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おてんば爆乳娘としての日々 春と制服編

2018/10/13 09:57:36
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高校一年生の5月、ゴールデンウィークが明けた頃、俺は空き教室を掃除していた。
その日は、諸々の事情から空き教室の掃除班のメンバーは2人しかいなかった。
1人は俺こと佐山香介。帰宅部所属の普通の男子生徒。
もう1人は川城花蓮。『おてんば爆乳娘』とあだ名される女子生徒だ。

川城の『おてんば爆乳娘』なんてひどいあだ名の由来は、単純に彼女の胸が特大サイズだからだ。
彼女のおっぱいは厚手のブレザーの形をくっきり変えてしまうほど巨大で、いつもぷるんぷるんと揺れているのだ。噂では90センチ越えのFカップらしい。
それほど大きなモノをもっているというのに、それを支える腰はキュッと細い。その下の尻は見事な安産型で、太ももはむちむちと柔らかそうだ。
そんなスタイル抜群の彼女だったが、天は彼女に二物も三物も与えたのか、彼女は美少女と形容する他ないほど整った顔をしていた。明るいさらさらのセミロングヘアーや、大きな瞳、きめ細やかな肌。魅了される男は後を絶たず、彼女を夜のオカズにする男も後を絶たなかった
……もちろん俺もその中のひとりだ。最近は彼女が俺のちんぽをフェラチオしてくれる妄想で抜くことが多い。

だが、いくら相手に好意を抱いてるとはいえ、セックスシンボルの塊みたいな爆乳美少女と女性経験皆無のヘナチョコ童貞の俺が楽しい会話なんてできるわけがなく、俺は掃除中ずっと無言だった。
たまに川城が明るい調子で話しかけてきたが、俺はたどたどしく会話を断ち切るだけだった。
しかし、会話しなくても困ることはなかった。いまや物置となっているこの空き教室には、ベッドやロッカーなど掃除する場所が多いのだ。ただ体を動かしているだけで時間が過ぎていく。
……そう思っていたが。

「あれ? ……ねえ、佐山くん、ちょっと」
俺がベッドの下を箒で掃いていると、川城の綺麗な声が聞こえた。
横を見ると、『おてんば爆乳娘』のあだ名に恥じない爆乳がばるんばるんと弾んでいた。それを落ち着いて見れるほどの度量が童貞の俺にあるわけがなく、慌てて川城の顔に目の照準を合わせた。
「ど、どうした川城?」
「あのロッカーの上、なにか光らなかった?」
「え、どこだ?」
「あのあたり……うーん、ここからじゃわかりにくいわね……あ、そうだ。佐山くん、肩車お願いできるかしら?」
彼女の申し出に、俺の体は勝手にその指示通りに動いた。あの可愛い微笑みに逆らえる男なんているんだろうか。
「よいしょっと」
川城が俺の肩に足を乗せる。むっちりした太ももと巨大な尻が俺の肩に密着する。

安定のためと自分に言い聞かせながら、太ももに手を這わせるとすべすべの感覚がした。後頭部に川城のまっ平らな股間があたり、ふにぃと形を変えている。い、今俺の首筋には川城のアソコが密着してるんだよな……だ、ダメだ。あそこが反応しそうだ。
俺は股間に血が集まっているのを感じつつ、その場で立ち上がり、ロッカー近くまで歩いていった。上の方からガサゴソと物音がする。川城がロッカーの奥を探っているのだろう。
「うーん、もうちょっと奥……胸が邪魔で奥まで手が届きにくいわね…………よしっ、取れたわ。佐山くん、ありがとう」
俺がしゃがむと、川城がひらりと降りた。
その時、ふわりと彼女のミニスカートが舞い、彼女の大きな尻と尻肉に食い込むライトグリーンのショーツが見えた。
その下着はすぐにスカートで隠れてしまったが、俺の頭にはずっと残り続けていた。帰ったらあれをオカズにして抜こう……。
「うーん、これ、カメラ、かしらね?」
川城の声に我を取り戻す。
彼女は黒いカメラを持ち、レンズを覗き込んでいた。そのカメラはフィルムで撮るタイプの古い型のようだ。
「これ……まだ使えるのかしら?」
「た、試しにボタンおしてみたら、ど、どうだ?」
「ボタン? ……ああ、これね」
俺の提案によって、川城の美しい指がカメラのボタンに伸びていく。不思議なことに、俺にはその光景がゆっくりに見えた。
ふわりと川城の匂いが俺に届く。蠱惑的な花の香りがした。どうしてこの子はこんなにいい香りがするんだろう。本当に同じ人間なんだろうか……
そんなことを考えているうちに、川城の指がそのカメラのボタンを押した。
瞬間、強烈な光が俺達の目をくらませた。
「きゃっ!」
「うおっ!」
カメラからの光のせいで、目が焼かれたように痛んだ。頭がふらつき、足がもつれて、思わぬ方へ向かってしまう。
遠くからガシャン!と音が聞こえたが、今の俺にはそんなこと気にする余裕はなかった。
「さ、佐山くん、だいじょう……ぶ?」
川城の美しい声が聞こえて、目を開ける。チカチカとする視界の中、ベッドに手をついている川城の姿が見えた。
「か、川城……」
「さ、佐山くん…………う……」
そういって、川城は目を閉じると、ベッドの上に寝転がり、体から力を抜いていった。気絶したのだろうか。
俺は川城に近づいていこうと体を動かしたが、無理だった。俺の体から急速に力が抜けていく。
近くのロッカーに背を預けると、俺はそのまま意識を失った。



次に目を開けると、夕日に照らされた空き教室だった。
痛みはなかったが、頭は未だにふらついていた。意識を失う前と同じくらいに……そうだ。俺は意識を失っていたんだ。
ふらつく頭を抑えながら、床に手をつくと、柔らかい布の感覚がした。持ち上げてみると、それはベッドシーツだった。俺はどうやらベッドの上に移動させられたらしい。川城がやってくれたんだろうか。
そうだ。川城はどうなったんだろう?
シーツから手を離し、それを胸の前に落として川城の姿を探し始める…………しかし、シーツは落ちていかなかった。
下を見ると、大きな出っ張りがそこにあった。シーツはそれに引っかかり、落ちていかなかったのだ。
シーツを取り払うと、そこには真っ赤な女子生徒用ブレザーと、風船のように大きく膨らんだ俺の胸があった。
「なんだこれ……?」
ぼうっとした頭で、その風船に触れる。その風船は実に柔らかそうにぽよんと震えた。触っている感触と、触られている感覚がある。これは間違いなく俺の胸から生えているものだ。
「な、なんで俺に胸がついてるんだ……って、な、なんだこの声」
鈴の音のような声を出していることに気づいて、喉を押さえる。喉仏のない平らな喉がそこにあった。
足回りにすーすーと風の通る感覚がした。明らかにズボンを履いていない。まさか下半身裸なのか? そう思って腰回りにふれる。俺はヒダがある布を身に着けているようだ。
「こ、これ、スカートか?なんで俺が女子の格好なんてしてるんだ?」
俺が気絶している間に誰かが俺に女装をさせたらしい……なんのために?
ぞっとしつつ、顔を上に上げると、そこには巨大な長方形の姿見があった。保健室から持ってきたものだろうかと一瞬考えたが、そんなことは問題じゃなかった。
「か、川城……?」
鏡に映っていたのは『おてんば爆乳娘』川城花蓮だった。
さらさらの明るい髪に大きな瞳、桜色の唇。あだ名通りの特大サイズの胸。どこをどう見ても川城花蓮だった。
その川城は今、俺の眼の前で、恥ずかしげもなくパカっとM字開脚をして、端正な顔に呆然とした表情を浮かべている。

M字開脚中央のライトグリーンのパンツがつやつやと光沢を放っている。股関節の部分の太ももが俺を誘うようにぴくぴくと動いている。その様子をまじまじと見つめた後、俺はさっと顔をそらした。
「か、川城、足閉じろよ……パンツ見えてるぞ……って、え?」
俺はそのとき、自分の声がどこかで聞いたものがあると気づいた。
そらした目線を戻すと、恥ずかしそうに頬を染め、はしたなくM字開脚した川城花蓮が俺を見つめていた。
「お、俺が川城になってる……?」
俺が話すと川城も口を動かした。
俺が目を見開くと、川城も可愛らしい瞳を大きくした。
俺が股間に手を伸ばしてみると、川城もなにもない股間を確かめるようにぺたぺたと撫で続けた。
「嘘だ……そんな……」
俺が川城になっている。
そんな馬鹿な。信じられない。
しかし、俺の股間からはチンポの感覚が喪失している。俺が女になっていることは確かなことだ。
そのまま呆然と股をおっぴろげている川城を見ていると、教室の端の方から野太い声が聞こえた。
「う、うーん。頭が痛い……ん、体が、胸が……軽い……?」
「えっ?」
そちらを向くと、空き教室のロッカーに一人の男子生徒がもたれかかっていた。
そいつは頭を振りながら、なにか確かめるように自分の体をペタペタと触っていた……その男の顔はあまりに見慣れた顔だった。
佐山香介、俺の顔だった。
その男はベッドの上に座っている俺を見つけると、驚愕に目を見開いた。
「な、なんでそこにあたしがいるの……え、なにこの声。えっ、えっ、なんであたしにこんなものがついてるの?」
その男は女言葉で話しながら、自分の股間をもそもそと触っていた。かなりキモかったが、そんなことはこの場では気にならなかった。
「もしかしてお前、川城……か?」
「そ、そうだけど……」
「お、俺は佐山香介だ……で、でも今は川城が俺の体になってるように見える……」
「え……つ、つまり、あたしが佐山くんになってて、佐山くんがあたしになってて……あ、あたし達、入れ替わっちゃったの?」
「あ、ああ……」
頷くと、俺の目の端でセミロングの明るい色の髪がきらめいた。俺の頭から生えているそれは、赤色にも見える綺麗な髪の毛だった。



