深海より来たる危機に立ち向かう、過去の軍艦の力を持った存在・艦娘。
彼女達は常人と異なる肉体ながら、人間の女性と違わぬ感情を持ち合わせていた。
そして……その身に秘めた女性にとって一番大切な場所も、普通の人間と同じように機能している。
数多の戦いで、艦娘は一人、また一人と喪われていったが……生き残った艦娘の中には、男性と交わり子を設けた者も居た。
今、長門のそばに立つ小さな少年も、その一人である。容姿は母にとても似ており、少女と見間違えそうになるほどであった。
「本当に、良いのか?この実験を受けてしまったら、もう後戻りできなくなるかもしれんぞ?」
長門は複雑そうな面持ちで、子にそう問うた。
彼女達は、鎮守府上層部の命令で、ある実験に携わろうとしていた。そのきっかけは、他ならぬ長門の子の存在である。
数少ない、人間と艦娘のハーフである彼には、潜在的に艦娘としての能力が備わっていることが調査によって発覚したのだ。
しかし、肉体的には人間よりで、なおかつ男児として生まれた彼は、その力を発揮することが無かった。
この事を知った上層部は、"あるもの"と組み合わせてその能力を引き出せないかと考えたのだった。
上層部の目に留まらなければ、あるいは、彼が首を横に振ったなら、このまま普通の人間と同じように暮らすことも可能であったかもしれない。
しかし、長門の子は首を縦に振った。
「普通の生活に未練がないわけじゃないんだ。けど……僕は、やっぱり普通の人間じゃない。
父さんみたいな普通の人間でも、母さんみたいな艦娘でもない、中途半端な身体で……ずっと、悩んでたんだよ。
もっと……はっきりした身体に、なりたかった。」
そう告白しながら、長門の子は服を脱いでいく。
一糸まとわぬ状態になり、その身にはまだ発展途上の単装砲が携えてあった。
そして少年は、肌色のぺらぺらした物体を手に取る。
それは人型をしていて、母親そっくりな顔と長髪が備わっていた。
次々と喪われていく艦娘を、少しでも多く調達・補充するために作られた、人間を艦娘にするための"皮"。
適正のある人間が着用することで、低コストでの艦娘の確保を可能とする特殊艤装。
今、少年の全身を包みこもうとしているそれは、この実験の為に特別な調整を受けたものだった。
通常、艦娘の皮で艦娘となった場合、その性能はオリジナルに劣るものとなっていた。
だが、潜在的に力を秘めた人間と艦娘のハーフにそれを着せたら、果たしてどうなるのか。
人間寄りの肉体であるがゆえに発現できなかった力を、艦娘の皮なら引き出せるのではないか。そう上層部は考えたのだ。
母を模したその皮は、彼にはいささか大きすぎた。だが、背中の入口から脚を入れると、みるみるうちにその脚の皮が収縮していく。
通常は、着用者のほうが皮より大きいケースが殆どであり、着用者の肉体が皮の機能で縮む。
しかし着用者のほうが小さかった場合は、それに合わせて皮のほうが収縮するようになっていた。
全身装着が成されると、そこには、長門が子供になってしまったような……いわば、駆逐艦サイズの長門とでもいうべき少女が全裸で佇んでいた。
「……何故私は縮んで……ううん、違う……僕は母さんじゃない。母さんは……」
「ああ、ちゃんとここに居るぞ。……私に子供時代があったのなら、こんな姿であったのだろうか……」
皮の機能により流れ込んだ母の記憶に少し混乱しつつ、小さな長門は母と共に鏡を見つめていた。
「どうだ、気分は?」
「着てるって感じがすうっと無くなって……けど、不思議な力が入ってくる感じ。
それと、身体の中からも何か力が湧き上がってくるような……あ、でも、髪の毛が長すぎて、ちょっと見えにくい。」
そう語る全裸の少女の髪は、地面につくほど伸びきった状態だった。
皮は身体に合わせて縮んだが、皮に備わった髪は、着用前と変わらない長さであった為だ。
余分な分の頭髪が、いくらか抜け落ちてもいた。
