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兵器たちの戦後

2011/07/31 09:28:33
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西暦2050年、ユーラシア大陸の3分の2を戦火に巻き込んだ三度めの世界大戦が終わって半年の時が経った。
あれは長く烈しい戦いだった。技術革新によって誕生した完全自律型半有機兵器MO(Murder Object)が初めて戦線に投入され、人間を上回る戦闘能力を持つ彼らによって戦場の様相は完全に変わった。
彼らは活躍の場を選ばなかった。都市、野外はもとより深海、宇宙など、人間では容易にたどり着けない過酷な環境に耐え、数体で主力戦車と同じ戦闘能力を持ちながら、低いコストで運用できる彼らは新たなる戦場の主となった。
戦いは5年の長きに渡ったが、やがて積み重なる莫大な戦費に疲弊した各国は不本意ながらも講和を結び、長く不毛な戦争はようやく終わりを告げた。

だが、あの戦争の真の英雄であるMOには悲劇の始まりだった。
自国の復興を優先する各国は、需要のなくなったMOの大幅な縮減を講話条約に組み込んだ。用済みとなったMOは旧式の型から次々と廃棄され、また逃亡したMOを処分するためにCMO(カウンターMO)を投入し、彼らは次々に狩られていった。
何とか処刑を生き延びた少数の者達は、国境、または海を越え、条約の及ばない外国へと逃げ込んだ。
多くの者は人の寄り付かない山奥や、荒地などの僻地へと姿を消した。なぜなら彼らの姿は明らかに人間と異なる、怪物のような容姿であるからだ。事実人間たちが兵器である彼らを受け入れることはなかった。
しかしごく僅かな、ある能力を持つMOたちは……人間の社会の中に潜み、誰を傷つけることなくひっそりと暮らしていた。


■■■■■■■■■■
薄暗く冷え冷えとした古い倉庫の中に『彼ら』はいた。錆びて穴の開いた屋根の隙間からわずかにのぞく弱い太陽の光が、弱々しくも彼らの姿を照らし、浮かび上がらせる。
それは身の丈2メートルを超える体躯をもつ、人型をした巨大な鋼の塊だった。
全身には甲殻状の体組織が、鎧のようにそれの表面を覆い尽くしており、おどろおどろしく醜怪なその姿は神話やおとぎ話に出てくる邪悪な怪物そのものに見える。ある意味それは正しい。
『Murder Object』
三度目の世界大戦においてあらゆる場所で猛威を振るった、肉と機械が入り混じった人外の怪物。
だが戦争が終わった今となっては、不用品として人間から狩りたてられる哀れなマリオネットだ。
鉄の瞼の中に閉ざされていた怪物の両目がカッと開き、灰色の瞳がギョロリと蠢いた。視線は埃の積もった床の上をはしり、ボロボロになった倉庫の端へと向けられる。
そこには、バスタブを改造したとおぼしき水槽のような物が鎮座していた。水槽の中には乳白色のとろみのある液体が八分目程の高さに注がれ、ポンプによって循環しているそれの表面はかすかに波たっていた。
それの横には何かの機械装置のようなものが据え付けられ、上から突き出たタッチパネルの画面が淡い水色に輝くのがわかる。
装置の傍らには無表情な顔で、落ち着いた手つきでタッチパネルを操作している1人の少年がいた。
年齢は十代半ば、身の丈は少し低く、体の線も全体的華奢に見える。しかし画面の青い光に照らし出された、目鼻の整ったその顔立ちは、表情は無いものの充分に魅力的と言っていいものだった。
少年は隙間風の激しい倉庫の隅にいるにも関わらず、凍える様子もなくタッチパネルとしばらくの間格闘していたが、必要な作業を終えると安堵で表情を和らげ、倉庫の真ん中にいる怪物の方へと振り返った。
「AKI(アキ)、待たせたな。準備オーケーだ」
まがまがしい怪物の姿に怯む素振りも見せずに、少年はそれに微笑みかける。
「お前には随分と不便な思いをさせたが、それももう終わりだ。もう人目を避けて暮らす必要はない。これを済ませてしまえばな。さあ、早く始めよう」
「うう、分かった」
アキと呼ばれた怪物はくぐもった歪な声で少年の呼びかけに答え、水槽の前に歩み寄る。そして機体の制御プログラムを開き、自らの成すべき作業(タスク)を実行した。
突如グギギギ……と、まるで金属が軋むような異音をたてて、怪物の人工骨格と人工筋繊維を構成するナノマテリアルがその密度を高め、怪物の肉体は急速に収縮していった。四肢も胴体も、そして頭部も先程の姿からはとても想像がつかない程に細く短く圧縮され、全身の体積がみるみるうちに小さくなっていった。
2メートル半はあった怪物の身の丈は1メートル半以下まで縮み、やがて金属の軋むような異音は止み、肉体の変化が終わった。
圧縮された怪物の手足と胴体、そして頭部は目の前にいる少年以上に華奢なものになっていた。
縮められた胴体の腰のあたりはギュッと絞られ、その姿は全身甲殻に覆われた、女性型の人体模型のようにも見える。
「上手いぞ、その調子だ。戦闘型MOだというのにそこまで小さくなれるとは、スペック通りとはいえ俺も驚いたよ。流石は最新型だな。さあ入ってくれ」
少年は変貌した怪物の姿を見て満足げに頷くと、乳白色の液体で満たされた水槽の中を指差し、中に入るよう促す。
「う゛う゛……」
怪物は呻きながらヨタヨタと動き出した。声は野獣のような奇怪な声から、甲高い声――人間の女のような声――へと変化している。最も、出てくる声は言葉になってはいないが。
水槽に手をかけた時、突如怪物の体がガクガクと痙攣を始めた。体を縮めたことで機体制御システムに不具合が生じていたのだ。怪物の電脳には無数のエラーコードが発生し、強烈な負荷のためかそれの動作は亀のように緩慢なものになっていた。
「手を貸す、掴まれ」
少年の手が怪物の肩を掴んだ。しかし怪物の体重は500kgを超えている。機体が縮んだとしても怪物の体重が変化するわけではない。だが彼は怪物の肉体を軽々と支え、ゆっくりと全身を乳白色の液体の中に沈めていった。
どう見ても、それは人間業では不可能なことだった。そう、この少年もまた人間ではないのだ。

