清彦が復学してから、更に数週間後…
「――――それでは我々は、朝の挨拶へ行って参ります!」
「え、えぇ…お願いします…ね♪」
清彦がニッコリと微笑むと、応援団のような出で立ちの彼らは、意気揚々と声を上げ、部屋を出た。
手を振って彼らを見送り、扉の向こうに彼らの姿が消えたのを確認すると…
清彦は肩を落とし、項垂れ、溜息をついた。
(…やっぱり、慣れない事は疲れるな…)
心の中で呟きつつ、背凭れに身を委ね、天井を仰いだ。
何故こんな事に…
彼らは誰なのか。それは…あの一件以来出来た清彦ファンクラブの一団である。
どうやら彼らは少しでも会長の…自分の傍に居たい、その一心に突き動かされたらしい。
『自分達に何なりとお申し付け下さい!』…と、いきなり現れての申し出。
勿論生徒会の仕事は生徒会がやるべきもの。丁重にお断りしたものの…彼らも簡単に引かず。
結局妥協案として、朝の挨拶等然程重要ではない、また人手のいる仕事を手伝う事で合意した。
では何故そんな彼らに、清彦は引き攣った笑みと言葉を送るのか…それは双葉だ。
「会長、彼らは会長の『笑顔』が欲しいんですよ?」
彼らの代弁をするかの如く、僕に提言する双葉君。
「それに…女の子ならもっと笑顔でいた方がいいですよ♪」
「僕はおとっ…!」
「『今』は、女の子です♪」
「うっ…」
反論しようとした僕の口に指を当て、双葉君は続く言葉を遮った。
「どちらにせよ、笑顔の練習をしましょう。『生徒会長』なんですから、笑顔も絶やさないと♪」
「そ、それは…」
痛い所を突かれ、それ以上反論出来なくなる清彦。
その結果を見て、双葉の後ろでグッとガッツポーズする集団が見えたが、結局反論できず。
そうした顛末があって、今もこうして彼らへの『報酬』として、笑顔を振舞っている。
(にしても、女になってからというもの、すっかり双葉君に振り回されっぱなしだな…)
僕が女性としてそつなく過ごせていられるのは、彼女のおかげではあるが…
必要以上に僕をより完全な女性に仕立て上げようともしているのには、流石に参っている。
僕はいずれ男に戻るつもりだし、これ以上女性らしく振舞うのは避けたいところなのだが。
かといって、世話になりっぱなしな彼女を邪険にする訳にもいかず。
(何だか、うまい事誘導されている気がする…)
若葉さんには今も急ピッチで戻る薬を作ってもらってはいるが…未だ未定、との事。
果たして、薬が出来る頃に僕は、男としての尊厳を保っているのだろうか…
そんな双葉君だが、ここ最近学校を休んでいる。
心配なのでお見舞いに行こうと思ったが、若葉さんが気持ちだけ伝えておくと言って、止められた。
若葉さん曰く、『大丈夫、ちょっとした…風邪よ♪』との事。
(…まぁ若葉さんが言うなら本当に大丈夫、なのだろう)
仮にも保険医だ、重い病気だというならあんな対応で済まさず、付きっ切りで看病するだろう。
双葉君には悪いが…僕としては、気が休まる日々を堪能している。
「…っと、本当に休んでいる場合じゃないな」
休憩は十分とった事だし、仕事に戻らないと。
「んんっ…」
肩を回し、気持ちを引き締めた。
すっかり大きくなった胸が、まさかこんなにも肩の負担になるとは思わなかった。
「…これ以上、大きくならないよな?」
漸く成長は止まったようだが、何時また膨らみ出すかわかったものではない。
両手で持ち上げると、零れ出すくらいになった胸の重さが、ズシリと手にかかる。
「こんなの…ただの脂肪の塊なのに…」
そのまま両手を動かし、その感触を堪能する。と同時に、揺れ動く胸の感覚が、気持ちを昂らせる。
「・・・」
持ち上げていた手を、今度は覆うような位置へと動かし、胸を揉んでみる。
「んんっ・・・」
柔らかさが心地良い。ブラの下で、乳首が立ちはじめたのを感じた。
「なんで・・・こんな・・・」
服とブラ越しに乳首を捏ね回す。キュッと押すだけで、身体がビクッと反応する。
「うきゅんっ・・・♥ …ハッ!?」
その瞬間、清彦は我に返った。身体はまだ火照っているが、頭は冷静さを取り戻した。
「ま、またこんな事…ダメだダメだ!」
首を振って気を取り直し、仕事に戻る清彦。
既に立ち上がったPCの画面が、その様子を静かに見つめるように、淡く点灯していた。
「ま、まずはと…」
何時もの様にソフトを立ち上げ、生徒会長の仕事をこなし始めた清彦。
しかしどんなに意識を仕事の方に向けても、スイッチが入り疼いてしまった身体は、快感を求め…
「…」
黙々と作業を進めようと試みるが…次第に息は上がり、鼓動が早まっていく。
「コッ、ココ…間違っている・・・な・・・」
独り言を呟いて気を紛らわそうとするが、その声すら甘美に聞こえ、余計感情を逆撫でする。
そして、カタカタとキーボードを叩く音が、カタッカタッと急に遅くなった。
「うんっ・・・はぁっ・・・」
気付けば右手だけでキーを叩いていた。仕事を放棄した左手はというと…
「んっ・・・もう・・・こんなに・・・」
クチュクチュという水音が、股の間から聞こえる。伸ばされた左手は、清彦の秘所を慰めていた。
指で弄る前から既に愛液が溢れ始め、下着と指を濡らしていた。
そして指が更に濡れた感触を捉えると、ふと手を止め、いそいそと何かを取り出す清彦。
「・・・」
そして今度は指を下着の両脇に掛け…そのまま、摺り降ろした。
(こっ・・・こんな事・・・やめないと・・・)
その思いとは裏腹に、手は取り出したタオルへと伸ばされた。中腰になり、それを椅子に敷く。
(くっ、薬が・・・あの媚薬が悪いんだ・・・!)
相手が人でないのをいい事に、自分を正当化する清彦。
だが慣れた手つきと、周到に用意されたティシュやタオル。それらが意味するのは…
(生徒会室でこんな・・・生徒会長の僕が、こんな・・・)
この部屋でこんな事をするのは、初めてではない、という事。
「んぁっ! ・・・ダ、ダメなのに、こんな事・・・ダメなのに・・・!」
口ではそう言いながら、指は執拗に割れ目を攻め立て、時折蕾を刺激しては快感を貪っていた。
「んくぅっ!」
ビクンと身体が跳ね、ガタンと椅子が音をたてた。
(そっ・・・外に聞こえ・・・!)
