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Touch(仮題)

2019/01/16 05:50:20
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俺は触れている人間に憑依をすることがきる。
そう、あくまでも憑依できるのは俺本体とその人が物理的に接触してる時だけ。少しでも離れてしまうとたちまち憑依状態は解除されてしまうのだ。

俺が最初にこの能力に気付いたのは放課後のことだった。俺の消しゴムを拾ってくれた後ろの席の広瀬さんと手が重なり合ってしまい…次の瞬間には視界がぶれて、目の前に俺の姿が写っていた。
「「え?」」
全く同時に重なり合う二人の声。驚いて一歩下がってしまい能力はすぐさま解除されたけれども、俺がこの能力について自覚を持つのに、そう長くは時間はかからなかった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。

いろいろ試して楽しんだが触っていなければならないデメリットがあるので使い道が難しかった。
そして恐るべき問題が発覚したのは俺に恋人ができてからだった。
手をつないでもキスしても俺同士でやってることになるのだ!

彼女・・・クリスタ(ドイツと日本人のハーフだ。すごくかわいい)曰わく、俺のキスは気絶するほど気持ちがいいらしい。実際、俺が憑依することになって本当に気絶している状態なのだが、変に疑われるよりはマシだった。そんなわけで度々俺は彼女にキスを迫られるようになり・・・、断るわけにもいかずその度に自分同士でキスをする羽目になっているのだ。
そして・・・遂にこの日が来てしまった。
「ね?キヨヒコ。今私の両親ね、二泊三日の旅行に出かけてるんだけどさ?寂しいから今夜は一緒にいてほしいかなぁ・・・だなんて。」

深夜の女の子の部屋。お泊まり会。男女二人・・・。何も起きないはずがない。とうとう俺も覚悟を決める日が来てしまったようだった。

まぁ興味がなかった訳じゃない。
女の身体の快感を味わってみたいと考えたことはあったし挿入する快感も、挿入される快感も両方味わえるのだから。

ただやはり自分とエッチするとなるとやはり躊躇してしまった訳だが。

「お、おじゃましまーす!」
「アハハ、キヨヒコ。今はパパとママいないんだしもっと気楽にしてていいよ。」

そうは言っても女の子の部屋に入るのは初めてだ。ほんのりと香る女の子の香りに思わずどきりとしてしまう。

「それじゃ、早速はじめちゃおっか♪」
彼女はそっと俺の胸に吸い込まれるように抱きついてくる。服の上からの接触だから憑依することはないけれど、この仕草は服を脱がしてほしいという彼女のアピールだ。決して触れないわけにはいかない。俺は覚悟を決めて彼女の服の中に指を差し込んだ。

「・・・よう、よろしくな、俺。」
「視界が二つってのはやっぱ変な気分だわ。」
目を合わせて喋り出した俺とクリスタ。勿論俺が憑依してる状態なので独り言ということになる。喋る必要もないし顔をあわせる必要もない、それでもやはり自分の口から可愛らしい声が漏れて、自分の思った通りに他人の身体を動かすことのできるというこの支配感だけは否定できそうにもない。罪悪感こそ感じるけれどもその感情が俺の女の体への探求心を越えることはなかった。

「それじゃぁ・・・下着の方を脱がしてね、キヨヒコ。」
「ああ、脱がすぞ。」
先程の続きを演じるようにしてスカートのウエストのところにあるチャックを下ろすとふぁさりと重力に従ってスカートが畳へと零れ落ちる。自分で自分の服を脱がしているというのにとてつもなく恥ずかしい気持ちに襲われる。俺の視界に映る紫色の勝負下着はとても魅力的で、俺のためにここまでしてくれる彼女がこれ以上ないほどに愛おしく思えるとともに、その下着を履いているのは自分自身であるという倒錯感がひどく俺のことを興奮させた。

下着をズラしていくとクロッチと綺麗に手入れされた金色の茂みの奥の秘裂から透明な糸がひく。
「あんまり見ないで…ちょっと恥ずかしい♥️」
両手でショーツを摘まんで肉体的接触から外れた為に今の言葉は本物のクリスタだ。
「とってもエッチだ。舐めていい?」
顔を真っ赤にしたクリスタが一瞬悩んだようだが直後に俺の頭部を引き寄せ俺の顔面を股間に押し付ける!

