僕は優太、小学3年生。
今日は休日だし、近所の公園に行けば誰か一人ぐらいは友達と出会えるかと思ったのに、やっぱりまだ朝の9時前だからか同年代の子が一人もいない。
いつも放課後や休みの日は、この公園で友達と一緒に鬼ごっこしたり、携帯ゲームで遊んだり…でもこんなに早いうちから外にいる子はいないみたいだ。
この公園は、遊歩道も遊具もある大きな公園だからもしかしたら何処かに一人くらいいるかと思い、公園を歩きまわってみたんだ。
…歩き回っても誰もいないし、仕方ないから一旦帰ろう。と思ったところで公園のベンチにあるものを見つけた。
何かな?と思って近くに行ってみると、それは旅行カバンのようなスーツケースのような…とにかくきれいなカバンだった。
「忘れ物かな?ちょっと遠いけど交番に届けようかな…」
僕はここから歩いて20分ぐらいかかる一番近い交番を思い浮かべて、ベンチのカバンを持っていこうとした。
「う、でも結構大きいし重い。」
一応頑張ってある程度運ぼうとしたんだけど…僕の体にはこのカバンは大きくて、とても運びきれないと断念してしまった。
もしかしたら持ち主がベンチの辺りを探してるかも…?と考え、もとのベンチのところにカバンを持って戻ってきた。
「ふぅ…疲れるだけで無駄なことをしたなぁ」
ベンチに座ってそうぼやく。
「そういえばこのカバン、一体中には何が入っているんだろう?」
盗むつもりは全くなかったけど、ただの少しの好奇心で僕はカバンを開けてみようかと思ったんだ。
鍵がかかってるかと思ったらそんなことは無く、ロックを外すだけで簡単にカバンは開いた。
「うわぁ!?」
僕がカバンを開いた瞬間、カバンの中から光が漏れ出たような気がしたけど、よくわからなかった。
なぜなら僕は強烈な眠気のような感覚に襲われ、意識がハッキリとしていなかったからだ。
「い、いったい…?」
それでも僕は眠気に耐えきれず、カバンとは逆方向のベンチに倒れ、意識を失ってしまった。
でも、倒れる瞬間、一瞬だけカバンの中身が見えたような気がした。よく見えなかったけどピンク色の…
----------------------------------------------------------------------------------------------
「やったぞ!成功した!」
俺は公園の木の影から出てきて、ベンチに倒れた少年のところに向かった。少年はすでに光に包まれ、変化が始まっている。
今日この遊びが楽しみで、思わず朝早くから外に来てしまった。この少年にはせいぜい楽しませてもらおう。
運動が得意なのか、たくましかった体つきがしだいに丸みを帯びていき、短かった黒い髪の毛は肩の辺りまで伸びる。
もともとそれほど男らしくなかったというか、優しげだった顔つきも、ますます優しく、同年代の女の子のそれに近づく。
肌の色が薄いピンクがかかった白に変わり、元少年が男物の服を着た女の子に変わったところで、次は服の変化が始まった。
着ていたチェック柄のシャツとジーンズは下着ごと光の粒となって消え、未発達の少女の体が露わになる。
男の象徴が消えた股間を、カバンから出た光の粒子が包み、白いショーツを形作る。
カバンの中に入っていたピンクのワンピースが光の粒子になって少女の体にまとわりつき、光が収まると少女の体はワンピースに包まれていた。
よく見ていなかったが靴の方も変化したようだ。赤い靴下とピンクの靴が履かされてある。
少年が少女に変化が終わったが、まだアクセサリーや下着での変化が終わっていない。
カバンから光が出てきて、少女の胸の辺りにまとわりつく。
普通ならばこの年齢だと初潮も始まっていないため、胸が膨らむということはあまり無い。
しかし少女の胸にはなだらかな丘が二つ作られつつあった。
「(もっと大きくしてもいいんだけどね…あまり大きくしすぎてもね。騒ぎが大きくなるし。)」
変化が収まったころには少女の胸に、同年代には珍しいであろう膨らみが存在した。
そして最後に少女の首にネックレスが作られると、カバンと少女の光が収まった。
「(ネックレスはあくまでおまけ。あぁ、リボンとかをつけるのもよかったかな。)」
さて、まだやることがある。俺は少女のワンピースの背中の部分に手を突っ込むと、少女の胸につけられたブラジャーのホックを外し、そのまま取り去った。
「(普通だったらこんなことしたら即通報ものだけど、いいよな俺も今女の子だし。)」
そう、俺は今栗色ロングの正真正銘の女の子に変身してある。
昨日と同じ女装っ子の格好のままでもよかったんだけど、それだとカバンが重すぎるし不便だから、少なくとも年齢を上げる必要があった。
それに二日連続女装は飽きると思ったので、今日は本物の女の子に変身してみた。
裾にリボンのついたシャツにジーンズ。別にこれだけでもよかったんだけど、せっかくなので小物類で色々体型をいじってみた。
まさか白いリボンをつけるだけで、元のショートヘアからこんなにもきれいな栗色の髪が手に入るとは思わなかった。顔つきも少し変わったような気もするし。
胸もそれなりに大きくしてみたし、パンティーも変えてヒップの大きさも変えてみた。
男性の頃とは全く違う、女性的な体つきに変わった俺。風にそよぎ、首を動かすたびに揺れる髪は少し邪魔な時もあるけどおもしろい。
また、胸が大きくなったおかげで、かがむ時等にいつもと違う感覚に襲われたりもするんだけど、それら全てが男の時に味わえない感覚で、新鮮な気分になれる。
まぁ小物を使った理由は気分以外にもあるんだけど。
そもそもこのカバンで遊びをする場合、顔見知りに気付かれないのはもちろん、カバンを持っている時に顔を覚えられたりすると厄介だからだ。
でも、こうやって小物類で変身した場合、世界が都合よく修正されないため、この世界に存在しないはずの人物になることができる。
念のためこうやって自分の正体を隠すためには、小物類を使って姿を変える必要があった。
男の姿でやってもいいはずだけど、俺の気分的に"俺"以外の男になる気は全くなかった。どうせ変身するなら女の子の方が楽しいし、絶対。
さて、そろそろこの子も目を覚ますかな?起きたら女の子の体になっていて、しかも女性としての膨らみができている(しかもノーブラ)。
周りに訴えても、もともと貴女は女の子でしょと言われる。そんな子が今日どんな思いをするのかみてみようと思う。
俺はこの少女が元の少年に戻れる手段であるカバンを持つと、物陰からこの少女を観察することにした。
----------------------------------------------------------------------------------------------
うーん…はっ!