流石に危険を感じ、指を止めたが…直ぐにまた弄り回し始めた。
(胸っ・・・胸、疼いて・・・)
身体が、乳首が、自分も触って欲しいと甘酸っぱい感覚を清彦の心に訴える。
けれど清彦は我慢した。胸を弄ると…服が乱れるから。
そもそも手を止めればそんな事を気にする必要もないのに、清彦はやめられなかった。
「んんんっ・・・!!」
いつの間にか出したハンカチを噛み締め、声をおし殺す。
けれどその行為は寧ろ、クチュッ、ピチュッといういやらしい音を部屋と耳に響かせる結果になり。
「んああっ!!」
結局我慢出来ず喘ぎ声を上げ、口からハンカチを落とした。
(なかっ・・・! 熱い・・・!)
中指一本で、膣内を掻き乱す。それ以上入れるのは、怖かった。
けれど、それだけでも清彦は悶えよがり、身体を震わせ、快感に心を奪われていった。
グチュグチュと溢れ出る愛液を掻き分け、ただ只管に快楽を求め、指で秘所を弄り倒す。
「あっ、ああっ・・・くるっ・・・きちゃうっ!」
ゾクゾクと身体中に電気が走り、それらが全て頭へと襲い掛かった。
「イッ・・・イクッ・・・! イッちゃうぅぅうぅぅーーーっっっ!!!」
誰かに気付かれる事も気にせず、清彦は絶頂に達した。潮を吹き、脚がピンと伸びて痙攣する。
「はぁっ・・・、はぁっ・・・」
イッた余韻に浸り、火照った体を椅子に委ね、呼吸を整える。
「んんっ・・・」
指を抜くと、クチュリと言う音と共に膣口がヒクつく。
その指を顔の前に持ってくる。糸を引く愛液が、朝日に照らされキラリと輝いた。
(また…やっちゃった…)
じっと指を見つめながら、ハァッと深い溜息をついて、ティシュで綺麗に拭き取っていく。
『また』。そう、今回が初めてではない。ここ最近、隙を見つけては行為に及んでいる。
(…この胸が…この身体が、悪いんだ…!)
身体が女らしくなるにつれて、性欲は日に日に増していった。
今もわざと誰かに聞こえるように音を出し、その状況に酔いしれていた。
そんな、危険と隣り合わせの状況を求めるほどに、清彦は色に溺れていた。
「はぁっ…」
まだ身体は火照っている。拭き取る行為だけでも、再び身体は快感を欲した…
が、昂る気持ちに水を注すのは何時も…遅々として進んでいない、PCの画面だった。
(流石にこれ以上は仕事を怠けられない…な)
どう考えても非は自分にあるのだが、それでもこう露骨に突きつけられると、やる気が削がれる。
しかしこれ以上遅れては、本当に取り返しがつかなくなる…けど…
「んっ・・・」
やっぱり、この快感は…癖になる。
ニュプッと、指を入れる。自分の指程度なら、もうすんなり受け入れるようになった女の子の…穴。
だがそうなると、身体は更にその上を…もっと太く、滾るモノを求めて疼く。
(けど・・・そんな事・・・)
自分から求め始めたら、それこそ歯止めが利かなくなるし、そもそも誰かに頼むなんてもっての他。
だけどあの時感じた快感。アレが忘れられないのも、清彦の心を乱す原因の一つでもあった。
(うぅっ・・・)
再び指を抜く。だがそれを名残惜しむかのように、割れ目がヒクつく。
そうして、清彦の指がキーボードと割れ目の間を行ったりきたりしながら、葛藤していると…
コンコン! と、元気の良いノックの音が部屋に響いた。
「!!??」
まさか本当に来客があるとは思わず、喉から心臓が飛び出そうになるほど清彦は慌てふためいた。
「はっ…はい! ちょ、一寸待って下さ…!」
声を掛けながら、慌てて脱いだパンツを穿き直そうとする…が、それより早く、扉が開け放たれた。
「会長ー!」
「うわわわわっ!!」
待ってって言ったのに! その来訪者はこちらが言い切る前に臆せず入室してきた!
「? どうしたんです?」
「いっ、いや…ストレッチを、ね…ハハハ…」
笑って誤魔化す清彦。何とかパンツは穿けたのだが、上げた脚を戻す余裕が無く…
片足を上げたみっともない姿をその人物に見られ、苦し紛れの嘘をついてしまった。
「って…君は?」
「♪」
あまりに馴れ馴れしく話すので、こちらの応対もくだけた言い方でしてしまったが…
生徒会の誰かかと思ったその人物は、見知らぬ男子生徒だった。
(…ファンクラブの人か?)
見覚えがあるような気がするものの、記憶の何処を探しても該当者はいない。
コホンと咳払いをし、平静を装ってから生徒会長の態度を取り直す清彦。
「すまないが、用が無いなら出て行ってくれないか? 今は少し忙しい…」
「忙しいのは、仕事があるからですか? それとも…」
「! な、何の事…だい?」
語尾の下がり具合と、その言葉と共に投げかけられた視線に、思わずドキリとする清彦。
「どっ、どこ見て…!」
「あはっ♪ 戸惑ってる会長、可愛いー♪」
「き、君は僕をからかいに来たのか!?」
妙な言葉遣いと態度が、少し鼻につく。それに…
「一体誰なんだ君は! 生徒会室は基本部外者立ち入り禁止で…!」
「えー、部外者じゃないですよ会長ー」
「…部外者、じゃない?」
彼はそう言うが、ただでさえ記憶の検索に引っ掛からないのに、これ以上条件をつけても…?
(…ちょっと、待てよ…?)