「なるほど。どれ、私が整えてやるとするか」
「母さんが?大丈夫なの?」
「内勤に回されてから、他の艦娘の散髪もやるようになってな。提督の髪も整えてるんだぞ?」
「そう、だったんだ……」
着なれた黄色いエプロンを着けた長門は、少女に取り急ぎ女子用の寝間着を着せると慣れた手つきで散髪を始めるのだった。
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小さな長門は、母の所属する横須賀鎮守府預かりとなり、彼の艦娘としての生活が始まった。
オリジナルの艦娘を保有する鎮守府は、重要機密を知る者達が多数集まっており、
あらゆる意味で特殊な艦娘となった長門の子を配属させるにはうってつけであった。
彼は、母やその同僚たちの指導を受け、身体の使い方を実戦で学んでいくこととなる。
この場所に配属されている艦娘は、オリジナルの艦娘と"皮で艦娘となった者"が混在していたが、
後者は一部の者を除き、小さな長門の存在を"小さいことさえ気づかず、おかしいと思わない"よう意識補正が施されていた。
彼女等は、やがて別の場所に配属される際、小さな長門のことを記憶から消去される。彼の存在そのものが、重要機密であるからだ。
「あ……19さん、おはようございます。」
「おおっ、小さなほうの長門なのね!おはようなの!」
「うう……丁度よかった……長門、たすけてくだち……」
数少ない例外もある。身に着けた艦娘の皮との相性が良く、それゆえに艦娘の人格と本来の人格が上手い具合に融合してしまった者。
また、志願して艦娘の皮と肉体をも完全に融合させた者。彼女等はオリジナルの艦娘に近い立場で扱われており、同様に小さな長門の事情を知る者達だ。
フラフラになった伊58の隣に立つこの伊19も、その艤装との相性の高さゆえに意識が同化してしまった存在であった。
問題なのは、この着用者は伊19となる以前より素行に"ある問題"を抱え、上官が頭を痛めるほどだったことだ。
「ちょうど、あさごはんが終わったとこなの。19の魚雷は朝から絶好調なのね!」
「だ、だから、58は19のごはんじゃないでち……」
「19さん、自重しろって提督からあれほど言われてるのに……」
詳細は伏せるが、奔放な伊19の人格が加わったことで、着用者の問題行動を更に暴走気味なものにさせてしまったようだった。
この伊19の"雷撃"の"餌食"になってしまった艦娘は数知れず。その中には、この伊58と同じオリジナルの艦娘も含まれていた。
時には、戦闘不能にした人型の深海棲艦まで"餌食"にするほどである。それも何体も。
なまじ戦果も上げているため無碍にすることもできず、上官にとって悩みの種となっていた。
「これから出撃前に、お風呂場でデザートなの!」
「そこまでにしといてください19さん。砲撃、受けたくありませんよね……?」
小さな長門はやれやれといった顔で、通常より小さなサイズの武装を展開する。
「おおっと。19より"若い"のに、小さな長門は大胆なの。」
両手を上げた伊19は、しょうがないなと伊58を明け渡す。
「た……たすかったでち……」
「もし"徹甲弾がうずうずしてる"なら、いつでも呼ぶのねー!」
「うず……って、ちょっと、19さーん!?」
脱兎のごとく去る伊19。危機が去り胸をなでおろす伊58。
ここに来てからの毎度のやり取りに小さな長門も呆れるばかりであったが、その内心は複雑であった。
艦娘の皮を纏ったことにより、今まで秘められていた力が使えるようにはなった。
通常の人間が艦娘の皮を着用した時とは段違いの性能が、訓練を重ねるほどに引き出されていく。
当初の想定以上の成果が見込めそうだと、計測班も言っていた。
このまま上手くいけば、中途半端な身体から脱却できる。艦娘として生きていける。
(母さんと同じ艦娘になりたかった……望んでたことだったはずなのに、何で悩んでるんだ、僕は?)
