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『こんなの絶対おかしいよ!』

2012/03/26 15:44:13
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──つぷっ……じゅぐぐぐっ……

「んむっ……うぅ……あぅっ……んあはっ、あつ、いぃ……」

うぅっ、おかしいなぁ。どうしてこんなコトになっちゃったんだろう?


* * *

確かに、中学校からの帰り道、近所の公園で兎だか猫だかわからない白いヘンな生物(ナマモノ)に出会ったことは認める。
そのナマモノから『ボクと契約して魔法少女になってよ!』とテレパシー(?)で言われたことも、ついノリで「いいとも!」と答えちゃったことも確かだ。
──いや、まさか本当に魔法「少女」にされるとは思わなかったんだモン。

『契約は成立した! キミも今日から魔法少女だ!!』
ナマモノの宣言とともに、僕の全身から淡いピンク色の光のモヤみたいなものが立ち昇って、それに包まれる僕の身体。

心の高ぶるままに体内の「力」を放出したら、全身がミシミシと音を立てて変形していく。
ただでさえ男子中学生としては小柄な背丈が、より低く──150センチ弱に。
それに伴って手足の筋肉も消え……って言うほど元々なかったけど。でも、色白な肌がより白くなって、触った印象もぷにぷにした感じになった。
髪型とか顔つきは──あんまし変わってないかも。あ、でも髪質がちょっとサラサラになったかな。

「──ピンクのフリルは乙女の証! 魔法少女らぶりー☆アユミン、爆誕です!」
しかも、気がついたら、いかにもなフリフリヒラヒラの衣装着て、魔法のバトン(て言うかハンマー?)片手に、身体が勝手に決めポーズとっちゃってたし。

ナマモノ曰く、今日本全国にはおおよそ都道府県単位で合計50人ほどの「魔法少女」が活躍してるらしい。47人じゃないのは、東京と北海道は2人ずついるからなんだって(高校野球かよッ!?)。

『そして、キミは映えある第94代目群馬県担当魔法少女に選ばれたのさ!』
いや、そのりくつはおかしい……。
「そもそも、なんで僕なの? 「魔法少女」って言うくらいなら、女の子を選ぶのが筋なんじゃない?」
『キミの言うことにも一理はあるね。でも……』
白いナマモノによれば、この「魔法少女」って実は結構なれる資格者が限られてるらしい。
1に魔力、2に性格、3、4がなくて、5に環境……を考慮した結果、県内の女性に適格者がいなくて、次善の策として僕に白羽の矢が立ったみたい。

『キミの潜在的魔法資質はかなり優秀だからね。その証拠に、ボクが教えなくても勝手に換身(フルトランス)できてるだろう?』
普通なら、ナマモノの教える呪文(実際には自己暗示のための言霊に近いらしいけど)を唱えないと、僕みたく変身はできないんって。
で、魔法少女になった者は、人知れず世界の片隅で生まれる邪気の集合体──邪気獣と戦う使命があるんだってさ。

「ちょ、もしかして魔法少女って、命がけのボランティアなの!?」
『そういう側面があることは否定しない。でも、キミたち契約した側にも、ちゃんとメリットはあるんだよ』
具体的には、ナマモノたちから様々な魔法を教えてもらえるんだそうな。
邪気獣をどんどん倒していると少しずつレベルが上がって、覚えられる魔法も増えるらしい……って、いや、RPGじゃないんだからさ。
『時々、他の魔法少女と邪気獣(えもの)の取り合いになることもあるけど、そういう時はルールを守って譲り合うのがマナーだからね』
しかもネトゲー!?
『そうそう、中には複数の魔法少女でパーティー組まないと勝てない相手もいるよ』
──頭が痛くなってきた。
科学文明万歳な現代社会の影で、こっそり魔法を使えたら、確かに一種のチートだろうけどさぁ。

まぁ、細かい話はあとで聞くとして、これだけは確認しておきたい。
「それで……この変身を解いたら、僕はちゃんと男の姿に戻れるの?」
『もちろん、これまで通りの姿で日常生活を送ることは可能だよ』
ナマモノの言葉に、ひとつ肩の荷が降りた気分。

実際、教えてもらった呪文を唱えると、キチンと男の子の姿に戻れた。
でも、なんとなく背が低いままのような……気のせいだよね? それとも、もしかしてこれから変身する度に、僕の身体は少しずつ浸食されて、女の子に近づいていくとかいうオチなの!?
『アユミは、ユニークなことを考えるんだね。そんなワケないじゃないか』
ははは、ですよね。
『キミの身体はすでに完全に「魔法少女」に置き換わっているんだから、これ以上変化しようがないよ』
…………へ?

ナマモノの説明によれば、魔法少女に「成った」者にとっては、その「魔法少女」の姿こそが「本態」で、普段の姿は「幻影魔法を使って、あくまで以前の姿を装っているだけ」なんだそうな。
「そんなの聞いてないよ!?」
『聞かれなかったからね。と言うか、ボクが説明する前に、アユミは勝手に換身してたじゃないか』
oh! ソーデシタ……。
本来は換身の前に最終意思確認をするものなんだけど、あれじゃあ自分からサインしたも同然だし……と、しれっとのたまうナマモノ。
『心配しなくても、別に悪魔やゾンビに変わったわけじゃないよ。あくまで「魔法を扱うのに最適化された人間の女性体」──通称・「魔法少女」に体組織が組み換えられただけさ』
いや、「だけ」って問題じゃないよ!