心の中で湧き出た疑問。その答えを導くため、その男子生徒の顔をジッと見やる。
こちらが睨みを利かせても、首を傾げキョトンとするだけ。が、その仕草といい言動といい…
(ま…さか…)
「どうしました?」
「…単刀直入に聞こう…」
「はい?」
まさかとは思う。まさかとは思いたいが、彼の顔を見るうち、ある人物がヒットした。
だけどそんなはずは…しかし、前例があるわけで…それも、自分自身がその前例で…
答えを導き出したくない気持ちが、清彦を思い止まらせるが…結論は、既に出ていた。
「君…もしかして…双葉、君?」
「はーい! そうでーす♪」
屈託のない笑顔で答える…男の双葉。そしてその返答を聞いて、愕然とする…女の清彦。
「…で!」
「ンー美味しいー♥ …はい?」
会長の椅子で踏ん反り返る清彦。対し双葉は、冷蔵庫から取り出したアイスを頬張っていた。
「『はい?』じゃなくて…一体全体、どういう事なんだい双葉君!」
「どういう事と言われましても、見ての通りですよ会長」
「それだよ! 何故君が男になっているんだ!」
「お姉ちゃんに頼んで、作って貰ってたんですよー、性転換薬♪」
「なっ…!」
通りで遅いわけだ…というか、製作時に爆発するんじゃなかったか…?
「やー男の子って凄いですねー、色んな意味で」
そう言って体をくねらせる双葉。女でも大概だが、男でそれをやられると気持ち悪い事この上ない。
性別が変わるという一大事なのに、全く危機感を持たない双葉に、清彦は溜息をついて首を振る。
「…君は…その為だけに…あの薬を…飲んだのかい…?」
怒りを通り越して呆れ果てた清彦は、出せる声も出せず、呟くようにして質問を投げかけた。
「んー、それもありますけど…」
「じゃあ一体…!」
天井を仰いで考え込む双葉だったが、手にしたアイスのカップをソッと机に置いて立ち上がると…
「なっ、なんだい…?」
無言で清彦に近づく。そんな双葉に気圧され、たじろぐ清彦。
(い、嫌な予感がする…!)
その男子が双葉だと解り、何時もどおりの接し方をしていたが…
こうして対峙すると、やはり彼女は今…男なのだと、改めて思い知った。
僕が女子相応、双葉君が男子相応の身長になると、彼女を一回り大きく感じる。
それはつまり、彼女は今…自分より、強い存在なのだと、清彦の本能が告げていた。
その気になれば彼女…いや彼は、自分を押し倒し…その考えが、清彦に身の危険を感じさせた。
そうして縮こまる清彦に、双葉が迫る。顔を近づけ、囁いてくる。
「ね? 会長」
「だっ、だから…何…」
その瞳に写る自分が、少し怯えた表情をしているのが見えた。男に怯える、女の顔。
思わず顔を背ける清彦だが、それは寧ろ双葉にとって好都合で。
「会長…『シてた』でしょ?」
「なっ・・・!!??」
耳元で予想もしない事を囁かれ、清彦は顔を真っ赤にし、目を踊らせた。
その様子を見た双葉は、フフッと笑い、身を引いた。
「そっ、そんな事・・・!」
「嘘ついてもわかりますよ? だってこんなに…匂うんですもの」
「!!」
『匂う』の一言に、益々顔を赤くする清彦。それでも白を切り続ける。
「いいい・・・一体、何の事やら・・・!」
「フフッ♥ 慌てる会長も、可愛い♥」
「きっ、君は! やっぱり僕をからかいに来たの…!?」
全てを見透かされ、清彦は思わず大声を上げるが…そんな清彦の唇に、そっと指が当てられた。
「ごめんなさい、会長。あまりにも会長が、可愛かったから…」
「か、可愛いって…」
「えぇ、可愛い会長。もうすっかり、女の子らしくなりましたね」
「それは君が…」
「いいえ。私はお手伝いをしただけ。今の会長の体は、全て会長の心が望んだ結果ですよ」
「! ぼ、僕が…望んだ?」
そんな、違う…僕は、こんな事望んで…けれど、今の自分に、慣れている自分がいるのも、事実で。
「だ、だからって、それと君が男になる事になんの理由が…」
「それは…」
再びの質問に、双葉は言葉を詰まらせた。が、すぐに顔をあげ、ニコッと笑顔を見せた。
「私もそう、望んでいたから…かな」
「そんな理由…」
「勿論それだけじゃないです。でも…今はそれで、許してください♪」
「…双葉君?」
何処となくその笑みには、憂いが感じられた。彼女は何か、隠している…?
「ねぇ会長」
「な、なんだい?」
「やっぱり、会長も男の子だった頃…こんな風に私の事、見ていたんですか?」
「こんな風って…」
そう言われ、清彦は言葉を詰まらせた。
確かに今はお互いが逆の性別になっているとはいえ、元々も男と女。
双葉の性格もあり、あまり意識する機会は多くは無かったものの…
それでも、彼女が時折見せる女らしさや可愛らしさに心奪われる事が無かった訳ではない。
ましてや彼女は、清美に次いで近しい異性…否が応にも、意識してしまう。
そして今…その時の感情が、女性の立場となって顕著になっているのか…?
