としあき~飯だぞ~・・・あぁ、やっちゃったか?
女体化してからも、いつもと変わらず決まった時間に起きてくる息子が、今日に限って起きてこないので様子を見に来たんだが、どうやらお漏らしちまったみたいだ。
息子ももう高校生だから、この年でお漏らしはショックだろうなってことはわかる。
でもまぁ、気にするな。身体の勝手が違うから、一度はやっちまうんだ。
「・・・じゃあ父さんも?」
あぁ。と俺は軽く答えて布団の後始末に取り掛かった。
俺なんざ、40になってお漏らしだったからな。誰にも相談できなかったし、
立ち直るのに随分かかったもんだ。でも、1月もすれば慣れてそんなことも無くなった。
だから、気にするな。
息子が5歳の時嫁と死に別れてから、父一人息子一人の男所帯だった、少なくとも一昨年までは…。
俺の名は『安藤 清彦』、しがないアラフォー男だ、ちなみに私立大学の職員をやっていて肩書きは一応事務局の『課長』だ。
ちなみにうちの大学、三年連続志願者No.1とか、希少魚・高級魚の養殖とか色々な実践的研究成果で全国に名前を轟かせた、マンモス大学だ。
その所為で、結構収入は良く、大卒の同級生で他の会社勤めしている奴等に比べても約倍近く年収が多い。まあそのお陰で、息子にも何不自由させること無く、更にこの大学付属の有名私立高校に進学させる事が出来た。
高卒でコンピューターの専門学校に短期間(学費が高いので中退した)通った程度の俺にしてみれば自慢の息子と言えよう。
だが、そんな或る日俺は病に倒れた。初冬の折、ちょっと風邪でも引いたのかと思ったんだが、段々熱が高くなってきた、こりゃ『インフルエンザ』か??
ここまで、母親が居ない分必死に息子に愛情を注ぎ、時に厳しく、時に優しく育ててきた、仕事にも家事にも決して手を抜くこと無く、頑張ってきた。仕事も有給休暇どころか、入社以来、日祭日等大学の公休日以外は一日たりとも休んだこと無かったのに…。
40度以上の高熱を発し、節々が痛くて起きて動くのも大層なので、結局うちの大学の医学部付属病院に入院させて貰った。
高熱にうなされ、意識も途切れ途切れに成る、心配そうに俺を見つめる息子、ああ心配掛けて御免な、なあに直ぐ良く成るから…。
だが俺の強気な言葉とは裏腹に、病状は酷くなる一方、高熱に加え、全身の関節痛に悩まされる。おぼろげな意識の中で、俺の担当医とその助手の会話…、『これは…、やはりTS…。』『多分間違い…な…』ああ、相当深刻な病気なのかなあ??
このまま俺が死んじまったら、残された息子は?
死んだ家内に息子の奴を見守ってやってくれと祈りながら徐々に意識が遠くなって…。
うっ!眩しいっ!ってこれって窓から差す朝日?俺生きてたのか?ゆっくりと起きあがると熱っぽくなく、更に関節痛も無い、久々に味わう爽やかな目覚めだった。俺は大きく伸びをした、う~~ん!ベッドに半身を起こすと両腕を大きく上げ上半身を反らす、と、その瞬間「プルンッ」えっ?な、何、今の??胸の辺りに違和感が??
ふと下を向くと、入院着の胸の辺りに大きな二つの膨らみが?なんじゃこりゃあ~!?
触ってみるとぷにぷにと柔らかい、入院着の襟元をはだけると半円形に盛り上がった膨らみ、そして先っぽには男にしては大きすぎる乳首がピンと…、これって!?女のおっぱいじゃないの?なんで男の俺の胸に??あわわわ…、ま、まさか、下も?う、うそっ!?な、無いぃ~!!その時病室の扉が開いた、そして息子の『利明』の顔が。
「あっ!?か、かあ…と、父さん、気が付いたんだね?よかったあ~!直ぐ、お医者さん呼んでくるね?」
えっ?今俺の事『母さん』って言い掛けて?おい…、これどうなってるんだ?