「あたし達、本当に入れ替わってるのね……」
鏡の前で女口調の男が自分の顔をペタペタと触っている。
どことなく動きが女性っぽい。中身が『おてんば爆乳娘』川城花蓮だと知っていても気色悪い光景だ。本来自分の身体でそういうことをやられているのが気色悪さに拍車をかけている気がする。
だが、自分以外にも混乱している人物がいるということで俺は少しだけ冷静になれた。俺はベッドから降りて男の肉体になった川城に近づいていく。
「でも、なんでこんなことに?」
綺麗な声が出る喉に違和感を覚えつつ問いかけると、川城が振り返った。
佐山香介の顔が俺を見下ろしている。自分の顔と向き合うというのは不気味な感覚だ。
ドッペルゲンガーにあった人というのはこういう気分なのかもしれない。
「やっぱりあのカメラじゃないかしら?」
「あ、ああ、そうか。さっきのカメラか……」
空き教室を見渡すと、床に落ちているカメラを発見した。
俺はカメラに近づいて、そのままうずくまった。その際にふわりとスカートが舞ったので、慌てて前を抑える。スカートって防御力低すぎじゃないか?
カメラは無残な姿になっていた。レンズは割れ、ボタンは飛び出て、他の部分もところどころ傷ついていた。
試しにボタンを押してみたが、カメラは光るどころか、カラカラと音をたてるだけだった。
「壊れてるみたいね……ごめんなさい。フラッシュのとき私が取り落とさなければ……」
後ろから川城が覗き込んでいるのか、野太い声が聞こえた。しかし、それも遠くのものからのように聞こえた。
このカメラは壊れている。元に戻れる唯一の手段であるカメラが、だ。
つまり、俺達は二度と元に戻れない。この異性の体でこれからの一生を過ごさなければならないのだ。
あまりの衝撃的な事実に俺の唇は震え始めた。
「ど、どうしよう。お、俺たち……」
振り返って川城を見上げる。俺の身長が小さくなったせいだろうか、『佐山香介』になった川城はとても大きく見えた。
「落ち着いて、佐山くん」
彼女は俺のそばにうずくまり、肩をぽんと叩いた。男の大きな手のひらが俺の細い肩を叩いたせいで身体が弾むような心地だった。
「壊れてるなら、修理すればいいのよ」
「しゅ、修理? 川城、修理なんてできるのか?」
「あたしはできないわ。でも、この近くにカメラ屋さんがあったはずよ。そこに持っていきましょう」
川城はそう言ってカメラを俺の手から取り上げて、立ち上がった。
こんな異常事態だというのに川城は落ち着いている。頼れる男といったオーラを出している。
なんだか悔しかったが、彼女の判断に異論はなかった。
「とりあえずこの入れ替わりは他の人には相談しないようにしましょ。こんなこと信じられないだろうから」
「あ、ああ、そうだな……」
「というわけで、教室から荷物を持って、カメラ屋さんにいきましょう」
川城の提案に俺は立ち上がった。
隣に並ぶと、ますます今の川城は巨人に見える。男子としては長身ではない俺がこんなに大きく見えるなんて、今の俺、『川城花蓮』の身長は一体何センチなんだろうか。おっぱいが90センチ越えというのは知っているが……。
「あ、注意しておくけど、佐山くんはあたしの荷物を持っていくのよ?」
「川城の? あ、ああ。そうか。今の俺は川城だもんな……」
「あたしの席、わかる?」
「わ、わかるよ」
『おてんば爆乳娘』川城花蓮の席を知らない男子生徒はいないだろう。
「あたしは佐山くんの席がわからないから教えてほしいんだけど……って、口調も気をつけないとダメよね。今のあたしは佐山くんなんだから」
俺はこの川城の発言にほっとした。
さっきから女口調で話す『佐山香介』は気持ち悪いとしか思えなかったからだ。男口調に直してくれれば、気持ち悪さが軽減されるかもしれない。
「ええと、佐山くんって普段どんな感じに話していたかしら」
「ふ、普段?そんなこといわれても……普通にだよ」
「男の子の普通ってわからないわ……わからないぜ!……これでいいかしら?……これでいいか?」
話した後、川城は恥ずかしげに目をそらした。いつもの川城の顔でやれば可愛らしいんだろうが、『佐山香介』の顔でやられても腹立つだけだった。
川城の男口調は下手な演技している俳優のようで、少し痛々しかった。だからといって頑張っていることには変わりないし、正直に感想をいってしまっていいか悩んでいると、その沈黙で察したようだった。
「……まあ、口数は少なめにいくわ。佐山くんも口調には気をつけるのよ?」
「え、ああ、わかった」
「わかった、じゃなくて、わかったわ、よ?」
「わかった……わ。これでいいのか……いいのかしら?」
「ええ、頼んだわ……じゃなくて、頼んだぜ」
今まで女口調で話すことなんてなかったので、どうしてもたどたどしいものになってしまう。川城の男口調を痛々しいものと思ったが、俺も同じようなものなのだろう。
ただ、今は付け焼き刃でいくしかない。そう思って俺が川城を見上げると、彼女は腕を組んで厳しい顔で俺を見下ろしていた。
俺ってこんな表情もできるのか。
「あと、佐山くん、パンチラに気をつけてね」
「え……」
「佐山くん、さっきからパンチラしすぎ。カメラ拾い上げるときなんてパンモロしてたし。前側は防げてたけど、お尻までスカートがめくれ上がってたわよ。あたしの身体なんだから、そういうところは注意してほしいわね」
「あ……ご、ごめん」
厳しい言葉に思わず尻を抑える。ふにぃという感覚が俺の手に伝わる。
今、俺はあの『おてんば爆乳娘』のお尻を触っているのか……柔らかい。
いつまでも触っていたいと思うほど心地よい感覚だったが、川城の野太い咳払いでさっと手を離した。




俺たち2人が並んで廊下を歩いていると、周りから強烈な目線を感じた。特に男子生徒たちから俺に対して鋭い視線を感じる。なぜだろう。と考えているうちに、俺達は教室にたどり着くことができた。
幸運なことに教室には誰もいなかった。俺たちはそそくさとお互いのスクールバッグを持ちだし、教室を飛び出した。
川城のローファーを履いて外へ出る。コツコツと音を立てながら歩いていく。廊下を歩いているときも思ったが、この体は胸と尻が大きすぎてバランスが取りにくい。歩いているだけでよたついてしまい、しばしば川城に肩を支えられた。
学校をでて、カメラ店に向かう途中、男女の歩幅の違いから、川城が俺をおいていくことがあった。戻ってきて謝ってくれたが、下げている頭は俺のものだ。なんとも情けない気持ちになった。

そんなことをこなしながら、俺達は学校近くの個人経営のカメラ店にたどりついた。
川城が、いかにも頑固親父といったふうな浅黒い肌の店主にカメラを差し出すと、彼はカウンターの上でカメラを分解しはじめた。
「あー、ここと、ここがイかれてるな……こりゃ道具を海外から取り寄せなきゃいけねえから……ま、修理にゃ半年はかかるな」
「は、半年……」
店長の返事に川城が茫然と低い声を出した。俺も同じ気持ちだった。
17歳の貴重な半年間を異性の体で過ごすなんて考えたくなかった。俺はクラスの人気者になれたからまだ目を瞑れるかもしれないが、川城は童貞男子高校生になったのだ。ショックは俺の数倍だろう。
「しょうがねえだろ。珍しい型なんだから……まあ、修理代は格安にしておいてやる。10万だ」
「じゅ、10万円なんて払えないわ……そ、そこをなんとかしてくれませんか?あたし達、高校生なんです」
「ああん?兄ちゃん、世の中そんな甘くねえよ、おめえも男なんだからそれくらいわかってるだろ…………ま、とはいえ、修理の仕事なんて久々だからな。特別価格、一万円にしておいてやる」
「あ、ありがとうございます!」
店長の申し出に川城はすばやく腰を折り曲げた。俺の体だというのに、まるで敏腕サラリーマンのような動きだった。
「いいよいいよ。ああ、でもな、兄ちゃん。あんた、さっきからなよなよしすぎだ。男なんだから、もうちょっとしゃきっとしろ。そんなんじゃそっちのボインの彼女、とられちまうぞ」
店長は俺を指差し、からかうような笑いを浮かべていた。その笑いは少し脂ぎっており、俺が今まで生きていて向けられたことのない目の種類だった。
突然のことに戸惑ったが、しばらくして意味がわかった。この年配の店長は俺、『川城花蓮』のことをボインの彼女と呼んでいるのだと。
女として男からセクシャルハラスメントを受けるなんて初めての体験だったし、どう切り返せばいいかわからなかった。
ちらりと頼るように本来の体の持ち主に目線を配ると、川城は硬い顔をして俺と店長の間に手を挟んだ。まるで俺を店長の目から守るような動作だった。
心の奥がむず痒いような心地になった。なんだこれ。
「そんな怖い顔すんな。冗談だよ。冗談」
店長が茶化すように笑い、カウンターの下から修理のための契約書を取り出してカウンターの上においた。
俺が川城の代わりに『佐山香介』の住所を書き、川城が『川城花蓮』のスクールバッグから高級そうな白い財布を取り出して一万円をとりだした。
それを不思議そうに見ていた店主は、一万円を出した川城に対して「ヒモ野郎」と苦笑いしていた。



