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奪われた夫(後編)

2011/11/12 17:00:13
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朝、清彦が出勤すると、職場に双葉の姿はなかった。
(おかしいな、いつも俺より先に来てるんだが……)
念のためオフィスをもう一度見回したが、やはり双葉はいない。先輩の女子社員に「双葉ちゃん、どうしたの?」と不思議そうに問われ、「いいえ、何でもありません」と慌てて首を振った。
「あの、すいません。清彦さんを見ませんでしたか?」
話しかけられたついでに訊いてみると、
「清彦さん? ううん、まだ来てないみたいね。彼に何か用事でもあるの?」と問い返される。
「はい。こないだあの人に頼まれた書類のことで、ちょっと聞きたいことがあって……」
「ふーん。まあ、そろそろ来るんじゃないかしら。それにしても、最近の双葉ちゃんは仕事熱心ね。前はなんだか不真面目なイメージがあったけど、正直言って見直しちゃったわ」
そう言って笑うと、彼女は自分のデスクに戻っていった。ほっとしたのも束の間、課長が現れ、「皆、話があるから聞いてほしい」と口を開いた。いつになく神妙な面持ちだった。
「実は残念な知らせがある。清彦君が交通事故で入院したそうだ」
「ええっ !?」
清彦のあげた大声に、課長を含めた同僚たちは一様に目を丸くした。皆は清彦と双葉の身体が入れ替わっていることなど知る由もないのだから、この反応に大いに驚いたようだ。
「あ……ご、ごめんなさい。続けて下さい」
自分が課長の話を中断させたことに気づいて、清彦は赤面したが、内心ではいてもたってもいられなかった。
(そんな、どうして双葉ちゃんが事故なんか……ひょっとして、昨日友美が帰ってこなかったのも、これが理由なんじゃないのか?)
昨晩、友美は家に帰ってこなかった。同居している清彦に何も言わず外泊するなど、今までになかったことだ。確証はなかったが、双葉の事故と行方不明の友美に何か関係があるように思えてならなかった。
(あの二人、昨日は一緒にいたんだろうか。俺に内緒で会っていたのか? そんな馬鹿な。でも、まさか……もしかして、友美も事故に巻き込まれたんじゃ……)
あれこれ考え込んでいるうちに、想像はますます悪い方へと向かっていく。手のひらに汗がにじんで、喉がからからに渇いた。
「詳しいことはわからないが、とりあえず命に別状はないらしい。面会も可能だそうだ。ついては、うちの課から誰か見舞いに行ってきてほしいんだが……」
「はいっ、俺……いえ、あたしが行きますっ!」
清彦は真っ先に名乗りをあげた。今すぐ自分が行くと強硬に主張する「双葉」の態度に、総務課の皆は揃って首をかしげたが、特に反対の意見は出なかった。まだ新人で特に重要な仕事を抱えているわけでもないため、適任だと思われたのかもしれない。
目的の病院の場所を課長から聞き出すと、急いで外に出てタクシーを捕まえた。そう遠くではないはずだったが、焦りのせいか車内で過ごす時間が非常に長く感じられてもどかしかった。
ようやく病院にたどりつくと、清彦は受付に飛び込み、入院しているはずの「佐藤清彦」について訊ねた。確かに昨夜の事故で重傷を負い、ここに担ぎ込まれたという。エレベーターを待つのも煩わしく、清彦は大股で階段を駆け上がった。
双葉の部屋は個室だった。ノックもせずに病室のドアを勢いよく開けると、体のあちらこちらを包帯に覆われた男がベッドの上に横たわっていた。
傍らに座っていた中年女性が顔を上げてこちらを向いた。清彦の母親だった。
「お、おふくろっ。いったい何があったんだ !?」
「あの……すみませんが、どちら様でしょうか?」
自分の母親に怪訝な顔で問われ、清彦は我に返った。今の自分は清彦ではなく、母親が会ったこともない若い娘になっているのだということを思い出した。
「す、すみません。あたし、清彦さんと同じ会社で働いている双葉といいます。今日はうちの課を代表してお見舞いに参りました」
「あら、そうですか。それはどうも、わざわざありがとうございます」
彼が頭を下げると、母親は納得した表情でうなずいた。しかし、その顔を覆う落胆の色に、不安な気持ちが胸をよぎった。何かとてつもなく悪いことが起きたのだと直感した。
「それで、清彦さんの容態は……?」
「ええ、骨折がひどくて二、三ヶ月は安静にしてないといけませんが、命に別状はありません。今はぐっすり眠っています。でも、一緒に車に乗っていたあの子は……」
そこで母親は目に涙を浮かべ、声を詰まらせた。気丈な母がこのように気落ちした姿を見るのは、清彦にも初めてのことだった。
