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パラサイト If

2015/09/09 19:50:04
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眼前の女医が操作するPCには、画像が四枚映し出されていく。多少の差はあるが、いずれも年若い女性だ。
こちらを見ながら、女医は使い慣れた物のように、PCを動かしていた。

「分かってると思うが、俺達が大気圏内で活動する為には、そこに生息する生き物の体に寄生しなければならない。
現在この星、地球ではホモ・サピエンス種と呼ばれている者達が覇権を握っている。数も多い。行動する為の体には事欠かないだろう」

真空内に保たれたチューブの中で、細長い体を蠢かせる。了承の合図だ。

「彼女らは今日診察予定が入っている、『俺』の担当する患者達だ。お前を一刻も早く寄生させる為にも、この中から身体を選んでもらうぞ」

是非もない。このチューブは緊急用で、そう長くは保たないからな。体が得られるなら文句は言わないさ。

「左から、阿久津いろは、24歳。キャバ嬢で性行為を好む。橘川早苗、17歳。スポーツを得意としている。
春原ともえ、12歳。対人赤面症の持ち主だ。天堂野乃花、19歳。家事のレベルが非常に高い。
寄生先によってお前の性格も少々変異が出てしまう。よく考えて選べ」

この4人しかいないのならば、誰にするか。
そうだな…、彼女にしよう。

女医が趣味で覚えた催眠術によって、俺の寄生先になる女性は目に光が無く焦点も合っていない。
緊急用チューブの開口部を開け、彼女の口に近付ける。ここから先は迅速にやらねば。
半開きの口から身を滑り込ませ、体内に潜り込む。
事前に知った人体構造の知識を頼りに脳へたどり着き、ワーム状の体を脳幹に接続する。

「あ、か、っ、ぐぇ、げ、ごぁっ」

肉体を俺の支配下に置こうとする度に、元の持ち主の意識が潰れた蛙のような声で抗議をする。
だが、そんな物は関係ない。
痙攣する四肢の感触を知って、神経を通して痙攣を止める。
身体の中心から支配領域を徐々に広げ、彼女の肉体をどんどんと俺の身体にする。

「…………」

抵抗で疲労した体を回復させる為に、大きく息を吸い、吐いては整える。

「すぅ……、はぁ………」

人間としての身体を見下し、視界に入った手を何度か握り込む。

「終わったみたいだな」
「…あぁ、恙なくな」

見下ろしてくる女医に、そうだと言わんばかりの笑顔を浮かべて、応えてやった。


Case 1 阿久津いろはの場合

健康診断のための通院と称して、女医と接触を図る。

「その後の経過はどうだ?」
「あぁ、順調よ? 記憶も意識の乗っ取りも問題無いし、仕事場の人間も贔屓の客も、いろはが『俺』になってる事に気付いてないわ」
「本人その物に成り代わっているのだからな。…性行為の方はどうだ?」
「そっちの方も順調よ。みんな『俺』の体を求めてくるから、入れ食いね」

豊満な胸を持ち上げながら、小さく唇を舌でなめずる。
いろはの記憶で知っていた性行為だが、実際に自分で行うとなると、あまりにも強烈な刺激だった。
挿入される男性器の熱と、膣内を押し広げられる感触。胎内に吐き出される精の濃厚さを子宮で味わうたびに、脳髄に入り込んだ本体にまで快楽の電流が流れていく。

「特に贔屓にしてくれる古賀さんなんて…、思い出すだけでもう、ねぇ…」
「…バルトリン線液が漏れているな。それ程までか」
「あらやだ。でも本当に良かったのよ? 誰よりも固くて太くて、真珠もたくさん入ってて…」
「で、古賀とやらは他の仲間を入れる価値はあるのか?」
「…微妙ね。我が強いから、仲間もそれなりの相手じゃなければ逆に『喰われる』かも」

