この町に住む人なら噂くらいなら聞いている人は多いと思う。
未来の世界からやってきたと自称するネコ(青い狸って外見だけど)型ロボットと一緒に住むメガネの少年の事を。
半ば信じがたいけれど、人をも持ち運べる超小型のヘリコプターを一度見た事があるので本物だと思う。
そもそも自立型っぽい二足歩行のロボットってだけで衝撃的なのに、この町の人ってば淡泊すぎ。
そのロボットは未来から来たと名乗るだけあって、さっきの小型ヘリだけでなく瞬間移動できる扉や
光を当てるだけで巨大化させたたり逆に小さくできるライトなんてものもあった。
どの道具も夢があり、その超レベルの道具には興味を惹かれてしまう。
しかし、私は何かと忙しい高校生なのでたまに遠目で見かけると多少足を止めて見る事はあっても体験をしようとまでは思わなかった。
ただ彼らが広げていたとある道具に私の心は奪われたのだった。
その道具の名はお医者さんカバンと言い、聴診器やモニターなど超性能の医療機器が一まとまりになったような道具だ。
聴診器を当てるだけで、骨や体の内部がモニターに映し出され病気なら症状すら表示されるというおかしいくらい性能の高い道具だ。
現在の名医が手も足も出ないくらい高性能だ。アロエどころじゃない本物の医者いらずだ。
しかも話を聞くとこれで子供のオモチャなんだからビックリだ。
オモチャでコレなら業務用のだとどれほど性能が良いんだろう?
もし性能の良いカバンを使えれば私のとある病も治せるのだろうか?
お医者さんカバンと言うものの存在を知ってから寝ても醒めてもその事ばかり考えてしまう。
引っ込み思案で見知らぬ人と話すのなんてとてもじゃないけど出来ないような私だ。
しかしアレの存在を知ってしまうと、話すのが苦手だと言う気にはなれない。
どうにかお願いしてほんの少しで良いから貸して貰う方法を考えるようになった。
チャンスは意外に早くしかも向うの方からやってきた。
例の少年とロボットが民家を回って訪問診察をしているそうなのだ。
これはっ!!
と思った私はどうやってお願いするのかを考え、賄賂(おやつ)でご機嫌を取って少しの間お医者さんカバンを貸して貰おうと思った。
ネコさんの方は詳しく事情を話せない私を少し疑ったようだけれど、道具を取り出して私に悪意や敵意がない事を確認しどうにか貸して貰う事に成功した。
しかし悪意がないとは言え決め手がおやつのどら焼きと言うのはどうかと思う。嬉しいんだけどね。
「それじゃあ大事に使うから、ちょっとの間貸してね」
感謝の言葉を述べ二人を見送った。
「「それじゃあお兄さんもお大事に」」
「使うのは僕…お兄さんじゃないかもだけどね」
「「?」」
治したいのは心と体の性が一致しない、現代の日本では不治の病と言うべきこの状態…私は男子高生なのだ。
自分の性同一性障害を治療し、女になりたいという長年の願いを叶える為に私は秘密道具を借りた。
正直、この凄い道具ですら願いが叶うかは分からなかったけれど試す価値はあると思った。
なので人と話すのが苦手…などとは言わずどうにか頑張って彼らに声をかけ、道具を借りる事に成功したのだ。
『ただ正直に私は女の子になりたい男の子です!!』
と告白するのは恥ずかしかったので適当な理由を(一応は嘘ではない)作って貸して貰う事にしたのだ。
相談すれば一番成功率の高い方法を教えて貰えるかもしれないけれど、お医者さんカバンの性能の高さが凄かったので
これに全てをかける事にした。何より初対面の少年とロボットにカミングアウトをするとなると恥ずかしくてまともに話せずに終わりそうだから。
とにかく一時的に道具を借りる事に神経を注いだのだ。
機械を起動すると貴方の情報を入力して下さい。と表示された。
年齢と…身長・体重は春の身体測定の数値で良いかな?
しかし問題は性別の欄だ。
他は入力方式なのにここだけ選択方式で、男か女を選ばないといけない。
わたしの性別は女よ。
とモニターに向かって話したいし入力したいけれど不具合が出たら困る。
いっっっつも性別欄を記入するのには無駄な精神力を使う。
イヤイヤながら男と書いたり、男と言う文字に丸を付けるという苦行を行わなければいけない。
まぁその代り書き損じの書類・アンケートやネット上のアンケートでは迷わず女と入力してるんだけどね♥
私のテンションが上がるささやかな喜びだ。
とは言えここは真面目に入力しないといけないので渋々ながら男性の方を選択する。
頑張るのよ清乃!!貴女が女になる為の最後の試練なのよ!!と自分に渇を入れつつ精神をすり減らしながらも前に進んだ。
*一般人にとっては何気ないスペック入力です
傍から見るとアホらしい。しかし私にとっては重大な儀式を終えいよいよ検査を始める。
タヌ…ネコさん曰く聴診器を全身に当てれば全身の診察だ出来るそうだ。
下着姿になり可能な限り聴診器をいたる場所へと当てた。
下着姿は大胆にもノーブラだ!!
と言っても私はブラ持ってないんだけどね、世間的には男子高生だし。
ただ親の留守を狙ってOMAZONで買ったおかげでショーツと生理用ナプキンだけは持ってたりする。
注文すればすぐ来るって本当に便利だ。
聴診器を全身に当て検査が終わったようだ。
聴診器なのにレントゲンや内臓の写真が出てくるとかホントハイテクだ。
8分ほどで検査項目が4桁とか正直異常だ。
とは言えこれくらいの性能が無ければ性転換治療は無理だろう。
項目数が多いので狙った項目を見つけるのは大変そうだ。ただ、異常項目を見るという機能があったのでそれを選んだ。
お医者さんカバンは聴診器だけで性同一性障害を見破れるのか少し楽しみだ。
或いは男っぽさがあんまりないし、男性機能が不十分な少年として異常と扱われるのかも知れない。
治療前で胸が膨らんでいないけれど、もう今から胸が期待感だけで膨らみそうだ。
ドキドキしつつも以上項目を調べたが性別に関するものが全然ない。
せいぜい心肺機能が平均よりも弱いのと筋肉量が少ないくらい。
あとは新陳代謝と骨密度が基準値内だけど低いことくらい。
心と体の性が一致しない事を分かってくれないどころか女性ホルモンや男性ホルモンの値すら正常値って事なの?
多少難はあるけれど至って結構な体です。この一文が個人的には全く嬉しくなかった。
検索機能を見つけたのでせめてホルモンの値だけでも調べてみよう。
ただホルモンと入力すると数十種類は項目があった。
男性ホルモンと女性ホルモン以外にそんなにいっぱいのホルモンが存在するの~?
問題は性ホルモンと入力する事で解決できた。
男性ホルモンは2.00~7.50ng/mLが基準値のところ3.07と低いけど普通だった…Orz
女性ホルモンは20~60pg/mlに対して50と高めだけど異常値とは扱われず。
女性の基準値を比べてみると男性ホルモンが0.1を切り、女性ホルモンが(年齢や体調で変わるけれど)100以上の事も多い。
と言うのが分かると自分が男だという事を思い知らされかなり凹んだ。
個人情報を修正して再表示する機能を見つけたので今度は性別を女にして同じようにしてみよう。
でも性別女でやったら変な事起こらないかな?
