支援図書館(γ)

TS女子高生刑事

2014/06/22 07:52:15
最終更新
サイズ
21.78KB
ページ数
1
閲覧数
3298
評価数
4/68
POINT
5750
Rate
16.74

分類タグ


“ぞわり”という悪寒。
気持ち悪い。
吐き気がする。
怖い……。

歯を食いしばって我慢する。
ただし、相手に気取られぬように……。

改造してあるのだろうか?
背後に立つ男が持つ携帯電話のカメラ。
そこからは、シャッター音に摸した音は聞こえない。

(あと少し、言い逃れできないように……もう少し)

恐らく10枚以上の写真が撮られただろう。
そろそろ頃合いだ。
改めて気合を入れなおす。



目つきを鋭く、相手を威圧するかのように細める。
地声が可愛らしいのは仕方がない。
せいぜいドスの効いた声を心がけて口を開く。

「盗撮の現行犯だ。警察まで同行してもらおうか?」



◆ ◇ ◆



清彦は警察官である。

元々はヤクザ顔負けの強面だった。
だが、病気にかかり、その治療の過程で女性化した。
それも……。
彼の娘の世代である少女のような容姿に……。

(こんなナリじゃ現場に出られねぇ……)

何よりも犯罪を憎み、現場を愛する清彦。
内勤になるというのは彼にとっては……。
命を取られるのと同じだった。

だが、神は清彦に新たな現場を与えた。

強面の男性警官はもちろん……。
女性警官でも無理な……。
女子高生への変装。

今の清彦になら可能なのだ!

そんなわけで清彦は……。
痴漢や盗撮、売春などの犯罪の摘発などに活躍した。
文字通り、身体を張って。

だが、しかし……。



「うっうぅぅぅ……」

清彦はパートナーである敏明の胸の中で泣いていた。
怖いのだ、痴漢が。
男性だったときには味わったことのない感情だ。

今でも腕っ節には自信がある。
体重が倍ほどもあろうかという男。
そんな相手でも道場でなら投げ飛ばすこともできる。

……でも。

(男……怖い……痴漢……怖いよぅ……)

悪意が、そして害意がある男。
そんな連中に対してどうしても恐怖を覚えてしまうのだ。



人目につかぬ物陰で泣きじゃくる清彦。
彼女を抱きしめ背中をさすっている男。
彼は若手の刑事で、名を敏明という。

元から清彦と組んで現場に出ていた男だ。
若い彼は清彦にさんざん怒鳴られて仕事を憶えた。
だから、ショックだった。
清彦が若い女性に変化したことが。

清彦と一緒に移動させられ、性犯罪担当になった。
そのことに、正直不満もあった。

だが……。

(嫌がってなんかいられないよな)

身体を張って頑張ってる清彦。
彼女を見たら自分の不満など単なるワガママだ。
そう思い直した敏明は、熱心に仕事に取り組んだ。

敏明は清彦の相棒として相応しくなるべく、
努力を重ねたのである……。



敏明の腕の中で泣きながら、清彦は考える。

(不思議だよな。男なのに……敏明は怖くない)

怖いどころか落ち着く。
気持ちよくさえある。
(このままずっと抱かれていたい……)
そんなことさえ、女になった清彦は思ってしまう。

一方、敏明の方はというと……。
(ああ……シャンプーの香り? いい匂いだ……)
柔らかな清彦の女体に、男として惹きつけられていた。

さすがに仕事中ははばかるが……。
プライベートな時間にはキスをしたことさえある。
すでに周囲は2人を男女の仲として見ていた。
本人たちだけは気付いていなかったが。

