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換魂操滓(中編)

2013/10/23 08:40:42
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換魂操滓(中編)



敏明視点

「ん? あれって双葉ちゃんだよね?」

高校の授業が終わって家に帰る途中のこと。
外からペットショップを覗きこむ幼馴染の姿に気付いた。

「双葉ちゃん、何やってるの?」
「あ、敏明……君……うっ……ぐすっ……どじあぎぐうううううん!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてよ双葉ちゃん、いきなりどうしたの!?」

振り返った双葉ちゃんは話しかけてきた相手が僕だと認識するや否や、抱きついてわんわん泣きだしてしまう。

絶賛片思い中の身としては、好きな女の子に抱き着かれるのは嬉しいんだけど、往来の真ん中だと恥ずかしいよ。

「ちょ、ちょっと落ちついてよ双葉ちゃん。と、とにかくそこのベンチで休もう? ね?」



「見苦しいところを見せてしまってごめんなさい」
「ううん、気にしてないよ。はい、これ」

そこの自販機で買った午後ティーのレモン味を、泣き止んで落ち着いた双葉ちゃんに手渡す。

「ありがとうございます。私の好きな飲み物を覚えていたんですね」
「さすがに付き合いが長いしね……それで、何があったの?」

双葉ちゃんが小さい口でジュースをくぴりと飲み、一息ついたタイミングで聞いてみる。

「……ポチのことを不意に思い出してしまったんです」
「ポチって、双葉ちゃんが小学生の頃に飼っていた犬だよね?」
双葉ちゃんを庇って車に轢かれて死んだ……と言いかけて口をつむぐ。

ペットショップで犬を見ているうちに、ポチが亡くなったときのことを思い出して悲しくなっちゃんたんだろう。
双葉ちゃんはすごく優しい子だから有り得ないことではない。

というか、
「中学校のときも同じことをしてしまい、敏明君には迷惑をかけてしましたよね?」
と、以前にも一度あったしね。

「あの……それで迷惑かけた身で申し訳ないのですが、一つお願いごとをしてもいいでしょうか?」
「うん、僕にできることなら何だってするよ」

清楚な黒髪の美少女から上目遣いでお願いをされて断れる男なんていないよね?
しかもそれが好きな女の子からの頼みとなれば、どんなに無茶なお願いだって叶えてあげたくなる。

これが惚れた弱みなんだろうなあ。



その日の深夜。
僕は双葉ちゃんに指定された時間に、指定された場所へ来ていた。

「ここに間違いないよね?」
昼でさえ人通りのまばらな寂れた遊歩道は、日付が変わる時間帯ともなれば人の気配はほぼゼロになる。

『ほぼ』っていうのは、この場に僕がいるから。
そしてもう1人。

「本当に来てくれたんですね。ありがとうございます」

学校指定のセーラー服と帽子という服装の双葉ちゃんが姿を見せる。
淡い月明かりに浮かぶその表情は硬く強張り、緊張していることが見てとれる。

「他ならない双葉ちゃんのお願いだからね。そんなことより何でこんな夜更けに、誰も通りかからないところを指定したの?」

僕は男だし、体格的にも恵まれてる方だから夜歩きしても危険度は少ない。
いやまあ、怖いことは怖いんだけど、それはおいといて。

だけど双葉ちゃんは小さくか弱い女の子だ。不審者に襲われるリスクは少なくない。
それにも関わらず僕をこんなところに呼び出した理由は何なんだろう?

「敏明君には、私と一緒にやってもらいたいことがあるんです。誰にも見られない時間・誰にも見られない場所で」
「へ?」

緊張している双葉ちゃんと人気の無い場所で一緒にやってほしいこと?

ま、まままままさか、
『私、ずっと前から敏明君のことが好きだったんです……抱いてください』
なななな、なんて展開!?

これまで僕は拒絶されるのが怖くて自分の気持ちを打ち上げられなかったけど、まさか双葉ちゃんの方から……そんな……。

「そのために、これを受け取ってもらえませんか?」
「え? あ、ゴ、ゴムなら大丈夫だよ。ちゃんといつでも持ち歩いてるか……ってコレ何?」

一見するとベルトみたいだけど、外側は鋲で装飾されていて長い鎖がついている。
これって、もしかしなくても……首輪?

ぎょっと目を向ける僕に、双葉ちゃんはおずおずと説明を始める。

「敏明君も知ってのとおり、私はもう一度犬を飼いたいと思っているのですが、またポチみたいに居なくなっちゃったらと考えると怖くて飼えなくて……」
「それと、この首輪にどう関係があるの?」
「だから敏明君には、私の犬になってほしいんです」

えええええええええええ!

「あ、も、もちろん変なコトはしません。ただ首輪をつけて、ちょっとだけ一緒にお散歩してくれるだけでいいんです!」
「で、でも! そんなところを誰かに見られたら……ああ、なるほど」
言って気付く。
そのための『こんな時間』と『こんな場所』なんだね。

「無茶なお願いだっていうのは分かっています。ですが、こんなことを頼めるのは敏明君しかいなくて……お願い……します……うっ……ううっ……お願い……」
ほとんど衝撃を感じさせない軽さで、双葉ちゃんが僕に抱き着き涙声で訴えてきた。

衣服ごしに感じる双葉ちゃんの体温と、鼻腔をかすめるミルクのような女の子の匂いが僕の心を激しく揺り動かしてくる。

「それに……ぐすっ……敏明君なら……私の前から居なくなったりしないって……信じてますから」
「うぅ……分かったよ」

双葉ちゃんは僕の立派な体格に、大型犬だったポチの影を重ねてるんだろうな。
正直気が進まないけど、僕しかいないとか、信じてるとまで言われた以上は、ねえ……。

「だけど、首輪をつけて一緒に歩くだけだよ。その……本物の犬みたいに裸で四つん這いになるのはちょっと……」
「本当ですか、ありがとうございます! 首輪さえつけてくれるなら、もちろん人間みたいに歩いてもらうだけでかまいません!」

双葉ちゃんは言って、ぺこりと頭を下げる。

その挙動はすごく愛くるしくて、惚れ直しちゃいそうだよ。
僕が大型犬なら、双葉ちゃんは愛玩動物みたい。

(今はまだ、な)
「え? ゴメン。今何て言ったか聞こえなかったんだけど」
喜び勇んで首輪をいじる双葉ちゃんが何かを呟いた気がしたんだけど、

「はい? 何のことですか?」
どうやら空耳だったみたい。

月と公園灯。
自然と人工の明かりに照らされた遊歩道を双葉ちゃんと2人で歩く。
男の子に首輪をつけさせ、そこから伸びる鎖をリードのように持って歩く彼女の足取りは軽い。
その顔には満面の笑みを湛えていて、とてもイケナイことをしているとは思えない。

この双葉ちゃんの表情には見覚えがある。
まだポチが生きていたころ、一緒に散歩しているときにこんな顔をしていたっけ。

こうやって首輪をつけて並んで歩くだけで、双葉ちゃんを喜ばせることができ、なおかつ僕の好感度を上げることができるのなら願ったり叶ったりだ。

……それだけで十分すぎるほど満足なのに、更なる幸運が訪れたのは真夜中の散歩が終わった直後だった。



「今日は本当にありがとうございました」
「僕も久しぶりに双葉ちゃんと一緒に歩くことができて楽しかったよ」

別に何か特別なことがあったわけじゃないけど、思春期を迎えたあたりから、お互い何となく距離を置くようになっちゃったんだよね。

僕の妹である若葉は、中学生になっても、高校に上がっても双葉ちゃんと親しく接してるから、幼馴染でも男女と女同士で違いがあるんだろうか。

「あの、それですね。お願いを聞いてくれたお礼をしようと思ってるのですが」
「い、いいよ。そんなつもりで首輪をつけたわけじゃないから!」

うああああ、僕のバカ!
せっかく双葉ちゃんが何かをしてくれそうだったのに、カッコつけて断るなんて。

はぁ。こんなんだから僕はいつまで経っても双葉ちゃんに好きだって言えないんだろうなあ。

顔で笑って心で泣いて。

幅広い肩をがっくり落としてトボトボ帰ろうと思ったところで、双葉ちゃんに袖口を掴まれた。
「駄目ですよ。敏明君は私のワンちゃんなんですから、ちゃんと『ごほうび』を受け取ってもらわないと困ります」