僕は寝ぼけた状態で、倒れていた体を起こす。えーと…何があったんだっけ?
そうだ。ベンチに置いてあったカバンを試しに開けようとして、そこから意識が無くなって…
で、今気がついた訳だ。うーん…なんだか気絶していたせいか体が変な気がする…
あれ?さっきまで横にカバンが置いてあったと思うんだけど無くなっている。
カバンの存在を確かめようと見下ろしたんだけど…、ん?僕の視界のうちになんだかピンクの布のようなものが見える。
「それに…何だか足元がスースーするような…?ってなにこの声!?」
僕の口からつぶやかれた声は、いつも聞きなれた声ではなく、それよりも高めの…まるで女の子の声のようだった。
そのあと驚いて出た声も、少女特有のそれだった。
一体僕の体に何があったんだろうか…。それにさっきから足に直接風があたっているような…?
僕が自分の体を見下ろすと、自分の目を疑うようなものが目に飛び込んできた。
僕が朝着たはずの緑と白のチェックのシャツは消え、僕はピンクのワンピースを着ていた。
それにお気入りだったジーンズも消え、ワンピースのスカートに変わっていた。僕がさっきから感じていた風の感触はこのスカートが原因だった。
それだけで済んでいたらまだましだった。でもどうやら変わったのは僕の服だけではないらしい。
スカートから伸びる足は、サッカーで鍛えられた足ではなく、白い、まるで女の子のような細い脚だった。
僕は自分の手を見てみる。それは自分の手ではない。小さなきれいな手だった。腕も筋肉が落ち、白くてなめらかな肌のしなやかな細い腕に変わっていた。
それにさっきから顔に何か毛のようなものが当たって邪魔くさい。払ってみるとそれは自分の頭から生えているようだった。
僕はこんなに髪を伸ばしていた筈ではなかった。それでも頭から長く伸びているものを試しに思いっきり引っ張ってみる。
「痛い!」
僕の口から思わず高い声が漏れてしまった。今感じた痛み、これは正真正銘僕の頭から生える髪の毛のようだった。
一体僕の体に何が起こったんだろうか。とりあえず鏡を見ようと、公衆トイレに駆けこもうとする。
「うぅ…何だか僕の胸が擦れてヒリヒリする…。」
さっきから感じる体の違和感に、僕は思わず涙目になっていた。
いつもと違うひ弱な手足。体を動かすたびに揺れる髪。揺れるワンピースの布地に擦れて、胸が少し痛い。
「それに何だか膨らんでいるもん…おかしいよこんなの…きゃぁっ!?」
慣れない体と服装で走ったからか、僕は石に躓いてこけてしまった。思わず自分の口から出た声は、まるでどこかで女の子が悲鳴をあげたようだった。
さっきから自分の体から感じる不条理な違和感と、転んだ時の痛みも合わさって、僕の目から涙がこぼれおちた。
「(しっかり…しないと…)」
そう自分に言い聞かせて、僕は立ち上がって公衆トイレの男子用のところに入る。
入り口近くの手洗い場の鏡で、僕は見たくもないものを見せつけられてしまった。
鏡には一人の少女が映っていたのだ。
ピンク色の可愛いワンピースを着た、僕と同年代くらいの少女。
その少女が、顔を赤くして、涙をこぼして泣いている。
僕が腕を上げると鏡の中の少女も腕を上げる。横を向いてみても、鏡の中の少女は同じ方向を向く。
そ認めたくは無かったけど、この女の子は僕なのだ。鏡の中で泣いているのも、今現実で泣いているのも、僕自身。
まだ確かめていないところがある。ほとんど全身女の子になってしまったようけど、一か所だけ。
僕は恐る恐る手を伸ばした。そしてそこを確かめるようにしてなでてみる。…無い。
僕がワンピースのスカート越しにチンコの存在を確かめてみたけれど、スカートと、また別の何か柔らかい布越しに肌の触感を感じる。
僕はそっとスカートをめくってみた。股間にはいつも履いている男用のパンツはなく、まるで女の子が履くようなパンツがあった。
…そっと、そのパンツに手を入れて、慣れ親しんだものを探す。…やっぱりない。
僕の男としての証も失ってしまった。ここにいるのは正真正銘、一人の女の子。
僕は力が抜けて、床に座り込んでしまった。
どうして?一体なぜ?僕はこんなことになってしまったんだろう。
ひたすら泣きながら思いついたのは、あのカバンのことだった。
あのカバンを開けて、気を失って、気がついたらこんな身体になっていた。
でも、あのカバンは起きたら影も形も無くなっていた。今どこにあるのかわからない。
僕は元の男に戻れるのだろうか。このまま一生女の子のままなんだろうか。薄暗い公衆トイレが、そう不安な気持ちにさせる。
「そうだ。いま僕は女の子なんだ…こんなところにいたら変に思われる…」
幸いトイレには誰もいないものの、誰かが入ってきて、女の子が泣いていたら怪しまれるだろう。僕は気持ちを落ち着かせ、立ち上がる。
女性用トイレの方に向かった僕。
男の時にうっかり入ったりしたら、学校で笑われる羽目になる、ある意味恐怖の対象だった筈の女子トイレ。
でも今の僕の姿だと、女子トイレに向かうのが正しい選択なのだろうな。そう思うとまた涙がこぼれてきた。
女子トイレの方も誰も人はいなかった。泣いている僕には好都合だった。
とりあえず僕は水道で顔を洗うことにした。さっき転んだ時の怪我は、幸い深い傷ではなく赤くはれた程度のものだったが、念のため水で流しておく。
小さな白い手に水を溜め、顔を洗い流す。涙でぬれていたせいか、目のあたりがヒリヒリする。
僕は公衆トイレで落ち着くと、公園の中であのカバンを探そうとした。元の姿に戻るにはあのカバンが必要だと思ったからだ。