話を元に戻そう。液体の中に沈められた怪物の機体の表面では、新たな変化が起こっていた。
この液体はシリコン樹脂と無数の合成蛋白質の集合体で、脇にある制御装置の指令を受けたナノマシンのコントロールを受け、時間をかけながら怪物の体表面に薄い膜のような組織を幾重にも生成、定着させていっているのだ。
まず怪物の体の上に、第一層となる赤い繊維状の膜が生成された。これは電気信号によって収縮し、簡単な筋組織の役割をはたすようになっている。
第一層の定着が終わり、次に第二層の生成が始まった。これは厚さ数ミリの脂肪の層である。外部からの衝撃を和らげるクッションの役割を持ち、後に生成される他の組織への栄養分を貯蔵する役目も負っている。
次に生成される第三層は、第二層と同じくらいの厚さのゼリー状の疑似蛋白質で構成された組織だ。第二層と同じく他の組織への栄養分を貯蔵する役割を持ち、中には無数に枝分かれした疑似的な神経組織や循環器系がはしり、それらは駆け巡る体液によってドクドクと脈打っていた。
その上に無数の細胞が集積して最後となる第四層が生成。それらは周囲を満たす液体からの栄養分を吸収し、驚異的な速度で分裂を始めた。怪物の体を覆った第三層の、黄色がかった組織の上に薄桃色の皮膜が出来上がっていく。頭部からは無数の体毛が生え、長く延びていった。
約5時間の時間をかけ、組織の定着は終わった。少年が水槽の栓をぬくと、乳白色の液体が抜け始め、中に横たわっていたものの姿が次第に明らかになっていく。
それは5時間前までこの場にいた怪物の姿ではなかった。
水槽の中には小柄で細身の、美しい人間の少女が一糸纏わぬ姿のまま横たわっていた。
そう、体積を縮めた怪物の肉体は、人間の皮膚組織を模した幾層もの組織で覆い尽くされ、それは少女の姿を精巧に形作っていた。その顔つきは側にいる少年にどこか似ていた。
それは完璧な擬態だった。怪物の全身に定着した疑似皮膚は、人間の外見はおろか触感、体温、そして脈拍や発汗などの表面的な代謝機能を完全に模倣していた。
また怪物の体感重量は、体内で稼動しているコロロフ型重力操作システムによって、十分の一以下に抑えられている。
誰がどこから見ようと触れようと、この美しい少女の姿の中に潜む、おぞましい怪物の姿に気づく者はいないだろう。

『少女』の目が、ゆっくりと開いた。姿は変わっても、灰色の瞳の部分は全く変わっていない。
水槽の淵を掴み、それを頼りに体を起こし立ち上がろうとするがまだ足元が覚束ない。少年が『彼女』の手を取り、引っ張り上げてやる。そして汲んできた水で体に残った生成液を洗い流し、大判のタオルで水気を拭い去った。
「よく頑張ったな、これでお前は自由だ。見てみろ、これが今のお前の姿だ」
手鏡を渡され、少女は中に写った自分の姿を見た。
「……KIYO(キヨ)。これが、おれの……新しい顔……?」
言葉を失った少女に、キヨと呼ばれた少年は悪戯っぽく笑う。
「ああ、そうさアキ。これがお前の新しい顔だ。無理して小さくなってもらったが上手くいったな。
今日からお前は俺の『家族』だ。そして一緒に日本に渡ろう。この姿なら難民に紛れて忍び込めるはずだ。
あの国はMO廃棄条約を批准していない。あそこにいけばもう追跡者に追われる心配もないんだ。俺たちは自由だ、2人で平和に暮らそう」
誰を傷つけることなく、誰に傷つけられることのない平和な暮らし。それは戦争が終り役目のなくなった彼らが望んだささやかな願い事だった。だが皮肉なことに戦争の終結は、彼らにとって新しい闘争の始まりだった。ただ生き残るためだけに彼らは戦い、迫り来る死から逃げ続けた。
「自由……か……。もうすぐ、手に入るんだな」
少女はかつて共に戦った仲間たちのことを思い出していた。戦争終結時部隊にいた8体の戦友は、もう彼らしか残っていない。他の者たちは人間に擬態することは出来ず、逃避行の中CMOの追撃を受け皆破壊されてしまった。
「日本……。みんなと一緒に行きたかった」
彼女の記憶装置の中に保存されていた仲間との思い出が蘇る。兵器とはいえ彼らMOも自我や感情をもっていた。
喜怒哀楽。それは人間のものとは少々異なるものだが、彼らもまた人と同じなのだ。
「行こうアキ。あいつらの分も一緒に生きよう」
「う、うん」
少年『キヨ』の手を借りながら、少女『アキ』は足を持ち上げ、新しい姿での一歩を踏み出そうとする。
しかしその瞬間。彼女の再び電脳に無数のエラーコードが駆け回った。
「あ!!……あ!!……ぁ……」
顔を強張らせながら、アキの体は再び激しく痙攣し始めた。機体性能の限界近くまで体を圧縮したこと、重力操作システムの演算のよる負荷、貼り付けられた新しい皮膚組織から送られてくる、膨大な感覚情報のために電脳の処理能力がパンクしたのだ。
「おいアキ!! しっかりしろ」
キヨはアキの体を支えながら、アキの電脳にアクセス。自身の電脳の演算能力を駆使して彼女の負担を肩代わりしようとした。
しかし、彼の電脳は少女のものよりも旧式の部類に入る。奮闘むなしく彼の電脳もまた大量のエラーコードに埋め尽くされ、試みは完全に裏目に出た。接続を断とうとしても処理が間に合わない。
「ぐ!!……ぐぁぁ!!……」
やがて、猛烈な負荷に危険を認識した2人の電脳OSは、脳へのダメージを最小限に抑えるために強制シャットダウンを決行。
2人の動きが止まり、全身から力が抜け、まるで抱き合うかのように2人の体はもつれ合いながらズシン!! と音を立て床に倒れこんだ。
システムが再起動し、再び彼らが目を覚ますまで約半日の時間を要した。


■■■■■■■■■■
トンネルを抜けると、そこは花景色だった。
窓の外にはたくさんの桜の花が咲き乱れ、宙に舞い上がった桃色の花びらが、まるで吹雪のように少女の瞳に飛び込んでくる。
その遥か遠くには、山の稜線を埋め尽くした若葉の淡い緑色が、僅かに残っていた冬の気配を完全に洗い流し、やがて訪れる夏の気配を感じさせる。

日本。
血も凍るような貨物船の船倉に潜み、数日の時を経て二人はようやく念願の地にたどり着いた。あの大戦の惨禍を免れた奇跡の国。そして祖国に棄てられた二人の、安息の土地である。
「……」
しかし窓の外の、春の乱舞に心奪われながらも、少女アキの表情は晴れやかなものではなかった。
この姿でいることで生じた不具合が、未だ彼女の電脳に多大な負担をかけているからだ。
いや、それはまだいい。大陸を出る前に比べると、エラーは大分減っている。キヨの協力もあり、幾度かのアップデートを経て自分の機体は不具合を克服しつつあった。
しかしプログラムの更新だけでは克服出来ない、数多くの問題がアキを悩ませていた。
不必要に長く、手入れに難儀する髪の毛。無意味な装飾が多く動きづらい服装。そしてやたらと数が多く着脱に手間のかかる下着の数々。
とくに胸に着けるブラジャーという奴の存在意義が分からない。何もかも手間がかかりすぎる。
そう、アキーー『MurderObject AKI-9600-XX』ーーは、女の姿でいる理由を、合理的に見出せずにいたのであった。

