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悪魔のお仕事

2012/02/24 00:56:18
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はぁ、今日もこのままか。
パジャマ姿で僕は自分の胸にくっついた巨大な脂肪を揉みしだいた。
たっぷりとした脂肪の塊が、手の中で形を変える。
いつになったら元に戻れるんだろ?
「んっ」
僕はあくびをしながら大きく伸びをした。
ノーブラの胸がパジャマの中からぷっくりと浮かび上がって形がまるわかりだ。
壁にかかった制服を手に取った。
当然ながら女子の制服。ブレザーにプリーツスカート。
と、その前に…
ブラをつけないとな。
少し前かがみになり、ブラのホックを後ろ手て止めて、胸をカップに収める。
肩紐のねじれを直して、軽く身体を振ってみる。
うん、大丈夫。動かない。
こういうことだけは上手になっていく。
パンツをしかえ、ブラウスを着て、スカートを履き、リボンをつけて、上着を羽織る。長い髪をブラシで梳かして、リップを付ける。
鏡の中にはとびっきりの美少女、しかも巨乳で女子高生な僕が、少し眠たげな目でこちらを見つめていた。
くるりと姿見の前で一回転。おかしな所はない。スカートがふわりと浮いて、我ながら
今日も可愛い。
パチッっと両手で軽く頬を叩いて気合を入れる。
よし行くぞ。
今から僕は巨乳で学園のアイドルで成績優秀、スポーツ万能、おまけに生徒会長の女子高生、双葉なのだから。


スカートが風でめくれないように気をつけながら、学校へと向かう。
スースーするスカートには、いまだ慣れない。
「おはよう、双葉さん」
「おはようございます」
「おはようございます。会長」
「おはよう」
学校までの道のり、同級生や後輩たちが次々と挨拶をしてくる。
以前の僕にはなかったことだ。
そして男たちの視線。
胸、太もも、顔、股。
生徒はともかく、教師ですらジロジロ見てくる。
こちらも、いつまでたっても慣れない。
そんな中、僕とは目も合わさず、道の隅の方を猫背で小太りなくせに、こそこそと小さくなって歩いて行く同級生がいた。
僕はニッコリと笑って、挨拶をする。
「きよひこ君。おはようございます」
「あ、あ、ど、ど、ど、ども」
きよひこはおどおどとキョドりながら、軽く会釈をして更に早歩きになって僕から逃げるように教室へ向かった。
あれが、僕だ。
以前の僕だ。


退屈な授業は身体が男か女かなんて関係ない。
が、優等生かどうかは関係ある。
今の僕は、授業が退屈で昨日が睡眠不足だからといって、机に突っ伏して眠る訳にはいかない。
ちらり、ちらりと、僕に視線が飛ぶ。
見られてる。
クラスメイトに、身体を。
教師ですら、僕の身体に視線が飛ぶときがある。
顔に、足に、ふともも、腰、髪、唇。
そして制服の上からでも大きさがわかるおっぱい。
男どもが胸や太ももを見てることをバレないように必死に見ようとしている。
クラスにグラビアアイドルがいるようなものだ。
噂によると、何度かスカウトされたこともあるらしい。
部外者は皆、そう以前の僕も含めてデビューすればいいのとか気軽に思っていた。
この体になって初めて分かった。
怖いのだ。視線が。
おっぱいに
太ももに
顔に
いつでもジロジロ見られることに恐怖と、そして緊張を強いられるのだ。
当然、僕は見たがる方の気持ちがよくわかる。
少し前までは、僕もその中の一人だったのだ。
双葉さんの胸を必死に隠し見て、夜のおかずにしていたものだ。
その大きなおっぱいが、ブラの肩紐ごしに自己主張する。肩がこって仕方がない。
だからといってこんな所で、おっぱいの位置をなおすわけにはいかない。
それにスカート。
足を広げられないし、少し座り方が悪いとすぐにスカートが皺になる。
女の子は緊張を強いられる。
僕は何度目かの軽いため息をついて、ちらりと後の席のきよひこに視線を飛ばした。
机に突っ伏して眠っていた。
少し羨ましかった。
教師もいつものことなので誰も何も言わない。
きよひこは、それでいてそこそこの成績をキープしている。
