☆男子たちのうわさ話
「あのさ、うちの水泳部の女子ってさ、レベル高くね?」
「お前その話飽きねえよな。最後には結局、沖浦琴葉がエロいってなるってのに」
「確かに沖浦の身体はすげえ……でも、なぁ?」
「ああ、ここにいる沖浦の幼馴染、兼、我々の裏切り者、速見敬二サマサマと付き合ってるからなあー、超美人なのに」
「なんかむかついてきた!くそっ!速見、テメー!」
「うわっ、やめろっ!」
「沖浦さんの味はどうだったんだ!言えー!」
「琴葉の味?琴葉の味って……あ!そういう意味か!?」
「もうヤッたんだろ?言ってみろよお前ー!」
「い、いやそれはだな……」
「まあ、ヤッてなかったらおかしいよな」
「俺だったらヤるね。ソッコーやる。あんな美人と付き合っててヤらないわけがない」
「……ま、まぁ当たり前だよな!あいつの乳とか舐めまくってやったぜ…………あたしってそんなふうに思われてたのね」
「うおー!すげー!」
「やっぱ敬二はちげーな。エロ速見って呼ばれるだけあるわ」
「……って、あ!噂をすれば本人が向かってくるぞ」
「本当だ。すっげえ。沖浦すっげえ乳揺れてるよ」
「あの水着派手すぎだろ。やべっ勃ってきそう」
「は、速見!今の話、沖浦さんには内緒な!な!」
「あ、ああ……」
☆ ★ ☆
イメージは海。サンゴ礁をスイスイと泳ぐ。俺はどこまでもいける。
現実は全く違うっていうのに。
水の膜を破り、顔を空気中に出す。すっと夏の空気が顔を撫でる。乱れた息が身体を揺らす。身体の振動で水に波紋がつくられる。息を整えながら、その行先を追う。
白いプール台の上で、顧問の教師はいかにもがっかりした顔で俺を見下げていた。疲労に襲われている身体に、彼女の一言は重く響く。
「沖浦さん、また……タイム……」
その先は聞かなくてもわかる。下唇をかもうとして、やめた。
「……何秒くらいですか」
「3秒。この前よりもだいぶね。あなたの最高記録、二週間前の記録と比べると……12秒も落ちてるわ」
「12秒」
絶望的な数字だ。子供だってわかる。
俺はプールから上がった。水が押しとどめようとするのに抵抗してプールサイドに膝を付ける。
身体から水が落ちていく。息は弾んでいない。ただ、喉がうまく動かない。
隣で顧問の教師が静かに話し始めた。
「なんでタイム落ちてるのか、わかってるわよね」
「……はい」
「もちろん、それはあなたのせいじゃないわ。仕方ないことなのよ」
同情的な声に俺は下を向く。大きな谷間が目に入った。俺の肩を唸らせている重量物だ。その谷間に溜まった水を指で弾くと、脂肪の塊が震える。
水色と青色を使った水着は、俺のHカップの胸を支える海外輸入物だ。真ん中を蝶々結びで結んでいて、おっぱいと水着の間にはパッドをつける隙間もない。ボトムスも腰を紐で結ぶだけの大胆なものだ。もちろん、水着以外なにかをつける隙間はない。
腕を胸の下で組むと水着が動いた。こんな簡単に動くなんて……よく泳いでいる時にずれなかったな。
「でも、成長期の女なら一度はぶつかるものなの。そのビキニで泳ぐって言い出したときは驚いたわ。あなたは本当に水泳が好きなんだろうなって。でもね」
「先生」
「……なに?」
「あたし、今日、もう帰っていいでしょうか?」
つい怒るような口調になってしまう。この女性に女になった男の気持ちがわかるとは思えない。
しかし、俺はふっと微笑んでくれた教師を見て、その考えが愚かだということに気づいた。
「…………そうね。もう一度……水泳のこと考えたほうがいいかも」
「ありがとうございます」
優しく微笑んでくれた教師の隣を通る。泣きそうな目は彼女には見せられない。
ぺたぺたとプールサイドを歩いていると、他の女子部員たちが俺の周りに集まってきた。『沖浦琴葉』は人気者だからな。
普通の競泳用水着を着ている彼女たちは、俺を心配していた。
「琴葉ちゃん!元気出して!」
「大丈夫よ。琴葉。落ち込まないで」
女子部員たちは本当に心配してくれる。……悪いけど、心に響かないな。
だからといって、『琴葉』のイメージを崩す訳にはいかない。
無理にでも笑った。『琴葉』がいつもやっていたような溌剌とした声を出す。