なんだ。お礼っていうのはお願いを聞いてくれた僕(敏明)本人にじゃなく、僕が演じた犬に対してのご褒美ってことか。

犬のご褒美っていったら、オヤツとか頭を撫でてくれるとかそういうのなんだろうな。
それはそれで嬉しくないわけじゃないけど、もうちょっと……こう、例えばデートに誘って欲しかったとか望むのは……うん、やっぱり贅沢だよね。

首輪をつけただけのなんちゃって犬プレイで深夜に2人きりで散歩するのも、ある意味デートって言えなくないないしね。

そんなささやかな望みというか充足感を抱いた僕に対し、双葉ちゃんが放った言葉は、あまりに衝撃的だった。

「………………私を舐めてください」
「え?」

聞き返したのは聞こえなかった訳じゃなく、どういう意味か理解できなかったからだ。

「ですから……あの……私の顔を……敏明君の舌でぺろぺろ舐めて……ください」
双葉ちゃんの顔は、微かな光量しかない夜闇の中でも分かるほど真っ赤だった。

それは、僕も同じだったかもしれない。
「ど、どどどどうしたの? そそそ、そんなこと言うなんて双葉ちゃんらしくないよ……ああいや、と言ってもやりたくない訳じゃなくて……」

僕からは絶対に『双葉ちゃんの顔を舐めさせて』なんて言えない。
そんな度胸があれば、とっくに玉砕覚悟で告白している。

かと言って双葉ちゃんから『舐めて』と言われても、それを実行になんて移せないよ!

「ポチはよく……私の顔を舐めてくれてたんです」
それだけで双葉ちゃんの言いたいことが分かった。
双葉ちゃんはあくまで敏明という男の子じゃなく、一緒に散歩した犬として顔を舐めてほしいんだろう。

――愛犬の散歩をしていた、楽しかった頃を懐かしんで。

「わ……分かったよ。それで双葉ちゃんが……その……喜んでくれるなら……」

うん、これはあくまで双葉ちゃんの為なんだ。
僕が双葉ちゃんの顔を舐めたいんじゃなく、双葉ちゃんが僕に舐めてもらいたいのでもない。
双葉ちゃんが散歩をした『犬』に顔を舐めてもうことを望んでるから、僕はその手伝いをするだけなんだ。

決してやましい気持ちは……まあ、無いって言えば嘘になるけど。

「おいで、ポチ」
首輪をつけたままの僕は、双葉ちゃんが差し出した小さい掌に『お手』をし、顔を近づける。

長いまつ毛にぱっちりとした瞳。
夜の闇すら吸い込んでしまいそうなほど美しい黒髪。

――綺麗だ。

顔を1センチ近づけるごとに心拍数が増して行く。
僕の舌が届く距離まで近づくと、大好きな幼馴染の吐息が顔にかかる。

すごくいい匂いだ。

髪から漂ってくるミルクの香りと相まって、心臓が張り裂けそうになる。

ぺろっ。

「んっ……」
普段は白く、今は羞恥で朱く染まった頬に少しだけ舌で触れる。
とても柔らかくて、とても甘くて、ほんの少しだけしょっぱい。

「もっと……舐めてくれませんか? 私のワンちゃん……」

幼い容姿の美少女が嫌がるどころか懇願してくるのを受け、『本当にいいの?』という後ろめたさがなくなってくる。

いや、もしかしたら理性が崩壊しかけてるだけかもしれないけど。
とにかく、僕は何度も何度も双葉ちゃんの顔に舌を這わせ続けた。

額、鼻、顎、瞼、耳。

「あっ……ふあっ……やっ……ふふっ、くすぐったいですよ、ポチ」
舐める部位によって、双葉ちゃんは様々な反応を見せる。
喜んだり、照れたり、イヤがるそぶりを見せたり。
だけど、そのいずれの貌も僕には天使のように思えた。
――犬と戯れる小さな天使のように。

擬似的な犬との戯れに満足した双葉ちゃんが首輪を外したことで、僕の生涯で二度と訪れないであろう幸運は終わった。

この舌で感じた双葉ちゃんの肌触りと味を忘れないうちに、今日は家に帰ったらすぐ……その……1人エッチしよう。

「改めてになりますが、今日は無理なお願いを聞いてくれてありがとうございます」
「ううん。双葉ちゃんを元気づけられただけで僕は満足だよ」

余韻が醒めてないからか、返答が日本語としておかしい気がするけど……まあいいや。

一夜限りの夢はこれで終わりかあ。

明日からはまた、学校とかで話しかけたくても話しかけれない微妙な空気になるんだろうなあ。

……と思ったら。

「もしご迷惑でなければ、今後もこういうことをお願いしていいですか?」
「え!」
「あ、も、もちろん敏明君が迷惑でなければですが」
「大丈夫!」
浮かれるあまり即答する。

「良かった……学校だと他人の目を意識してしまって、恥ずかしくて敏明君と昔みたいに話せないことをずっと気にしてたんですよ」

そうだったんだ。
昔みたいに仲良くしたいと思ってたのは、僕だけじゃなかったんだね。

「それじゃあ私はそろそろ帰りますね。また明日、よろしくお願いします」
「あ、待って双葉ちゃん。こんな深夜に女の子の一人歩きは物騒だから、家まで送るよ」

名残惜しいとか送り狼とか変な下心じゃなく、純粋に彼女を案じての提案だ。
僕と双葉ちゃんの家はすぐ近くだから、普通に考えればそうした方がいいしね。

「いえ、私なら1人で平気です。ただでさえ敏明君に迷惑をかけてますので、これ以上は……」
「でも……」

なおも食い下がる僕。

「はぁ……仕方ありませんね。敏明君、ちょっとこれを見てくれますか?」
双葉ちゃんが取り出したのは、小さな【手鏡】だった。

「これがどうかしたの?」
しかし双葉ちゃんはそれには答えず、何かしらブツブツと一言二言呟く。

そして、僕の意識はそこで途切れた。



清彦視点



【手鏡】の力に捕らえられた敏明が眠ったのを確認し、俺は無垢な少女の仮面を脱ぎ捨てた。

「ったく、しつこすぎる男は嫌われるぞ。俺はこれからあの店に行って、今後のプレイに使う道具を買わなきゃいけないんだからよ」
あの店とは言わずもがな、俺がエロ本を買い込んだ店だ。
そのテの店の営業時間は、大抵が深夜2時までと相場が決まっている。