迷った挙句、備考欄に『体が男で心が女 性同一性障害』と入力し検査結果を再び出した。
すると今度は異常値だらけ♪
警告の黄色文字がとっても嬉しく見える。
細かいところで性同一性障害と言う表記に対して、差別的なのでトランスジェンダーや性別違和に直した方が良い。
みたいな注意書きが書かれていた。高性能だけど無駄…っていうか余計なお世話。当事者なんだしどう書いてもいいじゃない。
細かい部分にケチをつけつついよいよ『治療』にとりかかる。
一部の項目(まずは性ホルモン)にチェックをした上で体の不具合を治療して貰う事にした。
治療を実行するとカバン(と言う名の本体・モニター)から注射器が現れた。
モニターには両腕とお尻の筋肉と腰骨に注入すると表示された。
指示された通り注射しやすいよううつ伏せになる。
ただ女の子になれる喜びとドキドキから下半身が隆起しうつ伏せになりにくい…。
どうにか〇ンポジを調整する事で無事うつ伏せになり注射をされる。
針の細い高性能な注射だったからか注射終了の文字が表示されるまで打たれた事には気がつかなかった。流石は二十二世紀だ。
注射をされ全身に女性ホルモンが流れていくと思うと私のドキドキや興奮は止まらない。
どうにか場所をずらした○○は大きくなりうつ伏せになるのに厳しくなった。
流石に注射直後じゃ効果を実感できないのかアソコの機能は普通に男子高生らしい。
「そう言えば私が勃起するのも今日で最期なんだよね」
そう思うと今まで大嫌いだった生理現象をちゃんと見届けてあげたくなった。
ただ直に見るのは乙女心を持つ者としてツラいのでショーツ越しで。
ショーツに不釣り合いなテントはかれこれ十分ほど眺めていた。
二分くらいで興奮お収まりか注射が効いたのかは分からないけれどテントが徐々に縮んでいった。
三分半くらい経つとポールとボールが痛みだした。
おチンチンとかタマタマじゃなくって、ポールとボールね。男性器じゃないわよ?…なんてね。
痛みの具合は片頭痛のようなズキズキと、踏まれるような圧迫・衝撃を足したようなもの。つまりは結構痛い。
更に少し経つと痛みは胸の方にも出てきた。
こちらはオッパイの成長痛みたいなものだと思う。
痛み自体は強いと言えば強いけど下半身の痛みよりかは大分マシだ。
男性機能が壊れる時の痛みと女性の胸が出来る時の成長痛じゃ痛さのレベルも違うという事だね。
とは言え下半身の痛みだけでも結構キツイというのに胸まで痛むのは中々にキツイものがある。
変化や痛みが終わるまでの約十分、時計を見る余裕も変化を確認する余裕も感じられなかった。
女性化する様子には興味があっただけに少し残念だ。
でも小さくなった下腹部や膨らんだ胸を見れればもう十分すぎるほど満足出来た。
胸の膨らみは十分とは言えないけれどそれでもクラスの女の子(貧乳)と比べればいくらかはマシだと思う。
少なくとも男の子の胸にはとても見えない。
自分の姿を見ようと立ち上がると少しクラっとした。
うーん、急なホルモンの変化で体調が崩れたのかな?
女性ホルモン投与で頭痛や吐き気、あと疲労やほてりの副作用があるってネットで見た事あるし。
膨らんだ胸を鏡で堪能しつつ少し休んで一旦体を整える事にした。
少し休んで回復をし、お医者さんカバンを再び利用する。
使う前は多少疑っていた道具だけれど今はすっかり信用しきっている。
胸を大きくし下腹部を縮ませる注射を体験したのでもうこの道具を疑うなんてありえない。
まだジンジン痛む股間を押さえ、私はカバンの前に座ったのだった。
今度は胸の治療にとりかかる。
(女性としてなら)発育が異常と警告の出る胸項目をチェックし起動する。
本体から注射器のようなものと注射を握るアームが現れる。
注射器は私の胸の近くに移動して…。
服を脱いで下さいと表記された。
胸を治療するし、お医者さんだし服は脱いだ方が良いよね。
診断とかで男子は上半身裸で女子は一枚着用OKの場合があるって風潮どうにかして欲しい。
男の子としては自分の貧相な体を晒すのが嫌だし、女の子としては異性の前で脱ぐのが嫌だし。
おっと今は治療して女の子になる事に集中しないと。
注射は私の胸の横、脇の下から胸にかけての部分にかけて狙いをつけて…そして注入する。
「痛っ」
さっきより大きな注射だからか今度は結構痛む。
予防接種よりかは痛い。
胸の中に温かいものが流れていくような気がした。
すると今度は右側にもチクリと痛みがやってくる。心なしか右は温かいというより少し熱い気がする。
ゆっくり、しかし確実に熱い何か(女性化の素)は私の胸の中へと流されていく。
胸の発育を助けるホルモン的な薬か、胸の材料のようなものかは分からないけれど胸が成長している実感がある。
下を向くと明らかに胸の形状が変わっていて視界内に胸が入るという嬉しい怪現象が確認できた。
巨乳の女性は下を向くと視界が悪いのかしらなどと全く関係のない事を考えた。
胸の熱が収まる頃には私の胸の発育も終わっていた。
急成長なのか、女性のバストの原料を注入しただけなのかは分からないけれど聴診器を当てるとDカップと表記された。
軽く当てただけで胸の大きさも分かるなんて、未来の世界の聴診器はどこまでも高性能だった。
手で掴めない程に大きくなった胸はそのままにしていると垂れてしまいそうなので、下着で形を整えたいが
男子高生として通っている私にブラジャーなんて素敵なアイテムは無い。
仕方なくTシャツで垂れないように支えておくが、そうすると乳首が擦れて痛痒い。
仕方がないので胸にタオル(肌触りが良いヤツ)を巻く事でその場は対処した。
何はともあれ、治療が進み胸に関しては女子高生以上のものになった。
(こんなに簡単に治療できるとか未来の世界には貧乳女性はいないんだろうか?)
などとちょっぴり下世話な事を考えながら私の体の不具合を取り除くお仕事は続くのだ。
その後も喉にある突起物や、顔の骨を削り女性らしい喉や丸みを帯びた印象を持つ顔を手に入れる事が出来た。
それからどのタイミングかは分からないけれど、声帯を細く短く変形したようで声が少し(1オクターブには満たないくらい)高くなった。
元々男子高生にしては声変わりがあったようななかったような声なので、劇的って程じゃない。
でもこの声ならば声だけ聞かれてお兄さん扱いされる事もないだろう。
「フフッ」
女らしさの加速を感じて笑みがこぼれる。その笑い声も女の性別を感じるので口元がもっと緩んじゃう。
万能な治療は中々に豊富で、肌を薄くつややかにする治療や乳首の色素を抜く治療なんてものもあった。
ちょっぴり黒茶色な胸もきれいなピンクちゃんと結構嬉しいサービスだった。
骨格矯正治療で肩幅を少し狭くし、腰を大きくする治療と言うのも個人的には有り難いかな?
ホルモンでお尻が成長したのは嬉しいけど、あんまり大きい印象になるのも恥ずかしいからね。
お尻だけじゃなくって腰幅も大きくなるとバランスよく女性のお尻って感じになるのでかなり安心できる…かな?
*画像はに私の願望が混ざっていて、ブラと乳首と髪は実物と違う場合があります
下着姿で姿見鏡の前に立ち、今の自分を見た。
そこに映っているのは確かに私だ。胸の膨らみを除けば大きく変化しているというわけではない。
しかし全体的に丸みを帯びて女性的になっている印象を持った。
しかも丸く太ってるとかでなく、全体的に細くて華奢な雰囲気も増した。
細さと丸さの両立が出来ていてかなり嬉しい。
(♂シンボルあるけど)乙女としては細くてスレンダーな女性には憧れる。
ただお肉がついてて丸っこい感じが女らしさを感じさせるというのも何となく分かってる。
男子高生として生活した感想だと、お尻にお肉がついてるのが意外と人気でお尻の肉の重要度は胸と大差がないって意見も聞くくらいだし。
そこらへんは男女でキレイや可愛いの認識が違うのだろう。個人的には小尻の人の方が綺麗だと思うけれど。
でも女の子としては一般的な男性の声に耳を傾けておきたい。
その意味では男性の意見は自然にしてれば耳に入るのが私の利点かな?
