♂ ぼーなすすてーぢ ♀
「うわぁ……」
鏡を見て出てきた言葉はそれだった。
驚きと何かが入り混じった、複雑な心境の結果だ。
「……いいっ!」
「サイコーじゃん」
「やっぱ似合ってるよ」
一方でトシアキとツネヨシとタダマサは誉め言葉を口にした。
僕の後ろで同じように鏡を見て、そういったのだ。
本人とそれ以外では印象と評価が大きく異なるひとつの事例といえる。
何に対して差が出ているのかというと……
「やっぱ男の娘にベビードールって、サイコーの組み合わせだよな!」
……ということです。
事の始まりはトシアキの「おとまり会しよーぜ!」だった。
休みだからみんなでトシアキの家にお泊り、だそうです。
そこで何をするんだ? 別に止まりでするほどのことなんてあるのか? なんて疑問だらけだったが。
来てみてわかった。これが目的だ。
やりたかったのはパジャマパーティ、ではなくベビードールパーティ、ってわけだ。
それに気が付いたが時すでに遅し。離脱を許されることなく、しっかり確保され、着替えさせられた。というわけ。
「ちょっと、恥ずかしいんだけど……」
鏡に映る自分。自分でいうのもなんだがベビードール姿が似合わないのではない。
似あいすぎているのだ。
一度女になって、男に戻ったとはいえ完全に男に戻ったわけではない。
顔はレベルの高い女の子のままだし、骨格も男というよりも女のもの。だからぱっと見はどう見ても女の子だ。
だから似合わないわけがない。素材がいいからかわいい服を着たら似合う。ということ。
自分で自分のことをかわいいっていうのはアレだけど。
だから鏡に映っている自分を見た時、すごくときめいてしまう。自分の姿に惚れちゃうかも、みたいな。
しかし、複雑になってしまうのは別の要因にある。
今の僕は胸はない、まな板。それと……股間には立派な男のアレがあるわけで。
つまり、言い方によっては、おっぱいのないおちんちんの生えた女の子、みたいな。
何を言ってるんだ自分。
つまり、だ。見た目ばっちりかわいい女の子、なのだが、透けたベビードールの下、ショーツの中には、異物が存在している。
もっこりがあるのです。
自分で自分の体、それも特に大事な部分を異物っていうのもなんだけど、とにかく女子には存在しないはずのものがあるのだ。
それが美しい花に寄生してしまった害虫のような……いやその表現はダメだな。大事なムスコですから。
とにかく違和感があるのですよ。
しかもそれが自分の体だから。余計にその違和感が気になって、複雑な心境になってしまうのです。
「何を言う! そういうギャップ萌えがいいのだ!!」
「それもそれでかわいいじゃん」
「マッチョについているのと男の娘についているのとでは違うんだよ!!」
一方でトシアキとツネヨシとタダマサはそれがいいと言うております。
これ、美しさの引き立て役になっているのか? 絶対に違うと思うが。
「特にこのおしりがいいっ!」
「わひゃあっ!? ちょっといきなり触らないで……」
なでられてしまった。油断した。
骨格は女子のまま、ということはここもそういうこと。女子のままだ。
女子特有の豊かな丸みを描いたおしり、それがいいとトシアキはよく言ってくるんだよなぁ。
確かに、自分で鏡で見ると……美尻ですよ確かに。
そして現在、その美尻はほとんどが露出している。
今穿いているこのショーツのせいだ。
このベビードール、エロアイテムでしかない。
青地のシースルーな布地は肌がよく見えるし、下のショーツもばっちり見える。
そしてセットのショーツはというと、いわゆる紐パンってやつで、しかも布地の少ないTバック。
だからお尻の割れ目に食い込んでいるそれは、お肉をぷりっ、と露出させている。
食い込んでる感じが、かなりエロい想像を掻き立てる。
なによりも布地が少ないのが問題だ。
トシアキが以前「紐パンって意外とゆったりしてていいぞ」といっていた。
それは同意。ゴムでキュッとしている普通のショーツはゆとりがないように思える。
特にその、下半身に物体の存在している僕にとってはアレはきつくてしょうがない。前が苦しい。
しかし紐パンって長さを調整できるからなのか、締め付けがそれほどきつくない。
今日初めて穿いてみたけど、これ結構いいかも。
今度から紐パンにしようかな……って何を言ってるんだ自分!!
