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男子校共学化進行中

2019/01/06 14:54:00
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ある日の朝礼、いつものように仕方なく体育館に集まり、仕方なく校長の話を聞いていた生徒たち。
その時、重大な発表が突然にしてなされた。

この男子校が共学になる。

共学? ということは、女子がやってくる?
そう発表され、歓喜した男子たち。むさくるしい男ばかりのこの空間に華がやってくるのだと。
女子が来るのならばどうする? 共に学び合う? 友だちになれる? 付き合う?
まだ発表がされたばかりだというのに既に皆のテンションはMAXだ。
だが、どうやって共学になるのか。
よくよく考えてみればその女子はいつから来るのか? いきなり別の学校から転向してくるわけではない。
次の学年から? だとしたらここにいる生徒はやっぱり男しかいないことになる。
だめじゃねーか。生徒たちは落胆した。
しかしそうではなかった。全学年ほぼすぐといっていいほど共学クラスになるのだと。
だが、その方法を聞いて唖然した。

半数の男子を女子にTSする。

続いて発表されたその言葉に、全員凍り付いた。
ちょっと待て、どうしてそんな方法に!? 生徒たちは困惑した。
TSって、体を改造するのか!?
大体今から半数の男子が女になれと!?
いくらなんでも無茶苦茶だろおい!?
一体誰だこんなこと考えたやつ!
もはや狂乱といっていい。あまりにも非常識なことをしようとしているのだ。
そんな事態に陥ったものの決まった流れは止めることができなかった。
かくしてこの男子校は、生徒の半数を女にすることで共学になったのだ。





「いやあ、最初はどうなるかと思ったけど、女子もなかなかいいね!」
「まあね、おっぱい見放題触り放題だし」
でかく低い声がいきわたっていた教室に響く、甲高い声。
やぼったい雰囲気の学ラン男子しかいなかった教室に現れた、スカートブレザーの制服。
むさくるしく汗臭くあった教室に、どこか甘酸っぱい香りが漂う。
男子しかいなかった教室に突如現れた、女子たち。
本当に男子を肉体改変して女子にして、共学がスタートした。

肉体改変、すなわちTSする生徒は希望者を募った。
そして希望者が半数に満たない場合、無作為に選択し、その者が女子になると通知された。
強制的に女にされる、そんな恐怖が一瞬全校に伝わった。
が、それは一瞬でしかなかった。ふたを開けてみれば8割近い生徒が女子になることを希望していた。
そしてTSして女子になった生徒は一様に可愛かった。
デブでブサイクで汗臭かったあいつも、ひょろっとして影の薄かったあいつも、その面影は全くない。
だが顔を見れば、ああ、間違いなくあいつだな、と分かった。
顔は変わっていないはずだった。顔の特徴はそのままで、女の子になったということだ。
どうして女の子になっただけでかわいいって思うんだ? あいつ、あんなにブサイクだと思っていたのに。
隣の席のタカユキ、こいつは特徴のない平凡なやつだったはず。
だが、今その席にいるタカユキはスタイルのいい、かわいい女子になっている。
「タカユキ、だよな?」
「おお、そうだぜ。顔変わってないだろ?」
うん、変わってない。なんとなくタカユキの妹か? といえば納得しそうだが。とにかくタカユキの顔だ。
「本当に、女になったのか?」
いや見ればわかるけど、体系も違うってわかってるけど、どうにも納得いかない気がしてならなかった。
だってついこの前まで隣にいるタカユキは間違いなく男だったのだから。
「本当に女になったぜ。ほら」
そう言って何のためらいもなく、タカユキはスカートをたくし上げた。
「なっ!?」
そこにあったのはパープルの派手な色のショーツ。
それを惜しげもなく披露しやがった。
「ほうら、真っ平だろ? パンツの下にブツのもっこりはないだろ?」
「あ、ああ……」
「何なら直接見てみるか?」
そういうとタカユキはショーツに手をかけ、そっと下に……
「し、しなくていい! わかったから!!」
「けけっ、残念でしたーっ」
にやにやしながらようやくスカートをおろした。
見た目可愛い女の子になっても、中身は間違いなくスケベな男子だ。
「こおんな美女になったんだぜ。うらやましいだろぉ?」
今度は自分の大きな胸を両手で揉み始めてアピールしてきた。
存在感のある二つのふくらみが自在に変形し、見てるだけで柔らかさが伝わってくる。
こいつ、挑発してやがる!

みればほとんどの女子たち(元男子達)は女になってずいぶんと喜んで楽しんでいるように見える。
そんな女子たちを見て、俺はふと思った。

「……俺もTS選択すればよかったな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


学校を共学にする。その発表に歓喜した。
が、それは一瞬だった。女子を学校に受け入れるんじゃない。男子が女子になるっていうんだ。
なにそれ? どういうこと? みんな唖然としていたよ。
どういう技術か知らないけど、男を女に変えることができるんだって。
何だってそんなことしなきゃいけないんだよ。そこまでして共学にしたいのか?
意味不明だった。が、俺タカユキは女子化に希望した。
別にどうという理由はない。まあいいんじゃねって思ったから。
今までの人生、特にパッとしない見た目の俺は女の子と付き合ったことなんて一度もない。
勿論女子には興味ある。だから何回か告白した。だけど全部撃沈。
そして進学の時もいくつか受験して合格したのが男子校だけだった。
どうやら俺は女には縁がないらしい。もういいや、まじめに勉強しようって感じで。
そんななかでこれだ。どうせ女に縁がないんだったら、いっそ自分で……

そんなわけで俺は女になることを選んだのだった。
女子化の希望を出したらもらったのは一つの書類。
その書類に書かれていたURLに接続して、書類に記載されている自分ののIDを入力する。
するとそこに表示されたのは……なんだこりゃ? 希望の体系を設定してください?
女の子の全裸の3Dモデルと、なんか細かなステータス画面のようなものが。
んーなになに。この画面で自分の希望するボディにカスタマイズしてください?
えっと……お、身長って項目動かしたらモデルのサイズが変わった。
じゃあ、他にもこの髪の毛……あー変わった変わった。
なるほど。ここで僕がなる女の子の姿を設定できるんだ。
なんだかキャラメーキングみたいだな。ある意味同じか。
そ、それじゃあこのバストの項目も調整すれば……おお、大きくなった。
どこまででかくできるんだこれ。えーっと……おおっ! Mカップまでできるとは。すげーなこれ。
あれ? なんだこの数字……バストの重さ? うをっ!? Mカップだと5キロもあるのかよ。
さすがにそれはないわー。5キロって米袋じゃねーか?
やっぱFぐらいにするのがいいかなー。それだと1.6キロかー。さっきよりはマシだなー。
でも意外とFって小さく感じるな。どうせならもうちょっと大きい方がいいよな? Gぐらいにするか?
ん? 上下位置、角度、左右方向、上下方向……うわ、バストだけで妙に設定項目多いじゃないか。
乳輪のサイズや色まで。うわエッろい。
つまり、自分の好みのバストサイズだけじゃなくて形も決めれるってこと?
あ、本当だ。上下位置って項目調整したら垂れ乳になった。
ってことはほかも……あー、ヒップも単純に周囲サイズだけじゃなくて上下左右のサイズまで。
すげーなこれ。でかいだけじゃなくて最強の美乳作れるじゃねえか。
でも、これは想像以上に設定項目が細かいぞ。
うーん、その手のキャラメーキングとかやったことないからな。そういうの慣れてる人はさくっと作れるのかな?
でも……ここまで細かく設定できるんだったら、やりがいはあるよな。
やっぱ自分の体だし。満足するような女の子になりたいし。
よ、よし。ここはひとつ時間をかけてしっかり設定しよう!

……あれ、顔パーツだけは設定できないの? どうしてだよ。
輪郭はある程度いじれるみたいだけど、ちょっとだけだし。大丈夫かなこれ。




♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂

相違点1. 制服

当然だがTSして女子になった生徒は制服が変わった。
女子だからスカートだ。デザインは結構可愛い。
見てるこちらとしてはかわいい女の子がかわいい服を着ているのはうれしい。見ていて楽しい。
だが、中身は男だ。
まあ中身が男でも見た目は女の子で間違いないから別にいいけどさ。
それをちゃんと着こなしているようだし、決して落第点はない。
しいていうなら男子の制服デザインはそのままってのが。
そっちがよくなってんだったらついでに男子も格好いいのに変えてほしい。釣り合わん。
といっても制服変えるのに金がかかるのはイヤだ。じゃあやっぱり今のままでいいか?
ところでひとつ、女子の制服で気になっていることがある。
スカートの丈が短い。それもかなりのミニスカート。

「さすがにスカート短すぎねーか?」
「ちょっと走っただけでケツ見えちまうよこれ」
「スースーして落ち着かねえ」
その事実には当の本人たちも気が付き、気になっているようだ。
そりゃあ自分で穿いているんだから気が付かないはずがない。これが気が付かないのだったらアホだ。
女子たちは今までがズボンだったこともあり、慣れないスカートに苦戦しているようだ。
しかも限界まで短くなったスカート。
股下何センチといわれたら絶対一桁だろう。10センチは超えていないのではないだろうか。
こちらから見ても実に危なっかしい。穿いていないのとどれほど違うのか。
本人たちはめくれないように細心の注意をしているようだ。
今までガニ股大股だった歩き方がめくれないようにするため、内股小股のおとなしいものになった。
自然とそうなっているようだが、それを狙っているのか?
歩き方強制スカート、そう名付けてもいいかな?
「はあ、なんかすげー視線を感じる」
「女ってよくこんなの穿いてられるよな」
妙なところで本物の女性に感心していたその時だった。

ひゅ~

「おわっ!?」
「うわっ!?」
突如吹いた風。ほんの一瞬で大したことのない風だが、TS女子たちを動揺させるには十分だった。
それなりに強い風だったが、いとも簡単にスカートをめくれさせたのだった。
後ろを歩く俺は、ばっちりその中が見えてしまった。
ピンクと水色。スタンダードなのが2人。
そして、えっろいTバックな下着が1人いた!
おいおい、何でそんなもの穿いてるんだよ。ほとんどおしり丸出しじゃないか!
不覚にも、凝視してしまった。
「てめっ、見たなっ」
「え?」
こちらを振り返り、顔を赤くして恥ずかしがっている様子に見えた。
「女のスカートの中見やがって、ただじゃおかねえぞ!」
「い、いや、事故だっての!」
それ以前にそんな下着穿いてきてんじゃねえよ!

妙な形で女子の恥じらいを覚えた元男子達を見て、ふと思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


女子になって変わったことがいくつかある。制服もその一つ。
そりゃ女になったんだからいつまで学ランってわけにはいかないだろう。
まあ、男装女子ってのもありだからそれもいいんだけど。
といっても感じの学ランは女になった時に同時に処分されてこっちを渡されているからどうにもならないんだけどね。

女子制服に着替えた俺、ハルマサは感動していた。
男子校では出会いなんてないと思ってた、もう女子とは無縁だと思ってた、女の子なんてもう触れられないと思ってた。
だが、目の前に、手の届くところに女子はいた。
俺自身が女になって、こんな身近に。
それも俺のどストライクなスタイル。ミニスカ制服女子!
感動せずにはいられなかった。鏡の前でずっと自分を眺めていた。
特にこのスカート。公式でここまで短くしてくれるとは、なんとすばらしい!!
俺だけじゃない、他の女子達(元男子達)もみんなミニスカ制服姿!!
ふふ、毎日が楽しくなった。
そして妙に感動したのは、皆スカートおさえて恥ずかしそうにしているところ。
これはちょっと意外だった。男だから雑なもので中身なんて見えたって気にしないと思っていたが、そうではないようだ。
男でもある程度恥ずかしい気持ちはあるんだな。スカート捲れないようにしっかり押さえちゃって。
まあ、俺も同じだけどね。
だけど俺はちょっと違う。恥ずかしいから押さえているのとはちょっと違う。
その中身、下着、ショーツを、Tバックにしちゃいましたっ!!
ふ、ふふっ。Tバックいいねぇ。普通のショーツのフィットした包み込む感じとは全く違う。
割れ目に入り込んで、食い込んできて、そしてお尻の露出感。ぞくぞくしちゃう。
こんなの穿いてるの見られちゃったら、俺、どうしよう♪

ひゅ~

「おわっ!?」
突如吹いた風。ほんの一瞬で大したことのない風だが、短いスカートを巻き上げるには十分すぎる風だった。
慌てておさえた。おさえたのは条件反射ってやつだ。
誰かに見られただろうか。ふと後ろを見てみると……一人の男子がいた。
同じクラスの、キヨヒコだった。
「てめっ、見たなっ」
「え?」
「女のスカートの中見やがって、ただじゃおかねえぞ!」
「い、いや、事故だっての!」
ふ、ふふっ。事故だってことはわかってんだよ。
だけどさぁ、この定番なセリフ、言ってみたいじゃん。
ていうか、男のままのあいつをからかってみたいじゃん。
だって俺、女になっちゃったんだもーん。
あははっ、Tバックのパンツ見られちゃったー。
ばれないようにエッチなことするの、スリルがあってドキドキするし、それが見られちゃうと、恥ずかしくなっちゃう。
ふふっ、なんだかこの感じ、クセになっちゃうじゃないか!
俺、女になってよかったーっっ♪


「み、ミニスカでTバックだと直に座るから……木の椅子が、トゲがあって……」
「あーハイハイ刺さっちゃったんだねー取ってあげるからたくし上げて―。わーすげーケツ丸出しー」
いろんなことに目ざめちゃいそうだった。




♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂

相違点2. 体系

「それにしてもお前でかくしたなぁ」
「どうせならでかい方がいいじゃん?」
いつもの休み時間、大抵生徒はこの時間にはつるんでどうでもいい会話に華を咲かせる。
見た目には女子談義だが話の内容はどう聞いてもエロ男子の会話だ。
何のテーマで話しているのか、女になったそれぞれの体について語り合っているらしい。
「やっぱ女は胸だろ。見ろよこの存在感」
「うーん、そりゃそうかもしれないけど」
「俺は最初Iカップぐらいにしようと思ったんだけどさ、4キロって重さにはビビったよ。で、Fにしたんだけど」
「何事もほどほどってことだろ。その点俺は最適サイズだからな」
「まあな、肩こるからな」
胸のサイズの事らしい。女子たちはみんな見事にサイズがでかい。
いわゆる同世代の男子の好み、グラビアモデルのサイズってわけだ。
「けどさ、意外とFカップって小さくね?」
「あーたしかに。G位だと存在感あるけどな」
「もちっと大きくしてもよかったかな?」
やはりそれぞれ胸のサイズにはこだわりがあるらしい。
それは俺も同じ。胸は大きい方が好きだ。だがでかすぎるのはさすがに。
それと現実ってのがあるらしい。やはり大きいなりに重さがあるようだ。
それだけ重いもの持ってりゃ方も凝るってことか。

「……ってちょっと待て。今の話からするとサイズ選べるのか!?」
なんとなく聞いていたが、今の会話、明らかに自分で選んでいたように聞こえたぞ。
「そうだぜ。どんな体系がいいか細かく選べるんだよ」
「スリーサイズはもちろん、身長や髪形も自由に選べるんだよ」
「だけどどういうわけか顔パーツだけは設定できなかったよなあ」
「うんうん。肝心の部分がいじれないって、どういう仕様なんだろうな」
「けど意外と可愛くなったよな、俺ら」
なんということだ。ただ単に女になったのでなく、そこまで細かく選べたとは。
「つまり、これが今の俺好みの最高のボディ!」
「このおっぱい、でかくて重いけどそれがまた心地いいっ!」
「ふふっ、自分の体だからいつでも見放題触り放題」
「何回見てもいつまで見ててもあきないよなぁ」

エロボディ自慢する女子たちの話を聞いて、俺は思った。
「……俺もTS選択すればよかったかな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


俺、ナツヒコは鏡の前で心奪われていた。
自分で自分の姿に、心奪われるってのはどうかと思うけど、とにかく近い表現でいえばそういうことだ。
今日、俺は女になった。
どうやって女になるのかはさっぱりわからなかった。手術するわけではないと知らされて、簡単に女になれるとは聞いていた。
だが、それにしてもあっさり女になってしまった。
そして帰宅。女になった自分の姿を確かめるべく自分の部屋の姿見で自分の姿を確認した。
すると目の前に映ったのは、なんというかわいい女子。
顔は確かに俺だ。男の俺の顔をちょっと女っぽくしたら、というイメージで。
そこだけは設定できなかったが、他はすべて俺のカスタマイズで決めた女の子の姿。
髪の毛をちょっと伸ばしてみた。肩にあたるぐらいの、ミディアムヘアに。
それだけで顔の印象が大きく変わる。すごく可愛い女の子に見えてしまう。
それだけじゃない、首から下のボディは完全カスタマイズなボディだ。
今着ているのは制服だが、今までの学ランじゃない。ブレザースカートの、かわいい女子制服。
これは俺の新たな制服か。スカートの丈が妙に短いのが気になるけど、かわいらしさが演出されている。
ところで俺、いつこの制服に着替えたんだっけ? うーん……いまいち思い出せない。
その制服を突き上げるように、胸にはボリュームがある。
肩幅は狭く、華奢な印象を感じる細いラインだが、胸はちゃんと盛っておいた。
Gカップ。俺の憧れの巨乳爆乳。
存在感は肩にかかる重さからもわかる。2キロって表示されていたけど、そこまで重さは感じない。
その下もまた、引き締まったウエストの後に、曲線を描いてスカートが現れる。
こっちは盛りすぎないように、それでいて不足気味にならないようにバランスを見た。
そのスカートから生え出る太もももまた、白く美しい。
試しにスカートを上げてみる。
白の、純白のショーツがあった。ふをっ! なんという清楚演出!!
そのショーツの上から、問題の箇所に、触れた。
たいらだ、なにもない。
今朝まで存在していた俺のムスコは、いなくなってしまった。
そこに物体が存在していた、ということは俺の脳はちゃんと覚えている。
だが今は存在しない。触れてもあるはずのものがない。そのギャップが、俺の頭の中でプチパニックを起こしていた。
でもそれは俺自身が困惑しているという意味ではない。新たな存在に、歓迎とエロを感じていた。
ふっ、ムスコよ。思えばお前は小さかったが、たとえ小さくてもお前がいなくなって寂しさを感じてしまうよ。
あれ、ていうか俺どうして女になろうと思ったんだっけ?
えーと……うんそうだ、おっぱいだよおっぱい。好きにできるフリーおっぱいだよ。
おっぱいだけじゃなくて、女の体そのものフリーだけどな。俺の体なんだから。

そうとなれば、やることは決まっている。
今日はまだ親は帰ってきてない。いつものように仕事漬けで忙しい二人だ。
とはいえ、万全を図らねば!
部屋の鍵はかけた、窓も同じく、カーテンを閉めてがっちりガードする。
準備完了! さっそく始めよう。
まずは制服だ。胸元のリボンを外し、ブレザーを脱ぎ、スカートのホックを外す。
Yシャツにショーツ、なかなかいい姿だ。だがこれはまだ通過点に過ぎない。
続いてシャツを……って、ボタンが逆じゃないか。女子ってどうしてこうなんだ?
慣れないボタン外しに苦労しつつも、ようやく脱ぐことができた。
その下はキャミソールだった。キャミソールの下に除く谷間が、いい!
それにしても俺、本当にいつの間にこんなに着たんだ? どうにも思い出せない。
そのキャミソールを脱いだらようやく姿を現した。
ブラだ。
下のショーツと対になるような、白一色の、無地の地味なやつ。
鏡に映る俺の姿はオーバーニーソックスと白下着を身に着けた、どこか清楚な女子を思わせる姿。
ただし中身はエロいことで頭いっぱいの男子だけどね。
うーん、しかし、だ。これはちゃんと下着買ってこないといけないな。これはちょっと地味だわ。
どっちにしても代えが必要だからな。サイズはわかってるからネットでも問題ないだろ。
折角だからかわいいの買おう。今の俺に似合うような奴。
ついでにえっろいのも調達しよう。是非とも鏡の前ではあはあしたいですな。
で、このブラを外すわけだが……うっ、後ろのホックって、結構むずかしい。
これ外すのも難しいけど、つけるのも難しいんじゃね?
おっ、外れた。ではでは、ついに……

ぽろんっ

うおぉぉぉぉぉっっっっっっ!! 生おっぱいっ!!
素晴らしいっ、さすがのGカップ! そして見事に美乳にカスタマイズした俺グッジョブ!
乳首に至るまで細かく設定できたからなぁ。もう満足の一品。
おおっ、なかなかの重量感。しかもやわらかい。
あ、うん。おっぱい揉まれるってこんな感じねぇ。すごくドキドキしてくる。
乳首は……うん、思ったよりは感じないのかね。あ、でも、いじってると、ちょっと、こう。
しかし……やっぱし感じないな。
おっぱいが、じゃなくて。その、下の方が。
こういうことすると連動して俺の頭の中ではムスコがボッキしているのだが、その感じがない。
にしても……なんだろう、この行き場のない迷子感。ムスコがいなくなったせいかすごくもどかしい。
でも、なんだか下半身がキュンってしてきた。
女の子も感じるところは一緒なのかな? これ、子宮がキュンってしてる?
そう、まだ砦が残っている。
白い、純白の、ショーツ。それに手をかける。
俺自身の期待を高めるため、目をつぶって、するするとおろしていく。
目を閉じたままショーツを脱ぎ捨てる。あそこがスースーするのを感じる。
では……3、2、1!

ふぬおぉぉぉぉぉっっっっっっっ!!

