「…どうして、こんなことに」
俺は呆然と、一人暮らしの部屋でつぶやいた。
俺の胸には、二つの膨らみ。
世間ではそれを、おっぱいとか乳とか様々な呼び方で呼ぶが、普通は男子にはついていないはずのそれが、シャツの上からでも分かるぐらい自己主張をしていた。
少しだけ触れてみる。
触られている感覚とともに、嫌でもこの膨らみが作りものでないことが理解できる。
直接触れてこそいないが、股間には、いつもの感覚とは違う喪失感。
鏡を見ると、そこには可愛い顔を不機嫌そうにしてあぐらをかく可愛い女の子。
俺は一夜にして、「女に変わっていた」のだった。
どうしてこんなことに。
昨晩のアレ以外には考えられない。しかし、まさか本当にこんなことが…
「またお前、彼女にふられたのかよ」
英司は呆れたように言った。
英司とは幼稚園の時からの腐れ縁で、大学生になった今では十数年来の付き合いになる。
そう、昨晩俺は彼女にあっさり振られて、家に英司を読んで酒を飲みながら延々と愚痴っていたのだった。
まさか大晦日の昼に振られるなんて、悪い冗談みたいな展開が自分の身に降りかかろうとは思ってもみなかった。おかげで年越しの計画が台無しだ。
「俺は悪くないんだよ。彼女が悪いんだ」
「またそうやって人のせいにする。少しは彼女の気持ちも思いやってやれよ」
「女の気持ちなんか、分かるもんか。女じゃないんだからさ」
「まあ、それもそうだな」
そう言って英司は、そうだ、と呟いた。
「あと30分で年越しだし、初詣でも行ってこないか?」
そういえば近くにはちょっとした神社があるな。暇だし、行ってみるか。
あの時、軽々しく承諾してしまった自分を呪いたい。
後でわかったことだが、あの神社は縁結びの神社だったのだそうだ。
そして、「大晦日の夜から年をまたいで二人で参拝した場合は、幸せな男女関係を築くことができるでしょう」という迷信があったのだ。
「まさか、男二人の場合でも『幸せな男女関係』が適用されるのか…?」
俺はすっかり可愛らしくなってしまった声で呻くと、細くてつやのある長く伸びた髪を掻きむしった。
「おーい、もう起きてるのか?」
英司が起きてきた。昨日結局終電を逃したあいつは当たり前のように俺の家に泊まっていったのだ。
一人だけ男のままでいやがって…許せん。
「おい、英司!」
俺はつかつかと英司のところに歩み寄り、文句の一つも言おうとしたのだが…
あれっ?英司って、こんなにカッコ良かったっけ?
顔かたちは変わってないはずなのだが、妙に英司をみると胸がドキドキしてくる。
なんというか、オーラがあるというか。守ってもらえそうな…って、何を言ってるんだ俺は!?
「あれ?えーと、どちら様?」
英司が慌てたような声で言う。
「どちら様もクソもあるか!目が覚めたら女の身体になってたんだ!」
「まさかお前…」
ああ、そのまさかだよ!お前が初詣に行こうなんて言わなければ、こんなことには…と言おうとして、すっかり身長差のついてしまった英司を見上げる。前は俺の方が高かったのに。
見上げた瞬間、胸がときめく。
なんだ、これ…
思わず目がとろんとするぐらい、気持ちが良くなってくる。
俺は英司に殴りかかる代わりに、ぽふん、と英司の胸に飛び込んだ。
気持ちいい。気分が安らいでくる。
きっと俺の表情は相当エロいものになっているに違いない。
恥ずかしいけど、仕方ない。俺は恥ずかしさを堪えながら言った。
「責任、とってもらうからな」
「ねーねー英司、年越しはどうやって過ごす?」
あたしは甘えた声で英司に寄りかかる。
あの後英司には事情を話し、あたしの正体も分かってもらえた。
実家にも電話してみたけど、あたしは元々女の子だったことになっていて、過去の記録もぜんぶ書き換わっていた。
女の子の生活に慣れるまでは大変だったけど、今じゃお化粧も人並みにはできるつもりだし、今日だってお気に入りのカワイイ服を着てきた。
最初は、男の俺がこんなヒラヒラしたの着れるか、なんて言ってたけど、やっぱり身体は女の子だから、着てみると意外にしっくりきて、それから徐々に女の子の服を着るのが楽しくなっていった。
きょうは勝負下着もバッチリ。
