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とある英雄の最期

2018/07/10 16:30:00
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「ああっ、くるッ、キちゃうッ、びゅーびゅーキちゃうぅううううっっっッッ!!」

膣で2度目の射精を貪るように味わう相棒が嬌声を上げる中、トッシュは何度目かの後悔に沈む。
僕が皮に関する仮説を言わなければ。
あるいはもう少しキーヨの様子に気をつけていれば。
そうでなくても、せめてすぐに皮を脱がせていれば、と。
だが、もう遅い。
催淫の罠にかかったキーヨは他の何もかもを忘れ、永遠に満たされることのない性欲を満たそうと死ぬまで腰を振り続けるだろう。
そして、痺れ罠に掛かった僕も例外ではない。
全てを諦めたそのとき、トッシュの上で騎乗位になったキーヨが頭を抱えて呻きだす。
そして、湧き上がる淫欲に抗いながら状態異常を直す緑色のオーラを両手に纏い、自分とトッシュの身体に触れた。
痺れが和らいだトッシュは腰のナイフを抜くと、キーヨの背中に浅く突き立てる。

「痛っ!」

小さく上がった悲鳴に相棒の背中を覗き込むと、切ったところから赤い血がにじみ出ている。
まるで元々のキーヨの肌だったかのように。

「ははっ、自業自得だな」

ずるりと秘所から肉棒を抜き出し、トッシュの横で仰向けになりながら、キーヨだった女は乾いた笑いを浮かべる。

「遊んでる間にすっかり皮が馴染んじまったみたいだ。最初は違和感があったのに、もうすっかり自分の身体としか思えねぇ」
「しっかりしろ!何年かかってでも僕がもとの身体に戻る方法を探す!だから……」
「いや、いい」

いつになく真剣な表情になってトッシュに告げる。

「このままでいい。俺は……俺は、双葉の身体で生きていく」
「どうしてだっ!君が君でなくなるんだぞ!…力か、フタバの力に溺れたのか!?」
「違う。これは自分で蒔いた種だし、それに……双葉を幸せにしたいんだ」
「どういう意味だ?」
「この皮を着て、双葉の記憶が流れ込んできて、知ったんだ。彼女のこと、彼女の人生のこと。
……双葉は英雄になんてなりたくなかった。双葉は、私は!……普通の女の子だった」

* * *

双葉はごく普通の、どこにでもいる少女だった。
中学2年生の時に突然、炎の女神の手でこの世界に転移させられるまでは。

誰も知る人のいない世界に投げ出された彼女は、魔獣狩りに駆り出されることとなった。
魔獣の脅威に曝される世界では、身寄りのない者は戦うことでしか生きていくことができなかったからだ。
幸いにも女神から加護を授けられていた双葉は、襲い来る魔獣たちを撃退するだけでなく、巣まで追い立てた。
そしてそのままトドメを刺そうと侵入し、中を彷徨った果てに彼女は伝説のアイテムを手に入れ、「トレジャーハンターのフタバ」となった。

フタバはダンジョンに潜り、戦い続けた。
それしか生きる術を知らなかったから。
それでも、彼女には仲間が出来た。
ホームシックに枕を涙で濡らす夜もあったが、1人じゃないと思えば辛さも少しは紛れた。
少女が大人になるほどの年月を駆け抜け、フタバも18歳になっていた。

そして、仲間たちは魔獣王との激しい戦いの中で命を落とした。
癒しの魔法に長け、辛いときにはいつも寄り添ってくれたフォリア。
罠に引っかかりそうになるフタバを弄りつつも、仲間が罠にかからないよういつも気を配っていたガラバート。
気難しいながら、いつも魔法や戦術に関して的確なアドバイスをくれたゲレル。
みんな死んで、フタバだけが残された。

だからフタバは、幸せになることを誓った。
仲間たちの分まで、そしてこれまで手に掛けてきた、何かを憎まずには生きていけない哀れな魔獣たちの分まで。

だが、その前にやるべきことがあった。
強すぎる力が争いを呼ぶ前に、やるべきことが。
そして、それが終わった後、争いのなくなった世界で送る幸せな生活に思いを馳せながら、フタバは、剣を返し、そして……。