「でもいいんです、会長。私、男の子になって解りました…これじゃケモノにもなるわけですね♪」
「獣って…! !?」
あまりな言い様に、清彦は双葉と目を合わせた。その視界に飛び込んだのは…双葉の顔。
(ふ、双葉君って…)
改めて見るとその顔は、女性的な美しさと、男性的な凛々しさを兼ね備えた、理想的な顔立ち。
その中性的な印象は、恐らく男女問わず魅了出来るだろう。
見つめてくるその瞳に吸い込まれそうになる。清彦の心が、次第に惹き込まれていく。
ドキドキと早まる鼓動。この胸の高鳴りは…
「会長」
「!?」
凛と見つめる双葉の目が、優しさを湛え、ゆっくりと閉じていき、そして…
(こ、これって…)
双葉は待っている。そっと置かれた唇に、清彦の唇が重ねられるのを。
「双葉、君…?」
「…」
静かな校内。二人の鼓動だけが、聞こえる。清彦の呼びかけも、静寂に吸い込まれる。
(…)
双葉の意図が読めない。色々と問い詰めるべき状況なのに、何で、こんな…
だけど・・・だけど、今は、今だけはこの流れに・・・乗ろう・・・
心奪われ、身を乗り出す清彦。そして双葉の唇に、自らの唇を重ねた。
甘美な口付け。
「んっ・・・」
清彦の唇を感じた双葉が、両手で清彦を抱き寄せた。
ビクッと身体が震えるも、直ぐにその優しさに身を委ねていった。
「んんっ・・・」
気付けば互いに舌を絡ませ合い、より深いキスを堪能していた。
(あぁっ・・・)
胸が熱い。鼓動が高まる。女として受けるキスの魅力に、夢中になっていく。
十分過ぎるほどに互いを感じあった二人は、漸く体を離した。
二人の口を繋ぐように、糸が引いている。まるで離れるのを躊躇うかのように。
「双・・・葉・・・君・・・」
「清彦・・・会長・・・」
名前で呼び合う二人。互いの存在を確かめ合う。
ウットリとした表情で双葉を見つめ、瞳を潤わせていた清彦だったが…
ハッとした表情をして、両手をばたつかせあたふたし始めた。
「! あっ・・・! いや! その、これは・・・!」
悲しいかな、清彦はその持ち前の精神力でふと我に返ってしまったようだ。
そんな清彦の様子を見て、キョトンとする双葉だったが、口元が緩み始め、そして。
「…プッ…アハハッ! やっぱり会長は、女の子の方があってます!」
堪え切れず笑い出した双葉。笑われた事と恥ずかしさで、清彦は身体を縮こまらせた。
「そんな…事……ない…………」
モジモジしながら、次第に小声になっていく。
恥ずかしさに俯くも、その耳の赤さまでは隠し切れなかった。
「…フフッ…でも、だからこそ私は…そんな貴方を…」
「? 何?」
「なんでもないです」
そんな清彦よりも更に小声で、双葉が何かを呟いた。けれどそれは、部屋の空気に溶け込んで。
そしてその空気を打ち破るように、双葉はパンと手を叩いて、清彦の前に仁王立ちした。
「さて! ちょっと空気が変わっちゃいましたけど、ここはまだまだ元気です!」
「へっ?」
そう言って自分の股間を指差す双葉。女の子ならはしたないが、男だと…いや、やっぱり下品だ。
(…いやいやいや! そうじゃなくて!!)
「げげげ、元気って…!」
「勿論…アレですよ、会長♪」
「それってつまりまさかそれはあのアレをアレでどうして・・・」
言われずとも解ってはいるが、それが何を意味するかを思うと挙動不審になる清彦。
「えぇそうです! ヤりましょう! というか、ヤらせれ」
「・・・っ!!??」
さっきの甘い一時は何処へやら。双葉の直球な一言に、清彦は目を回す。
「ふふふ、双葉君・・・! 女の子がそんな事・・・!」
「今は男です」
「それはそれで問題発言だよ!」
「いいじゃないですか、クラスの男子もよく言ってますし」
「ないないないない!」
のらりくらりと清彦のお咎めをかわす双葉。
「そっ、それに・・・! 一応僕が今は女・・・な訳で・・・それはつまり・・・」
「あ、語るに落ちる」
「え?」
「今自分で認めましたね? 女の子だって」
「・・・! そんなの・・・!」
そんなのズルい。そう言おうとしたが、言葉に詰まる。
「それに!」
「!?」
モジモジする清彦に、双葉がズイッと前のめりになって迫り、そして…
「・・・ヒャッ!? な、何を!?」
突然股間に顔を近づけ、双葉が鼻をスンスンと鳴らす。
「…こんなにオンナを滾らせて、会長も…内心、シたくて仕方ないんでしょ?」
「なっ・・・!」
双葉の大胆な行動に、清彦は思わず両手で顔を隠した。
「そんな事・・・!」
「あれぇ? それじゃこの染みは何なんですかぁ?」
「あっ! そっ、それは・・・!!」
そういって双葉が指差すのは、椅子に敷いたタオル。
しまった、パンツを穿くので精一杯で、タオルを隠す暇が無かった…!
「それに・・・」
「ヒッ! やめっ・・・!」
内腿に突き出した指をスススと滑らせ、そのままスカートの中へと侵入させてくる。
「んっ・・・!」
「あはっ♥ こんなに濡れてる♥ 自分で弄ったから? それともさっきの…キス?」
「ちっ、違・・・」
双葉の指が、パンツ越しに清彦の割れ目をなぞる。
擦り付けるような指の動きに、清彦は身体を震わせた。
暫くそうやって弄ばれた後、徐にその指を清彦の顔に近づける双葉。
「ホラこんなに…これでもまだ自分は欲情していないって、言います?」
「そっ・・・それはぁ・・・」
差し出された指には、さっき見たより濃厚な愛液が絡み付いていた。
ハァハァと息を荒げ、声を震わせる清彦。そんな扇情的な清彦の姿に、双葉の目の色が変わった。
「会長…会長は、どうして欲しい?」
質問であって質問にならない質問。清彦の答えは既に、出ていた。
「ぼっ・・・僕はぁ・・・」
「んんっ・・・! ふぁぁっ・・・!!」
ピチュピチュと、水音が響き渡る生徒会室。
清彦を会長の椅子からソファへと移した双葉は、清彦の秘所を舌で舐め回していた。
「ふっ、双葉君・・・! そんな所・・・きたな・・・!」
「んっ・・・会長のココ・・・綺麗ですよ・・・?」
「そういうことじゃ・・・んあぁっ!!」
女体の勝手知ったる双葉の攻めは、清彦の俄か知識とは比べ物にならない程的確にツボを刺激する。
しかしそれ以上に、他人の、それも指とは違うの舌の感触が、清彦にとっては新鮮な刺激だった。
「あああっ!!」
「んくっ・・・!」
あまりの気持ちよさに、清彦はまたイッてしまった。吹き出た愛液が、双葉の顔にかかる。
「うぁっ・・・ご、ごめ・・・!」
「もうイッちゃったんですかぁ? 会長、淫乱過ぎですよ」
「そんなことぉ・・・」
顔にかかった愛液を、指で掬って舐めとる双葉。今は男だというのに、その光景はとても扇情的だ。