しかし今の僕は『そこそこ』ではダメなのだ。
しっかり上位に食い込まないと。
僕はノートをめくる。
綺麗な柔らかい女の子っぽい文字が目に映る。
最近の、字は頑張ってはいるがどう見ても汚い文字。
いくら他の習慣を以前の彼女に近づけてみても、文字だけはうまくならない。
練習してるんだけどなぁ。
今の僕は誰かにノートを貸すことも多い。
気を付けないと。
僕は雑念と体中を舐め回すような視線を頭から振り払って、授業に集中することにした。


放課後、委員の仕事が終わり、誰もいなくなった教室へ急いでいた。
扉を開ける。
夕日が差し込む真っ赤になった教室に、一人誰かが座っていた。
吹き出物だらけの顔、低い身長、ベルトが食い込んでる腹、脂ぎった手のひら、ボサボサの髪。
「…きよひこ君」
「ブヒヒヒ、意外と早かったね……『きよひこ』君」
朝とは打って変わって、自信たっぷりに僕に微笑んだ。
それはイヤらしく下卑た笑みだ。
「う、うん。委員会が早く終わったんだ。『双葉』さん」
笑みを浮かべた顔はそのままに、僕を強く睨みつけた。
「なぜ朝、声をかけたの? 他人のふりをしなさいと言ったでしょう」
「で、でも、クラスメイトだし、以前の双葉さんだって僕に声をかけてくれたじゃ、、」
「昔の話はしないで」
強く睨む。
僕はその視線で動けない。
「ご、ごめんなさい」
「私のふりをしてる間に、私にでもなったつもり?あなたはクラスの味噌っかすのきよひこなのよ。それを忘れないで」
「…はい」
「あなたも私もクラスには立場とヒエラルキーがあるの。あなたが私なんかに声をかけて気があるなんて思われたら、あなたは他の人にバカにされるし、私はいじめられるかもしれない。わかってるの?」
「…はい」
「わかればいいわ。それじゃ脱いで」
「…はい」
僕は制服の上着のボタンを外し、脱いで手近な机の上に置いた。
リボンを外して、白のブラウスのボタンを外し前をはだけた。
ブラジャーに包まれたおっぱいが丸見えになった。
ねっとりと絡みつくような視線が、胸に突き刺さる。
その視線が熱い。
それが恥ずかしくて僕は胸を隠した。
「手を降ろしなさい」
鼻息荒く、ぎらついた目をしながらきよひこ…双葉は言った。
僕は胸を隠していた手を下ろす。
あまりにも恥ずかしくてまともに顔を上げていられない。
双葉の両手が僕のウエストをつかむ。
生暖かく、べっとりと汗が滲んだ手のひらが、僕の腰や腹を撫で回す。
「少し太った?」
「少し、ほんの少しだけ。で、でもちゃんとカロリーを計算して食事してるし、運動もしてます」
彼女の身体のチェック。
不摂生をしてないかどうか、身体が入れ替わってから定期的に行われている。
双葉の心配も、もっともだと最初は思って身体を見せていたけど、今となってはとても恥ずかしい。
へそのあたりを撫で回していた手が徐々に上がって、ブラごしに僕のおっぱいを揉みしだいた。
「くく、なるほどね」
顔が上気し、真っ赤になるのがわかる。
おっぱいを強く揉まれる。僕は膝ががくがくと震えだした。
唇を強く噛む。
そうしないとと崩れ落ちそうだ。
「太ったんじゃないわ。胸が大きく、お尻とかも大きくなってる。うっすらと身体に脂肪がついて女の体になっていってるのよ」
いやらしく手が動いて、ブラの中に手が入る。そして僕の胸の先端を強く摘んだ。
「痛っ」
痛い、その痛みがたちまち疼痛にかわって身体が熱くなる。
「嫌らしい。これだから男は」
「僕は何もしてません。何も」
「だったらなんでこんなにイヤらしい体になってるのよ。一人でエッチな事でもしてるんでしょ」
「してません、してません」
「あなたの部屋に、イヤラシい本がいっぱいあったわ。信じられない」
「それは、双葉さんが…」
「私が、なに?」
強く睨まれる。
怖い。
男の人が怖い。
双葉さんが、僕の今の身体にいやらしい事をするからだ。とは怖くて言えなかった。
「ふん、両腕をあげなさい」
両腕を上げた僕を、双葉さんが抱き寄せた。
息のかかる距離で腋をまじまじと見つめられた。
「ちゃんと処理してるようね」
「はい、お風呂に入ったら処理してます」
