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その後、彼らの行方を知る者は誰もいなかった…?

2017/08/04 16:22:11
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これが世間でいう所の勇者一行か。
強敵ではあったが、道中で消耗していたのだろう。
徒党を組むでもない、単体で現れた一モンスターであるこの俺にやられるとは。
メンバーは若い男2と若い女2か、魔法使いらしき女も悪くないが頂くのなら金髪の彼女の方が良かろう。

実体のない俺は生物からマナを吸収するか、生物にとりつく事で生きている。
ただ好みがあって俺の場合、マナを吸収するだけならまだしもとりつくのは女、というか美女限定だ。
どうしても死にそうな場合はともかく、そうでない場合は野郎にとりつく趣味なんざないからな。

さて、さっそく彼女の中へと入ってみるか。
スカートの中から胎内へ侵入するのも悪くなかったがこの法衣は邪魔だな。
侵入不能とは言わないまでも、聖なる加護のかかった衣服はうっとうしい。
無難に口の中から侵入してやるか。





口から彼女の中へと入りこの体を頂いた。
その感想は素晴らしい、という他なかった。
全身はマナで溢れていて居心地は良いし、白い肌の長髪美人だ。
黒い影に支配される女が、神に仕える信心深い法術師サマってのもミスマッチも気に入った。
そもそも旧坑道の奥深くまでやってくる女はゴリラか、良くて隠れマッチョ女騎士くらいだからな。
そこそこの美女ならともかく上物美人はレアもの中のレアものだからな。
しかも服で分かりにくいが胸も大きい。うん、胸も大きい。そしてやっぱり胸も…。ふぅ…。

横で寝転がってる魔女も捨てがたいが、体のとある一部に圧倒的戦闘力の差があるので彼女の方が良いだろう。
あっちも可愛いと言えば可愛いが、とある一部に胸囲的な実力差があるのがぺったんこ…じゃなくてデカいからな。
それどれ、せっかくだし彼女の記憶ってヤツを覗いてみるか。



…って、今どき人や世界の為に危険な旅に出る女がこの世にいたとはな。ビビった。
平和な世界の為に魔王との戦いに参戦、って魔王が未来に逃げたら未来の平和の為に時を超えた!?どんなお人よしだ。
ありえねー。少なくとも俺だったら絶対にありえねーよ、魔王討伐も時空を超えてまで戦うのも。
しかし俺にとってはかえって好都合だ。人間から尊敬されるようなこの体上手く使えば更なるオタノシミが待ってるかもしれないからな。
大事に大事に使ってやらないとな。
だがこの高レベル(戦闘力的な意味ででも、別の意味でも高レベル)な体なら万全な状態にさえあれば心配はいらないか。
にしても、ちょっとした回復術で手一杯の弱っちい法術師が良くこれだけの力を得たものだ。
強くなった理由はあの剣士の為か?お熱い事だ。


連中はこのまま肉食モンスターの餌にしてもいいが、俺一人でここを脱出するのは少し心細い。
幸いにも蘇生用アイテムと多少だが回復アイテムが残っているから護衛代わりのメンバーを助けることは出来る。
無事に外まで送って貰ったらお役御免で、俺はどこかに行くとしよう。運が良かったな。
この体の主、フタバと言ったか。フタバの最後の願いくらいは叶えてやろう。





「うっうーん…」
「良かった、目が覚めたんですね。キヨヒコさん」
「フ…タバ…?良かった!!無事だったのか!!」
ついさっきまで死にかけてたやつが何を言っている。人の心配より自分の心配だ。
そんなんだから頑丈なのに真っ先にやられるんだ。どうしようもない程のお人よしめ。
フタバは俺になってもうすぐ消えるんだから、今度からは自分の身の安全を気にしないと生きられないぞ?
まあいい。後の2人もついでに助けて脱出して適当な場面で俺は消えるとしよう。

蘇生アイテムは無くなっていたが幸いにもこの体の主は回復役だ。
テクニカルポイントさえ回復できれば2人の蘇生(+そこからの回復)くらいはどうにかなる。
スキルの使い方の記憶は見れるし、なにより動きはこの体が覚えている。
初めての回復だったがさほど難しくは感じなかった。


