四章 お狐様の大歓迎会
1
聖心学園での長い一日も終わりを向かえ、ようやく授業から開放された生徒達が皆一様に晴れやかな笑顔を浮かべながら街に遊びに行く約束や部活動の準備などをし始める。
そんな放課後独特の浮ついた雰囲気の中、校舎の外に次々と出て行く彼女達を尻目に二人の生徒が、人の流れに逆流するかのように学園の長い廊下を雑談を交えながら歩いていた。
「ねえ、鈴音さん? ここは使われてないみたいなんだけど入っちゃってもいいのかな?」
「ええ、心配要らないわ、ここには誰もこないもの」
放課後、転入生の御子柴ほのかに校舎を案内していたクラス委員の雨宮鈴音は文化部棟にある空き教室の一つに入ると、扉の前で戸惑っているほのかの手を取り、半ば強引にその部屋の中に引き入れた。
そのまま引っ張られるようにして人気の無い教室の中に入ってしまったほのかはすこし不安げに鈴音の顔を伺う、ついさっきまで言葉少なながらも丁寧に校舎内を案内してくれていた彼女は手を握ったままじっとほのかの顔を見つめていて、まるで観察するように視線を這わせる鈴音の表情は、クールで涼やかな彼女に似つかわしくない奇妙な笑顔を浮かべていた。
「ほのかさん、実はあなたに言わなければならないことがあるの……」
「ん? 何かな?」
「……、ほのかさん、いえ……ほのか、私のこと、どう思う?」
「え……? それってどういうこと?」
誰もいない教室で鈴音はほのかの顔をじっと見つめる、突然の言葉にほのかは何のことやら分からずにきょとんと首を傾げる。
「あのね、ほのか……、私、もう我慢ができないの……」
「え、え? 我慢?」
「そう、今日、クラスに転入してきたあなたを見てから、ずっと我慢をしていたの」
頬を紅潮させてどこか熱っぽい視線を投げかけてくる鈴音にほのかはなにかの危険を察知し、近寄ってくる鈴音から逃れるように後ずさる。
「ねえ、ほのか。私、あなたの持っているその瑞々しくて美味しそうな生気をどうしても味わってみたいの……」
「す、鈴音さん、な、なにを言ってるの?」
じりじりと後ずさり教室の扉に背中が当たる、ほのかはなんとか逃れようと扉を開けようとするが、鍵を掛けていないはずの扉はどんなに力を入れてもまったく動かず、そんなほのかに妖しげな笑みを浮かべながら鈴音がゆっくりと近づいてくる。
「逃げても無駄よ、……もうここからは誰も出られないわ」
「ね、ねえ、冗談だよね鈴音さん、お願いだからやめて……、ね?」
「大丈夫、ほのか、すぐに気持ちよくしてあげるから……」
近づいてくる鈴音から距離を離そうとほのかは走り出そうとするが、いつのまにか自分の足が何かに絡め取られてしまったかのようにぴくりとも動かない。
突然動かなくなってしまった自らの足をどうにか動かそうと必死に身をよじろうとするが今度は上半身さえも動かなくなってしまっている事に気がつく、そんなほのかの姿を満足げに見つめていた鈴音は右手を彼女のほうに向けその細い指を誘うようにくいくいと動かす。
すると鉛のようにビクともしなかったほのかの足がその合図に反応するかのように一歩一歩ゆっくりと進み始める。
「い、嫌っ!?」
逃げ出そうとするほのかの命令を無視して鈴音の方に向けて歩き始める自らの両足、そんな理解しがたい現象にほのかの表情は恐怖で凍りつく。
「ふふ、ほのか……、たっぷりと可愛がってあげる」
自由を奪われたほのかの身体はそのまま自然な動作で鈴音の元まで歩いていき、両手を広げて抱きとめるような格好をしていた鈴音に身体を押し付けてしまう。
「あ、ああっ……、ど、どうして……、身体が勝手に動くの?」
広げた両手にすっぽりと包み込まれるようにして身体を預けてしまうほのか、まるで自分のものでは無くなったかのように動いてしまう自らの肉体に恐怖のあまり悲鳴を上げてしまいそうになる。
なんとか鈴音から離れようと必死で身体を動かそうとするが、そんなほのかの思惑などまるで無視するかのようにほのかの肉体はその身体を預けたまま両手を鈴音の背中に回してしまい、きつく抱きしめるような格好になってしまう。
「嘘、わ、私、そんなつもりじゃ……」
「良いの、後は全部私に任せて……」
「お願い、お願いだからもうこんな事やめっむ、むぐっ、んんんっー!?」
自分から鈴音に抱きついてしまったほのかはそれでもなんとか唯一自由になる自分の口を動かし鈴音に説得を試みようとするが、言葉の途中で強引に唇を塞がれてしまう。
口腔内を蹂躙するかのような激しい愛撫、淫猥な水音を響かせながら、貪るように口内に入り込もうと蠢く鈴音の舌をほのかは必死に止めようとするが、ほのかの肉体はまたもや自らの意思を離れ唯一動かせていた自分の口がまるでその愛撫に悦び歓迎するかのように大きく開いて、進入してきた鈴音の舌に自らの舌を激しく絡み付かせてしまう。
「んちゅ……じゅぷ、……じゅるる……ああ……ちゅぱ……ろ、ろうひてぇ……」
呼吸すらままならないほどの激しいキスを受け続け、ほのかの頭は霞が掛かったかのように鈍っていく。
「んん……、ふふ……折角のご馳走だから、んちゅ、……しっかりと下ごしらえをしないとね……」
困惑したままの表情のほのかに品定めするような視線を注ぎながら、鈴音は彼女の耳の後ろに指を潜り込ませその美しい髪をいたわる様に何度も指で梳く、ただ髪を撫でられているだけなのにぞくぞくとした快感がほのかの身体から沸き起こり、その理不尽な感覚にほのかの思考はますます混乱していく。
「ああっ、わ、わたし、こんな……、嫌なのに……、ううぅ……」
もう片方の手がスカートに潜り込み、その感触にビクリと身体を震わせる。ほのかの両手はいまだ主人の命令を受け付けず自らの大事な場所に進入してきた鈴音の手を拒む事もできない、それどころかまたもやほのかの意思から外れた動きを見せ、自らの下半身を見せ付けるようにスカートを捲り上げ、もう片方の手でゆるゆるとショーツを下ろしていってしまう。
そのままゆっくりと右膝を持ち上げ下げたショーツから足を引き抜くと、辛うじて左足に釣り下がっていたそれを引き下ろしてしまう。スカートを捲り上げたまま無防備な下半身を晒してしまい、羞恥で顔が真っ赤に染まる。
その一連の仕草をうっとりとした表情で見つめていた鈴音は腰を下ろし膝立ちの姿勢になると、捲り上げたスカートから見える、露になったほのかの下半身に顔を近づけていく。
「気持ちいいでしょうほのか、もっと良くして上げるからね」
悪戯っぽい表情で彼女のそこに息を吹きかけると、ほのかはしびれる様な感覚に声にならない悲鳴を上げる。
「ひあぁっ!?」
「ふふ、ちゃんと濡れてきてるよ、ほのかのここ」
「そ、そんな、……、んんっ……、ああっ、やめてぇ……」
そんな彼女の弱弱しい制止の声も鈴音にとっては嗜虐心を煽るだけのスパイスに過ぎず、鈴音は目の前に広がる彼女の淫裂に指を這わせ上気した顔で微笑む。
「あああっ!? な、なに……これ……、ど、どうして……」
鈴音の指が軽く触れただけで信じられないような甘い快感が駆け巡る、スカートを捲りあげたまま身動きの出来ないほのかは唯一自由になる頭で弄ってくる手を止める手段を考える、しかし鈴音の指がほのかの身体に触れる度に電撃のような快感が脳に響き渡り、その度にほのかの頭は思考を放棄し肉体が送りつけてくる快楽信号に塗りつぶされてしまう。
「ああああっ……あああっ……、ふぁっ、あああっ」
「ああ……、思っていた通り、鳴き声も可愛いわ……」
膝立ちでほのかの膣口を弄っていた鈴音は一旦手を止めると、今度は両手でほのかの尻肉をつかみ眼前に広がる秘裂に舌を伸ばしていく。
「えっ!? あっ、だ、駄目っ!? あっ、あああああぁーーーっ!?」
