大淫鬼・太刀薔薇に捕らえられ、淫獄界へと連れ去られた退魔師・九条衛は今、男としての生を終えようとしていた。
「ククク……退魔刀・滅鬼丸がなければ、退魔師随一の使い手として知られたお前も型なしだな。何とも呆気ないものよ、拍子抜けするわい」
軽口を叩き、太刀薔薇は侮蔑の笑みを浮かべる。
「ほざけ! 卑怯な手を使わねば勝てぬ小物風情が! 大淫鬼が聞いて呆れるぜ!」
よほど悔しいのだろう。歯噛みをしながら、女かと見紛うくらいの美貌を歪ませて、衛がキッと相手を睨みつける。
「策士、と言ってもらいたいな。要は最終的に勝てばいいのだよ。負けたお前に、ましてや、そんな格好では言葉に説得力がないぞ?」
太刀薔薇の言うとおりだった。裸に剥かれ、四肢を触手に拘束された彼の姿では、威勢のいい啖呵も負け犬の遠吠えに等しい。
「さて……と。そろそろ本題の余興に入ろうか。俺も男を犯す趣味はないのでな。本来であれば男は皆殺しだ。とはいえ俺と対等に張り合える膂力・胆力も持ち合わせている奴などそうそういない。おまけに、その美貌を無駄に捨ててしまうのは、いささか惜しくもある。そこで……」
意地の悪い笑みを浮かべた太刀薔薇が、小気味よい音を指で鳴らす。
すると左右の足元から女陰を思わせる巨大な肉塊が迫り上がり、衛の両足を根元近くまで飲み込んだ。
次いで、背後上部から同じ肉塊が彼の頭上に迫る。
「お前の体を女のソレに変えてやろう。俺の趣味にも合うし、なにより屈辱に打ち震えるお前を見るのは、これまでの溜飲を下げるのにうってつけだ。難点を言えば、悔しさに歪むお前の顔が見られないことと、悲鳴が聞けないことくらいか」
それまで下卑た笑いをその顔に貼りつけていた太刀薔薇が、真顔になって上げた指を振りおろし、宣告を下す。
「やれ……」
同時に、衛の背後で待機していた肉塊が蠢いた。
「くそっ! 止め……」
彼の言葉は最後を待たず、肉塊の中に飲み込まれてしまう。
時を置かず、それぞれの肉塊から大小さまざまな触手が粘液を伴いながら溢れ出した。大きいものは衛の胸や股間にあてがわれ、小さいものは体表を舐めるように蠢いて。
「こいつの粘液には男を女へ変える力がある。加えて、媚毒の効果もな。“淫獄”の名は伊達ではないぞ。その力、身を以って存分に知るがいい」
太刀薔薇はそう言い捨てると数歩離れ、自らが触手で創りだした玉座にドサリと腰を下ろし、興味深げに衛が肉塊に嬲られるさまを見物し始めた。
「ウブッ……ゴボッ、ゲホッ……オゲ……」
声にならない衛の呻きと肉塊が蠢く濡れた音だけが、四方を肉に囲まれた部屋へこだまする。
頭から丸呑みにされ、まるで彼自身が男性器になって女の陰部と交わっているような錯覚を見ている者に感じさせた。
それから、ものの五分もしないうちに彼は全身をガクガクと痙攣させた。
「早いな……もう、イッたのか。この分なら全ての精液を吐き切って、女に変わるのも時間の問題だろう」
太刀薔薇は静かに呟く。衛の股間部分にあてがわれた触手から、大量の白濁液が溢れていた。華奢ながらも、しなやかな筋肉が見て取れる引き締まった体。それが心なしか、いくぶん滑らかになった気がする。
いや、気のせいではない。彼の股間から白濁液が噴き出すたびに、滑らかな女の肢体へと確実な変化を遂げる。
退魔師の胸に吸いついていた触手の下で、それはハッキリと厚みを増し、柔らかそうに弾み始めている。
好色そうなスケベ面を隠そうともせず、大淫鬼は衛の変化を注視する。
一方で、衛は文字どおり気が狂いそうなほどの快楽に塗れていた。激淫……とでも言おうか。皮膚はおろか、粘液に覆われた部分がヒリヒリと痛いほど熱く、刺激に対して過剰なくらい敏感になっている。感覚の全てが快楽へ変換されて彼を悩ませた。
「こんな……もの……耐え、られる……わけ……。グアアアッ! イグぅっ……!」
放精する度に皮膚感度が上がって、衛は粘液が体に染みこんでいくような錯覚に囚われる。そして、それは実際に起きていた事実。吐精した分を補うべく、体が粘液を欲した結果である。
しかも男とは比べ物にならない感度を持つ女の皮膚なのだ。肉塊の内壁にビッシリと敷き詰められた粒状の柔らかい肉突起が、優しく肌を擦る様子まで手に取るように分かる。彼は上半身、特に胸周りの変化を僅かながら自覚していた。
吸いつかれ、撫でられるだけだった感触が次第にその範囲を広げ、揉まれるという立体的な感覚へと変わっていく様子を。
(くそっ! これが淫獄界のなせる業なのか。これほど暴力的なものだとは……。侮っていた。正直、俺の認識が甘かったようだ。なんとか抜けださなければ! このままでは、俺の……男としての人生が潰えてしまう)
焦燥に駆られるものの、衛に逃れる手立てはない。彼を拘束する触手は細く見えるくせに、筋繊維のような強さとしなやかさを兼ね備えているらしく、どんなに暴れようと全然ビクともしない。
いたずらに時が去り、拘束が不意に緩む。それまでに数えきれぬ絶頂を迎え、疲れ果てた衛は息も途切れがちだった。
「ほほう……これはこれは、みごとな変貌ぶりだ。以前のお前を知る者とて、お前とは気づくまいな」
感心しきりと太刀薔薇が頷く。吐き出された肉塊の中から現れたのは、はたして艶めいた美女だった。ごく微かに衛の面影を漂わせてはいるが、微に入り細を穿つよう、よく見なければそれとは分からない。
眉根を寄せ、快楽でトロリと垂れ下がった目尻やだらしなく開かれた口元からは、女特有の匂い立つような色気が漂い、以前の凛々しさは片鱗すら窺えなかった。
上背は殆ど変わりない。しかし、痩身でありながらもよく絞り込まれた頑健な肉体を土台とした新しい体は、引き締まった上にも女らしく柔らかい丸みを帯び、大きく張り出した胸と尻のおかげもあって、男好きする淫らなものへと生まれ変わっている。
「なんとまあ、俺好みのいい女になったものだ。確か、九条衛……と名乗っていたな。お前を殺さずにおいてよかったわい。我が淫技をタップリ味わわせて仕込み、俺の虜にしてやろうぞ」
言うやいなや立ち上がり、玉座から太刀薔薇はまだ触手に四肢を縛られたままの衛へ近づくと、右手で彼の左乳房を鷲掴みにする。
「きゃうっ!」
彼の口から迸ったのは、大淫鬼を罵った凄みのある太い声ではなく、愛くるしい女の甲高い声だった。
「ククク……たまらんだろう? 媚毒漬けになった体は。こんな他愛のない刺激で、感じまくるんだからな。どれ……」
太刀薔薇が最前から乳輪ごと勃ち上がっている乳首をピンと弾く。
「あんっ!」
鷲掴みにされたときとは違う、艶めいた声が思わず衛の口を吐いてでた。
(なん、て声……。このまま何もできず、こんなヤツの慰みものにされちまうのか? 俺は……)
衛は太刀薔薇に犯される自分を想像してしまい、背筋がゾッと寒くなった。でも、どういうわけか、体の芯がジワリと熱くなる感覚も意識する。
慌てて自分の描いた想像を振り払おうと、彼は頭を振る。だが、どうしてもイメージした光景が頭から離れない。それどころか、より強く鮮明に妄想し始めている自分がいた。
妄想すればするほど、男の象徴(しるし)を失った股間が切なく疼く。微毒の作用もそれを後押ししている。衛は気づけなかったが、正面に立つ太刀薔薇からは、男を求めてしとどに濡れる秘芯が丸見えだった。