でも、公園の中にはカバンは無かった。どこのベンチにも、遊具の上も、草むらの中も探したけど見つからなかった。
太陽が昇ってお昼頃になると、僕は一回家に帰りたくなった。
探すのも疲れてきたし、お腹もすいてきたし、何より体が動くたびにこの膨らんだ胸が擦れて痛くて気持ちが落ち込んでしまった。
でもこんな格好になってしまった僕を、お母さんとお父さんは僕と認めてくれるだろうか。
もちろん元の姿に戻る為に、カバンを探すつもりだ。
でも今日一日で見つからなかったら、僕はどこで泊まるべきなんだろう。
とにかく僕がこんな姿になったことをお母さんに報告するために、僕は家に向かうことにした。
----------------------------------------------------------------------------------------------
家の前にたどり着く頃になると、僕は不安でいっぱいになっていた。
もし僕が優太であることを認めてくれなかったらどうしよう。
ハッキリ言ってそっちの可能性が高いことを、僕は気がついていた。
今の僕はどう見ても女の子である。鏡を見た時に、なんとなく自分の面影を感じたけど、男の子と女の子ではハッキリと区別がついてしまう。
僕がお母さんの子供ということを認めてくれなかったら、僕は一体どうなってしまうのだろう。
しかし家のドアの前に立った時、僕は一種の希望のような、でもよく考えたら絶望のようなものを示す物に気がついた。
それは表札だった。そこにはお父さんの名前、お母さんの名前が書いてあったのだが、もう一人の名前の欄に「優美」という名前を見つけた。
僕は一人っ子である。優美という妹も姉も、ましてや兄も弟もいないはずである。
でもその表札には、お父さんとお母さんの名前。僕の本来の優太という名前の代わりに優美という名前が書いてある。
僕は意を決してドアを開けてみた。ドアを開けようとした時に気がついたけど、僕は女の子になって身長が縮んだようだ。いつもよりもドアノブが高い所にあるように感じる。
ガチャッ
「た、ただいまー…」
僕は恐る恐る声を出してみる。もしお母さんが"聞きなれない"女の子の声を聞いて、僕が優太と言うことを否定してきたらどうしよう。と不安になった。
しかしそんな心配は必要無かった。奥からお母さんが出てくると、僕の姿を見て「おかえり」と言ったばかりか、信じられないことを口にした。
「あら優美!どうしたのその格好!」
どうしたのその格好!まで聞いて僕は一瞬、お母さんが僕が優太ということに気づいてくれた!と舞い上がってしまった。でも現実は違っていた。
「もう、服が汚れているじゃない。また男の子達と一緒に遊んできたのね。さ、早く着替えてらっしゃい。」
と言ったのだ。
「ね、ねぇ!お母さん!」
「ん?どうしたの?優美」
「ぼ、僕。女の子になっちゃった…」
「何言ってるの、優美は元々女の子でしょ。さぁ服を脱いで、女の子は綺麗にしておかないとだめでしょ。」
と、カバンを探している時とか転んだ時に汚れていたワンピースを無理やりお母さんは脱がすと、僕を部屋の方へ押しやってしまった。
「(お母さんは僕がもともと女の子だと思っている…?)」
それは、お母さんが僕を子供だと認めてくれた安堵と同時に、僕が男の子だったという証拠はどこにもないという絶望の証明でもあった。
そして僕が自分の部屋に着くと、その絶望がさらに広がったように感じた。
僕の部屋の雰囲気が、なんというか…女の子の部屋っぽくなっていたのだ。
僕の部屋に掛けられていた筈の男の子用の服が、学校の女子が着てきているような服に変わっている。
それに机の上に置かれていた筈のプラモデルが人形に変わっていたり、黒かったランドセルが赤色に変わっていた。
僕のベッドのお布団がピンクの花柄のものに変わってたり、カーペットが女の子のキャラクターの描いてあるものに変わっていたり、明らかに部屋の雰囲気が華やかになっていた。
まるで僕は自分の部屋のはずなのに、女の子の部屋に遊びに来ているようだった。
僕があまりの部屋の変化についていけずに戸惑っていると、お母さんが後ろから「優美」と声をかけてきた。
僕の名前は「優太」であって「優美」ではない。でも何故かその時の僕はお母さんから「優美」と呼ばれて、まるで自分の名前が呼ばれたような錯覚を受けてしまった。
「優美。いつまで裸のままでいるの。早く着替えてしまいなさい。」
そこで僕は、自分が女の子の体で、しかもパンツ以外何も着ていないという状態に気付き、恥ずかしくて顔を赤らめた。
「あらあら優美。気がつかなかったけどおっぱいができてきたのねー」
と言ってお母さんは、僕の胸の膨らみをさわってきた。
女の子が持つおっぱい。僕は男だから、当然そんなものは僕には関係ないと思っていた。
でも確かに今の僕の胸には、明らかにそのおっぱいが出来上がっていた。
「それにしてもこんな大きさになっていたなんて…どうして気がつかなかったのかしら。」
当然だ。僕は元々男の子だったのだ。おっぱいなんて昨日…いや、朝のあの時までついていなかったのだ。
今日こんな体になって、体を動かす度にその存在に気がついていたのだけども…改めておっぱいと呼ばれると何だか恥ずかしい。
「優美はまだ小学3年生なのに…これだけ大きいと今日こすれて痛かったでしょう?ほら赤くなってる…」
確かに、僕が走ったりかがんだりするたびに、髪の毛が顔にあたったり胸の膨らみが震えたりして、そのたびに自分の体を実感させられて恥ずかしくなっていたのだ。