淫蕩な笑みを見せた鈴音はゆっくりと顔を押し付けると吸い付くように股間に舌を這わせる、ぬめった舌が淫裂をなぞるように上下に動き、ほのかは体験した事の無いその快感に耐えられずがくがくと足を痙攣させ絶叫する。
「どうして……ああっ……どうして、こんなに気持ちが……良いの……?」
強制的に沸き起こるかのようなその凄まじい快感に視界が白く染まり、飛んでしまいそうになる思考を必死に引き止める。
「ふふ、ほのかの身体が素直になるおまじないを掛けてあげたの、どう? すごくいいでしょう?」
「そ、そ、そんな……、私に……な、何をした……の……、あ、んうあああああっ!?」
ほのかの言葉が終わるのを待たずに鈴音は再度股間に舌を這わせる、吸い付くたびにまるで弦楽器のように鳴り響くほのかの声にますます鈴音は気をよくし舌を動かしながら自らもショーツのなかに手を差し入れ激しい自慰を始める。
「んっ……ふふ、わたしも……、ほのかのを見ていたら興奮してきちゃった……、あっ……ほら、ほのかももっと気持ちよくなろう?」
「んぁぁ、おっ、おねがい……、もう、もうやめてえぇ……、あぁぁ、えっ!? ま、また身体が……いやぁ」
もはや、この身体の主人は鈴音であると証明するかのように、ほのかの肉体はその言葉に従順に反応しスカートを捲りあげていた手が自らの胸に這い寄っていく、腰を押し付けながら両手で形の良い胸をぐにぐにと揉み回す、一本一本の指がまるで別の生き物のように蠢き、自分の身体でありながらほのか本人ではありえないその巧みな指捌きに叩きつけられるような快感を引き出されほのかの頭を快楽で焦がしていく。
「も、もう、駄目っ! わ、わたし、あああっ……、こんなの……、耐えられないっ!」
制服の中に潜り込んだほのかの指はその双丘の頂点にある小さな膨らみを見つけると獲物を見つけたとばかり重点的に攻め始める、転がし、摘み、緩急をつけあらゆる角度からその桜色の乳首を弄り回す。下半身では鈴音もそれに合わせるように舌を膣上部にあるひかえめな突起へと這わせていく、壊れ物を扱うかのようにやさしく舌でふれるとその度にほのかの悲鳴と共に太ももががくがくと震える。
「かはっ、あ……、だ、だめーーーっ!」
乳首とクリトリスを同時に刺激され、ほのかは背中を反り返らせ口を大きく開いたまま激しく痙攣する、ほのかの肉体は自分が絶頂に近づいていると理解しているかのごとく両胸に這わせた指をますます激しく動かす、じゅるじゅると下品な音を立てて彼女の秘所にしゃぶりついていた鈴音もそんなサインを受け取ったのか一気に攻勢を強める。
そして快感に身を震わせ、息も絶え絶えなほのかに鈴音は嗜虐的な笑みを浮かべ言い放つ。
「ほら、逝っちゃえ」
「ふあっ……あっ……あっあっあっ、んあああああああああああーーーっ!?」
唇で彼女の一番敏感な部分を強く挟み込む、その瞬間目の前が白くスパークするほどの快感がほのかの身体を襲い、鈴音の顔に勢い良く潮が降りかかる。
激しい絶頂に見舞われ、身体を支えきれなくなったほのかはその場に倒れこんでしまう、鈴音は倒れ掛かってきたほのかをやさしく抱きとめると虚ろな瞳で放心している彼女を見つめる。
脱力したほのかの身体を静かに床に寝かせ、ふとももを撫でながら舐めるようにその身体を見つめる。
「ああ………、うぅ………う」
「ふふ……、可愛かったよ、ほのか、……さて、美味しそうに仕上がった事だし」
鈴音はいまだ絶頂の余韻から抜け出せないままのほのかの頬をいとおしそうに撫でると顎を指で持ち上げその唇にゆっくりと自分の唇を近づけていく。
「それじゃあ……、いただきまあす」
妖艶な表情で放心状態のほのかに唇を合わせていく、体中の力が抜け落ちたかのように寝そべっているほのかは拒む事もできず、ただその口づけを受け入れる。
しかしされるがままだったほのかが鈴音の口づけを受けた瞬間、まるでバネ仕掛けの人形の様に両手足が持ち上がり少女の物とは思えない力で鈴音のことを抱きしめる。
見開かれた目は泥のように濁り、機械のような無感情な視線を鈴音に向けたままがっちりと鈴音の身体にしがみ付く。
「――っ!?」
鈴音は咄嗟にその拘束から逃れようと身体を捻るが、ほのかは無表情で抱きついたままびくともしない。
「呪縛」
抑揚の無いほのかの声が教室に響く。
その瞬間、ほのかの両手から光の帯のようなものが放出され、一瞬で鈴音の身体に巻きつく、そしてその帯に鈴音は反応する間も無く絡め取られてしまう。
瞬く間に光の帯で雁字搦めにされてしまった鈴音はもはやもがく事もできず完全に拘束されてしまう。
「ぐっ……」
抱き付かれたまま身動きの取れない鈴音は締め付けてくるその帯に苦痛の声をあげるがほのかは虚ろな瞳を漂わせたままぴくりとも動かない。
ぎりぎりと身体を締め付けられ、脱出しようともがく鈴音の動きは次第に緩慢なものになり、ついにがっくりと頭を落とし気絶してしまう。
そして、静まり返る教室。
ほのかはゆっくりと立ち上がる、無表情のまま直立不動で気絶している鈴音を見下ろす。
そして自らの役目を終えたとばかりに静かに目を閉じると。
その場から跡形も無く消失した。
2
退魔士、早乙女千鶴が静かに空き教室に入ると、そこには光の帯で拘束された雨宮鈴音がぐったりと倒れ、その近くには人の形に切り取られた小さな紙片が一枚床に落ちていた。
「…………」
千鶴は静かにその紙片を拾い上げると、労わる様にその表面を撫で、大切にスカートのポケットに仕舞う。
「……さて」
体中に帯を巻きつかせて床に伏せている鈴音を見下ろし、本当に気絶しているか確かめる。縛られている鈴音は目を閉じたままぐったりとしていてまったく動く様子はない、ただ息はあるらしくその口元からは小さな吐息の音が聞こえてくる。
千鶴はそれを確認すると今度は別のポケットから数枚の札を取り出す、幾何学的な模様が欠かれているその札を手に持ち、倒れている鈴音のまえに座り込むと彼女の額にその札を近づけていく。
「……?」
――違和感。
札を貼り付けようと伸ばした手が止まる。
「……居ない!?」
冷静に見下ろしていた千鶴の目が驚愕に見開かれる。
「まさか……ありえないっ!?」
敵は確かに拘束したはず、人間から生気を吸収する、いわばもっとも奴らが無防備になる瞬間、その時を狙って放たれるこの束縛式から逃れられるはずが無い、では式神が誤作動したのであろうか? いやそれもあり得ない、拘束されて気絶している鈴音の身体からは生気を吸収するときに発せられる妖気の残滓が確かに感じられる。
では一体どうやって、いや、今はそんなことを考えている暇は無い、理由はどうあれ自分の作戦は失敗したのだ。
作戦の失敗を認識してから僅かコンマ数秒、千鶴は跳ね上がるように身体を起き上がらせると周囲を警戒し迎撃態勢に移る。
「さっすが、退魔士さん、素早い状況判断だね」
「誰だっ!?」
教室の入り口から聞こえた間延びした声に千鶴は電撃のように振り向く。
そこにはこの学園の生徒会長、新宮寺水蓮が満面の笑みを浮かべて妙なポーズを決めながら扉の前に立ちはだかっていた。薄暗い教室に差し込む光をバックライトのように背中に受け、両手を腰に当てたまま長いポニーテールを靡かせる彼女。
「ふはははははー!」
「我こそはこの学園の支配者にして守護者!」
「そして生徒会長兼黒幕!」
「マジカルラスボス☆新宮寺水蓮さん今ここに 大・登・場!」
ズビシッと一声ごとに奇妙な決めポーズを取る水蓮、最後の大登場という謎の掛け声と共にパーンと派手な炸裂音が鳴り、千鶴は何事かと身構えると、教室に紙ふぶきがひらひらと舞い散りこれ以上無い笑顔を浮かべた彼女の上から降り注ぐ。
それと同時に天井に取り付けられていた垂れ幕がしゅるしゅると何本も落ちてきて、『かわいい』だの『兄ちゃん無理すんな』だの、あきらかなやっつけ作業と思われる手書きの文字が教室に踊る。
