支援図書館(η)

とある会社に就職した場合

2020/01/06 13:11:58
最終更新
サイズ
60.22KB
ページ数
1
閲覧数
10802
評価数
3/55
POINT
2740
Rate
9.88

分類タグ

就職は今や買い手市場……って誰が言った? 絶対にデタラメだろ。
そうだったらどうして俺はこどことく選考に落ち続けているのだ?
果たしてこれで何十社目か。今日もまた「活躍お祈りしています」なメールが届いたし。
それにしてもどうして採用担当者は直球で「あんたはいらないです」と言わないか。「お祈り」なんてかえっていやらしくないか?
いかん、落ち続けているとあらゆることに対してひがんでしまう。気持ちを切り替えよう。
たとえ採用試験に落ち続けていても、卒業が間近であっても、焦りは禁物だ。
そうだ焦ってはいけない、焦っては……

そう考えていたのに、やっちまった、かな?
どこでどうこの会社に応募してしまったのか、よく覚えていない。
うん、多分ネットの力だ。採用サイトの力だ。
俺が応募してしまったのはちょっと特殊な会社だった。
何が特殊って? その会社の事業内容はアダルトグッズやエロ下着の開発、販売。
よーするにアッチ系の会社だった。
いやホント、どうしようかと思ったよ。でもまあ応募しちゃったし。
どーせダメだろ。と思っていたら……まさかの合格通知。どうしよ。

他に決まらなかったから仕方ないじゃん。けど家族に説明できないなぁこれ。
なんて説明しようか? 夢を売る会社? ダメだな。
まあいいや、とりあえずそこそこいい会社に就職したよ、の一言で。

けど事実、条件はすごくいいんだよねぇ。
給料はそこそこだけど、残業なし、福利厚生充実、社員寮もあるという。
社員寮って人間関係めんどくさいかなーって思ったけど、ある程度お金貯めたいからいいかな?
何せそこに住んでいれば実質家賃かからないみたいだし。
これだけ条件が良かったら文句ないでしょ。







そんなこんなで今日から入社です。
別に4月一斉入社ってわけじゃないらしい。月途中だけど引っ越し準備出来次第入社ってことらしい。
まあ大学はとっくに卒業したし、学生時代のアパートはとっとと引き払ったし。
他のやつらみたいに卒業旅行的なものも予定ないし、彼女なんていない……別に悲しくないもんっ!
して、荷物は大した量じゃない。段ボールで何箱かってレベル。
引っ越し業者も使わず、社員寮には普通の宅配で送った程度。
家具とかもそろっているからありがたい。生活必要品はわずかでよさそうだ。
で、本日はその会社でオリエンテーションというわけ。

「高宮清彦さんですね? 私は人事担当の葛原です」
「は、はいっ。よろしくお願いいたしますっ!」



人事担当の葛原さんがにっこり微笑んで俺は緊張しつつも頭を下げる。
この人、これまたすごい美人。
びしっと決めたレディーススーツ、ぴったりの服装が葛原さんのプロポーションの良さを引き立てている。
ストッキングにつつまれ、すらっとした美脚ラインも完璧だ。
そして胸も大きい。ブラウスはきついのか、第2ボタンまで外されていて、谷間が見える。
ちょっと、エロい。
にしてもアダルトグッズの会社で何でこんな美人が。どうして葛原さんはこの会社に入社したのか。
人事責任者といってもかなり若いみたいだし。まだ20代半ばだよな?

そんなこと見た目の事を葛原さんに悟られただろうか。一瞬表情が怪訝なものに見えた気がした。
大丈夫だよな。ただ、俺がそんな変な事考えるのはちょっとした理由がある。
今現在その葛原さんと対面しているこの部屋……ホテルみたいなんですけど。
ベッドがあって、ちょっと薄暗い照明で、なんとなく雰囲気が出るような。
つまりのところ、男と女がしかるべきことするアレなホテル。
どうして会社にこんな部屋があるの? おかしいよね? これ休憩室ですか?
あ、そういえばこの会社アッチ系の販売する会社でした。
だったらこういう部屋があってもおかしくない? 会社ってこういうものなの?

そんな心配していたら、とんでもないこと言い放った

「さて、早速ですが……わが社に入社する方は全員女性になっていただきます」
「は?」
「弊社の商品は女性が使用することがほとんどです。ですから女性の立場にたって、開発、販売を進めていきます」
「え、あの、俺が……女に?」
「まあ安心して。私も男だったから」

……うそでしょ。
何言っちゃってるの? 何を変なこと言ってるの?
ていうか、冗談しては滅茶苦茶じゃね? でも葛原さんの目は、笑ってない。
あ、でも笑顔はみせた。

「というわけでさっさとこれを飲みなさい」
「…………………」

笑顔で突き出されたのは、ビーカーに入った謎の液体。
突き出されたので思わず手に取ったが、もう見るからに怪しい液体。
ちょっとドロッとした感じで、どういうわけか光の加減で様々な色に変化していた。
青、黄色、ピンク、オレンジ、緑、黒………これ飲んで大丈夫なの?

ちらり、と葛原さんに視線を向けたら「いいからさっさと飲め」と顔に書いてあった。
俺は今日付けでこの会社に入社。しかも社員寮に引っ越して簡単に帰るってわけにもいかない。
それ以前に今ここからダッシュで部屋を出ていくというのも難しそう。
なにせ葛原さんの視線が痛い。ぜってぇ逃がさねーぞコラって目が言ってる。
だからやっぱやめますってわけにはいかない。今この瞬間は入社当日で退職願ってできるやつがうらやましく思えた。
まあでも、死ぬってことはないよな? いくらなんでも。
何十社と採用試験落ち続けている時点で俺の運は尽きたのかもしれない。
もう、あきらめだなこりゃ。ある意味社畜人生スタートか、と割り切るしかないのか。
覚悟を決め、そいつを一気に飲み干した。







………………………はっ!?
「目が覚めたかな?」

ぼやーっとした頭が徐々に覚醒していく。
周囲を見渡す。どうやら先ほどの部屋の方だった。その部屋のベッドに俺は寝ていたようで。
飲んだ瞬間に意識がなくなったところは覚えている。どれくらい意識を失っていたのか。

「今は17時だ。丸一日寝ていたのだね」
俺の質問をくみ取ったのか、葛原さんは冷静に答える。
たしか出社したのが9時ぐらいだから、確かに丸1日寝ていたということになる。
で、結局どうなったんだ? たしか「入社は全員女性になる」という不思議なことを言われた気がする。

それにしても、体の感覚がおかしい。
なんかこう、体に一部負担がかかっているような、それでいてすっきりしているような。
ていうか、服がぶかぶかなんだけど。
就職試験のために購入したスーツをそのまま着てきたはずだが、今は全くサイズがあっていない。
一回りでかい気がする。何でこんなの着ているんだ?

「こっちへ、高宮君」
ふらふらする状態な俺の手を取り、誘導する葛原さん。
はて、俺より身長はちょっと低いと思っていたのだが、今の高宮さんは俺と同じくらいの身長。
どうしてだ?
と、誘導されてやって来たのは大きな鏡の前で……

「あ………」

そこには俺が映っていた。確かに俺……だと思う。
だと思う、と答えたのは、鏡だから俺であるはずという意味で。
だけどそこに写っているのは俺ではなくて……美女だった。

「えぇ……」
サイズの合ってない男物のスーツを着た、細身でスタイルのいい、出るとこ出て、締まるところしまって。
どことなく俺の顔の特徴は持っているけど、整った顔立ちで、ものすごくタイプな、美女だった。
なにより、胸、でかい。
見惚れる俺にそっと葛原さんが肩に手をのせる。

「改めて歓迎しよう。高宮君」







その後、俺は社員寮へと案内された。
会社事務所からは目と鼻の先にあった。まあ、荷物送るのに住所見ていたから近いことはわかっていたけど。
それにしても、そのわずかな距離だからこっちは別に気にしていないのだが。
しかし葛原さんは違った。「変な格好で社員を外へ歩かせるわけにはいかない」等と言って着替えさせられた。
俺が着ていた男物のスーツは全くサイズがあっていない。女になったせいで。
それであの場で着替えなのだが、いやまさか一気にひん剥かれるとは。
ひん剥かれて下着姿になって、トランクスがずり落ちそうだったがとりあえずとばかりに下着はその間で着替えさせられた。

白のワンピースに。

「めっちゃ、はずい……」
膝上何センチかのミニスカートに入ると思われるスカートはスースーして落ち着かない。
いつめくれて中が見えてしまうのではないかという不安が襲ってくる。
それを少しでも軽減するため、めくれないようにするために自然と内股になってしまう自分が悲しい。
そして内股になるとさらに落ち着かない。
その体制だとあるはずなのになくなってしまった存在を痛感してしまう。

股間の、マイサン。

彼女ができずに、ついに童貞のままムスコがいなくなってしまうだなんて。
どこへ行ってしまったのだ一体!
就職するためだけに女になってしまうなんて、こんな理不尽な話他にあるか!
こんな俺、誰にも見られたくない。

恥ずかしくて、女装している俺なんて見られたくない。
「いや、女装じゃないけど。女体化ね」
いや確かに女装じゃないよ。そんなことはわかってますよ。
だけど恥ずかしいことに変わりないんですよ!
「大丈夫、すぐに慣れるさ」
何の慰めにもなってない。

