「ふぅ、これくらいでいいかな」
カゴ一杯に採りためた山菜や薬草があれば、頼まれた分は揃ってるかな。
「全く、メアリーったら面倒だからって僕に押し付けるなんて、酷いよ」
ため息を吐きながら、この仕事を押し付けた本人の事をちょっと恨んだ。
メアリーは隣に住んでる年上の女の子。
幼い頃からお姉さんのように僕の事を可愛がってくれてて、本当は感謝してるけど。
でもその見返りみたく時折こうして僕をこき使うのは……酷いよ、メアリー。
「さて、暗くなる前に早く帰らなきゃ」
薬草がなかなか見つからなくて、森の奥まで来ちゃったし。
村までの街道がすぐそばにはあるとはいえ、獣が出ないわけじゃない。
「……早く帰ろっ!」
そう思うと、何だか怖くなってきた……。
辺りが夕暮れ色に染まって、森の奥がだんだんと暗闇に包まれ始めているし。
灯りも持っていない今、ちょっとでも道を間違えたら確実に迷子になってしまう。
僕は急いで、その場を後にした。
「はぁっ、はぁっ……!」
おかしい、こんなはずじゃ……!
「なっ、何で……!」
怖さで慌てて来た道を戻って、街道に出たはずなのに、どうして!
「あっ、あれぇっ……えぇっ!?」
方角は間違ってないのに、行けども行けども森を抜けられない。
恐怖で駆け足になって、持ってたカゴも落としてしまったけど、今はそれどころじゃない。
「あうっ!」
突然足をすくわれて、ドサッと前のめりに倒れ込む。
足元さえ見えなくなってて、突き出た根に気付かなかったせいだ。
「いっ……つぅ……」
擦りむいたところがヒリヒリする、血もジワリと滲んでる。
「血……!」
そういえば、獣は血の匂いに寄ってくるって聞いたことが……。
「とっ、止まれっ!」
必死で血を止めようと、ギュッと強く握りしめた。
(どっ、どうしよう……!)
薬草は……落しちゃったし、包帯になりそうな物もない。
不安がどんどんと積もり始めて、血の気がサーッと引く音がした。
「ヒッ!」
ザワワッと、木々がざわめく……まるで、僕がここにいる事を知らせるように。
「あ……あ……あ……」
気付けば辺りは完全に暗闇に閉ざされて、月明かりも殆ど届かない。
「だ、誰か……助け……」
叫びたくても、声が出ない。
恐怖と、叫べばそれだけで『何か』に見つかってしまうと思うと、喉元で言葉が詰まる。
怯えながら僕は、メアリーの事をさっきより強く呪っていた。
「……と、とにかく、動かなきゃ」
一瞬、頭の中をよぎった、黒い衝動。
けれどそのおかげで頭の中に彼女の笑顔が浮かび、ほんのちょっとの勇気が湧いてきた。
「はっ、はぁぁーっ……んっ!」
頬を叩いて自分を奮い立たす。
そうだ、走り続ければ、きっとどこかに出るはず。
そう信じて立ち上がった、その時。
「!」
突然視界に現れた、ホウッと光る……虫?
それはゆらゆらと揺れ動いて、まるで誘っているようにも見えた。
「なっ、何!?」
暗闇に浮かぶ光に対する安心感と、そもそもその正体不明の光に対する、不信感。
帰りの遅い僕を心配して迎えに来たみんな?
それとも……獲物を見つけた獣の眼光……とか?
折角立ち上がったのに、腰が抜けちゃってまた尻餅をついていた。
そんな僕に近づく、その光。
ゆっくり、でも確実に僕の元へと寄ってくる。
「あ、な、何? 何なの……?」
光が近づくにつれ、それがそのどちらでもない、もっと不思議なモノだと理解した。
光はそれ自体が発していて、更にそれは、まるで小さな、小さな……。
『あら、こんなところでどうしたの?』
それは小さな人……そう、まるでおとぎ話の妖精みたいだった。
「な、なななっ!?」
ふわふわと目の前を漂うその人影は、手のひらに乗るくらい小さくて。
純白のローブに身を包んだ、黄金色の髪に透き通るような瞳の少女。
そしてなにより、背中に見える羽のような何か。
「あ、き、キミは一体……?」
『私はファタだよ、アナタは?』
「セ、セイン……」
『そう、セインね……こんな暗闇の中、一人で、何をしているのかな?』
童話の中の住人は、思ってた以上に親密に話しかけてきた。
「ま、迷っちゃって……」
『アラアラそれは大変、アナタみたいなコ、すぐに襲われちゃうよ?』
「ヒッ!」
言われてみればそうだ、この娘……ファタの言う通り、まだ安全とはいえない。
「ど、どうすれば……」
まだ信用できる相手じゃないけど、それでも今頼れるのはファタだけだ。
『ねぇ、それなら私達の所に来ない?』
「えっ?」
そんな思いを読み取ったのか、望んでいた提案を持ちかけられた。
『こんなところに子供の骸が転がるなんて、イヤだもん』
「あっ、えっ、でも……」
余りにもなれなれしすぎて、流石にちょっと怖くなってきた。
『大丈夫よ、今は私ともう一人しかいないから』
「……」
優しい言葉と表情で言われたものの、正直……怖い。
けど彼女が発する光を見ていると、不思議と不安は薄れ、信じたくなってしまう。
(どうしよう……でも、今頼れるのは彼女だけだし)
目を泳がせながら、チラチラとファタの事を観察する。
前かがみで僕の顔を覗き込む彼女は、無垢な笑顔を見せていた。
(……メアリー?)
そんな彼女の顔が、一瞬幼馴染みの顔に見えて。
ファタに彼女の面影を感じ、それが僕の心を揺らがせるきっかけとなった。
「お、お願い」
『なぁに?』
「お願い、助けて……!」
『ん、いいよ♪』
僕のその一言を待ち望んでいたみたいに、ニコッと笑ってクルリと宙を舞うファタ。
『それじゃ、はぐれないようについてきてね』
「うっ、うん」
ヒラヒラと蝶のように舞いながら、ファタは現れた方角へと僕を誘う。
僕は慌てて追いかけ、ついていくことにした。
傷ついた手足が痛むけど、彼女はそれを知ってか知らずか、ゆったりとした速さで進んでいく。
「はっ、はっ……!」
『足元、気を付けてねー』
「わ、わかった」
そういえば、彼女の光のおかげで今は足元がよく見える。
そしてファタを追うように歩いているから、彼女の背中も。
(羽……?)
