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ウソと約束と誤算

2014/06/21 09:25:10
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広い広いお屋敷。
その本宅の庭に建てられた離れ。
そこに設えられた部屋に俺はいた。

畳敷きの広い部屋の半分ほどが板敷きという風変わりな一室。
多分元は普通の和室だったのを改造したんだろう。
板敷きのスペースにはまるで病院のような設備が運び込まれていた。

俺は改めて清彦が金持ちのボンボンだということを思い出した。
なお、清彦とは同じ大学に通う俺の悪友。
そして、俺が今ここにいる理由を作った張本人である。

清彦から聞いてはいたが……俺みたいな庶民とは世界が違う。
大層居心地が悪い。

そういえば今俺が着ている和服も高級車並みの値段だとか。

そんなことを考えながら、光沢の美しい着物を着た胸を見つめる。
そこには……本来の俺にはない柔らかな2つの膨らみがあった。



そして、改めて思い出した。
淑やかに和服を着て畳敷きの部屋で正座している少女。
それが今の俺の姿だということを。

なんでこんなことになったのか?
話は数日前にさかのぼる。



◆ ◇ ◆



「頼む! 結婚してくれ!!」
「男同士で結婚なんかできるか!!」

ある日清彦が急にアホな頼みごとをしてきた。
俺は当然けんもほろろに断った。
それでも清彦は泣いてすがりついてくる。

なんでも清彦のお祖母さんが病気で余命がないらしい。
なんでも、そのお祖母さんに心残りがあるのだとか。

心残りとは孫がさっぱりもてないこと。
それを気に病んでいるせいで往生できないのだという。

「というわけで、婚約者のふりをしてくれればいいんだ。
俺の婆ちゃん孝行を手伝ってくれ! 頼む!!」
「だからって、お前の彼女や婚約者のふりなんか、
できるわけないだろう!?」

そう。そこが決定的だ。
なぜなら……。

「俺は男だぞ!?」

同じ男である清彦と結婚なんてできるはずがない。

「そっちは何とかなる。だから頼むよ敏明ぃ!」

何とかなるって……。
俺に女装でもさせるつもりか?
冗談じゃない!

俺は何度も断った。
たがそれでも清彦はすがりついてくる。

…………仕方ない。
気は進まないが、お祖母さんのためだと思おう。
俺はシブシブ清彦のお願いを承諾した。



それからしばらく日々が流れた。
話は俺が清彦の屋敷に来る前の晩。
つまり、昨夜に移る。

一人暮らしをしている俺のアパートに清彦がやってきた。
お祖母さんに会うためにしてほしいことがあるという。

「この薬を飲んでくれ」

清彦は手に持った丸薬を見せながらそう言った。

「……本当に毒じゃないんだろうな?」
「ああ、心配ない」
「本当に男に戻れるんだろうな?」
「くどい! 昨日俺が飲んでみせただろ!?」

そうなのだ。
昨日、清彦に呼び出された俺は、
その場所に見知らぬ美少女がいることに驚いた。

さらに、彼女の正体が清彦だと言われて驚き……。
薬を飲んで男に戻って見せられて三度驚いた。

「要するに性転換薬だから。
もう一回飲めば元に戻るから」

そうまでされては信じないわけにもいかない。
いや、実際はいまだに信じられないんだけどね。

「本当に男に戻れるんだな」
「ああ。婆ちゃんが生きている間だけでいい。
お礼は何でもする。……だから……頼む!」

俺を拝む清彦。
仕方ない。
約束だからな。



当日、清彦が車で迎えにきてくれた。
俺は屋敷に着くと、薬を飲んで女になった。
まさかの女性化体験だ……。
続いて用意された着物に着替えた。

「よく知らないけど、見舞いにこんな派手な着物でいいのか?」
「ああ。婆ちゃん湿っぽいの嫌いだから」

そこまで言われたら是非もない。
俺はプロだというお姉さんに着付けられ……。
髪を整えられ……。
化粧までされた。

うう……恥ずかしい!