そうこうしているうちに社員寮に入る。

案内された寮はシェアハウスな形態だった。
リビング、キッチン、バス、トイレ共用。建物自体も新しく綺麗で、なかなかいい感じだ。
既に俺の荷物は届いて部屋に運ばれているらしい。家具電化製品は元々あったり、共用だから用意していない。
おかげで初期費用はずいぶん浮いた。これは助かった。
と思っていたのだが、この現状を考えたら多分衣類はほぼ買い替えだろう。痛い出費だな。

「さて皆の衆、本日より入社する高宮君だ!」
「「「ようこそ~~~~~~っっ!!」」」

歓迎したのはこの寮の住人であろう、社員たち。
社員約数十人、総出での出迎えだった。
それも、みんながこれでもかっていう美女。しかも、スタイルがいい!
なにこれ、こんなに美女が一堂に介した光景見たことない。
着飾っているわけじゃない、だけどその美しさがみんな際立っている。
おまけに寮ということもあってか、みんな比較的ラフな格好をしている。
つまり薄着。そういうこともあってか体のラインが浮き立っている。
動くたびにプルンプルン揺れてる。どこがって? 言わなくてもわかる場所だ。
皆そろいもそろって巨乳。グラビアアイドル並、それ以上。
こんな綺麗な人たちと一緒に社員寮で生活するのか……

「でもみんな男なんですよね?」
「そうだよ」

あっさり肯定された。いやわかっていましたよ。わかってたけど。
さっき「入社する社員は全員女性になっていただく」って言ってたからね。
ということはここにいる社員って、全員俺と同じく女になった男ってことじゃん。
美女、中身は野郎ってことて。これは絶望しかないですか?

そんな俺の様子などってか知らずか、知っていたとしてもきっと反応を面白がっているだろうけど。
葛原さんは一同に宣言した。

「さてお待たせしたな。それでは新入社員歓迎会を始めようか」







歓迎会って普通は食事会とか飲み会だと思うんだよな。
居酒屋とかで、飲みながら話に盛り上がってとか。そういうものだと思うんだ。
なのに、この会社は……

「お互いを理解し合うのに裸の付き合いは大事だろ?」

まさかの、温泉施設を借り切って入浴でした。
社員寮からほど近いスーパー銭湯。普通の浴槽だけでなく、打たせ湯やサウナ、露天風呂まであります。
なかなか雰囲気がいい。俺も温泉は家族とともに行ってたからけっこう好きだ。
色々な入浴を楽しめるのもいいよね。まさにリラックス……できるわけがない。

だって今、女湯にいるんですよ。女湯。
男の俺が事もあろうに、女湯に入ってしまうなんて。
最初男湯ののれんをくぐろうとしたところで一時停止。あれ、俺ってひょっして女湯に行かなきゃいけないんじゃん? と気が付いて。
そしてみんな普通に女湯に入っていく。いや、そりゃどう見ても男じゃないから当然なんだけど。

いや裸の付き合いって悪くないと思いますよ?
ですけどねぇ、つい今朝まで男だった俺には刺激強すぎるんですけど。
広い大浴場、そこに社員そろって、全員裸で。
おまけに皆が皆、スタイル抜群のグラビアモデル級。それを恥じらうことなく完全オープン。
おっぱいぷるんぷるんですよ。歩くたびに皆さんのたわわに実ったそれが揺れて。
そして浴槽に入ればぷかぷかと。おっぱいって本当に水に浮くんですね。
目のやり場に、困る。

「そう固くなるな。おっと、今は固くなるものがなかったかな?」
それはセクハラですか? 葛原さん。
いやそれよりもこの企画そのものがセクハラかもしれない。
湯船につかり、俺に話しかけるその姿はまさに美人。
濡れた肌が輝き、その美しさを引き立てている。
そして例外なくボリュームのある胸。水面に合わせて上下する姿がこれまたエロい。

「会社の事業内容が事業内容だからね。こういう企画でお互いにオープンにならないと」
そうでしたね、会社そのものもがアレでしたね。
この会社ではセクハラ案件ってどう対処しているのでしょうか? 今一度確認する必要がありそうです。
「言っておくが、いくらオープンでもセクハラ禁止のルールはあるからな。同意の上でなければ禁止だ」
ああ、今確認できました。しかしラインが難しそうですねぇ。

「というわけで、だ。さっそく私の胸を揉んでみるといい」
「…………………は?」

ずい、と胸が俺の前に突き出されてきた。
水面から顔を出し、先端のピンク色のポッチがあらわになり、濡れた胸が照り輝ている。
うわ美巨乳。

「裸の時は上司も部下もない、そしてスキンシップは大切な交友だ」
「えぇ?」
「さわりっこといった方がわかりやすいかな? そうして社員同士の仲を深めていくのだよ」
つまり、葛原さんは俺のおっぱいに触りたいと?

「そういうのはほどほどにしろって言ってるだろ、葛原」
「しゃ、社長っ!」
俺から視線を話し、振り返った先を俺も見た。
………スイカがいた。

すらっとした背の高さ。ミドルショートヘアとキレのある顔つきが強さを感じる。
無駄な肉がなく、必要なところに集中しているかのような体。
恐ろしく美しい造形をした体。一種の芸術品のようにも感じる。
なによりも……でかいっ!
胸がすさまじくデカい。規格外もいいところ。
爆乳を超えてる? なにあれスイカ? ビーチボール? これが、社長としての存在感なのかっ!?

「おいおい、ここでは上司も部下もないとか言っておきながら『社長』はないだろ?」
「わ、悪かった。敏明」

社長―――萩村敏明。
就職試験を受けるから一応会社のウェブサイトはチェックしていた。社長の名前も当然。
ウェブサイトに社長の経歴はそれほど詳しく書いてなかったが、生年月はあった。
確か年齢は30代後半のはず。社長としては若い方だろう。
それでも今はずっと若く見える。見た目は20代半ば。というより周囲の社員全員がどんなに高くても20代後半しか見えない。
だから見た目の年齢はあまりアテにならないだろう。でもさすがに50代とか60代はないよね?

葛原さんも同様。ただ先ほどの口調から社長とは親しい中のように思える。
ということは葛原さんは社長と同程度の年齢だろうか。

手の届く距離に腰を下ろす社長。その美ボディが湯の中に沈んでいく。
おお、スイカがお湯に浮かんだ。

「高宮君だったね。改めて我が社にようこそ」
「は、はいっ!」
周囲の全裸女性たちに緊張しているなかで、さらなる大物(いろんな意味で)の登場に俺は緊張が限界突破しそうだった。
一切隠すことないその超乳をついつい見てしまう。
いやいや、さすがにそれはまずい。それとなく視線をそらすようにしなければ。
見ないように、見ないように。

「ふふっ、私の胸にくぎ付けのようだね」
「……あ。す、すいませっ!」
ばれてしまった。早々に重役に失礼をしてしまった。
やはり大物となると相手の一挙一動が手に取るようにわかるものなのだろうか。

「かまわないよ。ここでは何も隠す必要はない」
「は、はい……」
許しの言葉を得た。さすがに入社直後に失礼をしてしまっては色々と評価が怪しくなってしまうから安心した。
どうやら割と親しみやすい社長のようだ。

「むしろ、もっと見てもいいんだぞ!」
「……はい?」
な、なんか社長の顔が、赤くなって? そんな社長に葛原さんが……
「お前こそほどほどにしろよ。準露出狂が」
悪態ついてました。

「いいじゃないか。私のこの美ボディ、たまらないだろぉ?」
「あーそうだねぇ。だからこういう企画するんだよねぇ。見せたいから」
「美しいものは皆で愛でるのが正しい事ではないかっ!」
「まあ、普段から制御できているからいいけど……少なくとも露出狂じゃないだけマシか」
「私の事を露出狂とは……そういうお前はベッドの上ではとびっきりの痴女だがな」
「んなっ!? よ、余計なこと言うなっ!!」

人事担当と社長の危ない会話が繰り広げられた空間。
その周囲では社員たちがバトルを気にすることなく、女同士で揉み合ったり乳繰り合ったりで百合百合な光景が展開されているし。

俺、この会社でやっていけるだろうか。







脱衣所には大抵鏡があるものだ。
ここにはそれはまた壁一面に大きな鏡が設置されていた。
鏡がある、ということは自分の姿を容易に観察できるわけであり……

「おぉ……」

それはつまり、女になった自分をちゃんと見ることができる。
俺は、なかなかの美人になっていた。
顔はどこか男の俺の面影を残しながら、整った顔立ちで十分美人の枠に入る。
スタイルも抜群にいい。
手足は細く、おしりの肉付きもよく、ウエストもきゅっと締まって、それでいて何より胸が大きい。
うん、俺はおっぱいが好きです。巨乳が好きです。大きいのが好みです。
これ、俺の超理想。

「お気に召したようですなぁ、お客様♪」
「わひゃっ!?」

油断した。背後から忍び寄り突然肩に手をのせ話しかけられて変な声出してしまった。
接近してきたのはミドルヘアの下着姿な、ちょっとギャルっぽい美人。当然のように巨乳だ。
……ついそこに目が行ってしまう。

「改めて紹介、俺は高宮君の教育係になりました松澤でーすっ♪」

当の美女は松澤というらしい。
教育係、ということは仕事についてこの人としばらくは一緒になるということか。

「というわけで仲良くしようね高宮ちゃん」
「あ、はい。よろしくおねが……ってなに揉んでるんですかっ!!」

背後から胸揉み。俺のおっぱいが松澤さんの手によってもにゅんもにゅんしてしまっている。
ついでに背中から松澤さんの柔らかい感触が伝わっている。
密着してきているのだが、なんとか振りほどいた。

「あーごめんごめん。そこに美乳があったから」
「どこぞの登山家みたいな意味不明な言い訳しないでください。それただの痴漢でしょうが!」

こんな人が教育係でいいのだろうか。
葛原さんこの人セクハラで解任できませんか?