やがて、清彦は涙を拭うと敏明をうながす。
2人が使用している覆面パトカーまで移動するためだ。

怖くても……いや、自分が怖いからこそ……。
清彦は女性の敵と決然として戦う。
敏明はパートナーとしてそれを支える。
そんな名コンビが誕生したのだ。

彼らはやがて職場結婚をすることになる。
だが、2人はまだ、その未来を知らない。


――終わり――






◆ TS女子高生刑事after story 01

その日。
清彦は街中で尾行をしていた。

……といっても捜査ではない。
その日は非番で、清彦も敏明もお休みだ。

警官はカレンダーの休日通りには休めない。
その日は珍しく敏明もお休みだった。
2人揃って休暇という貴重な機会。
清彦は敏明に「2人で出かけないか?」と誘った。

ところが……。
「その日はちょっと先約が……」
敏明はそう言って断ったのである。

その敏明の態度に、清彦の女の勘は彼女に告げた。
「あれは女に会いに行くんだ」と。

……そんなわけで、敏明の跡をつける清彦。
一方の敏明もプロである。
普段の彼なら気付かれずに尾行するのは至難の業だ。

だが、その日の敏明は妙にそわそわしていて……。
ちっとも気付く気配はない。

メガネをかけ。
長い髪は編み込んで帽子に隠す。
服装は地味なコートとロングスカート。

そんな姿で尾行を続ける清彦。
彼女には敏明の隙だらけの態度もしゃくに障った。

そうこうするうちにとあるカフェに着いた。
無骨な敏明には似合わない。
少女になった清彦が娘の双葉と来るような……。
そんな華やかな店だ。

どうやらお相手はまだ来ていないらしい。
居心地が悪そうにコーヒーをすすっている敏明。
それを少し離れた席から見つめる清彦。

敏明が待ちぼうけている時間。
清彦にはそれが酷く長いものに感じた……。

「……なにやってるの? お父さん」
「ひゃぅ!」

突然の声かけ。
清彦が驚いて振り返ると……。
そこにはひとりの少女がいた。

年の頃は清彦の外見と同じくらい。
そして、彼女は清彦がよく知る相手であった。

なぜなら……。
彼女は清彦の娘、双葉なのだから。



「……それで、お父さんは、
敏明さんをつけてきたんだ」
「…………はい」

尾行を知られたこと。
素人である双葉の接近に気づけなかったこと。
この2つの理由で清彦のプライドは傷ついていた。

一方、の敏明も……。
清彦の尾行に気づけなかった。
そのことで似たような状況だった。

2人は双葉と対面するように隣り合って椅子に座り……。
同じようなポーズで落ち込んでいた。

その様子を見ている双葉は内心おかしくてたまらない。
(なんか、もうすっかりカップルって感じね♪)
双葉は男だった時の清彦の様子と比較しようとして……。
失敗してしまった自分に驚いた。

清彦が双葉の母と離婚したのは、かなり前のことだ。
その時は想像することすらできなかった。
父親が自分と同世代の少女になるなんて。

離婚の理由は特になかった。
強いて言えば……。
清彦の仕事のサイクルが、双葉の母の生活に合わなかった。
そういうことだろう。

2人はケンカするでもなく別れた。
だから、双葉は制限なく自分の父親と会うことができる。

……もっとも。
かつての清彦に会う機会は、さほどなかった。

それが一変したのは清彦が女性化した後からだ。
“女子高生刑事”として仕事のため。
清彦が取材を理由に娘に会うようになってからである。

双葉は清彦にとって、少女としての師匠なのだ。
だから、師匠として。
あるいは友人として。
清彦の誤解を解くのが自分の役割だと双葉は思った。

「あのね、お父さん……」

敏明からは秘密と言われているが……。
彼もうるさくは言わないだろう。

双葉は真実を告げることにした。

「今日、あたしが敏明さんに呼ばれた理由はね……」

敏明が「はっ!」と顔を上げだ。
慌ててキョロキョロ首を動かす。
だが……諦めたのだろう。
敏明はそこで動作を止め、またうなだれた。

そんな様子を見ながら双葉は言葉を続ける。

「敏明さんにお父さんの指輪のサイズを聞かれたから、
なんだよ」
「…………」
「その流れから、買う指輪のアドバイスを頼まれたの」

キョトンとする清彦。
だが、その言葉の意味するところを理解すると……。
全身を羞恥で真っ赤に染めたかと思うと……。
そのまま卒倒してしまった!