「一緒に乗っていた子? だ、誰なんです、それ。その人がどうなったっていうんですかっ」
「友美ちゃんが亡くなったんです。清彦の恋人で、二人はもうすぐ結婚する予定でした」
「そ、そんな。友美が死んだなんて、嘘だろ……?」
あまりのショックに、清彦の顔は蒼白になった。学生時代からつき合っていた最愛の女性の急死を、どうしても受け入れることができない。だが、清彦の母親がよりにもよってこんな冗談を口にするはずがなかった。
「今夜、あの子のお通夜があります。ああ、あの子のご両親になんてお詫びしたらいいのかしら……」
「ほ、本当かよ。本当に友美は……」
体から力が抜けて、清彦は床にへたり込んでしまった。すると、そばのベッドから小さな囁き声がした。
「誰? そこにいるのは」
かつての自分の声を清彦は聞いた。大怪我をしているからか、力のないかすれ声だった。
「清彦、目が覚めたの? こちらは会社の双葉さんよ。お見舞いに来て下さったの」
「ああ、そう……ねえ、母さん。お願いがあるんだけど」
双葉は傍らにいる清彦の母親を呼ぶと、しばらくの間、席を外してくれないかと言い出した。
「駄目よ、清彦。大怪我をしてるんだから、人と話すのはやめた方がいいわ。用事なら母さんが聞いておいてあげるから、今は寝ていなさい」
「ごめん、母さん。しばらく外に出ていて。お願い」
生気こそ乏しいが強情な息子の物言いに、母親はあとに続く言葉をのみ込み、しぶしぶといった様子で病室から出ていった。そして清彦は元の自分と二人きりになった。
「ふう……これでゆっくり話ができるわね。といっても、このありさまじゃあんまり喋れそうにないけど。いたたたた……本当に死ぬかと思ったわ」
「双葉ちゃん、いったい何があったんだ? どうして事故なんて。友美はどうして……」
清彦の問いに双葉は答えず、虚ろな眼差しで天井を見つめた。
「そっか。やっぱりあの人、死んだんだ。ふふふ、あはははは……いい気味ね。当然の報いだわ」
「何が報いだ! 友美は死んだんだぞっ!」
死者を冷笑する双葉の言葉に、清彦は激昂した。相手が重傷を負っていなければ、殴りつけていただろう。代わりに力いっぱい拳を握りしめ、血がにじむほど手のひらに爪を食い込ませた。
「ううっ、友美……一緒になるって、約束したのに。うっ、ぐすっ……」
あえなくこの世を去った婚約者のことを思うと、涙が止めどなくこみ上げてくる。清彦は力なく床にへたり込み、両手で顔を覆ってすすり泣いた。
「清彦、泣かないで」
「うえええんっ。友美、友美ぃ……」
「私はここにいるわ。だから泣かないで、清彦」
「……ふえ? 何だって?」
思いもよらない発言を耳にして、清彦はきょとんとした。ベッドの上に横たわった男は小さくため息をつき、そしてくすりと笑った。
「私よ、清彦。私は友美、あなたのことが大好きな田中友美よ」
「え、友美? そ、そんな馬鹿な……」
清彦は戸惑い、目を丸くして立ち上がった。最初は、双葉が自分を慰めようと演技をしているのかと思った。だが目の前の男は時おり傷の痛みでうめきながらも、清彦が学生だった頃の出来事を懐かしそうな口調で語った。清彦以外は、彼の恋人である友美しか知りえないはずの内容だった。
「どう? これで信じてもらえたかしら。私が友美だって」
「ほ、本当に友美なのか? でも、どうして友美が俺の体になってるんだ」
清彦が訊ねると、男はかすかに頭を動かした。首を振ろうとしたようだった。
「さあ、どうしてかしらね。実は、私にもよくわからないの。うっ、いたたた……」
話し続けていることが、男には大きな負担のようだった。だが男は口を閉ざそうとしない。目を白黒させている清彦をちらりと一瞥して、自分が友美であると重ねて訴えた。
「昨日の夜、私はあなたの体の双葉さんと車に乗っていたの。最近あなたの様子がおかしいから、何か知らないかって訊ねたら、あの女……よりによってあなたのことを手篭めにしたって言って笑い出したから、それでついカッとなって、運転中のあの女に飛びかかって──ああ、その辺りまでしか覚えていないわ。そのあと、どうなったんだっけ……」
「もういい、友美。お前が友美だってことは信じてやるから、それ以上喋るな」
「ううん、大丈夫。あちこち骨が折れてるけど、大したことないわ。それより私がどうしてあなたの体になってるのかだけど……もしかしたら私と双葉さん、事故のショックで入れ替わっちゃったのかもしれない。ちょうど、あなたとあの女が入れ替わったのと同じようにね」
「俺と双葉ちゃんが入れ替わったみたいに、今度は友美と双葉ちゃんが入れ替わったっていうのか? じゃあ、死んだ友美の体の中には双葉ちゃんが……?」