カメラ店から少し離れ、俺達は学校近くバス停に辿り着いた。
バス停のテーブルをはさんで椅子に座る。その際はスカートを下に挟むことを忘れない。この感覚には落ち着かない。なんでスカートってこんなに太ももを出しているんだ。
「こうなったら冬まで生活を入れ替えてすごすしかないわね」
しばらくして出てきた川城の申し出に俺は驚いた。てっきりこの絶望的な状況に対しての愚痴を言い始めたりすると思ったからだ。
「素直に周りに事情を話して、解決策を探してみたらいけないのか?」
「証拠のカメラが壊れているんだもの。言葉だけじゃ信頼されないと思うわ」
「まあ、そうだな……」
「……というわけで、この半年間、お互いなりきるために情報を交換しましょ」
「情報交換?」
「ええ。家族のこととか、友達のこととか……あと、異性の生活のわかりにくい部分とかは特に話し合っておきましょう。トラブルのもとだしね」
「……わかった」
川城の言葉に従い、俺達はしばらくバス停でお互いの情報を交換しあった。家族構成、交友関係、日々の生活、印象に残った昔のできごと、いろいろなパスワードなど……今日は時間が少ないので、取り繕えない部分のみ交換することにした。
山場である異性の生活に関しての情報交換に突入し、女子トイレについての説明を受けた後、俺はふと目の前の男の声が弾んでいることに気づいた。
「スカートは持ち上げてね。あたしはアソコをふくときはビデを使う方が好きだけど……」
「なあ、川城」
「ん? なに?」
「なんかお前、ワクワクしてないか?」
「……そ、そうかしら?」
川城は目をそらしていたが、俺にはごまかせなかった。なにせ元は俺の顔だ。俺だったときにあんな輝いて見えるような表情をしたことはない。
それに思い返せばカメラ店までの道中浮いているように歩いていた気もする。そのせいで置いてかれたような気も……
俺が上目遣いでじっと見つめていると、川城は観念したように薄く笑った。
「実をいうとあたし、前から男の子になってみたかったのよ」
「え?」
「ほら、あたしっておっぱい大きいじゃない?たまに邪魔って感じるときがあったの。だから……ね」
いきなりのカミングアウトに口がぽかんと開いてしまう
だが、今の俺は同意しなくもなかった。『おてんば爆乳娘』の巨乳の重さを今の俺は両肩に感じている。ずっしりと重い双丘や、男たちのいやらしい目は日常生活には鬱陶しいものなのだろう。
「それに男の子って髪のケアも簡単そうだし、生理もないし、おちんち……ええと、あれでするトイレの仕方も気になってたし」
ちんこのことを口走りそうになり、川城は慌てて別の言い方にしていた。
俺はと言えば、川城が言ったワードが頭の中を渦巻いていた。
生理。
そうだ。今の俺の体は女子なんだ。生理があるんだ。世間では辛いといわれているが、実際のところはどうなんだろう。そこはかとない恐怖が背筋を寒くさせた。
「それに、高校生になってから男子と女子の力の差ってすごいからね。それも気になってたの」
そういって川城は力こぶを作った。出来上がった力こぶを無邪気に喜びながら触っている。その姿は男子小学生のようで、少し微笑ましかった。
しかし、まさか女らしい『おてんば爆乳娘』が男になってみたかったなんて……想像すらしたことがなかった。
「だからね。どうしても半年間元に戻れないなら、せめて異性の生活を楽しましょうって思って」
晴れやかに川城が俺に笑いかける。
これが童貞男子高校生に押し込められた爆乳美少女女子高生の反応だろうか……まあ、泣き叫ばれるよりはマシか。
相手側がこうなら、しょうがない。俺もここは男らしく、この半年『川城花蓮』としてやっていく覚悟を決めることにしよう……今は女だが。
「あ、あと、佐山くん、さっきからそれ、辛そうだから言うけど……それ、机に乗せたりすると結構楽よ?」
「それ?」
「……おっぱい」
「え……」
確かに先程から肩が重たかった。細い肩にこの爆乳は荷が重すぎるのだ。
俺は熱くなる顔を感じながら、川城の言う通りに自分のおっぱいを机に乗せた。おっぱいは机の上でスライムのように形を変え、ふるふると揺れた。
確かに肩への比重は軽くなったが、これでは「あたしのおっぱい見て見てぇ~」といっているようで少し恥ずかしい。
その後、俺は川城に男子トイレについての話をだいぶオブラートに包んで説明し、今日の情報交換は終わった。



慣れないスカートと体のバランスのとり方に気をつけながら、『帰り道』を歩き、川城家にたどり着く。初めて見る川城家は洋風で、かなり大きかった。どことなく上品にも見える。
川城家の門を開き、広い庭を抜けて家の扉を開くと、二十代の若い女性が扉を開けた。
「あら、おかえりなさい。花蓮」
見た目は未来の川城と呼ばれても違和感ないほど川城に似ていて、胸は川城ほどの大きさを持っていた。
川城の姉かと思ったが、彼女から聞いた家族構成では結婚した姉が1人、一人暮らしの大学生の兄が2人、中学校の妹が2人だった。姉は嫁入りして、すでに家にはいないはず。つまり、この女性は……
「た、ただいま、マ……ママ」
「もうご飯の準備はできてるわよ」
ママと呼ばれて眼の前の女性がたおやかに微笑んだ。どうやら当たりのようだ。ほっとして吐息をつくと、俺の胸がずしっと揺れた。
美人の女性を『ママ』と呼ぶのも女言葉を使うのも恥ずかしかったが、そんな俺の内心を知らず、川城のお母さんは話し続けた。
「あ、あと、昨日も話したけど、妹達は……」
「きょ、今日は友達のうちに泊まるんだ……のよね?」
「そうそう。あ、あとお母さん今から病院行ってくるから」
「どうし……」
言葉を止め、彼女を観察する。目立たないが川城のお母さんのお腹がぽこっと膨れていた。
そう言えば、と思い出す。川城の情報によると川城のお母さんは今、妊娠中らしい……川城も含めて7人目の子供になる。川城のお母さん、子供産みすぎじゃないか?
「マ、ママ、もしかして、赤ちゃん?」
「そうなのよ。調子が悪いってわけじゃないんだけどね。ちょっと気になって。今から病院行ってくるわ」
「わ、わかった……わ。いってらっしゃい、ママ」
「うん。いってくるわ」
俺が家に入るのとすれ違いに川城のお母さんは外へ出ていった。
妊娠による焦りもあると思うが、川城のお母さんは娘の中身が知らない男と入れ替わっていることなんて全く気づきもしなかった。
バレなかった安心感と騙しているという罪悪感をいだきながら、俺はローファーを脱いで川城家に上がった。



川城家の広いダイニングで1人でご飯を食べる。
用意されている食事は俺の家のものとさほど変わらなかったが、家の調度品の上品さや、あちらこちらにある幸せそうな家族写真が俺をそわそわさせた。佐山家も三人兄弟だが、こんな家族写真を撮った試しがなかった。
ちなみに、川城家の家族写真に映っている人々は全員が美男美女で、女性は全員巨乳だった。中学生の川城の妹たちもすでに胸が大きく膨らんでいるようだった。
川城家の夕飯を食べる。この体になって味覚が変わったのか、サラダ類が美味しく感じた。その反面、肉などの脂っこいものはあまり口に運びたくならなかった。いつもの四分の一くらいの量ですっかり満腹になってしまった。

