支援図書館(η)

『JSメイドカフェに夢中!』

2021/01/24 03:30:43
最終更新
サイズ
13.89KB
ページ数
1
閲覧数
5356
評価数
0/25
POINT
1180
Rate
9.27

分類タグ

ひと昔前に日本各地を席巻したが、数年後には下火となった「メイド喫茶」、「メイドカフェ」と呼ばれる系統店がある。
現在でも完全に廃れたわけではなく、秋葉原や日本橋などのオタク街ではいくつか生き残ってはいるみたいだが、さすがに往時のような勢いはない。

かくいう俺も、大学生の頃には毎週末にアキバに出かけて、著名なメイド喫茶に入り浸っていたが、あれから10年近くが過ぎ、社会人──しがない中小企業のサラリーマンとなった今では、足を運ぶこともなくなってしまった。
一応今でもアニメやゲームといったオタク系の趣味はぼちぼち続けているし、当時の友人ともメールやチャットの類いで連絡はとっている。

そのオタ友のひとりから、昨日の晩、信じられないような情報を聞いた。

「噂なんだけど、ア○バの裏通りにさぁ、JSメイド喫茶があるらしいぜ」

JSって──こういう場合は「女子小学生」のことだよな? 「Javascript」とか「JR湘南新宿ライン」ってオチじゃないよな。

「あたり前だろ! どんな店だよ、それ」

いやいやいや!
さすがにガセだろう。
今時の日本じゃ、中学生だってアルバイトは原則禁止で、ごく特別な事情がある場合に新聞配達とか子役タレントとかが認められてるくらいのはずだ。
まして、小学生が、そんな飲食店で働くなんて……。

──あ! そーか。偽小学生、いわゆる「合法ロリ」か。
高校生ぐらいで、背が低くて童顔の娘を雇ってるってパターンだろ、それ。

「まーなー、そう考えるのが普通だよなぁ。でもさぁ、ホレ」

オタ友がスカ○プにアップした写真には、どう見ても10歳からせいぜい12歳くらいにしか見えない娘たちが、メイド服を着て、ソファの上で思い思いのポーズをとってる様子が映っている。

「こんなカワイイコたちがいるなら、仮に合法ロリだとしても行く価値あると思わないか?」

* * *

さて、オタ友の誘いに負けて、くだんの「JSメイド喫茶」とやらに同行した俺だったが……。
実はこれ、俺を、親戚が経営するその店「プリズムスティック」の常連にするための、オタ友の巧妙な罠だったらしい。

実際、悔しいことに俺は、休日はもちろん、平日も会社を定時で退社して通うほど、「プリズムスティック」にドハマりしてる。
いや、だってここのキャスト(ウェイトレスのことね)の娘たち、声や見かけは完全にローティーンなのに、いざ会話してみるとすんごく俺みたいなオタクと話が合うんだよ!
最近は店で売ってるオリジナルグッズも大人買いし、イベントにも欠かさず顔を出すようになった。

もっとも、所詮はしがない貧乏サラリーマンなんで、すぐに貯金も尽き(このテのお店のメニューはやたらと高いのだ!)、これからはちょっとは自制しなきゃいけないなーとか思っていたんだが……。

「「「いらっしゃいませー! プリズムスティックへようこそ♪」」」



声を揃えてお客様をお出迎えする3人のJS(って言ってもさすがに高学年くらいだけど)風味な女の子たち。
──そのうちのひとり、黒髪ツインテの子が、実は俺の変装(むしろ変身?)した姿だって言ったら、皆さんは信じるかい?

例のオタ友との会話で、こないだの件(金がないから、今後は来店頻度を減らすつもり)を打ち明けたら、「じゃあ、土日に店でバイトしないか?」と誘われたんだ。

「する!」と返事した翌日、即採用の知らせが来たのは、例の親戚さん経由で店に話が通ったんだろうと、コネというかツテ的にわからないでもないんだけど……。

「じゃあ、夕海くん、今日からよろしく頼むわね」
外見上、俺達より数歳年下の20歳代前半くらいの若い女性にしか見えない店長兼オーナーさん(店での肩書は“メイド長”らしい)と顔合わせして、緊張気味に頭を下げる俺。

「は、はい、よろしくお願いします」
言い忘れてたけど、俺の名前は夕海朔(ゆうみ・はじめ)。今年で28歳になる好青年(自称)だ。

「それじゃあ、制服に着替えてもらいましょうか」
そう言って渡されたのは、お店のキャストの娘たちと同様の、フリフリとヒラヒラの多い黒のメイド服。

「はぁ~?」
という言葉とともに漏らした溜息に、「あんた頭大丈夫?」的なシツレイ・ニュアンスが混じっていたとしても、誰も俺を責められないだろう。

長身とかマッチョってワケじゃないが、俺は20代半ばの男性として平均な体格をしている。サイズで言えばメンズのMが適正だ。
それなのに、女物のS……どころかSSサイズくらいのメイド服を渡されて、どうやって着ろ、と?