「……は?」
どの様な状況にも即時対応できるよう訓練をしてきた千鶴であったが、予想を大きく上回るその出来事に理解が追いつかず、口を大きく開いたまま棒立ちになってしまった。
そしてすぐに侵入してきた生徒会長の言葉の意味を理解し、驚いてしまった未熟な自分に怒りを感じながら慌てて臨戦態勢に移る。
「あれ? おかしいなあ、あんまり驚かないね?」
「……、なんの……つもりです」
千鶴は警戒態勢を維持したまま、右手で札を構え咄嗟の状況に対応するため腰を少しだけ下ろし重心を下方に移動させる。
「むー、つまんないのー、もうちょっと乗ってくれてもいいんじゃない?」
明らかに危機感の無い口調で水蓮は不満を口にする。
「水蓮生徒会長、いや、会長に取り憑く化物め……、どうやって罠から逃れた……?」
「うーん、鈴音ちゃんにワカツタマを使っただけなんだけど分からなかったかな?」
「……ワカツタマ?」
何の事か分からないような顔をする千鶴に水蓮はまるで期待はずれだとでも言いたいかの様に肩を落とし大きく息を一つ吐く。
「……はぁ、私思うんだけどね、あなた達最近ちょっとたるんでるんじゃないかな?」
「………………」
じっと水蓮のことを睨みつけたまま動かない千鶴。
「ワカツタマはね自分の移し身を作り出して相手に乗り移る術なの、つまりあなたの式神は私の分身に反応してしまったって訳、無論本体はこっちだから分身が拘束されたとしても術を解除すると元通りになるってこと」
「そんな……」
千鶴は敵の言葉に驚愕する、なにかおかしい、ワカツタマなどと言う妖術は自分の知る限り聞いたことすらない、退魔士として古の文献に記された妖怪の使う数々の術、その種類や対策は全て記憶したはずだ、まさか『人間と同じように』新しい術を編み出したとでも? その様な事がありえるはずがない、妖怪とは欲望のままに生きることしか知らない低俗で下賎な化物なのだ。
「本家だか宗家だか知らないけど、権力闘争ばっかりで私達の研究も大分疎かになってるみたいだし、そんなんだからお家騒動なんて起こっちゃうんじゃないかな」
「……黙れ」
その言葉に現在も続いている泥沼のような醜い家督争いを思い出してしまい、まるで本家にいた頃の総一郎本人の事を責められているように感じ、思わず冷静さを失ってしまう。
抑えられない怒りがその端正な顔に表れ、敵を射殺すかのような冷たい視線を水蓮に向ける。
「うんうん、そっちが本来の顔かな? 誰だかは知らないけどあなたみたいな人もまだいるんだね」
少しだけ感心したような顔で目の前の退魔士を見つめる水蓮、千鶴はその余裕のある表情に警戒をしているのか臨戦態勢を取ったまま動こうとしない。
「うーん、このままじゃ隙を見せるとすぐにでも襲い掛かってきそうでちょっと怖いな、ということで!」
そう水蓮は言うと、ぽんと手を叩きなにやら自分の後ろに向かって呼びかける。
「かもーん、人質さーん!」
「……っ!?」
その声を聞いたのかなにやら訳の分からない表情をしながら一人の少女がおずおずと教室に入ってくる。
「あ……、あの、会長さん? これって一体なんなんですか?」
「に、新島さんっ!?」
入ってきたのは髪を小さなゴムで二つに結んだ幼さの残る可愛らしい少女、千鶴のクラスメイトでもあり友人でもある、新島結花であった。
「ふっふっふ、結花ちゃんゲット!」
「えっ? え?」
千鶴が反応する間もなく、水蓮は結花の後ろに回りこみその身体を羽交い絞めにする。突然後ろから抱きとめられた結花は戸惑った様子でおろおろと二人の顔を交互に見つめている。
「……新島さん、……ど、どうしてここに」
「え、えっと、鈴音ちゃんとほのかちゃんが学校を見て回ってるって言うから、こっそり後をつけて驚かそうと思ったんだけど」
「……くっ、なんてこと……」
「途中で会長さんに会って、ちょっと面白い事をするから手伝ってくれないかって言われたから……、一緒に付いて行くことになって」
「そうそう、それで廊下で出待ちして貰ってたんだよね、あ、結花ちゃん、ちなみにさっきの仕掛けの起動タイミングばっちりだったよ!」
「あ……、はい、ありがとうごさいます?」
どうやら先程の紙吹雪の仕掛けは結花が起動させたらしい。訳も分からず羽交い絞めにされて、いまだ状況が飲み込めていない様子の結花は教室の中を見回すと、ぐったりとして倒れている鈴音を目にしその姿に驚き、困惑した様子で千鶴に話しかけてきた。
「あ、あの、千鶴ちゃん?」
「…………なに?」
「えっと、私、会長さんと一緒に、千鶴ちゃんが部屋に入る所まで見てたんだけど、部屋の中にほのかちゃんは居ないし、鈴音ちゃんは倒れてるし、こ、これはどういうことなの……?」
「……、ごめんなさい新島さん、……私には話すことは出来ないの、でも安心して、鈴音さんはちょっと眠っているだけで命に別状があるわけではないわ」
「そ、そっか、良くわからないけど鈴音ちゃんは無事なんだね」
「ええ、本当にごめんなさい、あなたを巻き込んでしまった上に何も説明することができなくて……」
話せない理由があるのか千鶴は悔しげに下を向き声を震わせる、そんな千鶴にこれ以上理由を聞く事は出来ず、今度は自分を羽交い絞めをしている生徒会長の方を見る。
「えっと、あの、それに会長さん? 人質って?」
「うん、その名の通り人質ね。聞いて驚く無かれ、実は私は悪の組織の幹部だったりするのだ、具体的に言うと第七支部の組合長! 偉いか偉くないかで言えばそれなり? って言葉を濁されるぐらいの偉さ、だからこうやって悪役は悪役らしく人質を取っているって訳なのさ」
「……はぁ」
理解したのかしていないのか分からない顔をしながら結花はなんとなく相槌を打ってしまう。
「えっと、良くわからないんだけど、つまり会長さんは私を人質に取って、千鶴ちゃんを脅してるってことでいいの?」
「うんうん、その通り」
「じゃあ、私、絶体絶命?」
「いぐざくとりぃー」
どこか緊張感の抜けた二人の会話だったが、千鶴は沈痛な面持ちで二人を見つめ自らの招いた事態に臍を噛む。
「でも、会長さんあんまり悪役って感じしないね? それになんか全校集会のときと違って何だか気さくな感じ」
「そ、そんなことはないよ! いいよ、わかったよ! それっぽくしてやろうじゃない、うりゃー」
そう言うと水蓮は抱きとめたままの結花のわき腹をこしょこしょとくすぐり演技がかった声を出しながら絡みつく。
「うへへへ、こいつの命がどうなってもいいのかー」
「きゃー、助けてー」
何故か嬉しそうにはしゃぐ結花。ほのぼのとしたその茶番劇のようなやり取りに一瞬脱力しそうになるが、千鶴は油断をしないように心の中で活を入れる。
「会長、一体なにが望みなんですか……?」
相手のペースに乗せられてはいけない、そう考えた千鶴は自分から会話を切り出す。
「あー、そうだね、要求の事を忘れてたよ、うーん、どうしよっか」
水蓮は言われて初めて気がついたかのような声をあげて、考え込むように首を傾げる。
余裕のある態度を崩さず、のんびりと考え事をし始める水蓮を注意深く監視しながら、どうにかこの状況を打破できないかと千鶴は思考を巡らせる。
人質の新島結花はおそらく自分の置かれた状況が深刻なものだとは分かっていないのであろう、舞台の登場人物の一人にでもなったかのようにこの成り行きを楽しんでさえいるように思える、相手は自分さえ知らない不可思議な妖術を使う、一見手には何も持っていないようだが油断は出来ない、どうする、どうすれば新島結花を助け出す事ができる。
視線を敵に向けたまま動く事ができない千鶴に、捕らわれたままの結花が視線を投げかけてくる。
ん、ウインク?