目を凝らして見ると、ファタが羽ばたかせている小さな羽に違和感を覚えた。
てっきり彼女の身体の一部だと思っていたけど、そうじゃない。
羽のように見えたそれはガラス片みたくバラバラで、それどころか彼女自身にも繋がっていなかった。
(本物って、こうなんだ……)
まだ森の中、僕だけが知り得た事実に、少しワクワクしていた。
「まっ、まだなの?」
とはいえ、未だに暗い森の中、彼女の後をついていく事に疲れ始めた頃で。
『さっ、到着よ』
「えっ?」
彼女がクルリとこちらに向き直し指し示したのは、朽ちて倒れた大木に開いた……洞だった。
妖精の住処にしては殺風景で、想像していた風景とはまるで違う。
「ほ、本当にここなの?」
『失礼ね、これでも中はスゴいんだから!』
それでもファタは、自慢げにその倒木の前でふんぞりかえっていた。
「で、でも……」
確かに巨木ともいえる大きさで、中は広そうだ。
それにこの場所、まるでここだけ他の木が避けるような広場になっていて、辺りが見渡せる。
(どうしよう、多分森の中よりは安全なんだろうけど)
洞の先も暗闇で、ファタがいてくれないと森以上に何も見えない。
『大丈夫、ここには、そう……獣除けの結界みたいのがあるからね』
「そ、そうなの?」
『モチロン! その位余裕よ』
確かにこの状況で、ファタの言葉は彼女自身が証明してくれる。
「じゃ、じゃあ……お言葉に、甘えて」
『ハイハーイ、どうぞー♪』
「ちょ、ちょっと!」
僕が覚悟を決めるやいなや、ファタは僕の手……指を取って中へと引き入れた。
(け、結構強い!)
指が抜けそうなくらい引っ張られて、足をもつらせながら飛び込むようにその洞へと誘われて。
「うわぁ!」
そうして飛び込んだ先はまさに空洞で、僕の体はファタのように宙を舞い、そして……落ちた。
ドスン! と尻餅をついて底につく。
「いてて……」
『ごめーん、大丈夫?』
「酷いよ……」
フヨフヨとあとから降りてきたファタが、平謝りで声をかけてきた。
(そそっかしいところも、似てるなぁ)
そんな事を思いつつ辺りを見回すと、そこは大樹の中とは思えないくらい広く感じられた。
『さ、こっちよ』
「あ、待って」
スーッとファタが進んだその先には、とても明るい光が溢れ出ていた。
まるで昼間のような光に、僕は吸い込まれるように彼女の後について入ると。
『騒々しいな、何だ』
『あ、ヴァン、見て見て!』
『うん?』
一足先に部屋のような所へ向かったファタが、誰かと会話している。
するとその光の中から、もう一人の妖精が現れた。
『ね?』
『……ふん』
ファタと入れ替わりでその妖精が僕の元へと近づくと、僕を観察し始めた。
「な、何?」
『ふーん……』
じっくり品定めするように僕の周りを飛び回ると、部屋の奥に戻り。
『まずは中に入れ』
と、手招いた。
「う、うん」
ファタと違ってぶっきらぼうで命令口調な奴だなぁ……。
そう思いながらも言われたとおり、部屋へと入ると。
「わぁ……」
そこにはおよそ人の手で作られたとは思えない、不思議な空間が広がっていた。
部屋自体が光り輝き、様々な色を溢れんばかりに発している。
よく分からない置物や、どんな用途で使うのか分からない小物も転がってる。
余りにも異質すぎて、自分が今樹の中にいるとは到底思えない光景が、そこにはあった。
『ゴメンね、元が倒れているから適当に座ってて』
「え、あ、うん」
はじめは言われた意味が分からなかったけど、そう言わてみれば、確かにそうだ。
見た事のない物だらけでも、それらが全て不自然に傾いているのだけは分かる。
きっと元々真っ直ぐ立っていた樹が倒れてしまい、こんな状態になってしまっているんだろう。
「わわっと」
『おい、気を付けろ』
景色が斜めなせいで転びそうになると、もう一人の妖精に怒られた。
「!? ご、ごめん」
しかも突然視界に飛び込んできたから、ビクリと飛び跳ねてしまった。
『名前は?』
「あっ、えと……セインって、言います」
『セイン……?』
「な、何か?」
ジッと見つめるもう一人の妖精、どうやらこっちは男の子のようだ。
そんな彼が、ようやく離れたかと思うと、ピッと指を差してこう言った。
『お前……女か?』
「はっ?」
『女かと聞いている』
「と、突然何を……?」
いきなり変なこと聞かれたら、誰だって目を丸くする。
確かに僕は病弱で、友達の男の子たちに比べればすごく女の子っぽいけど……。
『言わないなら調べ……』
「ちっ、ちち違うよ! 僕男だよ!」
『……何?』
「こ、こんな感じだけど、僕は男……です」
『……』
「あ、あの……」
正直に言うと、腕組みをし、何やら考え事をし始めるもう一人の妖精さん。
『素体としては、優秀……か?』
「な、何?」
『いや、気にするな』
一体彼が何を考えているのか、サッパリわからない。
ファタはまだ信じられる方だけど、こっちの妖精とは、ちょっと気まずい雰囲気……。
そんな僕らの様子を見て、ファタが僕の肩に乗ってきた。
『ゴメンねー、ヴァン……あ、こっちの名前ね、ヴァンは女好きだからー』
「へっ?」
『おい、ファタいきなり何を……あぁもういい、それでいい』
おざなりに紹介されたヴァンという妖精は否定したいようだけど、ファタは笑ってごまかした。
「あ、いや……別に……」
『気にするな、突然変な事を聞いて、済まなかったな』
「は、はは」
初めは怖くもあったヴァンだけど、素直な一面を垣間見て、ちょっとは気を許せた。
『さっ、自己紹介も済んだし、喉渇いてないセイン?』
「えっ?」
『お茶、ご馳走してあげるわ』
「あっ、ありがとう」
走り続けて喉は渇いていたし、妖精のお茶も気になるし。
『それじゃ今、淹れてくるね』
僕の肩から飛び立ったファタが、奥の部屋へと向かっていった。
「あっ」
さっさと行ってしまったファタ。
お互い自己紹介を終えたとはいえ、気さくなファタと違ってヴァンとはまだ距離がある感じだ。
「あっ、そ、そうだヴァン、あの……えと、お邪魔……してます」
『……フン』
……とだけ返して、ヴァンは上の方にある机のような物に腰掛けた。
(うぅっ、早くして、ファタ)
取り付く島もなくて、これ以上会話が続かない。
会話が途切れると、部屋が少し唸ってるように聞こえた。
その音を聞きながら、縮こまりながらファタを待つ。
(……それにしても、ちょっと、ガッカリ)
イメージしていた妖精さんとはだいぶ違うヴァンを見て、心の中でそう呟いた。
静かさと、今までの疲れがどっと押し寄せて、眠気へと変わりそうになったころ。
『お待たせー』
待ちに待ったファタの声が響いた。
「あ、ファタ……え?」
『んしょ……っと』
「わわっ、大丈夫?」
『心配するなら早く取ってぇー』
「え? あ! わ、わかった!」
妖精のお茶というから、てっきり彼らのサイズで出されるのかと思いきや。
持ってきたのは普通に人間用のコップ、しかも結構な量のお茶が入っていた。
『ふぅ! さ、どうぞ!』
「え……っと」
『ん?』
「あ、ありがとう……でも、僕だけ、いいの?」
『え、あーあー、うん、私たちのはこれから持ってくるから。ヴァンは?』
『……俺はいい』
『そっ』
「はは……」
他愛のないやり取りと、ファタの突拍子のなさにちょっと笑みがこぼれる。
『ささっ、飲んで飲んで』
「ファタの分が出来るのを待つよ」
『大丈夫だよ、私たちのは特別製だからもう少し時間がかかるんだー』
「そ、そう、じゃあお言葉に甘えて……」
喉も乾いたし、ファタもそう言うので遠慮なく頂こうと……すると。
「な、何?」
『ん? あーあーゴメンね、お客なんてはじ……久しぶりだから』
「そうなんだ」
ジッと見つめられて何かと思ったけど、そういう事か。
なら尚更と、僕はそのお茶を口にした。
「おいしい……けど、不思議な味だね」
『でしょ?』
初めて味わう妖精のお茶は、それこそ妖精っぽさがあった。
どことなく甘く、でもちょっとした苦さも感じて、それがとても喉に染み渡って。
ついつい飲む勢いを増してしまい、あっという間に空にしてしまった。
「あ」
『おいしかった?』
「う、うん」
『そ、良かった。それじゃ私のお茶淹れてくるから、そしたらお話しましょ』
「わかった」
そう言ってファタは、三度奥へと消えていった。
(はぁっ、何だろ、とても温かい……)
お茶を飲んだせいか、身体がポカポカして心地良い。
また寝そうになるのを堪え、ファタを待った。
相変わらずヴァンはそっぽ向いて作業をしていたけど、時折こちらを見ているのには気付いた。
『お待たせ』
ファタが、彼女に合わせたカップを持って、奥から現れた。
「ん……」
『セインくん、アナタの事、聞きたいな』
「僕……は……」
ファタが、傍に、腰掛けて……僕の、話を、聞きたがってる。
けれど、僕は、話そうとしたんだけど……体が熱くて、熱っぽくて。
『もう休む?』
「うん……ゴメン……」
ダメだった、眠くて……堪らなくて。
『それじゃ、オヤスミ』
「あ……」
自分の体が倒れるのを感じながら、僕は夢の中へと誘われた。
そうして意識を失う直前、耳元でファタの声が聞こえた。
内容はこうだった。
『期待してるよ、ニンゲンさん』
「う……ん……」
あれ、僕……どうしたんだっけ……?