裸ニーソックスな、女の子が鏡の前にっ!
その下はうっすらと、無毛寸前の産毛につつまれた場所。
各部分の毛の設定もできたから、とにかくムダ毛は全部生えない設定にしたがここだけはあえてうっすら残しておいたのだ!
これは、エっロい!
あえて全裸にならないこの姿。ああもうたまりませんなぁ! 女の子になってよかった!
ではでは、ムスコのあとにやってきたこの子をじっくり観賞しようではありませんか。
さっそく鏡の前に接近して、開脚座りです。おお、ピンク色が美しいですねぇ。
さすがにここの形状の設定はできなかった。当然といえば当然だが。
生で見ました、初めて生で見ました。
そりゃそうか、見れるわけないよねぇ。俺彼女なんていなかったし(泣)。
くぱぁ、と。ふむふむ、この突起がクリちゃんですね。女の子って、こうなっているのかぁ。
お、濡れてる? 散々エロいことでテンション上がってましたからねぇ。
このピンクの内側は……ん? 触ってもあんまり感じない?
いや違う。なんかこう、遅れてやってくるような、こみあがってくるような。
あ、んっ、これ、いいかも。ドキドキしてきちゃう。
そしてこの、クリちゃんは……
ひっ!? な、マジでこれ。めっちゃ敏感じゃん。
あれだ、男の1本分の神経が全部ここに集中してるってやつ。あの話は本当だったのか。
女の方が気持ちいいってこういうこと? うん、慎重にやっていこう。
「あ、んふっ……」
やべえ、自然と声出ちゃってる。でもこれ、出るよなぁ。
男って、おちんちんだけで感じるって具合だけど、女は全身で感じるっていうか。
子宮が中にあるからかな? それがダイレクトにボディに伝わってるとか?
「んっ、んうっ……」
あー、おっぱいまで感じてきちゃった。乳首ボッキしてるじゃん。
さっきまでと違う。おっぱいが、すげえ感じてる。
なにこれ? どうして違うんだよ。
「あはぁ、あぁっ……」
うわぁ、俺すっげえエロい顔してる。
トロ顔? こんな顔見たら男なんてイチコロだろ。
すげえ気持ちいい。指、もうちょっと、中に……
「あ、あぁ……」
あ、これ以上はダメ。これ、多分処女膜ってやつ。
さすがにこれは、気付つけちゃわないようにしなきゃ。
最初は、大事に、取って、おかなきゃ。
「やっ、あぁ、ぁぁっ………」
やば、いいっ、いいよぉ。
女の子って、こんな、こんな……
けど、なかなかイかない。男って割とすぐだけどっ……女って、すげー時間かるのか?
でもっ、だんだん……なんだか………
「あ、っぁ……あ、あ…………」
あ、すごい。きた……これ、この感じは………
やだやだっ、イクっ……い、イクっっ………!!
「あ、あぁ、あぁぁぁっっっっっっっ…………っ!!」


あーやべぇ、俺どんぐらいとんでた?
マジ失神しちゃうなんて。女ってこんなすげーのかよ。
まずっ、すっげー濡れてるじゃん。
これ漏らしちゃったってこと? それとも潮吹きってやつ?
まいったねぇ、ちゃんと掃除しなきゃ。さすがに怒られるわ。
けどまあ、こんな気持ちいいなんてなぁ。
俺、女になってよかったわ。




♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂

相違点3. トイレ

8割の男子生徒が女子になって浮上した問題がある。
トイレだ。
当然のように元男子校の校舎であるからトイレは職員用トイレを除いて男子トイレしかない。
なにせすぐに改装できるわけもなく、建物の構造もあってか男女別にするのがすぐには難しかったからだ。
これについては職員は悩んだようだが、結局しばらくは共用することになった。
どうせ中身はもともと男同士だから、気にしないってこともあったらしいが。
事実女子たちは俺たち男子が入ってこようが何の文句も言わなかった。入る方も文句言わない。
まあ、数でいえば女子の方が圧倒的多数であるから男子が何をしたところで数で圧倒することもできる。
数の暴力、恐ろしい。
というわけで生徒は男女別なくトイレは共用することになっている。
が、それで済むわけがない。
元々男子トイレだったから、比率でいえば個室は少ない。
一方、男子に比べ女子の比率は多い。するとどういうことが起こるか。

「まーだーかー」
「早くしろぉーっ!」
休み時間はトイレ待ちで行列ができる。
いかんせん女子である以上、使用するのは個室トイレの方だ。
だが明らかにその数が足りてない。
ただでさえ女子は時間がかかる。それも重なってトイレの混雑が悪化している。
「不便だねぇ」
「ぐぬぬ」
女子たちが行列している横を俺はゆうゆう通り過ぎ、男子用小便器の前に。
俺ら男子をからかっていた元男子現女子に嫌味を言わずにいられなかった。
ふん、数の暴力で俺たち男子を馬鹿にしたからだ。
よくもセクハラしてくれたなおい。

「失礼」
そんな行列の横をさっそうと通り過ぎる女子がいた。アキマサだ。
「おいこらアキマサ。横入りするんじゃねえよ!」
「こっちも我慢してるんだからな!」
抗議の声が上がるが、そんなのお構いなしだ。
いやお前何してるの。いくらなんでも俺だってそれは失礼だと思うよ?
「横入り? そんなことするつもりないけど」
いや事実してるだろ行列無視して中に入って来てるじゃねえか。
そう言おうと思ったところでフリーズした。
「え?」
男子用小便器の前に立ったと思ったら、おもむろにスカートの中に手を突っ込んで、ぱんつおろした!?
「んっ」
完全に脱ぎきったぱんつを今度は口にくわえる。おいおいちょっと、何かエロいんですけど。
そしたら次には器用に片手でスカートをつかみ、完全にまくり上げてしまった。
うわーい、おしり丸出しー。いいのそんなの男子の俺に見せちゃってー。
ここまでしたら何をしようとしているかはわかる。でも言わせてもらう。ちょっとお前何してるの。
空いた片方の手で自分の割れ目に手を。そして男子用小便器の前に立って……
「んんっ……」
やってるよ、マジでやってるよ。女子が、立ちション。
放尿時の独特の開放感からか、それとも尻丸出しでの恥じらいか、顔を赤くしている。
なるほど、片方の手でスカートたくし上げて片方で割れ目の操作するから口でパンツくわえてるのか、っておいっ!
いやもう女子が立ちションって素晴らしくエロいんですけど。
どうすんですか俺の下半身固くなっちゃって用足ししずらくなっちゃったんですけど。
この光景には並んでいたその他女子もあっけにとられていた。
だが先人が見せた技(?)を見て、限界に達しようとしていたやつらが黙っているわけがなく。
「お、俺も!」
「非常事態だからしょうがねぇ!」
それにならって次々に同じように男子小便器の前に女子が向かってしまった。
「みんな大丈夫? ちょっとコツが必要だから気を付けてね」
妙に色っぽく言い放ったアキマサは用を終え、そこから離れる。
「……なあ、拭かなきゃいけないんじゃねえの?」
「大丈夫、そう思ってここにトイレットペーパーおいてるから」
ああそうか、さっきから男子用小便器の前にトイレットペーパーおいてるなぁと思ってたんだよ。
これお前が置いてたのかよ。
「わ、わっ! おしっこが足を伝って……」
「こ、これ最後はどうすんだよっ!」
男の時とは勝手の違う立ちションに困惑し、アキマサに倣ったビギナーたちにはトラブルが発生していた。
おいおい、トイレの床だけならともかく、靴下と上履きぬらしてねーか大丈夫か?

男子用便器の前でおしり丸出しで悪戦苦闘する女子たちを見て、ふと思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


俺、フユノブが女になっていくつか問題点があるとしたら、やっぱりトイレだな。
男の時は立ちションで済んでいたけど、女はそうはいかない。
小であってもちゃんと座らなきゃいけない。いやもう知っていたけどさ。
だけど実際女になってみると、やっぱ不便だね。さっと行ってさっとできないし。
おまけに我慢できる限界が男よりも短い。
医学的には尿道が短いんだっけ? それで我慢できないとか。
やっぱり男はムスコの分距離を稼いでいたということか。
今となってはいなくなってしまったムスコが愛おしい。だがいなくなってしまったものはしょうがない。
それに付け加えて、学校のトイレはほぼ和式だということ。
一部洋式はあるけど、絶対数は和式の方が多い。
そういえば男の時は個室使ってなかったなぁ。だから和式なんて使ってなかったよ。
ここに来て初めて同然で和式トイレ使うことになるとは。
だがいくつか利点はある。スカートは和式に向いている。
あれだ、ズボンで和式トイレに入る場合、おろした位置が妙に気になる。
膝のところにきれいにまとまればいいのだが、うまくまとまらないと前方にかかってしまいそうな気がしてならない。
だが、その点スカートは万能。
たくし上げればそれで解決。あとはショーツだけ。
ショーツの面積は圧倒的に少なく薄いから膝のところでしっかりと止めておくことができる。
短くてひらひらしてスースーすると思っていたスカートだが、ここにきて利点が明らかになるとは。

それと、ちょっとエロいと思うのは俺だけ?
だってさ、洋式だと座ってるって感じだからそれほど気にならない気がするけど、和式だとどこにもあたってないじゃん、お尻が。
だからさ、下半身裸って意識が何だか強くなってるんだよね。
これ、後ろから見たらおしり丸出しじゃん?
合法的に下半身裸になるっての、そう考えたら、エロくない?
俺、女になったけどやっぱり中身は男なんだよね。
色々とエロいこと想像しちゃんうんだよ、そうやって生きてきたんだよ男子だから。
女の子のエロい光景を自ら実行している。そう思うと、ねぇ。
ふふ、学校でのトイレが楽しくなっちゃうなんて、俺変態かな?
そんなバカなことを考えながら個室から出た時だった。

「うおっ!?」
おしりがいた。
いや、正確にはスカートたくし上げてノーパンの女子が小便器の前にいた。
「あ、ユフノブいたんだ」
振り返ってこちらを見た女子はアキマサだった。
アキマサは同じクラスで、俺達女子の中では一番女子になじんでるやつだった。
正確には女言葉を積極的に使ってて、色っぽい雰囲気を醸し出してるやつだ。
よーするに、普段からエロいってことだけど。
事実、脱いだであろうショーツを口にくわえているのが、エロい。
そんな奴がここで何をエロいことしてるのか。いや、ちょっと待て。まさか……
「そこで、おしっこしてるの?」
「そうよ」
なんということだ。女子なのに、立ちションしてる。このエロシチュエーションに俺は絶句するしかなかった。
「んっ」
器用に腰をプルプルと震わせている。あれだ、立ちションしたときに最後にやるやつ。
残ってしまった液体を切るためにおちんちんプルプル震わせるやつ。
女の子でもできるんだ。同時にお尻が震えるんだけど、エロい。
終わると目の前に置かれていたトイレットペーパーを取り、あそこを拭く。
「失礼、これだけは捨てさせてね」
俺の脇に近づき、拭いた紙を個室の便器に捨てている。さすがにそれはよそには捨てられないか。
そういえばたまに紙が流れないで残っていることがあったけど、こいつの仕業か。
当の本人はいまだショーツを口にくわえたまま。スカートはおろされている。つまり、ノーパン。
それよりも。
「立ちション、できるんだな!」
そっちの方に感動していた。
仕方なく個室に入って、しゃがんでしていたけど、そこでエロを感じていたけど。
そこでできるのなんて、なんてエロいんだ!
「コツが必要だからね、ビギナーは気を付けてね♪」
口にしていたショーツはすでに外されており、手にしてそのままアキマサは出て行ってしまった。
いや、ちょっと、あなたノーパンのままですよね? 穿いていきなさいよ。
ともかく、俺に新たなトイレへでの魅惑が生まれたのだった。

初回は大惨事でした。




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相違点4. 清涼

「あちーなぁ…」
本日の気温は上昇中。
一応教室にはクーラーはあることはあるが、設備が古いのか電気代をケチっているのかあまり冷えない。
この状態では暑い外から入って来たばかりだとすぐに体は冷えない。
そしてこのクラスの三十数名の生徒が集中している。
そうとあっては一人一人が熱源になるから余計に気温が上昇する。
窓を開ければ一応風は通る。だがそれも限度がある。
そんなこともあって、生徒たちは必死に体を冷却しようとあおいでいる。

「胸でかいと谷間に熱こもるよな」
「あー、いえてる」
女子たちは遠慮なくシャツの前ボタンを開放し、風を流し込んで冷却しようとしていた。
その状態では谷間もくっきり、ブラまで見えてしまっている。
「お、おい。見えてるぞはしたない」
「あ? いーじゃねーか別に」
「俺らだったら別に見られても気にしねーぞ」
あっちが遠慮しなかった。それにしてもなかなか大胆なブラだな。
しかしブラが見える程度だったらまだマシだ。
「こういう時ブラって邪魔だよな」
「あーたしかに。ずーっと密着してるからあちーよな」
「えー? 薄いやつあるだろ。それにすれば?」
「うーん、今度買うか」
よくわからんがブラも大変らしい。
考えてみれば肌着のシャツと違ってずっと肌に密着してるから暑くなるのは仕方ないのか。
苦労しているみたいだな。
「よっ。あちーから外すか」
器用にシャツの間から何やら取りだしてきた。
ブラだった。
「ってうおいっ!? 何してんだお前!!」
「だってあちーからさぁ。この時だけでも外しておこうと」
「いや、その、見えて……」
つまりのところ、ノーブラだ。
そいつの汗で湿ったシャツが、透けてしまっている。
下の肌の色も、胸の球体形状も、さらには、先端のピンクの突起まで。
「別にお前らに見られたって気にしねーって言ってるだろ?」
「そーそー。生で見せてるわけじゃねーし」
気が付けばそこにいた数人も同様にブラを外していた。
一様に、透けて見える。
なんだか目のやり場に困ってしまう。

「けどよ、こういう時スカートっていいな」
「いえてる。風通しいいから涼しいよな」
そういう女子はさらに涼を求めようと、短いスカートをばっさばっさと仰いで風を送っていた。
当然のようにその中身、パンツは俺ら男子の視線にさらされている。
「お、お前ら、だから見えてるって」
「いーじゃねーか。暑いんだから」
「別にみてもいいぜ。ほらほらっ」
露骨にスカートをたくし上げ、中を大胆に見せてくる。
シャツも開けてるから谷間くっきりだし、ポッチもしっかり見えている。

大胆に見せつけられる大人なショーツにドギマギしてしまう自分に、ふと思った。
「……俺もTS選択すればよかったかな」


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「あちーなぁ……」
暑い日が続く今日この頃、俺、ムネトシの口から出るのはただただ熱いの言葉だけだった。
自宅でひとっ風呂あびて汗を流し、締めに冷たい水をかぶったが暑いことにかわりはない。
こういう時の俺のスタイルは短パンとタンクトップだ。
これは男の時から続いていて、女になってもこのスタイルは維持している。
男の時のをそのまま使ってるから若干大きいが、別に気にしない。
だって暑いんだし、この格好の方が涼しいし、どうせ家の中だし。
女の子なんだからそんな格好は、なんていうけど男の時は一言も言わなかったくせに。
別にいいじゃん、外でちゃんとしているんだから。
あーそれと、女になった変化といえばブラかな?
俺の巨乳を支えるにはブラは最適だ。だが暑い時は天敵だ。
だから風呂上がりでまだ体が火照っているときはブラはつけない。その方が通気性があって涼しいから。
それと寝るときはブラ外してるから、つけるのめんどくさいんだよ。
こればかりは女になっての手間だな。些細なことだけど。
「ん?」
自室に入った時、ふと視線を感じた。見ればそこにいたのはベッドの上でマンガ読んでる弟のマサトシだ。
俺と弟は同じ部屋を使っている。2人で1部屋。理由は根本的に家が狭いから。
そんなこと俺は別に構わない。何故なら弟がかわいいから。
弟のマサトシは俺とは年が離れていて、まだまだあそこに毛の生えていないような年齢だ。
つまり、ショタ。
男の時からにーちゃんにーちゃんと懐いていて、俺もその相手するのが好きだった。
けど俺が女になってから微妙に距離ができたような。
なんということでしょう。せっかく女になって、ねーちゃんになったのに弟から嫌われるとは。
俺は女になって嗜好が変わったかもしれない。
今までは弟の遊び相手として、兄として引っ張っていく気持ちが強かった。
だが、今はこのかわいい弟をハグハグモギュモギュしてやまない気分なのだ。
そう、ショタっていいよね!
そんな弟は相変わらずベッドの上でマンガ読んで……と思ったらこっち見た。
が、すぐに視線をマンガに戻した。嫌われてる、と思ったがなんだか顔が赤いような。
と、ここでようやく思い出した。俺の格好。
女の格好で、タンクトップで、ちょっと露出多いよな。谷間くっきりだし、脇のところからもポロリしそうだし。
ひょっとして嫌われてるんじゃなくて、恥ずかしがってる?
うん、ちょっと試してみよう。
「なーマサトシ。最近にーちゃんのこと、近づかないよな?」
ちょっと接近、そして前かがみ。タンクトップは前に垂れ下がり、胸の谷間ははっきり見えているはず。
というよりも、中のピンクのぽっちも見えちゃってるかも。
俺の問いかけに反応し、マサトシはこちらを見て……すぐに顔をそらす。
顔は真っ赤。必死にこっちを見ないようにしているのがよくわかる。
うんうん、かわいいねぇ。
「にーちゃんが、ねーちゃんになって、びっくりしてる?」
静かにうなづく。よし、コミュニケーションはできる。
「別にな、今まで通りでいいんだぜ? それに……」
「?」
わずかにとった間が気になったか、マサトシはこちらを見てくれた。
「見たかったら、好きなだけ見せてあげるよ」
前かがみのままぐいっとタンクトップの首周りを引っ張る。
ぶかぶかになっているタンクトップは簡単に引っ張られて、中はくっきりのはずだ。
「…………っ!!」
さらに顔を赤くするマサトシ。顔はマンガを向いているけど、視線はちらちらとこちらを見ている。
そうだよねぇ、おっぱい気になるよねぇ。男の子だもんねぇ。
しかしこれは今までない以上にいい反応かもしれない。
にーちゃんからねーちゃんになった今、俺は弟とさらに仲良くなれる。そしてハグハグモギュモギュできるっ!
ああ、この胸の谷間にマサトシの顔を埋めてあげたいっ!
パフパフって、モニュモニュってしてあげたいっ!
うん、そうだ。ためらうことはないのだ! カワイイ弟なんだから、してあげたっていいじゃない!
「マ・サ・ト・シっ♪」
「!?」
俺は邪魔くさいタンクトップを脱ぎ捨て、上半身の母性の象徴をさらした。
「ほらっ、にーちゃんのおっぱいカッコいいだろぉ? ハグハグしてあげるっ♪」
ぷるんっと震えるおっぱい。両手を広げマサトシを迎えてあげようとした。

「…………………」ばたんきゅー
「って、ああっ!? ま、マサトシぃぃっっっ!!」
急に倒れてしまったマサトシ。突然の出来事に俺は困惑し、必死になって解放する。
上半身裸で、自分の巨乳をぷにぷにとマサトシの顔に当てていたのが逆効果だとは微塵も考えていなかった。

以降、部屋には俺とマサトシの間に物理的な壁が作られてしまいました。




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相違点5. 生理

「うぅ、しんどい……」
「まじでつれえよぉ……」
何人かの女子が机に突っ伏して苦悶していた。
「どうした? 体調悪いのか」
「あの日だよあの日」
こちらに真っ青な顔して答えた。
「あの日? あ、生理か」

女子が月に一度訪れる体の変化。
男であれば絶対に経験することのない現象であるが、女になったこいつらは間違いなく経験することになるか。
それがどれほど辛いかは俺は知る由もないが、こいつらの表情みればどんなものかわかる。
しかし生理が来るってことは、本当に女になったってことか。
考えてみればわずか1日で姿かたち変わって女になったんだ。その時点でおかしなことだ。
体がそんなわずかな時間が変わってしまうなんて、一体どういう方法なんだろうか。
その姿、だけじゃない。まがい物なんかじゃない。正真正銘の女に。
ってことは、こいつら妊娠も……いや、これ以上考えるのはやめておこう。
「股間から血がどばーって出るんだぞ。トイレ真っ赤になるんだぞ」
「血だけじゃねーそ。レバーみたいなものまで。ああ、もうレバー食えねぇ」
かつて見ていた女子は全くといっていいほど平然としてそんな様子なかった気がするが、そうでもなかったのか。
見えないところで我慢していたか、耐えていたのか。
「女子って偉大」
「こんなの月一回必ずあるなんて」
かなり泣き言いってる。
「うわぁ、俺生理はまだだけど、そんなにつれーのかよ」
「やだなぁ、なんだか」
「おっぱい好き放題、なんて思ってたけどこれはなぁ」
まだ経験していないやつらにも動揺が広がっている。
「うぅ、女になるんじゃなかったかな」
「この瞬間だけは男に戻りてぇ」

苦悶する元男子たちたちを見て、俺は思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


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「……つらい」
俺、ツネヒコは健康であることが誇りだった。
いまだかつて病欠をしたことがないし、風邪だってここ数年かかったことがない。
当然それだけの健康体だから学校の保健室なんて使ったことなんて一度もない。
だが、もう限界。
知識としては知っていた。女子には生理というものがあって、出血を伴い、体調の不良になると。
だが、知識として知っているのと実際に経験するのとでは大きな違いがある。
月1回かかって、今まで見てきた女子はそんな素振りなんて見せなかったからさして大きなものでないと思っていた。
だけど、全然違う。
こんなにもつらいとは、思っていなかった。
血が出るんだ、貧血になって体力低下するのは当然だし、何よりこの頭痛と痛み。
初経験だからなのか、慣れてないからなのか、とにかく我慢できない。
こうして俺は(多分)生まれて初めて保健室というものを利用することにした。

「すいませーん」
「あらあら、どうしたの?」
保健室の扉を開けたら、そこには天使がいた。
タイトスカートとストッキングで包まれた脚に、白のブラウスを盛り上げるふくらみと白衣が似合う女性。
なによりも、その笑顔が素敵だった。
初めて見たが、この人が保健室の先生か。
「あ、あの……」
「んー? あ、もしかして生理かな?」
近づく保健室の先生に俺はどぎまぎした。薄手のブラウスの下、うっすらと浮かび上がる下着のライン。
自分だって立派な巨乳なのに、いまだ女性の胸を見るとドキドキしてしまう。
ましてやこうして距離が近いと、女性とは無縁に近い俺は余計にだ。
「えっと、辛くて……」
何も語ってないが生理痛だとわかってくれた先生にそれ以上言う必要はなかった。
「わかった。それじゃあベッド空いてるから休んでていいよ」
「は、はい……」
言われるが通りにベッドに横になる。綺麗にクリーニングされてるであろうベッドとシーツはちょっと無機質な感じだった。
それにしても、保健室にこんな先生がいただなんて知らなかった。
健康だからって一度も利用したことがなかったからなぁ。知らなくて当然か。
横になって少しは痛みは和らいだかな? そうでもないかな?
女になって受け取ったパンフレットみたいなものには女の子のことがいくつか書いてあったな。
受け取った時はいい加減に読んで、実際に使った方がわかるとか考えてオナニーしまくっちゃったけど。
いざ生理になったら慌ててそのパンフ読んで、ナプキンと生理用ショーツを慌てて買ったっけ。
自分バカだよなぁ。本当に女をなめてた。
うう、ナプキンも気持ち悪い。そろそろ交換した方がいいかな?
「大丈夫?」
「は、はい……」
そんなこと考えていたらベッドを仕切るカーテンを開けて先生が来た。
「はい、辛い時は我慢しないでお薬飲んでいいからね」
手にしていたのは水と生理痛の薬か。体を起こしてそれを飲む。
健康体だった俺の体、薬に頼ることになった自分が、本当に変わってしまったんだと痛感する。
「う、うっ……」
なんだか、涙が出てきた。
自分でもよくわからない。きっと女になったせいだ。女になって、涙もろくなったんだ。
なんだかよくわからないけど悔しくて、悔しくて。涙が……
こんな簡単に泣いちゃうなんて、それも悔しくて。
「あら、どうしたの?」
「だって、俺、こんなに……」
突然の変化に先生が反応して、俺にやさしく声かける。そして……
「えいっ」
「!?」
先生が、抱きしめてきた。
先生の豊かなおっぱいが、顔が埋まって、柔らかくて、温かくて。
「いいんだよ、泣きたいときは泣いて。だって女の子だもんねぇ」
「ふ、ふえぇぇっ……」
いまだかつてないぐらい、泣いていたと思う。
顔で感じる先生の胸が柔らかく気持ちよくて、ぎゅっと抱きしめて思いっきり泣いた。
こんな、こんな優しい先生が保健室にいただなんて。
どうして知らなかったんだろう。この先生のこと、もっと早く知っていれば。
そうすれば俺、女にはならなかっただろうに。
年が離れてるって言われたっていい。そんな事一向にかまわない。
俺、この保健室の先生が、好きになった。
もっと早くあっていれば、男として先生に、告白したのに。

「先生、先生ぇ……」
ひとしきり泣いて、なんだか落ち着いた。すっきりした。
やわらかくて、いい匂い。やさしさにつつまれた気分。
「わかるよぉ、先生も」
「うん……」
「先生も女になって初めて来たときはびっくりしちゃったからねぇ」
「……………………え?」
「だって男じゃ経験しないもんねこういうこと。しょうがないよね」
「……………………あ」
「もういいかな? 大丈夫だからね、先生はここにいるから何かあったら呼んでね」
俺を寝かしつけて去っていく先生。
うん、そうだったね。ここ男子校で、教職員は元々ほとんどが男性だったよね。
保健室の美人な先生、今まで見たことがなかったのは俺が保健室を使ったことがないんじゃなかった。
先生が、元々男性で、俺達同様女になったからだった。
そのことをようやく生理痛でパニックになっていた頭が理解した。