もっともクリスタが押し当てた瞬間、再び俺がクリスタになってしまった為に押し当てたのも
押し当てられているのもどちらも俺になってしまったが。
ペロッと舐める♪ペロッと舐められる♥️

リアルタイムでどちらの快感も得られる♥️

「ひぅっ♥」
じんじんとその存在を主張するかの如く大きく膨れ上がった陰核を舐めとってやると、その分だけ男では感受できないほどの快感が俺の脳とクリスタの脳にどっと流れてきて、思わずそのまま脳がショートしてしまうんじゃないかと思えるほどだった。

気が付くと俺の身体は女の快感に耐え切れなかったせいなのか、既に白濁液を俺に向かってぶちまけていた。
「うぇっ…コレ俺の精液か…」
太腿のあたりに広がったドロッとした感触。思わず指で掬い取り匂いを嗅いでみると、それだけでもう何らかの快楽物質がドバドバと分泌され頭の中をそれ一色で満たしていく。
男の身体より敏感にオスを感じ取ってしまうこの身体。どうせ俺の身体ではないのだからと、俺は自分の精液を舐めてみることにした。

「うぇぇぇぇ…、なんだこの味。にがっ。」
美味しそうに精子を飲み込む動画もあるけれど、よくそんなことできるなとでも思えるような味だった。しかもなかなか舌から離れることなくいつまでも絡みついてくる。正直最悪の触感だというのに、俺は満更でもない様子で自分の精子を飲み込んでしまっていた。

今この身体の中では新鮮な俺の精子がたどり着くこともない卵を目指してピチピチと動き回っている。数時間後にはまもなく消化されて、この身体の一部として生まれ変わることになる。そう考えたら綺麗で無垢な彼女のことを俺一色に穢しあげてるみたいで、それだけで興奮が止まらなかった。ちんこが再び硬さを取り戻しお腹のあたりがきゅんきゅんと疼き始める。

このまま俺一色に染め上げてやりたい。本人すら気づかぬところで俺のちんぽなしでは居られないほどに犯しつくしてやりたい。今までになかったほど俺の心は黒い私欲で満たされていく。

高揚したのがマズかったのだろうか?
不意に俺の本体は胸の痛みを感じるとやがて意識がなくなった
いや意識はある……あるが……それはクリスタの体のほうだ
俺の本体はどうなったんだ? …なにぃ? 息も脈もない!?

これはまずい!
このまま「俺」が死んでしまったら「俺」から手を放した瞬間に俺の意識は消滅してしまうんじゃないのか!?
俺はクリスタの非力な体で心臓マッサージと人工呼吸は始めた!
頼む!生き返ってくれ「俺」!

懸命な心臓マッサージの結果…俺の体は息を吹き返したようだ。ゆっくりとだが呼吸をはじめ、心臓も鼓動をし始める。
安心して、抱きかかえていた自分の本体から無意識に手を離す…が、そこで気づいた。
俺は今、俺本体と一切触れていない。
それなのに、俺の意識はまだクリスタの方にある…!?

俺はクリスタの目線で客観的に俺本体を見下ろしていて、胸元には巨乳の重みをずっしりと感じる。
慌てて俺本体に触れると…。
「うう…どうなってんだ、これ…」
俺本体が目を覚ましゆっくりと上半身を起こす。
だが、手を離すとその瞬間俺本体の意識は途切れ、再び倒れこんでしまう。
まさかこれは…俺のメインの意識がクリスタの方に移動してしまっている!?

それからは大変だった……
俺は具合が悪いとして休学することにした。
心配した友人と来たときは常に手をつないだり
腕を組んだりしてなければならず
比翼のカップルと噂されるようになってしまった。

このまま学校にいけないのはまずい!
その念が通じたのか、完全に接触していなくても
大丈夫になり、今では10メートル離れられるようになった!

やった! このままいけばなんとか生活できそう!
……あれ? なにか見落としていないか……?

そもそも遠隔操作できたところで俺の精神はひとつ。
こんな無理な生活が続けられるのだろうか?

あれからクリスタの精神が戻ることはなかった。
だから清彦の体をクリスタの部屋のロッカーに隠し、クリスタとして生活せざるをえなかった。

クリスタと俺の体はここにある……だが精神は俺ひとりだけ……

クリスタ本人がいなくなった悲しみと一人である寂しさはやがてクリスタである俺をいわばラジコンの俺本体ではなく誰か別の人間の温もりを求め始めさせていた……

だがクリスタとして俺が生きていくにしても、別の人間に温もりを求めて抱き合う(性行為)は
クリスタに対する裏切りに感じる。

「そういえばあの時、童貞も処女もお互いに捧げないまま終わっちゃったな…」

接触してしまうと両方とも自分になり、セックスというよりは複雑高度なオナニーみたいなモノだが
あの夜の続きを再現しよう。

「優しくしてね」
「う、うん。クリスタ…鏡でみるより俺が俺の目で見る方がやはりクリスタは可愛いし綺麗だ」

一人芝居みたいなモノだが久しぶりに俺の目で見たクリスタはやはり最高の美少女だ。

でも俺はクリスタの容姿だけが…身体が好きだったんじゃない…。
クリスタの自我が…心が…魂が好きだったんだ。

でももう二度と合うことはない。そして今日このセックスが終われば俺の肉体とも別れ、一人のクリスタという女として生きていく、そういう確信が俺にはあった。

そして再び男の肉体と女の肉体を交わらす初体験が始まる。
清彦とクリスタの肉体を使った、だが俺しかいない初体験が……

この清彦とクリスタの肉体の最初で最後のセックスで俺は俺自身に刻み込む。

俺は清彦であったことを……
これからは俺がクリスタとして生きていくことを……
そして確かに清彦とクリスタは愛し合っていたことを……

二つの性の象徴がふれあい、清彦のペニスはクリスタの胎内に入り込んでいった……!

