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艦娘改造報告書『素体番号B-224:駆逐艦満潮』

2020/07/29 21:51:45
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【素体情報】
測定日 :20△△年4月12日

名前 :二宮 涼(にのみや りょう)
性別 :男性
年齢 :11歳
生年月日 :20××年12月7日
血液型 :A型
身長 :147.2㎝
体重 :39.2㎏
視力 :左 2.0 左 1.7(裸眼検査)
心電図 :異常なし
筋組織 :良好
レントゲン:異常なし
内臓機能 :良好
歯科検診 :良好
尿検査 :異常なし
病歴 :なし
学力 :良
特記事項 :50メートル走 8.11(4月19日測定)

肉体の状態:極めて良好
総合判定 :S
艦娘適正 :S

【身体検査所見】
身体能力、筋組織、健康状態すべて極めて良好。改造後も適正なメンテナンスにより
長期間使用可能と判断する。

【以下 付帯情報】
家族構成 :両親と本人。改造後は要手当支給。
学校での様子:性格は大人しく、物静かだが勤勉。俊足からリレーではアンカーを務める
ことが多かった。授業態度や学校での態度は良好で、周りの生徒からも
優等生と言われていた(小学校5年 担任)

【経緯】
4月12日、双葉小学校にて実施の身体測定時に小学校6年生全員に簡易適性検査を実施。
駆逐艦としての適正Sランクを記録した。その後横須賀鎮守府病院にて精密身体検査および
適性検査を実施し、駆逐艦「満潮」として最適性と確認。改造処置を決定。

【注意】
男子のため、改造前に性転換処置の実施が必要。改造工程を2日追加のこと。

【健康促進法】
20〇〇年4月1日施行。6歳から22歳までの男性および女性の健康状態維持を目的として
年1回の健康診断を義務付けるものとする。また、入社時については会社がすべての社員に
健康診断の実施を義務付ける。なお、学生は学校で実施する身体測定の結果を代用して
差し支えない。

【艦娘改造処置特別法】
健康診断および身体測定時に艦娘としての改造適正「A」以上の人間について、海軍大将は
精密健康診断および艦娘への改造処置実行を許可し、徴用することが出来る。なお、艦娘と
して徴用する場合、改造後に徴用者の家族に対し保証金1億円を給付することを義務付ける。

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20〇〇年。深海から突如現れた謎の生命体(以下、深海棲艦と表記)により海路および
航空路は破壊、寸断され、各国の軍隊が掃討に向かうも悉く壊滅、人類滅亡の危機を迎えた。
有効な対抗手段を打つことのできなかった人類は、沿岸部の小国から中心に壊滅していき、
わが日本国も例外ではなかった。
深海棲艦が神奈川県横須賀市を強襲した際、突如として現れた艤装を付けた少女(以下、艦娘と
表記)により深海棲艦が初めて撃破される。「吹雪」と名乗る少女を初めとした数名の艦娘に
より、日本国では艦娘の撃破が進むようになったが、絶対数が不足していた。

日本国海軍研究開発部では艦娘たちの協力および、撃破した深海棲艦を研究することで、6歳
から24歳ごろまでの女性および、第二次性徴を迎える前の男児に限り、艦娘へ改造する研究を
発表し、少数ながら艦娘を「建造」することで戦力の増強を図り、深海棲艦を押し返すことに成功した。
現在は艦娘の「建造」技術が確立し、ランダムながら無から精製することが可能となり人間を
改造することはなくなったが、技術的観点および未来への伝承を鑑み、改造適正者である
「二宮 涼(11歳男児)」を駆逐艦「満潮」へと改造した一部始終を、以下の報告書に記する
ものとする。

この報告書は、改造適正者「二宮 涼」の検査および改造を行った者が合同で作成している。

【双葉小学校身体測定担当 脇屋 進】
今回担当した双葉小学校は、全校生徒が600名程度の比較的大きな小学校だった。私は6年生男児
57名の内科検診を担当することとなった。内科検診の項目として聴診器による呼吸音、心雑音の確認、
下瞼および喉の目視があげられるが、喉を確認するに用いる舌圧子には特殊な加工が施されており、
舌圧子に唾液を付着させることで、1時間程度で結果が分かる簡易的な改造適性検査が行われる。

適正者であった二宮 涼は、大きな奥二重とほっそりとした身体つきの、見た感じでは特徴のない身体つき
であった。目は一重ながら大きくクリっとしており、どちらかというと女の子のような可愛らしい顔立ち
であった。自然に伸びた髪は耳元にかからないように処理されていた。保健手帳を渡す前に「お願いします」
ときちんと声をかけられる、大人しいながらも礼儀正しい少年であったと記憶している。
彼の胸に聴診器をあて、呼吸音と心音に耳を澄ませる。特に問題はなかった。
続いて腹部を触診する。痛みがあるかを確かめながら、彼の腹筋の具合も同時に確かめる。
ほっそりとした華奢な見た目に反し、腹部にはしっかりとした筋肉が息づいていた。
続いて最も大事か検査である喉の確認にかかる。彼に口を開けて舌を前に出すよう指示を出し、
わずかばかり顔を上向きにさせて舌圧子を当てて喉の確認を行う。非常にきれいに保たれていた。
検査に使った舌圧子は通し番号が書かれた袋に入れて保管する。検査番号は名前に紐づけられて
おり、適性検査の確認に用いられる。
下瞼も問題はなく、彼の健康手帳に異常なしの記載を行い手帳を返すと、歯科検診へ向かう指示を
出し、次の生徒の確認に移っていった。