俺も女医に入り込んだ奴も、なにも生存する為だけに寄生したわけじゃない。
すべからく生命体が持ちうる本能。繁殖の為に行動をしているのだ。

「ただ…」
「ただ?」
「古賀の奴の右腕が、良い器かもしれないな」

古賀がうちの店にやってくる際にも、必ず連れている右腕は優秀なだけでなく、こちらにありがたい意味で精神的にも恵まれている。

「言われたことを淡々とやり続ける奴だから…、『俺の子』を植え付けられれば、良い手足になってくれるかもね」
「その精神性なら、『子』だけでも問題ないか。その右腕と次に致すのはいつだ?」
「今日よ。『子』の準備なら、前にした時に既に作ってあるから、繋がってる間に入り込むことは簡単だわ」

『子』とは、いわば俺の分体のようなものだ。その個体に明確な意志は持たないが、余程人間としての我が強くない限りは、親である俺に服従する配下が出来上がる。
これを古賀の右腕、海石榴(つばき)という奴に寄生させ、奴に古賀を追い落とさせ後釜に座らせる。そうしたいだけの魅力が古賀に、と言うよりは古賀の懐にあった。

「それよりお前の方こそ、『子』の産み付けは終わってるのか?」
「あぁ。下準備は終えてるからこそ、見咎められることなく患者を使ったんだ」

女医の口ぶりからすれば、恐らくここの院長さえも女医の『子』になっているのだろう。

「いろはこそ、海石榴とやらに『子』を植え付けるだけで終わらせるなよ?」
「あぁ。古賀さんを追い落として、活動の為の資金を頂かないとね」

無論それだけで終わる筈が無い。正確に言うのなら、古賀の持つ会社、それ自体を海石榴に奪わせる事で、さらに俺達の根を張るのだ。
社員の中で目ぼしい相手を見つけて『子』にするも良し、仲間をさらに寄生させるもよし。
…そうして準備を行って、初めて俺達の目的を果たす下準備が出来る。

「目的は1つ」
「俺達の《繁殖》だ」

この星に流れ着いてしまった俺達は、人間に寄生して体を得るしかない。そうして得た身体を徐々に改造して、寄生先の同種との交わりを経て、線虫のような俺達の子孫を産めるようになる。
そうして産んだ子孫たちは、また別の相手に寄生していく。人間がいなくなれば、寄生用の人間を産めばいい。
いろはの体ならば、いい子孫が沢山産まれるだろう。線虫としての子孫も、人間としての子孫も。

「分かっているなら問題はない。では行って来い、いろは」
「えぇ、そうさせてもらうわ。『子』を与えてくるのと一緒に、存分に愉しませてもらうんだもの」

これから先の逢瀬に、乳頭が尖りバルトリン線液が染み出してくる。
沢山、楽しめそうだ。

「うふふ…。いい『子』ね。そう、もっと突き上げて…、ぁっ、そう、そうよ…!」



結合部越しに侵入させた『子』に寄生された海石榴は、俺の下から男性器を突き立てている。
僅かにつながる『俺』と『子』のリンクによって、俺に海石榴の、海石榴に俺の性感が繋がっていく。

「あっ、あ、いろは様…っ、俺の中が、抉られ…っ、は、かぁ…!」
「そうよ海石榴…、それが、女の感覚…っ、んぅう、そう、そこ、子宮が…っ」
「はい、はい…! 良いです、脳内麻薬が止まりません…!」

慣れてしまっていたからか、貪欲に快楽を求めるいろはの性欲は、海石榴の理性を消し飛ばしてしまっていた。
いろはの体が求める所を突く様に海石榴が動き、それによってさらにいろはの体が疼きを訴え、さらに海石榴が動く。
その繰り返しを行う事で、ベッドの上の2人は、『男の体と女の体を持つ1人の俺』になっていた。

「あぁ、ダメですいろは様…、奥に、奥に欲しいんです…!」
「そう、求めなさい海石榴…っ、あ、ん、くぅ…、出るっ、射精する!」
「あぁぁぁぁぁ!」

海石榴が男としての声で喘ぎ、自らの精液をいろはの子宮に叩きつけ、その熱をリンクによって識る。

「あぁ…っ、…はは、あぁ…」
「ふふ…、これが、『子』とのリンクなのね…。…アイツも、楽しんでるのかしらね」

女医はきっと、これより多く『子』を作ったのだろう。
乱交させればきっと、快楽の比は今の俺達ほどではないだろう。倍々ではない。乗算になっていくだろう。

「その為には…、解るわね、海石榴?」
「はい…。古賀の奴を消して…、奴の会社を自分のモノにします…」

海石榴の熱を胎内で感じながら、俺の子宮内では奴の精液と俺の卵子とが結合し、既に新しい『子』が生まれつつある。

「海石榴は会社を…。『俺』は、そうだな…」

男女の交わりでこんなにも気持ちよかったのだ。次は…、キャバクラの仲間に『子』を植え付けよう。マネージャーを抱いて『子』にし、そこから次第に仕事仲間を俺の支配下に置くのだ。

