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Romancing Empress Sa・Ga #EX (ANOTHER END)

2011/12/02 18:04:39
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#この物語はRomancing Empress Sa・Ga #07からのアナザーストーリーです。
#ここまでのお話はRomancing Empress Sa・Ga #07mまでをご覧下さい。

「マ、マリーン! もうッ・・・もう限界ッ・・・!!」
「いいよ、出して・・・! 中に・・・!!」
クロウの突き上げる勢いが最高潮になる。
「うぅ・・・!!」
「あぁあぁあーッ!!」
ビュクビュクと、熱いモノが体の中に注がれる。マリーンはそれを余すところ無く受け止めた。
「あ・・・ああ・・・」
出されたモノが、子宮を通して全身に回る感覚がする。遂に、やってしまった。でも、悔いは無い。
「はぁッ・・・はぁッ・・・」
クロウがゆっくりとペニスを引き抜く。愛液と、精液が混じり合った液が、べっとりと絡み付いていた。
二人とも、暫く動かなかった。いや、動けなかった。快感の波が未だ渦巻いているからだった。
落ち着くために息を整えていたマリーンに、クロウが負ぶさってきた。
「クロウ・・・?」
「…」
返事はなかった。あまりの快感に、気を失ってしまったようだ。マリーンは、そんなクロウを優しく抱きしめた。
「クロウ…ありがとう。そして…ゴメン」
こんな状況で、半ば強引にクロウにセックスを要求した罪悪感からでた謝罪の言葉。
そしてそれでも、意図を汲んでしてくれたクロウに対しての、感謝の言葉を告げる。
クロウと共に、マリーンはベッドに横になった。あの眠気に似た感覚がやってきたからだ。
「クロウ…目が覚めたら、今度こそ…」
既に眠りについたクロウの後を追うように、マリーンも眠りについた。

『その手に、クロウを抱きながら』

_/_/_/_/_/Chapter.EX-1_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/悪夢_/_/_/_/_/_/_/_/

(…ん…)

誰かに呼ばれたような気がして、目を開ける。
しかし目に飛び込んできたのは、真っ暗な世界…
いや、視線のずっと先から光が差し込んでいて…まるで海の底のような…
(これは…夢…?)
夢にしてはやけに意識がはっきりしている。けれど、考える事以外は、全てがシャットアウトされた感覚。
(あぁ…そうだ…クロウと…クロウの…)
眠りに落ちる前の事を思い出す。とうとう、してしまった。女として、男と。
注がれたモノを確認しようとしたが、体が動かない。
記憶だけがあの熱く滾ったモノが子宮にある事を主張して、もどかしい。
(…どうなるんだろう…)
ムウラは言った。まだ孕む時期ではないだろうと。でも、その保証は何処にも無い。
(…クロウ…)
眠りにつく前に見たクロウの顔を思い出す。目を閉じて、まるで魂が抜けたかの様だった。
でもその表情は、どこか安堵感があった。
(…)
それを思い出しながら、再び眠りにつこうとした、その時。
(…? あれは…?)
暗い視界の先、光の中から、何かがすうっと現れた。それは…クロウだった。
(!?)
クロウはあの時のまま、生まれたままの姿だった。
あれだけ肌を触れ合わせたというのに、やはりまだ恥ずかしさを覚える。
触れたくて、手を伸ばそうとするが、体は動かない。
(あぁ…)
もどかしさに、やきもきする。だが、そんな気持ちが通じたのだろうか。
ゆっくりとだが、クロウはこちらに近づいてきていた。目を閉じ、眠っているようだったが。
クロウの顔が近づく。気恥ずかしさから、目を逸らそうとしたが、それすら叶わなかった。
時間の感覚は既に無い。一分とも、一時間とも、一年とも取れる気がする。
徐々に、徐々にと、クロウが近づく。気付けば、既にその顔が間近に迫っていた。
(こ、これって…)
クロウの意識は無いようだが、このままだと顔が触れあい、唇も触れ合うはずだ。
ドキドキと鼓動が高鳴る…気がした。
既に目と鼻の先にまで来ていた。もう少し、もう少し…
(!?)
そして、二人は『重なり合った』。
クロウの鼻が、自分の鼻に触れるどころか、吸い込まれるように『重なる』。
これだけ近づけば、普通なら顔も見えなくなるのに、何故か見える。見えている気がする。
(んんーッ!?)
キス、なんて甘酸っぱいものはなかった。唇も同じ様にくっついて、重なった。
そして、目と目が合う…いや、クロウの目が、重なると…
(!?!?)
視界に飛び込んできたのは、クロウの眼球。クロウの肉体の、一部。
(い、いや…)
戦いの日々に明け暮れたあの頃、バラバラになった人体は沢山見てきた。
だからそういった物には耐性がある。だけど今は、そんな耐性など無意味な状況に陥っていた。
思い人の、見たくは無い『物質』としての存在。それをまざまざと見せ付けられているようだった。
気付けば、自分の大きな胸も、既にクロウの胸と重なり合い、混ざり合っていた。
そして…クロウの性器が、自分の物と重なる。
勿論、全く形の違う両者がピタリと合うわけではなかったが、それでも何故か感覚がそう叫ぶ。
挿入れられるのとはまた違った感覚。まるで、何も介さず直に『入る』、そんな感覚。
既に視界はクロウの脳へと達し、吐き気を覚える。
(もう、止めて…)
そう願うも、それを聞く者も、それを叶える者もいない。真っ暗な世界。
自分の夢なのに、制御できない。自分は望んでいないのに、実行される。
涙がこぼれる気がしたが、それもやはり幻のように。
(クロウ…起きて…目を、覚まして…)
叶わないと悟り、今度は今尚眠り続けるクロウに語りかける。
それが本物のクロウだなんて、何処にも保証は無かったが、それでも、呼びかけ続けた。
(クロウ、お願い…目を…目を開けて…)
どんどんとクロウと重なりゆく自分の体。それはまるで、クロウを呑み込もうとしているかのようだった。
そしてその考えは不安を募らせていった。このまま、クロウが消えてしまうんじゃないのか、と。
自分の手や、足や、体や、頭が、クロウのそれと重なり、混じり合っていく。
違う。こんなの望んでない。ただ、ただ、私は、クロウを…
必死の祈りも空しく、完全に重なり合う、その刹那。
(…マリーン!)
クロウの声が聞こえた…気がした。
その直後、それまでゆっくりと動いていた世界が、渦を巻く様に流転し始めた。
(クロウ!)
心の中で呼びかけたが、返事は無かった。だが…
(あ…)
うねる視界にクロウの姿が見えた。クロウが離れた事に安堵したが…
(! クロウ!)
喜んだのも束の間、その渦にクロウが呑み込まれていった。
(待って! クロウ! 起きて! …あうッ!!)
消えゆくクロウに手を伸ばそうとしたその時、腹部に激痛が走った。
(ク…ロ…)
夢なのに、夢だというのに、夢の中で、更に夢へと落ちる。

あの時と同じ、抗えない睡魔が、マリーンを襲った。

_/_/_/_/_/Chapter.EX-2_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/変化_/_/_/_/_/_/_/_/

「グロヴッ…!? ガボッ!」

夢での出来事の続きを行うかのように、マリーンはもがきながら目覚めた。
体の感覚がある。手が動く。だがそれに気付く前に、液体が、自身を満たしている事に気付いた。
この状況は知っている。どうしてこの状況になったかも、分かっている。
伸ばそうとした手を引き、腕で『殻』の中を探る。
(こっちか…!)
体に掛かる重力を見極めて、腕で殻を叩く。更に腕力が増しているのか、殻はいともたやすく砕けた。
開いた穴から、身を乗り出す。
「…ぷはぁッ!! ゲホッ、ゲホッ!!」
肺に空気を送り込む。一頻り呑み込んだ液体を吐き出し、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「はぁッ、はぁッ…」
殻に手をつきながら呼吸を整える。やはり慣れないなこれは…
「はぁッ、はぁッ…はぁーッ…ふぅッ」
最後に大きく息を吸い込むと、漸く思考が回復する。が、それと同時に…
「う…気持ち…悪い…何…?」
冷静さを取り戻すやいなや、吐き気を催した。そのせいだろうか、頭痛が酷い。
「う…うぅ…」
一向に収まらない吐き気に、苛立つマリーン。
胃の中のモノを全て吐き出したい。内臓という内臓を、全て洗い流したい。そんな気分になり、口に手を当てた、その時。
「う、うゎッ!?」
片手で体を支えていた部分の殻が、音をたてて割れた。片手に掛かった体重は、殻を壊すのには十分だったらしい。
勿論、そこに体を預けていたマリーンは、殻の崩壊と共にベッドから転がり落ちた。
「ギャッ!」
頭から床に落ち、そのまま前転して止まる。思わずらしくない悲鳴を上げ、ぶつけた頭をさする。
「痛つ…く、くそッ…ツいてないな…」
痛みと吐き気を耐えながら、殻に目をやるマリーン。
ベッドにデンと、自分を模した蛹が鎮座している。何度か見ているため驚きはしなかった、が…
「…えッ? ! なッ…!?」
マリーンが割った部分から、勢いよく中の液体が溢れ出ていた。
そして、蛹の中を満たすその水が徐々に引くと、そこには。
「だ…誰?」
蛹の中から、美しい女性の姿が現れた。その女性は眠るようにその目を閉じ、意識は無い様だ。
マリーンは訳が分からずうろたえた。彼女は一体誰? 何故蛹の中に?
恐る恐る、ベッドに近づく。 …僅かだが呼吸はしていて、顔色も良い。生きてはいる。眠っているだけのようだ。
まじまじと見つめていると、どうも脳裏に誰かの顔が浮かぶ。だが、記憶にある人物の誰にも当てはまらなかった。
思い出そうと更に見つめていると…マリーンに、ある感情が湧き始めた。
「…綺麗だ…」
静かに横たわる女性。その顔は、美しさの中に愛らしさを湛えた、魅力ある顔立ちだった。
その体も、男ならむしゃぶりつきたくなるような、絹の様に白い肌。
胸こそマリーンと比べれば控えめだが、それでも揉めば吸い付く柔らかさだろう。
「…ッ…!」
ゴクリ、と息を呑むマリーン。こんな極上の美女が、目の前で生まれたままの姿で横たわっている。
マリーンの中で、猛々しい感情が沸々とわき始める。懐かしい感情が、甦る。
整えるのとは違う息遣いで、ハァハァと息を荒げるマリーン。触りたい、触り尽くしたい。触って…そして…
「…!?」
もっとよく見ようと身を乗り出したその時、マリーンは自身の異変に気付いた。
今湧き起こった感情もそうだが、それ以上に、懐かしい『生理現象』にマリーンは息を呑んだ。
徐々に興奮が高まり、気持ちが昂ったその時、ベッドの角に触れる、この体…女性には有り得ない『感触』。
「ま…まさか…」
知っている。自分は、この感触と、この昂りを、知っている。眠る前に見て、そして挿入れられた、その、体の『一部』。
ゆっくりとベッドから離れ、目線を恐る恐る下へと落とす。そこには、大きく突き出す自身の乳房が見え、そして…
「あ・・・ああ・・・あぁあ・・・!!」
男性器が、胸の谷間から顔を覗かせていた。

「嘘・・・!?」
言葉で否定しても、そこには間違いなくペニスがあり、そしてそれが自身の体から生えているのも事実だった。
「ゆ、夢・・・そう! 夢の続きを見ているんだ! そうだよ、これは夢・・・」
恐る恐る手を伸ばし、掴む。細い指に触れられ、ビクンと動いたソレ。
そしてそれは、自分が反応したものだと訴えるが如く脈打つ。この感覚は、夢じゃない。
「あぁあ・・・そんな・・・一体・・・なんで・・・?」
マリーンが本当の女性なら、錯乱し発狂していただろう。
だが、男の記憶を持つマリーンにとって、それは懐かしさと違和感で混乱しそうになる状況だった。
「男に戻った…? だけど、胸はあるし…それに…」
改めて体を確認すると、どうやらペニスが生えた事以外、少し成長した程度であまり変わっていなかった。
念のためにペニスの付け根辺りを弄ると、割れ目も確認できた。
「…これは一体…欲望が具現化したとでも言うのか? …それとも、クィーンはこういう成長をするのか?」
ムウラがいれば分かったかもしれないが、それでも恐らく、返事はこうだろう。『これは異常な事』、だと。
「・・・」
じっくりと観察している内、沸々とマリーンの中で興奮が高まっていく。
マゼランの記憶に残る自分のペニスとは形も大きさも違うが、それはまごうことなき男性器。
男の快感に比べ女性のそれが圧倒的に良いと知った今でも、ある意味250年もお預けを喰らった鬱憤は、並大抵の物ではない。
クロウに突かれていた時、クロウに自分自身を重ねて見ていた『自分』がいた。あれは、きっと男の心が見せた幻影だろう。
それが今は、その快感を味わえる。男としての欲求を満たせる。考えるより先に、手は動いていた。
「うッ・・・これは・・・」
ゆっくりとペニスを扱き始める。久しぶりの感触に、身悶える。
「はぁッ、はぁッ・・・!」
我慢なんて到底出来るはずもなく、どんどん手の動きを速めていく。
女の手で扱いている事も相まって、マリーンの興奮は一気に高まっていった。
「ンくッ・・・こっちも・・・」
もう一方の手で、胸を揉みしだく。乳首をこりこりと摘むと、その快感と連動してペニスが痛いほど勃つ。
「うんッ・・・コレッ、これスゴい・・・!」
胸を揉んでいた手を放し、割れ目に移すと、既に愛液が溢れ出し、内腿を濡らしていた。
指を掻きいれ、動かすと…
「ひぐッ! あ・・・あぁ・・・♥」
女性器の快感が男を刺激し、男性器の快感が女を刺激する。
もう快感の出所が分からない。あるのは、ただ全身を巡る快楽の波だけ。
そんな両方の快感を同時に味わう事に耐えられる筈もなく、熱いモノが奥底から込み上げる。
「あッ、で、出るッ・・・でちゃうぅうぅぅーーーーッ!!」
言うや否や、マリーンはペニスから大量の精液を迸らせ、マリーンの理性は一瞬で吹き飛んだ。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
ビュクビュクと出続ける精液と共に、膣からは潮を吹いて、完全にイってしまったマリーン。
舌を出し、呼吸もままならないまま、暫く動けずにいた。
「うぁ・・・この・・・臭い・・・」
一頻り果てて、漸く萎えたペニスが、再び勃起する。
「あ、あぁ・・・体が・・・疼いてる・・・」
あろうことかマリーンの体は、自分の精液の臭いで再び昂っていた。
カリに残る精液を指で摘み、顔に近づける。間違いなくこの臭いは、男の臭い。
マリーンはそれを一舐めすると、ニヤリと笑う。
「ウフフ・・・自分の出したモノに反応するなんて・・・なんてはしたないのかしら・・・」
自分で自分に言葉攻めをすると、ゾワッと身震いが起こる。あぁ、でも、気持ちいい・・・
再度高まる興奮を抑えきれず、身体を弄ぼうと手を動かそうとすると…
「う…ううん…」
「!」
突然の声に理性を取り戻し、身構えるマリーン。見れば、あの『女性』が目を覚まそうとしているところだった。

