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Romancing Empress Sa・Ga #07

2011/09/25 18:38:46
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_/_/_/_/_/Chapter.7-4_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/レジスタンス_/_/_/_/_/

ゼェゼェと息を切らし、男は扉が開くのを待っていた。にしても、ゴツいわりに頼る相手が…
すぐに鍵を開ける音がして、ガチャリと扉が開いた。現れたのは、やはり屈強な大男…ではなく、恰幅のいい女性だった。
「なんだい! この馬鹿息子が! ご近所に迷惑だろッ!!」
怒鳴り声が裏路地に響き渡る。まさに『カーチャン』といった感じだ。
「ひ、非常事態なんだよ、怒るのは後にしてッ!」
「あんだいそりゃ!? …ん? そっちの娘は?」
「あっ、あの、その方に助けて頂いて…」
「…あんたも『そう』なのかい? それにしちゃ、見ない顔だけど…」
「?」
「おおーい! 追われてるんだよぉ! 早く早くッ!」
母親の気になる一言を遮るように、大男が割って入る。
「全くアンタは後先考えず…ほらッ、とっととはいんなッ!」
「えっ? あっ、は、はい!」
思わず彼の母親に気圧されつつも、家の中へと逃げ込む。
「こっちこっち!」
男が手招きし、二階へと駆け上がる。そして、恐らく彼の部屋と思われる場所へ通された。
「…ッはぁーッ…此処までくれば何とか…」
男が息も絶え絶えにその場にへたり込みつつ言う。
彼の部屋は、彼自身をよく表しているというか…色々と散らばっていてお世辞にも綺麗とは言えない部屋だった。
そんな部屋でもお構い無しに、男の部屋というだけで疼きそうになる体をグッと抑え、感謝を伝える。
「あ…あの、助けてくれてありがとう…」
「どういたしましてッス。 …にしても、一体何をやらかしたんスか?」
「え、ええっと…」
ハクゲンの部屋に忍び込んでいました、なんて流石に素性も知らない男に言えるわけもないし…
「…ま、いいッス。ほとぼりが冷めるまで暫く隠れていて構わないッスよ。家ならカーチャンがいるから安心ッス」
「はは…」
確かにそうかも、と何故か納得できる自分がいた。
「あ、ところで…お名前は?」
「おっと、そうだった。自分、ウォーラスッス」
ウォーラス…? どこかで聞いたような…?
「キャットの姉御を探していたら、何やら大学の方が騒がしくて行ってみたら…あの騒ぎだったッスからね、いやはや…」
「! キャットを知っているの!?」
今、間違いなくこの男…ウォーラスはその名を口にした。それに食いついたマリーンを見て、男はしまったといった顔で慌てふためく。
「え! あ!! いや! その!!」
…何だかムウラを前にした自分を見ているようで悲しくなる。慌てるウォーラスをたしなめるため、優しい口調で話す。
「…心配しないで、私もキャットの知り合いだから」
「そ、そうッスか! よかったぁ…でもまぁ、アイツ等に追われるって事はこっち側の人間ッスよね?」
「こっち側って…シティシーフとかレジスタンス、とか?」
「そうッス。でも、ハクゲン先生の逮捕でこの先どうなるんスかね…」
「…」
ハクゲンという人物は、やはり彼らにとってなくてはならない存在だと、改めて認識す… あ!
「思い出した!」
「な、なんスか!?」
突然声を上げたマリーンに驚くウォーラス。
「あの時、後ろで押さえてた奴!」
「は!?」
更に訳の分からない言葉と共に指を指され、目を丸くするウォーラス。その顔に、マリーンもアッと言ったような顔をする。
(そっか…あの時はまだ子供だったからなぁ…)
ウォーラス。そうだ思い出した。コイツと出会ったのは今回が初めてじゃない。
初めてシティシーフ達の隠れ家へ行った時、キャットに命令されて私を羽交い絞めにした男こそ、このウォーラスだ。
といっても、今の自分はあの時から二回りも成長していて、ウォーラス自身が覚えていないのも無理はない。
それに、あの時真っ先にフェロモンにやられたのもコイツだ。余計覚えているはずもない。
「へ? 何? どういうことッスか?」
相変わらずキョトンとした顔でこちらを見ている。その顔に、あの時の野獣のような目付きは微塵も感じられない。
「…ゴメン、大声出して。そういえばこっちが名乗ってなかったね。私はマリーン」
「マリーン…いい名前ッスね♥」
名前を言えば少しは思い出すかと思ったが、鼻の下を伸ばすだけだった。コイツ…
気を取り直し、ウォーラスにクロウの住む寮への道を尋ねる事にした。
「ねぇ、聞きたいんだけど、此処から大学寮って近い?」
「大学寮ッスか? 女子寮は大学方面に戻らないと…」
「あっ、男子寮の方なんだけど…」
「え゙…それってどういう…」
ウォーラスが動揺している? …って!
「ちちち、違うの! クロウに会いに行く必要があって…」
「え゙ッ! クロウさん、まさか浮気…」
益々おかしな方向へと勘違いするウォーラス。どうしてそういう発想になるんだ!
「違ーうッ! そうじゃないぃー!!」
噛み合わない会話に、やきもきするマリーン。自分の説明不足を棚に上げている事など気にもせず。
「クロウに地下捜索を任されたけれど、いなかったから落ち合う予定なの!」
「あ、あぁ…そういう事ッスか、自分はてっきり…」
漸く意味を理解したウォーラス。全くコイツは…
「それで、男子寮はどっちに…」
「此処からは近いッスけど、今はまだ外に出ない方がいいッスね」
そう言うとウォーラスはチラリと窓に目をやる。
外からは未だ追手の声は聞こえないが、逆に言えば何時現れてもおかしくないと言う事でもある。
「うーん…仕方ない、か」
まだ追われている身で、男子寮に入っていく姿を見られでもしたら更に問題だ。
「まぁ、仮に誰か来ても下にはカーチャンがいるんで。家の事は気にしないでいいッスから」
「そ、そう…」
うーん…そんなに凄いのか、あの母親は…
窓から外の様子を窺う。まだ追手は来ていない様だが、安心は出来ない。そのまま窓の傍に立ち、見張っていると…
「あ、あの…」
「ん?」
ウォーラスがもじもじしつつ話しかけてきた。
「き、汚い部屋ッスけど、ゆっくりしていってくださいッス!」
声を上ずらせながら今更な事を伝えてくるウォーラス。
「あ、うん、お言葉に甘えさせてもらう」
言葉通り近くの椅子を借りて腰掛ける。ハクゲンの情報を整理するため、天井を仰いで目を閉じる。
(ハクゲン…必ず、助けるから…)