今の自分の感想は、女らしいボディーラインとしては申し分なし!!
ショーツ越しならきっとどこからどう見ても女の子にしか見えないハズ!!
肝心な部分を治療する前に気になる部分は全部治しておきたかった。
でも今の私の姿なら問題は、不満はない。
なんなら他の女の子に嫉妬されそうなのが問題だったり。
女性化した体の記念撮影を楽しんだ。
男の子最期の写真を撮り忘れたけど、まあ男の私の体はイヤだし撮影しなくても良いか。
最期の男の子部分のみ記録に残してもいいかも?
最期の治療は少し大掛かりなものになりるようで、多少の出血があるので床やベッドを汚さない工夫と
ある程度体の具合が整ってないといけないらしい。具体的に言うと貧血だと延期推奨だそうだ。
さきほどまで女性ホルモンでのぼせていた私だったけれど、女になれる喜びで多少の不具合の事は忘れていた。
眩暈を感じてふらついてたのもすっかり忘れる程だし最後の治療…お願いしよう。
床に新聞紙を敷き、ついでに着替えと生理用ナプキンを用意して近くに置く。
私の出来る準備ってこれくらいだろう。持ってて良かった紙ナプキン♪
って言うか買った時は治療後の出血に備えて使うとか考えてなかったよね。
でも生理用ナプキンは赤い血を受け止めるもの。
白い液体を受け止めるなんて間違った使い方はもう二度としない。そしてきっと出来なくなる。
女の子に慣れる喜びで、小さくなったはずの突起物に血液が集まる。
少しだけだけどショーツを持ち上げる感覚があった。
前から思ってたけど、自分が女の子になるTSシーン以外で興奮出来ない性癖?ってどうにかならないかなぁ。
まぁ完全に女性化すれば心配はないかな。人並みに男の人に迫ってきて欲しいって願望はあるし。
ホルモンの効き目が良かったのか最後の勃起は数分も経つ頃には収まっていた。
Tシャツを脱ぎ、敷いた新聞紙の上に横たわり、ショーツを脱いだ。
下半身を丸出しにして、機械の前にお尻と………ぉチンチンをさらけ出す。
手術の為メスを入れやすくするのはどうしたらいいのかと考え、横になりつつM字開脚に近いポーズを取った。
機械からマジックハンドのようなものが出てきて、機械の手にはメスが握られていた。
ずっと取ってしまいたいと思っていたブツだけれど、手術で血の出るシーンを見るのは怖い。
なのでモニターを見ながら手術をして貰う事にした。
手術の時は痛みが全くなかった…とまでは言わないけれどあんまり痛いって感じじゃなかった。
ホルモン注射以上、豊胸注射未満…予防接種よりかは痛くはないかな?
筋の部分を撫でられるような感覚があって、時々多少の痛みがあるって感じ。
大規模な手術と思っていた割に大した痛みもなく安心し、少し拍子抜けしたくらい。
目を固く閉じて必死に耐えるくらいの心算だったけれど、予想以上の安定ぶりに手術の様子を楽しんでみようと思う余裕すら出てきた。
するとモニターに手術のシーンを解説するという項目があるのに気がついた。
女にする…じゃなくってオンにすると手術の様子を3Dアニメで解説してくれた。
現在は筋になっている部分に切れ目を入れ、閉じてしまったワレメを再び開くという治療を終えた直後のようだ。
続いて本来あるべき場所から大きく外れてしまった卵巣を体内に戻し正常に治療するらしい。
しかし卵巣の場所を移動するだけでは足りない。
卵子を作る機能を失い、女性ホルモンでなく男性ホルモンを分泌する変異を起こした卵巣は大きく作り変えないといけない。
男性ホルモンの悪影響を受けた卵巣は一旦体から取り除き、女性化作用のある液に付け込むのだそうだ。
除光液ならぬ女効液という素敵な液体が登場した。
変異卵巣を女効液に入れるには体と繋がっていてはいけない。
精子の通り道となっている卵管もろとも体から切り離し容器に入れる処置は迅速に行われた。
続いて機械からカプセルのようなものが取り出された。
いつ用意したのかは分からないが、私の細胞から子宮に成長する『女性用内性器の種』たる秘密道具を作り出したらしい。
『』の中身を何となくだけどタ…ネコ型ロボットさんに言って欲しいと思った。
「あぅっ!?」
切り開いてできた臨時ワレメ(袋に入れられた切れ目)の中に機械の手が入り込む。
そして女性用内性器の種を私の中…体内っていうか胎内?
でもやっぱり子宮はまだないので胎内ではないね。
私の体内に胎内の元を埋め込み体内に胎内を作る作業をして貰う。なんだか早口言葉みたいな治療をして貰った。
狭い体内に種を埋め込まれたので少し痛かったけれど、女性化手術は大きく進んだ。
種が体内に定着するのにしばらく時間がかかる(といっても小一時間くらいらしい)と表示された。
すると緊張の糸が切れたのか、カバンから出た甘い香り(血のにおいを隠すため)が効いたのか寝落ちしてしまった。
目を覚ますとタイマーは残り4分を示していた。
割と良い時間に目を覚ましたようだ。
多少時間に余裕があるのでモニターをいじってみると解説をアニメモードから実写モードに変更する機能があるのに気がついた。
実写モードに切り替えてみると、切り開かれた男性器風の突起物の絵が変化した。
血で汚れた新聞紙と肌色の小さな肉が表示される。手術中の私のソーセージだ(おチンチンではないあくまでソーセージ)
女性ホルモンの効果で小さくなったのは知っているけれど、今はもうポークビッツより小さい。
卵巣を一旦取り外すとここも小さくなるのだろうか?
などと熱にうなされたような事を考える。
女性に生まれ変わる、生の手術の様子を見てみたい気はするけれど血を見るのは怖い。
正直、新聞紙の上の赤黒い汚れだけで結構怖い。
ついでにワレメ風の切れ目から見えてしまう傷跡もどうにも苦手だ。
興味はあるけれど見るのが怖いという理由でアニメモードに戻し待機時間の終わりを待つ事にした。
子宮の元は大きくなったらしく、拳よりかは大きいくらいの器官に成長したらしい。
まだ小さいけれどけれど手術の続行に支障がないくらいには大きくなったのだとか。
女効液で本来の機能を取り戻した卵巣を用意し…私の中へ入れ子宮に繋がれた。
ここで一度実写モードに切り替えて様子を見た。
体の中に入れられた感覚はあって、卵巣は確かに私の体にツイている筈だが外見上は見えない。
つまり普通の女性と同じくお腹の中に卵巣(と卵管)が入れられたことになる。
嬉しさのあまり変な顔になってしまいそうだ。
最後の仕上げとして外性器の形を成型する治療が残っているようだ。
機能をほぼ喪った私のポークビッツはまのままだとオシッコをする際にとっても不便。
出る方向が前すぎるし、男性に抱いて貰う時にもとっても邪魔だ。
またワレメの形状も切れ目が入っただけのような、傷口もどき(実際今は傷口みたいなものだけど)なのでその形の調整も必要だ。
殆ど終わった治療もついに最後の一手を迎える時が来た。
尿道が妙に長いせいでオシッコの方向がおかしい。
つまり必要な長さだけ残し余分な分を取り除く、尿道の短縮が行われた。
それに伴って新しい尿道も今よりお尻に近い場所に作られた。
これで私は今日から女の子スタイルのオシッコをする事になるのだろう。
邪魔で捨てたいと思っていたポークビッツちゃんにも尿道の他に必要な素材があった。
亀みたいな突起物の神経を使いクリトリスに作り替え、潮を吹くための管もソーセージから作るらしい。
最期に長年閉ざされていた、ひらひらラビアをワレメの上に張りクリトリスを覆うようにして手術は無事に完了した。
私の女性器はとあるソーセージ(♂)から作られる。だから女性になる為にはおちんちんが必要!!