今日のプレイは0時から始めて1時間ほど費やしたから、残りは1時間。
もう少し余裕があるか。

「ホントに敏明のヤツはヘタレだな。唇を舐められる覚悟はしてきたってのに、最後までそこには手……つうより舌を出さなかったしな」

唾液でベトベトになった顔をトイレの水飲み場で綺麗に洗う。

「男に顔を舐められるのは気持ち悪いだけだと思ってたが、途中から妙な気分になっちまったな」
具体的に言うと、何かが背筋をゾクゾクと這い上がってくるような感覚だ。

性的な興奮とはまた別種。
強いて言うなら優越感とか支配感とかが近いか。

小さくか弱い少女が、大男に首輪をつけて歩かせ顔を舐めさせるという行為は、俺の想像以上に嗜虐心を揺り動かした。

そう、俺の目的は他人の心を歪めながら女としてセックスをすること。
そのために選んだ方法が、敏明をマゾ奴隷に調教することだ。

と言っても【手鏡】を使って敏明に刷り込みを行うつもりはない。
あくまで正攻法で敏明を堕としていくつもりだ。

いまの俺は小学生のように小さな女の子――それも極上の美少女だ。

そんなか弱い少女に躾けられる敏明の姿を客観的に愉しみ、
いじめられる敏明の心情を想像して悦に浸り、
双葉になりきってその魅力でヘタレ大男を従順な犬に育て上げることで、自分が女の子であることを『認識する』

……そういう要素を堪能しつつ、処女を散らしながら童貞をオイシくいただくつもりだ。

娯楽をより一層楽しむ為には、顔を舐めさせることを始めとした多少の嫌悪すらも厭わない。
実際はその嫌悪すら、【手鏡】を使わず敏明をコントロールしている、という実感から悦楽に変換されるのは嬉しい誤算だった。

「ふふふ。覚悟……いえ、楽しみにしてくださいね、敏明君。これから少しずつ調教と『ごほうび』のレベルを上げて、立派なワンちゃんにしてあげますから」



眠らせた敏明を置き去りにした俺は1人夜道を歩く。
コツコツ。
――コツコツ。

コツコツコツコツ。
――コツコツコツコツ。

ピタリ。
――ピタリ。

だれかが俺の後をつけているようだ。
こっちが止まれば、背後の足音も止まる。

「ったく、本当に変質者が出るのかよ」

煩わしく思いながら、長い黒髪を揺らして振り返る。
そこにいたのは二十ぐらいの男だった。

俺(清彦)と同じくらいデブで、俺(清彦)と同じくらいブサイクなツラをした、いかにも職業:自宅警備員という風貌だ。

「おじょうちゃん。こんな夜中に1人で歩いてたら危ないよぉ。お兄ちゃんがお家まで送ってあげるからねぇ」
そいつは醜い顔をさらに歪め、舌なめずりをしながらズボンのジッパーを下ろす。

ったく、気持ち悪いヤツだな。
100%エロいことを考えてるツラだが、そんなとこまで俺(清彦)にそっくりじゃねえか。

もしかしたらコイツは【手鏡】を手に入れる前の俺と同じような人生を送ってきたのかもしれない。
そう考えると自然に笑いがこみ上げてきた。

「クスクス……あはははは」

かたや醜い体と顔で、婦女暴行を試みるほどおちぶれたコイツ。
かたや醜い体と顔であるものの、【手鏡】の力を手にし、可憐な美少女になっている俺。

敏明を弄んでいたときに覚えた優越感が再び湧き上がってくる。

「な、な、な、何がおかしいのぉ! 僕をバカにしたら許さないよぉ!」
自分より遥かに小さくか細く華奢で可愛い女の子に笑われたことで、逆上して襲い掛かってくる自宅警備員。

俺は既に用意していた【手鏡】をかざし、呪文を唱えて男を眠らせた。

さて、歩道のド真ん中で高いびきをかいてるコイツをどうするか。
俺は少し考え、思い切り足を振り上ると、男の股間めがけて蹴りを入れる。

「ぶぎゅるっ!」
というガマガエルのような悲鳴が耳朶を打ち、柔らかい何かがひしゃげる感触を足先に受けた。

「あはははは。どうですか? 痛いですか? 痛いですよね? その痛みはよく分かりますよ」
なんせ同じ男だしな。

「……それにしても」

『玉』のついてない肉体で他人の『玉』を蹴り上げる行為には爽快感があったが、敏明をコントロールしてたときのような充足感がない。
一方的な暴力を単純に振るうだけじゃ、どうにも物足りないな。

もっとこう、何て言うのか。
相手に支配しようとしてることを悟らせずに少しずつ支配していくことに悦びを覚えるんだよなあ。

ともあれ、これ以上この場に突っ立ってる必要はないか。

「もしこれで懲りないようでしたら、今度は竿をねじ切ってあげますから楽しみにしていてくださいね」
股間を抑えてのた打ち回る男に向け、謳うように言葉を紡ぐ。

そして俺は極上の笑みを浮かべ、その場を悠然と歩み去った。



しかし不審者か。
今回は婦女暴行を目的としたヤツだったが、もしかしたら通り魔的なヤツもいるかもしれない。
つっても俺は【手鏡】で自衛できるから全く怖くはないけどな。

むしろ問題は敏明だ。
アイツの体格なら大抵は不審者の方が避けると思うが、万が一ということもある。
見た目のハッタリが通用しないヤツが相手だと、敏明の気弱な性格じゃまず勝ち目がないだろう。

……………………。

「……ったく、仕方ねえな」
敏明は俺が目を付けたオモチャだから、他人に壊させるわけにいかない。
俺は180度方向転換し、敏明を寝かせた公園へ舞い戻る。
ちなみに変質者は逃げ出したんだろう、撃退した場所には既にいなかった。



「おーおー、ぐっすり眠りこけっちゃってまあ。こんなんで双葉の番犬が務まるのか?」

今後、夜に出歩くときは敏明に俺(双葉)を守らせるつもりだ。
もっとも実質的には、俺が守ってやることになるんだろうが。

「んじゃ、敏明を起こして一緒に帰るか」
調教グッズの数々を買うのは、明日の放課後でもいいだろう。

そんなことを考え、
「ねえ、敏明君。起きて下さい」
俺は再び双葉という美少女の仮面をつけた。



ままごとみたいな犬プレイから3日たった日曜日。
俺は敏明を(双葉の)家へと招いていた。

「ごめんください」
「いらっしゃい敏明君。お待ちしてました」
「双葉ちゃんの家に来るのって、高校生になってからは初めてだったよね?」
「若葉ちゃんの方は頻繁に遊びにくるんですけどね」
双葉の記憶を読みとって話を合わせる。

ちなみに若葉というのは敏明の妹で、やはり双葉の幼馴染だ。
金色のふわふわした髪に、猫のように大きな瞳。
類は友を呼ぶと言うか、双葉に負けず劣らずの幼児体型であるものの、群を抜いた美少女だ。

ウチの学校で美少女ベスト5を選ぶとなったら、3年の渚、2年の梓、エリカ、双葉、そして1年の若葉でほぼ決まりだろう。
その中の4人の肉体で快楽を貪ったことだし、そのうち若葉の肉体を堪能するのもいいかもしれないな。

……まあ、今は双葉として、敏明にあれやこれやをするのが先決だが。

「双葉ちゃんがご馳走してくれる手料理か、楽しみだなあ」
俺がそんなことを考えているとは夢にも思わない敏明は、のほほんとした顔でテーブルにつく。

だが、先日の『顔舐め』の影響だろう。
ときどき思い足したように顔を赤くしたり、ソワソワしたり、挙動不審なことこのうえない。

もしかしたら今日も何かあるかも? という期待が透けてみえているぞ。



「ふんふん、ふんふふん」
俺は鼻歌を歌いながら料理を仕上げていく。
清彦としてはカップラーメンぐらいしか作れないが、双葉の肉体に備わった技術と知識を自分の物として活用できるからこその芸当だ。

