「今夜くらいは…遠慮なくやっちゃってもいいよね?双葉」
俺は誰に言うとない呟きを放ちながら右手を乳房に、左手を股間に伸ばす。
パジャマをはだけて目の前にさらされる乳房は先週までは双葉の、そして今は俺のものだった。
慎重に乳房を揉んでは手と自分の乳房からの感触を味わう。
股間は…もう少し濡らしてからかな。
女性の自慰の気持ちよさと、双葉の体でこんなことをしている罪悪感。
それらを楽しみながら過ごすひと時は先週に階段から落ちて双葉と入れ替わってからの楽しみだった。
入れ替わってすぐはお風呂とかトイレとか着替えとかもあったけど…結局日常の風景だけに慣れてしまうと意外とすぐに面白くなくなってしまった。
トイレなんかはむしろ一日たてばかえっていちいち下着を脱いで腰かけるのが面倒になってしまったし、お風呂に至ってはもう苦役だった。
やり方は初日に双葉に聞いてその通りにしていたけど、女の子はこんなことずっとやっているんだなぁと変なところで感心してしまった。
結局、残った楽しみはこの自慰だけ。
もちろん今は俺の体を使っている双葉にはこんなことをしているなんて言ってない。
だからますます背徳的な快感をもたらしてしまう。
ただし、今日だけはその背徳感も幾分か薄かった。
今日一日のことを思い出す。
あの一日の代償としてならこのくらいやってもいいだろう。
としあきとのデートを双葉のふりをして過ごしたのだ。
もちろん双葉からの頼みである。
「こんなこと、言えないし今日のデート代わりに行ってきて。
お願いだからとしあき君におかしく思われるようなことだけはしないでね」
一週間たっても俺の前では女言葉が抜けない俺の体の双葉はそう頼んだけど、
俺にとっては気持ち悪いことこの上ない一日だった。
何しろ隣にいるのは俺からすればたわいもないエロ話をしていたとしあきだった。
その隣で女の子らしく振舞わなきゃいけないなんてどんな罰ゲームだよ。
おまけにとしあきの目線が俺の胸とか腰とかに絡み付いてるのが丸わかり。
双葉は疑われない程度の基礎知識を教えてくれた時に「まさかホテルとかはないと思うけど…」と言ってはいたけど
あの目線は本当に怖かった。
今のままホテルに連れ込まれたら双葉のふりを通す自信はなかったぞ。
まあ、そんなこともなく一日過ぎたのは何より。
それにしても双葉の奴、俺の頼みの方は聞いてるのか?
倉科さんのためにせっかく手に入れてきたコンサートのチケット。
それが今日あるのだ。だから双葉に代役を頼んでおいたけど…大丈夫だろうな?
倉科さんもうれしそうな顔してたし、あれは間違いなく脈ありだ。
もちろん、その後はデート。うまくいくかどうかはわからないけど、双葉なら女同士喜ばせるコツとかわかってるんじゃないか?
俺の方は心の中で気持ち悪がりながらでも男の喜びそうな演技をしていたからとしあきも結構喜んでいた。
うまくいったという自信はある。
だからこれくらいさせてもらってもいいだろう。
といっても自分の体だからどこからも拒否されることはない。
そろそろ股間も濡れてきた。この快感、クセになりそう。
「あ…」
つい漏れてしまう声も双葉の、女の子の声。
いつもより罪悪感が少し軽い分遊んでみようか。
「…きよひこ…来て…」
俺の名前を呼んでみる。
でも、出てくる声が双葉の声。
ちょっといいかも。
「いいよ…きよひこなら…」
指は乳首とクリトリスをいじくり続ける。
俺の意識は揺蕩う快感の中に浸り始めていた。
登り詰めるような快感のピークを過ぎてしまうと冷めるもの早かった。
あっという間に頭が冷静さを取り戻す。
これだけは慣れないなぁ。
後始末も大変だし…でも、明日になったらまたしたくなっちゃうんだよね。
なんで男の体ってこんななの?
先ほどまでの自慰行為の後始末をしながらきよひこの体の双葉は愚痴る。
思い出したくもない先週のあの日、階段から落ちてきよひこ君と入れ替わっちゃった。
そのあと、ドタバタの果てに元に戻るまでお互いがお互いを演じることになった。
その過程で男の生理現象も、その処理法も経験した。
なんでうら若い乙女のあたしが男のアレを握りしめなきゃいけないの?
と思いながらも切ない股間から湧き上がる性欲は抑えようもない。
結局昼間でもトイレと偽って時々学校でもアレをしごいて自慰をする有様。
もう、やだなぁ。
今日だってコンサートに由佳里と行ってた時にアレが大きくなっちゃったのはびっくりしちゃった。
あわててトイレに行ったけど…男っていつもあんなことしてるの?
普通のトイレや着替え、万事に面倒でないのはいいんだけど、これだけは慣れないなぁ。
え?由佳里とどうしたって?
もちろんコンサート終わったらそのままバイバイしたわよ。
だって知ってるもん。由佳里がサッカー部の佐藤君と付き合ってるの。
でも、執拗に迫られてしかたなくオーケーしたけど佐藤君に見られたらどうしようなんて悩み相談されたくらいだもの。
その当人が目の前にいるなんて夢にも思わずうれしそうな顔をしていたけど…裏を知ってるからあたしも素直に喜べない。
これ以上不毛に時間を過ごしたくないし、必要以上に見つかって佐藤君に見つかって修羅場なんて嫌すぎだもん。
それにしても、さっき試しにあたしの裸を思い出して自慰をしてみたけど、あれもなかなかね。
あたしの体があたしのアレに貫かれて悶えるさまなんか想像するだけで涎が出そう。
なんだかんだ言ってこの体になじんでるのかなあたし。
晴れた日。
チャペルの前で新婚の二人が立っている。
緊張した表情でタキシードを着ているとしあき。
そして、その隣で幸せそうな顔でウェディングドレスを着ている…あたし?
そんなはずはない。あたしはあたし。
じゃあ、あなたは誰なの?
駈け出そうとするあたしを呼び止める声が聞こえた
「ちょっと、どこへいくの?きよひこ」
その声は、確かに記憶のある誰かの声。
え?あたしがきよひこ?
そこで目が覚めた。
夢?じゃあ、あたしの体も?
ぼんやりする意識の中で身を起こし、自分の体を確認して…
やっぱり、きよひこの、男の体のままだ。
「はあ…」
ため息の声も本来のあたしよりずっと低い男の声。
自分が元の体に戻っていないことにがっかりしてしまう。
ここ数日間繰り返していることだった。
今まで十数年間女として生きてきたんだから、男のままなんていいはずがなかった。
そう思いながらもどうすることもできない今の体の現実にため息をつきながらトイレへ向かう。
昨日のコンサートのこと、そして由佳里のことをどうきよひこに伝えようか考えながら。
よく晴れた日だった。
自分を取り囲み、祝福してくれている人たち。
一点の曇りもない幸せな心境のまま俺は立っていた。
俺の体を包むのは純白のウェディングドレス。
え?なんで俺がウェディングドレスなんか着てるんだ?
そして、そんな俺に手を伸ばす男の姿。
え?あれは…俺?
そこで目が覚めた。
視界に広がる部屋は双葉の部屋だった。
身を起こすと、わざわざ見るまでもなくぷるんという感触があった。
俺の胸についているもの、おっぱいが伝える感触だった。
「はあ…」
自分の体を見ながら着くため息もかわいらしい。
それがかえって恥ずかしくなってしまう。
声を出してもなにをしても女性らしさをまとわりつかせてしまうのにはいつまでたっても慣れることができない。
いそいそとトイレに立つ。
女になってから我慢が効かなくなっていることを経験で知っていたので早めに立つ習慣がついていた。
じょろろろろ…
自分の股間からダイレクトに垂れ流される感覚と音。
先週までは知らなかった。知りたくなかった女の体の一面だった。
こんなこといつまで続くんだろう。
としあきとのデートはうまくこなした自信はあるけど、としあきが何かを期待している目線を送ってくるのが気になって仕方なかった。
俺も双葉への手前で愛想はふりまきながらも、嫌な予感は最後までつきまとった。
目がはっきりと言っていたのだ。「エッチさせろ」と。
冗談じゃない。せめて俺と双葉がお互いに元の体に戻ってからにしてくれ。
その後ならいくらでも応援してやるから。
このまま戻らなかったら、としあきと…
自分の想像に思いきり首を振る。
嫌だ嫌だ。なんとしても元に戻るぞ。
女の体なんか…
女の体も…悪くないかもしれない。
双葉になってからの一週間で女になってよかったといまだに思えるのが自慰と体育の時間の着替えだった。
周りは無防備に半裸を晒す女生徒ばかりで、自分も女の子。
男の意識が消えたわけではないきよひこにとって数少ない楽しみでもあった。
ブルマで太腿をさらしながら受ける体育の授業の恥ずかしさも、これで埋め合わせがつくほどだった。
本当ならじっくりと目に焼き付けたいけど、不審がられないようにちらちら見る程度にとどめなければならないのが難しいところ。
万が一にもおかしな挙動を見咎められたら…
「ねえ、双葉ちゃん?」
そう思っているときに後ろからかけられた声にドキッとした。
振り向くとそこにいたのは倉科さんだった。
ちょうどいい。双葉の体なのをいいことに昨日の首尾を聞き出せないか…とおもっていたら
先に倉科さんの方から口を開いてきた。
「実は…」
男の体でよかったことは「気楽」の一言に尽きる。
今の双葉の偽らざる本音だった。
男子トイレで立小便しているときの解放感はなんともいえないものだった。
用を済ませてトイレを出ると、あたしの体のきよひこと鉢合わせした。
「ちょっと…」
ただならぬ表情であたしを連れ出すその表情には有無を言わさぬ勢いがあった。
あたしを連れ出してきたのはきよひこと双葉が入れ替わった非常階段の前だった。
「…そっか。由佳里から直接聞いちゃったんだ」
本当は、できるだけオブラートにくるんできよひこに事の経緯を話そうと思っていたのだが、
それをする前に本人が由佳里に直接聞いてくるということは考えてなかったのだ。
「知っていたのか?」
「うん。でも、そんなこと本人の前で言えなかったから」
きよひこはうつむいたまま何かを考えていた。
そして、やおら立ち上がるとあたしの手を引いて非常階段に引き出した。
「え?ちょっと、何するの?」
「ここからもう一度飛び降りたら元に戻るかもしれない。」
「ええ?本気?」
目の前の非常階段は避難用ということで3階から地上まで一直線の階段で、ヘタに落ちたら命に係わりかねないものだった。
「俺は本気だ。もう、こんな体嫌なんだ。
女の体はとにかく気を使うし恥ずかしい
なにより倉科さんと一緒になるどころか、このままだととしあきに抱かれかねない。
こんな生活もう嫌なんだ。俺は自分の体に戻るぞ」
「ちょっと!やめてよ!」
女の体のきよひこ。本当なら男の体の双葉の方が体力では勝っているはずだが、思いつめた目のきよひこの勢いは止められなかった。
双葉の体のきよひこはきよひこの体の双葉を押し出すように非常階段から突き落とすとそれとともに自分も階段に躍り出た。
「いや!や、いやぁぁぁぁぁ!!!!!」
保健室から一人の女生徒が出てきた。
手足にあざが残る痛々しい姿だった。
「気をつけなさいよ。今度からあの非常階段立ち入り禁止にしとかないと。」
校医の先生にそう言われながら出てきた双葉の表情は沈んでいた。
結局非常階段から落ちても元に戻ることはなかった。
それどころかきよひこの体の双葉は転落の衝撃で片足を骨折し、近くの病院に担ぎ込まれてしまった。
元に戻れなかったショックと短慮で双葉にけがをさせてしまった自責の念に打ちひしがれながらとぼとぼと歩く。
結局双葉は翌日からしばらく学校を休むことになった。
双葉の分もノートを取りながら迎える休み時間。
双葉の体のきよひこの前にとしあきがやってきた。
「あのさ、次の日曜暇?」
そういいながらとしあきは目の前に映画のチケットを見せた。
その映画はヒロインが戦闘ヘリに追われながらナマコを投げつけるシーンが話題を呼んでいる人気ラブストーリー。
前売り完売でチケットが手に入らないという評判だった
「これ、ものすごい人気だろ?一緒に行かない?」
たしかにきよひこも一度は見てみたいと思っていた映画でもあった。
きよひこの体の双葉にけがをさせてしまった負い目もあって、ひとまずOKすることにした。
これで断ったらとしあきにも双葉にも悪いし、しかたないよな…でも…
きよひこの胸には言いようのない嫌な予感が広がっていた。
抱き合い、お互いを求める男女。
女は幸せの絶頂に登り詰めるような嬌声を上げる。
自分がメスであることを惜しげもなくふりまく声。
そして、絶え間なく打ちこまれる「男」を受け入れる淫靡な表情。
男女の営みはやがて絶頂を迎え…
きよひこ。いや、双葉の体のきよひこは画面に向かいため息をつく。
目の前で繰り広げられる男女の営みに対し、どうしても「女性」側に感情移入できなかったのだ。
たしかに今の体は双葉の体だ。
しかし、「男」として生まれ育った意識のまま、「女性として男に抱かれる」ことに抵抗がなくなることはなかった。
もしかしたら次のデートでとしあきに抱かれてしまうことになるかもしれない。
そこで、「予行演習」というわけではないが、しかるべき動画で「自分が女として男を受けいれる」心の準備をしようと思ったのだが、やはりどこかにそれを受け入れられない自分がいるのだった。
もう…元に、男に戻ることはないというのに…
「はあ…」
ため息をつきながらも見下ろす乳房や女性らしい体には反応してしまう「心」が恨めしかったが、それを捨て去るほどに自分が女である現実を受け入れることもできなかった。
自分が、この女体を抱く立場だったら…
目の前の乳房を揉みながら、「自分」がそこにいるつもりで「いいわ…きよひこ…」
そう言うことで、さも自分が双葉を抱いているような気分になる。
しかし、今味わっている快感は「きよひこをうけいれる双葉」のもの。
そういう不可思議な背徳感に迫られながら今日も自分の体を弄ることになるのだった。
自分にペニスがあれば。少し前まで自分にあたりまえのようについていたペニスがほしい…そう思いながら。
ギブスで固められた足はまだ自由な動きを許さなかったが、手は多少の擦り傷だけで支障なく動かすことができた。
はあ…ため息をつきながら今の状況を思い返す。
賢者モードというやつか、今の自分がひどく冷静なことに気付く双葉、正確にはきよひこの体の双葉だった。
もう、元に、女に戻ることはないのか…
妙にそれをさばさばした気分で受け入れていた双葉だった。
男の体に慣れてしまったというのもあるだろうが、やはり万事に気楽なことがしっくりしたのだろう。
ただ、一つだけ気がかりはあった。
処女のまま手放さざるを得なくなった「双葉」の体。
それを取り戻すことはできない。
だからこそ、その「はじめて」をだれがどうやって奪うのか。そこが気になって仕方ないのだった。
このままだったらとしあきかな…でも、きよひこがどんな顔してとしあきに抱かれるのかな…
それを想像すると妙に可笑しかった。
いっそ…あたしがもらっちゃおうかな?あたしの処女だし…
「・・・そんなわけで、今度の日曜にとしあきと映画を見に行くことになったんだ」
ここは双葉の家。
昨日の経緯を双葉に説明しながら男言葉を遠慮なくしゃべれるのにホッとする。
「え?本当?今度も代わりに行ってもらわないといけないけど、大丈夫なの?」
「短気起こしてこんなことになっちゃったからね。それに戻る方法も思いつかないし」
そういってギブスが痛々しい足を見る。
「でも…あいつの目がちょっと気になるんだよな。なんか下心が見えるというか…もし、キスとか、エッチとかしようなんていわれたら…」
それを聞くきよひこの体の双葉の頭に奇妙な考えが浮かんだ。
「不安なの?」
「当たり前じゃないか。前のデートだってとしあきの視線が気になって仕方なかったんだぞ」
前のデートの時のとしあきの顔が頭をよぎる。
「でも、あたしが思うに、今度こそはエッチしそうだなって気がするんだよね。本当は前のデートの時にそうなっちゃうかなって気はしてたくらいだから」
意地悪な笑みを浮かべる
「じょ、冗談はやめてくれよ」
本気で驚くきよひこ。ちょっとおもしろいかも。
「冗談じゃないよ。あたしだってとしあきとだったらいいかななんて話してたくらいだから。うん、間違いなく次は来るね」
確信的に言って脅かすと本当にびっくりした顔をする。
「脅かさないでくれよ。何とか次もごまかせないかと考えてたのに」
怯えるあたしの顔。こうしてみると我ながらかわいいな。
「脅しじゃないよ。あたしだって楽しみにしてたんだから。できるならあたしが代わってあげたいくらいだわ。でも、そんな調子で本当にエッチなんてことになって失敗されても困るわ。」
一呼吸おいてつづける
「それなら…さ。ここであたしと試しにやってみない?」
その一言に本当に驚いた顔をする
「ほ…本気か?自分としたいのか?」
後ずさるきよひこ
「本気よ。としあきとエッチするならともかく、初めてのエッチで失敗されるくらいならこの場で自分でやっちゃう。きよひこだって、としあきより自分の方が抵抗ないなんてこと、ない?」
あたしの顔が本気でおびえてる。今、あたしどんな顔してるだろう
「それに、あたしだったらそんなに痛くないかもよ。だってあたしの体だもん」
お、ちょっと考えた?
