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神隠し

2012/05/10 22:11:38
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プロローグ 夜の光景

窓から差し込んだ月明かりが部屋の中を照らす。

虫の声が止み、静寂の中で近づく気配を感じる。
俺の視界で女性が立ち上がり帯を解くと襦袢(じゅばん)を脱ぐ。
白い、そして透き通るような肌だ。滑らかで身体全体が柔らかなカーブを描いている。
艶やかな髪。髪は腰の下まで伸び、一部は前に出て乳房の横を流れている。
半球、いやそれ以上の大きさの乳房の先端では桜色の乳首がツンと上を向いている。
折れるような細いウエスト、張り出した腰。
股間は滑らかなまま少し膨らみ、中心に一本の縦溝が刻まれている。
とびきりの美女が全裸で瞳を潤ませながらこちらを見ていた。

俺は慌てて鏡に映った自分の姿から目をそらせて大きくため息を吐く。
あれからもう……何日が経ったのだろう?



第一章 山の伝説

「あんた、山に入るのなら神隠しに気をつけなされ」
登山口近くの売店で飲み物を買っていると、突然老人が声をかけてきた。
「おじいさん、またそんなこと言って。お客さんに迷惑ですよっ」
店番の女性が慌てた様子で老人を店の奥へと押し込む。
「すいません。うちのおじいさん、昔の言い伝えを真に受けて、やれ神隠しだって騒いでばっかりなんですよ」
そう言って女性が笑う。
「言い伝えですか?」
「ええ、ふるーい伝説なんですけどね」


その女性の話によると、登山予定の山には山神様が住んでいるという。
村人に恵みをもたらす存在として奉られているのだが、7、80年ごとに神隠しにより一人の人間が忽然と姿を消すのだという。
「それで前に神隠しがあったのが、70何年か前だとか。でもねえ、そんなの憶えてる人なんか誰もいないし、おおかたボケたんだろうって噂される始末で」
やれやれといった感じで女性が首を横に振る。
「神隠し……か」
「だーい丈夫ですよ、お客さんならっ。おじいさんの話だと、その山神様は男らしいんですけど、神隠しの理由が『見初めた人間を妻に娶るため』ですって」
「ぷっ」
俺は思わず吹き出した。なるほど、それなら確かに男の俺にとって心配無用の伝説である。
まあ神隠しなんて足を滑らせて遭難したのが大げさに伝わったのだろうし、長い時間をかけてここまで来たのに言い伝えが怖くて登山を中止、なんてできる筈もない。
俺はさらに喋りたそうな女性の言葉を遮ると山へ向かって出発した。


第二章 嵐の中で

登山は順調だった。

澄みきった青空、心地よく通り過ぎる風。俺は木漏れ日の差し込む森の中や花の咲く野原を進み、予定どおり山頂へと到着した。
山頂からの眺めに歓声を上げる頃にはふもとで聞いた伝説など頭の中からすっかり消えていた。
ところが……降り始めてしばらくすると急に空が雨雲に覆われ、激しい風とともに叩きつけるような雨が俺を襲ってきた。
用意した雨具は風に飛ばされ、慌てて山を降りているうちに道に迷ったらしく、道なき道を進む羽目になってしまった。
助けを呼ぼうにも携帯は圏外。夜になり気温が下がり、寒さに身体を震わせながら歩いていた俺は木々の間に小さな明かりを見つけた。
助かった!! そう思い俺は明かりに向かって藪の中を一直線に進んだ。

それは小さな館だった。
少々古風だが決して古臭くはなく、その窓の一つから小さな明かりが漏れていた。


「失礼します」

俺は扉を開けて中に入った。
中に人には申し訳ないが、とにかくここで雨宿りさせてもらおう。
俺は土間に荷物を置き、上着を脱いでから絞る。
下着までずぶ濡れになってしまい身体の震えが止まらない。
雨音のせいで気付いてないのだろうか? 何度か声をかけたのだが、誰も出てこなかった。
失礼だとは思ったが、俺は靴を脱いで足を拭き、館の奥へと進んでいった。