千鶴はその動作に何かの意味があると感じ、水蓮に警戒されないよう表情を変えず冷静に結花の意図を探る。
結花の視線が自分の右手に注がれる、視線の先を追うとその右手に何か握りこんでいたらしく千鶴にも分かるようにゆっくりとその指を開き始める、そして少しだけ開かれたその手のひらには小さなパーティー用クラッカーが隠されていた。
水蓮が妙なポーズを取りながら教室に入ってきた事を思い出す、結花が見せたそれはそのときに使い損ねてあまった物なのかもしれない、そしておそらく制服のポケットに入っていたそれを、水蓮が彼女をくすぐって遊んでいる間に取り出した。
結花は千鶴の目の動きをみてこれからやろうとしている事が無事に伝わったと分かったのか、悪戯っぽい笑顔を千鶴に見せる。
彼女は彼女なりに役柄に準じて脱出手段を考えてくれていたのだろう、彼女がこの状況に怖れずに楽しんでくれていることで却って敵に気が付かれずにクラッカーを手に隠し持つ事に成功したといえる。
結花は手を握り締めそのクラッカーを手で隠すと、もう一度千鶴にウインクをする。
千鶴はその意図を理解する、結花の作戦を成功させるためどうにか彼女の拘束をもう一度緩めなければ。
「よし、決まったよ! やっぱりこういう場合の初手といったら武装解除だよね」
うーん、と唸りながら考え込んでいた水蓮はどうやら良い考えが浮かんだらしく、顔を輝かせて千鶴に視線を向けると嬉しそうにそう言い放った。
「…………」
「うへへー、それじゃあ姉ちゃん、持ってる武器を全部捨ててもらおうかー」
水蓮は三流映画の悪役のような台詞を吐くと、ニヤリと笑って千鶴の顔をみる。
「…………分かった」
少しの躊躇の後千鶴は簡潔にそう呟き、手に持っていた五枚の札を床に放り投げる。
「ふふふ、千鶴ちゃん、それだけじゃ足りないなー、私は全部っていったのよー」
「……っ」
ニヤニヤとした笑みを向ける水蓮を睨みつけ、隠していた武器を全て取り外す、金属の棒のようなものや奇妙な文様が描かれた札、ほかにも一見何に使うか分からないようなそれらの道具を制服から次々と取り出すと一つずつ床に投げ捨てていく。
「……これで全部よ」
「うーん、あやしいなあ、本当にそれで全部? まだなにか隠してるんじゃない?」
「……何が言いたい?」
「ふっふっふ、私が言いたいのはね、服の中にも隠してるんじゃないかなあって事、だからね、分かるでしょ?」
睨みつけてくる千鶴に、水蓮はニッコリと笑みを返すと言外に服を脱げと要求してくる、その意味を理解した千鶴はこれまで保ってきた冷徹な表情を崩してしまい、あきらかに動揺する。
「なっ!?」
「うふふー、どうしたの? 私の言う事が聞けないのかなー?」
水蓮は意地の悪そうな笑みを浮かべ舐めるように千鶴の身体を見る、そして千鶴はその要求に戸惑い悩んでいるようであった。
千鶴は自分の身体をちらりと見る、質素な制服に包まれた柔らかな二つの膨らみ、そして程よく肉の付いた太ももにくびれた腰つき、千鶴、いや総一郎は思い悩む、言わばこの身体は借り物である、しかも自分にとって大切な弟子でもありまたもう一人の妹のような存在なのだ。
敵の要求とはいえその素肌を晒してしまって良いのだろうか、いや良い筈がない、しかしこの状況下で敵の機嫌を損ねず僅かでも隙を作るためには今は要求に従う事が最も良い選択肢のように思える。今は何よりも人質の安全を確保する事が重要だ、きっと本当の千鶴でも自分と同じ選択をしてくれるはずだ。
「…………、分かった」
暫くの逡巡の後、千鶴は決意を固めそう呟く。
(ごめん、千鶴ちゃん)
心の中で一言だけ彼女に謝ると、総一郎は千鶴の学生服に手を掛ける。
千鶴の記憶をなぞりながら深い紺色のジャケットのボタンをはずし、そのまま上着を床に落とすと清楚な白いブラウスだけの姿になる。
そして眼前の好色そうな貌で笑っている水蓮を睨みつけながら、ブラウスの襟に付けられた小さな赤色のリボンを指で引く、しゅるりとかすかな音を立ててリボンが解け足元に落ちる、そしてついに千鶴の白魚のような美しい指先がブラウスのボタンに掛かると、一つ一つ静かに胸元を開いていく。
徐々に露になっていく陶器のような白い素肌、開かれた胸元には薄いピンク色のブラジャーが顔を見せ、真っ白な肌を彩っている。
記憶の通りに動く肉体とその動きを戸惑いながら眺める事しかできない精神、なるべく見ないようにと眼前の敵を睨みつける千鶴であったが、指先から伝わってくるその柔らかな感覚と開かれていく胸元から漂う女性らしいミルクのような香りに総一郎の精神はかき乱されていた。
ブラウスのボタンを全てはずし終え、そのまま脱ぎ捨てると千鶴は下着一枚を残しただけのあられもない姿を眼前で好色そうな視線を向ける水蓮に晒してしまう。
可愛らしいブラジャーに包まれた形の良いその二つの膨らみが露になる、羞恥のためかかすかに桜色に染まったその二つの胸は千鶴の意思に反してまるで誇るかのようにその存在感を見せ付けていて、千鶴はその胸元に注がれる這うような水蓮の視線を否応にも感じてしまう。
「ひゅーひゅー、千鶴ちゃんかわいいよー」
水蓮が冷やかすような声援を送る、激昂しそうになる精神をなんとか押しとどめ、これ以上相手を喜ばせてはいけないと無表情を装おうとする。
千鶴は両手でスカートの止め具を外し、そのままファスナーを下ろす。
すると支えを失ったスカートが静かに両足を滑り落ちていく、そしてパサリと音を立てて足元にスカートが落ち、ブラジャーとおそろいの薄いピンクのショーツが露になる。
内心の動揺を悟られないように前方を見据えながら、なんとか気を保とうと彼女はその両足でしっかりと床を踏みしめる。
「……これで、いいでしょう?」
制服を脱ぎ、下着姿になった千鶴は、羞恥で赤く染まっている自らの頬に気づかず、屹然とした態度を装い水蓮に問いかける。
「甘い、甘いよ千鶴ちゃん! 宝くじ買った次の日にフェラーリの試乗をしに行く位甘い! そこまで脱いじゃったら後少しじゃない! どうせだから全部行っとこうよー」
お気楽な口調で彼女を野次る水蓮に千鶴は悔しそうな視線を向ける、そして羞恥のためかしっかりと踏みしめていた筈の足はいつの間にか内股になり美しいラインの太ももがふるふると震えていることが分かる。
「あ、あの会長さん? いくらなんでもやりすぎなんじゃ?」
予想外の展開に戸惑った結花が恐る恐る水蓮に問いかけてくる。
「いいのよ結花ちゃん、これは訓練みたいな物なの、だからちゃんとリアリティを追求しないとね」
「え? そ、そうなの? で、でも、あの……」
