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あっしの姫騎士ライフ

2020/10/13 10:32:41
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「レイア先輩…!ようやく見つけました!」
王国最強の騎士であるレイアが失踪しておよそ半年。

最近隣国で活躍する冒険者がレイアに
そっくりというの噂を聞いた騎士団の後輩である
ワカバは居ても立っても居られず一人で確かめに来たのだが……。

「んー誰でやんす?オマエ」
破廉恥なビキニアーマーを着ているレイアから
出てきた言葉にワカバは固まってしまう。



「れ、レイア先輩・・・?」
「ん・・・、あー!君がワカバちゃんでやんすか!あっしが『知っている』限り
ではあんまり大したことなさそうだったのに、成長したでやんすねぇ・・・」

ワカバはレイアの豹変っぷりに固まってしまった。何より私を嘗めまわすような
視線、くねくねとした姿勢、あまりに変わり果てた喋り方、それなのに、周りから
発される雰囲気、そして彼女が持つ聖剣「レーヴァティン」が、それがレイアで
あることを証明してしまっている。

「先輩!なぜ失踪されたんですか!?王国のみんなも心配して・・・」
「ん?あー、そう言えばこの身体、確かにそんな感じの子でやんしたねぇ・・・。
まあ、でも今となっては関係ないでやんすよ。もはや、あっしの思い通りにしか
ならんでやんすから、ね?」

#冒険者として活躍しているってことは悪いヤツではないんですよね。
#元は魔物側だったとしても。

いや~、怪しい魔法使いに捕まってスライムに改造された時はどうなるかと思ったでやんすが、
助けに来てくだたのがレイアちゃんみたいなきれーなおねーさんで助かったでやんす。

きせー?とかいう能力があるみたいで、魔法使いを倒した後で消耗していた
レイアちゃんを襲って王国最強ボディをゲット!
せっかく野盗時代では到底味わえなかった悠々自適の冒険者ライフを満喫していたのに
邪魔する奴は許さないでやんすよ!

あっしが装備しているのは、今は亡き魔法使いが保管していたSSRレア防具の「天魔の鎧」
効果は装備者の魔力に応じた防御力アップと相手に対する魅惑効果!

レイアちゃんみたいなつよつよ美人が装備すると効果倍増で
老若男女問わず効果があるでやんす!

「うっふーん!どうでやんす?あっしのおっぱい。」
レイアちゃんの体で骨抜きにしてあっしのことは黙ってもらうでやんす!

「・・・、ふざけないでください!先輩はそんな人じゃありません!」

おやおや、必死に強がってるけど足はガクガクで、顔が真っ赤でやんすねぇ・・・。
流石SSRランク装備、こんな真面目そうな子でも本能には逆らえないってことで
やんすか。どれ、もう一押し・・・。

「まあまあそう言わずに、欲に身を任せてみるのもたまには悪くないでやんすよ、ね?」

動揺しているのをいいことに、ワカバちゃんの無防備な口にキスしてみるでやんす。
この装備の素敵なところは、身体から発されるありとあらゆるものに媚薬効果を持たせて
しまうということでやんす。どうやらこの子、このレイアちゃんに憧れてたみたいでやんす
からねぇ・・・。たっぷりと、レイアエキスを注ぎ込んであげるでやんす。

「あっ・・・、あっ・・・。れ、レイア先輩いぃ・・・♡」

「あらあら、あっさり発情したでやんす。やっぱりこれすごいでやんすね」

こうなればこっちのものでやんす。あっしの隠れ家で、騎士団の秘密もレイアちゃんも、全部
丸裸にしてあげるでやんすよ。

「あっ、あっ、駄目です先輩。そんなとこ弄っちゃ……」
「ワカバちゃんの体はそうは言っていないでやんすよ~?ほれもう一発。」
「~~~~~~!!」

あっしの指がクリトリスをつねるとワカバちゃんは
声にならないあえぎ声を隠れ家に響かせる。

んふふふふ。毎日、自分の体で練習して街の娼婦で
実践を繰り返したあっしのエロテクに
太刀打ちできないみたいでやんすね。

「これでわかったでやんす?あっしを王国に連れ戻すなんて無毛なことは諦めるでやんすよ。」
「さぁ、あっし……私のおっぱいでに来て?」

下手なレイアちゃんの振りをしてワカバちゃんを誘う。
鎧のバフを受けたレイアぱいはもはや兵器。
街の綺麗どころを何人も落としてきた魔乳でやんす。
さぁ、あっしのぱふぱふで全て忘れて……

「うっ、それでも私は……。」
うわっ。ここまでされても完堕ちしてないとか!
これ、暗示で思考を多少誘導することはできても
あっしのことを誤魔化してもらうには
魅了状態を維持して完全に洗脳しないと無理かもしれないでやんす……。

「あ、ちょっと待つでやんすよ?」

ふと思い出したでやんす。とりあえず、あっしのテクニックでふやかしたワカバちゃんに
解析魔法をかけて、状態を確認させてもらうでやんす。

「ふーむ、いい感じに体力が減ってるでやんすねぇ・・・。これならアレを飲ませれば
たぶんいけそうでやんす。でも正直、ワカバちゃん、魔力も実力も見事でやんす。
あっしがいうのもあれでやんすけど、本当によく頑張ったでやんすねぇ。冒険者だと
これだけあれば相当大成するでやんすよ?何だったら、あっしと一緒に冒険しないで
やんすか?」
「だっ・・・、だれがっ・・・♡それより・・・、先輩を・・・返せ・・・」
「ならせめて、あっしが冒険者やってることは黙っててほしいでやんすが」
「ふざけ・・・、ないでっ・・・」

いやー、ここまで心が固いなら、もしかすると魅了を破っちゃうかもしれんでやんすね。
だったらもう、あの薬で「ちゃんと王国にごまかしの報告をさせてもらう」でやんす。

「一応、あっしちゃんとお願いはしたでやんすからね?」

レイアちゃんの身体を手に入れてからは、あっしは野盗も、盗みも、犯罪もなにも
やってないのは本当でやんす。正義感に溢れるこの身体が勝手にブレーキを掛けて
しまうから出来なかったっていうのもあるでやんすが、何より冒険で手に入る道具
やら報奨金やらで、そんなことをしなくても十分に暮らせるようになった、という
のが本当のところでやんす。

だからこそ、潜った先で胡散臭くて、どうしたものか分からん道具も結構手に入る
んでやんすよね・・・。奇天烈すぎて売れないのがほとんどだからとりあえず部屋で
とっておくことにしてるでやんすが、今回は思い切ってそれを使ってみることにする
でやんす。これは確か洞窟で隠し通路を見つけた時に、錬金術師だか魔法使いだかの
アトリエと、骨になった仏さんを見つけて道具を失敬してきたときに手に入れた薬で
やんす。体力が消耗した相手に飲ませれば・・・、むふふ、面白そうでやんす!


あっ!ちなみに部屋はきれいでやんすよ!きれい好きのレイアちゃんの脳みそが
取っ散らかってたあっしの部屋に拒絶反応を起こして、1日できれいにしちゃったで
やんすからね!ちょっとした図書館と研究室みたいになってるでやんす!

「これでやんす。確かこれを飲ませればいいでやんすね」

朽ちかけた魔導書には、体力を削った相手に飲ませると効果を発揮するとのこと
らしいでやんす。スカイブルーの鮮やかな色に、思わず目が奪われそうになるでやんす。

「こ、こないでっ・・・♡」
「さっき解析かけちゃったから分かるでやんすよ?ワカバちゃん、乳首と鎖骨が敏感でしょ」
「―――――はうっ♡!!」

レイアちゃんの魔法が優秀過ぎて、文字通りワカバちゃんの全部、それこそ性感帯まで
丸裸にしちゃったでやんす。野盗からすれば解析魔法なんて初歩の初歩でやんすけど、
使い手だけでここまで変わるのかって、毎度毎度感心しきりでやんすよ。ワカバちゃんの
そこを触れただけで、あっしのテクでトロトロにしたワカバちゃんがビクンと飛び跳ね、
さらに全身をだらりと弛緩させちゃったでやんす。

しっかし、ワカバちゃんの身体もエロいでやんすねぇ・・・。王国の、清楚な白と青の
騎士ユニフォームを着ているときは分からなかったでやんすが、クリッとした目に愛らしい
丸顔、お父さんが確か極東の人だったか、鮮やかなショートボブの黒髪、小柄で子供っぽい
身体にくっついているでっかい2つのおっぱい、これでまだ14歳でやんすからねぇ。
半年前はまだまだちんちくりんだったはずなのに、どうしてこんなエロくなるのやら・・・。

「さーて、ワカバちゃん。一滴も残さずに、しっかりと飲みなさぁい♡」
「げほっ!ングッ・・・!」

我ながら下手なレイアちゃんの真似をしながら、ワカバちゃんの首の後ろに
手を当てて、口に薬の入った瓶を無理やりねじ込んで飲ませるでやんす。
全身が弛緩しきっちゃってるから、あっしの言うなりでむせながらもちゃんと
飲んでくれてるでやんすね。身体、柔らかくてあったかいでやんすよ・・・。

喉もごくごくしてたから全部飲んだと思うでやんすが、念のため、この目で
確かめさせてもらうでやんすよ。はーい、口をこじ開けて中身を見るでやんすよー。
しかしまぁ、ホント口の中も奇麗でやんすねぇ。虫歯一つないキチンと整列した
白い歯が眩しいでやんす。そんな小ぶりで可愛らしい歯の中に紛れ込んでいる、
顔立ちに似合わない八重歯が、小柄でロリ体型なワカバちゃんのチャームポイント
でやんすからね。まあ、口の中はレイアちゃんも負けてはいないでやんすがね。

さて、飲ませた後はしばらく放置すればいいみたいでやんす。
はてさて、ワカバちゃんの身体に何が起きるのか、楽しみでやんすね!

あっ、ワカバちゃん気がついたみたいでやんすよ。
「ひ、にゃ、にゃんだか私ぃ。お耳がむずむずする、にゃあ……?」
ほほー。ワカバちゃんの黒髪からにょっきりネコ耳が生えてきたでやんす。
ケモ耳美少女を作りたかったという夢を、不肖あっしがその成果、拝ませてもらいやしたよ。
これで浮かばれてくれるでやんしょうか、このお薬の製造者。
「はあ、はあ、お尻もむずむずする、にゃ!?」
黒くて長いネコ尻尾もこんにちはでやんす。
ワカバちゃん本来の八重歯とあいまって、なかなかどうしてトータルにしっくり来てる姿でやんす。
えっちな黒ネコ耳美少女、って感じでやんすかね。

「はっ、にゃはあっ、先輩ぃ。にゃんだか先輩にい、私ぃ……」
あらあら。
レイアちゃんになでなでして貰いたいのかにゃ。なんて。
「甘えてもいいでやんすよ、子猫ちゃん?」
ひと撫でひと撫でごとに、頑なだったワカバちゃんの心が開かれていくのを手に取るように感じるでやんす。
しばらくこうしていたら、あっしのお願いもすこしは聞き届けてくれるでやんしょうか。

「ごろごろ、ごろごろ~~」
ヒトの喉にはそんな器官ないでやんしょうが、新造されたのかなんなのか、
喉を鳴らしてワカバにゃんはとってもご満悦でやんす。
……あっしのスライム特性を活かしたとっておきの計画を実行に移して、ワカバちゃんのお目付役について行かせようと考えてもいたでやんすが。
そっちの計画はもうしばらく、温めておいてもよさそうでやんすね。

「ワカバにゃん、あっしのお願いは聞いていただけやすか?」
「うんっ。よいですにゃ、ときどき先輩に可愛がってもらえるにゃら、聞いてあげてもよいですにゃ」
ネコ科ぽい気ままさがやや気がかりでやんすが。

ケモ耳尻尾・服従化のお薬は成功……? でやんすかね。
ネコっぽい言葉遣いの変化や、ネコ耳尻尾についてはワカバちゃんに適当にごまかしてもらいつつ、
王国への報告もごまかしてもらう方向で構わないでやんすかにゃ。
はっはー、ワカバにゃんがにゃんにゃんするんで、つい感染っちゃったでやんす。

「あっ、そう言えばですにゃ」

おや、ワカバにゃんがあっしに何か伝えようとしてくれているでやんす。

「私が今日来たのは、先輩を見かけたっていう情報があったからにゃんですが、
もしかすると、これから騎士団の人が来ることが増えるかもしれないですにゃ」

むむ、何というか、きな臭くなってきたでやんすね・・・。レイアちゃんの脳を
フル稼働させて聞いた方がいいかもしれないでやんす。

「にゃんでも、王国でも高名な魔法使いがこの辺で何かの「実験」をやったとか
どうとかで、その成果物を確保してこい、にゃんて指示が出てるとか・・・」

・・・、んん?あれ?それってもしかして・・・

「あれ・・・?なんだかすっごく嫌な予感がするでやんすが・・・」
「確か・・・、にゃんかの薬を誰かに飲ませたとかって聞いてますにゃ」

あばばばばばばばば!どう考えてもあっしのことでやんす!!
ていうか王国も噛んでやがったでやんすか!しがない元野盗の身を何だと思ってやがるで
やんす!もうレイアちゃんの身体だけじゃ許さんでやんすよ!

