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融合冒険者キヨヒコの冒険 第1章

2021/04/15 16:05:53
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冒険者である槍使いのキヨヒコと、魔法使いのタチハは2人でパーティを組んでいた。
だがある日、踏み込んだ遺跡の中で見つけたアーティファクトが光ったかと思うと、2人の体が融合していたのだ。

タチハの体と魔力を基本として、キヨヒコの筋力と技術を掛け合わせた一人の魔法戦士になってしまったキヨヒコは、今日も元に戻る手段を探して冒険するのだ。

「ん~っ! ブラをしてる時は楽だけど、何もつけてないときは解放感があるよな」

ちなみに肉体の主導権は完全にキヨヒコにあり、タチハの意識は微弱にしか感じられない。この肉体はほぼキヨヒコのものといっても間違いなかった。

「それにしても、やっぱり大きいよな、タチハのおっぱい。今やこれは俺の物…、やば、興奮してきた」

依頼の事など忘れて、裸同然の体を水につけながらキヨヒコは自分の胸を揉み始めた。



依頼の内容
A.海中に沈んだ宝物の捜索
B.怪物(水陸両用ザメ)退治
>C.お忍びで遊びに来た令嬢の護衛
D.依頼といったな、そんな物はない。遊びに来ただけだ

揉み心地最高のおっぱいの感触と快感に夢中になりかけたところで
「タチハさん~、こちらで一緒に遊びましょう♪」

数十メートル先で無邪気に遊んでいた水着姿の可愛らしいお嬢様に呼ばれて慌てておっぱい揉みをやめる。
どうやら胸を揉みしだいていたことはお嬢様に気付かれはしなかったようだ。
危ない危ない。
「Bレベル以上の女性冒険者限定のお嬢様の護衛の仕事、通常の10倍の金額だけに美味しいが
身体は本物の女だけど中身は男だと知ったら即座に解約されるかもしれないからバレないようにしないとな。
いくら安全で何も起こりそうになかったからって油断し過ぎだったな」

容姿は完璧にタチハなのでギルドではタチハで通している。
キヨヒコは遺跡でタチハを守って負傷し療養していることにして。
融合のことを知っているのはギルドマスターと秘書のフターバさんだけだ。

「タチハさんの水着姿、とてもお美しいですわ。私などと違ってプロポーションも抜群で同じ女の私でも見惚れてしまいます」
「お嬢のお眼鏡に叶って光栄です。
俺、じゃなかった私から見てもお嬢の水着姿も魅力的ですよ。
これなら世の男達もほおって置かないんじゃないですかね」
「あら、お上手ですこと」

それは率直な本音だった。
タチハに比べれば女性を象徴する部位の自己主張は控えめであるものの、とても可愛らしい肢体にはタチハのような大人の女には無い魅力が宿っている。

深窓の令嬢ともいうような白い肌と、未成熟だが魅力的な肢体は、依頼であることを差し引いても「守りたい」と思わせる魅力に満ちている。
同時に彼女は伯爵家の令嬢だ、依頼の事もあるが必要以上に“そう”せざるを得ないのだが。

「それにしても良かったの?」
「何がです、タチハさん?」
「こうして海に遊びに来るってのと、おr…、私と一緒に遊ぶって事。一介の冒険者と一緒だなんて、伯爵様にバレたらなんて言われるか」
「良いんです。今日ばかりは自由にしていいと、お父様にも言われていますから。
自立していらっしゃる冒険者の方と、こうして2人きりでお話してみたり、遊んでみたいと思ったんです」

花の咲いたような笑顔で、彼女、リリィ・ペルドラは笑いかけてくる。
何かあるのだろうと察し、しかし聞くような野暮はせずに、まずはリリィと一緒に遊ぶ事にした。

恋人のような追いかけっこをしてみたり、
砂浜で砂遊びをしてみたり、
リリィに泳ぎをおしえてみたりと、色々な事をした。

気分は妹と一緒に遊んでいるような感覚だ。



食事は普段から世話になってる冒険者の宿で作ってもらったお弁当だ。
リリィから見れば粗野な料理かもしれないが、それでも彼女はおいしいと言って食べてくれた。
宿屋の娘も、貴族のお嬢様のお口に合ったとなれば、喜んでくれるかな。

「はぁ~…、いっぱい遊びました。楽しかったです♪」
「それは良かった。特に護衛の必要も無いような感じだったけど…、これで良かったのか?」
「勿論です。今日は遊ぶ事が目的で…、一人で海に来ても面白くないからと思って、冒険者の方に依頼を出したんですから」

リリィが言うには、依頼金はすべて彼女のポケットマネーなのだそうだ。
彼女は遊んで満足したような…、同時にどこか物悲しそうな表情で、沈み始める夕陽を見つめている。
…どうやら野暮もする必要があるのかな。

「何か、あるんですか?」
「…やっぱり、気付かれちゃいます?」

困った様な表情をしながら、リリィは、気付かれては仕方ないとばかりに口を開いた。

「…そうですね、実は私、明日…」

A.実家の財政難の為、侯爵家に嫁ぐことに
B.家から勘当され、冒険者になることに
C.異界の「転移者」の器になることに
D.呪いの結果モンスターに変化することに

「冒険者のタチハさんならご存知かと思いますが、先週から遥か彼方の北の山脈から巨大で禍々しい暗黒の氣が渦巻いているのを。
あれは100年前に勇者に討たれた魔王が復活した為です。
その魔王を再び討つ為に異世界二ほーンから勇者様である【転移者】を召喚するのですが、転移者様の魂だけ召喚できても力を発揮する身体がないので私の身体を器にして転移者様に身体を使ってもらうのです」

勇者や魔王の話はおとぎ話で知っていたし、先週から北の山脈が騒がしいことになってる事も知っていた。
しかし勇者が異世界からの「転移者」で、それがこの世界の人間の体を使ってる事は、タチハの知識を以てしても知らなかった。

異世界ニほーンからくるという「転移者」は、リリィの体に宿り、新たな勇者になる。それはわかった。
だがそうなると、元のリリィの人格はどうなる? 恐らくは消え去るか…、今の俺とタチハのような状態になるだろう。
恐らくは「後から入ってきた存在に主導権を握られる」。