……こうして。
清彦が意識を取り戻した後。
敏明と双葉の三人で、宝石店へと向かった。

もちろん、指輪を購入するためである。
敏明から清彦に贈る……婚約の証の指輪を。


――終わり――






◆ TS女子高生刑事after story 02

人間は学習することができる。

清彦に下手な隠しごとは厳禁。
敏明は婚約指輪の一件で学習した。

なにせ刑事の勘に加えて女の勘。
そんなものを駆使する相手である。
さらに微妙にエラーを起こしてるっぽく……。
どんな事件に結びつくかわからないのだ。

ささいなことが大ごとになりかねない。
敏明は一切の秘密主義を諦めた。

だから、新しい制服を着た清彦……。
内勤用の女性警官用の制服である……。
その感想を聞かれたときも正直に答えた。

「……アイドルの一日署長みたいですね」

パンチが飛んできた。

敏明としては褒めたつもりだったのだが……。
などと悩んでいると、他の婦警になぐさめられた。

「あれは照れてるだけだから。
褒められたこと喜んでるから」

……喜んでいるならいいか。
そう思えるくらいには達観した敏明であった。

しかし……。
その公開主義が意外な方向に飛び火したのだ……。



「「は? 公開結婚式?」」
「主旨も、厳密な用語としても少し違うが、
しかしおおむねそんな話だ」

揃って問い返した清彦と敏明に返答した人物。
彼らが所属する課の課長である。

「えーと。式は内々で済ませようと思っていたのですが」

警察官は関係者や組織の関係から……。
比較的冠婚葬祭が大げさになる傾向があるとか。
とはいえ、出世も諦めた清彦と敏明。
彼らが必ずしもその慣例に従う理由はなかった。

「わたしはバツイチだしな」

そんな風につぶやいた清彦。
その意志を、敏明が尊重した結果でもある。
けれど、課長の話は意外な方向からのものだった。

「この地区の女子たちの有志が2人を祝いたいそうだ」
「……は?」
「清彦くんに助けられた女子高生たちが
自警団を作ったのは知っているだろう?」
「はい。まあ防犯活動の広報に協力してもらったり。
事件を見かけたら通報してもらう。
その程度のものですが……」