という珍説を思いついたところで疲れがどっと来た。
手術を受けるのにも体力を要するのだろう。
それにずっと気を張っていたというのもある。
最期の力を振り絞ってTシャツとショーツを履き倒れこんだ。
倒れたところでナプキンの存在を思い出しショーツが汚れないよう(既に少し汚れたけど)ナプキンで傷口を覆い再びショーツを履いた。
生理じゃないけど正しい生理用品の使い方したような気がして満足できた。
力尽きる最後の最後で思った事が女になった喜びとか、これから何を楽しもうとか、悪い話で周りにどう説明しようとか…。
考える事は色々あったのに生理用ナプキン使えて良かったから始まる私の女ライフって微妙に抜けてる気がする。
何はともあれこうして私の男性化病は無事に治療され明日からは清乃としての人生が始まるのだった。
エピローグ
女の子になってから今日で九日目になる。
この一週間は激動としか言えないくらいに激しかった。
まず親に対して自分が清彦であると信じて貰う事から始めなければならない。
それを母と父と両方に対してしなければいけないからね。
母に通報されかけたり、父には息子の名をかたる女に許せず私を思いっきり殴り飛ばしたり…。
まあ殴られた怪我のお陰で、お医者さんカバンの実力を示せる≒性転換も出来そう…って構図が出来たのは不幸中の幸いだけどね。
信じて貰った後は息子が女として生きる事を許して貰うのにまた一苦労だった。
特に父は怒りながら泣いて、お医者さんカバンを憎みながら娘として産ませなかった自分を責めるとわけが分かんないくらい荒れていた。
最終的に両親とも基本的に自分の事より子供の事を大切にする人だというのが幸いして説得には成功できた。
とは言え息子として育てた後継ぎ(稼業やってるわけじゃないけど)の女性化に対する父の抵抗感は物凄かった。
孫の顔を見れる唯一の方法がこれだと言っても嫌がるくらい。
あんなに待ち望んでいた孫と同じレベルの重大さと言うのは私にとっても予想を超えていた。
やっぱり世間一般的に息子が娘になるのって嫌なのだろう。私も当事者じゃないと気持ち悪がっていた可能性すらある。
次に学校だ。
両親には洗いざらい話したけれど、学校に対してはややこしい話を避ける為に謎の性転換現象が発生したと説明した。
校長先生や教頭先生との二者面談や話題の中心になってしまった事、あと制服とトイレも簡単に女子用とはいかず
トイレに関しては、昨日ようやくOKが出るまで教師用の女子トイレを使っていた。
オシッコの勝手の違いでも苦戦するのにわざわざ遠いトイレを使わないといけないのにはかなり困った。
不慮の事故で性別が変わった、性転換で中身まで女らしくなった。
こう嘘をついた方が周りも気を使ってくれて楽できるし、説明も簡単だ。
ただ本当の事を話すのが恥ずかしいというのが一番の理由かもしれない。
男の体と女の心を持っていたという病を恥ずかしいものと認識したのは何故なんだろう?
当事者なのに、或いは当事者だから感じる劣等感のようなものなんだろうか?分かんない。
あと、制服や下着と私服にも苦戦した。
母は女としてオシャレに対する理解があり、服用のお小遣いをかなりくれそうだったけれど父は厳しかった。
「自分の意志で敢えて女を選んだんだ、ならば不具合も自分で引き受けるべきだ」
と女性特有の出費を認めてはくれなかった。正論ではあるだけに反論は出来ないよね。
好きな事をさせてくれる半面、その責任は十二分に負わせる父らしい厳しい扱いだった。
元々、手術代やホルモン代にしようとお年玉を積み立てていたのがあったから女子用制服の一式と
ランジェリーセットを買うくらいの余裕はあったものの高校生にはかなりツライ出費だろう。
とは言え、ブラとショーツとスカートと。長年憧れていたアイテムを購入できる嬉しさを考えれば嬉しい出費と言えなくもない。
出来れば女子用の制服のお金は欲しかったけど…まぁ性別を敢えて変えた責任と思えば安い安い(涙)
こうして激動の一週間を乗り越えカバンを返す日がやってきたのだ。
出来れば翌日に返すのが良いんだろうけれど、性別が変わった後で忙しくなるのは分かっていたし
性転換した体が安定するかどうか、数日くらいは様子を見たかったというのもあった為に少し長い期間借りる約束をしておいた。
その甲斐あって子宮や卵巣の活動が正常である事をお医者さんカバンで確認が出来て
私の体は正常に女として動いている事が明らかとなったのだ。
私は野比さんのお宅に向かって歩いている。
お医者さんカバンとめいっぱいのお礼、菓子折りセットと共に。
ホルモン代の残りをつぎ込んだので質も量もかなりハイレベルなお礼だ♪
彼らに対して真実を告げようかと迷った。お礼の意味も込めて全部話すのが誠意と思った。
しかし父と母…それから少なくない数の教師の反応を見て考えを変えた。
男の体と女の心、心と体の性が一致しない病。
私にとってはごく身近な病気なのだけれど、そうでない人にとっては混乱をもたらすイレギュラーな奇病なのだ。
正直、私について説明されても混乱するだけで別に得はしない。
それに何より「私は最近まで男だったけどずっと女になりたかったからお医者さんカバンで性転換しました」
などと自己紹介するのはなんだかかなり恥ずかしい。
だったら最初から清彦の代理…親戚の病弱な女の子の清乃としてお礼に行った方がお互いの為じゃないか。
ここ数日で考えが変わり、こう思うようになっていた。
私の演技が意外と上手いのか、あの少年が鈍いだけなのかは分からないがお医者さんカバンは特に疑われずに返せた。
まあ疑うと言っても別に悪いことには使わないし、彼らを貶める意図がないから疑われる理由はないんだけどね。
そもそも彼らの興味はお礼のお菓子セットにあったので返しに来たのが誰なのかは実はどうでも良かったのかも。
ただ、少年にどんな病気か聞かれた時は少し焦った。
「女性特有の病気で内臓に不具合があるって感じかな?」
即興にしては上手い返答だったと思う。一応嘘はついてないと思うし。
「お姉さんありがとうね」
「私の方こそ、とっても素晴らしい道具を貸して貰えてお礼がこれだけじゃ足りないくらいよ」
特に事件もなく野比さんのお宅を立ち去ろうとする。
するとタヌk…ネコさんが私に対してこっそりと耳打ちをした。
「ひょっとして君は清彦君?」
「えっ…あの…それは…」
百馬力を超す超性能の自立型に足歩行ロボットだ。頭の出来も二十二世紀レベルの高さなのだろう。
清彦の痕跡が残らないほど女の子らしく着飾った私の正体をネコさんは見破ったのだ。
ただ、私の病気がどんな病気なのか自体には特に興味や問題がないようで、
君の病気が治って道具が返ってくれば問題がないと言ってくれた。ついでに菓子折りにどら焼きが混ざっていれば良いとも。
…って、まだどら焼きが中核にあるんだ。未来ロボットも意外と大したことがないのかも知れない。
ネコさんが私の失礼な考えに気づいたのかどうかは分からない。
ただ彼は自分の持っている秘密道具の紹介を突然開始した。
ワープできる扉やタイムマシンのような便利なものから、時限バカ弾なんて馬鹿げたものも紹介した。
「で、これはもしもボックスって言うんだ」
「もしもボックス?」
「もしもの世界を本当にできる凄い道具だよ、例えば生まれた時から男の子だった女の子だったみたいな使い方もね」
悪戯っぽくウィンクする未来ロボットを見て思った。
もしもボックスを借りてたら楽だったなぁって。
やっぱり見知らぬ道具を使う時と性転換する際は詳しい人に相談するのが一番だね。
前者はともかく後者のケースは滅多にないんだけどね♥
FIN
未来の世界からやってきたと自称するネコ(青い狸って外見だけど)型ロボットと一緒に住むメガネの少年の事を。
半ば信じがたいけれど、人をも持ち運べる超小型のヘリコプターを一度見た事があるので本物だと思う。
そもそも自立型っぽい二足歩行のロボットってだけで衝撃的なのに、この町の人ってば淡泊すぎ。
そのロボットは未来から来たと名乗るだけあって、さっきの小型ヘリだけでなく瞬間移動できる扉や
光を当てるだけで巨大化させたたり逆に小さくできるライトなんてものもあった。
どの道具も夢があり、その超レベルの道具には興味を惹かれてしまう。
しかし、私は何かと忙しい高校生なのでたまに遠目で見かけると多少足を止めて見る事はあっても体験をしようとまでは思わなかった。
ただ彼らが広げていたとある道具に私の心は奪われたのだった。
その道具の名はお医者さんカバンと言い、聴診器やモニターなど超性能の医療機器が一まとまりになったような道具だ。
聴診器を当てるだけで、骨や体の内部がモニターに映し出され病気なら症状すら表示されるというおかしいくらい性能の高い道具だ。
現在の名医が手も足も出ないくらい高性能だ。アロエどころじゃない本物の医者いらずだ。
しかも話を聞くとこれで子供のオモチャなんだからビックリだ。
オモチャでコレなら業務用のだとどれほど性能が良いんだろう?