「まあまあ、教育係って仕事だけじゃなくてさ」
「はい?」
「女の子になったばかりなんだからぁ、下着のつけ方レクチャーしなきゃねぇ」

松澤さんの手にはブラが。うっしっし、ってやらしい笑い方しないでください。

「高宮君も例にもれず巨乳だからね、ブラ付けないって選択肢はないからな!」
「あー……はい」

そのあたりは観念しなきゃならなさそうだ。
さっきはワンピースの下は男物の下着のままだった。あの時はとりあえず寮まで移動だったからそれでよかったが。
この感じからすると下着は以降男物というわけにはいかないだろう。それは何となく察していた。
やはり来たか、そういうしかない。
そして早速レクチャーを始めようと俺に下着を手渡してきた松澤さん。
ただ、気になることが……

「なんか、エロくないですか?」

手渡された下着だが、妙に派手。
しかも生地が薄いのか、シースルーでスケスケっぽいんだけど。

「あ、これうちで扱ってる商品。社員価格で安く買えますぜ」

そういうことか。
ふと周囲を見たら皆さんもなかなかエロい下着ですね。
ベージュやピンクといった落ち着いた色合いから黒や赤といったやや攻めた色調も。
シンプルとはとてもいいがたい柄の強いデザインが目を引く。
布地も面積が少なめ。人によってはあれ、Tバックですよね?
不思議だ、裸よりも下着姿の方が妙にエロさを感じます。下着って女の引き立て役ってことか?

「本当は買わなきゃいけないけど、入社直後だからあくまで会社から支給って扱いね。で、どれがいい?」

いつの間にか用意したのか、営業必須アイテムのようなブリーフケースを開けるとそこには数々の女性モノの下着。
何とも奇抜な色合いが攻めてくる。どれもこれもエロいデザインばっかりじゃないか。
いわゆる勝負下着ってやつか。

「あの、もうちょっとシンプルなフツーのデザインはないんですか?」
「うちじゃそういうの扱ってないんだよ」

あーそうですか。
つまり皆があの派手な下着付けてるのは元男でエロい物が好きだからでなく、単に安く買えるからか。
普通を求めるには自分で買わなきゃいけないのか。
うーん、見たわけじゃないけど女性の下着って高いっていうし、自分で買うと出費が……
どうやらここでも諦めなきゃいけないらしい。

とりあえずこの中から比較的おとなし目のデザインの下着をチョイスする。
スカイブルーの上下セットだ。さっき手渡しされたものは返却しておいた。

「おう、それですね。お目が高い」

まるっきり商人のような口調。この日といちいちうるさい。
教育係として大丈夫だろうか。心配だ。
が、お目が高いといった理由が分かった。色だけで選んで手にした下着だが、よく見たらこれ……

紐パンだった。

「チェンジで」
「いやいやいや、返品はできませんよー。せっかく選んだものだからつけてみようか♪」

ああくそっ、やっちまった!
この人罠にはめたか? いや考えすぎか? それでもあの中ではマシな方か?

「紐パン女子って魅力的ですよー。男のロマンですよー」

なにがだ。もう既に俺は女になっちゃってるっての。
だがわかった。やはりこの人も中身は男だ。それもどスケベな。

「でも以外といいんだぜ? ゴムで締め付けないから跡が残らないし、軽い着け心地て落ち着いてるし」

意外と実用面をプッシュされた。どうやら腐っても販売店社員らしい。
何とも釈然としないものもあるが、どうやら取り消しはできそうにない。
仕方ないが、これをつけるしかないか。
ていうか、滅茶苦茶穿きづらそうだけと。

そして、初めての紐パン穿き方レクチャーが始まった。







「つ、疲れた……」

寮に戻り、どさっとベッドに突っ伏した。
部屋は4畳ぐらいか。広くはないがシェアハウスであることを考えたら妥当なものか。
隅には届いたばかりの段ボールが積まれている。荷ほどきする余裕もない。

あれから紐パンのつけ方だけでなく、ブラのつけ方、肌ケアの化粧水だの髪の毛のなんだのといろいろと教えられた。
松澤さんってチャラそうに見えて意外とそういうところしっかりしているんだなーって思った。
どうやら教育係としては適任のようだ。
たがレクチャーされるこっちはそうとはいかない。
何せいきなり女になって女性に必要なものを怒涛の如く教授されたのだ。
頭がオーバーヒートしそうだ。だから疲れた。

それと共に周囲の視線が余計に負担となった。
気が付いたら社員が集まって俺の様子を鑑賞していた。
紐を何度も結びなおししている姿に、ブラのホックを止めるのに一生懸命になっている姿に「かわいいーっ」だの「がんばってー」等という黄色い声援送ってきて。
初めてのお着換えしている子供か俺は! ……って、ある意味そうだが。
あとまあ、あれほどのきれいな女性に囲まれた経験がないからってのもあるけど。
ど、どうせ彼女いねーよ俺はふーんっだ!

まあ、それから食事したのだがもうそれで一気に疲れて……で、今に至る。
ああもうこのまま寝ちゃおうか今日は。だけど一応このワンピ脱いだ方がいいよな。
とりあえずジャージをだけは引っ張り出しておこう。寝るときはそれが一番落ち着きそうだし。

ふにゅ

「………………………………」
うん、俺は今、女なんだよね。だからうつ伏せになると……胸って結構邪魔だね。
歩いているときもそうだけど、結構揺れるんだよね。
ブラしているからおさえられているけど、最初ノーブラの時は存在感半端なかったね。
そいで持って過多に負担かかるね結構。肩凝るっての納得。
寝るときもないとブラにしましょうなんって言っていたけど、やっぱする必要あるかな?
垂れるとイヤだろ? って言ってたが。確かにだらしない乳はイヤだ。

それとうつ伏せなってると乳首の存在感が……
男の時は感じなかったけど、やっぱ女になってデカくなったのか? ここも。
うーん、存在感があるなぁ。
逆に存在感がないのが……下だ。
うう、何かしら感じていたアレの存在感がなくなってしまうのは妙に落ち着かない。
長年共にしてきた存在だからな。ていうか普通はなくならないだろ。
せめて童貞卒業してからがよかった。もうダメだけど。
けどなくなったかわりに、アレがあるんだよな?

「………………………………」

扉確認、鍵よし!
窓確認、カーテンよし!
壁確認、のぞき穴なし!
周囲一帯確認、侵入者なし!

よ、よし。
すっと設置されている姿見の前に移動。その前に立つ。
ワンピース姿の俺。うん、美人だ、そしてものすごくタイプだ。
これが自分自身でなかったら絶対お近づきになろうと必死になっていたかも。
ためしに胸の前で手を組み、上目遣いをしてみる。

にこっ

………破壊力はばつぐんだ!
そっとワンピースのファスナーをおろす。するとぱさっと簡単に脱げてしまった。
現れたのは下着姿の俺。先ほどチョイスしたスカイブルーのショーツとブラが映える。
こうして改めてみるとなかなかの美巨乳だ。
松澤さんによると俺の胸はGカップらしい。すばらしい。
ちなみに社員は全員最低でもFの持ち主だとか。社長はトップシークレットらしい。

やはり、男子として気になる。
背中に手をまわし、そっとブラのホックに手を触れる。
つけるときと比べれば外すのは実に簡単だった。

ぷるんっ

はうっ! こ、こぼれたぁぁっっ!!
ぷ、ぷるんっていった! 揺れた!
ちょ、ちょっと冷静になろう。さっきもさんざん見たじゃないか。
そ、そうだ。ちょっと試しに左右に……

ぷるぷるんっ

いいっ!
なんという乳揺れ。プリンが揺れているのとは全く違うぞこれは。いや当然だけど。
それにしても、巨乳ですなぁ、美乳ですなぁ。いつまでも見ててあきないですよ。
それと……好き放題触ってもいい、だよな?

もにゅもにゅもにゅ

こ、これはなんとも絶妙な弾力。しかし触り心地は非常にいい。
触るのもさることながら、触られるのも、なんとも。
先ほどレクチャーしてもらったブラのつけ方。あれはなかなか刺激的だった。
乳をあつめてカップにおさめる。うん、日常でおっぱいに触るとは、すごい。
……いや、よく考えてみれば男の時は日常的にあそこに触れていたのだから大したことじゃないか。

くにゅ

うん、だんだん感じが変わってきた。
やっぱ、おっぱいって性感帯があるってことなのかな? なんかこう、ちょっと体が……
あ、乳首。ぴんって固くなってきた。うっ、乳首も割と敏感。

じゅん……

あ、これって、濡れてきた?
ちょっと下が、きゅんって感じなんだけど。
えっと、いいよな? うん、自分の体なんだし。
そういえばさっきは下着がなんやかんやでちゃんと見てなかったな。
で、では、せっかくなので。
えっと、サイドの紐だな。うん、脱がすのって、紐パンはいい演出。

はらり

おぉ……やっぱ、いいなぁ。
これから毎日この極上の女体を自由に鑑賞できる、いいねぇ。
そしてこの、神秘の場所も当然のように。
じ、じっくり観察しなければ。
うん、美女が鏡の前でM字開脚。いい光景だ。
まあ、肝心はここの部分であるけど。ほほう、これはこれは。
エロ動画で見たことあるけど、これはなかなかきれいじゃないかな?
やっぱ濡れてる。おっぱい揉んでてちょっときちゃったのかな?
ここは、どうなのかな?