内科検診を終えて1時間。ここからが本番である。
確認した男子生徒57名の舌圧子を確認していく。ビーカーには海軍が開発した専用の検査液を
満たす。リトマス試験紙の要領で舌圧子を浸すことで、艦娘としての適性と、その具合が簡易的
ながら明瞭に判明する。
流れ作業のように26人の確認を終えた。小学6年生ともなると早い子では第二次性徴を迎えており、
艦娘としての適性を完全に失っている子も多かった。艦「娘」というだけあって、本来女性のほうが
適性を持つ可能性が高いのだが、既に6名が適性を持っていたようであり、用意したチェックリスト
に適正レベルを記載する。「B」以下の生徒しかいなかったが、いざという時に備え適性を失うまで
マークするためだ。
27人目、二宮 涼の検査を行う番である。礼儀正しい彼の顔が浮かぶがそれも一瞬、淡々と
彼の舌圧子を溶液に浸す。すると、彼の舌圧子が金色に変色していく。まさかの適正「S」で
あった。私はチェックリストに赤いマーカーで「S」と記載し、その横にある「精密検査」に
もチェックを入れる。今まで何度かこの検査を行ってきたが、簡易検査ながら「S」適性を
持つ男子を見るのは初めてであった。
最終的に男子生徒で適正「A」以上だったのは二宮 涼だけであった。女子を含めた小学6年生
全体でも適正「A」以上は4名しかおらず、「S」は彼のみであった。
「精密検査」の必要がある場合は、直近5年の健康診断結果を添えて海軍本部へと書類を送られる。
そこで各部位を隅から隅まで確認し、艦娘としての改造適性を慎重に検査されることとなる。

私の仕事および報告はここまで。次の「精密検査」担当の方に筆を譲るものとする。


【日本海軍横須賀鎮守府病院 特別検査主任 加賀美 正邦】
簡易検査にて適性があると判断された少年少女たちに対しては、海軍病院にて精密検査を
行い、さらにふるいに掛けられる。適正者に対しては学校、職場、あるいは自宅に直接という
場合もあるが、身体測定や健康診断の結果に加え「精密検査受診票」が渡されることになる。

受診票には病院の場所と受診日程、集合時間が記載されており、適正者が学生の場合は「特別出席」
扱いとして出席扱いに、就職している場合は出勤扱いとして賃金を保証することが義務付けられて
いる。公には海軍の医療設備はこの国内で最も優れた設備、技能を持つ医療機関による充実した検査が、
若年層の健康を底上げと健康意識の向上、国家による社会福祉の一環とみなされおり、好評をもって
迎えられている。
今回の報告書の対象となる少年「二宮 涼」が受診したのは、適性診断の結果が
海軍本部に送られてから2日後であった。同日にこの病院で精密検査を実施したのは
34名、そのうち男子は彼を含めて3名であった。女子は小学校高学年から高校生が
主流であったが、22歳の客室乗務員を初めとした成人女性が6人いたことが印象に
残っていた。

受診者は朝8時に鎮守府に集合し、病院の会議室で今後の日程の説明を受ける。
3日間にわたって実施される検査はAグループとBグループ、男子の3つに分けられ、
初日は全員、身長、体重を含めた身体検査を詳細に実施する。また、就寝時に脳波や
無呼吸症候群を含めた呼吸器、血圧や睡眠の質を含めた検査を実施する。
その後、AグループとBグループで互い違いに運動能力の測定と、内蔵や胃カメラ、
大腸検査やMRIなどの検査を行っていく。検査に時間がかかることや、大掛かりな
設備は台数が少ないため、2グループに分けて効率的に実施されることになる。
男子生徒をさらに別個として検査を実施するのは、検査項目が女性より多く、専門的な
装置を使用する必要があるので専門的な工程を組んでいく必要があるためである。
これ以降は私が担当した男子生徒グループの様子を中心に「二宮 涼」の検査時の様子を
記載する(以降、彼については涼と記載する)。

男子生徒は小学6年生が1名、5年生が1名、もう一人は1年生であった。涼は説明を
緊張した面持ちで受けていたが、一部説明中に居眠りしている者がいたなかでも、しっかり
と傾聴している様子が印象に残っている。
全体説明の後、男子生徒3名は私が担当する旨を伝え、簡単な挨拶もそこそこに検査を
進めていく。両親と別れたことが不安だったのか、泣きじゃくりだした1年生の少年を
涼が終始あやし、励まし、宥めてくれたことで検査を円滑に進めることが出来た点は、
記録として残すべき事項だと考えられるためここで記載しておく。

