支援図書館(ζ)

双葉の宿の元勇者

2018/04/15 16:18:47
最終更新
サイズ
58.55KB
ページ数
2
閲覧数
11694
評価数
3/40
POINT
2030
Rate
10.02

分類タグ



エピローグ 近いような遠いような未来


「さっきはとっても良かったわ清彦さん♥」
一試合を終えた私はまだ夢見心地のまま彼に抱き付いた。
私の中から彼のものは既に抜かれているが、彼の温もりは未だに残っている。
子種もまだ胎内に残っているから物理的にも温かいしね♥
まだ彼を感じていたい私は中に出して貰った精液が漏れ出ないように太ももに力を入れ余韻を楽しんでいる。


初めて彼と会った時、まさかこうなるとは思ってもいなかった。
ノリが妙に軽くて、勇者様とか勇敢な戦士どころか女好きの軽い人だったもの。
というかお風呂で彼の背中を流して上げたらフェラを望まれるというある意味で最悪の出会いとさえ言える。

あの清彦さんも最初は復讐心にとりつかれてる部分があったけど、平和を愛する心や悪と戦う意思をちゃんと持っていた。
対して彼は彼自身の実力で考えても、この時代の脅威の大きさで考えても見込みは決してある方ではなかった。

時代の脅威は小さい方が良いけれど、強大な敵がいればいるほど人は育ちそれに挑むものも魅力的になっていく。
割かし平和な時代でのんびり生きてきた女好き、うーん思い出すと彼の最初の印象ってかなり悪いよね。
そんな人が歴史上でも最強クラスの勇者と呼ばれ(実質は戦士だけど)私の旦那様になるんだから本当にビックリだ。

彼を見ながら昔を思い出している時に変な顔でもしていたのだろうか?
彼は不思議そうな顔で私の方を見ている。
私は「昔を思い出していただけよ」と言った。





「昔の事は…なんか…悪かった」
彼は昔の彼の事を話題にするのを嫌がる。
なにせ勇者や英雄と呼ばれる男も数年前は、軽い感じの兄ちゃんだったから。

ひょっとすると遠慮のない人で、言ってしまえばナンパ男なのが良かったのかも知れない。
彼は宿に通いながら私を連れ出そうと試みた。何度も何度も。
下心のようなものを感じた私は毎回のように適当にあしらって回避した。
ただ、この宿の経営者として…初代勇者の責務として彼が成長するための助言とちょっとした道具の提供は惜しまなかった。
…その助言や道具はかなりの確率で無駄になってたんだけどね。

それからしばらくして彼は宿に来なくなった。
エッチなトークをぶつけられなくなったのでホッとしつつも基本は人の来ない宿、寂しく思う事もあった。
それに、割と平和な時代でも、命を落とす要素は至る所に落ちている。
日々の努力をあまりしてないような男が落とし穴に落ちる可能性は低くない。
半年がたつ頃にはもう二度と彼とは会えないのかも知れないと思っていた。

しかし彼はやってきた。私に会うために。
そして頭を下げて頼んできた。「俺に戦い方を教えて下さい」って。
軽い感じのあんちゃんは、同じ顔こそしているもののとても同一人物には見えなかった。
人を見分けるのが得意な私も、名前を聞いても同一人物と見なせないくらい身に纏う雰囲気が違っていた。




詳しい話は言って無いし、あえて聞きはしないけれど自身の無力さが原因で人を死なせその様子を間近で見る羽目になってしまったらしい。
見た目に似合わず武術の知識に長けた(ように見えた)私に教えを乞うために宿に来たのだそうだ。
ノリが軽く美人や女の子にモテる事ばかり考えていた彼はもういない、頭を擦りつけながら懇願する彼は技量こそないものの立派なモノノフだった。
彼を宿に泊めつつ、私は彼に自分の知識を伝え実戦稽古もした。
未熟で自分の事ばかり考えていた軽いあの人はすっかり羽化し、勇者候補と呼べるほど強くなっていた。
その頃には私の彼に対する印象もガラっと変わっていた。