その思いに、保証なんて何処にもない。けれど、見捨てるなんて事は出来る筈もない。最善を尽くすのみだ。
窓の外を見ながら、ただ時が過ぎるのをじっと待つ。静寂が部屋に訪れる。
往来を物憂いな表情で見つめていると、急に人の気配が近づくのを感じた。
殺気…? いや違う。もっとこう、刺すような視線…この感じ、最近、いや少し前に浴びた気がする。
ハッとして振り返ると、ウォーラスが自分の近くまで寄ってきていた。
「ど、どうしたの?」
「え! あ! いやその!! 何を、見ているのかなと…」
「…あいつらが来ないか見張ろうかな、って思って」
「そ、そうッスか…」
慌てて一歩引いたウォーラスは、何やらバツが悪そうな顔をしていた。
それに、振り返った瞬間、ウォーラスと目が合った。それはつまり、コイツの目線は自分に投げかけられていた事を意味する。
何か嫌な予感がする。何故かは分からないが、勘がそう告げる。
「…大丈夫?」
「あ! 心配御無用ッス! 自分、体が丈夫なのが取り柄なんで!!」
体が丈夫そうなのは見れば分かるが、どちらかというと目が泳いでいる事が気になっての心配だったのだが…
再び窓に向きなおすと、何やら外が騒がしくなっていた。
「!? もしかして!」
慎重に窓から顔を出すと、警備兵が誰彼構わず何かを聞き出しているのが見えた。
「ウォーラス! あいつらが来た!」
「ホ、ホントッスか!? うわっ、ご丁寧にさっきより人数増やしてくれてるッスね…」
窓から身を乗り出さんとするウォーラス。
「ちょ、ちょっと!」
「グェッ!」
慌てて首根っこを掴んで室内に引っ張り込んで、お互い息を潜めるよう促した。
暫く様子を窺っていると、一階から扉を叩く音が聞こえてきた。
「おい! 誰かいるか!」
「なんだい!! 騒々しい!!!」
どうやら、ウォーラスの母親が対応するようだった。匿っている事がばれたら、ただでは済まされないというのに…
「こっちに若い男女が逃げたのを見なかったか! 男は小太りで、女はやけに着飾った紫の髪の女だ!」
「あぁん!? それが人にモノを尋ねる態度かい!!」
「! なんだと貴様ッ…我々に歯向かう気か!!」
「はんッ! 小太りの男なんかそこらじゅうにいるし、その女ってのも此処じゃ見かけないね!!」
む、無茶苦茶だ…多勢の兵相手に、なんて対応…聞いているこっちは気が気ではない。
「くッ…本当に、知らないのか!」
「あたしゃ生まれてこの方自分にも嘘ついたことなんてないよッ!!」
…物凄いケンカ腰の声が聞こえてくる。幾らなんでも挑発しすぎな気がするが…
「隊長! こんなところで時間を食っていては…」
「五月蝿い! 分かっておる! …その言葉、覚えておれよ!」
「ふんっ! とっとと失せなッ!」
「…ッ! 行くぞッ! 次だッ!!」
「「ハッ!!」」
その合図と共に、一階の喧騒が外へと移動するのが聞こえてきた。
その後、隣近所から今のような声が響くも、徐々に離れていく。
「はぁ、何とかなった…」
安心して溜息が出た。ウォーラスも、同じく溜息をついていた。
「一先ず撒けたッスね…」
「にしても、凄いね貴方のお母さん。よく武装した兵に向かってあんな言い草…」
「昔からカーチャンはあんな感じッス。それを兵士達もよく知ってるッスから」
昔からと言われても、彼女が生まれるずっと前の自分は、知るはずもなく。
「あぁ、そっか…」
「?」
よくよく考えれば今の自分は、姿は十代位の若い女性なのに、彼女よりずっと年上なのか。心も、体も。それに気付いて微笑する。
「…っさて、追手も行ったし、それじゃあ案内を…」
「! ちょ、ちょっと待つッス!!」
「何?」
こちらは一秒でも早く戻りたいというのに、何故か引きとめようとするウォーラス。
「あ、その…ほら! まだ鉢合わせになる可能性もあるッスから、もう少しここにいても…」
「うーん、でもクロウと別れてから時間が随分経っちゃってるし、早く戻らないと…」
ウォーラスの言い分も尤もだが、いい加減、クロウの状況が気になる。そう、やんわりと伝えたのだが…
「あ、危ないッスから! 危ないッスから!!」
「え? え!? な、何!?」
いきなり肩を掴まれた。力加減も出来ていない大きな手が、肩に食い込む。
「ちょっとウォーラス…! 痛い! 放し…きゃっ!」
「もうちょっとだけ! もうちょっとだけ!!」
鼻息を荒くするウォーラスに圧し掛かられ、そのまま倒れ込む。幸い、ベッドがクッションになったが、この状況…
「大丈夫、大丈夫ッスから…」
何が大丈夫なのか。傍から見れば完全に襲いかかる野獣の様にしか見えないぞ!
「いい加減にッ…!!!???」
怒りを伝えようと目を凄ませると、ウォーラスが顔を近づけてくるのが見えた。こ、コレじゃ! このままじゃ…キ、キスを…!
必死に抵抗すると、キスできないと判断したのか今度は胸に顔を埋めてきた。
「やっ、ちょッ…!」
「はぁぁっ…! マリーンちゃん、いい匂いッす…」
駄目だコイツ、完全に我を忘れている。やはり、フェロモンのせいか? でも自分はこんな事思ってな…
(! まさか…)
ムウラの言葉がまた過ぎる。 …体は求めている? 男なら、雄なら誰彼構わず?
い、イヤだ・・・ウォーラスには悪いが、心の準備が出来ていないんだ、まだ、今はまだ・・・
心の中で葛藤していると、そのマリーンの様子を何と勘違いしたのか、ウォーラスが服の中に手を入れ、胸を直に弄り始めた。
「んあっ・・・!」
ゴツゴツした手が胸を、乳首ごと揉みしだく。快感の波はすぐに押し寄せ、頭を痺れさせる。
「ウォーラス・・・やめ、て・・・」
理性が吹き飛ぶ前に語りかけたが、最早目の前の女体に夢中になっているウォーラスには聞こえてはいないようだった。
「はぁ、はぁ・・・柔らかい・・・いいッス、凄くいいッス・・・」
ウォーラスは無意識に放った言葉だったのだろうが、自分の体が求められ、褒められている事を耳元で囁かれ、思わず身震いする。
「・・・」
もう言葉は出なかった。抵抗すらしなかった。そんな状態を知ってか知らずか、ウォーラスの手が、下半身へと動き出す。
「ひぅっ・・・!」
「こ、こうなってるんスね・・・女性のアレって・・・」
初めて女性器に触れるためか、恐る恐る差し伸べられた手は、ゆっくりと動かされる。
だがその動きが、優しく、気持ちの良い愛撫となっていた。
「ッ・・・!! アヒッ・・・!」
「こ、これが・・・」
徐々に手が引き上げられれば、自ずと小さな蕾に触れる事になる。
さわさわと触れる程度だったが、頭が真っ白になるにはそれだけで十分だった。
「マ、マリーンちゃ・・・も、もう・・・自分、ジブン!」
「・・・」
何をするかなんて、こんな状態でも分かる。でも、抗う気力もなかった。今度こそ、俺は、私は・・・そう、思っていたのだが。