それはリリィ・ペルドラという人物の消失に等しいわけだ。

「…リリィはそれで良いのか? 勇者の器になるって事は、これから戦うって事だろ? それも他人に体を使われて」
「はい、そうなるでしょう。……正直恐いですし、どうして私が、なんて思います。
それでも『勇者の器に選ばれた』と両親が喜んでくれて…、…どんどん後には引けなくなって…。
今日が最後の日だなんて思ったら…、屋敷で過ごすのが嫌になって…。
本当はもっと遊んでみたかった、恋だってしてみたかった、結婚して愛を育んで、子供だって産んでみたかった…。
でも全部、それは「私じゃない私」がすることになるんですよね…」

そっと、俺はリリィを抱きしめていた。すすり泣いている彼女を放っておくことなんて、出来なかったからだ。

沈む夕日は、齢14にしてこれから終わってしまう「リリィ」という存在を象徴するように、水平線に消えようとしている。
転移し、彼女を器として使う存在はどんな存在なのだろう、勇者と呼ぶにふさわしい物なのだろうか。

…そして、その時に俺はどうするべきなのだろうか。

今日の護衛であまりに多く受け取ってしまった分を理由に、「転移者」が入ったリリィを鍛えるべきか。
行きずりの冒険者として、すべてを胸の内に仕舞って別れるべきか。
…それとも、この場から彼女をさらって逃げる犯罪者の道を選ぶべきか。

ぎゅっと抱き着いてくるリリィの小さく柔らかい体を抱きしめていると、庇護欲の他に性欲も湧き上がってくる。
普段は幻術の魔法で隠している俺のちんこ(融合の際にここだけ残ってしまった)も、水着の中で勃起している。
…まったく、タチハと融合しても男という性別の業の深さよ。

一しきり泣き終えたリリィは、それでも俺の胸に顔をうずめて、じっとしている。
そっと抱きしめたまま、俺はリリィの耳元に向けて、そっと呟いた。

ちなみにこの、勃起状態の俺自身で女性を抱けばその愛欲で俺は一時的に男の姿になれる

タチハの薄い意識が語る…

どうする?完全なオンナになってしまう危険性もあるのだこれって…

タチハの肉体も普通の女の子ではない、それが俺との融合によってなんとか救われているのだ
その件は後で話すとするか…

どうする?リリィとどんなセックスをするか?いいや我慢するか?

俺はリリィに正体を明かすことを決めた。
大切な仲間のタチハの女の身体を持つキヨヒコという男だと。
それでもリリィが俺を受け入れてくれるなら…。

「俺がリリィを戻してやる!手段を絶対見つける! 」
「タチハさん?」
「今の俺は転移者が入ったリリィと同じ立場なんだ。転移者側の。
俺は本当はタチハじゃない。
女でもない。
俺はキヨヒコという男なんだ。
このタチハの身体は俺のパーティーの大切で愛していた仲間の身体だ。
遺跡のトラップで融合してしまったんだ。
女だと騙してゴメン。」
抱きついたまま驚愕の表情を浮かべたリリィだったがフッと笑みを浮かべると再びギュッと俺に抱きついた。
「私に打ち明けてくださり嬉しいですわ。キヨヒコさんもきっと苦しんだでしょうに…。」

リリィの優しさに受け入れられ、救われたような気になる。
お互いに水着のまま抱きしめ合い、体温を交わらせていると、ふとリリィが声を掛けてきた。

「キヨヒコさん」
「…?」

彼女の言葉に視線を合わせると、不意を突くように唇が重なり合った。

「な…っ」
「ふふ、私のファーストキス、キヨヒコさんにあげちゃいました♪」

イタズラっ子のような笑みを浮かべながら、リリィはその感触を確かめるように、もう一度キスをする。
一つでも多くの「初めて」を転移者に取られないようにしたいのか、その様子は健気なものだった。
俺も返すように、女同士の唇でキスをする。見た目24歳なタチハの体と、14歳のリリィとでは、年の差が大分離れているけれど、それでも女同士のキスは、俺がタチハとした時より気持ちいい気がした。

「…キヨヒコさん、お願いがあります」

キスを終え、リリィがそのお願いを告げてきた。

>A.新しい「私」とパーティを組んでください(一緒に冒険するルート)
B.元に戻る手段、絶対見つけてくださいね(別れて一人で探すルート)
C.私を連れて逃げてください(逃亡からの犯罪者ルート)
D.その他
>+α.私を抱いてください(えっちシーン挿入)

「私になった転移者様を助けてあげてください。異世界から急にこの世界に召喚されて突然恐ろしい魔王やその配下の凶悪なモンスター達魔王軍と戦いを転移者様とは無関係のこの世界を救う為に強制されるのです。
この世界にひとりぼっちで。ですから…」

リリィはなんて優しいのだろう。
リリィの身体も、リリィになった転移者も両方守護る!
守護りきって魔王を倒し平和な世界を取り戻す!
そして世界を救った勇者=転移者を元の世界に帰還させリリィを元に戻す!
絶対に!

「それと…、はしたないお願いなのですが…」

するとリリィが、静かに口を開いてきた。

「私を、抱いてくれませんか?」
「え…?」

抱くって…、どういうことだ? 今こんな感じで抱きしめてるから、それとは違うって事で、…つまり、性交をしてほしいという事か?

「えぇと、その、こういうのも何ですが…、転移者様が私になって色んなことをするのは、覚悟を決めました。
それでも、私が私の内にできる“初めて”は…、私である内にしてみたいんです。それがキヨヒコさんみたいな優しい人なら、なおさらです」
「ん、く…っ」

そう言われると、幻術で視覚的に隠していた男性器を撫でられる。彼女の小さい手に包まれて、明らかに喜んでしまっているようだ。

「それに私だって、殿方を慰める方法は教わっています。…その、女性の体の方に付いているとは思いもしませんでしたが…」
「それは…俺だってこういう姿になるとは思ってなかったけど…」
「で、ですがっ、それはつまりお互いまぐわう為には何の問題も無いという事で…っ、えぇと、その…」
「…ふふっ」

つい、リリィの必死な様子に口から笑みがこぼれる。女の子にとって初めては大事な事で、勇者となる「転移者」であれど、それは渡したくないのだろう。
それが分かってしまうと、可愛らしさから笑うことしかできなかった。

砂浜に敷いたシートの上で、俺達は体を重ね合う。リリィの未成熟な体をそっと手で撫でさすると、その度にくすぐったそうな声が漏れてきた。多分まだ、感じるという事がどういう事かあまり分かってないのだろう。

幻術で隠していた男性器を露出させ、リリィに触れさせてみた。融合の影響か勃起した時は大分大きくなってしまうが、初めてがこれで大丈夫かな?