食事を終え、川城の部屋に向かう。
階段を登り、『かれんのへや』という看板が下がっていた扉を開くと、パステルオレンジの部屋が広がっていた。ふかふかのベッドと整頓された勉強机。俺の部屋とは大違いだ。しかし、ここが『川城花蓮』の部屋なのだ。これから半年間の俺の部屋なのだ。
恐る恐る部屋に入ると、振動音が部屋に鳴り響いた。スカートから携帯電話を取り出すと、『佐山香介』からの電話だった。
「もしもし、佐山くん?」
聞き慣れた野太い声が聞こえてくる。普段は男の声なんて聞きたいと思わなかったが、このときばかりは安心感が勝った。
「か、川城か?」
「ああ、よかった。通じた……あたしの家には帰れた?」
「あ、ああ。今食事が終わって川城の部屋にいる。そっちは?」
「なんとか帰れたわ。今は佐山くんのお部屋にお邪魔してるんだけど……」
「さ、先に話しただろ。俺の部屋は汚れてるって」
「でもまさかここまでとは思ってなかったわ」
川城の部屋を見渡す。整理されているきれいな部屋だった。大きなクマのぬいぐるみやファンシーな絵柄のクッションが数個置いてある。
漫画本とAVにまみれた俺の部屋とは大違いだ……恥ずかしい。
「あ、そういえば佐山くん、お風呂には入った?」
「ま、まだだけど?」
「洗い方とケアの仕方は覚えてる?」
「あんまり強い力でこすらないこと。風呂後にはクリームを塗ること、だろ」
「そうそう。ああ、あといい忘れてたわ」
「ん?」
「えっちなことしてもいいわよ。その体、半年は佐山くんのものなんだし」
「ぶっ……」
いきなりのセクハラ発言に吹き出してしまう。その影響で巨大な胸がぶるるん!と震えた。
この体の本来の持ち主とは言え、そういう事を言ってもいいものなのだろうか。
「あ、ごめんね。あたし、これから佐山くんのママ……母ちゃんのごはんだから」
「あ、ああ……」
戸惑う俺を置いて川城は電話を切った。
バス停でも思ったが、川城はどこかハイになっている気がする。やはり『男の子になってみたかった』からだろうか。
そんな事を考えながら、俺はファンシーな花がらのタンスに向かっていった。



俺は風呂場の前に立っていた。手にはタンスから取り出した水玉模様の女性用下着が握られている。
「ブラはFカップ用だから入ると思うけど、ショーツ……こんな小さな布に川城の尻が入るのか?……まあいいや」
ひとり言をつぶやきながら、ぷるんぷるんと胸を揺らし、俺は風呂場の着替え室の扉を開いた。
少しためらった後、俺は制服の上着をハンガーにかけ、ブラウスのボタンをひとつひとつ外していった。スカートのジッパーを下ろし、すとんとスカートを脱ぐ。
見下げるとライトグリーンのブラに包まれた大きな双丘があった。足元が見えないほど大きい。白いきめ細かな肌のそれは、俺を誘惑するようにふるふると揺れていた。
見ちゃダメだ。
そう思っているのに、目が離せなかった。揺れるおっぱいを目に焼き付けつつ、俺はハイソックスとショーツをするするっと下ろした。
下半身が丸裸になっている。あのクラスのアイドル『おてんば爆乳娘』を俺が脱がしている。複雑な優越感が俺の中に渦巻きはじめた。
俺はゆっくりと川城にレクチャーされたとおりブラジャーのホックを外した。ブルルンッ!と胸がこぼれた。
「うひゃぁっ」
開放された胸の揺れに思わず悲鳴が上がる。体が揺れ、そのまま俺は風呂場の扉に突っ込んでしまった。
風呂場に入ると、湯気が身体にまとわりついてきた。胸、腰、尻、股間、自分の体のラインをはっきりと自覚させてくる。女として抜群のスタイルを男である俺の頭に染み込ませてくる。
「いたっ」
よろめいていると、足に何かがぶつかった。下を見ると、それは風呂場の椅子だった。ほっとしながら顔をあげると、眼の前に大鏡があった。
裸身の川城花蓮が俺を見つめていた。
すっきりした顔のライン、巨大すぎる胸の中心にあるピンク色の小さな乳首、細い腰に備わった縦長のヘソ、大きな尻、なにもない平坦な股間、その下にある少しだけ膨らんだヒダ……
全男子生徒の憧れが俺の目の前であられもない姿になっている。
「か、川城……」
床にへたり込んでしまう。足と足の間に尻が沈む。俗に言う女の子ずわりだ。
俺はその肢体を舐めるように見つめ続ける。いや、見つめているのは俺じゃなく川城だ。川城が川城の肉体を見つめているだけだ。
「佐山くぅん……見てぇ……」
顔が赤くなる。川城の喉を通していっただけなのに、まるで俺が川城に甘えられているような気持ちになる。
「な、なにくだらないことやってんだ。か、体を洗わないと……」
俺は頭を振りながら、ボディソープのプッシュを押し、自分の手の上にまとわりつかせた。

手のひらを自分の体に当て、泡をまとわりつかせていく。まずは胸からだ……。
「あんっ……♡」
乳首に触れた瞬間、俺の体に痺れるような快感が走った。乳首はすでに硬くなっていたらしく、少し触れただけで快感を届けた。
なんだ今の甘い声は。俺が川城にこの声を出させているのか。
これが女の快感なんだろうか。男の快感と比べ物にならないほど気持ちがいい。
ダメだ。我慢できない。
俺は胸をもみ始めた。甘い感覚が体中に広がっていった。この体は敏感すぎる……
「はぁん♡……佐山くぅん……だめぇ……♡」
AV女優みたいな声で俺を誘う川城。いや、声を出しているのは俺で、川城の体を弄んでいるのも俺で……頭がぐるぐると回ってまとまらない。
胸だけでこれだけ気持ちいいんだったら、アソコに触れたらどうなるのだろう。
そう考えた瞬間、応えるように下半身が切なげな熱を持ち始めた。
鏡の中の川城花蓮と見つめ合う。彼女は潤んだ瞳と上気した頬で、これから起こることに期待した顔をしていた。
「川城……ごめん……」
えっちなことしてもいいと許しを貰っているのに、俺は謝罪を口にしていた。
俺は泡を落とした手を股間に這わせ、割れ目へと指を伸ばしていった。
くちゅり。
「あはぁん♡」
ひときわ甘い声が漏れる。股間はすでに粘り気のある液体が漏れ出していた。
愛液だ。女が快感を得たときに出す液体だ。
「き、気持ちいい……はァん♡」
女性器の周りをなぞるだけでぞくぞくとした快感が体中を巡る。
俺は指を女性器の中に徐々に入れていった。膣内を傷つけないように慎重に。
「女の体はどうなってんだ……全身が性感帯みたいな……ンッッッ♡」
硬くなった部分をこすると、頭を貫くような衝撃が俺の体を歪ませた。
これが、クリトリス……
「あひぃんっ♡ここっ♡すごっ♡しゅごいぃ……♡」
クリトリスをいじる。快感が幾度も体を痙攣させる。
鏡の中の川城はとろけきった女の顔で、あられもない大股開きの姿で、女のオナニーに励んでいた。
「佐山くんっ♡好きっ♡好きっ♡しゅきぃっ♡」
鏡の中の川城が俺を呼んでいる。俺を思ってオナニーをしている。
いや、違う。今は俺が『川城花蓮』なんだ。川城花蓮が佐山香介を思ってオナニーしているんだ……ああ、もうわけがわからない。
「あたしっ♡イッちゃう♡花蓮っイクッ♡イキますっ♡」
凄まじい快感が体に広がる。何かが上り詰めてくるような予感。大きすぎる快楽。これが女の絶頂なのか。
「い、イクッ♡イッちゃうぅぅぅっ♡」
声が上り詰めると同時に、俺の体が幾度もビクビクッと震える。広がる快感と刺すような快感が全身に広がり、脳を女の快楽漬けにする。
波打ち続けた俺の体は、そのうち弛緩するように力が抜けていった。
バスタブにもたれ、シャワーのレバーを下げる。温かいシャワーが俺の頭に降り掛かかり、快楽に疲れた体を癒やしてくれた。



次の日の朝、ベッドから体を起きるとどたぷんっ!と胸が揺れた。
「えっ!?」
驚いて体を起こして胸を見る。オレンジ色のパジャマの間から、ボリュームたっぷりの谷間がふるふると揺れているのが見えた。
「な、なんで俺に胸なんて……」
混乱した頭で周りを見渡す。綺麗な女の子の部屋が周りに広がっていた。俺の汚い部屋じゃない。
そこでやっと昨日起こった出来事を思い出した。
「あ、ああ、そうか。俺は川城と入れ替わったんだった……」
そう。俺は不思議なカメラのせいでクラスの女の子川城花蓮と入れ替わったのだ。そして、彼女と相談してカメラが直るまでの半年、お互いになりきることを約束し、家に帰って俺は風呂場で川城の体を……
「うわ……お、俺はなんてことを……」
えっちなことをしてもいいと言われても、その数時間後にオナニーに励むなんて。最低だ。
だが、女の快楽はすごかった。病みつきになりそうなくらい。もしあれ以上の快感があったら俺は元に戻ることなんて……
俺の考えを止めるように、下の階から川城のお母さんの声が聞こえた。
「花蓮、朝ごはんできてるわよ!」
「は、はーい。母ちゃ……ま、ママ!今行く……行くわ!」
女口調を忘れずに俺はベッドから起き上がった。
すると、パジャマのズボンが緩かったのか、ストンと落ちた。
慌てて振り返ってみると、部屋の姿見に青い水玉のショーツを尻に食い込ませている川城が立っていた。