一番奥の部屋の襖を開けると誰もいない部屋の隅に灯篭があり、ろうそくの光が揺らめいていた。

途中にあった部屋や便所、風呂場などにも人はいなかった。ここにもいないとなると一体……
ふと見ると襖のそばにに衣類らしきものが積まれてあった。
一番上に折りたたまれた物をよく見ると、どうやらそれは襦袢のようだった。
急に風は吹き、再び身体が冷えた俺は思わず襦袢を手に取り、来ていた服と下着を脱いで襦袢に袖を通した。
着てしまってから「しまった!!」と思った。他人の衣類を勝手に着てしまうなんて。しかも襦袢の下に折りたたまれた和服からすると……どうも女性用のようだ。
だが、脱いでしまうには絹製の襦袢はあまりにも心地よく、そしてずぶ濡れの服や下着はあまりにも冷たかった。

しかたない、住人が戻ってきたら事情を話して謝ろう。土下座でも何でもして、とにかく許してもらうしかないだろう。



第三章 蠢く悪夢

俺は襦袢に着替えた部屋で住人が帰ってくるのを待っていたのだが、そのうちに眠ってしまっていたらしい。

気がつくと、あれだけ激しかった雨音はまったく聞こえなくなっていた。
背中から布団のような感触が伝わり、すぐそばから気配が感じられた。
どうやら住人が戻ってきて、俺を布団に寝かせてくれたたらしい。俺は目を開けようとして……

(う、動かない!?)

目蓋どころか手も足も、身体の全てが動かなかった。
これが金縛り、というやつだろうか?


気配の主らしき手が俺の顔に触れ、続いて喉、そしてさらに下へと移動する。
襦袢の衿(えり)の間から入った手が右の胸のあたりを撫でる。ゆっくりと、乳首のまわりを円を描くように……

(馬鹿なっ!?)

胸から伝わってくる感触に俺は驚愕した。

夢だ、これは夢に違いない。
手の動きに応えるかのように右の胸がゆっくりと盛り上がってくるなど……現実にあるはずがない!!


手はしばらく俺の右の胸にできた膨らみを包むように軽く触れる。そして手が動くたびに膨らみは大きくなり続ける。
やがてそこから離れて胸の左側へと移動して同じように円を描き始める。そして左の胸にも右と同じ重みが感じられる。
左の胸が膨らみ終えると、手は俺の身体から離れた。
俺は夢から覚めようとしたのだが、身体は相変わらず動かず、身体から伝わってくる感触は夢にしては鮮明だった。

そばにいる気配の主の手が再び触れてくる。今度はお腹のあたりに手をあててきた。


さっきとは違い、気配の主は今度は手を動かさない。

触れられた部分がじんわりと暖かく感じる。
しばらくすると手は離れたのだが、触れられた部分の温もりはそのまま残り……やがて身体の内側へと移動を始めた。
温もりは臍の下あたりで止まると熱くなり始めた。
どくん、どくん、とそこから鼓動のようなものが伝わってくる。
蠢くような、響くような、そしてしびれるような。
同時にお腹の周囲から内側へ圧力がかかる。そして脚から襦袢のひんやりした感覚が伝わってくる。脛毛に遮られることもなく襦袢が肌に密着している?

