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換魂操滓(前編)

2013/10/23 08:36:52
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換魂操滓(前編)



「あはははっ。彼女の目の前で妹に赤ちゃん汁を注ぎこんじゃうなんて、お兄ちゃんって変態さんだよねー」
俺は子宮を満たされる快感に酔いしれながら、手足を縛られて腰だけを動かすマシーンと化したペットに蔑みの言葉を投げかけた。

「本当に敏明君はどうしようもないケダモノですよね。こんなにダメなワンちゃんが私の彼氏だなんて、恥ずかしくて人前で紹介できません」
言って敏明の玉袋を潰さんばかりの勢いで握りしめる黒髪の少女――双葉。
その嗜虐的な笑みは俺にそっくりだ。

「い……痛い! や、止めてよ双葉ちゃん!」
「だめですよ。妹さんを孕ませようとする諸悪の根源はここで断っておく必要がありますからね」

俺はこの2か月で行った洗脳まがいの行動が、双葉の魂を歪めることに成功した事実を改めて感じていた。

「ううっ……そ、そうだった。僕……妹の……若葉の中に出しちゃうなんて……」
「これで赤ちゃんができたらどうするつもり? お兄ちゃん、責任とってくれる?」
結合部を引き抜くと、どろっとした液体が俺の膣から溢れてくる。
俺はそれを白く柔らかい指ですくい、泣きそうな顔をしている敏明の顔面に塗りたくりつつ舌なめずりをする。

ああ、やっぱりいい表情をするな。
立派なガタイに反比例したヘタレっぷり。
コイツを調教のターゲットに選んだのは正解だった。

「何か言ったらどうですか? 黙っていたら何も伝わりませんよ」
と、満面の笑みで敏明に往復ビンタをする双葉。

1発、2発。3発。4発。

「うわー、お兄ちゃんのおちんちん、また元気になってきたよ」
「殴られて興奮するなんて本当にクズですね。もう私1人の手にはおえません」
「そ……そんな。待ってよ……双葉ちゃん……僕……ぼく……」
捨てられると思ったのだろう。
敏明は大型犬のような体でありながら座敷犬のように卑小な表情を浮かべ、涙声で呟く。

安心しろよ敏明。むしろ双葉はお前を一生飼いつづけるつもりだぜ。
なんせ俺が双葉だったとき、『入れ替えを解除しても本物の双葉がそう考えるように行動してた』からな。

「ですから若葉ちゃん。あなたも敏明君のご主人様になってもらえませんか?」
「うん、いいよ。双葉お姉ちゃん! このケダモノは放っておくと、どこで誰に種付けするかわからないしね」

あらかじめ打ち合わせしておいた通り。
双葉の懇願に対し、俺は柔らかい金髪ごと首を縦に振って答える。

ククク、喜べよ敏明。
これからは可愛い彼女に加え、愛くるしい妹も調教に加わってやるんだぜ。
テメェみたいにイジメられて興奮する変態には過ぎたサービスだろ?
もっともそういう風に仕立て上げたのは、昨日まで双葉の肉体に入っていた俺なんだけどさ。

今日からは妹の若葉として、双葉と2人で、ベルの音で射精するくらいまで調教のレベルを上げてやるから楽しみにしてくれよ。

「えへへ。じゃあさっそく躾の続きだよ、お・に・い・ちゃ・ん」

男である俺がクラスメイトの妹になりすまし、実の兄に対し、その彼女と2人で性的調教を行っていく。
背筋をゾクゾクッと這い上がってくる倒錯感で子宮を震わせる俺の視界の隅で、古ぼけた手鏡が妖しく輝いた。



そもそもの始まりは、約3か月前のことだ。

「おいおい……これ、マジかよ!?」
ここが図書館であることも忘れ、つい大声を張り上げてしまう。
俺の周囲に積まれた文献の山で見えないが、他の客はさぞかし迷惑な顔をしていることだろう。
けど、そんなの知ったこっちゃない。
俺は解読した内容に間違いないか、再度文献と『メモ』に目を通した。

●この【手鏡】に他人を映して呪文を唱えると、使用者と映された人物の魂が入れ替わる。

●使用者は本来の記憶を保持できるほか、入れ替わった肉体の記憶を自由に読み取ることができる。

●入れ替わりが発生した時点で【手鏡】は使用者の魂が入っている肉体へと移動する。

●使用者の肉体に入れられた人物の魂は本来の記憶と意識を封じられ、さも使用者本人であるかのように行動・生活する。
(ただし【手鏡】に関する記憶だけは欠け落ちる)

●入れ替わりを解除するには、【手鏡】を持って再度呪文を唱える。その際、距離に関係なく使用者の魂は本来の肉体へ【手鏡】ごと戻される。

●入れ替わりが解除されたとき、入れ替えられた人物は、使用者が自分の肉体で行っていた行動を、自分の意思で行ったと思い込む。
(やはり【手鏡】に関する記憶だけは欠け落ちる)

●入れ替えられた人物の魂がもとの体に戻ったとき、使用者の肉体に入っていたときの記憶は欠け落ちる。

「やっぱり文面に間違いないようだな」
俺はたまたま見かけた古物商で、二束三文で買った小さな手鏡を見つめてほくそ笑む。
コイツがあれば他人になりすまして何でもやり放題なうえ、好き勝手やった責任は入れ替えられた本人が取ってくれる。

「クク、こいつは最高だな。さしあたって何をしてやろうか……」



「あぁ……和馬……好き……愛してるわ」
「オレもだぜ、渚」
俺はウチの高校一のモテ男と名高い和馬という男と入れ替わり、ソイツの恋人である渚という少女を抱いていた。

元の俺……清彦という高校生はデブでお世辞にも顔がいいと言えない。
当然のことながら年齢=彼女いない歴だ。
そんな童貞男子高校生が真っ先に浮かぶ欲望といえば、やっぱりセックスだろう。

「ホント、渚ってココが弱いんだな」
「あっ……いいっ……やっ……」
和馬の記憶が使えるせいで、童貞であるにも関わらず女を抱く手順にとまどいはない。
軽いキスから始め、愛撫で十分に濡らしてから、いきりたったイチモツを渚の女性器の中にズブズブと沈めていく。

