公衆トイレ特有のアンモニア臭が鼻についた。
寝転がる横から覗きこめば、ますます別な生き物に思えてくる。
亀の頭と、昔の人はよく言ったものだ。
黒い茂みより生える茶褐色のものは、傘が開かぬまま円柱状に猛っていた。
悪趣味と言われても仕方がない。
かわいい顔して男は凶暴なペットを飼っているのだから。
垂れ下がる前髪を耳にかき揚げ、さらに顔を近づける。
排泄器官の先を舐めるのには抵抗がある。でも断れなかった。
なぜなら目の前に横たわる男は、ボクの身体なのだから。
どうしてこうなったのかわからない。
幼なじみのカオルと入れ替わってしまうなんて……。
☆ ☆ ☆
彼女の部屋で突然入れ替わったとき、
「面白そうだからオレたち、このまま生活してみようぜ」
とカオルから迷いもなく提案された。
声も見た目もボクなのに、好き勝手に振る舞う姿に戸惑わずにはいられなかった。
受け入れるしかないのはわかる。
だけどボクは不安で、お互い目立つ行動は控えようと申し出るので精一杯だった。
守ってくれるかは甚だ疑問。
なぜなら幼いとき、
「ヒカルとカオル、性別が逆ならピッタリ」
と誰かに言われたことがあったのを思い出したからだ。
木登りや駆けっこ好きなわんぱく少女だったカオル。
対してボクは、部屋でひとり本ばかり読んでいるおとなしい子だった。
カオルの部屋で一人きりになったとき、ボクは姿見を通して自分をみた。
童顔で身長はやや高く、腕を前で組むと強調されるほど胸は大きい。
丈の短い制服のスカートからのぞくきれいな太もも。
肉付きが良く、ふくらはぎから足首にかけてきゅっと締まっている。
丸みを帯びた体つきは、男子なら魅力に感じる容姿をしていた。
こんな幼なじみと入れ替わって、これから生活していかなくてはならない。
着替えや入浴など、みたくなくてもプライベートを知ってしまう。
あきらかに覗き行為じゃないか。
元に戻った時のことを考えてボクは、カオルの身体を大切に扱おうと決意。
その夜はおとなしくベッドへ潜り込んだ。
その翌日も試練は続いた。
カオルとして登校するだけでも緊張するのに、自ら女子の制服を着なくてはいけない。
しかも当然、下着まで。
ボクは変態ではなければ、女装趣味があるわけでもない。
幼なじみを辱めようなんてこれっぽっちも思っていないんだ。
姿見に写るカオルに弁明と謝罪を何度もしながら、身支度を整える。
なんとか着替え終わるも疲れ果て、もはや学校へ行く気力は残っていなかった。
それでもカオルとして登校し、何事もなかったような顔で授業を受けた。
その間ずっと、彼女に対する罪悪感は募るばかり。
幼なじみとはいえ、立ち入ってはならない一線を踏み越えてしまったのだから。
震えそうになる身体を両手で抱きしめ慰める。
やわらかくも温かい彼女のぬくもりの気持ちよさといったら……。
ボクは戸惑うばかりだった。
昼休みが訪れたときだった。
生きてきた中で体験したことのない激痛に突如襲われた。
果てしなく股間を蹴られ続けるほどの痛みに気が遠くなる。
指先のしびれと脂汗が止まらない。
吐き気とめまいで座ってもいられない。
気付かれないよう静かにしようと思うも、そんな余裕はなかった。
むしろ周りの女子が避けていく。
どこか静かなところで楽になりたい。
でもどこへ?
トイレに向かうほか、思い浮かばなかった。
たどり着いたものの、本当の苦しみはそこからはじまった。
冬でもないのに異常な悪寒に襲われ、氷のように足が冷たい。
痛みはおさまるどころか、どんどんひどくなる。
遠くで楽しそうにしゃべる生徒たちの声に耳をふさぐ。
ボクは苦しみながら汚い壁によりかかり、トイレと仲良くなっていた。
このまま……死ぬ、かな。
なにか悪いことでもした?