「…こ、これが、男の人のおちんちん…っ、こんなに力強くなるものなんですね…」
「あまり無理しないで良いからね。そっと触って…、んふっ」

リリィに触れられると、その度に男性器が気持ちよさで跳ねる。女の子の手で触られるという事は、タチハの手で触られる事で知っていたが、それとはまた別格だ。
教えたように上下に擦らせると、いけない事を教えているようで背徳感からさらに快感が高まる。

「ダメだ、リリィ…っ、もう出る…っ!」
「ひゃっ」

次第に我慢できなくなり、すぐに射精してしまった。キンタマが無いのに精液が出るのは不思議だが、なぜか出るのだ。

「こんな風に、力強く出る物なんですね…。…これが、これから私の体に…」
「…無理にシようとしなくても良いんだよ?」
「いえ、それでも…、これは私がしてみたいんです…。ですから、お願いします、キヨヒコさん…!」

リリィを組み敷き、彼女の女性器をそっと撫でる度に、鈴のような声がする。内から溢れ出る気持ちよさがなんだか分からなくて、我慢しているようだった。

「良いんだよリリィ、それが女の子の“気持ちいい”なんだから。我慢しないで声を出して?」
「はっ、はい…っ、んっ、っふぅ、っはぁ…!」

次第に濡れそぼる彼女の膣内に指を挿し入れると、柔らかい初めての肉がきゅっきゅっと締め付けてくる。頃合いと見て、俺は男性器をリリィの女性器に押し当てた。

「それじゃあ…、イくよ…?」
「はい…、キヨヒコさん…、私の初めて、貰ってください…」

腰を突き出し、リリィの膣内に挿入していく。処女膜を破り、膣奥まで達し、リリィはこの瞬間乙女ではなくなった。

「いっ、いた…っ、これが、初めての…っ」
「痛くなくなるまで、じっとしてるから…」

胸同士をぶつけ合いながら彼女の体を抱きしめて、痛みを誤魔化すようにキスを繰り返す。
そうして次第に彼女の痛みが慣れてきたのなら、もう遠慮する必要は無かった。

腰を突き出し、引いて、俺達は腰をぶつけ合った。
タチハとしての胸を揺らしながら、俺は抽送を繰り返し、リリィはそれを受け入れた。処女の証が、愛液と共に結合部から零れ落ちていく。
すると突然、リリィが俺のおっぱいを掴んで、胸を揉みしだいてきた。

「んあっ!」
「んふ、キヨヒコさん、お胸を触られると女の子みたいな声が出るんですね…」

お返しとばかりに俺もリリィの胸を揉みたいが、男女二つの箇所を責められてる状態でそれは難しい。どんどん我慢できなくなってくる。
それでも俺は我慢した。こんなに優しいリリィともセックスなのだ、俺一人だけ射精して終わらせる、なんてことは出来ない。
できるだけ彼女の膣内、その気持ちよくなる所を探りながら腰を振りたくり、発見したところを重点的に攻めていく。
次第にリリィの喉から、抑える事を忘れた快感の声が漏れ始めてきた。

「あっ、あんっ! ダメです…っ、キヨヒコさん、何か…、何かキちゃいます…! んふぅんっ!」
「それが女の子のイく感覚だよ…っ、俺も、そろそろ限界、だから…」
「さっきのアレが…、私のナカに…。一緒に、一緒にイきましょう…、キヨヒコさん…!」

恋人のように手を繋ぎ、キスをした瞬間、俺達が抑えていた我慢ははじけ飛んだ。

リリィは女としての絶頂に身を委ね、俺は彼女の清らかな膣内にこれでもかと精液を送り込んだのだ…。

そして俺達が体を重ねて数日後、魔王の復活に合わせたかのように、「勇者」が現れたのだという事を号外で知った。
大都市での図書館で、融合の解除方法や「転移者」の送還方法が無いか調査しても、いまだ目ぼしい物は見つからず、何も収穫が無い状態での帰宅となった。

ちなみに俺とタチハは、共同で家を購入し、それなりに蓄えもあったりする。しばらくは依頼をこなさずとも問題無い。
冒険者の店にも急いでいく必要は無いが、それでも活きた情報というのは、やはりあそこにあったりする物だ。
そして行きつけの冒険者の店に向かうと、看板娘のアオバさんが慌てたような表情をしていた。

「アオバさん、どうかしたの?」
「あ、タチハさん! いえそのですね、来ちゃったんですよ、ウチのお店に…、勇者様が…!」
「え…っ?」

慌てている彼女の指差す方向には、確かに居たのだ、リリィを器としてこの地に呼び込まれた「転移者」が。

「先程からタチハさんの事を待ってると言ってまして…。これから家にお邪魔しようかとも思ってたんです」
「そうか、ありがとう。…勇者様のお名前は?」
「えぇと…、トシアキさん、と言うそうです」

それだけを聞くと、俺は彼女の座るテーブルに近づいた。
…見た目は確かにリリィだが、雰囲気が違う。確実に別人だった…。

リリィに憑依した「トシアキ(男)」の性格
A.普通の、ちょっとスケベな男だった
B.慎重で冷徹で、物静かな男だった
C.粗野で乱暴で、芯の通った男だった
D.引きこもりで、戦いに向かない男だった

>E. ドスケベでゲスな、悪人の男だった

俺が席につくなりリリィは口を開いた。
「へぇ、あんたがタチハさんか。リリィの記憶にある通り、エロい身体してるじゃねえか……!」
ねっとりした視線に思わず鳥肌が立つ。なんてことだ、一番恐れていた最悪の事態だ。リリィの身体を使うこの「転移者」、明らかにまともな人間じゃない!
「それにしても、凶悪犯として追われていた俺が、まさか勇者様とはね。会うヤツみんなちやほやしてくれてわるい気分じゃねぇ。
しかも……んっ、女になったのはびっくりだったが、この身体、エロくて気持ちいいしな」
そう言いながらリリィは片手で自らの乳房を揉みしだく。
「やめろ! それ以上リリィの身体を弄ぶな!」
「いいだろぉ? 今は俺の身体だ。……なんてな、そんな怖い顔するなよ、美人が台無しだぜ? 大丈夫、お楽しみは後に取っておこうと思ってな、まだ大したことはしてねぇよ。
それよりタチハさんよ、約束通り俺の冒険に付いてきてくれるんだよなぁ? あ、断ったりしたら、俺はこのまま裸になって外を走り回ったりするかもしれねぇが?」
くそっ最悪だ、こうなったら俺がリリィの身体を守りつつ、この「転移者」を更生してやるしかないか!?