その成り行きを、じっと見つめるマリーン。その目は…

_/_/_/_/_/Chapter.EX-3_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/変身_/_/_/_/_/_/_/_/

不思議な夢を見た。

夢の中で、誰かが必死に呼びかけてくる。
答えたくとも、声が出ない。反応を返したくても、体が動かない。
そうこうしている内に、どんどんと声が遠くなる。
だけど、何故かその女性の温もりを、身体を、傍に感じる。まるで、抱かれている様な…
やがてその感覚が自分の体へと伝わる。いや、混ざり合っていく。
その心地良さに意識が遠くなる。夢の中で、眠りにつく。その女性の存在を感じながら。

「う…ううん…」
心地良い眠りを妨げたのは、鼻を突く臭いと、半身にだけ感じる水に浸っているという感覚だった。
その気持ち悪さを拭おうと、寝返りを打つが、身体の動きを『何か』が抑え付けた。
「んー?」
その何かは自分を覆うように囲んでいるため、途端に窮屈さを感じる。流石に、起きざるを得なかった。
(…あれ…確か…?)
眠る前の事を思い出そうとするが、頭がぼーっとして働かない。
ねむけ眼を擦り、体を起こそうとすると…
(…なんか、頭と身体が重い…)
妙に頭が後ろに引っ張られる感じがする。それに対して、体は前に引っ張られる。
(うぅっ、目が…)
眠気で視界がぼやけているのかと思ったのが、どうやらそうではなく、目に水が入っている様だ。
(泣いていたのか…?)
兎も角、目を再度擦って視覚を取り戻すと、目の前にその擦った手が見えた。
(…? 何だ、この手…? まるで…)
自分の手。間違いなく自分の意思で動いている手だったが、その手は自分の知る手ではなかった。
指の一本一本がやけに細く、また、肌の色も透き通るような綺麗なものになっていた。
まじまじと見ていると、その視線の先…今自分が寝ていた物が見えた。
(!?)
漸く自分の座っている場所を把握する。そこは、茶色い物体の中だった。まるで、虫の蛹のような…
「な、何だこ…れ…? って、え? あ、ああー、あ…あぁあ?」
思わず声を出す。その声にも、また違和感が生じた。高い。トーンが高い。自分の声じゃない。
「…!? え、えぇ! えぇえぇえ!?」
辺りを見回そうとして、視点を下に落とす。その視界に飛び込んできたそれは…
「む、胸が膨らんで…こ、これじゃまるで…!」
突き出た二つの膨らみは、明らかに男のそれではなかった。乳房、といった方が正しい。
ゆっくりと手で触れてみると、ふにっとした触り心地の良い感触と共に、触られている感覚も返ってきた。
「ま、まさか!?」
更に視線を落とすと、腿の半分位まで何かの液体で満たされていた。
いや、今はそれは問題じゃない。腿の付け根、臍の下。そこに…見慣れたものはなかった。
「そんな・・・ない、なくなってる・・・僕の・・・僕のアレ・・・」
余りの出来事に頭を抱えると、元の髪質よりサラリとした髪に触れる。それを辿ると、腰の辺りまで伸びている。
もう疑う余地は一切なかったが、それでも確認せずにはいられなかった。
恐る恐る、手を股間に伸ばす。少し薄くなった茂みの奥に手を入れても、突き出た物は何もなかった。
そして股の下まで指を入れ、ゆっくりと上げると、そこには肉の襞があり、更になぞると小さな膨らみに触れた。
「ひッ・・・!」
指で触れて擦り上げた瞬間、頭の中で火花が飛び散るような感覚。男ではどう転んでも得られない、快感。
もう、この状況を受け入れざるを得なかった。彼、いや、彼女、『クロウ』は。
「どうして・・・! なんで・・・!?」
それでも尚、受け入れられないでいると…
「ク、クロウなの?」
「!?」
声を、掛けられた。今の自分の姿を見ても、自分だと気付いてくれた人。
眠りにつく前に肌を触れ合わせた人…マリーンの声だった。

警戒し、暫く様子を見ることにしたマリーン。
だが、その女性は普通に寝起きのような行動を取っている。どうやらこちらには気付いていないようだ。
そしてすぐに今の状況を把握したらしく、突然うろたえ始めた。何故か自分の体に驚き、弄り始める。
その様子は今のマリーンにとって余りにも扇情的過ぎた。おっかなびっくり触るその初心な感じが、更にそそる。
押し倒そうと今にも飛び掛らんとするマリーンだったが、途中で彼女が発した言葉に、一つの答えを導く。
自分の蛹から一緒に出てきた、素性の解らない女性。
そして辺りに見当たらない、眠りにつく前一緒にいた人物の姿。
そして何より、今の行動…まるで自分の体に違和感しかないと言わんとするような、そんな行動。
答えは既に出ていた。そしてその答えを、女性に投げかけた。
「ク、クロウ…なの?」
「!?」
マリーンの声に反応する女性。直ぐにこちらを見つめると、泣きそうな顔をして殻から飛び出し、抱きつく。
「マッ…マリーン!!」
「わッ!?」
中の液体で濡れている事や、お互い裸な事などお構い無しに、その女性…クロウはマリーンの胸に飛び込んできた。
「そうだよ! 僕だよ! クロウだよ!! こんな体だけど、クロウだよ…!」
「う、うん…分かった、分かったから…」
マリーンに気付いて貰えた事が余程嬉しかったのか、ギュッと抱きしめてくるクロウ。
必然的に、クロウの胸が当たる。マリーンの胸と押し潰しあい、お互いの柔らかさが伝わってくる。
それに加え、クロウから香る仄かな女性の香り。そして何より、無防備なその姿。
その三つが、マリーンの中の男を刺激してやまない。
まっすぐこちらを見つめるクロウには、眼下にあるマリーンの身の異変には気付いていないようだった。
そんなマリーンの異変に気付かず、一頻り抱きつき終えて離れるクロウ。肩に手をかけ、見つめてくる。
「キミは…変わってないね。もしかして、キミの変化を僕が代わりに受けちゃったんだろうか…」
「…」
まっすぐこちらを見つめるクロウには、眼下にある異変は見えていないようだった。
「で、でもマリーン! もしかしたら体の変化だけで、フェロモンとかはその…」
「…クロウ…」
この現状を少しでも良い方向へと考えんと捲くし立てるクロウに対し、マリーンは重い口振りで語りかける。
「な、何?」
「これを、見て…」
そう言ってマリーンは自分の股間を指差す。つられて目線を落としたクロウは、目を見開いて驚愕する。
「なッ…マリーン、これって…!」
コクリと頷くだけのマリーン。クロウは、しげしげとマリーンに生えたペニスを見つめた。
「こ、これ…本当にマリーンの身体に…?」
やはりコクリと頷くだけのマリーン。不思議そうに見つめるクロウに、マリーンが言う。
「試しに扱いたら、ちゃんと射精した…すっごく、気持ち良かった…」
「そ、そう…」
様子のおかしいマリーンに漸く気付き、クロウが後ずさり始める。今になって、自分のおかれた状況を把握する。
…女になってしまった自分と、男の一物が生えてしまったマリーン。
お互い、眠る前に互いの身体をを感じ合い、繋がり、マリーンに自身を注ぎ込んだ。
その快感は今も思い出せる…ついさっきの事なのだから。それは自分だけじゃない、マリーンにとっても同じ事。
嫌な予感が、クロウの脳裏を過ぎる。そしてそれは、直ぐに現実のものとなった。
「ねぇクロウ? 『コレ』が何を欲しているか、分かるでしょう?」
「ヒッ…!」
ゆっくりと顔を上げるマリーン。

その顔は、飢えた野獣のような目付きをしながら、笑みを浮かべていた。

_/_/_/_/_/Chapter.EX-4_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/覚醒_/_/_/_/_/_/_/

「クロウ・・・」

マリーンがゆっくりと立ち上がり、近づいてくる。ペニスを隆起させながら、クロウを犯そうと迫りつつある。
直ぐにでも立ち上がって逃げたかったが、濡れた足が縺れ、座ったままじりじりと後ずさるしかなかった。
だが、ベッドに行く手を阻まれる。まるで諦めろといわんばかりに。
「マッ、マリーン…! とにかく落ち着いて…」
…返事はない。股間のソレが、ちょうど座っているクロウの目の高さにあって、否が応にも視界に入る。
一歩、また一歩と近づいてくる。ギシギシという床板の音だけが響き渡る。
脇に逃げればよかったのだが、その威圧感に体が動かない。
クロウの前に立ち塞がるマリーン。そそり立ったペニスが目の前でビクビクと脈打ち、思わず手で視界を塞ぐ。
「う、うゎ…」
射精した、と言っていたのは本当のようだ。あの臭いがプンプンする。
…不快な臭いのはずなのに、何故かイヤじゃない。
思わず頭を遠ざけようとしたが…二つの手が、クロウの頭に掴みかかり、逃がさないようしっかりと固定する。
「!?」
「ダメよクロウ・・・アナタにも、女の喜びを教えてあげるんだから・・・♥」
首を振って否定しようにも、全く動かない。マリーンが、ペニスを口に押し当ててくる。
「!!?? ンーッ!!」
顎に力を入れて硬く口を閉ざすが、それでも押し付けられ、口の周りにペニスの感触が纏わりつく。
必死に抵抗するクロウ。ダメだ、これを受け入れるなんて、最悪だ…! いくらマリーンのでもソレは出来ない!!
そうやって、拒み続けていたが…マリーンがニヤリと笑い、クロウに呟いた。
「んもぅ、あまり抵抗するのなら、『実力行使』するしかないじゃない」
(・・・え?)
マリーンはそう言うと、『何か』をした。その正体は掴めなかったが…
「ンンン…ぷはぁッ! …えッ…?」
「ウフフ・・・」
あれだけ頑なに開ける事を拒んでいた口が、いとも簡単に開いた。クロウは、キョトンとする他なかった。
勿論その隙を逃すはずもなく、マリーンはペニスをポカンと開いたクロウの口に押し込んだ。
「ムグゥッ…!?」
「あぁ・・・クロウの口の中・・・温かぁい・・・♥」
挿入れられてしまった…いともあっさりと。マリーンのペニスが、口の中で暴れるようにヒクつく。
「ムーッ!! ムグゥーッ!!」
慌てて引き抜こうとするが、マリーンの両手がそれを許さない。
両手でマリーンの手を引き離そうとしたり、殴ったりするも、一切動じないマリーン。
それならばと、歯を立ててこちらも実力行使に打って出ようとするも、何故か出来なかった。
「動くよ・・・クロウ、ちゃんと舌を使って、私を気持ちよくしてね♥」
「ンーッ!!??」
首を振ってイヤだと伝えるも、それより先にマリーンが腰を振り始めた。
「ンッ…! グッ…グゥッ…!!」
「良いわクロウ・・・スッゴく、良い・・・!」
マリーンが腰を振るたび、喉の奥にペニスが打ち付けられる。
ただでさえ喉に異物が押し当てられているというのに、更にそれが男性器とあっては、吐き気が倍以上に込み上げる。
(イヤだ・・・止めてくれ・・・気持ち悪い・・・目を覚ましてくれ、マリーン・・・)
涙目になって訴えるも、ペニスの快感にすっかり夢中になっている彼女の目には、届かなかった。
する気はないのに、舌が勝手に肉棒を舐め回す。口の中にしょっぱさを感じ、気持ち悪さがより一層増す。
「はぁッ、はぁッ! クロウ、クロウ・・・!!」
「ウッ・・・グッ・・・」
口の中に唾液以外の粘液を感じる。喉の奥に絡みつき、息が苦しくなる。
「うぅッ! でッ、出る・・・出ちゃう! あぁッ!!」
「!? ンンンーーーッッッ!!!!」
マリーンは腰を振るのをやめ、クロウの頭を更に押さえ込んできた。必死に抵抗したが、遅かった。
次の瞬間、喉の奥に熱いモノが注がれる感覚。それは直ぐに口の中一杯に広がり、キツい臭いが鼻へと抜ける。
ドクドクと、かなりの量を吐き出され、溢れ出したその一部は呑み込まざるをえなかった。
「あ・・・あぁ・・・」
出す物を出し尽くしてたマリーンは、フラフラと後ずさっていった。漸く解放されたクロウだったが…
フェラを強要され、挙句たっぷりと精液を口に出された事に茫然自失となってしまい、直ぐには動けなかった。
俯き、口からだらりと白い粘液が零れ落ちる。暫くすると喉に引っ掛かったのか、咳き込み始めた。
「ゲホッ…ゲホッ!! う…うえぇぇ…」
涙声の混じる悲痛な嘔吐。どんなに吐こうとしても、絡みついた精液は取れなかった。
「ひ、ヒドイ…どうして、どうしてこんな事…!」
彼女を信じた自分が馬鹿だったのか? それとも出会った時点で、既にこうなる運命だったのか?
余りの出来事に怒りと悲しみが湧き起こり、スクッと立ち上がるクロウ。
「マリッ…! グッ… 目を覚ませ! 君が望んでいたのはこんな…こんな事だったのか!?」
声を出そうとして、喉の奥の粘液に阻害される。それを拭い去るように、口を腕で擦り、声を張り上げる。
「答えてよ、マリーン…!」
肩を震わせるクロウ。こんな時だからこそ、自分がしっかりしなければ、全てが台無しになる。
ジッとマリーンの答えを待つクロウ。口の中の気持ち悪さも、今だけは気にならない。
が、当のマリーンは、フラフラとしながら、俯いたまま。 …まるで、自分のペニスを見つめるように。
暫く待っていると、漸くマリーンの動きが止まり、語りだした。
「わ、私・・・は・・・」
か細い声で、マリーンが喋る。
「私は・・・皇帝であり・・・女王であり・・・」
「そうだ! キミはそんな欲望に屈しない存在なんだろう!」
マリーンが自分を取り戻そうと努力している。それを応援しようと、声を掛けたが…
「そう・・・私は・・・王・・・全ての存在は、私の前に平伏し、畏れ、敬う」
「…?」
何か、おかしい。確かにそうあるべきかもしれないが…何か、違う。今求めている答えじゃない。
「そして・・・私はその者に命令し、使役し、扱う。全ての存在は、私の・・・しもべ」
「お、おい! マリーン!?」
慌てて歩み寄ろうとしたが…何故か足が動かない。寧ろ逆に、ベッドへと腰掛けてしまった。
「え…?」
「フ・・・フフ・・・ウフフ・・・」
マリーンが静かに笑いだした。その声に、クロウは恐怖を覚える。まるで、悪魔のような…
俯いていたマリーンがゆっくりと体を起こし、こちらを見つめる。彼女の赤い瞳が、真紅に染まっていた。
「クロウ・・・私は、大丈夫。全てを理解した。私は『進化』した」
「あ…あぁあ…」
クロウは、絶望した。もう目の前にいるのは…マリーンじゃない…
今のマリーンには、眠る前にあった、優しさや可愛らしさは微塵も感じられなかった。