こんな格好を見られたくない……。
って思って清彦を見のだが……。
なんだか魂が抜けたような顔をしている。

「……敏明」
「なんだ?」
「お前……美人だよ?」
「嬉しくねえよ! 見んな! 恥ずかしい!!」

俺は清彦を怒鳴りつけた。
ちょっぴり嬉しい……なんて思ってしまった自分を誤魔化すために。

清彦に案内され、屋敷の離れにある部屋へ到着した。
清彦は「失礼します」と声をかけ、ふすまを開けた。
開口一番俺を紹介する。

「婆ちゃん。この子が俺のフィアンセだ!」

清彦の紹介が恥ずかしくて、俺はうつむく。
そのまま部屋に入り正座でお祖母さんに対面する。

「……なあ、あんた」

お祖母さんが俺に話しかけてくる。

「アキとお呼びください。お祖母さま」

俺はなるべくお淑やかに答えた。

「アキさんとやら。
あんた本当にこのバカを選んでくれたのかい?
金で雇われたりしてるんじゃないだろうね?」

金で雇われてないのは本当だったので、そう答えた。

「じゃあ、このバカのどこを気に入ってくれたんだい?」

この質問には正直に答えた。

「そうですね……バカでお調子者で……。
良いかっこしいな割にすぐにくじけるし……」

「おいっ!」という清彦の抗議を俺はスルーする。

「でも、そんなすべてを含めて気に入って、
清彦さんとお付き合いをさせていただいています」

俺の回答に、清彦の顔面が真っ赤に染まった。

お祖母さんは俺の回答を気に入ってくれたらしい。
俺に向かって日頃の清彦の様子を教えろとせがむ。
俺は笑い話を交えて教えてさしあげた。

お祖母さんは俺の話をニコニコと笑いながら聞いていた。
清彦は恥ずかしさに頭をかきむしっていたけどな!

そろそろお祖母さんの身体に障る。
医師らしき人にそううながされた。
俺たちが部屋を辞するとき、お祖母さんは俺の手をつかんで言った。

「この子を……清彦をお願いします」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。
ね、清彦さん」

にっこり笑って俺が言う。
清彦はぼーっと俺の顔を見つめ。

「コンゴトモヨヨシクオネガイシマス」

と、ぎこちなく声を絞り出した。

こうして、清彦の孝行と……。
それにつき合った俺の婚約者のふりは終わった。

…………ハズだった。



◆ ◇ ◆



「話が違うじゃないか!」

俺は清彦に詰め寄った。

「仕方ないだろう!
余命1ヶ月足らずだったハズの婆ちゃんが、
全快するなんて俺だって思わなかったよ!?」

そうなのだ。
清彦のお祖母さんがなんと快癒してしまったのだ。
むろん目出たいことなのだが……。
理由を聞いて俺は目をむいた。

「清彦とアキさんの結婚式を見届けるまで、アタシャ死ねないよ」

そう言ったんだとか。

「頼む! 結婚してくれ!!」
「承諾できるわけないだろう! バカ!!」
「お前に断られたら今度こそ婆ちゃん死んじゃうかも」

うっ!
卑怯者め!
そんな寝覚めの悪いこと、できるか!

「……ふり……だからな」
「えっ!」
「お祖母さんがなくなるまでのふりだからな!!」

……こうして。
俺は女として清彦と結婚することになった。

その後、お祖母さんは意外なほど長生きして……。
俺と清彦は4人も子供をこさえることになるのだが……。
このときの俺たちはそのことを知るよしもなかった。


――終わり――







◆ ウソと約束と誤算 after story

「お祖母さまのために」
俺は清彦との婚約を決意した。

最初に俺はそのことを家族に報告する事にした。
まだ、学費の面倒も見てもらっている身だからね。
真っ先に親の承諾を得ようと思ったのだ。

女性の姿で実家に戻った結果、一騒ぎあったのだが……。
そこは覚悟の範囲内ではあった。

我が家は、代々続く古さが自慢な程度の個人経営の蕎麦屋。
店は妹がかねてから継ぎたいと言っていたので問題なかった。

母と妹と一緒に女になった俺を見て……。

「お兄ちゃんがキレイなお姉ちゃんになって嬉しいよ!」
「ふふっ。ますますうちが華やかになるわねぇ」

などと言っている。
複雑な心境だけど、反発されるよりましだろう。
自分をそう納得させた。

ただ……父親の反応は少し違った。
開口一番、父はこう言った。

「お前は、そのお祖母さんをだましているんだな?」

……まさに、ぐうの音も出ない。

「お前が善意でしたことはわかる。
だが、目的は手段を正当化できないぞ」

天狗の鼻をへし折られた気分だ。
俺は調子に乗って「良いことした気分」になっていたから……。

しゅん、となった俺に父親が言う。

「誤解するなよ? “兵は詭道なり”というだろう」

……なんかいきなり時代劇みたいなこと言い出したぞ?