「「んぉ…っ」」

その未来に興奮したのか、快楽に濡れてしまった俺の膣と、それにリンクする海石榴の肉棒。全く同じ声が出てしまった。

「…じゃあその為に」
「はい。…その為に、たくさんの『子』を作りましょう、いろは様」
「えぇ、沢山…、沢山ね?」

俺を除いたマネージャーとキャスト、総勢54人。全員分の『子』を用意する為に、また海石榴と行為を開始する。

沢山繁殖しよう。70億もの人間がいるこの地球なのだ。完全に支配下に置くまでに、沢山の快楽を追及していこう。
俺達が産み増え広がっていく。その未来を想像するだけで、もう、止まらない。
あぁ、命の本能の素晴らしきかな。

Case 1『侵略者』


Case 2 橘川早苗の場合

橘川早苗の家に戻り、改めて鏡で自分のものになった体を確認する。
日に焼けた肌に、健康的に引き締まった体。少し女性的な起伏に乏しいが、それでもまだ未来がある。

「帰ってきた…、帰ってこれたんだ…、俺は…」

肉体を持ったことに、それが例え女であったとしても、俺は歓喜に震えずにはいられなかった。
引き締まった太ももは大地を踏みしめている。水も空気も節約を考える必要はないし、無重力で骨が弱っていく心配をする必要も無い。
あの暗く何もない宇宙空間で耐えるような生活は、もうしなくて済むんだ。

「あははは…、あっはははははは…!」

体を得て、実感して、ようやく感情が付いてきた。
あぁ、こんなにも。こんなにも地球の上にいられることが、嬉しいなんて!

「あぁ、もうたまんない…! 走ってこよう!」

溢れる気持ちが抑えきれず、スニーカーに履き替え走り出す。
大地を踏み締めて蹴り、前に進む。単純な慣性の法則に加えた、重力による圧迫感。肉体に入って身体を動かして、なお新鮮に感じる懐かしい感覚。
少し疲れるだけでは収まらない。もっと、もっと走っていたい。体があることを、地球に帰ってこれたことを噛み締める為に。
早苗の習慣としての走り込みをやりながら、長かった宇宙生活の淀みを流すように、身体から玉のような汗を流していった。
「俺」が元・人間だったという事を言って、果たして誰が信用するだろうか。
宇宙飛行士として地球を離れたが、突如起こったマシントラブルによって宇宙を漂っていた所、遭遇した宇宙人によって助けられた。
…正確に言えば、彼らが俺達人間を知る為に、宇宙に出てきた俺達をサンプルとして捕獲し、死にかけていた俺達を生かす為、自らの仲間として迎え入れる為に改造したのだが。
女医に入っている奴は俺達を改造した奴であり、自分達が地球の場所を知る為に来た先行調査員でもある。

「…ふぅっ。やっぱり男の時と違うなぁ」

一頻り走り終え、シャワーを浴びながら自分のものになった体を見下ろす。健康的な、少女の体だ。



「…っ」

線虫状態の体でしばらく忘れていた性欲が、落ち着いてきた今になって甦ってくる。心臓が早鐘を打って、鼓動に沿って乳房が小さく震えている。

「は、ん…っ」

乳首を抓ると甲高い声が上がる。走る度に擦れていた箇所が、今更のように熱を帯びてきた。

「良いよな…。どうせ俺の…、アタシの体なんだしさ」

手で胸を揉んでいく。男の時より頼りなさげな手で揉む、ダイレクトに返ってくる胸の感触は、脳幹に居座る俺に痺れるような快感を届けてくる。
俺個人てはやり方を知らない女のオナニーも、早苗の記憶を使う事でスムーズに行う事ができる。