組織とも呼べない大雑把なくくりの集団である。
その……はずなのだが……。

「ある意味で、清彦くんのファンクラブ。
そんな組織になっているそうだよ」

美人で漢前。
そんな清彦に惚れる女子は少なくないそうな。
さらに直接助けられていないのに……。
友人を通じて清彦のファンになる子もいるとか……。

「まるでアイドルですね……」

敏明はジョークのつもりで言ったのだが。

「まあ、そういうことだ」

課長はニコリともせずそう返した。

「そんなわけで、有志による防犯活動の講習会、
という名目で公共施設のホールを押さえたから。
2人でそれに参加してくれ」
「「はあ」」

今度も揃って答える2人。

結局、街の公共施設で……。
2人が主役のイベントが開かれた、
披露宴と祝賀会の中間のような感じである。

清彦はウェディングドレス姿で壇上に立ち……。
女子学生たちに祝福される羽目になった。



◆ ◇ ◆



そんなハプニングはあったものの……。
どうにか入籍をすませた2人は一緒の生活を始めた。

今さら、と思う人もいるかもしれない。
だが……。

「自分の身体を大切にしろ」

そう少女たちに言っている清彦。
その本人が、婚前から男性と同棲……。
というわけにはいかなかったのだ。
まあ、矜恃の問題である。

ともあれ、新婚生活は始まった。
なお、旅行は3ヶ月後に予定してある。
2人とも人事異動などで謀殺されており……。
とても、旅行どころではなかったのだ。

新居は一般の賃貸マンション。
官舎にすれば家賃は安いのだが……。
どうしても清彦が好奇の目で見られるのは避けられない。

幸い2人とも無駄使いをするたちではない。
そんなわけで新居となった部屋に、清彦がいた。
その日はシフトの都合で1人先に帰宅していたのだ。

「うーむ」

腕を組んで考え事をする清彦。
寝室のクローゼットの脇に立つ彼女。
その、目の前には……。

服の山があった。

と言っても私服ではない。
これまでの捜査で使った、言わば変装道具だ。

部署の配置が変わるためもう着ることはない。
とはいえ、捨てるのもなんとなく気分が悪い。
そんな理由で自宅に持って帰ったのだ。

ほとんどの服は一度着ただけ。
二度は袖を通していない。

痴漢対策用の女子高生風の服が多数。
OLに変装するためのスーツなんかもある。
これは、今後も着れそうだ。

逆にもう絶対に着なさそうなものもある。
風俗店に潜入捜査したときのチャイナ服。
メイドカフェを装った風俗店で着たメイド服。

路上アイドルに変装して貼り込んだことがある。
そのとき着たふりふりのコスチュームまであった。

どれも日常では着る機会のなさそうな服である。

「でも、ただ捨てるのももったいないし……」

着てみたのは戯れだった。
アイドル風のコスチュームを選んだのは……。
パーツが多くて一番もったいない気がしたからだ。

白いパフスリーブの半袖ブラウス。
胸元が大きく開いた黒のベスト。

スカートはミニのフレアスカート。
柄は赤をベースにしたタータンチェック。
リボンタイもおそろいのチェック模様だ。

靴下は白のオーバーニーソックス。
スカートとの間にちらりと素足がのぞく。

捜査でこの服を着たときは、
黒いローファーを履いていたのだが……。
さすがに自宅で履くような真似はしなかった。

この格好に、スカートと同じ模様のベレー帽。
……という出で立ちで完成なのだが。
清彦はなぜか別のものを手に取った。

それはメイド喫茶で装備した……。
ネコミミだった。

清彦はその格好でドレッサーの鏡をのぞき込んだ。
長い黒髪の上に取り付けたネコミミは……。
意外に衣装にマッチしていた。

調子に乗ってポーズなど取ってみる。
ベッドの上に載り、四つん這いになり……。
右手を招きネコのように持ち上げる。

おお!
結構可愛い。

ついでに右目でウインク!

……をした直後。
ドサリというもの音がした。
清彦が視線をそちらに向けると……。

寝室の扉の向こう。
リビングで鞄を取り落とした敏明がいた!



にゃんてこったい!

慌てて立ちあがり、言い訳しようとする清彦。
だが、その後の行動は敏明の方が素早かった。

滑るようなすり足で寝室に移動すると……。
そのまま清彦を組み伏せたのだ!

敏明がこのような行為に及んだのも無理もない。
なんだかんだで婚前交渉もなし。
入籍後も忙しさを理由に夜の営みはなかった。

それでいて同じベッドで寝るのである。
今まで手を出さなかった敏明の忍耐力は賞賛に値する。

そこに、ネコミミである。
招きネコのポーズにウインクなのである!

それまで押さえていたものを起爆するのには十分すぎた。

一方、清彦の方もこれまでにない感情を味わっていた。
敏明の身体に組み敷かれながら……。
彼女自身も敏明に抱きついている自分に気がついた。

(もしかして……コスチュームのせい?)

今までは自分を警官として律してきた清彦。
ところが今は今までになく女の子気分になっている。
自然に敏明に抱いてもらいたい。
そんな感情が盛り上がっている!

「ねぇ……敏明?」

清彦はそう言った。
その声音が本当の女の子のようで……。
清彦自身が「ドキッ!」とする。

「このまま……しない?」

敏明に否はなかった!

こうして……。
清彦は、2人の愛の引き金を引いたのだった。



ちゅぷ……ちゅぷ……。
激しく口づけながら……。
敏明の脳の一部が我にかえった。

(一体どうしてこうなった?)

そう思いつつも身体は自然に清彦を抱きしめる。
唇は目の前にいる妻の口内を蹂躙する。

いつにも増して彼女が可愛い。
まさか本当にネコでも憑いたか?
そう思ったせいか、ついネコ耳に手がいった。

清彦は可愛くイヤイヤをする。

「ダメ……外しちゃ……」

ふるふると首を横に振る動作が可愛い。
敏明にとっての清彦は、大型のネコ科の動物……。
例えていうなら豹のような存在だった。

(それが……子ネコのようになって……)

寂しくはあったがイヤではなかった。
自分を頼ってくれるのが嬉しくもあった。

それでは……。
と、彼女のコスチュームに手をかけると……。

「……あの……着たままじゃ……だめ?」

彼女は着衣したままのプレイをお望みのようだ。
多少の葛藤はあった。
だが結局敏明は清彦のお願いを聞くことにした。

敏明から見て、清彦は無理をしている。
ときおりそう思うことがあった。

色々理由をつけて自分に身体を許さない。
それも、清彦の精神に抵抗があるからではないか?
そんな風に考えていた。

だから清彦が自分を受け入れてくれるなら。
着衣のままでもかまわない。
そう決意したのだ。

とはいえ一切肌を露出しないわけにもいかない。
敏明は清彦に告げた。

「じゃあ、胸からいきますよ?」

敏明の指が清彦のブラウスに伸びた。

「え? いや、自分で取るから!」

そのお願いはきけなかった。
敏明はブラウスのボタンに指をかけた。
器用に上から23個目のボタンを外す。

「ぽろん」という感覚で……
立派な形の胸がブラウスから飛び出す。

そこには……。
色気も素っ気もない……。
グレーのスポーツブラがあった。

(……知ってた)

敏明の先輩である警官は下着も健全なのだ。
だが……。
世界には健全故に恥ずかしいこともあって……。

「うううううぅ……」

涙ぐみ羞恥に顔を赤く染めた清彦。
恨みがましい目で敏明を見上げる。
まあ、異性に見せたい下着ではないだろう。

窮地に陥った敏明。
彼は思った。

(これは……誤魔化すに限る!)