「ねえ、はっきりさせて。このままとしあきとエッチさせられるか、ここで自分の体で練習するか。どっちがいいの?」
うん、いい感じ。あたしの理性がそろそろもたないから、はっきりさせないと襲っちゃうよ。
しばらく考えたきよひこだったが、しばし考えたのちに首を縦に振った。やった!
「やっぱり…服も脱ぐのか?」
恥ずかしそうにしているきよひこ。しかし、その顔はどこか期待している顔でもある。
「そうよ。当然じゃない。ひさしぶりだわ。あたしの裸見るの」
言われるままに服を脱いでいくきよひこ。
ひさしぶりに見る自分の裸。
自分の体をこうしてみるのなんて初めてのせいか、見ているこっちがドキドキしてしまう。
「すっかり女の子の下着脱ぐのも慣れたんじゃない?」
そう聞くと真っ赤な顔になるきよひこがかわいかった。
清彦が太腿をよじらせて必死に股間を隠してショーツを脱ぐ。
露わになった何もない茂み。
何か懐かしいな…って濡れてない?
ははあ、これを見られるのが恥ずかしかったんだな。
濡れてるなら後のことは楽そうね。
「こ…これでいいか?」
全裸になったきよひこ
きよひこは露わになった自分の裸から目をそらすように横を向いている。
さて、これからどうしようか…
なんでこんなことになってるんだろう。
としあき相手に女として最後までできる自信はない。
だからといって、まさか自分とするなんて…
そりゃ、何の準備もなくとしあきに襲われるよりはマシかもしれないし、相手が双葉だったら自分の体だから遠慮してくれるかもしれない。
何かあっても止めてくれるだろう。たぶん。
それよりなにより女のセックスに興味がないわけではなかったのだ。
そんなわけで、今自分が見ている前で服を脱いでいた。
しかし、他人、しかも自分の顔が目の前にありながら服を脱ぐのは…ねぇ。
冷静な自分の顔と、視界に入る女の体。
目に飛び込むたびに自分が女だと認識させられる恥ずかしさがますます増幅される。
って、股間がなにかじゅんとしてる?
なんでこんな状況で感じてるんだこの体は?
濡れてることを気づかれないように股間を隠してパンティを脱ぐ。
気付かれたかな?
一糸まとわぬ姿になった俺。
自分の体を直視できないまま視線をそらす。
しばしの沈黙ののち、双葉は言った
「キスからしてみる?」
ちょ、ちょっとまて?いきなりキス?
うろたえているうちに俺の顔が目の前に来る。
間髪入れずに口の中に舌が入り込んでくる。
「も…もご…」
口の中を他人の舌が動き回る。
目の前の顔はもう、近すぎてまともに見えない。
口の中を力強く蹂躙する大きな舌とざらりとした唇。
顔がまともに見えないせいか、思ったほどの嫌悪感はなかった。
案ずるより産むがやすしというやつか?
そう思いながら双葉に身を委ねていった。
双葉はそのまま俺の胸に手をかける。
女になってからなんども自分で慰めてきた乳房が他人の手で揉みしだかれる。
自分でするのと全く違う感覚。
包まれるような快感があふれた。
体全体がぼわっと上気するような感覚。
男のころなら股間が熱くなるような感覚を覚えたかもしれないが、その代わりに体の芯が切なく熱くなるのがわかる。
入れ替わってから何度も自分でしてきたときとはまた違う快感。
双葉にとって自分の体だからというだけでは説明ができない切なさが心を満たした。
自分が男に抱かれている嫌悪感は意外と少なかった。
相手が俺の体だからか中身が双葉だからか…
もう、そんなことはどうでもよかった。
女の体の持つ快感をもっと味わいたくなっていた。
双葉の指はいつしか股間に滑り込む。
じゅん…と女の部分が自然に男の指を受け入れているのがわかる。
「もう準備はいいようね」
双葉はそう言って俺をベッドに横たえる。
いよいよ入ってくるんだ。そう思いながら俺は太腿を大きく広げて男を受け入れるポーズをとる。
まさか、俺がこんなことをする羽目になるなんて…
俺の体の双葉はいそいそとズボンとパンツを脱ぎ捨てていた。そこに目に飛び込むペニス
ゴクリ…
唾をのむ。
俺のってこんなに大きかったのか?
女の目線からか、散々見慣れた自分のモノが、今まで見たことがないくらい凶暴に見えた。
我慢…できるかな?
快感を吹き飛ばすほどの不安感が胸をよぎる。
双葉が不器用にそのペニスにゴムをつける。
俺、今から抱かれるんだ。女として。
ドキドキが止まらない。
好奇心と不思議な倒錯感が胸を満たす。
双葉がギブスの足を不自由そうに引きずりながら俺の中の間に割って入る。
股間の、女の入り口に何かが当たる感触がした。
ちょっと前までは俺のだったペニスだ。
今から、これが俺の中に入るんだ。
一呼吸して目を閉じる。
目を閉じるとドキドキしている心境がわかる。
体中が火照る感覚。
今まで自分でしてきたときとは全然違う。
そう考えるだけで女の入り口がじゅんとうずくのを感じる。
その中に大きな何かが食い込んでいく…
「ん……あぁ…」
息を押し出されて思わず声が漏れる。
股間に熱い何かが挿入される感覚。
それとともに瞬間的に痛みが伝わる。
これが破瓜の痛みか。
でも、心の中の不思議な満足感が痛みを上回った。
何なんだろうか、この満足感。
女として体が感じている充足感がそのまま伝わったのか、俺自身の心がいつの間にか女に染まったのか
そんなことはどうでもよかった。
体全体が感じている満足感の中では、痛みすらそのスパイスになっていた。
「大丈夫?」
俺の上で心配そうに尋ねる双葉。
「大丈夫…だから…続けて…」
体を串刺しにされている圧迫感でとぎれとぎれにしか話せない。
双葉はそれを聞いて俺の体にさらに腰を押し込んでいく。
自分の中に入り込む熱い感覚。
そして、それとともに急速に広がる快感。
それをもたらしているのが少し前までの自分のペニス。
倒錯した感覚がさらに快感を増していた。
いったん奥まで入り込んだペニスが引き抜かれ、再び押し込まれる。
「あぁ…あん…」
思わずあげる喘ぎ声。
自分があげているは思えない声。
そう…今の自分は女の子なんだ。
女の子らしく喘いでもいいんだ。
そう思ったとたん何かが弾けた。
抽送を続ける双葉に合わせるように押し込まれた息が喘ぎ声になり、突き上げられる体に意識が持ち上げられる。
最初は自然と出ていた喘ぎ声だったが、今はそれにつられるように体が「女であること」を求めてくる。
それとともに、大きな快感が波になってくる。
「あん!あん!あん!」
もう、止められない。
快感の波に女の体が泳ぐ。
いつしか自分から腰を振るようになっていた。
「ああああぁっ!!!」
背中を大きくのけぞらせて体全体が痙攣したように動く。
目の前が真っ白になった。
そして、それとともに双葉が一層強く腰を押し込んだ。
双葉もイッたのかな
同時に達したことに満足感を覚えながら快感の海に沈む
これが女の子のセックス…
こんなに気持ちいいなんて…
火照りが止まらない。
それとともに心の中に女のセックスの快感が刻み込まれているのを感じていた。
「ああああぁっ!!!」
背中を大きくのけぞらせて体全体が痙攣したように動く。
目の前が真っ白になった。
そして、それとともに双葉が一層強く腰を押し込んだ。
双葉もイッたのかな
同時に達したことに満足感を覚えながら快感の海に沈む
これが女の子のセックス…
こんなに気持ちいいなんて…
火照りが止まらない。
それとともに心の中に女のセックスの快感が刻み込まれているのを感じていた。
夢中になるまま乳房を揉む。
ひさしぶりの女の子の体の感触に夢中になっていた。
股間はもう必死に自己主張を始めている。
こっちはどうかな?
あたしは股間に指を滑らせた。
やっぱり濡れてた。
ああ、もう!我慢なんかできない!
「もう準備はいいようね」
そういってきよひこをベッドに横たえる。
男になってから思うけど、男の力ってやっぱりすごい。
きよひこが自分から体を開いてくる。
不安ながらもどこか期待している顔。
すぐにでも挿入したかったけど焦る気持ちがはやってなかなかうまくズボンが脱げない。
おまけに足にギブスなんかしてるからベッドに乗るのも大変。
なんとかパンツまで脱いで、今度はゴムを…え?いつ買ったのかって?
そりゃ、なんとかいいくるめてあたしを抱く決心をつけた時から。
いくらなんでも自分の体をいきなり妊娠なんてさせたくないもの。
って説明はもういいでしょ。さあ、挿れるわ…
あたしは膝立ちのままきよひこの股間に割り込んでいく。
えいっ
ずぶぶぶ…
思ったよりキツイ…もうちょっと素直に入らないの?あたしの体
えい、もっと入れちゃえ
なんとかカメさんが入ったかな。
きよひこの膣内の暖かさが伝わってきた。
ああ、こんなに気持ちいいなんて。
きよひこを見おろす。自分を組み伏せてるなんてなんか不思議な感覚。
でも、やっぱり辛そうに見えた。
「大丈夫?」
聞いてみると、
「大丈夫…だから…続けて…」
と言ってくれた。
その健気さが可愛かった。
一気に腰を押し込んでみた。
ああ…何、この気持ちよさ。
あたしのおちんちんをきっちり締め付けるけど、ぬるぬるした感触がおちんちんを包み込む。
腰をそのまま引いて、改めて突き入れる。
「ああ、気持ちいいよう…」
つい声が漏れる。
でも、もっともっと気持ちよくなりたい
きよひこも上気した顔で喘ぎ声をあげていた。
あたしは登り詰める快感を確かに感じていた。
女の体を突き上げる征服感。
女の子みたいに喘ぎ声を上げるきよひこ。
男ってこんな気持ちなんだ。
そして、きよひこの喘ぎ声がひときわ大きくなった刹那、ビクビクっとおちんちんからあの感触が伝わった。
もう、出ちゃうんだ。
最後にえいっ!