「あはは、まぁ気持ちはわかるけど、試してみたらわかるからさ」
にこやかなのに妙に押しの強い“メイド長”の重ねての指示に、仕方なく更衣室で着替えることにする。

ダンガリーシャツとチノパンを脱ぎ、さらに少しでもサイズが窮屈にならないよう下に着ていたTシャツも脱いでパンツ一丁になる。
ワンピース(エプロンドレスって言うんだっけか)状のメイド服の上のボタンを全部外して、少しでも余裕を持たせてから、意を決して俺はそこに足を突っ込んだ。

「あれ?」
どう考えてもキツキツだろうと思ってたんだが、意外と楽に両足とも通り、スカート部の布地を腰までたぐり上げることに成功する。

「??」
さらに、そのまま黒いワンピースの上半身部分を引き上げ、袖を通すことも簡単にできてしまった。

「見た目よりも伸縮性のある素材だったのかなぁ」
何気なくそのまま視線を下の方──スカートの裾から突き出ている足に向けた瞬間、思わず“僕”は自分の目を疑った。

足首からふくらはぎ、膝の上あたりが、明らかにいつもより細く、白く、そして脛毛の一本すら見当たらないスベスベの肌になっていたからだ。

(そう言えば……)
肩のあたりがふわふわ膨らんだ袖(パフスリーブとか言うんだっけ?)だから見逃してたけど、肩幅とか、もっと言えば手足自体も、ずいぶんと短く、華奢になってない、コレ!?

何かおかしな──それこそ「アウターゾ●ン」とか「世にも奇妙●物語」的な意味での不思議な事態が起こっていることを、ようやく僕は理解した。
したんだけど……。

「え? な、なんで手が止まらないの!?」
ワンピースの胸元のボタンを、僕の手が勝手にとめているんだ。

女物だからボタンが逆についていてやりにくいはずなのに、特に手間取ることなく、指先(よく見れば指も手もいつもよりだいぶ小さくなってる)がひとりでに動いてとめていく。

平均的な体格の成人男子がSSサイズのメイド服を着込むなんて、普通に考えたらパツンパツンのブラクラ案件なはずなんだけど、窮屈さなんてカケラもない、むしろ肌触りとか着込ごちとかとてもいいのが、逆にコワい。

そう思っているにも関わらず、僕の手足は止まらず、黒いワンピースの上からフリル満載の白いエプロンを着け、黒いニーハイストッキング&黒いエナメルパンプスまで履いていく。

最後にメイドの象徴ともいえる白いヘッドドレスを頭頂部に着けた時──いつの間にか肩までの長さに伸びていた髪が、左右の耳の上でキュッと結わえられるのを感じた。

ここまでくれば、さすがに自分が今、普段とかけ離れた“姿”をしているだろうと推測はついたが、それでもなお、勝手に足が動いて更衣室の隅に置かれた姿見の前に移動しようとする。

(──あ、コレ、ダメなヤツだ)
見てはいけない。見れば、自分の“中”で何かが決定的に変わる。

それを直感的に理解していながら、僕は鏡に映った自分の姿へと視線を向ける。

鏡の中には──黒髪ツインテールの11、2歳くらいの清楚な印象のメイド少女が、もじもじしながら立っていた。

(嗚呼、見ちゃった……)
幾許かの後悔と──それを大幅に上回る満足感、多幸感が、心の中に満ち溢れていく。

「ボクって……可愛い♪」

この瞬間、後に「プリズムスティック三人娘」と呼ばれる人気JSメイドトリオ、その最後のひとり“みゆ”が誕生したのだった!
──なーんちゃって♪

* * *

「は~い、それじゃあ、オムライスにケチャップでメッセージ書きますネ……もえ、もえ、キュンっ♪ と」

「こちらが10月のハロウィンフェア限定の、ボクたちのプロマイドで~す♪」

「えへへ、いってらっしゃいませ、だんな様♪ お早いお帰りをお待ちしてまーす!」

“みゆ”として働くようになったボクは、自分で言うのもナンだけど、バイト初日から結構キチンと動けていたと思う。

ひとつには、10年前に数多のメイド喫茶に足を運び、さらに最近はここ、プリズムスティックに通い詰めていたこともあって、「メイド喫茶の基本」は(客目線だけど)十二分に知り尽くしていたからだと思う。
もちろん、客側だけでなく店員側でないと知らない情報とか、店毎のルールとかもあるワケだけど、極論すると、ボクはソレだけ覚えればよかったからネ!