まぁ……済んだことは仕方ない。抜本的な対策はおいおい考えるとして、とりあえずこの「元の姿を擬装した格好」で家に帰るしかないか。
『うん、建設的で好ましい考え方だと思うよ』
いや、どっちかって言うと問題を棚上げしただけなんだけど……ってか、お前が言うな!
ん? そう言えば、ナマモノもついて来んの?
『そうだね。一般的な慣例に従えば、キミが魔法少女の任務に慣れるまで、おおよそ10日から30日前後は、常に行動を共にすることになるかな』
ふん、さいですか。やっぱりアレか、お前さんの姿は常人には見えないの?
『うん、確かに、認識を阻害することでボクらの存在を感知させにくくする技術は存在するけど、普段は使用してないよ』
え!? そいじゃ、もしかして、このまま家に連れていったら、親に「このコを飼いたい」って頼まないといけないのかな? 参ったなぁ。ウチのアパート、ペット禁止なんだけど。
『その心配は無用だよ』
立ち止まったナマモノは、シュタッと1メートルばかり跳び上がり、器用にもバク転をする。
その途端、モクモクと白い煙が立ち上って……。
煙が晴れた時には、そこには外見年齢11、2歳くらいのロリっ子が澄ました顔で立っていた。
──白スクを着て。
「にょわぁッ!」
思わず奇天烈な叫び声をあげてしまい、慌てて口を抑えると、僕は何か言いかけてたロリ娘を両手に抱えて(あとから考えると、いわゆる「お姫様抱っこ」の体勢だった)、一目散に自宅へと駆け抜けた。
そりゃ、もうエラいスピードで。
ははっ、確かにこの身体、華奢な見かけに反して結構チートみたい。
まぁ、その時は、そんな事考える余裕もなくて、誰かに見つからないことを祈りつつ、何とかウチの勝手口(この時、自宅が一階の角部屋だったことを心底感謝した)に滑り込むだけで精いっぱいだったけど。
街中でこんな格好の年下っぽい女の子と一緒にいるトコロ、他人に見られたら、絶対僕がいかがわしいコト強要してたと思われるに違いないからね。
幸いにして、近所の人にも家族の誰かにも見咎められることなく、僕は自分の部屋に入ることができたんだ。

「随分と性急な行動なのです。何かあったのですか?」
俺の腕の中のロリっ子(たぶん、あのナマモノの変身した姿)は、平然とした口調だったが、心なしか頬が赤らんでいるように感じられた。
「な、何かもかにかも……おまッ……そんなカッコで……」
全力疾走の余波で息切れしてる僕は言葉に詰まる。その様子を、ロリっ子はきょとんとした顔で見つめ返している。
ちくせぅ……元はあのウサネコもどきが化けた姿だと頭ではわかってはいるのに、結構可愛いじゃないかぁ。
「ああ、なるほど。つまり、ボクの化身したこの姿に欲情したのですね」
な……よ、よくじょうって……!
「そう言えば、確かこの惑星の主に欧米地域では、新婚夫婦が始めて新居に入る際、新郎が新婦を両手に抱きかかえて入る習慣があったと記憶しているのです。
つまりコレはいささか性急な求婚の儀式でしたか。
ふむ。本来のボクらのあり方からすれば、特定の一人類に肩入れすることはあまり好ましくないのですが……。
地球人類としても魔法少女としても、アユミは興味深い個体ですから、観察がてらその寿命が尽きる7、80年程度、ボクが生活を共にすることもやぶさかではないのです」
えーっとつまり、それって……?

「おや、案外、理解力が乏しいのですね。つまり──こういうことです」
スルッとボクの腕から抜け出して床に降り立つロリっ娘。
時計回りにクルリと身体を回転させた瞬間、「彼女」は白いワンピース姿(しかも、思いっきりミニでちょっとでもかがむとパンツが見えそうなの)に変身していた。
一体何を……と思ったところで、「彼女」は畳の上に正座して、礼法の教科書に載っけたいほどの見事な姿勢で三つ指ついて、頭を下げる。
「それでは、フツツカモノですが、以後末長くよろしくなのです」

ガチャッ「歩ぅ、そろそろご飯できたわ……よ」
嗚呼、しかも何故、そのクリティカルな場面を母さんに目撃されてしまうのだろうか。

* * *

さて、結論から言うと、正体不明のロリっ娘が息子の部屋で土下座しているという、あまりにカオスな状況だったにも関わらず、ウチの母親はまったく動揺を見せなかった。
それどころか……。
「あら、キューちゃん、お久しぶりね」
と、平然と「彼女」に話しかけている。
「はいです。つかさもお変わりなくご健勝のようで、喜ばしい限りなのです」
そして、平然と立ち上がり、うって変わって優等生的な受け答えするロリっ子。

そうか! きっとアレだ。この元ナマモノなロリっ子が、認識なんちゃらの魔法とやらを使って、「自分はこの家の知り合いである」的な設定で母さんに誤認させてるんだよね。
素の言動はブッ飛んでるけど、さすが魔法関連では一日の長があるなぁ。