大きく腰を突き入れて、そのままあたしは男の欲望を吐き出した。
あたし…男としてやっちゃったんだ…
急速に冷めていく意識。
目の前で上気した顔のあたしの顔を見る。
この体がちょっと前までの自分の体。
あたし…自分を犯しちゃったんだ。
男の気持ちの赴くまま、男みたいに力いっぱいあたしの処女を自分で奪ったんだ。
たとえようのない罪悪感のようなものが芽生えていた。
それがきよひこに対してなのかとしあきに対してなのか自分でもわからなかった。
双葉の体のきよひこが満足感にあふれた顔で横たわっている。
惚けたような表情のまま、きよひこが言った。
「もう…一回…したいよ」
金曜日の校内、何の気なしに一人の生徒が歩いていた。
周囲をみて、いままでと変化があればそこに目が行く。
なんということはない、普通の日常だ。
いままで何もなかった非常階段。
そこに工事現場のようなフェンスがたてられ、人が行き来しているのについ目が行ってしまう。
その、非常階段の真下まで歩いて行ったとき…
黒い何かが上から降ってきた。
きよひこの体の双葉が松葉杖をつきながら久しぶりに登校する。病院に行ってからの登校だったので遅れての登校だった。
丁度休み時間だったらしく何人かの生徒があちこちを歩いているのが見える。
校舎に目をやると双葉ときよひこが入れ替わり、今の双葉が骨折する原因となった非常階段が工事のシートでおおわれようとしているのが見えた。
あたしが自分の処女を奪った日。
きよひこともう一回エッチして帰らせたが、翌日も家に来てはエッチしようといってきた。
どうやらきよひこは女の子のエッチにはまってしまったようだ。
あたしもエッチ自体は嫌ではなかったが、それでも今のままではまずいことはわかる。
だから、それ以来きよひこから逃げ回っている。
きよひこは今は双葉、あたしの体なのだ。
だから、としあきに見つかったらどんなことになるか想像するだけで恐ろしい。
せっかく女の子のエッチに抵抗がなくなったんだからとしあきとちゃんと付き合っててほしい…
そこまで考えてから想念は途切れる
本当にきよひこにあたしとしてとしあきとエッチしてほしいの?
それじゃまるであたしがきよひこに寝取られたみたいじゃない
だからといって元に戻るすべはないし、今のあたしがとしあきと付き合うこともできない。
どうすればいいの?
そう思っていると茂みの奥で誰かが話しているのがわかった。
茂みを覗くと知ってる顔があった。
その話の内容に既視感を覚える。
もしかして?
あたしは茂みをくぐって奥にいた人影に声をかけた
「どうしたの?としあき」
日曜日
「面白かったね」
「ええ、そうね」
としあきと並んで歩く俺。
胸のドキドキがとまらない。
こうして双葉のふりをしての二度目のデートだけど、うまくすればとしあきとセックスできる。
あの日に自分の体としたときの快感を思い出す。
もう一度あの快感を味わいたかった。
しかし、なぜか双葉はあの日以降俺と会いたがらないみたいだ。
今日、うまくすれば双葉として堂々とあの快感を味わえるのだ。
さて、映画館を出て左側にホテル街、右側が駅だ。
俺は素早くとしあきの手を引いて左側に行く。
「え?そっちは?」
焦るとしあきに今日のために何度も練習したセリフを言う
「ホテル、行こ?」
どきまぎしながらとしあきがついてくるのが面白い。
ホテルに着いてから、俺が服を脱いでいる間、あわてながら服を脱ぐとしあき
あわてすぎじゃないのか?シャツまで脱いでもう脱ぐものないのに上着を脱ごうとし始めるし、
パンツ脱いだ後妙にあわててるし。
そんなこんなで全裸で向き合う二人。
目の前に見えるとしあきのペニス。
さすがに少し気が引けた。
自分と違う男の全裸を見てもうひとりの自分が警鐘を鳴らす。
本当に男に犯されたいのか?
逡巡しているうちにとしあきの顔が近づいてきた。
思わず目を閉じる。
あ…これって…
双葉とのキスを思い出だした。
口内を蹂躙される感覚もあのときのままだった。
そこに不思議な安堵感を覚えた俺はとしあきの舌を絡めながらお互いの味を感じあった。
男の唇ならではのざらっとした感覚が今度はよくわかる。
しかし、それが全然嫌ではなかった。
だって、今の俺は女なんだから。
やっぱり気持ちいい…
そう思った俺は身体の欲求に従うままとしあきの股間に手をあてがい、しごいていた。
徐々に大きくなるとしあきの男の部分とともに、自分の女陰が濡れていくのがわかる。
体の中が熱くなり、体の奥底が何かを求める。
俺はとしあきをベッドに押し倒し、その上にまたがった。
体中が双葉とのセックスで感じた女の快感を求めていた。
あの時とは違い、今度は自分から男のモノを咥えるのだ。
大きく足を開くと、股間に何もないのがはっきりわかる。
女になってから半月の間で慣れたつもりだったが、
体中が熱くなってるのに股間が全く動かないのは変な感じだった。
その代わりに股間の下には組み敷かれたとしあきと、完全に勃起したとしあきのモノがある。
俺は徐々に腰を下におろすとともに、としあきのモノを手で動かして自分の股間にあてがう。
としあきのモノが股間にあたった。
ごくりと唾をのむ。
自分から男のモノを咥えこむ。ほんの少し残った男のプライドが違和感を訴える。
それを振り切るように俺は腰を下ろした。
自分で自分を串刺しにする感覚。
そのまま、俺はとしあきを飲み込んでいった。
「あふぅ…」
自然と押し出される空気が声になる。
女の子の声で。
「は…入った…」
体の中を押し広げられる快感が広がる。
双葉の時以上の充足感と満足感。
熱い波が俺を突き上げる。
股間が痙攣するように熱く蠢く。
体がもっと男を求めている。
体の欲求が求めるままとしあきの上で自ら腰を振る。
まるで腰が自分の体じゃないようにリズミカルに動く。
自分で自分の体を穿っていく。
「あああっ…あん!あん!」
呼吸することさえ忘れそうなほど俺はとしあきを求めていた。
自分の女の部分が膣内のとしあきを締め付け、きゅうきゅうっと収縮する。
それとともに電撃のようなエクスタシーが広がる。
そして、興奮が絶頂に達しつつあるころ、魂を飛ばすような熱い何かが注ぎ込まれた。
「あ…あ…」
口がパクパク動くが、言葉にならない。
中に…出されたんだ…
とっさに男の心が悲鳴を上げるとともに、妊娠の恐怖が頭に浮かんだが、
じきにそれを吹き飛ばすほどの快感と充実感が上回った。
むしろ、好きな人の子供を身ごもれるかもしれない女の達成感を一杯に感じていた。
ズルリと抜けるペニス。
俺はとしあきの傍に崩れるように倒れこんだ。
目の前にはねっとりした愛液と精液でぬるぬるになったとしあきのモノがある。
俺の中に不思議な欲求が芽生えた。
俺は、としあきのモノに口を近づけて、舌でなめる。
俺はいったい何を?心の中のすっかり小さくなった小さな声が抗議するが、
今の心を占める女の欲求が俺の舌を動かし、ちろちろと精液をなめとる。
美味しくない。けど、全然嫌ではなかった。
俺はいつしか口を大きく開けてとしあきのペニスを咥えていた。
そうか…今の俺はそういう体なんだ。
不思議とそれに納得しながらとしあきに奉仕する。
一度射精したペニスが、やがてじわじわと大きくなっていく。
そして、口の中に納まりきらなくなった頃、
やおらとしあきが起き上がる。
驚いて口を離すと、としあきは俺に組み付いて
「こ、今度は後ろからさせてよ」
そういって俺を四つん這いにさせた。
え?これって…
そう思う間もなく今度はバックで俺は突き上げられた。
自分から尻を突き上げた格好で男に突かれる。
被虐的な快感がたまらなかった。
「ああっ!いい!お願い!もっと突いて」
女の子らしくおねだりするとますます快感が増す。
としあきが腰を打ちつけていく。
俺の心は女としての喜びに満たされていた。
あのときは、驚いたわ。
いきなり頭上から人が落ちてくるなんて思わなかったもの。
それでも、もっと驚いたのはそのあと。
頭上から振ってきた人とぶつかって、気が付いたら目の前に自分の体があったなんて。
目の前でどきまぎしているあたし、倉科由佳里の体。
じゃあ、今のあたしは?
あたしは自分の体を引っ張ってお互いの状況を確認しあう。
どうやら今のあたしははずみで非常階段から落ちたとしあき君の体らしい。
そして、今のあたしの体にとしあき君が入っている。
お互いしっちゃかめっちゃかなやり取りの末にあたしととしあき君とでしばらく入れ替わって暮らすことになった。
当面の生活について話し合う中で、としあきが日曜日に双葉とデートであるのを知った。
そこで、あたしはとしあきのフリをして双葉とデートすることにした。
生まれて初めての男の立場からのデート。
知ってた女の子の意外な一面が見られて意外と面白かった。
あんなに甘えてくるんだ、双葉って。
高い視線から甘えられるのもちょっと優越感感じちゃう。
いつもより小さく見える双葉に寄りかかられて見る映画は格別だった。
そして、そのあと何より驚いたのは双葉が自分からあたしをホテルに誘ったこと。
え?双葉ってそんなに積極的だったの?
あたしだって佐藤君とエッチしたことはあるけど、そんなに積極的だったことなんてなかったから本当に驚いた。
そのまま、あたしは流れに流されるまま男のエッチを知ってしまった。
そうなると、悪乗りしたくなるもので、エッチの後あたしの男の部分を咥えてた(双葉ってそんなことまでするんだと改めて驚いた)
双葉を四つん這いにさせてバックの体勢にした。
うわ、女の子の割れ目が目の前に見えちゃった。
あたしもあんまりまじまじとは見たことのない部分。
しかも、双葉のそれ。
男の人ってこんな風に見てたんだ。
股間にはちょっと痛みがあるけどさっきと同じように立っちゃってる男の部分。
そのままあたしは双葉を突き上げた。
この征服感、たまらないわ。
でも、今のあたしはとしあきじゃなく、倉科由佳里。
ここまでやっちゃうとちょっと罪悪感を覚えてしまう。
明日になったらとしあきと相談して、これからのこと話し合おうかな。
双葉に自分の正体を打ち明けるのはその後にしとこう。
だって、今あたしをとしあきだと思ってあたしのに突き上げられながら腰を振ってる双葉にこんなこと打ち明けるわけにはいかないもの。
ヘタすると絶交かな?
でも、いまはそんなことどうでもよくなるくらい男のエッチって気持ちいい。
双葉の中に包まれる暖かさも、双葉を犯してる征服感も最高。
あ、そろそろイッちゃいそうだけど…我慢我慢…この感覚も心地いい。
そういえば、としあきは今どうしてるのかな?
股間への突き上げとともに視界は複雑に揺れ動く。
衝撃とともに感じる熱い感覚と、飛び散る快感。
ときおりきゅっと体の奥から切ない感覚が走る。
これって…子宮を突かれてるのか?
男にはない器官への感覚に自分の感情が制御不能になる
口からは女の子のような喘ぎ声が上がる
「ああっ!あん…あ…いや…」
視界の隅に鏡に映る自分の姿が見える。
何度目かの絶頂を迎えながらも紅潮した表情で男に突き上げられる女の子の姿。
それが今の俺だった。
今の俺…あんなエッチな女の子なんだ。
そんな倒錯感に浸る間もなく力強い抽送が視界をあさっての方向に飛ばす。
突き上げられて放埓に泳ぐ体。思わず目の前の男にしがみつき、腰の動きに身を任せる。
再び鏡が視界に入る。
目の前には顔を紅潮させながらきよひこと抱き合う倉科さんの痴態が映っていた。
あれが今の俺の姿なんだ…
快感に思考を支配されるとしあきの脳裏に、今の体の持ち主である倉科さんと入れ替わった時のことがよみがえってきた。
あれは金曜日のこと
工事の準備に入っていた非常階段の前で工事のおっさんに突き飛ばされて階段を転落して、気が付いたら目の前に俺がいた。
目を白黒させながら茂みに入り、自分と倉科さんが入れ替わったことを知る。
しばらくはお互いに入れ替わって生活することとその上での注意事項、あと週末に双葉とデートの予定があることを話した後、
俺の体の倉科さんは茂みから出て行った。
そして、ひとりぽつんと女の体のまま立ち尽くしていた。
マジかよ。俺が女?大丈夫かな?言葉づかいとか男っぽいと今の俺が変な目で見られるし、
倉科さんも俺の体でちゃんと双葉とデートできるだろうか。
そもそも今度こそ双葉と…なんて思ってたのになんでこうなったんだ?
そんなことを考えてたら茂みをくぐってきよひこが姿を現してきた。
「どうしたの?としあき」
口から心臓が出そうなほどびっくりした。
まさか、こんなに早くバレるなんて?