「まーまーそんな怒るなよ」
紐パンに関する考察を悟られてはいないが、顔に出ていただろうか。
別に怒っていないはずだが。
「俺達のもさわっていいからさ」
あー、お尻の方ね。そっちはもう別にいいけどさ。けどさ……
「いつの間に着替えましたね?」
トシアキとツネヨシとタダマサもまた、ベビードールに着替えていた。
「当たり前だろ? ベビードールパーティだからな」
「一度着てみたかったしさ」
「こういうエロい衣装、いいよね」
微妙に空気の僕に対して、3人はノリノリだった。
さすがにこちらは本物の女の子(?)だけあって魅力がひときわ違う。
ベビードールと一口に言ってもその形状は色々さがある。
僕なんかはちっさいワンピースみたいな形状だ。胸がないからこういう形状なんだろう、と思う。
一方でツネヨシはブラの下に長い布が付いたような形状だし、タダマサは前がわかれたガウンのような形状。
で、トシアキはというと……
「なんで丸出しなの?」
形状は僕のと似ている。が、胸のところはブラの輪郭部分に布というか紐があるだけで、中央には何もない。
だから、乳首というかおっぱい丸出し状態。
下はというと足の付け根あたりまで布地があるが、ショーツもほとんど紐でしかない。
ショーツの形をしている紐、これもまた輪郭部分しか形がなくて、肝心の部分に布がない。
だからその、下の割れ目が……
「いいだろぉ、格好いいだろぉ?」
これを格好いいといえるのだろうか。
とにかくここにあるベビードールだけでも三者三様、ではなく四者四様か。一体どこで買ったのやら。
ちなみにトシアキ以外が着用しているものも、布地が薄くシースルーになっている。
だから結局見えるものは見えてしまっている。その、乳首がね。
しかし、僕と3人の決定的な違いは……やっぱり胸のあるなしだろう。
3人とも圧倒的巨乳だから。ツネヨシはFでタダマサはGって言ったっけ?
そしてトシアキはJカップという圧倒的は破壊力。
そのサイズのある美しいバストをベビードールが見事に引き立てている。
……別に悔しくはない。
「ふふっ、キヨヒコも気に入ってくれたかなぁ?」
まずい、自分でも知らないうちにガン見していたか?
慌てて目線をそらすが、多分手遅れだろうなぁ。
「これ、キヨヒコを喜ばせようと思って選んだからなぁ」
……え?
「なんだって、僕?」
喜ばせようと思って、確かにそういった。
普通、友人とかある程度の関係のある人を喜ばせようと思って、というのは意味深なものがある。
例えば、次のステップの中に進もうとしているとか。
いやいやまさかそんなね……って、いやその、ちょっと待て。トシアキどうして顔を赤くしてるの?
え、うそでしょ? まさかこの僕に、本当に、その、恋愛的な……
「き、キヨヒコ」
「は、はいっ!」
緊張の一瞬。まさかトシアキは、まさか僕に、こくは……
「お前の、おちんちんしゃぶらせてえぇっっ!!」
「……………………は?」
なに、それ。
愛の告白じゃなかったけど、ある意味危険な告白だよね?
何を、言ってるのかなトシアキは。
「女になって、色々エッチなこと試したけど、それはそれでよかったんだ」
「そ、そう」
「けどひとつ、興味があったけどどうしようかと思ってたことがあって」
「う、うん」
「お、女になったら、急に男のことが気になって」
「へ、へぇ」
「それでこの前、水泳の授業でお前のその、おちんちん見てキュンってなっちゃって」
「は、はぁ」
「男の娘のおちんちんって、すごくいいじゃんって気が付いて」
「あ、あぁ」
「それで、キヨヒコにずっとベビードール着せてみたいって思ってさ」
「え、えぇ」
「そのうえで……フェラ、してみたいんだよっ!」
「なんだそりゃあぁぁーーーーーーーーーーっ!!」
なんでそーなる、どうしてそーなるっ。
女の子になったから、エッチなことしてみたい? フェラしてみたい?