この肉体は何度も経験してるといえ、その肉体に入り込んでいる俺は、肉棒を包み込む女陰の感触に酔いしれるばかりだ。

「あっ……あっ……あっ……あっ……」
「っ……くっ……このまま出すぞ!」
強い締め付けによって我慢の限界に達した俺は、マグマのような勢いで彼女の中へと射精する。

ハァ……ふぅ……セックスがこんなに気持ちいいとは知らなかった。
これなら、子作りという本来の目的から外れ、快楽を得るための行為として成り立つのも分かる。

「ニヤニヤ笑ってどうしたの? そんなに私の中は良かった?」
「ああ、最高だったぜ。もう1回味わいたいくらいだ」
「うん……いいわよ」

そうして俺は、朝まで渚を抱き続けた。



それからというもの、すっかりセックスにハマッた俺はオナニーを覚えたての猿のように女を抱きまくった。



街中で可愛い女の子を連れている男を見つけては、【手鏡】にソイツを映して呪文を唱える。
一瞬視界が歪んだ後、目に映る風景のアングルが変わったことで、入れ替わりが成功したことを確認する。

さっきまで俺が立っていた場所に視線を移すと、こちらを物欲しげな・憎々しげな表情で眺める太った少年が目に入った。

まあ、そうだろうよ。
【手鏡】の力を手に入れる以前の俺は、美少女を連れた男を恨めしく思っていたしな。

けど安心しな。
お前の代わりに俺がこの子……明美っていうのか……を抱いてやるからさ。
そっちはそっちで、入れ替えられたことすら気づかず俺ん家に帰ってオナニーでもしといてくれ。

「ちょっと、どこ見てるのよ。久しぶりのデートなんだから、もっとアタシを見なさいよ」
「ああ、悪いな、明美……んっ」
そして俺は街中であるにも関わらず、『自分の肉体』に見せつけるように明美の胸を揉んでキスをする。

ホント、コイツを手に入れてから毎日が楽しくて仕方がない。
俺はいつの間にかポケットに入っていた手鏡をいじりながら、行きずりの男の顔で歪な笑みを浮かべた。



それから数時間後。
ラブホテルで明美を犯しぬいた俺は、【手鏡】を手に呪文を唱える。
世界そのものが歪むような眩暈の後、次の瞬間には自室に帰ってきていた。

今頃は、俺と入れ替えられた男の魂も自分の体に戻り、セックス後の記憶を引き継いで、明美と次のデートの日取りを話し合っているんだろう。

「にしても……」
俺は自分の姿を見て辟易した。

ズボンとパンツをおろし、毛むくじゃらの陰毛と濃くて醜いすね毛を露出させながら、肉棒の周りをティッシュで拭いていたからだ。

体を交換していたときの記憶を読み取ってみると、どうやらアイツは明美の裸を想像して自家発電に勤しんでいたらしい。
「俺って人間はホント、どうしようもないヤツだよな。こんなんじゃ女の子にモテるわけないだろうに」
言って、俺でありながら俺でない男がしでかした後始末をする。

「しかし、初めて抱いた渚といい、今日の明美といい、今まで抱いてきた数々の女の子といい、皆が皆、俺より気持ちよさそうにあえいでいたな」

ソースはどこだったが覚えてないが、女が受ける性的快感は、男のそれと比べものにならないらしい。

「普通のセックスも飽きてきたし、ここはひとつ、女の子と体を入れ替えて愉しんでみるかな」



翌日、俺は学校で梓というクラスメイトの肉体を乗っ取った。
梓は可愛らしい顔であるにもかかわらず、胸が大きくエロい体つきをした美少女だ。

男相手に入れ替わっていたときは、連れている女の子のレベルを選別基準にしていたが、自分が女の子になるとしても、ブスよりは美少女の方が断然いい。

そして梓を選んだ理由はもう1つ。
コイツには別のクラスにエリカという双子の妹がいるんだが、ソイツ等姉妹は異常なまでに仲がいい。
俺をはじめとした学年の男子連中は、美少女双子姉妹はレズだと信じて疑っていないほどだ。

男の魂の持ち主としては、いきなり男を相手にセックスするのは抵抗がある。
だからこそレズ(ついでに近親相姦)疑惑のある梓たちに目をつけたっていう訳だ。

俺は梓として授業を受けながら、エリカと2人きりになれる放課後をじっと待つ。

ちなみに俺の体に入れられた梓の魂は、そうとは知らずに清彦としての日常をなぞる。
つっても授業の大半はエロい妄想をしたり、ゲームやアニメのことばかり考えてるんだけどな。

「それにしても……」
廊下で梓と体を入れ替えてからずっと、突き刺さるような視線を感じる。
最初は、この梓という少女の正体が別人・しかも男であることに誰かが気付き、観察しているのかと思ったがどうやら違うようだ。

体を舐めまわすかのような粘っこく纏わりつくような視線。

梓の魂が入った俺(清彦)の体が、こっちの方をチラッと見ては目を逸らしていることに気付き、そこで初めてどういうことか理解した。

いつもの俺は可愛い女の子を見ると、その顔や胸元、スカートから覗く絶対領域を眺めている。
授業中であれば、クラスで1・2を争う美少女の梓や双葉に視線を移すことがしょっちゅうだ。
俺本人は気づかれてないと思っていたが、梓の体に入り込んだことで、それが間違いだったと理解する。
女の子の体は、男の視線に敏感なのだ。

いまも俺は清彦(梓の魂入り)の他、複数名の男子から情欲に満ちた視線を浴びている。
それは双葉も同様なんだが、アイツは男共の視線に気づかぬ素振りを続けている。
女の子っていうのはそういうものなのか。

「ククク、せっかくだからサービスしてやるか」
俺はいかにも暑いわねー、とばかりに赤いタイを少し緩め、黒いセーラー服の胸元をはだけ、ブラジャーをチラ見させる。

その瞬間、物音こそしなかったものの、明らかに教室の空気が変わった。
男限定だが、どいつもこいつも熱気の篭った視線を俺の胸に突き刺してくる。

「ふふっ。本当に男ってバカで単純よねー」
俺は自分(メス)の動作で操り人形のように反応するオスの生体に半ば呆れ・半ば優越感を覚え、誰にも聞こえないよう呟いた。



そんなわけで放課後。

「こんなところに呼び出してどうしたの、お姉ちゃん?」
「ゴメンね、エリカ。どうしても人に聞かれたくない大事な話があるの」
俺は梓になりすまし、人気が皆無な旧校舎の一室へとエリカを呼びだしていた。