「「ふぁぁぁああ!!」」
二つの声が重なった理由はただ一つ、気持ちいいからだ。
クリスタの膣を俺のペニスの熱が割り開いていく感触。そしてクリスタの膣内を突き進もうとするペニスの感触。
その二つを同時に感じてしまい、声なんて抑えられない。

もっと欲しい。
そう考えながら清彦の体を進ませると、俺の膣内に何かが当たった。

「そうか、これはクリスタの…」
「いいよ清彦、刻み付けて。…クリスタの初めてを、あなたの物にして…?」

決して変わらない、「初めてを破った誰かがいた」事実。それが清彦であり俺自身であることを、決して忘れないように、クリスタとしての言葉で清彦に語る。
清彦の視線から見たクリスタは、少し怖そうにして、けれど覚悟は決まっている顔をしていた。
それを少しでも和らげるようにキスをしながら、清彦は腰をさらに前へ突き出した。

「いた…!」

ぶちん。そんな音が俺の体の中から聞こえた気がした。

「痛……! ちょっと待って……!」
「凄い……これがクリスタの膣の感触……」

俺同士なのに片方は破爪の痛みにまだそっとやってほしいと感じるのに、片方はその征服感と未知だった感触をもっと知りたいと動きたがる。

自分自身でさえそうなのだから男って勝手なものよね……とクリスタの女の立場で考えてしまう。

だが、その男もまた自分であり、自分の発祥であり、これから別れゆく半身なのだ。
……あるいはその肉体が俺に忘れないで!と言っているのかもしれない……

「わかったよ……清彦……いやキヨヒコ……私に貴方を刻み込んで!」

その「クリスタ」の言葉に興奮した「清彦」はおもいきりペニスを最愛の彼女の奥深くまで突き刺した!

「はぁぁ!」

ぐん!と突き込まれる度に、クリスタの喉から声が溢れる。
引いて、押し込んで、テクニックなんてちっとも無い勢いのままのセックス。

「クリスタ…、クリスタ…、クリスタぁ…!」

体を支えるために床についていた「清彦」の腕は、いつしかクリスタの腰をつかんでいた。
女として抱かれていることがすでに主体となっている清彦だが、同調している「清彦」の視線から、これが最後だからと言わんばかりに、蕩けた表情の「クリスタ」を見ていた。



「キヨヒコ、もっと、もっとお願い…! 私に、クリスタの顔を見せて…」
「いいよクリスタ…、可愛くて、エッチで、素敵な表情で…、もうこんなに、俺の精液を欲しがってる…!」
「「注ぎ込んで、いっぱい…! これで最後なんだから…! 欲しいよ、証が…。キヨヒコと一緒にいた、忘れない証拠が欲しいの…!」」

もうどちらがどちらの言葉をしゃべているのかわからない位に、今俺たちは一つになっていた。
腰を突かれる度にどくりと精液を注がれる。
胎内に熱さが満ちていく毎に俺の中から熱が消えていく。

腰を突く。迎える。胸が揺れる。体が揺らされる。
注ぐ。注がれる。一人で二つの体を分け合っていた時と違うように、一つになっていた。

もう何度出して出されただろう。
行き場を失って逆流し始めた精液は、クリスタの愛液と混ざりあって尚も腰を進ませるための潤滑液となっていた。

「も、もうダメ、キヨヒコ…。これ以上入らない… でもまだ…、まだなんだ…。これが最後だから…、受け止めてくれ… うん…、いっぱい出して、キヨヒコ…」

射精を繰り返すたびに、「清彦」の体を動かすことが難しくなっていく事を悟った俺は、2人分の言葉全てをクリスタの口でしゃべっていた。
今の「清彦」の体は、クリスタを愛する行為をする為だけに動かしている人形のようなもので、それでも最後を求めることに、俺は何のためらいもなかった。

「出る…、最後の射精が… キヨヒコ…、ねぇ、キスを… あぁ…、っ、ん…!」

「清彦」の頭に手を添えて、そっと口づけをする。返す舌の動きは無くても構わなかった。

そして、終わりの口づけと共に最後の、ひと際大量の精液が流れ込んでくると同時に、

「あ…っ、あっ、あぁぁぁぁぁ! クリスタァァァァァァ!!」

俺は、最愛の女性の名を叫びながら、倒れ込む「清彦」の体を抱きしめながら、彼女の体で最大の絶頂を感じていた。

絶頂の余韻にしばらく浸りながら俺はどうやって清彦と決別しようか考えていた。
このまま精神の接続を解けば清彦の体は動かなくなり意識不明で病院に送られるだろう。
病院に送られたら家族の出費や心労はどんなものか。
事故死……はやはりいろいろなところに迷惑をかけてしまう。
自殺、失踪……やはりどれも問題がある。