「多分そうだと思う。あの女、私の体で死んじゃったんだわ」
友美の口調はやけにあっさりしていた。まるで憑き物が落ちたかのような、晴れ晴れとした声だった。
「だから私、当然の報いだって言ったのよ。単にあなたの体を奪っただけじゃなくて、女になったあなたをもてあそんで、妊娠までさせてしまったなんて……死んで当然の女だわ」
「全部、双葉ちゃんから聞いたのか……」
清彦は青い顔でうなだれた。女になった自分がこの一月の間、双葉とのただれた関係にのめり込み、あまつさえ子種を仕込まれたことは、すっかり友美に知られてしまっていた。男としての面目を失い、友美にも迷惑をかけた。よくよく考えてみれば、今回の事故も、清彦がもっと早く彼女に相談していたら防げたかもしれないのだ。友美を命の危険に晒したことに気づいて、清彦は自責の念に駆られた。
「……ごめん、友美。俺、どうしてもお前に言えなかったんだ。男の俺が双葉ちゃんに妊娠させられたなんて、あまりにも恥ずかしくて……」
「わかってるわ。最近のあなた、とっても辛そうだったもの」
「最初は強姦だったんだ。会社の会議室に連れ込まれて、無理やり……そのときは死にたくなるほど嫌だったのに、その次の日も、そのまた次の日も無理強いされて、同じことをずるずると繰り返した。そうしているうちに、いつの間にか双葉ちゃんの体でいやらしい行為を楽しんでいる自分に気がついて、どうしようもなく怖くなった。酒ばかり飲んでいたのもそのせいだ。お前と顔を合わせて、話をするのが怖かった。詮索されるのが怖かった。だから怖いことから逃げ出した。俺は卑怯な臆病者なんだ……」
清彦はか細い声で、懺悔とも自虐ともつかない言葉を並べ立てた。一度は止まったはずの涙が再び頬を伝い、病室の床に滴り落ちた。いくら手の甲で拭っても、涙が止まることがなかった。
「違う、あなたはちっとも悪くないわ。悪いのは全部あの女よ。でも……あなたが辛いのはわかっていたけど、私にだけはちゃんと話してほしかった……」
「ごめん、友美。いくら謝っても許してもらえないだろうけど、本当にごめん。うえええん……」
清彦は泣き崩れてベッドにすがりついた。女々しい自分があまりにも情けなく、いっそ消えてしまいたかった。
「泣かないで、清彦。体は無くしちゃったけど、私はこうして生きてるわ。怪我さえ治ったら、またあなたと一緒にいられる。もう女同士じゃないんだから、今度こそきちんと結婚できるわよ」
「ううっ、友美……俺、お前と一緒にいていいの?」
「当たり前じゃない。何年待たされたと思ってるのよ。早くあなただけでも元の体に戻る方法を探しましょう。私はあなたが使ってる双葉さんの体になって、あなたのお嫁さんにしてもらうから。それで万事解決じゃない?」
冗談めかして笑う友美に、清彦はしゃくりあげながら何度も何度もうなずき返した。感極まってベッドの上に飛び乗り、包帯だらけの友美に抱きついた。それが傷に響いたのか、友美は一瞬顔をしかめてうめき声をあげたが、それでも精一杯腕を伸ばして清彦を抱き返してくれた。
「ごめんな、友美。俺、今度こそお前と一緒になるよ。元の体に戻っても戻れなくても、絶対に」
「そうそう、その意気よ。清彦、大好き。愛してるわ……」
「ありがとう、友美。ありがとう……」
友美の胸に顔をうずめて嗚咽を漏らす清彦。友美はそんな女々しい恋人の背中を優しく撫でて、傷ついた彼を慰めてくれた。ほっとした気持ちで胸が満たされていくのを感じた。元の自分の腕に抱かれてひたすら泣き続ける清彦の姿は、まるで幼い少女のようだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「わあ、いい匂い。ママ、今日のご飯はなあに?」
無邪気な声があがり、双葉は鍋から視線を外して振り向いた。友美が彼女の足元にちょこんと立って、エプロンの裾を握っていた。
「クリームシチューよ。ニンジンとブロッコリーが入ってるけど、友美はちゃんと食べられるかしら」
目を細めて問いかけると、友美はにっこり笑ってうなずいた。
「うん、大丈夫だよ。あたし好き嫌いなんてないもん」
「そう、友美は偉いわね。ママ、とっても嬉しいわ」
幼い娘の無垢な微笑みに、双葉は相好を崩して小さな体を抱き上げた。
肩にかかる長さの繊細な髪を撫でてやると、友美は嬉しそうに母の体にすがりついてくる。母親である双葉に似て整った顔立ちで、フリルとリボンのあしらわれた幼児用のスカートがよく似合う。おとぎ話に出てくる妖精のような愛らしさだ。
(ああ、なんて可愛いのかしら。将来はきっと美人になるわね。だって私の娘だものね……)