そしてふたつ目は、誰よりもボク自身が“みゆ”に一人前のJSメイドになって欲しい/なりたい……と願っているからだろう。

今のボクの姿は、それこそ「夕海朔が思い描く理想のJSメイド」そのもの。 でも、それがあくまで外見だけだったら、その(メイドとしての)魅力は半減しちゃうって思うんだ。

だから、ボクは心から“可愛いメイド”になりきって、お店に来たご主人様たちに、いーっぱいご奉仕しちゃうんだ♪

* * *

一方、JSメイド“みゆ”としての時間が充実していくのと反比例して、俺の──夕海朔の日常は、少しずつ何かが狂い始めていた。

土日はフルタイムでお店で働き、有給も限界まで使い切ってお店に通い、さらにそれでも飽き足らず、平日も毎日定時きっかりでアガって、そのままプリズムスティックに足を運ぶ。
そんな生活を続けていれば、健康面でも社会面でも破綻をきたすのは目に見えていた。

会社で課長に「注意力散漫で書類にミスが多い」と説教される。
普通に会社員として8時間働いたあと、メイド喫茶でさらに3時間ほど立ち仕事をしているのだ。疲れて当然だ。
しかも、休みの日にまったく休んでいない。

──もっとも、“みゆ”でいる間は、不思議と蓄積された疲労を感じることもなく、「元気でちょっとあざといJSメイド」として振る舞えるのだが。

だから、プリズムスティックで働き始めて3ヵ月めに、見かねた周囲の(半強制的な)薦めで病院に検査に行き、結果、休職して自宅療養に入ることになった。

そんな状態でも、俺はメイド喫茶通い(正確には「メイド喫茶でメイドになること」)が止めらなかった──否、止めたくなかったのだ。
だが、もし「休職して自宅療養中のはずなのに、こっそりメイド喫茶通いしている」なんてバレたら、よくて減俸、最悪解雇もあるかもしれない。

失業の危機と天秤にかけられると、如何にメイド狂いの俺でも、さすがに躊躇いが生じる。

そんな時、お店のバックヤードで、“みゆ”の姿のまま不景気な顔をしている俺(ボク)の耳に、メイド長がこんな提案を囁いたのだ。

「バイトでなく此方を本業にしませんか? 正社員待遇で雇いますよ」

それが悪魔の囁きだと百も承知で、ボクはコクンと首を縦に振った。

* * *

それから3年後。
“みゆ”──遠藤美夕(えんどう・みゆ)は、プリズムスティックの系列店「カレイドライン」で、“JC”メイドとして働いていた。

「まさか、お仕事中だけじゃなく、プライベートまで女の子として過ごすハメになるなんて、ね」

あの時──メイド長こと遠藤碧(えんどう・みどり)に問われて、即座に頷いたあと、事務所で正式に契約書にサインをすることになったのだが、夕海朔青年は、契約書を隅までキチンと読むべきであった。

別段、わかりにくい文章で煙に巻いたり、該当箇所だけもの凄く小さな文字で書かれていたというわけでもないが、「甲は乙の保護下のもと、外見年齢相応の日常生活を送るものとする」という一文があったのだから。

さらにそのすぐ下に、「契約期間中、乙は甲に対して、健康で文化的な生活を送るのに必要な衣食住を保証する義務がある」という条項が続いていたことの意味も、よく考えれば「ん?」と不審を抱いただろう。

その他、諸々の契約内容の結果、二十代後半の男性であったはずの「夕海朔」という存在は、11歳の黒髪の美少女「遠藤美夕」へと変じ、碧の養娘として小学校に通うことになったのだ。
無論、メイド服を脱いでも男に戻ることはない。

放課後、プリズムスティックでJSメイドとして働くことも「家業のお手伝い」の範疇として正式に認められた。
同様に碧の保護下にある「イリス」ことアイリスや、「クロ」ことクローディアとも、義姉妹としてお店の中だけでなく日常(いえ)でも親交を深めることとなる。