――カーン!

「ぐはっ!?」
「ひぇっ!?」

およそ場の雰囲気にそぐわない金属音が、部屋中にこだまする。
その音が鳴り響いた後、ウォーラスの上体が引っぺがされる様に持ち上げられた。
「……この ……馬鹿息子がぁッッッ!!!!」
「ひィィィーーー!!」
ウォーラスの母親だった。フライパン片手に、大男のウォーラスを片手で引っ張り上げていた。
そしてそのまま、床に叩きつけた。背中を盛大に打ち、痛がるウォーラスを「そこに直れ!」の一声で正座させる。
「…あんたの為にアタシがあのムカつく兵士を追っ払ってやったってのに…何してんだいこの馬鹿がッ! 恥を知りなさい恥をッ!!」
「は、はいぃいぃーー」
シュンと縮こまるウォーラス。そんなウォーラスをおいて、母親がこちらを向く。
「…アンタも! とっととそのはしたない格好直しなッ! 全く、最近の娘は恥じらいってもんがないのかい!」
「はっ、はい、すいません…」
ダメだ、逆らえない。多分どんな権限をもってしても逆らえない。おそろしや。
言われたとおり服を整えていると、先程とはうってかわって優しい口調で話しかけてきた。
「…家の馬鹿がすまないね、女に対する免疫ってのが無いせいでこんなとんでもない事を…大丈夫だったかい?」
「は、はい…なんとか…」
いそいそとローブを整えながら返事をする。大丈夫といえば大丈夫だが、中途半端に昂った体がまだ治まらない。
「遠慮せず腹の一つや二つ蹴っちまってもよかったんだよ? それともなにかい? もしかして…」
「い、いえいえいえ! そんなんじゃないんです! そんなんじゃ…」
その言葉に、ウォーラスが更にしゅんとするのが見えた。スマン…
「…まぁ、あんたさえよけりゃこんなんくれてやるよ」
「は、ははは…」
謝るわりにどこか今の事を機にくっついてもらえれば、と言う裏が見え、悪寒が走った。何処まで本気なんだ…
「まぁそれは冗談で…ホラ! 土下座して謝んな!」
そういってウォーラスの頭を掴み、無理矢理に謝らせてきた。
「ゴ、ゴメンッス! 俺…俺、マリーンちゃんみたいな娘が彼女にしたくて…」
「そうじゃないだろ!」
母親が手にしたフライパンで再度殴る。乾いた金属音が、再び響き渡る。
「スミマセンでしたーッ!」
ウォーラス渾身の土下座。とある記憶がフラッシュバックする。あの時の自分も、こんな情けない姿だったんだろうな…
「…まぁ、事に至ってないから…でも、他の娘だったら犯罪だからね、今の」
「ホント、申し訳なかったッスーッ!」
「…今後気をつけてくれればそれでいいよ。顔を上げて、ウォーラス」
「うぅッ…やっぱりマリーンちゃんは天使だぁ…」
…ホントに反省しているのかコイツ。とはいえ、顔は涙でびしょ濡れで、声も震えている。
「ホントにすまないね」
「いえ、匿ってもらっている事もありますし…」
事を荒立てても意味が無いし、実際、『挿入れ』られてはいないので…挿入れ・・・
頭を振って雑念を飛ばす。
「どうかしたのかい?」
「あ! なんでもありません、大丈夫、です…」
「? そうかい。それはそうと、この後どうするんだい?」
「何でも男子寮に行きたいらしいよ」
「え゙」
「ウ、ウォーラス! ち、違うんです、そこで落ち合う予定で…」
「へぇー、そういうことかい。まぁ、家のは何時でも空いてるだろうから」
「カ、カーチャン!」
もうやだこの家族…二人とも話を聞かない点は正に親子、といったところか。
「と、兎に角、そこに行きたいのですが…」
「そうねぇ…近いって言えば近いけど、まだうろつける状況じゃなさそうだし」
チラリと窓の外へ目をやる。追手は既にいなかったが、町が騒然としていた。この状況で出て行っては…
「そうみたいですね…」
あんな事があった手前、これ以上長居はし辛かった。どうしたものかと、悩んでいると。
「…ウォーラス!」
「! な、なに、カーチャン」
声を掛けた母親は、ポケットから何かを取り出して、ウォーラスに渡した。
「…三階の窓から屋根伝いなら大丈夫だろ、案内してやんな」
「え…でもカーチャン…」
「いいからさっさとおし! アンタまたこの娘に襲いかかる気かい!」
「そそそそんな滅相も無い!」
なにやら二人の間で会話があったかと思うと、ウォーラスが立ち上がって手招いてきた。
「…一緒に来てくれッス。 !べ、別に変な事しようって訳じゃないッスよ!」
「当たり前だよっ!」
また鳴る金属音。徐々に音が鈍くなっているのは気のせい、だろうか。
少なくとも信じてはいいだろうと、こちらも立ち上がる。
「あの…」
「なんだい?」
「助けて頂いて、感謝します」
深く頭を下げ、母親に礼を告げる。
「なに、いいって事さね。それよりも、気をつけなさいよ? 色んな意味で」
「は、はい」
そう言い返す彼女は、どこか悲しい目をしていた。一体何故…

_/_/_/_/_/Chapter.8-1_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/募る気持ち_/_/_/_/_/_/