なんとこのリリィを器として召喚された転移者のトシアキとか言う異世界から着た男、
リリィの記憶を読みリリィの身体を人質に俺に脅迫してきたではないか。
とてもじゃないが勇者として相応しいような性格ではないのは明らかである。

そんな男に愛し合ったリリィの身体の自由を弄ばれるなど胸が張り裂けそうだ。
俺もこの男と女の肉体に男の精神という似たような状態でではあるが、この男とは仲良くできそうにはないだろう。
リリィには悪いが世界の平和よりも今の俺にはリリィのことが一番大事だ。

一秒でも早くあの男からリリィを開放してやりたい。でもそんな方法本当にあるのか?
わからない。でもあそこなら……俺とタチハを融合させたあの不思議な遺跡なら何か方法があるかもしれない。

とならば、今はこいつに従い旅をする振りをしてなんとか遺跡に連れ出そう。

「……分かった、パーティを組もう。今のお前を一人にすると、ロクな事にならない」
「良かった良かった、いくらこの女の記憶が使えても、一人で戦えなんて言われたらできっこねぇからな。美人で優秀で物分かりの良い、そして男同士の護衛ができて、俺は嬉しいよ」

こいつ…。
…正直な話をすると、「転移者」に戦闘経験を積ませるつもりはあった。勇者である転移者が、戦闘経験があるか分からないからだ。魔王に対抗できる勇者が戦力にならなければ、こちらの負けは確実だ。
だが今のコイツ、トシアキに戦闘技能を教えると、何をするか分からない。

「それで…、タチハさん? まずは俺に何を教えてくれるんだ?」
「何、とは?」
「いやなぁ、コイツの手紙にあったんだよ、『タチハという冒険者を頼って、色々教えてもらってくれ』ってさ。
さすがに俺はコイツの知識はあっても、経験がねぇ。この世界のアレコレを、肌で感じたいんだよ」
「……」

しめた。
ならばちょうどいい場所がある。俺とタチハが融合した、あの遺跡だ
あそこなら大半の罠を解除したし、魔獣の類も大して棲んでいない。言うなれば「枯れた」遺跡だ。まずは何もない所から経験を積ませる、という名目であそこの再調査に向かおう。

「あ、それと。夜のお相手もよろしく頼むぜ? タ・チ・ハ・さ・ん?」

あどけなさの残るリリィの顔を歪めながら、コイツは俺の股間を脚でこすってきた。

それからライダーズギルドで馬車を借りて数日(徒歩でもよかったがトシアキが文句しか言わなかった)。俺達は最初の冒険という名目で、俺とタチハが融合した遺跡にやってきていた。
切り立った崖に入り口がある、という構造上、今まで見つかりにくかったところだ。

「で、どうすんだ? ロープを使って降りるとか?」
「浮遊の魔法を使う。これで浮き上がって、崖の入り口から入るんだ」
「魔法! いいねぇファンタジーだ、俺も使えりゃよかったんだがなぁ」

魔法は俺とトシアキを浮かび上がらせ、入口へと運んでくれる。内部はアレから何者かの手が入った様子はなく、俺達が探索したままの状態だった。
そのまま魔獣との遭遇もなく、トシアキが「つまんねぇ」と愚痴を垂れ始めてきた頃、そこに到達した。

人間の男女が背中合わせに融合した謎の存在、その石像が鎮座する、ともすれば神殿のような場所に。

「うぉっ、何だこりゃ。バケモノか?」

トシアキが驚いてる内に、回収できなかったアーティファクトを探ろう。

それは台座に設置されている鏡で、一抱えもありそうなサイズをしている。表面は綺麗なまま、俺の姿を映し出している。
ふと、鏡に映る俺の後ろに2人分の影が映ったような気がした。それは俺(キヨヒコ)と、タチハの姿をしていた。

トシアキを呼んで鏡に映すと、俺と同じく2人の影が映る。それはリリィと、明らかに凶悪そうな男の影だった。

壁の古代文字を解読していくと、こんな事が書いてあった。

『かつて男と女は一つの命だった。ある時2人の意識が分かたれた時、その体も分かたれた』
『一つならざる二つの者、共となりし時欠落が埋められる』
『神の力が込められし鏡に映れ。さすれば時は遡る』

…時が遡る。
そして俺達の身に起きた効果を考えれば、結論は一つだ。
この鏡には、同時に映った2人を融合させる力が存在している。
同時に男女の融合した存在の像は、神か、あるいは「かつての人間」か。

融合させられるなら、それを解除する方法も無いだろうか。そう考えて解読を進めようとしていると、

「おっ、んはっ! やっぱり女の体って気持ちいいっ! 男のオナニーなんてクソだなっ! あぁでも、チンコがねぇのは残念だよっ!」

俺が解読をしている間に、手持ち無沙汰になったトシアキは鏡の前でオナニーを始めていた。
…こ、こいつ…!

A.我慢できずにトシアキの影を槍で刺す
>B.我慢できずにトシアキを犯す
C.我慢して古代文字を解読する
D.我慢して鏡を毛布で遮る

「はぁっ♥ んぁっ♥ 最高っ気持ちいいっ♥」
声だけ聞けばそれは間違いなく愛し合った女(リリィ)の嬌声だった。
心を無にしようと努めたものの、耐えきれず振り向けば、そこにはあられもない姿で自らを慰め喘ぐリリィの姿。あまりにも目に毒だ。
理性では抑えようとしていても、股間の逸物は意志に反してムクムクと勃ち上がってしまう。
「ねぇ、キヨヒコさん……来て♥」
トドメとばかりに、リリィの仕草や喋り方を再現した誘いの言葉に、俺はとうとう我慢の限界を越えてしまった。
「あっ♥ ぐううぅぅぅっ♥ ふ、深いぃぃっ♥」
十分に濡れたリリィの膣へ、八つ当たり紛れに強引に逸物を突き込む。

激しく絡み合う俺達の後ろで、俺とリリィの姿を写した鏡が怪しく輝きはじめたことに、俺は気が付かなかった。

馬車で移動しての数日間、トシアキを抱くことは無かった。
リリィの体とは言え、相手は男なのだ、彼女自身ではない。そう思って、オナニーのやり方を教えたり、手伝ったりはした。