「ところで……さっきのアレは何なのかしら?」
──しまった。人間関係は誤魔化せても、さっきの素っ頓狂な行動までは誤魔化せてないみたいだよ!?
余計な事を言わないよう、釘を刺そうと思ったんだけど、時すでに遅し。
「実は、アユミに求婚されたので、OKの意志表示をしてたのです」
「まぁ……!」
──終わった、何もかもが……。

僕は、まだ中学生のクセに、年下の子にいかがわしい関係を迫るロリペド野郎として、両親から蔑みの目で見られることを覚悟した。
したんだけど……。
「それは嬉しいわね。この子ったらどうにも脳天気でそそっかしいから、キューちゃんみたいな、しっかりしたコについててもらえると安心だわ♪」
……何やら、ヘン方向に話が進んでない?
「任せるのです。配偶者(つれあい)としてボクがみっちり教育(ちょうきょう)して、どこに出しても恥ずかしくないリッパな人間に育てあげるのですよ!」
「うふふ、むお手柔らかにね」
えーっと……どういうコトなんでせう?

その後、居間で父さんや姉さんも交えて、5人で夕食を摂りつつ、色々会話して探りを入れてみたんだけど、だいたい次のようなコトがわかった。

1)このロリっ子は、「父さん母さんの知り合いの娘で、今日からウチに下宿することになってた」……と認識されている。ちなみに、名前はキュリエル・P・弥生。ハーフかよ!? いや、銀髪紅眼だから、その方が説得力はあるけど。

2)「キュリエル」とウチの家族は以前からたまに面識がある。特に母さんと姉さんは娘/妹みたく可愛がっていた……らしい。

3)ちなみに、幼く見えるが、「キュリエル」は中学一年生、つまり僕の一学年下で、明日からはウチの学校に通うらしい。

oh、ジーザス!
──と、思わず外国人ライクな呻き声を上げたくなったよ、僕ぁ。
何、この三流ラブコメかステレオタイプなギャルゲーめいた状況!?

家族4人+ロリっ子──自称・「キュリエル・P・弥生」の5名で夕食を摂った後、自室としてあてがわれた部屋に戻ろうとするロリっ子を呼びとめ、僕の部屋に招き入れた。
「はわッ!? アユミは積極的なのです……了解です。ボクも知識だけで実地の行為に及んだ経験はないのですが、未来の伴侶たる許婚が相手なら、相手にとって不足は無し! ドンと来いなので……」
「ていッ!!」
何を勘違いしたのか、僕のベッドの前で身体をクネクネさせるロリっ子の脳天にチョップを入れる。
「うぅっ、ちょっとしたカナディアンジョークなのにぃ……旦那様はユーモアを解さないスカポンタンなのです」
だまれ、この嘘付き幼女!
そもそも、なんでアメリカンでなくカナディアンなのさ。地理的には近くても気性は大違いだろ。もしかして、凍るほどサムいって意味!?
「──まぁ、それはさておき」
図星か。

僕のジト目から視線を逸らしたロリっ娘は、ベッドの上で器用にクルンとでんぐり返りすると、元のナマモノな姿に戻った。
『さぁ、アユミ、早速パトロールに出かけよう!』
……幼女姿の時と性格変わり過ぎだって。
『とくに意識してるワケではないんだけどね。ともかく、キミはまだまだ新米だから、研修もかねて還身してパトロールに出た方がいいと思うよ』
「むぅ、理屈の上では確かに納得できるんだけど……」

とは言え、自分が「ピンチの時に秘められた実力が覚醒する」なんて主人公体質やヒーロー属性を持ってるとは思えないし、ブッつけ本番で戦おうと思うほど、自信家でもない。
「還身(リロード)!」
仕方なく、僕はナマモノに教わった還身(変身じゃないのは、ソッチが今の僕の正体だからだって)のキーワードを唱えた。
瞬時にして、僕の身体にかけられた魔力擬装(フェイクアバター)が剥がれ、やや未成熟ながら思春期の少女以外の何者でもない姿へと変わる。
ちなみに、変身じゃなく「還」身なのは、「実際には偽りの衣を脱ぎ捨てて、本来の姿に還(かえ)っているから」なんだって。

「──ピンクのフリルは乙女の証! 魔法少女らぶりー☆アユミン、降臨です!(きゃるん♪)
ピンク色のコスチュームもさることながら、左足を軽く後ろに曲げて右足一本で立ち、左手は腰、右手はVサインを作って右目に当てつつ、左目でウィンクするこのポーズは、ものすごく恥ずかしい。

「……ねぇ、このポーズとセリフ、何とかならないの?」
もちろん、僕の意志ではなく、勝手にこうなってしまうのだ。
『今はやめておいた方が無難だね。アユミが魔法の扱いに慣れてきたら、そのヘンのカスタマイズに手を出すこともできると思うけど』

──よし、頑張ろう。
その時僕は、「変身時の恥ずかしいポーズとセリフを少しでもマシなものに変更するため」という、愛と勇気の魔法少女にはあるまじき理由で、魔法の訓練に精を出すことを決意したんだ。