「アキ、つらいか?」
少女の顔色を読み取り、向かいに座った少年キヨは心配そうな表情で彼女に話しかけた。
その顔も声も、彼の容姿の全ては人を欺くために作られた仮のものにすぎない。しかし少女を見つめる灰色の瞳だけは、心身の不調に苦しむ戦友を案ずる者の瞳だ。
「いや、キヨ。おれは大丈夫」
アキは表情を少し崩し、少年の脇にある袋の中から、彼女お気に入りのチョコレート菓子を取り出し、一本を口に運んだ。
甘く苦いチョコレートの味が少女の口の中を満たす。その感覚を処理するために彼女の電脳はさらなる負荷にさらされるが、アキは気丈に耐えながら笑って見せた。
彼女は現状の不満を、キヨに話す気はなかった。自分の体がこの形態をとることになったのは、他ならぬ自分のせいなのだ。
それは数週間前、二人がまだ大陸にいたころ。アキはいらぬ正義感を起こして人身売買組織と戦って無数の銃弾を受け、本体は無傷だったものの人工皮膚に回復不可能なダメージを受けてしまった。
戦争が終わって需要のなくなった皮膚生成剤を探して、CMOに追われながらあちこちを駆け回ってくれたのはキヨだった。
もっとも入手できた生成剤はごく僅かで、全身に皮膚を張り付けるには機体を子供の大きさにまで縮めなければならなかったが。
早くこの姿に慣れよう。それが命がけで助けてくれたキヨへの恩返しだ。
アキは目をつぶり、処理保留のままに置かれていた電脳の不具合を処理するために自分の演算能力を集中させた。

向かいの座席に座ったまま、眠りについたように見えるアキを見つめながら、少年キヨはご満悦だった。
列車がガタンガタンと振動する度に少女の体は小刻みに揺れ、車窓から吹き込む風に髪がなびく。
「ううん……かわいいなぁ」
少女の顔を見ているだけで、自然と顔がほころんでくる。
この姿を作るために、危険を冒して飛び回った甲斐があったというものだ。
彼がアキを少女の外見にしたのは、もう一つの理由があった。
カバンの中からブックカバーをかけた、しかしボロボロの文庫本を取り出し、ていねいにページを開く。
それは青少年向けの娯楽小説、いわゆるライトノベルと呼ばれるものだ。
話の内容はよくある学園ラブコメものだった。主人公である少年と彼の周囲にいる女の子達の騒がしい日常や非日常、青春と恋愛、そして挫折と再起を描いた話である。
戦場で捕虜になった敵兵から没収した品物だが、キヨはこれの話や登場人物を大層気に入り、何十回何百回と読み直していた。
その中でも特にお気に入りの登場人物は、主人公の年下の家族にあたる女の子だ。
彼女はいつも主人公にべったりで世話焼きで甘えん坊なかわいらしい子で、キヨは彼女のような子をそばに置きたい、と以前から思っていた。
目の前で目をつぶっているアキは、まさにそんな感じの姿だ。
『女の姿になってくれ』ダメ元で彼はアキに頼んでみたが、彼女は嫌がらずに引き受けてくれた。
今日から平和なこの国で、彼女との新しい人生が始まるのだ。そう考えただけで少年の心は躍った。
そう。彼--『MurderObject KIY-O-6800-CO』--はとどのつまり『妹』が欲しかったのである。

人に姿になった二体のMOは、都会から離れた地方の街に居を構えた。
戸籍を偽造し、表向きは帰国子女の兄妹として、二人は地元の高校に通うことにした。
平和で楽しい毎日だった。慣れない学校生活に最初は二人とも戸惑っていたが、やがて友人をもち彼らと共に学校生活や休日を過ごすことを楽しむようになっていた。
アキも体の不具合を克服して今の姿でいることに慣れていき、女の子らしい言葉遣いや仕草を自然に身につけていった。
多少引っ込み思案なものの、ルックスの良い彼女はたちまちクラスの人気者になった。
ただキヨにとっては残念なことに、彼女が女らしくしているのは人前だけで、二人でいる時の仕草は以前のままだった。
特に家にいる時は下着姿や裸のままで屋内を動き回ったり、寝転んだりしていた。
裸でいるな、とキヨが叱っても、アキは自分の顔をムニュッと引っ張り「にーちゃん、おれはまだ『裸』じゃないよ。まだ『一枚』残ってるもんね」と屁理屈を返すばかり。
そんなわけで姿形はかわいらしい女の子でも、いまだアキはキヨのやんちゃな『弟』のままであった。


■■■■■■■■■■
そんなこんなで二人が日本に来てから数ヶ月の時が流れた。
季節は春から夏へと移り変わり、山々を飾り立てる緑色はより深みのある緑へと変化していた。
今年を含め、ここ数年の夏は暑い。大戦中に大陸で乱用された気象兵器の影響が日本にも及んでいるのだろうか。テレビに出てくる気象予報士は皆口をそろえてそう言っていた。
だがどこであっても若者たちは元気だ。もちろんキヨの友人達も例外ではなかった。
とは言っても彼らのいる街に大した娯楽はなく、やることと言えば友人同士集まって携帯ゲームをするか、車の運転が出来る先輩に連れられ隣町にあるショッピングモールに繰り出すか、金があれば映画を見に行く、くらいしかないのである。
「ただいま」
この日も夜遅くまで友人達と遊び歩いていたキヨは、お気に入りの深夜アニメの放送直前に我が家の玄関を潜り抜けた。
当然、返事はない。普通の人間ならとっくに眠りについている時間帯だ。アキは普通の人間ではないが記憶整理の為に普段夜は眠っている。
しかし、彼女の部屋の扉の隙間からは僅かに光が漏れていた。どうやらアキはまだ起きているようだ。
キヨはそおっと扉を開ける。その向こうに彼女はいた。ヘッドホンをかけて椅子に座ったまま、まるで呆けたような表情で、しかし食い入るような眼差しでパソコンのモニターを見つめている。
彼女は何に見入っているのだろう? 音を立てないように彼女の脇からモニターを見ると、そこには大変なものが映っていた。

