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現代妖怪のためのリスクマネジメント入門 終章 お狐様の説得工作

2012/08/10 09:39:30
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終章 お狐様の説得工作











「………兄様! お兄様! しっかりして下さいっ!」

「総一郎さん!」

耳元から聞こえて来る馴染み深い少女の声。

私立探偵、神代総一郎が事務所のソファーの上で目を覚ますと妹の神代一葉が自分の名前を何度も叫びながらすがりつく様に自分の身体を揺すっていた、そしてその光景に驚き咄嗟に周りを見渡すと、近くに居たらしい助手の成瀬晴菜が慌てて走り寄ってくる。目に涙を浮かべた晴菜は意識を取り戻した総一郎の隣に来ると本当に安心したように大きく胸を撫で下ろし潤んだ瞳で彼のことを見つめていた。

「うっ……、ここ……は、……ぐっ!」

「お兄様!?」

現状を確認しようと身体を起こそうとした瞬間激しい頭痛が総一郎を襲う。頭に焼けた火箸を挿されたかのような痛みを感じその苦痛に思わず顔が歪む、しかしそのおかげと言うべきか激しい痛みと共に彼の脳裏に先程まで千鶴の身体で体験させられた数々の記憶がフラッシュバックのように蘇り、流れ込む記憶の奔流に頭が掻き乱される。

強制解除。あの時千鶴の身体を操っていた総一郎は妖怪が乗り移った二人の少女に襲われ、精神に激しい負荷を受け術を維持できなくなってしまった、そして弾かれる様に本体に戻ってしまった彼の精神は強制的に接続を切断した影響で激しい頭痛と倦怠感に襲われていた。

「お兄様よかったっ、意識がもどられたのですねっ! 私、私、お兄様の身に何かあったのではと心配で……もう、ううぅ」

「ごめんなさい総一郎さん……、任務中は部屋に入るなと言われていたのに……、で、でも、苦しげな叫び声が聞こえてきて、私、いても立ってもいられなくなって……」

目に涙を浮かべて総一郎にしがみ付く一葉、総一郎は抱きついている妹の頭を優しく撫でてやり、頭を上げ視線を隣に移すと申し訳無さそうに総一郎を見つめながら佇んでいた晴菜に話しかける。

「いや、いいんだ、こちらこそすまない……、どうやら随分と心配を掛けてしまったみたいだ」

「そんな……、総一郎さんが謝る必要なんて……、でも本当に、無事で良かった……」

晴菜は張り詰めた表情を崩すとそう言って語尾を震わせた、美しい眉毛を八の字にして今にも泣き出しそうな幼馴染を見つめていると、こんなにも彼女に心配をさせてしまったのかと総一郎の心にずきりとした痛みが走る。

総一郎はずきずきと痛む頭を抑え、自分の今の状況を分析する。

身体は泥の様の重く、頭は上手く回ってくれない、しかし事態は急を要している。

総一郎は壁に掛けてある薄汚れた時計を確認する、どうやらあれからそれほど時間は経っていないらしい、ならば今すぐにでも学園に向かい千鶴を助けなければ。

そう考え、無理やりにでも立ち上がろうとソファーから身を起こす。

「ぐっ……、うう……」

「お兄様! まだ起きてはいけません!」

激しい痛みに耐えながら起き上がろうとした総一郎を見て、一葉が悲鳴を上げる。

「そうです、総一郎さん、何があったのかは分かりませんが、もう少し横になっていてください」

「……、ごめん、二人とも、俺は行かなくては……」

「そんなお体で何処に行くのですかお兄様っ!?」

総一郎はすがり付こうとする一葉を優しく手で制すといまだ痛みの引かない頭を手で押さえながら応接室から出ようとする、すると歩みを進めようと前を向いたその視線の先、出口に続く応接室の扉の前に、今までに見たことも無いような険しい顔をした晴菜が立ちはだかっていた。

「総一郎さん……」

「晴菜、そこを退いてくれないか?」

満足に動かない身体を引きずり、歩みを止めない総一郎。そして頑として動こうとしない晴菜、扉の前で向かい合ったまま二人は互いの顔を見たまま沈黙する。

重い静寂。

二人の顔には固い決意の表情が見て取れ、互いに譲り合う事無く向かい合ったまま静かに見つめ合う。

「……総一郎さん、何があったのかは分かりませんが、一葉ちゃんの言うとおりそんなお体では外に出す事はできません」

「…………、晴菜」

「……お願いですから休んでください」

悲壮な表情で総一郎を見つめる晴菜、まるで通せんぼをするように大きく伸ばされた手は微かに震えていて、彼女の必死な心の内をあらわしているかの様だった。

「俺のミスで千鶴ちゃんを犠牲にしてしまった、今こうしている間にも彼女は酷い目に合っているかもしれない、だから俺は一刻も早く彼女を助けに行かなければならないんだ、……晴菜、わかってくれ」

「……いいえ、分かりません」

「晴菜!」

「千鶴ちゃんが危険に晒されていると言うのなら、尚更です。……総一郎さん、助けると仰いましたが、今の状態の貴方が行って本当に無事に彼女を助けられると思っているんですか?」

「それは……」

「私は総一郎さんが関わっている仕事の事は知りません、けど、そんな私でも今の総一郎さんがまともに何かが出来る状態だとは思いません」

目尻に涙を浮かべ懇願するように言葉を繋ぐ晴菜、その声は震えていながらも瞳は真っ直ぐに総一郎を見つめ、その決意の強さを総一郎に思い知らせる。

「ですから、本当に千鶴ちゃんの事を思うのでしたら、少しだけでもいいですから……、休んでください……」

「…………」

「……お願いです総一郎さん」

「……………………分かった」

長い沈黙の後、総一郎は顔を下に向けそう答えた。

「お兄様、お兄様ぁ!」

総一郎の腰にしがみ付いて泣き喚く一葉をなんとかなだめソファーに戻ると、晴菜の言うとおり相当に身体がまいってしまっていたのか、腰を下ろすと同時に激しい疲労感が鉛のように圧し掛かってくる。

「今、お茶を入れてきます」

「あ、か、一葉もお手伝いしますっ」

そう言ってぱたぱたと走っていった二人の後姿を見送ると、総一郎はソファーに身体を埋め体力を少しでも回復させようと瞼を閉じる。

千鶴の身体に乗り移っているときの総一郎の本体は、いわゆる仮死状態になり、生命活動が極限まで低下し体力の低下を軽減させていたものの、正規のプロセスを経ずに強制的に肉体を覚醒させてしまい、術を使用しほぼ丸一日が経過していた事もあって彼の身体は酷い疲労に襲われ、下がりきっていた体温も思うように戻っていかない。

古ぼけた蛍光灯の光が時折ちりちりと瞬く、気持ちばかり先行してしまい満足に動こうとしない自らの身体に歯がゆさを感じつつ、無常に過ぎていく時計の針の音をじっと聞いていることしか出来ない。

「総一郎さん、どうぞ」

戻ってきた晴菜がそう言ってカップに注がれた暖かな紅茶を差し出す、ダージリンのオータムナル、紅茶好きの晴菜が貧しい懐事情を鑑みてそれでもなるべく良い紅茶を味わってもらおうと方々を捜し歩いて見つけ出した、ほんの少しだけ高級な薫り高い一杯。

総一郎は心の中でその紅茶に謝りつつ、琥珀色の水面に砂糖とミルクをありったけぶち込み、そしてかき混ぜる。

もはや紅茶とは言えないその砂糖液を口につけゆっくりと飲み込むと舌が麻痺してしまうかのような壮絶な甘さが脳に響き渡る、しかし衰弱した身体にその液体は染み渡るように広がっていき、総一郎の肉体は吸収される糖分を速やかにエネルギーに変換しようと活動を始める。

五分、いや一分でもいい、空っぽの燃料タンクに小さじ一杯分のエネルギーを。

必要なときに必要な分だけ動いてくれればいい、総一郎は流し込むようにその砂糖の塊を飲み干すと静かにソファーに身体を預けた。

「…………っ!?」

そして精神を集中しようと瞼を閉じようとしたとき、耐え難い眠気が総一郎を襲う、そのあまりに不自然で暴力的な眠気に総一郎は目を開こうとするもののまるで死神の鎌が振り下ろされるかの如く総一郎の意識は刈り取られる。


総一郎は晴菜が入れたその紅茶に普段の彼女の淹れるそれにはありえない僅かな雑味が混ざっていた事に最後まで気がつくことはなかった。



「――ていうか、こんな美人の助手に可愛い妹とか、どんだけ恵まれてるんだよ」

「しかもこれだけ大好きオーラ出してる晴菜ちゃんにも手を出してないみたいだし、プラトニックなんて今時流行らないって」

「うんうん、ここはあれだな」

「うん、あれだね」

「いっちょやるか」

「おっけー、二郎兄ちゃん」

紅茶の中に入れられた秘薬に意識を刈り取られ、眠り込んでしまった総一郎を見ながら、晴菜と一葉の二人はそう言ってニヤリと笑いあった。













「あ……おにいさまぁ……ん、……おはようございまふ、んん、ちゅ」

「……、なっ!? 一葉!?」

下腹部に甘い刺激を感じ、眠り込んでしまっていた総一郎が目を覚ますと、粘り気のある水音を響かせながら熱心に彼の一物を頬張る妹の一葉の姿があった。

突然視界に入ってきた異常な光景に総一郎は思わず叫んでしまう、見るといつの間にか彼の身体はソファーの肘掛けに頭を乗せるようにして寝かされていて、伸ばされた足の付け根に顔を埋めた一葉が露出されたペニスを愛おしそうに頬張っている。