さて、無事に坑道を脱出し最寄りの宿へと到着した。
俺がフタバを乗っ取ってるのでホントは無事じゃないが、それ以外はまあ一応無事だ。
今日はこのまま体を休め、頃合いを見て一行から外れる予定だ。
その後はどうしようか決まってはいないが、この美しき顔と体を持ち人間どもから敬われる法術師サマ
ならこの先はどのようにでも生きられるだろう。人間どもの油断を狙って新たな獲物を見つけてもいい。
楽しみで口からヨダレが出そうだ。だが、他の連中に見られないように今はヨダレを我慢だ。
まあ下の口からはヨダレが漏れてるけどな。グヘヘヘヘ。
処女厨のユニコーンから加護を受けたオトメの肉体、今夜は存分に味わわせて貰おうか。

周囲にばれないように気を使いつつも、内心は物凄いハイテンションな俺に対し他3人は御通夜ムードだ。
当然だろう、連戦で弱ったとは言え一モンスターに全滅させられるんじゃ魔王なんて夢のまた夢だ。
自らの力のなさで落ち込む人間(エルフやハーフエルフも含む)の姿は見て楽しいからな。
しかもこの後で待っているのは仲間とのトワのお別れだ。
連中の顔が更に歪むサマを見れないのは残念だがその時を想像すると俺様、もっとテンションアップだ。
今日は本当にいい日だ。強そうな人間どもを全滅させたし、こんな美女の体は手に入るし。
こんな素晴らしい日が来るなんて、今日は影人生(?)最高の日だ!!


強いて言えば責任感の強いキヨヒコが、責任を感じて何かやらかさないかが心配だ?
どうして俺様が人間の心配をするのか分からないが、あんな顔のキヨヒコさんを久々に見るとこの胸が痛い。
故郷を失って、カタキを取ろうと思ったら魔王の復活を許し、散々傷ついてるキヨヒコの顔も最近になって
ようやく無理のない笑顔が出てきたっていうのに。こんな仕打ちなんてあんまりだ!!
…ってあんまりな仕打ちだから楽しいんじゃないか?ナニ変な事考えてるんだ俺は。
フタバの記憶の影響を受けちまったって事か?まあいい。

考えるんならキヨヒコの事じゃなくってこの先どんな悪事をするかだな。
略奪してもいいし、神の名をかたって人間どもを操るのもいい。
フタバのマナを使えば複数の人間を乗っ取ることも狙える。
もっと単純に女の体なら自然な覗きが可能だしな。
この癒しの力をうまく使えば巨万の富だって狙えそうだ。
いっそしばらくは穏やかに過ごすのもいい。。
この上玉の娘の体とマナと法術があれば大概の事は何でもできる。


強いて言えば直接戦闘が苦手な点と、キヨヒコに抱かれてしまうとユニコーンの加護が弱まってしまうのが難点か。
前者はあまり問題がないとして、後者の方は少し残念だ…。って逆だ!!
男に抱かれる必要はないから後者が問題なくて、単身で戦闘しにくい前者は少しマズイ!!
誰だよ、前半と後半を間違えたのは!!





怪しまれないように気を使っていた俺だが、この日の宿は個室の宿だ。
部屋の中で、ゴニョゴニョしてもそう簡単にはばれない。本当に今日はいい日だ。
早速服を脱いでも良いが今は我慢し取り敢えずはフロだな。

広くていい湯だ。魔女のワカバを含め他の女性客がいないのが少し残念か?
ただこのカラダを楽しむ分には一人での入浴の方が好都合かもしれない。
他の客のカラダを凝視して変な騒ぎになってしまうと面倒だからな。
それに相手が女性であっても見知らぬ人にこの胸を見られるのが恥ずかしいから。
…って、つくづくこの体の主はオトメだな。男は当然として女相手ですら恥ずかしいとは。
まあワカバのように遠慮のない女だと胸をネタにされたり突かれたりするからな。
揉みだすのは良いとして(イヤだけど)急に触られると心臓に優しくないというのに。
ワカバの奴め、この胸に嫉妬するのは良いとして揉んだりネタにするとは何て奴だ。
やっぱり入浴は一人でするに限る。…変な場面で苦労してるんだなフタバは。

しかしこの胸、立派なのはいいがキヨヒコに揉まれたらどうなるんだろう?3桁サイズ狙えるのかな?
当然、真面目でお堅いキヨヒコ君が揉んでくる予定はないんだけどな。
真面目でお堅い剣士の男が相手だと苦労する。奥手でロクにアプローチできないフタバも悪いが。
…って人の恋路を心配してどうするんだよ!!