特に服が胸をこする感覚はほとんどずっと感じていたし、何より敏感になった胸の先端が擦れて痛く感じていたのだ。
今日女の子の体で動いてみて、女の人って大変なんだな…と実感したりもしたのだ。
「ふむふむ…。ねぇ優美。午後はお母さんと一緒にお買い物に行こうか。」
「ええ!?でも…」
僕は午後もあのカバンを探す予定でいた。もちろん元の体に戻る為だ。
早くあのカバンを探さないと、あのカバンが何処か遠くへ行ってしまったら僕が元の体に戻る手掛かりが無くなってしまうのだ。
「でも優美、そんなおっぱいだと服でこすれていろいろ大変でしょう?今日お買い物行っておけば明日から楽になるのよ?」
う、確かに今日も午前中だけで胸がこすれて大変だった。もし午後も、明日も明後日も探すことになったら大変だろう。
今日の午後は探すのを諦めて、とりあえずこの胸をどうにかしてからまたゆっくりと探せばよいのだろう。
「決まりね。とりあえず今優美は服を着ましょう。ご飯を食べて、それから一緒に出かけましょうね。」
もしかしたらしばらくの間、この姿のままかもしれない。絶対に男に戻って見せるつもりだけど、とりあえずあのカバンを探すためにも、この姿で不便なく動けるようにしておきたい。
そうして午後はお母さんについていくことに決めたのだけど、その時僕はお母さんの言う"この胸をなんとかするお買い物"という言葉について、あまり考えてはいなかった…。
----------------------------------------------------------------------------------------------
「うんうん。なかなか混乱していて面白かったな。流石に本気で泣いていたのは罪悪感を感じたけど。」
俺はさっきの元少年の行動を、物陰から観察していた。
正確には元少年が公衆トイレから出てきた後、カバンを探していた(多分)辺りからしばらく見ていなかったのだけども。
俺はその間、家に帰ってから手袋をはめ、カバンから"あの少年の服"を取り出して家に置いてから、別の服をカバンに入れて公園に戻ってきたのだ。
そこであの元少年が公園から出てくるのを見て、尾行していたという訳だ。
これぞ○○家に代々伝わりし尾行術!うん、もちろん嘘だけど。
"あの少年の服"は、今元少年に渡したところで、何の意味も持たない。むしろ何も起こらないことで、あの元少年を絶望させてしまうかもしれない。
"あの少年の服"に変身効果を持たせるには、タンスかカバンを使わなければならない。
例えるならタンスとカバンは鍵であり、服は扉だ。服に応じたの世界に行くには、タンスとカバンという鍵を使わないといけない。
公園に戻って来た時、俺がカバンを持っているところをあの元少年に見つかったらややこしくなるので、今はある場所に隠してある。
もし誰かがカバンを盗んだら…多分そいつはきっと後悔をするだろう。いや、それとも喜ぶかな?逆に。
どちらにせよ、俺が帰ってタンスの引き出しを開ければカバンは中身ごと戻ってくるのだ。失くすリスクは無い。
さて、今家に帰ってしまった少年だけど…元の姿に戻してやるタイミングを見失ってしまった。テヘペロ
まぁ仕方ない。顔は覚えたし、いつか機会があったらうまいこと接触して元に戻そう。
あんまり時間がかかると意識も女の子に染まっていくだろうけど…そうなったら諦めよう。別に無理に戻さなくてもあのまま生活もできるしね。
俺はカバンの隠し場所に向かい、次のターゲットを定めて遊ぶことにした。
----------------------------------------------------------------------------------------------
「さぁ優美、これなんてどう?」
僕はさっき、もう少し考えてから返事をすべきだったかもしれない。
僕は今、デパートの下着コーナーにいる。もちろん女性用の…。
そして今まさに、子供用のブラジャーを買わされようとしている。
「い、いいよやっぱりお母さん…なんというかその…恥ずかしいし…」
「なーに言ってるのよ、女の子はいつか皆つけるものなのよ。ほらこっち向いて。」
と、お母さんはお構いなしに嫌がる僕の胸に服の上からブラジャーをあててサイズを確かめる。
「大体こんなサイズかしら…?ほら試着室に入って、上着を脱いで。」
と、お母さんに試着室に押し込まれ、着ていたブラウスを無理やり脱がされる。
僕はそもそもこんな女の子が着るようなブラウスはあまり着たくは無かったのだけども、『ブラウスみたいにゆったりした服じゃないと胸が擦れて痛いわよ』とお母さんが取り合ってくれなかったのだ。
その上スカートまで履かされそうになったけど、流石に嫌がってジーンズを履かせてもらった。
理由は女の子のスカートを履いていると落ち着かないのと、少しでも男の格好をしておきたいと思ったのだ。
それでも青いブラウスを着て、藍色のジーンズを履いた僕の姿は、どう見ても活発な女の子にしか見えなかった。
僕の胸のさらけ出された肌に直にブラジャーをあててくる。
「うーん…少し小さいわね…優美ったらまだ生理も始まってないでしょ?それなのに…」
「生理って何?」
「女の子が一人前の女の子になれたら、皆にやってくる特別な日。優美もいつかそんな日がくるのよ。」
と言いながらお母さんは新しいサイズのブラジャーを取りに試着室から出ていく。
女の子の日?一人前の女の子になったら?いつか僕にも来るって?