クロウの口にたっぷりと射精したマリーンは、その快感に酔いしれていた。
だが一頻り出し切ると、急に罪悪感を感じ、クロウから手を離して呻きながら後ずさる。
「あ・・・あぁ・・・」
自分は、なんて事をしてしまったんだ…幾ら今は女になっているとはいえ、彼女…彼はクロウだぞ?
性別の概念がぐちゃぐちゃで、訳が分からない。自分は男? 女? 彼女は?
そんな風にうろたえていると、不意にある事が気に掛かり始めた。
あんなに抵抗していたクロウが、自ら口を開けた。
あんなに嫌がっていたクロウが、自ら舌を使い、舐めまわした。
いや、違う、あれは、あの行動は…マリーンは、頭の中に覚えのない記憶が混じっているのに気付いた。
…多分、身体の方は既に知っていたのだろう。だからこそ、解らなくともそれなりに行使できた。
だが今は違う。完全に全てを理解できる。この身体の持つ全てが、手に取るように解る。
しかも、それだけじゃない。変質している…いや、進化と言うべきか。
その進化は、あまりにも魅力的で…万物が、喉から手が出るほど欲しいと願うであろう、力。
それに気付いたマリーンの中で、何かが音をたてて崩れ落ちていった。理性が、本能に侵食される。
先程からクロウが何かを捲くし立てている。聞こえてはいたが、聞くつもりはなかった。
むしろ目の前の『メス』は、丁度良い実験台だ。新たなこの力の…
それに、まだまだ物足りない。やはり、挿入れなければ満足できない。
あぁそうだ。そうしよう。なんて事はない。息をするように達成できるさ、今の自分なら…
完全に『覚醒』したマリーンは、ゆっくりと、その力を解放しながら、姿勢をあげた。
そして…声に出す。新たに生まれ変わった、自分自身を。目の前の女に、世界に向けて。
こちらを静止しようとする彼女を止める事なんて、造作もなかった。ベッドに座らせる。
何が起こったのか分からない様子を見ていると、ゾクゾクする。こんなのはまだほんの序の口。
これからもっと良い事をしてあげる…その妄想だけで更にゾクッとするマリーン。
再度見やる。こちらを見る彼女の顔は、怯え、恐怖していた。その顔、良い…実に、良い。
「クロウ・・・私は、大丈夫。全てを理解した。私は、『進化』した」
「あ…あぁあ…」
絶望が確信となり、更に引き攣った顔をするクロウ。折角の美人が台無しだ。

でもこの顔が、この後どれ程緩むのか…見物だ…

_/_/_/_/_/Chapter.EX-5_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/調教_/_/_/_/_/_/_/

立ち上がろうとするも、足が動かない。

まるで操られているかのようで…立てないのではなく、立とうとしない、という感じだった。
自分が、立つ事を拒んでいる? いや、立ち上がろうという考えが、逆転している?
未知の感覚に、動かそうとすれば動かそうとするほど体は言う事を聞かない。
何にせよ、クロウの体は自分の思い通りに動かない、人形の様な状況に陥っていた。
四苦八苦するクロウだったが、ゾッとするような威圧感に、恐る恐る顔を上げる。
さっきと同じく、マリーンがゆっくりと近づいてくる。ま、まだ足りないのか!?
辛うじて動く上半身で、マリーンを押しのけようとする。だが、近づかれるにつれ勝手に腕が引っ込む。
抵抗空しく、あっさりと目の前に立たれる。またマリーンのペニスが目線の先に見える。もう、イヤだ…!
だがマリーンは、クロウの前で佇み、先程の様にいきなり何かをしようとはせず、ゆっくりと手を伸ばしてきた。
「ヒッ…!」
恐怖に怯えるクロウだったが、その手は…クロウの脇を抜けベッドの上に鎮座していた蛹へと伸ばされた。
そして…マリーンはそれを無言で放り投げた。その表情には未練は一切なかった。
中に残っていた液体を撒き散らしながら、宙を舞ったマリーンの蛹は、床に当たって粉々に砕ける。
その様子はまるで、もう…過去のマリーンはもう戻ってこない、そんな風に見て取れた。
「マ、マリーン…」
砕け散った蛹を見つめ、マリーンに向きなおすクロウ。マリーンは見向きもせず、クロウを見つめてきた。
「さぁクロウ、ベッドが空いたわ…アナタとワタシが愛し合った場所よ」
「…クッ!」
安請け合いだった…とは言わないが、今にしてみれば簡単に信じた自分が馬鹿だった。
「愛? 今の君に、愛について語る資格は… !?」
顔を背け、マリーンに悪態をつくと、突然頭に触れられ、そのまま指でこちらの髪をすいてきた。
「しっとりと濡れたクロウの髪・・・綺麗よ。怒った顔も、美しいわ・・・」
「なッ…!」
急に自分を褒め称えるマリーンに、思わずドキッとする。だ、騙されるな…!
「そッ、そんなの僕には…男の僕には関係ない!」
「へぇ…こんなのがついているのに、男だって言い張るの?」
「ひゃうッ!?」
そういってマリーンは大きく膨らんだ胸を撫で回してきた。今までにない感覚に、思わず声を上げる。
出した声に思わず口に手をあてるクロウ。い、今のが自分の声…!?
「それに…こっちだって…」
「あ、あぁあ…や、やめッ…!」
マリーンが胸を撫でていた手を臍へと移し、そのまま股間の茂みへと動かそうとしてきた。
それに対してクロウは両手でマリーンの腕を掴み、抵抗したが…止まる事はなかった。力の差は、歴然だった。
「あんなにも私を突き上げていたアレは、どこにあるの?」
「だッ、ダメッ…それ以上は…!」
マリーンの言葉が、クロウにさっき見下ろした光景や感覚を思い出させる。
自分で触れただけでも頭が真っ白になりそうだったのに、他人の手で、それもマリーンの手で触れられたら…!
そう思うと、思わず身震いする。それが恐怖からなのか、期待からなのかは分からなかった。
だがそんなクロウに対しマリーンは、焦らすように触れるか触れないかの位置で指を動かす。
もうそこには無いのに、ペニスを扱く動きを見せ付ける。その様子がクロウに更に喪失感を与え、クロウは身悶えした。
もどかしさで股間が熱くなる。じれったさに、腿を擦り合わせて解消しようとする。
けれど幾ら動かしても、もう腿に触れる己の一部はなく、ただただ余計に興奮が高まるだけだった。
「・・・はッ!」
気付けば、マリーンは既に遠巻きから自分の様子をニヤニヤしながら見つめていた。
体をくねらせ、自ら欲してやまないそのクロウの様子を、マリーンは食い入るように見つめていた。
だ、ダメだ! これ以上は!! これ以上、この身体の事を知ってしまったら、もう、僕は、僕は・・・!!
そんなクロウの反応も、前菜を味わうかのごとく見つめるマリーン。その目は、男の欲望に満ちた目だった。
「どうしたのクロウ? そんなに触って欲しいの? それとももう…挿入れて貰いたいの?」
そういって、自身のペニスを撫で、見せ付けるマリーン。
「ち、違う! ぼ、僕は男だ! そ、そんなこと思ってない!!」
「そんな事言うわりには、アナタの目はずっと『コレ』を見ているわよ?」
「!」
目を背けるが、今更遅い。マリーンの言うとおり、目を閉じてもアレが目に焼きついて消えない。
(違う…! これはマリーンにあんなのが付いている事が気になって、それで…!)
心の中で必死に取り繕うクロウだったが、それすらもマリーンは許さなかった。
「クロウ。アナタがどんなに否定しても、アナタはもう男には戻れない。そのカラダが、今のアナタ自身なのよ」
「違うッ! 違うッ!! こんなの…こんな、体…!!」
声を張り上げ否定する。涙が出そうになりかけ、グッと堪える…が、涙腺は脆くも決壊し、涙が溢れ出てきた。
そんなクロウの様子を見ていたマリーンだったが、もういいかといった表情でクロウに近づき、そして…
「!?!?」
キスを、した。

甘く、蕩けるような濃密なキス。
クロウの口に残る精液を舐め尽くす様に、舌を動かしてくる。
気持ちを抑えこむ為に力を込めたクロウの拳が、徐々に開かれる。涙を浮かべた目が、虚ろになる。
変わり果てる前のマリーンのキスとは、比べ物にならない。最早凶器のようなキスだった。
そんなキスで、クロウがすっかり惚けるのを確認すると、顔を離すマリーン。
お互いの唾液が混じって出来た糸を引きながら、マリーンがペロリとそれを舐め取る。
その姿は実に妖艶であったが、やはり存在を主張するモノがその姿にそぐわない。
「ぁ…」
「その顔…とっても良いわ、クロウ」
名残惜しそうにこちらを見つめるクロウだったが、その言葉で再び目に生気を宿す。
「クロウ、私の精液、美味しかった?」
「!? そッ…! そんな訳ないだろう!!」
ハッとして口に手を当てた後、怒鳴り散らす。意識させられると、再び口の中に広がる味で吐き気を催す。
「ねぇクロウ、アナタの変化を考えると、こうは思わない? コレ、もしかしたらアナタの、かもって」
「なッ…!? 何を…言って…?」
まじまじと見たくはなかったが、思わず目をやる。未だに興奮冷めやらぬマリーンに同調するように蠢くペニス。
「どうしたの? もしかして、自分のだと解って愛しく感じた?」
また目が離せなくなっているクロウに語りかけると、さっきと同じ様にハッと気付いて目を逸らした。
「そ、そんな…そんな事、ある訳ない!」
自分のなんて、嫌というほど見たけれど、この目線で見るなんて出来るはずもない。
ましてや仮に自分のモノだと解ったとしても、それを認めたくない…
だって、それを認めたら、今、口の中にある精液は…!
「う、うぅ…! …ゲェェッ!!」
「あらあら、そんなに男だった時の自分は嫌い? それなら、今の状況は正に願ったり叶ったりじゃない」
「…誰も…そんな事…! …言ってない!!」
畳み掛けるマリーンの言葉攻めに、クロウの目は次第に鈍い光になっていった。
…マリーンは楽しんでいる。自分を貶めて、その反応を見て楽しんでいる。クソッ!
クロウの中で怒りが憎しみに、憎しみが殺意に変わっていく。クロウは、マリーンを信じるのをやめた。
そんな様子を見て取り、マリーンは次の段階に進める事にした。
ここから…コレからが面白くなる。そう考えると、震えが止まらない。