「せ、先輩!顔色が真っ青ですにゃ!?」

そう言ってワカバにゃんはあっしの顔を、身体をぺろぺろと嘗め始めたでやんす。
これ、確か猫で言うところのグルーミングってやつでやんすね。ワカバにゃんの
舌があったかくて、優しくて気持ちいいでやんす。あの清楚でしっかり者のワカバ
ちゃんがこんなことやってるって知ったら騎士団のみんな卒倒しそうでやんすけど、
これがいわゆるギャップ萌え!って奴でやんすね!
ていうか、ワカバにゃんって尻尾と猫耳以外人間の身体そのまんまだから、すべすべ
もちもちとしたロリダイナマイトボディの肌が当たってメチャクチャ気持ちいいでやんす。
あっしの半身が無事だったら絶対テント立ってるでやんすよこれ。

「時にワカバにゃん。騎士団で可愛い子って、他にもいるでやんす?」
「えー?教えてほしかったら・・・」
「・・・、随分といい子に変わったでやんすね」

以前のワカバちゃんはこんな子じゃないって、レイア脳から説明が下りてきているで
やんす。あっしの前に現れたワカバちゃんを見ても、とても想像がつかないでやんす。
取りあえず顎をなでまわしてあげると、喉を気持ちよさそうにならしているでにゃんす。

「えへへー。他にもいっぱいいるですにゃ!騎士団も、隠密もいろいろいるでにゃんすよ!」
「そうでやんすか・・・。面白いでやんすね」

わざわざお越しいただけるならこっちのものでやんす。生憎と、あっしの家にはダンジョンやら
神殿やらでゲットした胡散臭い道具が山のようにあるでやんす。王国への嫌がらせも兼ねて、
これらを使って可愛い子たちを色々な目に合わせてやるから、せいぜい覚悟するでやんす!

・・・、取りあえず、ワカバにゃんを愛でて少し気持ちを落ち着かせるでやんす・・・。


# 名もなきスライム兄貴のレイアちゃんハーレムが形成されそうな予感に、わくわくでやんす
# あのワカバちゃんがゴロニャンして転んでくれたのには、尻尾の付け根トントンしたくなるくらい萌え萌えですにゃ~

スカイブルーの魔法薬の効果は永続するかどうか。
あらためてワカバにゃんの体に解析魔法をかけて調べた結果、体内の魔力に薄く沈殿するように反応しているのがわかったでやんす。
被験者(こういう言い方は、あっしの境遇を思うといささか複雑でやんすが……)の体力を再度削り、
その上で徹底的に解毒しない限りは効果が残る模様でやんすかね。
普通に暮らす分には、ケモ耳っ娘好きには堪えられない結果でやんしょう。
ワカバちゃんが素敵なだんな様をつかまえたときに、そのだんな様がケモ耳趣味とは限らないでやんすし。
変化が不可逆でない仕様なのは、よかったんじゃありやせんかね。

本にゃ……本人が魔力を練って操作することで、任意にネコ耳尻尾を引っ込めることも可能とわかりにゃんした。
「えっへん。先輩っ、ほめてください!」
「おやすいご用でやんすよ、よしよし。いい子だねぇ~」
ワカバちゃんはくすぐったそうに照れて、にゃんにゃん口調はなりをひそめて、
抑制の利いた本来のワカバちゃんのリアクションのようでやんした。しかし……、
「えへへ……。わ、にゃは!?」
ぽむっ、と小さな破裂音とともにネコ耳尻尾が戻ったでやんす。

どうやら気持ちがぐっと高ぶると、隠したケモ耳尻尾が現れるようでやんす。
ワカバちゃんの郷里での幼少期までは存じないでやんすが、
ネコ科っぽい気ままで甘えんぼな要素だって、ワカバちゃん本来のものが表面化しただけのことかもしれないでやんすね。

お薬の製造者が意図しないような、たとえば更なる部分的獣化や身体能力向上といった作用も、本人の魔力次第で顕れる可能性はありやすが。
それを試すには、時間的にもワカバちゃんの体力的にも厳しそうなので一旦お開き。おいおい調査するでやんす。

「ワカバちゃん、このたびは協力してくれて助かったでやんす。あっしからの感謝を込めたささやかなプレゼントでやんす」
短めの伸縮性の紐に結わえた鈴。ワカバちゃんは髪につけるかどうするか悩んだ末、手首に通して身につけてくれるようでやんす。
ぎんれい、銀嶺ではなく銀鈴。そんな名前のアイテムでやんす。
鈴自体は、冒険者稼業で知り合ったとある職人がこしらえたものでやんす。
猫に鈴というわけではありやせんが、いざという時ワカバちゃんの身を守ってくれる、いわば御守りがわりでやんす。

……王国への報告に戻ってもらうのもありやんすが、さすがに首輪だの、ダイナマイツおっぱいの先っちょに糸でだので鈴が鳴るのは、
ワカバにゃんならともかくワカバちゃんの人となりを考えて、不自然だし可哀想なので。

ワカバにゃんモードのときに、尻尾に結わえた鈴、なんてこともできるように考えた結果でやんす。

「わあ、先輩。ありがとうございます。大切にしますねっ」
すっかり真面目で素直なワカバちゃんでやんす。
先輩を慕ってここまで来ただけあって、ひどい目に遭わせて黙らせるのもしのびないでやんすし。
可愛いワカバちゃんを手に掛けないで済んで、レイアちゃん脳もどうやらほっとしてる様子でやんす。

それにしても、強さだけでなくレイアちゃんはその人望も並外れたものでやんすね……。
穏便に済ませられないような事態も覚悟してはおりやんすが、レイアちゃん関係の接触がじつに半年間程度なかったのが不思議なくらいでやんす。
狙われるあっし、とらわれたレイアちゃん。
負けてやる気は毛頭ございやせんが、自由な生活とこの身を守るため。
あと、えっちなお仕置きも用意しつつ……むふふふふ。
ワカバちゃんの情報通り、せいぜい用心することにしやしょうか。

「時にワカバちゃん。今日はどうするでやんす?」
「あの・・・、もしよければ泊っていってもいいですか?」

ワカバちゃんを愛でたり、猫耳ダイナマイツに変えたりしているうちに気づけば夕方でやんす。
騎士団の本拠地ってこの街からだと丸1日くらいかかるでやんす。ここで帰らせると夜の行軍になって
しまうから、声をかけたら泊めてほしいと言ってくれたでやんす。ワカバちゃんは強いほうだけど、
むざむざ危険な目に合わせるのもかわいそうでやんすからね。

しかし、上目遣いとか反則でやんす。素直に甘えてくれるようになったのは嬉しいでやんすが、
正直こんな時は男としては肉棒が恋しいでやんすよ・・・。

「まあゆっくりしていけばいいでやんす。あっしの大切な仲間でやんすからね」
「あ、ありがとうございにゃす!!えへへ・・・、仲間ですかにゃ・・・。えへへ・・・」

よほどうれしかったんでやんすかね。猫耳としっぽが「ぼわっ」と湧いて出たでやんすよ。ホント、
今日の邂逅はまさにワカバにゃんの魅力再確認の日でやんすよ。ここまで可愛いとは思わなかったでやんす。
今度あっしの「天魔の鎧」着せてみようでやんすかね。この街のみんなメロメロで倒れそうでやんすけど。

一応あっしの計画ではしばらくはワカバちゃんは騎士団に返すけど、いつか必ずスカウトする
つもりでやんすよ。レイアちゃんの身体であればまず負けるとか、死ぬような心配はないで
やんすけど、一人っていうのは何かと面倒でやんす。ワカバちゃんほど実力があるならパーティ
としてはあっしも安心でやんすし、何よりあっしがちゃんと、この手で守ってあげたいでやんす。
さっきの報告から考えても、王国もちょっときな臭い感じがするでやんすからね・・・。

というより、何かこの身体もそうするべきだって訴えてるでやんす。間借りしているあっしが
言うのもあれでやんすけど、もしかしてレイアちゃん、はめられたでやんすか?

「あっ、そうだ!今日は泊めてもらうお礼に、私が晩御飯を作りにゃすよ!」
「ええっ!本当でやんすか!?ぜひお願いしたいでやんす!」

胸の厚いワカバちゃんの予想外の申し出に、胸が熱くなったでやんす・・・。実はこのレイアボディ、
冒険から魔法、剣術に家事洗濯までほとんど完璧と言っても差しさわりのないくらいに何でも出来るん
でやんすが、実はたった一つだけ欠点があるでやんす。

料理が・・・、壊滅的・・・、でやんす。

乗っ取ったばかりの頃に色々出来るのが嬉しすぎて、レイアちゃんの脳にある料理の
レシピを使おうと思ったでやんすよ?そしたらその・・・、まあ、なんていうんで
やんすかね、あれはきっと錬金術のレシピなんだろうという、とんでもない作り方が
刻まれてたでやんす。パンケーキを作るのに塩大さじ6杯はあり得んでやんすよ・・。
というか何食ったらこんな身体に育つでやんす?あのダークマターでやんすか?

まあ一応あっしも野盗の端くれでやんすから、料理の心得は多少はあったんでやんすけど、
それでもいわゆる「野郎めし」でやんす。だからこそ、ワカバにゃんの申し出はもはや、
天使の一声であったでやんすよ。

「はいっ、お待たせしましたですにゃ!」

極東のレシピでやんすかね。ご飯にお魚を焼いたもの、あとミソスープとサラダを作って
くれたでやんす。足りないものは買い出しまで行ってくれて、申し訳なかったでやんす。
味の方は、まあ・・・、ワカバちゃんを本気で、魂を掛けてスカウトする気になる程度に
絶品だったでやんす。絶対あっしの手元に置くでやんすよ。

「旨かったでやんす!ホント、ワカバちゃんいいお嫁さんになれるでやんすよ!」
「ご満足いただけたなら何よりでしたにゃ!と・こ・ろ・で、ご飯作るのに疲れ
ちゃったですにゃ」

むむ?ワカバにゃん、何かを要求してくるでやんすかね。あっし自体はまだ1日も
経ってないでやんすが、不思議と愛おしいでやんすよ。ご飯の恩は深いでやんす!
さあ、どんときやがれでやんす!

「一緒にお風呂にはいりにゃせんか?」

ノックアウトでやんす。にゃんでそんなダイナマイトボディなワカバちゃんの全裸を
特等席でおがまにゃにゃらんでやんす?あっしには耐えがたいでやんす!でも・・・

「任せるでやんす!さあ、我が家の風呂にせいぜい驚くがいいでやんす!」

あっしは漢でやんす。この程度、どうってことないでやんすよ!
喜ぶワカバにゃんを先にお風呂に連れ込んでから、あっしはどこぞの神殿にあったシャンプー
のような何かを、トレジャーハンターレイアちゃんの胡散臭い道具コレクションから取り出して、
あっしも風呂に入らせてもらうでやんす。

――気づいてないとでも思ったでやんすか?今日の夜は、せいぜい覚悟するといいでやんす。
暗殺者。

いやー、素敵なお風呂だったでやんす。この全身エロ爆弾ことレイアちゃんボディは
家にいるときには毎日洗ってるでやんすから慣れたつもりでいたでやんすけど、
他人のダイナマイトボディを洗うと不思議とゾクゾクするでやんすねぇ。ワカバちゃん
エロ過ぎ。お肌の張りありすぎでやんすよ。マシュマロみたいに柔らかいし。それに、
誰かに洗ってもらうというのもたまらんでやんす!ワカバにゃん、すごく丁寧で、優しく
洗ってくれたでやんすよ!またやりたいでやんすね!