「ウソは悪いことだ。だが、ウソが必要なことだってある」
「……いいウソもあるってこと?」
「ウソはウソだ。ウソは悪いことだ。
だが、人間が生きるためには悪いことが必要なことはある」
「……何が言いたいんだよ?」

俺が口をとがらせて訊ねると、父親は仏頂面のままで言った。

「そのお祖母さんのために何かしてやろう、
そんな僭越なことを考えているなら止めておけ。
お前のすることは、所詮お前自身のためにするんだ。
それ以上のことではないんだからな」

そう言うと、親父は仕事場へ戻っていった。

要するに「他人が望んだから」などという言い訳をするな。
俺の行動は俺自身のためにしていることなんだから。
……そんなことが言いたかったらしい。

親父は結婚にも女性化にも反対ではないようだ。
でも、それ以上に重要なことがある。
そこを踏み外すな……ということなんだろう。

俺は、実家をあとにした。
思っていたより重い荷物を背負わされた気分で。



◆ ◇ ◆



その数日後。
俺と清彦は2人で一緒に出かけた。

一応名目はデート。
お祖母さまがその様子を写真に撮ってきて欲しいとのこと。

俺が男だったときにも連んでよく出かけてたし、その延長。
そんな風に考えていたんだけど……。

「……まずはこれを着てくれ」
「うげっ!」

俺がひとり暮らしをしているアパート。
そこに、清彦が持ち込んだのは大きなドレスバッグだった。

ドレスバッグというのは要するに……。
「高価なドレスがシワにならないように持ち運ぶためのカバン」
のことである。
だが、問題なのは……。

「なんでそんなもんを清彦が持ってきたんだ?」
「婆ちゃんからのプレゼントだってよ。
お前あての」

ケースの中には白を基調にしたドレスが入っていた。
俺ですら高価だと、一目でわかるドレスが……。

うん。
俺が考えていたより、はるかに重い話だったんだな。
改めてそう思った。



それから約2時間後。
俺は清彦の腕を取ってしなだれかかっていた。
顔に浮かべるのは上品そうな微笑み。
……より厳密には、そうなるべく悪戦苦闘をしていた。

お祖母さまの命により、デートコースは決められていた。
その中にホテルでの写真撮影が含まれてたのだ。

「でも、なんでホテル?」
「結婚式とか記念写真を取ることが多いから、
ホテルでは腕のいいカメラマンと契約してるんだよ」

なるほど。
そういうものなのか。
そんなわけで、俺たちはお祖母さまに見せるための写真を撮影した。

お祖母さまからいただいたドレスは今の俺によく似合っていた。
サイズもピッタリだったし。
鏡を見て「ああ、こんな女の子がいたら放っておかないなあ」……。
なんて思ったのは内緒だ。

撮影がすむと、清彦とお庭を散策。
……いかん!
お庭なんて、何が楽しいのかわからないよ!?

「どうしよう?」と悩んだけど、案ずるより産むが易しだった。
清彦がいちいち解説を入れてくれるので飽きることがない。
こいつ、もの知らずって評判なのに……。

「お前、バカだとばかり思ってたのに……」
「まあ、ガキのころからこういうところに連れてこられてたからな」

そうか。世間知らずではあっても、バカじゃないってことか。
俺は清彦を侮っていたことを反省した。

その後、クラシックの生演奏付きのお食事。
ボレロとかいう上着を脱いで、ストールとかいう布を巻く。
清彦にパールのネックレスを身につけてもらった。

その後……。
清彦の腕にもたれ掛かりながらレストランへと向かった。

いやあ、高い飯って美味いねぇ。
ワインも美味しいし。
まあ、清彦がいなければ、オーダーさえできなかったろうけどな。

「……なんだか、清彦が格好良く見えてきたぞ」
「そうかそうか」
「こんなに恰好いいのになんでモテないんだ?」
「お前……酔ってるだろう?」
「よーし。じゃあ俺が結婚してやるよ」
「……その話はじっくりしような。
今夜」
「うん。今夜じっくりしよー!」

……今夜?