「クロウ、諦めなさい。そして、そのカラダを受け入れなさい」
「…イヤだッ!」
予想通りの返答に、マリーンは口元を緩めた。それ位抵抗してくれた方が、堕ちゆく姿を楽しめる。
マリーンが、クロウに向けてすうっと手を伸ばした。
「…クロウ」
「ハッ、ハイ! …!」
マリーンに呼ばれ、思わず返事をしてしまった。 …無意識のうちに。
クロウは直ぐに悟った。マズい、マリーンには『コレ』がある…他者を虜にする、力が。
(…? いや、待てよ…?)
そうだ、思い出した。マリーンの力は確かオスを獲得するための力で、同性には効かない筈…
認めたくはないが、今は女…効果がないはずなのに、何故…?
それとも、男の心に影響があるのか? クロウの疑問は絶えなかったが…
「…今すぐにでもアナタを犯し尽くしたい所だけど、猶予をあげるわ…まずは存分に、その体の事を知りなさい」
「!?」
その言葉を紡ぐマリーンの様子が、今までと違う。何かをしている、何かを…
考えるのをやめ、警戒して身を引いたクロウだったが…突然、自分の胸が何者かに触れられた。
「あぅッ! …な、何…!? なッ…!!」
何者か、ではなかった。自分だ。自分で自分の胸を揉んでいる。自分の意思とは無関係に、体を弄繰り回している。
「なッ、何で…! んぁッ!」
その手の動きは、正にマリーンの胸を揉んでいた時と同じ動きだ。でも今その手が揉みしだくのは、自分の乳房。
そして、確かに手からは柔らかい乳房の感触。時々、乳首に触れ、焦らすように快感を与えるのも一緒だ。
でも…自分はそんな事しようとは思っていない! 手が、手が勝手に…
「マ、マリーン・・・まさか・・・! あぅんっ!!」
「フフッ・・・クロウ、どう? その膨らみの揉み応えは? やっぱり私くらいないと物足りない?」
そう言ってマリーンは身を乗り出し、胸を強調する様に見せ付ける。
そんなマリーンの胸に、やはり勝手に動く手が、その胸へと飛び込んでいった。
「アンッ♥ クロウったらがっつき過ぎ・・・♥」
「そっ、それはキミが・・・! ンくっ・・・!!」
間違いない。男だろうと女だろうと関係ない。マリーンは僕を操っている。クィーンの真の力に、酔いしれている…!
だが、原因が分かったところで止めようがなかった。あの指輪さえあればどうにかなるかもしれないが…
「ンフッ・・・クロウ、手伝ってあげる・・・♥」
「な、何を・・・ヒャアァン!?」
マリーンは…マリーンはあろう事かクロウの胸に吸い付いた。乳首を舌で転がしながら、吸ってくる。
「マリッ・・・! やッ・・・やめ・・・!」
チュパチュパと、マリーンは尚もしゃぶりついてくる。その不思議な感覚に、クロウは翻弄される。
抵抗しようにも、手は勝手に動き、マリーンの舌使いが力を抜けさせていく。
「ンッ・・・うぁ・・・ふぁ・・・!」
こんなにも体が昂っているのに、猛るモノがない。
その代わりにジンジンと、お腹の中に出来た未知の器官が反応し、クロウを否が応でも女にしようとする。
「あ・・・あぁ・・・あぁあ・・・」
「あら? どうしたのクロウ?」
マリーンは吸うのをやめ、クロウに話しかけてきた。
すっかり出来上がった体に反応する『何か』が、クロウを狂わせる。
内腿が熱い。何かが大量に溢れている。無い筈のペニスの感覚が、クロウを更に堕としめようとする。
「言って御覧なさい? どうしたいの?」
「うぅっ・・・熱い・・・なのに、切ないよぉ・・・」
果たして操られていたからなのか、自分の意思なのかは分からなかったが、自然と手が股間へと送られていた。
だけど、触れようとしても、触れられない。さっきのマリーンのように、自分の手が焦らしてくる。
手が届かない事が、こんなにもじれったく感じる。手を伸ばしても、どうしてもそこに触れられない。
「ほら、ちゃんと言わなきゃ駄目よ? 何をどうしたいのか、私に言いなさい。じゃなきゃ、何時までもお預けよ?」
「うぅ・・・くぅッ・・・!」
クロウの中で理性と本能がぶつかり合う。そこに手を出したら絶対にもう、戻れなくなる…
けれど、もう我慢出来ない…! 身体の疼きが、理性の牙城を徐々に崩していく。
「あ、あぁ・・・ぼ、僕・・・僕はぁ・・・!」
「そうじゃないでしょう、クロウ?」
「ひゃうッ!」
そういってマリーンは、クロウの乳首をピン、と指で叩いた。痛いはずなのに、痺れた頭がそれを快感へと変換する。
「ぼ・・・わ・・・私・・・」
「そうよクロウ・・・さぁ、言いなさい」
マリーンは命令するように語り掛けるが、そこには『力』を込めなかった。
あくまで、クロウ自身が自分の意思で欲するのを、聞きたかったからだ。
…尤も、目の前で瞳を潤ませながらこちらを見つめる『女』は、直ぐにでも言いそうだったが。
その顔を見たマリーンは、舌なめずりをして、ほくそ笑んだ。

(ダメだ・・・これ以上は、ダメだ・・・!)
唯一残る理性がそう自身に告げる。これ以上この快楽に溺れれば、マリーンの思う壺だ。
だけど…分かっていても、抗えないその気持ち良さは、確実にクロウを蝕んでいる。
たかだか胸が大きくなっただけだというのに、何故こんなにも頭が痺れるんだ…!
男にも付いているのに、何故こんなにもピンとたった乳首から、快感が生まれるんだ…!
ついさっきまで男だったクロウにとって、余りにも刺激的過ぎるその感覚は、麻薬にも似た高揚感を与え、虜にする。
快感が全身を駆け巡ると、ペニスのあった場所がジンジンと疼く。愛液がどんどん溢れ出てくる。
今の自分の状況に、喘ぎ腰を振るマリーンの姿が重なり、必然的に自分に何が起こっているのか分かってしまう。
あぁ、今僕は、あの時のマリーンのように、女として欲情しているんだ…
だから…入れたい。挿入れたい。突くのではなく、貫かれたい。
欲しい。この疼きを満たす、アレが。目の前のマリーンが持っている、アレを。
それが自分のかどうかなんて、もうどうでもいい。体が…心がアレを欲している。
そう、アレ…男の象徴…雄雄しく猛る、ペニスが。
だけどマリーンは、それを見せつけるだけで、まだ焦らしてくる。
既に手は股間に伸ばされ、この疼きを解放するために指を入れようと試みているが…
何故か寸での所で手が止まる。幾らやっても、肝心なところで指が止まる。
何でもいいから咥えこもうとひくつく肉襞の動きだけが感じられる。それは間違いなく、自分の身体の一部。
自分ではどうする事も出来ないと解り、クロウは顔を見上げ、マリーンの方を見つめた。
もうクロウに残された道は一つしかない。茨の…いや、途切れた道だと分かっていても、行くしかない。
(あぁ・・・)
最後の理性が、声にならない声を上げて、消え去った。クロウは、決めた…と言うより、『諦めた』。
マリーンがこちらを見つめる。自分の恥ずかしい姿を見ている。見られている。
そして彼女は…待っている。自分が堕ちるのを。快楽に溺れた、淫乱なメスとなるのを。
物欲しそうな顔でマリーンを見るクロウには、既に怒りの感情はなく、ただただ自分の持つものを欲する表情だった。
「ん? どうしたのクロウ? 言って御覧なさい」
マリーンの声が、悪魔の囁きに聞こえる。答えたら、もう終わり。
だけどもういい。もう、言おう。言って、この火照る身体を慰めて貰おう。
「わ・・・わた・・・わたしのぉ・・・」
「うんうん」
「ワタシの・・・ここ、に・・・おっ、おマンコにッ・・・! マリーンのを・・・くだ・・・さ・・・い・・・」
「ハイ♪ よく言えました」

…こうして、『クロウ』はいなくなった。

_/_/_/_/_/Chapter.EX-6_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/陵辱_/_/_/_/_/_/_/

待ち侘びていた言葉を遂に言い切ったクロウに、マリーンは心躍らせた。

(あぁ・・・この感じ・・・癖になりそう・・・)
クロウが『堕ちた』。一人の人間が、こうもあっさりと『堕ちた』。
目の前の女は、もう身も心も既に自分の『モノ』だ。
マリーンならずとも、この状況を自分の思うままに出来るとあれば、酔いしれるだろう。
その余りに危険な果実に、マリーンは手を出してしまった。もう、元には戻れない。 …更々戻る気もなかったが。
「は・・・はやく・・・早く・・・!」
「んもぅ、そんなに我慢できないの? この…ヘ・ン・タ・イ♥」
陶酔していたマリーンに、クロウが縋り付いてねだる。まるで犬の様だ。
とはいえ、流石にこれ以上待たせると『壊れ』かねないので、遊んであげる事にした。
「ンフ…それじゃまずは自分で触って御覧なさい。でも、奥はダメよ」
そう言うとマリーンは何かをした。その動きにハッとしたクロウは、恐る恐る手を股間へと伸ばす。
あんなに触る事を拒み続けていた手が、あっさりと茂みに触れる。
「あ・・・あ・・・」
そのままスルスルと、指を下の方へ滑らす。すっかり濡れほそぼった股間が、指を濡らす。
引っ掻き回したいほど触りたかったはずだが、いざ許されると躊躇してしまう。
恐る恐る指で触れてみるが、少し触れただけでも快感が全身を駆け巡り、ビクンと反応してしまう。
その様子を見かねたマリーンが、ズイッと手を伸ばし、そして…躊躇なく指を挿入した。
「・・・ッ! かはッ・・・!!」
「あらあら、もうイッちゃった?」
身体を反らし、呼吸もままならないクロウ。
そんなクロウを休ませることなく、マリーンはクロウの中を掻き乱した。
「あぐッ・・・あッ・・・ひんッ・・・!」
「ほら、後は自分でやりなさい」
マリーンが指を抜くと、即座にクロウは指を挿入れ、快感を貪るように指を動し始めた。
「はぁッ、コレ・・・コレ・・・ンッ・・・!」
既にマリーンの呪縛なくとも、クロウは自らの意志で己を弄り、その快楽に身を委ねていた。
「ヒャゥッ!」
小指にも満たない大きさになったクロウのアレが、元の何倍もの快感を全身に送る。
一瞬手の動きが止まってしまうほどだったが、直ぐに小さな蕾を包む皮を捲り、触り始めた。
「あぅッ! あぁんッ! スゴい、スゴいよぉ・・・!」
涎をたらし、よがり狂う目の前の女には、既に元の面影は感じられなかった。
その様子を嬉しそうに見ていたマリーンだったが…そろそろ、自分自身の昂りも解消したかった。
まぁ、恐らくクロウは異変に気付いて、直ぐに欲してくる筈だ。
案の定、クロウが徐々に指の動きを速めたり、勢いをつけたりしているが…その指は。
「あぁ・・・なんで・・・? なんで・・・!?」
どうしても指が奥へと入らない。先程と同様、指がそれ以上入る事を拒んでいる。
「あ・・・あ・・・」
どうしていいかわからず、再度縋るような目でマリーンを見つめる。
「ゴメンねぇクロウ。だってアナタ、そのままじゃ折角の『初めて』を何の迷いもなく失いそうなんだもの」
「う・・・え・・・? はじ・・・?」
初めて。その言葉が意味するもの。頭は痺れ、何も考えられない状態でも、その言葉は、理解できた。
ただでさえ火照った顔が、更に赤みを増す。そうだ…この身体は、とても新しくて…
クロウが戸惑う。この指の先にあるものを感じ、戸惑っている。伸ばした指が、プルプルと震えていた。
そんなクロウに、マリーンが飛びついた。ベッドに押し倒し、抱きついてくる。
「やん、クロウってばかわいい♥ もう絶対、離さないんだから」
「マリー・・・ン・・・?」
マリーンの香り。芳しい香り。何故だか、心が落ち着く。
少し落ち着きを取り戻したのも束の間、抱きついていたマリーンが今度は覆い被さるように体勢を変えた。
「フフ・・・クロウ・・・それじゃアナタを、アナタの全てを頂くわ」
「あ・・・あぁ・・・あぁあ・・・」
冷静さを取り戻したのがまずかった。舌なめずりするマリーンは、まさに男の顔をしていた。
犯される。女のマリーンに、男の僕が、犯される。再び実感する恐怖に、クロウは首を振って伝えた。
「い・・・イヤ・・・いやぁ・・・! 私はぁ・・・女じゃ・・・!」
だが、両手を丸め、胸の前に置いて泣きながら懇願する仕草は、完全に女性そのものだった。
クロウのその反応は、かえってマリーンを刺激し、もうマリーン自身も己を抑える事は出来なかった。
「いくよ、クロウ・・・」
「ヒィ・・・!」
願いも空しく、マリーンのペニスが押し当てられ、そして…
「ひぐッ・・・! あ、ぐッ・・・!!」
「んッ・・・入ったぁ♥」
ズブズブと、身体の中に異物が入り込む感覚。溢れ出す愛液のせいで、ソレはすんなりと入り込んできた。
「ウフフ・・・クロウの中、とっても温かい・・・」
久しぶりの感覚に、マリーンはうっとりとしている。
だが、クロウは身が引き裂かれそうな痛みに襲われ、気持ちよさを感じるどころではなかった。
「は、はい、入って・・・ぬ、抜いて! 抜いてぇ・・・!!」
堪らず声を上げるクロウ。けれどやはり、マリーンは聞いてはおらず、挙句…
「ダ・メ…よッ!!」
「!」
その言葉で、マリーンは勢いよくペニスを押し入れた。何かが切れる音と共に血が、アソコから垂れた。
「いッ・・・いやぁぁぁぁぁーーーーーッ!!」
悲鳴とも嬌声ともつかない叫びを上げるクロウ。クロウの中で、何かが壊れた。
「いだぃいッ!! 抜いてぇ、抜いてぇえぇー!!」
必死に叫ぶクロウ。だがそんなクロウの姿も、マリーンにとっては己の欲求を満たす以外の何者でもなかった。
「あはぁ・・・♥ やっぱりキツい・・・でも思ったとおり、最高・・・♥」
「あッ・・・かッ・・・」
今まで味わった事のない、強烈な痛みがクロウを襲い続ける。
余りの痛みに、声にならない声が出る。考える事も出来ない。耐える事も、出来ない。
このまま失神してしまいたい…そう願ったが、マリーンの力なのか、意識は辛うじて保ってしまっている。
「あ・・・あぁ・・・中に・・・中に・・・」
「どう? 『挿入れられる』気分は? 痛い? でも、直ぐに気持ちよくなる・・・」
「うぅ・・・うぁぁ・・・! こんな、のって・・・こんなのって・・・!!」
痛みで快楽の渦中から意識を取り戻したクロウだったが、それは結局事実を思い知るだけとなった。
男としての尊厳をズタズタに引き裂かれ、クロウは泣き出してしまった。
有り得ない感覚。ズキズキ痛むお腹の中に、今だマリーンの太いペニスが入っているのを感じる。
もう自分は男じゃない。男に入れられる存在なのだと、身体が告げる。
「往生際が悪いわね…なら、直ぐに認めさせてあげる」
マリーンはそう言うと、クロウの体を抱き上げた。そして、自分の下半身に目線が移される。
「あ・・・ああ・・・!」
見てしまった。視覚として捉えてしまった。全容が見えなかったのが、せめてもの救いか。
入っている。マリーンのペニスが、自分の中に入り込んでいる。その様子をまざまざと見せ付けられている。
「どうクロウ? あの時と逆の立場でこの光景を見るのは?」
「そんな・・・そんな・・・」
思わず手で顔を覆うが、こんな状況でも見たいという欲求が、指に隙間を作り出す。
そんなクロウの様子を見たマリーンは、クロウをベッドに寝かせて腰を引いた。ぬめりを持ったペニスが見える。
それと同時に、中で蠢くのが分かる。あのペニスは自分から溢れ出た愛液で濡れているんだ…
クロウは徐々に、痛みを感じなくなってきていた。痛みが快感へと置き換わりつつあった。
「・・・そらッ!」
「ふッ・・・! あぐッ・・・!!」
そんなクロウに対し、腰を引いたマリーンが、再度押し込んできた。マリーンのペニスが、クロウの膣壁を擦る。
「ほらほらッ! 快楽に身を任せなさい!」
「あぁッ! うぁあッ!」
腰を振って、クロウを突き上げるマリーン。一気に快感の波が押し寄せ、クロウを飲み込む。
パンパンと、いやらしい音が部屋に響き渡る。その音は、自分ではなくマリーンの腰使いに合わせて響いている。
「んッ・・・しっかり締め付けて、離さないじゃない・・・やっぱりこのペニスはクロウの・・・」
「いやぁ! あああっ!!」
再び意識させられるのを嫌がったのか、クロウが更に嬌声を上げる。
皮肉にもその声がクロウ自身をより昂らせる。自分の声に、興奮する自分がいる…
嫌がるクロウの意志とは関係なく、身体は快感を欲して更に昂る。
マリーンも、何百年振りかの『男』としてのセックスに、満足していた。
(これだ・・・これだよ! この征服感! わ・・・俺が求めていたのは、コレだ!)
マリーンの中で湧き起こる感情が、益々マリーンを狂わせる。忘れかけていた荒々しい感情が、甦る。
「クロウ・・・自分の『モノ』に突かれる気分はどう?」
「あんッ! あぁんッ!」
クロウを更に辱めようと呟いたマリーンだったが、余りの気持ち良さの前に、クロウは聞く耳を持っていなかった。
マリーンは舌打ちをし、クロウの腕を掴んで更に奥深くへと侵入させた。
「ホラッ! この程度で『壊れ』ないでよねッ!」
「んあぁッ!」
ひたすらよがり狂うクロウを呼び戻すように、マリーンは腰を動かし続けた。
暫くして、腕を持っていた手を、クロウの腰へと回す。そして抱き上げる形で持ち上げた。
「!?」
いくら女になったとはいえ、一人の女性に軽々と持ち上げられた事に、驚くクロウ。
「フフッ・・・こっちも使わなきゃあね・・・♥」
「!!」
クロウを抱いたまま、マリーンは腰を突き上げるのを再開する。
「あぁんッ! 乳首が擦れてッ・・・!」
「ひぐッ・・・! ふぁッ・・・!」
お互い、抱き合ったまま上下に揺れる。二人の胸が、動くたびにペチペチとぶつかり合う。
そしてたまに、乳首同士が触れ合うと、その度に二人から嬌声が上がる。
「どうクロウ? 普通のセックスじゃ、味わえない感覚よ?」
「・・・くぅッ・・・!」
目を閉じ、必死に耐えるクロウだったが、マリーンの言うとおりこの快感は癖になりそうだった。
「さて、と・・・えいっ♥」
「!」
身体を離し、体勢を変えたマリーンが、目一杯腰を突き上げた。
「あ・・・あ・・・」
「感じる? アナタの中の『女』を、感じる?」
根元まで入り込んだペニスが、奥の奥まで入り込み、クロウの…子宮を叩いた。
「今からこの中に沢山注いであげるから、楽しみにしてね、クロウ♪」
「や・・・いやぁ・・・」
ただでさえ絶望に打ちひしがれているクロウに、最後の一言が告げられた。
せめて、それだけは…と、抵抗しようとするが、もうそんな気力は何処にも残っていなかった。
マリーンは一旦クロウからペニスを引き抜いた。そしてクロウをベッドにうつ伏せにさせる。
「クロウ、アナタの中にワタシを注ぎ込めば、アナタは完全にワタシの『モノ』になる・・・フフフ」
「・・・」
マリーンの言葉に、恐怖すら覚えなくなってきた。クロウはただ、受身のまま待つだけだった。
「! くあぁッ・・・!」
再び、ペニスを挿入して、クロウを犯す。
突き上げられるたび、重力に引かれたクロウの乳房が揺れ動く。
二人の昂りは既に、最高潮を迎えていた。クロウは女として、マリーンは男として。
「ンッ・・・! くるッ・・・!!」
「ふあぁッ! ひああぁッ!!」
嬌声と水音が響き渡る。マリーンは腰の動きを更に速め、一気に絶頂へと突っ走った。
「で、出るッ・・・! クロウ・・・クロウッ!」
「あぁッ! ああぁッ! んあぁーーッ!!!!」
マリーンが腰を振るのをやめ、クロウに深くペニスを突き立てる。
その直後、ビュクビュクとクロウの中に熱く滾る精液が注ぎ込まれた。
三度目の射精でもその量は凄まじく、クロウの子宮を存分に満たしていった。
「「あ・・・あぁ・・・」」
マリーンもクロウも、その快感に酔いしれた。その間も、ビクビクと動くペニスから、漏れ出る精液。
マリーンはゆっくりとペニスを引き抜いた。白い粘液が、今まで以上にこびり付いている。
そしてクロウの膣からは、大量の精液が溢れ出てきていた。まるでクロウも射精したかのようだ。
暫く、呼吸を整える仕草でその場に立ち尽くすマリーン。一方クロウは、ベッドにへたり込んで、動かない。
「フ・・・フフ・・・」
小さな笑い声。
「ウフフ・・・フフフ・・・!」
徐々に大きくなる。
「・・・アーッハッハッハッハッハッ!」
顔に手をあて、高笑いをするマリーン。
「コレ、スゴい・・・もう、ワタシには全てが見える」
悪魔のような笑みで、一人ごちるマリーン。その目は、邪悪でもあり、純粋でもあった。
今だ興奮冷めやらぬ身体が、別の事で疼く。快感を超えるそれは、あっという間にマリーンを支配する。
「あぁ・・・ワタシは女王、ワタシは皇帝・・・全ての頂点に立つ、女帝」
余りの嬉しさに、小躍りし始めるマリーン。優しそうな雰囲気とは裏腹に、全てを見下したような気配が漂う。
そんな気分を良くしていたマリーンの耳に、呻き声が入った。
「う、うぅ…」
女性の快楽に溺れていたクロウが、漸く意識を取り戻したようだ。
ゆっくりと身体を持ち上げる。その股間からは、まだ精液が溢れ続けている。
その体勢のまま、動かないクロウ。中に出された事を気にするでもなく、ただじっと、何かを待っていた。
「…クロウ」
「…はい」
マリーンが声を掛けると、クロウはマリーンの方へと向き直した。
すっかり乱れた髪を掻き揚げ、マリーンを見つめるクロウ。その目からは…光を感じられず、虚ろな眼だった。
ベッドに腰掛け、股の間に手を置き、じっと見つめる。その目を、マリーンも見つめ返す。
クロウに近づき、クロウの顎に手をやり、引き寄せた。クロウは抵抗するでもなく、マリーンを見つめるだけだった。
「クロウ・・・アナタは、ワタシ。ワタシは、アナタ。どちらが欠けてもダメ。二人で、一人」
「…はい」
マリーンの言葉に、ただ相槌を返すだけのクロウ。心ここにあらず、といった様子で返事をする。
「さぁクロウ! まだ物足りないわ、続きをしましょう。二人がもっと、一緒になれるように」
「…解りました、マリーン…様」
「あん♪ そんな呼び方はイヤ…アナタには、今まで通りに呼んで貰いたいわ♪」
「…うん、マリーン」
その言葉を聞き、マリーンはニヤリと笑う。そして、再びクロウをベッドに押し倒した。
悲鳴のような嬌声が、自ら欲し求める嬌声と変わり、部屋だけでなく、寮全体に響き渡った。
しかし、それを気にするものはおらず、ましてや咎めるものも、現れなかった。
二人の情事はその後も暫く続いたが、やがて声がしなくなり、気配も消えた。