ちなみに敏明は、ホットパンツにキャミソールの上から純白のエプロンをつけた俺の姿に釘づけになっている。
ただでさえ肩や生脚が剥き出しなのに加え、角度によっては裸エプロンのように見えるからな。

「お待たせしました。盛り付けをするので、席についてもらえますか?」
「え? もうイスに座ってるけど?」

敏明の疑問はもっともなものだ。
けど、俺はお前に可愛い幼馴染が作った料理を振舞うためだけに呼んだわけじゃないんだぜ。
これからしっかりと『犬』になってもらうからな。

「ここが敏明君の席ですよ」
俺は食堂の隅までとてとてと歩き、隠すように置いていた首輪(鎖の先は柱に繋がってる)と、フローリングの床に用意していた犬用の皿を手にしてにっこりとほほ笑む。

「あはは、双葉ちゃん。冗談きついよ」
「あ……ごめんなさい。ポチみたいにご飯を食べてもらいたかったんですけど……迷惑ですよね?」
俺は双葉の顔で・双葉の声で悲しそうな素振りを見せる。

――首輪に繋がれ、床に直置きされた犬用の皿に顔をつけてメシを食わせる。

普通のヤツなら即否定・場合によっては怒って帰ってしまう状況だが、双葉のことが好きな優しい敏明『君』は逡巡している。
俺(双葉)の好感度を上げたいという下心や同情心と、人間としてのプライドがせめぎ合ってるんだろう。

んじゃまあ、優柔不断な背中を押してやるか。

「もちろん無理強いはしません。ですが、『ごほうび』も用意していますし……」

ごほうびという単語を口にした瞬間、敏明の体がびくんと震える。
また双葉が過剰なスキンシップをしてくれると期待したんだろう。

だが、それだけじゃ『ご褒美目当てと思われたくない』と、変に見栄を張って断るかもしれない。

「せっかく敏明君のため『だけ』に作ったので……その……食べてくれませんか?」

だから厚意と好意をチラつかせ、『それだったら仕方ないよね』と自分を納得させる理由を与えてやる。

「……分かったよ。そういうことなら、有りがたくご馳走になるね」
そうこなくっちゃな。

「動かないでくださいね……よいしょ、よいしょ」
敏明を床に四つん這いで座らせ、俺手ずから首輪を取り付けてやる。
その際、敏明の首に腕を回して抱き着くような姿勢をとったり、貧層な胸を押し当てることを忘れない。

クク、カチンコチンになっちまってやがる。
俺のアクションで男が『女の子』を意識して狼狽えるのは本当に面白いな。

「はい、できましたよ。それじゃあ料理を持ってくるので、ちょっとだけ我慢してくださいね」
「……う、うん」
ふわりとミルクのような残り香を置き土産にキッチンへと向かう。
俺は敏明の死角に移動したところで手早くエプロンを外し、キャミソールとホットパンツ、ショーツを脱ぎ捨てて再びエプロンを着用。

そう、さっきまでの『なんちゃって』ではなく、本物の裸エプロンだ。

単なる首輪着用に対するごほうびとして双葉の顔を舐めさせ、犬のように食事をさせる『ごほうび』として、裸エプロン姿でプラスアルファのサービスを行う。

少しずつ犬として扱う代わりに、双葉の肉体をエサにしたサービスも少しずつ過激に・艶めかしくしていく。

ククク。
さあ、敏明君。どこまで人間としての尊厳を保てるか、私がすぐ側で見守ってあげますね。



敏明視点



なんでこんなことになっちゃったんだろう?
首輪をつけられた首をひねるが、答えは出てこない。
僕はただ、双葉ちゃんが料理をごちそうしてくれるからやって来ただけなのに。

……いや、まあ。
何も期待してなかったと言えば嘘になる。
双葉ちゃんから犬みたいにご飯を食べてくださいと言われたとき、予感が確信に変わったとドキドキしたのも事実だから。

単に首輪をつけて散歩するだけと違い、犬みたいにご飯を食べることには抵抗がある。
だけど、それはただ頼まれたらの話。
首輪散歩程度で顔を舐めさせてくれたように、今回も『ごほうび』をくれるとしたら、我慢できるどころか、こちらから『犬みたいに扱ってください』とお願いしたいくらい。

たしかに恥ずかしいけど、双葉ちゃん以外誰にみられるわけでもないしね。

もっとも、そんなことを言ったらがっついてるように思われて、呆れられるかもしれないから言わないけど。

「ハイ、敏明君、どうぞ」
「う、うん。ありがとう」

鍋ごと持ってきた双葉ちゃんが、目の前の犬用皿に料理をもりつけていく。
僕はその姿をちらりと見ては目を逸らし、またちらりと見ては視線を外す。
だって双葉ちゃんの服装って、真正面からだと裸エプロンみたいに見えるんだもん。

「あ、ごめんなさい。すぐお水を持ってくるので、食べちゃっててください」
「い……いただきます」

羞恥と期待の入り混じった複雑な感情のまま、四つん這いになり、皿に顔をつけて、口と舌で料理を絡め取って咀嚼。

息が苦しくなったところで顔をあげて、双葉ちゃんの後ろ姿が目に入った瞬間、
「ブーッ! ガハッ、ゴホッ」
思い切り吐き出してしまった。

ふ、ふふふ双葉ちゃんの白くて少しだけ固そうなお尻がまままま丸出しになってるぅぅぅぅ!
そ、それに上もいつの間にかキャミソールを脱いでるし!
いつの間に本当の裸エプロンになったの!?

もしかしてこれが『ごほうび』なの?

好きな女の子の手料理を食べることができるばかりか、裸エプロン姿を堪能できるなんて幸せすぎる!

犬みたいな食べ方をする見返りとしては十分すぎるよ!

「ふふっ。敏明君ってば、料理をこぼすなんてがっつきすぎですよ」

僕が身に余る幸運を噛みしめている間に、犬用の皿と水差しを用意した双葉ちゃんがやってくる。

「でもポチが帰って来たみたいで嬉しいです。あの子もそんな風に、よくご飯をこぼしてましたか……きゃっ!」
「あ! 危ない双葉ちゃん!」

それは一瞬の出来事だった。
双葉ちゃんがバランスを崩して転びかける。
当然僕は咄嗟に飛び出して助けようとしたけど、首輪に繋がれた鎖のせいで前に進めず……。

「うう……冷たいです……」
尻もちをついた双葉ちゃんは、水差しを自分の体にこぼして全身濡れ鼠になってしまった。

「だ、大丈夫、双葉ちゃん?」

雰囲気を出す為だけと思って気にも留めてなかったけど、僕(の首輪)と柱を繋ぐ鎖が恨めしい。
今すぐ双葉ちゃんに駆け寄って助け起こしたいのに、ままならいのはもどかしいよ。

「ご心配かけて申し訳ありません。ちょっとお尻を打っただけですから」
「そ、そう? ならよかっ……はううっ!」
起き上がった双葉ちゃんの姿を目視した僕は、四つん這いを通り越してほぼ腹這い……つまり『伏せ』の状態を取る。
その理由は、一瞬で勃った股間を隠すため。

ただでさえ破壊力抜群、裸エプロンの黒髪の美少女。
そのエプロンに水をかけたらどうなると思う?

濡れて透けた白い布地は肌にぴたりと貼りつき、双葉ちゃんのボディラインをくっきりと浮き上がらせている。
――膨らみかけの小さな胸の形も。
――その先端にある桃色の突起も。
――蕾のような股間の丘陵も。
――その中央に引かれた一筋の縦線も。

ハッキリ言って、全裸よりエッチなんじゃないかな。
こんなモノを見せつけられたら、男としてアレが反応しちゃうのは仕方ないこと……だよね?