トーストを一枚食べただけでお腹いっぱいになってしまった。
食後、川城の部屋に帰り、俺は川城から習ったとおり服を身に着けていくことにした。
パジャマを脱いでブラウスを羽織る。女子と男子はボタンの配置が逆というのは知っていたので困らなかったが、胸の部分が止まりにくかったのは困った。この胸は凶悪なまでに大きすぎる。
制服の上着を身につける。この学校の制服は腰の部分がコルセットのようにしまるようになっていて、ことさら川城の爆乳が強調される形になる。
スカートを履いて姿見の前に立つと、いつもの『おてんば爆乳娘』川城花蓮がそこにいた。
「なんか落ち着かないな……」
目の前に美少女が立っていて、それが自分の姿だということもあるが、やはりこのスカートの短さは気になる。膝上三十センチの超ミニスカート。足の長い川城の身体だ、少し動くだけですぐにショーツが見えてしまうだろう……どうやって女子たちはパンチラを防御しているんだ?
髪の毛を櫛ですいて、ヘアアクセサリーをつける。うっすらとだが化粧もする。
練習通りうまくいった。ひょっとしたら俺はこの才能があったんじゃないか、とくだらないことを考えつつ、俺はカバンを持って洗面所へ行って、歯磨きをした。
川城の歯ブラシを使うというのはかなりドキドキしたが、川城のお母さんが不思議な目で見ていたのでさっさと口に突っ込んだ。
「……い、いってきます。ママ」
「いってらっしゃい。花蓮」
身繕いを終え、どう見ても二十代前半にしか見えない川城のお母さんに見守られながら外に出る。
いつもと違う通学路なので迷いそうな不安に襲われるが、今日から半年、『おてんば爆乳娘』川城花蓮として学校へ通うのだ。この通学路も覚えなくちゃいけないな。



大きな尻を押さえながら階段を登り、教室に入ると、ババっと俺に向けて視線が集まるのを感じた。昨日の廊下でも思ったが、川城の視線誘導力は驚異的だ。これでは普段過ごしづらくて、『男の子になってみたい』と考えても無理はない。
俺が『川城花蓮』の席に着き、おっぱいを机の上に乗せて肩を休めると、あっという間に川城の友達が周りに集まってきた。川城ほどではないが、容姿のレベルが高い女子たちばかりだ。
「おはよう花蓮!」
「あ、お、おはよう」
「あれ、なんか今日は元気ないね?生理?」
「ぶっ……ち、違う……わよ。ただ調子が悪いだけ……よ」
いきなりの生理話に吹き出してしまったが、昨日情報交換での打ち合わせ通りに返すことができた。女口調には慣れないが、今日は調子が悪いからの一言で通そう。
そう考えていると、川城の友達はニヤニヤと笑い始めた。嫌な予感がする。
「もしかして、昨日のことが関係あるのかなあ?」
「き、昨日のことってなんだ……なにかしら?」
「とぼけちゃって~、みんな見てるんだからね」
川城の友達四人はニヤニヤして俺を囲んでいた。気づけば教室にいる他の生徒達も耳をそばだてている気がする。なんだ?
「花蓮、昨日、佐山と二人っきりで帰ったっしょ?」
ギャルっぽい川城の友達が言った。昨日の出来事を見られていたようだ。
学校一の爆乳美少女とクラスの端にいる地味男子が一緒に帰った。確かに誰でも気になるだろうし、当事者じゃなければ俺もこの話に耳をそばだてていただろう。
「昨日2人で空き教室掃除してたよね。あそこでなんかあったの?」
「い、いや、なにもなかった……わよ」
「怪しい~~~花蓮ちゃんっていつも男子を振ったときは、ちゃんと振ったっていってくれるじゃない。なんで今回は濁すの?」
「っていうか、なにもなかったってんなら、なんで佐山とは一緒に帰ったわけ?」
「そ、それは……」
「あ、噂をすれば……」
ガラリと扉が開き、一人の男子生徒が入ってきた。川城が入った『佐山香介』だ。
今や渦中の人、『佐山香介』はクラスの目線を一瞬で集めた。しかし、彼はそれを気にした様子もなく、自分の机に向かっていった。
普段の佐山香介ならこの目線でたじろいでしまっただろうが、今の『佐山香介』の中身は川城花蓮だ。これくらいの注目には慣れているのだろう。
席に着く少し前、『佐山香介』と俺の目が合った。すると、彼は少しだけはにかんで手をふってきた。俺も応えるように手を机から出して少しだけ振りかえした。
そうしていると、川城の友人の1人が俺の手を握りしめた。女子の柔らかい手の感覚にドギマギしてしまう。女子ってスキンシップ軽すぎやしないか?
「言ったそばから手を振り合っちゃったりしてしてさ。絶対なんかあったでしょうが」
「やっぱり告られたんじゃない?」
「あの空き教室ってヤリ部屋でもあるし、もしかして佐山に襲われた?あいつ性欲強そうだもんね」
「そ、そんなわけないだ……ないでしょ!」
あらぬ誤解を流そうとしたが、女言葉というものが上手く出せず、しどろもどろになってしまう。
川城はというと、俺と同じように『佐山香介』の男友達数人に囲まれている。おそらくあっちはあっちで質問攻めになっているのだろう。
「うーん、ってことは、逆? 花蓮が佐山に……いや、佐山を襲った?」
「花蓮って今までそういう噂なかったけど、とうとうかあ」
「キャー!花蓮ちゃん、おめでとう!」
「違うって!ただ一緒に掃除しただけだっての!」
もうこうなったら女口調を取り繕ってられない。否定しないと。
そう思って叫んでみたが、周りの女子は気にしていないようだった。
「はいはい。今のところはそういうことで」
「いやー、やっとそのハレンチボディが生かされる時が来たかー」
「爆乳の持ち腐れだったもんね。いやよかったよかった」
その後も俺は言い返そうとしたが、教師が入ってきた。
女子たちの中で『川城花蓮が佐山香介のことを好き』ということは確定事項となってしまったようだ。



放課後、掃除の時間ということで俺は1人で空き教室にいた。
男子の最後の授業は体育の授業だったため、川城は遅れてくることになっていた。
俺としては、男子になったばかりの川城が男子に混じってサッカーなんてできるんだろうか?と窓から男子サッカーを見下ろしてハラハラしていたが、どうやら杞憂だったようで、川城は動きに動いて何点か得点を決めていた。
得点を決めると、男子たちと抱き合って喜んでいた。本当に昨日男子になったばかりなのか?と思うくらいの馴染みっぷりだった。
そういうわけで、俺は継母たちがいなくなった後のシンデレラのように一人で空き教室を掃除していたのだった……箒を動かすたびにおっぱいがボヨンボヨンと弾むのどうにかならないか。