「夏はともかく、冬でも油断しちゃダメ。女の子同士だとそれだけで笑われて、陰口叩かれるから」
「はい」
そう言って、双葉さんが僕の腋を舐めた。
「ひぃ」
思わず、下ろそうとした腕を掴まれる。
「動くな」
ぺろぺろと右脇と左脇、ベトベトになるまで舐められる。
「くっぅ、あっ、あっ、あっ」
ぺちゃぺちゃと舐める音と僕の嬌声。
身体が熱くなる。
そして僕の下腹部から股間にかけてなにか熱いものが流れる感覚。
僕は股を閉じて必死にそれをこらえた。
足ががくがく震えだして、立っていられない。
「少ししょっぱいわ。今はいいけど、夏になったら制汗剤をわすれないでね」
「は、はい」
息も絶え絶えで返事をするのも精一杯だ。
早く下の方を触って欲しい。
その思いを慌てて打ち消した。
「さてと、スカートをめくって」
僕は恐怖と、恥ずかしさと、期待を込めてゆっくりとスカートをめくった。
ちゃんとブラとお揃いのパンティ。
今日の身体のチェックを、期待していたと思われたらどうしよう。
「ブラの時も思ったけど、これ私のじゃないわね」
「はい、先日買いに行きました」
「いやらしいパンツ。何を期待してるのかしら」
手が近づく。
これは身体のチェックなのだ。
そう自分に言い聞かせた。
クチュリ
パンティのクロッチの部分が湿った音を出す。
「何よこれ。もう湿ってるじゃない」
双葉の右手がパンティの上から股間を激しくこすった。
もう立っていられない。机の上にしなだれかかった。
手の動きに連れて声が勝手に漏れる。
「あっ、あっ、あっ」
股間から止めどなく液が流れでて、ぐちゅぐちゅと音を立てる。
頭の片隅に、今日もまたノーパンで帰るのかと、思った。
「いやらしい、私はこんなにイヤらしい女じゃないわ。身体のチェックをしてるだけなのに、なによ。これは」
「あっ、あっ、あっ」
言葉がでない。
嬌声だ。
口からよだれが垂れる。
「ちゃんと答えなさい。これは何? 答えないと、やめるわよ」
「やめないで、やめないでくだしゃい。いやらしい液です。僕の愛液です」
そのベトベトになった指を、双葉さんはクンクンと嗅いだ。
「いやらしい匂い。あなた男でしょ? こんなに汁を垂れ流して」
「はっ、はぁ、僕は、僕は今は雌です。イヤラシい雌犬です」
「私の身体をこんなにイヤらしくして、どう責任取るつもり?」
「なんでもします。なんでもしますからぁ」
「じゃぁあなたの身体を綺麗にしてもらおうかしら」
ベルトを外してズボンを下ろす音。
ブリーフを脱ぐと、ギンギンにたけった僕のチンコがカリ首をもたげていた。
「私は自分の身体のチェックをしてるだけなのに、なんでここがこんなに硬くなるの。あなたの責任よ。なんとかなさい」
それを僕の顔に押し付ける。
臭い。
少し包茎気味のチンコからオスの匂いが漂ってくる。
「はやくしなさい」
黙って僕はくわえた。
くわえたまま舌で皮をむく。
恥垢の味が口に広がる。
まずくて気持ち悪いのだが、不思議と嫌な感じはしない。
女の体だからかもしれない。
いや、違う。好きな相手だからなのかもしれない。
剥いた後は、口をすぼめて、顔を前後させてひたすら舐めた。
カリ首あたりを重点的に舐める。
男だった時、ここが一番気持ちが良かったからだ。
でも、今の自分のフェラが上手なのかどうかはわからない。
上目つかいで顔を見ると、双葉は気持ちよさそうに、赤ら顔を脂ぎらせていた。
気持いいのだろうか? 気持ちがいいのであれば少し嬉しい。
「もういいわ。これ以上だと出ちゃう」
口の中に出してもいいのに、と少し残念に思った。
双葉は僕を教室の机の上に押し倒した。
クラスメイトの机。
机の中に何か入っていたら、僕の愛液で濡れちゃうかもと、頭の片隅に浮かんだ。
僕のパンツを下ろす。
片足を上げて、足から抜いた。
びちゃびちゃに濡れたパンツは僕の左足のくるぶしのあたりに引っかかったままだ。
双葉は指で僕の股間の穴を広げた。
「このいやらしい雌穴に、あなたの汚らしい物をぶち込んであげる。嬉しいんでしょ。」
「はい、うれひいです。おねがいします」
よだれが口から止めどなく流れ出る。
下の口からも。
双葉がのしかかる。