「んああっ!!」
息を整えようとした清彦が、また嬌声を上げた。
イッたばかりだろうがお構い無しに、双葉は更に清彦の身体を攻め立て始める。
今度は制服の内側に手を滑り込ませ、胸を撫で回してきた。
「ずるいです会長…なんで女の頃の私より、大きいんですか?」
「しっ、知らないよぉ・・・うキュゥンッ!」
「そんなこと言うなら、もっとお仕置きが必要ですね」
「ほっ、本当に知らなぁ・・・アッ!」
清彦を言葉でも攻め立てながら、双葉は器用に制服とブラを脱がし、清彦の乳房を露にしていく。
「それにしても大きいですね…もしかして吸ったら、母乳が出るかも?」
「!! そっ、そんなの出な・・・ふああっ!」
言うより早く、双葉は清彦の胸にむしゃぶりつく。既にプックリと勃った乳首を舌で転がす。
「んぁ! やめ・・・んぁあっ!!」
「んっ・・・」
漸く弄られた事を喜ぶ乳房が、溜まった鬱憤を晴らすように清彦を快感で埋め尽くしていく。
「キャウッ!」
コリッと、双葉が乳首を甘噛みすると、ピリリとした快感が、身体を駆け巡った。
(あぁ・・・なんで・・・こんな・・・)
男にもついているのに、何故女性の胸はこんなにも…甘い感覚を返すのだろう。
そんなことを思うも、結局は双葉の攻めに心奪われ、何も考えられなくなっていく。
「仕草といい反応といい…もうすっかり女の子として出来上がってますね、会長♥」
「・・・」
もう反論する余裕も無く、ハァハァと息を上げるだけの清彦。
その息遣い、淫らな姿、そして…それが清彦だという事が、双葉を滾らせていく。
「会長・・・」
「・・・」
目の色が変わる、双葉。その目は、獣の様な目付きだった。
(もう、痛いくらい・・・)
双葉は新たに出来上がった自分の身体の器官に、戸惑いを隠せなかった。
そっと手で触れれば、ビクビクと脈打つのが分かる。そしてそれが、自分が興奮しているからとも。
ゴクリと、息を呑む双葉。女性とは違う直情的な性欲は、男性初心者の双葉には逆らえなかった。
そんな双葉の視界には、横たわる魅力的で、心奪われ…た、女性。
双葉の愛撫に手篭めにされ、未だ絶頂の余韻に浸る清彦。
胸元は肌蹴、呼吸に合わせ上下する、豊満な乳房が誘うように揺れ動く。
スカートの下は既に濡れほそぼり、男を受け入れても問題ない状態になっているだろう。
そんな無防備で扇情的な女が目の前にいる…それだけで双葉の心が男に染まっていった。
「会長…」
声を掛けるも、清彦は起きなければ、返事もしない。
「会長…いいですよね?」
呼吸を荒げながら、双葉は清彦の上に覆い被さる体勢をとる。
眼下に清彦の横顔。双葉はその頬にキスをした。
「うぅん…」
それが正に目覚めのキスかのように、清彦が漸く目を覚ました。
「双葉…君?」
「会長・・・もう、我慢できないです・・・」
「我慢…?」
快楽の渦から戻ったばかりの清彦は未だ惚けたした顔をしていたが、双葉は既に出来上がっていて。
「え…ちょ、ちょっと!」
双葉が自分のズボンのベルトに手を掛け、外そうとする音を聞いて、清彦は漸く事態を飲み込んだ。
「ふ、双葉君…何を?」
今度は清彦が声を掛けるも、双葉は息を荒げ、その飢えた目付きだけが物語っていた。
「私・・・もう・・・!」
「そっ・・・!」
そんな双葉の様子に、顔を引き攣り、身体を強張らせる清彦。
だがその一方で…
(双葉君の…双葉君の、アレが…僕に…)
目線の先に、双葉のペニス。欲しくて堪らなかった男のモノが、そこにある。
「双葉・・・君・・・」
「会長・・・」
引き攣った顔が緩んでいく。強張った身体が、火照って疼く。
(この、状況って・・・)
それは正に、清彦の身体が待ち侘びていたモノ。清彦が求めていた、状況。
「あ・・・」
清彦の心の中で、思いが渦巻く。けれど結論は、直ぐに言葉となって出た。
「・・・双葉君なら・・・いいよ・・・」
その言葉を聞いて、微笑む双葉。
「・・・それじゃ、遠慮なく♪」
おどけてみせる双葉が、グイッと腰を下ろした。清彦の割れ目に、熱く滾るモノが宛がわれる。
「んっ・・・」
「あぁっ・・・」
この感覚。指や舌では絶対に味わえない、この大きさ。
清彦は怯えながらも、それを受け入れようと力を抜いた…が。
「んっ、キツい・・・」
「うっ・・・うわ・・・うわあっ!!」
膣口が双葉のペニスを咥え込もうと拡がっていく。だが予想以上の大きさに、清彦は怯え…
「まっ、待って双葉く・・・!」
「すごっ・・・これ、凄い・・・!!」
「ふっ、ふぁっ・・・ふああああっ!!」
ミチミチと、身体全体が押し広げられていく感覚に、清彦は悲鳴のような声を上げた。
(こっ、こんな・・・! そ、そうか・・・!)
清彦は一つ、失念していた。あの時、兄弟に貫かれた時…自分は、意識が朦朧としていたんだった。
けれど今は自らの意思で受け入れようとしている。
だから…ある意味清彦自身にとっては、初めて味わう、純粋なセックス。
だがそれに気付いたところで、もう遅かった。
「うぁっ・・・んあぁっ!!」
「はぁっ・・・! 中、熱い・・・!!」
「ぬっ、抜いてぇ!! 裂けちゃうぅ!!」
清彦が必死に訴えるも、双葉は既に男の快感に夢中になり、聞く耳を持ってはいなかった。
「あ・・・ああ・・・あああ!!」
ズブズブとペニスが身体の中へと侵入してくる。肉襞を掻き分け、奥へ奥へと進んでいき…
「くぁっ!!」
「あはぁ・・・♥ 奥に届いちゃったぁ♥」
双葉のペニスが、清彦の子宮口を叩いた。それでも尚、双葉のペニスはズイッと突き立てられ。
「ひぅんっ!!」
「んんっ! 凄い締め付け・・・!」
「も、もう・・・抜いて・・・」
声を震わせ再度懇願するも、双葉には届かず。
「フ、フフ・・・会長・・・私達今、繋がってるんですよ・・・?」
「わ、解ったからぁ・・・」
「会長のアソコ、絡み付いて離そうとしませんよ?」
「そ、そんなことぉ・・・」
「だからもう・・・我慢なんて、出来ません・・・!」
「えっ・・・? んああっ!!??」
その言葉を皮切りに、双葉は腰を振り始めた。
「はっ・・・うぁん・・・ふぁっ・・・あぁん!」
ズンズンと突き立てられる度、清彦の頭の中で何かがはじけ飛ぶ。
奥深くまで貫かれ、子宮が揺れ動く度、気持ちよさで何も考えられなくなる。
「ひっ・・・あっ・・・んぁっ・・・くぁあっ!!」
「会長・・・会長!」
清彦の嬌声を聞き、双葉の興奮も更に高まっていく。
益々いきり立ったペニスが、清彦の膣内を十二分に満たしていく。
(あぁ・・・私、会長を犯してる・・・! 私のチンチンで、会長がヨガッてる!!)