「クハハハハ。他愛もないぞ、退魔師殿。この俺が淫技を披露するまでもなく、股間をビショビショに濡らしおって。よほどの好き者と見えるな。ならばこれを見よ!」
言うなり、太刀薔薇が丹田に力を込める。すると、見る間に股間の逸物が屹立し、ヘソまで反り返る、太く長大な肉柱へとたちまち変化した。
(嘘だろ、おい……)
あまりのデカさに衛は二の句が継げない。ポカンと口を開け、呆けたように大淫鬼のペニスを見つめていた。
(こ、こんなモノを女の中へ……だと? 無理だ、入るわけがない)
巨根を超えた代物に圧倒され、しばらくの間、彼はソレから目を離せなくなる。
浮き出た血管を蛇のように表面へ這わせて、全体が固く張り詰め、ピクピクと小刻みに脈動している。カリ首も大きく張り出し、亀頭の威勢をよく物語っていた。
その雄姿を目の当たりにした衛は妄想に拍車がかかり、知らず知らずのうちに息を荒くさせる。
「どうした。いつまで見惚れているつもりだ、九条よ。それとも、挿れる前から我が逸物を気に入ったか?」
太刀薔薇に揶揄され、ハッと我に返るも、衛の目が大淫鬼の股間から逸らされることはない。
「うっ、うるさい! 黙れ! そんなわけあるかっ! そんなわけ……」
彼の声にだんだん勢いがなくなっていく。
コクッ……。ごく小さく、でも、ハッキリと衛の喉が鳴る。太刀薔薇は、その音を聞き逃すはずがなかった。
淫獄の王は逸物に右手を添え、ゆっくり前に倒して亀頭を正面へ向ける。次いで一歩、退魔師に近づいた。ほぼ密着状態と言える二人の距離において、衛にできた豊かな双乳の間でペニスの胴が横たわり、目と鼻の先に迫る亀頭の様相は、まさしくトリケラトプスさながらな凶悪さを持っている。
噎せるようなオスの匂いが衛の鼻を突く。亀頭の先端に開いた鈴口からは、先走りの粘液が噴き出し、彼の口へ今にも零れ落ちようと大きく珠を作っていた。
太刀薔薇の淫臭が衛の頭をクラクラさせる。鼻で息を吸うことも躊躇うほどに強烈な匂い。思わず口で息を吸ったところへ、粘液の雫が彼の舌に滴り落ちた。
だが、ヌルヌルと粘ついた感触と共に、塩気を舌に感じても衛は嫌悪を覚えない。それどころか、甘露を含んだようにウットリと目を細め、その源泉へと舌を伸ばす。脳髄が灼けるくらいに激しい興奮を覚え、腹の奥がカアッと熱くなる。生まれたばかりの子宮は、早くも牡器官を求めて猛り狂っていた。
ペタリと逸物の裏筋に舌が触れた途端、太刀薔薇がスッと身を引いて嘲る。
「おうおう、だらしなく緩み切って間抜けな面してやがる。お前、本当に退魔師で男だったのか? とてもそうは思えねえな」
その言葉は、子宮に支配されかかっていた衛の意識を僅かに引き戻す。
「……ク……ショ……。チクショウゥッ!」
自分が何をしようとしていたか。それを理解して、悔し涙がポロポロと零れる。彼が持つ男としての、退魔師としてのプライドがズタズタに引き裂かれた瞬間だった。
「それだよ、それ。俺はその顔が見たかったのさ、お前のな」
思い描いていた最良のシチュエーションを目の当たりにして、太刀薔薇の興奮は最高潮に達した。ビキリと音を立て、彼の逸物が一回り大きくなる。
「さて、と。このままお前を犯してやってもいいが、余興ついでに一つ、俺の淫技を少しばかり披露してやろうか」
言って淫獄の王は、項垂れている衛の顎をグイッと上げ、彼の目を覗き込む。
「淫技……『視犯』!」
大淫鬼の目に妖しげな光が灯る。
「あ……」
そう言ったきり、衛の意識は太刀薔薇の淫技に囚われてしまった。術者と同じ怪しげな光が彼の目にしばらく灯って、静かに消える。
「これでよし。お前はもう、俺の掌で踊ることしかできん」
けれど、これといった異変が感じられず、衛には実感が乏しい。太刀薔薇は呆気にとられる退魔師を尻目に背を向け、玉座との中間位置で向き直り、ドカリと胡座をかく。
以降、彼は腕組みをしてジッと衛を見据えたまま、微動だにしなくなった。
(何だ? 何をする気だ?)
衛が訝しんだ直後にソレは起こる。フワリと誰かに持ち上げられた。いや、その表現は正確ではない。彼は今、四肢を縛られていて、身動きできる状態とはほど遠い。
事実、衛も太刀薔薇も一寸たりと動いた様子などなかった。
にもかかわらず、クッキリとその感覚だけを彼に伝えてくる。衛が戸惑う間も事態は更なる進行を見せていった。
浮いた体が沈み込み、棒状の物が股間を割り開いて侵入してくる感覚を認めるに至り、彼は驚愕する。歪な形をしたソレは、紛うことなきペニス。そして、この場でそんな剛直を持つ者は一人しかいない。
「太刀薔薇!」
思わず叫ぶ衛に向かって、淫獄の王はニイッと歯を剥き出す。
「面白いだろう? これが俺の淫技『視犯』だ。視ることで女の羞恥を煽り、辱める一方的な『視姦』とは違う。『視犯』は相手を視ることで自分の思い描いた妄想を送り、二人でその感覚を共有して愉しめるんだよ。とはいえ飽くまでも想像だから、実際の感覚と随分隔たりはあるがな。ま、利点としちゃ、純潔を保ったまま中イキの快楽を仕込んで、淫売毒婦に仕立て上げる……なんて芸当が可能なくらいか」
言いながら、太刀薔薇はクイクイッと腰を小さく突き上げる妄想を思い描く。
「うきゅっ!」
奇妙な声を上げて衛は呻いた。ただでさえ、体内を押し広げられる違和感を覚えているのに、硬い肉柱のキスを何度も強いられる感覚で、未開の子宮口が声なき悲鳴を彼の脳へ響かせる。
(ぐえっ……気持ち悪い。吐き気がする。小突かれてる腹の奥が痛い。何で俺がこんな目に……)
大淫鬼との戦いに負けたからだ、と理性では分かっていても、理不尽だと感情が訴えていた。しかし、そんな気持ちも長くは保たなかった。
媚毒に侵された体は、ものの数十秒でその感覚を受け入れ、すべてを快楽へ変換する。
「は、あぁ……うぅ……」
衛の体から余分な力が抜け、急速に熟れていく。
(な……え? か、体……が……今まで以、上に……熱……い……)
既にほとんど息苦しさは感じない。圧迫感からくる吐きそうな気持ち悪さも、最初ほどではない。奥を小突かれる痛みも、気づけば軽い衝撃を感じる程度に和らいでいる。
感覚の生々しさだけで言えば、とても妄想とは思えなかった。
(何か、変な感じ……)
一突きごとに体が痺れ、膣内がむず痒くなる。ソコを笠の張ったペニスでズリズリ掻き擦られるのは、背筋をゾクゾクと粟立たせ、得体の知れない何かが込み上げてくる感覚を衛にもたらした。
しかし、ソレがちっとも不快じゃない。むしろ、ソレを心の片隅で心地よく感じて始めている自分がいる。
(もっと……)
得体の知れない何か。女が享受する快楽を知りようもない彼は、その正体が知りたくて太刀薔薇が与える快感を更に望んだ。
(もう少しで……)
その何かを掴めそうなところまできた衛は、意識をソコへ集中させる。頭がボンヤリと霞み、だんだん夢見がちな気分になってきた頃。全身が心地よく痺れ、震えるほど体中を満たす感覚が快感なのだと本能で知る。
(あ……ダメ、だ。これ……。ダメに……なる……)
正体が分かると同時に、ソレが男の自分にとって危険なものだと衛は気づいたものの、もはや手遅れ。彼は女へ変じた体が受ける性感の虜になっていた。
(倒すべき敵なのに……。ああっ、でも……気持ちイイ!)