「どうしようか?……キヨヒコ?」

クリスタの俺は清彦の俺に問いかける。
同じ俺である以上、彼から答えがでることはない。

「あれ……? キヨヒコ……?」

……なにかおかしい。清彦の体が動かせない。

「ね、ねえ……キヨヒコ! なんで動かないの!?」

体を揺するが清彦の体はもう動くことはなかった……

以前のように心臓マッサージを試みてみたが、再びその心臓が動き出すことはなかった……

俺の心が答えを出す前に清彦の体は自分から俺の前から去っていった……

……心不全……あとでわかったが清彦の心臓には元々欠陥があったらしい。
クリスタへの愛を全て放出した清彦の体は満足そうな顔でその生涯を終えた……

もしかするとクリスタ……本来の彼女は俺の体の異変を気づいていたのかもしれない。

いずれくる清彦との別れ……それを感じたクリスタは自分の体を明け渡すことでその別れを阻止したかったのではないか?
クリスタの体と清彦の心は今ここにある……離れることない……
形は変わってしまったけれど確かに二人は一緒にいるのだ!

喪服を着た俺は荼毘にふされる清彦の肉体を前にクリスタの体とは決して離れないことを誓い、クリスタとしてのこれからの人生を再スタートさせた……

不思議とアレから、今まで以上にクリスタとして振る舞う事が楽になっていた。
家デートをした時に見せてもらったアルバムの、当時のクリスタの記憶も少しずつ“思い出せる”ようになっていき、パパとママとの会話もスムーズにできる。

学校だって、落ち込んでいる俺を慰めようと、クリスタの女友達が慰めてくれたりしてくれて、女同士の距離感に少しずつ慣れていく。
いつかちゃんとお礼とお返しをしなきゃ。たとえ俺がクリスタ本人ではないとしても。

「ねぇクリスタ、またため息つきそうな顔してる」
「あ、そ、そうなの? ゴメンね、ありがとタチハ」
「気にしないで。クリスタの顔はいつまでも哀しいままにさせて良いものじゃないからね。こんなに可愛いんだから。ね?」

ほっぺたに手を当てて、むにむにと弄ってくるのはクリスタの一番の友人で、元々「清彦」としてもクラスメイトであった太刀葉だ。

ちなみに俺の接触憑依は、意識的に行う物なので、こうして太刀葉が弄っていても、俺は憑依をしていない。
女の子同士のスキンシップを、ちょっとだけ楽しむだけの心の余裕も戻って来ていた。

意識的に接触憑依をコントロールできるようになったのも最近だ。
俺がクリスタとして生きるようになってからだ。
清彦の時は相手に直接触れれば自動的に、まさに強制的に触れた相手に憑依してしまったから。

……もしも俺がクリスタとなる前に能力が成長していたらと思うと……いや、仮定の話はやめよう。
今は俺が俺でありクリスタなのだから。

そう思い直した俺だが人の温もりがほしい気持ちがくすぶっていた。
だが他の男を……というのはまだまだ俺の心の準備ができていない。
さすがに「清彦」が亡くなってすぐというのは外聞的にも悪い。
……ここは「女同士」の太刀葉の「体」に慰めてもらうのはどうだろうか?

「ねぇタチハ。今日はもう少し一緒にお話ししていたいの。良いかな」
「勿論。クリスタのお誘いなら断る理由なんかないもの」

こういう時、距離の近さはありがたい。同時に任意での憑依が可能になった事で、ずっと手を繋ぐなどの行為が必要無くなった。

「じゃあ行きましょうか。お泊りとかでも良いよ?」
「いいの?」
「クリスタが元気になってくれるなら、なんでもするよ?」

太刀葉がそう言って、にっこり笑う。
クリスタのようなドイツ人としての美しさではなく、日本人としての愛嬌を持った笑みを見せる太刀葉は、これから起こる事なんて知る由もない。
…いきなりじゃなくて、今日はずっと「女の子同士」、お互いの意志を持ったままで過ごす事もできる。

強制的に憑依しないようになった事は、今となってはありがたい。

結局、太刀葉にはウチに来てもらうことになった。
太刀葉のご家族とはクリスタとして何回も会ってるけど今夜の目的を考えれば太刀葉だけと会いたい。

「クリスタ~きたよ~!」
「いらっしゃいませ、タチハ」

太刀葉と楽しい会話で時間は過ぎていく。
明日は日曜日だから時間をそこまで気にする必要はない。
ただ、今夜は太刀葉本人と肌をあわせて過ごしたい。
そのためにまず最初に……ちょっと……ちょっとだけ「太刀葉」としての時間をもらっちゃう!
全てはその後、太刀葉との親密な夜を過ごすために……

「そういえば今日クリスタのご両親どうしたの?」
「うん……今日は二人の結婚記念日なの。たまには一泊旅行でも行ったらって言ってみたの」
「温泉? 温泉よね! きっと!」

そんな会話の流れで一緒にお風呂に入ることになった。
狭い空間でかなり近い距離で女子二人の裸体が並ぶ。
太刀葉は「ふむ、ふ~ん?」というかんじで俺のークリスタの胸をジロジロ見てくる。
……と思ったら太刀葉の腕がクリスタの胸をつかみ、こねくりはじめた!