カオルと入れ替わった罰だというなら、いくらでもごめんなさいと謝るから。
誰でもいい、お願いだから助けて欲しかった。
「トイレにいるから余計気持ち悪くなるんだよ」
腹痛と吐き気から救ってくれたのは、白衣を纏った養護教諭だった。
女子特有の生理痛だと教えられて薬をもらったとき、おもわず泣いてしまった。
これほど死にそうな痛みに毎月、カオルが苦しんでいたなんて。
ちっとも知らなかった。
「乳製品を摂り過ぎると生理が重くなるんだよ。和らげてくれるから魚食べなさい。あと生理の二週間前だけ砂糖を断つのも効果あるから」
言われて思い出す。
肉好きでアイスとケーキとお菓子が主食、とカオルが言っていたのを。
下校途中、ボクに入れ替わっているカオルに生理がきた話をすると、
「女の子は甘いものでできているから仕方ないよ」
他人ごとのように笑われた。
「カオルのことなのに、他人ごとみたい」
「いまのオレはヒカルだからな」
「そうだけど……カオルになっているボクが大変な目にあってるんだよ、もう少しいたわってくれてもいいのに」
思わず愚痴がこぼれ出た。
はやく戻りたいと言いかけたとき、
「ヒカルはこれまでオレのこと、考えてたようにはみえなかったけど。そうだろ。なら、おあいこさ」
ボクの声でカオルが言った。
たしかにそのとおりだった。
幼なじみだから、他の女子より話しやすいだけ。
カオルが何を考え、悩んでいるかなんて気にしたことがなかった。
「……カオルはだいじょうぶなの?」
「男って楽でいいよ、サバサバしてて。女子はネチネチしてるからさ。それにヒカルって頭いいんだね、授業内容がすんなり入ってくるよ。不満をあげるなら、体力ないから体育の授業はちょっときついくらいか」
「そうなんだ……よかったね」
こんなにボクって笑うんだ、と思うくらいカオルは笑顔だった。
そにれくらべてボクは笑えない。
入れ替わった不安と生理痛の苦しみから、落ち着いた日常を送るなど不可能だった。
ナプキンや生理用ショーツをつけるたび気が滅入る。
めまいや立ちくらみはひどいし、やる気も起きず、なにも手に付かない。
机にうつ伏して学校が終わるのをひたすら待つだけの日々が続いた。
ほかにできたことといえば、「一日でも早く戻りますように」と祈るだけだった。
★ ★ ★
そんな苦しい生理がようやく終わり、落ち着いた頃。
ボクに入れ替わっているカオルが家にやって来た。
勉強する口実で様子を見に来たのだ。
入れ替わったのだから、自分の身体が気になるのは当たり前。
そのはずなんだけど、今日までカオルは一度も自分の家を訪ねてこなかった。
ボクでさえ、三日に一度くらいは様子を見に伺っているのに。
「ご両親は用事で、夜まで帰られないよ」
そう告げると、
「ちょうどいい、お邪魔するぜ」
軽い足取りで部屋に入る姿をみながら、ボクはおもわず笑ってしまった。
「カオルの家なんだから、お邪魔するって言い方は変だよ」
「そんなにおかしいか。いまのオレはヒカルなんだぞ」
「あ、そだね。いまのボクはカオルだし」
ボクになっているカオルを見ていると、鏡をのぞいている感覚が思い出される。
だけどボクの意志に反して動くから、いまだに軽い錯角をおぼえてしまう。
いまのボクはカオルなんだと呪文詠唱のごとく口の中で唱えていると、気がついた。
入れ替わって半月ぐらい経つのだけれど、顔つきがたくましく見える。
「体力ないってわかってから、鍛えてるんだ。跳んだり走ったり蹴ったり。だいたいヒカルは男のくせしてガッツリ食わないのがいけないんだよ。肉食いたいっておばさんに言ったら、驚いてた」
「カオルは肉好きだもんね」
「肉は元気の源だからな。筋肉もついてきた」
ほれ、とTシャツをまくって上半身を見せられた。
たるんでいたお腹まわりがスッキリし、かわりにいままでなかった筋肉が見て取れる。
これがボクの身体とは、驚きをとおりこして関心してしまう。
「ボクなんか太っちゃったみたい。体調管理には気をつけるようにしないと」
と言ったとき、ふいにぎゅっと抱きついてきた。
ずいぶん体温が高い。
部屋のクーラーはついているのに。
「ど、どうしたの」
「オレ、発情しちゃった」
「は、発情っ」
聞き間違いじゃなかった。
幼なじみで友達。
相手のことを信頼してるし、異性としてみてきたけれどそれ以上考えたことはなかった。
カオルはストレートに気持ちをぶつけてくる性格。
冗談ではないとすると、まさかカオルは、本気でボクを抱きたいってこと?