ちょっと何言ってるのかよくわかんないんだけど。
女の子になるとそういうものなのか? 確かに僕も女の子になった時は色々エッチなこと試してみたけどさ。
けどその、フェラって……
「そ、それ、俺も思ってた」
「う、うん。ちょっとやってみたいなーって」
ツネヨシとタダマサまでっ!!
「ダメ?」
ちょっと、身をすくめてさりげなくバスト強調しないでよっ。
さらに上目づかいで訴えないでよっ!
「そっちは正直みたいだけど?」
「ん? ……はっ!!」
しまった油断したっ。紐パンでちょっとゆったりしてるから気が付くのが遅れた。
僕のムスコは、しっかり立ち上がって上から頭をコンニチハさせてるじゃないかっ!!
「キヨヒコもたまってるだろぉ?」
「夜は長いんだしさぁ」
考えてみれば今日はお泊り会……と名前の付いたアブナイ夜会。
この感じからすると到底逃げ切ることなんてできそうにない。
おまけに……痛いところつかれたけど事実僕の下半身はここ最近たまってたりする。
美女(?)3人に囲まれて平常でい続けることなんて無理だろう。
まあその、やってくれるっていうならそれはそれで……。
「じゃあ……しょうがないからぶわっ!?」
答えを言い切る前に押し倒されてしまった。
「OKでたよねっ♪」
「ええそうですよ間違いありませんっ♪」
「男に二言はないからなっ♪」
うをおぉぉいっ! なんかみんな目が危ないけど。これひょっとして、軽く発情しているんじゃないよね?
まてよ、それなくもないかも。
考えて見れば皆サキュバスの手によって女の子になったんだ。
となると、サキュバスの特性を引き継いでいたとしてもおかしくはない。
いやでも、まさかね。
(あーわかりましたぁ? さすがオネニーさまですぅ)
んなっ! なんか頭の中に声が!?
(わたしですぅフタバですぅ。学校から出れないけどこーしてオネニーさまに直接声を届けられるんですよぉ)
なんという器用な技を。それよりもさっき……
(ええ、そーなんですよぉ。実は女の子にしたのって眷属を作る応用でしてね。ですから皆サキュバスの特性を持っているんですよぉ)
なんてこった。それじゃキヨヒコたちは半分サキュバスみたいなものか!
(ちなみにオネニーさまはインキュバスの特性が発現したみたいですねぇ)
とんでもないことしてくれたな。次の学校の時は覚えておけよ。
(お仕置きですか! そんなご褒美ですか! ムチですかロウソクですか罵倒ですか足蹴にされるのもいいですねぇ、はぁはぁ)
くっ、ドMになったあいつにとっては効果がなさそうだ。
「おぉっ、意外と大きいかも……」
「うわぁ、ちょっとなつかしいけど……」
「なんか、グロテスクにも見えちゃう……」
頭の中でそんなやり取りしていたらいつのまにかショーツの紐が解かれ、はぎとられている。
そして露出する僕のそれ。三人ともまじまじと起立したそれを観察している。
うぅ、そう見られるとやっぱり恥ずかしいんだけど。
「あぁ、すごい。熱いよこれ」
「この感じ、ちょっと懐かしいなぁ」
「ちょ、ちょっとこのプニプニ感がクセになっちゃう」
まんべんなくさわって来たぁ。
他人に触られることなんて未だかつて存在しなかった。自分で触るのと触られるのでは全然違う。
おまけに触ってるのはカワイイ女の子。いや中身男なのはわかってるけど。
それだけに、触り方が……