「ね、そうだよね、千鶴ちゃん?」
「…………ええ」
ニッコリと微笑みかける水蓮に、千鶴は悔しげな表情で頷く。
「そういうことだから安心してね? じゃあ続き行ってみようか!」
「…………分かった」
ぐっと唇を噛み締め、千鶴は決意を固める。
両手を後ろに回し、僅かな躊躇の後、ゆっくりとブラジャーのホックを外し肩から抜き取る、そして彼女を胸を守る可愛らしいブラジャーがパサリと床に落ちると外気に晒されその美しい二つの乳房が露になる、柔らかそうに揺れるその二つの膨らみの頂点には薄い桃色の乳輪と可愛らしい小さな乳首、下着と言う支えを失ってなお重力に逆らいその形を崩さない美しい双乳に水蓮だけでなく人質として捕らえられている結花もその姿に目を奪われ、呆然と見入ってしまっていた。
真面目で気高く、弟子としてまた時には妹のような存在として自分に懐いていてくれた彼女、そんな彼女の女らしく成長した蠱惑的な肉体を自分が思うように動かしている、手を伸ばせばすぐにでも触れる事ができ、その柔らかな感触を思う存分味わう事ができるという事実に、平常心を保とうとする総一郎の精神は千々に乱れ、背徳的な感情が沸き上がりそうになる。
「あっといっちまい、あっといっちまい!」
まるでショーを見物する観客のように声援を送る水蓮、かなりのハイテンションで目を輝かせて叫ぶその観客を無視し、千鶴は大きく一つ息を吐く。
そして息を吐き終え、両目を瞑るとついに千鶴の手は下半身を守る最後の砦に手を掛けようとしていた。
と、その時。
「えーいっ!」
叫ぶ声が聞こえ、その声に千鶴は咄嗟に目を見開き前を見据えると、結花が掛け声と共に拘束されていた両腕を引き剥がし、崩れた体勢のまま身体を半回転させ水蓮の方を向いていた。
「あっ!? こら!!」
パン! と言う乾いた破裂音、振りほどかれた腕をもう一度取ろうと手を伸ばしてきた水蓮の眼前にカラフルな紙片が舞う。
「うきゃー」
突然の音と目の前に散る紙片に思わず身をすくめてしまう水蓮、その隙を逃さず結花は一直線に千鶴の下に走ってくる。
「千鶴ちゃん!」
「新島さん! 私の後ろにっ!」
走ってくる結花を抱きかかえるように受け止め、自分の背中に移動させる。
足元には脱いだ制服と共に退魔士としての自らの武器、千鶴は咄嗟に落ちている数枚の呪符を引っ手繰るように拾い上げると結花を背中にかばう様な体勢のまま右手で掴んだその札に霊力を充填させていく。
複雑な文様が描かれた札がその力を受け、白く輝きだす。
受けた屈辱をそのまま怒りに変え、札に込められた退魔の術は敵に炸裂する、
筈だった。
「……え、……うそ」
札を持ったままへなへなと崩れ落ちていく千鶴。
両足に力が入らず教室の床にぺたりと座り込んでしまう、千鶴は何が起こったかまったく判らずただ呆気に取られた表情で前を見つめている。
「ほんとに成功しちゃった……」
自分の背中から聞こえてきたその言葉に、力の入らない身体でなんとか振り向くと。
結花がその可愛らしい顔に満面の笑顔を浮かべながら自分を見下ろしていた。
3
「ごめんね、千鶴ちゃん、いつもはこんなに吸ったりはしないんだけど、今回は仕方なかったんだ、しばらくは動けないかもしれないけど我慢してね?」
申し訳無さそうに謝る結花(四郎)を呆然と見つめる千鶴、全身の力が抜け座り込んでしまった自らの身体は『吸精』の際に起こる虚脱感に支配され、全く動かす事ができない。
そして結花の身体からは彼女が妖怪である事を示す幽かな妖気、先程雨宮鈴音から感じた妖気とはまた別の種類の妖気を感じさせていた。
「そ……そんな、……ありえない」
驚愕の余り目を見開き大きく口を開けたまま、千鶴は目の前で起こった事態をいまだ理解できず呆然と結花を見つめていて、そのあまりの驚きように何か違和感でも感じたのか、策略に嵌めた結花の方までなにか不思議な表情を浮かべていた。
「ねえ、一郎兄ちゃん? この人はなんでこんなに驚いているの?」
「余程予想外の出来事だったのでしょうね、思い込みというのは存外恐ろしいものです」
いつの間にか近くまで歩いてきていた生徒会長、新宮寺水蓮(一郎)は考え込むような仕草をしている結花を見ると先程までとは違った落ち着いた口調で話し始める。
「うーん、どうも腑に落ちない事が多いんだけど、んとね、例えば、さっき千鶴ちゃんは僕のことを最後までまったく疑ってなかったじゃない? 騙した側の僕がいうのもなんだけど少しは疑っても良かったんじゃないの?」
「そうですね、それは本人に聞いてみるといいかもしれません」
水蓮はそう言うと、脱力して座り込んだままの千鶴に視線を移す、何かのショックを受けているらしい千鶴はいまだ信じられないというような顔をして二人を呆然と見つめている。
水蓮と結花の二人は彼女に近づき覗き込むようにしてその顔を見る、すると不意に我に返ったのか、千鶴は勢い良く顔を上げて二人をぎろりと睨みつける、そして自らの疑問をぶつける様に二人に向かって叫ぶ。
「こ……これはどういうことなんだ お、お前達妖怪が……、『協力する』などということがあり得る筈が無い」
「……え? そ、そうなの?」
まるで自分は間違っていないと相手を糾弾するように捲くし立てる千鶴に、きょとんとした顔で不思議そうに首を傾げる結花。
「欲望のままに人の生気を吸い、利己的で他者と争う事しか知らないお前達が協力して助け合うだと? ふざけるな」
「ありゃ、酷い言われよう、まあ確かに欲望のままにって所はあってるけどさ、……あ、もしかして、さっき兄ちゃんが言ってた致命的な『勘違い』ってこのこと?」
「ええ、四郎、その通りです、彼らの常識では、妖怪というものはただ自己の欲望のままに行動し、他者と馴れ合うことなどもってのほか、縄張りに侵入してきた者は例え同族でも徹底的に排除する、そんな非情で野蛮な存在なのですよ」
「へー、なんだか凄いね、でもそれって大昔の事でしょ? だって今は僕達みんな仲良しじゃない」
「ええ、私達兄弟だけではなく周りにも沢山の信頼できる仲間達がいます、そうやって皆で協力し助け合って今まで生きてきたのです」
「……馬鹿な事を言うな! 俺はこれまでに多くの妖怪を退治してきた、だが共闘する妖怪など今まで一度たりとも見たことは無い、俺だけじゃない、本家の他の退魔士だってそうだ、妖怪の仲間だと? そんなことがあり得る筈が無い」
動揺して総一郎本人の口調に戻ってしまっている事に水蓮は気がついていたがあえてそこに触れる事をせず、悔しげな表情で唇を噛んでいる彼女に解説をするような口調で話し始める。