「……けど、保健室の美人先生との百合もありだよね?」
後日、先生が47歳で子供2人がいる事を知ったのだった。



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相違点6. 水泳

本日の体育は水泳です。
うちの学校、屋内プールという実に豪華な設備を持っている。
おかげでオールシーズンで水泳ができるというのはなかなかの強みだ。
それ以上に強いものが存在するのだが。
「いやーマサユキくんおっぱい大きいですな美乳ですなぁ」
「あ、こら揉むなっ」
「きょ、競泳スク水……俺、かわいい」
女子たちは非常に興奮しております。
今までむっさい男だけだったから、それを考えたら興奮するというか、はしゃぐのは当然かもしれないが。
中身男子ってのもあるけどな。
そして当然のように俺ら生粋の男子も興奮しています。下半身に血流が集中してしまう。
なにせ女子たちはスタイルがよすぎるからな。
女子たちが着ているのは学校指定の普通のスクール水着。そう、普通の。
普通の女子生徒が着ている分には何ら問題ないであろう水着。だが、スタイルがよすぎるやつらが着ていると話が違う。
サイズが全然あってないのだ。
多分身長ウエストは合っているんだろうと思う。だが、胸周りがあってない。
どいつもこいつも巨乳爆乳であるから本来の標準体型に合わせて制作されている水着ではおさめきれてない。
本体は紺色で、肩ひもが白の細いタイプの水着なのだが、そこから谷間がくっきり。
さらに言えばあの水着、背中側が開いていて布面積が少ない。
したがって脇のところは大きく空いていることになるのだが、そこから乳肉があふれているやつもいる。
危険だ。いろんな意味で危険すぎる。

「お前ら、ふざけてないで授業始めるぞ!」
体育教師の一括があった。
こちらはさすがにスクール水着などではない。専用の競泳水着だ。
最近の競泳水着は水の抵抗というか摩擦を少なくするためあえて全身を包むタイプのはず。
だが、この教師が来ている水着は、ハイレグだ。
おかげさまであそこの食い込みがすごい。いやまあ、奇麗な脚ですね。
体育教師らしいスポーティな体のライン。引き締まった手足がいかにも運動選手を感じさせる。
そして当然のように巨乳だ。ボリュームがすごい。
つまり、だ。
「先生まで女になったんですね」
そう、こちら体育教師も男です。
今回の共学の件は生徒だけでなく、一部教師まで女性になるという措置が取られている。
当然この教師も自分から希望を出したんだろう。
「ふっ、人生変える機会だからな」
「ん?」
「もーハゲの売れ残り独身男だなんて言わせねーぞお前ら」
薄毛に悩む50代中年独身男の影も形もなくなっていた。


そんなこんなで始まった水泳の授業だが当然のように事件は起こる。
「なーなーキヨヒコぉ」
ヨシマサから呼ばれ、そちらに振りかえる。
「なんだよ」
「うりゃっ」
間髪入れが俺の目の前にいた女子の背後から、その着ている水着をひん剥いた。
「きゃっ!?」
水着の肩ひもを引っ張り、一気に下におろしたから当然のように俺の目の前にはその女子のおっぱいが。
「な、なにしやがるヨシマサっ!!」
ひん剥かれたヒデヒコは顔を真っ赤にし、慌てて胸を隠す。
そのしぐさといいさっきの悲鳴といい、女子を感じる。中身男だけど。
「お前なあぁぁっっ!!」
「はっはっはっ、別に減るものじゃないだろ?」
顔を真っ赤にしながら水着を直すヒデヒコ。小さい水着に無理やり乳肉を詰めている姿が、エロい。
「お前らっ! 真面目に練習しないかっ!!」
当然のように教師からの激が飛ぶ。

水着の前が苦しくなってきた俺はふと思った。
「……俺もTS選択すればよかったかな」


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水泳の授業も終わり、シャワーでプールの塩素を流し落とす。
更衣室のシャワーはオープンになっていて左右についたてもない。互いが思い思いにシャワーを浴びている姿が見える。
こうしてシャワーを浴びていると俺、ヨシムネは自分が女になったことを実感する。
体を伝わっていく水の流れは、男の時とまるで違う。
頭から浴びた水は俺の首筋を通り、胸にたどり着く。
今まで存在したことのなかった隆起に水は一度流れを悪くし、そしてそのまま腹部を伝わる。
そして脚の付け根を滑らかに伝わっていく水を感じると、今までそこに存在していた障害物がなくなったことを実感する。
そしてなにより今自分が男では絶対に着ることのない女性の水着を着ていることで、より実感する。
今着ている水着は学校指定の競泳水着。しかし、これもまたエロを感じる。
そのままだったら何も感じないかもしれない。俺もかつてはそんなこと思いもしなかった。
それこそ露出の多いビキニの方がずっとエロい、と思っていたのだが、今は違う。

スク水こそ、最高!
何故かって? この不便さがだよ。
着てみて初めて分かったが、スク水は上下完全一体となっている。これを着るのはなかなか不便だ。
どこでそれを感じるか。トイレだ。
スク水の場合は横にちょっとずらせば大丈夫、ということはない。
下の面積が少なければその可能性はあるが、いかんせんスク水は防御力が高い。
布面積が大きいから、ずらすだけの余裕がないのだ。
ではどうするか、全部脱ぐしかない。
そう、脱ぐのだ。つまり、トイレの中では必然的に全裸になってしまう。
ふふ、女性がまさか個室の中とはいえ、堂々と全裸になっていた時があったとは。
そう思うと、興奮しないか?
それともうひとつ。これは俺だけかもしれないが……バストがより、目立つ!
やはりバストは大きいに限る。だから俺のバストは設定できる最大値、Mカップの爆乳だ。
さすがに重い。だが、その重さも心地いい。
いまだかつて見たことのない爆乳が俺だけのものになっている。最高じゃないか。
当然だがスク水はそこまで胸のでかい体形に対応していない。そもそも着用する女子がそこまででかくなることはないからな。
これがビキニだったら紐の長さで対応できただろう。
布面積はそのままだから先端をかろうじて隠している、そんな構図か。
それも悪くない。ギリギリの不安定感を演出するビキニもまたいいだろう。
だが、スク水はそれとはまた違う不安定感を演出し、エロを際立たせている。
先ほどの通り、スク水にMカップに対応するようなサイズはない。ではどうするか。
簡単だ、無理やり詰め込む!
俺が今着ている水着は胴回りのサイズが合ってる中で一番胸周りが大きいサイズだ。
それでもきつい。サイズに余裕がない。ここにMカップを詰め込む。
するとどうなるか、押し込まれたおっぱいがつぶれ、なかなかの不安定感を演出している。
上からも乳肉があふれ、開いている横からもあふれ、つぶれおっぱいが際立っている!
ちょっと苦しいが、我がMカップを思えばそんなことで俺は負けない。
スク水につつまれた爆乳、なんと素晴らしいか。
ふふ、見事に変形した爆乳はすばらしい。先ほどから浴びているシャワーの水が谷間にたまってグラスのようではないか。
そう、シャワーだ。本来の目的を忘れてはいけない。
プールの塩素を流すためシャワーを浴びている。が、このままでは全て流しきることはできない。
全身を包む水着ではその下は流せない。ちゃんと洗わねば。
きつきつになったスク水の肩ひもを外し下に引っ張る。
これを引っ張っただけでは無理だ。なにせ胸が邪魔している。スク水の胴回りの布に手をかけ、ゆっくりとおろしていく。

ぽろんっ

我がMカップが解放された。
更衣室のシャワーの中とはいえ遮るものなんてないところで、他の女子たちもいる中で俺は自慢のMカップをさらした。
この開放感! 普通は許されないワンピース水着の上を開放するなど、トップレスになるなど、最高じゃないか!
見れば他の女子たちも同様に、シャワーで洗い流すために、恥ずかしがることなく胸を裸体をさらしている。
上を脱ぐだけでなく、全裸になっているものまでいるのだ。
肌色率の高い空間、最高の、空間だ!
「いやあ最高ですなぁ、ダントツの揉みごたえ抜群ですなぁ」
「なっ、こらいきなり何するっ!」
油断していたら背後からヨシマサからMカップを揉まれた。
「さすがにでけーなぁ。にしてもお前も好きだねぇ。重量級とわかっててMカップにしたんだろぉ」
「あんっ、離せこらっ……っておいっ! どこに手を突っ込んでるっ!!」
胸だけに飽き足らず脱ぎきっていない水着の下にまで手を突っ込んできやがった。
ちょっ、この野郎っ。
もっともこんなことしているのはヨシマサだけじゃない。見れば他のところでも胸を触り合って遊んでいるのだが。
さすが中身男たち。目の前におっぱい放り出されているから素直に飛びつく。
しかもお互いに男同士だから遠慮しない。触るのも、触らせるのも、だ。
ちなみに後ろのヨシマサもただ単に俺の胸を揉んでいるわけではない。
抱きつきつつ、しっかり自分のおっぱいを俺の背中に押し付け、すり寄せている。
当たっているんじゃない、当てているんだ。

「ったくお前ら、ふざけるのもほどほどにしろよ」
そんな痴態に参加することなく、ヒデヒコは静かに一人シャワーを隣で浴びていた。
「ほうほう、そういうヒデヒコ君もすみに置けないですなぁ」
「な、なんだよ」
「お前のその、実質パンツ一丁の姿が、いいっ!」
びしいっと親指を立てずにはいられなかった。
ヒデヒコは俺らと違い、水着を上だけ脱ぐスタイルではなく、脱ぎきっていた。
いや、正確には全部ではない。水着の下に穿く、サポーターを残した姿で!
サポーターは見た目パンツと何ら変わらない。水着の下着のようなものだ。
だが、ラインが出ないよう極力削られた布面積が、際立つ。
言ってしまえばTバックなのだTバック!
さらには布地も水着の生地と違って、薄い。つまり、こうしてシャワーで濡れてしまえば簡単に透けてしまう。
ほうほうパイパンですかぁ。
「じ、じろじろ見るんじゃねえっ!」
胸と股間を手で隠すヒデヒコ。しかし時すでに遅い。
「いいですなぁそういう恥じらう姿も」
「隠しきれてないところが、またいい」
「う、うっさいっ!」
顔を真っ赤にするヒデヒコはなかなか乙なものですよ。
こうして毎度のように、女子更衣室ではエロに華が咲いていたのだった。

「おまえら遅刻するのもいい加減にしろ」
「「「「………はい」」」」
そして毎度の如く次の授業に遅刻していたのだった。




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相違点7. 陸上

本日の体育の授業は陸上です。
まずは軽く足慣らしということでグラウンドを周回するところから始まる。

ぶるんぶるんぶるんぶるん
ゆっさゆっさゆっさゆっさ

「む、胸が揺れっ……」
「邪魔くせぇ……っ」
「擦れて、痛いっ……」
女子は乳揺れに苦戦していた。
自らの欲望に従ってカスタマイズした巨乳、爆乳に苦しんでいる。
走るたびに胸が大きく揺れ、かなり邪魔そうだ。
それも気になるが……
「どうしてブルマ?」
かつて学校の女子体操着といえばブルマであった。
しかし時代の流れでそのようなものはとっくに廃止され、女子も短パンになっていたはずだ。
だというのに、今女子たちが穿いているのはブルマ、だと?
「知らねーよ、学校指定がこれだもん」
「誰だよこんな時代錯誤なもの指定したやつ」
「いや、これはこれでいいけどさ」
色々と疑問に持つことが多い。
もっとも上といい下といい、俺にとってはかなりの眼福であるが。おっと、下半身に血流が。

「お前ら、体育の時はスポーツブラにしろ。それじゃ運動にならんっ」
元50代中年男の体育教師、現美人体育教師から指導が入る。
女になってからというもの、この体育教師は妙に生き生きしているように見える。
あれか、人は外見に気持ちが引きずられる、みたいな。逆だっけか?
どちらにしても今の姿を見れば生き生きしている様子がうかがえる。
というよりも謳歌している?
なぜなら、陸上選手が着るような陸上着だったから。
体育教師は今まではやぼったいジャージ姿だったはず。
なのに女になってからというもの、上下別れていて、お腹も出ている、ビキニみたいなデザインのこの姿だ。
しかも布地がけっこう小さい。露出が多い、バストが強調されている。エロい。
それと引き締まった手足はなかなかの筋肉。腹筋割れてますね。
「ふっ、私の美しい姿に魅了されるがいい」
生徒を魅了するんじゃないよ中身50代中年独身男が。

一方、女子たちは別の辛さが迫っていた。
「す、スポーツブラ……新しく買わなきゃいけねえのか」
「今月カツカツなのに」
「ブラ高えんだよなぁ。ゲーム買えねえよ」

乳揺れと出費に悩む女子たちを見て、俺は思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


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今日の授業を終え、職員用更衣室のシャワーで私、タキザワは汗を流していた。
それを終え、濡れた体をタオルで拭き、Tバックでエロティックなショーツを穿くとシャワー室からロッカールームへと戻った。
ふと見れば、そこには姿見がある。当然のようにそこに映るのは、自らの体。
「……うつくしい」
何度見てもほれぼれしてしまう。飽きることはない。かつての自分の面影などなかった。
自分は体育教師として長年にわたって生徒たちを指導してきた。
仕事熱心、そういえば聞こえはいい。だがあいにくと私生活は残念なものだった。
体力には自信があった。運動能力も高かった。だが、どうにも女性運はなかった。
勿論思いの人はいた。だがフラれた。それも一度や二度じゃない。なんとかOKになっても、浮気されたことだって珍しくない。
容姿もパッとしなかった。顔も地味だし、筋肉質ゆえにゴリラなんて言われたこともあった。
何より若年性脱毛症、要するに若ハゲがあった。
年を重ねれば余計に悪化していき、余計に女性との縁はなくなった。
生徒からも中年独身ハゲ教師といじられ、もうこりゃ一生独身だなとあきらめていた。
そんななか、これだ。
共学化する、しかも生徒教師の一部が女になって。あまりにも突拍子のない話だ。
だが、その時の俺はもう自棄だった。なんだっていい、そんな適当な考えで女性化希望した。
その結果が、これだ。
引き締まった手足、うっすら割れた腹筋、くびれたウエスト、豊かな腰回り、迫力のある胸、そして若々しい顔。
とても50代独身オッサンだとは思えない。
私はこの変化に満足だ。しないはずがない。元の野暮な自分にはおさらばだ。
もっとも、長年の股間の相棒ともおさらばすることになってしまったが、仕方ない。
それはそれ。心機一転して新たな人生を歩むぐらいの気持ちでいればいい。
それにしても美しい。美しいものはいつまで見てても飽きることはない。
ふっ、折角汗を流して綺麗になったというのにショーツを濡らしてしまいそうだよ。

「更衣室でパンツ一丁でうろうろするのやめてくれませんか、タキザワ先生」
いつの間にか更衣室に養護教師、つまり保健室のタガハラ先生がいた。
「ふっ、すまない。美しい自分の姿についうっとりしてしまって」
「すっかりナルシストになっちゃいましたねぇタキザワ先生」
私の後ろでタガハラ先生は白衣を脱ぎ、帰り支度をしていた。
ちらり、と見ればタガハラ先生の胸元が気になってしまう。
白のブラウスを押し上げる豊かなふくらみ。私は思い切ってIカップにしてみたが、タガハラ先生もまたそれに匹敵するぐらいのサイズ。
物静かな性格だと思っていたが、実はムッツリなのだろうか。
それ以前に女性化しようと決めたのは意外に思えた。彼は私とは事情が異なる。
私も彼も独身だ。だが……
「タガハラ先生にはお子さんがいらっしゃいましたよね?」
ぴくり、と一瞬手が止まりこちらをちらりと見る。私の自慢のバストが目に入ったかな?
「ええ、まだまだやんちゃな男の子でね」
そう、タガハラ先生はバツイチだった。
彼と私は割と仲がいい。年は彼の方が少し下だが、同年代の付き合いのような感じでたまに飲みにも行っている。
それで互いの状況を知っているのだが、数年前に彼は妻と別れた。
正確には相手が悪かった。知らないところで男を作って、浮気していたそうだ。
その時の彼の落胆ぶりはすごかった。さすがにあの時は飲みすぎて危険領域に達していたが。
それでも元妻をバッサリ切って、相手の男ともども慰謝料ゲットしたところはなかなかの手腕だと思う。
ちなみにそういうエピソードを聞いたせいで私はなんとなく女性に警戒するようになってしまった。
独身記録を塗り替える手助けになってしまったようだ。
そんなこんなで子供2人を彼が育てていくことにしたというわけだ。
私が気になっているのはそのあたりだ。
「子供がいるのに、女性になったのですか?」
彼の方を向きつつも、ブラを手に取る。
ショーツとセットのブラもまた派手なデザインで魅惑を感じる。
「うーん、どうしようかなと思ったんですけど……やっぱり母親が必要なんですよねぇ」
「ほう?」
ブラの肩ひもに腕を通し、態勢を整える。
タガハラ先生は私の方から視線を戻し、手元の鞄を片付けている。
「男親って、どうにも限界があるんですかねぇ」
「限界、ですか」
前かがみになり、カップでバストを受け止める。そして後ろのホックを止めた。
最初は手間取ったが、もう慣れた。
タガハラ先生はどこか思うようなところに視線を向けている。
「やさしさ、って言ったらいいのでしょうか? そのあたりは女性の方がいいんでしょうかねぇ」
「ふーむ」
前かがみのまま、カップの中に周囲のこぼれたバストをよせていれる。
タガハラ先生は止めていた手を再び動かした。
「でもそれは言い訳かな? 単に今までの自分が嫌になっていただけかもしれないし」
「なるほど」
こちらに向き直り、笑顔で答えるタガハラ先生。
私は肩ひものバランスを調整し、仕上げをする。下着姿も美しいとは思わないか?
「でも子供には好評ですよこの姿。この前なんて一緒にお風呂入ろうって言ってきたんですよ! もう何年ぶりだか」
「ほほう……」
なかなか大胆なガキですな。ちょっと絞めた方がいいんじゃないでしょうかね。
「ところでタキザワ先生はどうなんですか? 男の方できたんですか?」
「は?」
「いえ、そんな派手な下着をされていますからてっきり」
「あ、あはは……」

体育教師タキザワ54歳、年齢イコール独身歴の記録は止まり、彼氏いない歴が新たにスタートしたのだった。




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相違点8. 体臭

「あいつら、どーしてああもあっさり女になっちまったんだろうな」
「さあねぇ」
特に結論の出ない疑問を呈したのは、体育の着替えの時だった。
通常、男子は教室で着替え、女子は生徒用更衣室で着替えることになっている。
教室で着替える男子たち、その数は10名弱。閑散とした教室は寂しいものを感じる。
そんな様子からポロリとさっきの言葉が漏れた。
別にあいつらが女になったからといって普段の付き合いが変わったというわけではない。
今まで通りバカな話に盛り上がったり、放課後遊びに行ったり。
だけど、どこか遠くに行ってしまったような感覚を時に感じてしまう。
こうして体育の授業を終え、俺達は着替えを終え、女子たちが一向に戻ってこないのもまた、それか。
本人達曰く「女子は身支度に時間がかかるんだよ」といっていた。
が、別の情報では毎回のように着替えの時に乳揉み合っているから遅いとか。うらやまけしからん。
「俺は別にナガマサがいつも揉ませてくれてるからいいけど」
「……ほう?」
「その話、詳しく」

発言をしたヨシノブをフルボッコにしていたところで女子たちが戻ってきた。
「うっ……!?」
体育の授業の後、次の授業が始まる頃になってようやく更衣室から戻ってきた女子たちに俺は何かを感じた。
次の授業スタートを知らせる予鈴が鳴ってようやく一斉に戻ってきたのだが、瞬間空気が変わった。
きゃいのきゃいのした甲高い声が響くが、そっちの空気ではない。
実際の、科学的な空気。いうならば、匂いだ。この、匂いは……
表現か非常に難しいが、甘酸っぱい、魅力的ななにか。
これは、女子の匂い?
「あのよー、キヨヒコ。教室がなんか変なにおいするぞ」
妙な違和感を感じていた俺だが、それを口にしたのは女子の一人。俺に違和感を知らせた。
「ああ、お前も感じていたか。俺も感じて……」
「お前ら男子さぁ、ちゃんと汗拭いたか?」
「ん?」
俺ら、男子の匂い?
「汗くせーというか、オスの匂いってやつ?」
「あー、お前も感じた? 俺もなんかくせーなと思ってたんだけど」
「男子ここで着替えてるからな。換気するか?」
「男の汗臭いのが残るんだったら俺ら女子がこっちで着替えた方がいいか?」
「どっちにしても俺ら、女になって敏感になったのかな?」
口々に文句を言うが、俺としては女子のその匂いが気になるぞ。
まだ外から入ってきたからともかく、それが教室内に充満したらどうなるか。
今でさえ、なんかくらくらする。下半身に血流が集中してしまう。妙なフェロモンが教室内に立ち込めている。

一方で男子の汗がくさいとまで言われる状況に、俺はふと思った。
「……俺もTS選択すればよかったかな」


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俺、ナガマサは本日生理のため体育を欠席しました。
保健室のベッドを借りて休んでいて、調子が落ち着いてきたので教室に戻ってきたら空っぽでした。
だが、ちょっと気になる。
生理の時は妙に敏感になってしまう。特に匂いに。
だから教室に入った時、なんだか妙なにおいを感じた。
今までは全く気にしなかったけど、これは男子の体臭なのか?
うん、自分も男だったからこういうにおい出してたんだよな。だけど、こんなだっけか?
「………」
目の前には隣の席のヨシノブの制服が置いてあった。
ためしにこいつの制服の匂いを嗅いでみる。うん、別にそんなに匂わない。
むしろいい匂い? 体臭だってことはわかるけど、なんだか落ち着くような気もする。
気のせいか、なんだか生理痛がおさまっていくような。よし、今度から生理の時はこいつの匂いかいでみよう。
でもそれって他の男子でも同じことか?
試しに、その後ろの席のキヨヒコの制服の匂いかいでみよう。
あいつ割と見た目いいんだよな。イケメンとまではいかないけど、そういうやつって割とにおわないかな。
「………うっ!」
なっ、全然違うぞこれ。なんかすげー鼻につく。
あいつこんなに体臭きつかったのか? マジかよ。
いや、けど男の時はそんなにお互いに気にならなかったのに、何でだ?
女になって嗅覚変わったのかな? こんなに差が出るものなのか? 試しにもう一度ヨシノブの服の匂いかいでみるか。
……うーん、やっぱりそんなににおわない。
やっぱすげー落ち着く気がする。なんでだろ? もうちょっとにおい嗅いでたいなー。

「……なにしてんの?」
「え?」
いつの間にか授業は終わっていたようで、男子たちが戻ってきた。
その先頭にいたのは、ドン引きしている顔のヨシノブ。
そして俺は今、ヨシノブの制服を手に、ガッツリ匂いを嗅いでいて。
え、ちょっと待て。俺、なにしてる?
ていうかこれ、女子がやることとして、男子にすることでは、筆頭の……
顔が、真っ赤に、なっていったのを感じる。
「あ、あ………うわあぁぁぁぁっっっっっ!!」
恥ずかしさのあまり、俺は教室を飛び出した。
「あ、ちょっと待てナガマサっ! お前俺の制服もってどこへ!!」
「こ、こないでえぇぇぇぇっっっっっ!!」
俺とんでもないことしてた! 何でこんなこと!
恥ずかしくて、恥ずかしくて、あいつと顔合わせられねーよぉぉ!
「おいこらどこまで行くつもりだ、制服かえせえぇぇぇぇっっっ!!」
追いかけっこのせいで、二人は次の授業に遅刻したのだった。

なお、女性はDNA的に相性の合う異性の体臭をいい匂いと感じるという。




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相違点9. 味覚

「うーん……」
学食でラーメンを食べながらタカヒサは何やらうなり始めた。
「何メシ喰いながら悩んでんだよ」
「いや、前はこの大盛ラーメンも何のことはなかったはずなんだけど、どうにも限界が早くて……」
見てみると、どんぶりの中にはまだラーメンが若干残っている。
「要するに女になって食べきれなくなったと?」
「うーん、女って胃袋小さいのかな?」
「んなこたぁねえぞ。俺は別に変らないし」
一方で隣の女子はから揚げ定食をがつがつと食べている。
あまり女子らしからぬ、豪快な食べっぷりだ。そのあたりは男子の勢いを残している。
いや、そもそも女子らしからぬという言葉自体ここではナンセンスだな。
男が女になった、それは体の違いであって中身は結局変わっていないのだから。
だから別に女子がここで多少大胆な行動をしたとしても、別に誰も咎めないし不快に思わない。

「個人差があるのかな?」
「そりゃそうだろ。根本的に体格が変わっただろ? お前、元は身長180センチじゃないか」
「確かに、今じゃ152センチだからな」
ざっとマイナス28センチだ。
「それだけ変わっていれば比例して胃も小さくなるだろ?」
「うーん。背が低い方がかわいいからと思ったけど、身長変えない方がよかったかな?」
後悔先に立たず。いまさら言ってももう遅い。
「とりあえずこのラーメン残りはやるわ」
「サンキュ」
と、待てよ。ここで食ったら間接キスにならないだろうな?