さて、このメンバーで食べる食事もこれで最後か。
皆のもの、せいぜいフタバの美しい姿を目に焼き付けておくのだぞ?何も知らないからそんな事はしないけど。

食卓の肉にがっつきたいところだが、生憎とフタバは肉が苦手、というか体重を気にしすぎて
肉をあまり喰わないと言った方が正しい。だから腹とか腕とか肉が全然ない。
というか、ほぼ肉を食わない低カロリー生活でよく胸にだけ肉がついたものだ。
今晩はこの体を楽しむために精の付くものを可能な限り食いたいだけに周囲の目を気にして
肉とかあまり食わないのは結構きつかった。ただ、肉に手を付けないのは他の連中も一緒だ。
肉好きなトシアキも今晩ばかりは食欲がないようで残し気味だ。
そして特に責任を感じている一応の我らのリーダーも。
コイツが落ち込もうがどんな顔しようが俺の知った事ではないが、でも悲しむ彼の顔は見てられない。
そんな心が俺に芽生えていた。この胸の苦しみと戦いながらどうにか食卓を後にする事が出来た。

ホント、キヨヒコが大変なのは俺が、フタバがいなくなるこれからなんだ。
今のうちからそんな顔してたらこの先どうなるんだよ!!生きてけないぞ!!
お前がどうにかなると悲しいんだから!!…って誰が悲しいんだよ?誰が!!





騒ぐココロをどうにか抑えて、部屋の中へと入った。
いつもは相部屋だったり、寝る前に話をするくらい仲の良いメンバーだが今回はそんな気分になれてないようだ。
つまりは今晩は夜通しでこの体を楽しめるって寸法だ。
さて、手始めにボインちゃんのボインでも触ろうか?

文明レベルは大した事がないのに、服と下着のデザインだけは妙に発達している不思議。
白い法衣に合う白下着は年頃の娘のに似つかわしくないほどシンプルな白下着だ。
法術師は白い下着しかつけてはいけないって決まりでもあるのか?記憶の中でも白ばっかだ。似合うから良いんだけど。
でも、記憶の中のワカバを見習ってカラフルなのでもいいんだぜ?もう関係ないけど。

ただシンプルながらも、レース生地の模様や小さなフリル飾りなどオシャレ要素もないでもない。
まあ大事なのはどんな下着かよりもどんな女がつけていた下着か、だ!!
冴えない町娘がこの真っ白なら面白みは無いがフタバのなら真っ白もイケる気がする。
というかこの清楚なナリで下着が派手派手とかヤダ…やっぱありかも。
…と思いつつ体が恥ずかしいと訴えてる気がする。どうもずっと双葉に影響されてるようでイカンな。
だが、この先はフタバの別の意味でも真っ白な体はもう終わる。
この体は俺様に汚されるんだ。ククク、愉しみで下半身からヨダレが出そうだ。


うむ、上の下着を取ると重い胸が支えを失って余計に重く感じる。
女の体を乗っ取った事は何度かはあるがこんな重みは初めてだ。胸の重みでちょっぴり優越感だ。
顔が火照るのは奥手なフタバのカラダだからか。だが、この体持ち主の性格に反してエロいんだぜ。
その意味では性欲が強く女体乗っ取りプレイでしか満足できない俺に相応しいエロボディーだ。
持ち主の性格に反してキレイな体なら俺に似つかわしくないけどな。


さて、さっきから胸を楽しんではいるもののどうも物足りない。
具体的に言うと、豊かな胸を触る楽しみがあるものの性感帯としての胸としては機能していない事だ。
昔のぺったんこ女や並乳(中の下)女のむねですら触れば胸から快感を感じる筈だがフタバ胸には
この触られる、性感帯的な気持ち良さを一向に感じないのだ。ナゼ?
胸オナに慣れてないせいで胸の気持ち良さがあまり感じないとかか?勿体ない。

記憶を探ってみればオナ経験が全然ないじゃないか。
もうすぐ二十歳なのにコレってどんだけお嬢様なんだ。
恋愛小説を読んで男女の性愛に憧れ…キスの先がどうなってるのかもよく知らないのか?
一応、裸になる事くらいは知ってるがどう、まぐわうのかも知らないとは。
意外と不便な相手を乗っ取ってしまったのかも知れん。


胸はもう諦めて、まずは股間だ。やっぱりオナニーは股間でするもの!!
ワレメでシてもいいし、クリでイく事だって出来る。やっぱ王道は股だ。
胸はせいぜい置かずにとどめておこう!!うん、決定!!