「逆ですよ、仲間を必要とせず単独で暴れまわっていた妖怪だからこそ、あなた達如きに見つかり、そして退治されてしまった。知っているでしょう? 情報と連帯は力なのです、それを得られないという事がどれだけ自分に不利に働くかと言うことが」
「なんだと……」
「現にあなたがそうして座り込んでしまっているのが一番の証明と言えるでしょう、剪紙模身法は確かに有用な術ですがあくまで単体用の術です、それさえ知ってしまえばあとは幾らでも攻略法は見つかりますし、その様な術を使っている時点であなたが古い考えの退魔士であることが筒抜けになってしまっていたのですよ」
「お前……、一体どこまで……」
自分の使っていた術の正体まで知られていた事に驚きを隠せず、睨みつけていたその瞳が僅かに震えてしまう。
「我々は最早あなた達に狩られるだけのか弱い存在です、しかし、だからこそ協力し、助け合い、生きる術を学ぶ、あなた達人間が過去にそうして強大な敵に挑んだように、私達もまた学んだのです」
「……………………」
千鶴は黙り込んでしまう。
「ふふ、皮肉なものですよね、そんな私達に対して今のあなた方は強大な力と権力を引き換えに助け合う事を忘れてしまった、管轄と言う名の縄張りを主張し、金という餌を奪い合う、まるで昔の妖怪達そのものではないですか」
「……くっ……」
千鶴は何も言い返せない、事実その通りなのだ、宗家の跡取りでもあった総一郎はその醜い争いを幼いころから嫌と言うほど目にしてきた、だからこそその指摘に言い返す言葉など見つかるはずもなかった。
「まあ、とはいっても、私達はもう一度人間を倒して妖怪の世界を作ろうなんて思ってませんし、興味もありません、私達は静かに暮らせればそれでいいのです」
「うんうん、僕達、人間のことも大好きだしね」
「ふふふ、その通りです、と言うことで、どうでしょう千鶴ちゃん? ここは種族間の認識の違いを埋めるべくお互いもっと良くわかり合う必要がある、そう思いませんか?」
「えへへ、それはいい考えだね一郎兄ちゃん」
「…………へ?」
意味深な微笑を浮かべじわじわとにじり寄ってくる二人に千鶴は何か得体の知れない恐怖を感じ逃げようとするが、生気を失った身体はいまだ力が入らず、必死に動かそうとするも千鶴の身体は僅かに身じろいだだけだった。
「なっ? え? お、お前達なにを!?」
既に彼女の身を守る衣服は無く、千鶴は靴下にパンティー一枚だけと言うほぼ全裸に近い格好でその扇情的な姿を晒してしまっている。そしてその身体を隠す事もできず身体をもぞもぞと動かすことしか出来ない千鶴に容赦なく二人の指が伸びてくる。
ぺたりと座り込んでしまったまま動けない千鶴の後ろに水蓮が回りこむ、そして床に膝を立てると、両手を広げ包み込むように彼女の身体を優しく抱きしめる。
背中に感じられる少女の柔らかな感触、豊かな胸が押し付けられその感触に戸惑う暇も無くそのまま首筋に舌を這わせてくる、生暖かい舌が首筋をなぞるように動き、湧き上がるぞくぞくとした感覚に千鶴は顔を引きつらせ悲鳴を上げそうになってしまう。
前からは四つんばいになった結花がそのあどけない顔に淫蕩な笑みを浮かべ、服をはだけさせながら這うように近づいて来ていて、前後から迫る二人の少女に千鶴は何も出来ず、伸ばされる手にただ身をよじらせるだけだった。
「や、や、やめろっ! こんな事をしてどうなっ、ひぃあっ!?」
「うわあ、千鶴ちゃんのおっぱいやわらかーい、もっと揉んじゃおっと」
甘えるようにしがみ付いてきた結花が千鶴の胸に手を伸ばす、眼前に広がる結花の可愛らしい顔は情欲に囚われ潤んだ瞳で彼女の顔を見つめてくる、そしてその指が千鶴の柔らかな乳房に触れた瞬間、千鶴は不意に沸き起こった未知の感覚に奇妙な声で叫んでしまっていた。
ふにふにと感触を確かめるように優しく胸を揉みしだいてくる結花の手に翻弄されるように千鶴の口はその指の動きに同調するように情けない声を上げ続けてしまう。
「も、もうやめっ……ひうっ……、あっ、は、話をきあうっ!?」
「なになに? ちゃんと喋らないと分からないよ?」
意地悪な笑みを浮かべながら二つの膨らみをもてあそぶ様に捏ね回す、弾力のある形の良い胸が多様に形を変え千鶴の脳にその感覚を逐一伝えてくる。平均よりも幾分大きめの女性らしいその膨らみ、その美しい胸が結花の指によってぐにぐにと形をかえる度に甘く切ないような感覚が沸き起こってくる。
「あは、いいなあ千鶴ちゃん、寄せると谷間ができるね、それにほら、とっても綺麗な乳首、……えいっ」
「やっ、やめっ!んんーーーーっ!?」
結花の指が桜色をした乳頭を摘み上げる、不意打ちのように与えられたその感覚に千鶴は引きつるような言葉にならない悲鳴をあげる、そして無意識に出してしまったその声が千鶴の肉体が伝えてくる快感によるものだと気づいてしまう。
感じてしまっている。
その事実に気がついた千鶴は必死でそれを否定しようと、絡み付いてくる結花を引き剥がそうとするが、千鶴の肉体はいまだ回復せずそれどころか与えられる快感にどんどんと脱力していってしまう。すでにブラジャーを取り去り、自らのささやかな胸を露出させた結花は、互いの身体を密着させ擦り付けるようにその小さな身体を動かす。
リズミカルに動く結花の身体、大きさの違う二人の胸がお互い身体の間で激しく形を変え、互いの乳首が擦れ合う度に体験した事の無い痺れるような快感が千鶴の脳裏を駆け巡る。
「ど、どうして……、んっ、こんな……ああっ!」
本来の自分には無いはずのその二つの柔らかな膨らみ、そこからもたらされる女としての快感、その蕩ける様な初めての感覚に総一郎の精神は打ちのめされる。
「どお? 気持ちいい?」
「ふ、ふざけるな……、き、気持ち……あうっ、良くなんか、んんっ、な、ない」
「ふっふっふ、意外と強情なんだねー、でもいいのかな? そんなこと言っちゃって」
胸を愛撫する動作を止めず、結花は彼女の後ろで身体を支えている水蓮に視線を送る。
「そうだよ千鶴ちゃん! この完全無欠の生徒会長、新宮寺水蓮さんのことを忘れちゃいないかい?」
水蓮はそう言ってニヤリと笑う。
「ほら、こんな邪魔なものは取っちゃいましょーねー」
「う、……うう、や、やめろぉ!」
いまだ力の入らない両足に水蓮の腕が伸びる、水蓮の手が彼女のふとももを掴みそのまま身体を浮かせると、体育座りの様な姿勢にさせられてしまう。
そしてその体勢になった千鶴に一旦身体を離した結花が彼女の身体に残った最後の砦、その秘められた場所を隠す一枚の薄布に手を掛ける。