「皆ありがとう!嬉しい!でも、今日は本当に不調みたいで……」
「琴葉ぁ~」
「ごめんね~」
彼女たちの一人が俺に抱きついてきた。俺もこういうスキンシップには慣れたもので、彼女の背中に手を回した。
柔らかい女子の身体だ。きっと彼女も俺の身体を抱きしめて同じように思っている。だけど、この子たちには巨大な胸が潰される感覚は一生わからないだろうなぁ。俺の巨大な胸は彼女の小さな胸に潰されている。
抱きついてきた彼女が耳元で囁いてきた。
「……もしかして、生理?」
「ち、違うわよ」
「じゃあ、つわり?速見くんに……」
「そんなわけないでしょ。もうっ」
肩を掴んで優しく引き離す。下ネタを言った女生徒はニコニコ笑っている。他の友だちも同じように笑っている。
どうやら俺は『琴葉』らしく演技できているらしいな。いつも冷や冷やしているっていうのに。
「だって速見くんと付き合って二週間でしょ?もしかしたらと思って」
「も、もしかしたらってなによ!」
「琴葉ちゃん顔真っ赤だよー」
「顔が真っ赤……?ま、まさかなにもしていないというのか……あのエロ速見……意外とヘタレだったのか」
意外、という風に遠くの男子グループを見る女子が一人。
俺、エロ速見って呼ばれていたのか……まあそりゃ女子の胸とかはジロジロ見てたけど……。なんかしょんぼりしちまう。肩を落とすとゆれるこの胸にも。
「はぁ……今日は帰るわ。あ、あと」
「なに?」
「えっと……」
「なに?」
『琴葉』ならこういう時にもじもじとするはずだ。顔を赤くして自分の髪をいじってくるくるとまわす。俺の幼馴染はそういう女子だった。乙女的な行動を素でする女だった。
俺は自分のツインテールに指を引っ掛けると水を拭った。
「ちょっと……あたし、敬二と話すから。女子ロッカーに誰も入って来ないで欲しいんだけど」
女子たちが色めき立つ。『高校生の男女、しかも恋人同士が会う』というのはそういう効果がある。
そういう色気のある関係じゃないんだけどな……まあ思いたい風に思わせとくか……
☆ ★ ☆
プールサイドに溜まっている男子たちの群れに歩いて行く。ゆっさゆっさと胸がゆれている。
地面に屈んでいた上半身裸の彼らは内緒話をしていた。聞かなくてもいい。どうせスケベな話だ。男たちの頭の中にはそれしかないんだ。
そして、そのスケベ男子たちの中には『俺』もいた。速見敬二だ。
『敬二』は男子たちにからかわれている感じだったが、誤魔化すようにすぐに自慢気な顔をした。
あれは俺がエロい嘘を言うときによくしていた顔だ。傍から見るとバカっぽいな、あれ。
しかし、琴葉も充分に俺の演技を果たしているみたいだ。
男子生徒たちは俺に気づくと、驚いて、すぐに俺の胸に目線をよこした。
この肉体になってから決まりきった男たちの反応。いやらしい目が全然隠せてない。男子たちはいつもこれだな。まあ、男子っぽく演技するって意味じゃ『敬二』が俺の胸を凝視してるのも許すけど。
俺は彼らの前にたつと、イタズラっぽく笑って右肩の紐をつまんだ。
「まーたあんたたちはえっちな話ししてたわけ?」
「お、沖浦……」
「誰と誰がヤッた、とかしか言ってないんでしょ。全く……」
つまんでいた肩紐をはなすと乳がぶるるんっと震える。
このセックスアピールに男たちがごくりと生唾を飲む。目を大きく開く。単純すぎて笑えてくるな。
『派手な水着をきた美女が水着の下になにもつけずにいる』もちろん俺だってそんなツインテール美女がいたらむしゃぶりつくけどよ。でもそれは残念ながら自分なんだよなぁ。
「ち、違う。沖浦さん!俺達は最近タイムが縮みまくってる敬二がすげえなって言ってただけだよ」
「お、おい!」
この中で一番真面目な奴がまともなことを言う。そして、しまった、という顔になった。
もちろん、琴葉が入っている『敬二』が水泳の全種類でぐんぐんとタイムを縮めていっているし、確かにこのままいけば県の代表になれるかもしれない。
だが、場が悪かった。
今さっきタイムを3秒も伸ばしてしまった『琴葉』の前でそれを言ったのだ。
怒るべきか?怒ってもおかしくない場面だけど、『琴葉』は怒るのか?