後に残ったのは、部屋中に巻き散らかった染みと、女性とも男性ともつかない香りだけだった。

_/_/_/_/_/Chapter.EX-7_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/噂_/_/_/_/_/_/_/_/

翌日、キャットとハクゲンの死への舞台が整えられた。

衆人環視が見守る中、処刑の準備が着々と進んでいく。誰もが固唾を呑んで見守った。
(どうにもならないのか…)(レジスタンスの連中は何をやっているんだ!)(あぁ、ハクゲン様…)
人々は動揺を隠せられずにいた。それほどまでに、二人の存在は大きかった。
「これより! リクソン・ハクゲン及びキャット・ファール両名の処刑を執り行う! 二人を壇上に!」
「させるかーッ!」
「!?」
突然、雑踏の中から声が上がり、一人の男が飛び出した。だが…
「あぐッ…!?」
処刑台を取り囲む兵士にあっさりと捕まる。そのまま、どこかへと連行された。
結局、徒労に終わったその行動が、益々警備を厳重にしてしまった。
もう、人々に成す術はなかった。ただただ、壇上に上げられた二人を見つめる他なかった。
全ての準備が整い、後は執行を待つだけだ。暫くの沈黙の後、検察官が壇上の前で声を上げた。
「…聞けッ国民よッ! 抵抗は無駄であるッ! これは運命なのだッ!!」
検察官が腕を振り上げた。そして、高く掲げたその腕を振り下ろす。
その合図でギロチンの刃が落とされた。鋭い音をたてて二人の首へと迫り、そして…
…広場に、二つの首が飛び、血の雨が降り注いだ。

二人の死は、シティシーフ達にとってその存在を揺るがす問題だ。
「…」「…」
シーフギルドに集まった面々は、皆重い面持ちで何も語ろうとはしなかった。
「これからどうすりゃいいんだ…」
「元より無理やったんでっしゃろか…」
シーフ達の頭脳ともいえるハクゲンと、作戦の要であったキャットがいない。
彼らは、たった一日で半身を失ってしまった。
「こんな時に、クロウの奴は…!」
机を叩き、悪態をつく男。
「あの日も現れなかったし、やっぱり逃げたとしか…」
「ク、クロウさんはそんな人じゃないッス!」
クロウに対する冷たい反応に対し、ウォーラスは声を張り上げて否定した。
「だがな、あいつは消えちまった。キャットを探すと言ってな。
日が沈む辺りはチラホラ目撃されていたようだが、それ以降行方知れず。
捕まったのならあの壇上に上げられているはずだし、そうじゃないんなら…」
「だ、だけど…」
「それに、あいつは何やらキャット以外の女と合っていたそうじゃないか。
部屋も荒れ放題で、何かがあったらしい痕跡だけが残されていて…
それじゃ余計に疑いたくもなるぜ」
「で、でもあの人は!」
「…なんだ? 何か知っているのかウォーラス?」
「! い、いや…知らない…知らない、ッス…」
ウォーラスはそれ以上反論できなかった。結局、ウォーラスの言葉は希望的観測にしか過ぎない。
そんな希望も、ハクゲンとキャットが死んだ事実がある以上覆る事はない。
(マリーンちゃん…キミが…本当に…)
唐突に現れ、去っていった見知らぬ女の子。彼女の美しさには、自分ならずとも心奪われるだろう。
そう考えれば、二人の行動も想像が…
(…!)
頭を振って嫌な想像を紛らわすウォーラスだったが…二人が逃避行する姿は、容易に想像出来た。
皆がクロウを探す中、ウォーラスはマリーンを探した。
彼女なら、何があったか全て知っているはずだから。
だが、クロウ同様マリーンの行方も解らずじまいだった。
その事がより一層、その想像に拍車をかけ、結論付けようとする。
「…この国は、どうなるんだろうな…」
誰かがボソッと呟いた言葉。その言葉に端を発し…
済し崩し的にその日は解散となり…そのまま、シティシーフも解散とあいなった。
抵抗する者がいなくなったアバロンは…完全にクオンのものとなった。

処刑の日から、暫く経った、ある日のアバロンの古酒場。
「なぁ、知ってるか? 首輪の女の話」
「? なんだ、それは?」
二人の男の、他愛のない会話。
「知らないのか? …あぁそうか、お前は旧市街住まいだからな」
「もったいぶるなよ、たかが噂だろ?」
たかが、と言われたことに少しムッとする。
「…今新市街じゃ結構有名なんだぜ?」
「ほぉ」
相槌を打ちながら、酒をちびりと飲む。
「なんでも、夜一人で歩いていると、路地の奥から声がするんだと。
それで、気になって行ってみると、女が佇んでいるそうだ」
「女…?」
「これが絶世の美女らしくてよ、そんな女が物悲しそうな顔で誘ってくるんだ」
「…」
またちびりと酒を飲む。
「…で、その女を良く見ると、首輪をしているんだ…赤いドレスに不釣り合いな、首輪をよ」
「…娼婦か?」
「なのかもな。で、更にその首輪、鎖が続いていて明らかに誰かが持っている感じなんだと」
「感じ、って…」
益々怪訝な顔をせざるをえない。
「でよ…誘ってくるわけさ、当然」
「当然、ねぇ…」
「いい女だし、まず釣られない男はいないわけで…至福の一時を味わえるんだ」
「へぇ…」
既に話半分で聞いてすらいない。
「で! 当然そううまい話じゃないわけだ…」
「?」
「その女とヤった奴は、皆腑抜けになっちまったそうだ。まるで魂でも捕られたかのようにな…」
「…」
最後の一言を強調する男に対し、聞き手は横目で見やり、酒をあおった。
「で」
「で?」
「…噂なんだろ?」
「ま、まぁそうだけど…」
「そんな女、仮にいたとしても巡視が黙っちゃいないだろ。
それに、腑抜けになった奴がなんでそんなに詳しい事覚えているんだ?」
「そっ、それは…」
「…結局、憂さ晴らしのネタなんだよ、そういうのは」
「ぬぅ…」
折角語ったのに、あまりにも反応がおざなりなせいで、すっかりしょげる男。
「けどよ、仮に噂は噂でも、そんくらいあったっていいじゃないか、なぁ?」
「…それには同意だな」
そう言って、二人は共に酒を飲み干した。その酒は、マズかった。

…安酒だから、マズいのだろうか…

_/_/_/_/_/Chapter.EX-8_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/進化_/_/_/_/_/_/_/_/