「と、とにかく双葉ちゃん。早く着替えてこないと」
「このくらい大丈夫ですよ。それより敏明君のお世話をしないといけませんから」

双葉ちゃんは改めて水を汲み直した皿を置く。

「いっぱいご飯を食べてくださいね、ポチ」
「う……うん」
「んもう、駄目ですよ」
双葉ちゃんは小さな子供に注意するように、優しく怒りながら僕の頭をこつんと叩く。
そしてその場にしゃがみ込んだ。

そうなると、僕の目の前には双葉ちゃんの股間が位置するわけで。
濡れエプロンから透けて見える女性器。
女の子のアソコって、こんな形なんだ。

「いまの敏明君は犬なんですから、返事は『わん』ですよ。分かりましたか?」
「わん」
脊髄反射的に双葉ちゃんの言葉に従ってしまう。
あれこれ考えず、双葉ちゃんの半裸に集中したいからだ。

見ちゃいけないという思いは確かにあるし、実際に目をつぶったり逸らそうとしている。
だけど、体が言うことを聞いてくれない。双葉ちゃんの股から目を逸らせないんだ。
悲しいけど、これが男の本能なんだよね。

そういう意味じゃ、僕が鎖で繋がれてるのはある意味幸運・ある意味不幸だと言えるかな。
本能の赴くままに双葉ちゃんに襲いかかろうと思っても、物理的に不可能だしね。

「ポチったら、食べていいのは私の『ココ』じゃなく、ごはんですよ」
「あ、ご、ごめん! 僕、そんなつもりじゃなかったんだ!」

うう、そりゃあれだけロックオンしてれば気付かれるかあ。
僕がエッチな男の子だって嫌われちゃったかなあ……。

「私を食べるのは……その……別の『ごほうび』のときに……ね?」
か、可愛い!
扇情的な格好で恥ずかしそうに潤んだ瞳をするのは犯罪的すぎるよ!
それに、そういう言い方をするってことは期待していいの!?

「と……とにかく、色々ドタバタしてしまいましたが、冷めないうちに『エサ』を食べちゃってください」
「うん」
「もう、本当にダメなワンちゃんですね。返事が違いますよ」
責めるような口調と裏腹に、僕の頭を優しくこつんと叩くフリをする双葉ちゃん。

「わん!」
嬉しさのあまり、犬のような食事と鳴き声への抵抗はどこかへ消え失せてしまった。
もっと犬らしいことをすれば、双葉ちゃんからさらにすごい『ごほうび』がもらえる。
僕は期待に股間を膨らませながら料理をたいらげた。



清彦視点



「ふふっ、美味しいですか、ポチ?」
「わんっ!」
俺は犬用皿に顔を突っ込む敏明の頭を、小さく白い掌で優しく撫でてやる。

裸エプロンまでは計画通り。
それが水に濡れてスケスケになったのは偶然だが、とっさに機転を利かせることができたのは、我ながら幸運としか言いようがない。

エプロンが肌にぴたりと貼りつく感触は気持ち悪いが、『隠しているのに見せている』という事実が解放感と恍惚感を与えてくれる。

敏明がエサを食いながらも俺の身体を見やるたびに、乳首が勃ち、股間が濡れて少しずつ『開いて』いく。
それを見た敏明はさらに興奮し、もっと凝視しようと目に力を入れる。
その男の欲望がこもった目力を浴び、さらに俺という少女の花弁が咲き乱れていく。

他人に見られることで興奮する露出狂の気持ちがいまなら分かる気がする。
もっとも俺は、誰彼かまわずこの柔肌を晒す気は無い。

こういうのは大事に隠しておき、ここぞというとき・ここぞという相手にしか見せないからこそだと思う。
つまりは調教目的で敏明にしか見せない、ってコトだ。

普段は抑えているモノをこうやって解放することで、より強い性的・精神的興奮を味わえるからな。

そして敏明の方からみても、だ。
大好きなご主人様(双葉ちゃん)が、自分だけを特別扱いしてくれるってのは嬉しいだろうし、それに応えようと奮闘するはずだ。

「ねえポチ。はしたない女の子だと思わないでくださいね。私がこんな恰好をするのはあなたの前だけですから」
「わんっ!」

おいおい、嬉しがるにもほどがあるだろ。
尻尾をパタパタ振ってる幻覚が見えるほどだぞ。



「わんっ!」
ごちそうさまでした、という意図だろう。
皿にこびりついた料理の汁まで綺麗に舐めとった敏明が満足そうに吠える。
その姿にはイヤイヤやっているという様子は見られない。
むしろ『ごほうび』目当てで、より過酷なことでも受け入れる覚悟と決意に満ちているように思える。

あくまで双葉と2人きりという前提だが、あと12回のプレイとごほうびで、敏明を完全な『犬』にできるだろう。
その後はエロ本の通販ページで見つけ、エロ専門店で買った『アレ』を使ってマゾ奴隷へと墜としていくか。

そこまで育ててから貪る性の快楽は、さぞかし熟れて甘美なものだろう。
俺は双葉の股間を敏明のアレが貫く未来を想像し、膣壁からヨダレのように雌汁を滴り落とした。



それから一週間の間、俺は焦らすためにあえて敏明に何もしなかったんだが、ヤツの挙動不審っぷりは、見ていて腹を抱えたくなるほどのものだった。

例えば学校にいる間だ。
双葉として授業を受けている俺の方をちょくちょく見ては教師に注意されたり。
頭を抱えたり貧乏ゆすりをしたり。

「あ……あの……双葉ちゃん……」
「はい? どうかしましたか?」
決意を秘めた表情で話しかけてくるものの、素知らぬ顔で微笑む俺に何も言えず、
「ごめん……やっぱり何でもない……」
と、スゴスゴ引き下がってみたり。

さらには家(敏明宅)においても、頭を抱えてゴロゴロしてみたり、双葉の名前を叫びながらオナニーしたり(これは前からか)、携帯電話の前で正座して着信をひたすら待ち続けたり。

そうそう。一番面白かったのは、犬(特に大型犬)が映ってるDVDを見まくって、その動作を真似ていたことだ。

何で俺が自宅での敏明の様子を知ってるかと言うとだ。

「お兄ちゃんってば、せっかくお休みの日だってのに、何で犬の番組ばっかり見てるの?」
「ああ……うん」
「もー、ちゃんとあたしの話聞いてる? ほら、ちょっとこっち見てってば」
「あ……うん、そうだね、若葉」
「もういいや。【手鏡】の力で勝手に眠らせちゃうよ」
「え? ……zzzzzzzz」

そう。
俺は敏明の妹である若葉の肉体を奪って、コイツの妹になりすましているからだ。

学校は双葉として敏明をすげなくあしらい、放課後になると一度清彦を経由して若葉と肉体を入れ替え、日に日に落ち込んでいく敏明の観察を日課としている。
(ちなみに俺たちの教室は2階にあり、清彦の席は窓際なんだが、そこから1年の教室――さらに言うなら若葉の席が見えるため、容易に入れ替わりができる)