掃除を一通り終えて、空き教室の黒いソファに腰掛けて休んでいると、扉がガラガラと開いた。
川城だった。サッカーで暴れたからか、顔に泥がついている。
ソファに座る俺を見下ろし、川城は手のひらを額の上で水平にした。
「わりいわりい。川城、またせたな」
「いや、全然待ってな……」
「サッカーのあと質問攻めにされちまってさ。いつもはカスみたいな動きなのに今日はどうした?みたいなこと言われてさ。いつもだってこれくらい動けるってって言っておいたぜ」
「……ああ、そうかい。そりゃよかったな」
いつもはカス、他の男子生徒がいったことにせよ、面白い気分にはなれず、思わず吐き捨てるような言葉が出てしまった。
川城が眉をひそめ、俺を見つめている。
「おい、川城、どうしたんだ?」
「どうしたってなんだよ?」
「だから、その口調だよ。まるで男みたいだぞ。誰が聞いてるかもわかんねえんだから、そういう口調で話してると変に思われるぜ?」
川城の言い方は俺を諌める大人の男といった優しい雰囲気だった。
誰かが聞いているかもしれない。
確かに川城の言うとおりだ。クラスでも『川城花蓮』と『佐山香介』は噂になっていた。誰かがどこかで聞き耳を立てていてもおかしくない。入れ替わりを隠すためには細心の注意を払わないといけないだろう。
「あ、ああ、ごめん……なさい。そう……ね、佐山くんの言うとおりだ……わ」
「俺も悪かったよ。待ってた川城にとってはこんな話面白くねえだろうしな」
「いえ、俺……あたしが軽率だった……わ」
謝罪しながらも落ち込みはある。せっかく元の言葉で話せると思ったのに、ここでも女口調で話さないといけないのか。
川城は空き教室の扉を開けて廊下を見渡した後、扉に鍵をかけた。そして、空き教室を歩き回った。誰かが隠れていないか探しているのだろう。
「いやー、それにしてもサッカーって楽しいな。男子最高って感じだ」
「それはよかった……わね」
「川城には同情しちまうぜ」
川城はいいながら、ベッドのカーテンをめくった。
「同情って、どういうこと……かしら?」
「川城みたいなデカパイデカケツじゃ運動なんてできねえだろ?」
「え……」
「これから一生サッカーをプレイする楽しさがわかんねえって思うと、可哀想だなって思ってな。ま、その乳揺らしてくれたら夜のオカズには困らねえから俺としては歓迎なんだけど」
川城はそういって下品な顔をしながら俺の胸を指さした。
どう反応していいものかわからず凍りついてしまう。
俺は何を言われてるんだ? 川城は何を言っているんだ? 眼の前の男は一体誰なんだ?
「なんてな。冗談だよ、冗談」
そういっていやらしい顔で笑い続ける『佐山香介』を見ていると、嫌悪感よりも先に恐怖が襲ってきた。
もしかして、川城は俺の肉体に飲まれてるんじゃないか?
女の心が男の体に感化されていっている。それが進行してしまったら。心と体の性が一致してしまったら、一体どうなるのか。
そして、俺の心も女の肉体に飲まれない保証はできるのか。
「佐山くん、そろそろ口調戻してもいいか……しら?」
「あ?なんでだよ?」
「誰も聞いてないでしょうし……頭がおかしくなりそうだからよ」
「おかしくなりそう、なんて変なことを言うなよな…………まあいいか。わかったよ」
そう言うと川城は俺の隣に腰掛けてきた。重さがかかり、ソファーから俺の軽い体が浮き上がる。
ぶわっと汗と男くささが混じった獣のような匂いが俺の鼻に入ってくる。体育後の男の匂いだ。昨日川城の身体から漂ってきた花の甘い香りとは大違いだ。
巨大な存在が隣にいることで、俺の体は固まってしまった。元々自分の体だというのに、なんでこんな硬くなってしまうのだろう。
俺が固まっていると、川城が俺の肩に手を乗せた。びくりとなってしまう。
「佐山くん、今日はお疲れ」
「か、川城こそ、お疲れ様」
「ううん。あたしは男の子の生活が楽しかったからいいけど……女の子の生活は大変だったでしょ?」
「あ、ああ、大変だった。早く元の体に戻りたいよ」
本当にそう思う。今日一日は大変だった。
特に昼食の時間が困った。芸能人の話や他校の噂話などされても、全くついていくことができなかった。かろうじてついていけたのは、新しくできたスイーツ店の話くらいだった。男だったときは弁当を食べて外に出てバスケをするだけでよかったのに……。
川城は俺の返事など全く聞こえなかったように話を続けた。
「でも、男の子って本当に楽ね。力強いし、朝の支度も楽だし」
「ま、まあ女子に比べたらな。でもいいところばっかじゃないだろ?」
「うーん、確かにスケベな話ばっかりしてるのはマイナスね。それにおちんちんがついてるのは動くのにちょっと邪魔かも……でもおっぱいよりはマシね」
川城は男性器のことをつぶやきながら、片手で自分の股間をまさぐり始めた。ズボンの下にある円柱状の物体がもこっと形を表している。
思わず顔が熱くなる。『男の子になってみたい』とはいっていたが、こんなにすぐに恥じらいがなくなるものなんだろうか。
「それに、男の子のオナニーはすごく気持ちよかったわ」
「えっ!?」
衝撃的な発言に俺の思考は比喩ではなく一瞬停止した。
「佐山くんの部屋片付けてたら、ベッドの下にえっちな本があって……それでムラムラして気づいたら、おちんちんをしごいてたわ」
信じたくなかった。あの『おてんば爆乳娘』と呼ばれた誰よりも女らしい女子生徒だった川城花蓮が、俺の部屋にあった小汚いエロ本でちんぽをしごいたなんて……
「か、川城、お前……」
「男の子のオナニーって面白かったわ。精子ってピューッて飛び出すのね。掃除するのが大変だったけど、気持ちよくって何回も試しちゃったわ。ティッシュで受け止めればいいのよね」
口が開きっぱなしになり、頭がグラグラと揺れる。
精子はティッシュで受け止めればいい、ということを学ぶまで、川城は覚えたての中学生男子のように男のオナニーに励んでいたのだ。男子と付き合ったこともないと言っていたあの川城花蓮が、グラビアアイドルたちを見てちんぽをしごきまくったのだ。
俺の驚愕をよそに、川城は手で輪っかを作って上下に振ってニヤニヤと楽しそうにしている。まるで発情した知能の低いオス猿だ。
そりゃ俺だって男だし、オナニーは半ば中毒のようなものだったが、こんな風に自慢するような態度をとったことなんてない。
俺の反応が期待したものじゃなかったのか、川城はその手といやらしい笑いを引っ込め、俺に問いかけた。
「……まあ、これから半年お互いの体で過ごしてくんだから、いろんな部分を知っておかないといけないじゃない? というか、佐山くんはしなかったの?」
「い、いや……俺は……」
思いっきり風呂場でオナニーしてしまったが、この場で言ってしまっては取り返しがつかない状況に陥る気がする。
そう思って誤魔化したのだが、川城は無表情のままだった。
「ふうん、まあ、どっちでもいいわ」
そして、そのまま彼女……彼は俺に体を近づけてきた。
元は自分の顔で、中身は川城だというのに、その不気味さに思わず後ずさってしまう。
「ねえ、佐山くん。あたしたちが昨日一緒に帰ったの、みんなから見られてたらしいの」
「あ、ああ、そうみたいだな」
「それでね。今、あたし達が付き合ってるって誤解されてるみたい」
今朝も昼休みも、俺は女子たちからその話を詰問された。おそらく川城も男子たちに同じようなことを聞かれていたのだろう。恋愛ごとに興味があるのは男子も女子も同じだ。
「ねえ……本当のことにしちゃおっか?」
「そ、それはどういう……ひっ!」
気づけば、川城の……『佐山香介』の顔面が目の前にあった。
恐ろしさから身を引こうとした俺の体を、肩にかかっていた川城の手がとどめた。
そして、空いているもう一方の手で川城は俺の後頭部を掴み、自分の顔に俺の顔を近づけていき……唇と唇を重ねた。
「んむっ!」
男のかさついた唇と俺のぷるぷるの唇が重なる。相手は俺の唇を味わうように目を閉じていたが、俺としては最悪の気分だった。
男にキスされるなんて!しかもその相手が自分の顔なんて!
拒否感から相手の胸を押して離れようとしたが、相手の力はあまりにも強く、もっと押し付けられる結果になってしまった。『川城花蓮』の豊満な胸が『佐山香介』の平らな胸に押しつぶされ、むにいと形を歪めていった。
これが男と女の力の差なのか?腕一本でこっちの体全体の力に勝つなんて!
「むーっ!んんーっ!」
「おとなしくしなふぁい。れろ……」
「んんっ……ふぁ、ふぁめろぉ……」
抵抗虚しく、俺の唇の間に川城の舌が侵入してきた。俺の口内に潜入したそれは、蹂躙するように暴れ始めた。
「ふぁなれろ……ふぁのむから……ひゃめ……」
「れろ……んちゅ……ちゅ……」
「ふぁぁぁ……」
ざらざらした舌が『川城花蓮』の小さな口の中で暴れる。唾液を混じらせ、舌同士を混じらせ、歯茎の裏を舐められている。
貪られている、そんな形容が似合う暴れ方だった。
俺としてはディープキスなんて初めてだったし、そもそも普通のキスも初めてだった。それがこんな無理やり……最悪だ。
最悪だと思っているというのに、なぜだか体が熱くなってきた。頭がじんじんとしびれてきた。この感覚は覚えがある。昨日風呂場で体験したあの感覚。女の快感だ。
嘘だ。まさか俺、男にキスされて女として感じているのか……?
「ううんっ……ふぁ……♡」
いつの間にか応えるように舌を絡ませてしまっていた。
「れろぉ……♡んっ……♡」
相手の舌の動き合わせるようにこちらも動かす。舌から性感が伝わってくるなんて思いもよらなかった。体から力が抜けていく。
しばらくして、川城が顔を離していった。俺と川城の間にはキラキラと光る唾液の線が光っていた。
ああ、なごりおしい。もっとキスしていたかったのに……えっ!?今俺はなんて思った?
「ふふ、佐山くん、すっかり女の顔になってるわよ」
「ち、違う。これはぁ……きゃんっ!」
言葉の途中で川城が俺をソファに押し倒した。体から力が抜けているせいで、全く抵抗ができない。
川城は俺の胸に手を伸ばし、手際よくブレザーのボタンを外した。すると、巨大なブラジャーに包まれた特大サイズの乳房がボヨォンと飛び出した。
川城は生唾をゴクリと飲み込むと、水玉柄のブラジャーをずらし、生乳に手を這わせた。男の硬い手が俺の体の上を這いずり回っている。
「自分の体だった時はわからなかったけど、なんて大きくていやらしい胸なの……男子たちが『おてんば爆乳娘』なんてあだ名を付けて夜のオカズにする意味がやっとわかったわ。このおっぱいは犯罪よ」
「は、はなせぇ……だ、誰か……誰か来……」
「誰か呼んでいいの?今この状況で捕まるのは佐山くんの体よ?いいのかしら?」
「くっ……」
自分の体を人質に取られている。この状況を見れば、誰もが『佐山香介』が犯人だと判断するだろう。ここで本来の体を捕まらせる訳にはいかない。
川城はニヤリと笑い、俺を見下ろしていた。
「それに今のあなたの体は本来あたしのものなのよ。あたしがどうしたって良いでしょ」
「そ、そんな……」
頭の中が暗くなっていく。今の俺は川城に対して抵抗するすべを持たないのだ。この状況に対して『耐える』以外の選択肢を持たないのだ。
俺が震えていても、川城が生乳を揉む手は止まらない。形をぐにゅぐにゅと変えている。
川城の手付きはおぞましいはずなのに、俺の体は熱くなってくる。これが女というものなのか。男に陵辱されているっていうのに……悦んでいる。
「や、やめ……あんっ♡」
乳首を人差し指で弾かれ、俺の口から甘い声が漏れた。男の硬い指はメトロノームのように乳首を右左に弾き始めた。
「今の声……佐山くん、感じてるのね?」
「ちがぁ……はあんっ♡」
「誤魔化しても無駄よ。乳首が固くなってるわ」
「そ、そんなぁ……あああんっ♡」
執拗な乳攻めに体の中央が熱くなる。その熱い物体はそのまま俺の下腹部に向かっていき、ジュンとあそこを濡らした。
俺、川城の攻めで女として感じてる……
川城はニヤニヤ笑いながら、俺のミニスカートをもちあげ、腹のあたりまでめくりあげた。
「かわいい水玉ショーツ……あたしもよく履いていたわ……じゃあ、あそこ、触るわね」
「あっ、や、やめ……ハァァッ♡」
「あらあら、口では文句言ってるけど、体は正直ね」
川城の目の前に、粘液をまとった指が持ち上がってくる。あれは俺が出した愛液だ。川城の攻めによって出してしまった女の快楽の液体だ。
「ほら、これ見て。あたしに触られてとろとろになってる。ショーツなんてもうぐしょぐしょよ?」
「ち、違う。これはぁ……ぅあああんっ♡」
「何も違わないわ。あなたは今女の子として感じてるのよ」
ショーツの上から秘所をつんつんと突かれただけで快楽の電撃が走って体が波打ってしまう。快楽漬けのせいで、頭も口も回らない、体は動かない。俺はまな板の上の鯉だ。
「はぁ……はぁ……♡」
「佐山くん、なんてえっちなの……あたし、もう我慢出来ないわ」
「が、我慢……ってぇ……♡」
川城はソファーの上に立ち上がると、黒いズボンと黄色のトランクスをおろし、自分の下腹部を露出させた。
川城の股間に備わっているそれは今やギンギンに勃起しており、凶悪なほど反り返っていた。周りでは赤黒い筋を脈動させており、亀頭は怒っているかのように真っ赤だった。
事実、あの男性器は怒っているのだ。眼の前に『川城花蓮』という極上の女体があるのに、未だ挿入できていないことに。
「さあ、佐山くん、セックスしましょう」
そういって川城は俺の股の間に座り込んだ。見えていた赤黒いちんぽは爆乳に隠れて見えなくなったが、その熱気を太ももで感じる。
アレをいれられたら、アレをいれさせたら、俺たちは終わる。元に戻れなくなる。
そう思い、足を閉じようとしたが、不可能だった。体から力が抜けているのもあるが、川城が俺のむちむちの太ももに手をめり込ませ、閉じないようにしていたのだ。
女は男に敵わない。
それが具現化したかのような光景に俺の頭は絶望に染まった。
「それだけはやめろ……やめてぇ……やめてくださいぃ……」
俺の懇願に対して川城は凶悪な男の顔を歪ませ、俺の股間に自分の股間を進めてきた。
男の手によってショーツが左側にずらされる。割れ目が空気に触れているのを感じる。
亀頭が俺の小陰唇に触れた。性器の周りの愛液が亀頭をぬるませる。女性器がひくひくと震え、男性器を招き入れようとしている。俺の意志とは反して、この女体は相手の性器を積極的に招き入れようとしている。
ちゅぷっ。
「や、やめっ……いぎっ!」
俺の最後の懇願も無視され、川城は元自分の女性器に元俺のものだった男性器を挿入し始めた。
ぴりっとかさぶたを破ったときのような痛みが膣の中からでてきた。それが段々と大きくなってくる。自然と涙がこぼれてきた。
「か、川城っ……い、痛いぃっ!やめてくれぇ!」