これも全部、大好きな英司のためなんだよ。
責任とってもらう、なんて強いこと言ってたけど内心ドキドキしてたあたしを、英司は優しく抱きしめてくれた。
後で聞いたけど、英司もあたしをみてドキドキしてたみたい。
その後当然のようにキスして、エッチした。
はじめての女の子の快感は男だった時の何百倍もすごくって、思わず声が出た。
今でもあの時のエッチのことを彼に言われて、あたしは赤面する。
男言葉で嬌声をあげるあたしを見て、彼も妙な倒錯感を感じてたみたいだけど。
「そうだな、もうすぐ一年だし、また初詣に行くか!」
そっか。もうすぐあれから一年なんだよね。
あたし達は神様のご利益通り、「幸せな男女関係」を築けている。女子の友達からはいつもからかわれるほどだ。
この幸せがいつまでも続きますように。
そしてゆくゆくは―
英司と自分に授かる赤ちゃんの顔を想像していると、あたしの胸に軽く触りながら英司が言った。
「でもその前に…いいだろ?」
「もう。英司ったら、エッチのことしか考えてないんだから」
ちょっとは女の子の気持ちも考えてよね、と軽く膨れっ面をしてみる。
でも気持ちはわかる。
男の気持ちいいこと、して貰いたいことは全部自分の事として知っているあたしとのセックスは、どんなことよりも最高なのだ。
いつも男同士の猥談で盛り上がっていた幼馴染みの英司のことなら、それこそ手に取るようにわかる。
男だった頃には味わえなかった幸福感があたしを包む。
女の子になれて幸せ。今は心からそう思う。
返事を催促するかのようにあたしの胸がブラ越しにすこし強く揉まれる。
あたしは優しく微笑んで、いいよ、と言うと大好きな英司にキスをした。
俺は呆然と、一人暮らしの部屋でつぶやいた。
俺の胸には、二つの膨らみ。
世間ではそれを、おっぱいとか乳とか様々な呼び方で呼ぶが、普通は男子にはついていないはずのそれが、シャツの上からでも分かるぐらい自己主張をしていた。
少しだけ触れてみる。
触られている感覚とともに、嫌でもこの膨らみが作りものでないことが理解できる。
直接触れてこそいないが、股間には、いつもの感覚とは違う喪失感。
鏡を見ると、そこには可愛い顔を不機嫌そうにしてあぐらをかく可愛い女の子。
俺は一夜にして、「女に変わっていた」のだった。
どうしてこんなことに。
昨晩のアレ以外には考えられない。しかし、まさか本当にこんなことが…
「またお前、彼女にふられたのかよ」
英司は呆れたように言った。
英司とは幼稚園の時からの腐れ縁で、大学生になった今では十数年来の付き合いになる。
そう、昨晩俺は彼女にあっさり振られて、家に英司を読んで酒を飲みながら延々と愚痴っていたのだった。
まさか大晦日の昼に振られるなんて、悪い冗談みたいな展開が自分の身に降りかかろうとは思ってもみなかった。おかげで年越しの計画が台無しだ。
「俺は悪くないんだよ。彼女が悪いんだ」
「またそうやって人のせいにする。少しは彼女の気持ちも思いやってやれよ」
「女の気持ちなんか、分かるもんか。女じゃないんだからさ」
「まあ、それもそうだな」
そう言って英司は、そうだ、と呟いた。
「あと30分で年越しだし、初詣でも行ってこないか?」
そういえば近くにはちょっとした神社があるな。暇だし、行ってみるか。
あの時、軽々しく承諾してしまった自分を呪いたい。
後でわかったことだが、あの神社は縁結びの神社だったのだそうだ。
そして、「大晦日の夜から年をまたいで二人で参拝した場合は、幸せな男女関係を築くことができるでしょう」という迷信があったのだ。
「まさか、男二人の場合でも『幸せな男女関係』が適用されるのか…?」
俺はすっかり可愛らしくなってしまった声で呻くと、細くてつやのある長く伸びた髪を掻きむしった。
「おーい、もう起きてるのか?」
英司が起きてきた。昨日結局終電を逃したあいつは当たり前のように俺の家に泊まっていったのだ。
一人だけ男のままでいやがって…許せん。
「おい、英司!」
俺はつかつかと英司のところに歩み寄り、文句の一つも言おうとしたのだが…
あれっ?英司って、こんなにカッコ良かったっけ?