抵抗も出来ず、その頼りない薄いピンク色の防壁は千鶴の足の間をするすると通過していってしまう、そのまま結花は器用に両足からそれ抜き取ると千鶴の膝に手を掛け大きく開く。
完全に晒されてしまった千鶴の秘所、そしてそこをうっとりとした表情で結花が顔を近づけていく。
「あれれ? 気持ちよくないって言ってた割には、もう随分と湿ってきてるじゃない、ふふふ、これはどういうことなのかなー」
「ううう……」
既に総一郎の精神は千鶴の肉体から伝わる快感に翻弄されていた、そのとろけるような快楽に思考が乱れ平常心を保つ事ができない、熱にうなされたような脳が下腹部の熱を訴えてくる、それは焦燥感、いつの間にか太ももを擦り合わせて何かを渇望するかのような股間の疼きに耐える、そしてそこで彼女はあることに気がつき恐怖する、今までの刺激など前座に過ぎず本当の女の快感はそこからもたらされる物だと。
「さーて、今週の妖怪不思議アイテムの出番だよ!」
「わーい」
突然始まった訳の分からない会話に千鶴は恐怖する、これ以上一体何をされるのか。
「じゃじゃーん、不思議双頭バイブー」
「なっ!?」
千鶴の目が驚愕で見開かれる、水蓮が妙な掛け声と共に取り出したのはグロテスクな形をした巨大な棒、明らかに男性のペニスを形どられているそれは二本の男性器が中心から両側に伸びるように取り付けられていて一目で何に使用するものか想像できてしまう。
「ここに取り出したるこのバイブ、もちろんただの代物じゃありません」
「わぁ、きになるきになるー」
「なんと、挿入される感覚とする感覚が同時に味わえてしまうという凄いアイテム!」
「わわ、すごい! すごいよ、そんなの二十二世紀の狸ロボでも出せないよ!」
「そうでしょうそうでしょう、あんな×××で○○○な糞青狸ごとき我々の目ではありません」
狸という生物に何か恨みでもあるのか、水蓮はあからさまに不機嫌そうな顔になり、その口調も今までの物とは違ってしまっている。
千鶴がうわ言のように呟いた「あれは猫型だ」という突っ込みも聞こえていないらしく、二人の少女はハイテンションで盛り上がっている。
「しかも今回は特別にもう一本お付けします!」
「いやっふー!」
え、二本? ぼんやりとした頭で二人の掛け合いを眺めていた千鶴は、なにか取り返しの付かない事がおきている様な、そんな気配を感じ取っていたが、湯だってしまった頭はそれ以上深く考えることができない。
「え? え?」
「心配しないで千鶴ちゃん! 私達の無駄にエロ方面に進歩した術を使えば、例え初めてであろうと一発であっち側に連れて行ってくれるから!」
「わーい、兄ちゃん外道ー!」
視点が定まらずもじもじと身体を捩らせるだけの千鶴を尻目に、二人の少女は手にした凶悪な代物を自分の秘所に差し込んでいく。
「んっ、……ふ、んあっ……、さ、流石にちょっときつい……かな、んんっ!」
「ん……、そ、そうだね……、この身体には、ちょ、ちょっと大きすぎるかも……」
苦痛に顔を歪めながらそれでもなおゆっくりと膣口にそのバイブを挿入していく、視線を宙に漂わせ、身体を微かに震わせながらその感触を楽しむように手を動かしている。
「はあ、はあ、……えへへ、準備できたよ千鶴ちゃん、待たせちゃってごめんね」
「ふぅ……、すぐに千鶴ちゃんにも味わわせて上げるから、もう少しだけ我慢するんだよー?」
「あ……、ま、まさか……」
二人の下半身から伸びる二本の擬似男根、それがこれから何をしようとしているか、その意図する所を嫌が応にも想像できてしまい、千鶴は恐怖に身を引きつらせる。
「まずは、ほのかちゃんにも使った術、触られるだけでとっても気持ちよくなっちゃうおまじないをしてあげる」
「え、え? ひ、ひあああああっ!?」
ぼそぼそと水蓮が何かを呟くと突然千鶴の身体が燃え上がるように熱くなる、がくがくと身体を痙攣させ、その異常な感覚に千鶴の視界が白く染まる。
「えへへ、すごいでしょ、その術、こうやって触られるだけで凄いことになっちゃうんだよ?」
結花が微笑みながら千鶴の股間を撫でる、たったそれだけの事で千鶴は悲鳴をあげ、強烈な快感に絶頂に達してしまう。
「あああああっ!?」
千鶴の絶叫と共に股間から愛液が飛び散る、脳内をかき回されるかのような女としての快感、総一郎は初めて味わうその感覚にもはや抵抗する気力さえも奪われていた。
胸を揉まれ、太ももをさすられ、ついには頬を撫でられるだけでも、その度に千鶴の身体は激しい快感に支配され、絶頂に導かれてしまう。
連続して絶頂に導かれ、その快楽に千鶴はあらぬ方向を見つめたまま身体をびくびくと震わせ、半開きの唇からは涎が流れ落ち胸元にまで垂れて来てしまっていた。
「ありゃりゃ、ちょっと刺激が強すぎたかな? 千鶴ちゃん、なんかすごい顔になってるよ?」
「うん、これは酷いね、凛々しい千鶴ちゃんの顔が陵辱物のエロ本の表紙みたいになってるもん、あ、でもこれはこれでナイスなギャップと言えるかも」
「はひ……、あああっ……たろむからあ……、んあっ……もうやめへぇ……」
呂律も回らなくなり、うわ言のように何か呟き始めた千鶴を見て、二人は視線を合わせ、お互い淫靡な表情で笑いあう。
「ほら、まだあっちの世界に行くのは早いよ千鶴ちゃん、起きて起きて?」
「そうだよ、千鶴ちゃん、本番はこれからなんだから」
「……はひ? らにをいっれれるろ?」
蕩けるような締りの無い顔でぼんやりとどこかを見つめていた千鶴、二人は彼女の肩をかるく揺するようにして名前を呼びかける。
「あ、うぅ……、あ、あれ?」
いまだ余韻から抜け切れないらしく、力の無い表情ではあるが少しだけ意思の光が千鶴に戻ってきた事を確認した二人は頬を紅潮させながら嗜虐的な笑みを浮かべる。
「あ、お帰り千鶴ちゃん、駄目だよ自分だけ先に気持ちよくなっちゃうなんて、私達もちゃんと気持ちよくしてもらわないと」
「うんうん、それに本当に凄いのはこれからなんだよ、よし、じゃあそろそろ本番いってみようかー、私は後ろを貰うから結花ちゃんは前ね?」
「はーい」
「は? え?」
「大丈夫、大丈夫、ちゃんと肉体操作の術も掛けてあげるから、痛みも抑えてあげるし、初めてでも裂けちゃったりはしないはず、……多分」
「あっ、えっ? だ、だめっ! だめえええええええええ!」
顔を青ざめて必死に二人を制止しようとする千鶴の叫びは、これ以上無いほど完璧にスルーされ、二人の少女は頬を紅潮させながら股間に生えたグロテスクな偽の肉棒をゆっくりと近づけていく。
既に千鶴の股間は大量の愛液で濡れそぼりその液体は肛門のほうにまで達していた、前後から迫り来る二本のバイブ、愛液を潤滑油のように先端に擦りつけ、もったいぶるように狙いを定める。