まず検査の初めに、少年たちの利き腕に黒い樹脂製のチョーカーをつけてもらう。
このチョーカーによって、検査中の血圧や脈拍、基礎代謝などがリアルタイムで測定される。
もちろん彼らには結果を明かすことはなく、血圧や脈拍検査は別個に執り行い、その際の
記録を記載する。
同時に少年たちには赤い溶液を飲んでもらう。カモフラージュのためにリンゴジュースの
味を再現しているため、皆躊躇うことなく飲み干してくれた。この溶液は翌朝の尿検査に
必要となるため、検査前に必ず飲ませることとなっている。

初日の検査については学校実施の身体測定に沿った内容で行われるため、精密検査時のみ実施
された項目を中心に説明する。

検査の際は専用の検診衣を着用させる。白地のガウン型のそれは、特殊な加工を行っていないが
検査時の衣服の着脱を効率化するため、ボタンで簡単に固定できるような簡単設計となっている。
最初に身長、体重や座高の測定を実施する。体重の詳細な測定のため、検診衣を脱がせた裸の
状態で実施させる点、身長の測定は海軍が開発した4方向同時撮影型の検測機で行われることが
身体測定時と異なっている。
裸となった状態で検測することで、身長のみならず、腕や足、顔など身体の各パーツごとの長さや、
小さいほくろの位置さえ判別できるといわれる高解像度撮影を行い、各方向から撮影した画像を
組み合わせることで対象の人間を3Dモデルとして記録する。99.7%正確と言われる高精度
モデルを被験者ごとに作成し、これらにその後の検査情報を書き加えていく形で実施されること
になる。
続いて視覚検診に移る。視力のみならず動体視力や色覚検査、視覚からの反応時間測定などを
含めた目の機能を細かく測定し、記録していく。また、アレルギー性結膜炎などの目の疾患に
ついてもここで確認する。3Dモデル化された彼らの外見図はカルテとしても機能しており、
担当医は検査内容を入力することで、本人に持たせることなく各種項目を記録できる上、速やかに
共有されることになる。
視覚検査のあとは聴力検査、歯科検診と進んでいく。聴力検査は各周波数ごとに片耳ずつと、
両耳同時の検査が行われる。歯科検診は内容はそこまで変わらないが、歯の状態を記録する
ため口内を撮影する。口を限界まで開かせることで口の大きさも同時に記録される。
撮影された画像も3Dモデルに記録される。
その後は問診や内科検診を行った後、胃カメラを実施し、女性については初日の検査はここで
終了となるが、男子については追加検査を実施することになる。
胃カメラの際に軽い麻酔を吸引させられているため、全員が少しうつろな表情をしている。
この麻酔が覚めた後に食事を取らせるため、検査日程は余裕を持って設定されている。

男子生徒に対しては、うつろな状態でも実施できる検査のみ行われる。3人ともベッドに
横たえられ、検診衣を軽くまくられ腕が露出されている。担当医は彼らの様子を確認し、
腕に白い紙をあてて放置する。小学5年生の少年のみ色が青色に変わり、1年生の子は
うっすらと赤みを帯びた程度に色が変わったが、涼については変わることはなかった。
さらにぼんやりと眺めている少年たちの口を開け、舌に当てて唾液を回収するとすぐに
抜き取り、しばらく放置する。涼の唾液が付着した紙が見る見るうちに桃色へ変わり、
小学1年生の子の物は次第に赤色へ変わっていった。
この検査は女性ホルモンに対する反応検査であり、腕に当てる検査は女性ホルモンへの
抵抗を検測し、口の中の唾液を採取した検査は現在の体内にある女性ホルモンの量を
検査するために使用される。これらは男子のみに実施され、ここで女性ホルモンの
抵抗が少なく、体内に多いものは改造適性が高いことが多い。
続いて検診衣の下部を開け、彼らの陰部、肉棒を確認し撮影する。包茎部分は手でめくり、
軽くさすって彼らの様子を確認する。涼が顔を赤らめて軽く喘ぎ声をあげているのみで、
残り2人は特に反応せず、1年生の男子に至ってはすでに夢の世界に落ちていたようで、
すやすやと寝息を立てていた。
これは簡易的な性徴調査であり、朦朧となった状態での陰部への刺激を確認することで、
感度や陰部の状態を確認し記録する。これに関しても改造の目安として使用される。
これらの検査を終えた後は検診衣の乱れを戻し、ぼんやりとした眼の瞼を閉じながら手を
当てておく。適度に温められた蒸しタオルを手の代わりに乗せしばらく放置すると、2人の
少年もゆっくりと寝息を立て始めた。