「うーん……うーん。クソ、敏明のヤツ、図体がでかいから本当に重てえな。貧弱な若葉の力じゃ物置に運び込むにも一苦労だぜ」

そして、何で敏明を眠らせて隠したかと言うと、

ピンポーン。

「あの……ごめんください」
「双葉お姉ちゃん、待ってたよ」
「きゃっ! もう若葉ちゃんったら。顔を見るなり抱き着かないでください」
「いいじゃない。あたしと双葉お姉ちゃんの仲じゃない」
「それはそうですけど……ところで、本当に敏明君はいないんですよね?」
「うん、お兄ちゃんは夕方まで戻ってこないよ」

昨晩、敏明に内緒で相談したいことがある、と双葉から若葉の携帯にメールが入ったからだ。

外で双葉と会ってもよかったんだが、生憎今日は大雨だ。
遠出する気にはなれないし、目と鼻ほどの距離といえ、双葉の家まで行くのが億劫だったから呼びつけたってわけだ。

「それで、お兄ちゃんに内緒で相談したいことって何? もしかして双葉お姉ちゃん、何かされたの?」
俺が最後に双葉の肉体に入り込んでいたときは、双葉は若葉に何かを相談をしようと考えていなかった。

「うん……でも……」
「大丈夫。あたしは双葉お姉ちゃんの味方だし、どんな内容でも絶対お兄ちゃんにはバラさないよ」
なおも逡巡する双葉に、同性の幼馴染にして最大の理解者という風を装って先を促す。

肉体を入れ替えて直接記憶を盗み見るのもいいが、信頼できる人物になりすまして秘め事を聞き出すのもオツなもんだな。

しばらく双葉は組んだ指をもじもじと動かしていたが、やがて意を決して語り始める。
「私が……エッチなことを嫌っているのは若葉ちゃんも知っていますよね?」
「うん。その理由もね」

そのことを双葉は若葉にしか喋ってないし、若葉は自分の胸に留めている。
女の子2人だけの秘密ってヤツだ。
まあ、両方の記憶を読んだ俺は当然知ってるけどな。

ちなみに、敏明は『双葉はエッチが嫌い』『小学校のとき、愛犬(ポチ)が車に轢かれて死んだ』ということは知っているが、それが繋がってることまでは知らない。
双葉としても、自分がセックスにショックを受け、車に撥ねられそうになったが犬が身代わりになってトラウマになった、と『男』に言うのは抵抗があるんだろう。

「ですが……最近になって……エッチな本を買ってしまったり……自分で自分を……その……慰めたりしてしまったんです」

思わず噴き出しそうになるのを必死に堪える。
ソレは俺が双葉としてやったことで、おまえは自分の意思で行動したと思い込んでるだけだ、って明かしたらどんな顔をするんだろうか。

「何でそんなことをしようと思ったのか自分でも分からないんです。現にさっきも、そのとき買ったエッチな本を読み返したら気持ち悪くて吐きそうで……あのときの私は自分でもどうかしてたとしか……」

俺は双葉にそれ以上を言わせず、そっと抱きしめて頭を優しく撫でる。

「双葉お姉ちゃんはどこもおかしくないよ。性欲っていうのは人間の3大要求の1つだもん」

小柄な双葉は力を込めれば壊れてしまいそうなほど華奢だが、ハグする俺の肉体も同じくらい小さい少女のものになってるから、ハタ目には子供同士がじゃれているようにしか見えないだろうな。

「お腹が空いたらご飯を食べなきゃいけないし、睡眠も取らなきゃ死んじゃうよね? それと同じで、エッチなことも我慢できないんだよ」

だから、と俺は続ける。
「双葉お姉ちゃんはエッチを嫌がっていても、女の子の肉体はそれを望んでいるんだよ」
「でも……1人でその……エッチなことをしても、すごく気持ちよかったり、気分が悪くなったりするんです」

前者は俺が双葉の肉体でオナニーしたときの充足感を引きついてるんだろう。
そして気持ち悪いってのは、紛れもない双葉本人がオナニーしたときの感想か。

俺が入って無い状態でも1人エッチを試してみるとは、いい感じに精神汚染されてきてるな。

後はこのまま、エッチ……それもアブノーマルなのが好きな変態に、敏明共々変えていってやるか。

「双葉お姉ちゃんはトラウマに引きずられてるからエッチが気持ち悪いんだよね? だったらいい方法があるよ」

俺は天使のような笑顔で悪魔のように囁く。

「エッチを人間の男の子と女の子でするものと思っているから、体が受け付けないんじゃないかな? 人間以外の何か……例えば動物とか無機物と人間の女の子でのエッチならどう?」
「そ……そんなこと不潔……」
語尾を濁したのは、俺が双葉として敏明に施した犬プレイの記憶が浮き上がってきたからだろう。

「あ、もちろん獣姦とかじゃなく、人間の男を動物に見立てて、ペットみたいに扱ってみるの」
「……たしかに私は敏明君を犬みたいに扱ってました……あれは普通のエッチは無理だけど、気持ちよくなりたいという私の願望なのでしょうか……」

動揺する双葉は、自分の考えを口走ってることに気付いていない。

「あれこれ難しく考えない方がいいよ。双葉お姉ちゃんがどう考えていても、『行動したこと』こそが本当に双葉お姉ちゃんの本当の願望だと思うから」

完全には納得できないようだが、同性の幼馴染に色々肯定されたことで双葉は気を楽にして帰って行った。



その日の深夜。若葉から清彦の肉体に魂を戻した俺は、公園のベンチで自意識を取り戻した。
日中降り注いだ雨は止んでいるが、その残滓を抱くベンチは濡れそぼっている。
そんなモノに座っている俺のケツもまたびしょ濡れだ。

そして目の前には広げられたエロ本。
どういう状況なんだと訝しみ、記憶を読みとってみた。

……俺の肉体に入れられ、清彦として行動していた若葉は『いつもの店』でエロ本を買い、家まで我慢できずにここで読みふけっていたらしい。

「【手鏡】のことを知らない俺なら、局部が修正された女性のヌード写真程度で満足してたんだよな」

我ながらささやかすぎる幸せだ。

「コイツがあれば、生の女性器を見放題、触り放題なうえ、その快楽すら自分のモノにできるっていうのにな」
言って【手鏡】を弄ぶ。
実際、ついさっき風呂場で、若葉の未発達の肢体を存分に観察しつつオナニーしたしな。

と、男女の声が聞こえてきたのはそのときだ。
「よく頑張りましたね。さすが私のワンちゃんです。お待ちかねの『ごほうび』ですよ」
「わんっ!」

声のした方に向かい、草むらからこっそり覗いてみる。
そこでは、双葉が敏明に胸を舐めさせている光景が繰り広げられていた。

まさか双葉のヤツ、自分の意思で敏明の調教をやってんのか?
俺の行動で双葉が心を蝕んでいるのは喜ばしい限りだが、俺の知らない間に敏明の調教が進むのも面白くない。

俺は【手鏡】を取り出して呪文を唱え、双葉と魂を交換する。



「んあっ……やっ……」
一瞬だけ意識が揺らぎ、不意に胸を疾った気持ちよさに声をだしてしまう。
その快感に翻弄されつつ、双葉の記憶を読みとってみる。

……なるほど。

ついさっきまで敏明に首輪をつけ、本物の犬のように四つん這いで歩かせてたのか。
そして今日のご褒美がこの胸舐めって訳だな。

さらに少女の肉体に刻まれた記憶に手を伸ばすと、双葉から敏明への好感度が完全なラブに上がっていることに気付く。

……ふむ。双葉は日中、家に帰った後、若葉の助言をもとにオナニーしてみたのか。
敏明を犬のように扱う想像をしながら女性器を弄ったところ、すっきりイくことができた、と。