確か、ファタのお茶を飲んで、それで……。
『目が覚めたか』
幻聴のようなヴァンの声が聞こえたけど、目を開けても辺りが暗くて姿は見えない。
「ヴァン? ねぇ、僕は……うわっ」
突然、パッとまばゆい光が辺りを包んで、目が眩む。
反射的に手を出そうとしたけど、何かに捕まれているみたいで動かなかった。
『どうやら、問題はなさそうだ』
「うぅっ……!」
少しずつ目を慣らしながら開けてみると、ヴァンとファタの姿が見えた……けど、それ以上に。
「なっ、何ココ、一体ドコなの!?」
さっきまでいた部屋よりももっと不思議な、でもとても冷たくて殺風景な、銀色に輝く部屋。
その部屋の向こう、ガラスの向こうの小さな部屋に二人は立って、僕を見つめていた。
「ファタ、ヴァン!? ね、ねぇ一体何をして……何が起きてるの!?」
『落ち着け』
二人のもとへ近づこうとしたけど、足も動かなくて、やっと自分が拘束されてるんだって気付いた。
「何かが……え?」
見上げると、僕の腕は天井から生えた突起に食べられたように、手首から先がすっぽり包まれて。
「え、な……なっ!?」
でも、もっと驚いたのは、足元を見た時。
手と同じように足も呑み込まれているんだけど、その視界に飛び込んできた、二つの突起。
床から生えてるんじゃない、それは僕の胸元から……それどころか、どう見てもそれは僕の体そのもので。
「え、こ、コレって……?」
手が使えないから触って確かめられないけど、身体を震わすと揺れ動く膨らみ。
それは間違いなく、僕の胸。
「ね、ねぇ二人とも、コレ……え?」
『見ての通りだが?』
「見ての通りって、だって、僕は……」
『ヴァン、彼には理解できないですよ、超常的現象なのですから』
『そうか、ならその目で確かめてもらうか』
二人が何やら話し合った後こちらに向き直すと、ヴァンが手元の机で何かをし始めた。
すると目の前の壁が泡のように弾けて、その弾けた箇所が鏡のように僕の姿を映し出していく。
「な、な……なぁっ!?」
『そういう事だ』
そうして現れたのは、手足を拘束され、目を丸くしてこちらを見つめる……裸の少女の姿。
けどそれが僕だって事は、その娘の動きや感情で解る。
怯える顔も、メアリーより大きな胸も、何もない股間も、全部今の……僕自身だ。
「何で……僕、女の子に……何で……?」
とても信じられない事だけど、二人の妖精の存在が夢じゃないって言っていた。
「じょ、冗談だよね? ねぇファタ、そうだよね? あのお茶に何かしたんだよね?」
声を震わせながら、二人に問い詰める。
そして答えたのは、一切の感情を失ったような、ファタだった。
『えぇ、その通り。その結果がそのカラダよ』
「そん……な……?」
さっきまで笑顔を振りまいていたファタの冷たい瞳を見て、これが現実だと知らしめさせられた。
「な、何でこんな事するのさっ!」
ならなおの事、二人を問いただすと。
『セイン、アナタは生まれ変わるの』
……そう、ファタが呟いた。
「生まれ変わるって……」
女の子になっている時点で、もう十分すぎるくらい、僕自身を失っているけれど……。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 何で僕にこんなことするの!」
いい返事が返ってくるはずがない、そう分かっていても、叫ばずにはいられなかった。
『それはあの時、あの場にいたのがキミだったから、それだけだよ』
「そんな……だってファタ、助けてくれるって」
『えぇ、言ったわ。あのままならアナタは間違いなく野垂れ死によ』
「なら、なんで」
『命は助けたわ、でもアナタが願ったのはそれだけ』
「そんなのって……」
『運が無かった、ただそれだけだ』
淡々と語る二人が、感情のない人形のようにさえ思えた。
「そ、それに何で僕を女の子にしたのさ!これも君たちがやったんだよね!」
『目的のため……性転換はその準備の一つだ』
「目的って……」
『生まれ変わると言ったが、正確には仲間になって貰うと言ったところだ』
「仲間……?」
『そのためにはキミに、自身を孕んでもらう必要がある』
「……孕む?」
『その身に子を宿すんだ』
「……え?」
一瞬理解できなかったけど、子供って……それって、つまり。
「い、いやだ……ぼ、僕は男だよ!? そんな事できな……」
『だから変えた』
「やめて! ファタ! ヴァンを止めてよ、ねぇ、ファタ!!」
とても恐ろしい事が待っている。
そう直感が訴え、泣きながらファタにせがんだ……けど。
『ゴメンねセイン、マスターの命令だから』
「マスターって……!」
もう何が何だかわからない。
だけどこのままじゃ、きっと。
そう解っていても、逃げられない。
『始めるぞ、ファタ』
『はい』
二人が相槌を打つと部屋の仕切りが開き、二人の立つ床ごと僕の目の前へとせり出してきた。
「やめてよ! ねぇ、これは妖精さんの悪戯なんだよね!」
『……あぁ、そうだった』
「え?」
『そもそも、俺達はキミの言う妖精という存在ではない』
「違……うの?」
『キミからすれば、キミの知りうる妖精とは姿形はそう差異はないのだろうが』
「じゃ、じゃあ……二人は一体……?」
『別の……世界とでもいうかな、その住人だ』
『以前、星が降ったでしょう? あれは、私達の起こした事』
「星降り……」
二人の言う星降りの夜は覚えてる。
寝ようとしたら、この森ある方角で大きな音がして、みんな『星が落ちた』とか叫んでた。
大人たちが調べに行ったけど、結局何も見つからなかったはず。
「それじゃ、二人はその星に乗って……」
『星というか、船だな、そもそもこの場所がそうだ』
「そんな……」
ますます二人の事が解らなくなるなか、更にヴァンは言った。
『それともう一つ、勘違いしている事がある……ファタは、人ではない』
「え?」