性徴検査開始から3時間後、夜7時に女子生徒を含めて一斉に食事を取らせる。
食事についてもAグループとBグループに分けられ、食事内容が若干異なっているが
基本的に同量、同内容の食事が提供される。排便検査や尿検査、同エネルギーでの
運動量の齟齬を最小化するため、宿泊日程を組んでいる理由はこれが大きい。
Aグループと男子生徒にはこれらに加え、1乗の丸い薬と水が提供され、全員が飲まされる。
その後Aグループについては解散となり、10時就寝を言い渡されて自由時間となる。
Bグループについては全員が同時に風呂に入り、9時就寝となる。その際に頭、鼻、足の先
や手首、胸など全身に電極や検査器具が取り付けられ、起きるまでの間に脳波などの測定を
実施することとなる。なお、Aグループは翌日工程であり、今晩は別の検査が実施される。
検査の際は一人一部屋があてがわれ、食事の制限や通信機器の使用禁止が言い渡されるが
それ以外は自由に過ごすことが出来る。検査の中で仲良くなったのか、涼の部屋に男子たちは
集まり、就寝手前まで雑談に興じたり、1年生の少年を遊んであげたりしていた。
彼が眠ってしまったため、看護士に預けて部屋に戻したようだ。

やがて夜10時となり強制消灯。全員がベッドに入る。睡眠の様子は検査の有無を問わず全員が
モニターされると同時に、特殊なカメラにより眠った時間が計測され、表示される。Aグループは
全員が10時半までには眠りにつき、部屋には静寂が訪れていた。ちなみに、涼は10時8分に
眠ったと判断されていた。
3時00分。Aグループと男子生徒に対する追加検査が実施される。
涼の部屋には3時5分に検査士とともに入り、部屋の電気をつける。涼は目の覚める気配もなく、
すやすやと寝息を立てていた。
私は涼を後ろから抱きかかえる形で上半身を起こし、頭をもたげさせて支える。力を失ったように
自然と口を開け始めたため、検査士がシリコン製の開口器で口を固定し、胃カメラを挿入し胃の
中身を確認する。
彼らは就寝前に1錠の薬を飲んでいるが、これは就寝時と就寝後5時間程度で深い眠りに誘うよう
調整された睡眠薬である。起床時には影響がなくすっきり目が覚める、海軍が開発した薬を用いて、
彼らの胃の消化量、容量を確認する。夕飯の量がどの程度残っているか、どの程度の消化スピード
なのかはそのまま艦娘に改造した後の燃費に相当し、適性を検査する上では重要な指標の一つと
なるため必ず実施される。ちなみに消化が速いほど大型艦の適性がある可能性が高くなり、
消費量が少ない場合は軽巡洋艦や駆逐艦、海防艦の適性が高いことが多い。涼の場合は胃の中に
形を変えながらも量が残っているため、恐らく軽巡か、駆逐艦であろうと判断され、カルテにも
記載される。検査後は着衣を戻し、痕跡を残さぬように元通りに寝かせた。

ここまでが初日の検査であり、翌日は運動能力の検査が中心となる。

翌朝6時、海軍式で言うところの「総員、起こし!」と呼ばれる起床時間である。
概ね8時間程度の睡眠をとらせ、全員を起床させる。眠い目を擦りながらも懸命に
起きた彼らを体操着に着替えさせ、早速洗面所へと誘導する。昨晩から着用させて
いた寝間着についても鑑定に掛けるため、そのまま処置室へと送る。
洗面所には一人一人、それぞれ専用の便座が用意されており、女性には吸盤状の、
男子にはコンドームのように、ゴム式のカバーを尿道に接続する。あとは彼らに、
排泄行為を行ってもらう。カバーの先は専用の機械へと、大便は便座の下にタッパー
が接続されており、それぞれそのまま専用の検査に掛けられる。大便については
通常の検査に加え、構成素の検査も同時に行われるが、尿検査については別の内容が
ある。
搾取された尿はそのまま専用の機械に移り、特定の電波を照射され、黄色を帯びた
液体と、赤みを帯びた液体に分裂される。黄色い液体は彼らの尿であり、そのまま
精密検査に掛けられるが、赤みを帯びた液体には別のものが詰まっている。
この液体の正体は、昨日朝に彼らに飲ませておいた赤い溶液である。昨日摂取させた後、
新陳代謝に従い彼らの体内を循環し、約1日後に体外へと排出されるように作られた
この溶液により、体内隅々の要素を収集される。これを専用の機械に掛けることで、より
正確かつ確実に、艦娘しての適性、そのレベルを判明させるのである。
ちなみに溶液による涼の適性は、駆逐艦がSランク、海防艦がBランク、軽巡洋艦がDランク
で、そのほかの艦種はすべてEランク、すなわち最低ランクであった。

排尿を終え、身なりを整えると朝7時からは朝食である。運動検査を実施する彼らの食事は、
それぞれによって異なった内容で提供される。昨晩、就寝中に実施した胃内容物検査により
各自に最適な食事内容を選出し、大体腹7分目程度になるように作成される。正確に測られた
内容により、男子、女子ともに残すことなく完食した。
運動検査は10時からの実施され、その前の1時間で別の検査を実施する。一人ずつ専用の
部屋に呼ばれ、立った状態でふくらはぎ、二の腕、腹筋など、運動に主要となる筋肉に電極を
取り付け、微弱な電波を流す。筋反応検査と呼ばれ、電極による外部からの刺激への反応、
それに伴う筋肉の動きを測定する。高精度スローモーションカメラによって撮影された映像に
より、筋肉の動きはより正確に、より確実に記録される。