くにゅ

おおう、なかなかいい感度じゃないか。
男ってわりとその物体が感じてるってところだけど、女って体全体で感じるのか。
内側にあるからか? ダイレクトに伝わってくるっていうか、男と違って裏返しになっているというか。
えっと、こっちのおマメはどうですか?

ぞくっ

うおっ!? こ、これはすごいだろ。
感度良すぎじゃねえか。これヤバい。慎重に扱わないと、マジで吹っ飛ぶかも。
と、とりあえず最初はあまり触らないようにしとこう。
な、中に、指ってはいるかな?

くちゅ

は、入りそうで入らないような……
でも最初からヤッちゃうのはちょっと怖いな。入り口付近だけにしておこうか。
あ、うん。なんか、いい感じになってきた。
おっぱいも、ビンカンになってない? 乳首なんて、ピンってして。
ん、さっきよりも、揉んでると気持ちいいし。

あ、やば、これいい。
んっ、テンション上がってきた。やだ、なんか、どんどん気持ちよくなってくる。
あっ、体……感じてるっ、こんなっ………

くちゅ、くにゅ、もにゅ……

やべ、声漏れそう。我慢、ガマンっ……ムリかもっ。
そ、そうだ。パンツ、パンツ咥えておこうっ。
うわエロっ、何この鏡に映ってる女。
パンツ咥えちゃって、おっぱい揉んで、オナニーして盛り上がっちゃって。
俺だけどさ、このエロい女は俺自身だけどさ。
ああでもっ、たまんねぇっ。

んっ、ふんっ、くぅっ……

あーでも結局声漏れてね? でもパンツ咥えているだけマシか。
にしても、なかなかイかないんだけど。
こんなにテンション上がってるのに、全然果てる気がしない。
女ってこんな時間かかるの? うわぁもどかしいんだけど。まだかよぉ、ちょっと切ないんだけどぉ。

んんっ、んぅっ………

あ、でも、この感じ……来るかもっ!
あ、うんっ、これ洪水? あ、やべっ、これ、すごっ……
い、イクぅっっっ…………!!

………………………………………………
……………………………
……………

はぁ、はぁっ、マジすごかった。
女って、こんなにすげーのか?
余韻がすげぇ。男の時は賢者タイムですげー切なくなるけど、違うなこれ。
うわ、べっとべと。愛液すげーな。
掃除、しておかなきゃな。
けどもうちょっと、楽しもうかな?

……仕事だからほどほどにしなきゃな。







「高宮清彦ですっ。あ、改めまして今日からよろしくお願いいたしますっ!」

挨拶の言葉に周囲から歓迎の拍手が沸き起こる。
本日から改めてこの会社での仕事が始まるのだ。
昨日はそこそこテンション上がってしまったが、自浄作用と疲労がうあって早々に床に就いた。
言っておくがオナニー疲れではない。生活の変化から来る疲れだ。そう言っておく。

ただ、朝に「ゆうべはおたのしみでしたね」と言われてどきりとしたが。
カマかけてきただけらしい。俺はまんまとかかってしまったというわけだ。

で、今日からこの通りこの会社での仕事が始まるのだが。
服装についてはこの会社には規定はない。スーツでなくても私服でOKとしている。
だがここに問題があった。何せ俺は女物の服を1着も持っていない。
そりゃそうだ。昨日女になったばかりで、持参している荷物はすべて男物だからだ。

部屋着にしている分には問題ないだろう。だが、いくら服装に規定がないといっても仕事上はまずい。
それ以前に外出もできない。
おいおい女物の服は購入するとして、とりあえず今日の仕事での服を用意する必要があった。
そのあたりは一応配慮してくれるようだ。仕事のために服を1着貸してくれた。
うん、"一応配慮"してくれたわけだが。

「何故メイド服?」

俺が着ていたのは、メイド服だった。
それもコスプレでありがちなミニスカで、ガーターベルトで、ノースリーブに長手袋で、胸元開いて谷間くっきりでフリフリいっぱいのやつ。
可愛い、服はカワイイ。だがどうして俺がこんなの着せられるんだ?

「それ、ウチで販売予定の商品なんだよ」

そういうことか。

この会社の販売商品は各種アダルトグッズ、その中にはこういうコスもある。
その手のやつは大体見た目重視で実用性がないのがほとんど。
しかし、この商品は実用性も考慮、実際に店舗ユニフォームとしても採用できるようデザインされているとか。
というわけで今日一日着用して使用感を確かめてほしい、というわけだ。

入社して早々、テストモニターをさせられるとは、予想外だった。
ちなみにそういうことはちょくちょくあるらしい。
チャイナ服とかナース服とかゴスロリとか。社員でモニターするらしい。
なんともコスプレな会社ではないか。

「もち本人以外にもアンケートは取るよ。見た目は大事だからな!」

アッチ系なんだからいかにグッとくるか、それは当然のようだ。
ということは俺は今日一日、社員からじろじろ見られるわけだ。性的な目線も含めて。

……入社して早々、ファッションショーのモデルになってしまうとは。







まずは仕事を覚えていかなければいけない。それは会社としてもそうだし担当業務としてもそうだ。
俺が着任した部署は商品管理部。販売する商品の在庫管理やら発送やらを担当する部門だ。
俺の教育係だという松澤さんも当然ここの所属だ。

この会社は社員人数は少ないが、しっかり自社ビルを持っている。
といっても立派なものではなく、3階建ての小さいものだが。
その建物の1階が受付、そして商品倉庫兼、ショールームになっている。

要するに小さい規模の店舗、ってこと。
商品の購入は基本ウェブサイトからだけど、ここにきてお客さんは実際の商品を見ることができる。
直接ここで買うこともできるし、後でサイトから購入することも可能だ。
本格的な商品の倉庫は別にあって発送対応などは委託されているらしいが、一部の商品はここから発送したりもする。
俺が受け持つ業務は注文の合った商品の発送、在庫管理、そして……

「接客、というわけですか」

メイド服着せられたのはそういう意味もあったのか。
ただ、そこまで頻繁にお客さんが来るわけでもないらしいから緊張しなくてもよさそうだ。
しかしこの空間自体は緊張してしまう。
なにせ360度見渡せば存在するのはエロい衣装ばかり。
俺が着ているメイド服も当然、チャイナ服やバニー服、ナース服やボンテージまで。
さらには水着や下着もあるから刺激が強い。

特に下着だ。会社がアレだから周囲にある下着はアッチの方向で実用的なものばかり。
ど派手な色使いでやたら刺繍やらフリルやらがあるのは序の口。
スケスケだったり、何故かど真ん中に切り込みがあったりするものも。
マネキンにそんな下着が着せられているが、明らかに大事な場所が見えるよな。

それと、例の大人のおもちゃなやつ。
やべー形した物体が片隅に置いてあるし。あれはなー。

「ふっふっふ、興味持っていただけたかな?」

松澤さんは俺のウブな反応にご満悦のようだ。
この人は俺に仕事を教えるつもりなのだろうか。それとも広義の意味で遊んでいるのだろうか。
さぼっていると思われたくないからちゃんと仕事したいんだが。俺はマジメだ!

「で、このメイド服って制服っていうかユニフォームなんですか?」

俺が着ているメイド服の事ではない。
なぜなら松澤さんまでもがメイド服をしていたからだ。

「いやいや、ちがうよー。単にそういう気分だっただけ」

ご丁寧にポージングまでして言い放ってくれた。
くそう、恐ろしく魅惑的じゃないか。惹きつけられる。
しかしその日の気分でコスプレして仕事するなんて。テストモニターじゃなかったのか。

とはいうものの、お遊びはその程度。そこからはちゃんと仕事を教えてくれていた。
在庫のチェック、注文の合った商品の発送、一つ一つ丁寧に教えてくれる。
つまり、松澤さんはマジメにやれば真面目にできる人!