「んっ、っふ、くぅ…!」

胸を弄る度に甘い声が上がり、段々と身体が運動とは異なる意味で火照ってくる。

「あぁ、女のオッパイって、こんなに良いんだ…」

硬くなって来た乳頭を抓むと、

「んひっ!」

その硬さに比例するように、そうなる前より強い快感が頭を走る。似たような感覚はあった。そう。

「これ、勃起したちんこみたいな…。でも、そことはちょっと違うような…」

視線を下す。遮るもののなくなった股間部分では、シャワーのお湯とは異なる液体が漏れていて、引き締まった太ももを伝い落ちている。
胸から手を放し、そっと股間に当ててみる。

「ふぁ…!」

ぴちゃ、と音を立てて触れたそこは、ちんこの時よりずっと敏感だ。指で割れ目をかき分け、よだれを溢すまんこに指を差し込む。
「あっ、は、ふぁ…、っ! あ、これ、すごい…! 女の、アタシのオナニーが…!」
これも男の時より強く激しい快感を脳に、俺の本体に注ぎ込んでいく。それだけで、もっと欲しくなって、手が止まらなくなる。
くちゅくちゅと指を動かす自慰行為は、シャワーの音にかき消され、それを覆うように俺の声が上がっていく。

「あっ、ダメ、こんなに…っ、クるっ、クるぅ…! いくぅぅぅぅっ!!」

はしたなく大声を出しながら、股座から潮を吹いてしまって。
早苗としては数日ぶりの、俺としては初めての、女のオナニーが終わった。

「はぁー…、スッキリしたー…」

パジャマに着替え、ベッドの上に寝転がっていると、早苗の携帯が震えだす。表示されたのは見た事のない番号だが、手に取り通話を開始する。

「もしもし?」
『解るだろう、『俺』だ』

電話をかけてきたのは女医だ。番号からして体を使ってる奴の携帯なのだろう。

「それで、どうしたんだ?」
『いやなに、お前の仲間も新たに体を得たからな。チーフに伝えておくべきだと考えただけだ』
「ありがとよ。…アイツ等の連絡先とか、分かるか?」

自慢をする訳ではないが、俺はシャトルのリーダーだった。生死を共にした仲間が5人。全員どうにか生きていて、全員女医に入った奴に、今の体に改造されたのだ。
みんなが地球への帰還を求めて、何はともあれ新しい体を求める為に、女医の先行調査に着いてきた。

『問題ないが。お前はどうするんだ』
「何がだ?」
『シャトルのマシントラブルが意図的な物だった事は伝えた筈だ』
「それを聞いて、俺達が復讐をするとでも?」
『メンバーの数人は乗り気だったように思えたが』
「生憎と、そこまでやる気は俺には無くってね。それに…、もう終わってるよ」

テレビを付けると、シャトルに意図的にトラブルを起こすよう設定し乗組員を殺したという事で、宇宙センターのお偉いさんが逮捕されたニュースが流れている。
女医達の星の技術で、その情報を全マスコミにリークしたのだ。

俺達が疎まれていたのは知っていた。だからこそ、マシントラブルに託けて、それこそ調べようのない宇宙で殺すつもりだったのだろう。大層金のかかる殺人方法な事だ。
けれど、奴は最低6人の殺人、ならびに国家資金の私的運用ということで、まず死刑は免れないだろう。
それだけで、十分なのだ。

「またあいつ等とチームを組みたいからさ。…何をやるかは決まってないけど、とりあえず話したいんだ」
『…そうか。できれば俺達の調査を手伝ってくれるとありがたいんだが』
「太陽系の調査と、可能であれば居住権の獲得か。…長くなるんじゃないか?」
『あぁ。本格的に地球側と交渉を行う前に、俺達が住める場所…。地球上で無理ならば、付近の星でもいい。その辺りに住めないか、確認をしたくてな』

女医の中に潜む奴は、新しい故郷を探す宇宙の放浪者だ。だというのに助けてくれた。
宇宙の暗闇の中にあっても、心があって繋がれるのなら、拓ける未来はきっと大きなものの筈だ。

「よっし、俺は手伝うぜ。お前達に助けてもらった礼も、ちゃんとしたいしな」
『そうか、助かるよ。…ありがとう』

きっとチームの仲間も同じ意見の筈だ。
こうして未知との遭遇を経て帰ってきたのだから、できる事は多いだろう。

「さぁ…、明日から忙しくなりそうだ」

宇宙に出来た最初の友の為に、頑張るとしますか!