「やっぱりクリスタの胸は反則よね! 少し私によこしなさい!」
「ふわっ……! タ、タチハ! お風呂で暴れたら危ない……よ?」

まさか太刀葉から先制攻撃?とは……
だが、これはチャ~ンス!

俺は能力を解放し太刀葉の体を支配、リンクした!
久しぶりに他者の視点でクリスタの姿が目にうつる!
成功だ……今の時点の俺は俺でありクリスタであり太刀葉となった……!

「ふふ、クリスタ…」
「タチハも、もっとこっちに来て…?」

密着することで十分に接触したことで、手を繋いでいた時より自由に太刀葉の体を動かせる。
お互いの体を抱きしめ合いながら、温かいお湯の中で、お互いの体温を分け与え合う。

「ねぇタチハ、もっと抱きしめて…?」
「いいの? 清彦の奴がいなくなってから、そんなに経ってないのに」
「経ってないから寂しいの。今だけで良いから、ぬくもりが欲しいな…」
「…勿論よクリスタ。私で良ければいっぱい与えてあげる」

太刀葉の目で見るクリスタの瞳は、大抵の男なら魅了できるんじゃないかという程に潤んでいる。
事実、クリスタを狙っている男は他にもたくさんいるし、今は「清彦」が死んだから、という事実に打ちのめされている雰囲気の為、手を出されてはいないだけなのだ。

ぎゅっとお互いの体を抱きしめ合いながら、クリスタの目で太刀葉の顔を見ると、彼女の瞳もクリスタと同様に潤んでいる。

そしてどちらからともなく、唇を塞ぎ合った。

「ん、ちゅ、ちゅぅ…、んふ…」
「ふふ…、ちゅっ、ちゅぱ、ちゅる…」

キス同士で接触し合っている限り、憑依が解かれる事は無い。舌や唾液を絡ませあいながら、お互いの腕を体に絡めていく。
乳房を揉み、乳頭を摘まみ、腰を撫で、尻肉に指を沈み込ませ、恥部に指先が届く。

「「はぁぁ…!」」

愛撫で濡れ始めていた2人の膣は、すんなりと指を呑み込みだす。異口同音に喘ぎ声が溢れ出した。

「「クリスタ、タチハ、クリスタぁ、タチハぁ…」」

指を進ませ膣壁を擦り、陰核を撫でながら、相手の、自分の名前を呼び合う。
触れている個所が広いのか、能力が強くなってきたのか、理由はわからない。
けれどこうして相手の体を愛していく度に、どんどんと俺と太刀葉との境界線も曖昧になっていくようだった。

…………

「……チハ……タチハ……」
「……んあっ? あ、あれ? 私どうしたの?」
「よかった! タチハはお風呂でのぼせて倒れちゃったんだよ? だからお風呂じゃ危ないって言ったのに……」
「え? あ~そう……なんだ……ごめんクリスタ! あ、あれ? 私、パジャマ着てる?」
「ちゃんと体は拭いてから着せたから濡れてはいないはずだよ? 実物大の人形の着せ替えしてるみたいでちょっと楽しかったわ」
「……! は、はずかしい~! 私、全部クリスタにみられちゃったんだ……あ、だからかな? 夢かなんか見てたみたい……私とクリスタと凄いことやってた……」
「ん? 凄いこと?」
「いやいや! なんでも……うぅ……ねえクリスタぁ……こんなこと言うなんておかしい子って思うかもしれないけど……お願いがあるんだ……」
「なに? タチハのお願いなら聞いてあげるよ?」
「だったら……ゆ、夢の中のクリスタみたいに……私に……気持ちいいいことしてっ!」

俺は太刀葉の言葉に驚いていた。
発言の内容もそうだが、夢という形で朧気に先ほどの行為を覚えているという事を。

クリスタに憑依していた間、彼女は憑依中の事を覚えていなかった。
今こうしてクリスタの記憶を“思い出す”事ができても、憑依中に関する記憶は欠落したままだ。
だからその言葉に驚くと同時に、少し使用を控えなければならないか、とも考えていた。
仮にある程度記憶してしまえるようになったのなら、迂闊な使用ができないからだ。

「…どうしたのクリスタ? もしかして、気持ちいいことするのは嫌なの?」
「うぅん、そうじゃないよ。…嫌じゃないけど、私でいいの?」
「クリスタでいいんじゃない、クリスタとしたいの。夢の中に出てきて、あんなに優しく気持ちよくしてくれて…。
思い出して来たら、ドキドキが止まらなくなっちゃって…。だからねぇ、お願い…」

太刀葉は服を脱ぎ、先ほどと違い自らの意志で、俺の方に近づいてきた。

俺の目の前で太刀葉がなにかを期待するようにドキドキしたかんじで顔を赤らめている……
これって……かつて「クリスタ」が「清彦」に見せていた表情に似ている?