経験したことのない感覚の連続に俺は叫び声を上げようとするのだが、金縛りになった身体は小さく震えるだけであった。


襦袢の衽(おくみ)の間から気配の主の手が俺の両足の間に入ってくる。
手が俺の股間にある物体に触れる。
俺の股間がだんだんと熱くなる。
このままでは焼けてしまうのではないか? と思った瞬間、気配の主はその手を激しく動かし、俺の股間のシンボルを身体の中へと押し込んだ。

身体を貫かれたかのような衝撃とともに俺は気を失った。



第四章 衝撃の朝

気がついた時、夜はすでに明けていて日光が部屋を明るく照らしていた。

(目を開けることができた?)
目蓋だけではない。手も足も、思ったとおりに自由に動いた。
俺は上半身を起こした。
(まったく……ひどい夢だった)
昨夜の悪夢を思い出して俺はため息を吐いた。頭が少し前に傾き、目の前を何かが流れた。
(!?)
それは……髪の毛だった。視界を覆う髪を引っ張ると頭が痛い、これは地毛だ。俺の髪は先週に散髪して数センチしかない筈のに。
「これはいったい……っ!?」
つぶやきかけた俺は驚きに息を呑んだ。

俺の口から出た声、それは男の俺では出すことができない筈の……女のような高い声だった!!


昨夜の記憶が鮮明によみがえる。

(馬鹿な、あれは夢だ。夢だったはずだっ!!)
俺は怖くなって身を縮める。……が、それは失敗だった。
組んだ腕の内側で柔らかな物体が形を変える。そして胸からは肉体の一部が外側からの圧力で膨らみの形が変わっていく感触が脳に届く。
気がつくと俺は両脚を折り曲げ、左右の膝をぴったりとくっつけていた。
本来そんなことをすれば邪魔になるはずの物体が脚の間から感じられない。
俺は脚の力を緩めると、震える右手を股間へと伸ばす。
中指が溝に触れる。俺は思わず息を呑み、緊張で手に力が入ってしまった。
指の先が溝の間に埋まってた突起物を強く擦る。

絹を裂くような女の悲鳴が館に響き渡った。



第五章 館

「くそっ、どうなってんだこれは? ……っ!!」
苛立ちの言葉を口にした俺は、その声の高さに思わず息を呑んだ。

気持ちを落ち着かせるために俺は大きく深呼吸を繰り返す。
昨夜脱いだずぶ濡れの服や靴はいくら探しても見つからず、部屋の一つで見つけたのは折りたたまれた肌着の襦袢と着物の紬と帯だった。
他に着られる物は見つからず、仕方なく俺はそれらを身に着ける。
慣れていないので少し締め付け過ぎたかもしれない。胸のあたりがきつく、襦袢の内側で胸の膨らみの先端が擦れて思わず声を上げそうになった。
着替え終わり玄関に行くといつの間にか赤い鼻緒の下駄が置かれていた。
下駄は小さく踵の部分が厚いいわゆる「ぽっくり下駄」といわれるやつだった。
こんなの俺が履けるはずが……と思ったのだが、足を通すとぴったりとフィットした。
どうやら足のサイズも変化していたらしい。
何とか館から庭には出たものの、歩きにくくてしょうがない。
とはいえこんな館からは一刻も早く逃げ出したかった。遠く離れてしまえば俺の身体だって元に戻るかもしれないし……
庭を横切り俺は生垣の間にある出入り口らしき隙間から外へ出ようとした。
……が、隙間の手前で俺の歩みが止まった。
(す、進めない!?)
空気がまとわりつくように俺の手足に絡み、行く手を阻む。無理やり右手を前に伸ばすと見えない壁のような感触にぶつかった。
息苦しくなって俺は数歩後退する。するとさっきまでの息苦しさが嘘のように消え去った。
俺は慌てて今度は少し離れた生垣をかき分けて抜け出そうとした。が、やはり生垣を境にして見えない「壁」のようなものが存在し俺の行く手を遮った。
「そんな……ここから出ることができない?」
俺は呆然となって呟いた。