………………あれ?

もしかして……お泊まり?



◆ ◇ ◆



そして夜はふけて……。

高級ホテルの一室で、俺と清彦との2人きり。
部屋には巨大なベッドが「ドン」と置かれている。

俺と清彦は正座していた。
なぜかベッドの上に背中合わせで……。
酔いはすっかり醒めていた。
妙に冷静なってしまった俺は、恥ずかしくて相手の顔が見れない!

(上流階級でも婚前交渉ってありなのかな……)

俺はそんな、何の役にも立たないことを考えていた……。
清彦はいいやつだ。
友人としては申しぶんない。

じゃあ男としては?
そこで本当の問題に気がついた。
そうか……問題は「俺がどうしたいか」なんだよな……。

女の身体になったのも、デートしたのも……。
安請け合いした俺自身の責任。

じゃあ、この先は?
清彦と添い遂げる覚悟はあるのか?
俺がそんなことを考えていると、清彦が言った。

「……あー、ごめんな。
俺に付き合わせてこんな目にあわせて」

わざとらしいくらいに明るい声。

「……俺さ、婆ちゃんに本当のことを言うよ」
「え?」
「そもそも俺がウソついたのが悪いんだしさ。
正直に言って怒られるよ」

え?
だってそれじゃ……。

「お祖母さまがガッカリするだろ?」

最悪、命にだってかかわるし。
俺は身体を反転させて、清彦に向き直った。

「でも、いつまでもウソをついてられないしな。
いくら婆ちゃんのためだって言っても、
それでお前に迷惑かけちゃいられないし」

そう言って清彦が笑う。
その笑顔が妙に格好良くて……。
俺の心臓が「ドキン」と飛び跳ねた。

「なんだよ!
今更そんなことを言うくらいなら、
今日、こんなところに呼ぶなよ!」

自分のものじゃなくなったように鼓動する心臓。
それがばれないように、俺は声を荒げた。

「本当にごめんな」

ちょっと寂しそうに笑う清彦。

「見たかったんだ……」
「え?」
「ドレスアップした敏明を、さ」

……うぅぅ。
俺、まだ酔ってるんだろうか?
またもや清彦が格好よく見えてきた。

整った顔立ち。
にじみ出る品の良さ。

少女マンガのキャラのように、腰まで届く長髪。
不思議と不潔な感じはない。

内面だって気さくで善良だ。
間抜けだけど、でも気づかいも細やかだし。
話題も豊富で一緒にいて飽きなくて……。

「キレイだよ……敏明」

うぅぅ……ずるいよ!
反則だよ!

ああ、もういいや!
俺は清彦に言った。

「……脱がせて」
「は?」
「ドレス……脱がせて」

清彦に背中のジッパーを開けてもらうと、
俺は皺にならないように丁寧にドレスを脱いだ。
そそくさと部屋のクローゼットにドレスを掛ける。

そういやドレスを着るときも清彦に手伝ってもらったな……。
そんなことを考えながら、俺はゴロンとベッドの上に横になった。

「……え?」

清彦が間抜けな顔で俺を見る。
……察しの悪いやつだなぁ。



俺は膝を折り曲げ、下着越しに女の子の大事な部分を清彦に向ける。

「と、と、と、敏明さん!?」

清彦が裏返った声を出す。

「な、な、何をしてるんですか?」
「……誘ってるつもりなんだけど」
「!?」
「こ、こっちは女初心者なんだから。
上手く誘えなくても勘弁しろよな」

次の瞬間。
どこぞの怪盗の三世のように、清彦が俺に向かってダイブしてきた!

「イヤ! ちょっと!?」

嬉しい気持ちは男としてわかるけどさ。
もう少しムードを出してよ!
だからモテないんだよ!?