そんな考えがグルグルと僕の頭の中を巡る。男の子であるはずの僕にも?
しかし試着室の鏡に映るのは
膨らんだ胸を露わにした、ジーンズを履いた同年代の『女の子』。
ぱっちりとした大きな瞳に、小さな鼻。どう見ても『女の子』の顔だ。
それに肩の辺りまで伸びた長い髪。細くて白い、繊細な体の…『女の子』。
「そうですね…この年頃でこれ以上のサイズとなりますと…こちらが限度となりますね。」
「ありがとうございます。…ええ。まだ3年生ですのに…。ほら優美、これなんてどう?」
そう言いながら試着室に入ってきたお母さんは、新しく持ってきたブラジャーを僕の胸にあててくる。
「…うん、ピッタリね。これで合わなかったらお母さんどうしようかと思ったわ。ほら似合っているわよ優美。」
試着室の鏡には、ブラジャーをつけた『女の子』が映っていた。
膨らんだ胸…おっぱいがついている『女の子』…。
『女の子』『女の子』『女の子』『女の子』『女の子』…
「ええ、このまま付けて帰りますので…はい。これと同じサイズをもう3着ほど…」
お母さんが試着室の外で店員さんと話をしている。でもそんなこともだんだん気にならなくなってきた。
お母さんが外で会計を済ませている間僕は、鏡に映る『女の子』と目を合わせ続けていた。
外で話しているお母さんの声も聞こえない、自分の体が『女の子』になったことを、今鏡で見せつけられているというのに何も感じない。
僕は頭の中で、自分の姿を何処か遠くで見つめているような、何処かへ自分自身を置き忘れたような感覚に陥っていた。
「ほら優美。そろそろ服を着なさい。ブラジャーはつけたままでいいからね。同じようなサイズを買っておいたから、また明日からこれを着て学校に行きなさいね。」
お母さんに『優美』と呼ばれ、無意識のうちに体が動く。僕はそのことに疑問を抱くことすらできなかった。
脱いでいたブラウスを着て、試着室を出る。店員さんにお礼を言って、歩いていくお母さんの後ろをついていく間も、僕の心は何処かに行ってしまったようだった。
歩くたびに揺れるブラウス。さっきまではそれでおっぱいが擦れて痛かったけれども、おっぱいとブラウスの間にあるブラジャーが、"僕の"おっぱいを守ってくれる。
ブラジャーが"僕の"おっぱいを締め付ける感覚。でもそのおかげで、今まで体を動かすたびに揺れていたおっぱいがあまり動かないようになった。
確かにこの買い物で、僕はこの身体を動かすのが楽になった。
でも、それと同時に、僕の心を支えている男としての意識が悲鳴を上げているような気がした…。
----------------------------------------------------------------------------------------------
一方その頃公園では…
さて、本日2人目のターゲットはあそこのベンチでうたた寝している爺さんだ。
あの爺さんを選んだ理由はまず、年を取っているということ。次に男であること。そして何より俺の視界に入ったこと。自分の運の無さを恨むんだな!ふはは
さて、このままノリノリに行きたいが、相手を変身させるにはあの爺さんにこのカバンを開けさせないといけない。
最初のターゲットは置いているだけで勝手に開けてくれたが、今回は一工夫必要だろう。
もちろん俺が直接あの爺さんのところに行って「このカバン開けて♪」と言う手もある。
多分あの爺さんの孫ぐらいであろう年齢の美少女…今の俺の姿だが…にお願いされると、特に断ろうとせず開けてくれる可能性は高い。
でも俺の今の顔を爺さんに覚えられたら色々と厄介なので、また家で適当に変身をする必要があるというのは面倒だ。
それに俺はあの爺さんを変身させた後は元に戻すつもりは全くない。まぁ若返るんだし、老いた体に戻るより若い体で新しい人生を楽しんだ方がいいだろう。多分。
最初は元の体に戻りたいと思っても、時間がたつほど精神がその体に慣れていく。
最終的には、自分は元々爺さんだったことはなんとなく覚えているけど、その身体に精神が染まりきってしまっているだろう。
そうなったら元の爺さんに戻す方がよっぽど酷い。そういうことで変身させたら爺さんの服は処分してしまおう。
ということで作戦開始だ。
----------------------------------------------------------------------------------------------
俺は爺さんの隣のベンチにこっそりとカバンを置いておき、そのカバンにメモを貼っておいた。
そのメモにはこう書いてある。
『このカバンを最初に見つけた幸運な人へ。このカバンの中には、私が誰かに幸せを渡したいという思いを込めています。
もしこのカバンを開けて、幸せを手に入れた人は、また別の誰かに幸せを与えてあげて下さい。 T.s.』
確かこんな話があった。
ブレン=バタクランという芸術家がいて、自分の絵が2日で50枚近く売れたことの感謝の印として、自分の作品を誰かにただであげて、一つお願いをすることにした。
「君が相手を選ばず、今から他人によりたくさんの笑顔を見せることを約束してくれたら、この絵を差し上げます。」
というメモと共に、色々な国に自分の作品を残した。という話だ。
今回はこの話を参考にさせてもらった。
何も書かずに、カバンだけ置いてあると『なんだ。忘れ物か』と誤解され、カバンを開けてもらえない可能性がある。しかし、このメモがあると、持ち主はわざとここにカバンを置いていったということになる。