暫くすると、どうやら俺の主治医らしい、眼鏡をかけた女医さんが病室に入ってきた。
「お気づきに成りましたか?もう症状も安定しましたし、大丈夫ですよ。」
あ、あの、私どうなったんですかね?身体の様子がおかしいし何より胸が膨らんで、そ、それにアソコが、そ、その…、無くなってるし…。 はあ?声もおかしい何か甲高い声??
「ああ。その事でしたら先に息子さんに説明させて頂いたのですが、貴方は『後天性性染色体変異症』に罹られたのです。」
はあっ!?それって??
「まあご存じかと思いますが、特殊なウィルスによって『男性』から『女性』に性転換してしまう病気です。」
は、はあ??じゃ、じゃあ私は?
「先ずは、現実を見つめて下さい。」と女医さんが、息子に目配せを…。
「ほら、父さん、辛いだろうけど鏡を見て…。」
息子の『利明』が鏡を差し出す、そして、そこに映った俺の顔…、はあっ!?
そこには若い頃、付き合いだしたばかりの頃の嫁にそっくりな顔が??そ、そんな…?
元々俺達夫婦は、似たもの夫婦とか言われてた。顔もだし、何となく性格や雰囲気も似てるとか、良く友人達にお似合いの夫婦だなってからかわれたっけ。さっき利明の奴が俺の事を『母さん』って言いそうに成ってたのも無理無いか?
で、でも、40にも成る俺が、どうして、20(はたち)過ぎそこそこの女に??
「ああ、それはですねぇ、性転換の際、新陳代謝が一時的に活性化し、患者の体細胞を若返らせてしまうんです、だから貴方の肉体年齢は、ええと、およそ大学を卒業したばかりの言ってみれば新卒女子位でしょうか?」
はあ…、俺は夢でも見ているかの様な感じで、女医さんの説明を聞いていた…。
「か、…と、父さん、そ、その、何て言ったら良いか…。」
ふと、息子のの利明の声に我に返る、ああ、すまん随分心配掛けたな。お前学校は?
「ああ、もう冬休みだよ。」
そ、そうか、もう年末かあ~?もう一ヶ月以上も入院してたんだなあ。ああ、大学の方は?
「心配ないよ父さん、この病気は『難病指定』で回復後も色々リハビリと言うか精神面のアフターケアなんかも有るらしくて、特別休暇が出るらしいし、父さん勤め出してから一度も有給休暇すら取ってないだろ?だから、大学の方からもこの際ゆっくり休養しろって、ちゃんと月々の給料も冬の賞与も振り込んでくれてあったよ。」
はあ、こういう時は人の情けが身に染みる。年末は大学の後期試験や推薦入試等の行事でてんてこ舞いの筈なのに…。
「父さんって真面目だから人徳有るんだね。ほらお見舞いも、こんなに頂いてるし千羽鶴も…。」
ああ、こりゃ退院したら皆に御礼しなきゃな。ええっと、利明、俺がこんな姿に成ってもお前は今まで通り…?
「何言ってるんだい父さん、僕に取っちゃ父さんに加えて母さんが出来たみたいなんだ、あ…、というか『姉さん』かな?若い女性に『母さん』だなんて失礼だよね?」
なあにませたこと言ってやがる。ちょっとうるっと来ちまった。ひょっとしたら女房の奴、俺達のことが心配になって、あの世から舞い戻って俺の身体にでも乗り移りやがったか?
退院し、戸籍を変えて俺は『女』として、暮らし始めた。名前も『安藤 清彦』から『安藤 清香』に、そして再び、父…いや、母・息子の二人暮らしが始まった。どちらかと言えば若返った今となっては姉弟と言ったところか?
大学の事務局に復帰した俺は温かく迎えられた。最初は女子大生と大して変わらなくなった容姿に皆戸惑っていたみたいだが、特に若い女子事務員達は積極的に近づいてきて、良く俺を買い物、特に洋服や下着など、又、スイーツの店やお洒落なカフェ・居酒屋なんかに積極的に連れ出してくれた。まあ、一刻も早く女子に染む様気を利かしてくれてたのだろう、最初は大分戸惑ったけれど…。
俺は専門学校を中退してからも必死になって自己流でPCを勉強し、Windowsで有ろうがMacで有ろうが一通りのハード・ソフト面の両方の知識を身に付け、そこいらのシステム工学や電子工学を学んだ大卒・院卒者にも負けない、それ以上の技術を身に付けたと自負している。
元々この大学のシステム管理者兼プログラマーなので、ほぼ一日中PC若しくはサーバー機の前に座りっぱなし、更に大学の学術・特許関連の情報管理等のセキュリティ、入試出願、在校生・卒業生の情報管理など多岐多様にわたるけれど、特に力仕事も無くひたすらキーボードを叩く毎日、むしろ、女に成って指先が繊細になり、男の時の太い指先でキーを叩くよりスムーズに成ったのは不幸中の幸いか?