『ファタ、見せてやれ』
『はい』
コクリと頷くファタ。
「ファ、ファタ!?」
突然服を脱ぎ捨てて、裸になるファタ。
透き通るような白い肌に、今の僕と同じ、女の子の……カラダ。
目を閉じ、スゥッと息を吐くファタに見惚れていると、急にファタの体から煙が吹き出し。
「ヒッ……ひぃっ!?」
そして次の瞬間、ファタの体が……裂けた。
バラバラになるファタ。
けれど一切出血せず、それどころか中身には肉なんてなく、石のような何かが詰まっていた。
『ファタは……そうだな、人造人間と言えば解るか』
「あ……あ……!」
そんなファタを見ても全く動揺しないヴァン。
目を閉じたファタの顔『だけ』が、仮面のようにこちらに向いていた。
『もういいぞ』
『了解』
ヴァンがそんなファタに命令すると、再びファタの身体は重なり合い、元の可愛らしい姿に戻っていった。
「ば、化け物……!」
『もぅ、ヒドいわ、セイン』
ファタが微笑みながら言うけど、もうファタの事をまともに見るなんて出来ない。
『これで解って貰えたかな』
「わ……わか……ひぅっ!」
恐怖に怯え、身体が震えた。
そして、腿を何かが這う感覚に驚いてみると、僕は……どうやら漏らしてしまっていた。
でも今は女の子の身体、股の間から何処とも知れず流れ出たおしっこが、床を濡らしていく。
『あらあらセインたら、はしたない娘』
「ち、違っ、これは!」
僕を見てファタは笑い、ヴァンは冷静に見つめていた。
「み、見ないで……!」
恥かしさに顔がカーッと熱くなる、こんな姿を見られて、僕は……。
お腹の中がムズムズする。
何だかとても堪らなくて、切なくて。
「うぅっ……!」
身をよじらせて解消しようとするけど、余計にじれったくなってしまう。
『フフッ、セインはこういうのが好きなのね』
「なっ、えっ?」
『いいわよ、もっと感じていいわ、その方が都合がいいのよ』
会った時と同じ表情でファタが微笑む。
でもその顔の下にはさっきの、あの……!
『どうやら肉体的には問題ないようだな、ファタ、始めろ』
『了解』
ヴァンの一言で、ファタがフワリと飛び上がり、僕の目と鼻の先で止まる。
「や、やめて……ファ、ファタ……ねぇ!」
『怖がらなくていいのよセイン……うぅん、その恐怖から、解放してあげる』
チョンッと、僕の鼻先を指で突くファタ。
「わああっ!」
わざとゆっくりと、僕の首元へと降り立った。
「いつッ……!」
チクリと何かが突き刺さる、鋭い痛みが走る。
「な、何したの…… !!??」
そして。
「ひっ、ひぅっ……ふぃぃっ!?」
『どう?』
「あ……あぁっ……あああっ!?」
急にあのじれったさが一気に膨らんで、体全体に広がっていく感じがすると。
「なっ……あっ……ひぅんっ!!」
身体が勝手にビクビク痙攣し始めて、何も考えられないくらい頭の中が真っ白になった。
『ちょっと刺激が強かったかしら?』
「なぁっ……うぁぁっ……」
力が抜けて、ガックリと膝から崩れる。
でも僕の手足は拘束されているから、そのまま倒れる事さえ許されない。
「はぁにぃ、ひらのぉ……」
『この後の為に、お薬を注射したのよ』
薬……? うぅん、絶対、毒だ……。
まだ僕の体を痺れさせて、こんなに、気分が……?
「あぇっ……えぇっ……?」
息が苦しくて、開けっ放しになってる口からは、ダラダラ涎が溢れてくる。
胸が苦しくて、少しでも動くとビクッてなって、それでまた膨らんだ胸が揺れて。
お腹の中が火で炙られたみたいにジンジンして、でもそれがとても気持ち良くて。
『まだ早かったかしら?』
『肉体としては問題ない』
『彼の精神年齢は変わりませんよ』
『……なら、教えてやれ』
『……はい♪』
「ひぅっ、うふぅっ!」
二人の会話は、ボンヤリとした気分じゃほとんど聞き取れなかったけど。
『それならまずは、こちらから』
こちらに向き直したファタが、僕の目の前で突然踊りだした。
「な」
すると、シューッて音がしたあと、何かが上から降りてきた……二匹の、蛇?
『さ、まずはこれを付けましょうね』
「え……? ……ひうっ!?」
ファタがその二匹を操っているらしく、蛇がうねうねと蠢いた。
その蛇が、僕に纏わりつくと。
「やっ……あぁあっ!!」
腕や肩の周りをグルッと這いずると、最後に僕の胸に、噛み付いた。
「あひぃぃぃっ!!??」
痛みはなかったけど、敏感になった胸をその口の中で弄られ始めた。
「んにああああああっ!!」
味わった事のない強烈な感覚に、叫び声が上がる。
『それっ♪』
「ひうっ、ひぃっ、んきゅぅうっっ!!」
ファタがクイッと指を動かすと、蛇の口の中がうねり、蠢いて……吸い始めた。
「いぎゅぅうううぅんっっ!!」
コリコリと蛇が僕の乳首を舐めまわすと、体が痺れて、切なさが膨らんでいく。
「ひぃあぁあっ! らめぇぇぇっっ!!」
『安心して、死にはしないから』
「あひぃぃぃっ!!」
ファタはそう言うけど、このままじゃ僕の心が壊れそうだった。
痛くはない、ただただ、異常なまでに、気持ちいい。
けどそれは生まれて初めて味わう気持ち良さ。
(かっ、体……オンナノコの、カラダって……!)
母さんやメアリーたちは、こんなのを、ずっと感じながら生きてる?
……うぅん違う、こうされると、気持ちいいんだ。
そしてこれはやり過ぎなんだと、身をもって感じているからこそ理解できた。
……でも、解ったところで。
「ひゃぅんっ!!」
『ホラホラセイン、もっと快楽に身を委ねて……そうじゃないと、苦しいだけよ』
「そぉっ……んなぁぁあっ!!」
抵抗する事も出来ず、ただただされるがまま、やられ放題。
蛇が噛み付いたまま膨らんだ胸に絡みつき、ぐにゅぐにゅと揉みしだく。
これじゃ、まるでヤギの乳絞りだ……乳……?
「出っ、でっ……出ないっ……よぉっ……!」
僕は男だ、そんな、そんな事……!