迷って琴葉に目をやると、琴葉は俺の顔で首を少しふっていた。『怒るな』ということだ。
俺は少しだけ怒った顔をつくった。
「なにが違うのよ。そんなこと誰も信じないわよ」
「い、いや」
「あーあ、そんなだから、このエロ敬二にタイムで負けるのよ」
男子たちは安心したように苦笑いをしあう。
俺も同じように笑っていると、水着から伸びる長い足を組換え、琴葉が『よく耐えたわね』というアイコンタクトをよこした。
琴葉が俺の胸を指さす。
「で、なんの用事なんだ。エロい水着を見せびらかしに来ただけじゃないだろ?」
「あの……敬二……ちょっと……話があるの。来て」
男子たちがニヤニヤし始める。この光景はさっきも見たな。ま、女子たちと違うのは俺に対するエロい目ぐらいで、基本的に女子も男子も変わらないな。
琴葉はすごくいやらしい笑いを貼り付けて立ち上がった。あー、俺っぽい俺っぽい。
「わかった。お前ら悪いな。行こうぜ、琴葉」
「そうね」
「どこに行くんだ?」
「女子ロッカー室」
琴葉が立ち上がると、割れた胸筋を日差しに反射させた。よく鍛えたな、こいつ。
俺は琴葉の手をとった。男の力強い手だ。少し胸の奥が動いた気がする。
プール上の皆が俺達を見ている。恥ずかしいけど、カップルだったら自然だよな。
☆ ★ ☆
女子ロッカーはパステルピンク。まさに女子の色って感じだ。
この二週間、ここで制服を着替え、部活をした。ここで友人たちと恋話やファッションの話をしたし、彼女たちとスキンシップをとったりした。
たった二週間前はパステルブルーの男の中にいた俺がだ。
「俺は休憩時間じゃないんだから早めに済ませてくれよ?」
「わかってるわよ。すぐにあんたをスケベな男子グループに返してあげるわ」
「男子はエロいものに反応しちまうんだから仕方ねえだろ」
手をつないでいだまま琴葉がつぶやく。
俺から握ったはずの手だが、いつの間にかそれに応えるように琴葉も力を込めていた。男の力って強いな。いや、女が非力なのか。
握られた手を離し、俺は女子ロッカー室のドアを閉めた。念の為に鍵も閉めておこう。
ドアを背にして琴葉を見る。金属製のドアが水着紐とボトムス以外の肌に触れて冷たい。
「……で、女子ロッカーでなにをしようってんだ?」
「話し合いよ」
俺の言葉を聞くと、琴葉が張り詰めた顔になった。
周りを注意深く見渡す。誰かいないかを確かめるためだ。二人きりじゃなけりゃ話せないことだからな。
「わかった。言葉遣いはどうするんだ?」
「大丈夫。友達には『敬二と話があるから入って来ないで』っていってあるわ」
「そうか安心したぜ…………ふー!この前が敬二口調のまま話し合いだったからかしら。変になりそうだったわよ!」
『敬二』がいきなりオカマのようになる。すごく気持ち悪い。吐気がするほど醜いし、近づいてほしくないな。だけど、俺にとってそれは安心の象徴だった。なぜならそれは、俺達の関係が妄想ではないということだからだ。
俺はくっつけていた金属のドアから身を離した。
「お前が俺を演じてるときってすっげえ変態っぽいこと言うもんな。俺、あんなにスケベじゃないぜ?」
「それを言うならあんただってそうよ。あたし、あそこまで悪戯っぽくないわよ。それにしても……付き合ってることにして正解だったわね。いつもはちょっと鬱陶しいけど」
「そうだな、こういう時はありがたいぜ」
俺と琴葉は付き合っていない。付き合っているという嘘をついている。
幼馴染ってだけで頻繁に会うのはおかしいからな。若い男女が二人きりになりやすいのは恋人だとと二人で判断したのだ。
もちろん、疑いの目を持たれないために偽装デートはしている。食事に行ったり、ショッピングをしたりだ。
「カノジョはデートも楽しめるからいいけどねぇ……あたしは……」
「楽しんでねえよ」
「服を見てキャーキャー言ってたくせに……あたしなんてトイレにいくぐらいしかなかったっていうのに」
デートの時はずっと演技していないといけないので、かなり辛かった。
ふわりとした可愛らしい服や短いスカートを履いて女役をこなさないといけないのだ。
レストランに入れば甘いデザートを『敬二』に甘い言葉でおねだりし、ショッピングにいけば物色でカレシを何時間もまたせなければならない。
この前別れ際にキスした時なんて思い出すだけでもどうにかなりそうだったぜ。まさか人生初のキスが自分になるとは思わなかったしな。
「……俺達、いつになったら元に戻れるんだろうな」
ポツリとつぶやくと、琴葉が初めて悲しい顔をした。
「また台風を待ちましょ」
「また雷に打たれるしかないのか」
「そういう結論になったでしょ」
俺たちは二週間前に雷に打たれて入れ替わった。文章で表せばただそれだけ。
だから、それ以外の解決方法なんて全く思いつかないし、誰にも相談していない。人に言ったら異常者扱いされるのは目に見えてるしな。
天気予報ではこれから一ヶ月晴れが続くらしい。今年は台風の気配もない。
琴葉は天気予報を信じない性格なのであっけからんとしている。が、俺は怖さを感じるときがある。
もしかしたら戻れないんじゃないか。女である琴葉が平気で、男である俺が怯えているのは本当に情けないが、この恐怖はどうしても拭えない。
それに、俺は琴葉に対する後ろめたさがある。
琴葉を女子ロッカー室に呼び寄せたのも、これを言いたかったからだ。