画面の中では生まれたままの姿をした男と女が、息を荒げながら互いの肉体を激しく求めあう様子がうつしだされていた。
上にいる男が激しい息づかいと共に大きく体を上下に奮わせるごとに、男の股から伸びた巨大な肉塊が、女の大きく開いた脚の間にある紅色の花弁の中に突き入れられ、そのたびに女の肢体は弓なりにのけぞり、苦しそうな、しかし恍惚とした表情で女はさらに男の肉体を求める。
そして激しく口づけ。殴るかのように互いの唇がぶつかり合い、もつれ合う蛇のように舌と舌が絡まる。
男の動きはだんだん激しくなっていき、女はさらなる肢体の高ぶりに喘ぎ、高ぶりはやがて果てへと達した。二人の体が一瞬ビクン!!と震え、交わった姿勢のまま動きが止まった。
「すごい……」
果てた後もなお、絡み合う二人の体を見つめるアキの口から、か細い声が漏れた。
「好きな人同士って、こんなことするんだ……」
愛する者同士の行為を目の当たりにし、彼女はやや興奮しているようだ。顔面の皮膚はアキの感情を読み取り真っ赤に紅潮していた。
別に彼女はカマトトぶっているわけではない。彼女は本当に知らないのだ。
大戦末期、最新型の戦闘用MOとして生まれた彼女は、戦闘技術プログラムの組み込みと簡単な訓練を受けた直後に戦地に送られ、まともな教育を受けられなかった。そのため人間の恋愛や生殖のプロセスをまだ理解していないのだった。

「あっ、お帰りにーちゃん」
画面から目を離し、アキはキヨの方へ振り返った。恥じらうことのない無邪気な瞳が真っ直ぐに少年を見ている。
「今日も遅かったな、お風呂沸いてるぞ。たしかご飯はもう要らなかったよな?」
「あ、ああ……」
ヒトの生殖プロセスを知っているキヨは複雑な心境だった。思春期の人間が性を意識し、興味を持つのは当然のことだ。
MOは生殖能力を持たないが、彼らの人格構成は人間のそれを元につくられているため、やはり性に対して興味を持つのは個体差はあれど宿命と言っていい。
戦争中は強力な思考プロテクトをかけられ、思考は制約されていたが、脱走した今では不要なものとして解除してある。
戦うことしか知らなかった戦闘用MOが人間の愛を知る。その成長自体は喜ぶべきことだろう。
しかしアキがそれを知ってしまったことで、キヨには彼女が何だか悪い子になってしまったように見えてしまうのだ。

「ねえ、見てにーちゃん。おれ、今日も一つ賢くなったぞ」
アキは嬉しそうにはしゃぎながらモニターを指差した。画面の中では恋人同士の第二ラウンドが既に始まっている。
「人間って、他の人を好きになると裸で抱き合って『えっち』をするんだ。
そんでね、『えっち』をすると、とっても気持ちいいんだって。
にーちゃんは知ってるだろうけどなっ」
「お、おう……」
どう返せば良いのやら。百戦錬磨のMOであるキヨも流石にリアクションに困り、逡巡しながら何とか話をつなげようとする。
「……しかし何だってお前、そんなことを調べたんだ?」
「最近友達の話についていけなくなっちゃうときがあるんだ。
彼女男の人と付き合っているんだけど、その人の話になるともって回った言い方になっちゃってさ。いったい何の話なのか、雰囲気的にこっちからは聞きづらくて。
最初はにーちゃんに聞こうと思ったんだけど、最近にーちゃん帰り遅いからおれ一人で調べたんだ。
どーだえらいだろ?」
両手でガッツポーズを取りながらアキは笑った。
「あ、ああ。えらいぞ」
画面の横で満面の笑みを浮かべる妹に対し、キヨは力なく苦笑いを返すしか術はなかった。
「(まずい。非常にまずい……)」
キヨは困惑していた。このまま放置していたらアキは性について間違った知識を持ってしまいかねない。
さてどうしたものか。問題への対処を最優先に設定し、キヨは電脳をフル回転させて演算を始めた。
その時。
「なぁにーちゃん。おれ、にーちゃんに頼みたいことがあるんだけど……」
アキは勢いよく椅子から乗り出し、キヨに鼻先をぶつけんばかりに顔を近づけた。
「な、何だ?」
突然のことにキヨは面食らいながら後ろにのけぞった。アキの勢いに押され、あわや転びそうになる。彼女は真剣な顔つきで兄の瞳を覗き込んでいた。
「あのね、おれ、にーちゃんに『えっち』して欲しいの」
ガタン!! キヨはたまらず真後ろにひっくり返った。

「うぐぐ……」
転んだ拍子に後頭部を強打し、キヨは頭を抑え悶絶していた。
「おい、にーちゃん大丈夫か?」
すぐさまアキは兄の側に駆け寄り、体を起こしてやる。
「馬鹿っ!!」
キヨは思わず怒鳴り返した。動転のあまりか声が裏返ってしまっている。
流石にこれは彼にとって、まさに斜め上の展開だった。彼がアキに求めていたものは『萌え』であって『エロ』ではない。
「俺とお前で、そんなこと出来るわけないだろっ!!」
「ど、どうしてだよ?」
アキは何故兄が怒っているのか分からず、不満げな顔で言い返す。
「おれは今女の子、にーちゃんは男の子だろ? お互い『えっち』の機能はついてるんだから、何の問題もなく出来るじゃん?」
「あのなぁ……」
キヨは頭を抱え込んだ。こいつは無知だ。何も分かっていない。
最も生まれた直後から彼女を教育したのは、他ならぬキヨなのだが。
「俺たちは血の繋がった兄妹なんだぞ? 家族での『えっち』はいけないことなんだ」
キヨの態度に、アキはぷっとふくれっ面になる。
「それは表向きの話だろ?。実際におれとにーちゃんには血の繋がりなんかないじゃん?
おれとにーちゃんとでは体のつくりが全然違うし、使ってる血も別のやつだし、そもそも親(製造メーカーと設計者)だって全く関係ないだろ?
ねぇ、いいでしょ? 『えっち』するのってすごく楽しそうじゃない?見てよ、あの人達すっごく楽しそう……」
アキの指差した画面の中では、男の上に跨った女が気持ちよさそうに喘ぎながら、その体を激しく揺すっている。
「おれはにーちゃんのこと、好きだよ。にーちゃんはおれのこと、きらい?」
儚げな瞳で、アキは上目遣いでキヨを見上げた。両手はおねだりするかのように胸元でギュッと握られている。大抵の男の子ならこの仕草で陥落してしまうだろう。
「そんなわけないだろ……。でも駄目だ。お前の気持ちは分かる。でも、お前の言う『好き』と男女の恋愛は違うんだ。分かってくれよ」
「分かったよ……」
アキはふくれっ面をしたままパソコンの電源を落とし、椅子から立ち上がった。キヨに背を向けて押し入れを開け、布団を取り出して畳の上に広げる。
「ならにーちゃんには頼まない。クラスの男子にしてもらうもんね」
「何だって……!?」
思わずキヨは立ち上がった。脳が熱を持ちだし、両手の指がわなわなと怒りに震えだす。
「兄妹で駄目だって言うから、クラスの男友達に頼むの。他人なら好きな相手とえっちしても問題ないだろ?」
そう言いながらアキは再びキヨに背を向け、掛け布団を取ろうと押し入れに手を伸ばす。
「じゃあ眠いからおれ、もう寝る。おやすみにーちゃん」
そこから数秒の間、キヨの記憶ははっきりとはしていない。ドスンバタンという物音と、わずかな布ずれの音だけが彼の記憶に残るのみだ。
ただ気がついた時、彼はアキを布団の上に押し倒し、彼女の体の上にのしかかっていた。