「クリスタ……ごめん、我慢できないの……」

「タチハ……わかったわ」

意を決すると俺は先ほど太刀葉となっていた時にかんじたポイントポイントを攻めてみる。

「はうっ! はぁん! クリ……スタ……やっぱり凄い! 素敵!」

快感の喜びで興奮したのか、太刀葉は突然キスをしてきた!

「……んぐっ! タ、タチハ?」

「なんで? 私こんなの知らなかった! クリスタと絡み合うのががこんなにも素敵だったなんて!」

「1人でシてた時より、ずっと良いの。だからねぇクリスタ、もっとシましょう? 今度は私がシてあげるから…」

そのまま押し倒され、太刀葉と攻守逆転してしまう。

「あぁん! やっ、んぅ、タチハぁ…!」

不思議と太刀葉の手の動きは、俺の性感を的確に捉えている。
初めて「他の女性の手」でクリスタの体を弄られているのに、それ以上の感覚があるのだ。

「うひゃぅ! タチ、ハ…、そこ、だめぇ…」
「私もそうだけど、もうこんなに濡れてるじゃない…。ダメだったら、こうならないでしょ?」

太刀葉は俺の股間に、自分の股間を合わせようとしている。女性器同士をこすり合わせるつもりなのだ。
女としても初めての体験と、男に挿れられるんじゃないのなら良いのかな、という思いがごちゃごちゃになっている所に、女性器同士が水音を立てて繋がりあう。

「あぁん!」
「はう…っ!」

憑依している時と違い、それぞれの口は違う喘ぎ声をあげていた。

…………

「クリスタごめん、やりすぎちゃった!」

一夜あけ、ベトベトの状態のままの眠りから覚めた俺に太刀葉が謝ってきた。

「親友のクリスタ相手にこんなことしちゃうなんて……どうか嫌いにならないで……」

「安心して、タチハを嫌いになったりしないよ? 可愛い顔も見れたし」

「う~ん……はずかしいよぉ……でもクリスタをもっと大好きになっちゃった……よかったらまたいつか……シヨ?」

「あはは……」

これを境に太刀葉は俺にベタベタするようになってきた。
親友であり親友以上になにかになった感じだ。
……だが、一つ思うことがある。
女同士なら……と軽く考えていたけど、女から好かれる、女を愛す……ってのは「クリスタ」以外の女と愛しあうって意味にならないか……?
それってもしかするとこれ以上ない「クリスタ」に対する裏切りにならないだろうか?
そしておかしな性癖に変えてしまった太刀葉への罪悪感もある。

だが、そういう物思いにまた新たな転機を迎えた。
太刀葉の従兄・敏明と出会い、その目と目があった瞬間……俺の……クリスタの心臓がドキッ!と鳴った……!

最初は勘違いだと思っていた。太刀葉の家に行った時にイチャイチャされているのを見られたからだ。
会釈と軽い挨拶をした後で改めて顔を思い返すと、それでもやはり、驚きとは違った鼓動が早くなる。

少し線は細いけど、優しくて、芯も強くて、敏明には「男性」を意識する。
しばらく太刀葉の家にいるらしいが、何度も会えばこの想いを自覚してしまいそうだ。
鏡の前の「クリスタ」に1人、誰に言うでもなく呟く。

「…なぁクリスタ。俺はどうしたら良いんだろうな。俺は男なのに、アイツを好きになって来てるんじゃないかって思うんだ。
敏明に会い続けていいのか、太刀葉に責任を取ればいいのか、わからないんだ。
こんな事、他の誰にも言えないよ…」

もしかしたら俺は「清彦のフリをしたクリスタ」で、本当に清彦本人じゃないのなら、こんなに悩まなくて良かったのかもしれない。

「…ここに、他の男のモノを、受け入れてもいいのかな…」

最後のセックスで、命と引き換えに大量に精液を注いだ子宮の辺りを撫でる。
決断はまだ、できていない。

……そういう戸惑い、迷い、いや……「想い」が胸の中で段々と大きくなっていったある日、太刀葉から新しい服を買いに行こうと誘われた。気分転換にもなるかなと思い一緒に行くのを承諾した。

店を回って二人でどれが似合う? これなんていいんじゃない? ……と楽しく服を見て回った。

……自分でも思うが、今の俺は完全に「女の子」してると思う。もし俺の心が以前通りの男の「清彦」だったら恥ずかしくて途中で逃げたに違いない。……でも今は楽しい! この可愛い服を「私」が着てきたらあの人はどんな……いや……あれ……?