けれど今俺は、リリィの体のトシアキを抱いている。
彼女の体で快感を貪り、あまつさえそれを悦びに変えているトシアキが許せなかった。
リリィを穢すな、彼女を貶めるな。

「こっ! これっ! これが欲しかったぁ! キヨヒコさんのちんこ、記憶にある通りの気持ちよさだぁ!」

怒りと同時に、愛し合った女性を抱く事への興奮から、腰が止まらない。
激情を叩き付けるように腰を振り、それと反するようにトシアキを昂らせてしまう。

「……っくぅっ!」
「おふぅぅっ! 出されっ、ナカにくるぅぅっ!!」

そして奴の奥深くに射精し、虚脱感に襲われて気付く。
…そうだ、今の俺達は、鏡の前にいる。そして何をしていた。男女で行う性行為だ。

その事実に反応するかのように、俺達の姿を映す鏡がひときわ強く輝いて…。

鏡の力で何が起こったか
A.キヨヒコ達がさらにが融合した
>B.キヨヒコがリリィと融合し、タチハの中にトシアキが転移した
C.キヨヒコ達は全員分離した
D.全員が融合し、バケモノへと変わった(14番へ)
E.鏡の想定外だ。アーティファクトが壊れる

眩しい光に包まれて何も見えない!
あの時と同じだ!

やがて光が収まり視力が戻ってくると目の前に恋人のタチハが座り込んでいた!
分離できたのか。
「タチハ!無事か!?」
俺と融合した時の魔法使いの服装のタチハはぼんやりしている。
リリィは?
周囲を見回すとタチハの背後にもう1人。
「リリィ!」
違う。魔法使いのタチハの背後には魔法戦士となったタチハの身体の俺の姿が!?
あれ?
タチハに声を掛けた時、俺はキヨヒコに戻ったハズなのに女の子のような声が…。

まさか?
あの鏡を見る。
そこに映った俺の姿は魔法戦士タチハではなくまさかと予想したリリィだった!
(リリィ!リリィ!…漠然とリリィの魂を感じるが意思の疎通は無理か)

「ウヒヒ、やっぱ女はこういうボインボインの身体がいいぜ♪」
タチハの声に振り向くと、俺とタチハが融合してた時の姿の魔法戦士タチハがニヤけた貌で胸を揉んでいた。

こ、こいつ💢
間違いない! このタチハの中身はトシアキだ!
タチハの身体をこんなヤツに!

その時半覚醒状態だった、俺の仲間で恋人で融合直前までの俺のよく知る魔法使いのタチハの瞳に明確な意思が宿る。
胸を揉みしだくもう1人の自分の身体のタチハを見る。
「…キヨヒコ…じゃなくて…お前はトシアキね」
くるりとこちらを振り向くと笑みを浮かべ
「キヨヒコォォォォ~~~~♥️」
とリリィの身体の俺に抱きついてきた!

「やっと自分の身体を動かせるようになったわ貴方のおかげねキヨヒコ♥️
リリィの身体のキヨヒコって可愛いわね♥️」
「タチハ!身体に異常はないか? 女の子の身体だけど俺がキヨヒコってわかるのか?」

抱きついてきたタチハはリリィになった俺のことがわかっているようだ。
リリィのことも。

「ええ。さっきまで貴方の記憶を共有しているから状況は理解しているつもりよ」

タチハは融合してからさっきまでの分離まで、ずっと俺がやっていたことを知っているのか!?
つまりそれはあんなことやこんなことも全部……。

「思い出して恥ずかしがる顔もかわいいけど、現状を説明するわね」
「えっ、あぁ……うん//////」
「その前に…」

オナニーに夢中のもう1人のタチハ(トシアキ)を向き直り魔法を詠唱する。
「凍りなさい♪」
タチハ(トシアキ)が殺気に気付いて慌てて自分の前に目の前に魔法の盾(マジックシールド)を張るが、その光輝く魔法の盾ごとトシアキが凍りつく。

魔法戦士の身体で教わった訳でもないのに咄嗟にマジックシールドを張ったのは正直凄いと思う。
魔法の素質があってもそれをイメージにして実際に具現化するには長い訓練や教育が必要だからな。
しかも呪文の詠唱なしに。

だが魔法に関しては魔法使いタチハの方が遥かに凄い。
「トシアキ、貴方にキヨヒコとの邪魔はされたくないからしばらくそこで大人しくしてなさい」

冷たい視線でトシアキを見た後、ふぅと息を吐きながらタチハは表情の険を解いた。

「やっぱりね。“私と融合したキヨヒコの姿”だからもしかしてと思ったけど、トシアキも魔法を使えるか…」
「どういうことだ、タチハ?」
「…厄介な事だけど、今のトシアキは、私とキヨヒコ2人分の力を持ってるという事になるわ。
ただ記憶は使えるか分からないから、私の魔法もキヨヒコの技術も、十全には使いきれるか不明ね」

…確かにそうだろう。いくら素質があっても、技量や経験がなければそれを使いこなすことは不可能だ。
リリィの記憶を辿ってみるが、護身用として最低限の魔法…魔法の盾は使えていたから、先程反応もしたのだろう。
同時に俺の中には、2つの懸念があった。

「となると、ヒルヴァーレはどうなる? もしトシアキがそれを使えるとしたら…?」

龍骨槍ヒルヴァーレ。俺が所持しているメインウェポンだ。
かつて打倒し、俺を主と認めた巨龍の骨から作り出した、俺にしか扱えない魔法の槍だ。

「仮に使えたとしたら、なおの事厄介ね。あの性格に私の美貌と魔力とキヨヒコの戦技でしょ? 最悪、悪事を犯して姿が同じ私に嫌疑が掛かる可能性だってあるわ」

確かにそれは最悪だ。トシアキが本来の姿で破滅してくれるならまだしも、タチハの姿でそんな事をされてはたまらない。

「それともう一つ。勇者の力は“どちら”に宿ってると思う?」

俺は凍り付いているトシアキと、今の俺の体になってるリリィを順番に見た。

「…調査してみないとわからないわ。その子の体に勇者の力が移っていれば万々歳、悪ければ向こうがずっと持ってるかしらね…」

そう言いながら、タチハもトシアキの方を見る。…中身が別人とは言え、タチハと同じ姿で氷漬けになってるのは、気分的に良くない。
するとその氷が徐々に溶けだしていることに気付いた。慌ててリリィの記憶を探る。
…着火の魔法はリリィも使えるか。その記憶を使って、タチハの魔力で強化し氷を溶かしたのだろう。