「……まったくもう」

こんなバカ……きっと俺以外は好きにならない。

「ねぇ。もっと……やさしくして?」

できるだけ女の子っぽくお願いしてみた。
清彦の動きが「ピタリ」と止まる。
まったく……極端から極端に……。

俺は、目をつぶり、キスをねだった。
少し逡巡したような間があって……。
清彦の唇が俺の唇へと触れるのを感じた……。



始めて同士のキスは、ぎこちなかった。
お互いどこまでなにをすればいいかわからない。
でも、だからこそなるべく丁寧に。
清彦の口の中を舐め取るように、俺は舌を動かした。

「はむ。れろ……ちゅぷちゅぷ……」

湿った音が豪華なホテルの調度品に吸い取られていく。

「ちゅっ! れろ……じゅぶじゅぶ……」

やがて……お互いが呼吸困難になって、キスはようやく終わった。

「ぷはぁ!」と2人揃って息継ぎをする。
お互いのが混じり合った唾液が糸を引き、下にいる俺の顔を汚す。

「……敏明ぃ」
「お願い。今はアキって呼んで?」

男の名前で呼ばれると、やっぱり恥ずかしいから……。

「ごめんな……アキ。
俺が汚しちゃって……」

俺は微笑みながら首を振った。

「大丈夫……不思議とイヤじゃないから」

本当に不思議だ……。
イヤどころか、むしろ楽しい。

ここで俺はブラを取ろうとした。
けれど、なかなか上手く手が回らない。
焦っていると、清彦が上手に外してくれた。
手際よくショーツも脱がせてくれる。

こいつ……。
なんだって女の服を着せたり脱がせたりするのは、
こんなに上手いんだろう?

だが、そんな疑問について考えている余裕はなくなった。
清彦が俺の胸に吸い付いたからだ!

「あぅん!」

思わず声が出た。
色っぽい女の声。
その声に、俺の心の男の部分が反応する。

男の快楽と女の愉悦。
その両方の快感が、俺の理性を押し流していく!

「ふぁっ! はぅ! はぁぁぁん!」

俺が喘いでいる間にも、清彦は俺の胸を揉む。
敏感な胸の先端を舐める!
かと思うと、右手の人差し指を俺の女の部分に当て、刺激する。
快感に翻弄されながらも、俺は考える。

(清彦にも……気持ちよくなって欲しい……)

俺は、清彦との位置を上下入れ替えた。
あわせて身体の向きも半周させる。
俺の目の前に来た清彦の男の部分をつかみ、手でこすってやる。

「うっ!」

すでにはちきれそうだった、清彦の男の部分。
俺が柔らかなタッチで触れると、さらに勢いを増し……。
……あっという間に清彦は達してしまった。

「おふぅ!」

清彦の口から間抜けな声が漏れる。
同時に……。
清彦から放たれた白くて熱い液が俺の顔面にかかる!
こいつ……どんだけ貯めてたんだよ!

だけど……。
そんな気分も清彦が情けない表情になって俺を見たことで霧散した。
このままじゃ、清彦が傷ついちゃう!

俺は、白い液まみれの清彦のものを口にくわえた。
なるべく丁寧に液を舐め取る。
すると……あっという間に清彦のものが、硬さと熱さを取り戻す!

なんだか誇らしくなった俺。
棒状のところから、袋状のところまで、優しく舐めていった。

「ああ……アキぃ……気持ちいいよぉ!」

清彦の顔が上気し、恥ずかしさに身もだえる。
なんだかこいつの方が女の子みたいだ。
清彦が二発目を放つまで、それほどの時間はかからなかった……。

恐縮したように大人しくなった清彦。
なんだか、清彦が子供になってしまったみたいで可愛い。
そして……。
俺の下半身もそろそろ我慢しきれなくなってきた。

俺はベッドに尻を着くと……。
すっかり白くなってしまった太ももを大きく開いた。
俺の女性自身を見た清彦のものが三度雄々しくそそり立つ。

俺はなるべく色っぽい声で言った。

「来て……おねがぁい」

今度は清彦も焦らなかった。

一度俺の頭を抱く。
清彦の温もりを感じて胸が一杯になる。

口付ける。
清彦の香りで口内が満たされる。

そして……。

清彦が優しく挿れていく……。

初めての体験は……とても痛かった……。

思わずすすり泣く俺。
清彦がそんな俺をぎゅっと抱きしめる。

優しく何度もキスをしてくれくれる。
清彦の優しさが、俺の女性の部分を溶かしていく……。

もうお祖母さんへの同情ではない。
清彦との約束だからでもない。
俺は女として、自分の欲望のために清彦を求めている。

清彦は、俺の求めに応じて優しく何度も俺を突いてくれて……。
俺の女の部分もその愛を感じて……。
ああ……気持ちよすぎて、もう止まらないよぉ!