一応肩書きは事務局『総務課長』のままだ。
中身は40がらみのおっさんとは言え、見た目は大学出たばかりのそこらの女子職員と同じくらいなので少しこそばゆい。
風呂に入る毎に鏡に映った自分の身体をしげしげ見つめる。ああ、もう完全な女だよなあ。
ぷるんぷるんのおっぱいやお尻、何も無く縦にスジが入っただけの股間、最初の頃は自分のハダカが鏡に映る度にドキドキしたもんだが、もうすっかり慣れちまった。
まあ俺は元々ポジティブな性格なので、命さえ取られなきゃ性別が変わろうと何とか成るさって思ってるし、これからも父親兼『母親』として可愛い『息子』の為、仕事も家事も頑張るぞぉ~!
こうして、再び平和な親子の二人の生活が戻って来た…、筈だったのだが…。
1年程経った或る日の事、利明が朝から妙に具合が悪そうだった。何時もなら朝から軽く飯三杯は食って行くはずなのに、この日の朝は食が進まず、何かぼーっとした表情で身体を動かすのも辛そうだった。
おい、何処か具合が悪いのか?余り無理するな、一日くらい学校休んだって…。
「そんな事したら『皆勤賞』飛んじゃうよ。僕の目標は母さんなんだから。」
いや、おれは病気で休んじゃったし…。
「まあ、大丈夫だから、それじゃあ行って来ま…」
どーん、そのまま台所に倒れた。お、おいっ!!利明しっかりしろぉ~!!凄い熱じゃないか!?う、女に成ったこの身体じゃ自分より身長の高くなった息子の身体を持ち上げられない…、って、救急車!救急車ぁ~!!
まったく運命とはなんとも皮肉なものだ、選りに選って息子まで俺と同じ病気に罹るとは…。利明は男子高校生から女子高校生に成った…。
一ヶ月程の入院の後、利明は無事退院した、但し『息子』ではなく『娘』としてだけど…。因みに息子の場合は俺と違って、体細胞が若い分新陳代謝が活性化しても余り影響無く、元々の年齢位の娘に変化した。
「と、父…母さん、へ、変じゃないかなあ?これって!?」
今日は息子が娘になってからの初登校の日。
姿見の前には、男子ブレザー&スラックスではなく、『女子』用のブレザー&ミニスカートを着た、ショートカットの『美少女』が…。(親バカと言うなら言え!俺と一緒で若い頃の女房にそっくりなんだよ、これ又)
いや、よく似合ってるぜ、まあ、これなら学校中の男共が放っておかないだろうなあ~!
「じょ、冗談言わないでよ!男なんかっ!い、行ってきまーす!」
おう、気を付けてなっ!
俺の若返った外見から、近所では仲の良い『美人姉妹』って噂に成っているらしいが、未だ、男のつもりの俺にとってはそんな事言われても全然嬉しくなんか無い…、ほ、本当なんだからなっ!
それから平穏な日々が続き、お互い『女』としての生活に馴染み始めた頃、一寸した出来事が起こった。
まあ、その所為で利明の奴の精神的女性化が進んだというか、女らしく成るのに拍車が掛かったというか、自分が女だって事を思い知らされる事に成ったみたいだ。
事実、この事が有った以降、利明の奴、急に女らしく成りやがった、こちとら未だ男に対して踏ん切りが付いてないって言うのに…。
或る日の朝の事…。
お~い利明ぃ~朝飯だぞ~って?あれ??あぁ…、やっちゃったか!?