第六章 女体

結局ここから出る方法を見つけられないまま……とうとう夜になってしまった。
「…………はあぁ―――っ」
館の一室で俺は深い溜息を吐いた。
大きく呼吸したせいで胸が上下し、和服の布地が軽く胸の上を撫でる。
「…………」
両手で胸を軽く押さえると、布地越しに胸の膨らみの先端が硬く尖っているのが感じられた。
「……ああ」
思わず口から出た声に慌てた俺は両手で胸を押さえてしまい、それが更なる刺激を生んでしまった。
「あんっ!!」
全身を衝撃に似た感覚が走り、俺は身を大きくよじった。
結びが緩くなっていたのか帯が解け、紬が足元へと落ちる。襦袢の前がはだけ、差し込んだ月明かりで俺の胸の膨らみが浮かび上がる。
俺はゆっくりと襦袢を脱いで全裸になる。
心臓が激しく鼓動する。
今の身体をじっくり見るのはこれが初めてだと思う。
全身の肌は月明かりの下で白く、そして滑らかで、胸の上には美しい双球が張り出していた。
胸の下から内側へと向かった身体のラインはウエストで急カーブを描きながら張り出した腰へと伸びていった。
その腰と両脚の接点である股間には小さな丘があり、丘の中央には深い縦の溝が刻まれていた。

どうしようもなく……どうしようもなく……女……だった。

そっと胸の膨らみを持ち上げる。小さく震える手が刺激を与え、痒いというか甘いというか表現しづらい感覚が胸から全身に広がっていく。
気がつくと胸からの刺激に応えるかのように身体の一部が疼いていた。腹の内側、臍の下あたり。そこにあるのは……
(まさか……子宮?)
考えると同時に「その場所」が大きく震えた。
「あ……っ!!」
声を上げそうになるのをなんとか抑える。立っていられなくなり、その場で倒れこんだ。
胸の膨らみから離れた左手が股間へと移動し、その手が肌に触れる。それすら俺にとっては未知の刺激であった。
さっきから股間……溝のあたりがムズムズしていた。
左手の中指でそっと溝に触れてみる。
「ぬ……濡れてる?」
ヌメリとした感触に俺は思わず呟いた。そしてその言葉に俺の身体はさらに興奮した。
指が溝の奥をかき分け、「穴」を探り当てた。溝の中の突起物を擦りながら指先に力が入る。
「あっ……だめっ……こんなっ……女……みたいなっ!!」
理性が必死で止めようとするが、ブレーキが壊れたかのように指先は止まることなく先へ進んでいった。
指が股間に深く「挿入」された。



第七章 交合

「……っ……っ」
遠くで人の声が聞こえた……ような気がした。
どうもいつの間にか眠っていたらしい。
「……んっ……んっ」
(誰か……俺の他にも人が?)
そんなことを考えながら聞いていると、だんだんと声がはっきりしてくる。
声の主は女性のようだ。よくわからないが、その女性はなにかを叫んでいるような感じだ。
その時、俺の脚を「なにか」が撫でた。

「あんっ」

女性の声がはっきりと聞こえる。
俺の脚を撫でていたそれがゆっくりと胸の上へと移動する。

「あはんっ!!」

今度はすぐ近くで女性が叫ぶ。
股間の溝が広げられ、中の小さな突起が愛撫される。

「うふんっ、ああんっ!!」

俺の喉が激しく震えて声が上がる。さっきまで聞こえた女性の声の主は……俺自身だった!!
覚醒した俺の脳に「快感」が押し寄せる。全身が燃え上がるように火照り、呼吸は乱れ、身体がのけぞり跳ね上がる。
目を開いてもそこには誰もいなかった。しかし気配は感じる。禍々しさはない。むしろ神々しささえ感じられる。
(もしかして……山神様?)
そんな考えが頭の中をよぎったその時、股間に「なにか」がグイッと押し当てられた。
そして……

「あああぁぁぁ―――っ!!」

身体を引き裂かれるような激痛が走り、俺は絶叫した。



第八章 神隠し

どうやら俺は神隠しに遭ったらしい。すなわち山神様とやらに「見初められた」……らしい。

日中や宵の口は館の中で自由に行動できる。館から出て庭に出ることもできる。
だが、庭から森の中へ入ろうとすると高い壁が立ちはだかっているように足が一歩も動かないのだ。
大声を出して助けを呼んでも返事は返ってこない。
思い余って目印にならないかと館に火をつけようとしたら、その瞬間に火は消えてしまった。