* * *

ナマモノの言う「パトロール」の結果、僕は運よく邪気獣……のタマゴと言うかヒナというか、とにかくドラ●エのスライム的な弱敵と遭遇することができた。
とは言え、相手がスライムでも、レベル1勇者にとっては何気に油断できないのと同様、なりたてほやほやの魔法少女な僕も気は抜けない。
「ナマモノ! 戦うって、具体的にはどうやればいいの!?」
『キミが手に持っているワンドは飾りかい?』
いや、確かにこの杖、先っちょに金属製のハンマーっぽいパーツは付いてるけどさ。相手は不定形生物っぽいし、鈍器で殴っても効果は薄そうだよ、RPG的に考えて。
『これだからゲーム脳は……まぁ、あながち間違った認識でもないけどね』
やっぱりか! となると、やっぱり有効なのは魔法攻撃?
『正解だけど、今のキミじゃあ、攻撃魔法を正確に相手に当てるのは難しいと思うよ』
じゃあ、どうすればいいって言うのさ?
『慌てないで。キミの魔導具(ワンド)は、まだ待機状態なんだ。魔法少女の武器は持つ本人の資質と想像力(イメージ)によって真の姿を現すのさ』
えーと、つまり……?
『とにかく、キミが強いと思う武器を思い浮かべるんだ! 聖剣だとか、神殺しの槍だとか、色々あるだろう?』
な、なるほど……。
僕は、意外に素早い動きでにじりよってくるスライムモドキから距離をとりながら、「強力な武器」に思いを馳せる。
けど、焦っているせいか、一向にイメージが湧いて来ない。
『何でもいいよ。キミも「モ●ハン」くらいプレイしたことあるだろう?』
なんでナマモノがモン●ン知ってるんだろ。いや、確かに無印Pをやったけど、僕ってアクションゲーム苦手で投げだしちゃったんだよ。第一、あんなでっかい剣とかハンマーとかランスとか、この華奢な体つきで扱えるとは思えないし。
『じゃあ、RPGは?』
人並みにドラ●エ、F●くらいはやったことあるけどさぁ。僕どっちかって言う魔法使い系キャラが好きなんだよね。だからこそ、「魔法少女」になったんだし。
『それなら、いっそ近代兵器とかはどうだい?』
銃器は確かに強そうだけど、撃っても当たる気がしないから却下かな。僕、射的とか下手だし。何より、不定形生物相手には効果が薄そう。同じ理由で弓も×。
て言うか、銃撃ブッ放すようじゃあ、それは「魔法少女」じゃなくて「魔砲少女」でしょ。いや、春頃にそういうアニメやってたみたいだけど。
『ああ、言えばこう言う……じゃあ、いっそ、キミがイメージする「魔法少女」にふさわしい、オリジナル武器を考えてみなよ!』
あ、ついにナマモノが切れた。
けど、確かに2体のスライムモドキがナマイキにも連動して追い詰めてくるから、避けるのが難しくなってきてるよね。
その時、偶然鏡に映った自分の──「魔法少女らぶりー☆アユミン」の姿が目に入ってきた。
(何べん見ても、絵にかいたような「魔法少女」だよね)
実はその点だけは、隠れ魔法少女ファンとして満足していた。これで、この姿をしてるのが自分じゃなかったらサイコーなんだけどなぁ。
(もしくは、見ようによってはアキバ系喫茶のウェイトレスに見えるかも)
待てよ。ウェイトレスと言えば……。
その瞬間、僕の脳裏でピタリとイメージが固まった。
「出でよ、インフィニットレイ!」
立ち止まった僕の手の中で杖が光とともに変形し始める。
その隙を見逃さず、2メートル近く先の地面からビョンと飛びかかって来たスライムモドキは……けれど、僕の左腕に装着された円い金属板にぶつかってはじき返される。
『それは盾かい? 確かに状況によってはとても役立つけど、今はそれだけじゃあ……』
「ううん。これは盾じゃないよ──いや、状況によっては盾としても使えるけど……」
僕はソレの装着された左手をナマモノに向けて真っ直ぐに伸ばす。
『! まさか、あのライデ●ーンのゴッドゴ…』
「惜しいけどハズレ……って言うか、よくそんな古いアニメ知ってるね」
そう、僕の左手の円盤からは弓(正確にはクロスボウかな?)とか光の矢が飛び出したりはしない。
代わりに……「円盤そのものが回転しながら飛び出し、目の前のスライムモドキを真っ二つにした」んだ。
返す刀ならぬ自動的に戻って来る復路の軌道で、もう1体も片付ける。
『あ……』
さすがにこの発想はなかったのかかな。ナマモノが絶句してる。
『あるごすのせん……』
「ヨーヨーじゃないよ! 喫茶店のトレイだよッ!」

* * *

『そうそう、その調子だよ、アユミ』
慇懃無礼というか、どうにも誠意に欠ける印象のナマモノの激励(?)の声を聞き流しつつ、その夜、僕はさらに2体のザコ邪気獣(ジャッキーと命名した)を倒すことができた。
いくら相手が人に仇なす者だからって、正直相手の命を奪うと言うのは、あまり気持ちのいい行為じゃなかったけど。
『それはおかしいね。キミたちは蚊やゴキブリをいとも気軽に駆除するじゃないか。人間に害為すものを排除するという点では、何ら変わりないよ?』
まぁ、それは確かにその通りなんだけどね。

ともあれ、そろそろ家を抜けだして1時間ほど経つし、姉さんか誰かが風呂に入れと呼びに来るかもしれない。
僕は魔力で自分の気配を隠ぺいしつつ、ナマモノと共に部屋に戻った。