そして遠目では分かりづらかったが、双葉は絆創膏で乳首を隠している。
ぎりぎりまでじらしつつ、最後にコレを剥ぎ取って乳首を敏明に舐めさせるつもりだったらしい。

「ククク、ある意味敏明とお似合いな変態お嬢様になってくれそうだな……あっ……んんっ……」
「わん?」
「んっ……なんでもありませんよ、ポチ。さあ、この絆創膏を剥いで、私のサクランボを美味しく召し上がってくださいね」
「わんっ、わん!」



たった今中身が入れ替わったにも関わらず、少女の青い果実にむしゃぶりつく敏明は滑稽そのものだ。

そしてもう1人……。
俺は茂みの中に潜んでいるはずの『そいつ』に見せびらかすよう、恍惚とした貌で股間の割れ目に指を伸ばし、自分でいじり始める。

肉体と記憶、そしてたった今まで行っていた行動を俺に奪われ、清彦という檻に閉じ込められた双葉の魂。
奪われた本人はそれに気づかず、双葉となった俺の痴態に興奮し、股間を膨らませていることだろう。

「うふふっ……くふんっ……もっと……もっと舐めてください……やんっ……あはははははははっ」

小さく狭いながらも濡れやすく、名器と呼ぶに相応しい双葉の膣内を自己探索しながら快楽に悶える。

双葉と敏明、2人の人間を狂わせていることを俺だけが知っている。
男でありながら少女の全テを奪い、肉欲に浸るという特権を俺だけが得ている。

その優越感に酔いしれ、背筋をゾクゾクとしたものが上がってくる。
俺は肉体的にも精神的にも満たされながら、

「あっ……いいっ……あっ……あっ……やんっ……んんんんんんんっ!」

男では絶対に味わえない甘露の限りを貪りつくした。



双葉(in清彦ボディ)視点



時間は少し遡り……。

うぅ。いきなり眩暈に襲われてしまいました。
私、どうしてたんでしたっけ?

えーと、たしか……。
突然の申し出にも関わらず、ワンちゃんのように四つん這いで歩いてくれた敏明君への『ごほうび』として、私のつつましやかな胸を舐めさせて……ついでに……恥ずかしいことですが自分も気持ちよくなってしまって……。

まるで意識というか、魂が飛ばされたような感覚を覚えたのですが、あまりの快感に失神してしまったのでしょうか?

……それにしてはおかしいですね。
私はたしか遊歩道に居たはずですが、何で草むらの中にいるんでしょう?

「んあっ……やっ……」
そんな折、私の真正面から聞こえてきた少女の声。
はて、どこかで聞いたような声ですね……。

………………ええっ!?

数メートル先で繰り広げられる光景に、私は自分の正気を疑いました。
何故なら、敏明君が『私』の胸を美味しそうにしゃぶっていたからです。

『貴女は誰ですか!?』
とっさに叫ぼうとしたものの、口がまったく動きません。
いえ、指一本動かすことすらできなかったのです。

まるでこれが、自分の肉体じゃないような……うっ……ぐっ……ああああっ!
な、なんですかこれは!
黒くてどろっとしたコールタールのような『泥』が、私の心を侵食していくような感覚。

や、止めてください……私の中に入ってこないで……敏明君、助けて……助けてください!

しかし恋心を自覚した相手は『私』がここにいることに気付かず、一心不乱に『私の形をした別の誰か』の胸に吸いついていました。

このとき私が感じたのは、言い知れぬ不安と焦燥でした。
私の体。私の心。私の思い出。私の生活。私の友人・知人。そして……私の大事な幼馴染。
『泥』が私を覆うほど、それらを思い出せなくなっていく。

『泥』にすべて覆い尽くされた私が最後に感じたのは、双葉という少女を形作るすべてが、あの『偽者』に奪われるような恐怖と絶望でした。

んー、あれ? 『俺』はどうしたんだっけ?
俺が呆けていた時間はおそらず1秒足らず。
その間に何かあったような気がするが……ちょっと思い出してみるか。

たしか行きつけのエログッズ専門店で掘り出し物のエロ本を買って、家に帰るまで我慢しきれず、この公園に寄って読み始めて。
そして、

『よく頑張りましたね。さすが私のワンちゃんです。お待ちかねのごほうびですよ』
『わんっ!』


なんて男女の声が聞こえてきたから、この草むらに隠れて様子を見てたんだよな。

そしたらクラスメイトの敏明が、同じクラスメイトの若葉の胸に吸いついてる場面を目撃しちまった、と。

アイツ等付き合ってたのかよ。
いやまあ、双葉くらい可愛ければ、梓とエリカのようなレズでもない限り、彼氏がいない方がおかしいんだが。

……それにしても。

「んっ……なんでもありませんよ、ポチ。さあ、この絆創膏を剥いで、私のサクランボを美味しく召し上がってくださいね」
「わんっ、わん!」

大型犬のようにちっぱいを貪る敏明と、心底嬉しそうな双葉を見ているうちに切なくなってくるのは何でなんだ?

しかしその疑問は、すぐにどうでもよくなった。
俺がここに潜んでるのを知っててあえて見せびらかすかのように、双葉がとろんとした表情でスカートをたくし上げ、自分のアソコをいじり始めたからだ。

小学生と見まごうばかりの幼さでありながら、淫靡に悶える同級生の美少女。
その艶めかしい痴態と嬌声を見聞きした俺の股間は、まるで別の生き物のように鎌首をもたげてくる。

とっさにスマホを取り出し、●REC と操作したのは言うまでもない。

「うふふっ……くふんっ……もっと……もっと舐めてください……やんっ……あはははははははっ」

胸を男に舐めさせ、自らの手で女性器を掻きまわしてよがり狂う双葉は、素での可愛さを抜きにしても美しかった。

「ハァ……ハァ……ハァ……」
我慢しきれなくなった俺は、左手で同級生の痴態を撮影したまま右手で器用にムスコを取り出して自分で『始める』

そして双葉はと言うと、ショーツを下ろし、『俺がここにいてオナニーすることを分かっているかのように』、綺麗な割れ目を広げてこちらへ向けた。

まるで『私をオカズにしてもいいんですよ』と言わんばかりだ。

「スゲェ……女のアソコって、あんな形してたのかよ」
エロ本やエロビデオごし……しかもモザイクやぼかし入りでしか見たことのない俺にとって、初めて見るナマの女性器は刺激的だった。

――あの牝穴へ挿れてみたい。

理屈じゃなく男の本能に突き動かされ、勃起しても皮を被ったままの肉棒をしごく手の動きを速める。

「あっ……いいっ……あっ……あっ……やんっ……んんんんんんんっ!」
胸を敏明に、股間を自分の指に刺激された双葉が、牝の嘶きをあげて荒い呼吸を繰り返す。

それから数秒遅れて、
「ハァ……ハァ……ハァ……ウッ!」
俺は他人に使ったことのないイチモツから、大量の精子を空に向かって打ち上げた。

そして訪れる賢者タイム。
冷静になった俺は、このまま覗いていたことがバレれば面倒事になると気づく。
もう少し美少女の裸体を目に焼き付けたかったが仕方がない。
ナニの始末をそこそこにして、物音を立てないようこの場を逃げ去るか。

去り際に一度だけ振り返る。
双葉は快感に蕩けて焦点こそ合っていないものの、その体から発せられる雰囲気は、俺に何かを自慢しているように思えてならなかった。




清彦視点



「ねえ、双葉ちゃん。今日は何をするの?」
「ふふっ。それはですね……」

敏明に胸を舐めさせつつオナニーを『俺』に見せつけた数日後の深夜。
俺は敏明をいつもの公園に呼びだしていた。

ちなみに『俺』になっている双葉が先日覗き見た出来事を忘れられず、出歯亀に来る確率はほぼゼロだ。
一昨日の深夜、街を徘徊していた『清彦』は不審者と間違われ、警察に補導されかけたからな。