小さな動きとはいえ、太刀薔薇の目は衛が腰をくねらせる様子を捉えていた。彼が女体の快感にのめり込んでいるのは明らかだ。
一方、太刀薔薇もまた、快感に酔い痴れていた。
(おお! コイツはなんと稀有な名器。ククク、まさか男が持っているとは……。思いもよらない飛んだ掘り出し物よな。フフフ、堪らんわい)
だがそこは幾千の経験を積んだ猛者である。そう簡単に溺れたりはしない。
ただ、退魔師として衛を屈服させ、かつ、稀代の名器を持つ女体を己がモノとして完膚なきまでに篭絡する。その二点において太刀薔薇は心を震わせた。彼の征服欲を満たすのに十分な条件を兼ね備えている相手だ。こんなにも心躍ることはない。
(ならば、まず視犯で一度イかせるべきか? けれど、これほどの名器だ。一刻も早く味わってみたい。ふぅむ、久々に迷うな……)
太刀薔薇がやや思案するも、早々に結論を出す。
(絶頂ギリギリまで追い詰めてから、実際に俺の逸物を馳走してやろう)
決断を降したらあとは早かった。一気に妄想を爆発させ、衛の精神を侵していく。
「ふっ、あっ……! あっ、あっ、ああっ!」
我慢していた嬌声が、ついに衛の口を突いて出た。それは更にリズミカルなものから切羽詰まったものへと次第に変わっていく。
(あ、ダメ……もう……)
彼が絶頂の予兆を感じた瞬間。抽送される感覚が不意に途切れた。
(え? 何で? あと少しなのに……)
立ち上がった太刀薔薇が、訝しむ衛の元へ再び近づいていく。退魔師の目が逞しく聳える男根に釘づけとなる。彼の頭はもうそのことで一杯だった。
「どうした? 衛。そんなに俺のモノが待ち遠しいか? 随分ともの欲しそうな顔で見つめおって。急かずとも今くれてやる。俺も我慢の限界でな」
逸物へ右手を添えて、グイッと前に幹を倒し、衛の女陰へと亀頭をあてがう太刀薔薇。そのまま少しばかり先端を膣口へ沈め、伸しかかる勢いを利用して一気に根元まで突き入れる。
手馴れているためだろうが、大淫鬼の取った一連の動作はあまりにも滑らかすぎた。衛は心身の準備を整える暇も与えられないまま、アッと思ったときは、既に深々と挿入されたあとだった。
ベリッ! だか、ブツッ! という音を聞いた気もしたが定かではない。痛みはほんの一瞬。破瓜の直後に衛は自分が処女だったと知る。
しかし、心が感傷や喪失感で満たされる前に、前代未聞の暴力的な快感と圧迫感が彼を襲った。
声を上げる間もなく、即座に高みを極め、ビクビクと全身を痙攣させる衛。
「……あっ、ああああああああああああああああああああああああああああぁっ!」
遅れること数十秒。彼の喉を突いて、ようやく絶叫がほとばしる。それが快感によるものか、苦悶によるものかは本人にも判断のつけようがない。恐ろしいほどの衝撃で、衛は茫然自失になっていた。
太刀薔薇は意に介さず、緩やかに腰を動かし始める。すると、衛の意識と遊離した体が勝手に女の反応を返していく。
媚毒や視犯で体を充分以上に解されていたこともあって、衛の女性器は裂けた様子もなく、出し入れされる太刀薔薇の剛直を美味しそうに頬張っている。
「やはりな。想像していた以上の稀有な名器だ。俺の逸物に隙間なく吸いついて、奥へ引き込みよるわ。それに膣全体でうねったかと思えば、予想もしない場所を様々に締めつけてくるから、全然飽きがこない。おまけにミミズ千匹や数の子天井も手伝い、チンポが蕩けそうなくらい具合がイイ。俺でなければ、挿れた瞬間イかされてる代物だな。無意識でこれだというのだから驚きものよ」
散々褒めちぎったあとに、淫獄の王が不敵に笑う。
「では、そろそろ現実に戻ってきてもらおうか。やはり快感に乱れる姿を見て、咽び泣く声を聞かなくては、面白さも半減して味気ないからな。おい! いつまで呆けているつもりだ?」
パシリと軽く頬を叩き、太刀薔薇は衛の意識を目覚めさせる。
視線の定まらない目が次第に焦点を合わせ始め、大淫鬼を見つめる顔へ徐々に困惑の表情が浮かぶ。
「お、俺は一体……あぅっ!」
当然だが、意識が戻れば感覚も戻ってくる。ましてや、ソレと知らずに気をやって体が敏感な状態を維持されたままなのだ。認識した快感も以前の比ではない。
「はぁん! あはっ! 何コレ、スゴすぎ……あはぁっ! 止めっ……」
いきなり襲いかかってきた快楽に翻弄され、衛はなすすべなく官能の海に溺れていく。そして、充分に溺れ切ったところで、太刀薔薇が四肢を束縛していた触手を解いた。
急に解放された衛は、吃驚して思わず目の前の大淫鬼に両手足を絡め、意図せず自ら抱きついてしまう。
「あ……」
反射的だったとはいえ、自分の行動が信じられず、彼は大口を開けて唖然とした。
その隙を見逃す太刀薔薇ではないことなど先刻承知のはずだったのに。
すかさず舌を差し入れた大淫鬼が、逃げられないように右手でガッチリと衛の頭を押さえつけ、彼の腰に左手を回すと無遠慮に口腔粘膜を舐めまくる。
離れようと懸命にもがく衛だったが、太刀薔薇の絶妙な口腔愛撫で、次第に抵抗する体力と気力を奪われてしまった。
「んっ……んんぅっ……」
見開かれていたまなじりがトロリと下がり、瞼が降りてくる。やがて完全に目が閉じられると、体は彼の意志に反して太刀薔薇の行為を深く受け入れていった。それは衛の意識にフィードバックされ、快楽を求めるという点においてのみ、心身のベクトルが統合される。
(スゴい……頭が、蕩けそう……。まさか、キスされるとこんなにイイなんて……。ああ……ヤバい。全部がどうでもよくなってくる……)
緩んだ口へ更に深く舌が入り込み、熱烈なディープキスの洗礼を浴びた衛は、大淫鬼に導かれ、自ら舌を絡め合わせていった。
「は……んむ……はぷ……」
性交において百戦錬磨の女でさえも敵わぬほど、手練手管に長けた太刀薔薇の技巧にかかれば、女の性感をまるっきり知らない衛は赤子同然。そして初な娘に淫らを仕込み、夢中にさせることなど、淫獄の王には朝飯前だ。
衛はかつての怨敵が繰り出す技巧に、男であることも退魔師であることも忘れて心酔した。
太刀薔薇は衛とのキスに長い時間をかけ、自分に対する嫌悪感を薄れさせる。女を骨抜きにする大淫鬼の常套手段だ。
案の定、退魔師も太刀薔薇の術中にハマる。背を撫で始めた彼の手が好ましく思えた。衛の胸に得も言われぬ切なさが込み上げる。
相手が嫌がらなくなった頃合いを見計らい、太刀薔薇はようやく唇を離す。クタリと体をもたれかかせ、肩に頭を預けて、熱い吐息を耳に囁く衛が艶かしい。
「なあ、衛……。どうしようもなく気持ちイイだろう? 俺のチンポは」
囁く太刀薔薇へコクコクと退魔師は何度も頷く。
「信じられない威力だろう?」
退魔師は続けて頷く。
「たった一言でいい、“俺に従う”とな。そうお前が告げることで、コレによって生み出される快楽を、全てお前のものにできるとしたら……どうだ?」
卑怯な手で淫獄に囚われ、太刀薔薇に犯される前の衛であれば、迷うこともなかっただろう。だが今は……。
「そっ……それは……」
逡巡してしまう。手放すには惜しい、あまりにも魅力的な快楽だった。
「なぁに、時間ならタップリある。焦ることはない、ゆっくり考えろ。それまで楽しめ」
困惑する衛を横目に見ながら、太刀薔薇は彼の媚粘膜を堪能する。緩急をつけ、刺激が単純にならないよう、イかせず冷めさせず調整を繰り返し、ジックリと彼が焦れるのを待つ。
「ふあっ……うふん……。はぁっ、い……。あ……も……イ……。そん……な。あと……ちょ……とで……。ああ、も……焦ら、さ……な……で……。おか……く……なっ、ちゃ……」
絶頂寸前の生殺し状態を続けられ、衛の精神は追い詰められていった。膣内がヒクヒクしっぱなしで震えている。彼はもうイクことしか考えられなくなっていた。
「イ……きたい……。イかせ……。お願い……」
堪らず懇願する衛に、太刀薔薇は一言。
「返事は?」
もはや正常な思考もままならない衛が、言ってはならない言葉を口にする。
「し、従う……。お、前……に……従、う……。だ、から……」
聞きたかった言葉を聞けて、満足げに太刀薔薇が笑う。
「クハハハハ! 言いおったな? 言いおったわ! ならば、嫌というほど存分にイかせてやる。そして、俺のチンポが織りなす快楽地獄を心ゆくまで味わうがよい!」