スカートの下の…やっぱりパンツも白なんだな。
個人的に好みではないが、無垢でこそフタバちゃんだ。
赤茶色のシミが多少はついてても黄色系のシミがないもついてない真っ白パンツが君には似合うよ。



ジャングルではなく、うっすらな平原くらいだな。しかも頭の金髪と近い色だから余計に目立ちにくい。
エッチな気分になり、ワレメを沿うように撫でるときっと濡れてきて指も湿ってく…こない?
こうなりゃもう少し指を突っ込んで割れ目で感じてやる。
血が出ないように気を付けつつも出し入れしたり引っ掻き回したり…痛いだけでイマイチだ。
いい体なのに感じないとか、地味に生殺しだ。当然と言うべきか、クリを撫でても対して気持ち良くは無かった。

ヤバイな、せっかく気持ち良く、気持ち良くなろうとしてたのに醒めてきちまったよ。
オナニーを一旦諦め、俺は眠りに着こうとした。
するとノックの音と共に「フタバ起きているかい?」と男の声が聞こえた。

「キッキヨヒコさん!!」
キヨヒコの急な来訪に妙に高い声が出たのは驚いたからか。それとも実は嬉しかったのだろうか?この男の訪問が。





キヨヒコめ、こんな夜中に何をするつもりなんだ?
…って俺の様子がおかしいから気になって来てみただと?
落ち込みすぎて目がイッてるくらいの顔をしていた男の台詞じゃない!!
お前は早く気持ちを切り替えていつものように修行してなさい。
単純バカと言われそうなくらいの修行マニアでこそキヨヒコだからさ。

フタバなら「それでこそキヨヒコさんです♥」とか言いそうだな。
いや、自分の心配して夜中に訪問してくれたと分かったら嬉しくて何も言えないか?


あっ、いきなり手を握るんじゃないよ。
責任感じてどこかに行くなんて事は無いから、うんそうそう。お前は早く魔王を倒して故郷を復興させるの。
その様子を見に来る保証は出来ないけど、そこはぼかしつつどうにか受け答えしないと。
でも、嬉しいのは分かるけど顔と体が少し近いよ?
そう言えばキヨヒコさん、お風呂上がりに修行しましたね?
汗の臭いで何となく。



うん、ちょっと汗臭いけどこの匂い嫌いじゃないよ?
誰よりも一生懸命修行して見違えるくらい強くなったキヨヒコさんだからこの匂いなんです。
キヨヒコと話してたら独白までフタバっぽいのになっちゃったな。
全く、せっかくのフタバのいい香りが男の汗の臭いに上書きとか…キヨヒコのなら意外と悪くないのかも?
帰った後にも残った汗臭いキヨヒコの残り香が、意外と嫌じゃなかった。
…でも風呂上がりのキヨヒコの香りならもう少し良かった気がする。




しかしフタバも奇妙な体してるな、本当に。
さっきまで不感症を疑っていた体もキヨヒコに手を握られて少し近づかれた程度でこんなに火照るなんて。
せっかくフタバの甘い香りが汗臭いのが混ざっちまったじゃないか、脳筋剣士め。
ツラいの忘れるくらい修業がしたいのならフタバの事なんてほっといて素振りでもしてろっての!!


まったく、ほんのり服に着いたキヨヒコ臭い匂いを嗅いでどうしてこんなに体が火照るんだろう?
どうして股間が濡れていくんだろう?さっきとはうって変わって、軽く撫でるだけで濡れてるのが分かるし。
「んんっキヨヒコさん♥」
不思議と甘い声が出てるし、少し汗臭い男の腕の中が特等席に見えたし。
どうして俺が男の、しかもシャワー後でなく修行後の男の腕の中を欲しがるんだよ!!
でもあの腕の中で一晩を過ごせたらきっと幸せだよな。
いつも最前列で切り込んで、誰よりも傷つきつつも周りを励ますようなバカとお人よしの中間みたいな奴!!
フタバが好きになるのは当然だよ!!

キヨヒコとのちょっとした接触を思い出し、この日の俺は朝まで何度も何度も絶頂を迎えた。
そのせいで夜明け前に何も言わずに旅立つ予定が機会を逃し暫くキヨヒコ達と一緒にいる事になった。





一人何処かへ行く機会を逃した俺だが、不思議と旅立つ機会をことごとく逃している。
あの日と同じようにとある理由でつい夜明けになってしまったり、
4人一緒の部屋で寝た時にキヨヒコが寝言で「フタバ、君は僕が守るよ」と言われ足が止まったり、
「次のダンジョンも一緒に頑張ろう」と言われて旅立ちにくくなったこともあったっけ。
どうも俺はキヨヒコに振り回されているようだ。別に好きでもない男に。

俺はモンスターの一種だが性格は人間の男に近い。故に男が相手なのは嫌だ。
俺は邪悪なモンスターなので、正義感の強い熱血漢は嫌いなタイプだ。
特に好きでもないどころか、嫌いな要素の多いキヨヒコが悲しんでも別に何の問題もないが
一人で旅立つのが何となく嫌になった。別にあの腕の中で眠りにつきたいとかそんなんじゃない。

だってキヨヒコ鈍感すぎてフタバの想いに全然気づかないんだもん!!
そのせいでフタバの体が悶々をしっぱなしじゃないか!!いい加減にせんかこの朴念仁が!!
だいたい、フタバみたいな大人しくて家庭的でしかもボインな子好みなんだろ?
だったら早く告白せんか!!