愛くるしい少女の顔が、キヨの目の前にあった。彼女は恥じらうかのように顔を赤らめ、熱く甘い吐息がキヨの顔にあたる。
「ふふ……やっとその気になってくれた?」
あどけない天使のような顔が、小悪魔のように微笑む。
「きて……」
少女はキヨの首に抱きつき、目をつぶって口をすぼめた。キヨは無言でそれに答える。自分の唇を彼女の口に近づけ、一瞬の停滞の後一気にそれを重ね合わせた。
「んっ……」
互いの唇の感触を愉しみながら、キヨはアキの服のボタンに手をかけ、一つづつ丁寧にはずしていく。続けてスカートをいっきに上に取り払うと、粉雪のような美しい少女の素肌があらわれた。
綺麗な肌だ。この可愛らしい少女の顔のどこにも、それの下に潜んでいる恐ろしい殺人兵器の面影はない。
だがこれはフェイク。人を欺くために合成プロテインで作られた、まがいものの人肌。
しかし、たとえそれがまがいものの姿であったとしても……。もし他の男に汚されるのならば、いっそ自分の手で――
露わになった少女の太ももを右手で優しくなであげる。そしてもう片方の手がブラジャーの下に潜り込み、まだ成熟には程遠いアキの果実を愛撫していった。
「んんっ!!……」
刺激を感じてアキが悩ましく呻いた。唇を離し、ねだるような視線を兄に送る。

「もっと……して……」
「ああ……」
太ももから内股を撫でていた右手がアキのへその辺りまで持ち上がり、ショーツを押しのけ中へと潜り込んだ。そこには精巧に作られた女の器官が存在していた。
2人の姿を形作る最新型の人工皮膚は、擬似的な生殖器が備えられており、性行為も再現できるのである。キヨは唇にも似たアキの女の部分を、指の腹で優しくなぞっていく。
彼お気に入りのアニメの放送時間は、とうの昔に過ぎてしまっていた。

「んひゃああっ!!」
敏感な部分を触れられ、アキは始めて覚える快感に悲鳴のような声を出した。兄の指先が秘部を撫でる度に、腹の奥から電流のようなジンジンとした感覚が複合素材の背骨を駆け上がる。
外部からの刺激を感知し、彼女の疑似生殖器は対応を開始。デリケートな内部を保護するための粘液を分泌し始めた。じわり、とアキの秘所が湿り気を帯び始め、そこを愛撫し続けるキヨの指先を濡らす。
いい感じに器がほぐれてきたところで、キヨは中指を曲げて露の滴るアキの中へと優しく押し込んだ。
「ああ!!……ふあぁっ!!」
アキの体がビクン!!と震えた。キヨはそれに構わず、秘所に潜り込ませた中指をゆっくりと動かす。時折指先を回したり、曲げたりしなが女の子の大事な部分を浸食していく。
脳が溶けてしまいそうな感覚にはぁはぁと荒い息を吐きながら、アキはキヨの指先にすべてを委ねていた。彼女を侵す指はいつの間にか二本に増え、巧みに器の中をかき回す。溢れ出た愛液で下着の染みが広がっていく。
中の愛撫を続けながら、キヨはアキの乳房から左手を離して身を起こし、片手で器用に自分のベルトを外してズボンとトランクスを一気にずり下ろした。
彼の股の間からは、黒く図太い肉の槍がはちきれんばかりにそそり立っていた。
「うわ、にーちゃんの……大きい……」
そりかえったモノを見て、アキが驚きの声をあげる。
「ちゃんとおれの中に……入るかな?」
少女の顔が不安そうに少年を見つめる。
「大丈夫だよアキ」
少年は少女に優しく微笑み返した。そして寝そべる彼女のショーツを脱がせて両脚を広げ、片手で自分のものを支えながら先端部を少女の器に押し付け、愛液を馴染ませたあとゆっくりと少女の中にそれを押し込んでいく。
ヌヌヌ……と嫌らしい音を立てながら、少女の肉壷は兄の一物を飲み込んでいった。

「んんッ……ああァッ!!」
二本の指とは比較にならない程、太く大きいキヨの一物が狭い膣肉を掻き分けていく度に、アキはいっそう甲高い声で鳴いた。
口の中に溢れた唾を飲みことが出来ず、震える彼女の口の端から涎がこぼれ出していく。
やがてキヨの肉塊は少女の最奥に到達。小さな瘤が尿道と亀頭の括れに吸い付いた。
「おお……!!」
自分の弱点をつかれ、キヨも思わず声が出てしまう。
「はぁ……はぁ……やっと……全部入った……」
アキはやや辛そうに、しかし嬉しそうな顔で2人が合体した部分を見つめている。彼女の入口は緊張と興奮、そして快感のためにヒクヒクと震えている。
「にーちゃんのおちんちん……おっきくて……ちょっとキツい。でも、すっごく気持ちイイよ……。
にーちゃん……にーちゃんは……どう? おれの中……キツくないかな?」
「ああ……アキの中……すごいよ……。ちょっと動いただけでやばいかもな……。まあ、お前が満足するまで頑張ってみるよ」
「うん、おれもにーちゃんのために頑張る。じゃ……始めて……」
アキの求めに頷いてキヨは大きくゆっくりと腰を動かし、巨根を抽送し始めていった。