ベッドの上に女の子座りし、顔を赤らめて涙ぐむ利明、みるとパジャマのズボンがぐっしょり濡れて、下に穿いてるレース付の可愛いパンツのお尻の部分が透けて見えている。更にシーツには大きなシミが拡がってて…、あらら、掛布団もだめだなこりゃ。
女になってからも、いつもと変わらず決まった時間に起きてくる息子(現・娘)が、今日に限って起きてこないので、心配になって様子を見に来たんだが、どうやら寝ている間にお漏らししちまったみたいだ。
息子いや娘も、もう高校三年生だから、この年でお漏らしはショックだろうなってことはわかる。
まぁ、あまり気に病むな。男と女じゃあ身体の構造が違うからなあ、まだまだ女の身体に慣れてない処も有るだろうし、男の時と違って我慢できなくて、寝ている時トイレの夢なんざ見た日にゃあ、一度はやっちまうんだよ、まあ、気持ち良かったろ?
「…じゃあ父さ…母さんも?」
ああ…、と俺は優しく微笑みながら、布団の後始末に取り掛かった。
俺なんか、40になってお漏らしだったからな。誰にも相談できなかったし、随分落ち込んだもんだ。でもやっぱり、女の身体・生理現象は男と違うってことで徐々に慣れていくしかないなって…、だからあんまり気にするな。
ほら、学校に遅れるぞ、ここは良いから早くシャワー浴びて、朝飯喰えよ。
「う、うん…。」
利明の奴真っ赤な顔をして、替えの下着と制服を持ってそそくさと風呂場に駆け込んでいった。
えっと…、やっぱりこりゃアレだな、小便じゃなくって、所謂『潮』だよな…、言ってみりゃ男の頃の『夢精』みたいなもん、第一アンモニア臭もしないし、無色だし。
あいつ、女の身体に慣れるまで寝る前は成るべく水分を取らない様にしてたし、必ず布団に入る直前にトイレに行く様にしてたし、おねしょなんかするはず無いのに…。
利明の奴、そろそろ『女』としての思春期に目覚めやがったか?先月『生理』も来たしなあ。
誰か気になる奴(男)でもクラスに出来たんだろうなあ~?多分夢の中でそいつに『女』として抱かれて、ヤラれちまって気持ち良くなって、思わず『潮』吹いちっまったってところか…?でも、本人は『おねしょ』だと思ってんだろうなあ。
ふうぅ~、俺自身、女に成って一月ぐらいして生理が来て、その後、何故か夢に職場の40歳に手が届こうしとながら未だ独身の同僚が出てきて俺を…、ああ、今思い出しても恥ずかしい…(赤面)
何故か夢の中で俺、凄く生々しい感じで、『女』として抱かれて、おっぱい吸われて、アソコに太いの抜き差しされて、散々喘ぎ声上げさせられて、そして最後には自分から馬乗りに成って、腰を使って、ああ、あたしったらいやらしい…、ああん、もう駄目…逝くうっ!!…てその瞬間、男の頃の『射精』に似た快感が襲ってきて、ぴゅーぴゅーって何か放出感が…?
思わず目が覚めると、股間と布団ががぐっしょりと…、ああ、いい年してやっちまったか?
でも、あれ?アンモニア臭がしない?何で?? って思った。
後で解ったんだが女ってセックスの時、人によって個人差も有るんだが、気持ち良くなると所謂『潮吹き』って言う現象が起きる場合が有るらしい。
まあな、『女』として目覚めちまったからには、これから自分の『身体』と付き合っていかなくちゃ成らないんだが、しかし、『女』初心者に取っちゃあ、身体の事、心理面での事、色々驚く事ばかりなんだよなあ、女の性欲・心理状態なんて、いざ自分が女に成ったら戸惑ってしまうことばかりだよ。
特に(多分童貞だっただろう)利明に取っちゃ、刺激が強すぎるだろうなあ。ここはなんとか父親…、いや、母親たるこの俺が色々相談に乗ってやるべきだろうな、ゴホン!