…………

……それは帰りに喫茶店に寄って、甘いものを食べ終わったあたりだった。

「……ねえ、クリスタ。 最近感じることがあるんだけどね?」

「え? タチハ、何?」

「クリスタって……敏明さんのこと好きなんでしょ?」

隠しようもない位に驚いた。だってそれは、さっき買い物をして思いついてしまった事…。
可愛い服を着て、敏明に見せた時の反応を知りたいという、どうしようもない好意を突かれてしまったのだから。

「…、う、ん……」

自覚する事で、動揺が強くなる。俺の中で「私」が強くなっていく。

「あーやっぱりそうなんだー…。最近なんだかクリスタが敏明さんの事を見てる事が多いなーって思ってね。
もしそうならちょっと嬉しいような、残念なような? 不思議な感じ」
「嬉しいって…、どうして?」

内心の動揺を隠しながら、太刀葉との会話を続ける。彼女の顔も少しばかり曇りながら、応えてくれる。

「だってクリスタ、清彦が死んだ事をずっと引きずってる感じだったし。哀しい顔をずっと…っていうのは、見てるこっちも辛いからさ。
でも残念だなー。クリスタをそういう意味で笑顔にするのは私がしたかったんだけどなー。敏明さんならしょうがないかなー」

最後のケーキをフォークに刺して、くるくると弄りながら太刀葉はそれを口に含んで、自分の言葉を打ち切った。

その後、俺たちは解散してそれぞれ家路につくことになった。

「ホントは一回くらいシたかったんだけど、クリスタがそんな顔してたらさ。さすがにちょっと時間も置くよ」

とのことで、太刀葉は俺を解放してくれた。
それで良いのか悪いのかはよくわからない。1人になったことで、頭の中で渦巻く疑問と不安が大きくなりそうなのだ。

太刀葉は言った。“清彦が死んだ”と。そうだ、確かにそうだ。自覚しているつもりはあったが、確かに「俺」は死んでしまったのだ。
今はクリスタの体にしがみついているだけの様なもの。清彦じゃない。純粋なクリスタでもない。

勿論清彦としての記憶は持ち合わせている。でもクリスタとしての記憶も思い出せる。
どちらなのだろう。その結論は一切出ないまま、ふらふらと帰り路を歩いていたところ、

「クリスタさん? 気分が悪そうだけど、どうかした?」

聞きたかったようなそうじゃないような声に振り向くと、そこには敏明がいた。

「…やっぱり。電話で太刀葉が、クリスタの様子が変だって心配してたから探してたんだよ。…どうしたんだい?」

純粋な好意で俺を探していたのだろう。顔を覗き込んでくる敏明。
俺は…、

その近づく顔を見て俺の顔は真っ赤になっていく……
ダメだ! こんな顔を敏明さんに見せるわけには……!
あれ……? 足が……!

「……危ないクリスタさん! 」

焦って逃げ出そうとした俺は足がうまく動かず倒れかけた。
それに気づいた敏明さんがとっさに倒れる俺の前に……ム……!

「あ……」

ちょうど俺は……敏明さんを押し倒す形になり……
向かい合った顔と顔……口と口とがピタリと重なっていた……

「わ……! ご、ごめんクリスタさん! わざとじゃないんだ! でも、ごめん!」

「……はい……わかってます……私を助けてくれたんですよね? 敏明さんは悪くないです」

「う~んでも乙女の唇を……やっぱり悪いなあ……ん~ちょっとお詫びしたいからもし時間あるなら夕食をどこかでご馳走したい……けど……どうかな?」

「え……時間はありますけど……それだと私のほうが悪いような……え? はい……それで敏明さんがスッキリするならお願いします」

「よかったぁ……じゃあさっそく行こうか」

「はい」

……本当はわざとでもよかった……そして彼は乙女と呼んだけどいろんな意味で乙女とはいえない自分が悲しい……
でも……それでも……

敏明さんに連れていってもらったのは、穴場のような飲食店だった。
テーブルは多くて4つ。人数はそれ程入らないけど、だからこそ雰囲気の静かなお店。

「最近発見してね。最初は1人だったんだけど、次に来るときは太刀葉辺りと一緒かなって思ってた所だったんだ。
でも、どうしてかクリスタさんを連れていきたいって思ったんだ」

買い物の荷物を持ってもらいながら、席に通される。扱いは完全に女性のそれだ。
…当然と言えば当然なんだけど。

メニューを見て、チェーンのレストランとは全然違う注文を頼んで待っている間でも、敏明さんは俺のことを言葉にしなくてもしきりに気にしてくれていた。
しっかりとした会話をしたのはこれが初めてだけど、確かに「クリスタ」が惚れるのもわかる。優しいし、いい男だ。ほんのちょっぴり嫉妬もした。

不思議と馴染みのある夕食を食べ終えて、疑問に思っていた事を口にした。

「太刀葉から聞いて探してもらった事は、ありがとうございます。でも、気になるんです。
…敏明さんは、どうして「私」に優しくしてくれるんですか?」

そう聞くと敏明さんは少し考えたあと……

「う~ん、優しい……か……どうなんだろう? 僕は自分が優しい人間とは思えないんだ」
「……? どうしてですか? 優しいですよ? 敏明さんは」
「確かにクリスタさんが心配で探しにきたはのは確かだよ。 けど……うん、これはハッキリ言葉にしたほうがいいか……」
「?」

なにか決心した感じで敏明さんが俺を見つめて……

「僕は……クリスタさんが好きなんだ」
「……え……?」

え?……え? 今、敏明さんはなんて言った……?