「ああっ!!……はぁ……はぁ……」
汚らしい水音と共に大きな肉の塊がアキの胎内で蠢き、彼女はその快楽に身を震わせた。
キヨが腰を大きく突き出す毎に、パンパンに肥大化した亀頭が子宮口を模った彼女の最奥を、勢いよく突き上げる。
膣から腰、そして背骨へと伝わる快感で少女の肢体はガクガクと痙攣し、締まる肉壁がキヨの一物にギュギュッと絡みつく。
「あぁんっ!!……にーちゃんっ!!……にーちゃんのおちんちんがっ!!……奥にィッ!!……奥にゴツゴツ当たってッ!!……気持ちイイ……キモチイイよぉっ!!……」
「はぁ……はぁ……俺もだ……。アキの中……すっごく締まって……絡み付いて……くるッ!!……」
キヨもまた、自らを急き立てるアキの肉体の心地よさに自制心を忘れ、一心不乱に快楽を求め自らを奮い立たせた。アキを貫く巨根の大きさと動きが加速度的に高まっていく。
それと共にアキの心と体も急速に昂ぶっていった。果てが近いのか彼女の両の瞳の焦点は全く定まっておらず、両手の指はシーツを掴んだまま離さない。
「あッ!!……あッ!!……にーちゃんっ!!……おれのおなかの中ッ!!……なんか変なのッ……。なんかすごいのがキそうなのっ!!……」
「お、俺もだアキッ!!……。俺ももう……キそうだっ……。一緒に……一緒にイこう!!」
「あううっ!!……来てにーちゃんっ!!……。ああっ!!……大きいのが……大きいのが来るよぉッ……。
あ!!……あ!!……ああああッッッッ!!!!……」
2人の昂ぶりはたちまち果てへと転じた。アキは弓なりにのけぞった姿勢のまま、雷に打たれたかのように体を震わせた。
感覚情報の飽和でアキの電脳は一時的に機能を制限され、純粋な快楽のみが彼女の脳を駆け巡る。
そしてそれはキヨも同じだった。アキの最奥を突き上げた状態で彼の巨根は果てを迎え、白濁した蛋白液が少女の胎内にぶちまけられた。
絶頂からしばらくの間、2人は動かずに荒れた呼吸を整える。
しかし射精を迎えた後も、キヨの一物は衰えてはいなかった。未だそれはアキの中で勃起したままである。
「はぁはぁ……気持ちよかった。ありがとにーちゃん。でも、にーちゃんのちんちんまだ大きいね。おれの体、物足りなかった?」
「いや、そんなことはないよ。アキの中が気持ち良すぎたから、また『えっち』したくて小さくならないんだ。また……いいか?」
「いいよ。おれも……もっとえっちしたいの……」
「やった!!……なら決まりだ」
「あ!!……くぅんっ!!……にーちゃっ!!……まだ動いちゃ……うぁううッッ!!……」
抜かず四回、2人は向かい合った姿勢のまま互いの肉体を愉しんだ。

「ううっ!!……」「あ!!……ああ!!!!……」
重なり合った2人の体がビクン!! と震え、キヨとアキは四度目の絶頂を迎えた。少年キヨの一物も度重なる酷使に疲れ果て、アキの肉壁に包まれたまま小さくなった。
腰を引き、キヨはゆっくりと自分のものを中から引き出す。蓋が外されたアキの膣口から、愛液と白濁が混ざり合った粘液がドロリと溢れ出した。
「ふあー、もう限界……」
アキから離れ、キヨは彼女の隣にゴロリと寝転ぶ。アキは荒げた呼吸で胸を上下させながら兄の方へと寝返りをうった。
少女の灰色の瞳が、小さくなった少年の一物を凝視して彼女はやや残念そうな顔になる。
「にーちゃん、もう……次は無理そうかな?」
「流石に4連チャンはな。アキはまだ、し足りないのか?」
「うん。おれ、次に試してみたいことがあるの……」
「ならちょっと待っててくれ。パワーをチャージするから」
その時アキは不意に身を起こした。膝立ちになり、股からあふれ出す液体をすくって胸の間に塗りつける。
そしてそのままキヨのほうへとのしかかった。
「アキ? 何を?」
「おれも、チャージ手伝うね」
キヨの一物に胸の谷間を押し当て、アキはゆっくりと体を前後に動かし始めた。
「う!! うおおっ!! お前どこでそんなの教わったんだよっ!?」
柔らかな少女の膨らみが少年の体を刺激し、それは再び天つく勢いでそそり立つ。
「にーちゃんにはな・い・しょ……。うふふっ、にーちゃんのちんちんまた元気になったね」
小悪魔のようにアキは微笑み、彼女は再び体を起こしてキヨを跨ぐような体勢で座り込む。騎乗位の姿勢だ。
「今度はおれが上に乗って動くの。自分で腰振るとすごく気持ちイイんだって」
大きく勃ったキヨの男根を濡れた割れ目にあてがい、アキは自分の体をゆっくりと沈めていく。
「ふああ!!……。う、動くね……」
そしてゆっさゆっさと自分の腰を上下に揺すり始めた。

五回目の合体を迎えた二人は、互いの指を絡ませながら交わる悦びに身を委ねていた。先ほどまでとは違い、今度はアキが上に乗り彼女が主となって体を動かしている。
少女の体が上下に動くごとに美しい銀色の髪が揺れ、わずかに実った胸の膨らみがプルプルと震える。
「あぅん!!……あっ!!……あっ!!……」
「う……うう……。アキの中……さっきよりキツいよ……」
「に、にーちゃんが大きくしてるだけだよっ!!……あぐっ!!……奥に来てるッ!!……」
少女の激しい攻勢に、キヨはたちまち発射寸前となった。たまらずに彼は妹に懇願する。
「ちょww……アキ……激しすぎるよ。セーブしてくれなきゃ出ちゃう」
「あ、ゴメンにーちゃん。……ゆっくり……動くね」
快感に酔い激しく小刻みに動いていたアキの体が、大振りでゆっくりとした動きへと変化する。
「……はぁ……あんッ……」
まだ夜は長い。2人はすぐには果てぬように、互いを焦らすようにねっとりと絡み合った。
今度は時間をかけて、互いを高め合っていくのだ。
「ねぇ……にーちゃん」
キヨの巨根を下の口で飲み込んだままグリグリと腰をグラインドさせながら、アキは兄に話しかけた。
「男の子ってさ、えっちのとき……どんな感じ方をするのかな?」
アキの質問に少年は逡巡しながら答える。
「ん……、口じゃあ説明しづらいな。なんなら感覚情報を送ろうか?」
MOは自分の感覚をデータとして保存し、仲間に転送、共有することができる。もちろん快感、性感も例外ではない。
「うん、お願い。おれ、男の子のほうも感じてみたかったの」
「そうか、そういう楽しみ方もアリだな。じゃあ送るぞ、同期してくれ」
キヨは普段はオフラインにしている電脳の通信システムを活性化し、リアルタイムで彼が感じている性感のみをフィルタリングしてアキに転送。
送られてきた感覚情報を、アキは迷わず自分の感覚処理ソフトに展開した。

「うあっ!!……えひゃあ!!……」
入れられている感覚と入れている感覚。通常なら絶対に味わうことの無い快楽のコンボに、少女の体は激しく震えた。
今のアキは女の子であり、男の子でもあった。少し腰を動かすだけで兄の巨根が膣肉を擦り、膣肉が巨根に絡みついてくる。
その快感はまさに極楽であり、地獄であった。あまりの気持ちよさに腰が抜け、動かしたくても体が動かない。
「それっ」
妹の様子を察したキヨが動いた。指を離しアキの腰を掴んで一気に上体を起こす。
「あひぃっ!!……」
勢いでキヨの一物がアキの奥を突き上げ、ぶつかりあった亀頭と子宮口の感覚で少女が悶える。
アキの体はそのまま布団の上に倒れ、2人は再び正常位の体勢となった。
「ご、ごめんにーちゃん。おれ、腰が抜けて動けないの……」
「いいよ、俺が動くから。力を抜いて……」
「うん……。んん!!……はぁ……はぁ……」
「いい子だ。また一緒に気持ち良くなろうな……」
再びキヨが交わりの主導権を握った。彼は力強く、ゆっくりとストロークを始める。
「う!!……ぁ!!……激しっ!!……あひっ!!!!……すっ!!……吸い取られっ!!!!……」
程なくしてアキは、少女の姿でありながら男として、そして女として同時に果てた。