胃袋が小さくなった女子と間接キスをして、俺は思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


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自分の食事量が減ったことに、俺タカヒサはちょっとショックを受けていた。
今まではかのジャンクラーメンのニンニク野菜マシマシを平気で平らげていたというのに、今では並盛でも精いっぱいだ。
こともあろうにあの店のラーメンを残してしまうことになるなんて。ショックだ。
「そこまで落ち込むことか? タカヒサ」
「いやいや、男としてあのラーメン平らげるのはステータスだろ」
「んなステータス聞いたことねーぞ」
タカユキとフユノブとともに放課後、こうして寄り道している道中層ツッコミを受けてしまった。
今歩いている商店街の一角にその店あった。
相変わらずあのラーメン店は繁盛している。今だって何人か客が並んでいるし。
デカ盛りで安いのがコンセプト。コストパフォーマンスが高いあの店はいつだって繁盛だ。
あのラーメン、もう食えないのか。
「ええいっ、お前は落ち込みすぎだ」
「あの店デカ盛りだけどそれほど美味くはないって自分で言ってただろうが」
確かに、それは認める。
「だったら別のうまいものに変えればいいんだよっ」
「そうそう、女子らしくここは甘いものでだな!」
二人に引っ張られる形で来たのは、クレープ屋台?
「いや俺甘いものは苦手で……」
「そう思っていたのは昔だよ」
「そーそー、俺もこの良さに目ざめてな」
熱く語る二人に押されてしまう。
二人ともすでに手早くオーダーと支払いを済ませ、クレープを受け取っていた。
タカユキはキャラメルアイスミルフィーユ、フユノブはいちごカスタードホイップを手に取っていた。
うわぁ、あまそ。
「お前もさっさと買えよ」
「いや、俺は……」
「あーもーじれったい。おねーさんっ、バナナチョコホイップおねがーいっ!」
従業員のおねーさんはにっこり微笑んで作り始めてしまった。おいおい、喰うといってねえぞ。
キャンセルだと言い出すこともできず、あっという間にクレープが出来上がってしまった。
「ほい、初体験ってことで今日はおごってやる」
それを受け取った俺。タカユキが手にしたものと比べたらましかもしれないが、こちらもこちらで甘そうだ。
げんなりしてしまう。
「おい、まさかおごったのにいらないなんて言わないよな」
「ううっ、せっかく買ってあげたのに悲しい」
怒り顔とウソ泣きに迫られる。こいつら女子の武器を存分に使いやがって。
釈然としないものを感じつつも、俺はそのクレープをしぶしぶ口にした。
「……うまい」
いやちょっと待て、なにこれ、すごくうまいんだけど。
チョコと生クリームなんて、甘すぎでムリだと思ったのに、これすごくいい。
そんなこと感じなかったのに、こんなうまかったのか、クレープって。
「ふっふっふ、タカヒサちゃんも女子だということですよ」
「そーそー、俺も女って甘いもの好きってのがよくわかるようになったし」
二人ともただ単に雰囲気で女っぽくしていると思っていたが、そうではなかったか。
なんだよこれ。こんなうまいものがあったなんて。もっと早く知っていればよかった。
よくよく考えてみればラーメンよりも安いじゃないか。
さらばデカ盛りラーメン、俺はもうお前とはおさらばだ。これからはクレープにパフェに甘いもののお世話になるぜ!

「あーでも食べすぎはリアルに太りそうだよな」
そんな会話をしてしまうところ、俺も女子になったんだなぁ。




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相違点10. 部活動

共学化したことで部活動は大きく変化した。特に運動部に影響が大きい。

まず野球部。ここは部員の大半が女子化してしまった。
女子野球部になるかとおもったが、再編されることなくそのまま廃部になってしまった。
元々各種大会ではさほど成績は残していなかったというのが理由として大きいようだ。
各規程でも男子と女子の受付差は大きい。当然のように甲子園は男子野球部だけだし。
サッカー部。こちらも大半が女子になった。だが女子と男子とでサッカーはさほどルールや規定に差がない。
そんなわけで女子サッカー部として再始動。残った男子は人数不足により男子サッカー部は廃部。
ただし、胸でボールを受け止めるトラップは苦労したらしい。
バレーボール部。なんと事前にチーム全員に確認を取り、全員女子になったようだ。
元々女になりたくなかったが、というやつもいたようだが今ではそいつも女子生活を楽しんでいるとか。
そんなわけでそのまま女子バレー部として始動、男子バレー部は実質廃部。
水泳部。こちらは男子女子分離することなく共同で練習している。ほぼそのまま。
逆に部員が増えたらしい。主に女子。理由は何となくわからないでもないが。
相撲部。言わなくてもわかるな、全員女子になったということで廃部。
一方、新設された部活もある。チアリーディング部だ。
いやまさかそんな部ができるとは。俺も驚きを隠せない。
校庭の片隅でチア衣装に身を包み、練習している部員は皆の注目の的だった。
そりゃあ、ミニスカへそ出し谷間くっきりな衣装だからなぁ。誰だよあんな衣装選んだの。
一説によると野球部員が他校の応援に来ていたチア部がうらやましかったのがきっかけとか。
あいつら、元野球部か。どうしてそうなった。

そういう意味では性別の差が大きく表に出てくる運動部系の変化は大きいといえる。
一方で文化部系はそこまで差はないかもしれない。
俺はというと……帰宅部ではない。ちゃんと写真部に所属している。
といっても部員は俺と部長のカゲマサとノブヨシの計3名。俺以外の2名は女になってしまった。
だからといってそんなに変わらんだろと思っていた……かつては。
「ではではっ、本日はノブヨシ君自らモデルになっていただきますっ!」
「はいはいっ!」
「さっそくポージングを……うむ、いいぞぉっ!」
撮影対象が、変わった。
今までは学校周辺を散策しつつ、風景や街並み、植物がほとんどだったのだが、ここにきて人物に切り替わった。
それも、女子に。
共学になってからというもの、部長は完全に撮影対象を女子生徒に限定してしまった。
大抵はこうして、ノブヨシと部長のカゲマサが自らモデルを務めている。
「ちょっと上目遣いで、甘えるような目で」
「こうですか?」きりっ
「素敵だっ! 女子の魅力が最高値までいかされてるっ!!」
あれだな、部長は女子になってナルシストになったんだ。
男子だったころの部長はデブだったからなぁ。容姿の変化が衝撃的だったんだろうなぁ。
それで俺にメモリ埋まるまで自分を撮れとまで言い出し、さらには女の子の魅力を! とか言ってノブヨシまでこれだし。
一方の俺はどうにも人物の撮影は苦手で。なんだか乗り気じゃない。
「むっ、キヨヒコ君どうした! こんな魅力的な女の子を前にして撮影しないなんてっ!!」

退部を検討しようかと考えた今この時、俺は思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


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私、写真部部長のカゲマサは周囲の人影に気を付けつつ、この教室に入る。
今回は写真部とは別の活動であり、キヨヒコには秘密だ。
女になってからというもの、私は自らの美しい魅力のとりこになった。
今までデブだのなんだの言われ続けていた自分。それがこんな美しい姿になったのだ。
これは、写真におさめないでいられるわけがない。
その考えに同調していただけた生徒達がいた。服飾研究同好会。共学になってから設立された新たな同好会だ。
うちの学校はまず同好会の設立から始まる。そこから会員が集まり、生徒会に承認をもらって部になる。
というわけで現段階では同好会でしかない組織だが、すでに会員も集まっており部になるのは時間の問題か。
主な活動は各種衣装の製作、既製品のリメイク、そして……コスプレを楽しむこと!
私はそのことに非常に興味を持った。何故なら今、こうして女子に、美しくなったのだから美しく着飾るのは当然の権利。
今までの自分では決してできなかった魅力的な衣装を楽しむことができる!
そう考えた私は、兼部することにした。写真部部長であるから正確には協力になるのだが。
そして今、本日の服飾同好会の活動が始まる。

「れでぃーすあーんどじぇんとるまん。ようこそ服飾同好会発表会に!」
「「「「おおーーーーーーーーーっっ!!」」」」
同好会長、マサタカの司会進行に沸き立つ観客一同。教室の中央に用意されたステージに注目が集まる。
司会の言葉に、レディースもいるが中身はジェントルマン(変態紳士)しかいないぞとツッコミを入れてしまう。
男子女子入り乱れているが、中身は全員男だ。
「今日も会員たちのご自慢の一品を鑑賞いただきましょう!」
普段使用されていない空き教室の一つを借りて同好会は活動している。
私の情報ではマサタカと私を含めて同好会の人数は8人。だが、ここにいる人数はあきらかにそれを上回っている。
ここにいるのはいわば観客だ。同好会活動のうち、不定期に実施される発表会の。
会員は日々自らの衣装を製作、または収集し、その成果をここで発表するというわけだ。
招待されるのは学校の裏サイトでの抽選。指定されたサイトにアクセスし、厳正に抽選する。
最初はそれほどでもなかったが、口コミが広がりいつの間にか希望者が多くなったので抽選にしたとか。
それほどまで魅力的なのか、と思うだろうが実のところその通り。
たとえ女子になったとしても、魅力的な女子には惹かれるもの。
衣装というのはその女子の魅力を引き立てる、私は最近そう考えた。
ここにいる女子たちはその考えに肯定だろう。だからこそいるのだ。
男子たちはその魅力的な女子を脳裏に刻みたい。そう思うのが自然。
思いはひとつ、魅力的な女子を観賞するために。
「ではさっそく始めよう」
部屋は他からのぞき見されないよう、厚い黒のカーテンでしっかりと閉ざされている。
ついでに扉も厳重にロック。途中から中に入れないようにしている。
ステージは床にテープを張って境界を書いているだけの簡易的なものだ。
最初は机を並べてその上でと思ったが、目線の高さが同じ方がいいという意見からこのような方法に至ったらしい。
「いきなりで恐縮だが、私がトップバッターだ」
先ほどからマサタカは白いシーツのようなものをまとっている。その下に今日の衣装を着ているようだ。
「今日の私の衣装は、これだっ!」
「「「「おおっ!」」」」
白と黒の色調をベースとし、ところどころにあしらわれたフリルのレース。
それでいてフォーマルな印象を感じつつ、ミニスカートというギャップがありながらも違和感を感じない。
ひじまで隠されたグローブと、カチューシャが特徴的な衣装。
メイド服だ。
「おかえりなさいませ、ご主人様♪」
「「「「おおーーーーーーーーーっっ!!」」」」
会場は歓喜につつまれた。
「こんな私をお見せするの、ご主人様だけですよ?」
「「「「ふおおーーーーーーーーーっっ!!」」」」
ちょっと前かがみでポーズとれば短いスカートの中が見えてしまいそうだ。
しかも下にはいているのはガーターベルトストッキング。メイドの定番装備だ。
絶対領域を死守し、巧みなまでに見せつける。最高だ。
それだけでなく、あのメイド服は胸元が大きく空いている。つまり、谷間がくっきり。
その体制のままくるりと一周してみせるとは、なかなかサービス旺盛だなマサタカ。
それにしてもここにいるやつら、全員元男とは言え今は女になったはずだ。
だというのに目の前にいるメイドに歓喜するとは、やはり根は男のままということか。
それとも美しいと思うものをめでるのは男女関係ないのか、はたまたどちらだろうねぇ。
それにしても女子の方が多いから「お嬢様」というのもありだったのではないだろうか?

「ではではご主人さまたち、つづいてはカゲマサちゃんの登場です!」
もう私の出番か。マサタカはメイドキャラを維持しつつ司会を続行するつもりか。
実のところ私も既に衣装に身を包んでいる。今日はモデルとして登場するつもりで来たからな。
もちろん観客には期待を高めるためにマサタカ同様衣装は隠している。
もっとも隠す方法は私の場合はロングコートで全身を包むってところだがな。
ちょっと暑い。
ステージ中央、移動した私は観客の視線が集中したところで、一気にコートを脱ぎ捨てた。
「「「「おおーーーーーーーーーっっ!!」」」」
どよめきが響く。一気に視線が私の体に集中したのがわかる。
「さあさあ、カゲマサちゃんはまさかの旧スク水だあぁぁぁーーーーーーーっっ!!」
私の今日のチョイスはこちら、旧スク水だ。
ネットで入手したこの逸品。布地が多く縦の縫い目のラインが特徴的な紺色の水着。
本来子供が着るこの水着だが、包まれている私のボディは大人。
Hカップの胸元は少々苦しい。が、そこに丁寧に縫い付けた白のネーム「かげまさ」が目を引く。
「幼さを感じる衣装につつまれた魅惑のボディ。これはすごいっ!」
司会のマサタカのテンションも上がる。
「かつてファットン・カゲマサと呼ばれた姿はどこへやら。ひょっとして体脂肪は全部胸に行ったのか!?」
「お前は一言余計なんだよ! おまえだってサル顔毛むくじゃらだったろーがっっ!!」
司会にかみつかずにはいられなかった。

ひと悶着あったがその後もファッションショーは大いに盛り上がった。
続く同好会員たちはナース服やバニーガール、自前制作の魔法少女コスなどなかなかの個性を見せつける。
中には今の制服をコーディネートし、ギャル風スタイルなんてのもあった。
スカートを限界まで短くしシャツをアンダーバストで縛ったというスタイル。なかなか予想外の発想だった。
今度自分もやってみようというものがいたが大丈夫だろうか。
「さーて、ラストを飾るのは服飾同好会でもトップのセンスのハルマサちゃんですっ!」
白いシーツをマントのように羽織ったハルマサが中央に歩んでいく。
私は知っている。トップのセンス、といってもいい意味ではない。かなり変態的なセンスで、だ。
何せ普段からTバックショーツやカップに穴が開いて乳首露出しているブラを愛用しているレベルだ。
ある意味露出狂の変態かもしれない。
そんなハルマサが今回は何を着用してきたのか。それはすぐにわかった。
ばさっ、と勢いよく羽織っていた布を取り去った。
「「「「うおおーーーーーーーーーっっ!!」」」」
「ふふっ、いかがかな俺の、ボ・デ・ィ♪」
ハルマサが来ていたものは水着だった。いや、一応水着の部類に入るものだった。
Vな水着、通称スリングショット。
股間から左右に分かれたサスペンダーのような形状のビキニの総称であるが、ハルマサが着用しているのは、もはや紐だった。
股間と胸の大事なところをかろうじて布があって隠しているが、それ以外は紐。本当に細い紐だけ。
ちょっと動いただけでポロリしてしまいそうな、あぶない水着だった。
いや、よく見たら股間と胸の大事なところはテープで張り付けてあって、それに紐が付いているのだろうか。
それならポロリの心配はないが、どっちにしてもあぶない。
「す、すげーーーーーっ」
「もう裸同然じゃん」
「刺激強すぎだろ」
「ちょ、ちょっと俺も着てみたいなー、なんて」
男子女子問わず反響がでかい。男子は当然だが、ハートが男子な女子までもがくぎ付けになっている。
かくいう私もその一人なのだが。
「の、脳裏に焼き付けねば」
「写真ダメってのがなぁ……」
今回のショーは写真撮影一切禁止している。
やっぱさ、流出しちゃったら色々アレじゃん? そこのところはマサタカも気を付けているんだよ。
だから入り口の段階でしっかり携帯預けろ、ってことにしているんだなこれが。
だから全員その姿をしっかり脳裏に焼き付けるべくガン見している。
「あぁ、俺、みられてるぅ……」
視線が集中しているのを感じてか、ハルマサはなんだか軽くイッちゃってる気配。
声援もあってか、様々なポージングを披露している。めっちゃエロい。
あれってやっぱり露出狂かな? 危ない道を走らなきゃいいけど。
「ふっふっふ、大成功ですな」
大いに盛り上がったファッションショーを見て、メイド姿のマサタカはご満悦のようだ。
まあ、私も規格の成功には満足であるが。

「ほう、なかなか素晴らしいファッションだなみんな」
「ええもうみんな男の本能をもとに巧みなセンスを……って先生っ!?」
いつのまにか、そこにはミネギシ先生がいた。
教師の存在に一同がざわつく。今回のファッションショーは内容がギリギリ(特にハルマサが)のため教師には秘密だった。
だから厳重にセキュリティを強化し、開始時には扉も絞めて鍵をかけていたというのに。
「ふんっ、科学教師なめんな。うちの学校のやわな鍵ぐらい開けられる」
そう豪語する科学教師ミネギシ先生。科学担当で莫大な知識を持っていると生徒たちの間では有名だ。
目つき鋭いイケメン教師だったが、やはり今回の件で女性になっている。
一部ではSの要素を感じる美女だとか、おしりペンペンされたいといった変な話があるとか。
それにしても教師が平然とピッキング自慢するんじゃないよ。
「それはそうとお前ら、こんなことするのはどうかな?」
「えーと、その……」
やっぱしそうなるよね。
一応教室の使用許可は取っているけど、やっていることはギリギリの事だもん。特にハルマサはストリップ同然だし。
いやこれ全員懲罰対象ですか? どう言い訳しようか思案していたが。
「顧問の教師がいなければダメだろ? 私がその立場になってもいいぞ」
「は?」
「そのコスプレ、私にも混ぜろと言っているんだ」
突如ミネギシ先生が来ていた白衣を勢いよく、ばさあっと脱ぎ捨てた。
「げ」
その下に来ていた衣服、いや、衣装におもわず顔をしかめた。というか、みんな引いていた。
グローブ、ロングブーツ、網タイツ、レオタードな形状、存在感抜群の谷間。
それらの衣装の素材は、黒のラバー。そしてところどころあしらわれた用途不明のベルト金具。
つまりのところ、ボンテージ衣装、SMの女王様だった。
ご丁寧に鞭なんて小道具も用意してある。それあくまで小道具ですよね? 本物の武器じゃないですよね?
そういえば昔、魔力吸収して暴走した主人公を収めるためにヒロインがSM女王様姿になって鎮圧するマンガがあったが。
ミネギシ先生はその恰好にご満悦のようだ。さっきのハルマサのように、なんだか自分の姿酔いしれて見える。
「いかがかな? 私のコスチュームは」
「「「「さ、最高です。女王様っ!!」」」」
みんなそういうしかなかった。

後日、服飾研究会は正式に部活動として設立されました。




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相違点11. 恋愛事情

共学(中身は男子校のまま)になってからというもの、学校の空気が変わった。
物理的空気ではなく、雰囲気が。
簡単に言うと、イチャイチャするやつが目につくようになった。
うちは男子校だった。……今でも中身は男子校のはずだが。
その時は当然だが男しかいない。したがって交際なんて話は出るわけがない。
せいぜいよその学校の誰これと仲がいいとかのレベル。付き合ってる彼女がいるなんて話はまれだ。
だが、今は違う。共学になった。
男同士の友人が、いまでは男女の友人になって、その延長線上で……みたいな。
最たる例がヨシノブとナガマサだ。
元々二人は仲のいい友人だが、ナガマサは女になってからヨシノブにおっぱい触らせていたらしい。
友人だから、男同士だから、そんな理屈でちょっとしたおふざけみたいだな。
だが気が付いたら二人が腕を組んで歩いている姿を目撃するようになった。
何があったのか。ヨシノブをしばき……いや、問い詰めたところちょっとテンション上がってやっちゃったらしい。
なんということだ。さらにヨシノブをフルボッコにした。
それ以来、二人はクラス公認で付き合うことになった。
それをいいことに二人は皆のいる前でもイチャイチャするようになった。実にけしからん。
とまあ、これはひとつのケースだがこっそり付き合い始めました、というパターンも多い。
手をつないで歩いていたり、こっそりキスしてたり、そんなシーンを俺も何度か目撃していた。
要するに、友情関係の延長線上、ってことか?
確かに見た目男女だけど、中身は男同士なわけで……うーん、わからん。
でも見た目があんなカワイイ女の子になっているんだから、惹かれないわけないよな。
だけど、女子の方は? 男と付き合うって、できるの?
だめだ、さらにわからん。
それとともに、別のパターンも存在するようになった。
女同士で、交際しているパターンだ。


「付き合っている、のか?」
「あー、うん。そういうことになるねぇ」
目の前の女子二人は目を泳がせながらも同意した。トモヒサとタケヒロだ。
二人とも元々仲が良かったことは俺も知っている。
クラスの中でもお互いに地味な印象だったが、今では二人ともすっかり美少女だ。
トモヒサは元々小柄の大人しい感じだったが、今は高身長のスレンダー爆乳美人。
一方のタケヒロは背が高めで太り気味体系だったが、今は低身長のロリ少女になっている。
どうしてこうも真逆な姿になったのか。クラスの中でも特徴的な変化だったから結構目立っている二人だ。
その二人の様子がどうにもおかしいと感じたのは俺だけじゃないはず。
女子になった直後はまあまあ今まで通り会話を楽しむ友達同士な感じだった。
が、今は手をつないで歩いていたり、お互いハグしあったり、スキンシップが目立って見えていた。
で、物は試しにかまかけてみたら、これだ。
「友情が恋愛感情になった、かな?」
「そ、そうかもしれないね、うん」
二人とも顔を赤らめ、照れながら答えている。ように見えるが。
「………」じー
「な、何かなその視線」
俺は何となく予想している疑惑を、せっかくなのでぶつけてみた。
「まさか二人で乳繰り合ってそのままテンション上がっちゃって、ってわけじゃないだろうな?」
ぎくっ!「そ、そんなことなってば」
どきっ!「ま、まさかんなわけないだろぉ」
隠すのが下手すぎる。丸わかりだろが。

それにしても百合だと。こんな美人美女同士で?
なんとうらやまけしからんと心の中で怒鳴りながら、俺はふと思った。
「……俺もTS選択すればよかったかな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