「ところで、先輩が使ってくれたシャンプーすごいですにゃ。お肌すべっすべですにゃ」

いやいや、それはワカバにゃんの持つものにゃぞ、という突っ込みを心で入れつつ、
例のシャンプーでワカバちゃんの身体を洗ってみたでやんす。神殿に書いてあった説明書き
によればこれで全身を洗えばいいはずでやんすけど、本当に大丈夫でやんすかねぇ。
いかん、ワカバにゃんの身体の感触を思い出して鼻血が・・・。

「今日は色々ありすぎて疲れちゃいました・・・。お休みにゃさいです・・・」
「ゆっくりと寝るでやんすよ~」

お風呂上りから寝ぼけ眼のワカバちゃんにはさっさと眠ってもらうでやんす。ワカバちゃんは
大切な仲間であると同時に、大切な「お客様」でやんす。今晩起きることは、なーんにも
知らずにゆっくり休んでもらうんでやんす。

「はーい、なんでやんしょ?」
戸を叩く音がする。
こんな夜更けにどなたでやんしょう。あっしのお部屋は冒険者用のアパートでやんす。
ひと部屋借りてそこでひとり暮らすにはじゅうぶんな広さでやんすが、こうして誰かを招いたりすると手狭でやんす。
胡散臭いアイテム群を持ち込めば足の踏み場もないでやんしょう。
そこで、部屋のいくつかの扉はより快適な暮らしのために、あっしの別の隠れ家へ繋がっているでやんす。
自慢のお風呂も、レイアちゃんが綺麗にしてくれた自室や別の倉庫部屋も、実は隠れ家にあるお部屋でやんす。
今回ワカバちゃんの寝室も、比較的安全な隠れ家側のお部屋に用意してもよかったんでやんすが……。
「んむ。むにゃ、むにゃ、にゃあ……」
掛け値なしに天使のような寝顔でやんす。すやすやとアパート部屋のベッドでお休みでやんす。

扉を開けると、そこには見知った顔が。
「やあやあ、フローラちゃん。こんばんは、どうかしたでやんす? お仕事終わりでやんすか?」
ここへ訪ねてくることはごく珍しいでやんすけども、この時間に出歩いていることはあり得る、そんな生業の彼女でやんす。
街の娼婦さんのひとり、あっしのエロテク向上に付き合ってくれた娘のうちのひとりでもあるフローラちゃんでやんす。
「あの、そのう……、黒髪の女の子。が落とし物。こえ、どんどん先に。見たらお部屋、でも時間。……出直して、きた」

たいへん伝わりづらいでやんすが、慣れればなんとなくわかるでやんす。
『黒髪の女の子、ワカバちゃんが落とし物をした。気づいて声をかけようとしたが、急いでいるのかどんどん先に歩いていってしまう。
なんとか見失う前に貴女のお部屋に入っていくのが見えた。でもわたしには届けている時間がなくて、仕事の合間に出直して届けに来た』
こんな感じでやんしょう。引っ込み思案の彼女の言いたいことは。
フローラちゃんがおずおずと差し出したのは、銀の鈴でやんした。
渡したところのものだし、急いで買い物に出て帰ってくる途中うっかり落としたんでやんしょうかね。
それを、フローラちゃんが拾ってくれた。
フローラちゃんは、頷いてあっしに鈴を渡そうとしてくれるでやんす。

はあ。フローラちゃん、いい娘なんでやんすがね。
お部屋のベッドのほうをちらりと見ても、わりとベッドサイドに置きそうな、プレゼントしたての銀鈴は見当たらないでやんす。
あっしは片手の親指と小指を立てて、ほかの指は握り込み、頬に握りこぶしを沿わせるかたちで
おもむろに親指が耳へ、小指は口元にくるようなポーズを取りやんした。
フローラちゃんは疑問符を浮かべているでやんす。あっしは気にせず魔法を起動させたでやんす。
その親指と小指の爪に重ねた顔料が魔力の明かりを放ち、あっしは気持ち大きな声で、

「しーもしもー!? ザーピー3人前、や、4人前なんす! ちょっぱやで! なるはや!」
台詞の内容に意味なんてないでやんす。しかし。
「天井裏でやんすか。ベタでやんすね」
あっしの台詞とおんなじ声が、天井のほうから聞こえたでやんす。
べつに銀鈴は拡声器ではありやせんが、遠く離れた場所へも声を届ける魔術の受信もしてくれるアイテムでもありやす。

おわかりでやんすよね。
フローラちゃんの持っているそれは偽物。本物の銀鈴はなぜか天井裏にあるわけでやんす。
辻褄を合わせようと何者かが、枕元からそっと持ち去ったんでやんしょうね。
どうして、街の娼婦さんであるフローラちゃんと、天井裏の誰かさんが申し合わせてそんなことをするのか。
こうして誰かさんの居場所が露見して、気配がすっと薄くなるフローラちゃんは、
たとえばお金で一時的な協力を取りつけたといった普通の娼婦さんでないことは明白でやんす。
そして。
黒塗りの短剣を振りかざす背後の誰かさんを、あっしは軽く脚で撫でるでやんす。
警戒して距離を取る誰かさん。フローラちゃんに気を取られているうちにブスリ、なんて簡単にはいかないでやんすよ。
暗殺者然とした装束や覆面に天井裏の埃がついているので、レイア脳は掃除したくてうずうずしてるでやんす。
きっちり掃除して、背後関係から初体験の思い出話まで、いろんなことを吐かせてやるでやんすよ。ぐふふ。


「動くな。抵抗すればこの女の命が無いぞ」
案外若い声でやんす。若い身空でこんな汚れ仕事を……隠密だの暗殺者だのは、辛い稼業なんでやんすね。
すやすやと眠るワカバちゃんに刃を向ける覆面ちゃんでやんす。
あっしの天使にゃんに、よくも。万死に値するでやんす……!
「び、ヴィアンカさん。お、おとなしくして、楽に死ねます」
じりじりと退がり部屋の扉を閉めながらフローラちゃん。あ、ヴィアンカというのは娼館を利用したときのあっしの偽名でやんす。
たぶんフローラちゃんも源氏名かつ、隠密活動上の “役名” なんでやんしょうけど?

あっしは湯上がりから先「天魔の鎧」を着けておらず寝間着姿のえちえちレイアちゃんでやんす。
愛・即・液みたいな魅了モンスターフル装備状態ではございやせん。
ただ、普段から歩く性的災害みたいな有り様では冒険者としての生活どころか、あっしこそが討伐対象になりかねないでやんすから、
くつろぐ時間にそんな格好はしやせんし、娼婦さんと遊ぶときも当然そうでやんす。

とはいえ常在戦場、冒険者稼業にオフはなくはないでやんすが、レイアちゃんは大したもんでやんす。凄いのは体だけじゃないんでやんす。
無造作に近づいているように見えて、間合いを殺しながらフローラちゃんへと肉薄したでやんす。
あっしにも足運びとかの理屈はよくわかりやせんが。

「あっ、えっ。だめ──ぴぎゅううう!?」
とにかく近寄って、フローラちゃんの乳首を甘噛みしてお尻を揉みしだいた途端、
フローラちゃんの体から力が抜けて、彼女は腰を抜かしやんした。
覆面ちゃんのほうは、あっしが動いたため人質に刃を振り下ろしやんす、まず機動力を削ぐためワカバちゃんの脚を。
「!?」
なにかを投擲して阻止できると、お芝居の中の英雄みたいでかっこいいでやんすが、今回に限ってはそうする必要はございやせん。

──なんぴともその眠り妨げること能わず。
どこぞの神殿の奥に奉られていたそのシャンプーのようなものは、その昔たいへん人気のあった巫女が使っていたものといわれ、
そうした売り文句が容器に記されているでやんす。
あまりの人気に昼夜問わず彼女へ言い寄る輩が絶えず、巫女は辟易しておりやした。
日々のお勤めと神殿の行事で忙しいところへ、余分なお誘いのお断りに疲れ果てその美貌に影を落しかねないところでやんした。
そんなある日ひとりの僧が、シャンプーを奉納しに参りやす。いわく、雑事色事あらゆる災厄に煩われることなく、安眠をもたらすものと。
半信半疑の巫女はシャンプーを使って驚きやした。僧の言うとおりになったのでやんす。
喜ぶ巫女へ僧はシャンプー液の製造法を伝え、以後神殿はシャンプー工場となり、美しい巫女はさらに美貌を磨いたとか。

……要は、ワカバちゃんにお風呂場で使ってもらったそれは上等な石鹸というだけでなく、
使用者が眠りに就いている間中、あらゆる災厄から身を守ってくれるバリア効果のあるシャンプーのようなものなのでやんす。
その効果はすさまじく、ある火事の現場で焼け落ちた家屋の中から、そのありがたいシャンプーを使ったとおぼしき幼子と母親が、
寝間着に焦げ跡さえなく、すやすやと眠ったまま無傷で発見されたという嘘みたいな逸話があるほどでやんす。

ワカバちゃんを傷つけようとした凶刃は、切っ先が欠け落ち一方のワカバちゃんは、羽織った毛布にもかぎ裂きひとつありやせん。
仮に連れ去ろうとしても空間に縫い付けられたように、ぴくりとも動かせやしないでやんしょう。
なんぴともその眠り妨げること能わず、の売り文句通り。眠っている限りは、ひと晩彼女に手は出せないのでやんす。寝ている間は無敵でやんす。


「まあまあ、いまさら逃げようとしても無駄でやんすよ……!」
撤収のタイミング遅すぎでやんす。ここに及んでは、逃走なんて許さないでやんす。
あなたがたはあっしを怒らせた、でやんす。レイアちゃんもおこでやんす。
床に倒れてぐるぐる目を回すフローラちゃんを捨て置いて、覆面ちゃんは窓を突き破って逃げようと試みたでやんすが。
そこに窓はないでやんす。
窓に偽装した包帯状の布が、外へと身を踊らせようした覆面ちゃんを覆ってくるんで縛りつけやす。
「ぐむ。もが、もがー」
なにか言ってるようでやんす。

ゆっくりと聞いてあげるでやんす、あなたがたの言い分といやらしい悲鳴をね……くっふっふ。でやんすよ。
みの虫状態でもがく覆面ちゃんと、くったりして床を引っ掻いていたフローラちゃんを軽く担いで、
あっしは隠れ家側のお部屋へのドアを開けて、これから明け方までわくわくエロ尋問タイムでやんすよ! んふふふふ。

「さてさて2人とも、いったいあっしを襲ったのはどういうわけか、洗いざらい吐いて
もらうでやんすよ?」

あっしの隠し部屋の一つに2人をご招待したでやんす。さすがに覆面ちゃんもフローラちゃんも
沈黙して話をしようとしてくれないでやんす。暗殺者とか忍びの定めってやつでやんすよね。
気苦労というか、覚悟が伝わってくるでやんすよ。

「・・・!」
「おっと、いま魔法を使おうとしたでやんすね?ふっふっふ、この部屋では無駄な行いでやんすよ」

そう、この部屋のご神体として祀ってあるお人形、確か「土偶」っていうんでやんすかね。どこかの
村が魔物に襲われているのを救ったときに、長老の方がお礼にとあっしにくれたものでやんす。
どうも破邪の力を宿している聖なる像とか何とかいうやつらしくて、一定の範囲の魔法をそれこそ
「根こそぎ」、今は亡き魔王が使うような魔術でさえ強制的に無力化出来るという何とも凄まじい
ものらしいでやんす。ただし、範囲がどうにも狭いらしくて有効に使えなかったとかであっしに
渡してもらったでやんす。一部屋分くらいなら十分すぎるくらいに効果が出るんで、この部屋に
飾ってあるでやんす。覆面ちゃん、残念だったでやんすね。