いろいろ考えては試しているのだが、今のところ館を出る方法は見つかっていない。


朝、目が覚めると、そばに襦袢をはじめとした女性用の和服一式が折りたたまれており、俺はそれに袖を通す。

一日の過ごし方はその日によってさまざまだ。部屋の中で静かにたたずんでいることもあれば、庭に出て花や訪れた小鳥たちを眺めていることもある。
土間にはその日に食べる分の穀物や野菜に果物といった食料が置かれている。
かまどには常に火が入り、日が暮れるとなんと風呂桶にお湯が満たされていたりもする。
ある意味、至れり尽くせりだ。

だが、夜が更けると俺の時間は終わりを告げる。そして……「山神様の妻」としての時間が始まる。



夕食と湯浴みを終え、庭で夜空に浮かぶ満月を見ていると、足が動いて館へと向かい始める。

(時間……か)
いつもこの時間になると身体の自由が利かなくなる。
ただ、完全ではないので声は出せるし身体だって少しは動かせる。
だが俺を操る力は遥かに強力で、喚き叫んで力の限りに抵抗しても結局は歩みを止めることはできない。
奥の部屋に入ると襦袢を除く着物をすべて脱ぎ、正座して「その時」を待つ。これも……あらゆる抵抗は無駄に終わった。
虫の声が止み、静寂の中で近づく気配を感じる。
俺の意思とは関係なく身体が立ち上がり帯を解くと襦袢を脱ぐ。

「山神様の妻」としての……女になった俺の肉体が一糸まとわぬ姿で月明かりに照らされた。



第九章 夜の営(いとな)み

見えない手が俺の肩に触れ、続いて両腕で抱きしめられる感触が伝わってくる。

「山神様」の身体は俺には見えないが、胸にある膨らみ……乳房が抱きしめられる感触と同時に形が少し変わるのが見えた。
唇が柔らかい物体に包まれる。
「うっ……うっ」
ざらついた物体が俺の口をこじ開け、舌に絡みついてくる。
口の中を動き回った物体がようやく離れる。

唾液が口の中からこぼれて一筋の糸となって顎から乳房へと滴り落ちた。


見えない手が今度は俺の乳房を持ち上げる。

ゆっくりと、だが力強く揉み続ける。
「……っ、……っ!!」
喉から出かかった言葉を俺は必死に押し止める。しかし……
先ほど俺の口の中で動き回っていた……おそらくは舌が俺の突き出た乳首を舐めまわした!!

「っ!! ああぁぁぁっ!!」

ささやかな抵抗はもろくも崩れ去り、俺は耐え切れずに声を張り上げた。


俺の身体の上を見えない手や舌が這い回る。

「あっ……はあっ……あああ……はあんっ」

高く澄んだ、そして……艶のある声が響く。
そしてその嬌声を上げているのは……他ならぬ俺自身なのだ!!
俺の腹の奥、本来ならあるはずのない子宮が激しく疼き、俺に女の声を上げさせる。
股間からは液体が噴き出し、ピチャピチャと卑猥な音が聞こえてくる。
這い回っていた手や舌が突然離れる。そしてほぼ同時に両脚が開かれ……

「あ……あああああ」

股間から熱い物体が挿入される。

「あっ、あんっ、あんっ、あんっ、ああんっ!!」

股間から挿入された物体が動くたびに俺の中のオトコが悲鳴を上げ、同時に俺の中のオンナが歓喜の声を上げる。
身体が裂かれるような痛み……は最初の数日だけだった。しかし代わりに俺の精神が引き裂かれていく。そして……