女子になってから僕、トモヒサの部屋にタケヒロが来たのは今回が初めてだと思う。
僕の部屋は女の子になったからといって特に前と変わることなく、男の子っぽい普通の部屋だった。
まあ、いくら女の子になったからってすぐに部屋の模様替えはしないから。お金かかるし。
「いやぁ、それにしてもお互い変わっちゃったな」
「そうだねー」
明るく活発な女の子、タケヒロはそんなイメージがぴったりだ。
元々タケヒロは身長が高めで、それでいて太り気味だった。
本人曰く、太りやすい体質だったという。確かに僕のイメージからしてもタケヒロは体格の割にはあまり食べないイメージだ。
本人もそれを気にしていたのだろうか。今はそんなイメージは全くない。
身長145センチの、小柄な明るい女の子になっていた。
他の女子のほとんどが胸を大きくしている中で、タケヒロは珍しく控えめな胸のサイズだ。
太っていたから細い体にあこがれたのか、それともロリ属性全開にしたのか。
一方の僕はというと、身長174センチの女性としては高めの身長。これも僕自身のコンプレックスから来ている。
元々の僕は男のわりに背が低く、150センチちょっとしかなかった。
別に低い身長を馬鹿にされたことがあったわけじゃないけど、やっぱり高い身長にあこがれていた。
だからここで身長が設定できると知った時、真っ先に身長を高くした。
女性でもこのくらいの身長はモデルでもいるからね。別に変じゃないし。けどちょっと目立っちゃうかな?
つまりのところ、タケヒロとは目線が逆転したことになる。
僕がタケヒロを見下ろすことになるのは、ちょっと不思議な感じか。
それにしても背の低いタケヒロと並ぶとずいぶんとまあ。30センチ近い身長差だから、なんだか僕がお姉さんになったようにも思える。
うん、お姉さんだ。性別が変わったから、ね。
僕も男だからさ、その、興味はあるわけで。

「なあ、トモヒサ」
「な、なに?」
ちょっと別の事考えていたから突然タケヒロに呼ばれてドキッとしてしまった。
かわいい顔がじっと僕を見つめる。座っている姿勢でも当然のようにタケヒロの方が目線が低い。
わざわざ僕の顔を覗き込むように、上目遣いで見つめてくる。めっちゃかわいい。
「あのさ、せっかくだからハダカ見せ合いっこしない?」
「……………」
でも言ったことはちっともかわいくなかった。エロい男子の本領直球だった。
けどまあ、そんなこと言うんじゃないかって思ってたんだけどね。
タケヒロも男の時から2次元の方で興味津々のようだし。じっと僕の胸見てたし。
「トモヒサも、興味あるだろぉ?」
わざとらしく自分の胸元を引っ張って見せてくる。谷間はないけど、わずかなふくらみが見えそうで見えない。
うん、すごく興味あります。
正直に言います。僕もタケヒロの影響をしっかり受けて、2次元の方で興味持ってしまっております。
でも今は2次元でなく、リアルで見れます。
はい、お風呂に入った時なんて毎日のように、飽きもせずやっちゃってまして。
僕はどっちかというと身長重視で体の設定したけど、タケヒロは2次元キャライメージなのか?
よくよく見たら以前貸してくれたギャルゲで押しのキャラがこんなだったような。
身長低くて活発そうなイメージの。
そんなロリキャラが目の前でエロい目で僕を見つめてます。
まあ、うん。いいけどね。
「じゃあ……」
諦めときたいが入り混じった複雑な思いを抱きつつ、来ていた制服を脱ぎにかかる。
「あ、ちょっと待って! 脱ぐときは、後ろ向いて」
「え?」
「だから、せーので、な?」
ああ、そういうこと。お楽しみってやつね。
改めてタケヒロに背を向けて服を脱ぎ始めた。
「あ、ただしソックスは脱がないでな!」
………こだわりがあるらしい。
タケヒロのペースに飽きれつつも服を脱ぎにかかる。
スカートのホックを外し、おろした後、シャツも脱ぐ。その下のキャミソールも脱いで、たたんでおいておく。
後ろからも衣擦れの音がする。僕の後ろで女の子が服を脱いでいると思うとなんだかドキドキしてしまう。
ブラに手をかけ、開放するとおっぱいがこぼれ落ちる。
ショーツも脱ぎ、すでに脱いである制服にまとめる。
「……いい?」
「お、おう。いいぞ」
後ろのタケヒロに声をかける。すぐに返事が来た。
「じゃ、せーので振り向く、な」
「うん……せーの、っ」
「お」
「あ」
くるりと振り向くと、当然のようにそこに裸のタケヒロがいた。
僕の目線よりも下の背丈。ショートヘアも相まって小柄で子供っぽい印象を抱くあどけない表情。
胸は大きすぎず小さくもなく、体系相応のちょうどいいサイズ。
おわん型の、奇麗なバスト。大きければいいってものじゃない、ってのがよくわかる。
ムダ毛の1本も生えていない、玉のような肌ってこういうことか。
はいたままになっているオーバーニーソックスもまた、幼い印象を与えている。
幼さい魅力を存分に高めた、すごくイケナイ魅力を醸し出している。
そんなタケヒロに、僕はくぎ付けになっていた。
お互いに言葉を失う。裸の女の子を前にして僕もタケヒロも顔を赤くしてしまった。
自分の裸をまじまじと見られてる。そう思うと、ちょっと、恥ずかしくなって、そのせいでも顔が赤くなる。
「た、タケヒロのおっぱい綺麗だね。どのくらいにしたの?」
「お、俺? Cカップにしたよ。これがちょうどいいかなって」
Cカップ。巨乳の粋じゃないけど、いまのタケヒロにはすごくいいサイズ。
発展途上を感じさせる、魅力がそこにあった。
「そういうトモヒサはでかいじゃないか。おまえは、どのくらいにしたんだ?」
「えっと、この身長だと意外と目立たないなーと思って……結局、Jカップに」
「Jカップ!? お前、盛ったな」
あはは、ちょっと調子乗っちゃたんだよね。
あの3Dモデルで真っ先に身長を設定したけど、他の設定しているうちに胸のサイズが気になっちゃって。
Fって意外と大きいって感じじゃないんだね。身長高いせいかな?
それでちょっと、もうちょっとって増やしていくうちにJカップになっちゃったんだよね。
さすがにやりすぎちゃったかな? けっこう重いし。
「さ、さわってもいい? ていうかさわりっこしよう」
僕の胸見て口元ゆるんでたからそうなるんじゃないかと思ったよ。
そして僕の断りもなく触り始めたし。
「おお、すげえ。でかくても柔らかさは極上だな」
うう、そういえば自分以外の誰かに胸揉まれるのは初めてかも。
自分で揉んでるのとはやっぱり違うな。あれだ、自分で触ってるとどうされるか予期できるけど他人だとそれがないってこと?
全く予想にしない動きが来るから、感じ方が全然違うなやっぱり。
こんなにも触られているんだ。そして触りっこといったんだ。僕も、遠慮なく触らせてもらう。
「あっ……」
タケヒロの美乳Cカップは、大きくなった僕の手では小さいと感じる。
けど、揉みやすい。ちょうどいいサイズ。うん、僕も欲張らない方がよかったかな?
ぷにぷにのおっぱい。うーん、ロリを感じるタケヒロではなんだかいけないことしてるみたいだ。
う、あ……ちょっと、コーフンしてきた。
胸を揉む手は、休まることなく、続いている。
下がきゅんとなるのを感じる。おちんちんがいなくなってできた、女の子の入り口。
体の中にあるせいか、今までと違って独立して感じるようなものではなく、体全体で感じる器官。
おっぱいと連動するように、体全体が感じてる。
感度が上がっているのかな? そう分析していた時、ふとタケヒロと目が合った。
「タケヒロ……」
「トモヒサ……」
おっぱいを触り合い、見つめ合う僕たち。
高揚してきたぼくたちは、互いに見つめられ、さらに顔を赤らめる。
タケヒロの瞳に、吸い込まれていく。かわいい女の子が僕のことを見つめている。
今まで女の子とここまで距離が近かったことなんて、なかった。
僕の人生、彼女なんていなかった。そりゃあ好きになった子はいた。
けど、結局お近づきにはなれなかった。告白したけど、撃沈したから。
だから女の子と仲良く話したり、手をつないで歩くことだってしたことない。
けど、今は全然違う。手をつなぐどころか、胸を触って。
こんなにも距離が近かったことなんて……
僕と、タケヒロの距離は、もっと近づいて、次第に、ゼロになった。
「んっ……」
「んんっ……」
僕とタケヒロは唇を重ねていた。キスをしていた。
初めてのキス。そのお相手は、タケヒロ。
お互いに可愛い女の子になっちゃった、中身は男同士だけど、もう僕たちは女の子同士。
キスの仕方なんて僕はよくわかっていなかった。タケヒロから借りていたギャルゲでそれっぽい知識を持ってはいたけど。
たぶんそれはタケヒロも同じだろう。タケヒロも女の子と付き合ったことなんてないというし。
だからお互いにこれはファーストキスだ。お互いに持ってる知識で、キスをする。
その知識に従って舌を絡ませ、唾液交換して。
気が付いたら胸から手を放して、二人してがっちり抱きしめ合っていた。
舌だけじゃなく、胸を重ね、体を、脚を、全てを重ね合っていた。
体をお互いすり寄せて、全身でお互いを感じ取る。
「ぷはっ」
ようやく離れた唇。そして再び互いに見つめ合う。
別に話してそうしたわけでもなく、自然と僕はタケヒロの体を引き寄せて、抱きしめたまま、ベッドに体を倒す。
どさっ、と何度か互いの体がバウンドして、ベッドの上で体を横にして、さっきの続きをする。
「トモヒサ……」
「あ、タケヒロ……」
さっきと少し違うのは、抱きしめた手は片方だけ。
もう片方の手は、お互いの、下の、大事なところに。
「あ、やっ……」
「はぁ、あぁ……んっ………」
再びキスをしながら、優しくタッチして、それでいて快感を求めるような指使い。
僕も女の子の体には興味がある。だからいろいろ触ってみて、どうすれば気持ちいいのかもわかってきていた。
それはタケヒロも同じことだろう。エッチなタケヒロのことだ。絶対に女の子の体を試しているに違いない。
僕の体とタケヒロの体は感じ方も違うかもしれない。けど、基本的には同じだろう。
優しくタッチして、探るように、どこが気持ちいいかを、相手の反応を見ながら。
「んはっ、タケヒロぉ……」
「トモヒサっ、んっ、んんっ……」
お互いの口はふさいで、そして快感を求めるように。
優しさと攻撃的要素を絡め合いながら、お互いをむさぼっていく。
僕のおマンコをタケヒロが的確に攻めてくる。そのおかげで僕はどんどんヒートアップしていく。
対抗するように僕もタケヒロを攻めていく。この攻撃がどれほど通じているかは、タケヒロのトロ顔を見れば明らかだ。
かわいい、感じちゃってる顔が素敵。僕もこんな顔しているのだろうか。
でも、これだけじゃ何か足りない。
指だけじゃ、指なんて使わないで……
「あっ、はぁっ、タケヒロぉ……」
「んあっ、そ、そんなトモヒサ……あんっ!」
僕は一旦タケヒロから離れ体制を変える。そして、足を開き、強引にトモヒサの間に入って、先ほどまで指で攻めあっていた場所を重ねる。
貝合わせ、なんて呼ばれている方法。
「そ、んな、直接……っ」
「気持ちいい? ねえ、タケヒロ気持ちいい?」
「あっ、いいっ、いいよぉ……っ」
態勢を整えるのにてこずってしまう。突起があれば互いに接触しやすいだろうけど。
でもそんなものとっくに捨ててしまった。捨ててしまったものを後悔することはもう、ダメだろう。
でもこうして、女の子のわずかな突起を重ね合わせることはできる。
女の子のすごく敏感なところ、男の数十倍も感度があるといわれている場所を、互いに。
「あ、はぁ……」
「ふぇぇ、はぁっ、あぁっ……」
タケヒロの顔がくしゃくしゃになっている。気持ちよすぎるのかな、涙出ちゃって、トロ顔を通り越しちゃってるかな。
かくいう僕も、気持ちよくて、もう……
「トモヒサぁ、イクっ、イッちゃうぅ……っ」
「僕も、僕もっ……一緒にっ、一緒にっっ………」
これだ、初めて経験したとき、あまりの衝撃に失神してしまったやつ。
僕、タケヒロと、一緒に……
「「あ、あぁぁぁっっっっーーーーーーーーーっ…………!」」
貝合わせなんて未知のことやったせいか、それとも二人で一緒に果てたせいなのか。
初めてやった時よりもずっと気持ちよくて……また、失神しちゃいそうになっちゃいました。


とまあ、そういうことがあったわけで僕とタケヒロの間はそれはそれは近い仲になったわけでして。
これは百合っていうのかな? でもお互い男同士でもあるわけで。
どうしようかとも思ったけど、案外他にも百合は多い様子。
この前も女の子同士(?)でこっそり校舎裏でキスしあっている二人を見つけてしまったし。
大体僕らと同じパターンかな? お互いの裸を妙味本位で百合百合して、テンション上がっちゃって、な感じ。
みんな本当に恋愛まで発展してるのかな? 僕はよくわからない。
この気持ちが本当にタケヒロに対して好きという気持ちなのか、はたまたテンション上がった一時的なものか。
でも少なくともタケヒロはその気かもしれない。だってあれ以来、僕に文字通りべったりで。
一緒に歩いているときは僕に寄り添って腕にぎゅっと抱きついてくるし。
そして今日も二人きり。今度はタケヒロの部屋だけど。
やっぱりやるんだろーなー、なんて思っていたら、だ。
「なあ、トモヒサ」
「な、なに?」
「クラスのやつが貸してくれたんだけど、これ、試してみないか?」
タケヒロが取り出したもの、それはピンク色の、男の人のアレをかたどったやつ。
双頭ディルド、というやつ。
「今日、親は帰ってこないから」
「あは、はは……」

その日はタケヒロの家にお泊りして、朝までガッツリ犯しあっちゃいました。




♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂

相違点12. 友情関係

「もう近づかないでくれぇぇぇーーーーーーっっ」
「ま、待ってくれ」
「俺達が悪かったからーっ!」

走り去っていく男子生徒を呆然と見送る女子二人。なんだか泣きそうな顔してる。
「なんだ? 痴話喧嘩か?」
「いや、そーじゃないのだが」
「でも何となくあっているかもしれないけど」
残された女子二人、ミチユキとミキヒサはどうしたらいいのかわからず困惑している感じ。
だが走り去った男子、タツアキもまた半泣きで、どこか怯えながら逃げ去ったようにも見えた。
「お前ら何かしたのか?」
「あー、うん。ちょっとね」
なんだか歯切れが悪い。話していいのかどうか、迷ってるようにも見える。
そりゃそうだろう。何があったか知らないが俺は外野だし、無関係だし。
警察が尋問しているわけでもないから別に話さなくてもいい。ただ俺は興味本位で聞いただけ。
気になるといえば気になるのだが。だから極論すれば話しなくても別にいい。
とはいえ相手は話せば少し楽になると思ったか、それとも女子特有のおしゃべり属性か。
事の顛末をぽつりぽつりと話し始めた。

「俺ら女になったけど、やっぱ中身は男なわけで」
「ほうほう」
「色々テンション上がって、毎晩自分の裸見てエッチなことしちゃったりしてな」
「ほう、それはうらやまけしからん」
「でもさ、気が付いちゃったんだよ」
「ほう?」
「ブツが、ナニがなくなっちゃったことに!」
「……ほう?」
「コーフンしても、テンション上がっても反応してくれる息子が、いなくなっちまったのが寂しくて!」
「ほ、ほう」
「女になったから当然なんだけど、でも妙に寂しくて懐かしくて」
「ほ、ほう」
「それで少しでも紛らわせて、思い出せたらいいかなーって思って、それで……
「それで?」
「あいつの、ブツを、ムスコをちょっと二人で見せてもらおうと」
「ほーお?」
「それでその、調子に乗って……な?」
なるほど、二人で襲っちゃったわけた。
女子二人に襲われるなんてけしからん。と、思ったけどあれほどまで怯えられるなんて、いったいどんな襲い方したのやら。

にしても、女になってから失って悲しみを感じるとは、俺は思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


「頼みがある」
神妙な面持ちで俺、タツアキに懇願するのは女になった友人二人、ミチユキとミキヒサだった。
俺ら3人は子供の時からの仲で、付き合いは長い。
学校はずっと一緒だったし、多分家族の次に一緒にいる時間が長いやつらだ。
例の共学化の発表があった時、俺は選ばなかったがこの2人は女子になった。
何でなったんだかなぁ、と思いつつも俺らの中は今まで通り、継続していた。
他愛もない話で盛り上がり、放課後や休日には3人で遊びに行ったりと。
そして今日も放課後に俺の部屋に来て意味のない会話やらゲームら楽しんでいたが、一通り落ち着いたところでこれだ。
「なんだよ一体」
今までだって頼みはいくらかあった。
夏休みの宿題が終わってないから手伝ってくれとか、金貸してくれとか、エロ本貸してくれとか。
あ、そういえばミチユキからエロ本借りてそのまんまだった。
とにかく頼みといっても軽いものがほとんどだったが、こんな真剣な顔されたのは初めてかもしれない。
しかも2人そろって。
今までにない展開故に緊張が走る。いったい何を。
「タツアキの、チンコみせてくれ」
「………………………は?」
今まで聞いたこともない頼みだった。
というよりも常識的に考えてありえない頼みだった。
あまりにも非常識すぎて思考回路が一瞬停止したぞ。そういうことって本当にあるんだな。
とりあえず無事再起動しました。
「お前ら、どういうつもりだ」
非常識な奴らに常識は通用しない。であればこちらも正論は通さない。
そのままドスのきいた声とキレのいい顔つきで対抗するしかない。
「ままま待て。そんな顔するなよ」
「いやその、ちゃんと話し合おう」
「非常識なお前らが何を言うか」
睨みをきかせてみたらさすがにまずかったと思ったのか。だったら最初から言わなければいいものを。
だがこいつらとはお互い仲が深い。それなりの理由はあるのかもしれない。
オーケイ、とりあえず事情は聞いてやろう。それによっては対処を考えねば。
お互い冷静になったところで、ミチユキとミキヒサは戸惑いつつも話を始めた。

「うーんと、俺ら女になったじゃん?」
「ご覧の通り、な」
そうだな、だれがどう見ても女だな。
こうしてみると顔にはミチユキとミキヒサの面影はあるが、首から下は全くといっていいほど面影はないな。
なにこのナイスバディな女子生徒。スタイル良すぎだろ。
うんそのおっぱいさわってみたい。
「けっこう勢いで女になってな」
「うんうん、あの発表があって即決、みたいな?」
お前らのことだ。なんとなくそんな気はしていたよ。
どうせ女になったら好きなだけ女の子の体でエッチなことできると思ったんだろ。
「で、せっかく女の子になったわけだから、色々試したわけよ」
「そうそう。毎日鏡に裸で立つのが嬉しくてね」
ほーらやっぱり。長年の付き合いだからわかるんだよ。
お前らどうしようもなくスケベだな。
「女って、すげえんだよ」
「最初やった時は失神しちゃったぐらいだし」
ほう、それは興味深いね。
女は男の百倍気持ちいいっていうし。どうやって比べたか知らないけど。
あ、今のこいつらだったら比べられるか。
「それで毎日のようにオナニーしちゃって」
「いやついはまっちゃいましたね」
お前ら覚えたてのガキか。
言ってることにやってることがあまりにも低能なんだよ。
こいつら、女になってもやっぱりバカのままだったか。
「けどさ、だんだんむなしくなってくる気がして」
「うん、僕もそう思って」
それだけ好き放題やってむなしくなるだと?
贅沢な奴らめ。
「こう、自分の女の裸見てドキドキするのは同じなんだけど、行き場がないんだよ」
「ああ、それそれ。男だった時はちゃんとあったんだよ」
あ? 行き場?
「つまりな、男の時はそういう場合ブツがあったから『コーフンしてます』って気分になれたんだよ」
「そうそう、今はコーフンするんだけど気持ちが迷子になっちゃうというか」
なんだそりゃ?
「それで、俺からなくなっちゃったんだ、って思うと、ちょっと切なくなってきて」
「うん、失って大切さを知るというか、寂しくなって」
おい。
「それで、タツアキの見せてもらえば少しは切なさが解消あべしっ!」
「分かれてしまったあのムスコをもう一度ぐばらっ!?」
「お前らそろいもそろって本当にバカだなぁっ!!」
そんな理由で見せろってか? 見れば思い出せる? あほらし。だったら最初から何で女になったんだよ。
覚悟もなく女になるなんて選びやがって、ましてや俺に相談もなく。
うん、そうだ。俺に相談もなく女になったことに俺はこいつらにいら立っていた。
俺らの仲はどうなんだよ。こいつらが女になって、変わっちまうかもってこと考えなかったのか。
そんな重大な決定、どうして俺に相談もなく。というよりも選んだ理由が軽すぎるっての。
それであげく見せてくれって、滅茶苦茶じゃねえか。
大体人の大切な部分を他人に簡単に見せるのなんてダメだろ。ましてや女の子に。
うん、女の子にだ。こいつらは中身は男だけど、もう女の子だし。
「だ、ダメか?」
「そういう上目遣いで甘えるように言ってもダメです」
「その、俺達もおっぱい見せてあげるから」
「え? それは、えっと……」
「あー、ほらあった。こんな写真じゃなくて本物のおっぱいだぞ」
「っておいっ! 俺の秘蔵本をっっ!!」
「いやいや、いつまでもベッドの下なんてわかりやすい場所に置いてるから」
「あのなっ!」
ごそごそと俺のベッドの下から勝手に秘蔵本を取り出しやがって。
つーかそれ、お前が俺にもういらねってよこしたやつだろがっ! 結構大胆なエロ写真集。
いらなくなった理由はお前ら自身が女になったからだろ? でもなんとなくもったいないからって俺に押し付けたやつだろ!
いやしかし。たしかにそのエロ本にはお世話になりましたけどね。
エロ本を見せてもらった一方、こいつらは生を見せると言い出している。
交換条件は、俺のブツで。
「いいだろぉ?」
「………………わかったよ」
ふっ、俺もバカだな。こいつらの誘惑に簡単にのってしまうなんて。
やった―なんて喜んでいるが、最初からこうするつもりだったのか、ちょろいと思っていたのか。
言った手前やっぱやめたとも言えないし。
仕方ない、見せるだけだったらいいだろう。