「……あのさ……琴葉」
「なに?」
「ごめん、タイム、また増えた」
入れ替わりのことがバレれば俺達は日常生活が送れなくなる。特殊な病院に連れてかれ、元に戻る可能性が潰されるかもしれない。だから、俺達はお互いの演技をしきると誓い合ったのだ。なのに、俺はそれができていない。
琴葉は薄笑いを浮かべていた。てっきりがっかりすると思っていたのに。
俺のある部分を琴葉が指差さす。
「仕方ないわよ。そんな重い物二つもぶら下げてるんだし。今どれくらいになったの?」
「Hカップ……」
「すごいわね。グラビアアイドルになれるんじゃない?」
たぷんとおっぱいが揺れた。
二週間前、琴葉の身体はBカップだった。しかし、入れ替わったときからどんどん大きくなり、今ではHカップの爆乳になっている。肩やウエストは全く変わらないのに胸だけ大きくなるものだから、身体に掛かる負荷は尋常じゃない。まあ、肩にメロンをのせているようなもんだ。
それに、俺は競泳水着がつけられなくなってしまった。『琴葉』は水泳部だというのに、だ。
「そういえば、どう、その水着のつけ心地は?」
「最悪」
「えー、結構似合ってるのに」
「お前もエロい水着って言ってたじゃねえか」
「あはは」
笑う琴葉から目をそらす。エロい水着ってことは否定しないのな。
俺を包んでいるこれを選んだのは琴葉だ。俺に顧問の教師と交渉させ、このビキニを着せた。確かにこんなものでなければ今の俺には身につけられないが、あまりにも扇情的すぎる。よく見れば性器の形がわかる水着だからな、これ。
初めてつけてきた時なんて男子たちが全員勃起して動けなくなった。それに、これは琴葉から聞いた話だが、最近の水泳部の男たちのオカズは『沖浦』が流行しているらしい。
あの時、琴葉は複雑な顔をして話していたが、いい気分はしないだろうな。自分の身体で抜かれているわけだし。
「……琴葉はすごいよな」
「なにが?」
「お前が俺になってからタイム縮んでいく一方だ」
「それは……まあね。敬二の身体、鍛えれば鍛えるほど結果が出るんだもの」
最近の琴葉は異様に筋肉が増えていっている。胸、腕や足に筋肉がつき、少し身長ものびたようだ。水泳に理想的な体型だ。
男の俺が見ても惚れ惚れするぐらいだから、エロ速見というアダ名さえなければ誰かに告白されているだろう。そして、それも琴葉が『敬二』の演技をやめればすぐに取り去られる……
「じゃあ、えっと、今度はあたしからなんだけど、次のデートについて話さない?」
「次のデートか……わかった。次はどこにするんだ?」
「そうね、久しぶりにあたしの、敬二の部屋に来ない?」
「俺の部屋か、いいな」
「でしょ?『カレシの家に来るカノジョ』なんて素敵じゃない?」
俺ももしカノジョができたら家に泊まらせたいと思っていた。そういう意味じゃ実に『敬二』らしい発想だな。
なんだかんだいってデートについて話す琴葉は楽しそうだ。やっぱり女子はデートというものが好きなのだろうか。
平らな股間を包むボトムスを感じつつ、次の偽装デートの話し合いを続けた。
☆ ★ ☆
太ももから伝わる冷たさに股をこすり合わせる。
夏とはいえ、長く裸でいると寒いな。早くセーラー服に着替えたい。
デートプランを話し終えると、顧問との会話を琴葉に教え、別れることにした。
「じゃあ、俺、今日のとこは帰るってことにしたから」
「あたしは練習に向かうわね」
「それじゃあね。言葉遣いには気をつけて、敬二」
「ああ、気をつけて帰れよ、琴葉」
琴葉が女子ロッカー室を出て行く。
身体はすでに乾いていた。しかし、これからまた濡らさなければならない。塩素を流さなきゃ髪が傷んじまうからな。
俺は女子ロッカー室の奥、シャワー室に向かう。
シャワー室は仕切りで区切られている。個室の中ではパステルピンクカラーのタイルが待ち受けていた。
ここには誰もいない。琴葉になってからここが好きだった。ここは誰も邪魔をしにこないからな。
赤いバルブをひねると湯が出てくる。手に当て、暖かさと勢いを確かめた後、身体にあてる。女子の身体はデリケートだからな。強すぎちゃいけないんだ。
足、太もも、腹。胸には当てないで、そのまま髪の毛に当てる。体が暖かさに包まれる。精神的な疲れがとれていく。
母さんの腹にいる子供ってのはこんな気持なのかもな。男である俺は母親にはなれないけれど。いや、今はなれるのか。
「そういや髪、まだ結んだままだったな」
安心しすぎて男言葉が出てしまった。まあいいよな。誰も聞いてないし。
俺はツインテールを解こうと、結び目に手を伸ばす。
瞬間、俺のおっぱいが弾んだ。
「きゃあっ!」
なにが起きてるんだ!?
驚いてる俺のおっぱいに細長いものが絡みつき、水着の上から揉みしだいてきた。
これは指だ!男の指。男が胸を揉んでいる!
「いやっ!なにっ?きゃっ!」
二つの手が俺の二つの胸を揉む。感触を味わうように、俺の女の部分を遠慮なく揉む。気味が悪い!
驚きのあまり抵抗も出来なかった。シャワーの流れる音だけが個室に響いている。
襲われてる!
今までもこんなことがないわけじゃない。『琴葉』のような魅力ある美女が襲われないわけがない。痴漢やナンパなんて日常茶飯事だ。琴葉との偽装カップルがなければ俺は餌食になっていただろう。
しかし、こんなところで襲ってくるなんて!
