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朱鬼蒼鬼 独虚遊戯

2016/08/29 19:20:54
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外:神技模倣
語り手:蒼火

※シン・ゴジラの一部ネタバレがあります。
見たくない人は画面下までスクロールしてください。


ある怪獣映画を見てきた。日本の特撮では息の長い、怪獣映画シリーズの最新作だ。
俺一人で見に行っても良かったのだが、昔からシリーズを知っているという裕を伴って、劇場に向かった。
復活を待ちわびていたのだろうか。長いシリーズを作ったという事はそれを支えてくれる支持者がいるということ。それを証明するかのように劇場には多くの人々が詰めかけており、隣り合った席を確保する為に少しばかり苦労もした。
観劇の為の値段と人波の多さによる苦労は確かにあったが、それだけの価値は確実に在ったと思う。隣で見ていた裕は興奮しっぱなしで、後でそれはもう熱のこもった弁で俺に“どこが良かったのか”を身振り手振りを交えて伝えてくれた。
そこまで好きだったのかと思い、同時に裕が男の時から所持していたシリーズの映像作品を(マグロは除いてぶっ続けで)見ることになり、休憩時間も含めて3日は潰れてしまう結果になった。
ちなみに全部徹夜だ。
全てを見終えて風呂に入り、泥のように眠った後怪獣王の出てくる夢を見て、起床後に朝飯を作りながら思った事がある。

「駄目だありゃ、俺じゃ勝てねぇ」

鬼としてはそこそこに強い、と自負している俺ではあるが、正直に言えば正真正銘の「神」の類には勝てない。
邪神の類なら多少なりとも手間はかかるだろうが、戦えはする。しかし神聖な側の神を相手にするのなら、相性としての問題もあり鬼族は圧倒的に不利なのだ。
解りやすく捉えるなら、大枝山の酒呑童子討伐の逸話を手繰ってくれ。

話が逸れたが、それ以上に大きな問題がある。
サイズ差はいかんともしがたいという、厳然たる事実という問題が。
いや無理だって。初期の50mサイズだって、俺1人じゃどうしようもないって。日曜朝のヒーローチーム物の敵怪人が等身大のままに巨大ロボットに向かっていくようなモノだって。いくら戦術や戦い方があって一体でチーム5~6人を相手取れても、サイズ差は覆しようが無いって。
同サイズになれば相手は多少なりともできるかもしれないが、それと同時に歴然とすることは、互いの生命体としての差だろう。
原子力の助太刀があれど、あそこまで巨大化するという事は、すなわち生命体としてのポテンシャルが高いということ。
成長には、一定期まで成長すれば「もう十分だからこれ以上成長しなくて良い」という命令を出す遺伝子が存在する。そして成長を行う遺伝子は、その命令が出るまで成長を行うと言われている。
成長抑制の命令が元々無いのか、それともまだ「十分」ではないのか。怪獣王がどちらかは解らないのだが、おそらく後者なんだろうと俺は考えている。
自らに対し、いくらでも現れる“脅威”に対抗する為、いくら成長をしても未だに十分ではないのだから、まだまだ成長し続ける必要があるのだと。
故にこそ怪獣王は巨大化し続けるのだろう。

やっぱり話が逸れた。
…さて、俺は巨大化をすることは、一部の手段や道具を用いねば不可能だ。対抗しようのないサイズ差を持ちだされたら、俺は羽虫のように叩き潰されて最微塵(クォーク)にされるかもしれない。ジャイアントさらば!!
ではどうするか。
考えた末の結論は、この身のままに対抗しうる強大な攻撃力を得ること。
そしてその為のヒントは、復活した大怪獣の、新たな解釈を得た伝統的な攻撃にあった。

しかし実際にアレを地上でやると、うまく行っても被害が免れない為に、地獄に設置されたある場所で行う事になった。
その名も「マインドとタイムのチャンバー」。おい大丈夫かこれ。

…ともあれ、出入口の他に目ぼしいものは一切無いこの空間。いくらでも能力を鍛える為の時間は十分にある。
人間の姿を止めて鬼の姿に戻り、両の手に炎を発生させる。俺の力を燃料として燃え盛る蒼い炎は重ねた手の中で1つになる。
勿論これだけではただの炎の塊だ。それをもっと、押し込めるように炎を新たに発生させ、押し固めていく。
まだ足りない、もっと。
まだ足りない、もっともっと。
まだ足りない、もっともっともっと。
ビー玉より小さく、BB弾もかくやという程に小さくなった炎の力は、爆発はまだかと言わんばかりの熱を蓄えている。
これを、こう。格ゲー三種の神器の飛び道具、その発祥の動作のように構えて、突きだす手と同時に、放った。


光が迸った。音はしなかった。
いや、一応音はしたのだろう。ただそれより先に全てを焼き裂く熱線が、光の速度で放たれた。
恐らくは眼前の存在を押並べて高熱を以て斬り捨てる、制御する事さえ困難な高熱。圧縮されにされた高熱が、ほんのわずかに作られた放出の為の方向目掛けて噴き放たれる。

ただ単純に気を放つだけなら、特に問題なく行えた。だからこそもっと精緻に気と炎の操作を行えば、あの映画のように熱線放射が行えると考えて、それは確かに成功した。
ただ考え違いを起こしていたのは、それを放射し続けていられるという事だ。

あまりにも蓄え過ぎた熱と、放射の為に作った射出口。そこの制御は俺の想定していた以上に更なる緻密な気の制御を必要としたことで。
きちんと放射が出来たのはきっと1秒にも満たなかっただろう。

何故時間が断定できないのか。
答えは単純で、蓄え過ぎた熱が放射の僅か後に、射出口を限界まで押し広げ、爆発したからだ。

当然の事ながら俺は死にかけた。炎に耐性はあるのだが、それよりも爆裂の衝撃波が俺の体を満遍なく叩いた事で、全身打撲&全身粉砕骨折のような症状を起こしてしまったのだ。
その後、もっさんに発見し助けてもらう事で、ようやく一命をとりとめたのだ。

神の名を付けられた怪獣王はアレをリアルタイム、かつチャージを大して必要とせずに使ったのだ。鬼とは生命体としてのステージ、基礎の部分が違いすぎる。
治療を促進する薬湯に浸かりながら、俺は改めて思う。
神の類には勝てないな、と。













































書いてた内容を消したのは、2ページ目の「神技模倣」を間違って上げてしまったのが原因です。
シン・ゴジラを見た事で滾っていたのは事実ですが、ネタバレを嫌う人もいるのですから。
…それにしたって全部消す必要は無かったかな、と、寝て起きてから思いましたけどね。
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3.100らばぁ
復元ありがとうなす。
6.100きよひこ
シン・ゴジラは見られましたか。
君の名は。は見られましたか?