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THE VIOLET BLADE(中編)

2012/05/06 11:11:44
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「ねぇねぇ、聞いた聞いた? 今日このクラスに転校生が来るって」
私立桜晶女子学園、1年D組の教室の中。ゴシップ好きの生徒、ミカは早速手に入れた話をクラスメートに披露していた。
新聞部員である彼女は、他の誰よりも早く、急遽やって来た転校生の情報をキャッチしていたのだ。
「えー本当? 入学してそんなに経ってないのに、今転校生とは珍しいねーお姉ちゃん」
「うん。そうだねー」
ミカの中学時代からの友人である双子の姉妹、海と久実が反応する。この仲良し姉妹はいつも一緒だ。
そんなミカの話に、クラスの他の生徒も興味を示してきた。
「で、その新しい子って、どうなの? 可愛い? 可愛いかったら食べてもいい!?」「やめぃっ!!」
「素行はどうなんだろ? ガラの悪い子じゃなきゃいいなぁ」
「前の学校で問題起こして、こっちに来たのかも知れないしねぇ」
「ウチは進学校だから、それは無いと思うけど・・・?」
と、それぞれが好き勝手な反応を見せる。
「まぁまぁ。落ち着いてよ」
両手を上げて、ミカは生徒達を宥める。
「今職員室で(担任の)榊先生と居るのを見たけど、ちっちゃくて可愛い子だったよ。
元気そうな感じだったけど、不良には見えなかったなぁ。クラスにはすぐに馴染むと思う」
「そういえば今日は、他にも見慣れない子が来てるよねー」
小声で囁きながら、海が教室の後ろにいる細身の生徒を指した。
彼女も今日、始めて見る子だ。ミカはクラス名簿の記憶を辿る。確か名前は神原京(かんばら・みやこ)、だったかな。
生まれつき体が弱いらしく、入学する直前に発作を起こして入院してて、今まで登校出来なかったんだったっけ。
「あの子とも、仲良くできればいいねーお姉ちゃん」
鏡映しに同じ顔をした姉妹が、向かい合って頷く。
「そうだねー。あ、噂をすれば来たみたいだよー」
不意に久実が、教室の外を指差した。
その先には担任の美人教師、榊先生に連れられた、金髪の可愛らしい女生徒が歩いていた。

「今日からこのクラスに新しい仲間が加わります。みんな仲良くしてあげてね」
担任の榊先生はいつものように、にこやかに微笑みかけた。
「では椿さん。みんなに自己紹介をお願いね」
「はいっ」
教師に促され、転校生がやや緊張した顔つきで、電子黒板に自分の名前を書き込んだ。
そして生徒達に向き直り、丁寧にお辞儀をする。クラス全員の視線が彼女に集約する。
彼女はすぅ、と深く深呼吸をして、ありったけの元気を吐き出すように勢いよく声を張り上げた。
「今日からこの学校に転校してきた、椿紫奈(つばき・しいな)といいますっ。皆さんよろしくお願いしまーすっ」
パチパチパチ。生徒達の盛大な拍手と歓声が、クラスの一員となる少女を迎える。
歓声が収まると、榊先生はミカの後ろにある空席を指差した。
「椿さんの席は、北条さんの後ろが空いてるから、そこを使ってね」
はい、と返事を返して紫奈は席へ進み、椅子に腰を下ろす。
「それから神原さん。あなたも今日初めてクラスに来たのだから、みんなに自己紹介、お願いできるかしら?」
急に名を呼ばれ、神原京が戸惑いがちに椅子から立ち上がる。
彼女とすれ違うように、紫奈は自分の席についた。
早速ミカが、紫奈のほうへ振り向いた。
「あたしは北条ミカ。分からないことがあったら何でも聞いてね、椿さん。
あ、それからもし面白そうなネタがあったら、こっちに教えてくれないぁなぁ」
「うん、よろしくお願いね、北条さん」
機関銃のようなミカの勢いに少し戸惑いながらも、紫奈は彼女に微笑み返した。
教壇では紫奈と同様に、初めて教室にやって来た京が自己紹介を始めていた。