「ふわぁ、初日から疲れたのですぅ」
僕の部屋に帰り着くや否や、ナマモノはロリっ子の姿に変身して、僕のベッドでゴロゴロしてる。
「ちょっと、その格好でそういう事やめてよね」
ナマモノ状態ならともかく、(外見だけは)わりかし可愛い娘が自分のベッドの上で、スカートも気にせずはしたない格好で寝そべってるというのは、健全な青少年には目の毒だ。
「ん? ボクはいつでも受け入れオッケーなのですよ?」
「やかましい! そもそも、ふたりきりの時は、ワザワザ変身しなくてもいいでしょ」
この不思議生物がどれだけ魔力を持ってるのか知らないけど、無駄遣いはよくないぞ。
「……(ポンッ!)ああ、アユミは勘違いしているのですね。ボクにとって、あの白い獣の姿も、今のこの女の子の姿も、どちらも「仮初の姿」ではなく本当の姿なのですよ」
ヘッ!?
「わかりやすく例えると、マク●スのバ●キリーが、ファイターとガウォークとバトロイドに変形するようなモノなのです」
うーん、分かるようなわからんような──まぁ、いいや。僕も元に戻ろうっと。
「アユミのそれこそ、まさに変身ないし擬態なのですよ?」
それは言わない約束。とにかく……。
「えーっと……「魔力擬装(フェイクシフト)!」

──シーーーーン……

「あ、あれ? なんで?」
「ふむふむ。たぶん、魔力不足なのです。アユミは初心者にしては高い魔力資質を持っていますが、あんな強力な魔力で出来た円盤を形成するのは流石にかなりの量の魔力が必要なのです。しかも、2連戦しましたし」
う……そりゃそうか。あれ、形はともかく武器としては某バンダナ少年の「サイキ●クソーサー」のイメージなんだよね。
盾としてはこの上なく堅固で、投げても非常に強力。ただし、込める霊力ならぬ魔力の量もハンパじゃない……ってことなんだろうな。
「まぁ、慣れてくれば、そのあたりの調整は効きますし、魔力量も少しずつ増えるのですよ」
ふぅん、了解。
あれ。でも、そうなると、このままじゃ、僕、男の子に戻れないの!?
「安心するです。別にグリ●フシードがないと魔力が回復しないどこぞのインチキベーターと違って、睡眠と栄養をたっぷり取れば半日もすれば満タンなのです」
いや、でもそれじゃあ12時間経つまで、僕はこのままってこと? そんなぁ。
「別にアユミはそのままでも大差はないと思うのですが……」
ほっといてよ! どうせ元から童顔女顔だよ!
それに、明日、朝一で体育があるんだよ! 確かにちょっと……いやかなり貧乳だけど、それでも着替えたらさすがにバレちゃうよ!
「ふむふむ。そういうことでしたら、ボクがひと肌脱ぐのです。裏技があるのですよ」
裏技……いやな予感しかしない。

* * *

──嫌な予感程良く当たると言うけど、予想通り、ロリっ娘の提案した「裏技」とは、ズバリ、こいつとのセックスだった。
うぅ……今時何を乙女ちっくなと言われそうだけど、初めては好きな人とって決めてたのになぁ。
あ、もちろん、男として女の子と、って意味だよ?
「(どの道、魔法少女のままでは、たとえ魔力擬装しても普通の女性との交接は不可能なのですが……まぁ、あえて教える必要はないのです)それで、どうするんですか?」
「どうするって……キミは、キュリエルは、いいの? ボクなんかとそんなコト……」
ナマモノモードならともかく、この(美少女な)姿だと、さすがに無下に扱いづらい。
「ああ、ボクのことなら全然気にしなくてもよいのです。むしろ、ドンと来い? 地球人類の性交にはいささか知的興味がありましたし、近い将来ボクはアユミの配偶者となる予定なのですから」
えっ、婚約者の話、まさか本気だったの!?。
「で、でも、確かさっき、そういうことするのは初めてだって……」
「おお、よく覚えていたのです。はい。だからこそ、初めてはアユミがいいと思ったのですよ──って、こんなコト女の子に言わせんじゃないわよバカ、ですぅ」
そそ、それって(人間と全く同じかどうかはさておき)、この娘が僕に好意を持ってるってことだよね?
ヤバい。
さっきも言ったけど、このロリっ子──キュリエルは、容姿だけ見たらかなり可愛いんだ。本人いわく、今の姿も(僕の魔力擬装と違って)偽りの姿ってわけじゃないらしいし、そうなると、年下の美少女に慕われてるってことになるわけで……。
な、なんだか急にドキドキしてきちゃったよ。
「ご納得いただけたようで幸いです。でわでわ……」
「ま、待った! こういう時、いきなりドアが開いて両親に発覚ってのがこのテの話のお約束じゃあ……」
「抜かりはないのです。たった今、この部屋に遮蔽結界を張ったので、つかさたちにバレる心配はないのですよ」
うッ……次々に逃げ道を塞がれてる。
「さぁ、やらないか? なのです」
ことここに至って、ヘタレな僕も覚悟を決めた。
「どの道、その、ナニしないと僕は元の姿に偽装(もど)れないんだよね? だったら……うん、お相手、お願いします」
ペコリと頭を下げると、キュリエルは面喰ったような顔になり……けれど次の瞬間、うれしそうな満面の笑みを浮かべて、ピョンピョン飛び跳ね始めた。
ちょっとウザいけど、まぁ可愛いかも──なんて考えてるあたり、確実に僕ほだされてるよなぁ。
「やたー! です。では、だーりん、夜はこれからなのですよ」
「いやいやいや……明日は学校あるんだから、チャッチャと済ませようよ」
「ガクッ……ムードとかデリカシーという言葉の意味を、アユミは知るべきなのですよ。
とは言え、結界の効果も無限ではないので、確かに無闇に長引かせるワケにはいかないのです。では、アユミ、ソフトに優しくするけど時間がかなりかかる方か、ややハードだけど比較的短時間でパパッと終わる方か、どっちがいいですか?」
普通に考えたら、絶対に前者なんだけど、のんびり時間をかけてられないし。
「こ、後者でお願いします」
「オッケー、うけたまわり、ボクにお任せなのです」
そのまま、ピトッと僕に背後から抱きついてくるキュリエル。