Case 2『帰還者』


Case 3 春原ともえの場合

「……」

女医を前にすると顔が赤くなる。常に下を向いた視線は、内心の自信の無さから来るものか。

「身体は動かせるようだが、精神面は平気か?」
「…あんまり、平気じゃないかも」

出てくる声も気弱で、今にも消え入りそうになっている。

「無理をするな。もう奴らが追ってくる筈もない。安心しろ」
「…うん」

チューブ内に居られる時間も少なかったが、身体を早急に得る為に急ぐ理由がもう一つあった。
俺達は逃げていたのだ。宇宙に版図を広げようとする俺達の組織から。
別の宇宙人の体を使い逃亡し、何度も体を乗り換えては、宇宙の遠くへと走り、そうしてようやく辿り着いたのだ。
俺達の昔の仲間が、感知するはずもない辺境の辺境、この地球という星に。

「…長かったな」
「うん、長かったな」

女医と俺は、互いに思いを馳せる。ここに至るまで、どれだけの体を使っただろうか。
身体に寄生できる種族という括りが必要ではあったが、ともえの両手の指では足りない程の体を渡り歩いた記憶がある。
それほどまでに永く、遠い距離を、俺達は逃げ続けていて、ようやく落ちつける場所を見つける事ができた。
地球でならこいつと、俺の無二のパートナーと生きる事ができるだろう。

「けど…」
「あぁ。…困ったな」

女医が俺の悩みに頷く。ともえの体が若すぎる。
この体が未成熟だと言うのは、周りの地球人を見ても気づいてはいたのだが…。

「…………」
「…何?」

女医がいつも以上のアルカイックスマイルで俺を見てくる。…分かってはいるが、こいつはそういう奴だ。

「いやなに、子供の体では不便そうだと思ってな。どうだ、女体の動かし方を教えてやろうか?」
「あぁ…、頼むよ…」

元々こいつにとって情欲の対象は、自分より年若い子が好きなのだ。だから女医の体を選び、それより年下になる患者ばかりを選定してきた。
…その上で最も若い体を選んだ俺も、期待していない訳ではなかったのだが。
女医に空いた病室に連れ込まれ、服を脱がされる。女医の色気に満ちた紫色のインナーと比べると、ともえの下着はまだお子様のそれだ。
それさえも脱がされ、起伏の少ない裸身を晒される。

「それじゃあ、教えてあげよう。女としてのいろはをね」
「…女同士のいろはじゃないか?」
「そうとも言うな」
「そうとしか言わないよ」

押し付けられるように唇を合わせ、女医の行いに応えるように舌を絡めていく。

「んむ、ちゅ…」
「ふぁ、はぁ…、ちゅる…」

体格差では勝てる筈もなく、仕方なしに女医の行為を受け入れていく。乱暴気味にされる形になるが、不思議と唾液同士の交わりが気持ちよく感じてくる。

「ん、ふ、ん…っ」
「ふふ…、大丈夫だよ、そんなに怖がらなくても」

無茶言うな。ただでさえともえの体が恐がってるんだ、肩の力を抜こうとするだけで精いっぱいだよ。

「無理に最後まで行くつもりは、今は無い。だからまずは、俺を攻めてほしい。ほら…」
「もう…、はむ…っ」
「ふ、ぉお…っ」

女医の差し出した乳房の、ブラを外して中身を露出させる。興奮しているのか硬くなってきた乳頭を口の中に含み、甘噛みして転がしていく。
それだけでは終わらず、中身の出る筈のないその乳頭を吸い、女医に奉仕をしていく形を取る。