そしてその時。1-Dの教室の一角では、二人の『生徒』が誰にも聞こえない『声』を使い会話をしていた。
「へへへ、あいつが噂の転校生か。中々可愛いじゃねぇか。久しぶり犯りたくなっちまったぜ」
女子高生に似合わぬ太い声、そして乱暴な喋り方で隣の『相棒』に話しかける。
「やめとけ」
冷めた声で相棒が応える。その視線は紫奈の背中へと向けられていた。
「あいつはただの人間じゃねぇ。上手く化けたつもりだろうが、あの女からは豚の臭いがプンプンするぜ」
「ほう。てことはあの女が噂の『魔殺士』ってわけかい? 俺たちの上客を次々と消してるっていう?」
「たぶん、な。いつか来るとは思っていたが・・・」
「じゃあどうする? 消しちまうか? 2人でかかりゃあ1匹くらいは・・・」
「そいつはまずい」
「何でだ?」
「あいつらの本体は靄のような霊体だ。斬ろうと思っても斬ることはできねぇ。対処する手はあることはあるがな。
だが一匹消したところで、奴らはまた新しい魔殺士を送り込んでくるはずだぁ」
「じゃあどうするんだ? せっかくの狩場を引き上げちまうのか?」
「最悪それも考えてるが、決断するにゃまだ早ぇよ。引き払うにしても、もう少しおいしい目を見ねぇと、な。
まあしばらくは大人しくしてようぜ。皮の取引は当分中止だ。狩りさえしなきゃあすぐには俺達が犯人とはばれねぇさ。最も奴の監視は怠らねぇがな」
「ちっ。つまんねぇなぁ」
『可愛いらしい』顔で不満そうに異形はぼやく。あいつが諦めるまで、どれくらいの時間が必要なのやら。
「そう腐るな。そうならねぇためにも手は打つさ。あ、そうだ」
相棒がポン、と手を打つ。何かいい手を思いついたのだろうか
「どうした?」
「おめぇ、魔殺士と入れ替わってみる気はねぇか?」
「ええ!? 出来んのかそんなこと?」
「奴らも俺らも、少々作りは違うが『皮』を使って人間に化けるのは変わらねぇ。奴らの皮も作り変えちまえば俺たちだって着れるさ。
あの娘になりすませたら、狩場は守られるし魔殺士の動向も筒抜けだし一石二鳥だぜ」
「なるほど、おめぇ頭いいなぁ」
「へへへ、おだてても何も出ないぜ。じゃあ早ぇ内に準備して、いっちょ仕掛けてみるか。それまではしっかりと猫被っとけよ」
「くくく・・・。それくらいちゃんと分かってるって。大人しくしておくよ。もちろん、こっちの方もな・・・」
指先で自分の股間を弄る。この皮の中の膣や子宮の脇に隠れた、猛り狂う魔羅の存在を確かめるように。
「「げひひひ・・・」」
2人の顔が、まるで蛇を思わせるような、不気味で歪んだ笑顔を形作る。
しかし一瞬の後、彼女らの顔は何の邪気もない、純真そうな少女のものに戻っていった。