「はい、一葉でふよ? んっ、じゅる……、どうかしまひたかお兄様?」

肉棒を口に咥えながら舌足らずな口調で話す一葉、まるで驚いている総一郎の事を不思議がるかのように見つめてくる。そしてそのまま上目遣いで彼を見つめながらリズミカルに頭を上下に動かし続ける。

慌てて一葉を引き離そうとした総一郎は両手にまったく力が入らない事に気がつき、そこでまたしても自分が罠に嵌められたのだということを理解する。

「……ま、まさか!?」

「うふふ、駄目ですよ総一郎さん、ちゃんと寝ててくださらないと」

「晴菜っ!?」

そして後ろから聞こえてきた幼馴染の声に、総一郎は絶望的な状況であることを思い知らされてしまう。

ゆっくりと顔を近づけてきた晴菜は服をはだけたあられもない格好で、その痴態を見せ付けるように自らの両手で身体をまさぐっていた。薄いノースリーブのセーターは胸元まで捲くり上がっていて、そこから顔をのぞかせるブラジャー越しに自らの胸を鷲づかみにしている。

そして満足に首も動かすことができない総一郎にも見やすいようにソファーの正面に回りこむと、そのままもう片方の手でスカートをつまみ上げる。

ニヤニヤとした笑みを浮かべたまま晴菜は裾を徐々に持ち上げていく、すると魅惑的な太ももと共に清楚な白いショーツがゆっくりとその姿を現し、まるで挑発するように自らの下着を見せ付ける晴菜のその仕草に総一郎は思わず視線を背けてしまう。

「く、くそ! おまえら、一体なんのつもりだ!」

怒りに声を震わせながら、総一郎は二人を睨みつける。しかしそんな憎悪に満ちた視線をまるで気にする事もなく、睨まれる心当たりも無いとばかりに微笑みながら総一郎にしな垂れかかって来る。

「お兄様酷いです、こんなにも可愛らしい妹をおまえだなんて、一葉は悲しいですっ」

「そうですよ総一郎さん、こんな据え膳を目の前にしてその態度はありません、まったくそんなだから私の処女膜一枚破れないんですよ」

「…………黙れ化物」

二人の言葉にそう冷たく言い放った総一郎に対して、彼女達は一瞬ぽかんとした表情を浮かべてなにやら考え込むように頭を捻りだす。そして睨みつけたままの総一郎を見るとあはは、と困ったように笑い出した。

「……やっぱばれちゃった?」

「そだねー、流石に無理があったかなー」

激昂する総一郎に一葉(二郎)と晴菜(三郎)は悪びれる様子もなくそう言って快活に笑う。

「お前達も『仲間』なのか……」

「あー、一郎兄ちゃんの事? うん、そうそう、っていうか俺らは兄弟な」

「うんうん、兄弟、多分さっき学園で二人の娘と会ったと思うんだけどその子たちとあわせて四人兄弟なのさ」

「…………そうか」

どうやら自分は完全に敵の策に嵌ってしまっていたということを認識する、いまだ身体は思うように動かず、これでは術も式神も使う事ができない。完全な手詰まり、明るく話しかけてくる敵に対してどうすることもできない。

どうやらここでゲームオーバーみたいだ。

総一郎は自分がすでに絶体絶命であることを知る。

恐らく、俺は殺されるだろう。

裏の仕事を請け負い続けてきた以上、いずれこのような事態が来るのではないかと縛然とながらも考えてはいた、二年前の事件、解け掛けていた封印を破って本家に攻め入ってきた古の大妖怪、宗家の長老達は撤退を決め逃げ出したが、最後まで残って戦い抜いた彼の母と多くの高潔な退魔士達はその犠牲になった。

志高く大儀の為に仕えていた人たちは死に、金と権力を貪る亡者達は生き残った、そんな宗家に嫌気が差し、山を降り技を捨てた自分がこうして退魔の依頼を受け続けている、考えてみると最初から間違っていたのかもしれない、宗家から離れる為に設立した事務所、その事務所を維持する為に退魔の仕事をする、本末転倒と言うべきこの矛盾に気がつかない振りをしていただけだった。

何も聞かずに付いて来てくれた幼馴染の晴菜、異母兄弟という複雑な関係でありながらも屈託の無い笑顔で懐いてきてくれる一葉、そしていつも顔には見せないものの自分の心配をしてくれる弟子の千鶴。

皆を守るためと思いながら結局の所は彼女達に甘えてしまっていたのかもしれない、問題を先延ばしにしこの関係を維持する為に自分を騙し続けてきた。

そんな不確かな覚悟ではこのような結末になるのも当たり前だ。総一郎はそう考えて少しだけ自嘲気味に笑った。

そして総一郎はもう一度二人を仰ぎ見て少しだけ考えを巡らせると静かに最後の言葉を紡ぐ。

「……俺を殺すのは構わない、しかし皆は助けてあげてくれないか……、お願いだ……」

千鶴を助けるどころか、更に敵の罠に嵌ってしまった自分にふがいなさと悔しさを感じ、総一郎はきつく瞼を閉じる。

完全な敗北、自分の甘い認識でこの事態に陥ってしまった、その事実は受け止めなければいけない、しかし死ぬのは自分だけでいいはずだ、退魔士である自分さえ排除できれば彼らの目的は達成できるだろう、総一郎はそう考え、一縷の望みを託しプライドを捨てて自らの憎むべき敵に懇願する。


「……えっ!? なにいってんだよ、殺すとか物騒だなあ、俺達そんなことしないって!」

「うんうん、なんかあれな? 総一郎さんってさっきからちょっとシリアスすぎな? そんなんじゃ肩こるよ?」

「まったく、すぐ殺すだの殺さないだの、そんな事したら犯罪だかんな? 分かってる?」

そう言って何故か説教をしだす二人。

「ど、どういうことだ……、では一体なにが目的なんだ?」

認識の違いに眩暈を覚えつつも、覚悟を決めようとしていた総一郎は我慢できずそう問いかけてしまう。

「目的って言われても、うーん、なんだろ? むむむ、強いて言えば……楽しみたい?」

「はぁ!?」

総一郎に馬乗りになったまま一葉が頭を捻って考え込むようにした後、総一郎が予想もしていなかった発言をする。

そのあまりに予想外すぎる台詞に総一郎は訳がわからず、思わず口を大きく開き呆気にとられた表情になってしまう。

「いやいや、二郎兄ちゃん違うって、霊力を奪うのが目的だろ?」

「……え? まじで?」

総一郎の後ろで服を脱ぎかけていた晴菜もその言葉に驚いたのか、慌てて一葉に詰め寄っていく。

「暫く術が使えないようにするって昼に一郎兄ちゃんが言ってたじゃないか」

「ま、まあいいじゃないか、結局やる事は一緒なんだし」

「そりゃそうだけどさー、一応ほら、妖怪として恐ろしさを見せ付けるーみたいな感じにしないと」

「三郎は意外とそう言うところ細かいよなー、でもあれだぜ? なんかもう今から悪役をやるって言っても、そんな雰囲気じゃ無くなっちまったじゃないか」

「う、それは確かに……」

緊張感の全く無い会話をしつつ、うーん、と考え込む晴菜と一葉。総一郎はその流れについて行けず呆然と二人を眺めていた。

「そもそも俺らに悪役ってちょっと無理があったんじゃないかな?」

「うーん、一郎兄ちゃんだったら上手い事出来てたんだろうけど」

「まあ、一郎兄ちゃんはあれな、天性のドSだかんな、四郎も結構ノリが良いし、多分総一郎さんすっごい目に合わされたんじゃないかな?」

「あー……、すげー想像できるなー、やばい、背筋が震えてきた」

晴菜は何かを思い浮かべるように上を見上げると、自分自身を抱きしめるようにしてブルブルと震えだす。

「……、よし決めた」

「どったの、二郎兄ちゃん?」

「俺らは俺らなりにやっちまおうぜ、結果が一緒なら一郎兄ちゃんも許してくれるだろ」

「確かに、そっちのほうが楽しめるし、それで良いんじゃないかな?」

総一郎は唖然とした表情のまま何とか頭を回転させ、取り合えず命は奪われないと理解できたものの、二人の会話がどんどんまずい方向に進んでいる事に気がつき、その会話の内容からこの二人が何をしようとしているのか予想できてしまう。

そして千鶴の身体でされた数々の屈辱が脳裏に沸き起こり、その記憶に顔が青ざめていく。

「ま、まってくれ! 俺はともかく、妹達だけは汚さないでくれ!」

最悪の事態を想像してしまい、必死に止めようとする総一郎。しかし二人の表情はすでにニコニコとした笑みに変わっていた。

「大丈夫大丈夫、最近の妖怪の術を舐めちゃ困るぜお客さん、記憶も消せるし避妊もおっけー、お望みならこの身体の膜再生もしてやるから、総一郎さんは安心してそこに寝ててくれな?」

「うんうん、折角だから総一郎さんも楽しもうぜー」

「そ、そういう問題じゃない!」

「まったく、強情だなー、よし、うっうん……、……お兄様? ちょっとお待ちになってくださいね?」

先程まで男の様な口調で話していた一葉が、軽い咳払いをして瞼を開けた途端、元の神代一葉の仕草と口調を取り戻す。そして総一郎の上に乗ったままスルスルとスカートからショーツを脱ぎ去ると、その可愛らしい青いストライプの下着を開いていた彼の口に押し込んだ。