「ああああああぁぁぁ―――――っ!!」

挿入された物体から放たれた迸りを子宮で受け止め、俺は今夜も激しく達してしまったのであった。



第十章 開放

こうして俺は数え切れない夜を「山神様の妻」として毎晩抱かれ、女体と化した身体を貫かれ続けた。
抜け出す努力は続けていたが今ではなかば諦め、こんな日々が永遠に続くのかと思っていたのだが……

「…………ん?」
気配を感じて俺は襦袢を脱いだ。が、気配の主はいつものように俺を抱いてはこなかった。
畳の擦れる音がした。どうやらその場に座ったらしい。俺だけ立っている訳にはいかないので全裸のままで腰を下ろす。
しばらくすると、たたずんでいた気配はゆっくりと消えて感じられなくなった。
俺は布団を敷いて眠りについた。こんなことこの館では……女になってからは初めてだった。
次の日の夜も同じように向かい合うだけで終わった。
そして夜が明けて次の日の朝、
「……ない、『壁』がなくなってる?」
館の庭と森とを隔てていた見えない「壁」。毎朝館を出ると「壁」を確認するのがすっかり日課になっていたのだが……その壁がまったく感じられなくなっていた!!
一歩、さらに一歩と外へ向かって歩いていくが、妨げるものは何も感じられない。
とうとう俺は完全に森の中に入ってしまった。
「これは……いったい?」
呟きながら後ろを振り返った俺は驚きに息を呑んだ。
館が、そして庭が……跡形もなく消え去っていたのだ!!

「あんた、そんな格好でこんな山ん中に入ってきなさったんか?」

呆然と立っていた俺の背後から人の声がした。



第十一章 下山

声をかけてきたのは山菜取りに山に入ってきた地元の人だった。

俺は声をかけてきた人に助けられながらふもとの村まで降りた。
驚いたことに俺の立っていたのは登山道から10メートルも離れていない場所だった。
さらに驚いたのは、あれから……俺が山に入ってから3日しか経っていない事だった!!
「同じじゃ……あの時と……兄様の時と」
山に入る前の売店で俺に声をかけてきた老人は、山で見つかった和服の女性の話を聞いて駆けつけ、声を震わせながら言った。

どうやら70年以上前、俺の前に神隠しに遭ったのは老人の「兄」だったらしい。


その人は2年前に亡くなったらしいが、その時の事を書き記して老人に預けていた。

それによると、
・山に入ってしばらくすると嵐が襲い、さ迷っているうちに館にたどり着いたこと。
・館の中で夜を過ごしていると身体が女人(にょにん)へと変わってしまったこと。
・数百の夜を山神様の妻として過ごしたこと。
・ある日突然、館から開放され山を降りたが、村では3日しか経っていなかったこと。
などが書かれていた。
まさに俺が遭遇した状況と同じだった。
書物には最後に、

山神様の愛を受けたその者がいる限り、村は五穀豊穣に恵まれるでしょう。ゆめゆめおろそかになさらぬように。

という言葉と書いた人物の名前が書かれていた。



第十二章 それから……

俺が神隠しに遭い、そして解放されてから2年後――

「お疲れ様です、米と味噌、それに村で採れた野菜を持って来ました」
石段を登ってきた村人が鳥居をくぐりながら声をかけてきた。
「ありがとうございます」
箒で境内を清掃していた俺はそう言って頭を下げる。
しばらく手を休めて村人と談笑していると、見知らぬ人たちが石段を登ってきて俺に声をかけてきた。
「あのう、巫女様でしょうか? 私たち、隣の町の者ですが、巫女様に家族の安全と商売繁盛の祈願をお願いしたいんですが」
「はい、わかりました」
俺が頷くと村人も笑顔で「それじゃこれは奥の方に置いておきますんで」と言って立ち去った。