チンコがほんの少しだけ、穴の位置を探す。
「ひぃ!!」
いきなり来た。
軽くイッた。
入れられただけで。
双葉は僕の腰を両手で抑えつけて、股間を叩きつける。
そのたびに僕は悲鳴を上げる。
「男って最高。たまんねぇ。たまんねぇ」
「あっ、あっ、ひぃ、っんっ」
「身だしなみに気を付けなくてもいい。いやらしい目でジロジロ見られたりしない。女どうしのくだらない見栄を意識しなくていい。夜中にストーカーに追われたりしない」
「んっ、あ、あ、あ、あっ」
「それにこんないい女と、学校でこんなことができる男って、どれだけいるのかしら」
「ふたばぁ、ふたばぁ」
その声に答えて、双葉は唇を強引に奪っった。
舌で口の中を犯し、よだれを存分に流しこむ。
「みんなどうして、私の身体をジロジロ見るのか、今となってはわかるわ。以前は気味が悪かったけど」
胸を強く揉む。先端を摘む。
痛みがたちまち快感になる。
「見せびらかそうか。このイヤラシい胸を。教卓の前でクラスメイトに。くく、それとも朝礼の時に全校生徒の前でひん剥いてみる? みんな喜ぶと思うよ」
「いやぁ、いやですぅ」
以前の僕が、双葉の胸をどういうふうに見ていたのか、脳裏をよぎった。
何度も何度も、オカズにしたのだ。
「そんなもったいないことはしないわよ。私以外の男に絶対に見せちゃダメ」
「見せません。見せませんからぁ」
「イカせて欲しい?」
「はぃぃ、いかせてぇ、いかせてくだしゃいぃ」
股間の速度が上がった。
叩きつける音が教室に響いた。
「きよひこ君、最高。あなたは私のものだからね」
「はひぃ。そう、そうです!!身も心も、ぜんぶぅ」
「私なしでは生きられないようにしてあげる」
「してぇ、してぇ」
耳元を舐めながら、双葉がつぶやいた。
「じゃぁ中に出してあげる」
その言葉にビクンと身体が反応した。
「中は、中はダメェ」
「怖いの?男なのに子供が出来るかもしれないのが怖いの?」
「ん、っ、やめぇてぇ。子供できちゃう」
「くくくっ、中出しって言ったら、きゅっと締まるわよ。あなた」
速度が上がる。
駄目だ。もう何も考えられない。
「あっ、あっ、あっ、いくぅぅ!!」
僕は双葉の手をギュッと握りしめて、いった。
真っ白になった。
いかされてしまった。
その瞬間、股間からチンコが引きぬかれ、ぐったりと横たわる僕に精液が降り注ぐ
臭くて以前は自分のものだった匂い。
中で出してもよかったのに…と、朦朧とした意識の海に浮かぶが、その思考もすぐに消えて何も考えられない。
女の快感。
男には強烈すぎるのかもしれない。


聞こえる。
泣いているのが聞こえる。
泣かないで、泣かないで、と僕はつぶやく。
ゆっくりとと意識が戻った。
夢じゃなかった。
泣いていた。
双葉がオイオイと、肩を震わせていた。
「双葉さん…」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
双葉さんは、射精後、いわゆる賢者タイムに不意に以前の双葉さんに戻るのだ。
「私が全部悪いのに。あなたを巻き込んでしまったのに。どうしてこんなことに」
「大丈夫、大丈夫ですよ。双葉さん。いつか元に戻れます」
顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
でっぷりと太った身体を震わせて泣いていた。
「でもね、さっき言ったことも本当なの。男でいるのが楽で仕方がないの。私の苦労を全部あなたに押し付けて」
以前の双葉さんは、成績も品性も格式も全ては一流だった。
しかしノイローゼ気味、というよりノイローゼだったらしい。
僕も含めてクラスメイトはおろか、家族ですら誰も気が付かなかったが。
この体になった僕にはよくわかる。
周りからの無言のプレッシャー、男の視線、女の嫉妬、教師の圧力、家族の期待、勉学、四六時中見られてる身体、そしてストーカー騒ぎ。
色々な心労が重なって、参ってる時に『悪魔』が現れたらしい。
それに願ったそうだ。
誰にも見られなくて、誰にも期待されなくて、好きな事を好きなだけやっても誰にも文句を言われない、そんなふうになりたいと。