無意識のうちに、細くも力強さを感じる手指が、臍の下のあたりに触れる。
彼自身にもよくわからない不安が、小さな長門を苛んでいた。
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「おや……どうした、我が子よ」
「おかえり母さん。待ってたんだ。」
ある日の夜、小さな長門は、母の部屋にやってきていた。日課の清掃が終わりエプロン姿で戻ってきたら、既に居た形である。
前線を退いて以来、戦闘よりも清掃・炊事などの内勤を主にしていた彼女は、いかつい鉄の装備よりも、エプロンを着けていることが多くなっていた。
間宮の手伝いをするうち、大和にも引けを取らないほどの料理の腕になったくらいである。
「そっちから私の部屋に来るなんて、珍しいじゃないか。寂しくなったか?」
「……どうなんだろう。自分でも、わからないんだ。」
ここの所、小さな長門の漠然とした不安は増すばかりで、暗い表情を見せるばかりなのを母も察していた。
特殊な出自とはいえ、彼もまた多感な子供。ましてや、彼女が自分の腹を痛めて生んだ実の子なのだ。
母として、子の助けになろうとするのは、当然の帰結だった。
長門の両手が、後ろから子を抱き寄せる。
「お前が不安だったら、いつでもこうするよ。私には、それくらいしかできないから。」
「母さん……」
母のぬくもりを感じつつも、小さな長門の胸のつかえは、引っかかったまま。
答えの一向にわからない不安に、母娘は頭を巡らせる。
「……ずっと、母さんと同じ艦娘になりたかった。人間でも艦娘でもない、中途半端な自分から変わりたかった。
今もその気持ちは変わってない。変わってない、はずなのに。」
「私達は、兵器として生まれた。けど、人として生きてみたいとも思ってしまう、わがままな存在だ。
人でもなく、兵器にもなりきれない。艦娘も、ある意味中途半端なのかもしれない。」
「けど、それでも、僕は母さんたちに憧れてたんだ。……死ぬかもしれない、恐怖はある。
兵器として使われる恐怖もある。でも、それでも、憧れた。綺麗で、凛々しくて、かっこよかった母さんたちに……」
母は子の髪を撫でながら。子はそのぬくもりを感じながら想いを口に出す。口に出して、初めて気が付くことも、ある。
「私は、今のお前も大好きだ。小さくて、可愛くて、何より自分の子のお前が。どんな艦娘よりも尊い子だと思う。
……けど、人間のお前が……この皮の中の本当のお前が、一番好きなんだよ。私も、その気持ちは変わらない。」
「人間の、僕……」
小さな長門がずっと艦娘になりたがっていたように、母は、ずっと子を愛していた。艦娘の皮の中にある、本当の姿を。
それがたとえ、中途半端な存在であっても。
その言葉で、彼は今一度振り返る。
「中途半端な身体は嫌だ。……だけど、この中の本当の身体が嫌い……ってわけじゃ、ないのかな……」
そう考えた後、彼はふと気が付いた。無意識のうちに臍の下に触れていた、自身の片手に。
「……どうした?」
「いや、な、なんでもないよ、母さん」
そう返しつつも、彼は内心うろたえていた。胸の引っ掛かりの正体らしきものに。
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自室に戻った彼は、布団の上で寝付くわけでもなく、神妙な面持ちでいた。
今まで無意識のうちに触れていた臍の下に、自覚的に手を伸ばす。
そして、ふと思いだす。たまたま風呂場で伊19と出くわした時のことを。
『そういえば、小さな長門も19と同じ身体なのね。もう"自分の魚雷"は出してみたの?』
『ぶっ!?……1、19さんと一緒にしないでくださいよ!』
『あ、そうだったのね。"魚雷"というより"徹甲弾"なの!まあどっちでもいいのね。』
『だから、そうじゃなくって……』
『そう言わないで、覚えとくといいの。魚雷出すのはキモチイイのね。』
『え、えぇえ……』
その時、小さな長門はものすごい勢いで引いていた。今でも思いだすと引くほどである。
その一方で……明確に思いだしてしまう。あの時伊19が語った"魚雷の出し方"を。
『今、長門は自分の"魚雷"が無くなっちゃったように感じてる筈なの。だけど、よく集中してみればわかるのね。
無くなってしまった"魚雷"を、わずかに感じられる筈なの。まだ無くなっちゃったわけじゃなくて、ちゃーんと"この中"に入ってるの。』
今自分が触れている場所を、あの時の伊19も指していた。
「確か……その僅かな感覚を頼りにしながら、ココを色々引き伸ばすって……」
本来の自分を封じ込めた皮の股間部についた、一筋の割れ目。その上端近くの、ある部分。
「んっ……う……」
集中して感じ取った、わずかな感覚を手掛かりに、その部分をいろんな方向に引き延ばす。
「っ!?外に、出てくる……」