多分本物の女の子だったら珍しいもの見た、っと感じなんだろうけど、トシアキ達は懐かしい、って感じで触ってくるので。
これ、我慢するの苦労しそう。
ぱくっ
ちゅっ
ぺろっ
うわわっ、何も言わずにスタートしたぁ。本当に口つけちゃったよおい。
三人の顔が1点に集中する。そこは当然、僕の先端。
3方向から攻めてくる。一つのアイスキャンディーを舐め合ってる子供みたい。
本人たちは気が付いてるのか意識してるのか、その周囲にやわらかいものが触れてくるし。
「うん、妙な味だねぇ」
「この匂いも、結構」
「けど、ちょっと濡れてきた」
「うん、俺も」
「舐めてると、キュンってするよな」
僕のことなどそっちのけでガールズ談義が始まってる。
舐めながら、口にしながら、徐々に盛り上がっていく様子がうかがえる。
そして、今口にしていたものがかつて自分たちにも存在していたその場所を、今や女の子の入り口が存在する場所を刺激する。
「なんか、頭ではまだ勃起しているような気がするんだよなぁ」
「うん、もどかしい感じだよなぁ」
ショーツに手を突っ込んでもぞもぞとする様子。かつて存在していたそれが懐かしいのだろうか。
確かに一時的に女の子になっていた時、喪失感のようなものは感じていた。
だからなんとなくわかるけど、けど今そんなこと気にしている状況じゃない。
多分夢中になってて意識してないけど、僕にはとてつもない攻撃が続けられているのだ。
ダメ、これは、もう……
「げ、限界……んんっ!!」
「え? わっ!?」
暴れる僕のムスコ。そして勢いよく白い液体を発射する。
ちょっと溜めていたせいか、大量に噴き出してきた。そしてそれは3人の顔に……
「はぁ、はぁ……あぁ………」
落ち着いたタイミングで見てみれば、やっぱりという具合でぶっかけしていた。
白い液体が付いた顔で、僕見つめる。は、恥ずかしい……。
「ん、これが精液の味……」
「匂い、すごいねぇ」
「けどなんか、ちょっと甘いような」
口の中にも入ったのか、さらには顔についたそれを指でとって舐めてみたり。
ちょっとその、汚いからそんなこと……
「やべぇ、ちょっと熱くなるぅ」
「こう、クセになる感じ?」
「濡れちゃうよぉ」
うわぁ、変なスイッチONになっちゃったぁ。
なんか、目つきが危ないんですけど。今のうちに抑えておかないと、まずそう。
「もうちょっと、いいよね?」
なにがいいかって? 言わなくてもわかるよ。
そっちはスイッチ入っちゃったみたいだけど僕はそうはいかない。何故なら……
「男には賢者モードってあるよね?」
といったところで「あー」と納得してくれた。
よかった。さすがにこれ続けては無茶がある。この空っぽになった僕にとってはこのまま継続不可能。
正直なところ、御免こうむりたい。
あとは3人が落ち着いてくれればOKなわけで。
(あーそれなら大丈夫ですよぉ。ていっ)
「ふおっ!?」
なんだ? 急に僕の中にエネルギーがチャージされていくような感覚が。
そして、下半身のそれもまた、パワーがみなぎってくるような。
(先ほどインキュバスの特性が、って言いましたよねぇ。ですので私からちょっとエネルギーをお分けしましたぁ)
なんだと!?
(オネニーさま潜在的なものを持ってらっしゃいますねぇ。これで一晩イケイケですよぉ)
余計なことしやがってぇ!!