全く予想外のできごとにどう返答しようか考えつかずに口をパクパクさせていた俺にきよひこが言った言葉はさらに予想外のものだった。
今のきよひこが双葉と入れ替わっていること、そして、先週デートした「双葉」はきよひこだったこと。
それらを目の前のきよひこ、いや双葉に聞かされたがさすがに今目の前で起きたことと同じこととはいえにわかには信じがたかった。
しかし、そのあといくつかの問答の末に自分たちしか知らないはずの今までのデートでのことなどを話されるにつれ、納得するようになってきた。
「頼むから、今のことは他には言わないでくれ」
そう双葉に頼む。
「当然でしょ。今のあたしの境遇だってとしあきに他でしゃべられたら困るし、第一あたしたちみたいな人じゃないと信用してくれないじゃない。
協力するわよ。こうなったらお互いさまだし」
力強いセリフが心強い。きよひこの体で女言葉を使われるとちょっとアレだが。
そう思ったら股間に急に見覚えのある感覚が襲ってきた。
「あ、あのさ、双葉…俺、もしかしてトイレ行きたくなってきたんだけど」
双葉は妙に手慣れた手つきで俺を女子トイレに連れて行く。
「ここでするしかないでしょ?安心して、一番人気のないところ選んだげたから一目気にしないでしてらっしゃい」
何から何まで妙に手慣れていることに疑問を感じたが、背に腹は代えられない。
えいやっと覚悟を決めて女子トイレに入り個室で腰を下ろして小便した。
えと…スカート履いたままするのか?女って
男のころに比べて急激に進む股間の尿意が俺の思考能力を奪って、
半ば強引にスカートをパンティごと下ろして腰を下ろした。
ちょろろろろ…
股間から直接小便が出る感覚。
つい視線が下に落ち、何もない股間を目の当たりにして思わず目をそらす。
うう…何なんだ、この恥ずかしさは。
べ、別に倉科さんの体に変な感情を抱いたわけじゃないぞ。つい下を見てしまっただけなんだからな。
弁解する相手がいるわけではないが、それでも思考がぐるぐるめぐる。
股間の感覚が消えた。
終わったのか?じゃあ…拭くのだよな?
トイレットペーパーをめくって股間にあてがう。
ん…なんか変な感じ。
こんなもんかな?
パンティーを履きなおして、スカートを引き上げる。
横にファスナーがあることに今気づく。
「ふう…」トイレから出てくると、松葉杖を突いたきよひこ、いや双葉がいた。
「ねえ?女の子の体、まだよくわかってないでしょ?」
そりゃそうだ。さっき女になったばかりなんだから。
「放課後、うちに来ない?女の子のこといろいろ教えてあげられるわよ?」
…もう少し違うシチュエーションで聞きたかった台詞だが、ありがたいことには変わりなかった。
「そうそう、上手いじゃない。これでいつでも彼氏とデートできるわよ」
「…そんなこと言われてもあんまりうれしくないぞ」
と、いうわけで俺はきよひこの家にいた。
途中、今の自分の体である倉科さんの家に寄って、双葉に言われるままにいくつかの服や化粧品を持ち出した。
そして、今ここで、ファッションショーもどきや化粧の練習をさせられているというわけだ。
「でも、かわいいわよ、ほら」
鏡を出されて、ドキッとする。
目の前にいるのは一段女らしくなった倉科さんの顔だった。
口紅を塗った唇を噛みながらはにかむと、鏡の中の倉科さんも同じ顔をする。
ちょっとコメントに困りながらも鏡の中の自分に見とれていた。
今の俺、こんな顔なんだ。
双葉が、ちょっと悲しそうな顔をする。
「どうしたんだ?」
「だって、今のあたしは、としあきにそんな顔見せられない。だってあたしは今男なんだもの」
きよひこの、いや双葉の目から涙がこぼれるのを見た。
「あたしだって、としあきにそんな顔して見せたかった。そして、としあきとエッチしたかった。
でも、今のあたしじゃ、としあきに抱かれることなんかできない。こんな男の体になんか、なりたくなかったよう…」
涙声のきよひこ。しかし、その向こうにはっきりと「双葉」が見えた。
大粒の涙を流す双葉の顔がはっきりと見えた。
俺は、思わず、目の前の双葉を押し倒して抱きかかえた。
「双葉…好きだ」
それだけを言うと、双葉と唇を合わせる。
「ん…」
されるがままの双葉にいとおしさを感じながら、服を脱ごうとまさぐり…違和感に気付く
そうか…今は俺が女なんだ…
どこか気まずくなった俺は双葉から体を離した。
なんてことしたんだ、俺は倉科さんの体で。
双葉が、後ろから体を絡める。
「え?いったい何を?」
「お願い、続き…しようよ?」
それを聞いて大慌てする俺
「続きって…俺、今倉科さんの体なんだぞ、そして、双葉はきよひこの体だし…」
「でも、心はあたしととしあきじゃない?体も男と女。お願い。今だけとしあきとつながっていたいの。どんな形でも」
そう言われたら、むげには断れない。でも、どうすればいいんだ?この体で。
とりあえず服を脱いで…っていいのか?
大慌ての俺の腰に手をやった双葉はそのままパンティーを引き下ろした。
そして、すかさず俺の胸にあるふくらみに手を当てる。
「え?…あん…」
電撃のような感触を受けて思わずあげる声に赤面する。
まるで女の子みたいじゃないか。こんな声を双葉に聞かれるなんて…
そう思う間もなく双葉の手は俺の股間に伸びる。
「ちょ、ちょっとま…あんっ…」
自分でもまだ触れたことのない女の部分から伝わる感触に困惑する。
もう、双葉のされるがままだった。
双葉からもたらされる、男の時とはあまりにも違う感覚に戸惑いながら、立っているのがやっとだった。
双葉はギブスにまかれた足を不器用に操りながらズボンを下ろすと、そこにすっかり大きくなった男の部分が見えた。
そして、俺の首に手をまきつけると、ベッドめがけて後ろ向きに倒れこんだ。
「としあき、来て…」
股間に当たる感触が、半ばとろけかけた俺の心に冷や水をかける。
来てというのは…この場合俺が…するってことだよな?自分で
俺は、恐る恐る自分の腰を調節して、女の部分にあてる。
双葉も手で動かしてくれていた。
目の前にいるのは双葉なんだ。
そう思い定めて、俺は双葉の上に腰を下ろした。
ずぷ…ずぷぷぷ…
「あふんっ」
声が漏れた。
何なんだ?この感覚。
体の中に大きなものが入り込む。
自分を貫く感覚に悶えながら、俺は腰を下ろしていった。
「としあき…気持ちいいよ」
双葉の声が心地よい。
少し形は変わったけど…一緒にいたい。双葉を気持ちよくさせたい。
俺は、慣れない女の体を不器用に操りながら、双葉の上で腰を振った。
「ああ、としあき…いい…」
もう、低い声は気にもならなくなっていた。
今、俺の下でよがっているのは紛れもない双葉なんだから。
体を超えて心がつながった実感が快感を増幅させる。
自分が腰を振るたびに俺の下の双葉が快感にあえぐ。
まるで自分が男として双葉を抱いているような錯覚すら味わう。
それでいて、自分を串刺しにしている「双葉」からは女の快感を体中に刻み込んでくる。
その倒錯感が心を真っ白にしていった。
「イクの?一緒にいこ?」
双葉はそう言って体を起こして抱き寄せてくる。
お互い何度も口付けを交わしながら登り詰めていった
「双葉…好きだ…」
「あたしも…」
こうして、俺と双葉は、体こそ変われど、初めての経験をした。
その後、土曜日曜とお互いの家でお互いを求めあった。
そして…その続きを思い出そうとした刹那、絶頂の快感が記憶を塗りつぶした。
「ああああーーーっ!!」
女としての絶頂を感じた俺は、双葉にしがみついて絶頂の衝撃を受け止めた。
俺は、双葉の腕枕に抱かれながらまどろんでいた。
最初こそぎこちなかった立場を入れ替えてのセックスは、回を増すごとに双葉は男らしくなり、俺は女らしくなっていった。
その方が、自然と気持ちよくなれることに気付いたからだ。
「明日から…また学校始まっちゃうね」
「そうだよな。倉科さんになんて言おうか。怒られないかな?勝手にこんなことして」
それを聞いて双葉はいたずらっぽい笑みを浮かべた
「じゃ、怒られる前に、もう一回しよ?」
双葉が俺を押し倒す。
これでよかったんだ。形は違っても、俺たち二人はひとつになれる。
これからも、一生ずっと。
翌日の放課後、きよひこの体の双葉と、倉科由佳里の体のとしあきはあの非常階段の前に立っていた。
「こんなときにきよひこは掃除当番だって。由佳里は?」
不満そうに言う双葉。
「倉科さんは日直だと。もう少し待とうか」
今日、放課後4人でこれからのことを話し合うべくとしあきは倉科さんに、双葉はきよひこに伝えていた。
そして、今非常階段の前にいるのはこの二人だけだった。
「…ね?じゃ、二人が来る前に、ちょっとだけ、しない?」
そういう双葉に苦笑する間もなく双葉は俺を非常階段に連れ込んだ。
非常階段を数段上がったところ。廊下からは見えない場所だった。
俺は、双葉に押し倒されるままに非常階段に倒れこんだ…
抱かれあいながら、一身にお互いを求めあう男女。
「ああっ、いい。いいわ。もっと、もっとあなたのを…頂戴…」
「くうっ…お前の中…気持ちいい…ぜ」
男はそう言って腰を一層奥へ突き入れる。
「…や…また…イクッ…」
女は男にしがみつき、全身で女の喜びを受け入れている。
「あん!あん!あん!」
男は、自分に抱かれる女の嬌声に負けないように、腰を振り、ペニスを突き入れる。
一見するとただのセックスのようだが、生まれた時はお互い逆の性別だった。
男は、生まれた時は女だったのだが、すっかり男としてのセックスにも慣れていた。
女の体への未練も、もうない。
今の幸せは、男として今俺の下でよがっている女を幸せにすることだった。
絶頂を迎えて、俺の体は精液を吐き出す。
はじめて男としての絶頂を迎えた日のことを思い出す。
あの日のこと、そして、男として過ごした残りの学生生活。
就職、かつて男だった今の妻との結婚。
妻との間には子供もできたが、それでも今の妻は女として俺を求めてきてくれる。
それが、どうしようもなくいじらしく、愛らしかった。
行為を終えると、男のセックス特有の急速に冷める感情とともに、あの日のこと思い浮かべる。
あれは、俺が男になった翌週の月曜日のことだった。
もとのこの体の持ち主、としあきと放課後会う約束をしていた。
日直の仕事を終えて、非常階段に向かう途中、掃除当番だった双葉と会い、上る途中に、地響きのような音が鳴り響いた。
非常階段が崩落したことを知ったのはそのすぐ後だった。
それから目の回るような日々がはじまった。
泣きながら崩落した非常階段へ向かう双葉と俺。
そして、知らされるあまりにも残酷な現実。
元の自分の体が死んだこと、そして、自分の葬式にとしあきとして参列したこと。
すべてが現実感のない中で進んでいった。
そして、気が付いたら俺はすっかり元気をなくしていた双葉の横にいた。
もう、帰る体はない。
これからは倉科由佳里としての自分は捨てて、としあきとして生きていこうと決意した日だった。
妻になった双葉には今も自分の正体については話していない。
そこに罪悪感を感じないではなかったが、自分の夫がとしあきでなく、女友達の由佳里だったということ、
何よりとしあきの心がすでにこの世にないことをどう双葉に伝えるべきか。
それを考えあぐねたまま月日だけがたっていたのだ。
クラスメートが死んだせいかすっかりしょげていた双葉を知っている俺には
隣にいた男が誰よりも好きなとしあきではなく、赤の他人だったなんて言ったらどれだけ悲しむか…
それなら俺が一生「としあき」のままでいよう。
それでもいい、と今の俺は思う。
もう、俺は倉科由佳里ではなく、としあきなんだ。
えっちの後のまどろんだ空気の中で、自分の夫の顔を見る。
なぜか、この時だけは人を寄せ付けないような顔つきになるとしあきをみるのも今は楽しみだった。
あの日、双葉の死と自分の元の体の死をつきつけられたあたしは、世界がひっくり返ったような絶望にいた。
これからどうやって生きていたらいいのかわからなかった。
もはや元の体には絶対に戻れない。
それどころか自分の身の上を知るただ一人の人がいなくなった以上、
「本当は男なんだ。きよひこなんだ」といってもだれからも信用はされまい。
周囲を双葉の友達やクラスメートに囲まれながらもただ一人世界の中から孤立してしまったような気持ちになっていた。
そんなとき、ずっとそばにいたとしあきが、どうしようもなく頼もしく見えた。
それから、あたしは女として生き、としあきと結婚して母になった。
としあきには今もあたしの正体は話していない。
学生時代以来何度も男女として体を重ねてきた妻が本当は男だったなんて知った時のとしあきの失望が目に浮かぶからだ。
あたしの心を今に至るまで支え続けてきた最愛の人にそんな失望は味わわせたくなかった。
それなら、一生あたしは女として、双葉として生きていこう。
そう心に決めているのだ。
いまのあたしには男の自覚はすっかり消えた。
でも、時折男のころの記憶がよみがえることがある。
それも、としあきとエッチしているときだった。
時々、目の前にいるとしあきが、男だったころのかなわぬ恋の対象だった倉科さんに見える時がある。
今日も、絶頂を迎える前に目の前にあのときのままの倉科さんが見えた。
そして、それが浮かぶたびにちょっとした罪悪感を感じる。
今のあたしは女。そしてとしあきの妻だから。
でも、ちょっとだけ心残りめいた気持ちが芽生えてしまうときもあった。
一度だけでも、倉科さんとエッチしてみたかったなぁ…
俺は誰に言うとない呟きを放ちながら右手を乳房に、左手を股間に伸ばす。
パジャマをはだけて目の前にさらされる乳房は先週までは双葉の、そして今は俺のものだった。
慎重に乳房を揉んでは手と自分の乳房からの感触を味わう。
股間は…もう少し濡らしてからかな。
女性の自慰の気持ちよさと、双葉の体でこんなことをしている罪悪感。
それらを楽しみながら過ごすひと時は先週に階段から落ちて双葉と入れ替わってからの楽しみだった。
入れ替わってすぐはお風呂とかトイレとか着替えとかもあったけど…結局日常の風景だけに慣れてしまうと意外とすぐに面白くなくなってしまった。
トイレなんかはむしろ一日たてばかえっていちいち下着を脱いで腰かけるのが面倒になってしまったし、お風呂に至ってはもう苦役だった。
やり方は初日に双葉に聞いてその通りにしていたけど、女の子はこんなことずっとやっているんだなぁと変なところで感心してしまった。
結局、残った楽しみはこの自慰だけ。
もちろん今は俺の体を使っている双葉にはこんなことをしているなんて言ってない。
だからますます背徳的な快感をもたらしてしまう。
ただし、今日だけはその背徳感も幾分か薄かった。
今日一日のことを思い出す。
あの一日の代償としてならこのくらいやってもいいだろう。
としあきとのデートを双葉のふりをして過ごしたのだ。
もちろん双葉からの頼みである。
「こんなこと、言えないし今日のデート代わりに行ってきて。
お願いだからとしあき君におかしく思われるようなことだけはしないでね」
一週間たっても俺の前では女言葉が抜けない俺の体の双葉はそう頼んだけど、
俺にとっては気持ち悪いことこの上ない一日だった。
何しろ隣にいるのは俺からすればたわいもないエロ話をしていたとしあきだった。
その隣で女の子らしく振舞わなきゃいけないなんてどんな罰ゲームだよ。
おまけにとしあきの目線が俺の胸とか腰とかに絡み付いてるのが丸わかり。
双葉は疑われない程度の基礎知識を教えてくれた時に「まさかホテルとかはないと思うけど…」と言ってはいたけど
あの目線は本当に怖かった。
今のままホテルに連れ込まれたら双葉のふりを通す自信はなかったぞ。
まあ、そんなこともなく一日過ぎたのは何より。
それにしても双葉の奴、俺の頼みの方は聞いてるのか?