ちなみに覆面ちゃんはいまは椅子に座らせてあるでやんす。この椅子もまた曰く付きの
代物でやんすけど、それはまた、覆面ちゃんに洗いざらい吐いてもらう時に分かるで
やんすよ。ちなみに四肢は拘束した上で一応見える口元には猿轡を噛ませてるでやんす
から、自殺なんてことは出来ないでやんす。まずはそれより・・・、

「やっぱり見知った人間からのほうが話しやすいでやんすよね。フローラちゃん?」
「ヴィアンカさん・・・、私を尋問しても無駄、です」
「まあ、そういうとは思っていたでやんすよ?でもでもでも~?」

「フローラちゃん、そもそもあっしのエロテクで何度イったか忘れてないでやんすよね?」
「ひぃぃ♡いやぁ♡やめてぇぇぇ♡」

んふふ、これは魔法も怪しい装備も一切抜きの、この野盗たるあっし独自のテクニックで
やんす。まあ、あっしの指令をさらに繊細に、完璧な加減で再現するレイアボディの技量も
相まって、下手な拷問器具よりよほど厳しいものに仕上がっているでやんすけどね!
普段の大人しくておどおどした感じの彼女がいななく声、熟成された身体つき、よく手入れ
しているようなきれいな肌、(あんまし気にしてなかったでやんすけど)その身体の中に
付く引き締まった筋肉、やっぱりフローラちゃんは最高でやんすよ。筋肉が付いてるなと
思ってはいたでやんすけど、暗殺者かスパイなら納得といったところでやんす。

「ふひゃあああああ♡」

乳首とお尻を丹念に攻めまくっているうちに、フローラちゃんの愛液がクジラみたいに
吹き出したでやんすね。いかに鍛えようとも、人間の身体は快楽に勝てないものでやんす。
ほら、見るでやんすよこの無様なアヘ顔を!目なんか器用に片目だけ白目向いちゃって。
今回は娼館の時の「楽しむための」テクとは違うでやんすからね。本当の本気で、徹底的に
追い詰めるためのガチのテクニックでやんす。
ちなみにワカバちゃんの時は前者でやんすよ?あの子は初めから殺意を持ってなかったで
やんす。それ相応に、おもてなしの意味を込めたご挨拶のようなものでやんす。

まあ、後者でやるっていうことはそういうことでやんすけどね・・・。フローラちゃんとの
お戯れがもう娼館で出来ないと思うと寂しいでやんすよ。そう、娼館「では」でやんすけどね!

「たぶんフローラちゃんは聞こえてないと思うでやんすけど、予め言っておくでやんすよ」
「さっき手に掛けようとしたベッドで寝てた天使にゃん、あの子はあっしが巻き込んだに近いから、
彼女の意思は極力尊重するでやんすし、ひどいこともさせないでやんす。ただし・・・」
「殺意を持ってきた2人については別でやんす。あっしの「下僕」として、一生逆らえなくしてやるでやんす」

あっしの本領、発揮でやんすよ!


さてさて、まずはフローラちゃんをあっしの下僕に堕とすでやんすよ。
まずは覆面ちゃんにもちゃんと見てもらえるように気絶してるフローラちゃんを座らせて
いる椅子の前に運んで・・・、と。

ではっ!今回の胡散臭い道具シリーズから使用するのはこちらっ!じゃーん!!

「メイド王謹製メイド服でやんすー!」
「むー!むむー!!」

おっ、覆面ちゃんがもごもごとうごめいてるでやんす。まあ待ってるでやんす。ちゃんと
覆面ちゃんの意思で自分のことをたっぷりと語ってもらうつもりでやんすからね。それより
メイド服の準備・・・、おや、取扱説明書付とは親切でやんすね。どれどれ・・・

「まずは献体の身を清めるべし。具体的には付属のタオルで全身を拭き取るべし」

あー、確かにフローラちゃん、あっしのテクでいま全身ドロドロでやんすからねぇ。
これだとメイド王に捧げるには失礼ということでやんすか。しかし、このタオル
いい生地使ってるでやんすね。ふわっふわでやんすよ。さあ、まずはフローラちゃんを
きれいにするでやんすかね。

あっしがこの街を根城にして半年になりやんすが、フローラちゃんとは娼館で何度も
遊んだつもりでやんす。しかし、あっしも遊ぶばかりであんまりちゃんと見なかったで
やんすけど、やっぱりきれいな身体してるでやんすねぇ。

スラッとした手足にきれいな長い銀髪、そしてどうやって仕込んだか分からんで
やんすけど、グラマラスでいい身体をしてるでやんす。目もパッチリしてるけど、
顔立ちはどっちかというと田舎から出てきた感じの素朴な可愛らしいものでやんすよ。
特徴で言うと右の目の下の泣きボクロでやんすかね。ワカバにゃんが素直な可愛らしさ
とすると、こっちはどっちかというと顔立ちだけは守ってあげたい感じでやんすかね。
その顔と、いかにも娼婦やってるエロボディのアンバランス加減、イき狂ったときの
表情と絶叫、控えめな性格とのギャップがすごく楽しいんでやんすよ。

あ、さすがにアヘ顔は捧げるのに不適切な気がしたでやんすから、瞼を閉じてある程度
調整してるでやんす。呼吸が早い以外は寝てるような感じでやんすね。うーん、しかし
タオル越しでも分かる手入れされた肌と、さらっさらの銀髪が素敵でやんすね。ていうか
このタオル、拭くだけで洗ったようにきれいにするってどうなってるでやんすか・・・。
肌ピッカピカだし髪も洗い立てのように輝いてるでやんす。あっしが野盗だったら据え膳
食わないわけにはいかんでやんすけど、生憎それは出来ないのでやんす・・・。

さてと、全身を拭いただけなのにすごく奇麗になったでやんす!えーっと次は

「献体にこのメイド服を着せるべし」

うーん、フローラちゃんは割と女子にしては身体が大きいでやんすけど、この
メイド服デカすぎではないでやんすかね?2メートルくらいの人でも着せられそう
でやんす。まあ、だぼだぼでもいいのでやんしょうかね。えーっと手足を通して、
うわー、何というか二人羽織みたいにデカいでやんすよ・・・、っておお!!

「身体に合わせてサイズ変えるんでやんすこれ!?」

取りあえず内側のワンピースを着せたら、身体にフィットするようにメイド服が
サイズを変えたでやんす!さすがメイド王!意味不明なギミックでやんすけど、
何か男のロマンを感じるでやんすよ!

ということはこのエプロンもきっと・・・、やっぱり身体に合わせて変化する
でやんす!さすが曰く付きなものでやんす!これ案外売れたかもしれんでやんすね。
えーっと、次で最後でやんすね?

「カチューシャを付けたらそこに至高の献体となるであろう」

・・・、いったい、このメイド王って何者でやんすかね?

しかし、フローラちゃんのメイド服似合うでやんすねぇ・・・。このまま欲しいかもでやんす。
さあ、カチューシャをつけて、っと。どうでやんす!?

「あっ、あっ、あっ・・・。ああああああ!」

あらら?意識を失っていたフローラちゃんが何だか苦しそうでやんす!せっかくアヘ顔直した
のに、また目はあらぬ方向向いて舌まで出しちゃってのたうち回ってるでやんす。

「あががががあがががあがががっががががあああ♡」

何というか、本当に大丈夫でやんすか?あっしさすがに殺すつもりはないんでやんすけど・・・。

「うああああああああああああ♡」

海老ぞりになって身体をピンと張らせたら、糸が切れた人形のように静かになったでやんす。
お、立ち上がって目を開けたでやんす。火が入ったみたいになったでやんすね・・・。

「お、おお・・・。この肉体はまさに至高のメイド・・・。俺が求めた素晴らしい献体だ!」

ふ、フローラちゃん?なんか怪しいこと喋り始めたでやんすよ?

「我こそはメイド王。究極のメイドを求めた永遠の求道者だ」

・・・、何かこう、とんでもない物着せちゃったでやんすね。


奇天烈なものが降りてきたでやんすね……これは。
“土偶” の影響がないということは、悪霊的な残留思念ではないとみていいんでやんしょうかね。
もしくは、破邪の力をものともしないくらいの強烈な悪霊……?
まさかね。魔王の扱う魔術を超えるようなものが、メイド服一式にそんな、馬鹿げたことあるはずが、でやんす。
「失敬な! 俺はメイド王。求道者であり真なるメイドの伝道師でもあるのだぞ」
「ははあ。お控えなすって、みたいなもので襟を正して聞いとかなきゃいけないみたいでやんすね」
寝間着ではありやすが、居住まいを正すでやんす。

あっし自体に興味を示さないところをみるに、ほんとにメイドにしか興味のない御仁のようでやんす。
「えへん。このメイド王に至高なるメイドの献体を奉じたる者よ。我が未来の永劫の奉仕者を
如何様にしようというのか、なんなりと申し述べるがよいのだ」

申し述べるがよい、はいいでやんすが。
未来の……奉仕者? どういうことでやんしょう。捧げるということの意味がかなり重たく響いてきたでやんす、
フローラちゃんがどうにかされるんでやんすかね、命や尊厳にかかわる気配を感じるでやんす。
「献体となったかの娘は、天寿を全うした後に我が許へ誘われ、輝かしい奉仕者の一員に加わるのだ。
永遠なる美貌を得て、メイド王たる我が根城でな」

悪霊どころか、悪魔じみてやんすね。
悪魔と違って本人に得るものはなくて、本人が取り引きしたわけではなくて、こうして魂を売り渡されようとしているのは。
世の中ってときに理不尽なものでやんすね。
「運命というのはそういうものであろう? 己の意思なぞ関わりなく、足下に口を開けることもあるのだ」
たしかにそうでやんすね。あっしも身をもってそれは痛いほどに。

「まず確認しておこう、本当にこの娘を俺に献体として捧げるのだな?
間違いなく献体であるのだろうな?」
おおー。メイド王って思いのほか慎重でやんす。過去になんか間違いでもあったんでやんすかね。
「酔った勢いでのむつくけき中年男やら、酒の席でのおふざけやらが後を絶たぬでな。ちらほら、真正なる奉仕心の持ち主が居ないでもないが」
そういう宴会アイテムのように使われがちなのは、わかる気がするでやんす……。

にしても、奉仕心があれば野郎でも受け入れてるんでやんしょうか? 死後というならどんな風にでも出来るんでやんしょうかね。
メイド王を名乗る以上は、執事として侍らすことは考えにくいでやんすし。
「俺の知り合いには、男装執事女王というのも居る。それは置いておくとして」
案外多岐に渡るんでやんすね、永遠の求道者界隈の事情。
「かの娘は至高の、我が理想にかなう実に素晴らしい献体だ。なればこそ、憂いなく我が許へ迎えたいのだ」


いかがなものでやんすかね。
メイド王とやらの前のめりになる逸材というのはわかりやす。フローラちゃんお似合いでやんすし。
一部始終を眺めていた覆面ちゃんの、やめてあげてほしいという眼差しをひしひしと感じやす。
それは「我が身かわいさ」でなく、「この娘だけは堪忍して」という、できることなら自分が代わってやりたいといった種類の。
とても個人的なつながりがあるんでやんしょうか、フローラちゃんと覆面ちゃんの間には。

「まあいい。猶予は与える、よく考えるがいい。そこのお主もなかなかの奉
仕心を秘めておるし、」
ちらり、と王に視線を寄越された、椅子に座った覆面ちゃんはぶんぶか首を振っておりやす。
「そなたは……何ぞややこしい身の上のようだな? よい。取り消すというのであれば
手引きの逆の手順でメイド服を脱がせ丁寧に畳めばよいし、対価に魂を寄越せなどとも言わん。
別の肉体を献体とするのであれば、別の者に着せればよい。話がまとまるまで俺はしばらく、席を外すとしよう。
ではまたな」

……すうっ、とフローラちゃんの肉体を借りて話していた存在が抜けて、フローラちゃんは白目を向いて崩れ落ちやす。

「んひぃ……わひゃ、ひぃ……」
息も絶え絶えにフローラちゃんがなにやらつぶやいているようでやんす。
ここまで快楽漬けのありさまで、なおもメイド王に降臨されておりやんすから、意味のないうわごとかもしれやせんが。
聞き逃せない本音かもしれないでやんす。近寄りすぎない程度に聞き耳立ててみるでやんす。
「わひゃ、ひぃ……が、守りゅ……。おねえ、ちゃ……」
朦朧としたフローラちゃんは、健気にも這いずってあっしから覆面ちゃんを庇うような位置に移動しようとするでやんす。
あっしが位置を変えるとやはり割って入る位置へ。
フローラちゃんのむき出しの、極限に至って残ったものは “お姉ちゃん” を守ろうとする意思でやんした。

小柄な覆面ちゃんを剥いてみないことにははっきりとわかりやせんが、フローラちゃんと同じくらいの歳かもっと若そうな感じのする覆面ちゃん。
まさか実の姉妹ということはないとは思いやすが。
そうした訓練所や養成所の同期とかだったりするんでやんしょうかね。
……おそるべきメイド王謹製メイド服の扱いも含めて、どうしたものでやんしょう?