それにカバンの中身について詳しいことを書いていないから、もしこの話に興味を持ってくれたなら、『とりあえず試しに一度開けてみるか』という気持ちになるだろう。
まぁ若返ることは史上の幸福と誰かさんも言っていたし、間違ったことは書いていないだろう。
さて、誰か別の人が来ないうちにあのうたた寝している爺さんを起こす必要がある。
もしカバンを別の誰かに開けられたら作戦失敗だし、また、俺以外の誰かにカバンの変身シーンを見られたらどうなるか予想できないからだ。
道端に人が倒れていて、どんどん姿が変わっていくのを見られるとパニックになって色々と面倒だしね。
いっそ石でも投げて無理矢理起こそうか…などと考えていると、あの爺さんが顔を上げた。よしよし、次はあのカバンに気付いてくれたらいい。
爺さんはしばらくボーっとしていたが、ようやく近くにポツンと置いてあるカバンに気がついてくれた。
ふと立ち上がって隣のベンチのところに行き、カバンに貼り付けてあったメモを読む爺さん。
メモを見て何を考えているだろう。ここでもしあの爺さんに『悪戯か』とでも思われたらおしまい。素直に別のターゲットを狙おう。
だがそんな心配はいらなかった。爺さんは鍵のかかっていないロックを外し、カバンを開いた。よしよし、好奇心あるのは良い心がけだ。
カバンからは光が溢れ出す。爺さんはそれに驚いて悲鳴を上げ、腰を抜かしたのかいきなり倒れて、そのまま動かなくなった。
作戦大成功!俺は爺さんのそばに駆け寄り、様子を見ることにした。髪が揺れて、背中にあたったりするが気にしない。
目の前で爺さんが変わっていく。それなりにあった背丈がどんどん縮んでいき、小学校低学年ぐらいの身長に縮む。
それと同時に肌の様子も変わっていった。シワとシミだらけだった茶色の肌が健康的で艶やかな肌色に変わっていく。
白髪交じりのボサボサの髪の毛がきらめく栗色に変わり、髪の薄かった部分からもどんどんと毛が生えてきて、全体的に伸びていく。
次の変化は胸の辺りに起こった。まっ平らだった胸がムクムクと膨れ上がり、その身長には不釣り合いなほどの大きさの巨乳が出来上がった。
顔立ちも幼く変わり、そこにはぶかぶかの男物の服に包まれた巨乳の幼女が、地面に寝転がっていた。
俺は浮かれながら目の前で変わりゆく様子を観察していたが、その時公園の向こう側から一組の家族連れがやってくるのが目に入った。
「(ヤバイ!ここで見つかったらどうなるんだ!?)」
少なくとも隠れておこう!と思ったがもう遅い。やってきた家族連れの中のお父さんらしき人物と目があった。
しまった…ややこしいことになるぞ…とその時俺は諦めたが、その人は視線を家族の方に戻し、その一団はそのまま去っていった。
「(助かった…?)」
俺は安心したのか拍子抜けしたのかで、力が抜けてその場にペタリとへたれこんだ。
目の前で人が変身していたのを見ていた筈なのに、特に気にされなかった…。
「(ひょっとして変身中は…、他人の目には映らないのか?)」
でもそれならば、この俺も例外ではないはず。
この幼女となった元爺さんの変身過程を観察することなんてできないはずだ。
「あ、しまった。気を取られていて続きを見るのを忘れてた。」
俺が元爺さんの方に目をやった時、変身は既に終わっていた。
地面に転がる幼い女の子と化した爺さんの身体を包むのは赤い着物。頭には赤いリボンがついている。
しかしこの姿を見て真っ先に目に入るのは、その着物からはみ出て見える、この幼女には不釣り合いな巨乳。
「うーん、今の俺ぐらいの大きさ…いや、それ以上だね。」
と言いながら、この子の着物に手を突っ込んで胸を掴む。俺の手いっぱいにもちもちとした脂肪の塊の弾力のある感触が広がる。
「俺よりも小さいくせに…俺より大きいとは生意気な…なんとなく昨日の双葉の気持ちが分かるかも…」
…っといかんいかん。胸の大きさで敗北感を感じるとは。まるで女の子のようではないか。
この身体でいるとこの俺も少しずつ精神が女の子の方に偏る為、注意して男の意識を保てるようにしておかないと自分自身が揺らぎそうで怖い。
地面に頃がしておくのは可哀想なので、幼女の身体を持ちあげ、ベンチの上に寝かせてやる。この身体は男の時より筋力は無いけど、小さい子供を持ちあげるくらいはなんとかなる。
「とりあえずつまんでみよ。」と言って、この子の乳首をつまんでみる。コリッとした弾力があって、される側は結構刺激が来るんだけど、幼女の意識は戻らない。
カバンやタンスを使った場合、俺と双葉は比較的一瞬で変身が終わり、意識もすぐに回復するのだが、今日の2人はしばらくの間意識を失ったままだ。
まぁしばらくの間俺が近づいて、カバンを取ったりする余裕ができるので、非常に助かっているのだが。
俺も最初の頃は変身するたびに酷い眩暈がしたり、苦労したものだけど最近はそうでもない。
もしかしたら俺と双葉の体が、あのカバンやタンスの変身に慣れてきているからかもしれない。
そういうことなら昨日俺が変身した時も、双葉が俺の変身前の姿のことを覚えていたり、俺だけがターゲットの変身過程を認識できることも納得できる。
まぁ例えバレないとしても、念のため人の目が沢山あるところでカバンを使うのはやめておいた方がいいだろう。
っと、そうだ。そろそろ目を覚ますかもしれない。
俺はこの子の胸を弄った時に乱れた着物を整えてやるが、それでも胸が少しはみ出て見える。
近くに落ちていたカバンを拾って、茂みの方に隠れる。この中身の服はゴミ捨て場にでもおいておこう。
…幼女が目を開けた。今完全に回らない頭で何を思っているだろう。なんだか胸が重い…とかそういうことかな?