今は宿屋の部屋の中、キヨヒコを中心にみんなは寝静まっている。
今日という今日こそは脱走のチャンスだろう。この2週間、いつでも脱出できるよう荷物だけはまとめておいた。
「さよなら、キヨヒコさん」
元々演技は得意だったが、フタバの丁寧な口調もすっかりと馴染んだ。
多分、今の俺を見たらかつてのフタバと親しい人間であっても気がつかないレベルだろう。
そもそも、キヨヒコ達以上にフタバと親しい奴はもういないか。


ベッドから起き上がり、荷物を手に取り、ついでにみんなの顔を見回す。
もう意識は残っていない筈なのに名残惜しいのはフタバの想いがそれだけ強いからか?
はたまた短い間でもイイ奴らだったから少し寂しいのかも知れない。
トシアキ、ワカバと寝顔を見る。

お喋りだったり毒吐きだったりする二人だけど根はとても優しいヤツだという事は知っている。
トシアキが魔王の攻撃からキヨヒコと昔の私を咄嗟に庇ってくれなければ、跡形もなく消されていただろうし。
お調子者だけど、命の危険すらあるこの戦いに参加してくれたワカバの事も大切だ。
ただ気があるからって無暗にトシアキに噛み付くのはNGな。これはトシアキにも言えるけど。



そしてキヨヒコだ。
始めて出会った時、一人で牢に閉じ込められて心細かった時に助けてくれたキヨヒコさん
砦から脱出する時に私の手を引いてくれたキヨヒコさん。ちょっと強引だったけど嬉しかった。
前衛として敵の攻撃を受け切ってくれるキヨヒコさん。彼がこのパーティーの要なのはみんな納得の事。
魔王には魔術じゃないと攻撃が効かないと分かっても諦めなかったキヨヒコさん
魔術師集めだけじゃなく魔王にも有効な剣術を身に着けた彼は努力だけじゃなくきっと才能もある。
そして自分が傷ついていても、いつも他の人の心配ばかりするお人好しなキヨヒコさん。
たまに危なっかしいと思いながらもこんな人だから安心も出来た。

心残りは決戦前夜みたいな掛け合いが出来なかった事かな?
魔王の根城前に負けちゃうんだもの。もし前夜、彼と話をしたらこの戦いが終わったら一緒に暮らそう
とか言ってくれるかな?丁度私も故郷が無くなってしまったし…。


…ってそれはフタバの記憶だよ!!
なんなんだこのやたらと長いノリツッコミは!!
そして記憶の中のフタバはどんだけキヨヒコしか見てないんだ。
まあメインヒーラーだから前衛ばっかり見るのが正しいんだけどさ。
でもこれって役割以上にキヨヒコ見てるよな?
俺は影のモンスター、人間、特にいい女にとりつく悪い影だ。
こんないい子ちゃん達の相手はヤメて、俺は俺らしい行動をしよう。





フタバの記憶に流されつつも出発の準備は終わった。
あとはもうこっそりと扉を開けるというだけだ。

「うーん、フタバァ」
「はっはひ!!なんでしょうかキヨヒコさん」
「うーん、むにゃむにゃ」
「なんだ、寝言ですか」

フタバの体のせいだろうけど、とっさにキヨヒコから話しかけられるとつい声や台詞がおかしくなってしまう。
ついでに何気ない会話でも割と心臓の鼓動が激しくなるんだから、フタバの体は上物だが不便だ。


「うーん、フタバァ」
ホント今日のキヨヒコはどうしたんだ。さっきから俺の名を呼んで?
違う、俺じゃなくってフタバの名を呼んで…だ。
どんな夢を見てたんだ、そんな俺に言いたい事でもあるのか?


