気が付いたら全く見知らぬ場所にいた。
それも奇妙なチューブ上の肉に拘束された状態で、だ。
「なんだ、ここ……」
まるで一本の洞窟のような、丸く掘り抜かれた道が先の先まで続いているように見える。
その先はただ闇が広がるばかりで奥行きがどれくらいあるか見当も付かない。
地面や天井、壁は、俺の手足を拘束しているものと同じブヨブヨとした赤黒い肉塊、それですべて構成されているように思えた。
まるで現実感がない光景。
だが、飲み込まれた手足や嗅覚を刺激する生々しい臭いが、これが現実である事を否応なく自覚させる。
「ん、ぐ、この!」
四肢に力を入れ動かそうと試みるもそれは徒労に終わってしまう。
よっぽど柔軟性があるのだろう、とても一人の力で引きちぎれる様な感じではない。
つまり、
「どうなってんだ……くそ……」
悪態をつくくらいしか出来ない、どうしょうもない状況と言う事だった。
荒げた息を整え、何かないかと改めて辺りを見回す。
しかし目ぼしいものは本当に何もなく、ただ静寂だけが耳朶を打つ。
「おい、誰か、誰かいないのか!としあき!ふたば!」
見知らぬ場所にただ一人と言う恐怖に駆られ、それを振り払うかのように反射的に声を上げる。
呼んだ名は親友であるとしあき、そしてその妹のふたば。
……そうだ。
それがトリガーになったのだろう、気を失う前の事を今更ながら思い出した。
俺は、いつもの様にとしあきとふたばの二人と学校から帰る途中だった。
としあきとふたばの兄妹は家族での付き合いもある俺の幼馴染であり、だからお互いの家に寄るのは特に珍しい事じゃない。
その日もまた、としあきの家で他愛のない話をしながら時間を潰していたのだ。
「な、きよひこ、俺の家が結構由緒正しい神社だってのは知ってんだろ?」
どういう話の流れだったか、としあきがそう切り出してくる。
としあきの言うとおり、なんでも千年は続く家系だとかなんとか。
俺の親もその遠縁に当たるので、小さい頃は耳にタコが出来るほど聞かされていた話だ。
「ああ、妖怪だの妖魔だの、そういうの退治してたって聞いたぞ」
半ば笑い話のつもりでそう切り返す。
しかしそれに対する反応は少しばかり意外性のあるものだった。
「実はな、それ封印した場所ってのがあるんだ、親父からは『お前の実力じゃまだ無理だ』なんて言われて近づくなって事になってんだけどな」
ここまでくれば俺もピンと来る。
用はその場所を三人で見てこようって事だ。
「ちょっとお兄!それにきよひこも止めなよ、行くなって言われてるでしょ?」
当然のようにふたばが反対するが、俺が乗り気になってる以上しぶしぶながら付いて来ざるを得ないのは明白。
そして即断即実行とばかりに境内の奥にある森へと足を踏み入れたんだ。
そのときに感じたのは突然足元がなくなる浮遊感と落下していく感覚、意識が薄れ視界が暗くなっていく、そして……。
「じゃあ、ここは地下か?」
反射的に上を見上げるがそこに穴はなく、ただグニグニと蠢く肉の天井があるだけ。
だが、ここに来た前の状況が分かればやるべき事も自ずと分かる。
二人も俺が落ちたところは見ているはず、なら上で何とかしようとしてくれているに違いない。
俺はありったけの声を張り上げる、希望する反応があることを信じて。
『ぐぷ』
だが、それは俺が期待していた事とはまるで正反対のものだった。
何か粘液質のモノが擦れる様な音、いや声。
ぐちゅぐちゅと何かを咀嚼するような響きの奥に間違いなく言葉が混じっている。
最初はそれがとしあきの声かと思った、この空間を構成する肉が細かく蠢動を繰り返しているためそう聞こえるのだと。