女性を求めるのは愛情を知らなかったからで、努力をしなかったのは頑張る事の気持ちよさを知らなかったからで、
他力本願なのは平穏な中で育った為に脅威や恐怖を体験していなかったから。
大きな坊やだった彼は「強くなりたい、好きな女も守れるくらい」が口癖のストイックな男性に進化していた。

時々(もしくはかなりの頻度で)エッチな言動が見られるって悪い点もなかなか治らなかったけど…。
修行中で調子が良くなってきたなぁ…と思ったら私の胸や太ももに意識がいってたり。
朝起きた時にテント率が高い上にテントを隠そうと前屈みとか姿勢で対処すらしなかったり。

双葉先生と呼んで一目を置いていたと思ったらやらしい目で見るとか、街に出かけた時に女の子の
お尻や胸をよくチラ見するのは先生として許せないかなぁ。

強くなって誰かを守れる男になりたいって言うのは本当だというのは分かるし修行に関しては座学でも
実技でも真面目に取り組んでくれるストイックさはあるけど、女の子絡みだとせっかく成長した意思や集中力が
雲散霧消してしまって簡単に骨抜きにされる欠点はいまだ健在と進化してもエッチ方面の欠点は強く残っているけど…。
いつかのプロポーズをしてくれた後も魅了にちょくちょく引っかかって私よりサキュ姫ズになびくとかとんでもない事もやらかしたし。

でも素敵な人なのは間違いない。
私を虜にしちゃうくらいには素敵な男性である事は間違いなんだからね。



余談だけれど、私はずっと『双葉さん』のあだ名で呼ばれていた。
彼女を想いながら宿屋に掲げた双葉の紋、そこから私が双葉さんと呼ばれていたのは知っていた。
だから彼から双葉さん呼ばわりされてても特に訂正はしなかった。
途中から先生扱いだったのも名前を呼ばれなかった一因となった。
…っていうか宿に通ってて名前すら聞いてなかったってちょっと変?



何はともあれ、双葉さん→双葉先生→双葉さんと経てようやく清香の名前で呼ばれるようになった。正確には清香さんだけどね。
その後も彼は成長を続け、私が一人前と認められるくらいになっていた。つまり、彼の旅立つ日がやってきたのだった。
名残惜しくも彼を見送る心算だったが何と彼は私を連れ出そうとするじゃないですか。
「清香さんみたいな凄い人はこんな辺境にいるべきじゃない、魔王の脅威もある!!だから絶対に
大きな世界で、人がたくさんいる場所に行くべきだ!!」

よく言えば私を引っ張って、悪く言えば私を振り回す人だ。
ただ振り回されつつも、この感じは嫌いじゃなかった。
かくして清彦さんと清香の二人組の名は世に知れる事になった。


その後は激動、2人の魔王が出てきたと思ったらその魔王を超える脅威が現れて、私の勇者だった頃と大差がない程に
世の中が荒れた時期もあった。単体はそこまででもないけど魔王4人が手を組む素敵自体が発生するとかね。
しかし不思議と不安は無かった。
危なっかしさが残っているけれど、私の手を引く一人の男から安心を貰ったのだろう。
私が道を示していた筈が、私の方が引っ張られリードされる。
左手に伝わる彼の手の感触があると、どんな強敵も敵じゃないような気がした。
大概の敵は私一人でOKとか言っちゃダメ!!魔王4人は流石に難しい。




そして、いわゆる決戦前夜…私は彼に告白をした。
女になってから男性の告白を受ける事は数あれど、自分から告白したのは初めてだった。
最初の清彦さんの時すら告白しなかったのに、なぜ彼に告白をしようと思ったのかはよく分からない。
でも彼に魅力があるのは私が誰よりも分かっているし、脳筋と揶揄されるくらいの直情さんも嫌いじゃない。
それに有無を言わせず引っ張ってくれる人が案外相性良いのかも知れない。
私が元勇者である事もも元男である事もも…。頑張って告白した2nd告白も「清香さんさんと両思いなら後どうでもいいから」
で終わらせる人って逆に魅力なのかな?と思ったりもした。