英雄は、その最期の瞬間まで、本当はごく普通の、ただの少女なのであった。

* * *

「俺はただ、双葉に代わって幸せになりたいんだ。いや、違うな。普通の幸せを掴まないといけない。普通に生きることを許されず、英雄として生きざるを得なかった彼女の分まで!
…博物館にはく製として展示したり、どこかの研究室で弄くり回されたりすることが彼女の末路にふさわしいか?違うだろ!?」
「僕は……僕も、そんなことは間違っていると思う。思うけどさ!キーヨだって、お前だって犠牲になることはないだろ!!」

フタバの思いを聞き、キーヨの思いを聞いたトッシュは、叫び声を上げる。
そんなものはないと悟りながら、それでもどこかに道が残されているのではないかと叫ぶ。

「自業自得だ、しょうがないことなんだよ」
「……僕は僕自身が許せない。ストッパーを自任してた癖に、そんな無茶をしようとしてる君を許すどころか、認めようとしてるんだからな」
「それでいい。これは、俺の選択だ。結果も全部俺が引き受ける。だから最後に一つだけお願いを聞いて欲しい」

神妙な面持ちでキーヨは頭を下げる。

「俺を……私を女にしてください」
「……へっ?」

思わず間抜けな声を上げるトッシュ。
遅れて自分が随分と恥ずかしいことを言ったことに気づき、キーヨは赤面する

「ち、違うっ!……あー、えっと、どうも女になった自分の身体を実感したり、意識したりするたびにどんどん皮が馴染んでいくみたいでさ。自然に過ごしていてもすぐに双葉と混ざっていくと思うけど、トドメ?はトッシュに刺してほしいというか」
「なんで俺に?」
「トッシュは無二の親友で相棒だから。それに、その、見てるとなんというか、ドキドキしてむぐっ」

トッシュは口を塞ぐようにキスし、強引に舌をねじ込む。
歯茎や口蓋を蹂躙するような彼の舌に己の舌を絡ませ、ディープキスを終えた相棒の顔はすっかりと雌の快楽に蕩けていた。

「皆まで言うなよ、水臭いな。えーと、……キーヨでもあり、フタバでもあるから、そうだな。
……キヨハ。今日から君は、キヨハだ」

その言葉に、彼女はこくりと頷いた。

* * *

「恥ずかしいから、あんまり見るなよ」

仰向けに横たわったキヨハは、恥ずかしそうに目を逸らしながらも、股を開いて受け入れる体勢になる。
彼女の相棒は罠の影響で未だ濡れそぼった秘裂に肉棒を宛がうと、ずぶりと挿入する。

「んんっ!」
「大丈夫?痛くない?」
「ん、大丈夫。それよりもほら、腰を振りなよ」

トッシュはキヨハの様子を窺いながらゆっくりと腰を動かし始める。
彼女が痛みを感じないよう加減しつつ、徐々に激しく動かしていくと、自然と口から喘ぎ声が漏れ始める。

「あ……んっ…ぁあっ、んん……ああっ」

トッシュはキヨハの腰を掴み、根元まで押し込むようにピストン運動を繰り返す。

「はぁ、どう?気持ちいい?」
「……ダメだ。やっぱり怖い。違う色の絵の具を混ぜ合わせるみたいに、自分が自分でない誰かに変わっていく感覚が」
「安心しろ、ってわけじゃないけどさ。キヨハを女にするのは僕だから、その責任を取るっていうか……。あーっもう、つまりさ。…僕じゃあ頼りないか?」
「えっ?」
「僕は、君の無二の親友で、相棒なんだろう?キヨハが自分を見失っても僕がいる。だから!…だから、その……」
「……ばーか。こういうときにバッチリ決めないでいつ決めるんだよ」

そう言いながらも、まんざらでもなさそうに笑みを浮かべるキヨハは、改めてトッシュと唇を重ねる。

その時、心の底から女の肉体を受け入れたことで、キヨハの姿に変化が生じ始めた。
顔が凛々しくなるとともに、胸や尻は若干大きめに変化する。
そして仕上げとばかりに、炎神の加護の証である真っ赤な髪は、元の黒色を経て根元からキーヨの青い色に染まる。