10時からは運動検査に移る。体力の多い状態から実施できるように行程を組まれ、短距離走、
ボール投げ、腹筋や背筋、腕立て伏せに上体起こしなどの基礎的な項目から、変わった内容と
してエアガンを用いた射撃訓練など、様々な項目を流れ作業のように実施していく。これらの
運動の際の代謝や疲労、筋肉の動きなどについては腕に付いたチョーカーから随時発信されており、
専用のカルテに記載されていく。涼の肉体については足の速さは事前情報から判明していたが、
瞬発力と身体の柔軟性、持久力にも優れていることが判明した。その分、パワーが必要となる作業に
ついては若干不得手としており、回避型の戦法が適しているとカルテには記載されている。

これらの作業を午前中に終わらせ、水分を補給させた後は1時間の休憩となる。この際に、後程の
検査に差し支えるため食事はさせないことになっている。成長期である涼も不満そうではあったが、
それより1年生の子がぐずりだしてしまったため、あやすのにそれどころではなかったのが印象的
であった。
休憩ののち、午後は最後の運動測定としてスタミナ測定に20メートルシャトルランテストを実施する。
男女問わず同時に実施されるこの検査により、スタミナ値を測定していくことになるが、それ以上に
全員に「疲れてもらう」こと、「筋肉を酷使してもらうこと」も重要となる。
持久力に優れた涼は全体でも3番目に高い成績を残していた。運動測定全般の内容も良好で、
素体として非常に高い適性を持っていることがここからも伺うことが出来た。

シャトルランテストも14時には終了し、全員にスポーツドリンクを摂取させて、待機室へと
移す。リラックス効果のある音楽をかけて、1時間程度休息を取らせる。その際に眠っても
構わないと指示は出しているので、中にはすぐに突っ伏したまま眠った少女も散見された。
涼は眠そうな目を擦りながら何とか耐えているようであったが、次第に睡魔に囚われていった
ようであり、14時28分に意識を消失していることが記録されている。

全員が寝静まると、検査員が待機室へと入り、状態を確認する。頬を叩いたり、瞼を開ける
事で反応を確認し、ストレッチャー、ないしは車いすに乗せて検査場所へと運ばれていく。
この場で起きた場合については別の部屋へと輸送されて睡眠処置を取ることになるが、今回は
該当者はなかった。涼は口元から唾液を垂らしながら、深い睡眠状態へと入っていることが
されたため、車いすに乗せて検査室へと運ばれる。
先ほど飲ませたスポーツドリンクには利尿および下剤の効果を持たせた専用の睡眠薬が混入
されており、本人たちの無意識、および半覚醒下での作業が実施される。本人たちは1時間
程度は深い眠りに、次第に浅く、半分起きているような状態での眠りへとコントロールされ
検査を実施する。
涼は検査室に運ばれると服を脱がされ、裸の状態でまずは便座へと座らされる。朝同様、
ゴム式のカバーを尿道口に設置し、腎臓のあたりおよび臀部に電極を設置する。専用の電波を
流すことで、強制的に排尿および排便を実施するこの検査は、今回の運動によりどの程度の
エネルギーを消費したかを便および尿の構成素から測定する。同時に昨晩と同様、開口器に
よって口を開けさせて胃カメラを挿入、胃の内容物についても検査を施されている。

この検査を終えると、次は専用の椅子に座らせ、イヤホンとバイザーをセットし、映像および
音声を再生する。睡眠薬の効果で次第に半覚醒状態に向かう際に、彼らに軽い暗示をかける
ための物である。疲労させることで外部からの刺激を受容しやすくなるため、この段階で被暗示
検査を実施する。艦娘に改造する際に人格等をすり替えるため、暗示にかかりやすいかどうかも
検査項目として重要なものとなる。涼の場合は暗示の誘導に従い時間にして約5分ほどで、
バイザー内で目を開いたことが確認されている。その後約3分で暗示にかかっていると機械が
診断したため、バイザーとヘッドホンを外し、虚ろに見開かれた目の前で反応の検査を施される。
十分に暗示にかかったと判断された涼に対し、耳元でベッドに移るように指示を出すと、ふらりと
立ち上がり、自らの足でベッドへと向かい横になった。

ベッドの上に横たわらされた涼の全身は、専用の機械によってスキャンニングされる。
この特殊な光により、全身の筋肉その他、運動によってどの程度消耗したかを検査される。
検査の際は身体が動いてしまうと正確な値が測定できないため、こうして催眠状態に
落とし込む作業が必要となってくるのである。測定後、深い催眠状態に落ちていると判断された涼は、
そのままシャワー室へと連れていかれ、全身を洗浄される。運動後の汚れを落とすことと同時に、
外部から継続的に刺激を与え続けることで、暗示が解除されるかどうかをテストする項目となる。
洗浄終了後も催眠状態から抜け出すことがなかったと確認された涼は、そのままバスタブへと誘導され、
そこで30分程度待機することを命じられる。虚ろな目をしたまま、バスタブ内にて手足を伸ばして
待機している間に、涼の肉体の修復が進んでいることがデータから転送されてくる。このバスタブ
には「高速修復材」を大幅に希釈した液体で満たされており、翌日以降に備え肉体の損傷を元に
戻すことに加え、身体とこの液体の相性を確かめる大切な作業となっている。