■■■

「うーん、眠い・・・」
数日後の朝、紫奈は目を擦りながら、襲い来る睡魔を堪えていた。
ここ数日の放課後。紫奈は魔者の手がかりを探して学校の方々を歩き回った。
魔者に喰われた生徒の教室へ赴いて、被害者の動向を聞き出そうとしたり、犠牲者が最後に目撃された場所に、残留した魔気が無いかを確かめたりした。
しかし昨日も空振り。何の手がかりも得られないまま、紫奈は深夜の街を一晩中さまよったのだった。
実体の無い精神体とは言え、肉体を持っていたときと同じように疲れもすれば眠りもする。徹夜をすればそれだけ本体は消耗するのだ。
「「ふああ・・・」」
前に座る北条ミカと、ほぼ同じタイミングで大きく口を開けて大欠伸。
「あはは。変なの」
紫奈の顔を見て、涙を拭きながらミカが笑う。見苦しいところを見せたかと思い、紫奈は思わず苦笑い。
この数日で、ミカと双子とはすっかり仲良しになっていた。
「ちょっと夜更かししすぎちゃって。北条さんも遅くまで起きてたの?」
「うん、まあね。少しばかりチャットに夢中になりすぎちゃって。あ、そうだ。椿さんこんな噂知ってる?」
「噂?」
「うん。数日間家出していたうちの生徒が、帰ってきた途端別人になってる、って噂なんだけど・・・」
「!!」
それを聞いた途端、紫奈は勢いよく体を前に乗り出した。鼻先がぶつかりそうになり、ミカは慌てて後ずさる。
「その話、詳しく聞かせて!!」
紫奈は掴みかからんばかりの勢いで、ミカに詰め寄った。
「うわわっ!!」
彼女の剣幕に、ミカは圧倒されて思わず後ろに転びそうになる。
「ミカちゃん!!」
隣で話していた、海と久実の双子が慌ててミカの背中を支え、優しく立たせてやる。
「ご、ごめん・・・大丈夫だった?」
「大丈夫大丈夫。無問題無問題」
はっと我に返り、詫びる紫奈にミカは笑って返す。
「それにしても椿さん、随分食いついてくるねぇ。ひょっとしてこういう話、好き?」
「え、ええまぁ。興味は・・・あるかな?」
「だったら、放課後に話してあげようか?」
「本当!?」
再び紫奈は勢いよく身を乗り出す。二度目だというだけあって、ミカは持ち前の運動神経で華麗にスルー。
「新聞部員として、虚報は流さないよ。でも一つだけ椿さんにお願いしたいことがあるんだー」
「この件の情報ってまだまだ少なくてさ、できれば椿さんにも手伝って欲しいの。あたし1人じゃ荷が重くてさー」
「・・・」
紫奈は躊躇した。自分の立場を考えると、一緒に居るのはミカにとって大変危険だ。
もし彼女の話が本当に魔者がらみで、それが元で奴らに目をつけられたとしたら、自分一人ではかばいきれないかも知れない。
とはいえ、早い内に有用な情報が得られなければ、犠牲者はまた増えることになるだろう。
人の命を天秤にかけることなどしたくはない。だが紫奈は、自分がそうしなければならない時があるのを理解していた。
「うん・・・。いいよ」
真剣な顔つきで紫奈は頷いた。事情を知らないミカは、返事を聞いて嬉しそうにはしゃいだ。
「やたっ!! これで取材が捗るよー。ありがとう椿さん。あ、今度からあたしのことはミカって呼んで」
「は、はぁ・・・」
自分の決定に不安を覚えながら、紫奈はミカにただ力なく頷くのみだった。

「・・・・・・」
そんな2人の様子を、教室の端から見つめる者がいた。病欠していたクラスメート、神原京だ。
入退院を繰り返していたせいか、体の線は細く、顔の血色もやや悪い。そのせいで彼女の美貌はやや翳りがあるようにも見える。
しかしその瞳は強い決意と意志が込められているかのように、強く輝いていた。
殺気は無い。むしろ親しい人を見守るような暖かい目だ。
その瞳で彼女は、新しい友人と共にはしゃぐ紫奈の姿をずっと見続けていた。

■■■

六時間目が終わり、この日の授業は全て終了した。
「じゃあ椿さん。部室に顔出して来るから、一時間後に中庭でね」
ショートホームルームを終えた後、ミカは紫奈にこういい残して、そそくさと教室を後にした。
「あ、ミカちゃん待ってー」
「じゃあねー。紫奈ちゃん」
仲良しの双子がその後に続く。ほほえましい日常の光景だ。
彼女達を見ながら、紫奈=慶紫は自分が魔殺士になる前の、本当の学生だった頃を思い出していた。
思い返せば、平和で楽しい日々だった。
友人とつるんで街へ繰り出したり、勉強会の名目で友人宅でテレビゲームに耽ったり、好きな女の子のタイプを語り合ったり。
しかしその日常は、魔者によってあっという間に引き裂かれた。