「とし……?じゃ、ない……だ、誰だ?」
しかし違う、まるで似ても似つかぬ音質。それどころか人間が発する物ではないと直感する。
『おやおや、ようやく目覚めたと思えば騒がしい事だな清姫よ』
「きよひめ……?」
なんだ、それは……と続けようとした所で言葉に詰まる。
今ようやく目の前の異変に気が付いたからだ。
頭を下に向けなければ捉えられない足元の肉床、その一部が異様に盛り上がり、なお成長している事に。
ぶちゅるぶちゅると粘液を吹き零し膨れ上がる肉の塊。
ただ不規則に増えるだけに思えたそれは、やがて一つの形に収束し始める。
敢えてその姿を例えるのなら……『蟲』だろうか。
普通の蟲と違うのは、表面は硬いキチン質ではなくぬめる肉であり、左右一対ずつある足の変わりにいくつもの管が蠢いている点。
まるで嫌悪感をそのまま形にしたような、醜い巨大な芋蟲、そんなモノが俺の目の前に現れのたりのたりとこちらへ近づいてくるのだ。
「う、あ……」
言葉が出ない、出るはずもない。
この場所も大概だったが、昔語りに出てくるかのような人の言葉を話す化け物ともなれば別格だ。
出したくもない汗が噴出し歯がカチカチと音を立てる。
でも俺はまだマシだろう、としあきとふたばから古来より存在する化け物、妖怪や妖魔について実際に存在する事を含め色々と聞いていたのだから。
『久しいのう清姫、貴様に封印されて以来、この日の事を意趣返しを行える時を一日千秋の思いで待ちわびたぞ……ぐぷぷぷぷ』
そしてもう一つの幸運はコイツが人の言葉を理解する相手だと言う事だ。
欲望のままに襲ってくるようなヤツなら、今頃俺は頭から食われていてもおかしくはない。
それでも言葉を出すには少なからぬ力を必要とした。ぐ、と噛み合わぬ奥歯に力を入れゆっくりと吐き出す。
「その、きよひめってヤツが誰かは知らないけど人違いだ、俺の名前はきよひこだ清姫なんかじゃない!」
ぐぷぷぷぷ、と蟲が口と思しき場所の触覚を蠢かした。それが俺の言葉に対する反応。
コイツ笑ってやがるのか。
『そうであろうそうであろう、我もお前など知らぬしな……だが、お前の魂の事は知っておる、それこそ我を封印した清姫と同じもの。
男に転生する事で我の目を晦まそうとしたのだろうが、小賢しい事よ。その色と匂い、見た目が変わろうと違えるはずもない』
はぁ?つまりコイツは俺の前世だったヤツに恨みがあるって事か。
そう理解すれば甚だ迷惑な話だと分かる、たとえ生まれ変わったのが本当だとしても俺自身が何かしたわけではないし、そんな昔の事まで責任を持てるはずもない。
「だとしたら残念だったな、魂が同じか分からないけど俺は前世の事なんか何も知らないし、それで恨み言を言われても困る」
嘘偽りのないストレートな心情が言葉に乗る。
家族や血縁者での恨みならまだ分からなくもないけれど、これは完全にとばっちりの類だ。
そう理で説けばひょっとしたら分かってくれるのではないか、そんな淡い期待と共に束縛から解放してくれる様に持ち掛ける。
だが、それに返って来たのは更なる嘲笑と
『ぐぷぷぷぷ、確かに今のお前にとっては過去の事など関係なかろう、だが……それは我も同じ事だと思わぬか。
今のお前の境遇など知った事ではない、我はただ目的のためにお前を喰らう……それだけだ』
「んな……む、んぶぐうううっ!?」
目に止まらぬほどの速さで俺の口に差し込まれた触手だった。
「ぐ、む……お、ご……」
口内を埋め尽くしたそれが、さらに喉の奥から食道へとその身を潜り込ませたのだろう。
強烈な吐き気と気持ち悪さに襲われ一瞬気が遠くなる、喉を広げられると言う異常な状況に脳が悲鳴を上げる。