彼はそう叫んで、勢いよく抽送を繰り返し、膣内を抉って衛を絶頂へと導いていく。
終始、主導権を握っていたはずの太刀薔薇もまた、限界を迎えかけていたのだ。衛の、類稀なる名器ゆえに。
実を言えば、性器は互いに実力伯仲だったのだ。女の扱いと性交経験の豊富さで太刀薔薇は一日の長があったにすぎない。理性の枷を外した淫獄の王は、まさに野獣と化した。女体を気づかうことなく、本能の赴くまま容赦なく腰を打ちつける。
激しく肉のぶつかり合う鈍い音が辺りに響き渡る。
アクメにあと一歩届かず、ギリギリのところで焦らされ続けた衛は、大淫鬼の乱暴なつき込みでも充分な反応を見せた。
「あっ、あっ、あぅあっ! イイっ! もっと、突いて……! イ、きそう……なのっ。あぁ……ソコぉ……。スゴい! スゴいの……キちゃう! はぁ、イク……。イぃク! イク、イク、イクイクイクイク……イっ、クううううぅっ!」
「ぬおおおおおおおっ!」
二人は互いに性器を深く密着させ、歓喜の咆哮を折り重ねる。そして、悦びに咽ぶ体をきつく抱きしめ合った。
ドボオォッ! ドブウゥッ! ゴプッ、ゴポッ、ビュルルゥッ……。
直後に太刀薔薇の射精が始まる。それを促すように、何度も何度も衛の膣が逸物を締め上げた。精の奔流が子宮口へ叩きつけられる。
「熱いっ! 熱いぃっ! 体がっ、灼けちゃうぅっ!」
人の倍以上の熱を孕んだ、太刀薔薇の精液を子宮いっぱいに注ぎ込まれて、衛は身悶える。馬もかくやという、その濃さ・量たるや尋常ではない。それを刻み込まれた彼の子宮は、一瞬で太刀薔薇の虜になってしまった。
「こんな……ああ……。いっぱい……お腹に……。ふあぁ……スゴいぃ……」
受け止めきれなかった精液が、二人の結合部から大量に溢れ出る。
「子宮がっ、子宮が悦んで……。あはあっ! また、イクうぅっ!」
一度は収まったかと思われたアクメに再び達し、衛は体をビクつかせた。
立て続けの絶頂に、彼の頬は緩み、だらしなく開かれた口元からは、涎が糸を引いて流れ落ちる。快楽に煙る目は虚空を見つめ、その深さを物語っていた。
だが、これで終わったわけではない。衛が絶頂の余韻に浸る間もなく、太刀薔薇が再び腰を使い出す。
「うあっ! 止め……。まだ、イって……」
イッたばかりで敏感になっている体は、アッサリと前回の波を超え、より高い頂に到達する。それでも太刀薔薇は腰を使い続けた。
「あ、イクっ! さっきより、強いのがっ……」
全身の穴という穴が開いた感覚。どっと汗が吹き出て、衛の体表に珠の雫を作る。太刀薔薇が腰を使うことを止めないので、彼はイッた傍からアクメに達していく。
その間隔はだんだん短く、快感は増大し続け、ついには一突きごとで達する有様になった。
「いにゃあ……もう、らめぇ……イキたくにゃいぃっ……」
息も絶え絶えになりながら衛が訴える。太刀薔薇はそれを無視して突き続け、再び衛の中へ射精する。
二度目とは思えぬ濃さと量に、子宮が悦びの悲鳴を上げる。
「はひいいいいぃっ! こりぇっ! こりぇ、しゅきいいぃっ! こんらろ覚えらら、ふひゅうのヘックヒュ……らんかぁっ、れきらいぃ……」
あまりの快楽に衛の呂律が回っていない。
「どうだ、衛よ。飽くなき快楽地獄……。これが淫獄だ。素晴らしいだろう? 今のところは止めておくが、こんなものはまだまだ序の口よ。いずれお前に味わわせてやるから、覚悟しておけ。俺に従うと宣言した以上、お前は生涯俺のもの。俺の女だ」
太刀薔薇の言葉が衛の心に強く刻まれる。何より、これほどに強烈な快楽を感じさせられては、淫獄の王から離れるなど彼には考えらなかった。
「ふぁい……。衛は……太刀薔薇、ひゃまの……ものれひゅ……」
屈服宣言を出した衛に、ほくそ笑んだ太刀薔薇が優しく語りかける。
「クク……。そうだ、それでいい。どのみち、一度でも俺の精を受け入れたら、子宮が俺の精を欲しがって、お前はもう俺なしじゃいられない体になるんだ。男に抱かれ、犯される悦びを覚えるのは早い方が好ましい。なーに、この淫獄にいる限り体力は無尽蔵だ。これからジックリ時間をかけて、タップリと可愛がってやるから、二人だけの濃密なセックスを楽しもうや」
大淫鬼は、硬度を保ったままの逸物を、一度だけ抜き挿しして衛の返事を催促した。
「ひゃっ、ひゃいいっ!」
素っ頓狂な声を上げ、ビククッと体を震わせてイきながら、彼は太刀薔薇への答えを返す。
それを聞き、大きく長く、淫獄に勝ち誇った大淫鬼の哄笑が響いていた。
九条衛が消息を絶ってから、人間界で七日が過ぎた。
一見平穏に思える社会の裏で、退魔師たちは日々、淫獄との戦いに劣勢を強いられている。最大の戦力と言える、九条家の当主を失ったからだ。
だが、辛うじて持ち堪えていられるのは、退魔師たちの当主を束ねる、一条家の巫女がいるおかげである。
「九条家の当主はまだ見つからぬか?」
側近に聞く巫女の声は、焦りの色が僅かに見える。
なぜなら淫鬼を殺せるのは退魔刀・滅鬼丸だけであり、それが使えるのは九条家の、それも、継承者である当主だけ。
他の退魔師たちでは、当主も含めて、退けるのが関の山なのだ。
滅鬼丸だけは彼女の元に残っているが、今のままでは誰も使えず、まさに宝の持ち腐れと言えよう。
「はい、まだ見つかりませぬ」
側近の答えが虚しく響き、巫女は顔を曇らせる。
「そうか。早う見つかって欲しいものじゃ」
彼女は呟いて、祈るように天を仰いだ。
一方、その頃。淫獄では、玉座へ腰を下ろした太刀薔薇に傅いて、フェラチオ奉仕を熱心に行う衛がいた。
「ククク……初めの頃も上手かったが、また一段と上達したな。そろそろ淫獄暮らしにも慣れてきたんじゃないのか? なあ、衛」
少しだけ皮肉を込め、淫獄の王が彼を褒めそやす。
すると衛はフェラチオを中断し、大淫鬼を睨めつけるものの、右手は彼の逸物を慣れた手つきでいやらしく扱き続けている。
あれから彼は、ずっと太刀薔薇に犯し抜かれて、妖艶な雰囲気を身に纏っていた。
「嫌ですわ、太刀薔薇様ったら。今の私は衛じゃありません、百合衛ですわ。七日七晩もあなたに犯し抜かれたおかげで生まれ変われましたのよ? もうお忘れになって?」
蠱惑的な微笑みと弾んだ声に、応じる太刀薔薇もまた、面白そうに笑う。
「まさか! 俺もあのときほど愉快に感じたことはなかったぞ。大抵の奴は淫獄の快楽を味わい続けると自我が壊れてしまう。なのに、お前は自我を失うどころか、俺が与える攻めに馴染み、淫獄の快楽にも慣れ親しんだ。おまけに、新しく自我を創り出し、環境に適応させてしまいよるとはな。フフ……だがおかげで、よきつがいと呼んでもいいほど俺好みの、稀代の名器を持ついやらしくてイイ女を手に入れられた。全く以って、嬉しい誤算よ」
百合衛の頭を愛おしげに撫で、太刀薔薇は目を細める。
「ええ、本当に。私も太刀薔薇様の余興で、女に変えられていなかったら、こんなに逞しくて、素敵なオチンポに出会えていませんわ。見ているだけで惚れ惚れしてしまいます。ほら見てください、あなた。早くオチンポを咥えたくて、私のオマンコはもうグッショリ濡れそぼっていますわ」
仰向けに寝転んで大きく股を開き、百合衛がパックリと両手で秘裂を割る。膣口が物欲しげに開閉を繰り返し、そのたびにトロトロと水密が流れ落ちる。ゆっくりと誘うように唇を舐め、情欲で濡れた目をシコリ勃った乳首越しに太刀薔薇へ向ける彼女は、美しくもいやらしかった。
「おいおい、そんな顔をされては俺も辛抱堪らんぞ? クク。しかしまあ、よくもここまで淫乱毒婦に急成長したものだ。七日七晩の経験を重ねただけで、ついさっきなど俺が先にイかされてしまったからな。お前が初な娘のときに仕込めて、俺は果報者だよ」
玉座を立ち、そそり勃つ剛直を百合衛に向けると、太刀薔薇はそれを彼女の中へ沈めていく。
「あはあぁん……。何度味わっても飽きない、素敵な感触ですわ。太刀薔薇様の宝刀は。けれど、太刀薔薇様が果報者なら私だって。初な娘のまま、あなたに犯されたからこそ、私は淫獄のとてつもなく深い悦びを味わい知れたのです。この胸に今は、感謝しかありませんわ。はあぁ……イイ……。硬くて……太くて……奥深いところまで届いて……。心も体もいっぱいに満たしてくれる、最高の逸品……。これが、私だけのものなんて……」
