中学2年生だった少女も、10年経てば立派な大人だ。
立花ひかりは、かつてピュアティアの一員「ピュア・ルーナ」として帝国と1年間戦った。
最終決戦の後は普通の生活を送り、24歳の今は夢であった教員として働いていた。
今日も遅くまで授業の準備に追われ、すっかり暗くなった町を帰る。
しかし、いつもの帰り道はどこか様子がおかしい。
異様なまでに人気がない……。
刹那、背後に気配を感じて振りむいたひかりの目に飛び込んできたのは、
「お久しぶりですね、ピュア・ルーナ。いや、今は立花先生とお呼びした方がよろしいかな?」
「あなたは……!なぜ生きてっ……!」
10年前倒したはずのホーロヴォス帝国の幹部が一人、宮廷道化師のアザワラッハであった。
******
魔法少女ピュアティア・アフター ~~敗北!?闇に堕ちる戦士たち~~
第1話
「月蝕!?乗っ取られるピュア・ルーナ!」
******
「チェンジマジック!ピュア・ルーナ!」
ひかりは約10年のブランクを感じさせない速度でピュア・ルーナに変身し、臨戦態勢をとる。
「やっ、闇夜を照らす、月輪の戦士……ピュア・ルーナ……」
「……ふむ、さすがに10年も前の衣装では無理があr「うるさい!」」
羞恥と怒りで頬を紅潮させたひかりがアザワラッハの言葉に割って入る。
当時の衣装も口上も似つかわしくないのは本人が一番わかっているのである。
「おほん……アザワラッハ、あなたは私たちが倒したはずでは?」
「ええ、あの時は見事にしてやられました。しかし私は皇帝の命により、命からがら逃げだして今日まで潜伏しておりました」
「目的はなんです?」
「皇帝の復活と帝国の再興。そしてあなた方『ピュアティア』の完全なる排除。そのために……」
「まずはあなたを頂戴に上がりました」
「なんですって……?」
復活、復興、完全なる排除。
不穏な言葉がいくつも流れてきたが、最後の頂戴というアザワラッハの言葉に悪寒が走る。
咄嗟に重心を後ろに下げた様子を見て道化師は感嘆の声をあげる。
「最後の言葉に反応するとはお見事。ですが10年ほど遅い」
アザワラッハが手の平を向けると、ピュア・ルーナは糸に紡がれた人形の様に動きを止めてしまう。
「な!?これはバインド魔法!?無詠唱で私がレジストできないレベルの!?」
「ふふっ、衰えましたね。月輪の戦士よ、今宵が新月であることをお忘れか?」
敵の嘲りにピュア・ルーナは顔を歪ませる。
闇夜を照らす月が隠れる新月の夜は、月輪の戦士の力が最も弱まる時間なのだ。
「くっ……私は屈しません……!」
しかし道化師はその言葉を無視して胸を、腕を、腹を、足をすりすりとなで始める。
「10年前と違って肉付きのいい……しかし健やかに美しく育った……素晴らしい肉体だ……!」
「ひっ……!」
動けない彼女の身体を確かめるように触りながらぶつぶつと呟くアザワラッハの様子にピュア・ルーナは嫌悪感と怯えを露にする。
「フフ……肉体を滅ぼされ、魔法の糸を依代に怨念となってこの世にしがみついて10年……ついに復讐の時は来た」
かつてのピュアティアの一員に向けられた手は、指先から解けるように闇夜のように黒い糸に変じ、足元から彼女に絡みつく。
やがてその糸は豊満なボディラインがくっきりと出る、ぴったりとしたつやつやのスーツを形作り始める。
「無理に脱ごうとしない方がいいですよ?既に皮膚と一体化し始めていますからね」
そうしてアザワラッハが身体を全て糸に変える頃には、ピュア・ルーナの全身は彼で出来たスーツで覆われていた。
彼女は自身を縛っていた魔法が解けていることに気づくが、にもかかわらず身体が自分の意思で動かないことにも驚愕する。
「肉体を表面から乗っ取るのはなかなか楽しい経験でしたよ」
左手でその重みを味わうように胸を持ち上げ、右手で奥の子宮を感じように腹を擦りながら口が勝手に動き始める。
「あなたの体内に魔力を込めた糸を張り巡らすことで肉体の主導権を掌握しました。さて、次はどうしましょうか。夜は長いですよ……」
(これがアザワラッハの正体!?魔法生物の一種だったの!?)