親馬鹿なのは承知の上で友美を抱きしめ、みずみずしい顔に頬擦りした。もうじき満二歳を迎える友美は可愛いだけでなく驚くほど利発で、双葉にとっては目に入れても痛くない存在だった。
「ううん……ママ、苦しいよう……」
「あ、ごめんね。つい力が入っちゃった」
少し辛そうな友美の声に双葉は我に返り、愛娘を静かに床に下ろした。
「さあ、ママはお料理の続きをしないといけないから、しばらくあっちのお部屋で遊んでらっしゃい」
「はーい、ママ」
早足でキッチンを去っていく友美を見送ると、双葉は調理を再開した。包丁を手に機嫌よく野菜を刻み、コーンと椎茸をフライパンで炒める。
結婚した当初は失敗続きだった家事も、今ではすっかり慣れたものだ。炊事、掃除、洗濯、買い物、そして友美の世話。専業主婦として、また母親としての責務を、双葉は日々懸命にこなしていた。
「そういえば、もう三年になるんだっけ。私が女になってから……」
バターの香りを漂わせるフライパンを片手に、双葉はしんみりした口調でつぶやいた。
すっかり主婦になりきっている現在の姿からは考えられないことだが、三年前の双葉は女ではなく、佐藤清彦という名の男だった。平凡な会社員だった清彦は同僚の鈴木双葉と階段を転げ落ち、そのショックで双葉と身体が入れ替わってしまったのだ。以来、清彦の体が元に戻ることはなく、結局彼は「鈴木双葉」として、それまでとはまったく異なる人生を歩むことになった。
男だった頃のことは、もはや遠い昔の思い出になりつつある。女の体で過ごした三年間の人生は清彦のアイデンティティを根元から塗り替え、彼の人格を淑やかな女性のものに作り変えていた。
「ただいま。ああ、腹が減った」
出来上がった料理の皿を食卓に並べていると、ドアが開いて背広姿の男が部屋に入ってきた。双葉の夫、清彦だった。
「おかえりなさい、あなた。ちょうどご飯が出来たところよ」
双葉は清彦からカバンを受け取り、背伸びしてキスをねだった。優しい笑みを浮かべた清彦が愛妻に口づける。双葉は目を閉じ、夫のたくましい腕に身を委ねた。
「ただいま、双葉。今日は何か変わったことはあったか?」
「いいえ、特に何も。いつも通りに家のことをして、そのあと友美を連れてお買い物に出かけたわ。友美ったらすごいのよ。まだ教えてもいないのに、通りにある看板の漢字をすらすら読めるの。びっくりしちゃった」
「そうか。友美は賢いんだな。いったい誰に似たんだろう」
清彦は名残惜しそうに双葉の体を離し、上着を脱いでハンガーにかけた。そこで食卓から漂ってくるシチューの匂いに気がついたらしく、虫が光に誘われるようにふらふらと席についた。
「うふふ、きっとあなたに似たのよ。私は小さい頃ハイハイし始めたり、喋ったりするのが人より遅かったもの。賢い友美とは大違いだわ」
「おいおい、おかしなことを言うなよ。今の俺に似てるってことは、つまり昔のお前に似てるんじゃないか。入れ替わる前はお前が俺だったんだから」
「あら、そういえばそうだったね。それなら、私に似たってことにしておきましょうか。はい、ビール。今日もお仕事お疲れ様」
双葉はかつての自分の顔に笑いかけ、冷蔵庫から取り出した酒瓶を手渡した。そこに友美が部屋から顔を出し、父親の膝の上に飛び乗った。
「パパ、お帰りなさーい!」
「ただいま、友美。なあ、友美はパパとママと、どっちに似てると思う?」
「え? うーん、よくわかんない」
「はははっ。まあ、そりゃそうか。まだ友美は二つだもんな。これからどんどん大きくなって、どんどん綺麗になっていくんだ。ママみたいにな。あははは……」
泡立った麦酒を一気にあおり、上機嫌で愛娘の頭を撫で回す清彦。結婚する前は田中友美という名の女性だった彼だが、三年前の事件で清彦の体になってからは、彼の代わりに双葉の主人を立派に務め上げている。女性だった過去も今では半ば忘れつつあり、仕事や家庭のことに心を砕いて亭主振りを発揮していた。
「さあ、そろそろご飯にしましょうか。お父さんの膝の上もいいけれど、友美はこっちに座りなさい」
「はーい。それじゃあ、いただきまーす!」
「おかわりはちゃんと用意してるから沢山食べてね、二人とも」
愛くるしい娘の仕草に目を細めて、双葉は食事の皿に箸を伸ばした。優しくて頼りがいのある夫と天使のような愛娘に囲まれ笑いが絶えない現在の暮らしに、双葉は概ね満足していた。
(若い頃考えていたのとはだいぶ違う生活になってしまったけど、今の私、とっても幸せだわ。ただ、あえて贅沢を言うなら……)
これ以上ないほどよくできた夫に望むものが、もう一つだけある。それをいつ清彦に打ち明けようかと思案に暮れながら、双葉はビールのコップに口づけて妖艶な微笑を浮かべた。