今となっては、そんなふうに思いつめなくても、誰かに相談すれば彼女であれば救いの手はいくらでも差し伸べられるだろう。
だが当時の彼女は追い詰められて、そんなことを考える余裕もなかったみたいだ。
気がつくと、僕と彼女の体は入れ替わっていたのだ。
最初は泣いたり喚いたり大変だった。
だけど順応するのはすぐだった。
悪魔はちゃんと仕事をしたのだ。
彼女は自分の心に合う身体に入れたのだ。
毎日風呂に入らなくてもいい、好きなモノを好きなだけ食べてもいい、勉強をしなくても、いつまでもマンガやアニメやゲームをしててもいい、授業中寝ててもいい。誰にも注目されず、誰にも期待されず、好きな事を好きなだけやれる身体。そんな身体だ。
その身体が僕に背を向けて嗚咽で震えている。
僕はそのでっぷりとした身体を背中から抱きしめた。
「僕は、どんなことがあっても、あなたの味方です」
「うん、ぐすっ。ありがとう」
そして僕は彼女の顔を、そっとこちらに向けた。
涙と汗と吹き出物でぐちゃぐちゃの顔。
でっぷりと太くてカサカサな唇にそっとキスをした。
「僕はあなたが大好きです」
『きよひこ』君は、僕をそっと抱きしめた。
「入れ替わったのがあなたで本当に良かった」


きよひことは校門で別れて、僕は家路を急いでいた。
もう日が暮れている。
夜というには早いが、そろそろ街灯がつき始める時間帯。
周りに誰もいない。
怖い。
やっぱりきよひこ君についてきてもらえばよかった。
学校であんなことをやってるとバレたら停学じゃすまない、だから学校を別々に出たのだが、それを少し後悔した。
ナンパやストーカーや痴漢、盗撮など、常に彼女は狙われてる。
しかも、なんといっても今は、ノーパンだ。
スースーする。
少し早歩きになった。
男が立っていた。
帽子を深くかぶったスーツ姿の男だ。
歩くでもなく、ただぼんやりとつったっていた。
僕は怖くなって、やや距離を開け早歩きで、その横を歩き去る。
「きよひこ君」
僕は恐怖で身体が動かなくなった。
なんでそれを知っているのか。
暗がりからその男が近づいてくる。
「ああ、失礼。驚かせたみたいですね。すっかり失念してました。今のあなたは女の子ですものね。夜道で後から声をかけたらそりゃ怖がりますよね」
薄闇の中、男が立っていた。
「どもーお久しぶりです」
「お、お前は…」
「どうですか?その後」
スーツに、深く帽子をかぶった男。
顔はよく見えない。
声はどこかで聞いたような声。
どこにでも売っているようなスーツ。
なんの特徴もないネクタイ。
歳の頃はわからない。20代でも30代でも40代でも50代でも、どれでも通りそうだ。
ただひとつだけ言えるのは、男だということだけ。
それは電柱のように、そこにつったっていた。
悪魔。
「早く僕と彼女の体を元に戻せ」
「これは心外。ふたりともうまくいってるんじゃないんですか?」
「いってるわけないだろう。この悪魔」
「おやおや、私は悪魔なんかじゃありませんよ。その証拠に何の見返りも求めてないでしょう」
「そういう問題じゃない」
「でもあなたの願いも叶ったんじゃありませんか」
そうだ。悪魔に願いを伝えたのは彼女だけじゃない。
僕もなのだ。
「でも…僕は…こんなことを、望んでいない。いなかった」
「おや、あなたの願いは、双葉さんのすべてを手に入れたい、だったですよね」
「……」
「今はどちらも手に入ってるんじゃないんですか?身も心も」
そう悪魔に願いを叶えてもらったのは、彼女だけじゃなかったのだ。
僕だ。
僕が悪かったのだ。
僕がそんなことを願ったばっかりに、こんなことになってしまったのだ。
クラスの味噌っかすの僕。別にいじめられてたわけじゃないが、いてもいなくても良い僕に優しく微笑んで毎日挨拶をしてくれた双葉。
彼女は優しい。優しいから挨拶をしてくれてるだけであって、僕に気があるなんてことは、絶対にない。
それはわかっていた。
わかっていたけど、彼女を手に入れたかったのだ。
願ったのだ。悪魔に。
「いやなに。見返りを求めない代わりに少し観察させて欲しいといいましたよね。それが終了したんで、お別れとアフターサービスをね」
「アフターサービス?」