「ふふっ、ホーロヴォス帝国復興の狼煙としてこの体で街を破壊しましょうか」
「それとも復讐として貴女の親しい者を一人残らず血祭りに上げましょうか?」
「どちらも魅力的で悩みますねぇ」
アザワラッハに操られた体が自身を嬲るように言葉を紡ぐ。
が、それはピュア・ルーナが覚悟を決めるには十分な内容だった。
「ピュア・ルーナ、貴女はどちらが好みです?好きな方を選ばせて……ぐ!?」
獲物を前に舌なめずりをしていたアザワラッハだが、
ピュア・ルーナの全身から放射され始めた魔力を受けて呻く。
しかし、そんな彼女の抵抗もアザワラッハを引き剥がすには十分なものではなく。
そして、それが命取りになった。
「なっ……!ん、んんっ、ひゃ、やめぇ……」
ピュアティアとはいえ変身しなければ浄化の魔力は使えない。
そして、変身は意識を失うほどの衝撃で解ける。
故に、アザワラッハはぐにぐにとスーツ状の肉体を変形させ、ピュア・ルーナを快楽責めすることにした。
強制絶頂による変身解除、その隙に立花ひかるを完全に乗っ取り、その全てを奪い去るために。
(このまま続けてもいいのですが。時間を掛けても面倒です。終わらせますか)
アザワラッハは体の一部を糸状に戻すと、ピュア・ルーナの耳から体内へ侵入する。
「ひっ!?なにをぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
脳の快楽中枢を直接弄られたピュア・ルーナは歓喜の悲鳴をあげる。
「や、やめ、おほっ♥️」
(さぁ、その体を我らが永遠皇帝ノットリ―に捧げるが良い!)
脳に繋がっている糸からアザワラッハの思考が流れてくる。
だが、快楽の坩堝に溺れている彼女には、宿敵の名が出てくる意味を理解する余裕はなかった。
(ごめん、みんな私もう……)
「あ、いくっ、いっちゃ、~~~~~~♥️」
脳裏に浮かぶ仲間たちの顔に謝罪すると、ピュア・ルーナはこみ上げる絶頂に身を任せる。
(終わりましたか。では迎えに行きましょう。)
絶頂により立花ひかるに戻った体へアザワラッハは浸透するように潜り込む。
「あっ、あっ、あっ」
小刻みに痙攣するだけで無抵抗のまま敵の侵略を受け入れる立花の体。
そして、彼女の体を覆っていたスーツが全て溶け込んだ時、異変は起こった。
「あ、うっ……。だめ、いやぁぁぁぁ。」
ひかるは悲鳴のようなうめき声をあげ身もだえ始める。
同時に下腹部、ちょうど子宮が位置する場所に怪しい紋様が浮かび上がる。
それはホーロヴォス帝国を象徴する国章の形と酷似していた。
この瞬間をもって、立花ひかりの肉体は、ピュア・ルーナとしての力は、永遠に彼女のものではなくなった。
闇に染め上げられた身体は、もはや不可分なまでに一体化したアザワラッハ、そして彼が忠誠を誓う皇帝と帝国の所有物となったのだ。
紫色に鈍く輝く紋章をいとおしそうに撫で回しながら、アザワラッハはひかりの口で呟く。
「おお……ついに、ようやく、再び肉体を得ることが出来ました……。おっと、忘れないうちに仕上げと行きましょう」
「出でよゼツタヤース!ホーロヴォスの名のもとに!」
刹那、ひかりの心は身体から弾き出され、何処からともなく現れた黒いもやに包まれる。
その中で増幅させられた絶望や後悔といったネガティブな感情に呑まれた心を核として、ホーロヴォスの侵略兵器が産み落とされる。
「ゼツタヤース!!」
強い心の持ち主から生まれたゼツタヤースは強大な闇の力を有する。
ピュアティアであるひかりの心から作られたゼツタヤースも例に漏れず、数メートルの巨大な姿をしている。
怪物はおもむろにひかりを掴むと、一口で飲み込んでしまう。