それにしても……やっぱ気になる。
発送やチェックで在庫確認のためにあっちこっちと動き回っているが、そのたびに痛感する。

俺の体、変わっちまったんだ、って。

フリフリのミニスカートのせいで下がスースーする。女ってよくこんなの着ていられるなーってのもあるけど。
その内側、物体の存在感がないのがどうしても。
男の時だってそれほど存在感を常に感じていたわけじゃないけど、一度気にしたら気になってしまう。
下腹部にフィットする下着が余計にそれを感じる。
例の紐パンだからある程度ゆったりしているけど、それでも男物の下着とは全然違うわけであり。

もう一つは、胸の存在感。

ブラで吊ってある物体はなかなかの重量があった。
おっぱいって意外と重いんだな。支えがあるとはいえ、歩くとやっぱり揺れるし。
ちょっと大きめの段ボール持ったら当たるし。意外と邪魔だったり。
ただ、有効活用はできる。

「次はこっちだなー」

注文伝票を手にしながら商品を探していく松澤さん。
目的の商品を手際よく見つけ、それを手にする前に……

ぷすっ

「…………………………」

伝票を、谷間に差し込んだ。
そうすると両手が使えるようになる、ようだ。

「仕事する時は谷間出てる方が便利なんだよなー」

なるほど、妙なところで感心してしまった。
そしてその伝票はそのまま商品と一緒に梱包されていく。
発送してもらったお客様、男か女かわかりませんがその伝票には谷間のぬくもりがあるんですよ実は。







全員が女性であるこの会社だが、さすがにトイレは女子トイレだけというわけにはいかない。
たまに来客で男性も来る関係上、一応男子トイレも用意されている。
といっても女性トイレと比べたらとりあえずあります程度だが。

この会社で働く以上、各種設備の案内もされるわけである。
が、どうにもこの女子トイレ、普通とは違いすぎているとしか言いようがない。

「……なんで小便器があるの?」

休憩にしようってことで仕事の手を止めて「トイレ行こう!」とどこの学校の女子だよと思いながら連れられて。
当初男子トイレに入ろうとして松澤さんから制止されるというある種定番の出来事のあとの出来事。
女子トイレという一種神聖な領域に入ってしまった、という緊張を吹っ飛ばす非常にインパクトのある物体が。
どう考えても本来女子トイレには存在しないものであり「あれ、こっちが男子トイレ?」と勘違いすること間違いなし。

「これねー。うちの営業が見つけて面白いって導入したんだよ」

松澤さんの解説が始まる。
なんでもごく一部のジェンダーフリーを掲げる某団体が「女だった立ちションしたい!」という色々心配になってしまう発言から作られたそうだ。
女子が立ちションできる便器。確かによく見たら普通の男子トイレとはちょっと形状が違う。
ちょっと前方に飛び出している。体の構造を考えての事なのだろうか。

それをソッチ系大好きなこの会社の方々が「ウチ、女だけだから入れてみない?」ってことで設置したのだとか。
ついでに販売もしているのだがさっぱり売れず。
とある学校が女子校になったということでそこが買ってくれただけであとは全くだそうだ。

「ってなわけで実演でーす」

プチフリーズしている俺の目の前で松澤さんは使い方を実演していただきました。
やり方は次の通り。

1. ショーツをおろす (派手な下着ですね)
2. スカートをたくし上げる (下半身マッパですね素敵なおしりですね)
3. 便器に背を向ける (ま、前が! 前見えてる毛が生えてないんですねパイパンなんですね!)
4. 足を広げて前かがみになる (ふをっ!? た、谷間が……)
5. その体制で用を足す (後ろに……飛ぶだと!?)

「ふぁ~っ……」

恍惚とした表情、ほんのり顔を赤めているのは放尿特有の開放感なのか、それとも俺に見られている恥ずかしさか。
どっちにしても未だかつて見たことない光景に俺は引き気味になっていたりするのだが。
そして用を終えると横にあるトイレットペーパーを手にしてふき取る。それは変わらないようだ。

「というわけだよ高宮くぅん♪」

じょばばば~と流れていく音が奇妙なBGMになっている。
まさか就職してトイレの使い方をレクチャーされるとは思わなかった。

「俺は結構いいと思うんだけとさぁ、一部不評なんだよねぇ」

そりゃそうだろ。いくら中身男で羞恥心は普通の女子より低いといってもこれは恥ずかしい。
特にやっている最中、後ろで待っている人と目線を合わせることになる。
おまけに下半身は実質裸になるわけだし。
それはさすがに恥ずかしいからやりたくないって思う人いるんじゃないか?
男だってそう思うのだから女子だって余計だ。そりゃ売れないだろう。

「スカートじゃなきゃやり辛いって言われてさ」

そこじゃないだろ社員!
それにしてもこれを買った学校って、どんな学校だ。
「女子校になった」って言っていたけど、いろんな意味で大丈夫か?







この会社ではネットショップも運営している。さっきまで発送していたからそれはよくわかる。
販売している商品は買い付けしているものもあるが、自社製品が大部分だったりする。
当然そうした商品はサイトで紹介するために見栄えを気にする。
特に衣類であればモデルに着こなしを再現してもらって魅力を引き立てるのが普通だ。
そう、モデルに着てもらって……

「社員自らですか」

そんな仕事のお手伝いをすることになりました。
会社の一室、例の怪しい薬を飲まされて女にされたあの部屋だ。
自社製品を掲載するための写真撮影なのだが、まさかモデルを社員自らがやるとは。

「モデル雇ったら結構金がかかるんだよ」

なるほど。経費削減か。
といってもこの会社にいる女子社員(中身男)はどれもこれもモデルが裸足で逃げだすレベルだ。
そんな美人なのだから実に写真映えするだろう。

販売促進担当の笠崎さんがてきぱきと撮影機材の準備を続ける。
俺は必要な物品を笠崎さんの指示に従ってあれこれと設置していく。
準備できたところでモデルの登場です。

「うっ」

思わずうなってしまった。
本日のモデルは経理の西園寺さん。例の如く抜群のスタイルが目につく。
そして掲載する商品、まさに来ているのがそれ。来ていたのは……スケスケのベビードール。
ピンク色でフリルいっぱいのかわいらしいデザインのベビードール。
しかし布地は全体的に少なめで、おへそもあらわになっている。
下に穿いているショーツもまた小さく、後ろはTバックになっている。おしりもくっきり。
胸だって、先端が透けて見えませんか?

「いいねぇいいねぇ、そそるねぇ」

カメラマンのスイッチが入った。笠崎さんはエロカメラマンだった。
一方の西園寺さんはというと、ほめられたからなのか、なんだかうれしそうだ。
それともあれは恥ずかしそうなのか? ちょっと顔を赤らめているようにも見える。

「そう、そう……いい表情だねぇ」

カメラマンのテンションは最高だ! パシャパシャと景気よくシャッターを切っていく。
一方でモデルもポージングは完璧だ。最初は立ったままでポーズを決め、後にベッドの上で女の子座りや上目遣いなどの技を駆使している。
モデルは交代でやっているといっていたが、西園寺さんはだいぶ慣れているように見える。

「ああ、もうっ……僕のエッチな格好、見られると思うと……」

おや? 西園寺さんの様子が?

「もう……濡れちゃうっ♪」

ああ、そういうことか。
やっぱりこの人もこの人なんだな。ばっちりドMな属性があらわになっているよ。
この会社にいる人は、やっぱどこかおかしいのかもしれない。
俺もいつか……こんな風になってしまうのだろうか。







働くってこういうことなのだろうか。
普通の会社って、どんなだろう。
この会社だけが特異なのかな?
だろうな。入社と同時に女にされるんだもの。制服着せられるのと変わらない感覚で。
そんなことを一日の仕事の疲れを感じつつ、思いふけってみる。

「ふぅ……」

一日の仕事が終わり、寮に戻り、軽く夕食を済ませる。
シェアハウスだからキッチンは共同。共に食事を作るのはなかなか楽しかった。
といっても初日労働の疲れがあったからあまり凝ったものは作れなく、単に切り落としな肉を焼いただけだが。

その後、風呂に入る。なんだかんだ言って入浴は一番疲れを癒せるのだ。
癒せる、はず……

「例外なく高宮君も美巨乳だねぇ」

癒せそうにない。

「風呂まで一緒なんですか? 松澤さん」
「裸の付き合いって大事だろぉ?」

自らのおっぱいを手でたっぽんたっぽん揺らしてアピール、してどうする松澤さん。

この寮の風呂は大浴場とまでいかないが、それでも一般家庭のお風呂よりはずっと広い。
湯船なんて4,5人が一緒に入れそうなぐらいでかい。
独特のデザインされた形状は、どこかの洋画で出てくるジャグジーみたいなやつ。

これとは別に個別に分かれたシャワーブースが3つほどあって、一人で済ませるならばそちらがいいかもしれない。
が、疲れているんだ。だから湯船につかりたかった。
その結果、一緒に入ることになってしまったのだ。
正直うるさい。
ちなみに松澤さんのおっはいは、俺がGに対してIらしい。俺よりでかい。
つまり乳もうるさい。

「まあまあ、そう邪険にしないで。僕だって歓迎会の時あまり話せなかったからさぁ」

俺と松澤さんが湯船につかっている一方、その外で体を洗っているのは総務の富岡さん。
俺達と大して変わらない年齢のはずだが、身長が低いためか幼く見える。
しかし巨乳。合法的ロリ巨乳という恐ろしいボディの持ち主だった。

「色々お互いに知り合いたいしねぇ」

合法ロリ巨乳が体を洗い終えて入ってきた。
スペックはGらしい。しかし体は小さい。したがって比率的にさらに爆乳に見える。
肩でつかれば自然と胸がお湯に浮く。さらに存在感が増したボディ。
恐ろしい人物だ。注意しなければ。

「そうそう、難しい顔するなよ」

富岡さんを見ていたらスキを突かれてしまった。松澤さんが俺に密着してくる。
むっ、おっぱいが触れる。意図的か?