「うー…」

酒場を後にし、一路帰宅の徒に向かう、噂話をした男。
「全く…アバロンはもうダメだね…あぁダメだ、ダメダメだ」
酒の勢いで暴言を吐いたが、思わず辺りを確認して、そそくさと駆け出した。
巡視に聞かれたら、何をされるか…夜の寒さとは違う悪寒が男にはしる。
「とっとと帰って寝よう…」
人っ子一人いない道。孤独感が、余計に気持ちを煽る。
家まであと少し…その時だった。
「…?」
男は路地の前と通り過ぎた。が、ふと気になってその路地へと引き返した。
(・・・・・・ッ・・・あ・・・)
「…声?」
路地の奥から、声が聞こえる。幻聴かと思い、男は路地に足を踏み入れた。
ヒュウッと、一陣の風。その風に乗って、再度聞こえる声。
(あッ・・・あんッ・・・)
「!?」
女の声。しかもその声は、妙に艶っぽく…いや、それどころかこれって…喘ぎ声?
男はゴクリと唾を飲んで、ゆっくりと路地裏へその歩を進めた。
奥へ進めば進むほど、その声がはっきりと聞こえてくる。幻聴ではない。
路地の突き当たり、建物に囲まれた小さな空き地。そこに、声の主がいた。
男は咄嗟に物陰にその身を隠し、その様子を窺った。
「おいおい、こりゃ、まさか…?」
壁に手をつき、尻を突き出す体勢の…赤いドレスの女!
その女に、男が一人、腰を振って突き上げている。
「セ、セックスだ、セックスしていやがる…噂は本当だったのか!」
まさかつい先刻話題にした噂、その真相に出会えるとは!
男は自ら実証できた事と、二人の情事に興奮を隠し切れなかった。
「ん…チクショウここからじゃ良く見えないな…」
隠れている場所からだとどうしても肝心な部分が見えない。顔も、首輪も…繋がっている所も。
だが、女の身を包む赤いドレスと、空き地に響く女の喘ぎ声だけで、間違いないと確信できる。
「くッ…早く終わらねーかな…」
男は我慢できず、股間を摩る。既にギンギンに勃起していて、手が付けられない。
見ているだけじゃ気が済まないのは勿論だったが、今女を犯している男の体格はかなりゴツい。
飛び出して割り込むには分が悪すぎる。結局、男はオナニーで済ます他なかった。
「はぁ・・・はぁッ・・・」
ズボンから自分の一物を曝け出して扱き始める。目の前で繰り広げられる光景がオカズだ。
「ク、クソッ・・・! 生殺し過ぎるだろ・・・!」
そう言いつつも、扱くのをやめず、かといって我慢できず飛び出すこともしない。
リスクと天秤にかけて、男がギリギリ理性を保って下した判断だ。
「・・・やっぱ、腑抜けにはなりたくねぇよなぁ・・・」
自分で言った事を思い出す。そうだ、噂が本当ならあの女とヤったら腑抜けになる…
男はそれを恐れた。噂である以上その真偽は不明だが、まだ腑抜けたくはない…
「けっ、けど・・・! やっぱ、やっぱ・・・!!」
「ヤりたい?」
「!!??」
男がイきそうになった瞬間、声を掛けられた。思わずいきり立ったペニスをズボンに仕舞い込む。
何せ掛けられた声は…女の声だからだ。こんな姿、見られたくない。
「だッ、誰だッ!」
確か、後ろの方から…男は振り返り、辺りを見回した。
誰もいない…? いや、いる。暗い道の、更に月明かりも届かない闇の中に、誰かいる。
「フフフ・・・」
不敵な笑み。それが暗闇に浮かび上がった。その直後、その闇の中から女が現れた。
妖艶な美女。はちきれんばかりの胸に、むっちりとした体躯。
ニヤニヤと笑うそんな顔も、美しく、ボリュームのある紫の髪が更に女の魅力を高めている。
そして、その身を包む、漆黒の服…? なんだろう、妙に光沢がある。鎧? いや、服?
兎に角、あらゆる要素に加え、その女の醸し出すオーラに、男は心奪われた。
噂にはない、女。その女の出現に、男はドギマギする。
「あ、アンタ一体…」
「我慢できないんでしょう? あの娘が他の男としているのを見て、興奮しちゃった?」
「そッ、それは…!」
そりゃそうだ、としか言いようがない。もしかしなくても、この女は自分がしていた事を見ている。
「そんなにシたいなら、ワタシがシテあげようか?」
女が歩み寄り、男の股間を優しく撫で回す。その指使いに、少し萎えていたのが一気に怒張する。
「こんなにおっ勃てちゃって・・・♥」
「うッ・・・!」
「フフッ・・・気持ちイイ?」
「うぁッ・・・」
ズボン越しに撫で回す女の指が、的確にツボを突いてくる。まるで、解っていてやっているようだ…
余りの気持ち良さに、男は抵抗することもなく、されるがままに快感に身を委ねた。
「ほぉらッ! 私がシてあげているんだから、とっととイっちゃいなさい!」
「うぅッ・・・!!」
既に出来上がっていた体では、耐える事も出来ずズボンの中に出してしまった。
そのままヘナヘナと膝をつく男。まるで平伏したかの様な光景だった。
「アラアラ、ホントにイっちゃうなんて・・・だらしないわね」
「くぅッ・・・」
罵る言葉も、男にとっては気持ちを高める要素に聞こえていた。
「や、やるじゃないか・・・」
湿ったズボンが気持ち悪い。よもやこんな事になるとは…
だが、男は興奮冷めやらず、今度は攻め手になろうと強気になる。
「へぇ・・・まだ、物足りないんだ」
女がクスクスと笑い呟く。そんな態度だからこそ、余計に犯したくなった。
「…ヤらしてくれるんだったよな? いいぜ、ならトコトンやってやろうじゃないか」
そう言うと男は、女に掴みかかり、押し倒す。
「へへッ…お前が悪いんだからな…! このビッチが!」
「・・・」
先程言われたお返しといわんばかりに、悪態をつく。だが、逸る気持ちが手元を狂わせていた。
「うッ、クソッ…アレが引っ掛かって…」
折角の前口上を台無しにするように、ズボンを脱ぐのに手間取る。
漸く脱げたと思いきや…男は急に突き飛ばされた。
ズボンのせいで脚の動きが制限され、そのまま壁に叩きつけられる。
「ぐはッ!?」
背中に激痛が走る。痛みに耐え、目の前の女を睨む。
「てッ、てめぇ…!」
「・・・私を押し倒すなんて、何百年も早いのよ」
「!?」
そう重い声で語る女の雰囲気に、気圧される。飢えた猛獣より恐ろしい雰囲気が、男を襲う。
痛みもそっちのけで、男は逃げようとしたが、相変わらず足に絡むズボンが男を逃がさない。
チンコ丸出しの上、逃げ腰の男に、女が迫る。首根っこを掴まれ、引き寄せられる。
「うぐぐッ・・・!?」
「それに・・・誰が『ヤらせて』あげるって言った? ワタシは、『シて』あげると言ったのよ?」
「な、何だよ・・・それ・・・!」
言葉の意図が掴めない男に対し、女は品定めするように男を見つめた。
「年齢・・・体格・・・容姿・・・うん、決めた」
「?」
「フフッ・・・アナタは、実験体・・・大丈夫、きっと気に入るわ・・・」
「??!!」
彼女のお眼鏡にかなった様だが、そんな事はどうでもいい。
万力のような力で男の首を締め上げる腕を掴み、振り解こうとしても、全く動かせなかった。
必死に抵抗する男に、女が顔を近づける。美しい顔。だが、悪魔のような顔。
「さぁ・・・新しい力で、アナタに新しい世界を見せてあ・げ・る♪」
「なッ・・・!?」
目と目が合う。男の心は女の赤い瞳に吸い込まれるように、魅了されていた。
更に顔を近づける女。そして…
「!?」
キスを、した。

(んんンッ・・・!?)
まさかの行動に、目を大きく見開いて女を見やる。
女は舌を入れ、お互いの舌を絡ませ、密なキスをしてきた。
蕩けそうな唇と、その舌に、男はウットリとして、上気していく。
女の吐息が男を満たしていく。甘みを感じさせる程、女の香りを全身で感じる。
「ンッ・・・」
チュパッと、触れ合う唇同士が離れる音。満足がいったのか、女は顔を離した。
「フフフ・・・どう? 私の口付けは? 蕩けそうでしょ?」
「あぁ・・・」
言われずとも、男の頭は痺れっぱなしで、ろくに考える事も出来ない。
既に首を掴んでいた手も離され、何時でも逃げられる状況だったが、男の頭にその考えはなかった。
今まで味わった事のないキスの余韻に、男はまだ虜になっていたが…
「さ、てと・・・そろそろいいかしら・・・さぁ、その身を解放しなさい・・・」
「うぐッ!?」
女が呟き、指を鳴らすと、男が急に苦しみ始めた。
「がッ…あぐッ…!!」
全身が悲鳴を上げる。息が出来ない。身体中が焼け付く様に熱い。
服の上から身体を掻き毟る。ボタンが飛び、胸元がはだける。それでも、身体の熱は取れない。
「あぎッ・・・ぐぎィッ!!」
全身が熱い…特に、腹の中が煮え滾るが如く熱い。中身が融けてしまいそうだ。
苦しみ、もがく男を、女は口元を緩ませながら、観察するように見下ろしていた。
やがて、言葉も発せられないほど意識が混濁したのか、男は痙攣するだけになった。
そして、暫くすると…男の身体に変化が起こる。
身体から湯気が立ち込め、寒空に狼煙の様に上がっていく。
熱を持った身体を、火照りと勘違いしたのかペニスがビクビクと動き、そして…勝手に射精した。
ビュクビュクと、ありったけの精子を吐き出すと、徐々に萎えていく。
萎えて、萎えて、萎えて…どんどん小さくなる。
寒さに縮こまった時よりも、小さい。まるで子供…いや、赤ん坊のようなサイズにまで縮んでいく。
それでも、ペニスの萎縮は止まらず、遂には茂みの奥へと隠れてしまった。
玉もそれに合わせ、股間へと吸い込まれていく。あっという間に、男から男が失われた。
それを見ていた女が、男の膝を持ちあげ、大股開きをさせる。
「へぇ・・・」
変わり果てた男の股間をしげしげと見つめる。茂みのせいで見えないが、確実にそこには何もなかった。
女は、その茂みを掻き分け、もっとよく観察する。小指より小さくなったペニスが、顔を現した。
「クスッ、あんなに勃起してたのが、もうこんなになっちゃって・・・♥」
「うぅッ・・・」
その言葉に男が目覚めたのかと思ったが、そうではなかった。
男の腹部が、蠢いている。中で何かが起こっている。
暫くすると、男の腹筋が徐々に脂肪に包まれていく。太る、というよりふっくらとしていく。
それにあわせて、腰周りも次第に変化していく。骨が軋む音と共に、徐々に骨盤が広がっている。
女はその様子を見て、改めて股間を注視した。直ぐに、変化が始まる。
じわりと股間の肉が赤くなる。皮一枚隔てて、何かが出来上がっていく。
そして…プツンと、股間の肉が裂けた。血は出ず、皮のみが剥がれるようにして、割れ目が出来上がる。
一部始終を見ていた女が、その裂けたばかりの部分に手をやり、更に広げる。
「あはッ♪ 綺麗なピンク色・・・」
捲りあげたそこには、まさに肉といった色の肉襞が完成していた。
上は元ペニスのあるところまで達し、そしてその襞の奥には…穴が見えた。
「あぁ・・・早く、早くここに・・・!」
女はその光景を見るや否や自分の股間に手を伸ばし、擦りだした。
既に怒張したペニスが、服の下で脈打ち、今にでもイきそうなくらいになっていた。
「うぅっ・・・だッ、ダメ、まだダメだ・・・ちゃんと終わってからじゃないとな・・・フフフ」
思わず自慰でイきそうになるのを堪え、再び男の変化を眺めた。
既に変化は全身へと回っていた。身体が丸みを帯びる。肌が美しく変わる。
男の両手両足は、筋肉の代わりに脂肪がつき、肉付きを強調する。毛がハラハラと抜け落ちていく。
その変化を確認すると、女は男が自身ではだけた胸元の部分を、更にはだけさせた。
胸の筋肉の上に、脂肪がついていく。ふっくらとし始め、次第に大きく…?
「・・・? あら、これだけ・・・?」
その胸は、確かに男としては有り得ない胸だったが、かといって乳房というには…些か貧相で…
「んー残念・・・でもま、いっか」
申し訳程度のサイズだったが、それでもその胸の先にツンと立った乳首は、実に綺麗だった。
「さぁさ、後はもうアナタがアナタであるという事を証明するところだけよ」
「・・・」
未だ目を覚まさない男…?に、女は覆い被さるようにしてその顔を見つめた。
既に男は男の身体はなく、女の身体であった。 …胸がアレだが。
そんな身体に男の頭が乗っかり、ある種気持ち悪さも覚えたが、そのアンバランスさに、女は興奮した。
「うッ・・・ゲホッ! ゲホッ!!」
男が突然咽だす。何度も咳き込む度に、声色が変わっていく。
「ゲホッ! ゲッ・・・ケホッ! ケホッ!! うううッ・・・」
すっかり声のトーンが上がり、顔に似合わない声色となる。
だが、その顔も、声に合わせるように変化していく。
顔立ちが整っていく。唇が潤い、目元はパッチリとし、鼻筋が通る。
そして、サワサワという音と共に、男の髪が少し伸びる。耳元までだった髪が、耳を隠すくらいまで伸びた。
「フ、フフフ・・・アハハハハッ!」
全ての変化を見届けた女が、高笑いをする。
「もう・・・ワタシは・・・ワタシには選り好みする必要なんて、ない・・・ないんだ・・・!」
余りの嬉しさに、女は男…いや、女の上で笑い転げる。
「う・・・う・・・」
変化が止み、その声に気付いたのだろう。男が意識を取り戻した。
それに気付いた女が、グッと顔を寄せ、完全に目覚めるのを待った。
「う・・・?」
「気分はどう? アナタは、生まれ変わったのよ・・・そう、『変わった』の」

「…!?」

_/_/_/_/_/Chapter.EX-9_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/感染_/_/_/_/_/_/_/_/