まあ、覆面ちゃんを座らせた椅子はそういうのにはおあつらえ向きの椅子でやんす。今回の件に
ついて、申し訳ないけど「正直に」すべて吐いてもらうでやんすよ。

「お待たせしたでやんすね覆面ちゃん。生憎とフローラちゃんは見ての様子でやんすから、
覆面ちゃんに色々お尋ねすることになるでやんす」
「今から顔の部分の覆面と、猿轡は外すでやんすよ。ただし、予め先に警告しておくでやんす」
「あっしの尋問、嘘をついたり、それこそ自死を選ぼうとすると「大切な物」を失うらしいで
やんすから、本当にすべて真実を話すでやんすよ。一応、警告はしたでやんすから、そのつもりで」

この部屋は魔法が使えないでやんすから、手作業で解除していくでやんす。警告が効いたのか、
一応抵抗はしないようでやんすね。恨めしそうな視線をひしひしと感じるでやんすけど、まあ
仕方ないでやんす。本当はえっちぃイタズラをたっぷりしてあげるつもりだったでやんすけどねぇ・・・。
何となく「この子の話はちゃんと聞くべき」と、あっしのシックスセンスがそう訴えてるでやんす。

うーん、しかし全身を縛り付けているから却って分かりやすいんでやんすけど・・・、

この子つるぺたちゃんでやんすね☆


猿轡を外し、顔の部分だけ包帯もどきなトラップを外し、ようやく覆面を外せるところ
まで来たでやんす。さあ、そのご尊顔を拝見するでやんすよ。それっ!っと

「・・・、これ以上・・・、これ以上彼女を犯さないでくれ・・・。お願い・・・」

こらまた可愛い子が出てきたでやんすねぇ!肩くらいまでのおそろいの銀髪、
強気そうな顔立ち、そんな子が涙ぐんで命乞いをしてるでやんすね!ぐへへ・・・、
実にそそるでやんす。ツインテールにでもしたらすごくいいんじゃないでやんすかね?

「ボクの身も、命も捧げるから・・・。リリアだけは見逃して・・・」

まさかのボクッ娘でやんすか!?これはまたポイント高いでやんすよー!本音を言えば
洗いざらい吐かせた後でこの胡散臭い緑色の薬「強制人格矯正薬」でも飲ませるつもりで
やんしたけどね、何か様子がただならぬ感じでやんすから、この椅子が認めたら、まあ
その辺は考慮してやるでやんすよ。あっし、一応そこまで鬼ではないでやんすからね。

この、「真実の椅子」にでやんすけどね。

この椅子、何でも拷問が流行った王国の廃城に鎮座してた椅子とか言われて
やんしてね、座らせた者が「真実」を口にせず、「嘘」を口にすると、その者に
とって最も「大切な物」から何かを一つずつ奪い去っていく、というけったいな
代物らしいでやんす。実際、あっしの家に入った空き巣を尋問したときにこれを
使ってみたでやんすけど、嘘をつきまくってたら何か部屋から今までの盗品やら
エロ本、挙句に家と隠れ家、技能や七つ道具まで消えたらしく、今やこの街で
身を削りながら生活してるとかしてないとか、って聞いてるでやんす。

この子にとっての最も大切な物、我が身を顧みず、フローラ・・・、リリア
ちゃんっていうみたいでやんすけど、その子を助けようとする精神、つまり
彼女が嘘をつけばリリアちゃんの身に何かがおきる、ってことでやんすね。

さあ元覆面ボクっ娘ちゃん。リリアちゃんが大切なら、君の真実をあっしに
晒すでやんすよ。


「まずは、あなたのお名前を教えてほしいでやんす。
……リリアちゃんが大事なら、誠実に答えてもらいたいとこでやんすね」
「私の名前は、フィオナ」
ほー? リリアちゃんが百合にちなんだお名前で、彼女は芍薬か牡丹にちなんだお名前なんでやんすかね。
例によってあっしの知識じゃないでやんすよ、レイアちゃん博識でやんすね。
お花というか、お薬知識としてはあっしも多少かじってはやんすが……閑話休題、でやんす。

「とてもいいお名前でやんすね、ではフィオナちゃん。お聞きするでやんす。
あっしのことはどう聞いてやすか? 今回あっしを殺すように言われたのはいつのことでやんす?」
「私たちは、標的の特徴はともかく名前は知らされていない。リリアは貴女をヴィアンカと呼んだが、
それも偽名なのは調べがついていた。フローラとして知らないはずの別の名前で呼んでも意味がないしな。
ほかにもティボラだの、マレーヌだの、方々でいろいろ名乗っているだろう?」
いくらあっしでも、不用心にもレイアちゃんを名乗って生活したりしないでやんす。
この街で冒険者として名が売れてきた場合にも困りやすからね。はて、名簿登録のときどう書いたでやんしょ。
なお……ティボラは郷里の近所のお姉さんの、マレーヌはあっしの母方の曾祖母の名前でやんす。


「この街にフローラとしてリリアが潜入したのが5ヶ月前。
市井に隠密を潜ませておくのはいつものことだと、私は思っていた」
リリアちゃんに異変はありやせん。嘘はないのでやんしょう。
半年前でなく5ヶ月前とは、判断に困るとこでやんすね。
あっしへの接客……接触が命令にどう影響したのか。もうしばらく耳を傾けておきやしょう。
「私は別の街で任務中だったが、この街に行けと命じられて着いたのが4日前」
ほー。隠密のいる部署に動きをマークされていたとしても、あっしにたどり着くまで案外早かったんでやんすねえ。すやすや天使にゃん。
ワカバちゃんにしても、暗殺者や隠密関係の情報を仕入れていやしたしね。
王国で何が起きているんでやんすかね。

「ねえ、フィオナちゃん? 今回この指令を出したのは誰だか知ってやすか?」


「……私にはわからない。指揮系統の上の方から下りてきたとしか」
そうでやんしょうね。
もし末端がそれを知っていて白状しちゃったら、組織に居られなくなりやんすものね。

「じゃあフィオナちゃんは、誰が首謀者だと思いやすか?」
おそらく、これに答えなくとも “真実の椅子” はだんまりでやんしょう。
ただし。ボクっ娘暗殺者ちゃんの聡明な頭脳のなかに心当たりがあるとしたら。
濁すような返答は、もしかしたらリリアちゃんに累が及ぶ可能性がある。
そう考えると、フィオナちゃんは答えざるを得ないでやんすよね?

「ああ。今回に限って、命令系統が特殊だったのが気になった。
私が首謀者だと考えるのは──」

「女王"ソフィア"と勇者"ディック"だと、ボクは考えている」

予想通りと言えば予想通りでやんしたね・・・。あっしも、正確にはレイアちゃんの
記憶にもあるでやんす。当時の姫にして"聖女"ソフィアと"勇者"ディック、今から
1年前にレイアちゃんとの3人で魔王を討伐した、伝説のパーティでやんす。これに
より世界は平和を取り戻した、はずでやんすけどねぇ・・・。
それから凱旋したソフィアとディックは結婚して、戦争の怪我が要因でソフィアの
お父さん、前国王が亡くなってからソフィアが即位して、ディックとレイアちゃんが
支えて・・・、っていう流れだったはずでやんす。

ディックの名前を聞くと心が疼くでやんすね。確か、レイアちゃんもディックに惚れて
いたけど、聖女と勇者の宿命、何よりあの二人があんまりにもお似合いだから、影に
日向に騎士団として支えることにした、っていう悲恋があったみたいでやんす。
健気でやんす、ああ美しいでやんす。そんな身体を頂いてしまってごめんでやんす☆

うーん、しかし記憶にあるこの勇者、すっげぇ可愛いでやんすね。ショタっ子って
たぶんこんな感じでやんすよ。案外女王とか名乗ってもバレないかもでやんすよ。

「魔王を討伐してからしばらくはいつも通りだった。むしろボクたちも情報収集がメインで、
仕事が楽になったくらいだったと思う。だけど、ここ最近は何かが違うんだ。勇者も聖女も、
表向きは政治も、国も何も変わらないのに、まるで別の人が使っているような変な感じが
するんだ・・・、貴方ほど露骨じゃないけどね」

そうなんでやんすよ。少なくとも2人ともそんなことするはずがないんでやんすよ。あっしも
昔、勇者ディックにボコられたことはあるでやんすけど、人の命を取ったりとかそういうことは
大嫌いだったはずなんでやんす。
だからこそ、魔王討伐の当事者ではないけど、当事者の一人の記憶と身体を持つあっしには
分かってしまうんでやんす。

"たぶん2人とも、何者かに乗っ取られてるでやんすね"


# ボクっ娘って書いてあるのに本当ごめんなさい。真面目なシーンなのにすいません、フィオナちゃんにも大変失礼しました
# No.30938 - No.30940のフィオナの台詞の一人称は、ボクで読み換えていただけないでしょうか。お願いします許してくださいなんでもしますから

スライム改造されたあっしの例にしても、ボディを頂いてしまって半年間こうして暮らせていやす。
レイアちゃんの記憶によると……、呪われた島が舞台の英雄譚に登場するような装具を介した支配であるとか、魔物が直接体に入り込むだとか、
呪いの紋様で縛るだとか、対象の精神を眠らせたり体の外に出して封印したり、ほかにも方法はいくつかあるようでやんす。
破邪の法力に長けた聖女でもある王女を屈服させるのは、なかなか骨とは思われやすが。
これも困難でやんしょうが先に勇者を陥落させ、搦め手で王女を。というものやその逆だって可能でありやすかね。
不意を打つなり隙をつくなり、侍女だとか王族とかそういう人質を盾に要求なんてのも考えられるでやんす。
二人とも英雄気質でやんすし。黙ってないでやんしょう。
ただ状況と条件さえ揃えば……、
あのつよつよレイアちゃんだって、あっしの意のままなんでやんすから。

レイアちゃんの挙げた中で、両人とももう元には戻らない手段も含まれているのには、レイアちゃんの胸が痛みやすね。

自我崩壊、脳みそが物理的にやられちゃうだとか、廃人化、人格や魂が帰って来ないケースも考えられるんでやんす。
また魔物による支配であれば、魔王亡き後の魔界の王座に、人界側の希望が揃ってそのまま君臨しちゃったら
もう手が着けられやせん、もの凄い脅威になっちゃうでやんす。人類おしまい。かもでやんす。
薬物中毒に陥れての強制や、催眠などの暗示による支配は……よほど高度な技術や巧妙な仕掛けでなくては、
公式行事などを滞りなくこなしている様子なので、線としては薄そうでやんすかね。

聖女だから破邪の備えはある、勇者だから魔の誘惑には屈しない。
とは限らないのがー、この世の中なんでやんすよね。
あっしがレイアちゃんと共に存るように、そんじょそこらの遺跡や洞窟や地方に奇天烈な物品や破廉恥な魔法具なんかがごろごろしているように。
どんなことでもうまい具合に転がるとあっけなく、どうにかなってしまうものなんでやんす。

やはり情報が少ないでやんすね。
え? あっしがレイアちゃんの仲間と王国の危機を救う、快刀乱麻の大立ち回り? それはちょっと。
守るべきものがない気楽な冒険者稼業、どこか王国の影響のないずっと遠くへとんずらして、また気の向くまま稼げばよいでやんす。
そしたらレイアちゃんは、このダイナマイツな胸の奥で涙するんでやんしょうけど。

けどまあ、こうしてちょっかいかけられて──レイアちゃんに対しても、いずれは魔法実験の成果物……すなわちあっし、についても──おりやすからね。
次なる刺客や監視が続々と送り込まれてきやすと、キリがないったらありゃしない、
ワカバにゃんと楽しく遊んだりのんびり冒険どころじゃないでやんす、日常への侵略でやんす、営業妨害でやんす!