「ぷはぁ……あれ、どうしたんだ?」
「心も身体も混じり合って、『キヨハ』に相応しい肉体になってきた、ってところかな」
「その喋り方……!」
「そんなことより早くイかせて。早くあたしをキヨハに変え尽くして」

キヨハがトッシュに強化魔法を掛けると、先ほど以上の勢いで腰を振り始める。
敏感な部分を突き上げるように動かすと同時に、乳首を舐めて愛撫を加える。

「んんっ、きもちぃよ。トッシュのちんぽぉ、感じるのぉ。あぁんっ、また動いてっ」

身体の変化に伴い感覚が鋭敏になったキヨハはあっという間に登り詰めそうになった。
彼女の膣壁が、射精を促すように肉棒を強く締め上げる。
同時にキヨハはトッシュの背中に手を回し、強く抱きしめる。
一滴たりとも精を漏らさないように、あるいは、愛する人と二度と離れないように。

「うっ…キヨハ、そろそろ出すよ」
「あはぁ、きてぇ、おくにだしてぇ……くるッ、きたッ、ああっ、だめぇっ、イク、イクッ、イクうぅぅうううウウゥっっっッ!!!」

キヨハはトッシュの腰に両足を回し、離れないよう全身で抱きつきながらその瞬間を迎える。
意識が飛びそうなほどの快楽に、頭が真っ白に塗りつぶされるのを感じながら。

* * *

キヨハは果てなく続く白い空間にいた。
そして、目の前には、彼女とよく似た赤い髪の少女が立っていた。

《あーあ、私の顔であんな表情浮かべちゃって》
『ごめんなさい。勝手にすべてを覗き見てしまって。あなたの肉体を奪ってしまって』
《本当だよ。ファーストキスどころか、初めてまで捧げちゃうんだもの。しかも、こんなロマンスの欠片もないところで》
『ごめん』
《……本当なら、こんな世界とはとっととおさらばしたかった。家に帰って、ママの作ったホットミルクを飲んで、あったかい布団でぐっすり眠って、それから、いつか素敵な人と出会って、恋に落ちて》
『…ごめん』
《でも帰れないなら帰れないでよかった。フォリアと、親友と出会えたし、ガラバードはアホだけど頼りになるし、それに……あぁ、私、ゲレルのことが好きだったんだ。いつも気難しい表情を浮かべていたけど、思慮深くて優しい彼が……》

双葉の目からは涙が零れていた。
キヨハは、何も言うことが出来なかった。

《この世界に取り残されて、出来た友達もみんないなくなって、それでも幸せになろうと足掻いて、その挙句の果てがこれなんて》
『……ごめんなさい』

双葉の記憶を持ち、彼女の気持ちが痛いほどよくわかるキヨハの目からも、いつの間にか涙が流れていた。

『あたし、ばっかり、幸せに、なろうとして、ごめんなさい。あなたに、双葉に、あたしの、身体を、あげれば、よかったのに』
《馬鹿なことは言わないで》

泣きじゃくるキヨハを双葉は抱きしめる。

《私の方こそごめん。あまりにもあんまりな人生だったから、恨み節の1つも言いたくなっちゃって。でも気に病まなくていい。あなたは私に囚われる必要はない。そう伝えたくて最後のお別れに来たの》
『でもあたしは』
《そんな顔しないの。私のかわいい顔が台無しでしょ。……ふふ、ようやくちょっとだけ笑ってくれた》

双葉は自分の額をキヨハの額に当てる。

《私の分まで幸せに生きると言ってくれたこと、本当に嬉しかった。そんなあなただから私を託そうと思えた。私の身体、大事にしてね。……もうあなた1人のものじゃないみたいだし》
『……待って、それってどういう』
《ほら、とっととあの冴えないコのところに戻りなさい。大事な人なんでしょう》
『……はい』

姿かたちが変わろうと受け入れ、見捨てないと言ってくれたかつての親友。

『とても、大切なひとです』
《そっか。……せいぜい、幸せに生きなさい》

《さようなら》

抱き合ったまま、すり抜けるように消えていく赤い幻影を見届け、彼女は意識を手放した。

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