いきなり驚いたかのように身体をガバッと起こす。そしてそのまま、その小さな両手でつかみきれない程の巨乳に手をあてる。
「な、なんだこれは!…こっ、声もっ!?」
身体のあちこちを触りながら、自分の置かれた状況を把握しきれないでいる幼女。
そりゃ、気を失う前はただの爺さんが、目を覚ましたら小さな子供、それも和服の似合う女の子になっていたら混乱するのも無理は無い。しかも胸にはグラビア級の巨乳まで付いているのだ。
さて、今回は俺も少しだけちょっかいをかけてみよう。
俺は茂みの中にカバンを隠したまま、何事もなかったように道に出てきて、通りすがりの振りをして幼女のいる辺りまでやってくる。
そして、自分の身体のあちこちを、まるで確かめるかのように触っている幼女に「どうしたの?」と話しかけてみる。
「な、なな何でもないから!あっちへ行け!」
と、可愛い声で怒鳴るがイマイチ、というか全く迫力が無い。
俺はわざとらしく頬を膨らませてみせると、幼女の柔らかいほっぺたを引っ張って
「こら!人にそんな口のきき方したらダメでしょ!」
と叱って見せた。
しかし幼女は、
「う、うるさい!」
と、俺の手を振り払うと、公園の入り口の方へトテテと慣れない身体と服装で走っていった。
やれやれ、もともと頑固な爺さんだったのか、それともあまりに混乱して精神が追い詰められているのかな?
よく見るとあの子は、あの着物によく似合う、可愛らしい鼻緒の下駄を履いていた。
「慣れない体の上に、下駄。これは転ぶぞ」
という俺の予想通り、慣れない視点で走ったせいか、走るたび胸が震えるからか、それとも下駄のせいなのかは知らないが、走っていた幼女は盛大にこけてしまった。
俺はそれを見て、地面に倒れている幼女の方へ走っていった。
「(…それにしても変身した人は皆転ぶものなのか?)」
倒れた幼女に近寄って、身体を起こしてやる。膝のあたりが赤く、血がにじんでいる。
痛みのせいか、あまりの不条理さに耐えきれなくなったのか、幼女の目には涙を浮かべている。
「はいはい、泣かないの。痛くない痛くない。」と、顔をなでてやる。
俺は着物の土を軽く払ってやり、幼女をおんぶして水飲み場の方に向かった。背中に幼女の胸があたるのを感じる…役得?
さっきは冷たく当たったのに、関係なく優しくしてくれるお姉さん…といった感じだろうか。今の俺は。
その証拠に、今は特に文句を言わずに、俺のされるがままにいる。
「(まぁ元凶は俺なんだがな。)」
水飲み場で傷を洗ってやり、着物の土を水で濡らしたタオルで拭いてやった。
ポーチから絆創膏を取り出し、膝に貼ってやった。
「よし!これで大丈夫。よく我慢したね、えらいえらい」
お姉さんっぽく振る舞い、幼女の頭をなでる。サラサラとした髪の手触りが心地よい。
今どんなことを考えているんだろうかこの子は。子供のように扱われて悔しい…、でも今自分の身体は小さな女の子で…と、抵抗するにできない状態なのかな?
「それにしても可愛い服ねー、似合っているわよ♪」
「…コクリ」
おおっ、うなずいた。顔を赤らめて首を少しだけ縦に振る仕草は、元が爺さんだとはとても思いつかない。
「んーっと、お母さんと一緒に来たのかな?一人で帰れる?」
「…コクリ」
「そっか、それじゃぁお姉さんは行くね。バイバイ」
と手を振って、幼女の目に入らないところにまで行った俺は、公園をぐるっと回って、カバンのあるところまで戻ってきた。
そこからは幼女が、公園の入り口に向かってゆっくりと歩いて行く後ろ姿が見られる。どうやら気付かれずに戻ってきたらしい。
俺はカバンを回収すると、幼女にばれないように尾行していった。
それでいて他人からは怪しまれないように振る舞い、幼女の後をつけていく。
時々立ち止まっては、ブツブツと独り言を言ったり、自分の胸に手を当てたりする。
女子高生の2人組に、「可愛い!」と言われた時は、あの幼女は顔を赤らめていた。
あと途中のゴミステーションに、俺は白い手袋をつけた状態で開けたカバンの中身、あの幼女が元に戻れる手段である爺さんの服を捨てておいた。
「(数日もすればタンスの効果であの身体にも環境にも慣れていくでしょう。自分がお爺さんだったということは忘れないかもしれないけど。)」
----------------------------------------------------------------------------------------------
幼女は商店街の方に向かうと、とある建物の前に立ち止まった。
「あれ?ここって呉服店だよな。この店に用があるのか?」
俺はここに呉服店があることは知っていた。結構老舗店舗らしい。しかし高い和服を買う金もない学生の俺には関係のない場所だった。
いや、好きだけどね和服。特に女の子の和服姿は見ていて来るものがある。若い女の子はもっと和服を着るべきだと思う。全国の和服ファンのために。まぁ俺にはタンスがあるけど。
「あ、店長!お帰りなさい!」
と言って、いきなり店の中から眼鏡をかけた若い男が顔を出す。そしてその視線の先には…あの幼女?