「き、きよひこぉ……すきぃ……」
「俺も大好きだ! アキぃ!!」

清彦の男がほとばしる!
俺の女性の部分がそれを受け止める!
ああ……幸せぇ……。

俺たちは何度も達し、何度も意識を飛ばした。
2人の営みは、明け方の太陽が昇るまで続いた……。



◆ ◇ ◆



後日。
わたしは清彦さんと一緒にお祖母さまを見舞った。
服はあえてラフな普段着。
もう最近は普段でもスカートばかりはいているけどね。

驚いたことに、お祖母さまは……。
上半身を起こして話ができるまでに回復していた。

わたしはデートの件をお祖母さまに報告した。
清彦さんがいかに優しいかを語る。
お祖母さまはニコニコしてとても嬉しそう。

わたしも嬉しくて顔がほころんでしまう。
清彦さんだけは、顔を真っ赤にしてうつむいていた。
……まあ、恥ずかしいよね。

「心配していたんですよ」

と、お祖母さま。

「2人は……仲のいい友達のようではありましたが、
恋人のようには見えませんでしたから」

……そういうもんか。
見抜かれていたんだな。

「それで、無理にデートに行っていただいたのだけれど……」
「ありがとうございました。
清彦さんのすてきなところをたくさん見させていただけました」

恥じらう乙女になってわたしがそう言うと清彦さんボソリと言った。

「アキも……可愛かった」

わたしの顔は熱でもあるように赤く染まっていただろう。
そんなわたしを見て、お祖母さまが声を出して笑った。



やがて、お祖母さまの部屋を辞して、お屋敷を出た。
清彦が自家用車でわたしのアパートまで送ってくれるのだ。

「……あのさ。本当によかったのか?」
「なにが?」
「これから本当に女になって生きるって話……」

それは清彦と始めて肌を重ねたその日の朝。
2人で横たわるベッドの上で伝えたこと。
わたしの決断を清彦に披露した、そのことだ。

「お嫁さんにしてくれる?」

そう訊いたら、清彦はぎゅっと抱きしめてくれた。
でも口に出しては言ってくれない。
だから……。

「清彦さんは、イヤになったの?」
「まさか! ただ……信じられなくて」

そうだろうね。
わたし自身信じられない気持ちだ。

きっと他人は色々勝手なことを言うだろう。
でもかまいはしない。

バカでお調子者で、良いかっこしいな割にすぐにくじける。
でも、そんなすべてを含めて、わたしが清彦のことを大好きなこと。
わたしの大切な人たちは信じてくれるだろうから。

右手でマニュアル車のシフトレバーを操作する清彦。
わたしの婚約者を横目で見ながら……。
わたしの心は暖かな気持ちで満たされていた。


――終わり――
以前ふたば板で書いた作品を改稿したものです。
ちょっとずつ手を入れてきたのですが、ようやく掲載してもいいかなと思えるところまで達しました。
もし、待ってくださった方がいらっしゃれば本当に申し訳ありません。

バカな友人は書いていて楽しいです。
というか1人おかしい人間がいると話が転がるので助かります。

この作品を最後までお読みくださったのなら幸いです。
ありがとうございました。

……実は作品中にもう1つお話が書けるネタを仕込んであります。
リクエストがあれば、後で付け足そうかとも思っていますがどんなもんでしょう?
パンダの介
0.5390簡易評価
6.100いち清彦
「兵は詭道なり」だと騙し合いとか罠に掛ける意味合いが強いので、この場合は「嘘も方便」の方が合っているのではないかと具申します。
10.無評価きよひこ
とても良いお話でした!

もう一つのお話とやらぜひ、お願いします!
42.100きよひこ
これが氏の作品だとは知りませんでした。
素敵なお話し、ありがとうございます。