だが、今度は次第に小さくなっていく……内側からアザワラッハに飲み込み返されているのだ。
闇の支配者たる彼にとって、闇に染まった心を取り込むことなど容易い。
少々回りくどいが、こうすることでアザワラッハはひかりとの完全なる一体化を図ったのだ。
……やがて立花ひかりが心身ともに掌握され切ったあとには、白くまぶしい裸体を惜し気もなく晒す、堕ちた光の戦士が残った。
「ふふっ、心も身体も混ざりきってしまいました♥️私は立花ひかり、闇夜に舞う新月の道化師。そして全ては、帝国の復活と栄光のために……」
―――この世界から次元を隔てた、遠い異世界。
この地を治めるクラルス王国の女王は、何かに気づいたようにふっと顔を上げる。
「我らの月が、ひかりさんが、闇の手に堕ちた……?」
ピュアティアの反応が1つ消え、代わりに巨大な闇の心が生まれた。
これは、かつて倒したはずの帝国が復活する前触れなのではないか。
「事態は一刻を争う。……すぐに妖精たちを集めてください。せめて、ほかの皆様に危機を伝えなければ……」
こうして、クラルス王国もまた再び地球への『穴』を繋げようと動き始めた。
だが、強烈な光が濃い影を産むように、堕ちた光は強大な闇を生じさせる。
そう、アザワラッハの最終的な目標は、最初からクラルスの女王・ルクシエを墜とし、皇帝の器とすることだったのだ。
しかし彼女は、永遠皇帝ノットリー復活のためにおびき寄せられている事実に気づくことはなく。
こうして、「元」ピュアティアたちによる世界の終わりが始まったのである。
(第1話・おわり)
立花ひかりは、かつてピュアティアの一員「ピュア・ルーナ」として帝国と1年間戦った。
最終決戦の後は普通の生活を送り、24歳の今は夢であった教員として働いていた。
今日も遅くまで授業の準備に追われ、すっかり暗くなった町を帰る。
しかし、いつもの帰り道はどこか様子がおかしい。
異様なまでに人気がない……。
刹那、背後に気配を感じて振りむいたひかりの目に飛び込んできたのは、
「お久しぶりですね、ピュア・ルーナ。いや、今は立花先生とお呼びした方がよろしいかな?」
「あなたは……!なぜ生きてっ……!」
10年前倒したはずのホーロヴォス帝国の幹部が一人、宮廷道化師のアザワラッハであった。
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魔法少女ピュアティア・アフター ~~敗北!?闇に堕ちる戦士たち~~
第1話
「月蝕!?乗っ取られるピュア・ルーナ!」
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「チェンジマジック!ピュア・ルーナ!」
ひかりは約10年のブランクを感じさせない速度でピュア・ルーナに変身し、臨戦態勢をとる。
「やっ、闇夜を照らす、月輪の戦士……ピュア・ルーナ……」
「……ふむ、さすがに10年も前の衣装では無理があr「うるさい!」」
羞恥と怒りで頬を紅潮させたひかりがアザワラッハの言葉に割って入る。
当時の衣装も口上も似つかわしくないのは本人が一番わかっているのである。
「おほん……アザワラッハ、あなたは私たちが倒したはずでは?」
「ええ、あの時は見事にしてやられました。しかし私は皇帝の命により、命からがら逃げだして今日まで潜伏しておりました」
「目的はなんです?」
「皇帝の復活と帝国の再興。そしてあなた方『ピュアティア』の完全なる排除。そのために……」
「まずはあなたを頂戴に上がりました」
「なんですって……?」
復活、復興、完全なる排除。
不穏な言葉がいくつも流れてきたが、最後の頂戴というアザワラッハの言葉に悪寒が走る。
咄嗟に重心を後ろに下げた様子を見て道化師は感嘆の声をあげる。