「き、キヨヒコ……」
「す、すごい元気に……」
「ま、またしゃぶりたい……」
一発抜いてしぼんでいたが、フタバのお節介でギンギンになった下半身。
当然のようにスイッチオンになったトシアキ達の視線が集中する。
「い、いいよね?」
トシアキ達の期待に満ちた視線。この状況に僕は……
諦めることにしました。
「………はっ」
どうやらいつの間にか寝落ちしてしまったらしい。
気が付いたら僕らはトシアキの部屋で仲良く床に寝ていた。
トシアキの部屋にはベッドがあったが、4人が寝るにはどう考えても小さい。
というわけで布団を持ち込んでいたのだが、そんなもの準備する間もなく乱交パーティが始まった。
だから今現在はベッドの上に僕とトシアキ、床にツネヨシとタダマサが寝転がっている。
おかげで、すごい匂いがする。
サキュバスのフタバが余計なことしてくれたおかげで当然のようにあの後、フェラ終わるわけがなかった。
3人がフェラやパイズリをはじめ、そんなことでおさまるはずもなく僕のそれはギンギンで。
テンション上がったトシアキが騎乗位を開始し、やられてばかりでいてたまるかと僕はトシアキを押し倒し正常位に。
ツネヨシとタダマサにもバックやサイドやら、とにかくやりまくってしまった。
お互いにサキュバスとインキュバスの特性を受け継いでしまっているだけあって、乱戦もいいところ。
たっぷり中出ししてしまった気がする。大丈夫だろうか。
で、いつの間にか力尽きていたようだ。
おかげでこの部屋、僕たちの汗やらザーメンやらラブジュースやらなにやらの匂いで充満している。
着ているベビードルもだ。ぐちゃぐちゃのガビガビだし。
時刻はまだ夜中。あとで窓開けて換気しておかなきゃ。
それにしても……
「んぅ、キヨヒコぉ……」
やわらかい。
現在僕はトシアキにべったり抱きつかれています。
僕を抱き枕みたいにして寝ているトシアキ。自分のおっぱいの谷間に、僕を抱き寄せて。
つまり、僕の顔面はトシアキのおっぱいに埋まっており、パフパフな感じです。
うーん……やわらかい、いい匂い、きもちいいっ。
いい匂いだなぁ。女の子ってどうしてこんな甘酸っぱくていい匂いがするんだろぉ。
柔らかいねぇ。ずっと触っていてもあきないぐらいだよぉ。
トシアキのおっぱい、手に吸い付いてくるなぁ。ずっと触ってたいなぁ。
……あ、やばい。下半身が。
「んぅ、キヨヒコったら。あんだけやったのにまだ足りないのか?」
「あ」
起きてた。というか、僕が起こしちゃった?
月明かりが差し込む薄暗い部屋、トシアキの瞳が調子にのった僕を見つめている。
僕はというといたずらがばれてしまった子供のように動けずにいた。
というよりもトシアキがしっかり抱きついていたから動けないのだけど。
「カタいのがあたってるんだけどぉ? ねぇ、どーすんだぁ?」
いやらしく腰を動かしてくる。いやちょっと、ごめん待ってそれ危険。
(さすがですねぇオネニーさま。さらに魅了させてしまうなんて)
ぐっ、フタバ。この様子を見てたのか。
お前こんな夜中に起きていたのかよっ。
(サキュバスは夜が本番ですからねぇ。次は私もいっぱい中出ししてくださいよぉ)
うっさい、すべての元凶が!
と、ののしっていたが結局やっちゃったし。
後日
「あー………」
あの後何事もなかったかのようにトシアキ達は接してくるけど、僕は気まずい思いでいっぱいだ。
ついにやってしまった。男と女、いつかはその危険が、と思ってたけどあれは完全に。
トシアキの策略だったのだろうか。
悩む。その一方で、こうして学校に来てみるとなんか妙な視線を感じる。
僕に一歩距離を置いて、みんな見て来るし。
この中でただ一人男に戻ったことは知れてるからか? 異質なものとして見ているのだろうか。
それともまさか、あの晩の出来事が知れてしまったとか?
3人が話した? それともフタバがばらまいた?