「あぁ…、そう、そうだ、気持ちいいよ…。俺の胸は、おいしいかい…?」

視線だけで女医の顔を見ると、頬を赤らめてとても気持ちよさそうだ。これだけで終わらせるのも、向こうは望んでいないだろうし。

「うぁ! お、おい、そこもして、くれるのか…?」
「…ん」

胸を攻めながら、手を女医の股座に伸ばして三角地帯を撫でさする。短く生えた茂みをかき分けて、指先で割れ目に触れる。
女医に寄生した奴の嗜好か、少女であるともえと裸で触れ合える事で、すでに股間を濡らしていた。
指先に愛液をまぶして、割れ目を少し潜らせて前後に擦っていく度に、くちゅ、くちゅと水音が聞こえるようになってきた。

「ん、はむ、ちゅ…」
「はぁ…っ、もっと、もっとしてぇ…」

俺の目の前で女医が悶えている。女としての愛撫だけではあるのだが、それでも随分と気持ちよさそうに。

「入り口だけじゃなくて、中にも…、はぁぅ…!」

要望に応えて、短い指を中に差し入れる。望んでいたモノを得られたとばかりに、女医の秘所の中身は、俺の指を優しくキツく包み込んでくる。
人差し指と中指の二本を差し込み、前後させながら、時折膣壁を引っ掻くように指を曲げてみたりする。
その度に女医の声が上がり、もっとして欲しいとばかりに身体をすり合わせてくる。

「……」

こいつ、自分がされるだけされて気持ち良くなりやがって。俺もちゃんと相手をしてほしいんだよ。
子供だてらに性徴を迎え始めた身体だから、うずいて来て仕方ないのに。
…もう、仕方ない。

「それじゃ、次はこっちに…」

ぐり、と親指をクリトリスに押し付ける。ねじ込むように、押しつぶすように、撫でていくと、俺の上で女医の体が跳ねていく。

「はぁっ! こっ、んな…っ! そこまでする、なんてぇ!」

随分と気持ちよさそうにする女医は限界が近いのか、声が出るのを押さえようと口を手でふさいでいる。
どうせだ、イかせてやれ。
クリトリスを痛い位に指で挟みつぶすと、女医はくぐもった、甲高い声を上げて、イった。

着替えを終えて帰途に就いた。ともえの家族構成は母親一人のみで、仕事に出ておりまだ帰ってきていない。
…しかし、どうにも先ほどから女医との行為が尾を引いている。パンツの中が微妙に濡れてしまっており、落ち着かない。

「……隣に、行ってみようかな」

ともえの記憶の中では、隣の部屋に住む高校生、年上の男性に憧れと恋心を抱いているのだ。

「あの人なら…、……ちゃんと抱いてくれるかな…?」



行為への期待と不安を抱きながら、少し赤い顔をどうにか落ち着かせようとして深呼吸する。
けれど止まらない。心臓は早鐘を打って、顔が火照ってくる。
もしかしたら子供の戯言と一笑に付されるかもしれないけど、少し頑張ってみよう。
逃げた先のこの地球で、奴らに見つからずに生きる為には、可能な限り原生生物の地球人と同じ形で生きていかねばならないのだから。
目立たず、ひっそり生きていかなければならないのは辛いことかもしれない。
けれどそれは、逃亡を企てた俺達に架せられた枷なのだ。
オドオドしながら生きるしかないのだけれど。どんな形になったとしても、生きていたかったのだ。
この思いだけは、誰にも否定させはしない。
させて、たまるものか。

Case 3『逃亡者』


Case 4 天堂野乃花の場合

「天堂野乃花。銀河連邦警察機構の現地協力員・松永統四郎の恋人…」

脳内に記憶されたパーソナルデータを確認する。俺の目的は、地球人の鹵獲と売買の邪魔をする、松永統四郎の付近に近付き、隙を見て殺害する事だ。
本来のエージェントは怪我を負い、未だ治療中。現在は松永が単独で動いている為、奴を無力化できれば暫くは好きに出来る。
目的の為にも奴に近付いて…、いるのだが…。

「どうしたんだ野乃花…、何か今日、いつもより近いぞ?」
「良いでしょう、別に? こうしたいなって思っただけなんだから」

どういう事だ、これは。近づくだけで心臓が早鐘を打っている。
戦闘後の、集中力が切れた松永を狙うために、仲間に囮をしてもらった。戦闘用のメタルテックスーツを脱いだ奴の姿を見ただけで、心のどこかで募っていた不安が安堵に変わる。