でも今のこの体についているのは、まぎれもなく女の子の、乳房。
それでも、否定しようとすると。
『今はね、でも直ぐに出るようになるわ』
「いやぁぁぁ……!」
情けない声が出る……怯えた、少女の声。
その声は、とても艶めかしくて……自分の声なのに、ドキッとする。
「んきゅぅん!!」
そんな事を思うだけで、ますます気持ち良さで一杯になってしまう。
そうやって、暫く胸を弄られ続けていると。
『さっ、そろそろいいでしょう』
「はっ……はっ……!」
ファタがそう告げると、ひたすら僕の胸を弄り続けていた蛇たちが、ピタッと動きを止めた。
「もう……やめ……」
まだ蛇が絡みついたままだけど、ようやく落ち着けるようにはなった。
「はーっ……はーっ……」
息も絶え絶えで、もう全く力が入らない。
吊られた腕だけで立ってるから肩が辛いけど、その痛みすら気にならなくなっていた。
『ヴァン、始めます、アレを』
『あぁ』
ファタが何処からともなく現れた箱に手を入れると、何かを取り出した。
『機器が故障していなければ、こんな回りくどい事をせずとも』
『フフッ、ですがこの方が楽しいですよ』
『よく言う』
二人の会話。
あぁ……僕は二人にとっての、オモチャ……なんだ。
「お願い……家に……返して……」
切実な、願い。
『『……』』
その言葉が耳に届いたのか、二人はこちらを見た。
「おね……がい……だよ!」
心の底から、そう願うと。
『……目的を達成してくれれば、もとよりそのつもりだ』
「!!」
ヴァンの口からとびだした、あっけない一言。
でも今の僕には、その一言が何よりも希望となった。
「ほ、本当に……!?」
『そうだ、約束しよう』
「あぁっ……!」
目に涙が溢れてくる、その向こうに、両親やメアリーの顔が見えた。
自分の今の身体だとか、されている仕打ちとかも、その瞬間吹き飛んだ……のは、その時だけ。
『けどセイン、今すぐじゃないのは、解ってるわよね?』
「あ、明日……」
『俺の言った事を忘れたのか?』
「え?」
『促進はさせるが、それでも子の成長には時間がかかる、まだ暫くは無理だ』
「子……?」
『セイン、言ったでしょう? アナタは子を産むの』
「こ、子供って……どう……?」
『その歳で、まだ知らないのか』
『無知って残酷よね』
「え? え?」
両親にはまだ早いって言われて、詳しく教えてもらえなかったけど。
でもそう言えば、子供が出来たってお祝いされてた村の女の人は、皆お腹が大きく……。
それに、一度だけ付き添った、隣の家の出産手伝い。
おばさんが悲鳴をあげるほど苦しんで、それをみんなで励ましたり、手伝ったりしてたっけ。
……それを、僕が?
「い、い……いやだ!!」
結局何も解らないままだけど、少なくとも僕には耐えられない事なのは、理解した。
『なら、ずっとそのままだが?』
「僕は関係ない! 君たちが!!」
『それも言ったでしょう? 運が悪かったって』
「そ、それにそもそも何で僕に!? ファ、ファタじゃダメなの!?」
『ファタは人造人間だ、生殖機能は備えていない』
『一応、行為は出来るけどね……♪』
ファタが自分の裸体を見せつける。
……見た目は女の子そのものだけど、中身は……だから、なのか。
『セイン、俺達が空から来たと、話したな』
うろたえる僕に、突然ヴァンが神妙な面持ちで語りだした。
『落ちる前は、仲間はいた。だが墜落時殆どの仲間達が死亡、もしくは負傷した』
「仲間……」
『その上、船の破損も酷く、負傷した仲間も一人、また一人とその命を終えていった』
だから、二人だけなんだ……でも、それが一体?
『残された俺は救援を待とうとしたが、その機能も故障し、ほぼ絶望的だったのだ』
妖精……いや、彼らの容姿からは想像できない出来事。
『勿論、諦める気はない。残ったユニットから導き出された結果が……仲間を増やす事だ』
「それじゃ、つまり……」
『……そうだ、君……いや、原住民を母体として、生成するのが、俺の出した結論だ』
「そんな……」
悪魔の所業にしか聞こえない。
けどそう言い放つヴァンの瞳に、迷いはなかった。
「な、ならなんで僕を女に!」
『遺伝情報を載せた擬似卵子はある……あとはそれに受精させる精子と、宿す母体が必要だ』
「せ……?」
『子供の元よ』
ファタが補足したけど、何が何やらさっぱりだ。
『既にキミの精子の遺伝子操作は完了してある、今ファタの持つカプセル内にあるのが、それだ』
そう言われファタを見ると、箱から取り出したであろう筒を手にしていた。
『先ほどの薬と……行為で、君の身体の方は準備ができている』
『あとは、コレをアナタに撃ち込むだけ』
「やっ、やめっ……何を……」
筒はファタの手に収まる程度の小ささだ。
それでも、それを体に入れられるという事はされたくない。
『大丈夫、もう十分”濡れて”いるから』
「ひぅんっ!」
ファタがピッと指を立てると、一瞬だけ蛇が口の中を回す。
胸の先から痺れるような感覚が生まれて、自然と声が上がってしまう。
『これから、もっと気持ち良くしてあげるから……安心して』
「いっ、いらな……」
『フフッ』
「ひゃうんっ!」
ファタが僕の身体に手を添えながら、スーッと下へと降りていく。
そんなファタの手になぞられるだけで、全身がゾクゾクして、たまらなくなる。
『あらあら、もうこんな……セインったら、エッチな娘ね』
何もなくなった僕の股のところで、ファタが僕をなじる。
おもらししてからずっと、濡れて気持ち悪いソコ。
いつの間にかネバネバしていて、それがクチュクチュと音まで立てている。
(女の子って、みんなこうなの……!?)
メアリーの事を思うと、それがとてもいけない事のような気がして、またチュクッと音を立てた。
『セインってば、本当にはしたない娘ね……そんな娘には、お仕置きが必要ね』
「なっ、えっ…… ひぐぅっ!?」
落ち着かない身体に悶えていると、ファタがスゥッと僕の股間に手を伸ばした。
「ふきゅっ!」
『どう、セイン? アナタにあったモノは、ここにあるのよ?』
「なぁぁっ!!」
ファタが、僕の股間の……オチンチンがあった辺りを手で捏ね回す。
「ひゃうっ! ひぃんっ!!」
そこを触れられただけで、気が狂いそうになる。
それなのに、ファタはそこを執拗に責め立ててくる。
『いいわよセイン、もっと欲に溺れなさい……その方が、やりやすいわ』
「くぅぃいぃぃっ!!」
ファタから逃れようとしても、まるでくっついるみたいにその手は離れない。
それどころか体を動かしたせいで、余計に気持ち良さが込み上げてくる。
「なぁっ……これぇっ! んぁぁんっ!!」
胸を弄られるよりもっと強烈で、それでも僕の心はそれに呑まれても折れる事はなかった……けど。
『エイッ♪』
「!! んああああっ!!」
『あはっ♪ いいわいいわ♪』
身をよじり、必死に何かを耐えていた僕に、ファタはその小さな手を捻る様にして動かした。
その瞬間、僕の中で爆発したように一気に気持ち良さが溢れて、体が大きくのけぞった。
「あ……か……」
身体が、痙攣して……息も、出来ない……頭の中で、光、弾けてる。
股間から漏れ出た液体が飛び散って、ピチャピチャと床を濡らし、ファタにも大量に浴びせていた。
「は……ひぃ……」
『ンフ……これだけやれば、十分ね』
『……やり過ぎだ』
『アラ、前戯は大切ですよ』
『好きにしろ』
「もぉっ……ダメぇ……!」
こんなにも身体はだるいのに、ちっとも火照りが治まらなくて、無性に股間を弄りたかった。
(変だよぉっ……! こんな、こんな……!)