あれから何度愉しんだだろうか。キヨとアキがようやく落ち着いたときには、すでに夜が明け新しい朝日が昇り始めていた。
2人は汗と体液でベトベトになったアキの布団から起き出し、汚れた体を洗うために風呂場に向かう。
沸かしてから随分と時間が経ってはいたが、夏の猛暑のため風呂の湯は少し沸かすだけで程よい湯加減となった。
まずはアキがキヨの背中を流し、綺麗になった兄を湯船に入れてから、彼女は自分の体を洗い流す。
時間をかけて髪と体を洗ったあと、アキはシャワーヘッドをグイと局部に突っ込み、蛇口を全開にして中の白濁を掻き出した。
「ううっ!……くすぐったぁい!!!……」
「おいこら!! なんてはしたない……」
それを見てキヨは叱るが、いつものようにアキは気にしない。
「別にいいじゃん、こうした方が楽だもん。それに誰も見てるわけじゃなし」
「あのなぁ……」
中を綺麗に洗い終わるとアキは湯船に入り、兄の隣にちょこんと座り込む。

「ああ……いいお湯……」
力を抜いて兄に背中を預け、少女は湯の中で体を休める。人間ではない2人が湯船に浸かるのは全く意味の無い行為だが、彼らはこれを気に入っていた。
戦争が終わり、酷寒の極東から逃れてきた2人にとって、温かい風呂の中は心和む楽園なのだ。

「なぁ……にーちゃん……」
アキは肩口からキヨの方へと振り返った。少し目を逸らし気味に兄を見つめる。
「何だ?」
叱られた子供のような顔で、物怖じしながら彼女は続けた。
「怒らないで聞いて。おれ、男の子に戻りたいの……」
それを聞いたキヨの顔から表情が消えた。少しの間を置いて言葉を返す。
「女の子は……嫌か?」
「嫌ってわけじゃないけど……やっぱり不便なんだ。にーちゃんの前ならともかく、他の人たちの前じゃ気を使うことが多いし」
「…………」
「えっちは女の子のほうが気持ち良かったけど……」
アキの話を聞いてキヨは黙り込んだ。目をつぶり、考え込むような表情になる。
「だ、駄目なら今のままでいいよっ。無理にとは言わないから……」
相手を怒らせたかと思い、アキは必死にフォローを入れようとする。
「……そうか」
パチリ、とキヨは目を開けた。何かを思いついたらしく口の両端がニッとつり上がり、悪戯っぽく彼は微笑む。
「にー……ちゃん?」
相手の思惑が分からずアキは少し戸惑った。どうやら怒ってはいないようだが。
「なら、一度入れ替わってみるか? 」
「……えっ!?」
「実はなアキ、俺は……女の子になって見たいんだよ。本当の話、お前が少し羨ましかった」
「そう……だったの?」
「ああ。夏休みの終わりに皮膚を張り替える予定だから、そのときに互いに入れ替わろう。
今度は俺がアキで、お前がキヨだ。それでいいか?」
思ってもいなかった申し出に、アキの顔がほころぶ。
「うん。やったぁ!!」
少女は満面の笑みを浮かべ、元気良く返事を返した。