あの日、彼は夜遅くまで友人宅で遊んでから自宅に帰り着いた。
父親の説教を覚悟しながら、ポケットから家の鍵を取り出す。しかし夜にも関わらず、家の鍵は開いていた。
無用心だな、慶紫はそう思いながら扉を開けて家の中へ。
「ただいまー」
返事は無い。留学中の姉はともかく、父も母も、妹の返事も一切帰ってこなかった。
変だな。まだ寝るには早い時間だ。玄関口には靴が3つ、つまりは3人とも家にいると考えていいはずだ。
居間は電気がついたまま、だが誰もいない。テーブルの上には1人分の食事、おそらく彼の夕食がラップをかけて置かれている。
だが何かがおかしい。妙な胸騒ぎを感じて彼は家族の姿を探した
そして、その予感は的中した。文字通り最悪の形で。
探索すること数分、二階の寝室に両親はいた。体のあちこちが毟り取られた、無残に変わり果てた姿で。
部屋の中は、まるでペンキをぶちまけたかのように真っ赤な血で染まり、現場の凄惨さを彩っていた。

「お帰りなさい、兄ちゃん」
家族の死を見たショックから、慶紫がまだ立ち直れない内に、不意に背後から聞き覚えのある声がかけられた。
彼の妹、摩耶の声だった。しかしそれにはどこか異質なものが感じられた。
「遅かったんだね。みんな揃ってから夕飯にするつもりだったけど、待ちきれなかったから先に食べちゃった☆」
おそるおそる後ろを振り向く。確かにそれは摩耶の姿をしていた。
しかし、彼女の顔と服のあちこちは部屋の色と同じ赤に染まり、その愛らしい顔を邪悪な笑みで歪ませる。
彼女の口ががばぁ、と顔の半分くらいに裂け、右手に持っていた『もの』にがぶりと噛み付いた。
それは人間の脚だった。化け物のように大きく裂けた口で、バリバリと肉を引き裂く。
膨らんだ摩耶の口の中で、肉を咀嚼する音と、骨の砕ける鈍い音が聞こえた。
「おいしい・・・」
化け物のように歪めていた顔を元の顔に戻し、摩耶はうっとりとした顔で兄に微笑む。

「お母さんの脚だよ。女の人の肉って、柔らかくておいしいの」
「摩耶・・・。お前・・・」
一体何がどうなっているんだ!? 慶紫の頭は、恐怖とショックで完全でパニックに陥っていた。
しかし確実な、二つの事実は把握していた。
こいつは摩耶じゃない。そしてこのままでは、自分は死ぬ。妹の姿をした『何か』によって。
「うわぁぁ!!」
絶叫しながら、慶紫は摩耶の体を押しのけて寝室から飛び出した。
手にもっていた『何か』を投げつけながら、全速力で階段を下り、玄関口へと向かう。
だが扉に手が届こうとした瞬間。膝に衝撃がはしり、彼は床に叩きつけられた。
遅れてやってくる激痛。右脚がおかしな方向に捻じ曲がっている。
しかし悲鳴をあげることが出来ない。階段から伸びた異常に長い腕が、彼の口を塞いでいたからだった。
「逃げちゃあ駄目だよ。兄ちゃん」
階段の方から足音と一緒に、摩耶が姿を現す。
「一緒に、あ・そ・ぼ☆」
慶紫の口を塞いでいる長い腕は、彼女の体から伸びていたものだった。

そこから先は、思い出すことすらおぞましい地獄だった。
妹の皮を被った怪物は、慶紫の体を生きたまま喰らったのだ。
手足をもがれ、はらわたを抉られ、肉を貪られる。
今まで経験したことの無い苦痛、苦痛、苦痛。
それは楽しんでいた。苦痛に喘ぎ、絶望に苦悶する彼の肉体を、妹の姿で弄んだ。
痛みに耐えかね、何度も失禁する慶紫を嘲笑い、
引きちぎった局部を持ち主の目の前で、自分の体を使って辱めたりもした。
しかし彼には、報復することはおろか、悲鳴をあげるすら許されない。
何も出来ないまま、一方的になぶられ、体を喰い尽くされる。
目玉は飛び出し、鼓膜は破れ、何も見えず何も聞こえない。
感じるのは全身を苛む痛み、痛み、痛み。
あらん限りの痛苦を身に受けながら、慶紫の生命は闇の抱擁の中へと飲み込まれていくかに思えた。