「最後の言葉に反応するとはお見事。ですが10年ほど遅い」
アザワラッハが手の平を向けると、ピュア・ルーナは糸に紡がれた人形の様に動きを止めてしまう。
「な!?これはバインド魔法!?無詠唱で私がレジストできないレベルの!?」
「ふふっ、衰えましたね。月輪の戦士よ、今宵が新月であることをお忘れか?」
敵の嘲りにピュア・ルーナは顔を歪ませる。
闇夜を照らす月が隠れる新月の夜は、月輪の戦士の力が最も弱まる時間なのだ。
「くっ……私は屈しません……!」
しかし道化師はその言葉を無視して胸を、腕を、腹を、足をすりすりとなで始める。
「10年前と違って肉付きのいい……しかし健やかに美しく育った……素晴らしい肉体だ……!」
「ひっ……!」
動けない彼女の身体を確かめるように触りながらぶつぶつと呟くアザワラッハの様子にピュア・ルーナは嫌悪感と怯えを露にする。
「フフ……肉体を滅ぼされ、魔法の糸を依代に怨念となってこの世にしがみついて10年……ついに復讐の時は来た」
かつてのピュアティアの一員に向けられた手は、指先から解けるように闇夜のように黒い糸に変じ、足元から彼女に絡みつく。
やがてその糸は豊満なボディラインがくっきりと出る、ぴったりとしたつやつやのスーツを形作り始める。
「無理に脱ごうとしない方がいいですよ?既に皮膚と一体化し始めていますからね」
そうしてアザワラッハが身体を全て糸に変える頃には、ピュア・ルーナの全身は彼で出来たスーツで覆われていた。
彼女は自身を縛っていた魔法が解けていることに気づくが、にもかかわらず身体が自分の意思で動かないことにも驚愕する。
「肉体を表面から乗っ取るのはなかなか楽しい経験でしたよ」
左手でその重みを味わうように胸を持ち上げ、右手で奥の子宮を感じように腹を擦りながら口が勝手に動き始める。
「あなたの体内に魔力を込めた糸を張り巡らすことで肉体の主導権を掌握しました。さて、次はどうしましょうか。夜は長いですよ……」
(これがアザワラッハの正体!?魔法生物の一種だったの!?)
「ふふっ、ホーロヴォス帝国復興の狼煙としてこの体で街を破壊しましょうか」
「それとも復讐として貴女の親しい者を一人残らず血祭りに上げましょうか?」
「どちらも魅力的で悩みますねぇ」
アザワラッハに操られた体が自身を嬲るように言葉を紡ぐ。
が、それはピュア・ルーナが覚悟を決めるには十分な内容だった。
「ピュア・ルーナ、貴女はどちらが好みです?好きな方を選ばせて……ぐ!?」
獲物を前に舌なめずりをしていたアザワラッハだが、
ピュア・ルーナの全身から放射され始めた魔力を受けて呻く。
しかし、そんな彼女の抵抗もアザワラッハを引き剥がすには十分なものではなく。
そして、それが命取りになった。
「なっ……!ん、んんっ、ひゃ、やめぇ……」
ピュアティアとはいえ変身しなければ浄化の魔力は使えない。
そして、変身は意識を失うほどの衝撃で解ける。
故に、アザワラッハはぐにぐにとスーツ状の肉体を変形させ、ピュア・ルーナを快楽責めすることにした。
強制絶頂による変身解除、その隙に立花ひかるを完全に乗っ取り、その全てを奪い去るために。
(このまま続けてもいいのですが。時間を掛けても面倒です。終わらせますか)
アザワラッハは体の一部を糸状に戻すと、ピュア・ルーナの耳から体内へ侵入する。
「ひっ!?なにをぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
脳の快楽中枢を直接弄られたピュア・ルーナは歓喜の悲鳴をあげる。
「や、やめ、おほっ♥️」
(さぁ、その体を我らが永遠皇帝ノットリ―に捧げるが良い!)