「な、なにをっ! むぐっ……」

妹のパンツを口に押し込まれた総一郎はそれ以上喋ることが出来ず、くぐもったうめき声をもらす事しかできない、そして一葉は自分の髪を可愛らしく彩っていた大きなリボンをするりと解くと総一郎の口に猿轡のようにして巻き付ける。

「申し訳ありませんお兄様、少しだけ我慢をしていて下さい、多分十回ぐらい出せば終わると思いますから」

「――――っ!?」

「そうですよ、総一郎さん、竿役は黙っておちんぽをおっ立ててれば良いんです」

柔らかく微笑みながらいつもの穏やかな口調で最低な台詞を言い出した幼馴染、総一郎は眩暈を堪えつつ何とか二人を止めようと足掻くも自分の身体はまるで言う事を聞かない。

そして一葉は先程から放置され硬度を失いつつあった彼の肉棒に手を伸ばすと細い指でさわさわと撫で始める。

「お兄様? 妹の手の感触は如何ですか? 一葉は頑張りますから一杯気持ちよくなって下さいね!」

その白魚のような手で竿を擦られ、総一郎の一物は彼の意思とは関係なくみるみる固さを取り戻していく。

「えへへ、一葉は嬉しいです、お兄様の物、凄く固くなってきてます、一葉の手で感じてくださっているのですね」

「んんっ、むむーー!」

兄の反応に気を良くしたのか、一葉は笑顔を浮かべて激しく肉棒を擦る、幼い少女の物とは思えないその指捌きに総一郎は思わず顔を歪める。

妹の指で陰部を弄ばれうめき声をあげる総一郎、それを見た晴菜もニヤリと笑みを浮かべてすかさずブラジャーを取り去るとそのまま力の入らない彼の手を取り自分の乳房に押し当てた。

「総一郎さん、ほらどうよ、この幼馴染のおっぱい、……うわ、晴菜ちゃんってば清純そうな顔をしてすっごいエロい身体だなー。まったく、こんな可愛い子に手をだしてないとかもったいないもいい所だよ」

乗り移られた晴菜は男の様な口調で彼の手のひらに両手を被せその手の上からぐにぐにと胸を揉み始める、白いノースリーブのセーターから覗くその柔らかな乳房の感触が押し当てられた手のひらから伝わってくる。

「あっ……、き、気持ちいい……、晴菜ちゃんの身体……、感度もすごい」

そして二人に攻められついに総一郎の肉棒はその固さを取り戻す、重力に逆らい直立してしまった彼のペニスを淫蕩な表情で見つめた一葉はその小さな唇を彼の股間に近づけていく。

「ふふ、いただきまあす」

あーんと大きく口を開けてらてらと光る舌を突き出した一葉はそのまま躊躇なく亀頭を口に含む、ねっとりとした唾液を潤滑油のように塗しながら亀頭を嘗め回し上目遣いで兄の反応をうかがう。

「……一葉ちゃん、私もまぜてね?」

いつのまにか顔を寄せてきていた晴菜も頬を上気させ、彼の陰茎を咥えている一葉と視線を合わせる、そして目で会話を交わすと横から彼の竿をなぞる様にして舌を這わせ始めた。

「……ん、……んちゅ、……あ、ん、……あふ……ちゅぱ……」

「……う、……ううっ」

幾ら妖怪に乗り移られているとはいえ、普段では絶対に見せることの無い二人の淫靡な姿に総一郎の下半身は無意識に反応してしまっていた。

息の合った連携で肉棒に舌を這わせる二人、まるで熟練の娼婦のようなその技に否応なく快感を引き出されていく。そして気がつくと彼のペニスは反り返り、びくびくと脈打つように天を衝いていた。

「んー、ちゅぱっ……、えへ、お兄様、これで準備万端ですねっ!」

顔を上げそう言って一点の曇りもない笑顔をみせる一葉、その言葉の意味する所は、彼にとって非情な最後通告の様なものだった。











「んっ……、はぁ、よしよし、ちゃんと一葉ちゃんのアソコも濡れてるな……、ん、こほん、……えへへ、お兄様? 一葉のはしたなく濡れてしまったここ、見ていただけますか?」

一葉はプリーツスカートを捲り上げ自分のアソコの状態を確認すると、一瞬だけ下品な笑みを浮かべ、総一郎に語りかける。

総一郎の上に乗ったまま膝立ちの姿勢でゆっくりと自らの股間に指を持っていき見せ付けるようにその割れ目を開いていく、女としてまだ花開かずぴっちりと閉じたままのそこを指で押し広げると、僅かながらもしっかりと濡れて光る淫裂が明らかになる。

「お兄様にご奉仕していたら一葉の……オマンコもこんなになって……しまいました、ご、ごめんなさいっ、一葉は、はぁ、はぁ、か、一葉はお兄様のおちんぽをじゅぼじゅぼ吸って感じちゃうイヤらしい子なんですっ、で、ですからっ、も、もう、良いですよね? お、お兄様のおちんぽ、頂きますしちゃって良いですよねっ!」

「んんんーーーっ!!」

必死に拒絶しようとする総一郎を気にもせずに、淫蕩な笑みを見せる一葉。

「はぁ、はぁ、だ、大丈夫ですっ、お兄様はちょっと天井の染みを数えていてくださればいいですからっ! あ、後は、か、一葉にお任せください!」

息を荒げながら一葉はそう言って屹立したままの総一郎の剛直にゆっくりと腰を下ろしていく。自分の秘裂を肉棒の腹になぞらせる様に動かしもったいぶらす様にじりじりと狙いを定める、一葉の瞳はすでに情欲で染まりきり普段の純真な雰囲気は欠片もなくなっていた。

「そ、それじゃあ、あはぁ……、お兄様のぶっといおちんぽ……、いっただっきまーす」

まるで性器同士でキスをするかのように亀頭の先に自分の割れ目を触れ合わせ僅かの間その感触を確かめると、一葉はとろけるような淫蕩な笑顔を向けながらゆっくりと一物を飲み込んでいく。

これまで誰も向かい入れたことの無い一葉の秘所がその凶悪な肉の杭によってその跡を刻まれる。

裂けてしまうのではないかと思うほど拡張された膣口に徐々に肉棒がねじり込まれる、一葉は両手を彼の胸の上に乗せ激痛に顔を歪めながらそれでも腰の動きを止めようとしない。

「あ、……ぐっ、あああっ! い、痛いっ……、いいい……、き、きつすぎるぅ、へへ、やっぱり処女は辛いや……」

ずぶずぶと彼の肉棒を飲み込んでいく一葉はそう言うと一旦腰の動きを止め、肉棒が半分ほど刺さったままの自分の股間を見つめる。流れ出る破瓜の血を眺めながら荒い呼吸を繰り返している一葉は大きく息を一つ吐き残りの半分を膣内に飲み込もうとじわじわと腰を下ろし始める。

「うっ、あはぁ……えへへ、分かりますかお兄様? お兄様の物が……、んんっ! 一葉の子宮に当たっていますよ、あっ、あっ、どうですか? 妹マンコは気持ち良いですか?」

「……うう、……」

喋る事の出来ない兄に対して気にせず話しかける一葉、妹の身体を操りその可憐な声でうっとりと囁きかける妖に総一郎は歯を食いしばり瞼をきつく閉じる。

「ああっ、……一葉はすごく、んっ……気持ちが良いですよ? お兄様も、んあっ……今度一葉の身体を使ってみてくださいね」

びくびくと身体を震わせながら彼の肉棒を最後まで飲み込んだ一葉はそのままゆっくりと腰をグラインドし始める、痛みのためか時折顔を歪めながらもまるでその感触を楽しむように腰を動かす一葉、じっとりと汗をかき髪を頬に貼り付けながら兄に微笑むその顔は総一郎が一度も見たことも無いような淫靡な女の顔に変化していた。

「あっ、あっ、……んんっ、……あああっ、き、気持ちいいっ! い、痛いけど……気持ち良いですっ!」

次第に速さを増していく腰の動き、喘ぎ声を上げながら激しい注送を繰り返す一葉、パン、パンと肉のぶつかり合う音が湿った音と共に響き渡り、総一郎の肉棒を食いちぎるかのように締め付けてくる。

「ああ、一葉ちゃん良いなあ……、私も早く入れてほしい……、失敗したなあ、あの時グーを出していれば」

嬌声を上げながら快楽を貪る一葉を羨ましそうに眺めながら、晴菜も秘所に指を這わせて自らを慰め始める。目の前で繰り広げられる痴態に、既に晴菜のショーツは色が変わるほど湿っており、もどかしそうにスカートからそれを脱ぎ捨てると一葉の物とはまた違う成熟した女性の艶やかな秘所が露になる。

はぁ、と一つ息を吐き、その外気に晒された秘所に指を差し込んでいく、晴菜は自分の記憶をなぞる様に自らの感じる場所を指で触り始めるとそこでなにかに気がついたのかその表情がまるで悪戯っ子のような意地の悪い笑みに変わる。

「んっ、あっ、総一郎さん、総一郎さん! わ、私、凄いんですよ! 私ってばこんな清純そうな顔をしておきながら凄い淫乱だったんですっ! んっ」

突然話しかけてきた晴菜に視線をむけると、身体を弄りながらニヤニヤとした笑みを浮かべている晴菜の姿があった。

「ああっ、んふ……、私ってば総一郎さんのことを思って、毎日オナニーをしていたみたいなんですっ、あはっ、まったく酷いよな総一郎さん、こんな良い子を今までずっと放って置いたなんて」