それにしても、ホントにコイツ等はそっくりだな。
さらりとした髪をツインテールに結ぶリボンといい、ルビーのような紅い瞳といい、釣り目がちでありながら整った面貌といい、蠱惑的な肉体といい、鏡写しと言うしかない。

唯一姉妹を見分ける手段は髪の色だけだ。
俺が乗っ取った梓はグレー。そしてエリカは金髪。
地毛ということはありえないから、どっちかが染めてるんだろうな。

「大事な話って何? ここじゃ落ち着かないから、家に帰ってからゆっくり聞いてもいいけど……」
「ううん、今すぐ聞いて欲しくての」

こちとら朝一で梓と入れ替わってからずっと待ってたんだ。
これ以上我慢ができないんだよ。

「分かったわ。それじゃあここで話を聞い……ん……むっ……」
俺はいきなりエリカに抱き着くと、そのままキスをする。

これまで何人もの男の体で女の子と口づけを交わしてきたが、瑞々しい唇同士が重なる感触は、ただの粘膜接触以上の心地よさを俺に与えてきた。

これは相手云々じゃなく、自分の唇が柔らかい女の子の物になっているからだろうか?
だとしたら、やはり女の子の体を乗っ取ったのは正解だった。

さらなる快楽を味わおうとした俺は、梓の舌を操ってエリカの咥内をこじ開けようとしたが……。

「イヤッ!」
恐怖の表情を浮かべたエリカによって突き放されてしまう。
思いもよらなかった拒絶を受け、あっけにとられる俺に対し、エリカは、

「お……女の子同士……それも姉妹でこんなのおかしいわよ……お姉ちゃんのバカァッ!」
と言い残して走り去ってしまった。

「え?」
呆然とした俺は、そこで初めて梓の記憶を読み取っていなかったことに気付き、どういうことかと彼女の記憶を手繰る。
すると、梓とエリカはあくまでノンケであることが分かった。

「クソッ、このままじゃまずい!」
逃げ出したエリカが、このことを誰かに言いふらす前に手を打たないと!

――後になって冷静に振り返ってみれば、このキスが原因で困るのは梓であって俺じゃない。だから焦る必要なんてなかったんだが、このときの俺はそこまで考えが回らなかったんだ――

焦燥感に駆られた俺は、あることに気付く。
今日の俺……つまり清彦本体は掃除当番を割り当てられ、まだ校舎内にいるはずだ。
一度本体に戻って、エリカが何かをしでかす前にその肉体を乗っ取れば……。
「よし」
そう思い立った俺は、【手鏡】を取り出し呪文を唱え、魂を本体に映す。

思った通り清彦自身は学校に居残り、廊下を歩いている最中だった。
窓から外を覗くと、タイミング良く旧校舎から駈け出してきたエリカの姿がある。
俺は自分の魂と共に移動してきた【手鏡】に彼女を映して呪文を唱えた。

「ふぅ……何とか間に合ったようだな」
可愛らしい少女の口から男言葉が漏れる。
何ごとも無かったかのように歩くエリカの魂が入った自分の体を窓ごしに見ながら、俺は安堵のため息を漏らした。
「今度はさっきのようなヘマをやらないようにしないとな」

泥沼の中から掬い取るように、意識を集中してエリカの記憶を読み取っていく。
やはりエリカの方も姉の梓に恋愛感情を抱いていないようだ。

そして先ほど梓から受けたキスに関しては、突然のことで混乱して逃げ出したものの、まだ感情の整理がついてないらしい。

「さて、どうしたもんかな。このままじゃレズることは無理だし、エリカの家に帰ってオナニーでもするかな」

「エリカ! 待って!」
黒のセーラー服と白のスカートを揺らしながら、こちらに向かって駆けてくる梓。

よっぽど慌ててきたんだろう。
綺麗な肌に汗をうっすらと浮かべ、頭に被っているベレー帽のような帽子(女子制服の一部で登下校時の着用義務あり)が今にもずり落ちそうだ。

「本当にごめん! 信じてくれないかもしれないけど、あんなことをするつもりはなかったの!」
俺の眼前に来るや否や、そう言って頭を下げてくる。

梓としてエリカにキスしたのは俺なんだが、コイツは自分がしでかしたこととして認識している。
いずれにしろ面倒事にならなくてよかった、と俺は大きく膨らんだ胸をなで下ろす。

「お願い。何でもするから……許して……」

そうか、本当に何でもするんだな?
いまにも消え入りそうなほど縮こまる梓を見て、イタズラ心がむくむくと湧き上がってきた。

「そんな事言われても、いきなりキスされちゃったのよ。私、ファーストキスだったのに」
「ううっ……そ、それは……」
「だからこれはお返しよ」

俺は梓の顎に指を引っ掛けて顔をあげさせ、先ほどまで自分が使っていた瑞々しい唇に貪りつく。

「ん……ちゅ……」

しかも今度は中断されたディープキスだ。
ざらざらとした舌ざわりでありながら、柔らかく心地よい感触に、俺の下腹部がじわじわと熱を帯びてくる。

「んむっ……んっ……ぷはぁっ……これでおあいこね、お姉ちゃん」
「あの……エリカ……私……」

梓が何か言いかけた矢先、苛立ちがこもった声を投げかけられた。
「貴女達、そんなところで何をしてるの!?」
「な、渚先輩……」
「し、神聖な学び舎で、な、何て破廉恥なことを……し、しししかも女同士……姉妹同士だなんて……」

渚は俺が初めて抱いた女の子だ。
もっとも、和馬と入れ替わってはいたが。

その彼女が顔を真っ赤にし、目をグルグル回しながら、風紀委員の腕章をつけた腕で俺(エリカ)と梓をビシッと指さす。

和馬相手にベッドの上では乱れまくっていた彼女も、学校でこういうことをされれば注意せざるを得ないのだろう。
しかしこういったシチュエーションには免疫がないようで、混乱しているのが見て取れる。