倉科さんのためにせっかく手に入れてきたコンサートのチケット。
それが今日あるのだ。だから双葉に代役を頼んでおいたけど…大丈夫だろうな?
倉科さんもうれしそうな顔してたし、あれは間違いなく脈ありだ。
もちろん、その後はデート。うまくいくかどうかはわからないけど、双葉なら女同士喜ばせるコツとかわかってるんじゃないか?
俺の方は心の中で気持ち悪がりながらでも男の喜びそうな演技をしていたからとしあきも結構喜んでいた。
うまくいったという自信はある。
だからこれくらいさせてもらってもいいだろう。
といっても自分の体だからどこからも拒否されることはない。
そろそろ股間も濡れてきた。この快感、クセになりそう。
「あ…」
つい漏れてしまう声も双葉の、女の子の声。
いつもより罪悪感が少し軽い分遊んでみようか。
「…きよひこ…来て…」
俺の名前を呼んでみる。
でも、出てくる声が双葉の声。
ちょっといいかも。
「いいよ…きよひこなら…」
指は乳首とクリトリスをいじくり続ける。
俺の意識は揺蕩う快感の中に浸り始めていた。
登り詰めるような快感のピークを過ぎてしまうと冷めるもの早かった。
あっという間に頭が冷静さを取り戻す。
これだけは慣れないなぁ。
後始末も大変だし…でも、明日になったらまたしたくなっちゃうんだよね。
なんで男の体ってこんななの?
先ほどまでの自慰行為の後始末をしながらきよひこの体の双葉は愚痴る。
思い出したくもない先週のあの日、階段から落ちてきよひこ君と入れ替わっちゃった。
そのあと、ドタバタの果てに元に戻るまでお互いがお互いを演じることになった。
その過程で男の生理現象も、その処理法も経験した。
なんでうら若い乙女のあたしが男のアレを握りしめなきゃいけないの?
と思いながらも切ない股間から湧き上がる性欲は抑えようもない。
結局昼間でもトイレと偽って時々学校でもアレをしごいて自慰をする有様。
もう、やだなぁ。
今日だってコンサートに由佳里と行ってた時にアレが大きくなっちゃったのはびっくりしちゃった。
あわててトイレに行ったけど…男っていつもあんなことしてるの?
普通のトイレや着替え、万事に面倒でないのはいいんだけど、これだけは慣れないなぁ。
え?由佳里とどうしたって?
もちろんコンサート終わったらそのままバイバイしたわよ。
だって知ってるもん。由佳里がサッカー部の佐藤君と付き合ってるの。
でも、執拗に迫られてしかたなくオーケーしたけど佐藤君に見られたらどうしようなんて悩み相談されたくらいだもの。
その当人が目の前にいるなんて夢にも思わずうれしそうな顔をしていたけど…裏を知ってるからあたしも素直に喜べない。
これ以上不毛に時間を過ごしたくないし、必要以上に見つかって佐藤君に見つかって修羅場なんて嫌すぎだもん。
それにしても、さっき試しにあたしの裸を思い出して自慰をしてみたけど、あれもなかなかね。
あたしの体があたしのアレに貫かれて悶えるさまなんか想像するだけで涎が出そう。
なんだかんだ言ってこの体になじんでるのかなあたし。
晴れた日。
チャペルの前で新婚の二人が立っている。
緊張した表情でタキシードを着ているとしあき。
そして、その隣で幸せそうな顔でウェディングドレスを着ている…あたし?
そんなはずはない。あたしはあたし。
じゃあ、あなたは誰なの?
駈け出そうとするあたしを呼び止める声が聞こえた
「ちょっと、どこへいくの?きよひこ」
その声は、確かに記憶のある誰かの声。
え?あたしがきよひこ?
そこで目が覚めた。
夢?じゃあ、あたしの体も?
ぼんやりする意識の中で身を起こし、自分の体を確認して…
やっぱり、きよひこの、男の体のままだ。
「はあ…」
ため息の声も本来のあたしよりずっと低い男の声。
自分が元の体に戻っていないことにがっかりしてしまう。
ここ数日間繰り返していることだった。
今まで十数年間女として生きてきたんだから、男のままなんていいはずがなかった。
そう思いながらもどうすることもできない今の体の現実にため息をつきながらトイレへ向かう。
昨日のコンサートのこと、そして由佳里のことをどうきよひこに伝えようか考えながら。
よく晴れた日だった。
自分を取り囲み、祝福してくれている人たち。
一点の曇りもない幸せな心境のまま俺は立っていた。
俺の体を包むのは純白のウェディングドレス。
え?なんで俺がウェディングドレスなんか着てるんだ?
そして、そんな俺に手を伸ばす男の姿。
え?あれは…俺?
そこで目が覚めた。
視界に広がる部屋は双葉の部屋だった。
身を起こすと、わざわざ見るまでもなくぷるんという感触があった。
俺の胸についているもの、おっぱいが伝える感触だった。
「はあ…」
自分の体を見ながら着くため息もかわいらしい。
それがかえって恥ずかしくなってしまう。
声を出してもなにをしても女性らしさをまとわりつかせてしまうのにはいつまでたっても慣れることができない。
いそいそとトイレに立つ。
女になってから我慢が効かなくなっていることを経験で知っていたので早めに立つ習慣がついていた。
じょろろろろ…
自分の股間からダイレクトに垂れ流される感覚と音。
先週までは知らなかった。知りたくなかった女の体の一面だった。
こんなこといつまで続くんだろう。
としあきとのデートはうまくこなした自信はあるけど、としあきが何かを期待している目線を送ってくるのが気になって仕方なかった。
俺も双葉への手前で愛想はふりまきながらも、嫌な予感は最後までつきまとった。
目がはっきりと言っていたのだ。「エッチさせろ」と。
冗談じゃない。せめて俺と双葉がお互いに元の体に戻ってからにしてくれ。
その後ならいくらでも応援してやるから。
このまま戻らなかったら、としあきと…
自分の想像に思いきり首を振る。
嫌だ嫌だ。なんとしても元に戻るぞ。
女の体なんか…
女の体も…悪くないかもしれない。
双葉になってからの一週間で女になってよかったといまだに思えるのが自慰と体育の時間の着替えだった。
周りは無防備に半裸を晒す女生徒ばかりで、自分も女の子。
男の意識が消えたわけではないきよひこにとって数少ない楽しみでもあった。
ブルマで太腿をさらしながら受ける体育の授業の恥ずかしさも、これで埋め合わせがつくほどだった。
本当ならじっくりと目に焼き付けたいけど、不審がられないようにちらちら見る程度にとどめなければならないのが難しいところ。
万が一にもおかしな挙動を見咎められたら…
「ねえ、双葉ちゃん?」
そう思っているときに後ろからかけられた声にドキッとした。
振り向くとそこにいたのは倉科さんだった。
ちょうどいい。双葉の体なのをいいことに昨日の首尾を聞き出せないか…とおもっていたら
先に倉科さんの方から口を開いてきた。
「実は…」
男の体でよかったことは「気楽」の一言に尽きる。
今の双葉の偽らざる本音だった。
男子トイレで立小便しているときの解放感はなんともいえないものだった。
用を済ませてトイレを出ると、あたしの体のきよひこと鉢合わせした。
「ちょっと…」
ただならぬ表情であたしを連れ出すその表情には有無を言わさぬ勢いがあった。
あたしを連れ出してきたのはきよひこと双葉が入れ替わった非常階段の前だった。
「…そっか。由佳里から直接聞いちゃったんだ」
本当は、できるだけオブラートにくるんできよひこに事の経緯を話そうと思っていたのだが、
それをする前に本人が由佳里に直接聞いてくるということは考えてなかったのだ。
「知っていたのか?」
「うん。でも、そんなこと本人の前で言えなかったから」
きよひこはうつむいたまま何かを考えていた。
そして、やおら立ち上がるとあたしの手を引いて非常階段に引き出した。
「え?ちょっと、何するの?」
「ここからもう一度飛び降りたら元に戻るかもしれない。」
「ええ?本気?」
目の前の非常階段は避難用ということで3階から地上まで一直線の階段で、ヘタに落ちたら命に係わりかねないものだった。
「俺は本気だ。もう、こんな体嫌なんだ。
女の体はとにかく気を使うし恥ずかしい
なにより倉科さんと一緒になるどころか、このままだととしあきに抱かれかねない。
こんな生活もう嫌なんだ。俺は自分の体に戻るぞ」
「ちょっと!やめてよ!」
女の体のきよひこ。本当なら男の体の双葉の方が体力では勝っているはずだが、思いつめた目のきよひこの勢いは止められなかった。
双葉の体のきよひこはきよひこの体の双葉を押し出すように非常階段から突き落とすとそれとともに自分も階段に躍り出た。
「いや!や、いやぁぁぁぁぁ!!!!!」
保健室から一人の女生徒が出てきた。
手足にあざが残る痛々しい姿だった。
「気をつけなさいよ。今度からあの非常階段立ち入り禁止にしとかないと。」
校医の先生にそう言われながら出てきた双葉の表情は沈んでいた。
結局非常階段から落ちても元に戻ることはなかった。
それどころかきよひこの体の双葉は転落の衝撃で片足を骨折し、近くの病院に担ぎ込まれてしまった。
元に戻れなかったショックと短慮で双葉にけがをさせてしまった自責の念に打ちひしがれながらとぼとぼと歩く。
結局双葉は翌日からしばらく学校を休むことになった。
双葉の分もノートを取りながら迎える休み時間。
双葉の体のきよひこの前にとしあきがやってきた。
「あのさ、次の日曜暇?」
そういいながらとしあきは目の前に映画のチケットを見せた。
その映画はヒロインが戦闘ヘリに追われながらナマコを投げつけるシーンが話題を呼んでいる人気ラブストーリー。
前売り完売でチケットが手に入らないという評判だった
「これ、ものすごい人気だろ?一緒に行かない?」
たしかにきよひこも一度は見てみたいと思っていた映画でもあった。
きよひこの体の双葉にけがをさせてしまった負い目もあって、ひとまずOKすることにした。
これで断ったらとしあきにも双葉にも悪いし、しかたないよな…でも…
きよひこの胸には言いようのない嫌な予感が広がっていた。
抱き合い、お互いを求める男女。
女は幸せの絶頂に登り詰めるような嬌声を上げる。
自分がメスであることを惜しげもなくふりまく声。
そして、絶え間なく打ちこまれる「男」を受け入れる淫靡な表情。
男女の営みはやがて絶頂を迎え…
きよひこ。いや、双葉の体のきよひこは画面に向かいため息をつく。
目の前で繰り広げられる男女の営みに対し、どうしても「女性」側に感情移入できなかったのだ。
たしかに今の体は双葉の体だ。
しかし、「男」として生まれ育った意識のまま、「女性として男に抱かれる」ことに抵抗がなくなることはなかった。
もしかしたら次のデートでとしあきに抱かれてしまうことになるかもしれない。
そこで、「予行演習」というわけではないが、しかるべき動画で「自分が女として男を受けいれる」心の準備をしようと思ったのだが、やはりどこかにそれを受け入れられない自分がいるのだった。
もう…元に、男に戻ることはないというのに…
「はあ…」
ため息をつきながらも見下ろす乳房や女性らしい体には反応してしまう「心」が恨めしかったが、それを捨て去るほどに自分が女である現実を受け入れることもできなかった。
自分が、この女体を抱く立場だったら…
目の前の乳房を揉みながら、「自分」がそこにいるつもりで「いいわ…きよひこ…」
そう言うことで、さも自分が双葉を抱いているような気分になる。
しかし、今味わっている快感は「きよひこをうけいれる双葉」のもの。
そういう不可思議な背徳感に迫られながら今日も自分の体を弄ることになるのだった。
自分にペニスがあれば。少し前まで自分にあたりまえのようについていたペニスがほしい…そう思いながら。
ギブスで固められた足はまだ自由な動きを許さなかったが、手は多少の擦り傷だけで支障なく動かすことができた。
はあ…ため息をつきながら今の状況を思い返す。
賢者モードというやつか、今の自分がひどく冷静なことに気付く双葉、正確にはきよひこの体の双葉だった。
もう、元に、女に戻ることはないのか…
妙にそれをさばさばした気分で受け入れていた双葉だった。
男の体に慣れてしまったというのもあるだろうが、やはり万事に気楽なことがしっくりしたのだろう。
ただ、一つだけ気がかりはあった。
処女のまま手放さざるを得なくなった「双葉」の体。
それを取り戻すことはできない。
だからこそ、その「はじめて」をだれがどうやって奪うのか。そこが気になって仕方ないのだった。
このままだったらとしあきかな…でも、きよひこがどんな顔してとしあきに抱かれるのかな…
それを想像すると妙に可笑しかった。
いっそ…あたしがもらっちゃおうかな?あたしの処女だし…
「・・・そんなわけで、今度の日曜にとしあきと映画を見に行くことになったんだ」
ここは双葉の家。
昨日の経緯を双葉に説明しながら男言葉を遠慮なくしゃべれるのにホッとする。
「え?本当?今度も代わりに行ってもらわないといけないけど、大丈夫なの?」
「短気起こしてこんなことになっちゃったからね。それに戻る方法も思いつかないし」
そういってギブスが痛々しい足を見る。
「でも…あいつの目がちょっと気になるんだよな。なんか下心が見えるというか…もし、キスとか、エッチとかしようなんていわれたら…」
それを聞くきよひこの体の双葉の頭に奇妙な考えが浮かんだ。
「不安なの?」
「当たり前じゃないか。前のデートだってとしあきの視線が気になって仕方なかったんだぞ」
前のデートの時のとしあきの顔が頭をよぎる。
「でも、あたしが思うに、今度こそはエッチしそうだなって気がするんだよね。本当は前のデートの時にそうなっちゃうかなって気はしてたくらいだから」
意地悪な笑みを浮かべる
「じょ、冗談はやめてくれよ」
本気で驚くきよひこ。ちょっとおもしろいかも。
「冗談じゃないよ。あたしだってとしあきとだったらいいかななんて話してたくらいだから。うん、間違いなく次は来るね」
確信的に言って脅かすと本当にびっくりした顔をする。
「脅かさないでくれよ。何とか次もごまかせないかと考えてたのに」
怯えるあたしの顔。こうしてみると我ながらかわいいな。
「脅しじゃないよ。あたしだって楽しみにしてたんだから。できるならあたしが代わってあげたいくらいだわ。でも、そんな調子で本当にエッチなんてことになって失敗されても困るわ。」
一呼吸おいてつづける
「それなら…さ。ここであたしと試しにやってみない?」
その一言に本当に驚いた顔をする
「ほ…本気か?自分としたいのか?」
後ずさるきよひこ
「本気よ。としあきとエッチするならともかく、初めてのエッチで失敗されるくらいならこの場で自分でやっちゃう。きよひこだって、としあきより自分の方が抵抗ないなんてこと、ない?」
あたしの顔が本気でおびえてる。今、あたしどんな顔してるだろう
「それに、あたしだったらそんなに痛くないかもよ。だってあたしの体だもん」
お、ちょっと考えた?