──あれ、僕の身体に回された手がなんだか随分太(ゴツ)くなってません?
ていうか、背後から僕の頭に顎を載せてる時点で背が伸びてること確定だし。

「ウフフ……先程、アタシの化身をマク●スにたとえたでしょ? バ●キリーにはね、3つのモードがあるのよん」
こ、この「ぶるぁぁぁぁぁ!!」とか叫び声をあげそうな野太い声は……。
振り返るのが恐いが、振り返らないワケにもいかない。
僕は、ギギーッと錆び付いたブリキ人形のような仕草で首を後ろに向けた。
「この姿でははじめましてね、マイハニィ♪」
──そこには、身の丈190センチ近くありそうな褐色の肌で禿頭の、まるで妖怪人間か某追跡者を連想させるコート姿の巨漢が、若●ボイスでオカマ言葉をしゃべりながらパチンとウィンクを僕に投げかけていた。

「ぎにぃゃあああああああああ!!!」
もちろん、僕は回れ右して逃げ出し……たかったんだけど、生憎僕の身体はすでにがっちりホールドされている。
「女の子モードどうしでも、魔力の受け渡しはできるけど、やっぱり男が女に注ぐのが一番てつとり早いのよね。今夜は寝かせないわよ、マイハニィ♪」
誰か、ぼすけて!

──とは言え、ひと通り暴れたところで、結局このままではどうにもならないコトに気付いた僕は、渋々(死んだ魚みたいな目になりながら)「奴」の提案を受け入れた。
ははっ、まさか童貞捨てるより早く処女、それもお尻じゃなくて正真正銘のバージン奪われるハメになるとは思わなかったよ。人生、一寸先は闇だね!(←ヤケ)
「まぁまぁ、そんなにスネないの。ハニィの童貞は、後日ちゃあんと、アタシが美少女モードの時に貰ってあげるから。ね?」
容姿とオカマ言葉はともかく、意外なことに口調や思考については、実はこの姿の時がいちばんマトモに会話が成り立つみたいなのが、また泣ける。

「うぅ……わかったよぉ。でも、お願いだから、できるだけ優しく頼みマス」
「ええ、もちろんよ♪」

改めて僕の身体を後ろから抱き上げると、「奴」はそのままベッドに腰掛け、膝の上にストンと僕を下ろした。
「奴」の手が、ひらひらと揺れる僕の魔女っ子的衣装のスカートを摘まみ上げると、ピンクのストライプ柄のショーツが顔を覗かせた。
今の僕が小柄(間違いなく150センチなさそう)なことに加えて、ナマモノが「化身」したこの男は相当ゴツいうえに筋肉質なので、まるで大人と子供みたく膝に乗ってもすっぽり抱き込まれてしまうくらいの体格差があった。

「あらん、アユミちゃん、こんなパンツを履いてたの。随分といいシュミをしてわねぇん」
好きで着てるわけじゃないやい。変身(還身)すると、勝手にこんな格好になるんだ……って、アンタがいちばんよく知ってるだろーが!
「く……あんまり、見ないでよ!」
「うふふ、見られたくらいでヘコタレちゃダメよ。これから、もっとス・ゴ・い、ことするんだから」

「奴」の左手がストッキング越しに太股の上をゆっくりと滑り、その先のショーツを目指す。コットンの生地の上から布越しに軽くそこに触られただけで、初めて体験するその感触に、僕はビクンと身を震わせてしまった。
右手は、ブラウスの隙間から胸へと入り込み、乳首をコリコリと指で挟んでいる。幸か不幸か胸の膨らみは殆どないものの、乳首のほうはしっかり敏感になっているらしく、そんな軽い刺激だけで、早くも得も言われぬ快感が胸を中心に湧き上がってきた。