考えなくちゃならないことは、まだまだあるでやんす……。
フィオナちゃんとリリアちゃんの処遇、このまま帰して報告されても具合が悪いでやんすが、王国のなかのきな臭さからすれば、
尋問や拷問や、記憶漁りのような外法で情報を引き出された挙げ句始末されちゃったら寝覚め悪すぎでやんす。
ああ、情が移っちゃいやしたね、レイアちゃんの影響でやんしょうか。

「……浮き世はまっこと、物騒なものよな。侵されざる我が根城であれば、そのような些事に煩わされることもないが」
「いつの間に起きてやんしたか、メイド王!?」
あー、フィオナちゃんが身悶えておびえているようでやんす。
「かの娘が謹製メイド服一式を身につけているかぎりは、話は全部聞こえている。
残念ながら、どうにも話はまとまらぬようであるな……」

またリリアちゃん気絶してるんでやんすか?
そうそう、こっちもどうするか考えなきゃならないのでやんした。

下僕にしちゃいます宣言をあっしのなかで下しちゃったでやんすが、ひとまず二人に部下として働いてもらう手もあるでやんす。
その場合、やはり危険を伴いやすので……命の危険もでやんすし、こちらの情報が渡ってしまう危険もでやんすし。
あっしが約半年温めていた計画を実行に移し、二人のお供につけて情報収集してもらうのもありかも知れやせん。
また、どう寝返って従ってもらうかは、手を尽くさないといけないでやんしょうが。

この椅子に腰掛けているうちに、フィオナちゃんの本音を聞いておくのもいいかも知れやせんね。

「ふう・・・、大体わかったでやんす。一応次を最後の質問とさせてもらうでやんすよ」
「フィオナちゃん。今の王国に、忠誠を尽くせるでやんすか?」

この質問、自分で言うのもあれだけど結構えげつないと思うでやんす。一種の踏み絵で
やんす。答えは分かり切っているのに、本音を言えば王国が、本音を言わなければリリア
ちゃんに害が及ぶ、フィオナちゃんは突然、覚悟を迫られる形になるでやんすよ。
さあ、どっちを取るでやんすかね?

「・・・っ!ぼ、ボクは・・・、今の王国に忠誠は誓えない・・・!」
「おねえちゃん・・・」

あら、いつしかメイド王はお帰りになられたでやんすか?ちょっと焦点が覚束ないようで
やんすけど、そこにいるのはたぶんフィオナちゃんでやんすね。威厳がないでやんす。
あのメイド王、何か分からんけどすごい威厳なんでやんす。

「リリアが傷つくなら、王国なんてどうなったっていい。どうせこのまま帰っても、
2人ともひどい目に合うのは目に見えてる・・・。だからっ・・・!」

「お願い・・・。リリアだけは守ってくれないか・・・?」


"真実の椅子"が反応しないってことは、これがフィオナちゃんの、偽りのない本心って
ことでやんすね・・・。ここまで妹のことを一途に思えるって、たぶんすごいことで
やんすよ。

「だ・・・、だめ・・・。おねえちゃんは・・・、おねえちゃんは助けて・・・」

あら、今度はリリアちゃんが割って入ってきたでやんす。弱弱しい瞳の中に、何か
覚悟みたいなものが見えるでやんすよ。こっちはこっちで本気と書いてマジってやつで
やんすね。

「私は・・・、メイド王に捧げられてもいい、貴方の性奴隷でも、何でもなるから・・・。
おねえちゃんだけは見逃して・・・。お願いっ・・・!」
「ダメだ!それはボクがなる!リリアは、リリアだけは見逃してくれ!頼むよ・・・!」

うーん、完全にこの子たちをお仕置きする気が失せちまったでやんす。たぶんこれ、本物の
姉妹愛ってやつでやんすよ。自分の身を顧みずに他人を助ける、あっしには出来ない真似で
やんすね。

「お願い・・・します・・・。うっ!」
「リリアっ!?」
「レイアとやら、もう十分ではないか?」

すすり泣きながら、あっしにしがみ付きながら哀願していたリリアちゃんが気を失ったと
思ったら、まーたメイド王の帰還でやんすよ。リリアちゃん身体大きいから、佇まいとか
振舞いだけで威圧感が段違いでやんすよ。それに、何やらあっしをたしなめようとしてないで
やんすか?

「この献体、真に我に仕えるべき者であることは間違いない。少なくとも、姉に対しての
情愛、献身が嘘偽りない、本心から出た言葉ということはこのメイド王の名において
保障しよう」

リリアちゃん、何かものごっつい人からお墨付き貰ったようでよかったでやんすね・・・。
本当に何者かよくわからんでやんすけど。

「なればこそ、この者たちを「下僕」として、従者として迎え入れる汝は、主たる度量を
見せる必要があるのではないか?」

ぐぬっ・・・、まさかあっしが怒りに任せて適当に言ったセリフに足元掬われるとはっ・・・!
この元野盗にして一介の冒険者のレイア、一生の不覚、でやんす。


「誠に惜しく、残念な話ではあるが、この者については見逃そう。そこの姉もだ。
なればこそ、主たる汝が責任を取れ」

ははぁ、リリア王さまぁ・・・。って冗談やってる場合ではないでやんす!責任って
なんでやんすか!?あっしが何をしでかしたでやんすか。

「責任は2つ。1つはこの姉妹の面倒を汝がきちんと見ること。何でも言うことを
聞くというのだ。汝に仕えるくらい苦にもならんだろうさ。我の見立てでは
恩義にはきちんと報いるタイプだと思うぞ」

ぞ、造作もないでやんす。なんか悔しいでやんすけど、確かにこの子たちを何とか
助けたいとは思わんこともないでやんす。

「そしてもう一つは、我にさらなる献体を捧げることだ。なあに、別に相応しき精神性やら、
この献体に負けず劣らずの優れた素養を持った人間を選抜する必要はないぞ。何やらきな臭い
この話に、1枚噛んでやろうというだけの話だ」


・・・、もう嫌でやんすこのメイド王。

この威厳、この得体の知れなさ。ただ王としての器は確かなようでやんす。
メイド王、居城でただ奉仕者たちにかしずかれてふんぞり返っているだけの玉座の座面の重石とはワケが違うのでありやしょう。
……単なる暇つぶしということもあり得やすが。
どういうわけだか、あっしの身の上というか、このレイアちゃんの秘密にも感づいている節がありやすし。
とっくり自己紹介したわけでもないでやんすのに。つくづく敵に回したくはない御仁だと感じやんした。

むしろ協力を申し出てくれて──自ら審美しあわよくば、より有望な献体をせしめようとしているだけ、かもしれやせんが──いやすので、
そこは重畳というかありがた迷惑というか。

ぽーん。
この部屋には遠見系の魔法も届かないため、あっしのアパートのお部屋の外扉の前あたりに誰か訪ねて来ると、
それを知覚してこの部屋の扉のすぐ外から、ごく小さな音で知らせる仕掛けをしておいたのでやんした。
あっしイヤーはそこそこ優秀でやんすからね。スライム状だとどこで聴いてやんしたのか自分でもわからんでやんすが。
「来客のようでやんす、なので、すこし席を外しまして様子をば」
……椅子に拘束されたボクっ娘に、その妹の姿をしたメイド王。
残していくには酷な状況のような気がしてならないでやんす……。
フィオナちゃんの拘束を解いたって構わないとは思いやす。聞きたいことは一応聞き終えやしたし。

姉妹手に手を取って逃げ出しても、王国に居場所はなさそうでやんすし。
このあっしが彼女らの居場所、確保してあげないとでやんすよねえ、メイド王。

『出て行ってしまったぞ? この部屋には汝と俺の二人きりではないか。ねえ、“おねえちゃん” 』
『や、やめて……ボクに構わないで、リリアの顔で、その声で。悪戯するのは──んっ』
『おやおや? 俺はかの者の手間を省いてやろうと、縄を解いてやっているだけなのだぞ?
何ゆえに……どうしてそんな、いやらしい声を出したりするの?』
『解くなら、ふっ普通に……ひうっ。くすぐらないで、そんなとこ関係な……いっ』
『不思議であるなあ、張り付いている布を解いているだけというのに。曰く付きのこの椅子が、湿ってきているようであるぞ。
くすくす……おかしいね、これはよ~く調べておかないと。ね、おねえちゃん?』
『や、やあっ……脱がさないで、だめ、堪忍してぇ』
『かわいいおねえちゃん。……ちょっとだけ、いただきまーす』

……戻ってきて、もしこんな感じの擬似百合姉妹空間が展開されてやんしたら。
あっしだって、意気込んでいたえっちなお仕置きが、不完全燃焼のままおあずけになったんでやんすよ。
信じておりやすからね!? メイド王! ほんとに!


「はいはーい、どなたでやんす?」
なんだかやたら来客のある夜でやんす。
「なんだ、ニノちゃんじゃないでやんすか。おねむの時間でやんしょ? はやくお部屋に戻るといいでやんす」
扉の外には、金髪ロリ魔術師のニノちゃんがいたでやんす。
麦酒も呑める歳と聞いておりやすが、飛び級で王立魔術学院に編入するほどの実力を持ちながら、
以前通っていた辺境の魔術教室が潰れると聞いて故郷へ向かう道中、魔物に襲われたところを、
間一髪で冒険者に救われた経験がもとで、冒険者の憧れを捨てられずエリートコースを蹴っちゃった、
いまどき変わり種の女の子でやんす。冒険者としてはあっしよりもいくらか先輩になるんでやんすかね?

一緒に仕事をすることはまずないんでやんすが、
たまにニノちゃんのパーティと探索で鉢合わせしたり(絵面は引率される女児でやんすけど、実際は引率してるのが女児なんでやんすよね)、
酒場で一方的に絡まれたり(周りから母娘呼ばわりされたり。髪色だけでやんすよね? レイアちゃんの乙女な部分が微妙に傷ついてやんした)、
あっしに先輩風吹かせたり、張り合ってきたりと騒がしい娘でやんす。

でやんすけど。
こんな遅い時刻はこの娘、ベッドでぬくぬく夢の中のはずでやんす。そういう健康優良児的な生活態度なんでやんす。
優等生引きずってる感じなんでやんしょうか。それとも、見た目の印象でやんすかね……。

「ニノちゃん。明日からお仲間と遠征任務に行くって張り切ってやんしたのに。眠れないんでやんすか?」
遠足前日の夜のワクワク気分の理屈でやんすかね。
あっしには高級娼婦さんの予約がとれて、当日の早朝から浮き足立つ感じのほうがすんなり入ってくるでやんすけど。
「そういうわけじゃ……」
ふむん。どうやらこの娘、別の用事があるようでやんす。もじもじしてる様子なんて、年れいやいや見た目相応みたいに見えやんすけど。
「話があるなら、中においでやせんか。深夜でやんすしお静かに願いたいでやんすけども」
「う、うん。お邪魔しようかな」
もじもじというか、落ち着かなさそうにしてる感じが。まあいいでやんす。
「……おトイレ、済ませて行きやんすか?」
あまりのそわそわっぷりに、聞いておきたくなったでやんす。
金髪ロリっ娘はぶんぶか首を振って固辞しやした。ふむん。
「あ、遠征でだいぶ遠くの街に行くからって、お土産買ってきてくれるんでやんすかね? ふああ~」
あっしは無防備に背中を向けて、腕を上げて伸びをしやす。
ほんと今夜はいろんなことが起きやすね。
「そう、なにがいいのか聞きに来たの。貴様の、冥土の土産をな!!!」


拙いながらもアドリブを頑張って、襲いかかってきたちょっと下調べが甘い暗殺者の意識をさくっと刈り取りやして、
姉妹二人(というか姉一人といちメイド王かもしれやせん)の待つ部屋に戻ってまいりやした。
この暗殺者が弱っちかったせいで逆にわからなくなるでやんすが、今夜の姉妹は手練れの部類なんでやんすね。