バスタブへの入浴終了後、再度全身をスキャンした後は、そのまま問診および筆記での回答が行われる。
この地点で被験者全員が催眠状態に入っているため、本人確認および基礎的な質問事項、さらには自慰行為等
についてのデリケートな話題についても確認される。筆記での確認事項も同様で、これらに加えて1日および
1か月単位での生活スケジュールを記入させ、提出させる。催眠状態に落とされた被験者たちは、目の前の回答
用紙と質問を受け、脳に記録されているデータを自らの意志で検閲せずにそのまま吐き出す装置と化しており、
一切の隠し事なく情報が加えられていく。これらが終了した後は再度処置室に入り、催眠状態を解除し就寝
させる。この際、今回掛けられた催眠に再度導入出来るよう、キーワードを埋め込ませることになっている。
適性があった場合、後々これらのキーワードを用いて確保されることになる。

午後7時、2日目の夕食となる。心なしか眠い目をしているが、夜に就寝させるため、完全に
眠気を取り去らないように起床させており、その分食事量も控えめとなっている。
食事中の会話内容を確認し、全員がシャトルランテスト終了後に疲れて眠っていたと証言している
ため催眠状態の継続および、終了後に掛けた暗示が機能していることを確認が確認できた。

Aグループおよび男子については本人たちは「風呂に入っていない」ことになっているため、
食事終了後に速やかに全員を入浴させ、就寝の手配にかかる。全身へ検査器具を取り付け、午後9時に
強制的に消灯させ、就寝となる。なお、睡眠時の呼吸や脈拍の検査となるが、こちらについては
睡眠薬の投与や催眠による暗示は原則行わず、自然に眠らせて一晩の様子を確認する。疲れていたの
だろうか、涼は9時5分に就寝したと記録されていた。
この日の深夜は就寝時の記録確保が目的となるため、特段これ以上の検査は実施しないが、裏では
艦娘適正の話し合いが進められていた。この地点で涼は既に「改造」がほぼ決定し、スケジュールの
調整や、種類の吟味が進められていたことを、ここに記載しておく。

精密検査最終日。前日と同様、朝6時に起床させて全員の顔色を確認し、尿と便を採取する。
それに加えて朝食前に血液を採取して朝食となる。運動検査を前日実施したため、当日は
通常のメニューを提供している。

Aグループと男子は大掛かりな器具を用いた検査を実施するため、朝食後すぐの検査となる。
男子3名はそれぞれ別の検査を実施するため、この先は涼の検査のみの記載となる。
まず実施するのは全身のレントゲン検査となる。MRIのような器具に海軍が開発した専用の
防護服を着用させ、30分程度かけて全身の骨格を撮影する。通常、X線は照射しすぎる
ことで身体に悪影響を及ぼすが、この防護服を着用させることでその影響を大幅に低減し、
長時間の撮影を可能としている。
検査終了後、次の器具検査まで時間があるため、この間に心電図検査と肺活量検査を実施して
時間を調整する。この検査はベッドがあればどこでも出来るため、合間で実施することが多い。
検査終了後、MRI検査(改)を実施する。こちらも海軍が改造したMRI装置を用いて
行われる。従来と比較して高精度、高解像度の装置を用い、全身の筋肉から血管、内臓を
含めて精密に測定される。難点として身体が動いてしまうとブレが生じるため、通常は深い
睡眠状態あるいは厳重に固定して実施される。涼の場合、昨日の暗示が非常に深くかかっている
ことが確認されているため、試験的に後催眠を用いて身体を動かさないように命じて検査を受け
させたところ、特段問題なく実施出来た。今回の評価を用い、暗示にかかりやすい被験者については
催眠を用いての検査も実施されるようになっている。なお、他の男子生徒については暗示の効果が薄く
なってきていたため、催眠ガスを用いて睡眠状態での検査実施となっている。これらの検査により、
外見、内臓、各種カメラによる消化器官の中まですべてを自由に閲覧可能な3Dモデルが作成される。
運動による演算も可能であり、身体能力とその限界なども、非常に高い精度での演算を可能とし、
これを用いて適正の最終確認やシミュレートが為されることになる。

通常の場合、睡眠状態に陥っていることが多く覚醒させるために2時間程度余裕を見て
いるため、1日がかりの検査となるが、涼の場合は催眠を用いて実施したため午前中で
検査を終了したため、。検査結果が1か月以内の間に通知が行く旨を伝えて解放とした。
きちんとお辞儀をし、はにかんだような可愛らしい笑顔を見せて帰る様に、「二宮 涼」
としての将来があるのかどうか、少し杞憂な気持ちとなった。

長くなったがこれにて報告を終える。願わくば、今後艦娘への改造が無くなることを希望する。

【日本海軍横須賀鎮守府 第31機密輸送隊 橋口 誠】

今回の被験者「二宮 涼(11歳)」の艦娘への正式な改造が決定し、改造施工日を言い渡される。
私の仕事は期日までの被験者の確保および輸送と、事情説明および後処理となる。