ワナワナと、百合衛の体がアクメの予感に打ち震えている。
「……こんな贅沢、他にありませんわ。ああ、太刀薔薇様……。動いて……。私の体で……たくさん気持よく……おほおおおぉっ!」
ズルリと引き抜き、グチュリと突き込む。大淫鬼が動くたび、獣の咆哮を思わせる嬌声が響いた。
「やれやれ、男心をくすぐる嬉しいことを言ってくれる。それではお前の期待どおり、中でタップリ出してやろう」
途端に、中出し宣言された百合衛が感極まり、お礼を述べる。
「そんな……ああ……勿体ないお言葉。この体に、お情けを戴けるなんて……。ああ、ぜひ……ぜひお願いします。ああ……感激です……」
中出しされる期待で、彼女の膣が勝手に蠢き出す。乳搾りでもするかのような、無段階の締めつけと締め上げが立体的に幾度も行われ、淫獄の王も堪らず声を上げた。
「くうぅっ! 何と男泣かせな名器よ! イかせるたびに成長・変化しよる。いくら俺でも、もう我慢できん! 出すぞっ、百合衛っ!」
太刀薔薇が言い終わらぬうち、クッと尻が引き締まり、射精が始まった。
すると百合衛の子宮口が亀頭へ吸いついて、ビュルビュルと白いマグマが彼女の子袋へ吸い込まれていく。
「あふあぁ……イクぅ……。精液……いっぱい、注がれて……子宮が……。はあぁん……気持ちイイようぅ……。熱くて、ドロドロの精子……。最高……。あぁんっ……もっと……欲しいぃっ」
両手足で太刀薔薇にギュッと抱きつき、ヴァギナをペニスの根元へ押しつけながら、熱い吐息混じりに、耳元で甘い囁きとともに口づけを求める百合衛。そんな姿からは、彼女が元々男――しかも退魔師――だったなどと想像もつかないだろう。
淫獄に住まう太刀薔薇のつがいとなった彼は、いつ果てるとも知れぬ底なしの快楽に興じていた。
「ククク……退魔刀・滅鬼丸がなければ、退魔師随一の使い手として知られたお前も型なしだな。何とも呆気ないものよ、拍子抜けするわい」
軽口を叩き、太刀薔薇は侮蔑の笑みを浮かべる。
「ほざけ! 卑怯な手を使わねば勝てぬ小物風情が! 大淫鬼が聞いて呆れるぜ!」
よほど悔しいのだろう。歯噛みをしながら、女かと見紛うくらいの美貌を歪ませて、衛がキッと相手を睨みつける。
「策士、と言ってもらいたいな。要は最終的に勝てばいいのだよ。負けたお前に、ましてや、そんな格好では言葉に説得力がないぞ?」
太刀薔薇の言うとおりだった。裸に剥かれ、四肢を触手に拘束された彼の姿では、威勢のいい啖呵も負け犬の遠吠えに等しい。
「さて……と。そろそろ本題の余興に入ろうか。俺も男を犯す趣味はないのでな。本来であれば男は皆殺しだ。とはいえ俺と対等に張り合える膂力・胆力も持ち合わせている奴などそうそういない。おまけに、その美貌を無駄に捨ててしまうのは、いささか惜しくもある。そこで……」
意地の悪い笑みを浮かべた太刀薔薇が、小気味よい音を指で鳴らす。
すると左右の足元から女陰を思わせる巨大な肉塊が迫り上がり、衛の両足を根元近くまで飲み込んだ。
次いで、背後上部から同じ肉塊が彼の頭上に迫る。
「お前の体を女のソレに変えてやろう。俺の趣味にも合うし、なにより屈辱に打ち震えるお前を見るのは、これまでの溜飲を下げるのにうってつけだ。難点を言えば、悔しさに歪むお前の顔が見られないことと、悲鳴が聞けないことくらいか」
それまで下卑た笑いをその顔に貼りつけていた太刀薔薇が、真顔になって上げた指を振りおろし、宣告を下す。
「やれ……」
同時に、衛の背後で待機していた肉塊が蠢いた。
「くそっ! 止め……」
彼の言葉は最後を待たず、肉塊の中に飲み込まれてしまう。
時を置かず、それぞれの肉塊から大小さまざまな触手が粘液を伴いながら溢れ出した。大きいものは衛の胸や股間にあてがわれ、小さいものは体表を舐めるように蠢いて。
「こいつの粘液には男を女へ変える力がある。加えて、媚毒の効果もな。“淫獄”の名は伊達ではないぞ。その力、身を以って存分に知るがいい」
太刀薔薇はそう言い捨てると数歩離れ、自らが触手で創りだした玉座にドサリと腰を下ろし、興味深げに衛が肉塊に嬲られるさまを見物し始めた。
「ウブッ……ゴボッ、ゲホッ……オゲ……」
声にならない衛の呻きと肉塊が蠢く濡れた音だけが、四方を肉に囲まれた部屋へこだまする。
頭から丸呑みにされ、まるで彼自身が男性器になって女の陰部と交わっているような錯覚を見ている者に感じさせた。
それから、ものの五分もしないうちに彼は全身をガクガクと痙攣させた。
「早いな……もう、イッたのか。この分なら全ての精液を吐き切って、女に変わるのも時間の問題だろう」
太刀薔薇は静かに呟く。衛の股間部分にあてがわれた触手から、大量の白濁液が溢れていた。華奢ながらも、しなやかな筋肉が見て取れる引き締まった体。それが心なしか、いくぶん滑らかになった気がする。
いや、気のせいではない。彼の股間から白濁液が噴き出すたびに、滑らかな女の肢体へと確実な変化を遂げる。
退魔師の胸に吸いついていた触手の下で、それはハッキリと厚みを増し、柔らかそうに弾み始めている。
好色そうなスケベ面を隠そうともせず、大淫鬼は衛の変化を注視する。
一方で、衛は文字どおり気が狂いそうなほどの快楽に塗れていた。激淫……とでも言おうか。皮膚はおろか、粘液に覆われた部分がヒリヒリと痛いほど熱く、刺激に対して過剰なくらい敏感になっている。感覚の全てが快楽へ変換されて彼を悩ませた。
「こんな……もの……耐え、られる……わけ……。グアアアッ! イグぅっ……!」
放精する度に皮膚感度が上がって、衛は粘液が体に染みこんでいくような錯覚に囚われる。そして、それは実際に起きていた事実。吐精した分を補うべく、体が粘液を欲した結果である。
しかも男とは比べ物にならない感度を持つ女の皮膚なのだ。肉塊の内壁にビッシリと敷き詰められた粒状の柔らかい肉突起が、優しく肌を擦る様子まで手に取るように分かる。彼は上半身、特に胸周りの変化を僅かながら自覚していた。
吸いつかれ、撫でられるだけだった感触が次第にその範囲を広げ、揉まれるという立体的な感覚へと変わっていく様子を。
(くそっ! これが淫獄界のなせる業なのか。これほど暴力的なものだとは……。侮っていた。正直、俺の認識が甘かったようだ。なんとか抜けださなければ! このままでは、俺の……男としての人生が潰えてしまう)
焦燥に駆られるものの、衛に逃れる手立てはない。彼を拘束する触手は細く見えるくせに、筋繊維のような強さとしなやかさを兼ね備えているらしく、どんなに暴れようと全然ビクともしない。
いたずらに時が去り、拘束が不意に緩む。それまでに数えきれぬ絶頂を迎え、疲れ果てた衛は息も途切れがちだった。
「ほほう……これはこれは、みごとな変貌ぶりだ。以前のお前を知る者とて、お前とは気づくまいな」
感心しきりと太刀薔薇が頷く。吐き出された肉塊の中から現れたのは、はたして艶めいた美女だった。ごく微かに衛の面影を漂わせてはいるが、微に入り細を穿つよう、よく見なければそれとは分からない。
眉根を寄せ、快楽でトロリと垂れ下がった目尻やだらしなく開かれた口元からは、女特有の匂い立つような色気が漂い、以前の凛々しさは片鱗すら窺えなかった。
上背は殆ど変わりない。しかし、痩身でありながらもよく絞り込まれた頑健な肉体を土台とした新しい体は、引き締まった上にも女らしく柔らかい丸みを帯び、大きく張り出した胸と尻のおかげもあって、男好きする淫らなものへと生まれ変わっている。
「なんとまあ、俺好みのいい女になったものだ。確か、九条衛……と名乗っていたな。お前を殺さずにおいてよかったわい。我が淫技をタップリ味わわせて仕込み、俺の虜にしてやろうぞ」
言うやいなや立ち上がり、玉座から太刀薔薇はまだ触手に四肢を縛られたままの衛へ近づくと、右手で彼の左乳房を鷲掴みにする。
「きゃうっ!」
彼の口から迸ったのは、大淫鬼を罵った凄みのある太い声ではなく、愛くるしい女の甲高い声だった。
「ククク……たまらんだろう? 媚毒漬けになった体は。こんな他愛のない刺激で、感じまくるんだからな。どれ……」