『分かるぞお前の恐怖が、だが安心するがいい、まだ喰わぬ……まだ、な……』
途切れそうになる意識の中、コイツのそんな声を聞いて素直に安心なんかできるはずがない。
現に、今俺が着ていた制服は触手から漏れる粘液で音を立てながら溶かされていっている。
このまま喰われるのか、それとも別に何かされるのか、きっと意識せずともそんな顔をしていたのだろう。
『先が分からぬ恐怖に歪むよい顔だな、だがまだ我の求めるものではない……
後悔に歪み我に屈する、その顔でなくては溜飲は下がらぬ……!』
ごひゅっ、と、何かがこじ開けられるような音を聞いた気がする。
それは胃袋の中に触手の頭が進入した音、歓迎されぬ侵入者に内臓が痙攣し感じたくもない悪寒が全身を駆け巡った。
『ほう……』
そんな時、コイツが嘆息する気配を感じた。
霞む目を向ければそれが何を意味するか即座に理解する。
情けない事に、俺の体は死を感じて本能的に子孫を残そうとしているのだ。
『死の恐怖で魔羅が勃起しておるのか、丁度いい……そこから邪魔な陽気を吸い出させてもらおうか……』
満足な呼吸も出来ず朦朧とし始めた意識の中、新たな刺激を受け取る事によりほんの一瞬覚醒する。
口に突っ込まれているのとはまた別の触手、それがよりにもよって痛いほどに勃起している俺の男根をくわえ込んだ。
それが視覚と性感とで理解できた。できたものの、だからと言って何か打開策が思いつくわけでもなく。
出来る事と言えば、コイツの思い通りにならないようわずかな抵抗をするくらいだ。
「ん、ぐうううっ……!」
しかし、それも長く続かない。
自分でするのとはまるで違う、意図しない動きと責めにあっさりと負けを認め、俺の男根は精を吐き出してしまう。
『我慢など無駄よ、さっさとすべて吐き出すがよい。吐き出した分は我の陰気で補ってやろう……さすれば元に姿にも戻れよう、ぐぷぷぷ……』
その言葉通り、射精の快感に腰砕けになっている俺の胃袋へ向けて何かが大量に注がれる。
むせ返るような臭気、触手に埋め尽くされた食道のわずかな隙間を辿ったのだろう。
それが鼻腔に辿りつくなり強烈な嘔吐感に襲われ、反射的にえづかずにはいられない。
吐きたい、吐き出したいのにそれが叶わない。体の反応と心のギャップが辛い、苦しい。
ただただ搾り取られ、そして注がれる。
その繰り返しのみで消費された時間がどのくらいになっただろうか。
胃は限界にまで膨らみ、臭気だけではなく液体そのものが喉から溢れそうだ。
あそこはもう僅かな射精感しか感じない程に麻痺してしまっている。
これが、永遠に続くのでは……そんな錯覚すら覚え始める頃に、べちゃり、と何かが落ちる音で我に返った。
視線を落とした先、肉床の上でのたうつのは今まで男根を咥えていたそれに見える。
それが何故……外れた感覚は感じなかったのに。
今まであった支えを急に失ったかのような、ずるりとした落ち方、それに違和感を覚える。
「ぐぶぅ!?」
だが、その違和感の正体を考える間もないまま、胸の奥から喉、喉から口へと吐き気にも似た刺激が湧き上がる。
「かはっ!げほ、げほっ……えほっ、は、あ……」
それまでいくら吐き出そうとしても微動だにしなかった触手が、一気に引き抜かれたのだ。
そうと分かったのは喉の奥に残った粘液を咳と共に吐き捨てた後の事。
どうして今になって止めたのかは分からないが、分からないが、一時的に落ち着ける事に正直ほっとしていた。
『ぐぷぷぷ。気分はどうかな清姫よ……』
「……いいいわけ、ないだろ!」
大体俺は清姫なんて名前じゃない、いいかげんにしろ!