しかし、慶紫は生き残った。
後で知ったことだが、魔者を追っていた魔殺士が、すんでのところで助けに入ったのだ。
彼は妹に化けた魔者をその場で滅し、ズタズタにされた慶紫の命を救った。
身寄りのなくなった彼と、留学中で難を逃れていた姉の翠(みどり)を引き取り、面倒を見てもくれた。
術による治療によって、慶紫の肉体は元通りに回復した。
だが家族を殺され、自分が傷つけられた心の傷は癒えることはなかった。
毎夜のように、慶紫は悪夢に苛まれた。
家族が、両親が、妹が、自分の目の前でなぶり殺される悪夢を。
ひょっとしたら、あいつの仲間が自分の前にやってくるかも知れない。彼はそう考えるようになった。
生き残った家族は留学から帰ってきた、姉だけになってしまった。
もう誰も失いたくない。また自分のような人間を出したくもない。慶紫はその思いを胸にして、恩人に申し出た。
自分を、魔殺士にして欲しいと。
魔殺士はその決意を汲み取り、慶紫を一人前の魔殺士に鍛え上げた。
彼は厳しい鍛錬の末自分の肉体を捨て、終わりなき魔者との戦いに身を投じたのだ。
しかし、一つだけ彼には誤算があった。
彼が守ろうとした姉、翠もまた魔殺士の道へと進んだからだ。
姉の思いもまた、弟と同じだったのである。

■■■

紫奈が物思いに耽っているうちに、随分と時間が過ぎていたようだ。
辺りを見渡すと、教室の中に人はほとんど居なくなり、静まり返った室内に、グラウンドからの部活動の歓声が聞こえてくる。
時計をみると終業から既に50分以上が過ぎ、ミカとの待ち合わせ時間は間近に迫っていた。
「いけない。うっかりしてた」
慌てて椅子から立ち上がり、紫奈は人の姿がほとんど見えなくなった教室を後にした。
校舎の西棟から、職員室のある中央棟に続く渡り廊下を足早に駆け抜け、ミカが待つ中庭へと向かう。
時間ギリギリで彼女は中庭に到着。まだミカは来ていないようだ。
大方新聞部の用事か何かで遅れているのだろう。携帯番号とメアドの交換はもう済ませているし、何かあれば連絡がくるはずだ。
ベンチに座って、ミカが来るのを待つ。
しかし10分経っても、20分経っても彼女はやってこなかった。
「ミカちゃん遅いなぁ・・・。どうしたんだろう?」
痺れを切らした紫奈が、ミカに連絡を取ろうと上着のポケットから携帯電話を取り出す。
その時、携帯のスピーカーから聞きなれた流行歌のイントロが鳴り響いた。メールの受信音だった。
送信元はミカから。ようやく部室から解放されたのだろうか?
しかしメールとは少し変だ。直接電話をかけてくれたほうが分かりやすいのにな。
そう思いながら、紫奈は送られてきたメールを開く。
メールの始めには、携帯のカメラで撮影したと思しき、何かの画像が貼り付けられていた。
しかし、それを見て紫奈は驚愕した。
画像の中には拘束されたミカと、双子のどちらかの姿が映し出されていたからだ。
画像の双子が海なのか久実なのか、どちらなのかはまだ付き合いの浅い紫奈には分からない。
二枚目の画像には、学校の裏手にある小山の地図。その中央には大きな×印と、1800の数字が書き込まれていた。
まるで18時までにそこへ来い、と言わんばかりに。(続く)
THE VIOLET BLADE(前編)の続きですー。
残りは後編一回で収まるか少々心配・・・。
かわらば
0.2770簡易評価
2.100きよひこ
おおー。ダークな現代伝奇はやっぱいいですねー!
23.100ゴールドアーム
続き期待。
25.100きよひこ
続きがきになりますw