「……ううっ……っ!」

恐らくは絶対に知られたくないであろう秘密を自らの口で暴露する晴菜、その姿に総一郎は自分の無力感を感じると共にその事実に驚きを隠しきれなかった。

「あっ、あひぃ……、きょ、今日は、総一郎さんに、いつも私が総一郎さんを思いながらしてる……、んっ、オナニーを、見せてあげますからね、ん、ふっ……」

そう言って激しく身体を弄っていた自分の両手を止めると、一転してゆっくりと秘裂を指を這わせていきやさしく摩る様に刺激を加え始める、そして荒い息を吐きながら自らを昂ぶらせるように徐々に指の動きを早めていく。

「んんっ、わ、わたしっ! 総一郎さんに弄って欲しくてっ! ふっ、んっ、何時も、ここをこんなにしてたんですっ! あっ、あっ、そ、総一郎さんに見られながらするの……き、気持ちいいっ!」

股間から卑猥な水音を響かせうっとりと総一郎を見つめる晴菜、そしてそんな晴菜に負けまいとますます腰の動きを激しくして総一郎に刺激を与えようとしてくる一葉。

目の前で繰り広げられるその背徳的な光景と快楽に総一郎の精神はみるみる削られていき、なんとか持ちこたえてきた肉体もその快楽に屈してしまいそうになっていた。

「お兄様っ、お兄様ぁ! ああっ……、ふあぁっ……、お兄様のおちんぽ、……大きすぎて、気持ちよすぎて……一葉は、もう、もうイってしまいそうですっ!」

一葉は陶然とした表情を浮かべ、身体をがくがくと震わせながら総一郎の上で飛び跳ねるように動き続ける、一層締め付けを強め絶頂に導こうとするその動きに総一郎はくぐもったうめき声をあげてしまい、その声を聞いて一葉は表情をますます蕩けさせていく。

そして必死に堪えてきた総一郎の肉体も結合部から伝わる、脳を焦がすような快感に翻弄され自らの限界が迫ってくるのを感じていた。

「あ、ああっ……総一郎さんっ! わ、わたしも、逝っちゃいそうです! 淫乱なわたしが逝く所を、あっ、あああっ、みて、見てくださいっ、ふあああぁっ!!」

「はっ、はっ、ああっ……、い、良いんですよっ、か、一葉と、一葉と一緒にいきましょうっ! あああっ、も、もう駄目っ! イく! イっちゃますっ! お兄様ぁ! あああああああーーーっ!!」

「んんーーーっ!!」

二人の絶頂の叫び声が響き渡り、一葉の膣壁の捻り切られるようなその締め付けに総一郎のペニスが膨張し、射精の快感と共に一葉の子宮にどくどくと精液をぶちまける、同時に一葉も腰を押し付け身体をびくびくと痙攣させて総一郎の上体にもたれ掛かって来る。

「――――!?」

そしてその暴力的な快感と同時に総一郎は自分の霊力が吸い取られていくのを感じていた、それは苦痛ではなくこれまで感じたことの無いような甘い快楽、腰を押し付けたままの一葉にどくどくと注がれていく精液と霊力、その圧倒的な快楽に意識が飛びそうになる。

一葉の膣内は精液を搾り取るように収縮を繰り返し悦んでいるかのようにひくひくと震え、うっとりと中空を見つめる一葉はその絶頂の余韻に浸っているようであった。

「あはぁ……、す、すごい、……やっぱり本物は良いなあ……」

「か、か、一葉ちゃん! 次は私も! 私も!!」

そして自らの身体を弄って自慰をしていた晴菜も、もう待ちきれないとでも言う様に余韻に浸っていた一葉の元に詰め寄る。そしてそのままぐったりと総一郎に倒れ掛かっている一葉の身体を後ろから持ち上げると、もともと軽い一葉の身体は簡単に宙に浮いてしまう、繋がったままだった性器同士が粘り気のある水音とともに離され、一葉の股間からどろりと精液が垂れ落ちていく。

「もー、三郎はせっかちだなー」

太ももを両手で抱えられ幼児に小水をさせる時のような格好をさせられた一葉は、抱きかかえている晴菜の方を向くとやれやれといった様子で彼女を見る。

「も、もう、この身体が火照っちゃって……、我慢できないみたい、すごいよこれ、晴菜ちゃんのオマンコ、ひくひくいっちゃってるし」

晴菜は抱きかかえていた一葉を床に下ろすと、熱にうなされたような顔でふらふらと総一郎のもとに歩いていく、そして固さを失いつつある陰茎に吸寄せられるようにその艶やかな唇を近づけ、大きく口を開けてその肉棒をしゃぶりはじめる。

「ん……、じゅる……ほういひろうさん……、んちゅ……、じゅぶ……つぎはわらひれすからね?」

熱心に総一郎の物に舌を這わせ、清楚な顔を上気させながら晴菜はそう言ってうっとりと微笑んだのだった。












「あっ、あっ……総一郎さんっ! わたし、わたしっ、ま、また逝っちゃいますっ!! あっ、んっ、んんんんんんーー!」

既に何度目になるか判らない絶頂を迎え、焦点の定まらない瞳であらぬ方向を見つめた晴菜はソファーからぐしゃりと倒れ落ちるとそのまま動かなくなった。

隣では順番を待っていた一葉が虚ろな笑みを向けながらゾンビのように近づいてきて、何故かいまだに固さを失わない総一郎の肉棒の上に跨るとゆっくりと腰を下ろしていく。ずぷりと肉棒を差し込みゆるゆると動き始めた一葉もすでに体力の限界に近いらしく、力なく上下動する彼女の身体はふらふらと頼りなく揺れていた。

濃密な情事の匂いに部屋中が満たされ、車通りも少なくなり静けさを増した事務所の一室に力なく喘ぐ彼女達の声だけが響いている。

総一郎の身体も絶え間なく続く快楽の拷問にすでに精力も霊力も底をつき、抵抗する事も諦め、二人になされるままになってしまっていた。

「い、いま……何回目だっけ……?」

「んっ、あっ……、わ、わかんない……、んっ、ん……、あふぅ」

床にうつ伏せになって一葉の方を眺めていた晴菜はぐったりとした表情で問いかける、既に着る物を全て脱ぎ去り素肌を余す所なく見せていた肉体にはいたるところに精液が付着していてその行為の激しさの跡がありありと見て取れる。

「一葉ちゃんが、限界までやってみようぜって言うから、俺、じゃなくて私、あ、ああ、もうどっちでもいいや……」

「あ……、ん、あふ……、一葉も、もう、……だ、め、かも……、んにゅー」

そのまま電池の切れた玩具のようにべちゃりと総一郎の胸に倒れこむ一葉、そして三人の中で最後まで動いていた一葉もついに動かなくなり、ようやく訪れるはずの静寂は一葉が倒れると同時に開かれた応接室のドアの音によってもろくも崩れ去ることになった。

「こーんばーんわー!!」

バターンと激しい音を響かせて開かれたドアの向こうには、それぞれ別の制服に身を包んだ二人の少女が笑顔で立っていた。

「はじめましてー、御子柴ほのかオリジナルでーす、もー、総一郎さんったらいくら私が可愛くて魅力的だからって、私のコピー人形を作っちゃうとか酷いんじゃないかな、どうせ如何わしいことに使ったんでしょ? 言わなくても分かっちゃうよそういうの? このエロ退魔士め!」

「そうです、総一郎様、私の身体を使っておきながら、二穴責めでアヘ顔晒していきまくったぐらいで私の身体から出て行ってしまうだなんて、少し修行がたりないのではないでしょうか、もう一度この身体を使ってじきじきに訓練して差し上げますから……、って、あらら?」

「……」

勢い良く部屋に押し入って、そう捲くし立てた御子柴ほのかと早乙女千鶴の二人はまるで反応の無い三人を見ると、恐る恐る近づいていき倒れている三人の様子を覗き込む。

体中から色々な液体を垂れ流しその白い素肌にに生臭い粘液をこびり付かせながら、力尽きたように倒れている二人。瞼は辛うじて開いているもののその瞳はあらぬ方向を見つめたまま近づいてきた千鶴達に気がつく様子も無い。

大学生で神代探偵事務所の助手でもある成瀬晴菜はフローリングの床に裸で尻を上に突き上げたまるで尺取虫の様な格好で倒れており、性器と肛門から精液を垂れ流しながら時折腰をびくびくと震わせていて、ソファーの上では総一郎の妹の神代一葉が虚ろな笑顔を浮かべ何かうわ言の様なものを呟きながら兄の身体の上に覆いかぶさるように倒れていた。

「うわぁ……」

「……、これは酷い……、ここまでやれとは言ってなかった筈ですが」

千鶴(一郎)は晴菜達の頬を軽く叩いて反応を見てみるものの、気だるげな唸り声を上げるだけで動こうとしない、はぁ、と大きなため息をつきいまだ意識の戻らない二人をずるずると引っ張っていき対面のソファーに寝かせると同じようにして気を失っていた総一郎の元に歩いていき、その様子を観察する。

「……どうやら気絶しているみたいですね」

「でも、この人まだ勃ったままだよ?」

近づいてきたほのか(四郎)がしげしげと総一郎の逸物を見つめ不思議そうに問いかけてくる。

「ああ、術を使ったんでしょう、普通の人間は勃ったまま気絶したりはしません」

「そっかあ、でもどうしようね、この惨状、一郎兄ちゃんは確か話し合いに来たんでしょ?」

「ええ、でもこの様子じゃさすがに無理みたいですね、日を改めるしかなさそうです……」

「んー、折角皆を驚かせようと思って電車を乗り継いでここまで来たのに、これじゃ無駄足だったねー」

聖心学園の物とは違う爽やかな青色のセーラー服の上から身体を触りながら、ほのかは残念そうに三人の姿を眺める。そうして千鶴に一旦帰ろうかと話し掛けようと後ろを振り向くと、なぜか千鶴が自らの学生服を脱ぎ始めていた。