「あーつめてぇ…! まったく、よくもやってくれたな、タチハちゃんよぉ」
「大人しくしてなさいと言ったのに、聞き分けの悪い奴ね」
「あいにく他人の言う事なんてロクに聞いた事ねぇんでな…。俺を攻撃したんだ、反撃される事くらいはわかってるよなァ?」

タチハと同じ顔を歪ませて、トシアキが笑う。

「ヒルヴァーレ!」

聖剣を抜かず、槍を呼ぶ。槍は飛んで俺の手の中に納まるが、子供の体では大分デカい…!
するとタチハが俺を制し、トシアキの前に立った。

「キヨヒコは動かないで。…力を手に入れただけの勘違い野郎に、私が研鑽した魔法の技術を見せてやるんだから」

魔法使いタチハと魔法戦士タチハ(トシアキ)との魔法の応酬は熾烈を極めた。
この国に数名しかいないAレベルの魔法使いであるタチハと、リリィの身体の時は護身用の初級レベルの魔法しか使えなかったにも関わらず、魔法戦士の身体を得たばかりで互角に渡り合うとは!!
さすがは勇者として異世界から召喚されただけのことはある。

だが互角に見えていた戦いもだんだんトシアキがタチハに押され始め均衡が崩れる。
魔法力の貯蓄量、ペース配分、その他諸々。

またタチハは最初から全力でなくトシアキのレベルを探る為に中級魔法から少しずつ高等魔法に移行してた。
そうと気付かなかったトシアキはいい気になって強力な魔法を連発していた訳だ。
「くそ、くそ!俺の方が強いハズなのに!」

確かに純粋な戦闘力だけでいえば魔法使いより魔法戦士の方が魔法も使え、また戦士としての格闘戦等の物理的な戦闘技の戦闘力も加わって強い。

しかしそれは魔法の素質を持った者が魔法を勉強して探求研鑽し、また肉体を地道に鍛え上げ激しい戦闘訓練で自らの身体に叩き込み覚えてきた者に限る。

「次はコレよ」



タチハの言葉にもう1人のタチハ(トシアキ)が苦悶の表情を浮かべる。
トシアキの方はもう防戦一方だ。
残り少ないMPをなんとか振り分け、必死にタチハからの攻撃魔法の直撃を避けている。

ああ、コレはタチハのレクチャーだ。
トシアキも薄々と気付いているだろう。
師範が弟子に指導しているように効果的な防御の仕方をトシアキにその身をもって理解らせて実践させている。

こうして見ると双子の美人姉妹の姉が不出来で生意気な妹に魔法の使い方を厳しく実戦形式で教え鍛えているみたいで思わず微笑ましく思え笑ってしまう。

「が…っ!」

突如トシアキが膝をついた。どうやら魔力切れのようだ。…太刀葉と融合した時の記憶で魔力切れの感覚は知っているが、あれキツいんだよな。

「理解した? 魔法ってのはデカい魔法を馬鹿みたいに使えばいい訳じゃないの。
変わっていく状況に応じて、手札の中で最善を思考し、前線で体を張ってる仲間を守る存在よ。それが魔法使い。お解り?」

それを見下ろしながら、厳しくレクチャーをしているタチハ。
苦虫を噛み潰したような表情でトシアキが拳を床にたたきつけている。…これで少しは実力差が身に染みて、下手な事をしないでくれるとありがたいんだが。

すると、ふと気配を感じて振り返った。
何かが近づいてきている。

武器を構えて腰を落とし、近づいてくる存在にどう対応するか思考を巡らせたが、以外にもそれは3体のゴブリンだった。
駆け出しのDレベル冒険者が討伐するような存在…、だが、先頭を歩いている存在は術具を持っている。
魔法を使えるゴブリンシャーマンか。

「グギ…、“ユウシャ”、ミヅゲダ…!」

先頭のシャーマンが声を上げた瞬間、魔法陣を展開し始める。攻撃かと思えばそれは自分たちを覆うように頭上と足元に2つ展開。
…したかと思いきや、その2つが距離を狭めていく。その魔法陣に潰されるように、次第に溶けていく。

「あれは…、「変換」の魔法陣の重ね掛け? 片方で自分達の存在をスライムに変えて…、もう片方で何をするつもりなの?」

タチハも後ろで行われている事に気付いて、ゴブリンたちに視線を向けてくる。

ごぽり。

そして1つになった、ゴブリン達だったスライムは次第に形を整えていく。
先程のゴブリンではない、形状は人間の女性そのものだ。



「…そういう事ね。3体のゴブリンをスライムに「変換」させ、それを融合して1体の巨大なスライムにする。
それを2つ目の「変換」で、自らを同レベル帯のモンスターにしたって所かしら」
「融合スライムの同レベル帯…、シェイプシフターか?」
「それより厄介かも。ただ姿をまねるだけのシェイプシフターだけじゃなく、恐らく素体のシャーマン同様魔法も使えるわ」

「あははは…! 一つになるってこんなに気持ちいいんだ…!」

そしてシェイプシフターとなったゴブリンが、鈴が鳴るような声で快哉を叫んだ。

「すぐに引っ張ってこれる2匹だけじゃどうなるかと思ったけど、想像以上だな。これなら呼ばれたばかりの勇者だって、すぐに倒せそうだ」

そう言いながら、シェイプシフターはこちらを…、リリィの姿になっている俺を見てくる。

「…キヨヒコ、戦えそう?」
「タチハこそ、残りMPはどの程度だ?」
「4割程度。こんな形で生まれたシェイプシフターなんて、どう戦うかわからないから、様子見で小技メインから行くわ」
「…となると、問題は今の俺がどれだけ戦えるかだな」

龍骨槍ヒルヴァーレを構えて、未知のシェイプシフターとの戦闘に入る。

戦闘結果(戦闘シーンは飛ばすものとして扱います。書きたければどうぞ?)
>A.問題無く勝利する。初戦素体はゴブリンだった
>B.やや苦戦したが勝利する。女性の姿のままシェイプシフターは残った
C.リリィの体では不慣れだ。トシアキも戦わせる
D.苦戦の結果、キヨヒコはシェイプシフターに連れ去られる