脳に繋がっている糸からアザワラッハの思考が流れてくる。
だが、快楽の坩堝に溺れている彼女には、宿敵の名が出てくる意味を理解する余裕はなかった。
(ごめん、みんな私もう……)
「あ、いくっ、いっちゃ、~~~~~~♥️」
脳裏に浮かぶ仲間たちの顔に謝罪すると、ピュア・ルーナはこみ上げる絶頂に身を任せる。
(終わりましたか。では迎えに行きましょう。)
絶頂により立花ひかるに戻った体へアザワラッハは浸透するように潜り込む。
「あっ、あっ、あっ」
小刻みに痙攣するだけで無抵抗のまま敵の侵略を受け入れる立花の体。
そして、彼女の体を覆っていたスーツが全て溶け込んだ時、異変は起こった。
「あ、うっ……。だめ、いやぁぁぁぁ。」
ひかるは悲鳴のようなうめき声をあげ身もだえ始める。
同時に下腹部、ちょうど子宮が位置する場所に怪しい紋様が浮かび上がる。
それはホーロヴォス帝国を象徴する国章の形と酷似していた。
この瞬間をもって、立花ひかりの肉体は、ピュア・ルーナとしての力は、永遠に彼女のものではなくなった。
闇に染め上げられた身体は、もはや不可分なまでに一体化したアザワラッハ、そして彼が忠誠を誓う皇帝と帝国の所有物となったのだ。
紫色に鈍く輝く紋章をいとおしそうに撫で回しながら、アザワラッハはひかりの口で呟く。
「おお……ついに、ようやく、再び肉体を得ることが出来ました……。おっと、忘れないうちに仕上げと行きましょう」
「出でよゼツタヤース!ホーロヴォスの名のもとに!」
刹那、ひかりの心は身体から弾き出され、何処からともなく現れた黒いもやに包まれる。
その中で増幅させられた絶望や後悔といったネガティブな感情に呑まれた心を核として、ホーロヴォスの侵略兵器が産み落とされる。
「ゼツタヤース!!」
強い心の持ち主から生まれたゼツタヤースは強大な闇の力を有する。
ピュアティアであるひかりの心から作られたゼツタヤースも例に漏れず、数メートルの巨大な姿をしている。
怪物はおもむろにひかりを掴むと、一口で飲み込んでしまう。
だが、今度は次第に小さくなっていく……内側からアザワラッハに飲み込み返されているのだ。
闇の支配者たる彼にとって、闇に染まった心を取り込むことなど容易い。
少々回りくどいが、こうすることでアザワラッハはひかりとの完全なる一体化を図ったのだ。
……やがて立花ひかりが心身ともに掌握され切ったあとには、白くまぶしい裸体を惜し気もなく晒す、堕ちた光の戦士が残った。
「ふふっ、心も身体も混ざりきってしまいました♥️私は立花ひかり、闇夜に舞う新月の道化師。そして全ては、帝国の復活と栄光のために……」
―――この世界から次元を隔てた、遠い異世界。
この地を治めるクラルス王国の女王は、何かに気づいたようにふっと顔を上げる。
「我らの月が、ひかりさんが、闇の手に堕ちた……?」
ピュアティアの反応が1つ消え、代わりに巨大な闇の心が生まれた。
これは、かつて倒したはずの帝国が復活する前触れなのではないか。
「事態は一刻を争う。……すぐに妖精たちを集めてください。せめて、ほかの皆様に危機を伝えなければ……」
こうして、クラルス王国もまた再び地球への『穴』を繋げようと動き始めた。
だが、強烈な光が濃い影を産むように、堕ちた光は強大な闇を生じさせる。
そう、アザワラッハの最終的な目標は、最初からクラルスの女王・ルクシエを墜とし、皇帝の器とすることだったのだ。
しかし彼女は、永遠皇帝ノットリー復活のためにおびき寄せられている事実に気づくことはなく。
こうして、「元」ピュアティアたちによる世界の終わりが始まったのである。
(第1話・おわり)