もし性能の良いカバンを使えれば私のとある病も治せるのだろうか?
お医者さんカバンと言うものの存在を知ってから寝ても醒めてもその事ばかり考えてしまう。
引っ込み思案で見知らぬ人と話すのなんてとてもじゃないけど出来ないような私だ。
しかしアレの存在を知ってしまうと、話すのが苦手だと言う気にはなれない。
どうにかお願いしてほんの少しで良いから貸して貰う方法を考えるようになった。
チャンスは意外に早くしかも向うの方からやってきた。
例の少年とロボットが民家を回って訪問診察をしているそうなのだ。
これはっ!!
と思った私はどうやってお願いするのかを考え、賄賂(おやつ)でご機嫌を取って少しの間お医者さんカバンを貸して貰おうと思った。
ネコさんの方は詳しく事情を話せない私を少し疑ったようだけれど、道具を取り出して私に悪意や敵意がない事を確認しどうにか貸して貰う事に成功した。
しかし悪意がないとは言え決め手がおやつのどら焼きと言うのはどうかと思う。嬉しいんだけどね。
「それじゃあ大事に使うから、ちょっとの間貸してね」
感謝の言葉を述べ二人を見送った。
「「それじゃあお兄さんもお大事に」」
「使うのは僕…お兄さんじゃないかもだけどね」
「「?」」
治したいのは心と体の性が一致しない、現代の日本では不治の病と言うべきこの状態…私は男子高生なのだ。
自分の性同一性障害を治療し、女になりたいという長年の願いを叶える為に私は秘密道具を借りた。
正直、この凄い道具ですら願いが叶うかは分からなかったけれど試す価値はあると思った。
なので人と話すのが苦手…などとは言わずどうにか頑張って彼らに声をかけ、道具を借りる事に成功したのだ。
『ただ正直に私は女の子になりたい男の子です!!』
と告白するのは恥ずかしかったので適当な理由を(一応は嘘ではない)作って貸して貰う事にしたのだ。
相談すれば一番成功率の高い方法を教えて貰えるかもしれないけれど、お医者さんカバンの性能の高さが凄かったので
これに全てをかける事にした。何より初対面の少年とロボットにカミングアウトをするとなると恥ずかしくてまともに話せずに終わりそうだから。
とにかく一時的に道具を借りる事に神経を注いだのだ。
機械を起動すると貴方の情報を入力して下さい。と表示された。
年齢と…身長・体重は春の身体測定の数値で良いかな?
しかし問題は性別の欄だ。
他は入力方式なのにここだけ選択方式で、男か女を選ばないといけない。
わたしの性別は女よ。
とモニターに向かって話したいし入力したいけれど不具合が出たら困る。
いっっっつも性別欄を記入するのには無駄な精神力を使う。
イヤイヤながら男と書いたり、男と言う文字に丸を付けるという苦行を行わなければいけない。
まぁその代り書き損じの書類・アンケートやネット上のアンケートでは迷わず女と入力してるんだけどね♥
私のテンションが上がるささやかな喜びだ。
とは言えここは真面目に入力しないといけないので渋々ながら男性の方を選択する。
頑張るのよ清乃!!貴女が女になる為の最後の試練なのよ!!と自分に渇を入れつつ精神をすり減らしながらも前に進んだ。
*一般人にとっては何気ないスペック入力です
傍から見るとアホらしい。しかし私にとっては重大な儀式を終えいよいよ検査を始める。
タヌ…ネコさん曰く聴診器を全身に当てれば全身の診察だ出来るそうだ。
下着姿になり可能な限り聴診器をいたる場所へと当てた。
下着姿は大胆にもノーブラだ!!
と言っても私はブラ持ってないんだけどね、世間的には男子高生だし。
ただ親の留守を狙ってOMAZONで買ったおかげでショーツと生理用ナプキンだけは持ってたりする。
注文すればすぐ来るって本当に便利だ。
聴診器を全身に当て検査が終わったようだ。
聴診器なのにレントゲンや内臓の写真が出てくるとかホントハイテクだ。
8分ほどで検査項目が4桁とか正直異常だ。
とは言えこれくらいの性能が無ければ性転換治療は無理だろう。
項目数が多いので狙った項目を見つけるのは大変そうだ。ただ、異常項目を見るという機能があったのでそれを選んだ。
お医者さんカバンは聴診器だけで性同一性障害を見破れるのか少し楽しみだ。
或いは男っぽさがあんまりないし、男性機能が不十分な少年として異常と扱われるのかも知れない。
治療前で胸が膨らんでいないけれど、もう今から胸が期待感だけで膨らみそうだ。
ドキドキしつつも以上項目を調べたが性別に関するものが全然ない。
せいぜい心肺機能が平均よりも弱いのと筋肉量が少ないくらい。
あとは新陳代謝と骨密度が基準値内だけど低いことくらい。
心と体の性が一致しない事を分かってくれないどころか女性ホルモンや男性ホルモンの値すら正常値って事なの?
多少難はあるけれど至って結構な体です。この一文が個人的には全く嬉しくなかった。
検索機能を見つけたのでせめてホルモンの値だけでも調べてみよう。
ただホルモンと入力すると数十種類は項目があった。
男性ホルモンと女性ホルモン以外にそんなにいっぱいのホルモンが存在するの~?
問題は性ホルモンと入力する事で解決できた。
男性ホルモンは2.00~7.50ng/mLが基準値のところ3.07と低いけど普通だった…Orz
女性ホルモンは20~60pg/mlに対して50と高めだけど異常値とは扱われず。
女性の基準値を比べてみると男性ホルモンが0.1を切り、女性ホルモンが(年齢や体調で変わるけれど)100以上の事も多い。
と言うのが分かると自分が男だという事を思い知らされかなり凹んだ。
個人情報を修正して再表示する機能を見つけたので今度は性別を女にして同じようにしてみよう。
でも性別女でやったら変な事起こらないかな?