+α.何やってんだお前! トシアキがシェイプシフターに性的に襲い掛かる

「……弱ッ!?」

ゴブリンが変化したシェイプシフターは、タチハの様子見の魔法と魔力付与した槍の一撃によって気絶。
おっかしぃなぁ、不慣れな体だったからもう少し手こずるような印象があったのだが、まさか2撃で終わるとは思わなかった。

「…なぁ、タチハ…」
「そんな顔で見ないでよ、まさか私もここまで弱いとは思ってなかったわ…」

タチハの方も困惑しているようだった。さもありなん。
とりあえず拘束魔法をかけてもらった上でシェイプシフターを起こすことにした。

「はっ! お、俺達は…!」
「細かい事は聞かないわ。あなた達は勇者を倒す目的でここに来た、という事で良いのよね?」
「……そうだ」

タチハが尋問し、シェイプシフターが頷く。…本来なら俺が武器を突き付けた方が良いのかもしれないが、リリィの顔だと凄むのも難しい気がする。

「変換魔法の重ね掛けは評価するけど、一山いくらのゴブリンが3匹寄り集まってもこの程度なのは、どういった自惚れかしら?」
「…それは、アレのおかげだ」

そう言いながらシェイプシフターは、床に落ちていた術具に視線を向けた。

「アレは魔王様の所から持ってきた魔道具で、魔法の同時詠唱を可能にするものだ…」

魔法の同時詠唱、ダブルキャストか。Aレベル冒険者でも使える者がいない、魔法使いの秘奥義ともいえる技術だ。
それを使えるようにする魔道具。なるほど、ゴブリンシャーマンが使った程度なら良かったが、他の魔法に長けたモンスターが使えばどうなっていたか…。

「だが…」
「だが?」
「…魔王様のとこから無断で持ってきてしまって、あまつさえそれを使って失敗てしたとなっちゃ…、ゴブリン族全体の失態になっちまう…!
そうなりゃ俺達の種族は皆殺しだ。ゴブリンロードにも迷惑を掛けちまう。お願いだ、殺さないで…! というか黙ってて!」

何言ってんだこいつ。
全て自業自得なのだから、その責任は負って然るべき…、なんだが。

「今の俺達ならこんなナイスバディだから夜の相手だってできるし、人間と同じ姿だから情報集めたりの下働きだってするし…、他のモンスターとか喰ってパワーアップとかもできるし…、い、色々お得だぜ…?」

よほど自分…というか、自分たちの種族の命が惜しいのか、シェイプシフターは自らを売り込んでくる。
…まぁ、見た目的には確かにかなりの美人というか、妖艶ささえ漂う見た目だが…。

どうしたものかな、これは。

「なかなか興味深いし何かの役には立つだろう。連れていこう」
「わかったわ。さて、ゴブリン。一緒に行くならこれに誓約しなさい」
タチハが踊り子の前に誓約の魔法書の魔法陣を展開する。
誓約を破り裏切れば…。

踊り子ゴブリンは一瞬怯んだが素直に誓約の魔法書に誓いを立てた。
発動し3つの光が踊り子の身体に吸い込まれた。

「あなたに掛けた誓約は3つ。人間に敵対行為を取らない事、私達を裏切らない事、そして質問には素直に答える事。これだけよ」

それだけ、といっても大分範囲が広い気がするが、モンスター相手だ、仕方ないだろう。
ゴブリン…だかシェイプシフターだか微妙にわからないし、名前を聞いておくのもアリかな。

「それじゃ一つ聞きたい。お前の名前は何て言うんだ?」
「え? えーと…、俺達3人分混ざってるから、どれが名前だかちょっと分からなくて…」
「じゃあ基点になったゴブリンシャーマン、お前の名は?」
「ゴブルだぜ」

うん、分かっていたが名前がゴツい。男の姿をしてるならともかく、女の姿でこの名前はなぁ。

「仕方ないわね。“別の存在”になったあなたの名前は別に考えておくとして…、次はトシアキの方なんだけど…」

タチハは、ようやく魔力切れの脱力感から解放されつつあるトシアキの方を見る。

「まだ動けないようなら好都合ね。今のあなたが勇者であるかどうか確認する為にも、解析の魔法を掛けさせてもらうわ」

そうしてタチハが魔法をかけ、トシアキのステータスが開示される。
そこには…、

A.勇者のステータスは無かった。体(リリィ)の方に移っている
>B.トシアキが勇者のままだった。召喚された魂が勇者の証らしい

+α.あれ、何か見慣れない能力がある…?(チート発覚。選択しないとチートは現在無し)
+β.ついでにヤンチャしないよう誓約の魔法もかけよう

「!? これは…」
トシアキのステータスを見るなり、小さく驚きの声をあげたタチハは、声をひそめ俺だけに聞こえるように伝えてきた。
「勇者というのはどうやらトシアキの魂固有の性質みたいね……。
そして勇者の魂が宿った肉体はどうやらステータスが大幅に底上げされるみたい、私とキヨヒコが融合した魔法戦士の時のステータスの何倍も強化されてる。
さっきは魔力切れで自滅してくれたけど、そうでなかったら危なかったかもね……。まあさっき十分に経験の差は見せつけたし、軽はずみに暴れたりはしないでしょうけど。
それと……」
タチハは眉をひそめる。
「見たことのないスキルがあるようなんだけれど、解析の魔法が一部レジストされてスキルの詳細がわからないわ。
この感じだと誓約の魔法をかけてもレジストされそうね……」

勇者というものはやはり底知れぬ何かがあるらしい。
俺たちのひそひそ話には目もくれず、トシアキはゴブルをニヤニヤと眺め回している。
「へへっゴブリンだかなんだか知らねぇが、こんなムチムチの美女が仲間になるなら大歓迎だぜぇ!」
美女を見たらコロッと上機嫌になるというのはある意味扱いやすいか……ゴブルには悪いがしばらくトシアキの相手をしてもらうことにするか。

「ともあれ、トシアキが勇者のままだって言うのなら聖剣はあいつに渡す必要があるし、俺達は…、遺憾ながらトシアキが下手な事をしないか見張る必要があるな」
「そうね…。ポテンシャルはすでに私達に迫ってるし、経験を積まれて戦い方を覚えたら、2人がかりでも厳しいわね。なんであんなのが勇者になったのやら…」