幸いにして学校や家に連絡することだけは勘弁してもらえたものの、それに懲りて夜間外出は自粛している。

まったく、俺の思考回路で行動してるからつっても勘弁してほしいよな。
いくらデブでブサイクで童貞でも、大切な俺の本体なんだからさ。

双葉の肉体を好き勝手使ってる俺に言えた義理じゃないが、それはそれ・これはこれってヤツだ。

そうそう、これはどうでもいいことだが、俺になった双葉は先日の光景を録画していたが、その動画はネットにアップしていない。
【手鏡】の力を知らない俺なら間違いなく、自分が何かしらのリスクを負うことを嫌うだろうしな。

そんな訳で、あの動画はあくまで清彦の個人鑑賞用として存在している。
俺もソレを使い、久々に男のオナニーをしてみた。

美少女となった自分自身の濡れ場をオカズに一発抜くのは、倒錯感も相まって十二分に堪能できたが、あくまで男のオナニーの範囲内で考えればの話だ。

体全体で感じる牝の忘我体験(エクスタシー)を知ってしまった以上、股間しか気持ちよくなれない男の快楽は物足りなさすぎる。

まあ、脱線はこのくらいにして、本題である敏明の調教だ。
今日も犬の散歩には変わりないが、首輪→四足歩行からエスカレートし、全裸を要求したところだ。

てっきり難色を示すと思ったが、
「うん、分かったよ」
と、いともあっさり服を脱いで四つん這いになってしまう。
順調なのはいいことだが、物足りなく感じちまうのは贅沢な悩みかね?

「今日は月が綺麗で、散歩にはいい夜ですね」
「わんっ!」

首輪の鎖を美少女に握られ、生まれたままの姿で局部をぶらぶらさせながら四足歩行する大柄な少年。
もはやこいつは双葉目当てに人間として、色々大切な物を捨てているのがよく分かる。

後は敏明のヘタレ的な部分を活用して追い込むだけだ。
何せコイツときたら、『間違いなく誘ってるだろ!』とだれしも思う数々の『ごほうび』ですら、理性をブチ切って双葉に襲いかかろうとしなかったほどだ。

この可愛らしい声で「私を抱いてください」って言わない限り、その股間にぶら下がったナニを使う度胸が無いんだろう。

けど、それじゃダメだ。
あくまでも敏明から『双葉ちゃんのおまんこに入れさせてください』と懇願するまで追い詰め、双葉への絶対服従を条件にセックスさせてやる。
そう、今の『おねがい』を聞いてる状況から『命令』に何でも従うオス奴隷に墜とすために。

そのためにすべきことは……。



「よく頑張りましたね、ポチ。今日の『ごほうび』ですが……」
「わんっ!」
「……私を貴方にさしあげます」
「わんっ……ええっ!?」
驚く敏明だが、何を想像しているのかは一目瞭然。
このムッツリの股間についたアレが、大きく固くなってきてるからな。
もしかしたらパブロフの犬のように、『ごほうび』と聞いただけで勃起したのかも知れないが……まあいい。

「簡単に言うと、私の肉体を好きにしてもいいということですよ」
俺は蠱惑的な笑みを浮かべ、自分の小さな胸を揉み、その手を下腹部へ滑らせる。

引っ掛かる物がないまま、すとんと股間を落ちていく感触に、自分の肉体が女の子のものだということを実感する。

「それともワンちゃんは、こんなにいやらしいご主人様の体なんて興味がないですか?」
ブンブンと首を横に振る敏明。
本当に分かりやすいオモチャだな。

「ただし、私の処女膜を破ることだけはダメですよ。これはもう少しだけ取っておきたいですからね」
「『もう少しだけ』ってことは……」
「はい。敏明君が頑張ってくれたおかげでお散歩は満足できたのですが、次は『躾』をしたいと思いまして……その『ごほうび』として、私の純潔を捧げようと思ってるんですよ」

俺はゆっくりとした動作で座りこんでる敏明の背後に回り、肩ごしに甘く囁く。

「……もちろん、敏明君がイヤだと言うのでしたら、この話は無し……」
「僕なら大丈夫だよ!」
即答しやがった。
まあ、そう答えるのは分かりきってたけどな。

「ポチ、『おすわり』……は、してますね……『お手』」
「わんっ!」「おかわり」「わんわんっ!」

ははは、こりゃ楽しいな。

「ちんちん」
「わんっ!」

プッ、ククククク。
コイツ、チンポを丸出しにしてちんちんのポーズを取ってやがる。
吹き出しちまいそうだが、ここはガマンだ。

「そして敏明君にやってもらいたいことは『まて』なんですよ」
「え?」
あ、素が出やがったな。
さらに『都合のいいことに』勃起したナニも鎮まってやがるし。

「敏明君にはこれから1月半の間、セックスとオナニー……つまり射精を我慢して貰おうと思いまして」
「ええっ!? そ、そんな!」
セックスはともかくオナニーを1月半も我慢できない、と言いたげなツラだな。
同じ男子高校生としてその気持ちはよく分かるけど、だからこその無茶振りなんだぜ。

「敏明君の誕生日は来月ですよね? 私が敏明君に操を捧げるのは、その時しかないと思いまして」
「双葉ちゃん、僕の誕生日を覚えていてくれたんだね」
当然じゃないですか、とほほ笑む俺に対し、敏明は感極まって泣き出してしまう。

「分かったよ。僕の誕生日まで……その……我慢するよ」
「ありがとうございます。ええと、それにあたって渡すものがあるのですが、受けとってもらえますか?」

俺は返事を待たずにカバンの中から『ブツ』を手に取り、敏明の股間から生えたキノコにかぶせる。

「えーと……双葉ちゃん。これは何? っていうか、何をやってるの?」
「これは男性用の貞操帯ですよ。装着している間は勃起できない仕組みになってるんです。すごいですよね」

管のような部分で敏明の男性器を包みこみ、睾丸に輪を通しながら、さも楽しそうに答える。

「ふーん、そうなんだ……ってそうじゃなくて!?」
「おしっこなら心配いりませんよ。貞操帯をつけたままでもちゃんとできますから」

そしてロックをかけ、敏明のナニを外部から完全に隔離した。

「これでバッチリです。この鍵を使わない限り貞操帯は絶対に外れません」
「あの……なんでこんな物を取りつけたの?」
「敏明君が『まて』を守れるようにするための措置です」
「こんな物をつけなくても、僕は双葉ちゃんの言いつけを守るよ!」

自分のことを信じて欲しい、と切に訴える敏明。

「もちろん敏明君のことは信じてます。ですが、これから敏明君と恋人のように……いえ、恋人として色々やっていくうちに、ついムラムラと来ることがあると思うんですよ」
「こ……恋人……僕と双葉ちゃんが恋人……」

おいおい。
大好きな女の子から勝手に恋人宣言されて舞い上がるのは分かるが、人の話はちゃんと聞こうぜ。

「うん、分かったよ。誕生日までの間、『これ』をつけて生活するね」

本当に単純な男だな。
俺(双葉)にとって、セックスは禁止してもテメェのオナニーを禁止する理由が無いことに気付かないんだからよ。

まあ、とにかくだ。
これで下ごしらえは済んだ。
これから一月半の間、我慢を重ねる敏明の姿をじっくりと愉しませてもらうか。

(後編に続く)
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