迷った挙句、備考欄に『体が男で心が女 性同一性障害』と入力し検査結果を再び出した。
すると今度は異常値だらけ♪
警告の黄色文字がとっても嬉しく見える。
細かいところで性同一性障害と言う表記に対して、差別的なのでトランスジェンダーや性別違和に直した方が良い。
みたいな注意書きが書かれていた。高性能だけど無駄…っていうか余計なお世話。当事者なんだしどう書いてもいいじゃない。
細かい部分にケチをつけつついよいよ『治療』にとりかかる。
一部の項目(まずは性ホルモン)にチェックをした上で体の不具合を治療して貰う事にした。
治療を実行するとカバン(と言う名の本体・モニター)から注射器が現れた。
モニターには両腕とお尻の筋肉と腰骨に注入すると表示された。
指示された通り注射しやすいよううつ伏せになる。
ただ女の子になれる喜びとドキドキから下半身が隆起しうつ伏せになりにくい…。
どうにか〇ンポジを調整する事で無事うつ伏せになり注射をされる。
針の細い高性能な注射だったからか注射終了の文字が表示されるまで打たれた事には気がつかなかった。流石は二十二世紀だ。
注射をされ全身に女性ホルモンが流れていくと思うと私のドキドキや興奮は止まらない。
どうにか場所をずらした○○は大きくなりうつ伏せになるのに厳しくなった。
流石に注射直後じゃ効果を実感できないのかアソコの機能は普通に男子高生らしい。
「そう言えば私が勃起するのも今日で最期なんだよね」
そう思うと今まで大嫌いだった生理現象をちゃんと見届けてあげたくなった。
ただ直に見るのは乙女心を持つ者としてツラいのでショーツ越しで。
ショーツに不釣り合いなテントはかれこれ十分ほど眺めていた。
二分くらいで興奮お収まりか注射が効いたのかは分からないけれどテントが徐々に縮んでいった。
三分半くらい経つとポールとボールが痛みだした。
おチンチンとかタマタマじゃなくって、ポールとボールね。男性器じゃないわよ?…なんてね。
痛みの具合は片頭痛のようなズキズキと、踏まれるような圧迫・衝撃を足したようなもの。つまりは結構痛い。
更に少し経つと痛みは胸の方にも出てきた。
こちらはオッパイの成長痛みたいなものだと思う。
痛み自体は強いと言えば強いけど下半身の痛みよりかは大分マシだ。
男性機能が壊れる時の痛みと女性の胸が出来る時の成長痛じゃ痛さのレベルも違うという事だね。
とは言え下半身の痛みだけでも結構キツイというのに胸まで痛むのは中々にキツイものがある。
変化や痛みが終わるまでの約十分、時計を見る余裕も変化を確認する余裕も感じられなかった。
女性化する様子には興味があっただけに少し残念だ。
でも小さくなった下腹部や膨らんだ胸を見れればもう十分すぎるほど満足出来た。
胸の膨らみは十分とは言えないけれどそれでもクラスの女の子(貧乳)と比べればいくらかはマシだと思う。
少なくとも男の子の胸にはとても見えない。
自分の姿を見ようと立ち上がると少しクラっとした。
うーん、急なホルモンの変化で体調が崩れたのかな?
女性ホルモン投与で頭痛や吐き気、あと疲労やほてりの副作用があるってネットで見た事あるし。
膨らんだ胸を鏡で堪能しつつ少し休んで一旦体を整える事にした。
少し休んで回復をし、お医者さんカバンを再び利用する。
使う前は多少疑っていた道具だけれど今はすっかり信用しきっている。
胸を大きくし下腹部を縮ませる注射を体験したのでもうこの道具を疑うなんてありえない。
まだジンジン痛む股間を押さえ、私はカバンの前に座ったのだった。
今度は胸の治療にとりかかる。
(女性としてなら)発育が異常と警告の出る胸項目をチェックし起動する。
本体から注射器のようなものと注射を握るアームが現れる。
注射器は私の胸の近くに移動して…。
服を脱いで下さいと表記された。
胸を治療するし、お医者さんだし服は脱いだ方が良いよね。
診断とかで男子は上半身裸で女子は一枚着用OKの場合があるって風潮どうにかして欲しい。
男の子としては自分の貧相な体を晒すのが嫌だし、女の子としては異性の前で脱ぐのが嫌だし。
おっと今は治療して女の子になる事に集中しないと。
注射は私の胸の横、脇の下から胸にかけての部分にかけて狙いをつけて…そして注入する。
「痛っ」
さっきより大きな注射だからか今度は結構痛む。
予防接種よりかは痛い。
胸の中に温かいものが流れていくような気がした。
すると今度は右側にもチクリと痛みがやってくる。心なしか右は温かいというより少し熱い気がする。
ゆっくり、しかし確実に熱い何か(女性化の素)は私の胸の中へと流されていく。
胸の発育を助けるホルモン的な薬か、胸の材料のようなものかは分からないけれど胸が成長している実感がある。
下を向くと明らかに胸の形状が変わっていて視界内に胸が入るという嬉しい怪現象が確認できた。
巨乳の女性は下を向くと視界が悪いのかしらなどと全く関係のない事を考えた。
胸の熱が収まる頃には私の胸の発育も終わっていた。
急成長なのか、女性のバストの原料を注入しただけなのかは分からないけれど聴診器を当てるとDカップと表記された。
軽く当てただけで胸の大きさも分かるなんて、未来の世界の聴診器はどこまでも高性能だった。
手で掴めない程に大きくなった胸はそのままにしていると垂れてしまいそうなので、下着で形を整えたいが
男子高生として通っている私にブラジャーなんて素敵なアイテムは無い。
仕方なくTシャツで垂れないように支えておくが、そうすると乳首が擦れて痛痒い。
仕方がないので胸にタオル(肌触りが良いヤツ)を巻く事でその場は対処した。
何はともあれ、治療が進み胸に関しては女子高生以上のものになった。
(こんなに簡単に治療できるとか未来の世界には貧乳女性はいないんだろうか?)
などとちょっぴり下世話な事を考えながら私の体の不具合を取り除くお仕事は続くのだ。
その後も喉にある突起物や、顔の骨を削り女性らしい喉や丸みを帯びた印象を持つ顔を手に入れる事が出来た。
それからどのタイミングかは分からないけれど、声帯を細く短く変形したようで声が少し(1オクターブには満たないくらい)高くなった。
元々男子高生にしては声変わりがあったようななかったような声なので、劇的って程じゃない。
でもこの声ならば声だけ聞かれてお兄さん扱いされる事もないだろう。
「フフッ」
女らしさの加速を感じて笑みがこぼれる。その笑い声も女の性別を感じるので口元がもっと緩んじゃう。
万能な治療は中々に豊富で、肌を薄くつややかにする治療や乳首の色素を抜く治療なんてものもあった。
ちょっぴり黒茶色な胸もきれいなピンクちゃんと結構嬉しいサービスだった。
骨格矯正治療で肩幅を少し狭くし、腰を大きくする治療と言うのも個人的には有り難いかな?
ホルモンでお尻が成長したのは嬉しいけど、あんまり大きい印象になるのも恥ずかしいからね。
お尻だけじゃなくって腰幅も大きくなるとバランスよく女性のお尻って感じになるのでかなり安心できる…かな?
*画像はに私の願望が混ざっていて、ブラと乳首と髪は実物と違う場合があります
下着姿で姿見鏡の前に立ち、今の自分を見た。
そこに映っているのは確かに私だ。胸の膨らみを除けば大きく変化しているというわけではない。
しかし全体的に丸みを帯びて女性的になっている印象を持った。
しかも丸く太ってるとかでなく、全体的に細くて華奢な雰囲気も増した。
細さと丸さの両立が出来ていてかなり嬉しい。
(♂シンボルあるけど)乙女としては細くてスレンダーな女性には憧れる。
ただお肉がついてて丸っこい感じが女らしさを感じさせるというのも何となく分かってる。
男子高生として生活した感想だと、お尻にお肉がついてるのが意外と人気でお尻の肉の重要度は胸と大差がないって意見も聞くくらいだし。
そこらへんは男女でキレイや可愛いの認識が違うのだろう。個人的には小尻の人の方が綺麗だと思うけれど。
でも女の子としては一般的な男性の声に耳を傾けておきたい。
その意味では男性の意見は自然にしてれば耳に入るのが私の利点かな?
今の自分の感想は、女らしいボディーラインとしては申し分なし!!
ショーツ越しならきっとどこからどう見ても女の子にしか見えないハズ!!