「それとも疲れたのか? おっぱい揉む?」

セリフが微妙に違う。そして質問する以前に松澤さんはすでに俺の手を自分のおっぱいに触らせている。
むぅ、でかい、そして柔らかい。揉み心地は最高です。

「んっ、気に入ってくれた?」
「あはは、嫌がってないねぇ」

しまった、つい夢中になって松澤さんのおっぱいを揉んでしまっていた。
所詮は童貞の俺。女性の肉体には、誘惑にはあっさり負けてしまった。
昨日もしっかり自分の胸を揉んでいたというのに。やはり自分で触るのと他人のを触るのとは気分が違うか。

これ以上はいけないと思い、すっと距離を取っておく。
それとなんとなく二人の視線が俺の胸にいっていたのでガードしておく。
油断ならん。

と、気が付いたら脱衣所に人の気配。
2人かな? どうやら入ってくるようだ。これ以上人数が増えて気疲れするのは勘弁してほしい。
こっちは疲れを癒すために入っているのに、余計疲れてしまうなんてどういうことなのか。
スモークガラスの扉の向こう、2人は既に服を脱いでいるようだ。
入ってくる、と思いきや、2人はそのままシャワーブースの方へ。

「………今、二人とも同じブースに入りませんでした?」

普通シャワーブースって1人用だよね? なのにあの2人、同じブースに入った気がするよ?
ちょっと狭いんじゃない? いや、狭いだけの問題じゃないよね? なにかおかしいよね?

「あー、あのふたりはねぇ」
「ラブラブだからねぇ。うるさいぐらいに」

え、なに? ラブラブってどういうことさ?
みんな知ってるの? それやばい話ですか? 女同士、ていうか中身男同士でラブラブ?
あのふたりってどういうことですか? ヤバいよねなんだか。聞いてもいいですか? いいですか?
色々怖いんだけど。でも気になって仕方ないですよ。
同居生活するからさ、一応把握しておいた方が、いいよね?



♀ ♀ ♀ ♀ ♀ ♀ ♀ ♀ ♀ ♀ ♀


コックをひねれば、適温の温水が降り注ぐ。
一人用のシャワーブースにはそれほど広くはなく、二人で入るには当然狭い。
しかしそんなこと気にしない。狭さは感じない。何故なら二人は密着しているから。

「んっ、はぁっ……まったく、我慢できない奴め」
「お互い様だろぉ?」

営業の鬼塚と経理の西園寺、二人は遠慮なく体をお互いに密着させる。
降り注ぐ温水が輝くお互いの体。美しい女体に見惚れていた。
『節水にご協力を』と書かれている注意書に果たして気を使っているのだろうか。

鬼塚は男だったの時は身長が高く体格もよかった。そういうこともあってか女になっても178センチの高身長をキープしていた。
それほど身長は高くても出るところは出る、締まるところは締まるプロポーションを持っている。
胸だってLカップの爆乳。この会社の中では一番のサイズを誇っている。
もっとも、社長には負けるが。

一方の西園寺は魅惑的だった。
どこか幼さを残す造りだったが、それでも魅惑的なボディは異性を引き付ける。
鬼塚に比べれば胸は小さく見えるが、それでもHはある。十分すぎるぐらい巨乳だ。
これほど魅力的なだけあってか、モデルに選ばれることはこの会社の中では一番多かったりする。
それが鬼塚にとってはもどかしく思えて仕方ない。
ほかのやつらに、西園寺の肌をさらすようなことは、と。

こんな関係になったのはお互いに女になってからそれほど時間は経過していない。
お互いにドストライクだったから、かもしれない。
最初はちょっとした興味本位。女の体を体験してみようとした悪戯心から。
しかし、体を重ねるうちに、だんだんとその気になっていき、そして今に至る。

一日の疲れをとるのはお互いにお互いを求め合うこの時。
本当は仲良く浴槽につかりたいところだが、今日はあの新人がいる手前やめておこうということにした。
さすがに初日からこの光景を見せるのは、と。
一応の気遣いはしていたが、それも部分的でしかない。
こういうことしているのだから、ブレーキには全くなっていない。

シャワーブースに入ればやることはこうしてお互いの体を密着させることから。
全身で相手を感じ取る。女らしい、柔らかな肌のぬくもりを感じ取る。
腰に手をまわし、強く抱きしめて決して離さないように。
より強く、密着させてお互いを感じ取る。。

胸も合わさる。もっとも柔らかいその部分は絡み合うたびに形を変え、フィットする。
なまめかしく動き合い、お互いの体を密着させすり合わせて絡め合って。
そうするたびに胸はぷるんぷるんと変形する。

お互い元男ということもあり、胸に対する関心は一層高い。
その過程で女になって性感帯が胸には多いことを感じ取ったのもひとつ。
そして見ているのもいい。こうしてやわらかな物体が形を変えていくのはすごく興奮する。
こうして、テンションが上がっていく。

体だけでない、唇もまた重ね合う。
合わさればその後、舌を絡め合うのはいつものこと。
絡め合って、唾液を交換して、むさぼるように、お互いを求め合って愛情表現する。

視線も合う。その瞳に恥ずかしさを感じ、時に目をつむる。
その一方で惹きつけられる。相手のかわいらしい瞳に魅了される。
もっと見ていたい。その瞳、表情、魅惑的な体を、すべてを。

温水だけじゃない、体の中からどんどん温まっていく。熱くなっていく。
そうすると、ちょっと切なくなっていく。
下の部分、感じる部分が。
男の時はここが固くなって、その気持ちが明らかになった。女性は少し違う。

確かに固くなるものはある。しかし、ずっとと小さい。
この小さな突起だけでそれが表現できるわけもなく、放出しきれなかったものが下腹部に集中する。
それを少しでも発散させるように、そこを相手にこすりつける。
太もものところ、お互いに軽く足を上げて、そこが接触するようにして。

貝合わせ、そう言われている行為。
わずかに触れ合うものが、テンションをさらに上げていく。
それが外れることがないように、相手のおしりに手をまわして、支えるようにして。
うん、おしり柔らかくて、気持ちいい。

「んっ、マコトぉ……」
「ミキちゃん、本当にいい顔するねぇ」
「いぢわるぅ……」

意地悪そうに鬼塚美樹を見つめる西園寺誠。
鬼塚の名前は「ヨシキ」と読むのだが、二人だけの時は「ミキ」と呼んでいる。
ちょっとした意地悪だ。何せすっかりトロ顔になってしまっているのだから。

普段は営業というだけあってか、男気溢れる強い女(?)なのだが、今はまるでその様子はない。
体系的に鬼塚の方が攻めかと思えるが、立場は逆だ。
普段と異なりこの時だけは鬼塚は女の子になってしまう。存外弱いらしい。

「あ、んんっ……」
「声に気を付けてよぉ、ミキちゃん♪」

太ももにこすりつけるのでは足りなくなっきた。だから指でお互いの秘所を触れ始める。
西園寺はなかなかのテクニシャンだった。鬼塚の弱いところを的確に攻めてくる。
もちろん鬼塚だって攻めている。だが、いつも負けてしまう。
そして声を出してしまう。それを西園寺が唇で封じるのがいつもの流れ。

「ん、んんっ、んぅぅ………」
「ん、いいょぉ、ミキちゃ……」

鬼塚の方が弱いといっても西園寺だって無傷でいられるわけはない。
なんだかんだで鬼塚だって西園寺の弱いところを攻めているのだ。
単に、西園寺が我慢しているだけ。そして言葉巧みに攻めているから鬼塚は自分が弱いと思ってしまっている。
要するに西園寺の心理戦だったりする。

鬼塚からの攻めを少しでも軽減するため、ごまかすために全身を相手にこすりつける。
それは鬼塚も同様、体を西園寺に擦りつけ、全身を走る電気信号を軽減しようとする。
結果、シャワーブース内にはなまめかしく動く女子2人ができあがる。

「あ、んっ、やめぇ……」

身悶えする鬼塚、その胸に顔を埋めるのは決して忘れない。
西園寺はこのおっぱいが大のお気に入りだった。
誰よりも大きい迫力のあるバスト。弾力と柔らかさを兼ねそろえた最強の存在。
自分がここまでおっぱい星人だとは思わなかった。しかし、それだけ惹きつけるのだ。

「ちょっ、マコトぉ……」

おっと、声が漏れている。西園寺は少々慌ててしまった。
胸に夢中になるあまり、鬼塚の口をふさいでいなかった。ちょっと油断するとすぐに声を上げてしまう。
自分たちがここで何をしているか、大体知られている。今更バレたところで何だというのだ。
しかし、これはどちらかというと独占欲。普段とはギャップのある鬼塚の姿を他に知られたくない。
この姿を知っているのは、自分だけでいいのだ。

可愛いミキちゃん。んもう、こんなに悶えちゃって。
こうして合わさっている間が、何よりもいい。
しかしそろそろ、限界。

「あ、はぁ……マコトぉ………」

びくっ、と今までにない鼓動を鬼塚から西園寺は感じ取った。
そろそろかな? 自分もそろそろだし。

「ミキっ………!」
「マコ…んん…………っ!!」

ペースは落とさない、秘所を優しく攻め続け、その時のためにじっくりと。
下腹部にたまっていく感覚。男にはなかった感覚をしっかりと味わう。
そして瞬間、ぎゅっと抱きしめ合って…………

「「んんぅぅ………………っ!!」」

体が躍動する。全身を駆け巡る快感という絶頂の電気信号。
同時に秘所からあふれ出てくる液体。
女になって射精を味わうなんて思ってもいなかった。しかし、男よりもずっと気持ちいい。

シャワーブースという場所故に遠慮なく吐き出されるそれ。下はぐちゃぐちゃだ。
だがなんとなく相手の愛液を浴びれたことが、ちょっと嬉しかった。
汚れてもすぐにシャワーの温水が流し去っていく、つかの間の。
壁に背を預け、ぐったりしている鬼塚にそっと語り掛ける。

「続きはベッドでな」

今夜も長くなりそうだった。



♂ ♂ ♂ ♂ ♂ ♂ ♂ ♂ ♂ ♂ ♂





やっべーやつじゃねえか。
ばっちり聞こえてたし。こういう場合どうすりゃいいのさ。
いたたまれなくなって、そっと風呂を出たけど。
ていうか、ああいうの、ここでは普通なのか?