「…大丈夫だ、野乃花。エイトが復帰するまでの辛抱だから」
「うん…、でも、やっぱり心配で…」

抱きすくめられ、血と汗の匂いを鼻に吸い込む度、「野乃花」が主導権を握っていく。俺の理性ではなく、身体が、本能と言っても良い部分が、松永を求めていく。
身体の記憶が俺に伝えてくる。
大切にしている、傷付いてほしくない、傍にいてほしい。
野乃花の体内に入って、一ヶ月の間に、俺は「野乃花」の記憶に引き摺られていっている。

同棲している家に戻り、夕食を作る。栄養補給に手間をかける事に最初の内は疑問を抱いたが、松永が美味そうに食べる姿を見る内に、その疑問は消えていく。
手を繋ぐ度に、放さぬように互いの手を握り合う。
キスをする度に、多幸感に包まれる。
抱き締められる度に…、腕の中にいたいと思ってしまう。
この気持ちが分からない。解って、言葉にしてしまうと、戻れないような気がするのだ。

「くぅ…、すぅ…」

寝巻に着替えて、同じベッドの中で眠り合う。疲れているのか、松永は「野乃花」を抱いた事は一度も無い。
自分で言うのも何だが、扇情的な体を前にしてよく禁欲できるものだと思うが…、それだけ大事にしてもらっている事が、嫌でも理解できてしまう。
同時に、その想いに応えてあげなければ、とも考えてしまい…、

「もう、だめ…。…統四郎…」

名前を呼ぶ。何度も、何度も。

「統四郎…、統四郎…、統四郎…!」

呼ぶ度に、「俺」の中に「野乃花」が入り込む。
唇が近づき、眠る統四郎の口を吸い始めてしまった。

「んちゅ…、ちゅ、ちゅ…っ」

それだけで悦びが溢れ、それだけでは止まらぬとばかりに、顔の位置は下の方へと移る。
ズボンを下し、一物をまろび出し、手で弄り始める。
ただの性器のはずが、何故だか統四郎のものだと思うだけで、他に代えがたいものだと思えてしまう。

手で弄り、息を吹きかけ、大きくなってきたことに心が躍る。

「あ、む…」

歯を立てないように、唇で包みながら、咥え込む。
風呂上り、しっかり洗ってる、でもちょっと苦い。カリ首を舌でなぞりながら、裏筋を舐めていって。

「むぁ…っ、って、野乃花!?」
「んむ? …起きてくれた、統四郎?」
「あぁそりゃ起きる…じゃなくて、何をしてるんだよ」
「…したく、なっちゃったの。もうずっと、我慢できなくて…」

上目使いに統四郎の顔を覗き込む。俺が寄生した事で獲得した暗視能力で見ると、戸惑いながらこちらを見つめている。

「だから俺を襲おうとしたのか? ネマトーダ星の寄生生命体?」
「ッ!?」

出身星の名前を出され、途端に血の気が引いた。バレていた? 一体いつ!?

「…3週間前から気付いてたよ。どうにも野乃花に違和感を覚えて、メタルテックスーツのスキャニングアイで見た時からな」
「……解ってて…、統四郎は…、俺と一緒にいたのか…?」
「そりゃぁ悩んだよ。ネマトーダ星の奴に寄生されれば、もう助からない。取り除いても…、殺してしまっても…、野乃花が居なくなってしまうから…」

心がちくりと痛む。統四郎は「野乃花」を好いている。表情や言葉から、それがありありと見えてしまう。
どうにもできない状態で、統四郎は俺と居続けたのだ。

「なぁ、ネマトーダ星の奴…。お前に聞きたい。お前は…、このまま母星の仲間の所に戻るつもりか?」
「……悩んでいるよ。戻らなければ、と思ってる。けど…、けれど…」

険を孕んだ目を見るのが恐くて、顔を伏せて服を掴む。

「俺だって悩んでるんだよ…! 統四郎が「野乃花」を大事にしてくれる度に、体の中の想いが「俺」を蝕むんだ!
その度にどんどん統四郎が大切になってくる。傷付いてほしくないって、抱いてほしいって、キスしてって…、思っちゃうの…」