アラサー男からいきなり小五ロリになること自体は、すでに店での勤務で慣れていたので、そのままの姿で私生活を送ることになっても、さほど困らなかったのは不幸中の幸いか。
それでも、「思春期に差し掛かった女の子のデイリーライフ」の中、トラブルやハプニングはやはりいくつも発生したが、“養母”の碧や“姉妹”のイリスやクロが手を貸してくれたので、大ごとにはなっていない。

──ちなみに最大の試練は、六年生になった直後に訪れた初潮だろう。
それまで「今の姿は借り物」で「みゆという美少女を演じている」感が抜けなかった“彼女”も、経血と下腹部のリアルな鈍痛によって、「今の自分は女である」という“現実”を容赦なく叩き込まれることになった。

「契約」を破棄して元の夕海朔(おとこ)に戻ることも考えないではなかったのだが、イリス&クロ姉妹との励ましや、学校のお友だちとの絆が、みゆを踏み止まらせた。

その後、第2の試練たる中学受験も無事に乗り越えて、みゆはイリスやクロと一緒にとある私立の女学院に合格し、翌春からその中等部に通い始めた。

それと同じころに、“母”の碧は、今の店の系列店として「JCメイド喫茶・カレイドライン」を立ち上げ、みゆ達3姉妹(ちなみに、みゆは末妹扱いだ)は、そのままそちらで働くようになったのだ。
JSメイドがウリのプリズムスティックほど業の深い客は少ないが、それでも希少な「JCメイドに会えるお店」ということで、それなりに繁盛はしている。

「でもさー、再来年はあたしたち、女子高生になるじゃない? マミィはどーするつもりなんだろーね?」

お店の営業が終わった後、更衣室で着替えながら、ふとクロが言い出した言葉に、イリスは首を傾げる。



「どうって……今度はJKメイド喫茶を作るんじゃないかしら」
「ボクらのために? それは確かにありそうだけど──でもJKメイドが働いているお店って、わりと普通じゃないかな?」
イリスの言葉に同意しつつも、疑問を投げかけるみゆ。

「てゆーか、いままで考えたことなかったけど、あたしたちが抜けあとのプリズムスティックって、どーなってるの? モノホンのJSメイドがいないわけでしょ?」
クロが半裸のまま腕組みして首を捻るが、みゆもイリスもその答えはわからない。

プリズムスティックで働いていた時、“彼女”たち3人以外のキャストは、いわゆる「合法ロリ」な「見かけだけは幼いが実は年長」な子たちばかりだったから、一応営業はできていると思うが……。

「ふふっ、3人とも、元のお店のことを心配してくれる優しい娘たちに育ってくれて、母親としては感激ですね」
いつの間にか更衣室にやってきていた碧が満足げな笑みを浮かべる。
「あ、ママ」「マミィ」「お母さん」

「はい、そのことで3人にお話があったので、こちらの店に来たんです」
ちなみに、普段は店長代理こと筆頭メイドがカレイドラインを仕切っており、碧は本店たるプリズムスティックの方で働いている。

「JKメイド専門店を作ること自体は十分可能なんですが、みゆちゃんの言う通り、あまり希少性はありません。
それに、最近ちょっと人気が落ちてきたプリズムスティックの方のテコ入れもしたいので……」
碧はそこでタメを作って、興味津々に話を聞く義娘たちの顔を見回す。

「実は、“あの頃”のメイド服を着てもらえば、今のイリスちゃんたちも、ちゃんとJSらしい姿になれるんですよ♪」
「「「あっ!」」」

盲点だったが、ある種、当然でもある。
なにせ、平均的体格のアラサー男を身長150センチにも満たない美幼女に変えるくらいの魔力(ちから)があるのだから。それに比べたら、外見年齢を2、3歳若返らせることくらい、朝飯前だろう。

「もちろん、同様のことはこのカレイドラインでも可能ですから、このままJCメイドとして働くこともできますよ。
さて、どうします? 」

微笑みを浮かべるメイド長の言葉に、みゆ達がどんな答えを返したのか。
それはご想像にお任せしよう。

~おしまい~
さて、美少女メイド・遠藤美夕ちゃんは、このままJC・JKライフの沼に飲まれてしまうのか、それとも、いつか冴えない男性ヲタリーマン・夕海朔に戻る日がいつか来るのか……(たぶん来ない)。
KCA
0.1180簡易評価
0. コメントなし