風呂のお湯のせいなのか、それとも別の何かのせいなのか、ちょっとのぼせた気がする体をクールダウンする。
シェアハウスなのでリビングは共用だ。そこそこ広い共用リビングにはテレビがあり、ソファーがあり、まあまあリラックスできる。
大画面のテレビには現在ファミコンゲームが映し出されており、2人がそれに熱狂している。
聞きました? みなさん。ファミコンですよ。
何年前のゲームだよ、とツッコミを入れるしかないこの状況。今や骨董品ともいえるドット絵なゲームですよ。
高精細な液晶大画面テレビにとっては過剰スペックですよ。
2人曰く「たまにやると熱狂しちゃう」「スマホゲームより金かからない」だそうだ。さいですか。
ところでそのゲーム、なんで運動会のはずなのに殴り合ってるの?

「いやー、風呂上がりの一杯はいいねぇやっぱり」
俺の隣で松澤さんはコーヒーミルクをきゅーっとやっていた。
アルコールではなかった。それ以前にどうして瓶に入ったコーヒーミルクがあるのだ?
それにしても、風呂上がりだからなのか中身男だからなのか、割とラフな格好している人が多い。
キャミソールとか、タンクトップとか。肌の露出多くないか?
谷間とか、横乳とか、見えちゃっているんですけど。

特に隣の松澤さん、そのタンクトップちょいと大きくありませんか?
脇の下の開放部分が大きくて、こぼれそうなんですけど。
くっ、さっき風呂場でさんざん見ていたはずなのに。
モロ出しではなく、こういう見えそうで見えないものにどうして男ってやつは過剰に反応してしまうんだ!
いや、俺女だけどさ今は。だけど中身男だから。

ここでもあんまり落ち着かない空気で、なんとなく視線をさまよわせていたら……
見てしまった。それを。
リビングの片隅に、さりげなく置かれていた、それを。

『ご自由にお持ちください』
『今回の新商品お試しモデル!』
『使ったらモニターアンケートにも協力してね♪』
『使用後は洗ってこちらに』

何とも可愛らしいフォントでポップがあって、その前に……大人のおもちゃ。

実物なんて見たことなかった。その手のサイトで何となく見たことがあっただけの、ヤバいやつ。
ピンクなローターとか、ビーズがつながっているものとか、男のアレを模したやつとか。
フツーに置いてあるんですけど。
おまけに『ご自由にお持ちください』って、おいっ!

「お目が高いですなぁ、気になりますかぁ?」

バレてしまった。

「いや、いろんな意味で気になりますけど」
「そうですよなぁ、エロいことには興味ありますよなぁ」

どうやら俺の興味あるとは別の意味で興味あると認識したようだ。
ていうか松澤さん近い近いっ! 胸当たってる、いや当ててんのか。
くそっ、谷間が気になってしまう。絶対わざとだな慣れたやつのテクだなこれは。

「『ご自由にお持ちください』だからさ、試して……みる?」







結局流されてしまった。
俺は断ることもできずに、そのまま松澤さんに連行されてしまった。

「んふー、いいですなぁ高宮クン。似合ってますよぉ」

おまけに着替えさせられた。エッチな下着に。

「なんでこんなエロい下着持ってるんですか」
「ウチの商品。お安く買えますぜ」

商売魂はなかなかのものだった。

「ふふっ、エロい格好の女の子二人がいるシチュってよくね?」
「そ、そーっすね」

ひきつったような出しているが、実際のところは確かにテンション高めである。
目の前の鏡、そこに俺と松澤さんが映っている。エロい下着姿だ。
具体的にはベビードールってやつか。
美女二人がエロい下着姿。男としてそそられるのは間違いない事実。

俺が着せられたのはピンク色。どこか子供っぽさを感じさせる色合い。
一方の松澤さんはパープル色。どことなく大人っぽさを感じる。
色だけで随分と印象も変わるのか、と感心するのだが、それよりも……露出が多い。

俺も松澤さんのも生地が薄い。だから体がスケスケ状態。
俺のはブラのカップのところもシースルーでおっぱいがよく見えるし。
それだけじゃなくて、どういうわけか先端の乳首のところだけが、かぱっと開いている。露出している。

一方で松澤さんのはカップのところがそもそも生地がない。
ブラの形をたどったフリル付きの紐があるだけで、そこからおっぱい露出。
もはやブラとしての機能は存在しない。

さらには俺も松澤さんのも下はTバックで、おしりが大胆にあらわに。
それだけでなく、前は大事なところのがぱっくり割れている。
重要なところが、露出状態。

「ウチの会社、こんなひどいもの売っているんですね」
「極上の間違いだろ?」

俺の指摘もなんのその、商売魂たくましいアピール押しだった。
それともう一つ気になることが。

「なんで松澤さんの部屋の姿見、こんなデカいんですか?」

この姿見、妙にデカいのだ。
俺の部屋にある姿見はごくごく一般的な縦長の普通サイズ。それでも十分自分の姿は映る。
一方でここにある姿見は妙に幅が広い。普通サイズの倍以上ある。
これダンスレッスンする場所にあるような奴じゃないのか?

「この方が二人しっかり映るだろぉ?」

そういうことかい。
しかもそのセリフからするとほぼ日常的にだれか連れ込んでるってことじゃないのか?
やばい、俺オオカミの折の中に入っちゃったかもしれない。

「そう緊張するなって。ほら、始めてみようか」
「え、ちょっ……!?」

いきなり始まった。松澤さんか俺の手をつかみ、自分の股間に導いて。
そして、ショーツの上から、触らせる。

「あ、あの……」
「んっ、こうしてマッサージから始めるんだよ」

俺の手を放そうとはしない。俺に密着して、自分の体を俺に預けるようにして。
懐に入り込むような体制だと思っていたら。さらに開いていた俺のもう片方の手を、自分の背後からまわすようにして、胸を触らせる。

「へ? ちょっ……」
「ほらぁ、もっと好きにさわっていいんだぜぇ。そのための時間なんだからぁ」

あ、うあ。おっぱいやわらかぁ。
さっきも風呂で触ったばかりなのに、また揉んでしまっている。
あう、この柔らかさは飽きがこないよ。いつまでも、何度でも……

「ふふ、その気になってくれたね?」
「あ」

気が付いたら自分から松澤さんの体をまさぐっていた。
誘導した手はとっくに離れていて、俺自ら積極的に動かしている。

「止めなくていいんだよ、こっちも触らせてもらうから」
「ひゃっ!?」

同じようにして松澤さんも俺の体に触れ始める。
背後から回した手が俺のおっぱいを揉み、前は俺の手と交差するようにしてショーツの上から。

「あ、んっ……」
「んふふっ、あるはずのものがないって感じちゃうよなぁ」
「う……」

その通り、自分でやった時と同様、プチパニックを起こしていた。
つい数日前までそこには確かに男のアレがあったのだ。
俺は紛れもなく男。だが今そこには何もない。正確には別のものが存在するようになっている。
頭の中ではいまだそこは物体が存在し、今の出来事に勃起している。

しかし、こうして触られると存在しないことをまた頭の中で理解させられる。
幻肢痛だっけ? 腕とかなくなった人が、ないはずの腕の痛みを感じてしまう現象。
あれと似たようなもの? だから幻肢勃起?
変な単語を生み出してしまった。

「すごく絵になるよねぇ、これ」
「あ、はい……」

鏡の前にいる美女二人、それが密着してお互いの体をまさぐっている。
立っていられなくなり、自然と二人ともベッドに腰を下ろしている。
そして密着してお互いの股間に手を伸ばし、おっぱいを揉み、実にけしからんことをしている。
一方は、自分自身。まだ慣れない自分の姿だから、エロ動画を鑑賞している気分だ。

「テンション上がってきたろ? 女の子は準備が大切なんだよ」

ショーツは穿いている。しかし大事なところは露出している。そこに指が触れている。
だからわかる。松澤さんのあそこが、もうすっかり濡れてしまっていることに。
それは俺も同じこと。触られて、感じてしまって、濡れてしまっていることに気が付いていた。
そして体の感度が上がっている。秘部をマッサージされて、胸を揉まれて、それによって流れる体への電流が大きくなっている。
感じてしまっている。自分で触れていたのとはまた違う。触られるのは、妙に……

鏡を見れば俺も松澤さんもとろんとした表情。
色気だっている女の顔。トロ顔というのだろうか。いい表情だ。
鏡でなく、直接見る。松澤さんの素敵な表情が目の前にあった。
視線が合う。見つめ合う。恍惚とした表情で、素敵だった。それで、距離が近くなって……

キスをした。

舌を絡め合って、唾液を交換して、結構激しいディープキス。
そしたらまた感度が上がった気がした。体が感じやすくなっている気がする。
素敵な時間。そんな気がした。それがずっと続きそうで、でもそうでない。
松澤さんが、そっと離れた。

「あ……」
「そんながっかりした顔しないでよ。素敵じゃん」

そんな表情していたのが自分。結構流されてしまっていたな自分。何やってんだ自分。
なんとなく恥ずかしい。ちょっとやりすぎたんじゃない?