「こっちッス」

ウォーラスに連れられ、部屋から出て奥の扉へと案内される。その扉の鍵が開けられると、その先に階段が現れた。
その階段を上がると、屋根裏部屋…だろうか、少し埃っぽい部屋に出た。
「ここは…」
「…親父の、部屋ッス…」
答えるウォーラスの声がやけに小さい。
それに、家主の部屋と言うわりには、まるで時が止まったかの様に最近使用している形跡が無い。
「ウォーラス…あの…」
もしやと勘ぐり、思い切って尋ねると、ウォーラスは一呼吸おいて語り始めた。
「…親父は、アバロン宮殿で部隊長をやるほどの達人だったッス。でも、ボークンのやり方に楯突いたせいで、首になったんス…」
「…」
「それから数日して、行方不明に…後日地下水道で遺体が発見されて、酒に酔って溺れた、って事になってるッスけど…」
ボークンの魔の手は、こんなところにまで…ギリリと、歯噛みする。
「でも、親父は酒は飲んでも飲まれるな、っていっつも言ってた人ッス。いくら荒れてたとはいえ、そんなヘマするなんて有り得ない…!」
ウォーラスが震えている。握りこぶしをギュッと締め、今にも殴りかからんとする様相だった。
この部屋は、ウォーラスの…彼の家族にとって、耐え難い現実を見せ付けられる、そんな部屋だったのだ。
「…ごめんなさい…」
「!? マリーンちゃんが謝る必要は無いッスよ! それに、湿っぽい話は嫌いな人だったッスから」
「…」
自分が皇帝としての仕事を放置していた事で、こんなにも多くの人が血と涙を流す。
その事実に、今はただ謝罪の言葉を発する事しか出来なかった。
グッと悔しい気持ちを押さえ込んでいると、突然、部屋の中に風が吹き渡った。
「この窓から屋根伝いで行けば、裏路地を通るより見つからずに済むッス」
気を取り直し、窓辺で説明をするウォーラスだったが。
「ケホッ! ケホッ!!」
窓を開けた事で、部屋の埃が舞い立ち、咽る。部屋の奥にいたマリーンは、その埃をまともに受けてしまった。
「…? !あぁっ、ご、ゴメンッス!!」
漸く気付いたようだが時既に遅し。部屋の扉を閉めておけばよかった…
「ケホッ! ケホッ!! むぅ…」
「だ、大丈夫ッスか?」
「うッ…うん、大丈夫…気をつけてよね、もぅ」
「ゴ、ゴメンッス…」
ウォーラスは窓の傍にいたので、被害を受けてはいない様だった。くそぅ。
ただ、おかげで緊張の糸は解れたので、一応よしとする…か。
「それじゃ、ここから…」
「あ、待って欲しいッス!」
窓の傍によって、身を乗り出そうとすると、ウォーラスに呼び止められた。急いで何かを書き殴っている。
「…よしッ! これが男子寮までの地図ッス! 多分、男物のパンツやらなにやらが大量に干してあるから、すぐ分かるかと…」
「パッ・・・!」
思わず顔を赤くするマリーン。
「あ…いやいやいや! め、目印ッス! 目印! 別に深い意味はないッスから!!」
考え無しに口にしたウォーラスもウォーラスだが、反応するマリーンもマリーンである。
「って、どうして地図…?」
「ええっと…男子寮まで一緒について行きたいのは山々なんスけど…」
語尾を小さくしながら、ウォーラスが窓の傍に立った。
「…ねっ?」
「…えぇ…」
言わずとも分かる。窓の大きさに対してウォーラスは大きすぎる。これじゃ出られそうに無い。
「そんなわけで、自分はここまでッス。 …無事を、祈ってるッス」
「分かった、ありがとう、ウォーラス」
コクリと頷いて、窓から身を乗り出す。三階の高さは普通の人間なら身が竦むほどだったが、この体ならばいらぬ恐怖だ。
窓枠を手で掴み、部屋のウォーラスに別れを告げる。
「それじゃ、私はいくね、色々ありがとう、ウォーラス」
「…また、会えるッスよね?」
「…うん」
手を振り、屋根を慎重に昇る。風が少し強く、落ちそうになるのを耐え、天辺へと上がる。
新市街の家々は、おおよそ同じ位の高さが続いているため、漸く、この新しいアバロンの全景を見る事が出来た。
見回すと、遠くにアバロン宮殿が見える。ぎゅっと手を握り締め、踵を返して地図に従い屋根を渡って行くマリーン。
「…クロウ…」
自然と声が、漏れた。

追手を気にする必要はないとはいえ、慎重に移動する。
屋根を渡る事自体は容易だが、それを見られたり、下に『落りる』事の方が問題だ。それと、もう一つ、問題があった。
「ええっと…これが…ここ、なのか?」
その問題とは渡された地図である。急ぎで書いたからか、ウォーラスに絵心がないのか、あるいはその両方か。
兎に角分かり辛い事この上ない。大体、なんだこの『サニーちゃんの家』って。知らんがな。
「はぁ…ウォーラス、根は良いヤツ何だけどなぁ…」
今になって簡単に許した事を後悔する。もう少し気付けが必要だったかも。
「…ん? そういえば…」
ふと、あの時のウォーラスの言動を思い出す。自分のした事を反省していると言っていたが…それはつまり…
「し、素面で襲ってきたのか、アイツ!」
てっきりフェロモンのせいでああなったのだとばかり…!
「ウォーラス…ありゃちょっと重症だな…」
本当に別件で逮捕されなけりゃいいけど…そうこう考えながら分かりにくい地図だけを頼りに進む。
「これが、あの家の事なら…多分」
目的地に近づいてきた…はず。そう信じながら尚進むと…
「あれか! …あれ…か…」
長い寄り道の末に、漸く戻ってこられた男子寮。そんなマリーンを出迎えたのは…風に舞いひらひらと漂う、男物のパンツだった。
「は、ははは…ホントにあったよ…」
一枚二枚なら兎も角、十枚二十枚もあると流石に信じざるをえなかった。
とんとんと軽やかなステップでその洗濯物のある建物へと降り立つ。
流石に洗濯済みの下着にまで反応する体ではない事にホッと胸を撫で下ろすも、そんな心配をする自分に溜息が出た。
「言われたモノがあったとはいえ、本当にここであっているのか?」
そっと体を乗り出して、下の通りの景色を見る。はっきりとした確証は無いが、あの時見た景色に似てはいる。
「確か二階、だったよね」
考えていてもしょうがないので、階下へと行く事にする。
屋上の扉の鍵は、洗濯物もあるせいか開いていた。ゆっくりと扉を開け、階下の様子を窺う。
大学で見た人の流れを考えると、恐らく入居者が帰宅する頃だろう。慎重に慎重を重ねて、階段を降りる、が。
「…? 誰もいない?」
拍子抜けするほど人の気配が無い。
「誰も帰ってきてないのかな…でも幾らなんでもこれは…」
余りにも静か過ぎて、待ち伏せでもされているのかと警戒したが、二階に降りてもやはり誰もいない。
あっさりと、クロウの部屋の前まで着いてしまった。恐る恐る、ドアを開けると…

「…マリーン! 無事だったんだね!!」

…そんなクロウの声が聞こえた気がした。だが現実は、空っぽの部屋がマリーンを迎えただけだった。
「帰ってない、か…」
他の部屋と同じく、クロウの部屋もまた無人だった。キャットも、そこにはいなかった。
「はぁ…」
扉を閉め、部屋に入ったマリーンは、そのまま扉に体を預けたままズルズルと座り込んでしまった。
漸く戻ってこれたせいか、疲労感がどっと押し寄せる。いつの間にか、ここに戻る事自体が目的になっていたようだ。
「クロウは無事かな…キャットは、見つかったのかな…」
最早マリーンには待つほかすべき事が無かった。追手のせいで、動くわけにもいかず、ただひたすら待つしかなかった。
「…」
暇を持て余すのも億劫で、今までの出来事に思いを巡らす。
ムウラに正体がばれた事。そしてその取引として言い渡された人生。ワレンやウォーラスとの出会い。ハクゲンの書類。そして…
「クロウ…」
ムウラが言い放った一言。その時脳裏に浮かんだ人物。本当に、するしか無いんだろうか…
「…」
膝を抱える腕が、自然と更に強く抱え込む。大きな乳房が、ギュッと押し潰される。
顔を埋めると、閉じられた胸の隙間から自分の匂いをより一層強く感じる。
その匂いに『体』は反応しなかったが、『心』が今の自分の体に欲情する。
一方『体』は、いなくとも部屋に漂うクロウの香りに反応して、欲情する。
そしてウォーラスに愛撫された『事実』と『記憶』が、心も体も昂らせた。
「・・・あっ・・・」
自然と伸びた指が触れたマリーンの秘所は、既に濡れていた。