女の子が、女の子の身体が、恐ろしくなってきた。
こんなになっても、こんな事をされても、身体はまだ……求めてる。
ずーっとウズウズしてて、堪え切れないその衝動。
でもきっとそれが、子供を産むための『何か』を求めているサインなんだ。
だからこれを我慢すれば、多分、きっと……そう、思っても。
「あぅ……僕の……なかぁ……」
疼く身体を、ゆらゆら動かす。
それを見たファタが、僕の目の前に来て。
『いいわよセイン、とても……いい。これならもう、大丈夫そうね』
「ふぇぇ……?」
再び、下へと戻っていき。
そして。
「ひっ! な、何!! ど、何処にぃっ!!」
ファタは僕の腿を撫でながら、じわじわと股の間へと……その体ごと上ってきた。
『セインのオンナノコ、こんなにヒクついちゃって……そんなに欲しいのね』
「やっ、やめてぇ!!」
ファタを止めようと足を閉じても、その細い腕にすら勝てずにソコへと辿り着かれると。
『フフフ……♪』
「いっ、いやぁっ……!」
ファタが、僕の股座に手を沿える。
「ひっ、ひぅっ!」
『いくわよ』
「あ……あああっ!!」
ファタが、僕の肉を、裂いた……でも、痛みはない。
むしろ触れられただけであのとてつもない感覚が狂ったように湧き出してくる。
「やぁっ! ファタ! やめてぇ! あああっ!」
ズリュッと、身体の中に何かが入り込んでくる異物感。
蠢いて、お腹の中をひっかきながら、じわじわと奥へと侵入するのは……ファタ自身だ。
「あくぅっ! あぁぁあ……いうぅぅっ!!」
押し広げられていく感覚と、それに伴って生まれる気持ち悪さ……だけど。
「クッ……ヒィィッ!!」
出そうとしたものが引っ込む感じに悶えていると、その感覚すら気持ちのいいものに思えてくる。
うぅん、実際、ファタが動くたび、僕の中がふつふつと沸いて、その熱さに意識が朦朧としてくる。
『ファタ、どうだ』
『もう少しよ』
ヴァンがどうやってかファタと会話している。
そんなファタは僕の事なんかお構いなしに、僕の中を突き進み。
『あった♪』
多分、ファタがすっぽりと収まったであろうくらいで、ファタの動きが止まる。
「はぁっ……ひぃぅっ……」
ファタがもぞもぞ動くたび、僕の身体は勝手に跳ねて、自ら刺激を強めてしまう。
そんな状態で、中にいるファタが、僕の『何か』を見つけたようだ。
『撃ちます』
『やれ』
そしてまた、僕の中からヴァンに一言告げると。
チュン……と、音がして。
「……ひ……ああ……あああ……」
ジワーッと、お腹の中に何かが拡がっていく感じ。
それが一杯まで溜まったところで、僕の中で何かが弾けた。
「あ……あひぁひぃやぅぅうっっ!!」
足がガクガク震え、ゾワッとした感覚が背筋を走り抜けた。
「うヒッ……ひぃぃやぁぁぁんっっ!!」
さっきの比じゃないくらい、頭の中がぐちゃぐちゃに蕩けていく感覚。
「はひぃっ……! ふぃぃぃっ……!!」
『キャッ』
我慢なんて到底できず、中に注がれたそれをファタごと吐き出そうと、身体が勝手にそうし始めて。
ニュルンと、ファタが僕の中から出てきた。
「……!!??」
その瞬間、身体の中身が全部出ていったみたいな、言葉じゃ表せない、とてつもない気持ち良さに呑まれ。
「あ……ひ……」
体が目一杯のけ反って、天井を見つめていた。
口の中からも何かが飛び出しそうで、舌がピンとつっぱってた。
『いったーい』
ファタという栓が抜けて、下からもプシャアッて音が聞こえるくらい、液体が溢れ出てきた。
もう、いっその事死んじゃいたいくらいだって思いも、よぎったけど。
「あふ……はひぃ……」
だんだんと恐怖よりもこの気持ち良さの方が強くなってて、いつの間にか自分を見失っていた。
『随分と漏れ出ているが……』
『大丈夫、癒着している分で十分賄えますよ……あぁもう、動きにくいわね』
フワリと舞い上がったファタは液体まみれで、キレイな髪もその体にピッタリ張り付いていた。
『さ、セイン。あとはこれで着床を待つだけよ』
「はぁぁぅんっ……」
『……アラアラ、もうそんな顔も出来るようになったのね、やっぱり資質があるわ、セイン』
「ふぁぁ……?」
ファタが何か言ってるけど……よく、わかんない。
ただふわふわしたこの感覚が、とても心地よくて、火照った体と響く心音が、眠気を誘うんだ。
『……問題はなさそうだな』
『そうね、これならあとは、これに任せておけばいいでしょう』
そう言って、ファタが指を差す。
すると、僕のいる場所ごと、グンと後ろに動き始め、壁へと追いやる。
次にあの蛇がもう一匹現れると、ソイツは僕の股間に噛みついて、やっぱり……舌を出す。
「ふああっ!!」
またあの甘い感じがし始めて、僕はそれに身も心も委ねることに、疑問を感じなくなっていた。
「むぐぅっ!?」
でも現れた更にもう一匹は、僕の口を覆い、そして。
「はふっ……」
舌を絡ませる。
コロコロ転がされる僕の舌。
気持ち悪くもなく、むしろ適度な刺激がいい感じ。
『それじゃセイン、また……あと、でね♪』
ファタが手を振り、微笑む。
そんなファタとの間に、ガラスの壁がせり出してきて、僕等を分かつ。
(ファタ……どこに、行くの?)