太刀薔薇が最前から乳輪ごと勃ち上がっている乳首をピンと弾く。
「あんっ!」
鷲掴みにされたときとは違う、艶めいた声が思わず衛の口を吐いてでた。
(なん、て声……。このまま何もできず、こんなヤツの慰みものにされちまうのか? 俺は……)
衛は太刀薔薇に犯される自分を想像してしまい、背筋がゾッと寒くなった。でも、どういうわけか、体の芯がジワリと熱くなる感覚も意識する。
慌てて自分の描いた想像を振り払おうと、彼は頭を振る。だが、どうしてもイメージした光景が頭から離れない。それどころか、より強く鮮明に妄想し始めている自分がいた。
妄想すればするほど、男の象徴(しるし)を失った股間が切なく疼く。微毒の作用もそれを後押ししている。衛は気づけなかったが、正面に立つ太刀薔薇からは、男を求めてしとどに濡れる秘芯が丸見えだった。
「クハハハハ。他愛もないぞ、退魔師殿。この俺が淫技を披露するまでもなく、股間をビショビショに濡らしおって。よほどの好き者と見えるな。ならばこれを見よ!」
言うなり、太刀薔薇が丹田に力を込める。すると、見る間に股間の逸物が屹立し、ヘソまで反り返る、太く長大な肉柱へとたちまち変化した。
(嘘だろ、おい……)
あまりのデカさに衛は二の句が継げない。ポカンと口を開け、呆けたように大淫鬼のペニスを見つめていた。
(こ、こんなモノを女の中へ……だと? 無理だ、入るわけがない)
巨根を超えた代物に圧倒され、しばらくの間、彼はソレから目を離せなくなる。
浮き出た血管を蛇のように表面へ這わせて、全体が固く張り詰め、ピクピクと小刻みに脈動している。カリ首も大きく張り出し、亀頭の威勢をよく物語っていた。
その雄姿を目の当たりにした衛は妄想に拍車がかかり、知らず知らずのうちに息を荒くさせる。
「どうした。いつまで見惚れているつもりだ、九条よ。それとも、挿れる前から我が逸物を気に入ったか?」
太刀薔薇に揶揄され、ハッと我に返るも、衛の目が大淫鬼の股間から逸らされることはない。
「うっ、うるさい! 黙れ! そんなわけあるかっ! そんなわけ……」
彼の声にだんだん勢いがなくなっていく。
コクッ……。ごく小さく、でも、ハッキリと衛の喉が鳴る。太刀薔薇は、その音を聞き逃すはずがなかった。
淫獄の王は逸物に右手を添え、ゆっくり前に倒して亀頭を正面へ向ける。次いで一歩、退魔師に近づいた。ほぼ密着状態と言える二人の距離において、衛にできた豊かな双乳の間でペニスの胴が横たわり、目と鼻の先に迫る亀頭の様相は、まさしくトリケラトプスさながらな凶悪さを持っている。
噎せるようなオスの匂いが衛の鼻を突く。亀頭の先端に開いた鈴口からは、先走りの粘液が噴き出し、彼の口へ今にも零れ落ちようと大きく珠を作っていた。
太刀薔薇の淫臭が衛の頭をクラクラさせる。鼻で息を吸うことも躊躇うほどに強烈な匂い。思わず口で息を吸ったところへ、粘液の雫が彼の舌に滴り落ちた。
だが、ヌルヌルと粘ついた感触と共に、塩気を舌に感じても衛は嫌悪を覚えない。それどころか、甘露を含んだようにウットリと目を細め、その源泉へと舌を伸ばす。脳髄が灼けるくらいに激しい興奮を覚え、腹の奥がカアッと熱くなる。生まれたばかりの子宮は、早くも牡器官を求めて猛り狂っていた。
ペタリと逸物の裏筋に舌が触れた途端、太刀薔薇がスッと身を引いて嘲る。
「おうおう、だらしなく緩み切って間抜けな面してやがる。お前、本当に退魔師で男だったのか? とてもそうは思えねえな」
その言葉は、子宮に支配されかかっていた衛の意識を僅かに引き戻す。
「……ク……ショ……。チクショウゥッ!」
自分が何をしようとしていたか。それを理解して、悔し涙がポロポロと零れる。彼が持つ男としての、退魔師としてのプライドがズタズタに引き裂かれた瞬間だった。
「それだよ、それ。俺はその顔が見たかったのさ、お前のな」
思い描いていた最良のシチュエーションを目の当たりにして、太刀薔薇の興奮は最高潮に達した。ビキリと音を立て、彼の逸物が一回り大きくなる。
「さて、と。このままお前を犯してやってもいいが、余興ついでに一つ、俺の淫技を少しばかり披露してやろうか」
言って淫獄の王は、項垂れている衛の顎をグイッと上げ、彼の目を覗き込む。
「淫技……『視犯』!」
大淫鬼の目に妖しげな光が灯る。
「あ……」
そう言ったきり、衛の意識は太刀薔薇の淫技に囚われてしまった。術者と同じ怪しげな光が彼の目にしばらく灯って、静かに消える。
「これでよし。お前はもう、俺の掌で踊ることしかできん」
けれど、これといった異変が感じられず、衛には実感が乏しい。太刀薔薇は呆気にとられる退魔師を尻目に背を向け、玉座との中間位置で向き直り、ドカリと胡座をかく。
以降、彼は腕組みをしてジッと衛を見据えたまま、微動だにしなくなった。
(何だ? 何をする気だ?)
衛が訝しんだ直後にソレは起こる。フワリと誰かに持ち上げられた。いや、その表現は正確ではない。彼は今、四肢を縛られていて、身動きできる状態とはほど遠い。
事実、衛も太刀薔薇も一寸たりと動いた様子などなかった。
にもかかわらず、クッキリとその感覚だけを彼に伝えてくる。衛が戸惑う間も事態は更なる進行を見せていった。
浮いた体が沈み込み、棒状の物が股間を割り開いて侵入してくる感覚を認めるに至り、彼は驚愕する。歪な形をしたソレは、紛うことなきペニス。そして、この場でそんな剛直を持つ者は一人しかいない。
「太刀薔薇!」
思わず叫ぶ衛に向かって、淫獄の王はニイッと歯を剥き出す。
「面白いだろう? これが俺の淫技『視犯』だ。視ることで女の羞恥を煽り、辱める一方的な『視姦』とは違う。『視犯』は相手を視ることで自分の思い描いた妄想を送り、二人でその感覚を共有して愉しめるんだよ。とはいえ飽くまでも想像だから、実際の感覚と随分隔たりはあるがな。ま、利点としちゃ、純潔を保ったまま中イキの快楽を仕込んで、淫売毒婦に仕立て上げる……なんて芸当が可能なくらいか」
言いながら、太刀薔薇はクイクイッと腰を小さく突き上げる妄想を思い描く。
「うきゅっ!」
奇妙な声を上げて衛は呻いた。ただでさえ、体内を押し広げられる違和感を覚えているのに、硬い肉柱のキスを何度も強いられる感覚で、未開の子宮口が声なき悲鳴を彼の脳へ響かせる。
(ぐえっ……気持ち悪い。吐き気がする。小突かれてる腹の奥が痛い。何で俺がこんな目に……)
大淫鬼との戦いに負けたからだ、と理性では分かっていても、理不尽だと感情が訴えていた。しかし、そんな気持ちも長くは保たなかった。
媚毒に侵された体は、ものの数十秒でその感覚を受け入れ、すべてを快楽へ変換する。
「は、あぁ……うぅ……」
衛の体から余分な力が抜け、急速に熟れていく。
(な……え? か、体……が……今まで以、上に……熱……い……)
既にほとんど息苦しさは感じない。圧迫感からくる吐きそうな気持ち悪さも、最初ほどではない。奥を小突かれる痛みも、気づけば軽い衝撃を感じる程度に和らいでいる。
感覚の生々しさだけで言えば、とても妄想とは思えなかった。
(何か、変な感じ……)
一突きごとに体が痺れ、膣内がむず痒くなる。ソコを笠の張ったペニスでズリズリ掻き擦られるのは、背筋をゾクゾクと粟立たせ、得体の知れない何かが込み上げてくる感覚を衛にもたらした。
しかし、ソレがちっとも不快じゃない。むしろ、ソレを心の片隅で心地よく感じて始めている自分がいる。
(もっと……)
得体の知れない何か。女が享受する快楽を知りようもない彼は、その正体が知りたくて太刀薔薇が与える快感を更に望んだ。
(もう少しで……)
その何かを掴めそうなところまできた衛は、意識をソコへ集中させる。頭がボンヤリと霞み、だんだん夢見がちな気分になってきた頃。全身が心地よく痺れ、震えるほど体中を満たす感覚が快感なのだと本能で知る。
(あ……ダメ、だ。これ……。ダメに……なる……)
正体が分かると同時に、ソレが男の自分にとって危険なものだと衛は気づいたものの、もはや手遅れ。彼は女へ変じた体が受ける性感の虜になっていた。
(倒すべき敵なのに……。ああっ、でも……気持ちイイ!)