「ねえ、はっきりさせて。このままとしあきとエッチさせられるか、ここで自分の体で練習するか。どっちがいいの?」
うん、いい感じ。あたしの理性がそろそろもたないから、はっきりさせないと襲っちゃうよ。
しばらく考えたきよひこだったが、しばし考えたのちに首を縦に振った。やった!
「やっぱり…服も脱ぐのか?」
恥ずかしそうにしているきよひこ。しかし、その顔はどこか期待している顔でもある。
「そうよ。当然じゃない。ひさしぶりだわ。あたしの裸見るの」
言われるままに服を脱いでいくきよひこ。
ひさしぶりに見る自分の裸。
自分の体をこうしてみるのなんて初めてのせいか、見ているこっちがドキドキしてしまう。
「すっかり女の子の下着脱ぐのも慣れたんじゃない?」
そう聞くと真っ赤な顔になるきよひこがかわいかった。
清彦が太腿をよじらせて必死に股間を隠してショーツを脱ぐ。
露わになった何もない茂み。
何か懐かしいな…って濡れてない?
ははあ、これを見られるのが恥ずかしかったんだな。
濡れてるなら後のことは楽そうね。
「こ…これでいいか?」
全裸になったきよひこ
きよひこは露わになった自分の裸から目をそらすように横を向いている。
さて、これからどうしようか…
なんでこんなことになってるんだろう。
としあき相手に女として最後までできる自信はない。
だからといって、まさか自分とするなんて…
そりゃ、何の準備もなくとしあきに襲われるよりはマシかもしれないし、相手が双葉だったら自分の体だから遠慮してくれるかもしれない。
何かあっても止めてくれるだろう。たぶん。
それよりなにより女のセックスに興味がないわけではなかったのだ。
そんなわけで、今自分が見ている前で服を脱いでいた。
しかし、他人、しかも自分の顔が目の前にありながら服を脱ぐのは…ねぇ。
冷静な自分の顔と、視界に入る女の体。
目に飛び込むたびに自分が女だと認識させられる恥ずかしさがますます増幅される。
って、股間がなにかじゅんとしてる?
なんでこんな状況で感じてるんだこの体は?
濡れてることを気づかれないように股間を隠してパンティを脱ぐ。
気付かれたかな?
一糸まとわぬ姿になった俺。
自分の体を直視できないまま視線をそらす。
しばしの沈黙ののち、双葉は言った
「キスからしてみる?」
ちょ、ちょっとまて?いきなりキス?
うろたえているうちに俺の顔が目の前に来る。
間髪入れずに口の中に舌が入り込んでくる。
「も…もご…」
口の中を他人の舌が動き回る。
目の前の顔はもう、近すぎてまともに見えない。
口の中を力強く蹂躙する大きな舌とざらりとした唇。
顔がまともに見えないせいか、思ったほどの嫌悪感はなかった。
案ずるより産むがやすしというやつか?
そう思いながら双葉に身を委ねていった。
双葉はそのまま俺の胸に手をかける。
女になってからなんども自分で慰めてきた乳房が他人の手で揉みしだかれる。
自分でするのと全く違う感覚。
包まれるような快感があふれた。
体全体がぼわっと上気するような感覚。
男のころなら股間が熱くなるような感覚を覚えたかもしれないが、その代わりに体の芯が切なく熱くなるのがわかる。
入れ替わってから何度も自分でしてきたときとはまた違う快感。
双葉にとって自分の体だからというだけでは説明ができない切なさが心を満たした。
自分が男に抱かれている嫌悪感は意外と少なかった。
相手が俺の体だからか中身が双葉だからか…
もう、そんなことはどうでもよかった。
女の体の持つ快感をもっと味わいたくなっていた。
双葉の指はいつしか股間に滑り込む。
じゅん…と女の部分が自然に男の指を受け入れているのがわかる。
「もう準備はいいようね」
双葉はそう言って俺をベッドに横たえる。
いよいよ入ってくるんだ。そう思いながら俺は太腿を大きく広げて男を受け入れるポーズをとる。
まさか、俺がこんなことをする羽目になるなんて…
俺の体の双葉はいそいそとズボンとパンツを脱ぎ捨てていた。そこに目に飛び込むペニス
ゴクリ…
唾をのむ。
俺のってこんなに大きかったのか?
女の目線からか、散々見慣れた自分のモノが、今まで見たことがないくらい凶暴に見えた。
我慢…できるかな?
快感を吹き飛ばすほどの不安感が胸をよぎる。
双葉が不器用にそのペニスにゴムをつける。
俺、今から抱かれるんだ。女として。
ドキドキが止まらない。
好奇心と不思議な倒錯感が胸を満たす。
双葉がギブスの足を不自由そうに引きずりながら俺の中の間に割って入る。
股間の、女の入り口に何かが当たる感触がした。
ちょっと前までは俺のだったペニスだ。
今から、これが俺の中に入るんだ。
一呼吸して目を閉じる。
目を閉じるとドキドキしている心境がわかる。
体中が火照る感覚。
今まで自分でしてきたときとは全然違う。
そう考えるだけで女の入り口がじゅんとうずくのを感じる。
その中に大きな何かが食い込んでいく…
「ん……あぁ…」
息を押し出されて思わず声が漏れる。
股間に熱い何かが挿入される感覚。
それとともに瞬間的に痛みが伝わる。
これが破瓜の痛みか。
でも、心の中の不思議な満足感が痛みを上回った。
何なんだろうか、この満足感。
女として体が感じている充足感がそのまま伝わったのか、俺自身の心がいつの間にか女に染まったのか
そんなことはどうでもよかった。
体全体が感じている満足感の中では、痛みすらそのスパイスになっていた。
「大丈夫?」
俺の上で心配そうに尋ねる双葉。
「大丈夫…だから…続けて…」
体を串刺しにされている圧迫感でとぎれとぎれにしか話せない。
双葉はそれを聞いて俺の体にさらに腰を押し込んでいく。
自分の中に入り込む熱い感覚。
そして、それとともに急速に広がる快感。
それをもたらしているのが少し前までの自分のペニス。
倒錯した感覚がさらに快感を増していた。
いったん奥まで入り込んだペニスが引き抜かれ、再び押し込まれる。
「あぁ…あん…」
思わずあげる喘ぎ声。
自分があげているは思えない声。
そう…今の自分は女の子なんだ。
女の子らしく喘いでもいいんだ。
そう思ったとたん何かが弾けた。
抽送を続ける双葉に合わせるように押し込まれた息が喘ぎ声になり、突き上げられる体に意識が持ち上げられる。
最初は自然と出ていた喘ぎ声だったが、今はそれにつられるように体が「女であること」を求めてくる。
それとともに、大きな快感が波になってくる。
「あん!あん!あん!」
もう、止められない。
快感の波に女の体が泳ぐ。
いつしか自分から腰を振るようになっていた。
「ああああぁっ!!!」
背中を大きくのけぞらせて体全体が痙攣したように動く。
目の前が真っ白になった。
そして、それとともに双葉が一層強く腰を押し込んだ。
双葉もイッたのかな
同時に達したことに満足感を覚えながら快感の海に沈む
これが女の子のセックス…
こんなに気持ちいいなんて…
火照りが止まらない。
それとともに心の中に女のセックスの快感が刻み込まれているのを感じていた。
「ああああぁっ!!!」
背中を大きくのけぞらせて体全体が痙攣したように動く。
目の前が真っ白になった。
そして、それとともに双葉が一層強く腰を押し込んだ。
双葉もイッたのかな
同時に達したことに満足感を覚えながら快感の海に沈む
これが女の子のセックス…
こんなに気持ちいいなんて…
火照りが止まらない。
それとともに心の中に女のセックスの快感が刻み込まれているのを感じていた。
夢中になるまま乳房を揉む。
ひさしぶりの女の子の体の感触に夢中になっていた。
股間はもう必死に自己主張を始めている。
こっちはどうかな?
あたしは股間に指を滑らせた。
やっぱり濡れてた。
ああ、もう!我慢なんかできない!
「もう準備はいいようね」
そういってきよひこをベッドに横たえる。
男になってから思うけど、男の力ってやっぱりすごい。
きよひこが自分から体を開いてくる。
不安ながらもどこか期待している顔。
すぐにでも挿入したかったけど焦る気持ちがはやってなかなかうまくズボンが脱げない。
おまけに足にギブスなんかしてるからベッドに乗るのも大変。
なんとかパンツまで脱いで、今度はゴムを…え?いつ買ったのかって?
そりゃ、なんとかいいくるめてあたしを抱く決心をつけた時から。
いくらなんでも自分の体をいきなり妊娠なんてさせたくないもの。
って説明はもういいでしょ。さあ、挿れるわ…
あたしは膝立ちのままきよひこの股間に割り込んでいく。
えいっ
ずぶぶぶ…
思ったよりキツイ…もうちょっと素直に入らないの?あたしの体
えい、もっと入れちゃえ
なんとかカメさんが入ったかな。
きよひこの膣内の暖かさが伝わってきた。
ああ、こんなに気持ちいいなんて。
きよひこを見おろす。自分を組み伏せてるなんてなんか不思議な感覚。
でも、やっぱり辛そうに見えた。
「大丈夫?」
聞いてみると、
「大丈夫…だから…続けて…」
と言ってくれた。
その健気さが可愛かった。
一気に腰を押し込んでみた。
ああ…何、この気持ちよさ。
あたしのおちんちんをきっちり締め付けるけど、ぬるぬるした感触がおちんちんを包み込む。
腰をそのまま引いて、改めて突き入れる。
「ああ、気持ちいいよう…」
つい声が漏れる。
でも、もっともっと気持ちよくなりたい
きよひこも上気した顔で喘ぎ声をあげていた。
あたしは登り詰める快感を確かに感じていた。
女の体を突き上げる征服感。
女の子みたいに喘ぎ声を上げるきよひこ。
男ってこんな気持ちなんだ。
そして、きよひこの喘ぎ声がひときわ大きくなった刹那、ビクビクっとおちんちんからあの感触が伝わった。
もう、出ちゃうんだ。
最後にえいっ!