「せーのっ」
二人の息の合った掛け声。
「あ、あ、や、やめ……、あっああああああああぁぁぁーーーーーーーっ!!」
その合図と共に勢い良く差し込まれる二本の業物、みちみちと肉の押し開かれる感覚、前後から押し入ってくる異物に拒絶反応を起こし、筋肉が収縮し痙攣する、今までに感じた事の無いその痛みに千鶴は小さな口を限界まで開いて絶叫する。
「あっ……、んっ、あは、すごい、すごいねこれ! ちゃんと千鶴ちゃんのオマンコの感触がわかるよっ、んんっ、すごい……、千鶴ちゃんのココ、狭くて気持ちいいよぅ」
「で、でしょ? あっ、ふっ、う、後ろの穴も凄く締め付けてきて、食いちぎられちゃいそうっ」
卑猥な水音を響かせながら注送を続ける二人の少女はうっとりと目を細め、その奇妙な道具が伝えてくる千鶴の両穴の感触を味わう。
「あひぃ、い、い、あああああーーーーーっ、い、ぐ、うぐうっ、た、たすけっ、ひっ、あああああああああ!?」
脳に叩きつけられる強烈な痛みとそれ以上の快感、相反するはずの二つの感覚は千鶴の頭の中で飛び跳ね混ざり合い、訳の分からないその刺激に飲み込まれる。
絶妙に息の合った二人の動きは千鶴の両穴をえぐるように蠢き、時にはゆっくり、そして時には激しく彼女の膣壁と肛門を攻め立てる、一回一回、奥まで突き刺さるように捻りこまれるその二本の偽の肉棒、その度に視界が揺れ気が狂いそうな甘い電撃が脳を焦がす。
肌寒ささえ感じる放課後の教室で珠の様な汗を体中に浮かべながら、襲い来る暴力的な快楽にその身を跳ねさせる、柔らかな千鶴の胸がゴム鞠のように揺れ、浮かび上がった汗が飛び散る、もはや、千鶴の肉体は悦楽の虜になったかのように両穴に進入してくるその異物を受け入れようと激しく動き始めていた。
「はぁっ、ふっ、んんっ、ど、どうかな、千鶴ちゃん、気持ちいい?」
「ど、……どうやら、ん、ふっ、ふっ、もう聞こえて、んっ、無いみたい、うふ、んんっ」
「……あっ、ああっ、……はひぃっ、ああ、ああっ、……あひぃぃっ!」
虚ろな瞳でで二人の腰の動きに合わせて自らも求めるように身体をくねらせ始めた千鶴、すでにその顔には先程までの反抗の表情は無くまるで快楽を貪るだけの人形の様にとろけた笑顔を浮かべ快楽を貪っている。
「あっ、……んあっ、き、気持ちいいよ千鶴ちゃん! すごい、すごいよっ、あ、あれっ!? こ、この感覚!? あ、あ、もしかして」
「んっ、んっ、そ、そうよ、結花ちゃんの……思ってるとおりだよ……、んんっ」
「あはっ、ほんとに凄いねっ、んっ、これっ、結花ちゃんの体で射精する……感覚が味わえるなんてぇ」
「んあっ、ふふっ……、そう、だからね、三人で……、一緒に、ふぅ……ふぅ……、盛大に逝っちゃいましょう?」
二人に挿入されている二本のバイブはいつの間にか本物のように反り返りびくびくと脈打っている、本来の彼女達が味わう事の無いその感覚にまるで懐かしむかのような顔で卑猥な笑みを浮かべた二人の少女はより一層腰の動きを激しくする。
「あっ、あっ、だ、だめっ、千鶴ちゃんの中……、気持ちよすぎて、僕、もう、イっちゃいそう!」
「くっ、……ええ、わ、私も、そろそろ限界かもっ、いい? いくよ!」
「うん、千鶴ちゃん、千鶴ちゃんも一緒に、一緒にイこうっ!!」
その合図と共に二人は動かしていた腰を千鶴の身体に叩きつけるように押し付ける、両穴の奥でまるで二人の意思に反応するかの様にバイブが膨張し、ただでさえきついその内壁を押し上げる、二人の少女の絶頂の叫びと共に千鶴の子宮と腸の奥底まで注がれる擬似精液、それと同時に千鶴の視界がスパークしその背中が折れてしまうのではないかと言うほど仰け反らせ絶叫する。
「えっ!? あああっ、ああっ、くっ、くる、な、なにかがぁ、こ、壊れるっ、だ、だめっ! あああっ! ああああああーーーーーーっ!」
がくがくと全身を痙攣させ、意味を成さない叫び声を上げながら快楽の頂に達する千鶴、そんな千鶴の姿をうっとりと見つめ、同じく絶頂に達した二人の少女はしばしの間その快感を味わうように腰を押し付けながら震えている。
二人はゆっくりと彼女の両穴からバイブを引き抜く、そしてびくびくと痙攣したままの千鶴を床に寝かせると、膣口と肛門からは白い体液が濁った音を立てながら滴り落ちてくるのが見えた。
「……はふぅ、あ、まだ背筋がぞくぞくしてる、もう最高だったよ千鶴ちゃん」
「うんうん、すっごく気持ちよかったよ? 次は私が前を貰おうかな? ってあれ?」
「…………、うわ、気絶しちゃってるね……」
「あらら、やりすぎちゃったかな……」
体中から体液を垂れ流し、ぴくりとも動かない千鶴を見て二人は落胆したようなため息をつく。
「リンク切れかなー、もう千鶴ちゃんの中には居ないみたい」
「そっかあ、残念だねー、もう少し楽しみたかったのに」
結花は少し残念そうに気を失っている千鶴を見ると、自分に生えたその擬似男根を引き抜こうとする、すると水蓮はバイブに手を掛けた結花を引きとめ、ニヤリと笑う。
「ふっふっふ、甘いよ結花ちゃん、私の力をもってすればほらこの通り、れっつワカツタマ!」
「わぁ、さっすが兄ちゃん、そのどS過ぎる発想に僕びっくりだよ!」
そして水蓮はぐったりと倒れている千鶴に覆いかぶさるよう頭を近づけ彼女の顔を覗き込む、すると気絶していたはずの千鶴が勢い良く瞼を開き、むっくりと起き上がる。
「じゃじゃーん、退魔士☆見習い、早乙女千鶴、大・復・活!」
千鶴はそのまま立ち上がると満面の笑みでそう宣言する、回復しきっていない肉体で無理やり立ち上がったせいか、その足はかくかくと震えていてまるで生まれたての子鹿のように頼りない。
「兄ちゃん、兄ちゃん! 千鶴ちゃんに会長さんのキャラが移ってるよ! ギャップがありすぎだよ、むしろご褒美だけど!」
「あれれ? …………むむ、私もまだ修行不足かもしれませんね、やはりなれるまでに少し時間が掛かります」
結花から鋭いツッコミをうけ彼女に似合わない芸人のような驚きのポーズをした千鶴は、両穴からぼたぼたと精液を垂れ流しながら、なにかの調整をするかのように頭に手を当ててそのまま立ち尽くす。
「あーあー、私が生徒会長の水蓮」
「で、私が千鶴」
「うん完璧」
「うん完璧」
いえーいとハイタッチをする水蓮と千鶴を少し困惑した表情で眺めながら、結花は「まあいいか」と呟いて二人の少女に抱きついていった。
そして、完全に忘れ去られていた風紀委員長、雨宮鈴音が目を覚まし、その惨状を目撃してもう一度気を失うまで、放課後の空き教室での饗宴は続けられたのであった。