「その身体は処女だから痛いのはしょうがないわ。力抜かないと益々痛いわよ」
そう、この体は処女なのだ。純白な肉体が今、男のちんぽの形を覚えさせられている。
肉を引き裂かれているような痛みに反射的に手足が暴れだしそうになるが、抑え込められた。さらにその反動でより深くちんぽが食い込むことになった。
「ひぎっ!」
「おっと、抜けちゃうから暴れないで」
「痛い痛い!……痛いよぉ……痛いのにぃ……」
「あ、赤いのが漏れてきてる……処女膜が破れたのかしらね。おめでとう、佐山くん。これで大人の女の仲間入りね……さあ、全部入れていくわよ」
「いやだ……やだぁぁ……」
この身体の処女を奪われた。清純だった身体は一生戻ってこない。別に俺の体ではないというのに、悔しさに涙がますますボロボロと溢れてくる。
人としての尊厳を陵辱されている。これがレイプなのか。
俺の涙を拭いながら、体の上のレイプ犯は満足げな吐息を吐き出した。
「あぁー、やっと亀頭が全部入ったけど、あたしの膣ってすごいキツキツね。おちんちんにぴっちり張り付いてきて気持ちいいわぁ」
「ぬ、ぬいてぇ……」
「ごめん。それは無理。あたし、佐山くんのことも気持ちよくしてあげたいと思ってるのよ?」
「そ、そんなことしなくてもい……かはぁっ……」
進行が再開され、肉棒が入ってくる。未使用の肉体が奥の奥まで犯していく。
膣が、身体が、ちんぽを包むための形に変化しているのを感じる。
処女喪失というのは、ただ処女膜を失うというだけじゃない。体を男女のセックスに向くように作り変えられるのだ。『川城花蓮』は股間に侵食する悪魔によって、メスの肉体に作り変えられていっているのだ。
そして、体の最奥までその悪魔が達したとき、俺の中でなにかが変わった。
「あ♡」
微弱な電流と甘い声。
これは……なんだ?
俺が戸惑っていると、レイプ犯……川城がニヤッと笑った。
「今、感じたのね?身体の奥を突かれて感じちゃったのね?」
「そ、そんなわけが……あはぁっ♡」
「今子宮をついてるのわかるかしら?ぷにぷにしてるわね」
「や、やめっ♡あぁあっ♡」
わかりたくもない。
それなのに彼女がずんずんと腰を突き立てる度に頭の電流……女の快楽は倍増していく。ちんぽを突っ込まれるたびに気持ちよさが増していくなんて、そんな……
「やっと気持ちよくなってくれたみたいね。動くわよ」
「ま、待っ……あはぁぁっ♡」
制止が無視され、グラインドが開始された。
川城は腰を思い切りひき、そのまま俺の腰に自分の腰を打ち付けた。パァンッと肉がぶつかりあう音が空き教室に響き、そして、俺の頭にも直接響いた。
頭を揺らすような快感。
「ああんっ♡はぁっ♡アハァァァンッ♡」
川城のガツガツ貪るような腰使いにとろける声が抑えられない。
胸の上では特大サイズの脂肪の山がぶるんぶるん揺れている。
「ふぁんっ♡にゃあっ♡」
パン!パン!と肉と肉のぶつかる音が響き渡る。そのたびに俺の体中に爆発するような快楽が暴れまわる。
「アァッ♡ひぃんっ♡」
このままだと体だけじゃなく、頭までこのちんぽ専用に作り変えられてしまう。心までちんぽ専用に作り変えられてしまう……♡
何度目かのグラインドのとき、川城のちんぽが俺の奥をグイッとえぐった。それがこの体の一番の性感ポイントだったのだろう。体中が沸騰するような快楽に襲われた。
「ひぁああああああっっっ♡♡♡」
体中がびくびくと震え、全身から汗が滴っていく。性器から愛液が勢いよく吹き出す。
イッてしまった。ちんぽに突かれ、女として激しく絶頂してしまった。
男とあまりにも違う快感。何十倍も気持ちいい、病みつきになりそうな快感。こんな快感がこの世の中に合ったなんて……♡
「今、イッたのね?」
「イッ……イッてなんて……あああんっ♡♡♡」
「嘘はだめよ……って言いたいけど、佐山くん丸わかりだし、それに今のでまたイッたわね?」
「あぁぁあぁ♡♡♡♡♡」
腰を打ち付けられ、再び絶頂してしまった。
男と違って女は何度でもイケるというが、こんな間隔なくイッてしまえるものなのか。こんなんじゃ壊れてしまう……♡
「佐山くん、幸せそうな顔してる……そろそろあたしも出そうだわ」
「ああんっ♡ はぁん♡ で、出ひょうって……? はぁんっ♡」
「わかってるくせに……男がイクってことは射精するってことよ……中に出すわね?」
中に出す。
AVなどではよく見るシチュエーションだが、中に出すということは本来生殖のための行動であって、簡単にしていいことではない。なにより、今の状態の俺たちがその危険を犯してはいけない。
「や、やめ、中にらしたら……あぁんっ♡」
「そうね。今日その体、危険日だし、中に出したら佐山くん、赤ちゃんできちゃうかもしれないわね」
「あ、赤ちゃん……?」
「いいと思わない?本当は女のあたしがパパで、本当は男の佐山くんがママになるのよ」
当たり前のことだが、俺は今まで自分が妊娠するかも知れないなんて考えたこともなかった。
だが、今の俺は安産型の尻を持った女生徒『川城花蓮』の体だ。子供を妊娠できるのだ。あの多産の母親を持っていることから、十分な資質を持っているとも言えるだろう。
このセックスで妊娠させられた俺が、お腹をボテッと膨らませ、何ヶ月も暮らしていき、そのうち腹を痛めて子供を出産する。そんな想像が一気に膨らむ。
「見てみたいわぁ。この大きなおっぱいで赤ちゃんに母乳をあげる佐山くんが……」
「はぅぅぅん♡」
川城が俺の乳にむしゃぶりつき、舌で乳首をころがす。甘い声が漏れてしまう。