久方ぶりの感覚と共に、それが皮の奥から少しづつ出てくるのを彼は感じた。この姿になってからは、初めての感覚。
それを皮切りに、それはどんどん外へと出てくる。やがて、先端が尿道口から顔を見せ、そのまま根元まで飛び出した。
「本当に……出ちゃった……」
小さな長門の股間に封じ込められていた"徹甲弾"は、久方ぶりに戒めを解かれたのだった。
「ん、ぐうっ……何、これ……なんで……」
感覚が戻って来たそれは、みるみるうちにその硬さを上げていく。自分でも制御できないほどに。
それが意味することを、彼自身理解はしていた。けれど、何故かがまだわからない。
「何で徹甲弾がうずうずしてるのか、わからないのね?」
「な!?」
自室の窓に、伊19が張り付いていた。ここは三階なのに、壁をよじのぼって。
「あなたの親愛なる隣人、19なの!」
お前のような潜水艦がいるか。
とりあえず、(色んな意味で)危ないので小さな長門は部屋の中に入れることにした。
「出し方を教えた甲斐があったの。長門なら、いつかやると思ってたのね!」
「うう……いいように誘導されたってことか……」
伊19は、小さな長門の徹甲弾を見て嬉しそうにしていた。
「恥ずかしがることはないの。艦娘だって、身体の欲求に忠実になっていいのね。
ましてや"魚雷持ち"なら、女も男も、楽しみ放題なの!」
「だから、それは19さんの主張であって、僕は……」
「本当に、そうなの?」
「う……」
悪魔のような微笑みを浮かべ、伊19は詰め寄る。
「心ではそう思ってても、身体は正直なの。長門の徹甲弾は、間違いなく欲情してるのね。艦娘に欲情するのも、オスのサガなの。
きっと、自分の身体にも興奮しちゃってるの。おっきな長門とおそろいになった自分自身にも、欲情してるのね。」
伊19の言葉は、小さな長門の心の引っ掛かりの核心を突いていた。
「い、いけない……こんなんじゃいけないのに……」
「何がイケナイのね?徹甲弾だしたってことは、こうなることも頭にあったはずなの。
どうにも長門は肩肘張り過ぎなの。中途半端がどうのこうのってよく言ってるけど、そんなんじゃ堅苦しくて人生つまらなくなるのね。
人生、もっと自由でもいいの。人間と艦娘。男と女。もっと欲張りさんでもいいのね。」
常にその破天荒さで周りを振り回す伊19だったが……彼女は、小さな長門のことを見透かしていた。その奔放さゆえに。
「ん……このままその徹甲弾でお楽しみのつもりだったけど、19の出番はここまでのようなの。」
「え。」
伊19が、部屋のドアを指さす。
僅かに開いたその隙間からは……母長門が、覗いていた。
「か、母さん……いつから……」
「……"徹甲弾"を出す前から、だな。」
小さな長門の頭が、一瞬で茹であがった。
「それじゃあ、あとはごゆっくりなのー!」
「あっ!?19さん、ちょっとー!?」
窓を開け、伊19は去っていった。壁に張り付き泳ぐように。
「まったく、19の奴も毎度好き放題やってくれる……まあ、今回は許すとするか。……うむ。"ここ"は日に日に提督に似てきたな」
「うう……母さんまで……」
後には、母に徹甲弾を見られ赤面する子と、じっと見つめる母が残された。
「父親に負けない、立派な仰角だ。そんなに良いか、私の身体は……私の、姿は。」
「そ、それ、は……」
「恥ずかしがることはない。これもまた、お前のありのままの姿だ。艦娘に欲情する男児がいてもいい。
まあ、我が子に欲情されるというのも、むずがゆいものだが……」
「ふあっ……!?」
言いながら、母長門は徹甲弾に触れ……指ぬきの手袋に包まれた手でやさしく握った。
今、自分も身に着けている長門の服の素材感が、自分の徹甲弾から伝わってくる背徳感。
たまらず、徹甲弾の硬度が上がる。
「やはり、親子は似るものだな。提督も、私の手袋の感触が好きでな。ほら。」
「っ!」
母長門の空いている手が、小さな長門の手を掴み、徹甲弾に導いていく。
そして、母娘で片手づつ、徹甲弾を包む形となった。
そのまま、黒い素材に包まれた母娘の手は、上下に動き始める。
「遠慮しなくていい。今は、その感覚に身を任せてしまえ。これも性教育というやつだ」
徹甲弾の硬度は更に増し、透明な液を迸らせはじめた。
砲撃に向けての秒読みが始まり、徹甲弾に釣られ、根元から走る割れ目からも液体が溢れだす。
この身体になる前から、彼には徹甲弾を硬くするほど興奮する経験は何度かあった。
しかし、いま体験している感覚は、それとは比べ物にならないほどの、凄まじい快感。
そこへ、更に母長門の空いた手による……割れ目への侵入が加わる。
「うあっ……ああああっ!あ、あ、あ……!」
徹甲弾からのそれとは別ベクトルの快感が、最後の引き金となった。
小さな長門の徹甲弾から、溢れんばかりの砲撃が放たれる。
その凄まじい勢いは数秒間続き、母娘の身体を瞬く間に汚していった。