とは言え、俺だって『女』としての恋愛・性体験は皆無だし、外見は20過ぎそこそこの娘でも中身40のおっさんだし、今から女の恋愛なんてなあ…、女房さえ生きていてくれたら、息子、いや娘に女同士色々な事教えてやれるんだろうけど…。
けど、考えてみたら、『あの夢』で見た、俺の痴態…、ありゃ何だったんだ?あれ以来『女』として目覚めちまったのか、時々身体が疼く様になった。
一旦身体に火が付くと悶々として、中々眠れなくなり、娘が寝たのを見計らって、一人で風呂場で自分を慰める様に成った。解らないながらも恐る恐るおっぱいや股間を指で愛撫し、悦びの頂で必死で声を噛み殺しながら、全身に痙攣が走って身体を弓なりにし、時に勢いよく潮を吹く、風呂場じゃ無いとヤバいよなまったく。
初めて『女の悦び』って奴を味わった時、男とは全然違う悦楽に自分の身体じゃ無い様な気がして。
う~ん、あいつも、密かにヤってるんかなあ~?まあ、こんな事当人の口から聞けないけどなあ。
朝飯のテーブルで何時にも増して無口な『利明』いや、『利美』、顔が未だ赤い、うつむき気味にもくもくと食事をしている…。
えっと?あのよ?お前、何て言うか…、えっと、そ、その…。
「何?母さん。」
い、いや、まあ何て言うか、つまり、その、なんだ…、所謂、す、好きな奴でも出来たのか?
「えっ!?ど、どういう意味?」
う、うん、最近お前、何かお淑やかになったて言うか、綺麗に成ったて言うか?
その瞬間『利美』の奴、頬にぱあっと、紅を撒いた様に…。
まあ、何だお前も、年頃なんだから好きな相手が出来てもな。
「な、なんで?そんな事言うの??」
あら?『利美』の奴明らかに狼狽えてやがる。
いや、誰か好きな奴がいるのかなあって?まあ今のお前『女』なんだから、ひょっとしてお前の幼なじみで親友だった『山崎』の奴辺り…?
「ば、馬鹿なこと言わないでっ!って言うなよ!あた…、ぼ、僕、こんな身体に成っても一応『男』のつもりなんだから、そ、そんな事…、あ、有り得ないつ~の!!」
ああ、増々顔が真っ赤に成って、図星かなあ…。
第一最近、喋り方や仕草が柔らかいって言うか、優しげというか?
「い、行ってくるね!て言うか、母さんこそ最近何か綺麗に成ったよ?身のこなしや仕草も女っぽいし、誰かさんに恋してるんじゃないの?じゃあねっ!!」
はあっ!?どういう意味??
ああ、そうだ、明日は仕事へ行く途中、市役所へ寄って、『利明』改め『利美』の戸籍変更と改名届け出さなくっちゃ。
市役所に寄ってから、昼前に大学の事務局に出勤する、お早うっす!
「お早うございま~す、『キヨちゃん課長』!!」
ぶふっ!!女子事務員達の第一声がこれ…。
俺はその可愛い?外見から、復帰してからというもの、『清彦』⇒『清香』の改名と同時に女の子っぽい『キヨちゃん』って言うニックネームで呼ばれて…。
見た目彼女等と同年代若しくはそれ以下なんだが、一応彼女等の上司なんで、『キヨちゃん課長』って、はあああ…。
「おはよう!キヨちゃん課長!あの、昨日の晩からパソコンの調子が悪くて、後でちょっと見てくれない?」
こ、こいつ、『御手洗 双葉』一応女子事務員の中では最年長のアラサー、俺がこんな姿に成って、仕事に復帰してからは、ほぼタメ口…、て言うかまるで俺を『妹』扱いしやがる、全く…。
「よ、よう、安藤、お早う。」
お、おう…、こいつは俺の同期で『経理課長』のアラフォーのおっさんだ名前は「西園寺 孝明」結構良い家のお坊ちゃんらしい、おっさんとはいえ、俳優の内◯聖◯みたいな渋い男前で、中年太りとは無縁の筋肉質でスタイルも良くファッションセンスも良いし、女子職員からは絶大な人気が有る。何でこいつが今の歳まで独身でいたのか不思議だ。
酒は強いし、手料理が美味く何度かご馳走になったことも有る。
几帳面で仕事に手抜きはしないし、朴訥だが、責任感が強くどんなに仕事が重なっても音を上げないし…、って何で、そんなに詳しいのかって?