男の征服感と支配欲が、双葉の目をギラつかせていく。
清彦以上に息を荒げながら、膣奥深くにペニスを突きたてる。
その度、清彦が喘ぎ声を上げるのを見て、双葉は口元を緩ませ、犯していく。
「フフッ・・・すっかりセックスの虜ですね・・・会長♥」
「ひぅっ、やっ・・・そこはぁ・・・だめぇ!」
「ここかい? ハハッ、ならどんどんオンナノコの良さを教えてあげますよ♪」
「やだぁっ!」
「嫌がる素振りも・・・可愛い♥」
「ひぃあぁん!」
快感が深まるほど、清彦は女に、双葉は男になっていった。
パンパンッ、ヂュプヂュプとHな音が響き、繋がった場所からどんどんと愛液が溢れ出ていく。
言葉攻めをする余裕のあった双葉も、清彦の肉襞の絞りに耐えられなくなってきていた。
(・・・! あぅっ・・・もぅ・・・)
「会長・・・! もう我慢出来ない・・・! 一緒にイって・・・!」
「あぁっ!」
二人とも、腹の奥底から何かが込みあがってくるのを感じ、身体を寄せ合う。
(ぬっ、抜かないと・・・!)
ギリギリ残った理性で、双葉は膣からペニスを抜こうとしたが…
「!? かっ、会長・・・! 足っ、足離してっ・・・!」
「双葉君・・・ふたばクン!!」
意識してか無意識か不明だが、清彦は双葉に抱きつき…足を絡めて双葉を離そうとしなかった。
体勢もあって、双葉はその拘束を解く事が出来ず…熱いものが込み上げてくるのを覚えながら…
「あっ・・・でっ、出る・・・!」
「あぁっ・・・んあぁああぁ!!!!」
『イクウウゥゥッッ!!』
二人が同時に絶頂に至り、双葉の精子がドピュピュと噴き出し、清彦の子宮を満たしていった。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
「あは・・・あぁっ・・・中出し、しちゃった・・・♥」
光悦とした表情で清彦を抱きかかえながら、射精の余韻に浸る双葉。
一方清彦は、双葉をきつく抱きしめた後、ガクリと力が抜けて、失神してしまった。
「ふあぁっ・・・すっごい・・・気持ちよかった・・・」
清彦の足も力なくソファの上に投げ出され、漸く清彦の拘束が解けた。
ニュプリという音と共にペニスを引き抜くと、愛液と精液の混じった汁が纏わりついていた。
そして膣内から溢れ出る精液。双葉はそれを見て、少しドキリとした。
(だ、大丈夫よね…?)
一応安全日のはず…そうだと解っていても、まさかここまで大量に出るとは思わず。
恐る恐る指でそれを掬い、ジッと見つめる。
(私の…精子…)
改めてこの状況を顧みて、双葉は不思議な気分になった。
元女の自分の精子で、元男の清彦が妊娠したら、生まれてくる子供はどうなるのだろう。
(会長と私の…子供…)
妄想する双葉だったが、ハッとして両手を頬にあて顔を赤らめた。
(やだ私ったら、まだ早いよぉ♥)
何時ものように身悶えして、指の隙間からチラリと清彦を見つめる。
先程見た、扇情的な姿。今はそれに更に拍車がかかっていた。
(うーわぁ・・・)
露になった清彦の割れ目がこちらを向いて、せがむ様にヒクついていた。
コプコプッとまだ精液を吐き出し続けながらも、身体は欲しているようだった。
その様子を見て、再び双葉のペニスがいきり立つ。
(あんなに出しちゃったし・・・もう結果は変わらない・・・よね)
悪魔の囁きに導かれ、双葉が動き出す。もう一度清彦を犯そうと、圧し掛かる。
「会長・・・」
「んっ・・・」
一応、意識は戻っているようだ。双葉はその声を聞き、語りかけた。
「気持ちよかった?」
「う・・・」
おぼろげな瞳で、双葉を見つめ返す清彦。
「双葉君・・・僕は・・・」
「あまりの気持ちよさに、気絶してたんですよ?」
「そんな・・・」
双葉の言葉で、清彦は震える手を股間に伸ばし、割れ目に触れた。
その指が、滑り気のある液体を掬い取る。それを感じた清彦は、ビクッと身体を震わせた。
「・・・え・・・」
恐る恐る、指を顔の前に持ってくる。その液体が放つ臭いに、清彦の意識が急速に戻っていく。
「こっ、これって・・・!」
ガバッと起き上がった清彦に双葉は驚いて後ずさる。
「これっ・・・これ、双葉・・・君の・・・!」
「そうですよ? だって会長が離さないんだもん…」
愕然とする清彦に、双葉はおどけた態度と表情で返した。
「ぼ、僕はそんな事…!」
「でも事実ですよ? 大丈夫です! 安全日のはずですし、仮に当たっても…」
「あ、当たる!?」
「当たっても…私が責任持って、会長をお嫁さんに貰いますから!」
「逆だよ!!」
あんまりな衝撃を受けたせいか、変な事に突っ込みを入れる清彦。
「あぁあ・・・いやそれもあるけど、僕は…僕はなんて事を…」
「でも求めていたんでしょ?」
「そっ、それは…! …そう・・・かもしれない・・・けど!」
本能と理性が互いにぶつかり合い、清彦は戸惑った。
「けど、これは…越えちゃならない…一線で…」
「会長…もっと素直に、なっていいんですよ?」
「素直…って…?」
「女の子だからって、我慢しなくてもいい、って事です♪」
「い、いやそれは…!」
「それに…」
「それに?」
双葉が言葉を溜める。俯いて、少し微笑みながら…言った。
「私が男の子になったのは…会長が、好きだからですもの」
「えっ…」
突然の告白に、清彦は目を丸くしたまま、動けずにいた。
「あ、勿論元の性別の時からですよ? 会長が女の子になったからこそ、私は…」
「ま、待って…双葉君…君は、僕の事が…え?」
「はい、好きです♪」
「…『Like』?」
「『Love』です、会長」
再び固まる清彦。が今度は直ぐに我を取り戻し、慌てふためく。
「そっ、そそそそんな事急に言われても…!」