俺は今や「俺」であり、同時に「天堂野乃花」でもある。どちらの想いもあって…、ごちゃ混ぜになって、逃げ場を求める様に涙となってあふれ出てくる。

「どうしよう…、どうしたらいいの、統四郎ぉ…。戻らないといけないのに…、戻りたくないよぉ…」

少しでも心を落ち着けたくて、統四郎の胸に抱き着いて泣きわめいてしまう。
泣き続け、そっと背中に手が添えられた。統四郎の手だと気付いた瞬間、身体がこわばってしまう。
もう片方の手で顔を上げられると、俺を覗き込む統四郎の顔。眼はどこか哀しそうで、でも優しくて。

「……」
「……、っ」

どちらからともなく顔が近づいて、唇同士が触れ合った。
少し重なるだけの、恋人同士のキス。
口を放し、糸を引いて、統四郎は俺を見据えて口を開いた。

「戻るな、戻らないでくれ…」

「え…?」

驚いて目を見開く。少しばかりの罪悪感と、同時に大きな歓喜が胸の中に湧き上がる。

「本当の野乃花がもうどこにもいない事は、解っちまった。…けど、その上で…、お前まで失ったら…、俺は立てなくなっちまいそうだ…」

統四郎は語ってくれた。俺に寄生されてしまったと言えど、「天堂野乃花」と共に暮らしてきた事。
その上で感じ続けていた、憎み切れない感情のこと。俺だと解っててなお募る思慕の念。

「身体がそうだからって思ってるだけかもしれない…。けど…、それでもって、思ってしまうんだ…」
「統四郎…」

俺が奪ってしまった事で、結果的に脆くなった統四郎の心。けれどそれを立たせていたのも、間違いなく俺。
こんなふうにしてしまった責任、こうなってしまった責任。
互いに寄り添わなければいけない状態に、なってしまったからこそ。

「わかった…。一緒にいよう?」
「…野乃花」

寄り添うように胸の中に抱きすくめられる。

「俺はね、体の想いが理由かもしれないけど、統四郎が好き…。離れたくないな…」
「俺も、お前と一緒にいたい…、野乃花が好きなんだ」
「いつかは「俺」も含めて、好きになってほしいな…?」
「…努力するよ」
「ねぇ統四郎…」
「何だ?」
「キスしよ…?」
「…あぁ、そうだな」

「なぁ統四郎?」
「どうした、野乃花」
「…2人って良い物だね」
「あぁ、本当にな…」

夜が明けるまで身体と行為を重ねて、胎内に溢れる精液の存在に頬が緩んでしまう。
触れ合う肌の温度と、熱の余韻。その全てが、俺と野乃花を融かし一つにした。
戻りたいと思っていた心も既になく、統四郎の隣にいたいと思うようになっていて。

「…統四郎。次からは俺も戦うよ」
「お、おい野乃花、いきなりそんな…、っていうかネマトーダの力で出来るのか?」
「身体の改造になっちゃうけど…、戦闘用の形態に変身出来れば、なんとかね」
「…そうか。…でも、なぁ。俺だって野乃花には傷付いてほしくないんだよ」
「それは俺も。…言い合ってちゃ止まらないね」
「そうだな…。…よっし、腹をくくった!」
「何が?」
「グダグダ言っても仕方ない。…俺が野乃花を守れるくらい強くなれば良いんだ」

拳を握り、決意を固める統四郎を目にして、俺も決意を固める。
好きな相手と共に戦う事は、辛くないだろう。元仲間たちと戦うのは辛いだろう。
けれど、それを理解した上でこの道を選んだのだ。
どれだけ辛くても、かならず戦いぬいて見せる。
胸の中に抱いた愛を、本物だと信じていたいから。



Case 4『反逆者』
同じ世界の別の可能性、というパターンはスライムで手掛けてたので、
今回はいっそ「選んだ人物ごとに別の世界にしよう」と考えてました。
Case毎に分ける内容で悩んでた思い出。
罰印
0.1460簡易評価
3.100ゆめうつつ
なかなか思い切ったことをしてますね。とはいえ、ひと粒で4度美味しい展開は、評価に値します。これからも頑張ってください。