俺達は2人で頭痛に苛まれながら、しかし起きてしまったものは仕方ないとして次の事を考える。
ふぅ、とため息を吐いてタチハが俺の方を見ると、そっと抱きしめてきた。

「…タチハ?」
「一人で苦労を掛けたわね、キヨヒコ。それにそんな華奢な体と一つになっちゃって…。戦いに関係ない体と融合しちゃったから、これからはあなたも鍛え直しになるけど、大丈夫よね?」
「それは勿論。リリィの体を必要以上に傷つける訳にもいかないからな」
「もう。若い女の子を2人目の恋人にするなんて、浮気だったりする?」
「んひゃっ!」

タチハが俺の、リリィの股間をそっと撫でると、驚きから甘い声が出てしまう。

「ふふ、可愛い声。もしかしたら私メインでも、エッチな事してたかもね」

「どうやら男女で融合すると、私たちの時みたいに性器は両方あるみたいだけど…、その体が女の子だし、普段は縮小化の魔法は掛けてあげる。その上で優先的に考えなきゃいけないのは…」
「あぁ…」

そうして俺達は、台座に設置された大きな鏡を見やる。

「恐らくあれは姿を映した男女を融合させる、神とやらの手によるアーティファクト。この遺跡の位置から捕捉されることは少ないだろうけど、どうにかしておく必要があるな」
「大まかに選択肢は三つ。転移の魔法で持って帰る、放置する、あるいは砕く。その場合、研究の為に欠片を持ち帰る必要があるか…よね」
「欠片だけでも効果が出て、世に出てしまえば、混乱は必至だな」
「大事に取り扱う必要があるわね…」

「へへぇ、随分気持ちよさそうじゃねぇか。女の体は初めてか? ん?」
「んあぁ! 勇者の手つきやらしぃ! 俺達溶けちゃう、女になっちゃうぅ!」

…横で裸になって絡み合ってるトシアキとゴブルを見て、少し頭を抱えるのだった。

「仮に持って帰るとして、置き場所はどうしたものか……」
俺とタチハの家はそこそこの広さはあるが、友人や冒険者仲間の来客もあるし、鏡の力の暴発を防ぐためにある程度厳重に保管したいところだ。
「かといって、古代のアーティファクトをそもそも破壊できるのか、というのも問題よね……」
リリィと融合した俺の力がどれくらいのものか、まだ測りかねているのもあるし、かといって魔法攻撃は鏡の性質上反射される可能性も考えられる。

俺たちが頭を抱えて唸っていると、
「どうしたぁ? 何か問題かよ」
一戦終えたのか満足した顔のトシアキが話しかけてくる。片腕でゴブルを掻き抱いて手は乳房を揉みしだいている……。
「んっだめぇ……勇者様ぁ……」いつの間にか様付けで呼ぶになっているぞゴブル……。
「一応パーティメンバーとしてあなたにも話しておくけど、要するにこの鏡は危険だから運ぶか壊すかしたいのよ。
……あと、私の姿でそんな風に乱れられるのは、正直複雑だわ……」
「なんだ、そんなことかよ。“収納”」
トシアキが鏡に手を向けた途端、目の前で鏡が消えた。

「……はぁ!?」
トシアキが再び手をかざし、“取出”と唱えると再び鏡が現れる。
「ま、まさか収納魔法!? でもあれは、ごく限られた固有スキルの持ち主しか使えないはず……」
驚く俺達の反応がよっぽど面白かったのか、トシアキは機嫌よく笑う。
「へっへっへ、これこれ、これこそ異世界転移の醍醐味だよなァ。俺がこの世界に呼ばれた時、女神を名乗るムチムチのねえちゃんからもらった基本的な力のひとつだぜ!
これで俺のインベントリに“収納”しちまえば万事解決じゃねぇか!」

鏡が再び目の前から消える。
たしかに問題は解決したが……トシアキにアーティファクトを保管させて本当に大丈夫なのか……?
別の問題が発生した気もするが、まあとにかく、これ以上この遺跡での収穫はなさそう、か。

地上に戻ろうとタチハと話していた時だ。
ゴブルとイチャイチャしていたトシアキが
「なぁ、今の踊り子魔法戦士もいい女だが他にも変身できるのか?」
「もちろん♪先ずは魔法使い!」
踊り子から魔法使いの姿に変身する。
これまたタチハ並みの巨乳美人なのはゴブルの趣味か?

「じゃ~ん♪どう?」



「凄え!」
「次は占い師♪」



「おおっ~♪」
トシアキは拍手喝采。
「おほほほっ♥️勇者様に褒められて気分いいからとっておきの姿も披露しちゃう! 」



「この地域のエルフの王女よん♥️」

「エ、エルフの女王!?」
適当に聞き流すつもりだったが、思わず驚愕の声を上げてしまう。
「エルフ族は長命で魔法に長け独自の精霊術をもつけど、同時に警戒心が強く、争いを避けて深い森の奥に隠れ住むのが普通よ。
普通ならそもそも見かけることも稀だわ。それなのに、その女王に变化できるって……」
タチハも驚きを隠せない様子だ。

「あ、しまった! これは秘密にしておかなきゃいけないんだった」
エルフ女王の姿でバツが悪そうにするゴブル。
「仕方ない、勇者様とお前たちだけに教えるけど、魔王軍はエルフの集落の場所を突き止めてる。
そして、エルフの女王を警備の隙をついて攫って偽物にすり替えて、エルフ共を魔王軍に従わせる計画がある」

「エルフの女王の言葉なら、恐らく疑問を持つだろうがエルフ達は従うだろうな。
最悪エルフをこの戦いに介入させなければ良し、魔王軍が支配した後でエルフを蹂躙できればなお良し…、くらいだろうか」
「どの道放置しておけない案件ね…」

シェイプシフターは「見た存在に化ける事」ができるモンスターだ。ゴブルがエルフの女王を見ていて、調子に乗ってそれに変身した事で、魔王軍の行動の一端が見えたのは本当に僥倖だ。

「止めに行こう、タチハ」
「えぇ。どうやら次はエルフの集落に向かわないといけないわね。彼等ならこの融合した状況の解除方法だって、何か知ってるかもしれないわ」

次の目的地は決まった。ゴブルを道崎案内人として、エルフの集落に向かう。そして魔王軍の計画を止めて、エルフ達から融合しているこの状況を打開する方法を少しでも探る。
どれだけ道は長くても、少しずつでもやっていかなければならない。
これから大変だな。

「おうそうか、がんばれよ」
「「お前/あなたも行くんだよ/のよ!!」」

そして他人事のように答えるトシアキを連れて、俺たちはこの遺跡を出ていくのだった…。

第1章「融合~勇者との邂逅」 完

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