そ、そりゃあ、同期だし友人だし…ゴホン!(って、実のところあのエッチな夢に出てきた相手ってこいつなんだよなあ~!)あれ以来、何かまともに目を合わせられなくって、ついつい避けちまう。
「お、おい…、久し振りに、昼飯一緒にどうだ?」
あ、ああ、すまん、娘に弁当作ってやってるんで、ついで弁当持って来てるんだ…、御免な、ま、又何時か…、そのう…。
「そ、そうか…。」
孝明の奴、何かがっかりしてる…、その表情を見ると俺も何か胸がキュンと成って…、な、なんなんだこれ?
そんな二人の遣り取りを周りの女子職員はニヤニヤしながら見ていた。
『キヨちゃん課長と西園寺課長、端で見ていてイライラするわ、もう、思いっ切り背中押してやりたい。』『そうよねえ、お互い意識しっぱなしなのに、全然進展しないんだから…。』
何かひそひそ話してやがる。
その夜、夕飯時。
はあぁ~、ふうっ…。
「どうしたの?お母さん、さっきから溜息ばっかり、ご飯全然進んでないじゃない?何処か具合悪いの?…て、まさか…、ひょっとして恋煩い?うふふ。」
う、うるさいわね!な、何でもないわよっ!ほら、さっさとご飯食べちゃいなさい!もう直ぐ期末考査なんでしょ?勉強しなくって良いの?
「あはっ!お母さんって判りやす~い!何かやましい事が有ると女言葉に成っちゃうんだから。」
あ、あんたに言われたくないわよっ!って、言われたくねえよっ!あ、あんた…お前こそ丸っきり『女子』じゃないの?…じゃねえか?
な、何か?母娘同士というか、姉妹同士の口げんかみたい…?
「それじゃ、先にお風呂頂くわね~!あはっ、母さんってからかうと可愛い~!」
こらぁ!大人をからかうんじゃありません!まったくもうっ!あの子ったら…。ああいう所丸っきっり女の子じゃないの?
その時、脱衣場のドアが開いて、「母さんこそ人の事言えないわよ、いえ、『お姉ちゃん』!」
うるさ~い!ばかっ!!
明くる日、何時もの様に大学の事務局に出勤する。
あたしったら、何か昨日の晩から調子悪いわ…、どうしたのかしら?
「おはよう、安藤。」
う、お、おはよう…西園寺…、あ、あの、今日は娘のお弁当作ったら、その…、ご飯が足りなく成っちゃって、お昼ご飯一緒に行っても良い…よ。
「えっ!?ああ、そ、そうか?うんっ。」
な、何?周りの女子共何ニヤニヤしてるの??
『うふふ、『キヨちゃん課長』って判りやすいんだぁ~。』
な、何がよ?って、何がだよ?あた…、お、俺の何処が?
『あはは、どんどん女の子っぽく成ってきてる、面白ぉ~い!』
何よ!変な事でからかわないでよっ!もうっ!って?あた…お、俺女言葉に成ってきてる…、やだ、何時の間に??
昼休み、俺と西園寺は大学近くの定食屋に…。
「あ、あの…。」
な、何?
「い、いや…、そのお~、今度の土曜日(大学の休みは日祝だけで、後は交代で休む)仕事終わってから、め、飯でもどうかなって?」
あ、あう…、(き、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!って何喜んでるんだろ?俺?)う、うん…、お前と飲むの久し振りだもんね。でも、残業とか有ったら、推薦入試も終わって集計とか忙しい時期だし…。
『心配しないで下さあ~い!その日は日頃お二人にお世話に成っているあたし達で頑張っちゃいますから、お二人は心置きなくどうぞ~!!』
って?ど、何処に潜んでたんだ?我が事務室女子職員御一同様??
そして、いよいよ週末の土曜日が…。ふんふ~ん♪
「どうしたの?『お姉ちゃん』?朝から機嫌いいんだ?って、すごっ!何?その下着…、どピンクの紐パンってエッロ~い!!しかも、ミニスカートって?普段パンツルックなのにぃ。」
ば、馬鹿っ!何、人の着換え覗いてんのよぉ~!!