_/_/_/_/_/Chapter.8-2_/_/_/_/_/_/
_/_/_/抑えきれない気持ち_/_/_/

「もう・・・こんなに・・・」

チュクッという湿った音がした。手を戻せば、糸を引く液体で指が濡れていた。
「はぁッ・・・」
嫌悪感と、罪悪感と…背徳感が、入り混じる。こんな事をしている場合じゃないのに…
「んッ・・・でもッ・・・気持ち・・・いい・・・」
指で割れ目を擦る。細い指が踊るような動きで撫で続けると、ヒクヒクと肉壁が動く。
「んくッ・・・!」
小さな蕾に触れるだけで快感がほとばしる。
「んッ・・・これ・・・ ひぅッ!!」
触れ続けていると、段々と気持ち良くなるコツが分かってきた。成長したからだろうか、すぐ理性が吹き飛ぶ事は無かった。
「あぁ、いいッ・・・気持ち、いいよぉ・・・♥」
だけどそれは、残った『理性』に、自分のはしたなさを見せ付ける様な気分に陥る事になっていた。
指の動きが繊細なものから大胆な動きになる。気付けば、左手も使って全身の気持ちよさを貪っていた。
なまじ理性が残っているせいか、快感にいつまでも溺れ続けられる気がした。だけど・・・
「んんんッ、足りない・・・でも・・・」
もう撫でたりクリトリスを弄り回すだけでは満足できなかった。入れたい。入れて、掻き乱されたい。ううん、違う…挿入れられ・・・たい。
でもそれをしたら、自分が、自分の中の『マゼラン』と言う人格が消えてなくなりそうで怖かった。
欲求不満を更に指を激しく動かす事で解消しようとした。でも、全然足りない。
「はぁッ・・・はぁッ・・・!」
指を止め、ローブをはだけ、自分の股間に目をやる。既に大量の愛液が溢れ出して、床を濡らしていた。
「・・・ッ・・・」
ゴクリと息を呑み込む。マリーンの赤い瞳が、ますます赤みを帯びた。
「ここに・・・アレを・・・」
かつて自分に生えていたモノ。今は見る影もないが、それでも記憶を呼び起こせば、そそり立つあの姿を思い出せる。
「ハッ・・・! ハッ・・・!」
存在しないはずのペニスの感覚。その記憶が今の体と重なって、倒錯的な感情が渦巻く。
考える前に、指は既に割れ目の中へと入り込んでいた。
「んくっ・・・!」
グチュグチュといやらしい音をたてると、その音に自分の男の心が興奮する。
「はぁッ、はぁッ・・・もっと、もっと!!」
徐々にマリーンの様子がおかしくなり始める。そこに恥じらいは無く、この体を貪り尽そうとする、男のような感情だった。
「ダメ、コレじゃ・・・指なんかじゃ全然足りないッ・・・!」
指がGスポットに触れ、全身がビクッと反応しても、それは一時の快感でしかないと、体が告げる。
「あぁっ! 男・・・オトコが・・・オスが欲しい・・・!」
下卑た笑み、優しさの欠片も無い指の動き、それに反応して愛液を撒き散らす秘所。
すっかり快感に溺れきっていたマリーンが、自分の発した言葉で急に我にかえる。
それまでの狂ったように自分の体を弄んでいた指が、ピタッと止まった。そしてにゅぷっ、と音をたてて指が引き抜かれる。
その指を、驚いたような表情で見つめるマリーン。暫く見つめた後、ギュッと、自分自身を抱きしめ、縮こまった。

「あ・・・あ・・・あ・・・?」

今、自分はなんと言った・・・?
頭を抱え、ガタガタと震えるマリーン。濡れた指先で髪に触れる事も、今は気にする余裕すら無かった。
男が欲しい、確かにそう、言った。この口が、その言葉を紡いでしまった。
それだけではなかった。その言葉は、明らかに…自分の意思で言っていた。
愕然とし、見えない何かに怯え、震えるマリーン。
「う・・・う・・・ダメだ…もう、ダメだ…」
ずっと抵抗してきたが、もうダメだ。体に、心が支配されている。このままじゃ、このままじゃ…!
今にも泣きそうな顔をして、うずくまるマリーン。フラフラと立ち上がって、ベッドに倒れ込んだ。
「うぅッ・・・くそッ…チクショウ…!」
汚い言葉で無理に自分を再認識しようとするも、体に潰された胸が自分が女である事を主張し、またベッドの臭いに体は疼き始める。
「わ・・・お、俺は…俺は…!」
いつの間にか、女性として振舞う事に何の抵抗も無かった。記憶はこんなにも男としての記憶に溢れているのに、心は…
「…」
葛藤するのも困難になり、思考を閉ざすマリーン。まるで、魂が抜けたかの様に心を無にしていると…
「!」
魂が戻ったかのごとく起き上がる。そのまま、乱れたローブを整えた。
(…足音?)
先程まで静寂に包まれていた建物。今もその静けさを保っているが、だからこそ、その足音は余計に建物の中で響き渡っていた。
(近づいている…?)
コッ、コッと靴の音が廊下に響く。そして…ガチャリと、扉が開いた。隠れる暇も無く、扉が開かれた。
ゆっくりと開く扉の向こうに見えた人影は…
「…クロウ!」
「!? マリーン、戻っていたのか…」
漸く会えたクロウ。だがその様子は、明らかにおかしかった。顔は蒼白になり、ガックリと肩を落としていた。
後ろ手で扉を閉めるクロウ。その力無さが、余りにも不憫に見えた。
「クロウ…ど、どうしたの…?」
「…」
クロウは答えないが、その姿が、その様子が全てを物語っていた。
「ね、ねぇ、まさか…」
「…うぅッ…!」
その場に崩れ落ちるクロウ。彼の足元には、先程自分が濡らした愛液の染みがあったが、クロウは気付かなかったようだ。
「ダメだった…間に合わなかった…! キャットが…キャットが…!!」
クロウが嗚咽しながら語り始める。予想はしていたが、いざ言葉にされると何も言えなくなる。
「一度は出会えたんだ、でも…」
「で、でも…?」
「キャットは…キャットは、勘違いしているよ、違うんだと言ったのに、キャットは…」
クロウが支離滅裂な言葉を吐く。本来なら喝を入れたいところだったが、マリーンはそれをせず、ただ聞くのみだった。
「僕らが抱き合っているのを見て…キャットは…自棄になって…先生を助けて僕を振り向かせようと…」
「…そ、そんな…」
自分のミスに、皆が振り回されている。マリーンの心に、深く突き刺さる。
「マリーン…僕は、僕はどうしたらいい? こんな僕に、キャットを救う資格なんてあるのか?」
「…クロウ、貴方は悪くない、貴方は…」
マリーンがクロウを慰める。だがクロウは、首を振って否定した。
「僕が、もっとちゃんとしていれば…こんな事にはならなかった…!」
肩を振るわせるクロウ。見ているだけでこちらにまで辛さが伝わるようだった。
「…クロウ、貴方はまだ生きている。貴方がここで諦めたら、いままでの事が、全て無駄になる…」
「マリーン…」
クロウを勇気付けようするマリーン。だがマリーンも、その言葉を言えるような立場ではない事を理解していた。
けれど、言わずにはいられなかった。ただ純粋に、クロウを助けたかった。
「しっかりして。私もついている。だから…」
「マリーン…!」
その声と共に、クロウがマリーンの胸元へと飛び込んできた。予想だにしなかった事に驚くも、優しく受け止める。
「マリーン、僕は、僕は…うぅっ…」
マリーンの胸の中で、泣き崩れるクロウ。そんなクロウを、包み込むように抱きしめるマリーン、だったが…
「・・・」
そんなマリーンの目が湛えていたのは、優しさではなく、獲物を目の前にした獣の目付きだった。
背中をさすり、気持ちを落ち着かせる手付き。その手付きとは裏腹に、心の中は欲望が渦巻いていた。
今自分の手の中に、欲しかった物がある。『獲物』が、向こうから飛び込んできてくれた。
マリーンは息が荒げるのを抑え、クロウに気取られないようにしていた。
(クロウ・・・クロウ・・・オトコ・・・オス・・・今、ここにある・・・)
野性的な本能が、頭の中に渦巻く。心の中には、優しさなんて一欠けらも残っていなかった。
体が疼いてしょうがない。何せ、クロウの後頭部がすぐ真下にある。クロウの臭いが、鼻腔を直にくすぐる。
息も、鼓動も早まっていく。抑えきれない感情が、頭の中を交尾する事一色に染め上げる。
泣き崩れるクロウだったが、徐々に落ち着いたのかすすり泣く声も小さくなってきた。
「クロウ・・・お願いがあるの・・・」
マリーンの…マゼランの意志が、音も無く崩れ去った瞬間だった。