「ったく、次から次へと面倒だな……」
もう知らん。俺は抜けさせてもらうぞ。
と、自分の体に戻る。

「あーもう、色々と水を差された気分だな、クソが……ん?」
俺の視界には、梓とエリカ、それに渚が捕らえられていた。

どうやら俺として行動していたエリカは清彦の家に帰ろうとせず、このやりとりを遠巻きに眺めていたらしい。

「困惑した梓とエリカが捕まってお説教を受けてる以上、アイツ等のどちらかになって女の体を堪能するどころじゃないし……ん? 女の体?」

いるじゃねえか。女体探索の格好のターゲットが。

思い立ったが即実行。
俺は渚と体を入れ替えて、魂を校庭へと舞い戻らせる。

「コホン……とにかく、そういうことは人目につかないようにやりなさい」
話は終わりとばかりに踵を返し、悠然とその場を立ち去る。
俺はそのまま渚の記憶を読み取り、彼女の家へと足を向けた。



「んっ……くぅんっ……はぁ……す……凄すぎる……」
渚の部屋に入って鍵を閉めた俺はすぐに下着姿になり、乳房と股間をまさぐり始めた。
学校一のイケメンと付き合ってるだけあって、渚の容姿は申し分ない。
ヘタなグラビアタレントやアイドルを余裕でぶっちぎっている。

そんな美少女が晒す痴態。
コイツの彼氏になって十分なほど見知っていたはずだが、その乱れる様を演じてるのが自分自身であることに興奮を覚えざるを得ない。

白いブラを脱いで乳首を摘み、ショーツの中に指をつっこんで女性器をぐちゃぐちゃとかき乱す。

「お……女の子の体って……こんなにスゲェのかよ……」

これまでさまざまな男の体を使って、色んな女を抱いてきた。
締まりのいい膣内を持った少女もいたし、愛液の量と密度が濃くて溶けるような快楽を与えてくれる蜜壺を持った少女もいた。

いずれの少女も男根に極上の快楽を与えてくれたが、渚の牝肉から受ける快楽は、男性器が受けるそれとは比べものにすらならない。

「……あっ……んっ……もっと……奥まで……」

ショーツを脱ぎ捨てた俺は鏡の前で大股を広げ、自分(渚)の体をオカズに指を動かす。
体がさらなる悦楽に浸ろうと勝手に動き、腰を振り始める。
その拍子に揺れる大きな乳房を荒々しく揉み、その痛みすら快楽に変換していく。

「……あっ……やっ……んんんんっ……もうダメぇぇぇぇぇっ!」

そして俺は、今まで味わったことのない衝撃に貫かれて気を失ってしまった。



翌日の登校時。
「おはよう渚……ってどうしたの!? すごいクマよ」
「ふぁあ……おはよう。ゆうべちょっとね」

女の体で初オナニーを経験した俺は、自分の体に戻ることも忘れ、徹夜で渚の体を貪っていた。

オナニーだけでこんな気持ちいいなんて、女の子の体は反則だろ。
(こんなのを知った以上、もう男でのセックスなんて満足できるワケねーよな)
「え? 何か言った?」
「ううん、何でもないわ」
独り言を聞きとがめた渚の友達に素知らぬ顔をして答える。

と、双子の片割れ・妹のエリカがどんよりとした空気を纏って歩いているのを見かける。
いつも一緒に登校している姉の梓の姿は見かけない。

そういえば昨日のキスの後、アイツ等はどうしたんだろうか?
彼女たちを案じるのではなく、好奇心に突き動かされた俺は、渚と入れ替えていた魂を自分の体へと戻す。

眼前に広がる風景から判断するに、俺の肉体は渚やエリカより先行しているらしい。
俺はいかにも『友達を待ってます』という素振りでエリカを待ち伏せ、【手鏡】の射程距離に入ったところで彼女と入れ替わった。

「……ふむ……ふむ……なるほどな」
エリカの記憶を読み取ると、彼女が暗い顔をしていた理由が分かった。

旧校舎で姉にキスされて拒んだのに、直後の校庭は逆に自分からキスをしてしまった。
もしかしたら私は自分でも気づかないうちに、姉のことをライクではなくラブという意味で好きになってるんだろうか?

しかしレズと近親相姦という二重苦がのしかかり、どうしたらいいか分からず、気まずくて今朝は梓と別行動をしているらしい。

「まったく難儀なヤツだな。女の子の体は気持ちいいんだから、肉欲に溺れちまってもいいじゃないか」

ん? まてよ?

昨日、エリカの記憶を読んだときは、梓のことはあくまでもライクだった。
だが、今日になって『ラブなのか?』と考えはじめる心境の変化。
そのトリガーとなったのは、俺がエリカの肉体で梓としでかしたキスだよな?

解読した手鏡の使い方には、

『入れ替わりが解除されたとき、入れ替えられた人物は、使用者が自分の肉体で行っていた行動を、自分の意思で行ったと思い込む
(やはり【手鏡】に関する記憶だけは欠け落ちる)』

とあった。

そうだ!
俺がエリカの肉体としてとった行動は、本物のエリカにしてみれば自分の意思で行ったこととして認識している。
ならばエリカがイヤだと思うことでも、俺が肉体を操って行動することによって『自分の本心はこうだったんだ』と刷り込むことができるかもしれない。

他人の肉体を支配するのみならず、心までも好きに塗り替えることのできる【手鏡】。
改めて常識の埒外にある力を手にしたという歓喜と興奮が、俺から道徳を削ぎ落していくのを感じていた。
デスノートを手に入れた夜神さんの息子さんもこんな気分だったのかもしれないな。



それからというもの、俺は梓とエリカの肉体に交互に入り込み、姉妹同士・女同士という常識の壁をゆっくりと掘削しにかかった。

「お姉ちゃんってば自分だけアイス食べてずるいわ。私にも食べさせてよ」
「ちょ、ちょっと。それは食べかけ……」
「別に間接キスぐらい平気でしょ? ほら、一口もらうわよ」

「ねえエリカ。一緒におフロに入りましょ」
「え? で、でも……」
「いいじゃない。それくらい女の子同士じゃ普通でしょ?」
「う……うん……それは……そうだけど……」