敏明はその前面を覆っていたブラを……。
上方にずり上げた!
今度こそ生の双丘が露わになる!

「にゃっ!」

驚く清彦。
敏明は目の前に飛び出た清彦の……。
右の胸に吸い付いた!

「にゃあぁぁぁ!」

愛らしい声で子猫ちゃんが鳴く!
すかさず今度は左!
吸い付きながら先端部を舐めあげる。

「ひにゃああぁぁぁ!!」

清彦は上にいる敏明を持ち上げるほどのけぞった。
どうやら、敏明の尊敬する先輩の胸は……。
とてつもなく感じやすいようだ。

胸を舐めあげ……。
柔らかな腹にキスマークをつけ……。

(次はどうしよう?)

着衣したままのプレイなど想像もしなかった。
敏明というお堅い男には難度が高い。

(ええい! ままよ!!)

刑事の勘……いや男の本能を信じた。
敏明は新妻と言うには幼く見える彼女の……。
ミニスカートの中に左手を入れた。

そのまま手探りで宝物を探す。

「ひっ!」

子猫ちゃんが小さな悲鳴をあげた。

(ここで止めるか?)

さっきの決断もどこへやら。
敏明が逡巡していると……。

清彦が白く細長い指で敏明の左手をつかみ……。
自分自身の大事なところへを導いた!

「こ、ここだから……」

消え入りそうな小さい声で彼女は言った。
敏明は力が入りすぎないように自制する!
あまりに可愛すぎて……。
彼女を握りつぶしてしまいそうだ!!

ゆっくりと……。
優しく……。
丁寧に……。

傷口にでも触るかのような……。
そんな慎重さで、敏明は女の敏感な部分を撫でた。

アイドルのコスチュームを着た少女は……。
ぎゅっと目をつぶってそれに耐える。

痛いのか?
それとも気持ち悪いのか?

そんな心配をする敏明に……。
子猫ちゃんのすすり泣くような声が聞こえてきた。

(もしかして……感じている?)

敏明がよく見ると……。
清彦はリボンタイを噛みながらなにかをこらえている。
これは……。

敏明は、清彦の細いうなじに……。
「ふぅ」っと息を吹きかけた!
くすぐったさに、今までこらえていた清彦の息が……。
一気に吹き出した!

「ひゃあああぁあああぁぁあぁあぁぁぁ!!」

一度決壊してしまえば脆いものだ。
敏明が左の指を動かすと……。

子ネコちゃんが跳ねる!
鳴く!
悶える!!

「だめぇ! おかしくなるぅ!
わたしがおかしくなっちゃうぅぅぅ!!」
「おかしくなんてないですよ……」

取って置きの優しい声で敏明がささやく。

「キヨさんは女の子なんだから……。
これが正常なんです」

子猫ちゃんが目を開いて敏明を見る。
蕩けるような眼差しは恋する乙女のようだ。

「本当に……おかしくない?」
「はい」
「本当に……本当?」

敏明は自信たっぷりに請け負った。

「相棒の俺を……信じてください」

それはある意味、血や愛情より濃い絆。
だから清彦は疑わなかった。

「信じる。敏明のこと……信じるよ!」

きらきらと輝く乙女の目で敏明を見つめる清彦。
敏明は先ほどから何度目かになる決意を固めた。

「じゃあ……いきますね?」
「いく?」

とろんとした目で敏明を眺める清彦。
そんな彼女のすでに濡れてしまったショーツ。
そのグレーの布に手をかけ、引っ張りつつ横にずらす。

「え?」

女の子経験の少ない子猫ちゃん。
虚を突かれ、反応が遅れた。

その、女の子の大切なところをめがけ、
敏明の男が突き入った!

「きにゃあああぁあああぁぁぁあぁぁぁ!!」

痛みに耐えかねて敏明にしがみつく子猫ちゃん。
敏明の背中に爪が立てられる!
だが、鍛え上げられた敏明の肉体と精神は揺るがない。

慎重に。
だが断固として。
尊敬する先輩の中に分け入っていく!