「あれ? 兄ちゃんなんで脱いでるの?」

「折角ここまで来たのですから、何もせずに帰ると言うのは勿体ないでしょう?」

「え? でも探偵さんは気絶してるよ!?」

「勃つものさえ勃っていれば十分使えるじゃないですか」

「うわー、ドSだよ、ドSがいるよー」

「ふふ、なんなら、四郎はそこで終わるまで待っていても良いんですよ?」

「いやいや、やらないとは言ってないよ! 勿論やるよ! 元々そのために来たんだし!」

そう言うとほのかも勢い良くセーラー服を脱ぎ捨て、あっという間に全裸になる。

「……では参りましょうほのかさん」

「おっけー、千鶴ちゃん!」

二人は元来の少女達の口調に戻ると、気を失ったままの総一郎に勢い良く飛びついていった。











私立探偵、神代総一郎を襲った悪夢のような事件から数日後、神代探偵事務所の応接室ではソファーに座り静かに紅茶を飲む一人の客の姿と、その客を最悪と言っても差し支えないほど不機嫌そうに睨みつけている彼の姿があった。

「……、で、よくもまあ、のこのことその面を見せに来られたものだな」

「ええ、意外とお元気そうで安心しました」

からりと晴れた心地よい秋の昼下がり、外の爽やかな陽気がまるで嘘の様に重く張り詰めた空気の中、先程事務所に訪れた客、遠野一郎はそう言って睨みつける総一郎の視線を涼しげに受け流し、ニコリと微笑んだ。

落ち着き払った態度の一郎に対して、事務所の主である総一郎は敵意をむき出しにし今にも目の前の人物に掴み掛かりそうな勢いで睨みつけている。

「元気そうで安心した……だと? お前、本気で言ってるのか?」

「はい、こうして無事に話し合いの席に付く事が出来ましたし、双方とも被害が無くて何よりです」

「ふざけるな、お前が、お前達がしたことを忘れたのか! 晴菜達を操りその身体を汚した、記憶と痕跡を消したからといって許されると思うな!」

「総一郎さん、……私はあの時の事を許して貰うつもりはありませんよ、そして反省するつもりもありません、私は今でもあれが最善の策であったと自負しています」

あくまで表情を崩さずそう言い張る一郎に対して、ぎりぎりと歯を食いしばり総一郎は今にも殴りかかってしまいそうな自分を抑えるかのように身体を震わせる、すでに周りの空気は痛いほど張り詰め、僅かのきっかけでも弾けてしまうのではないかと言うほどの緊張感に包まれる。

「はっ、所詮は化物という事か、聞くだけ無駄だったな」

その全く動じない涼やかな口調に苛立ちを感じたのか、総一郎はそう言って相手を侮蔑するような笑みを向ける。

「総一郎さん、一つ勘違いをしていらっしゃるみたいなので言っておきますが、貴方は私達を退治、いや、言い方が悪いですね、貴方は私達を殺そうとしたのです、だから私は大切な家族を守る為に最善を尽くした、これの何処に反省する余地があるんですか?」

「しかし、だからと言って晴菜と一葉の身体を弄んでいいという口実にはならない!」

「いいえ、違います、もしあの時あの二人の身体を借りて貴方の霊力を奪うことができなければ、こうして話をすることすら出来ずにいまだに私達は命の危険に晒されていたでしょう、殺す覚悟を持つのなら、殺される覚悟もすべきです、もちろんそれは貴方だけではない、貴方の身内も含まれるのですよ? 失敗しても自分だけが犠牲になればいい、などと言う甘い考えが通用する世界で無いことは貴方も知っているはずです」

「……ぐ……」

「被害が無いと言ったのはそう言う事です、事実貴方も私もいま生きてここに居ますし、貴方の大切な人たちも無事です。これ以上の成果がありますか? それとも貴方の体調が万全の時に対話を求めたら応じてくれていたとでも言うのですか?」

「……それは」

口を濁す総一郎に対して一郎は畳み掛けるように次の句を告げる。

「言わなくても分かります、貴方達は妖怪の話など聞いたりはしません、見つかったら最後、問答無用で殺される。今や力で劣る私達がその状態で出来る事はほとんどありません」

「……」

「貴方も大切な人が居るのなら分かるでしょう? 私は私の兄弟を守るためなら何だってしますよ、どんな汚く残酷な策であろうが躊躇はしません。総一郎さん、私達の命をどうか軽く見ないでください、私達だって仲間が殺されれば悲しむし、そして恨みもします。だからこそそのような憎しみの連鎖を招きたくは無かった、……わかって頂けますか?」

――沈黙。

言い返す言葉が見つからず、総一郎はやり場の無い怒りをぶつける様にただ拳をぎりぎりと握り締める。つい先日まで彼の敵であった遠野一郎は言葉を言い終えると紅茶を一口飲み、そのまま返答を待つかのようにまっすぐと総一郎を見つめる。

じっと言葉を待つ一郎、ここが正念場であることを感じているかのように二人は沈黙したまま喋らない。張り詰める緊張感の中、古ぼけた時計の針の音だけが僅かにその音を響かせる。

「……もう……いい、早く用件を言え……」

沈黙に耐えかね、ついに総一郎の方が折れる。

「分かってくれたようで何よりです、では単刀直入に申し上げますが」

「……」


「私達の仲間になって頂きたい」


「はぁ!?」

座っていたソファーから思わず腰を浮かせるほど驚いた総一郎は、相手の正気を疑うかのような視線を目の前の人物に向ける。

「あー、仲間と言いましても、妖怪になれとかそういう意味ではなく、外部の協力者という立場で私達の依頼を引き受けて貰いたいのです、無論強制ではありませんので忙しいときは断っていただいても結構ですし、今まで貴方が引き受けてきたような危険な仕事もありません」

「お、おまえ、正気か……それともただの馬鹿なのか……? 冗談にしては笑えないぞ」

「失礼な、私はいつでも大真面目ですよ?」

「そんな話を、俺が引き受けるとでも思っているのか?」

「……ええ、それはもう、総一郎さんならきっとこの話を受けて頂けるであろうと確信しています、ところで、総一郎さん、貴方は現在、本業である探偵業の傍ら退魔士として宗家から依頼を請け負っていますよね」

「……ああ、だがそれが何の関係がある」

「ええ、ありますとも。総一郎さん、この際はっきりと言いましょう、貴方は本当は退魔の仕事などしたくは無いのでしょう? それに貴方は本来退魔業からは引退した身、山を下り事務所を設立して探偵業を営み始めたのも宗家との関係を完全に断ち切りたかったからだ、しかしいまだに貴方はいまだに彼らからの依頼を受け続けている、それはなぜか」

「……」

「失礼ですが、総一郎さんのことを少々調べさせてもらいました、この事務所が設立する為に掛かった資金やその後の収支、それらが楽観できる状態でないことは既に理解しています、そしてそんな状況を改善するため貴方は一度は縁を切った宗家からの依頼を渋々こなしている、しかしそれは矛盾しているのです」

「本当は貴方は平和な生活がしたい 大事な人と平穏な暮らしを望む、それは素晴しい事です。総一郎さん、貴方はもしかしたら経営が軌道に乗るまでの間のつなぎとして退魔の仕事を引き受けていたのかもしれませんが、それは大きな間違いですよ?」

「お、お前に一体何が分かると言うんだ、それに間違いだと?」

「最初は順調だったこの事務所も、この所さっぱり客足が途絶えている、それは貴方の能力が劣っていたからではありません。妨害されていたのです。他でも無い貴方の実家、退魔士の宗家である神代家によって」

「なっ!?」

「少し考えれば分かることですよ、総一郎さん、貴方は引退したとはいえ優秀な退魔士であり、宗家の跡取り候補でもある、貴方は貴方が思っているよりもはるかに重要な人物だ、説得が駄目と分かれば搦め手の一つや二つ使って来ていると考えても不思議ではないでしょう?」

「そんな……、まさか……」

「事実、このままではこの事務所が立ち行かなくなってしまう事は貴方自身が一番良く分かっているはずです、そうなるとそう遠くないうちに貴方は宗家に戻る羽目になってしまうでしょうね、それだけは避けたい筈です、そこで、私達の出番と言うわけです」

「私達の提案を受けてくだされば左団扇とはいかないまでも、事務所の維持をするぐらいには十分な量の報酬を約束できます、どうです、その気になってきましたか?」

「…………一つ、聞きたい」

「はい、何でしょう?」

「どうして俺をそこまで信用する?」

「……ふむ、もっともな質問です。そうですね……、正直に言いますと、私は個人としての貴方にそれほどの信用をしていません」

「では、なぜだ?」

「信用しているのは、貴方には守るべき人たちが存在すると言うその事実です。貴方は貴方の大切な人たちを守るために努力してきた、その努力を私達は評価する。だからこそそんな貴方をみすみす奴らの策に嵌めさせるわけにはいかない、貴方を再び戦いの場にいざなおうとする彼らに渡すわけには行かない。それにこれは貴方達の為だけではなく私達の為でもあるのです、正直優秀な退魔士は一人でも少ないほうがいいですからね」