「いまのボクはボクじゃなくてカオルで、カオルはボクで」
「カオルの身体はオレのもの。もちろんヒカルの身体はヒカルのものなんだけど、入れ替わってるんだからしょうがないよな」
「しょうがないって……いやいや」
「最近オレ、ぜんぜん眠れなくて。考えたら鎮まらないんだ。わかるだろ」
と言われても、正直どうしていいのかわからなかった。
「それって自分で自分を慰めるってことなの」
「入れ替わったオレたち以外で、こんなこと頼める奴が他にいるか」
「……たぶんいない。でも」
「ひょっとしたら元に戻れるかもしれない」
「本当?」
「思いつくことを試すのは悪くないだろ」
ほんとうにどうして入れ替わったのだろう。
雷に打たれたのでもなければ、頭をガツンとぶつけあったわけでもない。
視界がぐにゃりと歪んだと思った瞬間、気がついたら入れ替わっていたのだ。
こんな話、ボクら以外で誰が信じてくれるだろうか。
同じ境遇で困っている者同士助けあうしかない、と決意するのに時間はかからなかった。
「ボクはどうすればいい?」
「いつもしてるみたいにやってみて」
「いつも?」
「だから、下を」
じれったくなったのか。
ボクの手をつかむや股間へと押し当てた。
布越しに固く膨張しているのがはっきりわかる。
「この身体、元はヒカルのだから、すごい興奮してるのわかるだろ。早くしてみせろよ、いつもしてるみたいに」
「トイレに行きたいなら、一階に」
「そうじゃなくて。まさかヒカル、したことがないっていうんじゃないよな」
ようやく彼女が何をいいたいのかわかったとき、ボクは小さく頷くので精一杯だった。
「ヒカルだからしょうがない……か」
諦めにも似たため息をつかれた。
その姿に、見た目はボクでも中身はカオルなんだと改めて感じさせられた。
「ごめん。どうやっていいのかわからなくて」
「教えるから、いうとおりにやってくれ」
そう言うやハーフパンツを下ろし、トランクスから出してきた。
「な、なんでいきなり脱ぐんだよっ」
「脱がないと、服が汚れるだろ」
ボクは咄嗟に顔を背けた。
自分のストリップショーをみる趣味はさすがにない。
ナルシストじゃないから。
だけどヒカルにはみられたんだよな。
そう思いつつ直視するのは恥ずかしかった。
寝転がった横にぺたんとお尻をつけて座る。
フローリングの床がひんやりして気持ちよかった。
それにしても、すごく大きい。
そういえば自分のをちゃんと見たことはなかった。
「アイスを舐めるみたいにしてみな」
「な、舐めるって……これを」
「もともと自分の持ち物だろ」
「……わかったよ」
ボクはあきらめの息を吐いた。
棒の部分に顔を近付け、そうっと舌を伸ばす。
たまにピクッと動くので舐めにくい。
「手で押さえて。先っぽも舐めて」
言われるまま触ってみる。やわらかくて熱い。
たしかにボクの身体だけど、いまは他人の肉体にしか思えない。
カオルの頼みを聞くだけなんだから。
そう自分に言い聞かせて、舌先でちょろっと舐めてみる。
寒天みたいにつるっとしていた。やがて透明な液体がにじんできた。
思わずちゅうっと吸ってみる。
塩っぱくてなぜか美味しくおもえた。
「段差のあるところが気持ちいいらしい」
言われるまま舐めると、小さな声を出すのが聞こえた。
今度は「根元から舐めて」と言われる。
毛がもじゃもじゃしていて舐めるどころじゃなかった。
適当に上下に舌を這わす。
「咥えてみて」
息の上がるかすれた声がした。
一瞬戸惑う。自分の身体とはいえ、これ以上していいのだろうか。
「歯を当てちゃダメだから」
ボクの声をつかって、迷うボクの背中をカオリが後押しした。
唇で歯を覆うみたいにしながら咥えた。