何とも言えない視線を感じながらやっとこさ教室にたどり着いたが、ここでもまた妙な視線を感じる。
「おはよー、キヨヒコ」
一方で何も変わらず挨拶してくれたのはトシアキ。
相も変わらず攻めたスタイルだ。スカートはギリギリまで短くして、シャツのボタンは外して谷間くっきり。
脳裏に浮かぶ、あの乱れた姿。やばい、ドキドキしてしまう。
僕は緊張してしまうのだが、トシアキは何も変わらない。
友達だからだろうか。そんな細かいことでどうにも変わらないという表れなのだろうか。
というよりも、あれはただの遊びの一つでしかなかったのか? ちょっとゲームしてました、程度と同じとか。
それはそれで、どうかと思うけど。
「それはそーとさ、注目されてね?」
やはりトシアキもそう思ったか。
なんか妙に皆、僕のこと見てくるような。気のせいではなかったのか。
「それはきっとキヨヒコさまのインキュバスな特性に魅了されちゃったんでしょうねぇ」
と、いきなり背後から抱きつかれたがこの声は……
「ふ、フタバ! また制服かよ校長じゃないのか?」
フタバが着ていたのは僕たちと同じ、制服だった。
それもトシアキ以上にミニスカートで、さらにはシャツのボタンなどつけずに胸の下で縛っているスタイルだから露出が多い。
「えー、私あんな難しい仕事もうムリですぅ」
そうだな、見るからに馬鹿そうだからなぁ。
「それで元々の校長あっちから連れ戻してきましたぁ」
帰って来たのかあの校長。
「ちょっと搾り取りすぎてロリな感じになっちゃいましたけど」
女になっているのはこっちと同じか。しかもロリとは。
「ともかく、さっきのインキュバスとか魅了って……」
そう、聞きたいのはそっち。なんだか不穏なワードが出てきたのだが。
この前の時にも声だけ乱入して覚醒だとかなんとか。
「ええ、実はこの学校の皆さん女の子にするためにサキュバスの特性をちょっと植え付けたんですよぉ」
ざわっ、と教室の空気が変わった。
この話は全員聞いている。フタバの衝撃的発言に全員が動揺した。
そりゃそうだろう。自分が聞くからに危なっかしいものに足を突っ込んでいたことが分かったのだろから。
「でもキヨヒコさまはそれがどういうわけか、インキュバスの属性になっちゃったみたいですねぇ」
僕が男に戻ったのってそういうことか。
「でもうまく制御できてないみたいで、ダダ洩れしちゃってる感じ? だからみんなキヨヒコさまに魅了されちゃってるみたいな?」
周囲は納得したらしく「気のせいじゃなかったのか」とか「それでキヨヒコが何だか」とか「俺おかしくなったわけじゃなかったのか」と声が漏れる。
いやしかし、ある意味おかしくなっちゃったのかもしれないが。
「けど俺は別になんともないぞ? 普通だし」
異を唱えたのはトシアキだった。
確かに皆がそわそわして僕に注目している中で、トシアキは普段通りのような。
「あー、ユーはサキュバスの力を直感的に制御できてるみたいですねぇ。だからちょっとぐらいの魅了じゃ何ともないのでしょうねぇ」
トシアキが、サキュバスの力を?
ということは僕がトシアキを見てドキドキしちゃったのは、そのサキュバスの力にあてられたからとか?
そ、そうか。別に僕が変になったわけじゃなかったのか。ほっ。
いやちょっと待て。安心していいのだろうか?
「そうかいそうかい。わかったところでキヨヒコ放してもらおうか天然アホのサキュバスが」
僕にずっと抱きついているフタバが不愉快だったのだろうか、トシアキはぐいと僕を引っ張って抱き寄せた。
いやだけどちょっと谷間! 谷間に僕の顔うめないでわざと!?
「何言ってるんですかこのホルスタイン野郎が。キヨヒコ様は私のご主人様ですぅ」
そして奪われまいと後ろからさらに抱きつくフタバ。
ホルスタインなんてののしっているけど、お前だって十分な爆乳じゃないか。そしてそれをしっかり押し付けるな!
「なーにがご主人様だ。俺なんてガッツリ中出しされた仲なんだぞ!」
ちょっとトシアキ、みんなの前でそれ言わないでっ!!
「と、トシアキとキヨヒコが……」
「爆乳と男の娘の組み合わせ……」
「う、うらやましい……」
「お、俺も、中出ししてほしい……」
ほら、ざわついちゃってるし。しかもなんか方向が怪しいんだけど!!
「じゃあ今度はフタバの番ですぅ」
「わーちょっとフタバ触るなーーーっ!」
「これはお前のような変態にくれてたまるかっ!」
「ま、待ってキヨヒコ押し付けないでダメやばいってーーーーっ!」
朝から痴話げんか状態の場面をクラスメイトは生あたたかく、どこかうらやましそうに見守る。
いやそうじゃなくて、誰か助けてよぉーーーーーっっ!!