「……俺に、……裏切れと言うのか」

「まあ、端的に言うとそういう事になりますね、その辺は覚悟を決めてください、ちゃんと考えた上で決めて頂けないとこちらとしても困ります」

「……もう一つだけ聞きたい、これで最後だ」

「ええ、どうぞ」

「……二年前の事件、覚えているか?」

「ええ、勿論」

「お前達が戦いを回避していると言うのなら、何故あんな事が起こった? それを教えてくれないか」

「……そうですね、順を追って話しましょうか。総一郎さん、貴方に依頼する仕事の内容にも関わることですし」

「……」

「まず、依頼しようとしていた内容ですが、貴方には各地の大妖怪が封印された場所を定期的に見回り、封印が解けないように監視、もしくは結界の綻びの修復をして欲しいのです」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、どういうことだ? それは本来俺達の役目だろう、何故お前達がそんなことをする?」

「それは二年前の悲劇を繰り返さないためです」

「意味が分からない、強い妖怪が復活すればお前達のプラスになるんじゃないのか」

「いいえ、むしろ逆です、奴らが蘇る事は私達にとって不利益でしかありません、……うーん、そうですねえ、簡単に言ってしまうと古いんですよあの人たち、考え方というか様式というか。そのうえ強大な妖力を持っているものだから私達の話を聞かない、いくら時代が変わったと説明してもまるで理解しようとしない、そしていまだに人間を力で支配できると思い込んでいる。そんな奴らなんです」

「貴方達が本来の使命を忘れ、権力闘争に明け暮れている間、私達は密かに各地の封印の監視をしてきました。しかしどうしても監視が疎かになってしまう地域がありました、それが総本山のある場所の目と鼻の先、そして二年前、封印が解かれたあの場所でした」

「流石に私達でも定期的に敵の本拠地でもあるその場所にに向かうのは難しく、監視体制がおざなりになってしまっていたのは否定できません、それに半分ぐらいは彼らを信用していたのでしょうね、まさか宗家のお膝元で封印の綻びが見逃される訳が無いと」

「だからこそ封印が解かれてしまったと聞いたときは驚きました、私達はすぐに現地に向かいましたが、もう既に遅かったのです。説得しようとしていた私達の仲間は食われ、騒ぎに乗じて暴れようとする血気盛んな奴らや、まだ若くなにも知らない妖怪たちが身の程も知らずその大妖怪の復活と共に好き勝手に暴れ始めました、大妖怪はそのまま恨み心頭とばかりに本山に攻め入り、貴方達を皆殺しにしようと壮絶な戦いを始めた」

「……、あとはご存知の通りです、結局その大妖怪は退治され、双方に多大な犠牲を出してこの事件は終結しました。……ふぅ、とまあ、大体こんな所でしょうかね、なにか分からない所はありますか?」

喋りすぎて喉が渇いたのか既にぬるくなっている紅茶を一気に飲み干すと、一郎は大きな息を吐いてソファーに身体を預けた。

「…………それは、……本当なのか?」

じっと話を聞いていた総一郎は下を向いたままじっと床を見つめ震えている。その顔は泣いているようにも笑っているようにも見えるとても奇妙な表情をしていた。

「こんなことで嘘をついてどうするんです、って、総一郎さん!? 泣いてるんですか?」

「く、くくく、あはははは、……いや、あんまりにも可笑しくて笑っていただけだ……、そうか、そういうことか、はは、ははははは」

手のひらで顔を隠し、顔を下に向けながら表情を悟られないように奇妙な笑いを続ける。そしてひとしきり笑った所でその顔を上げ、背もたれに勢い良く体を預ける。

「おかしな人ですね……、まあ良いです。総一郎さん、貴方の霊力が回復するまであと数日は掛かるでしょうから、その前にもう一度寄らせてもらいます。返事はそのときに聞きますので」

「いや、いい」

「……? といいますと?」

「お前達の話を受けよう」

「……良いんですか? 後悔するかもしれませんよ?」

「構わない、後悔など既に腐るほどしてきた、今更一つや二つ増えてもどうと言う事は無い」

「……ふむ、分かりました。では総一郎さん」

そう言って遠野一郎はゆっくりと手を差し出す。

「では、これから貴方も私達の『仲間』です」



「よろしくお願いしますね」






エピローグ 現代妖怪のためのリスクマネジメント






「一郎兄ちゃーん、一郎兄ちゃんってばー」

「何ですか騒々しい、もう少し静かに出来ないのですか」

古ぼけたテナントビルの三階、妖怪生活互助組合の事務所の一室で所長の遠野一郎がいつもの様に事務仕事をしていると、二人の弟がなにやら構ってもらいたそうな仕草でまとわりついてきていた。

「なあなあ一郎兄ちゃん、ちょっとこの前のことで分からない事があってさー」

「ほう、なんです?」

キーボードを叩いていた指を止め、ちらりと二人を見る。

「あの日、俺らは二手に分かれてほのかちゃんの偽物とそれを操っていた総一郎さんの所に行ったじゃないか」

「ええ、それが何か?」

「でもさ、それって昼の時点で偽ほのかちゃんを操っているのが総一郎さんだって分かってたってことだよね?」

「ふむ、お前達にしては意外と良い質問ですね」

「うわ、褒められた、うぅ、兄ちゃんが俺達の事を褒めるとか、ありえなすぎて逆に怖くなって来た……」

「お前達……、まあ、いいでしょう。二郎に三郎? あの時私はあの術の説明をする際に式神は釣り餌の様なものと言いましたよね」

「うん」

「あれはですね、正確には餌というよりは『ルアー』だったんですよ」

「……? ごめん兄ちゃん意味がわかんないや」

「ふむ、ではもう少しヒントをあげましょう、あの御子柴ほのかというルアーはとても高価な代物なのです」

「あー!」

「三郎は分かったみたいですね」

「うんうん、そっかー、なるほどなー」

「え? なんだよ三郎! 教えろよー」

「三郎、教えてあげなさい」

「ふっふっふ、二郎兄ちゃん、つまりあれだよ、総一郎さんが使っていたルアーは高級品すぎて使う人が殆どいないんだ、だから釣り人が見えなくても使ってる道具でその人が誰なのか大体想像できちゃったって訳」

「その通りです、三郎、ご褒美に撫で撫でしてあげましょう」

「わーい、わーい」

「……うう」

頭を撫でられて悦ぶ三郎と、それを悔しそうに眺める二郎。

「三郎の言った通り、あの式神は今の術者の中では使える者が一握りしかいない高度な術です、さらに捕縛するというその術の特性上、術者は式神の近くに居る必要があります」

「しかし学園内には御子柴ほのかの他に怪しい生徒や教師が編入している形跡はなかった、それはつまり学園内の誰かの身体に乗り移っていると言う事、そしてその術ですら今ではほとんど使える術者が居ない、わかりますか?」

「うん、あとはその二つの術を両方使える人を探すだけで良いんだね?」

「ええ、私達のデータベースには術の種類と使用できる人物がまとめられていますからね、すぐに分かりましたよ」

「うぉー、こえー、情報社会こえー」

「以上が答えです、納得できましたか?」

「うん、ありがとー、一郎兄ちゃんおかげですっきりしたよ」

「あ、……あともう一つ聞いていい?」

「何ですか?」

「兄ちゃんの机の下から女の子の足が見えるんだけど、どういうこと? なんか水っぽい音もしてるし、もしかしてフェラでもさせてる?」

「あー、これはいいのです、そのうち説明しますから二人とも早くテツさんの所にいって報告をしてきなさい」

「むー、きになるなー、まあ良いけど」

「じゃあ、行ってくるよー」

「はい、行ってらっしゃい」











「一郎兄ちゃん、一郎兄ちゃーん」

「はぁ、今度は四郎ですか、一体どうしたんですか?」

騒がしい二人の弟を使いに出した事によりようやく静けさを取り戻した事務所の一室で一郎がキーを叩いていると、しばらくして少し遠慮がちな視線を向けた末弟の四郎が入ってきた。

少し俯きがちに顔を伏せた四郎は、何か兄に言いたいことでもあるのか、一郎の顔色を伺うように話しかけてきた。

「うん、一郎兄ちゃんに聞きたいことがあってさ」

「……、今日は良く質問をされる日ですね、まあいいです、……それでなんですか?」

「あのね、総一郎さんの事なんだけど」

「ええ」

四郎は口に出して良いのか少しだけ迷うように一郎の顔を伺うと、意を決して一郎に問いかける。

「……本当に仲間にしちゃって良かったの?」

「……」

「兄ちゃんなら他に幾らでも楽な解決方法があったと思うんだ、でもなんでこんな危険な橋を渡ってまで総一郎さんを勧誘したのかなって」

おずおずと兄を見つめる四郎、一郎は少しだけ沈黙したあと顔を上げると、飄々とした何時もの表情に僅かに真剣なものが混じる。

「……四郎、母様の遺言を覚えていますか?」

「忘れるわけ無いよ、『人間を本気にさせてはいけない』でしょ?」

「……その通りです、四郎、実はですね、今回、私達がこの事件を無事に解決する方法はは二通りしかなかったのです」

「えっ!? そうなの?」

「一つは学園を放棄して逃げ出す事、もう一つは敵である神代総一郎を仲間に引き込む事、その二つです」

「ええええ!?」

「彼、神代総一郎は引退したとはいえ宗家の跡取りでもあります、強引な方法で彼を退けていた場合、かならずやその事実は宗家の長老たちの耳に入ります」

「でも、あの人たちって身内争いで忙しそうだし、そんなことで動いたりしないんじゃないの?」

「いいですか四郎、彼らは面子を潰されるのを何よりも嫌うのです、他家との権力争いの中その様な情報が耳に入れば確実に政争の具にされるでしょう、そうすると流石の彼らも重い腰を上げざるを得なくなる、失敗した彼は口封じをされ、私達は宗家の面子を潰した敵として認識される」