検査の際に本人から提出させているスケジュールを確認し、確保日および手順を決定する。彼に
ついては被暗示性が高かったことから、下校途中あるいは放課後に双葉小学校にて確保することを
決定する。法により1週間以上前には家族への報告が義務付けられているため、被験者が学校に
行っている際に両親に事情を説明した。当然泣き崩れてしまった。胸が痛むが、仕事である以上
割り切り、納得させにかかる。強硬に反発する場合は最悪殺害も許可されているが、どうにか理解
していただくことが出来た。私自身、次女を海軍に確保され、艦娘として活躍していると聞き及んで
いる身であるため、心苦しい話になるが最大限誠意を持って対応することとしている。

それから1週間をかけて、被験者の普段の行動をマーク、その中での実行ポイントの策定、学校へ
の説明を図る。学生の場合は転校措置などの理由で比較的後処理は容易であるが、社会人の場合
仕事の引き継ぎ等、影響に出ないよう手配する必要があるため手間がかかる。しかし、重巡洋艦以上、
正規空母などになる可能性が高いため、大方確保されている。

彼の通学路に、人目に付かない狭い裏路地を発見したため、この箇所にて下校時に確保、催眠状態に
落とす、あるいは昏倒させて移送することで決定。実施日を待つこととなる。また、双葉小学校内にて
情報を収集し、被験者の健康状態に問題がないかを把握する。風邪をひいている場合などは確保日を
ずらす必要が生じる場合もあるが、今回はそのようなことはなかった。
被験者は男子生徒のため、2日ほど改造に工程を要するので少し早めに確保する。当日は体育の授業で
クラス内リレーがあったようで、活躍した彼の溌溂とした明るい笑顔が印象的であった。引き渡し時に
被験者の日常の姿を1枚記録して提出する必要があるため、この時の写真を提出している。

確保箇所は住宅に挟まれた1本道であり、この時間帯は人通りが非常に少ないことも調査済みである。
逃走を防止するため通路の両側を人員で塞ぎ、確保作業に移る。私は腹部を痛めているふりをして道に
蹲る。気性が穏やかと報告があった被験者は、心配して声をかけてきた。さらに痛がるふりをすると
私の背中を支え、屈んで顔を覗き込もうとしてきた。どうやら本当に優しい子のようだ。大切に育てたで
あろう泣き崩れた彼の両親の顔がちらつき、これからの行動に心が痛むが、仕事なのでやむを得ない。
さっそく実行する。
顔を覗き込んできた被験者の首を捕まえ、アームロックの要領で首を絞める。検査結果の通り、見た目に
反して意外と力はあるようであり、予想よりもしっかりと抵抗していた。その彼の耳元に、後催眠用の
キーワードをつぶやく。

「暁の水平線に、勝利を刻め!」

と囁くと、一瞬痙攣した後に、人形の糸が切れたように全身から力が抜けて倒れこんだ。腹部を片手で
支えると、首がガクンと前に折れた。子供らしく、暖かな体温と、運動後の汗のにおいが印象的であった。
すかさず被験者を仰向けにし、表情を確認する。口を半開きにし、太陽光を目に受けても眉を顰めること
なく虚空を見続けていた。

私は待機している他の隊員に車を回すように手配し、周囲に人を立ち入らせないように手配りをする。
また、被験者の耳元に自分で立つように指示を出すと、緩やかに体制を整えて立ち上がり、そのまま待機した。
通常の場合、暗示は1週間程度で効果はだいぶ薄まっており、一時的に無力化したその隙に意識を刈り取るのが
定石であるが、この被験者の場合は現在でも後催眠の効果が十分に確保できていたため、そのまま到着した車両に
乗せ、周りに被験者の痕跡が残っていないかを確認して、海軍科学研究所へと輸送した。その際も被験者は言われる
がまま、意思のない瞳でどこかを眺めながら自分で車に乗り込んだため、催眠の深さを感じ取ることが出来た。

車両に乗り込んだのち、被験者に質問を投げかけるときわどい質問でもすらすらと回答した。陰部を含め、
各部に触ってみたが身じろぎ一つせず受け入れるなど、想定より深い状態にあると考えられる。

海軍科学研究所に到着し、催眠状態にある被験者を荷物ごと引き渡した。到着してしばらくのち、「二宮 涼」
としては戸籍上死亡扱いとされるため、着用している衣服を含め、荷物は原則遺品として家族に返還される。

引き渡し後は1か月から3か月ほどをかけて少しずつ、確実に彼が生きていた痕跡を消去していく。すぐに
消してしまうと違和感を抱かれるため、眩していくかのように少しずつ、確実に手配していく。まずは学校側で
は転校措置を取った扱いにしてもらう。その他にも大会の実績や記録、所属していた習い事などを調べ、そこ
での記録を回収、抹消していく。これらの記録は参考資料として保管されている。被験者の場合は将来的に
有名になっていた可能性は大いにあるが、現在の地点では知名度は低く、比較的軽度に終了した。