大きく腰を突き入れて、そのままあたしは男の欲望を吐き出した。
あたし…男としてやっちゃったんだ…
急速に冷めていく意識。
目の前で上気した顔のあたしの顔を見る。
この体がちょっと前までの自分の体。
あたし…自分を犯しちゃったんだ。
男の気持ちの赴くまま、男みたいに力いっぱいあたしの処女を自分で奪ったんだ。
たとえようのない罪悪感のようなものが芽生えていた。
それがきよひこに対してなのかとしあきに対してなのか自分でもわからなかった。
双葉の体のきよひこが満足感にあふれた顔で横たわっている。
惚けたような表情のまま、きよひこが言った。
「もう…一回…したいよ」
金曜日の校内、何の気なしに一人の生徒が歩いていた。
周囲をみて、いままでと変化があればそこに目が行く。
なんということはない、普通の日常だ。
いままで何もなかった非常階段。
そこに工事現場のようなフェンスがたてられ、人が行き来しているのについ目が行ってしまう。
その、非常階段の真下まで歩いて行ったとき…
黒い何かが上から降ってきた。
きよひこの体の双葉が松葉杖をつきながら久しぶりに登校する。病院に行ってからの登校だったので遅れての登校だった。
丁度休み時間だったらしく何人かの生徒があちこちを歩いているのが見える。
校舎に目をやると双葉ときよひこが入れ替わり、今の双葉が骨折する原因となった非常階段が工事のシートでおおわれようとしているのが見えた。
あたしが自分の処女を奪った日。
きよひこともう一回エッチして帰らせたが、翌日も家に来てはエッチしようといってきた。
どうやらきよひこは女の子のエッチにはまってしまったようだ。
あたしもエッチ自体は嫌ではなかったが、それでも今のままではまずいことはわかる。
だから、それ以来きよひこから逃げ回っている。
きよひこは今は双葉、あたしの体なのだ。
だから、としあきに見つかったらどんなことになるか想像するだけで恐ろしい。
せっかく女の子のエッチに抵抗がなくなったんだからとしあきとちゃんと付き合っててほしい…
そこまで考えてから想念は途切れる
本当にきよひこにあたしとしてとしあきとエッチしてほしいの?
それじゃまるであたしがきよひこに寝取られたみたいじゃない
だからといって元に戻るすべはないし、今のあたしがとしあきと付き合うこともできない。
どうすればいいの?
そう思っていると茂みの奥で誰かが話しているのがわかった。
茂みを覗くと知ってる顔があった。
その話の内容に既視感を覚える。
もしかして?
あたしは茂みをくぐって奥にいた人影に声をかけた
「どうしたの?としあき」
日曜日
「面白かったね」
「ええ、そうね」
としあきと並んで歩く俺。
胸のドキドキがとまらない。
こうして双葉のふりをしての二度目のデートだけど、うまくすればとしあきとセックスできる。
あの日に自分の体としたときの快感を思い出す。
もう一度あの快感を味わいたかった。
しかし、なぜか双葉はあの日以降俺と会いたがらないみたいだ。
今日、うまくすれば双葉として堂々とあの快感を味わえるのだ。
さて、映画館を出て左側にホテル街、右側が駅だ。
俺は素早くとしあきの手を引いて左側に行く。
「え?そっちは?」
焦るとしあきに今日のために何度も練習したセリフを言う
「ホテル、行こ?」
どきまぎしながらとしあきがついてくるのが面白い。
ホテルに着いてから、俺が服を脱いでいる間、あわてながら服を脱ぐとしあき
あわてすぎじゃないのか?シャツまで脱いでもう脱ぐものないのに上着を脱ごうとし始めるし、
パンツ脱いだ後妙にあわててるし。
そんなこんなで全裸で向き合う二人。
目の前に見えるとしあきのペニス。
さすがに少し気が引けた。
自分と違う男の全裸を見てもうひとりの自分が警鐘を鳴らす。
本当に男に犯されたいのか?
逡巡しているうちにとしあきの顔が近づいてきた。
思わず目を閉じる。
あ…これって…
双葉とのキスを思い出だした。
口内を蹂躙される感覚もあのときのままだった。
そこに不思議な安堵感を覚えた俺はとしあきの舌を絡めながらお互いの味を感じあった。
男の唇ならではのざらっとした感覚が今度はよくわかる。
しかし、それが全然嫌ではなかった。
だって、今の俺は女なんだから。
やっぱり気持ちいい…
そう思った俺は身体の欲求に従うままとしあきの股間に手をあてがい、しごいていた。
徐々に大きくなるとしあきの男の部分とともに、自分の女陰が濡れていくのがわかる。
体の中が熱くなり、体の奥底が何かを求める。
俺はとしあきをベッドに押し倒し、その上にまたがった。
体中が双葉とのセックスで感じた女の快感を求めていた。
あの時とは違い、今度は自分から男のモノを咥えるのだ。
大きく足を開くと、股間に何もないのがはっきりわかる。
女になってから半月の間で慣れたつもりだったが、
体中が熱くなってるのに股間が全く動かないのは変な感じだった。
その代わりに股間の下には組み敷かれたとしあきと、完全に勃起したとしあきのモノがある。
俺は徐々に腰を下におろすとともに、としあきのモノを手で動かして自分の股間にあてがう。
としあきのモノが股間にあたった。
ごくりと唾をのむ。
自分から男のモノを咥えこむ。ほんの少し残った男のプライドが違和感を訴える。
それを振り切るように俺は腰を下ろした。
自分で自分を串刺しにする感覚。
そのまま、俺はとしあきを飲み込んでいった。
「あふぅ…」
自然と押し出される空気が声になる。
女の子の声で。
「は…入った…」
体の中を押し広げられる快感が広がる。
双葉の時以上の充足感と満足感。
熱い波が俺を突き上げる。
股間が痙攣するように熱く蠢く。
体がもっと男を求めている。
体の欲求が求めるままとしあきの上で自ら腰を振る。
まるで腰が自分の体じゃないようにリズミカルに動く。
自分で自分の体を穿っていく。
「あああっ…あん!あん!」
呼吸することさえ忘れそうなほど俺はとしあきを求めていた。
自分の女の部分が膣内のとしあきを締め付け、きゅうきゅうっと収縮する。
それとともに電撃のようなエクスタシーが広がる。
そして、興奮が絶頂に達しつつあるころ、魂を飛ばすような熱い何かが注ぎ込まれた。
「あ…あ…」
口がパクパク動くが、言葉にならない。
中に…出されたんだ…
とっさに男の心が悲鳴を上げるとともに、妊娠の恐怖が頭に浮かんだが、
じきにそれを吹き飛ばすほどの快感と充実感が上回った。
むしろ、好きな人の子供を身ごもれるかもしれない女の達成感を一杯に感じていた。
ズルリと抜けるペニス。
俺はとしあきの傍に崩れるように倒れこんだ。
目の前にはねっとりした愛液と精液でぬるぬるになったとしあきのモノがある。
俺の中に不思議な欲求が芽生えた。
俺は、としあきのモノに口を近づけて、舌でなめる。
俺はいったい何を?心の中のすっかり小さくなった小さな声が抗議するが、
今の心を占める女の欲求が俺の舌を動かし、ちろちろと精液をなめとる。
美味しくない。けど、全然嫌ではなかった。
俺はいつしか口を大きく開けてとしあきのペニスを咥えていた。
そうか…今の俺はそういう体なんだ。
不思議とそれに納得しながらとしあきに奉仕する。
一度射精したペニスが、やがてじわじわと大きくなっていく。
そして、口の中に納まりきらなくなった頃、
やおらとしあきが起き上がる。
驚いて口を離すと、としあきは俺に組み付いて
「こ、今度は後ろからさせてよ」
そういって俺を四つん這いにさせた。
え?これって…
そう思う間もなく今度はバックで俺は突き上げられた。
自分から尻を突き上げた格好で男に突かれる。
被虐的な快感がたまらなかった。
「ああっ!いい!お願い!もっと突いて」
女の子らしくおねだりするとますます快感が増す。
としあきが腰を打ちつけていく。
俺の心は女としての喜びに満たされていた。
あのときは、驚いたわ。
いきなり頭上から人が落ちてくるなんて思わなかったもの。
それでも、もっと驚いたのはそのあと。
頭上から振ってきた人とぶつかって、気が付いたら目の前に自分の体があったなんて。
目の前でどきまぎしているあたし、倉科由佳里の体。
じゃあ、今のあたしは?
あたしは自分の体を引っ張ってお互いの状況を確認しあう。
どうやら今のあたしははずみで非常階段から落ちたとしあき君の体らしい。
そして、今のあたしの体にとしあき君が入っている。
お互いしっちゃかめっちゃかなやり取りの末にあたしととしあき君とでしばらく入れ替わって暮らすことになった。
当面の生活について話し合う中で、としあきが日曜日に双葉とデートであるのを知った。
そこで、あたしはとしあきのフリをして双葉とデートすることにした。
生まれて初めての男の立場からのデート。
知ってた女の子の意外な一面が見られて意外と面白かった。
あんなに甘えてくるんだ、双葉って。
高い視線から甘えられるのもちょっと優越感感じちゃう。
いつもより小さく見える双葉に寄りかかられて見る映画は格別だった。
そして、そのあと何より驚いたのは双葉が自分からあたしをホテルに誘ったこと。
え?双葉ってそんなに積極的だったの?
あたしだって佐藤君とエッチしたことはあるけど、そんなに積極的だったことなんてなかったから本当に驚いた。
そのまま、あたしは流れに流されるまま男のエッチを知ってしまった。
そうなると、悪乗りしたくなるもので、エッチの後あたしの男の部分を咥えてた(双葉ってそんなことまでするんだと改めて驚いた)
双葉を四つん這いにさせてバックの体勢にした。
うわ、女の子の割れ目が目の前に見えちゃった。
あたしもあんまりまじまじとは見たことのない部分。
しかも、双葉のそれ。
男の人ってこんな風に見てたんだ。
股間にはちょっと痛みがあるけどさっきと同じように立っちゃってる男の部分。
そのままあたしは双葉を突き上げた。
この征服感、たまらないわ。
でも、今のあたしはとしあきじゃなく、倉科由佳里。
ここまでやっちゃうとちょっと罪悪感を覚えてしまう。
明日になったらとしあきと相談して、これからのこと話し合おうかな。
双葉に自分の正体を打ち明けるのはその後にしとこう。
だって、今あたしをとしあきだと思ってあたしのに突き上げられながら腰を振ってる双葉にこんなこと打ち明けるわけにはいかないもの。
ヘタすると絶交かな?
でも、いまはそんなことどうでもよくなるくらい男のエッチって気持ちいい。
双葉の中に包まれる暖かさも、双葉を犯してる征服感も最高。
あ、そろそろイッちゃいそうだけど…我慢我慢…この感覚も心地いい。
そういえば、としあきは今どうしてるのかな?
股間への突き上げとともに視界は複雑に揺れ動く。
衝撃とともに感じる熱い感覚と、飛び散る快感。
ときおりきゅっと体の奥から切ない感覚が走る。
これって…子宮を突かれてるのか?
男にはない器官への感覚に自分の感情が制御不能になる
口からは女の子のような喘ぎ声が上がる
「ああっ!あん…あ…いや…」
視界の隅に鏡に映る自分の姿が見える。
何度目かの絶頂を迎えながらも紅潮した表情で男に突き上げられる女の子の姿。
それが今の俺だった。
今の俺…あんなエッチな女の子なんだ。
そんな倒錯感に浸る間もなく力強い抽送が視界をあさっての方向に飛ばす。
突き上げられて放埓に泳ぐ体。思わず目の前の男にしがみつき、腰の動きに身を任せる。
再び鏡が視界に入る。
目の前には顔を紅潮させながらきよひこと抱き合う倉科さんの痴態が映っていた。
あれが今の俺の姿なんだ…
快感に思考を支配されるとしあきの脳裏に、今の体の持ち主である倉科さんと入れ替わった時のことがよみがえってきた。
あれは金曜日のこと
工事の準備に入っていた非常階段の前で工事のおっさんに突き飛ばされて階段を転落して、気が付いたら目の前に俺がいた。
目を白黒させながら茂みに入り、自分と倉科さんが入れ替わったことを知る。
しばらくはお互いに入れ替わって生活することとその上での注意事項、あと週末に双葉とデートの予定があることを話した後、
俺の体の倉科さんは茂みから出て行った。
そして、ひとりぽつんと女の体のまま立ち尽くしていた。
マジかよ。俺が女?大丈夫かな?言葉づかいとか男っぽいと今の俺が変な目で見られるし、
倉科さんも俺の体でちゃんと双葉とデートできるだろうか。
そもそも今度こそ双葉と…なんて思ってたのになんでこうなったんだ?
そんなことを考えてたら茂みをくぐってきよひこが姿を現してきた。
「どうしたの?としあき」
口から心臓が出そうなほどびっくりした。
まさか、こんなに早くバレるなんて?