「お姉ちゃん。ウチのクラスの男子が、『双子なのにエリカより梓の方がおっぱいが大きい』って言ってるの聞いたんだけど、ちょっと触って確かめてみてもいい?」
「え? い、イヤよ!」
「お願い! 私にとっては死活問題なの!」
「で、でもいくら妹相手でも恥ずかしいし……」
「もー、何よ。昨日一緒におフロに入ったんだから、恥ずかしがる必要ないじゃない」
「あ、そ、そうよ……ね」

「難しい顔してどうしたの、お姉ちゃん?」
「あ、聞いてよエリカ。私、『アソコ』のビラビラが人より大きいんじゃないかって悩んでるの」
「あそこって……まさか肉襞!?」
「それでね、私……」
「もう、分かったわよ。こんなことを相談したり見せあえるのって、私たちが姉妹だからだもんね」
「ありがとうエリカ、愛してるわ。いますぐ抱きたいくらいよ」
「も、もうお姉ちゃんったら。冗談ばかり」
(ククク、冗談じゃないんだけどな)
「え? 何か言った? お姉ちゃん」
「ううん、何でもないわ」

そんな具合に互いの抵抗心を削っていく日々。
もちろん女の快楽を貪るのも忘れちゃいない。
梓になっている時はエリカの裸を想像して彼女の名前を呼び、
エリカになっている時は梓を意識して秘所をまさぐる。
こうすることによって、自分は姉(妹)のことを想ってオナニーしていると刷り込むことができるしな。

無理やり相手を犯してもよかったんだが、そうしなかったのは双子が互いを意識する様が楽しく思えたからだ。
あたかもゲーム感覚で他人の心を操り、ゆっくりと変えていく。
誰にも――そう、当の本人たちにすら気づかれることなくジワジワと心を浸蝕する昏い悦楽を唯一楽しめる人間として。



数週間が過ぎ、俺がせっせと蒔いた種を刈り採るときがやってきた。

「ねえお姉ちゃん。今日はお父さんもお母さんも出張で帰ってこないでしょ? だから……その……してみない?」

誤解を招かないように言えば、今日の俺は姉の梓だ。
つまりお誘いは、エリカが紛れもない自分の意思で起こした行動に他ならない。

「うん、いいわよ。2人で一緒に気持ちよくなりましょう」
俺は梓になりきり、愛妹にキスをする。

「……ん……んむっ……」
「……んあっ……あっ……」
今回はエリカも拒みはしない。
それどころか、
「お姉ちゃん。大好き……」
と、積極的に舌を絡めてくる。
その表情とセリフに心臓と子宮を激しく揺さぶられた俺は、その場でエリカを押し倒した。

「お、お姉ちゃん。せめてどっちかの部屋のベッドで……」
「ゴメン、私もう我慢できないの。どうせ玄関には鍵をかけてるんだし、このままリビングで……ね?」

その囁きに、俺と同じ顔をした蜂蜜色の髪の少女は自らの衣服を脱いでいく。
しかし、俺に抱き着かれたままでは上手く服が脱げないようだ。
止む無しにエリカから体を放し、その体を抱き上げる。

「そうだ、どうせなら脱がしっこしない?」

ふと思いついた提案を口にする俺と、頷くエリカ。
鏡合わせのように同じ顔の少女が、互いの衣類を1枚・また1枚と剥ぎ取っていく。

ブラウス・スカート・ストッキング・ブラジャー・ショーツ。
全てを脱ぎ終えたとき、生まれたままの肢体を晒す2匹の牝がそこにいた。

「お姉ちゃんって顔も体も、本当に綺麗……」
「もうエリカったら。そういうの自画自賛っていうのよ。私たちは顔も体つきも何から何まで同じじゃない」

本当はそれだけじゃなく、性感帯まで一緒なんだけどな。
両方の体に入り込み、オナニーしまくったから間違いない。

「私とエリカの違うところって、髪の色と……ここの色だけよね」
俺はエリカの下腹部、なだらかな丘を彩るうっすらとした茂みに手を伸ばす。
驚いたことに俺が操る梓の地毛はグレー、エリカの地毛は金だ。

これまで何度も裸体を確認したし、2人の記憶を読んでだから、毛を染めてないことは確認済だ。
科学的に有りえるのかどうか知らないが、科学的に有りえない手段で女の子になって、レズろうとしている俺が考えるのもナンセンスなんだろうな。

「あ……い……いぃ。お姉ちゃん……そこ……もっと……」
「んむっ……れろっ……エリカって本当にエッチな娘ね。乳首がおちんちんみたいにビンビン勃ってるわよ」
「言ったわね。このっ!」
「あああんっ」

エリカに乳肉を揉まれたことで、女の体が自然と嬌声をあげる。

「もう。本当にエリカったら昔から負けず嫌いなんだから。あのときもそうだったわよね?」
「あのとき?」
「ほら、私たちの10歳の誕生日のことよ。『お姉ちゃんのケーキの方が大きい』って取っ組み合いのケンカをしたじゃない」
「う……そ、それは……そんなこともあったわね……」

お互いの肌を舐めながらも姉妹の会話は続く。

「けどそれを言うなら、お姉ちゃんだって中学のとき、『エリカの方が男子に告白された人数が多い』ってわめいてたじゃない」
「私が24人で、エリカが26人に告白されたんだったわね」

梓の記憶を読めるおかげで、返答に窮せずスラスラと会話を継続することができる。
梓と最も近い距離にある双子の妹ですら、愛する姉の中身が別の男と入れ替わってるのに気づかない。
その他人になりすますという愉悦は、女の体が与えてくる性的な刺激とは別に俺の心そのものを昂らせてくれる。

「お姉ちゃんのここ、準備がいいみたいね」
「うん。わたしのおまんこも、早くエリカを食べたいって言ってるのよ」

蜜壺から滴る愛液で溶けそうなくらいドロドロになった女性器同士を重ね合わせる。
凹が2つであるにあるにも関わらず、双子の女陰はまるでそうなるのが当然のように、ぴったりはまった。

「うああああっ! な、何だコレ!?」

童貞だった俺が、他の男の体でセックスの味を覚えたように。
男のセックスしか知らなかった俺が、女の自慰に衝撃を受けたように。
女の体になって行うレズ行為は、さらなる快楽の高みへと俺を導いた。