顔かたちは変わってないはずなのだが、妙に英司をみると胸がドキドキしてくる。
なんというか、オーラがあるというか。守ってもらえそうな…って、何を言ってるんだ俺は!?
「あれ?えーと、どちら様?」
英司が慌てたような声で言う。
「どちら様もクソもあるか!目が覚めたら女の身体になってたんだ!」
「まさかお前…」
ああ、そのまさかだよ!お前が初詣に行こうなんて言わなければ、こんなことには…と言おうとして、すっかり身長差のついてしまった英司を見上げる。前は俺の方が高かったのに。
見上げた瞬間、胸がときめく。
なんだ、これ…
思わず目がとろんとするぐらい、気持ちが良くなってくる。
俺は英司に殴りかかる代わりに、ぽふん、と英司の胸に飛び込んだ。
気持ちいい。気分が安らいでくる。
きっと俺の表情は相当エロいものになっているに違いない。
恥ずかしいけど、仕方ない。俺は恥ずかしさを堪えながら言った。
「責任、とってもらうからな」
「ねーねー英司、年越しはどうやって過ごす?」
あたしは甘えた声で英司に寄りかかる。
あの後英司には事情を話し、あたしの正体も分かってもらえた。
実家にも電話してみたけど、あたしは元々女の子だったことになっていて、過去の記録もぜんぶ書き換わっていた。
女の子の生活に慣れるまでは大変だったけど、今じゃお化粧も人並みにはできるつもりだし、今日だってお気に入りのカワイイ服を着てきた。
最初は、男の俺がこんなヒラヒラしたの着れるか、なんて言ってたけど、やっぱり身体は女の子だから、着てみると意外にしっくりきて、それから徐々に女の子の服を着るのが楽しくなっていった。
きょうは勝負下着もバッチリ。
これも全部、大好きな英司のためなんだよ。
責任とってもらう、なんて強いこと言ってたけど内心ドキドキしてたあたしを、英司は優しく抱きしめてくれた。
後で聞いたけど、英司もあたしをみてドキドキしてたみたい。
その後当然のようにキスして、エッチした。
はじめての女の子の快感は男だった時の何百倍もすごくって、思わず声が出た。
今でもあの時のエッチのことを彼に言われて、あたしは赤面する。
男言葉で嬌声をあげるあたしを見て、彼も妙な倒錯感を感じてたみたいだけど。
「そうだな、もうすぐ一年だし、また初詣に行くか!」
そっか。もうすぐあれから一年なんだよね。
あたし達は神様のご利益通り、「幸せな男女関係」を築けている。女子の友達からはいつもからかわれるほどだ。
この幸せがいつまでも続きますように。
そしてゆくゆくは―
英司と自分に授かる赤ちゃんの顔を想像していると、あたしの胸に軽く触りながら英司が言った。
「でもその前に…いいだろ?」
「もう。英司ったら、エッチのことしか考えてないんだから」
ちょっとは女の子の気持ちも考えてよね、と軽く膨れっ面をしてみる。
でも気持ちはわかる。
男の気持ちいいこと、して貰いたいことは全部自分の事として知っているあたしとのセックスは、どんなことよりも最高なのだ。
いつも男同士の猥談で盛り上がっていた幼馴染みの英司のことなら、それこそ手に取るようにわかる。
男だった頃には味わえなかった幸福感があたしを包む。
女の子になれて幸せ。今は心からそう思う。
返事を催促するかのようにあたしの胸がブラ越しにすこし強く揉まれる。
あたしは優しく微笑んで、いいよ、と言うと大好きな英司にキスをした。