「だって、さっきから朝ご飯用意できたよって、呼んでるのに全然返事無かったじゃん、ははあ?いよいよ今日は『勝負の日』かぁ~?ふふっ!じゃあ頑張ってね、『お姉ちゃん』!あ、お泊まりなら全然オッケーだから、それなら、あたしも友達んち泊まりに行くし。」
うっ!るっ!さあ~~い!!
「ひゃはっ!!行ってきまあ~す。」
もうっ!あの娘ったらっ!!でも、何故か顔が熱くなって…。
『えっ!?何々?『キヨちゃん課長』スカートじゃない!しかも思い切ったミニだし?』『何時もよりメイクもばっちり決めてるし。』『これは、いよいよ勝負賭けてきたわねぇ~!』
な、何だろ、朝出勤すると、女子職員達の目が一斉にこっちの方へ?
『ねえ?『キヨちゃん課長』ほんとに今日は残業無しで良いですから…。』『そうですよ、一世一代の勝負なんだし…、あはは…。』
何なの?こいつ等?ま、まあ何にせよ、今晩は甘えておくかな?こほんっ!
今日は珍しく定時で業務を終え、帰り支度をし西園寺と二人で大学の門を出る。ちらちらと白い物が…、あ、そう言えば今日って『クリスマスイブ』だっけ?
二人で黙々と駅までの大学通りを歩く、えっと、この場合どんな話をしたら良いんだろ?
何時もなら学生でごった返す電車だが、冬休みに入った事もあり学生達もちらほら、市内へと移動する車中、何人かの学生がこっちをチラチラ見ながら何かヒソヒソ話してる。あの件があって以来、俺って結構大学内で有名人なのだ。
『なあ?あれって事務室の『キヨちゃん』じゃね?』『可愛いわね!』『うっ!あのキョトンとした表情、俺惚れちゃいそう!』『ばーか、『キヨちゃん』には、ちゃんとほら、側に居てる『西園寺 課長』さんが居てるわよ。』『ああ、あの女子大生キラーのおじさんかあ?』『西園寺さんて渋いわよねえ~、でも、相手が『キヨちゃん』なら許せちゃうかも…、だってあの純真なキラキラした目にはとても敵いそうに無いもの。』
繁華街の駅で降り、そぞろ歩きする。ど、どうしよう…、何かここまで来て、後悔とか?
「さ、寒くないか?安藤?寒いなら…、ゴホンッ!もっと、こ、こっちへ…。」
えっ!?俺、引き寄せられて、腕組まれて??ま、まるで、デート中のカップルじゃんか?う…、顔が火照って胸の動悸が、はあっ…、短いスカートで、寒いはずなのに身体が熱い、火照る…。
そして着いたレストラン…、えっ!?ここってミシュランガイドに三つ星で載った、めっちゃ良い店じゃん??た、高いんじゃ??俺の心配そうな顔を見て察したのか?『西園寺』の奴。
「ここって有名店の割に、結構リーズナブルなんだよ。何せ安月給な俺達だし…。」
いやいや、決して安月給じゃあ無いと思うぞ、第一お前は財閥の跡継ぎ、お坊ちゃまじゃないか?そういや、こいつの両親心配してたよなあ、間もなく四十路に達しようかと言うのに浮いた噂一つ無く、将来のこと心配してたっけ。
まあ真面目で、誠実なこいつなら何れ良い嫁さんが来ると思うんだが…、うちの事務局にも何人か候補が居そうなもんだけど。
店内に入ると、窓際の席に案内される、クリスマスらしく華やかでそれで居ながら上品で落ち着いた感じ、うわ、周りの席を見るとカップルばかり…、俺達男二人なんて浮いて無い?って、今の俺『女』だっけ…。うう、俺達ちょっと年の差カップルに見えるのかなあ?
うん、料理も抜群、ワインも美味しい。普段焼酎しか飲まない俺でもこの味は判る。
「良いワインだろう?俺のお気に入りなんだよ。」
なあ、お前何時身を固めるつもりなんだよ?何年か前お前のお袋さんから相談された事有るんだよ。何せ、お前さんは『西園寺財閥』の御曹司、早く良い嫁さん貰って、大学の事務局なんか辞めて、家に戻って欲しいって言ってたぞ。てか、お前うちの事務局に気に入った娘居ないの?結構レベル高いし仲には良いとこのお嬢も居るみたいだし、第一お前女子事務員どころかうちの現役女子大生達にも人気じゃ無いか?