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それからあっという間に数週間が過ぎ、長かった夏休みも残り数日を残すのみとなった。
猛烈だった夏の暑さは盆を過ぎてから急に鳴りを潜め、快適とはいかないまでも例年並みの暑さになっていた。とは言っても環境に強いMOであるアキとキヨには、あまり気にすることではなかったが。
2人のアパートの浴室では、1人の少女がバスタブに張られた乳白色の液体の水面を、じっと見つめていた。アキだった。
彼女の足元には、ペシャンコに潰れた人体のようなものが、ボロ雑巾のようになって床の上に打ち捨てられた。
中身のないそれの手足や胴体はクシャクシャに萎れ、捻れ、そして引き千切られ、真っ赤な液体に染まったそれは猟奇死体のような無残な姿となっていた。そう、これはキヨの皮だ。
彼は古くなった皮を捨て、今浴槽の液体の中で新しい皮膚を定着させているのだ。
しばらくしてアキは浴槽に据え付けられていた器材を操作し、浴槽の栓を抜いた。乳白色の液体が浴槽から流れ落ち、中にいる『キヨ』の姿が明らかになる。
それは人間の少女に見えた。目を開けて少女は立ち上がる。銀色の髪と灰色の瞳、小さな胸とお尻をもったアキと瓜二つの美少女だ。
アキが少女に近づく。鏡写しのように全く同じ顔同士が向かい合う。アキは彼女の体に残った生成液を、シャワーの水で洗い流した後、大判のタオルで水気を拭い去った。
そしてアキはじぃっと少女の体を観察。彼女の全身をくまなくスキャンして不自然な部分が無いか入念にチェックする。しばらくしてアキは少女にニコッと微笑みかけた。
「オッケーだよにーちゃん。どこから見てもおれと同じ、これで念願の女の子デビューだねっ」
「……からかうなよ」
少女=キヨは顔を赤らめて苦笑しながら自分の体を見回す。妹の言うとおり新しい皮膚に異常は無い。アキと同じ体格に調整した機体の状態も安定している。
今までとは違う女の子の姿。好奇と興奮、そして少しの不安がキヨの胸を高鳴らせていた。
今日は2人が名前と姿を入れ替わる日。キヨは『アキ』に、アキは『キヨ』に。
次はアキの番だ。浴槽に水を張り、生成剤と定着用のマイクロマシンを投入し攪拌。浴槽の脇にある制御装置のタッチパネルを操作して緒元を入力。
準備が整うまで、アキは『アキ』の髪を編んでやる。編み終えたタイミングで生成剤の準備が整い、制御装置が電子音でそれを知らせる。
「準備ができたみたいだね。じゃあ行くよにーちゃん」
「違うだろアキ、今度はお前が『にーちゃん』なんだぞ」
「あ、そうか」
服を脱ぎ、生まれたままの姿となったアキは、ばつが悪そうにペロッと舌を出して微笑む。
直後、突如アキの体がガクガクと痙攣を始めた。苦悶の声を上げるかのように少女の顔がこわばり、メキメキという音と共に彼女の肉体が内部から膨張していく。
眼球が内側に落ち窪み、歪んだ少女の顔が凄まじい力で内側から引き伸ばされ、目口を大きく開けたままさらに醜くねじくれていった。
彼女の背中は大きく盛り上がり、その肉体はありえないほどにパンパンに膨らんでいた。
腕も脚も胴体も大木のように膨らみ、華奢な少女の面影はもうない。膨らんだ肉の塊に圧迫されて『アキ』が風呂場の外に押し出される。
そして次の瞬間、大きく開いた彼女の口端がバリバリと内側から引き裂かれ、少女の顔の顎から上がズルリと真後ろに剥がれ落ちた。
それを弾みに、盛り上がった背中の皮膚が破裂するかのように後ろに千切れとび、下あごから前胴部の皮膚も支えを失いドサリと崩れ落ちていく。
柔らかな双丘の膨らみはその形を保ったまま床に衝突、落下の衝撃で小さな擬似脂肪の塊がブルン!! と震える。
腕と脚の皮もズタズタに破れ落ち、ほぼ真っ二つに裂けた少女の体の中からは人型をした、身長2mオーバーの巨大な鋼の塊がその姿をあらわしていた。
機械仕掛けの鋼鉄の髑髏、鋼の甲殻に覆われた大樹の幹のような胴体と、丸太のように太くたくましい四肢。
それはまさに鋼鉄の鬼か悪魔、としか形容できない化け物だった。だがギョロリと蠢く灰色の瞳だけは少女のものと同じだった。
アキは自分本来の姿、兵器の姿に戻ったのだ。
だが、それが兵器の姿である時間は長くはなかった。しぶとくこびり付いた皮の切れ端を刃物で削ぎ落とし、怪物は休む間もなく再び体を変化させ始めた。
ギギギ……と金属が軋むような異音と共に今度はそれの体が収縮していく。やがて怪物の体は痩せ型の男性型の体格まで縮んでいった。それは『キヨ』のシルエットだ。
機体の準備を終えて、怪物は新たな皮膚を纏うため、ゆっくりと浴槽の乳白色の液体に身を浸していく。『アキ』が怪物にささやいた。
「実は俺、夏休みの宿題まだだったんだ。あとはよろしく、『にーちゃん』」
「……ブクブク!!(……覚えてろ!!)」
文句を言おうにも時既に遅し。怪物は苦虫を噛み潰したような顔で体を横たえ、全身を生成液に沈めていくのだった。
『アキ』の足元では破り捨てられ裏返しになった少年と少女の抜け殻が、まるで愛し合っているかのように互いの肉体を重ね合い、風に吹かれてパタパタと揺らめいていた。(完)
暑中お見舞い申し上げます。皮モノ超好きかわらばです。
今回の作品は、昨年末に二代目掲示板で書かせてもらっていた人外皮モノです。一枚目の画像でティンと来て書き始めました。
過去初代掲示板に投稿されていた、主人公が宇宙人の彼女の身代わりをする皮モノSSに即発されて、人工皮膚の描写には力を入れてみました。
主役の人型兵器MOの元ネタは、80年代のOVA「バブルガムクライシス」に出てきた人造人間ブーマ。その中でも人間への擬態能力があるC系列ブーマという奴です。
普段は人の姿で社会に溶け込んでいるのですが、ひとたび戦闘になると邪魔な人工皮膚を破り捨て、内蔵武器で暴れまわります。
自分が知っているだけでもOVA1、6、8巻にかっこいい脱皮シーンがちょくちょくあります。全部男性型ですが・・・orz
読者様より過去作のリクエストがありましたら、今後も少しづつアップしていきたいと思います。

H23/8/4追記
一部本文修正。
「蒸し暑い倉庫」「血も凍るような貨物船の船倉」の矛盾を修正するため、倉庫のシーンの季節を冬っぽく書き直しました。
かわらば
0.4990簡易評価
6.100GAT・すとらいく・黒
毎度おつかれさまです。
もしかしてあとがきで触れられてたお話って、うちのだったりするんでしょうか・・・
もしそうなら恐縮です。
(初代掲示板が沈黙してから某ixiv小説にバックアップしてたりします)

殺伐とした戦闘兵器が、平穏を望んで人の姿をとるっていうのはなんかいいシチュだと掲示板の頃から思っておりました。

現在わかばで続いてるスキンモジュールのお話も、続きを楽しみにしております。(多分そうですよね)
23.無評価かわらば
■GAT・すとらいく・黒様
>もしかしてあとがきで触れられてたお話って、うちのだったりするんでしょうか・・・

はい、あの作品です。
いくつかの段階を経て皮を定着させ、男の本質を体内に残したまま女体化、という描写に激しくムラムラさせていただきました。良いものをありがとうございました。

>現在わかばで続いてるスキンモジュールのお話も、続きを楽しみにしております。(多分そうですよね)

はい、遅筆ですが頑張っていきたいと思います。
最近は未完作品は出していないので、一応は完結出来るのではないかと・・・。
51.50Hap
It's a joy to find somonee who can think like that
55.無評価iphone5 ケース オリジナル
通常、一般的にAppleのiPhone 4 4Gの木炭の主張もあり、iPhoneの主張は、丈夫であること、あなたが効果的なゴルフクラブグリップ」をことを提供することがあります。 このユニークなAppleのiPhone 4炭ゼリーの主張は、ゴルフクラブグリップはもちろんのこと、保険を生成します。 通常、AppleのiPhone 4 4Gの主張は、快適な細胞にフィットする目的のために生成されました。私は自然な方法の打ち上げは主にiPhoneのために製造されるようなことが起こるのPU合成皮革条件を守る良い黒檀について考えていること、これらの病気の全てを考えると。 理由でdealextremeのためのiPhone 4の条件内でその夜明けは、それはすべて、最終的には不動の信者のための通知を提供し、支持し電源を入れます。 それは実際にiPhoneのためのもの個別されています。
iphone5 ケース オリジナル http://iphone5s-cover.snack.ws/
56.無評価iphone5 ケース ブランド
時が来れば、あなたは船の価格で入手可能である余分な物になることを見てみたい。 あなたの全体の家族が含まれて追加して、適切な価格を得ることを確認するようにすることを選択したので、特定のです。 あなたは決して全く含まdoesnのメコンデルタクルーズに多くの他に費やすしたいです。しかし、デバイスのサイズが実質的に参加者が必要な5分待った後、部屋を出ているかどうか影響を与えた。 デスクトップコンピュータを使用して、参加者のうち、94パーセントは、実験者を取得するためのイニシアチブを取った。 iPod touchを使って人のために、唯一の50パーセントは部屋を出た。
iphone5 ケース ブランド http://www.sexdagarna.se/news/11.html
58.無評価legend blue 11s release
Den formelle udgave af highheeled sko anses en er kommet til eksistens i lbet efter r 1533. og alligevel er grovere, mere uformelle versioner nu kendt for at eksistere siden lnge tilbage. legend blue 11s release http://www.ua.ac.be/jscript/scroller/jordan4.html