その晩、双葉は真新しいネグリジェを身につけて夫婦の寝室を訪れた。ベッドの上ではパジャマ姿の清彦が本を片手にくつろいでいる。
「ねえ、あなた……今日、いいかしら?」
「ああ、もちろんさ。こっちにおいで」
清彦は優しい笑みを浮かべて、双葉の手をとり引き寄せた。子供を産んで結婚前より丸みを帯びた女の体が、清彦の腕の中に収まった。双葉は目を閉じ、夫の唇に自分のを重ねた。
「んっ、今日はなんだか積極的だな。何かあったのか?」
不思議そうに訊ねる清彦に、双葉は艶然と笑い返した。互いの吐息が混ざり合うほどの距離で、二人の男女は見つめ合った。
「ふふっ、バレちゃった? やっぱりあなたに隠し事はできないわね」
「おいおい、俺たちはいつからつき合ってると思ってるんだよ。お前の様子が少しでも普段と違っていたら、すぐにわかるさ。そうだろ?」
「ええ、そうだったわね。じゃあ私が今、何を考えてるのか当ててみてよ」
双葉はにこやかに問いを放った。清彦はそんな妻の身体をかき抱いて、耳元に口を寄せた。
「そうだな。ひょっとして、そろそろ二人目が欲しい……とか?」
「当たり。さすがあなたね、全部お見通しだなんて」
双葉は感心して夫の胸に顔を埋めた。三年前まで自分のものだった力強い肢体に包まれて、頬がほんのり赤くなる。
「ねえ、産んでもいい? 友美はあまり手がかからない子だし、せっかくだからもう一人か二人くらい産みたいなって……家庭は賑やかな方が楽しいと思うの」
そう話す声は緊張のため、かすかに震えていた。正式に結ばれる前に友美を身籠ってしまったこともあって、出産後の双葉は避妊を怠らなかった。清彦も結婚前の複雑な事情から妻に気を遣い、望まない妊娠を押しつけることは決してしなかった。
だが、双葉が清彦の妻になって三年が経つ。妻としても母親としても、また一人の女としても少しずつ自信をつけてきた双葉は、そろそろ自らの意思で夫との愛の結晶を授かりたくなったのだ。
自発的に妊娠を望む双葉に、かつて女だった男は、妻の髪を指で梳いて理解を示した。
「ああ、俺も同感だよ。可愛い友美に弟か妹をつくってやらないとな。それに、こんなに綺麗な妻に妊娠させてほしいって言われて、断る旦那はいないさ。今夜は絶対にお前を孕ませてやる」
「嬉しい……ありがとう。元々男だった私がこんなことを言うのはおかしいかもしれないけれど、私、あなたの妻で幸せです」
双葉は目尻に涙を浮かべて清彦の顔を見上げた。夫に自分の望みを受け入れてもらえた喜びで、胸が一杯だった。
「俺も幸せだよ、双葉。昔と違って俺は男に、お前は女になってしまったけど、ずっとお前のそばにいたいって気持ちは今も全然変わってない。俺たちはいつまでも一緒だ」
「はい……」
こみ上げてくる感情を抑えられず、双葉は嬉し涙を流して清彦にすがりついた。たくましい夫の体に身を預けていると、清彦は舌を伸ばして双葉の耳朶をなめた。薄く敏感な肉に軽く歯を立てられ、羞恥と興奮が湧き上がった。
(ああっ……私、この人の赤ちゃんを産ませてもらえるのね。いやだ、もうお腹がジンジンしちゃってる。はしたないわ……)
これからこの男に抱かれて子種を仕込まれるのだという思いが身体が火照らせ、腹の奥の子宮を疼かせる。清彦の手がネグリジェを剥ぎ取り、あらわになった裸体を愛撫すると、若い子持ちの女は悩ましげに身をくねらせた。
「あんっ、もっと強くして。大丈夫だから」
「ああ、わかった」
清彦は双葉の体をベッドに押し倒し、首筋をついばみながら片手で秘所をまさぐる。跡が残りそうなほど強く肌を吸われ、快い痛みがはしった。
「ああっ、いいわっ。激しくされるとゾクゾクしちゃう」
「綺麗だよ、双葉。それに、とってもいやらしい」
清彦の手が股間の茂みをかきわけて陰唇をなぞる。厚みのある肉の扉が左右に開き、夫の太い指をスムーズにのみ込んだ。
(いやだ、もう濡れてるのがバレちゃう。ああっ、指が入ってくる)
ぬめりけを帯びた肉びらが、差し込まれた指を貪欲に締めつける。素早い抜き差しが繰り返され、音をたてて双葉の中を摩擦した。胎内を乱暴にかき回す夫の指づかいに、期待が否応なく高まる。
「あんっ、ああんっ。ああっ、あなたっ」
寝室の薄明かりの下で、美しい若妻が歓喜の悲鳴をあげ、豊満な肢体を弾ませた。子供を産んでひと回り大きくなった乳房が激しく揺れ動いて、汗ばんだ肌を引っ張る。そこに清彦がかぶりついた。
「やああっ、おっぱいが──だ、駄目っ、そんなに吸わないでぇ……」
甘えた声で懇願するも、清彦は楽しそうに妻の肉体をいじり続ける。淫猥な表情で喘ぐ双葉の姿に獣性をそそられたのか、サディストの笑みを浮かべて、彼女の体を思うがままに蹂躙した。
(この人も興奮してるんだわ。はああっ、すごい。乳首がコリコリして、歯を立てられるとジンと痺れちゃう……)