ただ、幸か不幸かこんなところに入ってこれる男は限られている。水泳部の男子たちの誰かだ。
「あ、あんた誰よっ?」
かろうじて琴葉の口調を保つ。精神の均衡を保つためだ。
女言葉を出せてるということはまだ大丈夫だ、まだ。
「今すぐやめなさい!でないと、敬二に言いつけるわよ!」
犯人は誰だ。
あの真面目なやつだろうか、それともエロいやつだろうか。いや、あいつらにそんな度胸はないな。
揉んでいる男の匂いが鼻をくすぐった。なぜかわからないが、くらりとした。
「安心して、あたしよ」
囁かれて耳が熱くなるのを感じる。なんだこの感覚は。
この声には聞き覚えがある。
二週間前まで十何年間もずっと聞いていた声を忘れられるわけがない。
「……琴葉?」
「正解」
『俺』の声だ。琴葉の声だ。
つまり、琴葉が俺を襲おうと後ろから手を伸ばし、俺の巨大な胸を揉みしだいているってことだ。女の琴葉が男の俺を襲おうとしている!
だが、琴葉だったらギャグかもしれない。いや、きっとそうだ。焦って損したぜ……
「な、なんだ琴葉か……なんでお前が?こんな、襲うみたいなことを?」
琴葉の手の動きは止まらない。そればかりか激しくなってくる。
とりあえず、俺は平静を装うため、左手を壁につけ、身体を支えた。琴葉の返事を待つ。
「なんていうか、すごく言いにくいんだけど」
「うん」
「あたしも敬二の体になったからさ。やっぱり男子の中でいろんな話するわけじゃない?」
オブラートに包んでいるが、つまるところエロ話だ。何年何組の女子のパンツは何色だの。何発抜いただの。
女も変わらない。誰と誰がつき合ってるとか別の高校の誰かの経験人数とか、むしろ女子の方が盛んなぐらいだ。
だが、それが今の状況となんの関係があるんだ?
「で、最近、あたしの……身体の敬二ってスタイルよくなってきたっていうか。よくその身体の話をするのよね」
「その話、前にも聞いたぞ。この身体が、えっと、その、オカズに使われてんだって?」
「うん、そうなの」
勘というやつかもしれない。なんだか変な空気だ。心臓の鼓動を感じる。
腰に琴葉の手が這ってくる。ナメクジみたいな動きにぞくりとする。
「あたし達って付き合ってることになってるじゃない?」
「う、うん」
「男子たちに言わせると手を出してないっておかしいらしいわ」
「あー、なるほど……まあ、そうだな、わかる」
こんなスタイル抜群の美女と付き合っていて手を出さないのは男としておかしい。
まあ、わかる。俺も琴葉が幼馴染でなければ告白していたかもしれないし。
這っている琴葉の左手が俺のボトムスに触れた。
「って、おい、お前まさか」
尻に硬いものが押し付けられている。これは俺のアレだ!
俺のトップスに琴葉の右手が触れる。胸の横の紐に親指を引っ掛け、上に弾いた。
すると、眼下で巨大な胸がはじけた。トップスが上に持ち上がり、俺のピンク色の乳首が姿を表した。
俺が男だったときいつも見たいと思っていた女子の乳首。しかし、こんなものは二週間見飽きていた。
逆説的に言えば琴葉は二週間ぶりに女の乳首を見るということだ。男の立場で……男の立場で!?
「こ、琴葉!冗談はやめろ!」
我慢の限界だ。シャワーを地面に落とすと、琴葉の腕からのがれるように身をよじった。
琴葉の親指が水着に引っかかったままで、トップスはちぎれ去った。また新しい水着注文するハメになるのか!?
拘束具が外れ、おっぱいの震動は今までの比ではなくなった。肩にものすごい重さがかかる。
今の俺がつけてるのは紐で結ばれたボトムスだけか。裸みたいなもんだ。
シャワーを引っ掛けるための金属のポールを背にし、琴葉と向かい合う。
琴葉は下半身に大きなテントを張り、俺の身体をじっとりと見ていた。
この目は何度も見たことある。もちろんこの身体になってから。
あの目は男特有の品定めする眼。『この女をどうすれば犯せるか』というオスの眼だ。
「冗談じゃないよ。敬二」
これが本当にあの琴葉なのか?小さな頃にままごと遊びでお母さん役を進んで引き受けていたあの琴葉?
俺は裸になった胸を両手で隠し、精一杯琴葉を睨んだ。冗談じゃないってどういうことだ。
琴葉は俺の抵抗を屁とも思わないようで、ずんずんと近づいて来た。
「いいわよ、その胸を隠す動き。女の子っぽくて、すっごく興奮する」
「やめろ。こっちにくんな……」
「敬二、かわいいわよ」
「か、顔を近づけるな。気持ちわんぐっ!んんっ」
あっという間だった。俺の顔を持った琴葉は俺に口づけをした。男の硬い唇だった。
この前のデートでもした行為だが、今回は違う。舌まで侵入してきたのだ。う……
琴葉の舌が俺の口内を荒らす。俺の柔らかい舌をすすり、いたぶり、からめる。
「ふぁ……れろ……ん……」
俺は琴葉の胸を押して引き離そうとしたが、男には勝てない。まったく意味がない……!