全く予想外のできごとにどう返答しようか考えつかずに口をパクパクさせていた俺にきよひこが言った言葉はさらに予想外のものだった。
今のきよひこが双葉と入れ替わっていること、そして、先週デートした「双葉」はきよひこだったこと。
それらを目の前のきよひこ、いや双葉に聞かされたがさすがに今目の前で起きたことと同じこととはいえにわかには信じがたかった。
しかし、そのあといくつかの問答の末に自分たちしか知らないはずの今までのデートでのことなどを話されるにつれ、納得するようになってきた。
「頼むから、今のことは他には言わないでくれ」
そう双葉に頼む。
「当然でしょ。今のあたしの境遇だってとしあきに他でしゃべられたら困るし、第一あたしたちみたいな人じゃないと信用してくれないじゃない。
協力するわよ。こうなったらお互いさまだし」
力強いセリフが心強い。きよひこの体で女言葉を使われるとちょっとアレだが。
そう思ったら股間に急に見覚えのある感覚が襲ってきた。
「あ、あのさ、双葉…俺、もしかしてトイレ行きたくなってきたんだけど」
双葉は妙に手慣れた手つきで俺を女子トイレに連れて行く。
「ここでするしかないでしょ?安心して、一番人気のないところ選んだげたから一目気にしないでしてらっしゃい」
何から何まで妙に手慣れていることに疑問を感じたが、背に腹は代えられない。
えいやっと覚悟を決めて女子トイレに入り個室で腰を下ろして小便した。
えと…スカート履いたままするのか?女って
男のころに比べて急激に進む股間の尿意が俺の思考能力を奪って、
半ば強引にスカートをパンティごと下ろして腰を下ろした。
ちょろろろろ…
股間から直接小便が出る感覚。
つい視線が下に落ち、何もない股間を目の当たりにして思わず目をそらす。
うう…何なんだ、この恥ずかしさは。
べ、別に倉科さんの体に変な感情を抱いたわけじゃないぞ。つい下を見てしまっただけなんだからな。
弁解する相手がいるわけではないが、それでも思考がぐるぐるめぐる。
股間の感覚が消えた。
終わったのか?じゃあ…拭くのだよな?
トイレットペーパーをめくって股間にあてがう。
ん…なんか変な感じ。
こんなもんかな?
パンティーを履きなおして、スカートを引き上げる。
横にファスナーがあることに今気づく。
「ふう…」トイレから出てくると、松葉杖を突いたきよひこ、いや双葉がいた。
「ねえ?女の子の体、まだよくわかってないでしょ?」
そりゃそうだ。さっき女になったばかりなんだから。
「放課後、うちに来ない?女の子のこといろいろ教えてあげられるわよ?」
…もう少し違うシチュエーションで聞きたかった台詞だが、ありがたいことには変わりなかった。
「そうそう、上手いじゃない。これでいつでも彼氏とデートできるわよ」
「…そんなこと言われてもあんまりうれしくないぞ」
と、いうわけで俺はきよひこの家にいた。
途中、今の自分の体である倉科さんの家に寄って、双葉に言われるままにいくつかの服や化粧品を持ち出した。
そして、今ここで、ファッションショーもどきや化粧の練習をさせられているというわけだ。
「でも、かわいいわよ、ほら」
鏡を出されて、ドキッとする。
目の前にいるのは一段女らしくなった倉科さんの顔だった。
口紅を塗った唇を噛みながらはにかむと、鏡の中の倉科さんも同じ顔をする。
ちょっとコメントに困りながらも鏡の中の自分に見とれていた。
今の俺、こんな顔なんだ。
双葉が、ちょっと悲しそうな顔をする。
「どうしたんだ?」
「だって、今のあたしは、としあきにそんな顔見せられない。だってあたしは今男なんだもの」
きよひこの、いや双葉の目から涙がこぼれるのを見た。
「あたしだって、としあきにそんな顔して見せたかった。そして、としあきとエッチしたかった。
でも、今のあたしじゃ、としあきに抱かれることなんかできない。こんな男の体になんか、なりたくなかったよう…」
涙声のきよひこ。しかし、その向こうにはっきりと「双葉」が見えた。
大粒の涙を流す双葉の顔がはっきりと見えた。
俺は、思わず、目の前の双葉を押し倒して抱きかかえた。
「双葉…好きだ」
それだけを言うと、双葉と唇を合わせる。
「ん…」
されるがままの双葉にいとおしさを感じながら、服を脱ごうとまさぐり…違和感に気付く
そうか…今は俺が女なんだ…
どこか気まずくなった俺は双葉から体を離した。
なんてことしたんだ、俺は倉科さんの体で。
双葉が、後ろから体を絡める。
「え?いったい何を?」
「お願い、続き…しようよ?」
それを聞いて大慌てする俺
「続きって…俺、今倉科さんの体なんだぞ、そして、双葉はきよひこの体だし…」
「でも、心はあたしととしあきじゃない?体も男と女。お願い。今だけとしあきとつながっていたいの。どんな形でも」
そう言われたら、むげには断れない。でも、どうすればいいんだ?この体で。
とりあえず服を脱いで…っていいのか?
大慌ての俺の腰に手をやった双葉はそのままパンティーを引き下ろした。
そして、すかさず俺の胸にあるふくらみに手を当てる。
「え?…あん…」
電撃のような感触を受けて思わずあげる声に赤面する。
まるで女の子みたいじゃないか。こんな声を双葉に聞かれるなんて…
そう思う間もなく双葉の手は俺の股間に伸びる。
「ちょ、ちょっとま…あんっ…」
自分でもまだ触れたことのない女の部分から伝わる感触に困惑する。
もう、双葉のされるがままだった。
双葉からもたらされる、男の時とはあまりにも違う感覚に戸惑いながら、立っているのがやっとだった。
双葉はギブスにまかれた足を不器用に操りながらズボンを下ろすと、そこにすっかり大きくなった男の部分が見えた。
そして、俺の首に手をまきつけると、ベッドめがけて後ろ向きに倒れこんだ。
「としあき、来て…」
股間に当たる感触が、半ばとろけかけた俺の心に冷や水をかける。
来てというのは…この場合俺が…するってことだよな?自分で
俺は、恐る恐る自分の腰を調節して、女の部分にあてる。
双葉も手で動かしてくれていた。
目の前にいるのは双葉なんだ。
そう思い定めて、俺は双葉の上に腰を下ろした。
ずぷ…ずぷぷぷ…
「あふんっ」
声が漏れた。
何なんだ?この感覚。
体の中に大きなものが入り込む。
自分を貫く感覚に悶えながら、俺は腰を下ろしていった。
「としあき…気持ちいいよ」
双葉の声が心地よい。
少し形は変わったけど…一緒にいたい。双葉を気持ちよくさせたい。
俺は、慣れない女の体を不器用に操りながら、双葉の上で腰を振った。
「ああ、としあき…いい…」
もう、低い声は気にもならなくなっていた。
今、俺の下でよがっているのは紛れもない双葉なんだから。
体を超えて心がつながった実感が快感を増幅させる。
自分が腰を振るたびに俺の下の双葉が快感にあえぐ。
まるで自分が男として双葉を抱いているような錯覚すら味わう。
それでいて、自分を串刺しにしている「双葉」からは女の快感を体中に刻み込んでくる。
その倒錯感が心を真っ白にしていった。
「イクの?一緒にいこ?」
双葉はそう言って体を起こして抱き寄せてくる。
お互い何度も口付けを交わしながら登り詰めていった
「双葉…好きだ…」
「あたしも…」
こうして、俺と双葉は、体こそ変われど、初めての経験をした。
その後、土曜日曜とお互いの家でお互いを求めあった。
そして…その続きを思い出そうとした刹那、絶頂の快感が記憶を塗りつぶした。
「ああああーーーっ!!」
女としての絶頂を感じた俺は、双葉にしがみついて絶頂の衝撃を受け止めた。
俺は、双葉の腕枕に抱かれながらまどろんでいた。
最初こそぎこちなかった立場を入れ替えてのセックスは、回を増すごとに双葉は男らしくなり、俺は女らしくなっていった。
その方が、自然と気持ちよくなれることに気付いたからだ。
「明日から…また学校始まっちゃうね」
「そうだよな。倉科さんになんて言おうか。怒られないかな?勝手にこんなことして」
それを聞いて双葉はいたずらっぽい笑みを浮かべた
「じゃ、怒られる前に、もう一回しよ?」
双葉が俺を押し倒す。
これでよかったんだ。形は違っても、俺たち二人はひとつになれる。
これからも、一生ずっと。
翌日の放課後、きよひこの体の双葉と、倉科由佳里の体のとしあきはあの非常階段の前に立っていた。
「こんなときにきよひこは掃除当番だって。由佳里は?」
不満そうに言う双葉。
「倉科さんは日直だと。もう少し待とうか」
今日、放課後4人でこれからのことを話し合うべくとしあきは倉科さんに、双葉はきよひこに伝えていた。
そして、今非常階段の前にいるのはこの二人だけだった。
「…ね?じゃ、二人が来る前に、ちょっとだけ、しない?」
そういう双葉に苦笑する間もなく双葉は俺を非常階段に連れ込んだ。
非常階段を数段上がったところ。廊下からは見えない場所だった。
俺は、双葉に押し倒されるままに非常階段に倒れこんだ…
抱かれあいながら、一身にお互いを求めあう男女。
「ああっ、いい。いいわ。もっと、もっとあなたのを…頂戴…」
「くうっ…お前の中…気持ちいい…ぜ」
男はそう言って腰を一層奥へ突き入れる。
「…や…また…イクッ…」
女は男にしがみつき、全身で女の喜びを受け入れている。
「あん!あん!あん!」
男は、自分に抱かれる女の嬌声に負けないように、腰を振り、ペニスを突き入れる。
一見するとただのセックスのようだが、生まれた時はお互い逆の性別だった。
男は、生まれた時は女だったのだが、すっかり男としてのセックスにも慣れていた。
女の体への未練も、もうない。
今の幸せは、男として今俺の下でよがっている女を幸せにすることだった。
絶頂を迎えて、俺の体は精液を吐き出す。
はじめて男としての絶頂を迎えた日のことを思い出す。
あの日のこと、そして、男として過ごした残りの学生生活。
就職、かつて男だった今の妻との結婚。
妻との間には子供もできたが、それでも今の妻は女として俺を求めてきてくれる。
それが、どうしようもなくいじらしく、愛らしかった。
行為を終えると、男のセックス特有の急速に冷める感情とともに、あの日のこと思い浮かべる。
あれは、俺が男になった翌週の月曜日のことだった。
もとのこの体の持ち主、としあきと放課後会う約束をしていた。
日直の仕事を終えて、非常階段に向かう途中、掃除当番だった双葉と会い、上る途中に、地響きのような音が鳴り響いた。
非常階段が崩落したことを知ったのはそのすぐ後だった。
それから目の回るような日々がはじまった。
泣きながら崩落した非常階段へ向かう双葉と俺。
そして、知らされるあまりにも残酷な現実。
元の自分の体が死んだこと、そして、自分の葬式にとしあきとして参列したこと。
すべてが現実感のない中で進んでいった。
そして、気が付いたら俺はすっかり元気をなくしていた双葉の横にいた。
もう、帰る体はない。
これからは倉科由佳里としての自分は捨てて、としあきとして生きていこうと決意した日だった。
妻になった双葉には今も自分の正体については話していない。
そこに罪悪感を感じないではなかったが、自分の夫がとしあきでなく、女友達の由佳里だったということ、
何よりとしあきの心がすでにこの世にないことをどう双葉に伝えるべきか。
それを考えあぐねたまま月日だけがたっていたのだ。
クラスメートが死んだせいかすっかりしょげていた双葉を知っている俺には
隣にいた男が誰よりも好きなとしあきではなく、赤の他人だったなんて言ったらどれだけ悲しむか…
それなら俺が一生「としあき」のままでいよう。
それでもいい、と今の俺は思う。
もう、俺は倉科由佳里ではなく、としあきなんだ。
えっちの後のまどろんだ空気の中で、自分の夫の顔を見る。
なぜか、この時だけは人を寄せ付けないような顔つきになるとしあきをみるのも今は楽しみだった。
あの日、双葉の死と自分の元の体の死をつきつけられたあたしは、世界がひっくり返ったような絶望にいた。
これからどうやって生きていたらいいのかわからなかった。
もはや元の体には絶対に戻れない。
それどころか自分の身の上を知るただ一人の人がいなくなった以上、
「本当は男なんだ。きよひこなんだ」といってもだれからも信用はされまい。
周囲を双葉の友達やクラスメートに囲まれながらもただ一人世界の中から孤立してしまったような気持ちになっていた。
そんなとき、ずっとそばにいたとしあきが、どうしようもなく頼もしく見えた。
それから、あたしは女として生き、としあきと結婚して母になった。
としあきには今もあたしの正体は話していない。
学生時代以来何度も男女として体を重ねてきた妻が本当は男だったなんて知った時のとしあきの失望が目に浮かぶからだ。
あたしの心を今に至るまで支え続けてきた最愛の人にそんな失望は味わわせたくなかった。
それなら、一生あたしは女として、双葉として生きていこう。
そう心に決めているのだ。
いまのあたしには男の自覚はすっかり消えた。
でも、時折男のころの記憶がよみがえることがある。
それも、としあきとエッチしているときだった。
時々、目の前にいるとしあきが、男だったころのかなわぬ恋の対象だった倉科さんに見える時がある。
今日も、絶頂を迎える前に目の前にあのときのままの倉科さんが見えた。
そして、それが浮かぶたびにちょっとした罪悪感を感じる。
今のあたしは女。そしてとしあきの妻だから。
でも、ちょっとだけ心残りめいた気持ちが芽生えてしまうときもあった。
一度だけでも、倉科さんとエッチしてみたかったなぁ…