「ゴメンよフタバ僕あ、君のお母さんの事ずっと黙ってたんだぁ。ホントは捕らえられてて牢屋の中で
亡くなっていたの、知ってて僕は嘘をついてずっと黙っていたんだ」

俺に言いたい事はそれか。
捕らえられた母がすでに死んでたのはフタバももうとっくに知っている。
黙っていたお前に不信感を抱いた事もあったが、それ以上に必死に守ってくれたお前を信じお前に感謝してる。
安心しろよ、キヨヒコ?
黙っていたのはフタバを逃がすため、母の死を知ってしまい立ち止まったらフタバも死んでいた。
そうならず、無事に逃げられたのはお前が優しい嘘をついて逃げる事に専念できたからだ。
フタバはそんな事とうに知っている。当然、お前を恨んじゃいない。


にしてもキヨヒコってたまに悪い夢にうなされてたようだったが、夢の内容はこれか。
自分だってトラウマがあるのに人の心配をするなんて、英雄と呼ばれ始めたのに
危なっかしい所があるのは相変わらずだ。その危なっかしさは元のフタバもだが。
このまま俺がいなくなったらキヨヒコを支える奴がいなくなるな。トシアキだけじゃ心許ない。
もう少しだけ、フタバとしてこのパーティーの生命線、回復役を務めるとしよう。

決してキヨヒコの為というわけではない。俺の為だ。
今日このまま飛び出すと目先が水で曇ってて危ないから安全を期す為に一段落ついてから出発だ。
まあ魔王討伐の目的を達成したらどっち道、解散しちゃうんだけどな。
長く、ツラい魔王との闘いだけど隣にキヨヒコがあるから苦しくは無かったし安心も出来た。
苦手な闘いの日々の筈なのに故郷にいた頃と比べても、毎日が楽しかった。
楽しかったは言いすぎか。つらい事が多くともそれを上回る楽しい時間があった…だな。
平穏が欲しかったけど、キヨヒコと別れるのなら魔王討伐の旅がずっと続いて欲しいと何度思った事か…。

これはフタバの記憶を読み上げただけで俺の意志とかでは断じてないからな?
俺はとっとと事を終わらせてフタバの体を楽しみたいが、気持ち良く旅立つためにもう少しだけここにいよう。
キヨヒコのゴールを見届けてからの方がきっと気持ちが良いだろうから。





気がつけば俺は法術師としてキヨヒコ一行に最後までついていく事になった。
そう、勇者、英雄のキヨヒコはついに魔王と呼ばれた男を倒したのだ。しかも第3形態まで全部。
魔女が倒れた時は終わったお思ったが、最後の最後でついに奥義を完成させ勝利をしたのだ。
魔王は魔法が使えないと倒せないとか言われてたがキヨヒコならそんな事はなかったぜ。


そして、俺達は別れの時を迎える。
また会える…かどうかは分からないような間柄だ。
だって生まれも育ちも、種族や生きてる時代すら違う。この時代の存在じゃない奴だっている。
一人はもう二度と会えない今生の別れだ。少し寂しいがみんな目的を達成した上での別れだ。祝福しよう。



「ところでキヨヒコさんはこれからどうされるおつもりですか?」
「僕は、故郷の村を再建しようと思う。町のみんなはもういないけど思い出の場所だからね。それに今回の
一件で故郷を失った人は少なくない、だからあそこに集落を造れれば喜んでくれる人も多いだろうしね」
「やっぱり、キヨヒコさんはそうなんですよね?」
最初は魔王への復讐心だった。でも本来は優しく人の痛みの分かる男だ。
復讐の為に剣を磨くより、誰かを守ったり助ける為に力使う方が似合っている。
俺の…じゃなくって、私の…でもない。フタバだ!!
フタバの愛した男は復讐でない生き方の方がらしくみえる。


俺がキヨヒコと一緒にいるのは魔王討伐の目的を達成するまでと決めていた。
最初はもっと早く離脱する気だったが、とにかくもうここらが潮時、これ以上はもう無理だ。
フタバに対する礼は魔王との戦いでの活躍をもって済ませたことにしておいてくれ。
いいよなフタバ?…なんて呼びかけても答えはしないけど。
俺は名もなき影の魔物だ。決してフタバ・アドネードではない。
この数か月間は幸せだったけれど、これ以上は一緒にいられない。
最愛の女性を奪っておいて、そのまま彼の隣に居座るなんて…。
そんな真似が出来るほど俺は強く邪悪な心を持っていない。



ホントの事を言うと、もう少しキヨヒコさんの旅を見届けたかった。新しい町を一緒に造りたかった。
『私にもお手伝いする事はありますか?』彼の今度を聞いた後でこの言葉を口にする事を何度も夢見た。
口に出来なかったのはフタバの奥手特性がそのまま残っていただけじゃない。(全くないとは言わない)
これ以上キヨヒコさんに対し演技と隠し事をする日々に疲れてしまったからだ。