琴葉の目と俺の目の距離が十センチ以内になっている。俺は目を開けたまま、琴葉に『やめろ』とアイコンタクトを送った。
すると、琴葉の目が半月形になり、俺と唇をはなした。
「ぷはぁっ!」
水泳から上がったとき以上に俺は息を切らしていた。
ディープキスされた。しかも男に。さらに言えば自分自身にだ。信じられない。
だが、それ以上に恐ろしいのは、恐ろしくないということだ。こんな感情は知らない。でも、気持良い……。
理解したくなくて身体を折り曲げる。胸が重力に従う。
「敬二、これ見て」
「うっ!?」
目の前には脈を打つ赤黒い角。おびただしいほどの血液がそこを巡っている。それは大木のように太く、鉄のように硬い。琴葉のペニスだ。
琴葉は丸裸だった。いつの間に脱いでたんだこいつ。
二週間ぶりに見る自分の性器から目が逸らせない。俺のはこんな凶悪な形じゃなかったぞ。
「で、でかい……」
「そうなのよ。これ、一日一日大きくなってるの」
俺のおっぱいのようなものだろうか。琴葉のペニスも栄養過多のようだ。
生きているようなそれは、俺の胸の谷間に先っぽが当たっていた。すげえギンギンに勃起してるな。
慌てて体勢をとり直す。鉄のポールが背中にあたり、上半身がぷるんと震える。
「お、お前、もしかして、お前、お、俺…………じ、自分に興奮してるのか?」
「そうみたい。敬二を見てるとこうなっちゃうの。何度オナニーしてもこうなっちゃう」
「お、おなにぃって……」
入れ替わってから性的なことについて話したことはなかった。意識して話さなかった。琴葉が俺の身体で男のオナニーしてるなんて知りたくなかったからだ!
今すぐドアを開いて逃げなければならない。助けはこないのだ。自分が来るなといったから。だっていうのに体が動かない!
顔を上げると琴葉が真剣な眼差しで俺を見つめていた。屹立したペニスが俺の太ももに触れている。
「ここだけの話、あたしもその身体で抜いたことあるわ……10回ぐらい」
「そ、そんな……琴葉……」
「ほら、敬二、これに触ってみて」
「あっ……」
手をつかまれ、琴葉のペニスに触れさせられる。
熱い、生命の脈を感じる。男の欲望の塊だっていうのになんでこんなに暖かいんだ……。
俺がこれを持っていたのだということが信じられない。不思議な感覚に手が離せない。
「この前、街でデートしたでしょ。ほとんどこうなってたわ」
「……よくトイレにいったのって」
「ご想像のとおり。その度にオナってたわ。敬二のセックスアピールすごすぎるんだもの」
セックスアピールした覚えなんかない!しかし、琴葉にはそう見えていたのだ。
俺とパフェの食べさせ合いをしている時も、ショッピングで俺の水着試着を見た時も、帰り際にキスした時も、俺の身体で勃起していたのだ!
琴葉の腕が再び俺の胸にとんできた。水着の上からではなく直に触れられる。
「きゃぅっ!」
「すぐ気持良くなるわ」
「そ、そんなわけ……はぁん……」
琴葉はなでるように丁寧に揉んだ。乳首が突きでてくると、琴葉はそれをつまんで転がした。こいつ、どこでこんなテクニックを……。
俺は感じていた。これが女の快感なのか……。身体全体に広がるなんともいえない感情。気持ちいい……。
女の身体だから?琴葉の身体だから?そんなことはどうでもいい。俺の身体の感度は抜群だ。
「こ、琴葉ぁ……あぁぁ……」
「大きなおっぱいね。いやらしい」
「お、お前のだろぉ……」
股間が、俺の女の部分が動いている。下半身がキュンキュンと求めている。求めているってなにをだ?
琴葉の手の動きが強くなる。俺の熱が高くなる。鼓動が破裂しそうなほど早くなっていく。俺、大丈夫なのか?
「あたしのときはこんな大きくなかったわ。ね、ドキドキしてる?」
「……うん」
正直に頷くと、琴葉がにこっと笑った。琴葉の入った『敬二』はとてもかっこいい。
俺の下半身は濡れに濡れていた。シャワーの水とは違う液体。愛液でだ。オカズにされるのも……仕方ない……
琴葉の目線が下にさがり、いやらしい笑いを貼り付ける。
「すごい。グショグショじゃない」
「み、見ないでくれぇ……」
「もうそろそろいいわよねっ!とっ!」
「え? ……きゃあああっ!」
琴葉は屈み、俺の膝裏に右腕を回し、俺の身体は持ち上げられた。
片足だけ持ち上げられ、立っていられない。左手で鉄のポールを掴んで身体を支える。左乳がポールに押し付けられ、形を変えた。あふぅ……。
右手もポールにもっていこうとすると、膝下を通っている琴葉の手がそれを止めた。なにをするんだ……?