これにて私の報告を終える。可能であれば、この報告書が最後になることを強く祈念する。


【日本海軍科学研究所 特殊研究チーム主任 五十嵐 由梨】
特殊研究チームの仕事についてはずばり、各地から集められた検体を、艦娘へと改造することです。
今回の改造計画では12名が艦娘へ改造され、新たな生を受けることになります。内訳は戦艦1
正規空母1、重巡洋艦2、軽巡洋艦2、駆逐艦6であり、1名の男児を除いてすべて女性からの
改造でした。私はこの工程の内、計画の策定と、男子の性転換部分についてを担当することになりました。

私のチームが担当する今回の検体「二宮 涼」君のデータを見た第一印象は「可愛らしい子」でした。
目や鼻、口といったパーツがしっかり整った、きれいな顔立ちに華奢な身体つき、その中にちらほらと
見える大人への兆し、恐らく上手にメイクすればそのまま女の子に見せることも可能ではないか、と
言えるくらいに可愛らしく、愛らしい子でした。駆逐艦適性Sと評価された涼君は早急に確保されるとともに、
適性検査中からすでに最適な艦娘を選定する指示を出されていたため、得られたデータを解析し照合を進めて
おりました。様々な演算、検証を行いながらはじき出された結果は、朝潮型駆逐艦「満潮」ということになりました。

適性Sを持つ検体の場合、艦娘への改造の際に大きな改造を施すことは却って逆効果と
なるため、可能な限りベースの身体を生かしての改造が目標となります。男の子である涼君は
性転換手術は必須となりますが、それ以外の特徴には極力手を付けず、力を発揮できるように
選定する必要がありました。比較的非力ながら、敏捷性に優れた彼と満潮は演算の結果、最も
マッチする結果となったため、正式に承認が下りました。
それからは涼君の身体データを基に改造点を徹底的に絞り込み、プランを仕上げていきます。
男の子ということもあり2日間多く時間を確保されておりますが、これでもかなりタイトな
スケジュールのため、無駄を省きつつ最大限の調整を施せるように計画を策定する必要が
あります。鎮守府から実際の駆逐艦「満潮」を借り受けて彼女の性格やデータを検証し、
細部をさらに詰めて提出、無事に承認が下りたため、あとはその日を待つばかりとなって
おりました。

第31機密輸送隊から涼君の身柄を確保したとの連絡が入ったため、用意していた書面や、
計画の設計図などを揃え、準備にかかりました。初日に出来ることは少ないですが、ここが
改造の根幹をなす部分のため、気を抜かず万全の体制を整えて待ち構えていました。
隊員によって連れてこられた涼君は、恐らく小学校の帰りだったのでしょう。グレーのポロシャツに深緑の
短パン、背中には黒いランドセルを背負った状態で現れました。開かれた半開きの口と意志の抜けた目の
状態から、催眠状態に落としこまれていると確信しました。

しかし、ほかに連れ込まれた女子生徒の印象のほうが強烈だったため、正直なところ最初の印象はこの程度
でした。検体「千葉 茜」が、到着すると意識を取り戻して逃走しようとしたためです。彼女は不登校のいわ
ゆる「ヤンキー」で、鼻と耳にはピアス、髪は金髪に染め、全身を黒く焼いたいわゆる「ガングロギャル」で
した。男性3名で取り押さえるのがやっとだったため、急遽改造の際に投与する薬剤を打ち込んで鎮圧しました。
薬剤の影響で強制的に催眠状態に陥った彼女は嘘のように静かになり、こちらの命令に従う人形になりました。
本来、女子生徒は改造工程が少なくなるのでこのタイミングでの確保は異例ですが、彼女は重巡洋艦「羽黒」と
して最高の相性が確認されておりますがこの風貌のため、全身を改造する必要性が生じ、早めの確保に至ったと
聞いております。それを思うと初めから従順で、女の子らしい特徴も既に持っていた涼君の印象が薄れてしまった、
というのが最初の感想です。
深い催眠状態に陥った涼君と茜ちゃんを引き継ぎ、まずは会議室に誘導して書類を記入させます。手段の違いこそ
あれ、忠実な人形と化した2人は書類に言われるがままに記入し、直筆のサインと母音を押してくれました。記入
してもらったのは彼らの身上調書と、改造への同意書です。この同意書を記入することで人間としては「死亡扱い」
となり、死亡診断書の発効とともに人権が停止されます。改造に当たっては非人道的な処置を取る必要も出てくるため、
証跡としてこのような形で文面を残し、大切に保管されることになります。同時に艦娘改造検体としてナンバーが
振られ、以後は施設内ではナンバーで呼称されます。涼君には「B-224」と振られました。(この報告書内では便宜上、
最後まで涼君表記となります)

書類を記入させたあとはそれぞれ別の改造工程に入るため、以降は涼君の改造内容を記載していきます。まずは改造に
あたり衣類が邪魔になるため脱がせます。涼君は深い催眠状態におちていたため、指示を出すと速やかに脱衣し、
一糸まとわぬ姿になりました。脱がせた衣類は遺品扱いのため、ランドセルとともに丁重に保管します。

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