愛する男に嬲られる喜びが、双葉から理性を掠めとる。多量の熱を宿した性器は休みなく蜜を垂れ流し続け、指の往復を滑らかにした。発情した牝の体の底から、受胎の欲望が湧き上がってくるのをひしひしと感じた。
(だ、駄目っ。今日はいつもと全然違うわ。もうイカされちゃう……)
「あんっ、あなた──ああっ、イクっ。双葉イキますっ」
二十五歳の主婦の肉体がしなり、女になった男を絶頂へと追いやる。双葉は卑猥な嬌声をあげ、自身を押し流す官能の波に揉まれた。
「双葉、イったのか? イったんだな。いやらしい顔だ」
ぐったりして荒い呼吸を繰り返す双葉を、清彦はにやにや笑いで見下ろした。手と膝を双葉の体の左右について、四つ足の姿勢で向かい合わせになっていた。
「はい、イキました。ああ……私ったらこんな、恥ずかしい……」
至近から注がれる夫の視線に、双葉はこれ以上なく赤面した。恥らう彼女に清彦が覆い被さり、またも情熱的な接吻を強いる。逃れる間もなく、夫婦の唇が重ねられた。
「あんっ、ううんっ。んんっ、んむっ」
温かい舌が前歯を押しのけ、双葉の口内を暴れ回った。とろりとした唾液の塊が、繋がった唇を通って喉を潤す。太ももに押し当てられた硬い感触に、夫も高揚の極みにあるのだと気づかされた。
(たくましいおちんちんが脚に当たってるわ。これが昔は私のものだったなんて、嘘みたい……)
竿の先端が肌を擦り粘性のある液体を塗りたくると、ぞくりとした感覚が四肢の先へと広がっていく。女の芯がかあっと燃え盛り、早く貫いてほしいという欲求で頭の中が一杯になった。
「お願い、あなた。きて……」
初めて妊娠させられた三年前には絶望に歪んだ美貌が、今は浅ましく頬を緩めて夫の子種を求めた。
「ああ。いくぞ、双葉」
はしたない妻の姿に清彦はいっそう興奮し、仰向けになった双葉の腿を持ち上げた。陰毛の生い茂る女陰が丸見えになった。上向いた入り口にペニスの切っ先をあてがい、ゆっくりと腰を突き出す清彦。黒光りする男性器が、双葉の内部にずぶずぶと飲み込まれていった。
「あっ、ああんっ。ああっ、熱いわっ」
双葉は艶やかな歓声をあげて夫のものを堪能した。三十路を過ぎた男盛りの陰茎は、いまだ充分な硬度を保っていた。腹の奥をみっちり埋め尽くす肉の塊に、身も心も満たされるのを実感した。
清彦は腰を緩やかに前後させ、年下の愛妻を穿つ。避妊具をつけず、ピルを飲まずにセックスをするのは長い間ご無沙汰だった。赤子を授かるために生で繋がっているのだということを改めて実感し、とろけるような種付けの愉悦に酔いしれた。
「あっ、ああんっ。こ、これすごいっ、あんっ」
艶かしい脚が八の字に広げられ、清彦が動くたびに妖しく揺らめく。いかがわしい音をたてて敏感な膣壁を摩擦される刺激が、双葉を虜にしていた。
「いつもよりいい反応だな。やっぱり生だからか。ああ、いい締めつけだ」
清彦は双葉をよがらせるため、腰をつかんで執拗な突き込みを続ける。下品な表情で妻を犯す姿からは、彼がほんの三年前まで女だったなどとは想像もできない。かつて友美と呼ばれていた女は、今や心身ともに男に生まれ変わっていた。
夫婦の性器が打ち合わされ、薄暗い寝室に男女の喘ぎが響き渡る。理性を無くした双葉には、自分が何を叫んでいるかもわからない。結合部からは混じり合った二人の体液が漏れ出し、白いシーツを汚していた。
いつしか双葉の脚は頭の横にまで曲げられ、体が二つ折りにされていた。屈曲位でくわえ込んだ夫のペニスが深々と彼女を貫き、子宮の戸を激しく叩く。呼吸を妨げる圧迫感さえ心地よい。
「ふ、深いのっ。はあっ、はああっ。だ、駄目……もう耐えられない」
双葉は息も絶え絶えのありさまで、唇の隙間から赤い舌を覗かせた。目前に迫った膣内射精の予感に、子持ちの主婦の肢体はうち震えた。赤い光が網膜を焼き、甘美なエクスタシーが全身に広がった。
「ああっ、あっ、イ、イクっ。双葉イキますっ、イっちゃうっ」
すっかり主人に飼い馴らされた女体が痙攣し、膣の内部が激しくうねった。収縮した粘膜が肉の柱を包み込み、速やかな射精を促す。双葉が恋い焦がれる夫は眉間に皺を浮かべて、苦悶の息を吐き出した。
「くう、出るっ。出すぞ、双葉っ!」
「は、はい、下さい──ああっ、あんっ。ああ、出てるっ。ああんっ」
待ち焦がれた精の奔流を心行くまで浴びて、双葉はよがり泣いた。焼けつくような樹液が膣内の隅々に浸透し、双葉の子宮に消えない征服の証を刻み込む。下腹がじくじくと疼き、受精の準備を始めるのを感じた。
(ああっ、中に出されてる。本当に孕まされちゃう。男だった私が、女だったこの人の赤ちゃんを宿すなんて。それも二人目……でも、なんて気持ちがいいのかしら。こんなの癖になっちゃう……)