俺の体から力が抜けきったことを確認すると、川城は勝ち誇ったような顔で俺をながめていた。
「男の本能ってやつなのかしら。佐山くんを妊娠させたくって仕方がないわ……佐山くん、孕みなさい。孕んであたし達の赤ちゃんを産むのよ」
「やら、いやぁ……♡孕みたくない……♡か、川城……やめてくれぇ♡」
「嫌だって言うならなんであたしの体に足を回してるのかしら?」
「こ、これは……あぁぁぁんっ♡♡♡」
再び川城が腰を動かし始める。
体の中をかき回されているというのに、俺のむちむちの足は相手の身体を離さない。
川城の男の本能が俺を孕ませたがっているのなら、俺の女としての本能が孕みたがっているのかもしれない。
腰使いがどんどん激しいものになっていく。フィニッシュが近い。なんとなくそうわかった。
「ヒィンッ♡あっ♡あっ♡」
「さあ、佐山くん!中に出すわよっ!」
「だ、だめ……らめぇっ♡♡♡」
「しっかり子宮で受け止めなさいっ!」
「やぁぁぁぁああああああんっ♡♡♡」
『佐山香介』のちんぽがどくんどくんと脈をうち、『川城花蓮』の膣内に熱い精液を吐き出す。燃えるような熱さ。火傷しちゃいそう……♡
特濃の精液が体の中に広がっていく。心地いい……この快感の中でいつまでもたゆたっていられたらいいのに……♡
あまりの快感に頭が白くなっていく。男の力強い腕が俺の体を抱きしめた。
そして、男は俺の唇に自分の唇を重ねてきた。俺はそのキスに応えるように目を閉じ、そのまま意識を手放した。



次に目を開けると、夕日に照らされた空き教室だった。
頭がふらついている。俺はなにをしていたんだっけ……?
ベッドの上で体を起こすと、たっぷんと巨乳が揺れた。
「え、なんで俺に胸……ああ、そうか」
俺は昨日のこの時間、『おてんば爆乳娘』川城花蓮と体が入れ替わって……そして今日、全身を貪られるように……
「えっ……」
慌てて体を確認する。女生徒用ブレザーに包まれた特大サイズの胸、きゅっと腰をしめつけているコルセット、超ミニのスカート、水玉柄のショーツ、すべて俺が身につけてきたものだ。おかしな跡などない。
「夢……だったのか?」
俺は空き教室にきて、川城を待つ間、淫らな白昼夢を見ていただけ……?
いや、違う。
しわくちゃになったブレザーやカピカピになった水玉柄のショーツ、それに股間に太いもの……ちんぽが入っていた感覚が残っている。さらにいえば、体がセックスのための体に変わっていることもなんとなくわかる。
股間の愛液や精液は拭き取られており、制服もある程度直されているようだが、俺が川城とセックスしたのは真実だ。未だに火照った身体がその証拠だ。
俺の体を人質にとってレイプした川城。これから俺は彼女の言うことを聞かなければいけないのだろうか。毎日空き教室に呼び出され、男の川城に女として犯され抜くのか。
ジュン……。
「え……なんで、俺……濡れて……」
股間に手を這わせると、ショーツが新たな染みを作っていた。レイプされる推測をしただけというのに、なんでこの体は快感を覚えているんだ?
戸惑っていると、ガラガラと空き教室の扉が開いた。そこには『佐山香介』……川城が立っていた。
川城は俺が起き上がっているのを確認すると、無表情に近づいてきた。
ビクッとなってしまう。さっきの暴走具合からいって、まだ川城の性欲が収まっていないのは明白だ。まさか、第二ラウンド?
しかし、川城の行動は俺の予想に反したものだった。
「ご、ごめんなさいっ!」
川城はベッドのそばに座ったと思うと、その場で土下座した。
思わぬ行動に面食らってしまい、恐怖感やちょっぴり抱いていた期待がどこかに吹き飛んでいった。
「か、川城?」
「あたし、とんでもないことをしちゃった……自分の体だからって佐山くんを襲っちゃうなんて……最低!」
川城は土下座しながら震えていた。自分のことを責めているのだろう。被害者と加害者の関係だけに、フォローしづらい。
「セ、セックスの最中言ってた危険日ってのは嘘なの!怖がる佐山くんがかわいくって……本当にごめんなさい!」
川城が顔を上げる。涙と鼻水まみれになっている男がそこにいた。
入れ替わった当初なら、情けないと思ったその顔だったが、今はなんだか愛嬌があり、可愛らしく見えてきた。思わずくすりと笑ってしまった。
川城は俺をレイプしたっていうのに、俺はなんでおかしさを感じているんだろう?
「で、でも万が一、妊娠しちゃうかもしれないし、アフターピル買ってきたの!これ、飲んで!」
川城はそういって、俺にアフターピルの箱とミネラルウォーターを向けてきた。
俺は素直に受け取り、静かにアフターピルを飲んだ。ただ出すだけでいい男子と違って女子の後処理は大変だ。
「ふう……ってことは元に戻りたくないってわけじゃないよな?」
「も、もちろんだわ」
「デカパイデカケツで一生運動できない可哀想な『おてんば爆乳娘』の身体でもか?」
「もちろんよ……不便かもしれないけど、親からもらった私の身体なんだもの」
「この体、もう処女じゃないけどいいのか?」
俺は自分の体を見下ろした。爆乳のせいで体の下は見えないが、この体は今までの性を知らない処女の肉体じゃない。男女のセックスを覚えた大人の女の体なのだ。
しかも、童貞男子高校生……いや、今は非童貞か……ともかく、『佐山香介』のちんぽの形になっている膣だ。しかも膣内射精され済の膣だ。元に戻りたくないと思い直しても不思議ではない。
「自分の責任は自分で取るつもりよ」
上を見上げて言う川城の言葉に、俺は心底ホッとした。
「よかったぁ……」
安心感から涙が溢れる。ひょっとしたらこのまま一生女として生きなければならないと覚悟を決めなければならないのかと思ってしまった。
俺が涙を流していると、川城は自分のせいだと思ったのか、ハンカチを俺に渡してから、土下座を再開した。
「ほ、本当にごめんなさい!」
姿は違うとはいえ、あの『おてんば爆乳娘』川城花蓮が俺に対して土下座しているという事実が複雑で、面白く、脱力してしまった。
「あー、川城、頭上げてくれ」
ベッドの上から俺が言うと、川城は再び庇護欲をそそられる顔で俺を見上げた。
「まあ、確かにレイプは怖かったけどさ。川城は男の性欲にまだ不慣れだから仕方ないし、他の女子に対してやらなければいいよ。それにセックス中に川城もいってたけど、この体はそもそも川城のものだから川城が好きにしていいのは当然だし、ああ、あとは……」
「……あと?」
「お、俺も途中からはちょっと気持ちよかったし……」
恥ずかしさから言葉が尻すぼみになっていく。
ちょっと、どころじゃなかった。男に戻りたくないと本気で思ってしまうくらい強烈な快感だった……が、今これをいうべきじゃない。
慌てて言葉を変える。
「そ、それに、川城、バス停でいってたじゃないか」
「え?」
俺は咳払いをした跡、川城の声を真似ることにした。
できるだけ、『おてんば爆乳娘』っぽい口調を心がけ、俺は彼女の言葉を復唱した。
「どうしても半年間元に戻れないなら、せめて異性の生活を楽しましょっ」

夏編に続く。
久しぶりに書きました。
今回は入れ替わりシーンも書きました。

入れ替わりが戻るリミットを冬に設定してるので、夏編、秋編、冬編と続けていければいいなと思います。
イレカ
0.2430簡易評価
7.100KYおじさん
イレカさんでしたか。
描写が丁寧で、とても読み応えがありました。
夏編、秋編、冬編も楽しみにしています。
8.100きよひこ
茶さん、イレカさんに続く素晴らしい書き手が現れたと
思っていたのだけど、まさか本人だったとは。
作風から茶さんではないなと思いつつ、イレカさんは
入れ替わりに馴染んだ所から書く人というイメージが
あったので、ちょっとびっくりです。

そして、末尾の文で最後には戻るのかと残念に思った
のですが、よくよく読み返すと、そうとは限らない。
これからの展開がとても楽しみです。
12.100きよひこ
エピローグのやり取りで、今後への期待が大きく膨らみました。
夏編から冬編まで、エロと同時に、二人の気持ちが揺らぎまくる様も楽しみにしています。
14.無評価ドラゴン龍
とても面白かったです次回楽しみにしめます
19.100きよひこ
イレカさんのお話が好きなので読めて嬉しいです!
描写が丁寧ですし、元男の子が受け感アリアリでめちゃめちゃ可愛くて好きです!
エピローグ的に二人のいちゃいちゃが続いて、元女の子の暴走も続きそうで楽しみです!!
32.100きよひこ
イレカさん久しぶり!