腹を決めて俺はベッドに腰掛け、かちゃかちゃと着っぱなしだった制服のズボンのベルトを外していく。
自分の部屋だから着替えようかと思ったけど、女子二人がいるから着替えないでいたのだが。
うん、この二人を女子として意識してしまっているんだな俺は。
その二人は正座して俺の股間をじっと凝視している。
う、ここまで見られるとだんだん恥ずかしくなっていく。
なんとなく居心地悪くなってきたが、ベルトを外してそのまま一緒にトランクスもまとめて膝までおろす。
下半身裸になった形で、二人の目の前にお目当てのものを見せてやるってスタイルだ。
「おお、懐かしい感じが……」
「タツアキって結構でかいんだなぁ……」
まるでトレカのレアカードを見せてもらっている子供のような視線で俺のブツをじっくり観賞している。
すっごい嬉しそうな顔してますが、ついこの前までお前らにもついていたものですよ?
俺の中の感覚では他人のブツをここまで見るなんてしたくない。一般的な女子であれば特にそう。
が、今やこの二人はその常識から全く離れている。そこまでしてみたいのかおい。
「で?」
「え?」
「お前ら、見せるって言っただろ?」
「あ? ああ、そうだった。すまん」
これで「あれは嘘だ」といったらどうしようかと思ったが、そんなつもりはないらしい。
良かったのやら悪かったのやら。
この二人はずいぶんと素直に約束を守ってくれるようだ。
制服の上、ワイシャツのボタンに手をかけ、あっという間に脱いでいく。
その下に来ているのは薄いキャミソール。動きに色っぽさもなく作業の一つとばかりにあっという間にこれも脱いでしまう。
そして、ブラ。
ミチユキはピンクの、ミキヒサはブルーのブラ。それもフリルがついていたりとデザインに凝っている。
魅力的だ。こいつらなかなかいいセンスしてるじゃねえか。
そのブラも背中に手をまわして、そっと外してしまう。
そしてついに、二人のおっぱいがあらわになった。
「おぉ………」
な、生おっぱい。当然のように生でおっぱい見るなんて初めてだ。
思わず声が漏れる。二人ともなかなかボリュームのあるサイズでありながら見事なまでに美しい。
サイズは微妙にミキヒサの方が大きいようだが、二人ともきれいな形で、その先端のピンク色もまた美しい。
「ど、どうだタツアキ。俺のGカップは」
「けっこうこだわってカスタマイズしたんだよこのHカップ」
GカップとHカップ。ば、爆乳ですか。
二人とも下から腕を使ったり手を使ったりしてバストを持ち上げ、見せつけてくれる。乳上げですな。
なるほど、二人自身の好みも反映されているのか。それは美爆乳になるはずだ。
こんなもの見せられたら、当然俺の血流は一か所に集中して。
「お? おおっ」
「この子、たったわ!」
俺のブツは徐々に上を向いて行った。いや当然でしょ目の前にこんなエロい物体があってさ。
その前にミキヒサ、お前俺のブツに車いすの少女が立ち上がった時みたいに声出すなよ。
「なんだか、すごく懐かしくなっちゃった」
「うんうん、この固くて熱い感じ。そうだよこれこれ」
「っておいっ! お前ら何触ってんだよっ!!」
こいつら調子に乗って俺のブツに手を伸ばし、触り始めやがった。
急な出来事に俺は緊急回避。とりあえず下をガードした。
「えぇ!? ここまで来たんだから触らせてよ」
「僕達のおっぱい触っていいからさぁ」
こ、こいつら、とことん誘惑してきやがる。
確かに折角だから俺も目の前のおっぱいに触ってみたいという気持ちはある。
だが、そのために自分のそれを触る許可を与えるというのも、また。
「あ、そーだ。こうして……」
なにかの一線を超えるかどうか戸惑っている中でミチユキは何を思い立ったのか、いや文字通り立ちあがったんだけど。
それと同時にGカップがぷるんと揺れる。エロい。
何をするのかその動きに視線を追っていると、俺の隣に座って。
「これならお互い触りやすいよな?」
と、隣に密着して座って、俺の手を自分の後ろからまわして抱き寄せられるように。
「お、おいミチユキっ……」
抱き寄せられた姿勢で、俺の手を自分の胸にあてた。
「あーなるほど。たしかにやりやすいよな」
反対側から逃げて距離を置こうとしたらあっという間にミキヒサがそちらに座ってしまった。
つまり、二人に挟まれている状態。というよりも二人とも俺の腕を回しているから俺が二人を抱き寄せているのか!?
しかも、ただ抱き寄せているんじゃなくて。
「どーだ、俺のおっぱい。やわらけーだろ」
「んぅっ、乱暴にしないでね」
しっかりと、自分たちのおっぱいに誘導してくれちゃってますっ!
ちょ、超やわらけーーーーーーっっ!! 両手に華じゃなくて両手におっぱい!!
マシュマロなんて表現するやついるけどちょっと違う。
もっちりとした触感、手に吸い付くような柔らかさと弾力を兼ねそろえた、最強の物体。
これ、飽きずにずーっと触ってられる。なんて、触り心地がいいんだ。
「これでお互い触りやすくなったよね」
「ああ、これ自分の触ってるみたい」
そして交換条件的に俺のブツを二人で触り始める。いやちょっと待て! よくよく考えてみれば俺、許可してねーぞ。
既成事実的に自分のおっぱい触らせてやってるから俺のも触らせているようだが、許可してないものは許可してない。
それ以上にこいつらの触り方が、エロい。
握ったり、なでたり、それを全体に、先端も、皮も、タマも、まんべんなく、とりこになっているように。
この絶妙なタッチ加減が俺にとってかなりの刺激になっている。
こいつら、ブツがなくなったから触ったらどう感じるかなんて本気で忘れてるんだろうか。
「すごおいっ、こんな熱くなったっけ?」
「やっぱ忘れかけてるんだなぁ、俺」
「んっ、ちょっと思い出してきた。ボッキしてる時の感じ」
「あ、んんっ……思い出したら、ムズムズしてきちゃった」
こいつらテンション上がってるのか。スカートを上げて、ショーツの中に手を突っ込み始めた。
さっき外したブラとおそろいの色のショーツ。こちらもフリルが付いていたりと可愛いデザインだ。
片方の手で俺のブツを触りながら、片方の手で自分のショーツの中に手を突っ込んで。
そこで何をしているのか、どんな指使いをしているのか、この角度では見えそうで見えない。
だがその影響でか、異様な空気が立ち込める。
こいつら忘れてないだろうか。俺と体が密着しているということを。
さっきから二人の匂いが、女の子の体臭が、甘酸っぱい匂いがずっと俺の鼻をくすぐっている。
それも、こいつらが自慰を始めた時からさらに強くなっていく。
これはアレか? フェロモンってやつか? 自分たちがそんな危険物質発しているなんてわかっていないな絶対。
どう危険か、俺の股間が、かなりやばいです。
けっこうやばい。これ以上はやばい。
おまけに両手に華、ではなくおっぱいもある。それだけでなくトップレスの、裸の上半身が俺に密着しているのだ。
全身が柔らかい女の子の裸が、だから俺も全身でそれを感じ取ってしまっていて。
さらにはその息遣い、声、例え中身は男友達と分かっていても、今は女の子であってこんな間近に女の子がいると思うと。
こんな状況で冷静でいられるような男子はいるのか?
「ちょ、お前ら一旦離れて……」
「もう、この子ったらまだ元気になってるぅ」
「うんっ、僕のおちんちん思い出してきたぁ」
おいっ! お前ら顔がやべーぞ。なにその完全に酔ってるような表情。
ああっ、さらに匂いが強くなってきている気がする。気のせいか? 気のせいじゃないと思う。
無理! 本当に………まずい。これ以上は、本当に。

「うおっ!!」
「あ」
「あ」
俺の堤防は限界を突破して、噴火した。
白い液体をその先端から真上に噴出させ、ずっと俺のブツに触れていたミチユキとミキヒサの手に降り注いだ
最近出してなかったせいか、それとも二人のフェロモン攻撃のせいか、これでもかと勢いよく大量に出てきた。
本当に、大量に。そして二人の手を汚してしまった。
「うあぁ……」
そのまま俺は全身から力が抜けたようにして、二人の胸から手を放し、後ろに倒れた。
突然の出来事にきょとんとしている二人の顔が見えた。そして俺には、やっちまったという自己嫌悪。
友人たちの前で痴態をさらしてしまったこと、さらには自分の液体で汚してしまったこと。
色々な思いが賢者モードになった俺に恥ずかしさとして襲い掛かってきてくる。
呆然として俺は二人の顔を見ていた。二人も白い液体で汚れてしまった自分の手を凝視している。
どうしよう、どう謝ろう。言葉が出てこない。戸惑う俺、一方で二人の表情に変化が現れる。
「これだよこれ、この匂い!」
「うん、なつかしい……」
「え?」
おい、どうして笑顔で白い液体の匂い嗅いじゃってるの? おい。
トップレスの美女二人が俺の精液の匂いかいで、すっげー嬉しそうにしている。なにこの光景。
「イカ臭い生臭いっていうけど、いい匂いだよなぁ」
「僕たちこんな匂い出せないよねぇ」
大丈夫かおい! トリップしてませんか!!
「もっと、かぎたぁい……」
「うん、もっと……だしてぇ♪」
二人とも目が大丈夫!? なんかやばい目になってませんか!
あ、ちょっと。それ以上俺のムスコに触らないで。
あ、う……アッーーーーーーーーーー!



後日
「誠に申し訳ございませんでした」
俺、ミチユキはミキヒサとともにタツアキの部屋にやってきていた。
そして開口一番二人で土下座です。
先日あの失態をしてしまった部屋と同じ部屋。なんとかタツアキを説得して家に上げてもらって、とにかく頭を下げていた。
本当に自分でもありえないと思うぐらいにテンションが上がってしまって、ついやりすぎてしまった。
あの精液の匂いが妙に刺激的で、それでクセになって、もっともっとと思って空っぽになるまでやってしまって。
それがタツアキにとってトラウマを植え付けることになっちまって。
そのタツアキは今、ベッドの上に座って土下座する俺たち二人を見下ろしている。
正直、ここまで説得するのに時間がかかった。
翌日はずっと俺たち二人だけでなく他の女子までも避けてしまって。
教室にいると比率で女子の方が多いからなんだか落ち着かない様子だったし。
事情を知らない女子(元男子)がからかうように「大丈夫? おっぱい見る?」なんて言って、そしたらタツアキ倒れちゃったし。
当然そいつはフルボッコにしておいたけど。
とにもかくにも何とか説得してここまでに至ったわけで。
今もわかる。タツアキがすごく落ち着かないことに。すごく息が荒く見えるし。
俺もミキヒサもそれ以上何も言えなくて、ただただ時間が過ぎていき、沈黙が長く続いて、それを打ち破るようにタツアキが一言漏らした。

「これ以上、友達でいられない」
それは俺にとって死刑宣告のようにも思えた。
ずっと仲良くやって来た俺たちにとって、絶縁は非常に大きいものだ。
原因は自分だってわかっている。あんなとこしてしまった自分が、本当に情けなく思えて。
だからこそ、俺にとっては重い言葉だった。
涙が、出てきた。
女になって、涙もろくなったかな? 必死になってこらえようとしたけど、難しい。
何でだよ、何で出てくるんだよ。本当に、悔しかった。
俺はこれ以上音が漏れないように、必死になりながら、すすり泣いた。
それはミキヒサも同じようで、隣からも泣き声が漏れていた。

「一緒にいたら、お前らのこと、襲ってしまいそうで」
「……へ?」
涙でぐちゃぐちゃになっているかもしれない顔を上げると、そこには戸惑うタツアキの顔があった。
俺の涙で、泣き声で気まずい思いをしてしまったのか、それはわからないけど。
けど、今の言葉は?
「だってお前ら、こんなかわいい女子になってんだぜ。自覚あるか?」
「う……」
かわいい、なんて言われてちょっと嬉しくなった。
なんで? 俺が、かわいい?
「そんな女の子が、俺のブツ触って、エッチなことして、そんなことしたら襲っちゃいそうになるだろ!」
あ、うん、たしかにそうだね。
「でも、そんなことしたら……友達でなんていられなくなって」
「………」
「俺は、お前らとずっと仲良くやっていきたいんだよ。それがそんな形でぶち壊すようなことは、したくないんだよ」
「………」
「けどあの日以来、おまえらの裸見て、抑えきれそうになくて」
「………」
「だから、距離をとっておこうと」
「………タツアキぃ」
「ミチユキ? ミキヒサも?」
「お前ぇ、俺達のことぉ、そんなにっ、そんなにぃっ………」
「うっ、ごめんっ、ごめんなさぁあぃっ………」
「え? おい、ちょっとおっ!?」
「ふわあぁぁあんっっっっ………」
「タツアキいぃっっっっっ………」
思わず、俺とミキヒサはタツアキに抱きついて大泣きしてしまった。
俺らのこと、友達と思ってくれるんだな。ずっと、一緒に、仲良くしていられるんだな。
勝手に、女になって、勢いで女になって、何も言わないで女になって、関係複雑にしてしまいそうになって。
本当に、悪かった。
許してくれて、ありがとう。


ひとしきり泣いたところでようやく落ち着いた。
やっぱり感情を整理するには一度発散させる、思いっきり泣くのがいいんだな。
「あの、もういいかな? いつまで抱きついているんだ?」
と、ここでは多と気が付いた。思わずタツアキに抱きついてしまったことに。
「あ……す、すまんっ!」
見れば隣のミキヒサも目を真っ赤にして。うん、俺もきっとそうなってるだろうな。
そして大事なことを思い出す。そうだ、こいつ俺たち襲っちゃいそうって言ってた。
あの一件のせいで、俺達を見る目が変わって、襲ってしまいそうだったと。
だというのに俺たち二人は抱きついて、体を密着させてしまった。うん、間違いなく胸も当たっていたよな。
よく見たらタツアキがプルプル震えているような。これ必死に抑えているのか?
何ともきまずい空気が。俺らまたやっちゃった? どうしよう。
だがそんな空気を打ち破ったのは、ミキヒサだった。
「ねえタツアキ。僕はさ、いいかなって思ってる」
は?
「その、やっぱ女の子になったから、興味あるんだよね」
何に? そう思ったのは俺もタツアキも同じ。二人でミキヒサに目を向けていると、それをそっと取り出した。
「3人でやってみない?」
手にしていたのは円形のものがパッケージされている。薄い平べったいもの。
コンドームだった。
「…………………」
「…………………」
おい。
お前何やってんの? 折角感動の仲直りって展開だったのに。どうしてぶち壊してんの。
今までの展開どう見てたの? お前話の流れわかってる?
しかもなんでお前しっかりそんなもの用意してるの? 狙ってたの?
タツアキ、どーするこいつ。言おうと思ってタツアキの方に振り返ってみたけど、様子がおかしい。
プルプル震えてる。これ、怒ってます?
いや、怒ってない、と思う。多分。これは、まさか、ひょっとすると……
「フォッサぁマグぅナぁぁぁぁっっっーーーーーーーーーー!!!」
「「噴火したーーーーーーーーーっっ!!」」


そして
「や、やっちまったな」
「お、おう。勢いでやっちまいましたな」
「えへへ~。やっちゃいましたねぇ」
全員素っ裸です。ええ、やっちゃいましたよ。
ベッドに3人並んで裸で、先ほどまでの出来事の余韻に浸っておりますよ。
ベッドが狭いから3人ともほぼ体を密着させている。さっきのことも相まって暑いんだけど。
ミキヒサがあんなもの用意して、実に思わせぶりなことしてくれるものだから。
理性の限界に達してしまったタツアキはミキヒサに飛びつき、あっという間に二人とも裸に。
止めようとしても無駄であり、気が付いたら俺までひん剥かれて。
いやでもなんというか、悪くなかったよ? 全員裸になって抱き合って、なんだかいい感じになって来てさ。
あ、でもちゃんとゴムはつけましたよ。そこんところの理性はちゃんと残っていたのが助かった。
あとはもう全員力尽きるまで繰り返し。で、今ここ。
「け、けど、気持ちよかったぜ」
「そ、そうか?」
うん、痛かったけど。やっぱ処女喪失って痛いんだな。
下にまだ異物感が残っている。何か入って来たっていう感じ。指なんて比べ物にならん。
だけど2発目以降は体が慣れてきたのか、それともタツアキのアプローチがうまかったのか、けっこうよかった。
自分でやったのと全然違う。すっげえ気持ちよかった。
おっぱいもあんなに感じちゃうだなんて。母乳が出てきちゃいそうだったよ。いやそんなわけないけど。
くそっ、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「すごいでたねぇ、タツアキの」
ミキヒサは使用済みコンドームを指でつまみ、まじまじと見つめていた。
同じようなものがその辺にいっぱい転がっている。確かにけっこう出したなタツアキ。
「んっ」
「あ」
「あ」
その手にしていたコンドームを、ミキヒサはぱくっと口にくわえてしまった。
そしてちゅーっと吸っている。あれだ、駄菓子にそういうのがあった。そんな感じで。
「んふっ、いい味だねぇ」
「「……………」」
突然のことに俺もタツアキも硬直。おいおい、いくらなんでも精液飲んじゃっていいのか?
こいつ、女になったっていうか、淫乱になっちゃったんじゃねえの?
「これからもぉ、3人仲良くやっていこうねぇ」
ぎゅーっと隣に横になっているタツアキに抱きつき、体を密着させるミキヒサ。
抱きつくというよりもおっぱい押し付けているようにも見えるけど。
「あ、あぁ……」
「そうだな、仲良くな」
なんとなくミキヒサに倣って俺もタツアキにぎゅっと抱きつきながら同意した。
うん、ハーレムだね。これ絶対ハーレムだよね。
まあいいか。3人仲良くやっていけるんだったら、さ。




♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂

相違点13. 不良

うちの学校の学力は高いわけでもなく、低いわけでもない。
つまりいろんなやつらがちょうどいい具合に混ざっている、といえるかもしれない。
何が言いたいかというと、どこの学校にも不良は1人ぐらいはいるものだということ。
うちのクラスにも当然のように不良がいる。
いや、いたというのだろうか。

「ちゅーす」
誰に挨拶したのか、クラス全員なのか。うちのクラスの不良、カゲヒロが入ってきた。
なお、今は1時限目と2時限目の間の休憩時間。つまりこいつは完全に遅刻しているということ。
それをちっとも悪びれず、平然とクラスに入ってくる。
やっていることは依然とさほど変わらない。が、姿は変わっている。
以前は絵にかいたようなヤンキー、髪を染めてピアスして、制服を着崩して、いかにも悪ぶってます、ってスタイル。
が、今はそいつは女になった。
髪を染めてピアスして、ただでさえ短いスカートをさらに短く穿いて、いかにも遊んでますってギャルになっている。
ついでに言うとばっちりメイクもしている。やり方どこで学んだのか。
正直あいつが女になるとは、女子を選択するとは意外だった。男のプライドがあるだろうと思っていたから。
それよりも女になってエロいことする欲望の方が強かったのだろうか。
平然と遅刻したそいつはこれまた平然と教室の中を移動、そして。
「よっ、ナガタカ」
ターゲットの席に移動する。
ナガタカはクラスで少なくなった男子の一人、そしてカゲヒロのターゲットでもある。
あいつがナガタカを使いっ走りにしたり、たかっている、虐めているのは周知の事実。
他のやつらはカゲヒロの反撃を恐れて直接は注意しない、するわけがない。
俺だって同じこと。厄介ごとにはかかわりたくない。
だからといって黙ってはいない。教師にカゲヒロの行為を密告している。
それによって注意を受けているはずだが、あまり功を奏してはいないようだった。
ナガタカへの行いは変わらず、誰もが遠巻きにその様子を見るばかりだった。
その上下関係は今も続いている……と思ったのだが。

「わりーなぁ、また遅刻しちまったよぉ」
ぽす、と自身の爆乳を背後からナガタカの頭に乗せた。
うん、柔らかそうだ、気持ちよさそうだ。ナガタカも顔を赤くしている。嬉しそうに見える。
「……ちゃんと目覚ましセットしたの?」
「したけどさぁ、二度寝しちゃったんだよねぇ」
さらには抱きつき、執拗におっぱいを押し付けている。
なんだろ、なにかがおかしい。
これは絡んでいるのでも虐めているのでもなく、じゃれている?
明らかにいじめっ子がターゲットに行う嫌がらせの類とは違う。
性別の違いというのもあるが、お姉ちゃんが可愛い弟にじゃれている? それが近い。
虐めていた行為が何かのラインを突破して、行為に変わったとか?
ダメだ、よくわからない。

そこまでも人間が変わるのかと考え、俺は思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったかな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


僕、ナガタカの学校生活は最悪だった。
あのカゲヒロに目を付けられ、事あるごとに使いっ走りをさせられ、いびられて。
誰かが教師に密告したようだけどそれも逆効果で、僕が告げ口したと殴られたり。
家族には迷惑かけたくないから黙ってて、なんとか我慢していたけど。
こんなことがいつまで続くのだろうか。そう思うと毎日の学校が気が重くて。
だが、それは思いもかけない方向で変化していった。


「……あんまりくっつくかないでよ。こんな人込みで」
「えー? 人ごみだからくっつくんだよぉ。はぐれちゃうじゃん」
今までは休日は家でおとなしくしているのが僕のパターン。
だが、あれ以来カゲヒロは毎回のように僕を引っ張り出し、こうして街に繰り出している。
あれ以来……学校が共学化し、カゲヒロが女になってから。
女になったカゲヒロは見るからにギャルだった。
普段の制服と違う、派手でミニスカートな服は見るからにそれだった。
背が高いのは相変わらずで、元々背の低い僕は女子よりも背が低い男子という劣等感を感じざるを得なかった。
いや、それ以前に男子として、劣等感以前の問題だった。
「こんな格好、恥ずかしいって」
「ダイジョーブ、だれがどう見たって女の子だよ」
そう、今の僕は女装させられていた。
カゲヒロみたいなギャルな服装ではない。ちょっとおとなしい女の子風。
スカートなんてフリルがいっぱいついていて、ミニスカートで、かなり女の子したデザインだ。
これらの服はカゲヒロのチョイスだ。しかもウイッグとメイクまでされている。
それだけでなく下着まで女物にされている。ショーツにブラ、パッドを入れて少しふくらみを出しているし。
確かに自分で鏡で見たけど、かなり可愛く仕上がっている。
もともと自分は女顔だって自覚はあったけど、ここまで化けるとは思わなかった。
ただ、これらの服もメイクもカゲヒロ自らお金を出している。
今までだったら僕の財布から出させていたはずなのに、一体どういうことだ? そんなお金、持っていたのか?
「女ってラクショーだぜ? 脱ぎたてのパンツ出すだけでポンと金稼げるんだからな」
……聞かなかったことにしよう。
どっちにしても、恥ずかしい。これ他のクラスメイトにばれたら、恐ろしい。
特にこのミニスカートがちょっと動いただけでめくれてしまいようで。
防御のために大股にならないように、自然と内股になってしまう。
「なんだってこんな格好……」
「だってさ『男の娘』って、すげえ魅力的じゃん」
そういう種類の人がいることは知っているが、カゲヒロがそれに惹かれるとは。
以前だったらそういう人は絶対にバカにしてコケにすると思うけど、むしろ逆?
自分が女になった、元男だからか? それとも女になって嗜好が変わったのか?
はっきりとはわからない。確かなのは僕が今女装させられて、こうしてカゲヒロと腕を組んで街を歩かされているということ。
はた目には仲のいい女の子同士に見えるのだろうか。とにかく恥ずかしい。
これは新しい種類のいじめだろうか。こんなこと、いつまで続くんだろう。