「……そんな」

「しかし、幸いと言っていい事に、神代総一郎、彼を仲間にすることはそれほど難しい事ではありませんでした、彼の助手である成瀬晴菜、そして妹の神代一葉、彼に関わる人物の殆どは彼の退魔士としての仕事を良く思っていなかった、そして彼自身もまた戦いをやめ平和な生活をすることを望んでいた」

「それならば、彼が望まぬ戦いをし続けている理由を探し出し、問題を解決してやればいい」

「ふえー、そこまで考えてたんだ……」

「いえ、ここまでは簡単なのです、問題はここからです」

「問題?」

「ええ、実は今回の作戦において最大の障害であったのは他でもない、宗家の退魔士見習い、早乙女千鶴の存在だったのです」

「ええー!?」

「彼の身近にいる人物の中で彼女だけが完全に宗家側の人間です。そして彼を退魔士として復帰させたいと心の底から願っている。故に彼女を放置したまま神代総一郎を仲間に引き入れても必ず何処かで何らかの綻びが生まれていたでしょう」

「え、じゃあ、一郎兄ちゃんはどうやって解決したの?」

「堕としました」

「堕としたぁーー!?」

「……千鶴、もう良いです、出てきなさい」

「んん……、ちゅぷ、……はいぃ、あるじさまぁ……」

「なんだってーー!?」

驚きの表情を浮かべている四郎を余所に、机の下から這うように出てきた一人の少女。

艶やかな黒髪を後ろで束ねたポニーテールは活発な印象と言うよりもむしろ女剣士の様な凛々しさを感じさせ、切れ長の瞳に整った鼻筋、一度見たら忘れないであろうその端正な顔立ちは確かに四郎もよく知っている彼女の姿、宗家の退魔士見習い、早乙女千鶴その人だった。

しかし、意志の強さを感じさせるその睫毛は今やだらしなく垂れ下がり、きりりと引き絞られていた筈の口は半開きのまま、うっとりと一郎のことを見つめるその瞳には情欲の色が色濃く映し出されていた。

「ど、ど、ど、どういうことなの!?」

「四郎、この娘、早乙女千鶴が今回の調査の時、自ら進んでその身体を差し出したのは何故だか分かりますか?」

「えっ? んーと、使命感が強かったからとか?」

「いいえ、それも少しはありますが、本当はこの早乙女千鶴という娘は、自分が支配されるということに悦びを感じていたのです」

「な、なんですとーー!?」

「被支配願望とでも言いましょうか、何かに従属して依存することで安心感と喜びを得る、それが彼女の本質だったのですよ」

「ちょ、ちょっと待って、今、頑張って理解しようとしてるからっ!」

「彼女は無意識の内に自分が依存できる対象を探していた、それは宗家という組織でもあり、また自分の師匠でもあった神代総一郎にもその心は向けられていた、今回、自分の身体を躊躇無く差し出し、調査に使うように提案してきたのもその彼女の本質が現れただけに過ぎません」

「もう僕、びっくりしすぎてふらふらしてきたよ……、うん分かった、あれだね千鶴ちゃんはいわゆるドMなんだね」

「まあ、簡単に言うとそうですね、ですから千鶴にはこの数日間、彼女にとって本当に相応しい主人は誰かと言うことをたっぷりと教えてあげました、……そうですね千鶴?」

「はいぃ、主様……、千鶴の主様は一郎様だけですぅ……、あぁ、主様ぁ……」

まるで主人の命令を待つように犬のように這いつくばったままだった千鶴は一郎の言葉に蕩けるような笑顔を見せて従属の言葉を口にする。

「千鶴? お前には私の魂の一部を入れました、これからお前はお前の意思に関わらず、例え何処で何をしていようが、何時いかなる時でもその身体を私に支配され、好き勝手に使われてしまうのです、どうです嬉しいでしょう?」

「は、はい! ありがとうございます主様、千鶴は嬉しいです!……、千鶴は主様の物ですからいつでも好きな時に私の身体を使ってくだ……ぁ、……と言う事ですよ、分かりましたか四郎?」

恍惚とした表情で従属の言葉を口にしていた千鶴が突然表情を変え立ち上がる、そして制服についたほこりを手で軽く払うとニヤリとした笑みを浮かべ四郎を見る。

「……ねえ、一郎兄ちゃん」

「なんですか」「四郎?」

「んとさ、いつも一郎兄ちゃんって自分が一番の常識人だって言ってるけど」

「ええ」「勿論じゃないですか」

「僕ら程度じゃまだまだ甘いなってことが、今回の事で判ったよ……」

「失礼な」「どういう意味ですか」

交互に喋る二人のことを見つめた四郎は一つため息をつき、言葉を繋ごうとしたその時。

「たっだいまーー!」

事務所のドアが激しい音と共に開かれ、十代半ば位の可愛らしい二人の少女がぴょんぴょんと飛び跳ねテンション高く部屋に押し入ってきた。

「一郎兄ちゃん見てくれよこの子、すげー可愛いだろ! しかもこの巨乳! しかも揉み心地も最高なんだぜ、ほら揉んで見てよ」

「いいや、この子の方が一郎兄ちゃんの好みだね! どうよこの優しそうな顔に清楚な白いワンピース、まさに深窓の令嬢って感じじゃないか!」

「って、あれ? なんで千鶴ちゃんがここに!?」

自らの身体をうれしそうに撫で回しながら近づいてきた二人の少女に一郎は大きくため息をつき――

「お前達、そこに座りなさい……」


と、言って、いつものお決まりのポーズで頭を抱えたのだった。


都心のはずれの寂れたテナントビルの3F、妖怪生活互助組合第七支部。

遠野一郎を長兄とする四匹の狐の妖怪は明日を生き延びるために、がんばったりがんばらなかったり、泣いたり笑ったり、喧嘩したりじゃれ合ったりして、今日もまた騒がしい一日を過ごそうとしていた。








エピローグのエピローグ







「あ、あ、あのっ! 私っ、私を演劇部に入部させて貰えないでしょうかっ!」

私立聖心学園を舞台にして行われた人間と妖怪の小さな戦い、誰にも知られずひっそりと幕を下ろしたあの事件から一ヶ月。

文化部棟の一階にある演劇部の部室では一人の生徒が一枚の紙を両手で掲げながら精一杯の勇気を振り絞り叫んでいた。

二つに結った髪を前に垂らしたお下げ髪の少女、一年生の羽崎すみれはいつもなら泣いて逃げ出してしまいそうな沢山の上級生たちの視線の中、俯きながらではあるがそれでもしっかりとその場に踏みとどまり両手に持った入部届けをその頭上に掲げていた。

「すみれ、決心したんですね……」

顔を真っ赤に染め、足を震わせながら演劇部の部長にその紙を渡す彼女。

決意に満ちたその姿を驚きと共に見つめていた親友の大河内葵は目を少しだけ潤めて俯いたままの彼女の元に駆け寄った。

引っ込み思案な彼女がこの場に立っていることがいかに難しく、そしてどれだけ価値があることか、そのことを一番よく知っている葵は彼女が踏み出した一歩を賞賛し、精一杯祝福する。

「ええ、勿論です、すみれちゃん。これからよろしくお願いしますね」

先週、新部長に就任したばかりの久世綾乃はいつもの上品な仕草でその入部届けを受け取り、俯いているすみれに膝を下ろして視線をあわせると穏やかに微笑んだ。



「……なるほど」

事の一部始終を廊下からそれとなく観察していた早乙女千鶴は、一言呟くと静かに踵を返す。

あの日起こった事件の詳細を千鶴は一郎から全て聞かされていた、自分が自らの身体を捜査に提供している間この学園で起こった事、一郎とその弟達が乗り移った少女達、千鶴は主である一郎の命令でその後の影響を見回っていた。

長い廊下を足音を立てずに歩きながら、千鶴は自らの任務に思いを馳せる。

実はああ見えて主様は意外とお優しい所があるのだ、事件の痕跡を調査しろという命令であったがその裏には被害者たちを気遣う心が僅かに見え隠れしている。その事をいまの千鶴には理解できる、主様のこの心の機微、きっと弟御達には分かるまい。

「ふふふ……」

自然に笑みが漏れる、主と繋がっている自分だからこそ分かるその感情、千鶴は僅かな優越感に口元を緩めてしまっていたことに気がつき、気を引き締めなおす様に頬を手で叩く。

あれから一ヶ月、何も影響の無かったように思える学園内だが、注意深く観察すると千鶴の記憶とは少しだけ違うこの事件の後遺症の様なものをあちこちで感じることが出来た、そしてそれは微かな変化ではあるが事件に関わった彼女達に確かに現れていた。

千鶴のクラスメイトの久世綾乃、三条夕子、新島結花の三人はあの日以来少しだけその関係に変化が現れた、元々仲の良かった彼女達はここ最近更に仲が良くなり何処に行くにも一緒に行動する三人の姿を見ることが出来た、厳格で融通の効かない風紀委員長の雨宮鈴音はこの所少しだけ角が取れ、時折そのクールな表情に可愛らしい笑みを見せるようになった。