そんな事を思いながら、気付けば僕の周りは徐々に水で埋まり始めていた。
(怖いよ、ファタ……助けてよ)
遠のく意識の中、助けを求めた。
水で満たされても、口元の蛇のおかげで息が出来た。
股間に張り付いた蛇のおかげで、とても心地よい。
(あぁ……)
二人はこれで、僕を生まれ変わらせるって言ってたっけ……。
僕、どうなっちゃうのかな……帰れるのかな、約束、守ってくれるのかな。
帰っても、生まれ変わった……うぅん、女になった僕は、ちゃんと迎えられるのかな。
そんな事を思うと、不安でしょうがないけど……。
もう、眠いや。
――――時が経ち。
『終わったか』
表示された文字を見て、ヴァンは保管した彼……いや、彼女の元へ向かった。
『どうだ、具合は?』
『良好ね、今回のデータがあれば以降の成功率は上がるわ』
『そうか』
部屋では、ファタが最終チェックを済ませていた。
そうして見つめる、二人の視線の先。
「あ……う……あ……」
保護液で満たされたカプセルの中、一人の少女が虚ろな表情で漂っている。
拘束された手足に、口と胸と股間に繋げられた各種処理用のチューブ。
そんな標本紛いの扱いをされた少女の腹部は、大きく膨らんでいた。
「あぅっ……あぁっ……」
時折、身体を震わせ、身悶えする少女。
乳房のチューブが刺激を与え、母乳を搾り取っているからだ。
加えて、股間のチューブは観測の為その膣内を這いずりまわっている。
「ふっ……うぅっ……」
そうやって性的快感を与え続け、彼女の精神を留めている……それも含め、必要だからだ。
「ふわぁ……」
光悦とした表情を浮かべ、目的を果たすに至った少女の姿を見て。
『フッ』
待ち望む結果に、ヴァンはいつになく笑みを浮かべた。
『ウフフ、セイン、気持ちよさそう』
ファタがクスクスと笑う、無邪気な顔で。
『でも、それも終わり。さぁ起きて、セイン』
ファタは呟きながら、手元のコンソールを弄り、決定を押した。
ガコン! という音と共に少女を包む液体が徐々に排出されていく。
液体から解き放たれ、重力に引かれた少女がガクッと膝を落とした。
その後、各チューブがその役目を終え、外されていく。
そうして漸く手足以外の拘束が解かれた少女の裸体が、二人の前にさらけ出された。
「うっ……」
うなだれた少女が小さく呻き、その体勢のまま二人の近くへとせり出していく。
そして二人も、操作盤と共に少女の傍へと降り立ち、意識が戻りつつある少女を見守った。
「う……え……?」
『おはよう、セイン』
「え……あ……ボク?」
名前を告げられ、おもむろに顔を上げる少女……セイン。
「ココ……僕……あれ……?」
辺りを見回し、状況を次第に理解し始めると、セインの顔色が見る見るうちに青ざめていく。
「あ、あ……ボ、ボクは! うわあぁぁっ!!」
『漸く思い出したか』
「あぁっ! あああっ! 帰るっ! ボクは帰るんだッ! 家に……ひぎぃっ!!」
必死に逃げようと体を揺らすセインだったが、拘束具はガッチリと手首足首を呑み込んでいた。
そして自分の身に起きた事に気付かず身体に負荷をかけた事で、セインは激痛に襲われた。
「はっ、かはっ、あっくうぅっ……!」
『無茶をするな』
『そうよセイン、もうそのカラダはアナタだけのモノじゃないのよ』
「はっ、はぁっ……? ……! う、うわあああああっっっ!!!」
自分の体の違和感。
その原因に気付いたセインは、悲鳴を上げた。
「ボクのっ! ボクのお腹がぁっ!!」
病的に膨らんだお腹を見て、取り乱すセイン。
そうして暴れれば、結局また痛みを伴うのに気付くのは、直ぐだった。
「いぐぅぅぅぅっっっ!!??」
『おい、ファタ』
『はい』
「!! !?」
みかねた二人が、セインの拘束具を更に動かし、身動きすらできないようにする。
「あぁっ、いやだぁっ!!」
腕の拘束具が、更にセインの腕を呑み込み、身体を持ち上げていく。
一方で脚も徐々に上がる……が、膝に力の入らないセインは脚だけが上がっていく。
そしてそのまま、間隔も広がり始めれば、否応なしに股を開かされていく。
「いぃい! うぅう!!」
そうしてセインは、大股開きで、産む準備の体勢を強いられた。
「痛い! 痛いよぉっ……やめてよぉっ!!」
ギリギリと、拘束具がセインを締め付けるせいで痛む。
だがそれ以上に、お腹を膨らませている原因が、セインを苦しめていた。
『始めるぞ』
『はい』
泣き叫ぶセインを横目に、二人は行動に移した。
「なっがぁあっ! くひぃぃぃっ!!」
(これっ、これ、が……!)
出産するって、事なの!?
身体が引き千切られるような痛み。
でもこれは、二人が何かしたからじゃなく、元々そうなんだろう……。
身をもって実感しているからこそ、理解できた。
……けど、だからってこんなの……死んじゃう!
「はひぃぃぃっ! ひぃぃぃぃっ!!」
叫ばずにはいられなくて、獣のような声を上げる。
そんな僕を見ても二人は至って冷静に、僕が『産む』のを待っていた。
『セイン、息を整えてゆっくりいきむのよ』
『回りくどいな』
『ダメですよこればかりは。セインに頑張ってもらうしか』
「なあっ! たすけてよおおっっ!!」
必死になって助けを求めたけど、結局は僕がどうにかするしかない……みたい。
「んんんーーーっっっ!!!」
ファタに言われたとおり息を整えようとするが、声を出さないと辛すぎた。
「ひぃっ、ふぅぅっ!!」
(こっ、これ、なら……!)
咄嗟に出た息遣いで少し楽になったけど、そのせいか体の異常に気持ち悪さを感じ始めた。
「うぅうぅうーーーっっっ!!!」
『そうよセイン、もっと、もっと!』
今の状態じゃ、ファタの声でさえ心の支えになる。
「ふぅー……んんんっ!!」
『いいわ、見えたわ!』
身体が……千切れる!
「いぃいぃいーーーっっっ!!!」
『あと、ちょっと!』
そして。
「あああああーーーーーっっっっっ!!!!!」
身体の中身が全部出そうな勢いと共に、ズリュッと、僕の中で育った、何かが生まれた。
「ひぃぃぃぃん!!!」
『やった!』
ファタが嬉しそうな顔で、実験の成功を喜ぶ。
ヴァンは、溜息一つついたのみ。
そうして二人……いや、三人が待ち望んだ物が姿を現した、それは。
『早速、羽化の準備を』
『はい』
……巨大な、卵。
純白のそれは、まるで鳥類のソレ。
だが二人はそれを疑問に思わず、受け皿へと転がり落ちた卵を、同室にある小さなカプセルへと納めた。
『ふぅ』
『あとは、孵るのを待つだけか』
「あぁっ……はぁっ……」
産み落としたセインは、気怠そうに息を整えていたが。
「こっ、これ……で」
『うん?』
「これで僕は、帰れるんだよね……!」
セインがヴァンを問い詰めた。
『……』
「たとえ君たちが妖精じゃなくても……嘘は、良くないよね!」
『そうだな』
「なら……!」
『でももう少し、アナタに用があるの』
「な……!?」
『大丈夫、今度はすぐよ……だからねセイン、もう一度眠っててね♪』
「そっ、そんな! それじゃ僕はっ……うわあああっ!!」
『またね』
再びセインをチューブが取り囲む。
「ふぐぅっ!!」
そして、またカプセルの中へと押し込まれ。
「んーっ! んんーっ!! ……ん……」
意識を、失った。
その後。
パキッ!