「あの、これはまずいんじゃ……」
もはやカゲヒロの言われるがままに行動し、引っ張られ、映画を見て、ファストフードで食事し、女性下着店に連れられ……
そして今は、とあるショッピングモールの女子トイレに連れ込まれ、二人でその個室の一つに入っている。
なにがまずいって? 男の僕が、女子トイレに入っちゃうのは大いにまずいでしょ。
「いやいや、お前今は見た目女の子だよ? それで男子トイレに入る方がよっぽどまずいじゃん」
それはそうかもしれない。
さすがに僕もこの格好で男子トイレで立ちションしたら色々まずいって気はするよ。
だからって女子トイレに入るわけにはいかない。そっちの方がよっぽどまずい。
見つかったら間違いなく変質者、犯罪じゃなかろうか。
「で、なんで二人で同じ個室に入っているのさ」
狭い個室、二人で入るには立っているだけで窮屈。
男の僕が女子トイレに入っていること、二人でこんなところにいること、いろいろまずい気がして自然と声のトーンをおさえる。
音が漏れないように、外に気が付かれないように。
戸惑う僕をよそにカゲヒロは反応を楽しむように、にっと笑う。
いやな予感しかしない。
「もちろん、こーいうことするため」
「んっ……!?」
ほぼ密着するぐらいの距離だったカゲヒロと僕の距離は、ゼロになった。
唇の距離が。
「ん……んっ……」
僕を壁に押し付け、逃げられないようにして。
重ねるだけでなく、舌も入れてきて、唾液を好感して、キスなんて……
「ぷはっ……」
解放される。それでもすぐにまた密着できるぐらいの、1センチもないような距離で、僕を見つめてくる。
僕は何が起こったのか、わからないでいた。
キス、した? 僕が、カゲヒロと? これ、僕は、キスなんてしたことなくて、初めて、だったのに……
その初めての相手が、よりによって、カゲヒロ? カゲヒロは男で、でも今は女で、僕を虐めていて……
絶望と恥ずかしさ、そして混乱が渦巻く。
でもカゲヒロが、女の子の瞳が僕をじっと見つめているのに気が付いて、何も言えないでいた。
「なあ、キスの味はどうだった?」
「……さっきのファストフードでのシェイクの味」
バーガーの肉の味よりははるかにましだった。
「はぁ……もちっとマシな反応を期待したんだけどなぁ」
この状況でどうマシな反応が生まれるんだろうか。
そもそも僕のファーストキスを奪ったって自覚あるんだろうか。絶対ないな。
「けど体は正直だよな」
「んなっ!?」
突然のことに思わず声を上げてしまったが状況が頭に入っていたから何とか大きなものにならずに済んだ。
何故声を上げたか。いきなりスカートの中を、僕の股間に触ってきたからだ。
「んふふ~♪ やっぱお前も男だねぇ。ちゃんと反応してくれるんだからなぁ」
「や、やめっ……」
スカートの中から手を放さない。さっきのキスのせいで少し硬くなってしまったそれを、しっかりと手にして離さない。
そしてスキを見て、僕の体を動かし、便座に座らせる。
カゲヒロは立ったまま、僕は座った態勢。高さの関係でようやく手が大事なところから離れてくれた。
一連の出来事に僕は茫然とし、されるがまま。
目に入ってくる情報しか処理できない状態になっていた。
「俺さ、こういう危ないシチュエーションでやってみたかったんだよねぇ」
何を? と聞こうと思ったが多分無駄だった。というよりも大体わかった気がする。
カゲヒロが、チューブトップの上を引っ張って、胸をあらわにしたから。
「あ……」
健全たる男子である僕は、不覚にも目の前に突如現れた女性の胸にくぎ付けになってしまった。
「へへ、どうだ? カッケーだろ俺のおっぱい」
露出した胸を量の手でつかみ、ほれほれと見せつけてくるカゲヒロ。
脱がなくてもかなりのサイズだと思っていたが、こうして生で見ると、その迫力が。
「いい反応だねぇナガタカ。こっちは素直じゃん」
油断した。思わず見入ってしまったせいで、僕の股間はしっかり起立してしまった。
スカートをめくられたところで慌てておさえようとしたけど、もう遅かった。
「ちょ、ちょっとやめて……」
「おいおい、俺はちゃんと見せてやったんだからお前も見せろよ」
見せ合いっこな条件を突き付けてきたけど成立するのか。
だけどカゲヒロに逆らったらこの後何をされるか分かったものではない。
本能的にこれ以上抵抗するのは危険と判断して、結局されるがままにすることにしてしまった。
「あはっ、すげえ立派じゃん。可愛い女の子にしか見えないのにこんなの生えてるってそそられね?」
どうそそられるのかはよくわからない。
スカートめくられ、ショーツを少しおろされて露出したそれをじっくり観察されるなんて。
恥ずかしすぎて、みじめになってくる。
「なあ、こういうの興味ねーか?」
されるがまま、そう思って無視を決め込もうと思ったけど目の前で起こった出来事には目を向けるしかなかった。
カゲヒロが、僕のペニスを胸で挟んできた。
「え? ちょ、ちょっと……」
「なあ、こういうの気持ちいいか?」
柔らかなそれが、絶妙なまでの加減で僕のそれに刺激を与えている。
あまり返事したくない、気持ちいいだなんて。
さらにそれだけで終わらず、今度は舌も使って僕のそれを攻め始めた。
「ちょ、それ、きたな……」
僕の言うことなんて聞く耳持たず、やめる様子もなく夢中になっている様子で続けている。
ちょっと、これどういうこと?
ついこの前まで自分にだってあったモノを興味津々で見ていたと思ったら、胸で挟んできて、舐めたりして。
これ、どういうイジメ? こんな嫌がらせ、聞いたことないけど。
いやこれがどういう行為かは僕も知識の片隅に知っているけど。けど、元男で不良のカゲヒロがすることなのか?
カゲヒロは男の時、女子にこんなことやらせていたのだろうか。それを今度は自分でも。
何? そういうのに興味があるって、自分でもやってみたかったってこと? んなこと言わないでよ。
「や、ダメっ、でちゃう……」
「んー、思いっきり出しちゃえよ」
僕の先端をしっかりと、舐めるだけでなく口で全部を覆うように加えて、激しく舌で攻めてきて。
ついに僕は耐えられなくなって。思わず、カゲヒロの口に……
「ひっ……!?」
どくどくと僕のそれは躍動して、そこから放出しているのを感じ取る。
それでもカゲヒロは口を離すことなく、僕が出したものを全部受け止める。
それを一つも逃すまいと、まだ出し切ってないものまでも、強力に吸われていく。
硬直、そして頃合いを見計らってか、ようやく僕のそれから口を話した。
「んぱぁ……しっかり出しやがったなおい」
口を開け、僕が出した白い液体を見せつける。唾液と混ざり合い、いやらしい雰囲気を醸している。
カゲヒロの攻めに逆らうことなどできず、出すだけ出してしまった。
また、これをネタにいびられるのか。うんざりする。
だがカゲヒロはそれを吐き出すのかと思っていたら、再び口を閉じ、すべて飲み込んでしまった。
いや、それって……汚くない? 僕のそれに口をつけている時点であれだけど。
しかもしっかり味を確かめるようにして、口の中の残ったそれを一つ残らず飲み込むように。
「んふっ、お前の子種いい味だなぁおい」
一体何がしたいのだろうか。いくら僕に嫌がらせし続けるにしてもここまでするとは。
「ところでぇ、お前は気持ちよくなったけど俺はまだなんだよな」
スカートの中に手を入れ、するすると紐同然のショーツをおろしていく。
あんなもの穿いていたなんて。ギャルの格好するだけあるよ。
「ほうら、童貞君。これ見たことねーだろ」
紐同然でもショーツはショーツ。カゲヒロがスカートたくし上げた下は当然のようにノーパン。
何もない、毛の一本も生えていない綺麗なそこが、僕の目に入る。
ああ、そうだよ童貞だよ。それが悪いか!
女の子の、こんな部分なんて普通はナマで見ることなんてあるわけないだろ。
心の中で盛大に文句言ってやった。当然カゲヒロにはそんなこと分かりっこない。
ある程度予想はしていたけど、これからの展開を。だけど実際にそれをされると……怖くなってくる。
「まだまだ元気だよねぇ」
そう、まだまだ上を向いて元気な僕のそれに、カゲヒロは自身のそれを重ねて。
ぐにゅっ、と形が変わる。入口が変形して、僕のを飲み込んでいく。
その様子を僕自身もしっかりと観察できた。ゆっくりゆっくりと、それが、カゲヒロの中に。
「あ、んっ!」
入ってしまった。
「あはぁ、お前と一つになったなぁ」
何とも言えない、法悦の笑みを浮かべるカゲヒロ。ぴくぴくとそこを通してカゲヒロの鼓動が感じ取れる。
「へへっ、俺の処女奪ってくれたな。代わりに俺は、お前のドーテーな」
見れば結合部からわずかに赤い液体が漏れているように見える。処女って……
「んっ、んんっ……」
カゲヒロがゆっくりと上下運動を始める。そのたびに僕のそれは締め上げられ、心地よい感触を感じる。
「ちょっ、こんな……赤ちゃんできちゃうよぉ」
僕が怖かったのは、それ。これって、こんなことって……
「おめーそれは女の方が言うセリフだろ。ピル飲んでっからダイジョーブなんだよっ」
なおも続く上下運動。もはやされるがままであり。
「あんっ、お前もボーっとしてねーでほらっ。おっぱい吸ってえっ♪」
目の前に、カゲヒロの巨乳が押し付けられる。
やわらかい、心地よい感触が顔面に。カゲヒロの乳首に口をつけ、吸いながら、離れないようにきゅっとカゲヒロを抱き寄せて。
「あ、んんっ、いいっ♪ 乳首もっ、感じちゃって……」
ここまで来た時、僕はもうされるがままでいるのが癪だった。
だったら、こっちからも攻めてやる。
「あ、ちょっ……んあっ!」
僕自身が腰を振り、カゲヒロを突き上げていく。
「あ、お前こん、なっ……んっ、あっ………!」
形勢逆転、だろうか。得意気な表情が次第に戸惑いのものに変わっていく。
「んっ、ぁっ、んんっ………!」
ここがどこだかお互い忘れていない。声が漏れたら一大事だ。だからカゲヒロも必死に抑える。
「んっ、っく、んっ………」
こらえるかのように、僕に力を入れて抱きついてくる。
柔らかい胸が、僕に迫って、その谷間に僕は埋まる。
「んっ……あっ、んっ……」
高まる体温、滲み出る汗、その匂いが、甘酸っぱい女の子の匂いが僕の鼻をくすぐる。
「んっ……ナガタカっ…い、イクっ……!」
耐えきれなくなったか、どこか涙目で僕に視線を送り、その時を告げる。
「んっ、ん……っっうぅぅぅぅっっっっ…………!!」
カゲヒロが鼓動する。それを深く感じるためにか、僕をより力強く抱きしめてくる。
僕もそれにこたえるように自分を開放して、その中に、吐き出した。
二人ともそれをよりよく確かめるためかのように、お互い抱きしめ合いながらその時を味わっていた。
しばしの時が過ぎ、お互い落ち着いたころになって、カゲヒロが僕の耳元でささやいた。
「てめぇ、やってくれたな。覚悟してろよ」
後になって自分がしでかしたことに気が付くタイプ。


相変わらずカゲヒロは僕に腕を組んで歩いている。
あれだけやったのによく外にばれなかったものだと感心してしまう。
そっとトイレから抜け出し、何事もなかったかのようにこうして二人で歩いている。
大丈夫だろうか。僕、変なにおいしていないだろうか。
隣を歩くカゲヒロは実に生き生きしている。さっきまでの痴態が嘘のようだ。
それにしても、女の子になったカゲヒロにも相変わらずこんな扱いを受けるなんて。なんだか情けない。
女になったら余計にカゲヒロに虐められる。それを警戒して男でい続けることを選んだ。
だというのに、こんなことなら……
「僕もTS選択すればよかったかなぁ」
「あ? ふざけんなよてめー。そしたらお前とケッコンできなくなるじゃねーか」
「え」
「あ」
ぽつりと僕がつぶやいた言葉に、思いもかけない言葉が返ってきた。
思わずカゲヒロの顔を見てみたら、どんどん真っ赤になっていく。
聞き間違いじゃなかったはずだ。え? ちょっと待て。これって、どういうこと?
「ば、バカやろっ、ジョーダンに決まってるだろっ!!」
そう言ってずかずかと、僕の腕を組んだまま歩き始めるカゲヒロ。
前を見てこっちを見ようとしない、それでいて顔は真っ赤なままであり。
いや、この反応は冗談にはとても見えなかったけど。
だからどうしても気になった、そのことを確認してみる。
「カゲヒロ、僕の事……好き?」
「……いわせるな、バーロ」
どうやら僕はこれから、いじめられなくて済みそうだ。




♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂

相違点14. 親友

8割の男子が女子になって、実質共学になったことにようやく慣れてきた今日この頃。
もっとも、女子の中身はスケベな青年男子のままであるから完全共学とも言い難い。
そういうこともあってか、他人を全く気にすることなく実物でエロ話が盛り上がっていることもしばしば。
さすがに普通にスカートたくし上げて下着自慢している光景はどうかと思う。
しかし、あんなお手軽に女になってよかったのだろうかねぇ、あいつら。

「お手軽ねぇ……確かに想像以上にお手軽だったかも」
そういうのは目の前の女子、長年の友人のトシアキだ。
久しぶりにこうしてトシアキの家にお邪魔して二人でゆっくり語り合っている。
その時に俺がポツリ、と漏らした言葉にトシアキが答えていた。
「そんなにか?」
「うん、よく覚えてないけど確かなんだかよくわからない機械に入って気が付いたら女の子になってたし」
なんだかよくわからないで片づけていいのか。そんな簡単に女にできるって、どういう機械だよ。
そういえばどうやって女になったかなんて詳しく聞いてなかった。というよりもあまり覚えてないらしい。
他のやつらに聞いても「うーん、確か……」ってレベルだし。
かろうじてどこぞの研究所で、謎の機械で、って話だけは共通している。
まさか記憶操作されてないよな? 大丈夫だよな?

「で、一生女のままでいいのか?」
いくら簡単に女になれるといっても、それを残りの一生女のままでいいのか?
そんな簡単に今までの男を捨ててしまうなんて。
「うーん、確かに生理が大変だけどさ。でも…」
「でも?」
「女は女で大変だけど、やっぱり今がいいかな?」
それが気楽に決定して言うものでないことはなんとなくわかった。
先ほどの沈黙、一瞬悩んだものであるとすればちゃんと考えたうえでの決定だとわかる。
お試し的な、その場のノリではないということだ。
まあ、中にはノリで女になったってやつもいそうだけど。
「つまり、女になってよかったと?」
「文句ないよ。俺、アトピーとか吹き出物とかひどかったろ?」
「ああ、確かに」
「どうなるかわからなかったけど、ほら。女になってすっかりきれいになったし、体の調子もすこぶるいい」
そういえばこいつ、病弱で肌とかガサガサだった。だけど今ではそんな様子微塵もない。肌なんてシミ一つない綺麗なものだ。
玉の肌ってやつか?
「さんざん悩んでたものがなくなったんだし。これで男に戻ったらまた元に戻るかわからないけど」
「そ、そうか」
「だったら女のままのほうが100倍いいよ」
その場の気持ち、単純にエロいこと考えてなったほかのやつらとは違うようだ。
しっかり考えたうえで女になったのか、トシアキは。
改めて今女になったトシアキを見る。
首から上は元のトシアキの印象のままだ。ショートヘアだから余計にそう感じる。
顔が少し丸くなって女の子っぽい感じになっただけだ。それでもかなりかわいい。
他のやつらそうだけど、顔のパーツはそんなに変わってないのにすごく可愛いと思える。
そのかわり首から下は大きく変わった。胸も大きく、出るとこ出て、締まるところしまって。
健康的でスタイルのいい女の子って感じだ。完全に女子になっている。
それはトシアキだけじゃない。他のやつらだって同じこと。
誰がどう見ても女子だ。それも好みにカスタマイズしたらしく、みんなしてボンキュッボンだ。
見た目は女になった……だとしたら、中身は?

共学になったことの変化として、男女で、または女同士の交際のような場面が見受けられるようになった。
二人仲良く手をつないで歩いているのはざらだし、みんなの前で軽くだけど普通にキスしてる光景もよく見かける。
放課後の教室で情事に浸っている様子もこの前、目撃してしまったし。
男女だけでなく女同士でもそういう場面があったりする。あれもなぁ。
今まで見ることのなかった光景に、俺は疑問を感じざるを得なかった。
「いくら見た目変わっても、中身男同士だよな? できるものなのかなぁ?」
「どうかねぇ、見た目良ければそれでよしってところあるんじゃね?」
だとしたらだいぶ軽いな。
まあ実例があるしな。ちょっとノリで見せ合いっこしてて、そのままテンション上がったみたいな。
うん、女同士で乳繰り合って、うらやまけしからん。
「もしくは、友情がそのまま延長して……かな?」
なるほど、男女の友情関係はありえない、と誰かが言っていたな。
そうであれば友情関係が恋愛関係になるってことも十分可能性としてあるわけであり。
うーん、わかんねえ。
「女になって、ハートが変わったとか?」
「どうかな、個人差あるんじゃね?」
「となると……お前はどうなんだ?」
それは自然な疑問だった。というよりも気になっていたこと。
目の前にいる長年の友人、女になった友人はどうなのだろうか。
「やっぱり、俺が女になったのは……変かな?」
トシアキの問いかけに、その瞳に俺はドキッとした。
今までの男友達でなく、女の子の顔で、いや女の子の表情でそんなこと言ってくれるものだから。
これがまださらっと言ってくれればまだ気には留めなかった。
が、こいつはどこか戸惑い、思わせぶりな感じで問いかけた。
「い、いや。変じゃないよ」
そう答えるのが精いっぱいだった。

なんか、空気が変わった。
これで終わればそれでよかったのに。そのまま話題が切り替わるか、トシアキがさらっと受け流してくれればよかった。
それを望んでいたが、そうはいかなかった。
トシアキは、さらに質問してきた。
「キヨヒコは、女になった男との恋愛は……ダメと思ってるのか?」
おいちょっと待て、なんでそんなことトシアキは聞いてくるんだ!
俺はどう答えればいいんだ? 一体トシアキは何を求めているんだ。
いや、トシアキ。俺の事そんな目で見ないでくれる? どうしてそんな真剣なまなざしを向けるの?
あ、トシアキが、女の子に見えてきた。
いや、そりゃ今は女だけど。今の今まで男友達として、学校でも放課後も意識していただけで。
こうして家に来て話ししている時だって普通に男同士の友だちの会話をしているってつもりだったけど。
トシアキ、かわいい。
やっぱり女の子じゃないか。顔はそんなに変わってないはずなのに、その瞳も、口元も、すごく可愛いと思えてる。
その下は、女子の制服を着た女の子であって、決して男が女装している印象ではない。
胸も大きい。腕も細い。ミニスカートから伸びる太ももは肌をさらして、ドキドキする。
「キヨヒコ」
どう答えていいかわからず、トシアキの真意も組めずに答えに躊躇していたら、トシアキが迫ってきた。
そして俺の手を取って

ふにっ

「!?」
自分の胸に、俺の手を当てた。
あまりにも突然の出来事に俺は戸惑った。
ましてや生まれて初めて女の子の胸を触ったわけであり、それも相手が俺の手をつかんで突然にだ。
やわらかい。絶妙なまでの心地よい感触が俺の手に伝わる。服の上からでも、それがよくわかる。
このままずっと揉んでいられるような気がするが、友人の体だからこそ必死にブレーキかけようとする。
これ以上はダメだ。俺の頭は警報を鳴らすが、トシアキはそんなことお構いなしだった。
「ほら、わかるだろ? 俺も、女になったんだ」
俺の手をしっかりつかんで、胸から離そうとしない。しかもしっかり手を動かして、自分の胸を揉ませている。
さらなる柔らかな感触が、俺の手に伝わってくる。
それだけじゃない。走れば簡単にめくれるほど短い制服のスカートをたくし上げて、中を俺に見せつけた。
ピンクの、シンプルなデザインのショーツ。あぐらかいてるから足が開いてて、だからはっきり見える。
「ほら、ここだって……ないだろ?」
何がない? 聞くまでもない、男だったらあるはずの物体が、そこにはない。
あるのは女の子のショーツ、真っ平な平原ともいうべきか。
それによって自分が女の子だとはっきりわかるように。

「女になるって、体だけが変わるんだと思ってた。でも、そういうわけじゃないみたいでさ」
乳房に触れている俺の手から、トシアキの鼓動が伝わってくるような気がした。
「毎日風呂に入って、自分の体に興奮して、エロいことやってるから自分はまだ男だと思ってたんだけど」
ぽつりぽつりと、トシアキは語り始める。
「自分の事、『俺』っていってるし、何一つ変わりゃしないと思ってたんだけど」
顔が赤くなってる気がした。差し込む夕日のせいだろうか。
「ある部分で、考え方とか感じ方とか女っぽくなってることに気が付いて」
恥ずかしながらも、少しずつ胸の内を明らかにしていく。
「キヨヒコの事、友だちだと思っていたのに、なんか違うって思い始めて」
俺の鼓動も上がってくる。きっとトシアキのおっぱい触り続けているせいだ。
「誰かが言ってた、男と女じゃ、友情は成立しないって」
「いや、あの、トシア……」
「だから、俺は自分に正直になるっ!」
曇りのない瞳で、俺をきっと見つめた。
「キヨヒコ! 俺、お前のことが好きだっ!!」

その表情からは真剣さが伝わる。決して冗談ではないと。
俺の目をじっと見つめて、その答えを待っている。
告白、その言葉を聞いて俺は困惑していた。
その沈黙が続く。俺は迷い、答えを探していた。
一方で俺は何か違和感のようなものも感じていた。
それが何か? 考える。
そして結論にたどり着く。結論は……

ごすっ
「あだっ!?」
トシアキにこぶしを落としていた。
本気で殴ったわけじゃないぞ。ちょっと、目を覚ますことができる程度に。
おかげでようやくトシアキの手が俺から離れ、胸から手を離すことができた。

「な、なにすんだよっ! 女の子を殴るなんてひどいぞ」
抗議の声を上げているが、そんなことお構いなしだ。
「あのなぁ、ちょっと落ち着けよ。お前慌ててる気がするぞ」
「そ、そんなこと言ったって、俺は……」
「確かに見た目に体も完璧に女になっているけど、俺からすればトシアキはトシアキだ。変わってない」
「う……」
悩んでいるようにも見えたトシアキ。何に悩んでいたのか。
自分の心境の変化、心の変化、体の変化、急に変わりすぎて戸惑っていたのだろうか。
俺には全てはわからない。こういうときは余計なことは言わない方がいいに決まってる。
だけど、俺にとってはトシアキはトシアキだ。それだけはいいたい。
今までと変わりなく、仲良くやっていきたい。
それともう一つ。
「お前自分が女になった、って言ってるけど、一つ間違っているぞ」
「な、なんだよ」

「本当の女は自分の胸触らせながら告白しないぞ!」

「…………………」
「……………ぷっ」
「はっ、あははっ、くははっ!」
「あっははっ、ははっ……た、たしかにそうだよな!」
それほど難しいことじゃない。
この日、ようやくトシアキは笑った。

「悪い。俺、いきなり女になって、受け入れたつもりでいたけど違ったみたいだ」
すっきりしたのか、トシアキは安堵の表情を浮かべているように見える。
「慌ててたかもしれねぇ。女になったから、キヨヒコのこと好きになったんだと思ったけど、違ったのかな?」
安堵。それでいて複雑な思い。そんな表情を浮かべている。
女の顔になったけど、トシアキの顔だ。
「けどまあ……トシアキだったら付き合うのも悪くないかな?」
「へ」
「あ」
俺、今何を言った?
いやちょっと待て。今ついさっきトシアキのことを変わってないって言ったばかりなのに。
俺はトシアキのことをどう見てたんだ? え、ちょっと。いきなり告白に戸惑っていたのは、俺?
付き合うのもいい? それって、トシアキのこと、OKってことで……
沈黙が支配する。それを破ったのは俺じゃない。
「な、なんだよキヨヒコ。お前俺の事変わってなっていったくせに、お前だって変わってるじゃないか!」
はっはっはっ、と笑っているトシアキ。
けどその感じ、長い付き合いだからわかるけど、本当には笑ってない。
ごまかし笑い、今の笑い方はそれだ。
いたたまれない気持ちになる。トシアキの事、俺はどう見ていたんだ?
自責の念ってやつだ。どうすりゃいいんだ。