_/_/_/_/_/Chapter.8-3_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/逸る気持ち_/_/_/_/_/_/

その声に、漸く泣くのをやめて顔を上げるクロウ。
「あッ、ご、ゴメン、思わず…って、お願いって…?」
勢いに任せたとはいえ、自分がマリーンに飛びついて泣いていた事を今更気付き、慌ててマリーンから離れるクロウ。
自分の涙で濡れた服も気にせず、ベッドに座るマリーン。その姿は、まるで絵画や彫像の女神のように美しかった。
「・・・私の、この体の事は、前に話したよね?」
「え? あ、あぁ、タームの女王の体で、フェロモンで相手を操って…」
突然の質問に戸惑うクロウだったが、なんとか返答する。
「そう。そして、徐々に成長している事も・・・」
「…そう、だね。でも、何故急にそれを…?」
まだ要領を得ないクロウ。それでも構わない。こんなの、たんなる前口上にしか過ぎないのだから。
「私は、エッチな事をすることで成長してきた。でも、ここからは私だけじゃダメ。相手が、必要なの」
「あ、相手って…」
クロウが後ずさる。それを見てマリーンは、ゆっくりと立ち上がってクロウに近づく。
「もう、分かるよね? 貴方が必要なの、今の私には。そう、貴方の、コレが・・・」
そういってマリーンはクロウの股間を撫で上げる。その手付きに、ビクッと体を震わせるクロウ。
「ねぇ、お願い・・・私と・・・して♥」
「ど、どうしちゃったんだよ! マリーン!!」
クロウが両手でマリーンを突き飛ばす。よろけたマリーンだったが、直ぐに体勢を立て直した。
「クロウ。あの夜、私に言ったよね? 『君はその力を使える様になるべきだ』って」
「い、言ったけど! 確かに言ったけど!!」
明らかに様子のおかしいマリーンに、クロウが怯え始めた。その様子に、マリーンが少し落ち着きを取り戻したような素振りで話す。
「クロウ。これはキャットを助けるためでもあるのよ?」
「そ、それは…そうだけど…」
キャットをだしにして言いくるめようとするマリーン。嘘は言ってはいない。仮にそうでも、罪悪感はこれっぽっちもなかった。
「お願い、クロウ。貴方が私を抱いてくれるだけで、皆が助けられる。だから・・・」
「けっ、けど…」
まだ決めあぐねるクロウに対し、イラつきはせずもじれったくなる。
「え…ちょ、ちょっとマリーン!」
それまでクロウに迫っていたマリーンが、クロウから離れ、おもむろにローブを脱ぎ捨てた。
マリーンの一子纏わぬ姿に、思わず目が釘付けになるクロウ。じっくりと鑑賞してから、慌てて手で目を覆った。
「マッ、マリーン! は、早く服を着て服ッ!!」
そう促すクロウに対し、マリーンは覆い被さる様にクロウへと近づいた。
「ねぇ・・・見て。羽はあるけど、体は人間と同じなんだよ・・・」
「わ、分かった! 分かったから!!」
必死に見ないようにしているクロウだったが、マリーンの魅力的な体に、どうしても目がいく。
「そういえば、こうして私の全てを見せるのは初めてじゃないね・・・あの時は、私の意思じゃなかったけど、今は・・・」
そういってマリーンはまたクロウの股間を触る。思わず声を上げるクロウ。
「うくッ・・・マ、マリーン・・・」
「それに・・・」
そういってズイッと顔を近づけ、クロウの腕を優しく掴む。そしてその手を、自分の体に…胸に引き寄せた。
クロウは抵抗した。したはずだった。でも、力が抜けて思うように抵抗できない。
ススス、とその腕が胸から臍、臍から割れ目へと引き寄せられる。
「ここももう、こんなになってるんだよ・・・?」
そういって手と手を合わせてクロウに秘所を触らせた。クロウの体温が、伝わってくるような気がした。
マリーンがクロウの手を借り指を動かすと、クチュクチュと音がする。その音に、クロウの顔は赤くなっていった。
「ダッ、ダメだ・・・マリーン・・・ダメだよ・・・」
クロウが理性を振絞って訴えかける。それが伝わったかのように、マリーンは手を離したが。
直ぐにその手をクロウの顔へと持ってきた。マリーンの愛液の匂いが、鼻腔をくすぐる。
「うぁ・・・」
その反応にマリーンはにっこりと微笑むと、今度は頬を優しく押して、目を合わせようとした。
目と目が合う。目線だけでも逸らそうとしたが、マリーンの吸い込まれそうな赤い瞳から、目が離せなくなる。
暫く見つめあう二人であったが、マリーンが我慢できない様子で動いた。目を閉じ、顔を寄せ、そして…キスをした。
「ンフッ・・・んーッ」
「んんんッ…!!」
マリーンの舌使いに、クロウの脳は蕩けた。マリーンの香りが、どんどんとクロウの中に送られる。
「・・・ぷはぁ・・・」
「・・・うぅっ・・・マリーン・・・」
余りにも濃厚なキス。抵抗を続けていたクロウも、一瞬で快感に溺れてしまった。
そんなクロウの顔をマリーンが両手で掴み、じっと見つめてきた。
「ねぇ、クロウ。抵抗しても、いいんだよ? 私は今、貴方をフェロモンで操ってなんかいない。体を痺れさせてもいない」
「う・・・?」
「ね、クロウ。お願い。シて。私と、シて。私は貴方が好き。それが・・・今だけ・・・でも、いい。だから、私と・・・」
「マリーン・・・」
マリーンは、それまでの艶っぽい表情から一転して、泣きそうな表情を浮かべた。自分の言葉に、気付いたからだった。
「ねぇ、クロウ。前に言ったよね。本当は私、男だったって。だから、今この感情に、凄く怯えてる」
「…」
語り始めたマリーンに、クロウはただただ沈黙で答えるだけだった。
「自分が自分じゃなくなるような、そんな気持ち。耐え難い苦痛が、心に穴を開けるの・・・」
「…」
「こんな感情抱くだけでも苦しいのに、体は求めるの・・・抗っても、どうしようもなく体は疼くの・・・」
「…」
「どうしようもなくなって、自分が壊れそうになる・・・抵抗する気も、おきなくなってきてる・・・」
「…」
「こんな淫乱な女、嫌よね。中身が男だって知っているから、もっと、嫌だよね・・・」
「…」
「でも私は、私の体は、私の心は、貴方を求めるの・・・」
「…」
「貴方がどう思っていても構わない。それでも・・・私は・・・私は・・・」
「…」
自分で自分を貶し、段々と泣きそうになるマリーン。クロウは、ただただじっと聞いているだけだったが。
「ねぇ、クロウ・・・もし・・・ !?」
マリーンが何か言おうとした刹那、クロウがマリーンを引き寄せ、キスをした。
舌を入れたりはしなかったが、それでも、濃厚で甘いキスに、今度はマリーンが蕩ける。
「…お返し。いいんだね、マリーン。そして…信じて、いいんだね…?」
「…うんッ…!」
とびっきりの笑顔でクロウに抱きつくマリーン。クロウも抱きしめ返す。
抱きしめあう二人。クロウは目を閉じ、腕の中の『女性』をいとおしく思っていた。