ただ、休み時間ごとに鈴音に纏わり付いて来る新聞部部長の如月沙耶香は時たま妖しげな視線を彼女に向けているし、生徒会長の新宮寺水蓮はやたらとテンションが高くなった。

それが良い事なのか悪いことなのか、千鶴には判断できない、一番変わったのは何よりも自分自身だからだ。

千鶴は、ほぅ、と一つため息を吐く、主様、自分の仕えるべき方。胸に手を当てると僅かに感じられる主の魂、本当はすぐにでも学生など辞めて主様の所に行きたい。

二十四時間、いつどのような時でもお傍で仕えたい。主様の近くに居たい。

その心の内を主様の弟御に話したこともある、『千鶴ちゃん重い! 重過ぎる!』と言われその時は存分に呆れられたのだが、主の側に従者が居る事がそんなにおかしな事であろうか。

幼い頃、分家の長女として人質のように本家に連れてこられ、そのまま幼少期を過ごした彼女は、退魔士としての才能が乏しいとわかるや否やこの聖心学園という鳥篭に囲われた。

それでも努力家の千鶴はそんな境遇にもめげず、空いた時間を見つけては山に登り訓練を続けてきた。しかしその努力は実を結ぶ事無くいまだ見習いという肩書きが自分に張り付いたままで、お家の人質としてしか価値の無い、そんな自分に無力感を感じていた。

師匠として慕っていた神代総一郎も宗家を捨てて山を下り、たまに使い走りの様な事だけをやらされるだけの自分、結局誰も私を必要としてはくれなかった。

既に宗家に未練は無い、何故なら私は本当の主を見つけたのだ、私は私を必要としてくれる場所に行く。

「……ふぅ」

大きく息を一つ吐く、時刻は既に放課後、寮の門限までの僅かな時間ではあるが、私は帰ろう、私の場所へと。




「あーるーじーさーまー! 千鶴は只今戻りました!」

毎回の如く乱暴に扱われ、蝶番が緩んできているのではないかと思われる事務所の扉は、今回もまたバターンという激しい音と共にその悲しい役目を全うする事となった。

飛び跳ねるように事務所に入ってきた千鶴は自らの主の姿を視界に納めると、そのまま勢い良く抱きつきごろごろと猫の様な声を上げながら纏わり付く。

「あぁ、主様……、主様ぁ……」

そのまま愛おしそうに首筋や頬にキスをする千鶴。

「あは、主様の味だぁ、ふふ、もっとしていいですか主様?」

ゆるゆると下半身に伸びてきた彼女の手を制止し、事務所の主、遠野一郎は少し疲れた表情で言葉を洩らす。

「えーと……、千鶴? ……ちょっと聞いても良いでしょうか?」

「はい! 何でしょうか!」

「貴方、……最近ちょっとキャラが変わりすぎなのではないですか? もっとこう、最初はクールで他を寄せ付けない、なんと言うか冷徹な人物といった感じだったと思うのですが」

「ふふ、何を仰います主様、千鶴をこんなにしたのは主様ではないですか」

ペロペロと犬のように一郎の頬を舐める千鶴の表情はすでにこれ以上無いと言うほど蕩けていて、その瞳は潤み自らの主に奉仕する喜びに満ちている。

「はあ……、まあいいです。……千鶴、ここではなんですから場所を移しましょう。ほら、来なさい」

「は、はい! 主様!」

椅子から身を起こし、一郎はやれやれといった表情でそう言うとしがみ付いたままの千鶴を連れて部屋を出て行った。



「…………なあ、二郎兄ちゃん」

「ああ」

「どう思う?」

「犬だな」

「だよな、尻尾をぶんぶん振ってるのが俺にもわかる」

「うん、僕もそう思う……」

応接室のドアから二人のやり取りを見ていた三人の弟達はじゃれ付いている千鶴を見て、ひそひそと囁きあっていた。

「ねえ、二郎兄ちゃん……」

「ん?」

「僕らってさ、狐じゃない?」

「ああ」

「狐の天敵って犬だよね?」

「……」

「一郎兄ちゃん大丈夫かな?」

「……あはは、面白い事言うなあ四郎は、大丈夫に決まってるだろ……、多分」


部屋を出て行くときの少し疲れた様子の兄を思い浮かべた弟達は乾いた笑い声を部屋に響かせるのだった。
あとがき


憑依物書きたいなあと思っていざ書き始めて見たら思いのほか長くなり、果たしてここまで読んでいる人がいるのかどうかと不安になりますが、そこのところは目をつぶりこのまま続けたいと思います。

さて、このお話、テーマは勿論憑依、余り重くなり過ぎないように軽めのノリで書いてみましたが、ストーリーの展開上少しはシリアス分を入れざるをえませんでした。

本当は弟達のパートだけ倍にして思う存分遊んでもらうのもそれはそれで楽しそうで良かったのですが、それをやると完結できなくなるかと思い、泣く泣く削った部分もあったりします。

また憑依属性一点突破ということもあり好みが分かれる所ではないかとは思いますが、もし楽しんでいただけたのならこれ以上の幸いはありません。

最後に、掲載場所を提供してくださった支援所様とこの分野の偉大なる先達様、そして最後まで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めて、ここで後書きを終わることにします。

それではまた!
正露丸憑依A
0.4570簡易評価
4.100きよひこ
なりすましは素晴らしいですね。堪能しました!
17.無評価きよひこ
千鶴を支配下に置いたのが宗家にばれてですね、また一悶着なんかあると続編が・・・w
19.100きよひこ
いや、面白かった。
また続編やスピンオフあったらお願いします!
24.70きよひこ
レズプレイばっかりだったのが残念
25.無評価正露丸憑依A
このような無駄に長い文を最後まで読んで頂くどころか、コメントまで頂き、感激に打ち震えている正露丸憑依Aです。

>なりすましは素晴らしいですね。堪能しました!

確かに素晴らしいです、大好物です。正体がばれた時のの表情の変化や、自分こそが本物だと言い張る展開、どれも夢に溢れていると思います。

>千鶴を支配下に置いたのが宗家にばれてですね、また一悶着なんかあると続編が・・・w

続編についてはまだ考え中ではありますが、千鶴はもう少し掘り下げてみたかったキャラでもあるので後日簡単な追加エピローグを加えてみようかと思っています。

>いや、面白かった。
>また続編やスピンオフあったらお願いします!

ありがとうございます、その言葉を頂けただけで嬉しくてのた打ち回りそうになります。

>レズプレイばっかりだったのが残念

今回は舞台設定的に男キャラを多く出せませんでしたが、もし次回があるのならば乱交、もしくはハーレムなどを織り交ぜて見るのも楽しそうです。町一つ乗っ取るレベルで盛大に暴れさせてみたいです、文章力さえ追いつければの話なのですが……。
29.無評価きよひこ
名作に100点
31.無評価きよひこ
個人的な希望では、総一郎サイドの勝利バージョンも見てみたいですね。

ただし四兄弟は、試合に負けて勝負に勝った美味しい展開な感じ・・・
(封印されて、その娘達自身になってしまうとか、その娘達のまま総一郎の使い魔になるとか・・・妄想が膨らんじゃいます)

美味しい作品、感謝です!
32.無評価正露丸憑依A
終わらせた話に何かを付け足すのは少し気が引けましたが、書ききれなかった分の追加エピローグを入れてみました。
もしよろしければ読んでやって下さいませ。

そしてここまで読んでくださっただけでなくコメントまで下さった方に感謝の気持ちを込めつつ返信をさせて頂きます。

>名作に100点

その様な御言葉を頂けるとは本気でびっくりです、作者冥利に尽きると言うものです。

>個人的な希望では、総一郎サイドの勝利バージョンも見てみたいですね。

>ただし四兄弟は、試合に負けて勝負に勝った美味しい展開な感じ・・・
>(封印されて、その娘達自身になってしまうとか、その娘達のまま総一郎の使い魔になるとか・・・妄想が膨らんじゃいます)

>美味しい作品、感謝です!

ありがとうございます、とても励みになります。
今回一番悲惨な目にあってしまった総一郎ですが、メタ的な観点から見て彼の敗因は『この属性に理解がなかった』の一言に尽きます。もし彼がもう少し奔放な性格であったならこの話の結末はまた違ったものになっていたかもしれません、そしてもし総一郎が勝利したとしてもその生真面目な性格を直さない限り、きっとこれからも悪戯好きの兄弟達に色々な方法でからかわれるのでしょう。 そう考えてみると妄想の余地が広がっていく気がします。
38.100きよひこ
いい憑依ですね。身体をどんどん乗っ取っていくお話は大好きです。
ぜひこの路線で続編も読んでみたいです!
40.無評価正露丸憑依A
>いい憑依ですね。身体をどんどん乗っ取っていくお話は大好きです。
>ぜひこの路線で続編も読んでみたいです!

コメントありがとうございます。
体を取り替えていく展開は本当に良い物ですよね。
この話は登場人物が多すぎたせいもあって読んでいただいた方にはさぞかし分かり辛い話だったのではないかと思っている次第ではありますが、でも良いのです書きたかったのです。
そして続編につきましてはまだぼんやりとプロットなどを考えている段階で完成するかどうかも分かりませんが、もし無事に書き終えられた場合またここに投稿させて頂こうかなと思っています。そのときにはまた読んでくださると嬉しいです。
46.100チラ
最高です!大好きです!
50.無評価きよひこ
むしろ男相手がイラネ
なんでわざわざ男相手なんかやらないといけないのだか
56.100きよひこ
なりすましは最高です。
続編をお願いします。