最終決戦は強敵だったけれど、成長した彼とその師匠であり元勇者が仲間を引き連れて戦うのだから
決して負ける戦いじゃない。4魔王もうまく連携したとはいえ、もともと敵同士だったので所詮は付け焼刃だ。
私達に勝てはしなかった。


こうして長い長い旅を終えた私たちは一緒にいる。
同じ家で寝泊まりする関係になった。




「しかし、一緒に寝るのにプロポーズが必要ってのは今どきどうかと思うんだ俺は?」
「そうかしら?男の人が女と一緒に寝るのってそれくらいの重みがあると思うわ」
「それは清香さんが昔の人間だから」
「確かに昔は昔だけど、ハッキリ昔の人って言われると傷ついちゃう」
「ゴメンゴメン、悪かったって清香さん」
「清香」
「清香って?」
「私はもうあなたの先生や先輩じゃない、前にそう言ったでしょ?だから呼び捨てで」
「分かったよ清香」
「ええ、もう間違えないでよね旦那様?」
「旦那様呼びはまだ覚悟が出来てないんだよなあ」
「私をお嫁に貰う気があるんじゃないの?私のカラダをこんなに味わって、身も心も受精しちゃいそうになるほど出しておいてそれは酷いわ」
「うへ~、やっぱり清香先生には敵わんのう」
「清香って呼び捨てで」
「分かったよ清香」
彼は私の第2の名を呼ぶと抱き寄せて、そのまま唇を重ねた。
抱き寄せられながらキスされるのが好き。何だかんだで旦那様は妻の好みを知っているようだ。
初エッチを終えた後でも抱き寄せられながらキスされるのが一番好きなのかも知れない。




「ところで清香の昔の名前ってやっぱり清彦?」
「なんなの藪から棒に?」
「いや、元男なら男だったときの名前もあるよなーって」
「うー、身も心も女になったんだから男の名前では呼ばれたくないなあ…っていうかどうして清彦なの?」
「いや、元勇者なら名前は清彦が一番しっくりくるなあって」
「どんな理屈なの?そもそも昔の勇者、初代清彦さんも同じこと言ってたっけ」
「何故と聞かれると困るがやっぱ勇者と言えば清彦って感じしない?俺も清彦だし」
「っぽいかも知れないけど私の男だったときの名前は清彦じゃないわ?」
私の次の勇者の名前が清彦だったからか、その後も勇者と呼ばれる男性は清彦である事が多かったのか。
時代によっては勇者に贈られる称号が『清彦』だった時期もある程だ。
だから私の本名も勘違いされていたらしい。

「んじゃあ教えて」
「私の名前はねぇ…」

~Fin~
魔王より強く、神すら超える程の力を持った史上最強の男、伝説の勇者!!
強く優しく、賢く何でもこなす。男の中の男と言えそうな凄いお方。
そんな勇者様が実はか弱い女に憧れていたら面白い話が出来るのでは?などと思って投稿してみました。
この作品のプロトタイプ?は変身描写が多いけど、勇者の乙女っぽさが出てなくて中途半端だったので同系統のシチュでもう一度書いたのがこれです。
個人的に気に入ってたけどなんか図書館に入れる機会を逃しそのまま放置、ただ思う所があり登録してみました。
読み返してみると作者は清香さんに対して酷過ぎる。彼女には幸せになって欲しいものです。

追記 エピローグの彼の設定は成長した現在の勇者ですがエロ方面に欠点がある人物です。なので彼に関する表記でエロい人っぽい一文を追加しました。
IDNo-NOName
0.1730簡易評価
1.100きよひこ
このお話隙です
4.100きよひこ
GJ
9.100きよひこ
こういう話も良いですね。GJ