このあとはどうしたらいいのだろう。
舌を小さく動かしながら考えていると、口の中でぴくっと動いた。
これがいいのかもしれない、と思って続ける。
「そのまま、口を上下に滑らして」
ほおばるように動かせば、
「吸われて気持ちいい」
と息を漏らすのがきこえた。
咥えてはじめて気付いた。
完全な円柱ではなく、少し平べったく楕円状の筒みたいな形をしているんだ。
「もっと激しくしてみて」
頭を撫でられるも苦しい。
上下に動けば舌の奥にぐいぐい押されて吐きそうになる。
頭がはげしく揺さぶられ、脳がしびれてきた。
視界がぼやけ、おなじ動作を繰り返すことしか考えられない。
咥えていたものが口の中で大きくなっていく。
さらに息苦しい。
前触れもなく、熱いものが喉の奥に弾け飛んだ。
苦しくて「んっ」と声が出る。
驚いて離れようとするも、頭をがっちり押さえられて逃げ出せなかった。
ビクンビクンと玉袋が痙攣するたびにぶりゅ、ぶりゅるると出た。
おもわず飲み込み、涙が込み上がる。
「これが、男のイクって感覚なんだ」
満足気な声が聞こえた。
ボクはそれどころではなかった。
咳き込んでも吐き出せず、口の中で出された粘液はなんだかしょっぱくて苦い。
そればかりか喉の奥がイガイガする。
変な匂いは取れないし、頭のなかがぐるぐるする。
おまけに顎がだるい。
仰向けに寝転がり、天井をみた。
身体は火照り、手先がしびれている。
力が入らない。
しばらく動けそうになかった。
「よくできた、がんばったね」
カオルに褒められても喜べなかった。
頭がぼんやりしている。
伸びてきた手がボクが着ているブルーのシャツチュニックのボタンを外していく。
汗をかいたから着替えさせてくれるのだろう。
五分丈のレギンスまで脱がされた。
と気付いたときには、ボクの首筋から胸元へ、ゆっくり唇を這わせていた。
「な、なにしてるの」
「お返しさ」
指は、触れるか触れないかくらい、そっと全身を撫でている。
ふんわりとした刺激が、再び身体を熱くしていた。
「やっぱり濡れてるんだ」
言われて気付いたとき、ボクは下着しか身につけていなかった。
「かわいいの履いてるじゃんよ」
おどけたように言いながら、ピンクのレースショーツを脱がされた。
「カオリちゃんの趣味でしょ。こんなのばっかり引き出しに入れて」
緊張を隠すため、彼女に軽口を叩いた。
もっと言いたいことはある。
だけど顎がだるくてしゃべるのがつらかった。
それに彼女本人の身体とはいえ、いまはボクの身体。
誰であっても裸を見られるのは恥ずかしい。
身をよじって隠そうとするも、
「そうなんだけど、いまのオレがヒカルなんだ。ボクっ娘のカオルちゃん」
上から肩を押さえられて動きを封じられた。
跳ね返せない。
これが男の力……なのか。
つぎにブラジャーをあっさり外されると、
「白くって大きい。さすがオレのFカップはいい形してる」
両手で鷲掴みしてきた。
おもわず「うっ」と声が漏れでてしまう。
やめてと懇願しても「じっとしてな」と言うばかりか、どんどんエスカレートしていく。
払いのけようと手を伸ばすも、抵抗する力が入らなかった。
押し上げるように撫でられていく。
つぎに胸の先端を、手のひらでゆっくり押し回してきた。
「んんっ……あ、あぁ、あぁ……」
もうダメ。
我慢してきたのに声を出さずにいられないくらい感じる。
カオルの操るボクの手で触られると、身震いするほど気持ちがよかった。
まるで、もう一人の自分に弄ばれてるみたい。
そのあと揉んでいた手がボクの股に触れ、
「すごい。ここまで濡れたことはなかったのに」
指で突起を探り当てた。
瞬間、びくんとボクの腰がはね上がった。
股間が熱い。