「……事情は太刀葉から聞いてるよ。悲しいことがあったってことを……その君にたいしていきなりこんなことを言う僕は優しいというより酷いやつな気がするんだ」
「……」
「さっきの唇の件は確かに偶然だった……だったけど僕は内心ではその偶然が嬉しかったんだ。しかもこれが偶然じゃなく普通にできたらいいなって……ね? 酷いやつだよね?」
「私も……」
「ん?」
「私も偶然じゃなかったらいいなって……そう思いました……」

少し言葉にするのはためらわれたけれど、そう考えてしまったのは確かだ。
「私」も敏明さんに対して想う気持ちは誤魔化しようがない程に大きくなってきているのだから。

「それと…、遅くなってしまいましたけど、さっき倒れそうになっている所を助けてもらって、ありがとうございました」

深く頭を下げて、ずっと忘れていたお礼を伝える。顔をあげると敏明さんは戸惑っているような顔をしていた。

「あ、いや、そんな…、気になってる女の子が倒れそうになってたら当然と言うか…、その後にしちゃった事を考えると言われる筋が無いというか…」
「それでもです。アレは偶然って事にしないと、キリが無くなっちゃいますよ?」
「うん、それもそうか…」

そうしてお互い、ぎこちなくだけど笑った。

…少しだけスッキリした頭で、お店を後にする。
荷物は敏明さんから受け取って、これで解散しようとした所で、敏明さんから話をされた。

「…ねぇクリスタさん。機会があれば、また会ってもらって良い、かな? できれば連絡先も…、あぁいや、なんでも…」
「……はい。まだ恋人とか、付き合うとかではないですけど、敏明さんが良ければ」

くすっと笑って手を差し出す。それを敏明さんが手に取ってくれた。
……その手を基点に、俺は憑依能力を…、

使用したが…憑依できなかった。

何故!?

何故敏明さんには憑依できない?

そういえばこの接触憑依能力、男に対して使ったことがなかった。

異性にしか最初から効果がなかったのかも知れない。

……というか私は今なにをしようとした……?
無意識に……敏明さんを……「俺」にしようとした?
敏明さんを「俺」にしてなにをする?
まさか「俺」は敏明さんとして「私」クリスタを愛そうとした……?
なんだろう……凄まじいおぞましさを感じる……自分自身に!
「クリスタ」相手にはやむを得なかった……
太刀葉相手はちょっとしたスキンシップのためだった……
でも敏明さんをどうして今……なんでなんでなんで!?
「私」は……「俺」は……「私」は……いったい「何」!?

「大丈夫!? クリスタさん!」

しゃがみこんだ私に敏明さんがかけよってきた……

抑えようとしていたものが溢れ出てしまう。
泣いているのだと気付いたのは、頬が濡れていると理解した瞬間からだった。

もう、私は自分がわからない。
「清彦」なのか「クリスタ」なのか、それとも「どちらでもない別の誰か」なのか。

敏明さんは何もわからず、だけどただ静かに支えてくれている。
今はその胸の中で泣き続けることしかできなかった。

ふいに敏明さんの手が私の顎を持ち上げが顔を上に上げられた。
敏明さんが私の顔を見つめている……

……?

次の瞬間……私の顔と敏明さんの顔の距離がゼロになった。
より正確に言えば……二人の唇が重なっていたのだ……

……?……?……?……!?

その意味を混乱している私はすぐに理解はできなかった。
何故か知らないけれどいつのまにか私と敏明さんが……キス……をしている……?

その驚愕の事実に私は呆然となり……固まってしまった……

されるがままのキスだが、なぜか悪い気はしなくて、私はそれを次第に「嬉しいこと」だと認識していった。
たとえどんな理由であったとしても、敏明さんとキスができた。

私の体から力が抜けていくのと同時に、私の体を抑えている敏明さんの腕からも、込めている力が抜けていった。
頬に一筋の涙が落ちる。だけどそれは悲しいからじゃない。

少しして、唇同士が離れた。

「あ…」

私はその時、気持ち悪さとかではなく、もっとしていたい、と確かに考えてしまっていた。

「クリスタさん……やっぱり君は……」

敏明さんはなにやら考え込んでいたが、キスされてドキドキしていた私にその時間を気にする余裕はなかった。

「……予定は変更。今夜は僕と一緒にいてくれないかな?」

敏明さんはそう言うとスッと手を私の前に出した。
私はその手をとると頷いて一緒に歩き出した……
この道……歩く先にある建物を私は知っている。
かつて私が「彼女」を連れていった道……
そこに私は「彼」に連れられて向かっている。

ここから私の「クリスタ」としての物語は再び始まったのだ……
現在の部分までまとめてみました。
タイトルは仮となっているので、リレーを始めた方の要望がありましたら、そちらに変更いたします。
たちは板のいちきよひこ
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