肝心な部分を治療する前に気になる部分は全部治しておきたかった。
でも今の私の姿なら問題は、不満はない。
なんなら他の女の子に嫉妬されそうなのが問題だったり。
女性化した体の記念撮影を楽しんだ。
男の子最期の写真を撮り忘れたけど、まあ男の私の体はイヤだし撮影しなくても良いか。
最期の男の子部分のみ記録に残してもいいかも?
最期の治療は少し大掛かりなものになりるようで、多少の出血があるので床やベッドを汚さない工夫と
ある程度体の具合が整ってないといけないらしい。具体的に言うと貧血だと延期推奨だそうだ。
さきほどまで女性ホルモンでのぼせていた私だったけれど、女になれる喜びで多少の不具合の事は忘れていた。
眩暈を感じてふらついてたのもすっかり忘れる程だし最後の治療…お願いしよう。
床に新聞紙を敷き、ついでに着替えと生理用ナプキンを用意して近くに置く。
私の出来る準備ってこれくらいだろう。持ってて良かった紙ナプキン♪
って言うか買った時は治療後の出血に備えて使うとか考えてなかったよね。
でも生理用ナプキンは赤い血を受け止めるもの。
白い液体を受け止めるなんて間違った使い方はもう二度としない。そしてきっと出来なくなる。
女の子に慣れる喜びで、小さくなったはずの突起物に血液が集まる。
少しだけだけどショーツを持ち上げる感覚があった。
前から思ってたけど、自分が女の子になるTSシーン以外で興奮出来ない性癖?ってどうにかならないかなぁ。
まぁ完全に女性化すれば心配はないかな。人並みに男の人に迫ってきて欲しいって願望はあるし。
ホルモンの効き目が良かったのか最後の勃起は数分も経つ頃には収まっていた。
Tシャツを脱ぎ、敷いた新聞紙の上に横たわり、ショーツを脱いだ。
下半身を丸出しにして、機械の前にお尻と………ぉチンチンをさらけ出す。
手術の為メスを入れやすくするのはどうしたらいいのかと考え、横になりつつM字開脚に近いポーズを取った。
機械からマジックハンドのようなものが出てきて、機械の手にはメスが握られていた。
ずっと取ってしまいたいと思っていたブツだけれど、手術で血の出るシーンを見るのは怖い。
なのでモニターを見ながら手術をして貰う事にした。
手術の時は痛みが全くなかった…とまでは言わないけれどあんまり痛いって感じじゃなかった。
ホルモン注射以上、豊胸注射未満…予防接種よりかは痛くはないかな?
筋の部分を撫でられるような感覚があって、時々多少の痛みがあるって感じ。
大規模な手術と思っていた割に大した痛みもなく安心し、少し拍子抜けしたくらい。
目を固く閉じて必死に耐えるくらいの心算だったけれど、予想以上の安定ぶりに手術の様子を楽しんでみようと思う余裕すら出てきた。
するとモニターに手術のシーンを解説するという項目があるのに気がついた。
女にする…じゃなくってオンにすると手術の様子を3Dアニメで解説してくれた。
現在は筋になっている部分に切れ目を入れ、閉じてしまったワレメを再び開くという治療を終えた直後のようだ。
続いて本来あるべき場所から大きく外れてしまった卵巣を体内に戻し正常に治療するらしい。
しかし卵巣の場所を移動するだけでは足りない。
卵子を作る機能を失い、女性ホルモンでなく男性ホルモンを分泌する変異を起こした卵巣は大きく作り変えないといけない。
男性ホルモンの悪影響を受けた卵巣は一旦体から取り除き、女性化作用のある液に付け込むのだそうだ。
除光液ならぬ女効液という素敵な液体が登場した。
変異卵巣を女効液に入れるには体と繋がっていてはいけない。
精子の通り道となっている卵管もろとも体から切り離し容器に入れる処置は迅速に行われた。
続いて機械からカプセルのようなものが取り出された。
いつ用意したのかは分からないが、私の細胞から子宮に成長する『女性用内性器の種』たる秘密道具を作り出したらしい。
『』の中身を何となくだけどタ…ネコ型ロボットさんに言って欲しいと思った。
「あぅっ!?」
切り開いてできた臨時ワレメ(袋に入れられた切れ目)の中に機械の手が入り込む。
そして女性用内性器の種を私の中…体内っていうか胎内?
でもやっぱり子宮はまだないので胎内ではないね。
私の体内に胎内の元を埋め込み体内に胎内を作る作業をして貰う。なんだか早口言葉みたいな治療をして貰った。
狭い体内に種を埋め込まれたので少し痛かったけれど、女性化手術は大きく進んだ。
種が体内に定着するのにしばらく時間がかかる(といっても小一時間くらいらしい)と表示された。
すると緊張の糸が切れたのか、カバンから出た甘い香り(血のにおいを隠すため)が効いたのか寝落ちしてしまった。
目を覚ますとタイマーは残り4分を示していた。
割と良い時間に目を覚ましたようだ。
多少時間に余裕があるのでモニターをいじってみると解説をアニメモードから実写モードに変更する機能があるのに気がついた。
実写モードに切り替えてみると、切り開かれた男性器風の突起物の絵が変化した。
血で汚れた新聞紙と肌色の小さな肉が表示される。手術中の私のソーセージだ(おチンチンではないあくまでソーセージ)
女性ホルモンの効果で小さくなったのは知っているけれど、今はもうポークビッツより小さい。
卵巣を一旦取り外すとここも小さくなるのだろうか?
などと熱にうなされたような事を考える。
女性に生まれ変わる、生の手術の様子を見てみたい気はするけれど血を見るのは怖い。
正直、新聞紙の上の赤黒い汚れだけで結構怖い。
ついでにワレメ風の切れ目から見えてしまう傷跡もどうにも苦手だ。
興味はあるけれど見るのが怖いという理由でアニメモードに戻し待機時間の終わりを待つ事にした。
子宮の元は大きくなったらしく、拳よりかは大きいくらいの器官に成長したらしい。
まだ小さいけれどけれど手術の続行に支障がないくらいには大きくなったのだとか。
女効液で本来の機能を取り戻した卵巣を用意し…私の中へ入れ子宮に繋がれた。
ここで一度実写モードに切り替えて様子を見た。
体の中に入れられた感覚はあって、卵巣は確かに私の体にツイている筈だが外見上は見えない。
つまり普通の女性と同じくお腹の中に卵巣(と卵管)が入れられたことになる。
嬉しさのあまり変な顔になってしまいそうだ。
最後の仕上げとして外性器の形を成型する治療が残っているようだ。
機能をほぼ喪った私のポークビッツはまのままだとオシッコをする際にとっても不便。
出る方向が前すぎるし、男性に抱いて貰う時にもとっても邪魔だ。
またワレメの形状も切れ目が入っただけのような、傷口もどき(実際今は傷口みたいなものだけど)なのでその形の調整も必要だ。
殆ど終わった治療もついに最後の一手を迎える時が来た。
尿道が妙に長いせいでオシッコの方向がおかしい。
つまり必要な長さだけ残し余分な分を取り除く、尿道の短縮が行われた。
それに伴って新しい尿道も今よりお尻に近い場所に作られた。
これで私は今日から女の子スタイルのオシッコをする事になるのだろう。
邪魔で捨てたいと思っていたポークビッツちゃんにも尿道の他に必要な素材があった。
亀みたいな突起物の神経を使いクリトリスに作り替え、潮を吹くための管もソーセージから作るらしい。
最期に長年閉ざされていた、ひらひらラビアをワレメの上に張りクリトリスを覆うようにして手術は無事に完了した。
私の女性器はとあるソーセージ(♂)から作られる。だから女性になる為にはおちんちんが必要!!