余りの高熱に、気を失っていたようだ。

えと…何があったんだっけ…確か…噂の女を見つけて…それで別の女が現れて…それで…
「…分……う? アナ……、生…れ変わ………よ・・・そう、『変わ…た』…」
「…!?」
男は最後の記憶に辿り着くと、うつらな気分が一気に覚醒した。
さっきから近くで聞こえている高笑い…そうだこの声、あの女の…!
目を覚まし、その女を見つけようとしたが…見回すでもなく、女の顔が目の前にあった。
「フフ・・・」
ニヤニヤと笑う女は、自分に跨り、こちらを見つめていた。
思わずその女の下から逃げ出す。だが、またまたズボンに足を捕られ、逃げられなかった。
「お、俺に何を!? し…た…?」
声を張り上げ、女に怒鳴り散らす。だが、その声がおかしい。自分の声じゃない。
「聞いてなかったの? あなたは生まれ変わったのよ、そう・・・『女』にね」
「!!??」
女の言う事が信じられず、自分の身体を見下ろす。胸はあまり変わっていないが、その先…
「なッ・・・!? なぁあッ!?」
さっきまであんなにいきり立っていたはずの自分のモノがない。
萎えて見えないとかじゃない。どんなに見ても、その存在すら確認できない。
「なッ、なんだよ・・・なんなんだよコレェッ!?」
思わず手を伸ばしてみるが、そこにはペニスは無く、代わりに玉の感触にも似た肉に触れた。
「あうッ!?」
急に擦ったせいで、ジーンとした痛みがそこから発せられる。
「あ・・・ああ・・・ない・・・無くなってる・・・」
どんなに触れても、そこには慣れ親しんだモノはなかった。
「これでわかったでしょ? フフッ、大丈夫・・・そこまで悪くはないわよ・・・胸以外は」
「な、何で・・・なんでこんな事・・・有り得ない・・・」
「あら、もう忘れたの? 言ったわよね、『シて』あげるって」
「へッ・・・?」
いまだに信じられず、目を丸くしている男が、その言葉に反応する。
「し、シてって・・・」
「アナタがワタシにしようとした事よ」
「それって・・・つまり・・・」
その言葉を聞いて男は後ずさる。だがそこは壁。逃げられない。
「やッ、止めろッ! 第一、俺を女にしたんじゃ意味が…」
そこまで言って、ハッと気付く。何をしたかは知らないが、自分を女に出来るなら、その逆も…
「フフッ、意味はあるわ・・・ワタシのコレがアナタを求めているのだから・・・」
「うッ、うわぁッ!!??」
女が服の裾を捲りあげると、股間が露になる。更に布地をずらし、包まれていた物を曝け出す。
「なッ、何だよそれぇッ!?」
「何って・・・知っているでしょう?」
女の股間から生えた、男の一物。余りにも奇怪な光景に声を上げざるを得なかった。
「あぁ・・・あなたの変わりゆく様を見ていたから、もうこんなになってるのよ・・・」
「ひッ、ひぃッ! く、来るなッ! 化け物ッ!!」
男はトコトン怯えきり、顔を歪ませる。化け物と罵られても、女は平然としていた。
「化け物・・・フフッ、そうね、化け物ね・・・けれどアナタは、今からその化け物の虜になるのよ」
「なぁッ・・・!」
もう、目の前の存在には恐怖しか感じなかった。その美貌も、毒の様に感じる。
「やッ、やめ・・・やめて、くれ・・・!」
「ンー・・・もう、遅いわ。こんなに滾っちゃってるんですもの」
その言葉を皮切りに、女が飛びつき、組み伏せた。男は抵抗したが、先程よりも更に動けなかった。
「さぁ楽しませてあげる♪ 女の快感を、教えてア・ゲ・ル♪」
「あ・・・あ・・・あ・・・!」
恐怖に引き攣った顔から、涙が零れ落ちる。
路地裏から、二つの嬌声。一つは艶っぽく、もう一つは…悲鳴にも似て。

「う・・・あ・・・ぁ・・・」
溺れるような快楽に、身も心もすっかり酔いしれ、果てた。
「アハッ♪ その顔もいいわ♪」
女になった男を、男として犯しつくし、ご満悦な表情で未だ意識が混濁しっぱなしの男に語りかける。
犯された。男なのに、女にされて、女に犯された。その事実が余りにも心に深く刻まれた。
「ウゥッ・・・こッ・・・こんな・・・こんなのって・・・」
ジンジンと痛み、何かがたっぷりと注がれた股間が、男を現実に引き戻す。
「アラ、お目覚め? 気持ちよかったでしょ?」
「・・・」
答えは返ってこなかった。アレだけ喘いでおきながら、「全然」なんてはずもない。
だが、素直に認めるなんて事も出来ない。認めたら、もう二度と戻れない気がしたから。
「戻・・・戻して・・・俺を・・・男に・・・」
涙声で訴える。縋る様に訴えた。例え1%でもいい、これが夢であって欲しい…そう、願った。
その声を聞いても、何も返さない女。既に次の言葉を発する気力もなく、ただただ返答を待った。
少しの後、漸く女が行動を起こした。ツカツカと歩み寄り、ぐったりと横たわる男の傍に座り込む。
「どうして? 女の快感はお嫌い?」
あっけらかんとした答え。
「俺は…こんな事望んでいない…」
「だけどアナタは自らの意志でここに足を踏み入れた。アナタが望まなくとも、アナタにも責はあるのよ?」
「…」
女の言うとおりだった。あの時、あの嬌声に気付かなければ…興味を示さなければ…
だが今となっては、もう取り返しのつかない事態にまでなってしまった。
けれど、それでも一縷の望みを託して、何としてでも戻して貰える様懇願した。
「んー…それなら…」
「!」
女の気持ちが揺らいだ。も、戻れる!? 男は目を見開いて、次の言葉を待った。
だが言葉ではなく、女は…男の肩を押さえつけ、顔を近づけてきた。
「なら、チャンスをあげるわ…今は戻してあげない。
けれどその身体で一週…いえ、三日間いつも通りに過ごせたら、男に戻してあげるわ」
「なッ…!?」
女の口から出たのは、こちらを試すかの様な提案だった。だが、それでも希望が見えた事には違いない。
「どうする? 簡単な事でしょ?」
「…」
何か裏がある気がしてならなかったが、これ以上この女の機嫌を損ねる訳にはいかない。
「わ、わかった…三日だな、三日間、この身体で過ごせば…」
「えぇ、戻してあげる…でも、三日後、アナタは平静を保っていられるかしら…?」
「…えッ…?」
女がその言葉を男に投げかけた瞬間、男の意識が再び混濁していった。まるで睡魔に襲われたかのように…

ドサリ、と身を起こしていた男が倒れこんだ。
…が、暫くするとよろよろと立ち上がり、そのままフラフラと夜の街へと消えていった。
「…いいの?」
「あら、終わったの?」
女…マリーンが振り向くと、赤いドレスに身を包んだ、首輪の女…クロウが声を掛けてきた。
彼女の奥では、同じ様にフラフラと夜の帳へ消えていく男の姿があった。
「…計画が、遅れるよ…」
先程までセックスしていたとは思えない素振りで、髪をかきあげマリーンに尋ねる。
「ウフフッ♪ 心配してくれるなんてクロウ、とってもいい娘ね…」
「あっ…」
そう言って、まるで犬を褒めるかのように頭を撫で、股間に手を伸ばす。
冷静を装っていても、濡れたクロウのソコは正直に反応する。
顔を紅潮させ、恥ずかしがる。一方のマリーンは、そんなクロウを見てペニスをいきり勃たせていた。
「いいのよ、これは余興…遅かろうが早かろうが構わないの。なんにせよ、この国は基より私のモノ…」
「マリッ・・・あぅッ・・・」
「フフッ、そう、これも余興・・・アレもコレも、みんなワタシの為のオモチャよ・・・」
マリーンの手がクロウを攻める。その指が、クロウをどんどんと昂らせていく。
夜の街。二つの嬌声が響く。

「う…」
朝の日差しで目を覚ます。
「俺…一た…ッ?」
自分の声に飛び起きた。そして、目線を下に落とす。
「こッ、コレ…!?」
乱れた服を脱ぎ去ると、その下から色白な素肌が姿を現す。
「ゆ、夢じゃ…な…」
ゆっくりと胸に手を置くと、僅かだがフニッとした感触。かつての自分にはもち得ないその柔らかさ。
そのまま手を股間へと伸ばしたが、朝起きたばかりだというのに突っ張るものはなく…
(三日間いつも通りに過ごせたら、男に戻してあげるわ)
「…三日…」
これが夢ではないと解ると、あの女との出会いを鮮明に思い出し、最後の言葉を思い出した。
「三日間この身体で過ごせば、元に戻れる…」
その言葉は俄かに信じられなかったが、戻るにはあの女に頼る他なかった。
三日間だけなら、このまま引き篭もってればいい…そう、考えたのだが。

「オラ、どうしたッ!? 作業が遅れてるぞッ!」
「ハッ、ハイ、すいません!」
…どういうわけか、体は仕事場へと向かってしまった。
「くッ…重い…」
いつもなら難なく持てる筈の荷物が、今日は異常なほど重い。
(…女だから、か…)
非力になった自分に涙を流しそうになりながら、作業を続けた。だが…
「うぅッ…!?」
体が悲鳴を上げる。更にそれとは別に、身体が何かを訴えている。
「はぁッ、はぁッ・・・!」
息が上がってくる。 …二つの理由で。
膝が笑い、ガクガクと震える。立っていられない。
「うんッ・・・!」
ドサリと荷物を落とし、自身も床にへたり込んでしまった。
その音に、周りはざわつき、現場監督が何事かと近づいてくる。
「おい! 何をしてい…!」
怒鳴り散らそうとして、躊躇した。見上げる男の顔に、思わず見とれたからだ。
(コ、コイツ、こんな顔つきだったか…?)
妙に丸くなった気がする顔つきに、潤んだ目。
こちらを見上げる瞳には、なにか魔力のようなものも感じられた。
「す・・・済みません・・・具合が、悪くて・・・」
「う、ぬ…そうか。なら少し休め、後の事はやっておく」
「ありがとう・・・ございます・・・」
フラフラしながら立ち上がると、詰所へと目指した。
周りはそんな男を指差して、「仮病か?」などと陰口を叩いた。
だがそんな声も気にならない。男は既に、ある『衝動』に突き動かされていた。
詰所の扉を後ろ手で閉めると、急いで作業着を脱ぎ捨てた。
「あぁッ・・・もう、ダメ・・・!」
下着の中へ手を入れると、既に愛液が溢れ、ぬめりが指を濡らした。
「うんッ・・・あッ・・・んふッ・・・!」
手が止まらない。既に男は、女として発情していた。
「何でッ・・・なんでッ・・・!」
気が付いたら既に体が疼いていた。
男の、女の身体は…周りの仕事仲間達の臭いを感じ、欲情していた。
だがそんな事に気付くはずもなく、男は疼く体の欲求を満たそうと、更に自慰を進めた。
「あんッ! こんな・・・こんな・・・」
すっかり出来上がった身体は、理性を閉じ込め、ただひたすら慰める事だけを男に伝える。
「ん、ンンン、んんーーーッ!!」
直ぐに、男は絶頂を向かえた。頭の中で何かがはじけ、心を蝕んでいく。
少し落ち着いたかのように思えたが、直ぐにまた身体は発情し始めた。
詰所に漂う、男の臭い。密閉された空間に閉じ込められ、常に香る、男の臭い。
「はぁッ、はぁッ・・・!」
すっかり理性を失って、自分の…女の身体を貪リ続ける。再度高みへ行こうとした、その時。
「おい、大丈夫か… !?」
「!!」
心配して様子を見に来た監督が、扉を開けた。
隠す暇もなく、男はその身に隠された真実を、第三者に曝け出してしまった。
「お前…!?」
「あ・・・あ・・・」
見られた。見られてしまった。扉に尻を向けているせいで、モロに見られた。
慌てて監督に飛びついて、懇願する。
「ち、違う・・・コレは・・・」
何かよい言い訳を考えるも、全く浮かばない。例え冷静な判断力があっても、無理だ。
それに、もうバレてもよかった。物足りない。指だけじゃ、物足りなかった。
目の前で見せつけられたオナニーショーで、監督は既におっ勃てている。
あとはもう、事に至ればいい。そう、誰でも、いい…
「カントク・・・ココに・・・おねがい・・・♥」
自ら股を開いて、ねだる。勿論、断る理由もなく…
…その後、詰所から響き渡る嬌声に、皆が集まり、一人の女に群がった。
皆その異常事態に何の疑問も持たず、ひたすら一人の女を犯していった。

その日、彼の職場は運転を中止した。

_/_/_/_/_/Chapter.EX-10_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/しもべ_/_/_/_/_/_/_/_/