「壊れる! わたし! 壊れちゃうよぉぉぉ!」
「それは壊れてるんじゃない! 女になった証拠です!
キヨさんはたった今、女になったんです!!」

その宣言は敏明の意図以上の効果を与えた。

「わたし女ぁ! 女になっちゃったぁぁぁ!!」

取り乱した清彦がボロボロと涙を流す。
さっきまでが乙女なら、今は赤ん坊のようだ。

どうも尋常な様子ではない。
そう見るや、敏明は入れたものを引き抜いた。

「……泣くほど……嫌ですか?」

恐る恐る問いかける敏明。
だが、清彦はふるふると首を横に振った。

「違うの……。
今まで自分が女の子のことを知らないのに、
ずいぶん偉そうなことを言ってたな……って」

どこか遠くの方を見つめ清彦が言う。

「こんなわたしが……。
女の子に説教する資格なんて……、
ない……よね……」

敏明は情緒不安定な清彦。
そんな彼女に敏明は言った。

「世の中の女性は……。
女の子だけじゃありませんよ?」

意外な一言。
清彦は敏明を見つめた。

「人妻も、お母さんも、子供も、お婆さんも。
みんな女性です……」
「……そうだね」
「だから、これから色々な経験をしましょう」
「え?」
「もっともっと女性のことを知って……。
その人たちを一緒に守りましょう」

恥ずかしいほどの正論。
そして、少女になった警官は……。
彼のそんなところに惚れたのだ。

「……あの……最後までしようか」
「はい」
「今度は……ちゃんと脱ぐから」
「!」

清彦は、ベスト、ブラウス、スカート。
そして、ずり上げられたブラジャーと、
濡れてしまったショーツを脱いだ。

「……ネコ耳は取らないんですね」
「これがあると、気分が出るから……」
「靴下は?」
「これは……
この方が気に入ってくれるかな、って」

この辺はさすが元男だ。
男心がわかっている。

ネコミミ、オーバーニーソという若妻に……。
敏明が覆い被さった!
子ネコちゃんの身体は……すでに準備OKだ!

「あん! あぁん! いいよ! 敏明ぃ!
とってもいいよぅ!!」
「キヨさん! 最高です! キヨさん!!」

繰り返し妻に突き入れる敏明。
受け入れる清彦!

仕事のため鍛えた体力は……。
尽きることない交わりを可能にした!

やがてネコミミが取れてしまったが……。
それにも気づかないほど清彦は乱れてしまった。

こうして……2人の初体験は……。
空腹で敏明がギブアップする夜更けまで、
終わることなく続いたのだった。



◆ ◇ ◆



その後、内勤に回った清彦。
彼女は、精力的に女性の防犯意識の向上に努めた。
敏明も別部署になってしまったが……。
街の治安維持のために働いている。

そして、プライベートでは……。

「お帰りなさいませ。ご主人様」
「お、今日はメイド服ですか」

すっかりコスチュームプレイにはまっていた。
捜査に使った服ならいくらでもある。
さらには、新しい服を買い足したりもした。

下着も、可愛いものからエッチなものまで……。
色々と取りそろえた。

ときどきは禁断の設定でえっちをしたりもする。
とても他人には言えない。

そんなときの清彦は、まるで人が違ったようで……。
敏明は燃えてしまうのだ!

……だが。

「ねえ、今度はどんな服がいい?」

一通りの行為をすませ……。
ふたりでベッドに横たわった状態。

プレイの相談してくる妻を見ながら……。
敏明は迷っていた。

実は1つリクエストがあるのだが……。
言い出すのには勇気が要った。

(だって……言えないよな)

敏明が望んでも言い出せないコスチューム。
それは……。

(婦人警官のコスプレ……なんて)

そもそも本物の警官がするそれは……。
コスプレと言えるのか?

なにより、警察官という仕事に誇りを持つ彼女。
清彦がどんな反応をするか……。
想像するだけで恐ろしい。

愛しの妻が持つ刑事の勘と女の勘。
それに、引っ掛からないよう……。
敏明は祈るしかなかった。



――終わり――
よーく考えるとこの作品も年上上司TSものでした。
この話の清彦と敏明は生真面目で、結構展開に詰まったことを憶えてます。
それがある日「にゃーん」とネタが降りてくるから世の中はわかりません。
この作品も執筆中に皆さんの応援があったので最後まで書き切れました。
本当にありがとうございます。

この作品を最後までお読みくださったのなら幸いです。
ありがとうございました。

2014,06,23
誤字とフォーマットのミスを修正しました。
パンダの介
0.5350簡易評価
15.100きよひこ
いいですねー。
自分もTSした刑事モノはネタとして考えてたんですがどうしても形にならず、あきらめてたんですが。
これは見事にまとまってますね!GJ!!
26.100きよひこ
「出てこい 出てこい 餌になるよあたし 巻けても 引いても
つなぎとめてあげる」

"ニート釣り"より
29.100きよひこ
good!
46.100きよひこ
楽しませていただきました。