触られている部分がムズムズしてなんだか大きくなっている。
と感じたとき、突起をつままれ剥き上げられた。
「ひいっ」
強烈だった。
指が突起に擦れるたびに腰がはね、胸が震え、足がピーンと突っ張る。
恥ずかしさのあまりボクは意識が飛びかける。
「や、やめてっ」
はげしく首を振るボクを無視して、今度は割れ目に指を入れ、ゆっくりかき回してきた。
最初はそっと。
だんだん激しく。
音まで聞こえ、表情を隠そうと手を顔にやると、
「見せろよ」
と耳元に囁かれた。
自分の声を聞くと、心の奥にある本音みたいに思えてくる。
「んやぁ……はずかしい……やん」
思わず出た恥じらう可愛い声。
こんな声、聞かれたことないし、聞いたこともないのに。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
でも止まらない。
止まらないよ、と頭の中はパニックだった。
今度は指を三本にして、中を圧迫してくる。
胸とアソコがじんじんしているところへ、指を動かされた。
霞がかったみたいにぼんやりしてなにも考えられなくなる。
目の間でにんまりする微笑がイタズラっ子みたい。
悔しく思いながらも感じ、どうしても声が出る。
「だめ……そこ、だめぇ」
拳を握り締め、目を瞑って押し寄せる快感と戦っていると、すっと指を抜かれた。
あれ、と思ったボク目の前に、
「見て。こんなになってる」
トロトロに液体が絡みついた指を顔の前に見せてきた。
「や、やめてっ」
恥ずかしくて死にそうだった。
なのにボクの右手をつかみ、股間へと導びかれる。
ボクの指が触れるとピチャリ、音がたつほどたっぷり濡れていた。
「下から上へ、こうやって動かしてみて」
されるがまま初めて突起に触れ、興味深々で動かすと、
「……あっ」
全身が反応する。
鼓動が高鳴り、もっともっと、という気持ちが強くなっていく。
「自分で指入れて、奥の上のざらざらしたとこ、ぎゅっと押すみたいに指の腹で触って」
かすかな羞恥心と、それを越えたい気持ちの中、言われるままに従った。
にゅるっと入れると中はとっても暖かかった。
ゆっくり動かすと思わず目をつむってしまう。
「ぅあ……だめっ」
指で突いたりこすったりするほど、ぐちょぐちょに溢れていく。
次第に自分から股を広げ、空いてる左手の中指と人差し指で敏感な突起をいじった。
ゆるくはやく。
人差し指と薬指で広げたまま、中指の腹でグニュグニュと転がす。
入れてる右手の指の動きにあわせれば、
「っあ、やっ……んっ」
さらに声が溢れて止まらない。
「すごいエッチ。もっと気持ちよくなって」
と耳元で囁かれる。
一瞬、ボクは我に返った。
いわれるまま従ったとはいえ、恥ずかしい行為を全部見られている。
それが嫌で動きを止めて顔をそむけた。
なのにボクの意志に反してこの身体はどんどん熱くなり、指の動きも止まらなかった。
いつのまにか涙が出て、
「止まんないっ、もぅ、やだぁ……出ちゃうよう」
と叫んでいた。
「出していいよ。イきな。イっちゃえ」
囁く言葉に責めたてられ、
「ああんっ……」
ボクは泣きながら頭の中が真っ白になっていった。
意識が朦朧とするなか、ボクが潮を噴いたことを教えられた。
床が濡れ、お尻もビチャビチャ、指までびっしょりだ。
「気持ちいいだろ。毎日オナってたからね。ヒカルの経験が乏しくても、その身体は感じやすいんだ」
だから拒んでも指の動きが止まらなかったのか。
まだ動けないボクは、頭をぐいっと引き寄せられるや口を吸われた。
深く、舌を絡まれて。
はじめてだったのに……。
相手の身体はボクだから、自分に奪われたって……なるのかな。
はっきりしない頭で考えながら、互いの呼吸と唾液が混ざり合う。