「……なあキヨヒコ」
「な、なんだ?」
さっきよりもずっとすがすがしい目で俺を見てくる。
その目は、何かを心に決めたものの目だ。
「改めて言うけど、俺たち付き合おうぜ」
その顔は冗談なんかじゃない。本気の顔だ。
笑顔だけど、決意した顔。
でもさっきの女の子の顔じゃない。恋する女の子の顔じゃなくて、真剣な表情の友人の顔。
女の子でなく、トシアキが、これだけ決意したのに俺はどうする?
トシアキのこと、俺はどう見てた?
中身は変わってない、けど見た目はやっぱり変わった。
女の子だと思った。けど、中身は男だと思った。
じゃあ断る? だったら俺は何故付き合うのも悪くないと思ったんだ? 言ったんだ?
……ダメだ、考えがまとまらん。
だったらせめてもの、その考えがまとまるまで、まとめるために。
「……友達からで、いいかな?」
「もう友達だろーが。だから友達以上からスタートだ」
始めるために、始めることにしよう。

「そーいえばお前さっき俺のおっぱい揉んで夢中になっただろ」
「うっ! そ、それは……」
「別に付き合い始めたんだからいいぜ。好きなだけ見ても触ってもいいよ」
「ば、馬鹿っ! そういうこと言うなっ!」
可愛い女の子になって、笑うトシアキと付き合うことになって、俺は思った。
「……俺はTS選択しなくてよかったな」


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀


「遠かった……」
俺、トシアキは椅子に座り、最初に出た言葉はそれだった。
郊外の何の変哲もない駅まで乗車時間1時間半。そこに降り立ち、さらに歩くこと20分。
バスなんて目的の場所に路線はなく、歩くしかなく、ようやくたどり着いたのは特徴もないごく普通の建物。
4階建ての、年期入ったビル、というのがいいのか。よくある郊外の企業ビルというのがいいのか。
30年ぐらい前に作られた学校の校舎に似たような見た目と言えば一番わかりやすいか?
受付をすると、ちょっと広い会議室のようなところに通される。
そこに用意されているのはこれまた座り心地の悪いパイプ椅子。
座れるだけましな雰囲気だ。ここまでの移動だけで疲れ果ててしまう気分だ。
何故俺がこんなところに来たのか。その理由は、ついこの前発表された共学化に関して、女子になるために。

女子化希望を出したら事前登録とかでサイトの案内が渡されて、アクセスしたら始まったのは自分の望む女の子のスタイルを設定。
これで本当に希望する女の子になれるのかと半信半疑だったが、けっこう作りこんでしまった。
そしてそのサイトから送られてきたのは一連の案内。今日の日時と場所が書かれていた。
で、今に至る。
自分の生活圏から遠く離れたこんな遠いところでやるのかと思ったが、来てみたら本当に遠かった。
周囲を見渡すと既に同じ学校の男子生徒も何人か来ていた。
何故同じ学校かわかったのかというと、同じ制服だったから。制服を着てここに来るようにと指定されていたから当然だが。
ここで順番に呼ばれるらしい。先ほどから数分の間隔で名前が呼ばれ、別室に移動している。
日時と場所以外はあまり詳しく案内されていないが、この先で順次女になるのだろうか。
……女になる、か。

共学化すると発表されたとき、俺はめんどくさいと思った。
俺としては別に共学だろうと男子校だろうとかまいやしない。女子が来たからといって何がどうってもさ。
なにせ俺は今まで女子からはゴミみたいな扱いされてきたからね。
俺は生まれつき病弱で、アトピーとか罹っていたから容姿がよくない。
肌はいつも荒れてて、自分でも見た目悪いと自覚していたから。
色々病院で治療受けたけど、あんまりよくならなかった。
それを女子がどう見ていたか、あの態度で明らかだ。
だから女子はいらない、むしろ来ないでほしいと思っていた。
あんな性格悪い人たち、ごめんだね。と、思っていたけど、なんだか様子が違った。
まさか、男子が女子になるなんてな。
それどういう冗談だ? みんなそう思っていただろう。
だが女装とかそういうものではなく、本当に女になると。
半信半疑だったが、いつの間にか僕は女子になると決めていた。

母さんは特に反対しなかった。というより俺が説得した。
うちはいわゆるシングルマザーの家庭だ。俺と母さんの二人暮らしだった。
父親は俺が生まれてしばらくしてから浮気して離婚したらしい。
俺が幼い時から病気で、母さんは苦労していたというのによく他に女なんて作ったものだよ。
もしくは母さんが俺につきっきりだったから、という可能性もあるが、だとしても俺たち二人を捨てたと思うと腹が立つ。
しかし母さんもちゃっかりしているもので、しっかり慰謝料と養育費請求してゲットしているから大したものだ。
そんなわけで俺は母さんに対する信頼は強い。これマザコンかな?
そうして俺の病気のこと、懸命になって対処してくれて、つまりは多くの苦労をした。
だから今回のことで病気がなんとかなるんじゃないかと、そういって説得した。
何とも言い難い顔しOKしたけど、俺は後悔しない。
これで自分が変われるのなら、安いものだ。今までかかっていた病院代に比べたらね。
それにどうなるか分かったものではない。本当に治るかはわからない。かけみたいなものだ。
それでもやらないよりはいいかも。やってダメだったらそれでいい、ってね。

そんなわけで座り心地の悪いパイプ椅子に座って待つこと1時間、ようやく俺の名前が呼ばれた。
ところでさっきから呼ばれた生徒たちはここには戻ってきていない。
そのまま帰宅したのだろうか。それとも……いや、考えたらなんだか怖くなってきた。
俺、大丈夫だよな?
とりあえずここに来る前に、家で名残惜しむような形で最後に出してきたけどさ。
はい、すいません。半信半疑だけど本当に女になるってことはムスコとお別れってことじゃん?
立ちションしていた時にもう立ちションできなくなるんだなーって思ったら、ちょっと、ね?
はい、今はちょっと賢者モードが続いてますから。
とにかくその会議室から案内されたのはちょっと離れた場所にある別室。
そこにいたのは白衣を着た美人とその助手、やっぱり美人だ。
なお受付もそうだし案内をしていた人もそうだけど、全員美人な女性だった。男性はいない。
「えー、トシアキさんですね?」
はいそーですと答えると、目の前の画面にぱっと女の子の3Dモデルが現れた。
裸の女の子の3Dモデルです、はい。
「君の希望モデルで間違いないですね?」
はい、そーです。ここに映っている裸の女の子が俺が設定した女の子のモデルです。
つーか、ここにいる全員画面見てる気がするけど、俺の好みここでさらされてるの?
いやちょっと恥ずかしいんだけど。
画面の3Dモデルの女の子はすごくリアルだから本物に見えなくもない。
それを周りの女性たちにばっちり見られて……
「なーるほど、君も巨乳好きってことか」
こんなこと言われちゃうし。にやにやしてるし。
その助手、というかナース服着た助手も巨乳だし、服がはちきれそうだし、生地薄いせいか下着透けて見えちゃうし。
いろんな意味で居心地悪い。
「では荷物は置いて、その機械に入ってください」
その機械、というのはこちらですか?
そこにあったのは証明写真機みたいな謎のマシン。ドアがあってそこから入るらしい。
中は試着室ぐらいの広さ。狭くもなく広くもない。ただ無機質な白い壁と照明のような装置があるだけ。
「では閉めまーす」
入り口のドアがぱたんと閉められる。いったいこれで何をするのだろうか。
と思っていたら一気に明るくなった。さっきの照明装置にスイッチが入ったのか。
うおっ! まぶしーんだけど。それとなんかういーんって何かの装置が動き出したような。
ってちょっと待て! 俺の制服が、ぼろぼろと崩れていってるんですけどっ!!
どゆこと!? いやちょっと待て。服だけじゃないっ、手が、俺の手がっ!?
あ、けど、なんだか、きもちいい。
あったかい。おふろにはいってるときのような、だきしめられてるような。
ああ、なんだか、とろけてしまいそうだ。
ちょっと、だんだん…いしき……が…………



「はいトシアキさん、終わりましたよー」
「あ……」
かちゃり、とドアが開いた。あ、そーか。俺この機械に入ったんだっけ。
えーと、あたまがぼーっとする。いまいち働きがよくない。
「しばらくはぼーっとしちゃいますけど、帰り道注意してくださいね」
「はーい」
そのまま出口へと案内される。んーと、ここに何しに来たんだっけ?
まあいいや。とにかく要件は終わったみたいだから今日は帰ろう。
預けていたカバンを受け取り、そのま施設を後にする。
うん、そういえば駅まで距離があったんだよなぁ。
バスがないのは不便だけど、無茶苦茶遠いってわけじゃないからいいか。
さっきから車もあんま通らないし。ここって結構田舎なんだな。
本当に何しにここに来たんだっけ? いまいち思い出せない。
あー、やっぱり頭がまだ働いてない。
どうして俺、あんな施設に行って、あんな機械に入ってたんだっけ?
それとこう、体がふわふわしてる感じ? けどなんだかお風呂上がりのちょっとのぼせた感じにも似てるけど。
それよりも風邪ひいた時の頭ぼーっとしてる時に近い? うんあまり良くないのは間違いないな。
とりあえず今日は帰ろう。
はーそれにしても駅まで遠い。それとさっきから体の感覚がおかしいし。
なんつーの? 歩いているだけなのに足の感じが違うような。
別に足痛いってわけじゃないし、怪我してるわけじゃないし。
なんだろなこの感覚。どうにも体が慣れてないような気も。
はーやれやれ。やっと駅に着いたよ。
飲み物でも買おうかな? てか、この周辺コンビニもないのかよ。どんだけ田舎なんだ?
自販機……たいしたものないな。いまいち買う気失せる。
いいや、我慢しよ。いやそれよりも、トイレ行こう。
まだ電車には時間あるだろ。なんせ本数少ないしな。
えーと、トイレは……あったあった。
田舎の駅だと掃除されてないと思ったけど、思ったよりはキレイか。ちょっと安心。
「ちょっと、こっちは男子トイレだよ!」
あ、何だよオッサン。入ろうと思ったらいきなり声上げてびっくりするじゃねーか。
そりゃそーだろ。俺は男なんだから男子トイレに入るに決まってるだろ。
まさか俺を見て女と思ったんじゃねーだろうな。どう見ても俺は男……
男? え、いやちょっと待て。
俺、どうしてスカートなんて穿いてんだ? なんか、妙にスースーするんだけど。
いや、スカートの前に、下を見たら、この胸は、何?
なんか、感覚がおかしい。こう、すっきりしてるというか、存在感がないというか。
まさか……。
冷静に、冷静に。男子トイレ入口からそっと移動して、女子トイレに、静かに、ばれないように。
誰かいない? 誰もいないよね? 入っちゃいますよ、いいですか?
洗面所……あった。
鏡……あった。
「………まじか」
そこに映った自分。まぎれもなく、女になっていた。



とりあえず駅の女子トイレが洋式であった事は助かった。
初心者(?)には和式は難易度が高かったと思う。普段めったに使わないし。
それでもなんだかうまくできなくて、感覚の違いにちょっと戸惑った。
そういえば女子って拭くんだよな、と思い出して拭いてみれば、そこにあったものがなくなってしまったことを痛感する。
それから自分の体の変化に戸惑いつつ、スカートの落ち着かなさに困惑しながらもなんとか家に帰りつくことができた。
母さんはまだ帰っていないようだ。静かな自宅、自室にて改めて姿見を使って自分を確認する。
「おぉ……」
駅のトイレの鏡では胸から上だけだったが、こちらでは全身を確認できた。
そこに映った自分、まぎれもなく女子だった。
女子の制服に身を包んだ自分は本当に可愛いと思えた。自画自賛、と思えるけど本当にだ。
あの3Dモデルの、自分がカスタマイズして作った女の子の姿そのまんまだ。
よく見たら顔は確かに自分で、男の時とパーツそのものは変わってないはず。
ちょっと女の子らしく丸みを帯びたとか、その程度の変化のようたけど、どうしてこんなに可愛いって思えるんだ?
この制服もまたいいデザインだ。男の、元の制服はなんだか地味なデザインだったけど、この差は何だ?
それにしてもいつ着替えたんだろ? 服を着てるということは自分で着たんだよな?
どうにも思い出せない。
あの機械に入ったことで女になったのはわかるけど、入ったところまでは覚えてるけど、その後どうなったっけ?
機械から出てくるところより前、まるで記憶がない。本当にいつ着替えたんだ?
制服、か。………この下は、どうなんだ?
うん、いいよね? 自分の体なんだし。折角だから、脱いでみようか。
ブレザーを脱ぎ、とりあえずベッドの上に。
ブラウスからでいいかな? うん、女子って男子とボタンが逆なのか。外しづらい。
この下は、キャミソールか。そのまま普通に脱げばいいんだよな?
えっと、スカートを……あ、ここにホックがあるんだな。これを……よし、外れた。
「ほぉぉ…………」
鏡には純白の、ちょっと地味な下着姿の自分がいた。
しかしスタイルの良さは目に見えてはっきりしている。
細身でありながら引き締まった体系、それでいてボリュームのある胸、くびれたウエストに腰回りの豊かなライン。
横向きになって確かめてみる。うん、上向きのボリュームのあるヒップ。
全て、自分が設定した通り。
だとするとこの胸もFカップの巨乳。うーん、すばらしい。
それにしても本当に自分の希望通りの姿になったのか。いったいどうやったんだ?
さて、ここまできたら当然その先も気になるよね。
ブラの下、ショーツの下。
さっきトイレで脱いだけど、気が動転してじっくり観察とまではいかなかった。
今なら大丈夫。この下、美少女(自称)の裸を、堪能……
「ただいまーっ、トシアキ帰って……る?」
絶妙なタイミングで母さんが返ってきた。そして俺の部屋の扉を開け、こちらを見ている。
硬直、フリーズ。母さんの目の前に飛び込んできた光景はどういうものだろう。
下着姿の女の子が、鏡の前でイケナイことをしようとしている。
当然俺も下心があり、そういうことしようとしているから突然の母さんの帰宅に戸惑ったわけで、俺もフリーズ。
「えっと、その……」
なんとか言い訳を考えて、必死になっていた俺であり。
「トシアキ?」
姿かたち変わってしまった自分の息子にどう思ったろうか。
呆然としつつもその事実を確かめようと俺の名をなんとか絞り出したかのような母さん。
俺は静かにうなづくしかできなかった。今の状況は気まずい以外の何物でもない。
どうしようか、と思っていたら母さんの顔が次第にほころび始める。
「きゃーーーーーーーーーーーーっっ!! なにそれやだトシアキかわいいーーーーーーーーっっ!!」
「ふごっ!? か、母さんちょっと!?」
いきなり飛びつき、抱きつかれ、べたべたなでなでされてしまった。
母さんの体が密着する。俺の年齢の子供がいるとは全く感じさせない見た目の母さんが、ここまで距離を縮めてきている。
密着? そういえば母さんに抱きつかれたのって、子供の時以来か?
さっきまで自分の体を見てドキドキしていたけど、今度は母さんの体にドキドキしてしまって。
いやその、胸が当たっていて・・・
「すごーい、本当に女の子になっちゃったんだーーっ。あらやだやわらかぷにぶにぃ」
「そ、そんな、触らな……」
俺が女になったことを見た目だけでなくちゃんと手で確かめようと、遠慮なく触ってくる。
顔とか腕とかお腹とか、それだけでなく胸とかおしりとかも。
いやちょっと自分でもまだ触ってないのに、あちょっとそこは……
「うーん、でもこれだけ可愛くなったのに下着が地味ねぇ」
べたべた触られてちょっと恥ずかしさを感じ、突然の展開に困惑していたから母さんのセリフに返答することもできず。
「よしっ! さっそく今から買い物に行きましょうか!」
展開がどんどん進んでいく。
「女の子になったから必要なものいっぱいあるわよね! 服とか下着とか化粧品とか。ささっ、早速行きましょう!」
そして強引に買い物へと連行されてしまった。



その後、母さんとショッピングモールに行き、俺のために女の子のあれこれを買うことになってしまった。
母さんはテンションMAXで「これいいーっ、にあってるんじゃないーーっ」を連発していた。
一方の俺は母さんのテンションについていけず、戸惑うばかり。
特に下着専門店に突入したときはもう。
男の俺がここに入るのは異質でしかない。と思っていたけど自分は女になったことを思い出した。
だしても中身男のままの俺はどうしていいかわからずじまい。
思ったよりは買い物は長く続かず安心したが、買い物袋の数を見て経済的に不安になってしまった。
そのまショッピングモールのファミレスで久々の親子で外食をしたのは嬉しかったけど。
で、帰宅した後どうするのかというと。

「本当に綺麗になったわねぇ」
背後からしげしげと俺の腕を観察し、その手で感触を確かめ、泡のついた手でやさしく体を洗っていく母さん。
その表情はずっと緩みっぱなしで、嬉しそうにも見えるし惚れ惚れしているようにも見えるし、いやらしくも見えるし。
はい、二人で風呂に入ってます。
この年で母親と二人で風呂入るって、どういう状況。本当に何年振りなのか。
母さんはずいぶんと嬉しそうだが、俺は緊張しっぱなしだった。
俺を産んだ年齢とは思えないほど若々しく見える母さん。体もスタイルがいい。
それだけにバツイチ子持ちの美人とあっては男が放っておくわけにもいかず、よってくる事態があるのは事実。
もっとも丁寧に振り落としているようだが。
言い寄ってくる男たちに苛立ちを感じる俺ではあるが、あまり人のことは言えない。
俺も俺で母さんを母さんとして見ているが、女性としても魅力的であると思っている。
もちろん恋愛とは言わない。マザコンであることは否定しきれないけど。
そんな母親が、無防備に裸でいるのだ。しかも、こんな近距離で!
必死に抵抗したけどその抵抗むなしく、半ば強引に脱衣所に引き連れられ、母さんの、裸を見てしまった。
すごく、奇麗です。
だからこそ母さんの方は極力目を向けないようにしている。なんとか視線をそらそうとしている。必死だ。
母親の裸で興奮しているなんてことは絶対気づかれてはいけない。勃起していることがばれたらもう……
あ、そーか。もうないんだった。
あれ? だったら見ててもばれないんじゃない? って違うだろっ!!
「うーん、おっぱいも大きくて弾力あるわねぇ」
腕だけでなく全身も洗うようだ。
「って母さんっ! ちょ、ちょっと……」
「いいじゃない減るものじゃないし。あ、かわりに私のおっぱいも触っていいわよ」
いいんですか? ぢゃなくてっ!!

こんな感じで入浴タイムが続いたのだった。



「あの、母さん?」
「なあに? トシアキちゃん」
「一緒に寝なきゃ、ダメなの?」
かの入浴タイムがようやく終了。気が付いたら1時間半も入ってたよ。
若干のぼせた状態になり、そのまま寝る準備でナイトブラをめんどくさいと思いながら着用したところでまた事件が発生した。
母さんが、俺のベッドにもぐりこんできて一緒に寝ようと言い出した。
どうしてこうなった?
「久しぶりじゃない、いいじゃない。だって男の子だったらなかなかこういうことできないでしょ?」
女の子相手だったらOKなのか?
暗くなった部屋で母親と一緒にベッドイン。暗がりでもわかるくらいゆるみきった表情の母親と距離が近い。
しかも俺を抱き枕にしてくれるものだから余計に近い。
抱き寄せて、自分の胸元に寄せて、俺の頭を谷間に埋めてしまう。
密着です。やわらかいです。母さんの胸が、すごく心地いいです。
それといい匂いです。先ほどのお風呂のボディソープか、はたまた女性特有の匂いかフェロモンか。
うん、いいかもしれない。とりあえず今日はこのままでいたい。
やっぱ俺ってマザコンなのかな?
だとしたら母さんは? こういうのなんて言うんだ? ムスコン?
「こんなに可愛くなったんだから、ね」
なでなでしてもらう。こんなことされるなんて何年ぶりの事か。ちょっとうれしい。
悪くない。今日は甘えたっていいよね、なんて思ってしまう。
母さんは女になった俺を受け入れてくれたようだ。
正直、母さんは反対しなかったけど本当に受け入れてくれるか疑問だった。
確かに病気で苦労させてしまったけど、それが治ったとしても、姿が大きく変わってしまうのだから。
まるで違う自分。息子が娘になってしまって、受け入れてくれるかどうか。
その心配は、幸いにしてなかったようだけど。
顔があんまり変わってないのもよかったのかな? 一応男の顔から女の顔にはなったけど。
だから顔を変えることはできなかった? うーん、わからない。
ところで、もう一つ心配はあった。友人だ。
男友達が女になってしまって、果たして友人は受け入れてくれるのだろうか。
母さんの胸に抱かれながら、俺はその時そんな心配をしていたのだった。

「ねえトシアキちゃん。せっかくだからおっぱい吸う?」
それはやりすぎです母さん大丈夫ですか色々と。


♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀


「おい、あんまりくっつくなって」
「いーじゃねーか。友達以上になったんだからさぁ」
朝の通学時間、トシアキと一緒になったのでそのまま並んで歩いていたはずなのだが。
いつの間にかトシアキが俺の腕を組んできた。
手をつなぐ、じゃない。腕を組んで、だ。
あの日以来、こいつは吹っ切れたのだろうか。俺との距離が縮まった気がした。
物理的な距離がだが、感情的な部分も近くなった気がする。
俺はというとちょっと複雑に思えていた。
見た目は完全に女子、だけど中身はかつての男友達であり。だけどあの告白をした手前、付き合うようなものでもあり。
……まあいい。そのうち慣れるだろう。
いまはとりあえず、腕を組んできた副産物の胸の柔らかさを楽しんでいるとしよう。
それにしてもこの学校が共学になってだいぶ慣れてきたのか。学校の空気がずいぶん変わった気がする。
なにがって、男女の距離感?
俺たち以外にも、友情を超えたところに達した奴が増えている気がする。

ヨシノブとナガマサは結構有名な二人だ。
割と早い段階から通学の時に二人仲良く手をつないで歩いているし。
昼休みの時も二人で食事している光景を見たりといちゃつき具合が半端ない。
みせつけてんの? 嫌味なの? と当初はイラつく対象だった。
が、もう慣れたのかそれともほかのやつらも付き合い始めたのか、そういう声はほぼなくなった。

タツアキとミチユキとミキヒサの3人は、男1人と女2人の仲か?
タツアキを間に挟んで残る二人が左右から腕組んで歩いている光景が目撃された。
なにそれハーレム? 実にうらやまけしからんというお話だ。
今は仲良くしているようだが、そのうち三角関係な修羅場にならないことを祈る。

トモヒサとタケヒロは驚きの女同士だった。
普段おとなしそうな二人に思えていたのだが、意外にもやることやっているんだな。
考えてみればうちの学校、共学になったとはいえ元は全員男だし、比率でいえば女子の方が多い。
となればこういうことが起こってもさほど不思議ではないか。
うーむ、元男の百合の世界はどうなっているのか。

一番意外だったのはナガタカとカゲヒロの組み合わせ。
いじめられていたはずだったのに、カゲヒロが女になってから関係が変わったようだ。
あれか? 虐めの感情が裏返しになって恋愛感情に?
しかもこっそり物陰で濃密なプレイしているとか噂されているし。おいおい。

そんな感じでこの学校もだいぶ変わってしまった。
俺の腕に抱きついて離さないトシアキを見て、こう思った。
「……やっぱ俺はTS選択しなくてよかったかな」


「なぜだ? どうしてこんな魅力的な美女なのに男ができないんだ!」
「タキザワ先生ってやっぱそういうキャラなんですねぇ」
掲示板でアップしていたものをちょっと加筆するつもりが、かなり追加して時間がかかってしまった。
ところで自分、TS女子に立ちションさせるのがデフォルトになってしまった気が。
XJ
0.1270簡易評価
16.無評価きよひこ
XJさんの新作待ってました!
17.100きよひこ
ボリュームたっぷりでよかったです