「やっぱり気付いてなかったですか…ちょっと残念」
そうは言うが、双葉の言動や態度では、伝わるものも伝わらないのが結果であって。
「それに僕はいずれ、男に戻るわけだし…何もそこまでしなくても…」
その一言に双葉がズイッと前に出る。思わず、清彦は気圧され、身を引く。
「だからこそ、って言ったじゃないですか」
「だからって…」
「必ず戻れるって保証は、お姉ちゃんしか解らないんですし、それに…」
「それに?」
「私にとっては、チャンスでしたから…」
「チャンス?」
「もぅ会長、ホント鈍いです」
「???」
ポカンとする清彦。それに対して双葉は、少し悪い笑みを零した。
「それに…女の子の会長とシたかったのもありますし♪」
「!」
その言葉を聞いて清彦は腕で身を庇うが、その今更な反応に双葉はキョトンとした後、笑った。
「アハハッ! もぅ会長ってば、遅いですよ…♪」
「うぅっ…」
「でも気持ちよかったぁ…それだけでも、男の子になってよかったです、ホント」
「僕は良くないよ…」
「あらそうですか? それじゃあ…」
「え、ちょ、ちょっと双葉君・・・?! キャッ!?」
そう言って双葉は清彦を押し倒した。これ見よがしにペニスを突きつけ、迫り来る。
「ウフフ・・・もう1ラウンド、いっちゃいましょう♪」
「そ、そういう意味じゃな・・・や、やめ・・・!」
「だーめ♥」
「ヒィィッ!?」
迫る双葉に怯えつつも、内心期待に胸膨らませる清彦。そして本当に猛り清彦を犯しにかかる双葉。
「さぁ会長・・・楽しみましょう・・・♥」
「ふぁあっ・・・」
再び双葉のペニスが宛がわれる。また、あの快感が味わえると思い、身体を震わす清彦。
ニュプリと、膣内に侵入される感覚に、清彦は光悦とした表情で快感に浸る…が。
コンコン
「!!??」「??!!」
突如響き渡る、ノックの音。
「はっ、はい! 今で・・・んあぁあっ!」
「んくっ! か、会長・・・!」
その音に心臓が止まりそうになるほど慌てる清彦と双葉。
そんな状態で対処しようと気持ちが急いた清彦は、自ら腰を落としてしまい…
「ふぁあっ!」
「会長・・・落ち着いて・・・!」
もがけばもがくほど、余計に膣内でペニスが暴れ、双葉も抜くに抜けなくなっていた。
勿論その喘ぎ声は扉の向こうの来訪者にも間違いなく届いていて…
何事かと思ったのだろう。了承を得ぬまま、バン!と勢いよく扉が開かれた。
「どうしたんですかっ!?」
一時限目は、とっくに過ぎた。
それでも清彦は現れず。清彦の性格に限って、サボるなんて事有り得ない。
では具合でも悪いのか? それとも、また何か問題事に…
募る不安に、授業が終わると真っ先に保健室に向かった。
が、そこには誰もおらず…それこそ、若葉もおらず。
そうなると、後は生徒会室…理由は不明だが、後いるとすればそこしかない。
そうして辿り着いた生徒会室。ノックをしても、返事は無…
「―あぁあっ!」
「!?」
扉の向こうから悲鳴に似た声が聞こえた。しかもそれは、清彦の声。
「―ぁあっ!」
まただ。しかも、清彦以外の誰かの声も聞こえ、不安が過ぎる。
もう待ってはいられない。敏明は…扉を開け放った。
「どうしたんですかっ… !?」
「あ」「ひぁっ・・・?」
扉の向こうで待っていた光景は…予想だにしない光景だった。
ソファの上で、見知らぬ男子生徒が女子生徒に覆い被さり、身体を寄せ合っている。
いや、それどころか女子の蕩けた表情といい、この部屋に充満した臭いといい…
どう考えても、この二人…セックスしている。間違いない。いや間違っている。
「こ、これは一体…」
「あ…えと…ハハハ…」
乾いた笑いを飛ばす男子。一方、女子の方はまだ焦点が定まらない目をしていたが…
「へっ・・・? え・・・あ・・・ええっ、えぇえっ!!??」
一気に覚醒したらしく、大声を上げてこちらを見つめる…そのままの体勢で。
「ととととと敏明く・・・んあっ!?」
「あとえっとええっと・・・!」
驚いた表情から一転、苦痛に顔を歪める女子。それを見た男子が、慌てながら腰を引いた。
ジュプリという水音と共に二人の身体が離れる。だが二人の性器は、糸の様な液体で繋がっていた。
そして立ち上がった男子は、まるで女性のような仕草でそっぽを向いた。
「はっ・・・はっ・・・ち、違うんだ敏明君これは…!」
「・・・」
一方その女子…清彦は体を起こしつつ必死に弁明するが…
息を荒げ胸を晒し股間を濡らしていては、説得力の欠片も無い。
敏明にはただただ口をポカンと開けて、唖然とする他無かった。
が、不意に首を振る敏明。虚ろな目で、遠くを見ながら…
「…出直してきます…」
そう一言告げて、敏明は重い足取りで生徒会室を後にした。
「ま、待って…!」
清彦の言葉も空しく、扉は静かに、カチャリと音をたてて閉じた。
「あ、あああ・・・」
「あ、あははははー…どうしましょ?」
扉に向け伸ばした手が、力無くダラリと落ちる。
双葉は笑って誤魔化すが、清彦はそれに怒りもせず…
「見られた・・・敏明君に・・・もうだめだ・・・おしまいだ・・・」
ブツブツとそんな事を呟きながら、ヘナヘナとソファに崩れ落ちていった。
「だ、大丈夫ですよ会長! トッシーならきっと判ってくれますって!」
「僕は・・・生徒会長で・・・彼は・・・書記で・・・僕は・・・僕は・・・」
「…あ、あはは…ホントに、どうしよう…」
少しだけ思慮を巡らす双葉だったが、いきり立ったペニスが邪魔をして。
「…とりあえず、証拠隠滅…かな?」
単純明快な答えで済ます、双葉だった。
「――――次はこれを頼む!」
「ハイ!」
「双葉君、進行状況は!?」
「ヒーン、指が痛いぃー」
「我慢しろっ!」