初めてのときとは異なり、二度目の妊娠は双葉自身が望んだことだ。男だったことを忘れ、愛する夫の子供を身籠り貞淑な母親として生きていくのが、今の双葉の願いだった。
「んんっ、んふっ。あ、熱い、お腹が熱いわ──駄目っ、またイっちゃう。おほおっ、イクっ、イクっ」
牝の奥深くまで染み込んだ精液が、若い人妻に連続したアクメをもたらす。双葉は股間から潮さえ吹いて、収まりを見せないオルガスムスに翻弄された。
「はははっ。双葉、イキまくりじゃないか。なんていやらしい女なんだ、お前は。俺が女だったときだって、こんなに酷くはなかったぞ」
双葉の中にたっぷりと精を注ぎ込んだ清彦は、乱れる妻をそう言って物笑いにした。意地悪な夫に言い返そうにも、放出を終えて幾分か柔らかくなったペニスで膣内をかき回されると、色めいた女体が過敏な反応を示して声一つ出せなくなる。双葉の身体は隅々まで主人に支配されていた。
(妻の体をもてあそぶなんて、酷い人……でも今の私、とっても幸せだわ。だって好きな人と結ばれて、こうして赤ちゃんを産ませてもらえるんだもの。女になって本当によかった……あら?)
そっと目を閉じ妻として、母としての喜びを噛みしめた双葉だが、にわかに驚愕の表情を浮かべて息をのんだ。彼女の内部で、萎えたはずの清彦のものがむくむくと膨れ上がったのだ。
「ええっ? な、なに、どうしたの? きゃあっ !?」
驚く双葉の体が引き起こされ、夫の手によって仰向けからうつ伏せへと体勢を変えさせられた。繋がったまま体の向きを変えたことで結合部がずるりとかき回され、痺れるような官能の刺激が双葉を襲った。
「ああんっ、何なの。あなた、どういうつもり?」
「悪い、双葉。お前のいやらしい顔を見てたら、またしたくなってきた。今度は後ろからしてやるから、もう一回しようぜ」
双葉の後ろから背中にのしかかる形となった清彦が、彼女の耳元で性行為の再開を告げた。予期していなかった夫の言葉に、双葉は犬のような四つん這いの姿勢でおののいた。
「ま、待って。私、まだイったばかりなのに──はひっ、はひいっ。そんなに突いちゃ駄目ぇ……」
「すごいな。お前の中、ヌルヌルしてめちゃくちゃ気持ちいい。腰がぬけてしまいそうだ」
「ひいいっ、もう許して下さい。このままじゃおかしくなっちゃう……あふっ、あふっ。ま、またイクっ、双葉イクのっ。おおっ、うおおっ」
焼けついた子宮口に再び濃厚な精が浴びせかけられ、受精をより確実なものにする。愛する男との子を孕む幸福に涙を流しながら、双葉は豊かな乳房とヒップを弾ませ、浅ましい悲鳴をあげ続けた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


子供部屋のベッドの中で、友美は目を覚ました。
枕元の時計を見ると、真夜中の十二時を少し回っている。安眠の途中で起きてしまい、友美は寝ぼけ眼を軽くこすった。
友美が目を覚ましたのは、壁の向こう側から妖しげな話し声と物音が聞こえてきたからだ。日頃とはまったく異なるその声色は、友美の両親のものだった。
「今度はこうしてやるよ、双葉。こういうのもなかなかいいだろう?」
「ああっ、いいわ。あなた、激しいっ。あんっ、あっ、あっ、あああっ」
父の声はあまり大きくはなかったが、母が放つ色っぽい喘ぎ声は、友美のいる子供部屋にも届いた。とても幼児には何事か把握できないはずのやり取りの意味を、二歳の友美は全て理解していた。
「うーん、今夜はやけに激しいですねえ。まったく清彦さんってば、すっかり子持ちの人妻になりきっちゃって……元々、あれはあたしの体なのに」
と独り言を口にして、友美は自らの胸元に両手を当てた。かつて彼女の自慢だった肉感的な肢体はどこにもなく、可愛らしいキャラクターもののパジャマに包まれた、華奢な幼児の体に変わり果てていた。
「あーあ、あの人がうらやましいな。ホントなら、今頃あたしが清彦さんと結婚して、毎晩好きなだけああいうことをしてたはずなのに……まったく、また一から人生やり直しじゃない。しかも好きな相手が自分のお母さんになっちゃうなんて、夢にも思わなかったわ。どんな罰ゲームよ、これは……」
友美の表情は、日頃のあどけない女児のものではなかった。まるで大人の女性のような口調で愚痴をこぼし、呆れた様子で肩をすくめる。その間にもあちらの部屋では夫婦の営みが続いており、友美を溺愛している母親があられもない声をあげて、夫との情事に熱中していた。
「あんっ、ああんっ。すごいわ、こんな奥まで──あっ、ああっ、あっ」
