延期ってことで」
「……速く成長したいです。入れられるのは恐ぇけどさ」
「……さぁて、あすな、安斎…。今日の順番を決めようではないか。蒼火、籤を出せっ!」
「へーいへい…」
机の引き出しを開けて、先ほど作ったばかりのあみだ籤を取り出した。
この3人、誰が一番最初に俺に抱かれるかを決める時は、こんな風に公平さを求めて籤を引き合うのだ。ちなみに籤の作成は完全に俺任せ。
それぞれの名前を書き、線を2本ずつ足して、一番槍を決め始めた。

あ、朱那が3本目引き始めた。つられて2人も足して…、あぁ、あみだがグチャグチャだ。
まだしばらく決まりそうにねぇなぁ。
……っと、見せられるのはここまでだな。
これ等の話を聞いて、少しでも疼いたのなら、処理なり相手してもらうなり色々手段があるんだけど、相手が居ないなら、そうだな…。
…俺に抱かれてみるか? そんなに可愛い容姿ならいつでも受け入れるよ。

なんてな。
スパムがー、消せねー♪

ようやく書き終わりました、淫行三昧10本。
最初は気軽に、仕事終わりにサクっと書くつもりだったのがいつの間にか1本辺りの容量が増えていき、全部あわせて150kb越え。実用性? 書いてる自分の時点で疑ってるよ!
4スレ跨いで終わったのに、達成感が薄いのはダレてた所為かと思いつつ。

さて。長々と暖めていたものに、ようやく手をつける時が来たようです。
…その前に、四談目や五談目の奴は誰だよ、という意見があったら、そっちの方を先に出すかもしれません。
罰印
0.4700簡易評価
5.100かわらば
殺伐とした世界で生きてきたあすなのモノローグに惹かれました。
彼女が蒼火に抱いている感情も友情、愛情ではなく打算の割合の方が大きいようです(当然といえば当然ですが)。
今のまま無力な立場に甘んずるか、それとも再び力を得ようとするか非常に気になりますね。
8.無評価罰印
>かわらばさん
あすなは一言で言えばエゴイストです。自分という価値観が真っ先に来て、それを守る為ならなんでもします。
蒼火に対しての感情も打算の方が強いし、力を取り戻したいとも思ってます。

…朱鬼蒼鬼も死神参上も、あるシステムでキャラ再現が出来るしデータもあります。あすながどうなるのかは、現状未定です。