いきなり無口になった僕を満足げに見下ろしつつ、奴は僕への愛撫を継続する。しかも、徐々にその触り方がねちっこくなってきてるような気が……。
「くふ……ン、あ……あぅうっ!」
「奴」の右手の矛先が乳首からささやかな僕の乳房へと移動する。乳首への刺激で敏感になっているせいか、ほんの僅かな膨らみなのに軽くマッサージされるだけで切ないもどかしさが胸から沸き起こってきた。
「声、抑えないほうがいいわよ。ハニィの可愛い声、もっと聞かせて?」
耳元でハスキーボイスに囁かれて、思わず背筋が震えてしまったのは、嫌悪か歓喜か。
「うぅ……だが……ことわ、るッ!」
たとえ身体は女として抱かれようとも、はしたなく喘ぐなんて断固拒否する!
「もぅ、強情ねぇ。素直になった方が結果的に早く終わると思うんだけど……」
たとえそうでも、僕なりに譲れない、譲りたくない一線というものがあるんだ!
そう思ったのもつかの間。
太股を撫でていた「奴」の手が、いつの間にか胸を這いあがり、もう片方の乳首をブラウスの上から刺激する。
「あふっ!(あ…あ……す、ごいっ……ち…乳首っきもちいいいよぉ……)」
両方の胸を責められただけで、僕の決意はあっけなく崩れ去る。まるで全身に電流が走ったみたいに痺れて、「奴」の胸にもたれ掛かってしまった。
「小さい胸は感度良好というのは俗説だと思っていたけど、案外ホントみたいね」
今度はやや強めに擦られて身体が勝手にびくびく震える。
「ふふっ、アタシにもオッパイはあるからね。女の子の感じる場所なんて簡単にわかっちゃうわよ♪」
「奴」の指が胸──乳首と乳房を、撫で、さすり、摘み、転がすたびに、どんどん力が抜けていく。
「うぅ……やだぁ、もぅ……やめてよぉ」
自分の身体が自分のものじゃないみたいで──すごく恐い。
そもそも、お昼過ぎまで僕は確かに男の子だったのに、ひょんなことから魔法少女になって、さらにそのまま女の子の身体になって、しかもそれが本態で、それでも何とか男の姿になるためには魔力が必要で──魔力を分けてもらうためにコイツとHしないといけないんだ。

スカートが再度めくられた。「奴」は僕のスカートの下に手を潜り込ませると、その太い指先が、ショーツ越しに湿った僕のソコに触れた。
「ひあっ! うぅ……さ、触んない、で……」
「嫌なの?」
真面目な声でそう囁かれると──その、返答に困る。
「男に抱かれる」ことへの嫌悪感が消えたわけではない。
でも……「奴」は少なくとも俺が好きだと言い、生涯を共にする意志があると言う。
そして、僕もその事を(男女の立場が逆だったとは言え)一度は受け入れたのだ。
(それに……その、し、シないと元に戻れないんだよね?)
快感に朦朧としつつも、頭の片隅に最後に残った理性に、そのことを示唆され、僕は覚悟を決めた。
耳まで真っ赤にしたまま、小さく首を横に振る。
極めて消極的な否定だったが、相手に僕の意志は伝わったようだ。
「安心して。できる限り、痛くはしないから」
聞く者を安心させるような信頼感溢れるバリトン。
(うぅ……どうせなら、戦闘中とかそういう漢らしい状況で聞きたかったよぅ)
とは言え、自分では意外なことにその声に安堵感を覚えてるみたい。
僕の身体から強張りが抜けたのを見計らったように、「奴」が僕の細い首筋から耳朶、さらにその中へと舌を這わせてくる。
「やっ、くすぐっ、た……あっ!」
間髪を置かずにスカートの下の手がショーツをずり下ろし、その下で熱く潤った僕のそこに触れる。
「だ、だめだっよぅ、そんなトコ……」
「あら、ココはそうは言ってないみたいだけど?

──ジュクッ……ピチョ……

熱い……ものすごく熱く濡れているのが自分でもわかる。
「こんなビショビショになって……もっとシテって言ってるようなもんじゃない」
「へぅッ」
僕が黙ったのを肯定ととったのか、「奴」は僕のブラウスのボタンを全部外し、前をはだけさせた。
ブラを着けていないため、その下から小さな桃色の乳首が剥き出しになる。
「や、やだ……見ないで」
まるで本当に女の子になってしまったかのように恥ずかしい。
僕は腕を胸の前で交差し、身をよじった。真っ白な肌が見る見るうちに桜色に染まっていく。
「奴」は、その手をつかんで持ち上げると、荒い呼吸にあわせて震える小さな乳首に背後から口を付ける。
「んぁっ!!」
乳首を口に含んで転がされただけで、僕はたまらず声をあげてのけぞった。

──その瞬間、「奴」の指が、僕の男にはないはずの「穴」に侵入してくる。
「うっあ、ああああ! ……き、きっつ……いよぉ!」
確かにキツい……けど、思ったほど苦痛ではなかった。
その証拠に、「奴」が軽く指先を抜き差しすると、それだけでぴくん、と僕の身体は小さく痙攣してしまう──痛みではなく、快感に。

「あら、もう大丈夫なのかしら。まぁ、元々、魔法少女は常人よりだいぶ負(マイナス)の感覚が鈍く出来てるからね」
じゃあ、イクわよ……そう奴が言い終る前に、身体が一度持ち上げられ、そして落とされる──「奴」の分身の真上に。
当然、肉棒の先端が、めりめりと一気に僕の女の部分に押し入って来た。
意外なことに、痛みは……ない。けれど身体を挿し貫かれる違和感だけは確かにあって、下腹部から背筋に伝播するその感覚を、僕は必死で堪えるハメになった。
体内で何かが膜が裂けた感覚もあったが、魔法少女状態のせいか、徐々に回復したのは有難かった。
「ふぅ……いちばんの峠は越したわ。あとは、徐々に馴らせばいいはずよ」
その言葉通り、「奴」はじれったい程ゆっくりゆっくりと身体を揺すり、自らの分身を僕の体内で動かし始めた。