私の中身はすっかりフタバに近くなってしまった。
口調は当然として心の声すら、一人称の私と敬語と女言葉の混ざった口調でないと違和感を感じるようになった。
でも、自分がホントはフタバでない事は私自身が一番良く知っている。
キヨヒコさんが愛しているのはフタバであって私ではない。この一文が最も重要だ。



なんでもこの世界では、全滅によるデッドエンド時に『その後、彼らの行方を知る者は誰もいなかった…』
と表記されるのが一般的らしい。それに倣って私も彼とのお別れが済んだら誰にも行方を知らせずに
何処かへ消えてしまおうと思う。ツラいけれどキヨヒコさんを騙すよりかはよっぽどマシだから。

「ねえ、フタバ?」
「はっはひ!?なんでしょうか?」
いつも一緒にいるとは言え、キヨヒコさんに急に話しかけられた時は毎回慌ててしまう。
この時の心臓の鼓動の理由は、理解できても一緒にいられないのはツライ。


「フタバはこの先どうするか決まってる?」
「私…私は、まだどうするか迷ってるんです」
元のフタバの夢は教会を造り、人々の心の支えになりながら傷を癒す法術師になる事だった。
昔は法術も弱く、使用回数も限られていたから一人前の法術師は遠い夢だと思っていた。
キヨヒコと出会ってからはもう一つの夢が出来た。鈍感な彼が相手なだけにこちらも遠い夢だった。
そして今は、後者の夢は本当の意味で夢になった。現にはならない、なりえない、夢のまま終わる夢だ。

人々の助けになれる法術師、きっとそんな答えを予想していたのだろう。
キヨヒコさんは驚いたような顔をしていた。


「フタバ、君はひょっとして僕にも言えない悩みを抱えてるんじゃないかい?この数か月間ずっと」
「えっ!?」
「最近はそうでもなくなったけど一時期フタバが別人のようになってて焦った事もあったよ。
きっと君の悩みもそこと関係がある。そんな気がするんだ」

私の想像を絶するほど素敵な方だけどとにかく鈍感なのがキヨヒコさんだった。
最初の頃はその鈍感が付け入る隙と思って歓迎していた。暫くしてこの想いに気付いてリードして欲しいと
元のフタバと同じように願っていた。最後はこの幸せな時間が長く続くよう肝心なところに気がつかないのが幸運と思った。
でも、意外にも…。いや、やっぱりキヨヒコさんはちゃんと見てくれてたんだ。
嬉しい、でも知られてしまったらもうお終いだ。さようなら、キヨヒコさん。

彼から逃げるように立ち去ろうとすると、キヨヒコさんは私の肩を掴みじっと見つめた。
紳士なのか、いつも大変だったのかはわからないがこんな大胆な事はされたことがなかった。
さっきまでの悲しさも忘れ私はすっかりキヨヒコさんの眼差しに吸い込まれた。
「君の隠し事は良く分からない、眠っていたもう一人のフタバかパラレルワールドのフタバの人格が
何故かこの世界にやってきたかのどちらかと思うけど…でも何でもいいよ」
「えっ!?」


当たってるような肝心なところが外れているような、微妙な予想だ。
ただ彼が私を引き留めようとしてくれるのは分かった。
この先どうなるかは分からない、でも今はもう少しだけ夢を見たい。
現実世界ですぐ目の前にある私の夢をもう少し見ていたい。


「君は僕達の為に癒す力を使ってくれた。正義の為という理由がない訳じゃないけど仇討で魔王と戦う
僕に力を貸してくれた。だから僕は君をフタバと同じ人だと思う事にした。君が僕を裏切る、陥れる
気がないのなら、僕も最後まで君を信じようと思う」
「キヨヒコさん…」
「もし気が向いたらでいい。少しでもその気があるのなら僕と一緒に町の復興をしてくれないかい?
傷ついた人をいやす法術も、人々の心の支えとなる教会もきっと必要だと思う。だからもし少しでも
その気があるのならもう暫く僕の隣で手を貸して欲しいんだ。」

フタバは肝心な時、本当にダメですね。
一番大事な時に言葉が出ないで涙ばかり出てしまうんですから。
私は核心部分を告白する事も、彼の言葉の真意を確認する事も出来ずただただ彼の胸に顔をうずめ泣いていた。