「でもがっかりしなくていいよ。これからが本番」

そう、本番だ。ここまではまだ事前準備。
本題は、だ。あの『ご自由にお持ちください』の一品を試してみること。
その道具を松澤さんは手にする。

……双頭ディルド

「えげつないぐらいリアルですね」
「そりゃあウチの社員開発ですからねぇ」

元男だからのこだわり、なのか?
細長い棒状の物体、男のアレを模した形状。
根元から背中合わせにドッキングさせた、女同士でやるために作られたヤバイやつ。
おまけに色合いとか光具合とか、妙にリアルなんだけど。
中央部分は唯一プラスチックでできているが、それ以外は本物そっくりだ。

要するに、さっきの『ご自由にお持ちください』のところに置いてあった一つ。
実際販売するにあたって利用者の声とか、集めたいのだろうか。
普通こんなのテストモデルなんて簡単にできるはずもない。
が、身内にいっぱい興味津々な方がいるのだから無料貸し出しして使ってもらえばいーじゃん、ということなのだろうか。
うん、興味があるのは否定しない。

「ほれ、興味あったろ? 触ってみ」
「うわぁ……」

触らせてもらった。すっげエリアル。
こうしてまじまじと見るとかなり作りこんでいるのがわかる。触った質感もかなりリアルだし、これ本当にゴムなのか?
しかもちょっと熱を持っている。内蔵電池で熱具合も再現しているらしい。
いい具合の熱さ、というかぬくもり。確かにこんな感じの熱持ってたな。
反発力というか、固さ加減というか、恐ろしく開発者のこだわりのようなものがあるのか。

それにしても……デカい。
手にした感じでもわかる。なかなかの太さだ。これ男子平均より大きいよね?
俺こんなサイズだったかな? ふん、俺なんてどうせ小さいよ!
これ……本当に入るのか?

そう、だよな。これ、今から……挿入するん、だよな?

「じゃあ、いっしょに、つながってみようか?」
「う……」

座っていたベッドにそのまま仰向けに寝かされる。
その上に、俺の上に松澤さんは膝立ちの体制。当然のように手にはアレ。
そっと松澤さんの入口にあてがう。同時に俺の入口にも触れる。
ほ、本当に、挿るの? え、ちょっと、なんか、こわい……
ちょっと待って、という前に……静かに入ってきた。

「あっ」
「んんっ!」

まずは先端。驚くぐらいにゅるんと、滑らかに入ってきた。
さっき前戯をしっかりやっていたからか、濡れたアソコが潤滑油の役目を果たしたか。
松澤さんも同じく、ゆっくりと自分に入れていく。
ゆっくりゆっくりと。少しずつ、確実に。

その作業に、俺は接続部を凝視していた。
かつて経験したことのない事態。自分の体の中に、異物が侵入していく出来事。
熱を持った、ぬくもりのあるそれが、俺の中に入ってくるのがよくわかる。
入ってしまうその光景に、驚きと恐怖と期待が入り混じった、不思議に気分で見守っていた。

「ほうら、全部入ったぁ♪」

奥まで入った。それを感じる。これ以上は入らない。
松澤さんもそれを確かめて、膝立ちだった体制から俺に覆いかぶさるようにそっと体を預ける。
ディルドの根元は思いのほか柔らかいらしい。柔軟に動いているのがわかる。
密着するも松澤さんの体。おっぱいが重なり合って、先端の固いのが触れ合って、ちょっと感じてしまう。

「しばらくは動かないでぇ、挿った感触を感じるのぉ♪」

松澤さんが俺にしっかり抱きついて、しっかり密着する。
俺もそれを拒否することなく、手や体が触れる感触を確かめながら、視線も合わせる。というより見つめ合う
下はしっかりつながっている。外れないように、変に動かないように、足も絡め合って。

そして、舌も絡め合う。

距離が近いから、自然とキスをする。ちょっとだけ巨乳が邪魔だなぁ、と思いながら。
そうしながらも松澤さんの言うとおり、挿入された物体の感触を感じる。
俺の下腹部は既に熱を持っている。それと同じような温度で、わずかに高い温度の物体がさらに温めていく。
元々そこには挿入するための男子のそれがあった。が、今では逆の状況。
外で感じるはずのものが内側に存在し、そして内側にあることを挿入されてより実感する。

挿入されている。そう感じるだけでさらに高揚する。
そして確かめているうちに、さらに上に行きたいと思うようになる。
さらなる高揚に……

「んっ……」
「んんっ……!」

言葉もなく、示し合わせたように俺と松澤さんは動き始める。
腰を前後に、ゆっくりと動き始める。するとディルドはお互いの中で動き合う。
きゅっと下腹部に力を入れればそれは抜け落ちることなく、ゆっくりと内側からマッサージする。

下腹部だけでなく、体全体も絡め合うように。
おっぱいがよく絡む。立体的な形状が、谷間同士が交差したりして。その先端がお互いを刺激し合って、さらに感じてしまって。
俺は上にいる松澤さんのお尻に手をまわしていた。
接続部が外れないようにするため、という口実でぷにぷにのお尻の感触を楽しんでいた。

「もう、清彦クンったら……えっちぃなんだからぁ♪」

当然わかるだろ。自分のおしりが揉まれていることなんて。
別に知られたからどうってことはないけど。でも後が怖いか? そんなことはその時考えてなかったが。

次第に密着していた体は離れて、より動きも激しくなる。
接続部に意識を集中するように、松澤さんは起き上がって、その方がよく腰を動かせる。

「あ、はぁんっ……♪」
「ん、そこっ、いぃ……っ♪」

女の子には感じやすいところがある。そこをお互いに刺激する。
ゆっくりと丁寧に刺激することで、より気持ちよく、感じやすく、高揚していく。
残念なのはどんなにリアルであったとしても、所詮は偽物。
本物であればより松澤さんを感じ取れたのに、松澤さんの中で感じられたのに。
逆に本物であれば松澤さんを受け入れて、俺の中で感じることもできたのに。

……そんな恐ろしく馬鹿なことをその時は考えてしまっていた。

とにかく、気持ちよかったからまともな思考が働いていなかったんだ。
それぐらい俺も松澤さんもテンション上がってて、夢中になって。

「あ、やっ……そろそろっ、イキそうっ………!」
「んっ、いいよっ……俺も………っ!!」

離れ、意識を接続部に集中していたが、再び密着して。抱き合って。
体を重ねて、接続部と、体全体でも動き合って、絡め合って、より深く感じ合って。
ゆっくりと、確実に、お互いを確かめるように、そして……

「い、イクっ………んんっっーーーーーっ!!」
「ふぁ、んんっーーーーーーっっ!」

キスして、お互いの声を封じて……絶頂をむかえる。
女のイクは一部分だけじゃない。全身で感じるもの。
体全体が強く感じて、電流が駆け巡って、最高の快感を与えてくれる。
どくどくと接続部からは液体があふれてくる。ああ、これ、女の子の潮吹きってやつ?

「はぁ、はぁっ……」
「もぅっ、清彦クンったらぁサイコーだねぇ」

脱力感でぐったりしている俺に松澤さんがキスの嵐。
応えることができずにされるがままだが、可愛がってもらえてなんだか幸せな気分。
しかし女の子って本当にすげえなぁ。これ、ホンモノを挿れられたらどうなっちゃうんだろ?

「でもでもぉ、まだ一回目だからねぇ」
「え?」
「今晩は寝かさないよぉ♪」

なんということでしょう。松澤さんのスイッチが入ってしまったようです。
自分、過労死しないかな?







「きのうはおたのしみでしたねぇ」

朝食の席、シャワーブースでお楽しみだった西園寺さんから俺と松澤さんにそんなこと言われるとなんか腹立つ。
あんたたちもお楽しみだったろうが! と言いたかったが、そこはこらえる。

美女と朝チュン、とはなんと最高なシチュエーションでしょう。
そう思ったのは一瞬、すぐに昨晩の情事を思い出してしまい、顔を真っ赤だか真っ青にしてしまう。
あわてて松澤さんの部屋を抜け出し、汗だかなんだかよくわからないもので汚れてしまった体をシャワーで流す。
体を流れる温水で、自分の体を妙に意識してしまって。
下は挿入された感覚が残っていて、男として女を自覚してしまった妙に違和感に悩む。

そして着替えてイマココ。
一方の松澤さんは実にさわやかな笑顔で。西園寺さんから同様に茶化され「ふふっ、新人君は実に」などとほざき始めたので思わず先輩をスリッパで殴ってしまった。

社会人になったら学生の常識は通じないって誰かが言っていた気がするけど。
これは学生どころか世間の常識も通じないのではないだろうか。
慣れるしかないのだろうか。
俺、やっぱり就職先間違えたかな?
今後、俺はこの会社で、この生活をやっていけるのだろうか。

もう、悩んでも遅い、かな?
掲示板にアップしていたものの再編。
ちょっと追加。
XJ
0.2440簡易評価
7.100きよひこ
入社希望なのですがこの会社の求人情報は何処に掲載されていますか?
31.100きよひこ
入社したい
39.100きよひこ
入社させてください!