「お互い準備万端みたいだし、そろそろヤるわよ」
半ば酩酊状態にいた俺もその言葉で現実に連れ戻された。
男とヤる?俺が?男の俺が?そんなバカな!
俺の混乱を加速させるように、俺の下腹部のキュンキュン音はなお高まっている。なんだこの音は!なにを求めているっていうんだ!
琴葉の雄々しくそそり立ったブツは、器用に俺の水着の股間部分をずらした。
愛液のバリアーを越え、ぴとり、と俺の膣の入り口に琴葉の亀頭がくっついた。ひいっ!
考えてみればだいぶ前からこうなる運命だったのかもしれない。
熱くなっていく身体が、自分に女性性を認めさせる。ああ、間違いなく今の俺は女だ。
俺はこれから貫かれる。あの太い男の欲望に。琴葉のギラギラとした征服欲に。犯される。もう逃げられない。
それならせめて……
「やさしく……して」
上目遣いで言うのが精一杯だった。初めては痛いって聞くし、優しくしてほしい。
俺の言葉に琴葉の腕に力がこもる。男の力強さに右腕が痛みで悲鳴を上げる。優しくしてって言ったのに!
硬さを増したペニスが俺の身体に前進してくる。入ってくる……!
「何もかも忘れさせてあげるわ」
「ああっ!」
琴葉のペニスが俺を押し広げる。痛い。肉体を引き裂かれてる!
しかし、それと交じり合うようなこの快感はなんだ。痛みに似たこの気持ちよさはどこから来るんだ。
気が狂いそうだ!
「中に入ってるってこんな感じなのね……敬二の中、暖かいわ」
「あ、あんまり、う、動かないで……あああああっ!」
「無理に決まってるでしょ」
意地悪くつぶやき、ペニスが進んでくる。うめつくされていく。俺は正常なのか?異常なのか?もうどうでもいい。気持ちよければどうでもいい……。
ゆっくりと進んできたペニスが、俺の中にある何かにあたった。
止まった……?
しかし、それは一瞬だけの停止で、すぐに進み始めた。
計り知れない痛みが襲った。痛すぎる!今まで味わったどんな切り傷よりも痛い!
「い、いったぁ!琴葉ぁ!琴葉っ!い、痛い!」
「あ、今の処女膜だったの」
「膜ぅ……?」
「処女喪失よ。おめでとう」
なにがおめでとうだ!痛みが収まらなければ大声で叫んでいた。
そして、今まで味わったことのない快楽が俺を翻弄し始めた。
「ふぁぁぁぁんっ!なにこれぇっ!」
「ちょ、ちょっと、締め付けすぎ。これじゃあすぐ出ちゃいそうよ」
「だってぇ!だってぇ!」
ペニスが膣の中をこする。その摩擦が火花を散らす。なんだこれは!こんなもの知らない!
愛液がドパドパ出ている。潤滑油だ。快感を増幅させるため、琴葉のペニスを動かすために。もっとでろ!
……だが、琴葉は気持ちよくなっているのだろうか?快楽に弄ばれているから琴葉の顔を見ることができないが、気持ちよくなっていてほしい。そう思うと下腹部の力が強まった。膣で亀頭の形を感じている。
そのうち、琴葉のペニスが俺の奥底にコツリとあたり、動きを止めた。
「これが子宮の入口ってやつかしら?」
冷静に分析する琴葉。琴葉からすればまだ序の口といったところなのだろう。
俺は違った。つまり、絶頂した。子宮口を叩かれただけで、女としてイッたのだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっっ!!」
女の声で女の身体で女としてイった。
叫んだ声がシャワー室に反響して耳に届いた。乳首は勃起し、愛液は溢れ、身体が沸騰しそうだった。でも気にならない。この快感をもっと味わっていたい!
もうダメだ。俺はよだれを垂らしながら懇願する。
「もっと動いてぇ!お願い!出し入れしてぇ!」
「わかったわよ!敬二!耐えなさい!」
「もっと感じたいのぉ!はやくぅ!はぁやぁくぅ!」
琴葉はペニスを一気に引き戻すと、思い切りパァンと打ち付けた。これを待っていたんだよ、俺は!
ゆっくりだったさっきのと違い、シャワー室にも響く音を鳴らしたそれのおかげで、俺はまたイった。
「んああああああああっっっ!!」
俺は鉄のポールを掴む力もなくなり、もたれるだけになった。愛液がでてるぅ……。
琴葉が俺を蹂躙する。休むまもなく、出し入れされ、子宮口が突かれる度に俺はイッた。すごく幸せだ。
俺が床に転がると、琴葉は俺に覆いかぶさって腰をふり、おっぱいにむしゃぶりついた。正常位だ。
「琴葉ぁ!俺ぇ!ああんっ!俺ぇっ!うぁんっ!」
「すごく気持ちいい!敬二って最高!」
乳首を舌で転がす琴葉を愛おしく感じ、いつの間にか頭を抱擁していた。もっと舐めて!俺を感じさせて!
この男に愛されたい。女の悦びをもっと味わいたい!