「酷いです会長ー」
「こっちだって痛いよ!」
「会長ここは!?」
「そこはこれを…!」
「えーん終わらないよぉー…」
「泣き言言う暇あったら手動かす!」
「解りましたぁー…」
日曜日の生徒会室。
中では怒号が飛び交い、慌ただしく作業が行われている。
「…出来ましたっ!」
「よしっ、次はこれを!」
「ハイ!!」
「もうダメぇー…」
「まだ早いよ!」
「限界ですぅー」
「そんな事言える立場じゃ…!」
「えー! 元はといえば会長が…!? ムググッ!?」
双葉の一言に、その場にいた全員が一斉に清彦に視線を移す。
「い…いや…なんでもない…僕が怠けた、せいだ…うん…済まない、皆…」
双葉の口を塞ぎながら、清彦は前のめりのまま頭を垂れた。
「…プハァッ! 会長! ズルイ!!」
「後で埋め合わせするから…」
「ホント!? ウフフ、じゃあもうちょっとがんばってみます、ウフフ…」
「い、いやそこまでの事は・・・ってダメだダメだ!」
舌なめずりをする双葉に気をとられ、清彦は慌ててPCに向き直る。
一体何事なのか…それは言わずもがな、今まで溜めた『ツケ』が回ってきたのだった。
遅々として進まない仕事が溜まりに溜まって、こうして休日出勤の如く総動員で作業する羽目に。
手透きの会員にも手伝ってもらい、それらを一気に解消しようと奮闘する清彦と生徒会一同。
結局あの後、敏明に事情を説明してなんとか誤解は解けたものの…
「流石に…マズいですよ、会長」
「うぅっ…解ってる、解ってはいたんだけど…」
頭を抱える敏明の前で正座をする清彦。双葉もその隣でシュンと縮こまっていた。
これではどちらが上の立場か判ったものではない。
「…兎に角、私は何も見なかった事にしますから、以後気を付けてください…」
「うぅうっ…すまない敏明君…」
顔をあげた清彦には、背中を向けた敏明がとても大きく見えた。まるで仏のように。が、その実…
(静まれ…静まれ…! 煩悩退散煩悩退散…!)
頭の中で繰り返される、清彦の痴態を取り払うのに必死な敏明だった。
「もうだめ、ばたんきゅ」
「あぁっ! 双葉…さん! 倒れないで!」
「トッシー後は任せたぁ」
「あと少し、あと少しなんですから!」
「ガクリ」
「ちょ、ちょっと!」
わざとらしく机に突っ伏す双葉に敏明が身を乗り出す。
「会長! 双葉…さんが! …会長?」
清彦に助けを求めた敏明だったが、どうも清彦の様子がおかしい。
手は動かしているが、ブツブツと何かを呟いたまま何も聞こえていないようだ。
「か、会長?」
その呟きに、耳を傾ける敏明。
「終わらない・・・フフフ、終わらない・・・フフ、書類が僕を攻め立ててくれてる・・・フフ」
「か、会長!?」
清彦は既に壊れていたようだ。慌てて敏明が体を揺するも、清彦は帰ってこない。
「だ、誰か・・・誰か!」
よりにもよって皆が出払ったタイミングで起こった事態に、敏明は思わず助けを求めた。
その声に応える様に、扉が開かれた…が。
「はぁい、みんな元気ぃ?」
現れたのは、助けどころか更に事態を悪化させる事に定評のある人物だった。
「わ、若葉さん!?」
「ふにゃ? お姉ちゃん?」
敏明がギョッとし、双葉が狸寝入りをやめ、清彦が…
「うわっ、会長!?」
突然立ち上がった。ツカツカと歩き、若葉の元へ無表情のまま向かい、若葉の手をとり…
「出来たんですか!!」
目を輝かせながら若葉の答えを待つ清彦。
その視線に若葉は何やら光悦とした表情をしてから、ポンと清彦の肩を叩いた。
「ええっとね」
「はい!」
「そのね」
「はい!!」
「それがね」
「はい!!!」
「材料買えなくなっちゃったの♪」
「はい…いぃいっ!!??」
素っ頓狂な声を上げる清彦。若葉に詰め寄り、問いただす。
「どどどどうして!」
「やーそれが、アレが思いの他コストかかっちゃって…テヘ♪」
「アレ、って…」
「アレ」
そういって指差す先、今は弟となった妹を指差す若葉。
その双葉は、自分に視線が注がれると、若葉と同じ様に舌を出して誤魔化す。
「そっ、それじゃあ…」
「ゴメンねー、もう暫く女の子生活をエンジョイしててね♪」
「なぁぁ…」
その言葉を聞いた瞬間、清彦の体がガクリと崩れ落ち、そのまま床にまで倒れ込む。
「か、会長!」
慌てて敏明が駆け寄って、抱き上げる。
「会長、気を確かに! まだ出来ない訳ではないのでしょう!?」
「そうだけど、ホラ会長ちゃんそろそろアノ日で…」
「フ、フフフ・・・もう・・・お終いだ・・・」
「会長!?」
「敏明君・・・フフフ・・・いいよ、好きにしても・・・ウフフフフ・・・」
「かかかかか会長!!??」
「えっ! トッシーいっちゃう? やっちゃうの?」
「薄い本が熱くなるわね…」
「ななななな何言ってるんですか二人とも!?」
「ぼかぁもう疲れたよ・・・」
「かいちょおぉぉーーー!!」
こうして、生徒会長・清彦の受難の日々は、まだまだ続くのであった。
終わ…
「あっ、そういえば男の子のままじゃ流石に恥ずかしいな…委託先頼んでおかなくっちゃ」
「あら、私がやりましょうか?」
「えっ、ホント? 助かるー」
「…」
終わり?
ある日の、イクシマ家。
「…」
脱衣場に立ち、洗濯物の山を見つめる清美。
徐に手を伸ばしたかと思うと、その山の中から、一つの下着を引き出した。
それはイクシマ家に同様の物はあっても、この大きさの物は存在しえなかった、ブラジャー。
「…」
そしてそれを自分の胸に宛がう。服を着ているのに、胸の間に出来た空間には、まだ余裕があって。
「…ずるい…」
ポツリと呟いて、そのまま立ち尽くす清美だった。
終わり。
エロを書かないのではなく、『書けない』の間違いだろ?