はたして部屋では。
妹の身体に入ったメイド王と距離を取って、フィオナちゃんは部屋の隅で所在なさげにうずくまっておりやした。
「どうであった? おお、これは、これは──」
部屋に入ってすぐ、ニノちゃんの姿を偽装していた魔術が掻き消えやした。
担ぐのをやめ床に投げ落としたそいつの正体は、ちっさいおっさんでやんす。

そりゃあねえ、言動のらしさも足りなかったでやんすけど、においが違うとねえ。
ホンモノのニノちゃんは話していてもどこか、乳臭いというかミルクの香りがしやす。
偽者のこれは、漂ってくるのは普通のおっさん臭でやんした。
偽装が甘いというより、姿を装う魔術のレベルだけが飛び抜けてアンバランスだったんでやんすね。誰にかけられたかはわかりやせんが、
このおっさんが自分でかけた魔術でないことはわかりやす。

「早速献体を調達してきたのであるか。俺としては、汝の献身に感心しきりであるぞ。
褒めて遣わす。妹殿のこの身体は、早めに休息をとらせたいどころであったしな」
ありがたき幸せでやんしょうか。

いま拷問も尋問も気が向かないでやんすから、あっしとしても面倒がないと思えば。
リリアちゃんについてはエロ拷問後でやんしたからね、体を拭き清めただけでは見た目はともかく、体力は消耗しておりやんしょう。

フィオナちゃんと協力して、くったりしたリリアちゃんから脱がせたメイド服を、手引きの逆の手順で丁寧に畳みやす。
リリアちゃんてば全裸は可哀想なので、比較的サイズの近いあっしのレイアちゃん服を渡しやす。
わーお。なんだか夜の街へ男漁りに繰り出すあばずれみたいな着こなしになりやした。
フィオナちゃんが恨みがましそうに睨んで来やすが、あっしのセンスでやんすから。慣れるほかないでやんすよ。げへへ。

小さいおっさんの服を適当に剥ぎやした。小柄なほかは特筆すべきところのないおっさんの身体でやんす。
リリアちゃんから離れる前のメイド王が、メイド服一式の付属タオルをぱっぱっと振って、それだけで真新しいタオルに戻りやしたからね……。
街の娼婦さんを拭き拭きしたタオルで暗殺者おっさんの身体を拭くわけではないでやんす、遠慮は無用なんでやんすが。
ややっ、拭くとまるで少年の肌のようにつやつや張りが出てきたでやんすよ。
ついでに顔も拭いておきやすか。このタオル、怪しげな生地でやんすが量産したら美容目的で売れたりしやせんかね。

リリアちゃんのときと同様に、着せたら謹製メイド服はサイズぴったりに変わって……、


ぺかーーーっ。
え。なんか光り出したでやんすよ、爆発したりしないでやんすか?
光ってよくわかんないでやんすが、エプロンからメイドカチューシャまで、全部装着し終えたでやんす。

まばゆい光が収まって、こ、これは!?
「ふう、今晩は諸君。また会えたな、
我こそはメイド王、究極のメイドを求めた永遠の求道者なるぞ」
どういうわけか、むっくり体を起こして喋り出したのは小柄なおっさんなどではなく、
ニノちゃんそっくりの金髪ロリっ娘メイドでやんす……。

「先ほどちらりと視た、偽装魔術の姿が印象的だったのでな。これは身軽でなかなか良さそうであるぞ」
そんなロリメイド王、事もなげに。
摩訶不思議でやんすよ、謹製メイド服。王の管理者権限だかなんだかなのかもしれやせんが。
ただ、王国と事を構えるとなると、何にも知らないニノちゃんの容姿を巻き込むのは忍びないでやんす。
あとで掛け合って、髪色とかいろいろちょっとずつ改変して貰うべきでやんすね。
これがほんとのカスタムメイドでやんす。なんちゃって。


「ふむ、随分と洒落たことを考えるではないか。なかなかに愉快だぞ」

な、何であっしが考えていることまで分かるでやんす!?

「こんなものは序の口だ。まあ見ているがよい」

そう言ってすぐ、ニノちゃんの姿をしたメイド王が光り輝き始めたでやんす!
全身を覆う眩い光の中のシルエットが変わっていくでやんす。背丈は同じくらいで、
やたらと胸が大きくて、ボブカットの・・・、んん?これって・・・

「ふう、この献体の記憶にあった可愛らしい少女に変身してみたが、これでどうだ?」

ほえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ワカバちゃん!ワカバちゃんメイドでやんすよ!天使に
メイド服のコラボって本当にどうなってるでにゃんすか!黒髪とメイド服の親和性が
高すぎるでやんす!今度土下座してメイド服着てもらうでやんすよ!さすがにメイド王
のは着せないでやんすけどね!

「おや、この者この屋敷の中にいるではないか。我の魔力探知を以てすればこの程度の
探索は容易い。どうだ、この者を献体としてささげてくれれば、向こう100年の
安寧は我が保証するが」

「絶っっっっっっ対にダメでやんす!!」

や、やっぱりろくでもない事考えてやがったでやんす!だめでやんすよ!いかに
似合うからってあっしのワカバちゃんは絶対にあげないでやんす!ワカバにゃん
にはあっしとパーティ組みながら仲良く遊んでいい旦那さん貰って子供と孫に
いっぱい囲まれながら幸せのうちに老衰で死んでもらうんでやんすからね!
あの子のハッピーライフはあっしが守るでやんすから!ゆりかごから墓場まで
完全サポートでやんすよ!

「むう、仕方あるまい。汝の周りにいればその内他にも献体に逢えるであろう。
その時を心待ちにするとしようか」

取りあえず興がそがれたようでやんす。しかし、さっきあっさりと変身魔法
かましたでやんすけど、あれって超高難度魔法のはずでやんすよ・・・?レイア
ちゃんの知ってる子でも出来る魔法使い自体が、それこそさっきのニノちゃん
含めてごく少数のはずでやんす。やっぱりこいつ、本当にすごいのでは・・・?

「まあ、正直なところ外見も中身も変身魔法で作り替えてはあるが、所詮本質は
男の肉体、正直面白くないのでな。ましてこの矮小なる献体、現世での器には
相応しくない。せめてもの「かすたむめいど」をさせてもらうとしよう」

威厳のあるワカバちゃんというのも乙なもんでやんすね・・・。普段素直で優しい
子が役割貰ってすごく頑張ってる感が萌え!でやんす。そんなワカバ王は、腰を
抜かしているフィオナちゃんの方に向かっているでやんす。いったい今度は
何をしでかすでやんすか?

「ぼ、ボクが何か・・・?」
「汝も見た目麗しい。暗殺を任される以上、その辺の技能も鍛えてあるのだろう。
仮初の肉体のモデルとしては十分だ。少し「もらうぞ」」
「へっ・・・、ぐむっ!!」

ああああああんのメイド王よりによってワカバちゃんの姿でフィオナちゃんとキス
してるでやんす!あっしの天使と可愛い子のそんな姿、網膜に焼き付けるでやんすよ!
じゃないでやんす!何してるでやんすかけしからん!なんかフィオナちゃん目がトロン
としてるし!
ん?なんか全身から力抜けてないでやんすか?なんか腕とかピクピクしてるし、大丈夫
でやんすか・・・?

「あー・・・」
「これがこの者の魂か。清らかで美しい・・・。この者でも十分に我に仕えることは
できよう」

何か、ドエライことしてるでやんす。レイアちゃんも見たことない術のようでやんすね・・・。
フィオナちゃんは舌を出しながらその身をワカバ王に預けてぐったりしてるでやんす。

そのフィオナちゃんの口から何やら白いものが見えるでやんすけど、あれ、
もしかしてフィオナちゃんの魂でやんすか・・・?

「ほう、魂が見えるか。やはりそのレイアとやら、相当に熟練した者の
ようだな。まあ、滅多に見れぬ術式だ。記念に見ておくといい」

そう言ったメイド王はその魂のほんのひとかけらを摘まみとって飲み込み、
残りはフィオナちゃんの口の中に戻したでやんす。虚ろな目をしたフィオナ
ちゃんはそのまま気を失ったようで、ぐったりとメイド王に身を預けたで
やんす。そんなメイド王はフィオナちゃんの身体をしっかりと抱きしめて、
口をこじ開けてまたキスし始めたでやんす。ぐぬぬ・・・、うらやましい。

すると、メイド王の身体が眩い光に包まれ始めたでやんす。白く神々しい、
神殿でも滅多に見ないような神々しい光、さっきまでよりはるかに強い
光でやんすそれに包まれたメイド王は姿、形を変えていくでやんすね。
ワカバちゃんに化けた時より、何かシルエットがしっかりしてるで
やんすよ。

光が収まると、そこに立っていたのは気を失ったフィオナちゃんを支える、
メイド服を着たフィオナちゃんでやんした。これはいったい、どういうことで
やんすか・・・?

「ふふっ、どうかな。ボクの完全変身は?」

その声は、本当にフィオナちゃんが喋っているようにしか思えなかったでやんす。

「うん、その通りだよ。この身体も、この声も、魔力の質も頭の中身もボク、フィオナ
そのものだよ。血液だって採ってみるといい。全く同じだから。そう「作り替えた」
からね」

つ、作り替えた・・・?何を言っているでやんすか・・・?

「驚くのも無理はないか。これ、実際禁術に近いからね。さっきまでのは変身魔法。
記憶の中にあるイメージを外に吐き出すような感じで、その何者かに変装する魔法さ。
あれ自体はコツさえつかめば別段難しくはないよ。今度ボクが教えてあげようか?」

「今回使ったのは「完全変身」。文字通り、対象の魂を触媒に、実際の身体から要素を
少しだけもらって記憶も、性格も、中身も全部「書き換えて」しまう魔法なんだ。
だから今回は、このおじさんの魂を、少しだけもらったボクの魂に作り替えた、
ってことさ。どうだい?さっきから喋り方とかもそっくりだろう?」

あっし、夢でも見てるでやんすかね?明らかにやばい魔法でやんすよ。ていうか、
変身魔法ってさっきも言った通り一握りしか使えないはずなんでやんすけど、それが
あんなあっさりと出来るもんなんでやんすかね?ましてその上級魔法をあっさりと
使いこなすなんて・・・。

・・・、本当に、何者なんでやんすか?


「でも、この子の身体をコピーしたのは一応、君とこの姉妹を助けるためでも
あるんだよ?」
「・・・、どういうことでやんすか?」
「変身した子に実はヒントがあるんだけど、気が付いたかな?」

変身?ニノちゃんでやんすか?いや、それともワカバちゃん?

「さっき変身したワカバさん。あのおじさんとは会ったことないはずだよね?
さて、ボクはどうやって「ワカバさん」に変身したのかな?」

・・・、言われてみれば、何でメイド王はワカバちゃんに変身出来たでやんすか?
それってつまり・・・

「すでにワカバちゃんもマークされていた・・・?ってことでやんすか?」
「ご名答。やっぱり頭がいい人は話が早くて助かるね。これ一応「我」の
本音だからそのつもりで」

これが王を名乗る人間の資質ってことでやんすかね。気を抜いているようで全く
油断していない、次の手も考えている、チャラけてるようで全く気を抜いていない、
最も敵に回したくないタイプでやんす。
そんなフィオナ王は気絶したフィオナちゃんをリリアちゃんの横にやさしく寝かせると、
こんな提案をしてきたでやんす。

「だから、ボクが「フィオナ」として王国に潜り込んであげる。そのワカバちゃんの
警護も兼ねてね」
「フィオナちゃんに化けたのはそのためでやんすか?」
「まあね。リリアはこの街に引き続き潜入させた扱いにしておけばいい。あとは「ボク」を
匿ってくれれば、この子たちの身の安全はある程度保証できる。ワカバちゃんはボクが守る。
それでいいよね?」

意外と3手先くらいまで考えてるでやんすね。今回はこの意見に甘えるつもりでやんす。

「それに、さっきのおじさんに比べれば素養ある子をベースにしたからさっ!」
「まあ、こういうことも造作もないというわけだ」

一瞬で変身したと思ったら、ニノちゃんをベースにフィオナちゃんの要素を混ぜ合わせた
姿に化けやがったでやんす。金髪ロリ体型なのに、顔のパーツはフィオナちゃんとニノちゃん
のパーツを絶妙に組み合わせてきれいに整えてるでやんす。メイド服が似合いまくってる辺り、
これ王の趣味も多分に混ぜたでやんすね。