琴葉の動きがピタリと止まった。俺はかろうじて残る通常の意識を使い、抱擁を少しゆるめた。
「はぁん……どうしたのぉ……?」
「さ、流石に中に出したらダメよね」
琴葉は我慢している顔をしていた。女を守ってくれる男の顔だ。かっこいい……。
俺は柔らかい口づけをし、身体のをぐるりと捻った。世界もぐるりと回った。
体勢が入れ替わる。今度は琴葉が下、俺が上、騎乗位だ。
琴葉は呆けた顔をしている。元は俺の顔のはずなのに、琴葉がやるとどうしてこうも可愛らしいんだろう?
「琴葉ぁ……」
「け、敬二?」
「中に……出して」
琴葉の耳元でつぶやくと、膣内のペニスはまた硬さを増した。すごい!まだカチカチになるんだ!
俺は腰を動かす。ズッチュズッチュと俺の膣が卑猥な声を出す。琴葉のペニスは天井知らずの快楽増幅器だ。
「ああっ!あんっ!お、俺!あんっ!琴葉の!ふぁぁっ!精液がっ欲しいよぉ!」
熱を込めて叫ぶ俺を見て、琴葉も覚悟を決めてくれたようだ。
腰の動きが止められない。俺はこわれちまったのかもしれない。でも、琴葉さえいればいいや……。
「わかったわ。ぶち込んであげる」
「ぶち込んでぇ!俺の子宮に精子をいれてっ!ああああっ!」
今度は琴葉から優しいキスをしてきた。俺達の気持ちは一つだ。
腰をしずめる。子宮の入口がコツリと音を立てた。子宮が琴葉の精液を欲しがっている。注ぎ込んでほしい!
もう一度腰を上げると、琴葉が俺の背中に腕を回してきた。
愛する男の腕。こんなに力強いものに俺は守られているんだ。
「中に出すわよっ!敬二!受け止めなさいっ!」
「出してぇ!ああああん!」
最後に腰を沈めると、ペニスが大きく飛び跳ねた。
そして、子宮に精液が発射された。やっときたぁ……!!
「きゃああああああんっ!」
膣の中で何度もペニスが震え、俺を受精させようと精子が暴れる。
俺たちはお互いの身体をぎゅっと抱きしめていた。琴葉を守りたい。守られたい。
琴葉のペニスは止まることを知らないのか、精液が膣の中いっぱいになり、外に吐き出された。なんてもったいないんだ……、
「あぁ……琴葉の精子……こぼしたくないのに……」
「いいわよ。ね、これからいくらでも出してあげるから」
琴葉はまた優しいキスをしてくれ、俺に対してにこりと微笑んだ。イケメンだ。
トクントクンと別の意味での胸の高なりを感じていた。
「ほんとぉ……?」
「本当よ」
「そっかぁ……じゃあ……安心だ……」
俺は力が抜け、琴葉に甘える形で崩れ落ちた。
琴葉が頭をなでてくれる。俺は応えるため、琴葉の胸板に頬を擦りつけた。
琴葉は宣言通り、何もかも忘れさせてくれた。
だが、考えなくてはならない時が来る。時間が来たら新しい自分をはじめよう。琴葉と一緒に。
だから、今だけはこのままで……。
★ ☆ ★
☆男子たちのうわさ話
「そういや沖浦さんさ。水泳部やめるらしいな」
「まあ仕方ないんじゃね?胸めちゃくちゃでかくなってたし、そのせいで水泳のタイム落ちてく一方だったし」
「それがさ、沖浦さん、グラビアアイドルになるらしいぜ。ほら、これ」
「え、マジ?……って、なんだこの服!ほとんど下着じゃん!エッロッ!つーか沖浦ってHカップだったのかよ!?」
「い、いや待て待て……ってことは……敬二、お前グラビアアイドルの彼女もちになるってことかよ!」
「おいおい、恥ずかしいって。ま、確かにうちの彼女は可愛いけど」
「うっぜー!むかつくー!もっとむかつくのはお前が県代表になったってことだ速見ー!彼女効果かコノヤロー!」
「かもな。琴葉とヤると力出るんだよ。なんでか知らねえけど」
「ほどほどにしとけよ?孕ませちまったらやべえし。って、あれ?そういや速見たちって付き合って何ヶ月になるんだっけ?」
「えーと、前に台風が直撃したろ?あれからだから……まあ自分で計算してくれ」
「あの台風の日に告ったわけ?へー、すげーなぁ、あんな日に」
「お、敬二、表に沖浦さんきてるぞ」
「マジか? じゃあ、俺はそういうことで。わりー!琴葉ぁー!今行くー!」
「あーあ、速見の野郎行っちまったな。グラビアアイドルの元に」
「はぁ……俺も彼女欲しい…………ハッ」
「どうした?」
「台風の日に……プールで練習……グラビアアイドル……彼女……Hカップ……ほとんど下着……」
「お、お前」
「なんちゃって。はは」
「天才か!?」
「……今はツッコむとこだろ」
終わり
ずっとまってましたよ!
GJですよ
次も期待してるっ