しばらくすると、僕の身体も少しだけその感覚に慣れたのか痙攣めいた強張りが抜け、先程以上に濡れ始めたみたいだ。
(感じてるんだ、僕……)
我知らず、顔が赤くなる。
「アユミちゃんの中、すごく気持ちいいわよ」
そのタイミングを見計らったように「奴」に囁かれて、思わず僕は下半身に力を入れてしまう。
「ひゃうっ!」
自覚したら、もう止まらなかった。
まるで、ソコから身体の内側を全部犯されてるみたいに、全身が熱い。さっきまで違和感の塊りだったソレを突っ込まれた場所が熱く脈打っているのがわかる。
「くっ、は……あついぃぃぃ」
自分でも驚くほど色っぽい吐息が口から洩れる。同時に、「奴」は腰の動きを一気に速めた。
「くひッ……!」
強く突かれると目の前に火花が散る。意識がふわふわと浮いて消えてしまいそうで恐くなり、すがりつくものが欲しくて、気が付けば両手を挙げて「奴」の首に腕を回してぶらさがっていた。

すでに、僕の身体が自らの意志の制御を離れて、勝手に快楽を貪るようになっていた。相手の動きに合わせて、懸命に自らも腰を動かしている。
下腹部の一点から背筋にかけて、快感が電流となって走っていくのがわかる。
「アユミちゃんのココ、熱くて吸い付いてきて最高だわ」
「い、言わないで……はずかしッ……!」
ジュプジュプと粘ついた音が部屋に響き渡る。
「うふふ、そんなこと言って……気持ちいいでしょ?」
「あっ、あっ、あっ、あ……あああッッ!」
奴の肉棒の先端がそこ(多分子宮?)に当たると、もう何も考えられないくらいの快感が走る。
「う、ぅん……イイ……きもち、イイのぉ」
「うんうん、素直な方が可愛いわよ。さ、ラストスパートよ!」
より一層激しく胎内を突かれて、予想もつかないほどの刺激が走り、投げ出された足がピンッと突っ張る。
「うぁあああ……クる……キちゃうぅ……ひ、い、イクぅぅぅぅぅぅぅ……!!!」
「オッケー、さぁ、アタシの魔力(おもい)、受け取って、アユミちゃん!」
「奴」の分身から注ぎ込まれたナニかが体内の深奥部で弾ける感触とともに、俺は、未知なる領域へと昇りつめていた……。

* * *

朦朧とした意識が戻ると、すでに僕のアソコからは「奴」のモノは抜かれていた。
何となく物足りないような気になり……かけて、慌てて首をフルフルと振る。
「はぅ、御馳走様でした」
見れば、全裸のロリっ子が床に正座して、パンパンッと両手を合わせて僕を拝んでいた。
どうやら、イッたとほぼ同時に、またこの姿に戻ったみたいだ。
僕はベッドの上で、けだるい身体を起こし、すぐさま「魔力擬装」の呪文を唱える。

──ボムッ!

うん、問題なく戻れたみたいだ。
「ですからぁ、それはあくまで「擬装」なのですよ?」
あーあー、聞こえない聞こえない!

ともあれ、こうして僕の「魔法少女ライフ」の一日目はかろうじて無事に過ぎて行くのだっ……。

「あゆむ、そろそろお風呂に入り……って、アンタたち、何してんの!?」
そして、ノックも無しにドアが開かれ、顔を出す姉さん。

*現在の状況*
僕→全裸
キュリエル→まっぱ
ベッド→乱れ放題
部屋→生臭い匂い

ここから導かれる結論は……。

「父さん、母さんっ! 歩がオトナになったよーーー!」
ちがーーーう! いや、違わないけど、姉さんが思ってるのとは違うんだぁ!!

「やれやれ、なのです」
片方の当事者のクセして、他人事みたいにのんきな顔してんなぁ!!

-ひとまず、end-
#というワケで第一部完! 勝ったッ!(←お約束)
#色々伏線があるので続きを書くべきかは悩み中。とりあえず、加筆修正はする予定ですが。
#以下、【作者によるわりとどうでもいい裏話】知らなくてもなんら支障はありませぬ
・主人公は、画像では相川歩を使用しているが、身長その他の外見イメージ的にはむしろハルナの方が近い。なので、元からしばしば女の子(ないし男の娘)扱いされてた。
・3つのモードを持つナマモノことキュリエル。小動物形態が魔力重視、大男形態が格闘戦重視で、少女形態はバランスタイプ。たとえるなら、ファイター・バトロイド・ガウォークか。
・ついでに外見イメージは、小動物はQBではなく「白い魎皇鬼」、大男が妖怪人間ベムと「バイオ」のタイラント(人間態)を足して2で割った感じ。少女形態は「雪ミクさんを12歳くらいにして目を赤くした感じ」。
・じつはこの話、先代支援所に投下しつつ未完だった魔法少女戦隊の話の後日談だったり。つまり、アユムの両親も……。
KCA
kcrcm@tkm.att.ne.jp
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0.4730簡易評価
45.100きよひこ
ネタ臭強かったけど描写はよかったです
50.90きよひこ
バトロイドは普通にイケメンでよかったじゃんよおおおお