「はい。元に戻すことも可能ということをお伝えに」
「戻してあげてくれ」
即答した。
僕はいい。彼女がかわいそうだ。
あんな姿で一生を過ごすなど、かわいそすぎる。
「いいんですか?」
「ああ、はやくやってくれ」
「彼女、そしてあなたも、総てを失った挙句、死に至りますがよろしいですか?」
「え?」
「私は観察をなりわいとしてましてね」
まるで教師のように語り始める。
「私どもは、あなた方よりも少し先に進んだ生き物です。だからと言って、この世界のすべての事象を理解しているわけではなく、あなた方と同じ、研究やら実験やらで世界を探求しているわけです。今回は人間という種の精神の負荷実験といったところでしょうか? 私も未来が見えるわけじゃないですが、かなりの確率で予測できるのですよ。あなたと双葉さんに関しては。データもありますしね」
「死ぬってどういうことだ?」
「ええ、彼女はそちらの身体に戻せば確実に自殺します。彼女の精神は、もう男が許せません。なんといっても男の欲望の強さをその精神に刻み込みましたからね。男というものが理性で欲望を抑えつけていることがわかっている。だから怖い。だから許せない。そして自分が汚したその体も、そしてあなたの事も汚らわしくて近づけたくないでしょうな」
そんなことは絶対にない、とは言えなかった。
「その体に戻せば、持って数日で耐え切れないでしょうな。そして彼女に拒絶されたショックと、そして死んでいった双葉さんに責任を感じてあなたも自殺か、それに近い状態になると。そういうシナリオが予測されますが、どうなさいますか。これを伝えることがアフターサービスということで」
その悪魔はぼーっとつっ立っていた。
そこには悪意も、もちろん善意もない。
学者が研究材料を見るような眼だ。
だけど、思った。こいつはすごく優しいのではないかと。
いくら実験動物だとしても、無下に死なせるのは可哀想だと、考えてるのではないかと。もしかしたら、僕達はこの体にならなければ、二人とも何かしら不幸な未来を迎えてたのではないかと。
悪魔はただただ、つっ立っていた。
僕は、何も言えない。
悪魔は、立っていた。
僕は、何も言えない。
悪魔は動かない。
僕は、動けない。
悪魔はただ、僕の言葉を待っていた。
僕は、
僕は、
僕は口を開いた。
「 」
悪魔がそれを聞いて動いた。
一礼。
教科書に出てくるような見事なお辞儀であった。
顔を上げた悪魔は少し微笑んでるように見えた。
そう思った瞬間、僕はただ一人になっていた。



僕は目を覚ました。
ゲームのコントローラーを握りしめたまま、ボサボサの髪をかきむしった。
あー昨日寝落ちしちゃったか。
よだれを腕で拭った。
「うーーーん」
大きく伸びをした。
身体が汗臭い。
クーラーのタイマーが止まって、部屋が蒸し風呂のようになっていた。
汗だらけの股間をボリボリかく。
横っ腹に突き出た脂肪を摘む。
少し太ったか。
夏休みだからといって、不摂生しすぎたな。
シャワーを浴びて、気合を入れよう。
僕は体重が増えたせいで、さらに一回り大きくなったおっぱいを揺らして立ち上がった。
結局、僕達は戻らなかった。
僕はこのままでいることを選んだ。
それが正しいかどうかはわからない。
そして二人でじっくり話しあった。
無理はしないということ、付き合ってるということを隠さないということ。ほかetc
今日は午後から図書館で二人で勉強。その後は……
顔がにやける。
僕はタンスの引き出しから、代えのパンツとブラを取り出した。
とっておきのパンツとブラだ。
今日はどうやって可愛がってもらえるんだろ?
期待に胸をふくらませて、僕はお風呂場に軽やかに向かった。
0.7370簡易評価
10.100きよひこ
お互い戻りたいと思いつつも攻める攻められるというシチュエーションが素晴らしかったです。
36.100きよひこ
GJ
80.無評価ジミーチュウ バッグ
匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_^;)ありがとう。。。 ジミーチュウ バッグ http://jimmychoo.warabuki.net/