「あ、そうそう。先ほどの「完全変身」なのだがな、あれには別の使い方もある」

メイド王の答えに、あっしの背筋は凍ったでやんす。

「あのまま魂を抜き取ると肉体は空になる。そこに別の魂を入れれば肉体をきれいに乗っ取る
ことが可能だ」

「あ、そうだ。そのフィオナからもらった魂はほんのひとかけらだ。起きても日常生活に
何ら支障はないし、この程度の量であれば2日もあれば形を取り戻す。恐らく本人も
気づかないであろう。そこは心配せずともよい」

それを聞いて少し安心したでやんす。気づけば二人、身を寄せて眠っているでやんすね。
無意識でも、やっぱり仲のいい姉妹のようでやんす。

「我からの話はここまでだ。この世に顕現している間は我による究極の奉仕を堪能させて
やるから、楽しみにしておくがよい。その者たちの後の処理は任せるぞ」

メイド王だけあって、仕える身としても一流なんでやんしょうね。そうは見えないで
やんすけど、お手並み拝見と行かせてもらおうでやんす。

「さて、このフィオナという少女の記憶を頼りに、今宵は久方ぶりに女体を堪能すると
するか・・・」

・・・、やっぱりメイド王もエロ魂持ちでやんす。ちょびっとだけ親近感がわいたでやんす。

メイド王が「我の英気を養うための快感を享受する」とかのたまって、隠れ家の寝室にあたる一部屋を
借り切ってしまったので、取りあえずフィオナ、リリア姉妹にはこの部屋で寝てもらうでやんす。
まあ、目覚める気配がないから仕方がないというのもあるし、この部屋なら魔法は霧散する、つまり
脱獄はまあ不可能ということでやんすからね。とりあえず落ち着いて、身の振り方を考えてもらうで
やんすよ。えーっと、一応お布団だけ敷いておいてやるでやんす。この代金は文字通り身体で払って
もらうでやんすから、覚悟するでやんすよ。

べ、別にいじめたくなくなったとか、そんなことはないでやんすからねっ!!

取りあえず隠れ家の処置も済んだので、表に戻ってあっしも休むことにしたでやんす。

「うんいぃぃぃぃぃぃぃぃ♡ボクの身体きもっちいぃぃぃぃぃぃ・・・」

・・・メイド王がフィオナちゃんからコピーした身体を楽しみ過ぎてあのザマでやんすから、こっちじゃ
ないとおちおち休めないというのもあるでやんすけど・・・。

「うん・・・、むにゃむにゃ・・・。もう食べれないですにゃ・・・」

あっしの意味の分からん苦労をよそに、ワカバにゃんはぐっすり眠ってるでやんす。何か美味しいものでも
食べてる夢でも見てるでやんすかね。その姿に、思わずほっこりしてしまうでやんす。

あっし専用の部屋に入って、ベッドの上でちょっと考え事をするでやんす。
まずはワカバちゃんをどうにかしてこっちに誘う必要があるでやんすね。
メイド王が守ってくれるとは言うでやんすけど、正直今の王国は信用ならんで
やんす。どうにか離脱させないとでやんすね・・・。
あ、彼女から友達の名前は聞いておくでやんすかね。任務で来たらエッチな
お仕置きはかますでやんすけど、加減はしてあげないといかんでやんす。
まあもちろん、あっしの魅力で取り込ませてもらうでやんすけどね。

あとはまあ、この街をちょっとフラフラ歩いてみるでやんすかね。リリアちゃん
みたいに誰かが密偵として入っている可能性も考えたほうがいいでやんす。
そいつらを炙り出して、王国に「正しい情報」をくれてやらないということも
必要でやんす。もし増員が為されたらそれはそれで・・・、でやんす。少なくとも
道具は腐るほどあるでやんす。むふふ・・・。

と、物思いに耽っていたら眠くなってきたでやんす。あっしも男でやんすからね、
レイアちゃんの秘所やパイオツをちょびちょびと慰めながら就寝でやんす。スヤァ…

あまりにもメイド王が完全変身形態、略して王変態を楽しみ過ぎてるからか、
少しだけ引っかかったことを寝床で思い浮かべてしまったでやんす。

あっしは気にしやせんけどね。
献体となったおっさんが、ワカバちゃんの情報源か知り合いってこともよぎったでやんすからね、
メイド王の口ぶりからすれば、知らない暗殺者のおっさんみたいで、ワカバちゃんが悲しむような事態にはならなさそうでやんすし。
完全変身って、元通りにできなさそうでやんすから。
メイド王としてはどうとでもできるんでやんしょうけど……。
元おっさんの魂のレベルはメイド王の手ずから美しく磨き上げられて、メイド王の身許へ召されるさだめなんでやんしょうか。
あっしは気にしやせんけどね、別に。

朝になったら、ワカバちゃんとフィオナ王を見送ったあとは、少しばかり朝の “お掃除” しておくでやんすよ。
ワカバちゃんが騎士団本拠地へ戻り、王がその傍で情報を集めてくれるというなら、
あっしに向いてる目を引きつけ、眩ませ、潰しておくくらいはやったって罰は当たらないでやんしょう。

……そりゃあ考えなしに暴れて警戒レベルを引き上げるのは悪手でやんす。
あっしの隠れ家はまず足がつきやせんから、姉妹をそこに匿っておいて、あっしへの火の粉を振り払って過ごす案もあるでやんすが。

退屈でやんす。つまんないでやんす。昨夜みたいな平凡なおっさんとかいくら襲ってきても処分に困るでやんす。
あっしが昔ながらの恐るべきスライムであれば、酸で溶かして溶かして溶かしまくって、骨と服の残骸がひと山出来上がるところでやんす。
その間、ワカバにゃんには当然会えやせん。フィオナちゃんリリアちゃんといちゃつくのもままならないでやんす。
姉妹のごはんの食材届けるくらいしか関われないかも。

あっしの退屈さ加減もでやんすが、姉妹も黙って匿われてはいないでやんしょうね。
しばらくは大人しく匿われているかもしれやせんが、そこも心配で、
せめてあっしの目の届くところに置いておきたいんでやんすよ。
できれば姉妹とお大尽遊びみたいなのして、ゆるりと偵察報告を待ちたいくらいでやんす。
大切なワカバちゃんを囲って思うさまいちゃいちゃしたいでやんすよ、明日にでも。ほんとに。
王国に殴り込みすれば片が付くような簡単な話ではないのは承知の上でやんすが、
待つ身は歯がゆいでやんすね。

この姉妹を守るのはあっしの大事な役目でやんす。
あまりにも不甲斐ない体たらくでは、メイド王に姉妹を召し上げられかねないでやんすからね……。


「うーん、おはようでやんす・・・」

気づけば朝になっていたでやんす。あっしの頃から感じるんでやんすけど、やっぱり
健康な身体は休み方も一流なんでやんしょうか、すごく寝覚めがいいんでやんす。
さてさて、まずはご客人を起こすところから・・・、ってあれ?何でやんすこのいい
匂いは?たぶんおいしそうなパンか何かの匂いがするでやんすけど・・・

「ああ、おはようございますご主人様!僭越ながら、朝食を用意させてもらいました!」

あっしのキッチンで、明らかにボクっ娘と思われるメイドがご飯を作っていたでやんす。
しかもすっげぇ美味そうでやんす・・・。

「もしかして、ボクの事勘違いしてませんか?メイド王と名乗るようなものですからね、
仕える者としても腕は磨いてるんですよ?」

片目をウィンクして、口元に手を当てながら説明してくれるでやんす。正直、すっごい
萌える・・・。ましてやこの表情、仕草、きっとこれメイド王が研究しつくして選んだ
フィオナちゃんを可愛く魅せる方法でやんすよ。たった一晩で本人が考えない姿を
見出そうとするその精神、その徹底っぷりに脱帽でやんす。
ていうか、やっぱりメイド王だったでやんす!いったいあの隠れ家からどうやって出た
でやんすかね。もう考えるのも面倒なんでやんすけど、それなりに手が込んだ封印してる
んでやんすけどね。

メイド王のポテンシャルの高さ、意識の高さ、ご奉仕レベルの凄まじさを見せつけられたかたちでやんす。
王のお眼鏡にかなったモデルのフィオナちゃんの良さというのも相まって、それと前述のフィオナちゃん研究の成果も
加味された、萌え萌えボクっ娘メイドさんというのは間違いなく。
メイド王はごく普通にご奉仕してみせてるだけ、なんでやんしょうけど。

これでメイド王手ずからの朝食が、ワカバちゃんのごはんより美味しかったら、
あっしの魂の中で何かが屈してしまいそうで怖いでやんす……。
ごはん食べる前からのこんな葛藤を見抜かれたら、というか悟られる可能性は大でやんすけれど、
……この者のなかで、我がご奉仕と比肩しうるかの者とは? なんてまた興味深げにワカバちゃんのことを、
もし警護ついでにと王が接近してあまつさえ籠絡しだしたら、ああ! あっしの天使にゃん……。
心配でやんす、気掛かりでならないでにゃんす。
朝餉の匂いを吸い込んだだけなのに、心配の種が増えたでやんすよ朝っぱらから。

「ふああ……おはようございにゃす、せんぱい」
はああああ! 寝ぼけ眼の天使にゃんがおっきしてこっちきたでやんすよ!
お客さま用の何の変哲もない大人しいパジャマ姿なのに、なんだかまぶしいでやんす。
ぎゅっと抱きしめて、ベッドに押し倒してにゃんにゃんしたい! なんて場合ではないでやんすね。

顔を拭いたり身支度してもらいたいところでやんすけど、ゆうべのことは何にも知らないワカバちゃんでやんす。
初対面の美少女メイドと天使にゃん。このツーショットに微妙に既視感はありやすけど、それはゆうべの出来事でやんすね。
立ち位置も中身も別なあの部屋での。
「お目覚めですか? ボクのことはお気になさらず、あちらに洗面のご用意がしてあります。どうぞ」
「どうもご丁寧に、ありがとうございにゃす。先輩、またあとでー。はふん……」
ワカバちゃんが図太いのかなんなのか、起きたら知らないメイドさんが居たのに、
驚くこともなく、とくに不審そうな素振りもなくむにゃむにゃ向こうへ歩いてっちゃったでやんす。

それだけ、メイド王の手腕が鮮やかなんでやんしょうか……東方の妖しにそんな感じでひとの家に上がり込むのがいたような。
そっちはあたかも家の主人のように振る舞うやつらしいでやんすが。
「メイドたるもの、お客人に不審がられるようなことでは務まらないよ」
涼しい顔でメイド王。底知れないでやんすね……。
ワカバちゃんには、おいおい事情は話していけばいいでやんすかね。
さしあたり、美味しそうな朝ごはんをいただきながら。

「へぇー!フィオナさんも王国の方なんですね!」
「ええ、騎士団には属しておりませんが、こうして潜入任務など、裏方の仕事を
務めております」

メイド王の用意してくれた朝ごはんに舌鼓を打ちつつ、すっかり着替えと身支度を
済ませたワカバちゃんを交えて情報交換をするでやんす。しかし、こうしてみると
ワカバにゃん、騎士の正装も似合うでやんすね。というか、ご飯美味しすぎるで
やんすね・・・。どうも冷蔵庫の中のありあわせで作ったっぽいでやんすけど、
その腕前に脱帽でやんす。

「ボクも一回任務の報告で王国に帰らないといけないので、よろしければワカバさん。
帰りの道中ご一緒しませんか?昼の旅とはいえおひとりでは危ないかと思いますので」
「ええ、ぜひ一緒に帰りましょう!やっぱり一人旅は寂しいですから・・・」

メイド王はフィオナちゃんの立ち位置や記憶から尤もらしい理由をこじつけて、
あくまでワカバちゃんにも自然に、違和感のないように同行するように仕向けたで
やんす。この王、潜入とかすごい得意そうでやんすね。会話が上手くいかないようなら
それとなくサポートしようと思ったでやんすけど、杞憂に終わったでやんす。

「時にワカバにゃん。王国に戻ったらお仕事とかはどんな感じでやんすかね?」
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うろ
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面白いので続編希望します。
30.100きよひこ
勇者と聖女の登場が楽しみです
45.100通りすがり
続きに期待!