男の体だろうが女体だろうが、オナニーではどこをいじるか自分で選択して実行する。
故にいくら気持ち良くても、次はここを触る・その次はあそこを摘む、と事前に把握し、それに構えてしまう。
しかし他人と肌を重ね合う場合、次にどこを攻められるか全く予測がつかない。
常に未知なる刺激・新たなる快感を与えてくる。

気付けば俺は渚の体でオナニーしたときのように、無我夢中で腰を動かしていた。
エリカもそれに負けじと、重ねた女性器を擦りつけてくる。

「……やっ……あっ……すごくいいわ……エリカ……」
「んっ……はうっん……お姉ちゃん……そんなに腰を振られたら……私……おかし……くなる……」

男性器より何倍も小さいくせに、圧倒的な快楽を生み出すクリトリス。
互いの膣壁から溢れる愛液を呑み込もうと、菱形に口を開けて待ち構える陰門。
それらは決して男では味わうことのできない刺激と興奮だ。

俺はグレーの髪と大きな胸を揺らしながら、弾力のある恥肉同士をぐちゃぐちゃと擦り合わせ、ただただ肉悦に浸る。

「あぁっ……お姉ちゃんのここ……すごくいいっ……」
「私のおまんこ……んぅっ……エリカのと形も大きさも柔らかさも全く一緒だから……はぁっ……女同士だから……くぅんっ……双子だから相性が……バッチリなのよ……」

互いの体から放たれるシャンプーと石鹸の香気が汗の匂いと混じり合い、百合のような香りとなってリビングを満たす。

男の体には存在しない器官。
陰核、尿道口、小陰唇、大陰唇、膣前庭、膣口、膣、子宮、卵管、卵巣が激しく震え、女性器すべてから発する快楽が全身を駆け巡る。

「……お姉ちゃん……そろそろ……」
「ええ。私もイきそうだから……んっ……激しくするわよ……」

擦れた肉の花弁が呼吸をするように開いては閉じ、絶え間なく官能を与えてくる秘裂がオーバーヒートを起こしかける。

子宮が扇動するかのように脈を打ち、早く絶頂を与えてくれと催促してきたことで、快楽の宴が終わりに近づいてきたことを意識する。

俺はディープキスで舌をからませてからエリカの乳首をしゃぶり……左の乳房で彼女の胸を押し潰し……ねちっこく腰をくねらせてラストスパートに突入した。



「やっ……あっ……んっ……お姉ちゃん……私……もう……」
「んああっ……エリカ……一緒に……私たちの牝汁でドロドロのグチャグチャになった……おまんことおまんこのキスで……一緒に……イくわよ……んうぅっ……」

そしてひときわ大きな波が子宮から生まれて他の女性器と共鳴し、波紋のように少女の全身に広がり……。

「「あっ……んっ……あっ……あああああああっ!」」
俺たちは瓜二つの声でステレオのように絶叫しながら大きく痙攣する。
そして糸の切れた人形のようにぴたりと動きを止めた。

ハァ……ゼェ……さすが双子の肉体だな。オーガズムに達する瞬間まで同じだとは。

腕の中のエリカは紅い瞳に歓喜からくる涙を溜め、ヨダレを垂らすという牝の顔をしていた。
ふと鏡を見ると、自分もまったく同じ顔で同じ表情をしてることに気付く。
そのことが妙に嬉しく、俺はエリカを強く抱きしめることで互いの牝肉の温もりと香り、そして感触をいつまでも堪能していた。



「ほら、エリカ。もうチャイムが鳴ったわよ。自分の教室に戻らないと」
「えー、もっとお姉ちゃんと一緒に居たいのにー」
「こればかりは仕方ないわよ。その代わり家に帰ったら……ね?」
「……うん」

一線を越えたあの日を境に、梓とエリカは人目をはばからず、今まで以上にイチャつくようになっていた。
校内で胸を揉んだりキスをしたりと、レズ疑惑どころかレズ確定の烙印を押されるに値する行為は、それを見ている周囲の男子を残らず前かがみにさせるほどの破壊力だ。

ちなみに俺は、百合姉妹を第三者的視点から観察していても股間を屹立させてはいない。
その理由はしごく簡単。
いまの俺には勃起すべき男性器がついてないからだ。
つっても、おまんこの中は濡れに濡れてぐちょぐちょなんだけどな。

……レズと近親相姦という、双子の姉妹を縛る禁忌の鎖を断ち切った俺は、別の女の子と体を入れ替えた。
その目的は女の子として男を相手にセックスすること。
これまでは男を相手にするには抵抗があったが、女の子として他人と肌を重ねることの味を知った俺としては、食わず嫌いは良くないと思ったワケだ。

女性器同士を擦り合わせたり指を入れるのも気持ちよかった。
気持ちよかった故に、それ以上――膣壁に肉棒を入れられ、擦られ、子宮に注がれる感触も味わってみたくなったからな。

普通に男に抱かれてもいいんだが、どうせなら何からしら付随する楽しみが欲しい。
梓とエリカをレズに堕としてから牝肉を貪ったように、誰かの心を歪めながら肉棒を受け入れてみたい。

そんなワケで俺は双葉という少女になっている。
うちのクラスでは梓と双璧をなす美少女だ。
夜の闇を集約させたような漆黒の長い髪。
見ているだけで吸い込まれそうな、神秘的な輝きを湛えた瞳。
小さいながらも整った鼻梁。
これでもかというほどの美少女なのだが、双葉の肉体には大きな欠点がある。

胸はブラがいらないと思うほどの貧層サイズで、微かに膨らんでいると分かる程度。
腰のくびれも少なく、手足も短い。
高校生に見えないどころか、公共機関を子供料金で活用しても咎められないような体つきをした少女――それが双葉だ。

中には『それがいい』という男がいるし、『それ以外は認めない!』とハイレベルな変態紳士もいる。
俺は美少女ならなんでもいい派だからそこまでのこだわりはないが、双葉と魂を交換して、この肉体に居座っているのには、それ相応の理由があった。

コイツの体は小さいながら梓やエリカよりも敏感で、女性器の方も愛液が留まることがないほど流れる。
さらに普段はびっちり閉じた膣も、興奮時には異物を受け入れる態勢が十分すぎるほどに整うからだ。