「ずっとヒカルとしたかったんだ」
「……えっ」
「もう一回、いただきっ」
また唇を奪われた。
おまけに乳首を触られ、指に挟まれすり合わすようくりくりと動かされる。
引っ張られると軽い痛みにむず痒さをおぼえ、疼きが止まらない。
乳首を吸い上げられると、ボクは甘い悲鳴をあげてしまった。
舐めしゃぶられながら、反対側の乳首を摘んでは押し潰される。
先端は痛いほどジンジンと疼いている。
軽く爪先で引っかくように先端を擦られた途端、思わずのけぞってしまった。
「腰振っちゃって、敏感な身体だろ。まだまだこんなもんじゃない」
「や、あ……んっ、ふぅ……もぉ……ゃ…」
身体をいじめる刺激から逃げなきゃ。
ボクは力の入らない手足を何とか動かし身をよじろうとした。
うつ伏せになって隠そうとするボクの抵抗を、カオルは邪魔しなかった。
ただし、胸をいじる指の動きは止めてくれなかった。
軽い刺激でさえ過剰に反応してしまう胸の先端を、やわらかくこねられる。
声を抑えるなんてできなかった。
ジンジンとした感覚に流されれば、お腹の奥から再び蜜が溢れるのがわかる。
包む手でもまれる胸と、指でコリコリとこね回される乳首の刺激に背中が反ってしまう。
ボクは震える吐息をこぼしながら、切なげに腰を振っていた。
「あ、も……やめ……んんっ、おねがい……」
カオルの操る指からは逃げられないんだ。
気力が萎えた瞬間、脱力したボクの身体をごろりと転がし、仰向けに戻されてしまった。
ぼやけた視界の中、見下ろすボクがいる。
もちろん中身はカオルなのはわかっていた。
だけど襲ってくる快感で頭がいっぱいになり、夢か現実なのかわからなくなる。
覆いかぶさるもう一人のボクは微笑んでいた。
「いいんだろ、こんなに固くして」
つまみこねる指の動きにボクは、
「あふっ」
と甘い声をあげてしまう。
「ご褒美に気持ちいいことをしてやるよ」
ボクの両脚を大きく左右に開くや、
「オレの自制心もヤバそうだけど」
ボクの濡れた股に熱いものが、ちょうど股間の縦割れの部分にぴったり押し当てられた。
まさかボク……ボクに襲われちゃう?
怯える間もなく、熱くひくついて猛る棒が前後に動きはじめた。
あまりに濡れ過ぎているせいか、ボクの上をスムーズに行ったり来たり。
にちゃにちゃとすり合わすたび、
「ああああっ」
ボクの口からは勝手に声が漏れ、胸も揺れた。
「どいてっ、やだっ、だ、だめっ」
「疼きまくって腰振る姿をみせつけられたら、持ち主のオレとしてはほっとけねぇーよっ」
ぬりゅん、ぬりゅん、と腰を前後に擦られるたび、突起に当たって痺れが走る。
性感が再び高まり、目線が定まらない。
部屋中にやらしい音が響き渡り、ボクは羞恥心を忘れるくらい乱れていった。
「ようやく叶うんだ、ようやく」
「だめっ、あっ、すご……やめてっ」
懇願するも口を吸われ、舌を差し込まれた。
しかも尖った乳首を捻り上げ、濡れそぼった割れ目めがけてずぶりと突きさしてきた。
「んーっ」
予期せぬ展開に、痛みが走った。
さらにずぶずぶと進んで、ボクの中を埋め尽くそうとしてくる。
すごく痛くて腰を引くも、少しずつ奥へ来るのをやめてくれなかった。
「これだけ濡れてるんだからすんなり入るはず」
と言いいつつ腰を突き出された瞬間、
「うああああっ」
ボクは大きなうめき声をあげてしまった。
「さすが初めて。こんな狭いんだ。でもこれが、男にしか味わえない高揚感か」
熱い硬い棒が動き出す。
段差の部分や感触、硬さを強く感じる。
その刺激がじわじわと増していく。
「気持ちいいだろ、ボクっ娘のカオルちゃん」
「うぅ……だめえ、ヒカル……抜いてぇ」
「いーや。だってカオルちゃんの中って想像以上に熱くて、すげー気持ちいいんだもん」