でも、もう暫く隣にいて欲しいってつまりプロポーズですよね?
確認は取れなかったけど、きっとそうですよね?
文字通り血も涙もない間も乗った私が流した涙、悲しいでも悔しいでもなく嬉しいの涙だ。
明日から私はキヨヒコさんの道場を奥で、奥方で支える存在になるのだろう♥




彼からプロポーズ(仮)を受けてからかれこれ一年半が過ぎた。
廃墟の集まりだった荒れ地にも教会が出来、彼の道場が出来、家やお店もたくさんできた。
キヨヒコさん曰く、前の町より立派になったらしい。

彼が勇者や英雄としての働きを務めた事はハッキリと言ったわけではない。
人々の認識は魔王の驚異が現れ、そしていつの間にか消えていた程度だろう。
でも町の人たちは何となく感づいている。魔王の脅威が去った事と魔王と戦った剣士の青年一行がいた事を。
何より街の復興に尽力するキヨヒコさんは剣を使わずとも十分に英雄と言える働きだ。
私も相変わらず彼の隣にいる事が出来て幸せを感じる事も多い。

…だけど。


町の復興は十分に終わって彼も私もこの町に必要な存在となれた。
色々なものが前進している。それなのに私と彼の関係だけは相変わらずだ。
プロポーズしてくれたんじゃないの?ずっと復興優先なのは分かるけどキスもしてくれないんじゃ不安にもなる。
ただ、奥手で臆病な私に確認をする事も、急かす事も出来ない。
周囲の人がお似合いのカップルと焚きつけてくれても、照れるしか出来ない。
ねえキヨヒコさん?
あの時のは一緒に暮らそうってプロポーズの一種ですよね?
まさかこの期に及んで友人として一緒にいたいとかいうオチは無いですよね!?



今の関係にしびれを切らせた私は、既成事実を作ろうかと模索中だ。
影の特性をうまく使ってキヨヒコさんの体を少しの間のっとって既成事実をつくろうかと。
うまく影を出して乗っ取る事が出来るかは自信がないので今月はずっと影の練習をしています。

幸いにも私が寝泊まりしているのは、彼の道場の隣にある教会の中だ。
ええ、一つ屋根の下にはまだ暮らしてません。恋愛なんて本で読んだ知識しかありませんよ私!!


もう影だった頃の面影は黒いものを出すくらいしかない。
中身はもうフタバのものだろう。のっとったような逆にのっとられたような。
まあどちらが主人格でもキヨヒコさんのお役に立てれば問題は無いんですが。

でももし仮に彼の体をのっとったとして何をすればいいんだろう?
既成事実の為に服を脱いで裸になるなんて、私に出来るんだろうか?
割れた腹筋以上の場所なんて恥ずかしくてとてもじゃないけど見れませんからね。お腹を見たのも偶然の一度きりだし。
じゃあ彼の体を操れてもせいぜいキスしか出来ないし、でもキスは彼の方から彼の意志でして欲しい。


もう、ヤメヤメ!!
好きな人の体を乗っ取るなんて私には無理!!
毎日顔が見られるだけで十分幸せなんだから変な事は考えない。
私はフタバとして、フタバらしく、彼と共に同じ時を過ごすのだ。
ゆっくりでも、奥手でも一緒なら幸せだから。




こうして私は自分をフタバと認める事が出来るようになった。
ひょっとすると最初からフタバに飲み込まれたのかも知れないけど、自分で自分をフタバと
認められるようになったのは今日が最初だ。


『その後、彼の行方を知る者は誰もいなかった…』
影の魔物はもういない。私はフタバにのっとられたのだ。
この不穏な一文がハッピーエンドの結びの言葉というのも悪くないのかも。

ただ真のハッピーエンドは未だにフラグが立ってない。
一応、キスだけはして貰ったけど♥
奥手な私と鈍感な彼だとトゥルーエンドはまだまだ幻想、ファンタジアだ。
時を超えて魔王と戦う物語もファンタジアだったけど、キヨヒコさんとの関係を進めるのもある意味でファンタジア。
私たちってどれだけ仲が進行しにくいの?
リクエストして下さった方がいたので取り敢えずUP
加筆修正はあんまりないです。
自分は表意ものを書いたり読んだりすることは滅多にないんですが、こういうのなら案外アリですね
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0.1180簡易評価
1.90きよひこ
本来の性格とふたばとしての性格が混じり合っていくときの文章表現がちょっと難解だったので-10点。基本的に面白かったです。やっぱりハッピーエンドが一番なんだなって。
9.100セカンド
何か、ほんわかして、とっても良かった!