小さな動きとはいえ、太刀薔薇の目は衛が腰をくねらせる様子を捉えていた。彼が女体の快感にのめり込んでいるのは明らかだ。
一方、太刀薔薇もまた、快感に酔い痴れていた。
(おお! コイツはなんと稀有な名器。ククク、まさか男が持っているとは……。思いもよらない飛んだ掘り出し物よな。フフフ、堪らんわい)
だがそこは幾千の経験を積んだ猛者である。そう簡単に溺れたりはしない。
ただ、退魔師として衛を屈服させ、かつ、稀代の名器を持つ女体を己がモノとして完膚なきまでに篭絡する。その二点において太刀薔薇は心を震わせた。彼の征服欲を満たすのに十分な条件を兼ね備えている相手だ。こんなにも心躍ることはない。
(ならば、まず視犯で一度イかせるべきか? けれど、これほどの名器だ。一刻も早く味わってみたい。ふぅむ、久々に迷うな……)
太刀薔薇がやや思案するも、早々に結論を出す。
(絶頂ギリギリまで追い詰めてから、実際に俺の逸物を馳走してやろう)
決断を降したらあとは早かった。一気に妄想を爆発させ、衛の精神を侵していく。
「ふっ、あっ……! あっ、あっ、ああっ!」
我慢していた嬌声が、ついに衛の口を突いて出た。それは更にリズミカルなものから切羽詰まったものへと次第に変わっていく。
(あ、ダメ……もう……)
彼が絶頂の予兆を感じた瞬間。抽送される感覚が不意に途切れた。
(え? 何で? あと少しなのに……)
立ち上がった太刀薔薇が、訝しむ衛の元へ再び近づいていく。退魔師の目が逞しく聳える男根に釘づけとなる。彼の頭はもうそのことで一杯だった。
「どうした? 衛。そんなに俺のモノが待ち遠しいか? 随分ともの欲しそうな顔で見つめおって。急かずとも今くれてやる。俺も我慢の限界でな」
逸物へ右手を添えて、グイッと前に幹を倒し、衛の女陰へと亀頭をあてがう太刀薔薇。そのまま少しばかり先端を膣口へ沈め、伸しかかる勢いを利用して一気に根元まで突き入れる。
手馴れているためだろうが、大淫鬼の取った一連の動作はあまりにも滑らかすぎた。衛は心身の準備を整える暇も与えられないまま、アッと思ったときは、既に深々と挿入されたあとだった。
ベリッ! だか、ブツッ! という音を聞いた気もしたが定かではない。痛みはほんの一瞬。破瓜の直後に衛は自分が処女だったと知る。
しかし、心が感傷や喪失感で満たされる前に、前代未聞の暴力的な快感と圧迫感が彼を襲った。
声を上げる間もなく、即座に高みを極め、ビクビクと全身を痙攣させる衛。
「……あっ、ああああああああああああああああああああああああああああぁっ!」
遅れること数十秒。彼の喉を突いて、ようやく絶叫がほとばしる。それが快感によるものか、苦悶によるものかは本人にも判断のつけようがない。恐ろしいほどの衝撃で、衛は茫然自失になっていた。
太刀薔薇は意に介さず、緩やかに腰を動かし始める。すると、衛の意識と遊離した体が勝手に女の反応を返していく。
媚毒や視犯で体を充分以上に解されていたこともあって、衛の女性器は裂けた様子もなく、出し入れされる太刀薔薇の剛直を美味しそうに頬張っている。
「やはりな。想像していた以上の稀有な名器だ。俺の逸物に隙間なく吸いついて、奥へ引き込みよるわ。それに膣全体でうねったかと思えば、予想もしない場所を様々に締めつけてくるから、全然飽きがこない。おまけにミミズ千匹や数の子天井も手伝い、チンポが蕩けそうなくらい具合がイイ。俺でなければ、挿れた瞬間イかされてる代物だな。無意識でこれだというのだから驚きものよ」
散々褒めちぎったあとに、淫獄の王が不敵に笑う。
「では、そろそろ現実に戻ってきてもらおうか。やはり快感に乱れる姿を見て、咽び泣く声を聞かなくては、面白さも半減して味気ないからな。おい! いつまで呆けているつもりだ?」
パシリと軽く頬を叩き、太刀薔薇は衛の意識を目覚めさせる。
視線の定まらない目が次第に焦点を合わせ始め、大淫鬼を見つめる顔へ徐々に困惑の表情が浮かぶ。
「お、俺は一体……あぅっ!」
当然だが、意識が戻れば感覚も戻ってくる。ましてや、ソレと知らずに気をやって体が敏感な状態を維持されたままなのだ。認識した快感も以前の比ではない。
「はぁん! あはっ! 何コレ、スゴすぎ……あはぁっ! 止めっ……」
いきなり襲いかかってきた快楽に翻弄され、衛はなすすべなく官能の海に溺れていく。そして、充分に溺れ切ったところで、太刀薔薇が四肢を束縛していた触手を解いた。
急に解放された衛は、吃驚して思わず目の前の大淫鬼に両手足を絡め、意図せず自ら抱きついてしまう。
「あ……」
反射的だったとはいえ、自分の行動が信じられず、彼は大口を開けて唖然とした。
その隙を見逃す太刀薔薇ではないことなど先刻承知のはずだったのに。
すかさず舌を差し入れた大淫鬼が、逃げられないように右手でガッチリと衛の頭を押さえつけ、彼の腰に左手を回すと無遠慮に口腔粘膜を舐めまくる。
離れようと懸命にもがく衛だったが、太刀薔薇の絶妙な口腔愛撫で、次第に抵抗する体力と気力を奪われてしまった。
「んっ……んんぅっ……」
見開かれていたまなじりがトロリと下がり、瞼が降りてくる。やがて完全に目が閉じられると、体は彼の意志に反して太刀薔薇の行為を深く受け入れていった。それは衛の意識にフィードバックされ、快楽を求めるという点においてのみ、心身のベクトルが統合される。
(スゴい……頭が、蕩けそう……。まさか、キスされるとこんなにイイなんて……。ああ……ヤバい。全部がどうでもよくなってくる……)
緩んだ口へ更に深く舌が入り込み、熱烈なディープキスの洗礼を浴びた衛は、大淫鬼に導かれ、自ら舌を絡め合わせていった。
「は……んむ……はぷ……」
性交において百戦錬磨の女でさえも敵わぬほど、手練手管に長けた太刀薔薇の技巧にかかれば、女の性感をまるっきり知らない衛は赤子同然。そして初な娘に淫らを仕込み、夢中にさせることなど、淫獄の王には朝飯前だ。
衛はかつての怨敵が繰り出す技巧に、男であることも退魔師であることも忘れて心酔した。
太刀薔薇は衛とのキスに長い時間をかけ、自分に対する嫌悪感を薄れさせる。女を骨抜きにする大淫鬼の常套手段だ。
案の定、退魔師も太刀薔薇の術中にハマる。背を撫で始めた彼の手が好ましく思えた。衛の胸に得も言われぬ切なさが込み上げる。
相手が嫌がらなくなった頃合いを見計らい、太刀薔薇はようやく唇を離す。クタリと体をもたれかかせ、肩に頭を預けて、熱い吐息を耳に囁く衛が艶かしい。
「なあ、衛……。どうしようもなく気持ちイイだろう? 俺のチンポは」
囁く太刀薔薇へコクコクと退魔師は何度も頷く。
「信じられない威力だろう?」
退魔師は続けて頷く。
「たった一言でいい、“俺に従う”とな。そうお前が告げることで、コレによって生み出される快楽を、全てお前のものにできるとしたら……どうだ?」
卑怯な手で淫獄に囚われ、太刀薔薇に犯される前の衛であれば、迷うこともなかっただろう。だが今は……。
「そっ……それは……」
逡巡してしまう。手放すには惜しい、あまりにも魅力的な快楽だった。
「なぁに、時間ならタップリある。焦ることはない、ゆっくり考えろ。それまで楽しめ」
困惑する衛を横目に見ながら、太刀薔薇は彼の媚粘膜を堪能する。緩急をつけ、刺激が単純にならないよう、イかせず冷めさせず調整を繰り返し、ジックリと彼が焦れるのを待つ。
「ふあっ……うふん……。はぁっ、い……。あ……も……イ……。そん……な。あと……ちょ……とで……。ああ、も……焦ら、さ……な……で……。おか……く……なっ、ちゃ……」
絶頂寸前の生殺し状態を続けられ、衛の精神は追い詰められていった。膣内がヒクヒクしっぱなしで震えている。彼はもうイクことしか考えられなくなっていた。
「イ……きたい……。イかせ……。お願い……」
堪らず懇願する衛に、太刀薔薇は一言。
「返事は?」
もはや正常な思考もままならない衛が、言ってはならない言葉を口にする。
「し、従う……。お、前……に……従、う……。だ、から……」
聞きたかった言葉を聞けて、満足げに太刀薔薇が笑う。
「クハハハハ! 言いおったな? 言いおったわ! ならば、嫌というほど存分にイかせてやる。そして、俺のチンポが織りなす快楽地獄を心ゆくまで味わうがよい!」
彼はそう叫んで、勢いよく抽送を繰り返し、膣内を抉って衛を絶頂へと導いていく。
終始、主導権を握っていたはずの太刀薔薇もまた、限界を迎えかけていたのだ。衛の、類稀なる名器ゆえに。
実を言えば、性器は互いに実力伯仲だったのだ。女の扱いと性交経験の豊富さで太刀薔薇は一日の長があったにすぎない。理性の枷を外した淫獄の王は、まさに野獣と化した。女体を気づかうことなく、本能の赴くまま容赦なく腰を打ちつける。
激しく肉のぶつかり合う鈍い音が辺りに響き渡る。
アクメにあと一歩届かず、ギリギリのところで焦らされ続けた衛は、大淫鬼の乱暴なつき込みでも充分な反応を見せた。
「あっ、あっ、あぅあっ! イイっ! もっと、突いて……! イ、きそう……なのっ。あぁ……ソコぉ……。スゴい! スゴいの……キちゃう! はぁ、イク……。イぃク! イク、イク、イクイクイクイク……イっ、クううううぅっ!」
「ぬおおおおおおおっ!」
二人は互いに性器を深く密着させ、歓喜の咆哮を折り重ねる。そして、悦びに咽ぶ体をきつく抱きしめ合った。