こんなつるぺたボディだから大して感じないんだろうな、とダメ元で入れ替わってオナニーしてみたが、コイツは大当たりだった。
しばらくは双葉に成りすまし、初体験兼『オモチャ』に相応しい相手を物色しよう。

それと遊び相手(だれ)を決めるのと同じくらい重要なのが、どうやって遊ぶかだ。
普通に「貴方のことが好きなんです。抱いてください」じゃあ全然面白くない。

相手の体の自由を奪ったうえで逆レイプ。
オッサンを罠にハメて美人局風味。
……ダメだ。どうもありきたりすぎて愉しめそうにない。
もっとこう、充実感や達成感を得られるような遊び方は……。



そんなことを考えているうちに至った放課後。
俺は図書館へ立ち寄り、いつぞやのように古文書のページをめくっていた。

先日、【手鏡】を弄っているうちに鏡の部分を外しちまった俺は、何となしにその裏面を確認。そこに【手鏡】の使用方法が掘られていることに気付いた。

大半は【手鏡】に付属してきたメモと同一だったが、そのうち一文だけは、今回初めてみる内容(というか素で解読できないから『形』と表現すべきか)だったから、こうやって再調査を実施してるってわけだ。

双葉の肉体は非力なため、清彦のときのように本を山積みにできないが不便はない。
欲しい情報がどの本に載っているかは既に知っているしな。

「……えーと、なになに?」

●【手鏡】の使用者が他人と肉体を入れ替えている状態で【手鏡】に他人を映し呪文を唱えると、対象の人物を眠らせることができる。
またその際、眠らされた人物は【手鏡】を使って眠らされた記憶が欠落する。

なるほど。
俺が他人になっているとき――例えば梓になっているとき――にエリカと直で肉体を入れ替えようとしたことがなかったから知らなかった。
清彦の肉体に戻るときは、何となしに【手鏡】にいまの自分の姿を映して呪文を唱えてたしな。

使えるって言えば使える能力なんだが、肉体交換ほどスゲェ! って代物じゃない。
何かの役には立ちそうだから、頭の片隅には留めておくか。



図書館を出た俺はまっすぐ双葉の家には戻らず、再度寄り道して本屋へと足を踏み入れる。
つってもここは普通の本屋じゃない。

一応、入り口近辺では普通の雑誌やコミックを扱っている。
しかし、奥にある18禁と書かれたのれんをくぐると、エロ本やエロマンガ、AVや大人のオモチャなどが山積みにされている『そういう専門店』だ。
俺も清彦のときには大層お世話になっている。

「えーと、これと、それと……」

俺がエロ本を物色していると、傍で立ち読みをしている童貞臭丸出しの連中がギョッとした顔でスタコラ立ち去ってしまう。

さもありなん。

俺だってエロ専門店(男の聖域)でエロ本を立ち読みをしている最中に、セーラー服を着た小柄な美少女が隣にいたら、居心地が悪くて退散しちまうしな。

こういう店はレジにものれんがかけられており、店員と客、互いの顔が見えないようになっている。
しかし今の俺はちびっ娘の双葉だ。
低身長からカウンターごしに見上げる状態。店員にしてみれば見下ろす状態で、互いの姿がしっかりと確認できる。

「全部で3,290円になり……ま……」
「支払はカードでお願いします」

レジを打っている店員は俺の姿を見て驚くが、そんなことは関係ないとばかりに会計をせかす。

ちなみに双葉の両親は貿易商を営んでおり、『欲しい物があったら何でも買いなさい』と娘にクレジットカードを持たせるくらいには儲けている。
仕事が忙しくてなかなか家に帰ってこれず、双葉は広い屋敷で1人暮らしをしているのも色々動き易くてグッドだ。

「あの……すいませんが当店は……その……十八歳未満のお客様には販売できないのですが……」

店舗側としても、あからさまな十八歳未満(オマケに制服を着た少女)にエロ本を販売したことが明るみに出れば大問題に発展するため、販売拒否をするのは当然のことだろう。

けどそれは店舗側の事情であって俺には関係ない。
こっちとしては『刷り込み』のために、双葉の肉体でエロ本を買うという経験が必要なんだ。

だから俺は、清彦として知っていた情報、

「充実したエロ本の品揃えといい、多種多様なアダルトグッズといい、『本物の女子高生・女子中学生が出演した自主制作のAVを販売している』ことといい、すっかりこのお店が気に入ってしまいました」

と、一部のマニアしか知らないこの店の裏事情を口にする。

「これからも『顧客』としてこの店を贔屓にしますね」
さらに、自分がAV女優として出演したいわけじゃない、というニュアンスを込めることも忘れない。

子供のように無邪気な笑みを浮かべる俺に、店員はとうとう折れた。
「……ありがとうございました。またの『私服での』ご来店をお待ちしております」



「女の子の体で読むエロ本ってのもオツなもんだな」
双葉の家に帰った俺は、着替えもせず帽子も脱がずに、早速買ってきたエロ本に目を通す。

本来の双葉は穏やかな性格なんだが、エロいことを異常なまでに嫌悪している。
本人の記憶によれば、小学校時代の経験が原因らしい。

小学校時代の双葉は可愛がっていた大型犬の散歩を行っている最中、公園で青姦しているカップルの性行為を目撃。

男性器と女性器を露出させてハメまくる行為は、幼かった双葉に興味より恐怖を抱かせてしまい、パニックを起こしたコイツは一目散に公園を逃げ出して道路に飛び出した。

そこにやってくる自動車。

あわや轢かれそうになった双葉だが、忠犬が身を呈してかばったおかげでご主人様は事なきを得たが、ペットはそのまま息を引き取った。

まあ、要するにだ。
幼少期に見せつけられたセックスに対する恐怖と、直後に大切な家族の一員(として双葉は扱っていた)が死んだせいで、それを関連づけてトラウマになっちまった、って事らしい。

ペットが死んだのはご愁傷様としか言いようがないし、俺がこの肉体で初体験をするから双葉本人の意思は関係ないんだが、せっかくの機会だしエロに対する抵抗を取り除いてやろうと思っている。