一度徹甲弾を放った砲塔は仰角を下げ始める。だが、母娘の身体に籠もった熱は、一向に収まらない。
母長門が割れ目に差し込んだ指はいまだに動き続け、絶え間ない感覚を与え続けていた。
「母さん……やめて……変に……なっちゃう……」
「ふふ……それでいいんだ……お前には、この感覚もしっかり教えてやりたい……」
その刺激により、瞬く間に弾頭が再装填されていく。
「あいつじゃないが……夜戦の授業といこうか。」
「そ、そんなぁぁぁぁ……」
小さな長門の声は、夜の闇に消えて行った。
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「おはよう、長門……って、どうした?」
「ああ、提督か……」
翌朝、長門の夫の提督が見た彼女は、目にクマができていた。
時折、彼との"夜戦"などの理由で目にクマができることは時折あったものの、それを差し引いても長門の表情は暗かった。
「いったい、何があった?昨日は俺と一緒だったわけでもないのに、夜戦したような顔して……というか、何でそんなに暗い顔を?」
「それが、わからないのだ……」
「わからない?」
どんよりした長門が、涙目になる。
「決して悪いことをした気はないのに、今朝から息子が口をきいてくれないんだぁ……」
「せがれが……?待て、お前まさか……」
その時、提督の視界に、人影が見えた。
涙目の母長門を背後から見つめている、不機嫌そうな小長門。
「うう……私の何がいけなかったんだぁ……」
「……もう少し、時期を見るべきだったな。やれやれ」
妻と息子を見ながら、父は溜息をつくのであった。
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この小さな長門から得られたデータは、その後の戦いに大いに役立てられることとなった。
仮説は立証され、その後確認された艦娘と人間のハーフの何人かは、艦娘の皮を支給され、戦地に赴いたという。
また、永世着用者が生んだ子供でも同様の効果が期待できること、及び、皮を着用したハーフなら性別を問わず水準以上の性能を発揮可能なことも分かった。
残念ながら、ハーフが中に入った艦娘の性能上昇は個体によって差があり、オリジナルに匹敵するレベルの者は殆ど現れなかったものの、
いずれも要所で少なくない活躍をしたのではないかと言われている。
ただし、当事者をはじめとして実験に関わった者の殆どが軍事機密の塊であることもあり、これもまた一部の者が断片的にしか知らない情報である。
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「おはよう、母さん」
「ああ、おはよう」
早朝の鎮守府で挨拶を交わす、同じ姿をした二人。
片方は箒を携え、黄色いエプロンを身に着けた長門。
もう片方は、エプロンを身に着けていない、普通の長門。
その背丈は、エプロンの長門より、ほんの少しだけ小さかった。
「今日の任務は、何なんだ?」
「沖ノ島沖が騒がしいらしくて。少し、落ち着くまで時間がかかりそうだよ」
「そうか……毎度、心配になるな。戦場に向かう息子を見送るというのは」
「ごめん。でも、これもここを守るためだよ。ここに居る皆と、母さんと、そして……」
「母さん!お兄!」
そんな二人に、声をかけてきたのは……駆逐艦サイズの陸奥だった。
彼女は、提督と母長門の第二子であった。
そして、陸奥の皮を着用して訓練を始めたのだ。かつての兄のように。
「陸奥も、おはよう。」
「お兄、また任務でしょ?いってらっしゃい!母さんは、私が守るから安心して?」
「ああ、頼りにしてる。それじゃあ、行ってきます!」
長門の向かう先には、彼女の同僚たちが待っていた。
今日も、"母に代わって海を駆ける"長門の任務が始まろうとしていた。
ちょっと思ったのは、徹甲弾は射ちだされる弾の種類の事なので
膨張したり(長砲身化)縮こまったり(短砲身化)かたくなったりするアレの表現は、単装砲の【砲身】の方があっているのではないかと?
うぅむ、すと黒さんの作品はよくよく設定の裏を突いたり隅をつついたりして、色々気付かされますねぇ。
小さな体に大きい皮の場合、確かに体に合わせるパターンもありましたか。
それはさて置き、長門母さん、立派になって…。けれど年を取ってない気がするのは何でだろうw
子長門も男としての欲求を認識して、強くなってほしいですねぇ。
そして19さん、さすが泳ぐ18禁。中の人の影響もあってか色々躊躇いが無いですね。
頑張れ58、生きてw
91式徹甲弾が、水中に入ってから"魚雷"めいて飛んでいくという話だったので、その流れと長門型戦艦が装備可能なものでつい。
>罰印さん
よつば板のスレ、見させてもらってます。電光提督ってw
あと、19に関しては何か小話書けたらいいかなとか淡く考えてたりしますが、どうなるかはわからないとこです。