俺は社(やしろ)に入り、緋袴の帯を締め直すと壁に掛けていた千早(ちはや)を羽織った。


俺は今、山の中腹にある神社に住み込んでいる。

住み込みと言っても一人しかいないので実質ここの主みたいなものだ。
館から開放された俺だったが、俺はこの地に留まり村の共有地であるこの場所に住まわせてもらっている。
俺は「山神様が見初めた人」なのだ。俺がいれば村は山神様の恩恵を受けられる。と、村人たちが考えたらしい。
事実、俺の前に「山神様の妻」だった人物が亡くなった年から連続で不作だったのが今では豊作続き。村人たちは喜び、収穫の一部を俺に持って来てくれている。
俺としても帰る場所がない以上、村人たちの申し出はありがたかった。

え? なんで家に帰らないのかって? いや、帰れないだろ。大騒ぎになるのは目に見えてるからな。
なんといっても俺の身体は……いまだに女のままなのだから。


実際、俺の両親に連絡を取ったときは大騒ぎだった。

最初はまったく信じてもらえなかった。
まっ、そりゃあ「山に入ったら女にされて、毎晩ヤられてました」なんて話、そう簡単には信じられないだろう。
それでもようやく本人だと認めてもらったら、今度は泣かれるやら怒られるやら……もう大変だった。

両親でもそうだったんだから、近所やマスコミに知られたらどんなことになるか。そう考えるととても帰れなかった。

まあ、今ではすっかり落ち着いて、ときどき様子を見にここを訪れたりしている。
特に母さんは訪れるたびに俺のためにいろいろと持ってきてくれるのようになった。
ただ、総レースのブラジャーとかミニスカートなんてのを数多く持ち込んで着けさせられるのは……ちょっとね。

どうも母さんは以前から娘が欲しかった……らしい。


神社に住んでいる俺は、俺はここに住まわさせてもらっている代わりに新たな巫女として、ときどき村人やその他の人々に頼まれて祈祷や祈願みたいなことをしている。

この神社に以前住んでいた先代の巫女というのが、実はあの老人の兄、つまり俺と同様に神隠しに遭い「山神様の妻」となった人だった。
穏やかな微笑が似合う好人物……だったらしい。村人にとても慕われていて、今回の件で俺の話が信用され受け入れられたのはその人の書き残した署名入りの書物があったからだろう。
「妙齢の美女に代替わりした巫女のいる神社」の噂は村の外にまで広まっているらしい。
自分ではまね事程度にしか思っていなかったのだが、祈祷や祈願を受けた人たちの多くは効果があったと感じているらしい。
最近では県外からやってくる人までいたりする。

「○○家の家内安全、商売繁盛を願い奉りまーすーぅ」

この俺が真っ赤な緋袴を始めとした巫女装束に身を包み、鈴をシャンシャン鳴らして祈願してんだぜ。以前にはまったく想像できなかったぜ。



エピローグ そして

「つーきーのひーかーりーを、背ーにー受ーけてー」

沈む太陽とほぼ入れ替わりに空に昇った満月が夜空を照らす。
周囲に民家はなく、参道に照明がない神社は訪れる人もなくひっそりとしている。
俺の腕の中で小さな赤子が眠そうに小さな口で大きく欠伸をする。
俺が……妊娠していたことが判明したのは神社に来てから4ヶ月目くらいのことだった。
しばらく体調がすぐれないな、とは思ってはいたが、女性の身体のことをよく知らなかった俺は迂闊にもそれが妊娠だということに思い至らなかったのだ。
当然のことだが、父親は山神様しか有り得ない。
恐らくあの館から出られたのは俺が身篭ったからではないだろうか?
数ヶ月の後、俺は出産した。……とうとう俺は母親にまでなってしまったのである。

「雨がー降るならー降ーれーばーいいー」

赤子が静かな寝息をたてる。
どういう訳か、この歌が一番寝つきがいいのだ。子守唄とはぜんぜん違うのだが。
聞くところによると、先代の巫女様、つまり前の「山神様の妻」にも子供がいたという。
いつのまにかに姿を見なくなったというが、単に独立して村を離れただけなのか、それとも新たな「神」となって人の世を離れたのか……それは俺には判らない。
ただ、腕の中で眠る赤子の寝顔はとても愛おしく、見るたびに願わずにはいられない。