「動かないで……あっ、あんっ」
両手首を掴まれるや引っ張られ、熱した杭を打ち込まれる感覚が全身を貫いた。
内側から押し広げながら脈打っている。
息ができない。
ボクは男で、はじめてなのに、女の子としてセックスしちゃっている。
しかも相手はボクの身体。
えぐられ擦られ、突かれるたびに脳天まで響いて、なにも考えられない。
気づくと両脚を開いたまま腰を浮かされた格好で、はげしく突かれていた。
「うううっ、変ひなるほお……とまってくだああひいっ、あああっ、あたるぅ、ああっ」
「奥でこねまわしてるのわかるんだろ。素直に気持ちいいって言ってみな」
「き、気持ちいい……」
より腰つきが激しくなった。
「男のくせに、女のオレに犯されて気持ちがいいんだ。やっと、大好きなヒカルと一つになれて、最高だぜ」
「だいしゅきなぁ……ボクぅ?」
「気付いてなかったんだ、やっぱり。ずっとヒカルが好きだったよ。入れ替わったとき、初恋を成就させるために神様が与えてくれたチャンスって思ったんだ」
唇を舌でなぞられる感触にボクはしびれた。
進入を受け入れ、前歯の裏の根本をくすぐられる。
いまのボクはカオルなんだ。
カオルはボクと結ばれるのを望んでいるのだから、身体が拒むわけがない。
気持ちいいと口走っては喘ぎ、自分から腰を振って軽く達した。
甘いしびれが、また全身を覆いはじめる。
「あ、終わって……ひいっ」
「そんなに気持ちがいいんだ、女のオレに犯されて。あははっ、とろけた顔しちゃって男のくせに。こうなったら憐れなもんだ」
グチュグチュとみだらな音とボクの喘ぎ声が部屋に響きわたる。
所有物だからと好き勝手に出し入れし、敏感に尖った場所をくにくにっと摘んでくる。
いままでにない高ぶりに追い立てられボクは、なりふり構わず腰をすり寄せてしまう。
「ねっとり締めあげてくる。たまんないっ。もうダメ、たっぷり出してやる。奥で受け止めなっ」
「な、中はダメ、怖い、だめっ」
「妊娠するかもしれないな。生理後は確率高いからできるかも。でもダメ。男なのに妊娠する、ボクっ娘のカオルちゃん」
「いやっ、怖い」
「たっぷり出すから受け止めなっ」
「あっああああああ」
そのあとすぐに果てたようで、ボクの上にぐったり崩れてきた。
お腹の奥で脈打つ熱い感触とぬれる感覚にとろけそうだった。
自分に自分が犯された。
意識が飛びかけるも、なんとかしなければと離れようと試みる。
「女の顔してるよ、ボクっ娘のカオルちゃん」
目の前には気持ちよさそうなボク、ヒカルの顔があった。
視線があった瞬間、唇を奪われ、舌が絡みあう。
容赦なく襲い来る快感にボクの全てが支配された。
☆ ☆ ☆
幸い、ゴムをつけてくれていたおかげで、翌月には生理が来た。
最初にイかされてボクがぼんやりしていたときに、こっそりつけたらしい。
だったらはじめから教えてくれたらいいのに。
出す出すって脅されて、どれだけ怖かったことか。
カオルは悪びれた様子もなく、
「中出しすれば戻るか試したかったんだ。けど戻って妊娠してたらオレが嫌だから」
ボクの顔と声で謝ったけど、反省の色はまるでなかった。
この二週間、ボクは養護教諭の忠告を実践してきた。
乳製品と甘いモノを減らし、ゴマやくるみ、黒豆などの野菜や魚を摂るよう心がけた。
そのかいあってか、嘘のように痛みは改善。
……されたものの、血みどろになるのは変わらなかった。
というか、いつになったら戻れるのだろう。
「やっぱり中出ししかないっ」
「ボクの身体で、恥ずかしいこといわないでよ」
言い返しながら、お腹の奥が熱く濡れるのに気がついた。
FIN
(イメージが固定されるから賛否あるでしょうが)