「なんで自分の事棚上げするかなあ?」
へっ?
「俺何時か未だお前が男の時に飲みに行った時言ったよな、俺は将来好きな女が出来たら、俺のお気に入りのワインを一緒に飲むんだって…。」
ふわあ??えっと?それって…。
「お、俺は…、お前の事が好きだ!愛している!結婚を前提に付き合って欲しい!」
え?ええええっ??ちょ、ちょっと待って…。うわあ、心臓がバクバクいってるよう~!ど、どうしよう??
「俺はお前が男の時は同期と言う事も有って、唯一心を許せる親友だった。お前が早くに奥さんを亡くした後、何とか力になってやれないかと思っていた。そして、お前が『女』に成ってしまった時から、俺の気持ちは違う感情に支配される様になった…。」
「俺は有る意味お前の亡くなった気さくで優しい奥さんに恋心を抱いてたのかも知れない。そして『女』に成ったお前が奥さんそっくりで…、俺の気持ちは爆発した。」
「もう寝ても覚めても考えるのはお前の事ばかり、何とかお前にこの気持ちを伝えるきっかけを作ろうと思って、お前をデートに誘ったんだ。」
え、えっと、やっぱりこれって『デート』なのよね?あ、あたしったら…、『孝明』の気持ちに薄々気付いていたはずなのに…あ、又女言葉で考える様に成って…。
「今日、珍しくお化粧して、女らしい格好で来てくれたのも、俺の事をまんざらでも無いっていう風に思ってるんだけど?」
あ、あう…、そ、そうよ、だって誰よりも『親しい』ひとに誘われたんだもん、変な格好で行ける訳無いじゃ無い。(そ、それに…、下着だって…。)
「へえ??お前の女言葉って初めて聞いた。凄く可愛いもんだな。」
ば、馬鹿!変な事に感心しないで!(あ~もう顔が凄く火照っている、これってワインの所為よね?)
「あ、あの…、今晩◯ッツ・◯ールトンのスウィート予約してるんだけど…、良いかな…?」
はうっ!?も、もう、心臓のバクバクが限界にぃ~~!?(ねえ?利美ぃ、今夜はやっぱりお友達の処にお泊まりして貰えるぅ?だってだって…、お母さん今夜帰れそうに無いからぁ~!)
…結局、あたしはその晩高級ホテルのスウィートルームの一室で、『女』として孝明に抱かれちゃった…。
「綺麗だよ、清香…。」
あふ…、優しくして…。
、
それからはもう無我夢中で…、散々喘がされ逝かされ、エッチな気分に成ったあたしは孝明の上に跨がり孝明のモノをアソコに飲み込んで激しく腰を使う、お乳もお尻もプリンプリン弾んで、ああ、あたしったらいやらしい女…。
やがて孝明の熱くて硬いモノの先から熱い迸りがあたしのお腹の奥に勢いよく…びゅるっびゅるるるっ!!
ひうっ!やああっ、逝っちゃう、逝くうううう~!!…あのエッチな夢の再現だった。ああ、な、何か出ちゃう?出ちゃうのお~!?(ぴゅっ!ぴゅっ!)
ふと、我に返ったとき??やあああっ!ベッドがベッドがぁ~!?あ、あたし、お漏らししちゃった、お潮吹いちゃったぁ~!?やだあああ~!!恥ずかしいいい~~!!
「ははは、心配ないよ、ここのホテルは僕が子供の頃から懇意にしているし、それに超一流ホテルほどお客様のちょっとした粗相位は知らぬ振りをしてくれるものさ。」
そ、そうなの??はあ、一安心したあたしは孝明に腕枕して貰いながら、その逞しい胸板に顔を寄せ、先程の行為の余韻に浸っていた。と、その時あたしのiPhoneにLINEの着信音が?
『ねえ?お姉ちゃん…、大変なの…、ほ、ホテルのベッドびしょびしょにしちゃった!ど、どうしよう~!?(泣)』
って、ええええっ??利美、あ、あんた、お泊まりって、ひょっとして友達って山崎君(当然男)とですかあ~??
はあ…やれやれ、似たもの親子、って今は姉妹かしら?うふふ。
(完)