わんぱくでもいい、逞しく育って欲しい。


すっかり寝ついた赤子に布団を掛け、俺はその部屋を離れた。

山に入る前の俺に警告をした老人は去年亡くなった。
老人は俺が神隠しに遭うことを防げなかったことで激しく謝っていたが、俺は別に老人に対して怒ってはいなかった。
たぶん……どうしようもなかったのだ。
年月が経ち過ぎて、当時のことをはっきり憶えている人が他に誰もいなかったのだ。
周囲は既に当時の子や孫の世代であり、どれだけ声高に叫んでも信じてもらえなかっただろう。
「もう終わったことです」
俺は老人にそう言った。

しかし……



俺は一番奥の部屋に移動すると障子を静かに閉める。

窓から差し込む月明かりの下で俺は着ている物を一枚一枚はずしていく。
襦袢を脱ぐと、身に着けているものは何もなくなった。

「……あっ」

現れた気配とともに、全裸になった俺の身体を見えない手が触れる。

「んっ……んっ」

唇が触れ、舌が絡み合う。

終わったことだ、と俺は老人に言ったが、実は隠していたことが一つあった。
館から出ることができて開放された……筈の俺にしばらくして訪れたもの。それは一抹の寂しさと激しい欲求だった。
身体を女に変えられ、無理やり抱かれていた筈なのに、それがなくなってしまい大きな穴が開いた気分だった。
そしていつの間にか俺は求めるようになったのだ。あの夜の行為を。
俺が村人からいくつか用意された住む場所の候補からこの神社を選んだのは、ここが人里から離れていて、かつ山の中だったからだ。
神社の中で暮らしながら俺は願った。そして……

「はあっ、ああん、あっ、はあんっ!!」

手や足が、全身が舐めまわされる。乳房が揉まれ、乳首を強く吸われる。

出産から3ヵ月後、俺の願いは叶った。そしてそれからは毎晩この時間になると抱かれ、舐められ、乱されている。
恐らく先代の巫女もこんな夜を過ごしていたのだろう。

俺は……山神様の妻なのだ。これからもずっと。ここから離れるなんて……もうできない。

クリトリスを愛撫され、どんどん高まりが上昇していく。
すっかり濡れた股間に熱くて太い逸物が挿入され、子宮を激しく突き上げる。

「ああああああぁぁぁ―――――っ!!」

歓喜の声を上げ、俺は果てた。

(完)
以前書き込んだ作品の追加改定バージョンです。

第五章第七章は後から追加しました。「やっぱり初夜の部分があった方がいいかな?」と思ったもので。
エピローグで歌ってた歌はアニメ版「月光仮面」のエンディングだったりします。ちょっとした思いつきなので特に意味はありません。
それと昔のCMネタもちょっと混ぜてたりしてます(笑)。

実は少し前に2chにアップしてました。
特に邪な意図はなく、「こんなんでも雰囲気がよくなればなあ」と安易に考えてのことでした。
これまた安易ですが、「とりあえず1ヶ月経ったからこっちに載せてもいいかな?」ということで投稿することにしました。

過去に書き込んだ作品のうち、長編でエロ展開なのは「消失」とこの作品のみです。
他は短編のみなのですが、そのうちまとめてアップすることもあるかも?
ライターマン
0.9700簡易評価
24.100きよひこ
GJです
34.100きよひこ
またライターマンさんきたー!!
これは名の通り神作。
描写がエロくて最高です。またお願いします。
39.100きよひこ
以前の支援所で掲載されていたときから好きな作品でした。
また読めてうれしいです。
64.無評価きよひこ
面白かったです
ご自分のHPには掲載されないのですか?
72.100きよひこ
良かったです
76.100きよひこ
これはすばらしい作品
なんか読後感が凄くいい