「くそっ、いいなあ。あたしもあんな風に清彦さんとエッチしたいよう。スケベなお母さんの清彦さんを組み伏せて、気を失うまでズンズンしてイカせてあげたいよう……」
耳を塞いでも聞こえてきそうな双葉の嬌声に嫉妬を覚えて、友美は頭から勢いよくベッドに倒れ込んだ。歯が生え揃ってさえいないようなありさまでは、いくら悔しくても歯ぎしりすることすら叶わない。
「それにしても清彦さん、どうしてあんなにエッチになっちゃったんだろう。ひょっとしてあたしがそう仕込んだから?」
友美は自身が生まれたときから持っている前世の記憶を思い起こした。今の両親の間に生を受ける以前、友美は「鈴木双葉」という名を持つ女だった。それは今でこそ彼女の母親の名前だが、本来は友美が双葉だったのだ。
学校を出て地元の商社に就職した双葉は、同僚の佐藤清彦に恋をした。清彦には既に婚約者がいたが、信じられないアクシデントが起こり、双葉と清彦の身体が入れ替わってしまった。意中の男性の肉体を得た双葉はこれ幸いと、女になった清彦を手篭めにし、入れ替わったまま彼と結婚しようとした。
双葉の企みはうまくいった。うら若き乙女の体になった清彦は、双葉に散々凌辱された結果、女の肉体で味わう官能の虜になった。男としての矜持と自尊心を打ち砕かれ、自らの精で孕まされた清彦は身も心も双葉に従属することになった。あとは籍を入れ、二人で幸せな家庭を築くだけだった。
ところが、思わぬタイミングで邪魔が入った。勝ち誇った双葉から全てを聞かされた清彦の婚約者がやけになって、双葉が運転する車の中で暴れだしたのだ。そして双葉はハンドルの操作を誤り、致命的な事故を起こした。
それからのことはほとんど覚えていない。確かに死んだはずの自分がなぜ「清彦」と「双葉」の娘として生まれ変わったのかも、なぜ清彦の婚約者だったはずの友美が自分の代わりに彼の身体を使っているのかも、全てが不可思議で双葉の理解の及ばぬ出来事だった。ただ一つだけ言えるのは、彼女はこれから「友美」という名の女児として、新たな人生を始めなくてはならなくなったということだ。
「ああっ、あっ、あなたっ。双葉イキますっ。うおおっ、イクっ、イクっ。んほっ、んほおおおっ」
「うう……今日のお母さん、いつもよりエッチです。何か嬉しいことでもあったのかなあ? 羨ましい……」
部屋の外から響いてくる淫らな叫びに、友美の頬が赤くなった。できることなら自分も加わりたかったが、このように幼い身体では何ができるわけでもなく、また、何も知らない両親に転生の事実を告げることもためらわれた。愛娘の中身に気づいた二人が、今までのように彼女を可愛がってくれる保証はない。特に今は清彦になっているはずの女は、かつての双葉を大変に憎んでいたため、子供の彼女を虐待する可能性も充分にあった。生まれ変わった双葉が身の安全を確保するためには、無垢な子供の「友美」を演じ続けるしかないのだ。
(小学生になるまであと五年。ああしてエッチできるようになるまで、だいたい十五年。それから就職して結婚して、えーと……ああ、人生って長すぎです。早く大人になりたーいっ!)
様々なことに思いを巡らせ、仲睦まじい両親のセックスを無視しようと努力する友美。結局、彼女にようやく安らかな眠りが訪れたのは、夜も更けて子作りを終えた二人が寝静まってからだった。
特に後半は呼称がややこしくなって読みにくいかもしれませんが、
こんな感じのオチになりました。
応援して下さった方々に厚くお礼申し上げます。
せなちか
senatika@yahoo.co.jp
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5.100きよひこ
生まれてきた子供が男だった場合、かつての自分であり、未だ愛し続ける存在と十数年後に交わるシチュエーションが浮かんでじった私は、もう手遅れなのでしょう……。
30.100バナナとメロン
いや、いい話でしたよ。もうちょっとダークな方向に向かっても良かったんですが、まあハッピーエンドもいいですね。
でもこんなハッピーエンドに終わり、出産するTS物はなぜか女の子を産む場合が多いですね。作家さんだちの女の子好きかな。まあどうでもいい話だけどですね。w
僕もその息子とのいろいろな話を考えたことがあります。(www僕も手遅れだ。)
71.無評価清彦清彦清彦清彦清彦清彦清彦清彦清彦清彦清彦清彦清彦双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉双葉中野中野中野中野中野中野中野中野中野中野wwww
72.無評価とある清彦の婚姻届
72>> おっばいすき?
73.100清彦清彦清彦清彦清彦清彦(ry
73<<ああKBYJIFIBHGJJJHFUGUカップが