一方、マリーンは…

_/_/_/_/_/Chapter.8-4_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/二人の気持ち_/_/_/_/_/

三度キスをして、クロウの上着を脱がし、ベッドに近づく。

クロウは、攻守交替といわんばかりにマリーンを押し倒そうとしたが、結局またマリーンを上にのせた。
クロウがそうしたのは、マリーンの背中の羽を気遣っての事だった。
「押し潰したら大変だしね」
「怖い想像させちゃイヤ。でも・・・ありがとッ♥」
そういってまたキスをする。
「あはッ・・・もう、こんなに・・・」
「しっ、仕方ないよ・・・だって、マリーンが余りにも・・・」
「余りにも?」
「・・・秘密ッ!」
「ひゃあッ!?」
そうはぐらかしたクロウは、マリーンの体を回して、胸を揉み始めた。
「やんッ、クロウってば・・・♥」
「すごい・・・手に吸い付いてくる・・・」
クロウは優しくも大胆な手つきでマリーンの胸を揉みしだく。自分で揉むよりずっと良い。愛のある手つきが、気持ちいい。
「ひゃんッ!」
「もうすっかり勃ってるね・・・マリーン」
「や・・・クロウ・・・そんな耳元で・・・!」
耳元で囁いていたクロウが、そのまま耳を甘噛みしてきた。これ、すごぉい・・・
「ね、ねぇ、マリーン・・・」
「んッ・・・何?」
「・・・触っても、いいかい?」
そういってクロウは、マリーンの羽を指差す。
「・・・痛くしないでね」
「も、勿論さ!」
そうは言うも、少しおっかなびっくりな様子のクロウ。まぁ、その反応も仕方ないよね。
クロウが恐る恐る手で触れる。あの時のような過敏な反応はなかったが、それでも人間では有り得ない感覚に体が反応する。
「ヒャッ!」
「わわっ! ご、ゴメ…うわぁ!!」
クロウの手が羽の付け根に触れると、えもいわれぬ感覚がマリーンを襲った。反射的に羽が広がり、仰け反るクロウ。
「ク、クロウ! もういいよね!? 満足したよね!!??」
思いもよらぬ感覚に動揺する。快感とも異なる感覚に、戸惑うマリーン。
「ご、ゴメン! 痛かった!?」
「ううん、そうじゃない、そうじゃないけど・・・」
びっくりしてしまったせいでせっかくの雰囲気が台無しになってしまった。
「ク、クロウ・・・羽じゃなくて、体を触って、お願い・・・」
「あ、あぁ・・・」
しまった、あの時の快感を求めてみたものの、すっかり興ざめしてしまった。
「え、えーと・・・」
クロウが困った顔でこちらを見る。そんなクロウに口付けをして、押し倒す。
「もぅ・・・お仕置きが必要ね・・・」
そういうとマリーンは、クロウの下着をズボンごと引っぺがした。
下着の中から、クロウのペニスが勢いよく飛び出た。もうすっかり怒張しているそれは、マリーンの手には余りある大きさだった。
マリーンは目を点にして見つめていたが、すぐにニヤリとほくそえんだ。
「クロウの、おっきい・・・♥」
妖艶な笑みを浮かべながら、ペニスを握り締める。細い指先が触れると、クロウは「うっ」と押し殺したような声を発した。
ドクドクと脈打つソレに触れると、記憶にある自分のソレを思い出す。
当然だが他人のソレを掴むなんて事、男だった時にするはずもないが、今はまるで自分の物かのようにいとおしく思えた。
「マッ、マリーン・・・じ、焦らさないでッ!」
扱くでもなく、握られ続けられ、堪らず声を上げるクロウ。ハッとするマリーン、いけないいけない、つい感傷に耽ってしまった・・・
クロウの言うとおりにしようと、手を動かしたマリーンだったが、直ぐに止めた。
「え? マリー・・・はうッ!?」
マリーンは、戸惑いもせずクロウのペニスをくわえた。嫌悪感よりも、直に香る男の臭いがマリーンをその行動に走らせた。
「うぁっ、マリーンの・・・! すごくッ・・・!!」
クロウは堪らず、マリーンの頭を掴んでしまった。だが、マリーンは気にせず一心不乱にクロウのペニスにむしゃぶりついていた。
マリーンの舌遣いは滑らかで、ツボを心得ていた。皮肉なもので、男だったからこそどうすれば良いかマリーンは知っていた。
(んっ・・・ちょっと苦い・・・でも・・・)
クロウのペニスを咥えながら、手は自分の秘所を弄くりまわす。
グチョグチョ、ジュポジュポといういやらしい音に、二人とも、ますます興奮が高まる。

(・・・や・・・め・・・)