ドボオォッ! ドブウゥッ! ゴプッ、ゴポッ、ビュルルゥッ……。
直後に太刀薔薇の射精が始まる。それを促すように、何度も何度も衛の膣が逸物を締め上げた。精の奔流が子宮口へ叩きつけられる。
「熱いっ! 熱いぃっ! 体がっ、灼けちゃうぅっ!」
人の倍以上の熱を孕んだ、太刀薔薇の精液を子宮いっぱいに注ぎ込まれて、衛は身悶える。馬もかくやという、その濃さ・量たるや尋常ではない。それを刻み込まれた彼の子宮は、一瞬で太刀薔薇の虜になってしまった。
「こんな……ああ……。いっぱい……お腹に……。ふあぁ……スゴいぃ……」
受け止めきれなかった精液が、二人の結合部から大量に溢れ出る。
「子宮がっ、子宮が悦んで……。あはあっ! また、イクうぅっ!」
一度は収まったかと思われたアクメに再び達し、衛は体をビクつかせた。
立て続けの絶頂に、彼の頬は緩み、だらしなく開かれた口元からは、涎が糸を引いて流れ落ちる。快楽に煙る目は虚空を見つめ、その深さを物語っていた。
だが、これで終わったわけではない。衛が絶頂の余韻に浸る間もなく、太刀薔薇が再び腰を使い出す。
「うあっ! 止め……。まだ、イって……」
イッたばかりで敏感になっている体は、アッサリと前回の波を超え、より高い頂に到達する。それでも太刀薔薇は腰を使い続けた。
「あ、イクっ! さっきより、強いのがっ……」
全身の穴という穴が開いた感覚。どっと汗が吹き出て、衛の体表に珠の雫を作る。太刀薔薇が腰を使うことを止めないので、彼はイッた傍からアクメに達していく。
その間隔はだんだん短く、快感は増大し続け、ついには一突きごとで達する有様になった。
「いにゃあ……もう、らめぇ……イキたくにゃいぃっ……」
息も絶え絶えになりながら衛が訴える。太刀薔薇はそれを無視して突き続け、再び衛の中へ射精する。
二度目とは思えぬ濃さと量に、子宮が悦びの悲鳴を上げる。
「はひいいいいぃっ! こりぇっ! こりぇ、しゅきいいぃっ! こんらろ覚えらら、ふひゅうのヘックヒュ……らんかぁっ、れきらいぃ……」
あまりの快楽に衛の呂律が回っていない。
「どうだ、衛よ。飽くなき快楽地獄……。これが淫獄だ。素晴らしいだろう? 今のところは止めておくが、こんなものはまだまだ序の口よ。いずれお前に味わわせてやるから、覚悟しておけ。俺に従うと宣言した以上、お前は生涯俺のもの。俺の女だ」
太刀薔薇の言葉が衛の心に強く刻まれる。何より、これほどに強烈な快楽を感じさせられては、淫獄の王から離れるなど彼には考えらなかった。
「ふぁい……。衛は……太刀薔薇、ひゃまの……ものれひゅ……」
屈服宣言を出した衛に、ほくそ笑んだ太刀薔薇が優しく語りかける。
「クク……。そうだ、それでいい。どのみち、一度でも俺の精を受け入れたら、子宮が俺の精を欲しがって、お前はもう俺なしじゃいられない体になるんだ。男に抱かれ、犯される悦びを覚えるのは早い方が好ましい。なーに、この淫獄にいる限り体力は無尽蔵だ。これからジックリ時間をかけて、タップリと可愛がってやるから、二人だけの濃密なセックスを楽しもうや」
大淫鬼は、硬度を保ったままの逸物を、一度だけ抜き挿しして衛の返事を催促した。
「ひゃっ、ひゃいいっ!」
素っ頓狂な声を上げ、ビククッと体を震わせてイきながら、彼は太刀薔薇への答えを返す。
それを聞き、大きく長く、淫獄に勝ち誇った大淫鬼の哄笑が響いていた。
九条衛が消息を絶ってから、人間界で七日が過ぎた。
一見平穏に思える社会の裏で、退魔師たちは日々、淫獄との戦いに劣勢を強いられている。最大の戦力と言える、九条家の当主を失ったからだ。
だが、辛うじて持ち堪えていられるのは、退魔師たちの当主を束ねる、一条家の巫女がいるおかげである。
「九条家の当主はまだ見つからぬか?」
側近に聞く巫女の声は、焦りの色が僅かに見える。
なぜなら淫鬼を殺せるのは退魔刀・滅鬼丸だけであり、それが使えるのは九条家の、それも、継承者である当主だけ。
他の退魔師たちでは、当主も含めて、退けるのが関の山なのだ。
滅鬼丸だけは彼女の元に残っているが、今のままでは誰も使えず、まさに宝の持ち腐れと言えよう。
「はい、まだ見つかりませぬ」
側近の答えが虚しく響き、巫女は顔を曇らせる。
「そうか。早う見つかって欲しいものじゃ」
彼女は呟いて、祈るように天を仰いだ。
一方、その頃。淫獄では、玉座へ腰を下ろした太刀薔薇に傅いて、フェラチオ奉仕を熱心に行う衛がいた。
「ククク……初めの頃も上手かったが、また一段と上達したな。そろそろ淫獄暮らしにも慣れてきたんじゃないのか? なあ、衛」
少しだけ皮肉を込め、淫獄の王が彼を褒めそやす。
すると衛はフェラチオを中断し、大淫鬼を睨めつけるものの、右手は彼の逸物を慣れた手つきでいやらしく扱き続けている。
あれから彼は、ずっと太刀薔薇に犯し抜かれて、妖艶な雰囲気を身に纏っていた。
「嫌ですわ、太刀薔薇様ったら。今の私は衛じゃありません、百合衛ですわ。七日七晩もあなたに犯し抜かれたおかげで生まれ変われましたのよ? もうお忘れになって?」
蠱惑的な微笑みと弾んだ声に、応じる太刀薔薇もまた、面白そうに笑う。
「まさか! 俺もあのときほど愉快に感じたことはなかったぞ。大抵の奴は淫獄の快楽を味わい続けると自我が壊れてしまう。なのに、お前は自我を失うどころか、俺が与える攻めに馴染み、淫獄の快楽にも慣れ親しんだ。おまけに、新しく自我を創り出し、環境に適応させてしまいよるとはな。フフ……だがおかげで、よきつがいと呼んでもいいほど俺好みの、稀代の名器を持ついやらしくてイイ女を手に入れられた。全く以って、嬉しい誤算よ」
百合衛の頭を愛おしげに撫で、太刀薔薇は目を細める。
「ええ、本当に。私も太刀薔薇様の余興で、女に変えられていなかったら、こんなに逞しくて、素敵なオチンポに出会えていませんわ。見ているだけで惚れ惚れしてしまいます。ほら見てください、あなた。早くオチンポを咥えたくて、私のオマンコはもうグッショリ濡れそぼっていますわ」
仰向けに寝転んで大きく股を開き、百合衛がパックリと両手で秘裂を割る。膣口が物欲しげに開閉を繰り返し、そのたびにトロトロと水密が流れ落ちる。ゆっくりと誘うように唇を舐め、情欲で濡れた目をシコリ勃った乳首越しに太刀薔薇へ向ける彼女は、美しくもいやらしかった。
「おいおい、そんな顔をされては俺も辛抱堪らんぞ? クク。しかしまあ、よくもここまで淫乱毒婦に急成長したものだ。七日七晩の経験を重ねただけで、ついさっきなど俺が先にイかされてしまったからな。お前が初な娘のときに仕込めて、俺は果報者だよ」
玉座を立ち、そそり勃つ剛直を百合衛に向けると、太刀薔薇はそれを彼女の中へ沈めていく。
「あはあぁん……。何度味わっても飽きない、素敵な感触ですわ。太刀薔薇様の宝刀は。けれど、太刀薔薇様が果報者なら私だって。初な娘のまま、あなたに犯されたからこそ、私は淫獄のとてつもなく深い悦びを味わい知れたのです。この胸に今は、感謝しかありませんわ。はあぁ……イイ……。硬くて……太くて……奥深いところまで届いて……。心も体もいっぱいに満たしてくれる、最高の逸品……。これが、私だけのものなんて……」
ワナワナと、百合衛の体がアクメの予感に打ち震えている。
「……こんな贅沢、他にありませんわ。ああ、太刀薔薇様……。動いて……。私の体で……たくさん気持よく……おほおおおぉっ!」
ズルリと引き抜き、グチュリと突き込む。大淫鬼が動くたび、獣の咆哮を思わせる嬌声が響いた。
「やれやれ、男心をくすぐる嬉しいことを言ってくれる。それではお前の期待どおり、中でタップリ出してやろう」
途端に、中出し宣言された百合衛が感極まり、お礼を述べる。
「そんな……ああ……勿体ないお言葉。この体に、お情けを戴けるなんて……。ああ、ぜひ……ぜひお願いします。ああ……感激です……」
中出しされる期待で、彼女の膣が勝手に蠢き出す。乳搾りでもするかのような、無段階の締めつけと締め上げが立体的に幾度も行われ、淫獄の王も堪らず声を上げた。
「くうぅっ! 何と男泣かせな名器よ! イかせるたびに成長・変化しよる。いくら俺でも、もう我慢できん! 出すぞっ、百合衛っ!」
太刀薔薇が言い終わらぬうち、クッと尻が引き締まり、射精が始まった。
すると百合衛の子宮口が亀頭へ吸いついて、ビュルビュルと白いマグマが彼女の子袋へ吸い込まれていく。
「あふあぁ……イクぅ……。精液……いっぱい、注がれて……子宮が……。はあぁん……気持ちイイようぅ……。熱くて、ドロドロの精子……。最高……。あぁんっ……もっと……欲しいぃっ」
両手足で太刀薔薇にギュッと抱きつき、ヴァギナをペニスの根元へ押しつけながら、熱い吐息混じりに、耳元で甘い囁きとともに口づけを求める百合衛。そんな姿からは、彼女が元々男――しかも退魔師――だったなどと想像もつかないだろう。
淫獄に住まう太刀薔薇のつがいとなった彼は、いつ果てるとも知れぬ底なしの快楽に興じていた。
話が変わりますが、更新停止している「淫ベーダー」などの作品の続きも読みたいです。販売とかでもよいですから続きが読みたいです。
いいデスが、絵がほしかったっす!
こういう話結構好きです!!!!
続きもあるならぜひお願いします!!!
出版したら教えてください!!!!
あ、それは最後の方にかいといてください!!!!
出たら買わせていただきます!!!!