ほんと、双葉は俺に感謝してほしいくらいだ。
何せこの女はトラウマを克服しない限り、結婚すらままならないだろうからな。
こんなに可愛く感じやすい体だってのに勿体ない。

現に今だってエロ本を読んでるだけで、乳首がブラジャーを押し上げる勢いで勃起し、ショーツは水に浸したかのように愛液まみれになってるしな。

「こっちの巨乳ちゃんはなかなか……うおっ、こっちのモデルは俺(双葉)より幼く見えるじゃねえか……ん? これは……」

エロ本を堪能しているうちに、アダルトグッズの通販ページが目に留まった。
そこに掲載された『ある商品』を目にした瞬間、ひとつのアイディアが浮かびあがる。

「ククク……そうだな。そういうプレイは楽しそうだ……あとはターゲットを誰にするか、だな」



翌日の学校、昼休み時間。
昼食を食べ終えた俺は女子トイレへと足を向ける。
清彦としてそんなことをすれば即停学。
ただでさえ悪い女子からの評判が完全に失墜するんだろうが、今の俺はそんな心配をする必要がない。
長い黒髪とスカートをたなびかせ、悠然と男子禁制の秘密の花園へと入る。
鏡の前でお喋りしている女子生徒たちも、やってきた少女の中身が男だと見抜けず、同族として俺を受け入れる。

「……でね……なのよ」
「へえ、そうだったんですか?」

そのまま3分くらいどうでもいい話題で歓談し、彼女たちと別れて個室に入る。
何で女という生き物は無駄話が好きなんだろうな?
そんな疑問の答えは、双葉の記憶の中にあった。

女性は話をすることで、ドーパミンという快感ホルモンが活性化され、気持ちよくなれる。

男は左脳のみで言語を操るが、女は脳梁という左右の脳をつなぐが部位が太く、左右の脳どちらでも言葉を操ることができるため、脳が次から次へと言葉を発することができる。

女は脳の構造上、男よりストレスがたまりやすい生き物であるため、解消するためにおしゃべりをしてドーパミンを分泌させ、体内のバランスを取ろうとしている。

……こんな情報を覚えているなんて、さすが優等生の双葉だな。
それにしてもなるほど。
他人と話すのがあまり好きじゃない俺が、くだらない内容だと理解しつつ楽しくお喋りできたのも、女の脳を使っているからなんだな。

そうそう。
男と女の体の違いといえば、『コレ』の仕方も違うんだよな。

俺は便座に腰かけ、秘所を覆っているショーツを膝下まで下げて股間の割れ目を軽く開く。
別にこうしなくてもいいんだが、その場合、小便が小陰唇……びらびらに引っ掛かって左右にブレるからな。

「んっ……はぁっ……」

そして下腹部に力を込め、剥き出しになった膣前庭という柔肉に備わった2つの穴のうち、上の穴から黄色い液体を放出する。

ジョボボボボボボ、という水音が個室に響く。
男であるにも関わらず、女の子として女子トイレで用を足す背徳感は本当に興奮する。
膣前庭の下の穴……つまり膣口がムズムズしてきやがった。

このまま欲望に任せてオナニーしたいところだが、そればかりにハマッちまったらいつまで経っても先に進めない。
ここはあえて自制し、双葉の処女を捧げる相手を選別しよう。

双葉に好意を持つ男は多い。
女子ほど強固で秘匿性に優れているわけではないが、男子には男子のネットワークがある。
俺は清彦としての記憶から、どの男子が双葉に好意を持っているかを思い出してみた。

吾川、井村、宇野、江崎、尾野、加藤、木村、工藤、剣持、古賀……ダメだ。
どいつもこいつもありきたりすぎて、面白みに欠けている。
もっとイジメがいのある『逸材』はいないものか。

逆に双葉の方は好きな男がいるんだろうか?
トラウマがあるからこっちも期待薄だが、一応確認しておくか。

「ふむふむ……幼馴染の敏明に対しては他の男より好感度がかなり高いのか。限りなくラブに近いライクってとこだな……っつうか、敏明と双葉って幼馴染だったのかよ」

敏明っていうのは、俺や双葉のクラスメイトだ。
男子の中でもひときわ立派な体格で顔も悪くない。
ただ、ガタイに反比例して性格は大人しいというか気弱なヤツで、浮いた話を聞いたことがない。

ちなみに敏明は双葉のことをどう思ってるんだろうか?
俺は一度双葉の肉体を離れ、【手鏡】を使って敏明と肉体を交換する。

他の男になるのは久しぶりだが、女体の気持ちよさを味わった今となっちゃ、こういう事でも無い限り男と入れ替わりたくないよな。

さて、んじゃ敏明の記憶を読みとってみるか……って。

「……オイオイ、こいつはとんだムッツリ、っつうかヘタレじゃねえか」

このデカブツは小さい頃から双葉が好きで、しょっちゅう彼女のイヤらしい妄想でオナニーをしてるくせに、それをおくびにも出してない。

幼馴染という間柄、何度か決定的なチャンスがあったものの、好きだという気持ちを匂わせないばかりか、何のアクションを起こさないのはフニャチンすぎるだろ。

もっとも双葉にしてみれば、そういう紳士的なところが他の男子と違う、って敏明を好意的に見ているらしいが。

ある意味敏明と双葉は相思相愛と言えなくもない。
仕方ないな、ここは優しい俺がキューピットになってやるとするか。

(中編に続く)
長文になったので、前・中・後編に分けています。
作者です
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10.100きよひこ
すごいですね。中編も楽しみです。
20.100きよひこ
>>「ふふっ。本当に男ってバカで単純よねー」
>>俺は自分(メス)の動作で操り人形のように反応するオスの生体に半ば呆れ・半ば優越感を覚え、誰にも聞こえないよう呟いた。

TSFのこういうシチュ大好き。
44.無評価作者です
No10様
ありがとうございます。
中編以降も気に入っていただけたら幸いに存じます。

No20様
>>>「ふふっ。本当に男ってバカで単純よねー」
>>>俺は自分(メス)の動作で操り人形のように反応するオスの生体に半ば呆れ・半ば優越感を覚え、誰にも聞こえないよう呟いた。

>TSFのこういうシチュ大好き。
評価いただきありがとうございます。
上記のシチュはTSFの醍醐味のうちの1つだと思っています。