心の奥底で、何かを必死に訴える声が聞こえたように思えた。だが、もう、止められない。
口の中のペニスはどんどんと脈打つのを早めていった。
「うッ、マ、マリーン・・・もッ、もうッ!!」
言い終わるより早く、クロウは絶頂に達し、マリーンの口内にドクドクと熱いモノを注ぎ込んだ。
「ンンーッ!?」
ゆっくりと口からペニスを引き抜くと、ドロリとした白い液体が絡み付き、口とペニスを繋いでいた。
「ンッ・・・」
マリーンは口の中で精液を転がして、じっくりと味わってから呑み込んだ。
「クロウの熱いの・・・おいひぃ・・・」
「うぁ・・・」
「クロウ? ・・・まだダメよ? ちゃんと、ンッ、ここに・・・」
そう言ってマリーンは、まだ残る精液の欠片を掬い取り、自分の愛液と混ぜ合わせた。
そしてそれを、クロウの鼻へともっていく。
「ほらクロウ・・・ワタシとアナタのモノだよ? ねぇ、舐めてみて・・・」
そういって指を差し出すマリーン。クロウは一瞬戸惑いを見せたものの、恐る恐る口にした。
「うっ・・・」
流石に自分の精液を舐めるのには抵抗がある。だが、何故か逆らえなかった。
それに、かすかに感じるマリーンの愛液の味。それはまるで麻薬のようにクロウを虜にした。
「わかるでしょ? ・・・もう、我慢できないの。お願い」
それまで主導権を握っていたマリーンが、今度は懇願してきた。
快感に酔いしれていたクロウだったが、マリーンの切なげな表情と、甘美な声に、目の色が変わった。
「キャッ!」
先程の優しさは何処へやら、クロウは、躊躇なくマリーンを押し倒した。
「・・・もう、我慢できないよ・・・マリーンがいけないんだからね」
「・・・うん・・・♥」
クロウが自分に言い聞かせるかのように言葉を発すると、マリーンの秘所にペニスを当てた。
(あぁ・・・♥)
もう恐怖も、後悔もなかった。クロウがじっとこちらを見つめる。宛がわれたペニスの脈動が伝わる。
「・・・いくよ、マリーン・・・」
「うん、きて・・・」
それを合図に、クロウはゆっくりと腰を動かし、マリーンの中へと突き入れた。
「んっ・・・!」
「だ、大丈夫?」
「うん・・・平気・・・」
痛みが無い訳ではなかったが、既に昂った快感が麻酔のように痛みを和らげた。
「ンッ・・・ンあぁッ・・・♥」
「うッ・・・マリーン・・・!」
ズブズブと挿入れられるペニス。お腹に違和感を覚えるも、クロウの体温を直に感じ、更に胸が高鳴る。
「あぅ・・・入ってる・・・熱いの、挿入ってるよぉ・・・」
もう後には戻れない。クロウのペニスが、根元まで押し込まれた。
「うッ、動くよ! マリーン!!」
「クッ、クロ・・・ああぁああ!!」
クロウが腰を振り始めると、動くたびに頭の中でパチパチと何かが弾けた。
「あッ、イ、イィ・・・ひぅッ! ふぁッ・・・あぁンッ!!」
「うッ・・・クッ・・・」
徐々にクロウの動きが速くなっていく。突き上げられるたび、何かが頭の中ではじける。
「はッ、はッ、あぁ、クロウ・・・クロウ!」
「マリーンッ・・・!」
押し寄せる快感の波に溺れる二人。と、その時、クロウが口付けをして、マリーンの背中に腕を回した。
「もっと・・・もっと、深く・・・!」
「クロウ・・・!? ひゃッ!?」
クロウはマリーンと繋がったまま、マリーンの体を持ち上げた。
「ク、クロ・・・!」
「もっと深く・・・!」
何かを呟き続けるクロウ。
マリーンはそれを疑問に思うよりも、クロウに持ち上げられるほど自分が身軽だと言う事に不思議な感覚をえた。
そのまま、クロウは自分の体をベッドに預け、マリーンを乗せる体勢に変えた。
「えっ? え・・・! ッ・・・!!」
「くぅッ・・・!」
クロウが腰を突き上げると、さっきよりも深くペニスが入り込む。そして『何か』に、ペニスが触れると。
「あッ・・・ぎッ・・・」
「あぁッ・・・! マリーン、いいよ、マリーン、その表情・・・!」
涎をたらし、よがり狂うマリーンに、クロウの視線が突き刺さる。
「すごッ・・・クロ・・・」
余りの気持ちよさに暫く気絶していた気がする。気が付けば、マリーンは自分で腰を振り、快感を貪っていた。
「はぁっ、あぁんっ・・・♥」
「うぅっ・・・!」
二人は、もう完全に快楽の虜となっていた。
突き上げるたびにジュポジュポと鳴り響き、部屋の中は二人の匂いに包まれ、エロスな空間を仕立て上げていた。
「マ、マリーン! もうッ…もう限界ッ…!!」
「いいよ、出して…! 私の中に…!!」
クロウの突き上げる勢いが最高潮になる。
「うぅ…!!」
「あぁあぁあーッ!!」
ビュクビュクと、熱いモノが体の中に注がれる。マリーンはそれを余すところ無く子宮に受け止めた。
「あ…ああ…」
出されたモノが、子宮を通して全身に回る感覚がする。遂に、やってしまった。でも、悔いは無い。
「はぁッ・・・はぁッ・・・」
クロウがゆっくりとペニスを引き抜く。愛液と、精液が混じり合った液が、べっとりと絡み付いていた。

二人とも、暫く動かなかった。いや、動けなかった。快感の波が未だ渦巻いているからだった。
落ち着くために息を整えていたクロウに、急にマリーンが負ぶさってきた。
「マリーン…?」
「…」
返事はなかった。あまりの快感に、気を失ってしまったようだ。クロウは、そんなマリーンを優しく抱きしめた。
「マリーン…」
複雑な心情がクロウを襲う。こんな事をしている場合じゃないのに、マリーンと情事に耽った事。だけど、それを断れなかった自分。
マリーンの複雑な思いや、これから心も、体も変わるだろう彼女の事。そして…キャットや先生の事。
様々な事が頭の中を駆け巡ったが、今は、マリーンが生まれ変わるのをただ待つ事にした。
マリーンをそっとベッドに寝かせる。マリーンは、赤子の様に丸くなってベッドで眠りについていた。
その寝顔を暫く見つめた後、クロウはベッドに背中を預けた。
「マリーン…目が覚めたら、今度こそ…」
クロウは、そのままベッドの横で眠り姫が起きるのをただ待ち続けた。

『その脳裏に、マリーンの顔を浮かべながら。』

第七ログ。
おそらく最後のエロ回。
残りが、解決へと向けて物語を進ませるためなので。

――――――――ロマサガ2解説――――――――
ウォーラス・母親
#02、Chapter.3-3で登場していたのを覚えているでしょうか?
そんな彼は、ゲームでは帝国重装歩兵三人目のキャラ。パリイさんことベアの後継者。
といっても、物語中はまだその立場ではありませんが。
母親の方はもう完全テンプレートかあちゃんを想定したオリジナルキャラ。

アバロン新市街
本作品では大学近郊のような書き方をしていますが、ゲーム中の新市街は全くの別物(というかこちらが別物)
玉座イベントの一つで、大学とは反対側に建築され、世界中に散らばる仲間達をアバロンに集める目的で建てられます。
クラスによってはモンスターの徘徊するマップを抜けないと仲間に出来なかったりするため、助かる要素なのですが…
建設される前は墓地である事と、アバロンアリイベントでは仲間達も容赦なくホギるため、実は呪われた街であるとかないとか。
来来来来来来来来
http://www.tsadult.net/megalith/?mode=read&key=1316974130&log=0
0.4170簡易評価
1.100きよひこ
マリーン、とうとう一線を越えちゃいましたね。今後、彼女の体と心にどんな変化が現れるのでしょう。
そして長かったこの話も、次で決着ですか。どう決着が付くのか、続きを楽しみにしています。