「お、お前…私のことが分かるのか?」
幼女本人も動揺している。そりゃあの幼女がこの店の店長だなんて本人も思わないだろう。
というかこんな姿になったのに、知り合いに自分のことを認識してもらえるなんて思わなかっただろう。
「何言ってるんです店長?そんなでかい胸をした子供なんて店長ぐらいでしょう。見間違うはずがありませんよ。」
とフレンドリーに笑いながら、店員の男は答える。
「い、いや…何でもない…。と、とにかく疲れたから…少し休む…」
と言って、幼女は店の奥にノロノロと歩いて行った。
ほうほう、つまり俺が和服幼女にしたあの爺さんは偶然、呉服店の店長だったという訳か。こりゃ面白い。
さて、あの子は店の奥に引っ込んでしまったので、これ以上様子を見ることはできないが、もう少しだけ情報を集めてみよう。
「あのー、すみません。さっきのやり取り見ていたんですけど…あの子はこの店の店長なんですか?」
と、俺は店員の男性に声をかけてみる。すると男性は、笑顔でこう答えてくれた。
「えぇ、店長は見ての通り小学生なんですけど…学校にもいかないでこの呉服店を営んでいるんです。凄いでしょう?」
ほうほう、身体が小学生並になったからと言って、必ずしも小学校に行く立場になるとは限らない訳か。
それにしてもあの年で店を経営とか…少し無理があるんじゃないか?
「凄いですね…店の方はうまく行ってるんですか?」
男性は首を振りながら答える。
「あんまりよくないですね…と言っても店長の手腕が悪い訳じゃなくて、最近和服を着たりする人って限られているでしょう?
ここだけじゃなくて、全国のこの業界は、需要が少なくてかなりピンチなんですよ最近。
やっぱり値段が高いのもありますけど…和服を着る人が少ないせいで、なかなか自分から着よう!と思う人がいないのも原因じゃないですかねぇ」
----------------------------------------------------------------------------------------------
俺が店を出る時には、矢絣(やがすり)模様の袴の、眼鏡をかけた高校生ぐらいの黒髪の美少女が椅子に座って眠っていた。
もちろんさっきの男がカバンを使って変身した姿である。
変身させる細かい手順は省くけれど…変身させる時に俺が直接カバンを渡したから…帰ってから俺もまた変身しておかないといけない。俺の顔を覚えられたし、万が一見つかったら面倒だし。
あの少女が目を覚ました時、さぞかし驚くだろうが、あの少女にはどうすることもできない。
あの少女の元の姿を覚えている人は、俺以外に誰もいないのだから。
店の奥に引っ込んでいった幼女も恐らく、あの少女が元男性だったことを覚えていないだろう。
自分が元爺さんだということも、誰にも覚えられていなかったのだから。
お互いが、自分の身体がおかしい!と思っても、相手の姿は元々そうだった。という状態になるだろう。
あの2人は最初、自分の姿に驚いたり、元の姿に戻ろうと必死になるだろうが、いずれ諦めざるを得ない。
まぁ元に戻らなくても、世間は元々2人は少女(幼女)だった。という認識だから、最初のうちは身体に恥じらいを覚えたりと、苦労はするだろうけどいずれは慣れるさ。
「さーってと、次はどんな服を使おうかなっと」
----------------------------------------------------------------------------------------------
ちなみにこれは後日談になるのだけれども、最近この辺りで男女問わず、街中で和服を着る人がなんとなく増えているような気がした。
実際あの店に行ってみると、あの眼鏡の少女と巨乳の幼女が、2人で店をうまく繁盛させていた。
それはあの美少(幼)女店員2人目当ての男性客もいれば、あの美少女2人組の着るような和服に惹かれる女性客もいたようにも見える。
あの2人は自分の身体に慣れ切ったらしく、笑顔で溌剌と接客をしていた。
「桐恵!あそこに置いてある帯とって」
と、大学生ぐらいの年の女性客の着物の繕いをしているあの幼女が、手の届かない場所に置いてある帯を指さして、眼鏡の美少女にお願いをしている姿は可愛らしい。
お願いを受けた少女は、「ハイハイ、分かりましたよ店長♪」と、指定された帯を幼女に手渡す。
この年で着物の扱いや、経営等もしっかりとやり、非常に愛らしいこの幼女は、その胸の巨大さも合間って近所でも有名な人物となった。
本人もその不釣り合いに巨大な胸を隠そうともせず、逆に強調するような感じの服装を心がけている。
どうやら2人とも今の姿に多少不便はあっても、まんざら嫌!という訳でもなさそうだし、店もうまく回るようになってめでたしめでたし、といったところかな?
あの幼女も今は幸せそうに見えるし、あのカバンで本当に幸せをもらったということだろう。
買い物客達も、2人の美少(幼)女の笑顔で幸せを分けてもらっているし、まさか騙すつもりで書いたあのメモが真実になるとは、俺も想像していなかったことだ。
ありがとう!生きててよかった!