「国民共の様子は?」

――――アバロン宮殿。玉座の間。クオンが配下の近衛兵に尋ねた。
「…変ワラズ、馬車馬ノ様ニハタライテオリマス」
「そうかそうか。もう、歯向かう者はおらんか」
クオンはかんらかんらと笑うと、はぁっと溜息をついた。
「ふぅむ…とはいえ、張り合いが無いのではツマランな…」
クオンはわざとらしく欠伸をし、部下に見せ付けた。
「…確カニ、初メノウチハ多カッタノデスガ、今デハ全クソノヨウナ話ヲ聞キマセヌ」
「ほーん」
流石のクオンも、最近のアバロンに飽き飽きしていた。
二人の重要人物を処刑して以来、反抗組織はめっきり姿を消し、ある意味アバロンは平穏だった。
それは日を追う毎に顕著になっていった。
「…で、やっぱり『死』んどるのか?」
「…エェ」
死。正確には個性の死。
最近、アバロン国民の様子がおかしい。まるで何かに憑りつかれたかのように気力が無い。
勿論全ての国民がそうではないのだが、間違いなく多い。しかも日を追う毎に増えている。
「流行リ病ノ線モ当タリマシタガ、ソウデハナイヨウデス」
「ふん、どんなに心を殺そうが、アバロンは変わらんというのに…」
不貞腐れるクオンに、部下が声を掛けようとした、その時…
ワァァッ…という怒声と共に、外が急に騒がしくなる。
「ちゅ、注進! ご注進ーッ!」
「何事ダッ!!」
玉座の間に慌ててアバロン兵が駆け込んできた。
本来ならその場で打ち首だが、注進という言葉と、外の様子に、ただならぬ事を感じ、剣を収めた。
「は、はッ! 国民が…アバロンの民が大挙して宮殿へと押し寄せてきていますッ!」
「何ィッ!?」
その知らせの真偽を問うまでもなく、外から聞こえる怒号が激しくなる。
テラスから身を乗り出す近衛兵。その目に映ったのは…
「オ…オォオ…」
燃える。燃えている。アバロンの町並みが、赤く染まっている。
そして眼下。宮殿に押し寄せる人の波。その数たるや、まるで群れたアリの様だ。
「何故気付カナカッタ!」
「ヒッ…!」
近衛兵の威圧に慄く兵。震える声で返す。
「そ、それが…余りにも突然の事で…警備の目すら無意味なほどで…」
「言イ訳ハ聞カンッ! トットト沈静化セヨッ!」
「ハッ、はいぃッ!!」
そのまま、転げるようにして持ち場に戻る兵。だが直ぐに、別の兵がやってきた。
「報告ッ…! 現在、門で食い止めていますが最早持ちませんッ…! それに…」
「ソレ、ニィ?」
「そ…それが、反乱に加わっている国民が、老若男女問わずで…」
「ソレガナンダト言ウノダッ!」
「ヒッ! ほ、本当の意味で問わないのです! こ、子供から…死に体の老人までッ…!」
「…!?」
疑問に思う暇すらなく、更に駆け込んでくる兵士。
「じょ…城壁! 突破されましたッ!」
「ナッ…グググッ…!」
立て続けに届く不甲斐ない報告に、近衛兵の握り拳に力が入る。
再度テラスから見下ろすと、うじゃうじゃと庭園を覆う人々の頭が見える。
燃え盛るアバロンの町に、大挙する人々。その光景は、まるでこの世の終焉のようだ。
「…ええいッ! 何とかせんかッ! 何とかッ!!」
「は、はッ!」
痺れを切らしたクオンが怒鳴る。その声に、その場にいた全員が恐縮する。
だが、その空気は直ぐに破られた。
「報告しますッ!」
「…貴ッ、様…!」
最早我慢ならず、剣を抜く近衛兵。だが、飛び込んできた兵士はうろたえる事無く、続けた。
「クオン様にお目通り願いたいと申す者が来ております」
「…は?」
この非常事態に、素っ頓狂な報告をする兵士。クオンと近衛兵は、完全に呆れかえった。
「…殺れ。殺ってしまえ」
「御意」
スッと、剣を振り上げ、そのまま跪く兵の首へと振り落とした。
だが、兵は避けようともせず…そのまま鮮血がカーペットを濡らした。
「ヒ、ヒィィッ!」
その様子を見た兵士が、転がるようにして逃げていった。
「…ふざけおってからに!」
クオンは苛立ちから足を揺する。近衛兵は何も言わず剣を納めようとしたが…
「あらあら、可哀想じゃない・・・」
「!?」
二人しかいないはずの玉座の間に、女の声が響き渡る。
「何者ダッ!!」
「フフフ・・・」
声だけが、その存在を主張する。
夜の闇に紛れているのは確かだが、その気配が感じられない。
「姿ヲ現セッ!」
近衛兵が声を張り上げる。すると、カツッと、硬い物が床を叩く音がした。
その方向を見やるクオンと近衛兵。そこには…一人の女が佇んでいた。
「貴様…一体ドウヤッテ…!」
剣を振り上げ、女に突きつける。だが、女は一切動じることなく、焦点の合わない目を向けた。
その女は…首輪をはめられていた。そして、その首輪から伸びる、一本の鎖…
「…貴様、ドウイウツモリダ? コノ女ガドウナッテモイイノカ?」
近衛兵はすぐに察した。先程の声は、この女じゃない。もう一人、いる。
「ウフフッ・・・♪ 血の気が多いのね・・・でも、それだけ。それしかない」
「…ナニィ…?」
剣を握る手に力が入る。返事も待たず、近衛兵は剣を目の前の女に突き出した。
が…寸での所でかわされる。まさかの動きに、驚きを隠せない。
そのまま女は、再び闇に紛れていった。
「待テェッ!」
「おい! 待てッ…!」
クオンが制止したが、近衛兵はその女を追って闇へと消えた。直後、一陣の風が玉座の間を横切った。
「!?」
ザンッ! と、何かが断ち斬れる音。そして、がしゃんと、金属が床を叩く音。
「フフ・・・だから言ったじゃない・・・それだけだって・・・」
「なッ…!?」
暗闇から今度は、黒い衣に身を包んだ、妖艶な美女が姿を現した。
その手には…近衛兵の首。まさかの事態に、クオンは顔を引き攣らせた。
「ば、馬鹿な…ありえん…」
「ホラ、アナタの大事な『盾』よ、返すわ」
そういって女は…マリーンは手にした首をクオンに向け投げた。
が、その首はクオンの頭上を越え…そして、玉座の裏に落ちた。
「ギャフッ!?」
「あらら、手元が狂ったわ・・・ええ、『間違えた』わ」
「きッ、貴様…!」
勿論、解っていて投げた。玉座の裏に潜んでいる、本体…ボクオーンに向けて。
驚かせるつもりが、どうやら命中したようで、のそりと玉座の裏からボクオーンが現れた。
「貴様、何者じゃ…このワシを知っての狼藉かッ!」
「エェ勿論。だって今から消えてもらう相手に遠慮はいらないでしょ?」
「グググ…!! 馬鹿にしおって!! もう許さんッ!!」
簡単に挑発に乗ったボクオーンが、両手を振り上げる。
その指の動きに合わせ、クオンが…クオンだった『モノ』が形を変える。
「ヒャヒャヒャ…! もう遅い、もう遅いぞ…! 貴様のそのすまし顔を切り刻んでくれるッ!」
クオンがみるみるうちに巨大化する。
そして、まるで道化師のような姿へと変貌すると、何処からともなく剣を複数取り出した。
「さぁッ! ワシの最高傑作で、貴様を葬ってやるッ!!」
対峙するマリーンとクオン。だがマリーンは、フッと、嘲笑した。
「なッ、何がおかしいッ!?」
「いえ、ね・・・そんな『モノ』がアナタの全てだなんて、余りにも可哀想で、ね・・・」
そう言って、鎖を手繰り寄せ、クロウを胸へと飛び込ませた。
「これが、本当の『パートナー』よ・・・ねぇ、クロウ?」
「…えぇ」
そして互いにキスをしあう。ボクオーンに見せ付けるように、キスをする。
「グギギッ…! 何処までも馬鹿にしおって!! 死ねぃッ!!」
堪忍袋の緒が切れたボクオーンが、クオンを嗾けた。
その体躯に見合わない速さで二人の下へ飛び掛り、四方八方から剣を繰り出した。
ズドドドッと、大量の剣が二人に襲い掛かり、大理石の床をバターの様に切り裂いた。
「クカカカカッ!! たわけがッ!!」
高笑いするボクオーン。勝利を確信した…が。
「カッ…あぁッ?」
巻き上がった塵芥が晴れると、そこには…無傷のマリーンとクロウが、未だキスをしあっていた。
「なッ…!?」
「あら、もう終わり? 全く、余興にもならないわよ、コレじゃ」
そう言うとマリーンは、傍に突き刺さった自身の身の丈ほどある剣を指で挟み、それをクオンめがけ投げた。
細い腕からは想像出来ないほどの力で放たれた剣が、避ける暇も与えずクオンに深く突き刺さった。
「あッ…えッ…?」
一瞬の出来事に、ボクオーンはただ呆然とするしかなかった。
そのままマリーンは、立て続けに剣を投げつけた。
一本、また一本と突き刺さり、やがて最後の一本を投げると、クオンは音をたてて崩壊した。
「そんなオモチャじゃ、ワタシ達に触れる事も出来ないわよ」
「あああ…」
慌ててクオンだった残骸へと駆け寄るボクオーン。既に修復不可能なほどに壊されていて、どうしようもなかった。
「さ、どうする? 他にオモチャはある? ん?」
「グヌヌッ…」
キッと睨みつけるボクオーンだったが、何かを思いついたようでニヤリと笑う。
「切り札なら…あるわいッ!」
そう言って両手を前に突き出すボクオーン。見えない糸が、マリーン…ではなく、クロウに絡みつく。
「あぅッ…!」
ビクンッと身体が跳ね、マリーンの手元から離れるクロウ。そのまま、ボクオーンの下へフラフラと移動した。
「クカカッ…! この娘に相当ご執心の様じゃな…じゃが、今からこの娘はわしのモノじゃ!」
足元に座り込むクロウを抱き上げると、長い舌でペロリとクロウを舐めた。
マリーンがその光景に表情を歪ませた。それを見逃さず、ボクオーンが強気に出る。
「ウヒャヒャヒャ…! 女には終ぞ恵まれんかったが、コレはコレでいいものじゃのう! カカカッ!!」
余裕の表情でクロウへの陵辱を見せ付けるボクオーン。マリーンは恐ろしい目付きでボクオーンを睨んだ。
だがマリーンは、すぐにその目線をクロウに移した。 …その目つきを変えないまま。
「クロウ・・・アナタ、ワタシよりそんな老木の方がいいの?」
「あぁッ・・・! 違うよマリーン・・・ぼ、ワタシは・・・」
「・・・なら、どうすればいいか解ってるわよね?」
「・・・はい」
自身を無視し、二人だけで会話をしている事に苛立つボクオーン。
「お前…何処までこのワシをコケにすれば気が…」
わなわなと怒りで震えながらマリーンを指差す。が、その前に眼下の女の行動に目を疑った。
「なッ!? 何をしているッ!!」
「あぁマリーン・・・コレで、どうか許して・・・」
そう告げる女の手には、一本の短剣。それを自分の胸元に向けていた。
そしてそれを…躊躇することなく突き立てた。
「あふッ・・・」
「…はぁあッ!?」
馬鹿な、コイツ…何の躊躇いもなく自害しおった!
ボクオーンはその光景に目を丸くし、頭を抱えた。
辺りにクロウの血が溢れ、赤い絨毯を更に赤くする。それが、間違いなく自ら命を絶った事を示していた。
呆気にとられていたボクオーンだったが、突如感じたおぞましい殺気に、ハッとする。
「…さ、どうする? もう切り札なんてないわよ?」
「フギギッ…!」
まさかの女の行動で、完全に退路を絶たれたボクオーンに、マリーンが迫る。
後退るも、玉座に足を捕られ、そのまま着席してしまったボクオーン。
「まッ、待て…! アバロンはくれてやるッ…! それに、ワシが持っている戦艦もやろう!
それに、ワシがしこたま溜め込んだ財宝がある! それもくれてやろう!! どうだ!?」
この期に及んで、往生際の悪いボクオーン。マリーンはそんなボクオーンを見据えると、身を乗り出した。
「・・・分かってないわね。アバロン? 戦艦? 財宝? そんなモノ、どうだっていい。
私が欲しいのは、私を満足させてくれる、余興だけよ」
「な、に…?」
「それに、アバロンをくれてやる? 元々此処は、ワタシのモノ。それを勝手に横取りして、何が『くれてやる』よ。
返してもらうの。まぁ、もう既に国民はワタシの『モノ』だけどね、アハハハハハ!」
「き、貴様何を言って…!」
頭に疑問を浮かべるボクオーンに対し、マリーンは更に寄って、低い声で言い聞かせた。
「…分かってねぇな? 英雄は、この俺だけで十分なんだよ…」
「! ま、まさか貴様皇…!」
「ウフフ、お喋りは此処まで。さ、とっととそこをどきなさい、ボクオーン。
いえ、この世から消えなさい。 …大丈夫、仲間もその内、送ってア・ゲ・ル♥」
「!!」
まるで男のような顔から一転、お茶目な顔を見せたかと思うと、次の瞬間…
ヒュンッ、と、風の音。その音と共に、ボクオーンの首が天井まで舞い上がり、鈍い音をたて砕けた。
玉座には、残ったボクオーンの身体。だがそれは、直ぐに崩壊を始め、砂と成って消えていった。
「あぁッ・・・♥」
自分の新たな力は、あの七英雄をこんなにも容易く葬った。その力に酔いしれ、身震いするマリーン。
玉座の間に静寂が訪れ、外の怒号がより一層はっきりと聞こえてくる。

アバロンに…新たな支配者が君臨した。

_/_/_/_/_/Chapter.EX-11_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/終焉_/_/_/_/_/_/_/_/

「マリー…ン…」

興奮冷めやらぬマリーンの耳に、今にも消え入りそうな声が届いた。
振り向けば、最早息も絶え絶えなクロウが、それでも尚縋る様な目でマリーンを見ていた。
そんなクロウの下へ歩み寄り、抱きかかえるマリーン。
「ウフフ・・・やれば出来るじゃない、クロウ」
「・・・あり・・・が・・・」
声を出すのも精一杯だというのに、クロウは返事をする。
「いい子ね、クロウ。そんな子にはちゃんとご褒美をあげなくちゃね・・・」
そう言いながら、マリーンはクロウの傷口に指を入れる。
流石に苦悶の表情をするクロウだったが、そんなクロウにマリーンは口づけをした。
「あぁッ・・・」
クロウの表情が、次第に和らいでいく。マリーンが傷口から指を抜き、そっと撫でる。
すると…みるみるうちに傷口が塞がっていく。今にも死にそうなクロウの肌に、血色が戻る。
「フフフ・・・クロウ、アナタは、ワタシ・・・ワタシは、アナタ。
どちらが欠けてもいけないし、どちらが死んでもいけない・・・」
「・・・」
急激な身体の変化に、クロウはぐったりとしてマリーンに抱かれていた。
そんなクロウを抱えたまま、マリーンはテラスへと歩み寄り、燃え盛るアバロンを見つめた。
下からは未だ人々の叫びが聞こえてくる。だがそれも、マリーンにとっては甘美な響きに聞こえた。
「フフッ・・・ワタシは、マリーン。全ての上に立つ、真にして一なる存在。
全ての生命は、私の前に平伏し、跪いて、私を敬う・・・そう、私は女王・・・女帝、マリーン」
片腕にクロウを抱きながら、もう一つの手を虚空へと突き出し、風に乗せるようにして呟いた。
まるでそれを、世界中に伝えるかのように。
マリーンの赤い瞳に、燃えるアバロンの炎が映りこみ、その瞳を更に赤く染める。
高笑いをするマリーンの声が、アバロンを包む。

…アバロンは滅んだ。皇帝の手によって。その後の世界を暗示するかのように。

Romancing Sa・Ga 2 THE END
第七ログを書き綴っていた時に、思いついた別ENDルート物語。
第八ログがシリアス展開だった分、エロい妄想が全てここに凝縮された状態に。
BADENDにする必要があったので、悩みつつもマリーンにはふたなってもらいました。
代わりにすっかり忘れかけのTS成分をクロウに…元は取れたかな。

では、このお話で本当にRomancing Empress Sa・Ga、終了です。
長きに渡って閲覧してくださった皆様、本当にありがとうございました。
それでは。
来来来来来来来来
http://www.tsadult.net/megalith/?mode=read&key=1322843537&log=0
0.3300簡易評価
3.100きよひこ
こちらが精子・・・ウッ・・・正史でもいっこうに構わないなあw
5.無評価きよひこ
元を取れたですって?
いやいや素晴らしい利子が付きましたよ
28.無評価Frucouche
Lofty bye, sentimental chum :)
31.無評価doudgirucoura
Obedient bye, considerate soul mate :)
32.無評価LefsGectist
Lofty bye, considerate friend :)