『さぁ、いよいよね』
ファタとヴァンは、目の前で今まさに孵化せんとする卵の動向を、見守っていた。
『どんなのかな?』
『調整をしていないのか?』
『セインなら、成分無調整でも大丈夫よ』
『……お前は』
そんな会話をする間にも、ひび割れていく卵、そして一気に決壊すると。
『まぁ』
『ほう』
中から現れたのは……ファタのような、美しい少女。
内液にまみれながらも、スッとその身を起こし、天を仰いでいた。
「……」
そしてゆっくりと顔を下げると、目を見開いていく。
「あ……」
少女は自身の手を見つめ、その手を天高く掲げ上げた。
『おはよう』
ファタは躊躇いもせず、その少女に声をかける。
その声に反応して、少女が振り向く。
『あはっ♪ いいわ、実に、いい』
『どうだ? 生まれ変わった気分は』
「……」
少女は二人を見据えると、割れ残った卵の下半分から外へと出て、二人に近づいた。
「ボクは……そう、これが……そう、なんだね」
『えぇ、そうよ』
『あぁ、お帰り……そして、お前は』
ヴァンの一言に、少女は微笑んだ。
「ボクは……うぅん、私は、キオよ」
キオ。
そう名乗った少女が、胸に手を当て、跪いた。
「あぁ、うん、これは……とても、いい……ありがとう」
二人に頭を垂れ、感謝を告げる。
『キオ……あぁ、キオ』
「はい」
無表情なヴァンが泣きそうになりながら、感極まってキオに抱き付いた。
『済まないキオ、どう足掻いても、君はもう……仮初めの……』
「いいのよヴァン、それでもアナタは、私の……」
『あぁっ……!』
泣き崩れるヴァンを、キオが優しく抱きしめる。
そうして暫しの間二人の再会を見守ったところで、ファタが声をかけた。
『マスター、まだ処理が終わっておりません』
ファタの声にハッとしたヴァンは、体裁を取り繕うと。
『あぁ、そうだったな、ファタ』
目元を拭いながら、ヴァンはファタに命令し、ファタは『アレ』を起動した。
そうして駆動音とともに現れたのは……。
「う……うん……」
「あ! 気がついた!」
「あぁっ、セイン! 大丈夫!? セイン!!」
「ここ……は……」
「お家よ、アナタ、森の中倒れていたのよ」
「ゴメン、セイン……本当に、ゴメンね! 私が無茶言ったばっかりに……!」
「あ……ママ……メアリー……」
やっと状況を把握できるようになったセイン。
ここ数日、行方不明になっていて、結局見つからず半ば諦められていたこと。
そして捜索が打ち切られたその直後、街道沿いに倒れているのを見つけられたこと。
そして今、こうやって皆の元へと帰ってこれたこと。
家族やメアリーが心配する中、セインは自分に起こった事を思い出そうとした……が。
(……あれ……?)
思い出せない。
ただぼんやりとだけ、とても心地良かったという事だけ、覚えている。
「セイン、何か食べたいものは、欲しいものはある?」
「えっ、あっ、えっと……それじゃ」
何とか思い出そうとしたが、母親の泣きじゃくった顔を見て、今は考えないことにした。
折角だからと、好物を注文したり、甘えたりするセイン。
けれどやはり何かが引っ掛かって、もやもやしっぱなしだった。
(そういえば……アレ?)
ふと、布団をまくる。
……部屋着に包まれた、自分の体。
そっと触れてみれば、もちろん触れられている感覚……でも。
(……何で……?)
何かが、違う。
その夜。
「ん……」
セインが見つかり、久しぶりに安心して眠れる夜を得たメアリー。
「何……?」
重苦しさに目が覚めた。
「何なの……え?」
窓から差し込む月明かりに照らされ、目の前に誰かがいるのが見えた。
「ヒッ……えっ、ええっ、セ、セイン!?」
幽霊かと思ったそれは、幼馴染みのセインだった。
「なっ、何してるのっ!?」
こんな夜更けに、しかも見つかったその日に、何故。
「メアリー……」
「なっ、何?」
「メアリーは……キレイだね」
「えっ、えぇっ!?」
「髪も、瞳も、顔立ちも……それに、その、身体も」
「なっ、ななな何を言い出すのセインっ!?」
突然現れ、柄にもない艶っぽい台詞を吐くセインに、戸惑うメアリー。
「だからこそ、君には……キミにも、生まれ変わってほしいんだ」
「はっ、何なの……ちょっと、セイン!?」
顔を近づけるセイン。
月明かりがセインの体を照らすと、セインが生まれたままの姿をしているのに気付いた。
「何で裸……!? え……それよりセイン……それ!?」
「フフッ……」
四つん這いのセイン。
もとより華奢だった体は、更に丸みを帯びていた。
その胸元が、重力に引かれて垂れ下がっていた……まるで、乳房のように。
それなのに、思わず見てしまったセインの股の間。
「アナタ、女……え、でも男の……アナタ、セインじゃ、ない!?」
「うぅん、ボクだよ、セインだよ」
「だって、セインは普通の男の……!」
「生まれ変わったんだ」
「そんなこと……!?」
数日の間にセインの身には、一体何が起きたのか……一体、何でこんな事になったのか。
そんな事を考えさせる暇も与えず、セインは。
「!? んむぅっ!?」
メアリーの唇を奪い、挙句舌を絡ませてきた。
「ぷはっ、やめてっ! どうしちゃったの、セイン!」
慌ててセインを押しのけるメアリー。
その時触れたセインの胸は、明らかに柔らかく、女らしさを備えていた。
「さぁメアリー! 楽しもうよ!」
「イヤよっ! いやに決まって…… ?」
セインの提案には到底乗るわけがない、はずなのに。
「な、に……カラダ、熱いっ!」
「フフフッ……!」
「いやあっ! 何っ、何なのっ……あぁんっ!!」
堪え切れず自分を慰め始めるメアリー。
そんなメアリーにセインは、優しく肌を触れ合わせていく。
「さぁ、メアリー……一緒に、気持ち良く、なろ?」
「ひぅぅんっ!!」
胸元をはだけさせ、メアリーの手に添えるようにして、激しく指を動かすセイン。
そんな、二人の痴態を見守る、小さな……けれど、確かな人影。
『フフッ、さぁ二人とも、存分に愉しんで、愉しませて頂戴』
キオだ。
窓辺に腰掛けて、嬉しそうに絡み合う姿を観察していた。
「邪魔する者は、もういない……うぅん、みんな思い思いに、愉しんでる」
窓の外をちらりと見やるキオ。
静かな夜のはずが、そこかしこから嬌声が聞こえてくる。
「さぁさぁ宴を愉しんで、そして私達と共になりましょう」
この状況に高揚し、宙を舞って表現するキオ。
約束通り、セインは村へと帰ることは出来た……『土産』を持たされて。
キオを生み落した後、セインは、再錬成され、記憶を弄られ戻された。
セインの肉体は、あのポッドやカプセル、それにチューブの機能が植えつけられた。
つまり。
「さっ、メアリー……キミには当然、僕のを注入してあげるよ」
「いやぁああっ!!」
セインの『男』は、精を注入するインジェクターで。
「はぁっ、やっぱり挿入れるのも、挿入られるのもいいっ……気持ちいい!」
「あぁっ、セ、セインのが……! 抜いっ……てぇっ……!!」
セインの『女』は、集めた精を変化させる、コンバーター。
セインは、メアリーの元に来る前に、全ての目標を済ませてきていた。
それはつまり、村の男の子から精を貪り取り、そして集めた精を、村の女の子達に注いで回る事。
そして、更に。
「あぁっ、俺のっ、俺の身体がぁっ!!」
「いやあぁっ! なにこれぇっ!!」
数を増やすため例外なく母体を増やし、また余剰の精を吐き出させる器官を、生成した。
あとはその新たな性を受け入れさせるために、ほんのちょっとのスパイスを与えれば。
「ひぐぅっ、やっ、挿入ってくるぅっ!!」
「くあぁっ! キモチイイ、女の子の膣内、キモチイイよおっ!!」
勝手に目的を果たしてくれる。
「フフッ、フフフッ……アハハハハッ!」
繰り広げられる性の饗宴を曲に、キオはとても嬉しそうに舞い続けた。
――――そして。
セインが帰ってきた翌日、今度は村の少年少女達の殆どが、行方不明となった。
再び、そして今度は大規模な捜索が行われるも、やはり見つからなかった。
その後……その村、行方不明の彼ら、そしてセインやメアリーがどうなったかは、定かではないが。
その近くで、「星が帰っていった」という噂が、ささやかれた。
fin