という珍説を思いついたところで疲れがどっと来た。
手術を受けるのにも体力を要するのだろう。
それにずっと気を張っていたというのもある。
最期の力を振り絞ってTシャツとショーツを履き倒れこんだ。
倒れたところでナプキンの存在を思い出しショーツが汚れないよう(既に少し汚れたけど)ナプキンで傷口を覆い再びショーツを履いた。
生理じゃないけど正しい生理用品の使い方したような気がして満足できた。
力尽きる最後の最後で思った事が女になった喜びとか、これから何を楽しもうとか、悪い話で周りにどう説明しようとか…。
考える事は色々あったのに生理用ナプキン使えて良かったから始まる私の女ライフって微妙に抜けてる気がする。
何はともあれこうして私の男性化病は無事に治療され明日からは清乃としての人生が始まるのだった。
エピローグ
女の子になってから今日で九日目になる。
この一週間は激動としか言えないくらいに激しかった。
まず親に対して自分が清彦であると信じて貰う事から始めなければならない。
それを母と父と両方に対してしなければいけないからね。
母に通報されかけたり、父には息子の名をかたる女に許せず私を思いっきり殴り飛ばしたり…。
まあ殴られた怪我のお陰で、お医者さんカバンの実力を示せる≒性転換も出来そう…って構図が出来たのは不幸中の幸いだけどね。
信じて貰った後は息子が女として生きる事を許して貰うのにまた一苦労だった。
特に父は怒りながら泣いて、お医者さんカバンを憎みながら娘として産ませなかった自分を責めるとわけが分かんないくらい荒れていた。
最終的に両親とも基本的に自分の事より子供の事を大切にする人だというのが幸いして説得には成功できた。
とは言え息子として育てた後継ぎ(稼業やってるわけじゃないけど)の女性化に対する父の抵抗感は物凄かった。
孫の顔を見れる唯一の方法がこれだと言っても嫌がるくらい。
あんなに待ち望んでいた孫と同じレベルの重大さと言うのは私にとっても予想を超えていた。
やっぱり世間一般的に息子が娘になるのって嫌なのだろう。私も当事者じゃないと気持ち悪がっていた可能性すらある。
次に学校だ。
両親には洗いざらい話したけれど、学校に対してはややこしい話を避ける為に謎の性転換現象が発生したと説明した。
校長先生や教頭先生との二者面談や話題の中心になってしまった事、あと制服とトイレも簡単に女子用とはいかず
トイレに関しては、昨日ようやくOKが出るまで教師用の女子トイレを使っていた。
オシッコの勝手の違いでも苦戦するのにわざわざ遠いトイレを使わないといけないのにはかなり困った。
不慮の事故で性別が変わった、性転換で中身まで女らしくなった。
こう嘘をついた方が周りも気を使ってくれて楽できるし、説明も簡単だ。
ただ本当の事を話すのが恥ずかしいというのが一番の理由かもしれない。
男の体と女の心を持っていたという病を恥ずかしいものと認識したのは何故なんだろう?
当事者なのに、或いは当事者だから感じる劣等感のようなものなんだろうか?分かんない。
あと、制服や下着と私服にも苦戦した。
母は女としてオシャレに対する理解があり、服用のお小遣いをかなりくれそうだったけれど父は厳しかった。
「自分の意志で敢えて女を選んだんだ、ならば不具合も自分で引き受けるべきだ」
と女性特有の出費を認めてはくれなかった。正論ではあるだけに反論は出来ないよね。
好きな事をさせてくれる半面、その責任は十二分に負わせる父らしい厳しい扱いだった。
元々、手術代やホルモン代にしようとお年玉を積み立てていたのがあったから女子用制服の一式と
ランジェリーセットを買うくらいの余裕はあったものの高校生にはかなりツライ出費だろう。
とは言え、ブラとショーツとスカートと。長年憧れていたアイテムを購入できる嬉しさを考えれば嬉しい出費と言えなくもない。
出来れば女子用の制服のお金は欲しかったけど…まぁ性別を敢えて変えた責任と思えば安い安い(涙)
こうして激動の一週間を乗り越えカバンを返す日がやってきたのだ。
出来れば翌日に返すのが良いんだろうけれど、性別が変わった後で忙しくなるのは分かっていたし
性転換した体が安定するかどうか、数日くらいは様子を見たかったというのもあった為に少し長い期間借りる約束をしておいた。
その甲斐あって子宮や卵巣の活動が正常である事をお医者さんカバンで確認が出来て
私の体は正常に女として動いている事が明らかとなったのだ。
私は野比さんのお宅に向かって歩いている。
お医者さんカバンとめいっぱいのお礼、菓子折りセットと共に。
ホルモン代の残りをつぎ込んだので質も量もかなりハイレベルなお礼だ♪
彼らに対して真実を告げようかと迷った。お礼の意味も込めて全部話すのが誠意と思った。
しかし父と母…それから少なくない数の教師の反応を見て考えを変えた。
男の体と女の心、心と体の性が一致しない病。
私にとってはごく身近な病気なのだけれど、そうでない人にとっては混乱をもたらすイレギュラーな奇病なのだ。
正直、私について説明されても混乱するだけで別に得はしない。
それに何より「私は最近まで男だったけどずっと女になりたかったからお医者さんカバンで性転換しました」
などと自己紹介するのはなんだかかなり恥ずかしい。
だったら最初から清彦の代理…親戚の病弱な女の子の清乃としてお礼に行った方がお互いの為じゃないか。
ここ数日で考えが変わり、こう思うようになっていた。
私の演技が意外と上手いのか、あの少年が鈍いだけなのかは分からないがお医者さんカバンは特に疑われずに返せた。
まあ疑うと言っても別に悪いことには使わないし、彼らを貶める意図がないから疑われる理由はないんだけどね。
そもそも彼らの興味はお礼のお菓子セットにあったので返しに来たのが誰なのかは実はどうでも良かったのかも。
ただ、少年にどんな病気か聞かれた時は少し焦った。
「女性特有の病気で内臓に不具合があるって感じかな?」
即興にしては上手い返答だったと思う。一応嘘はついてないと思うし。
「お姉さんありがとうね」
「私の方こそ、とっても素晴らしい道具を貸して貰えてお礼がこれだけじゃ足りないくらいよ」
特に事件もなく野比さんのお宅を立ち去ろうとする。
するとタヌk…ネコさんが私に対してこっそりと耳打ちをした。
「ひょっとして君は清彦君?」
「えっ…あの…それは…」
百馬力を超す超性能の自立型に足歩行ロボットだ。頭の出来も二十二世紀レベルの高さなのだろう。
清彦の痕跡が残らないほど女の子らしく着飾った私の正体をネコさんは見破ったのだ。
ただ、私の病気がどんな病気なのか自体には特に興味や問題がないようで、
君の病気が治って道具が返ってくれば問題がないと言ってくれた。ついでに菓子折りにどら焼きが混ざっていれば良いとも。
…って、まだどら焼きが中核にあるんだ。未来ロボットも意外と大したことがないのかも知れない。
ネコさんが私の失礼な考えに気づいたのかどうかは分からない。
ただ彼は自分の持っている秘密道具の紹介を突然開始した。
ワープできる扉やタイムマシンのような便利なものから、時限バカ弾なんて馬鹿げたものも紹介した。
「で、これはもしもボックスって言うんだ」
「もしもボックス?」
「もしもの世界を本当にできる凄い道具だよ、例えば生まれた時から男の子だった女の子だったみたいな使い方もね」
悪戯っぽくウィンクする未来ロボットを見て思った。
もしもボックスを借りてたら楽だったなぁって。
やっぱり見知らぬ道具を使う時と性転換する際は詳しい人に相談するのが一番だね。
前者はともかく後者のケースは滅多にないんだけどね♥
FIN
ただ同系統の新作が欲しいか、全くのベツモノでいいか、図書館に投降しなかった前の作品でも良いか方向性を言って下さるともっと出しやすいです。(出せるかは分かりませんが)