そう言うつもりだった。
言うつもりだったが、続く言葉は自分の戸惑いによって遮られ飲み込まれてしまう。
「えっ、あ、なんだ、声が、違う……?」
戸惑いの原因は声そのもの。
意識して高くしているわけでもなく、ヘリウムガスを使った悪戯のような不自然な高音でもない。
簡単に言えば女の子のような、そんな音質に変わってしまっている。
……まさか。
今までコイツが言った言葉が脳裏をよぎる。
清姫という名前、元の姿、そして股間からずるりと落ちた触手と、この女の子のような声。
不安に導かれるように恐る恐る下へと向かう視界の中、まず気が付いたのは黒い髪。
色自体は当たり前だが長さが違う、さらりと肩口か胸元へ流れるようにカーブを描いている。
そして、ふっくらとした質感をもつ胸の双丘と鮮やかに色づくその頂が目の前にあった。
どちらも自分にあるはずのない物。
「うそ、だ……」
さらにその下を確認して思わず声が漏れた。
腹の引き締まった腹筋は女性らしい柔らかなラインを持つお腹に変わり、股下にはなにも見えない。
今度は逆だ、あるはずの物がない。
さっきまでガチガチに固くなり存在感を示していた男根が、張り詰めた感覚と一緒に消えてしまっている。
いや、消えるなんて常識で考えればありえない、ただ萎えて見えてないだけに決まっている。
そんな藁にもすがる思いで不自由な体を揺らすも、期待したような答えは得られなかった。
股下に何かがぶら下がっている事も、それが揺れる事もない。
代わりに揺れたのは胸に実った二つの小さな果実。
体をよじると僅かに遅れてついてくる桜色の頂、弾むような乳房の動きが認めたくない現実を押し付けてくる。
「ひゃっ」
信じられない信じたくはない。
しかし、そんな現実逃避は許さないとでも言うかのようなタイミングで、べろん、と一本の触手が顔を這った。
『どうかな清姫、かつての美しき姿を取り戻した感想は』
ぎりっと歯を噛み締め、顔を上げ、声の主を睨み付ける。
てらてらと濡れ光る肉蟲の顔、その表面に水鏡のように写る自分の知らない自分の姿。
それを見てしまってはもう、コイツの言う事を認めざるを得なかった。
自分の体が、女の子のそれに作り変えられてしまった、と言う事を。
顔にへばりついていた触手が顎を持ち上げさせるように動く。
蟲の表情を読み取る努力なんかした事はないが、愉快でたまらない、コイツがそんな顔をしているのは直感で分かった。
悔しい、悔しいが、拘束が緩むような気配も見せない以上何をする事も出来ないのは変わらない。
「どうする、つもりだ……」
だから、吐き捨てるようにそう口にする。
正直声を出したくはなかった。
自分の声が自分の意識に、女になってしまった、と言う事実を痛いほどに突きつけるから。
『言っただろう、お前を喰らうと……この封印を作ったのは清姫つまりはお前の魂だ、それを堕としこの忌々しい封印から出る』
そのための下準備だ、とコイツは続けた。
魂を墜とす?その言葉の正確な意味はわからない、分からないが……喰らうと言う言葉に表れるように禄でもないことは確かなのだろう。
「ひっ……!?」
それを裏付けるかのように、突然、べたっ、と何かが自分の背中に落ち粘液を弾けさせた。
何だ、と落ちてきた物を見るべく視線を巡らせるも、それは無用の行動となった。
一つ二つ、そして数えるのも馬鹿らしいくらい降ってきたのだから。
「っ…!くっ……~~~ッ!!」
背中、肩、胸。
それが付着した部分から感じられる肌を這い回る感触に怖気が走る。
反射的に声が出そうになったものの、かろうじて押し殺した。
女の悲鳴のような声を出すのが嫌だった事もあるが、口の中にでも入られたら、と先の触手の事が思い出されたからだ。
『ほう、声は上げぬか……まあそれもよい、嫌悪感と屈辱に歪むその顔を見るのもまた至極よ』
それを抵抗と受け取ったのであろう言葉に内心憤りが沸き起こる。
とは言え、コイツにとってはどんな反応も愉悦の対称にしかならないのだろう、そう思えばただ何事もないように振舞うしかない。
しか、ないのだが。
「ふ、んっ……く……」
うぞうぞと自分の体の上を蠢く厚みの殆どない掌ほどの大きさの蟲。
腹の部分は内臓を思わせる色の無数の突起に覆われ、その見た目と細かい振動にいやがおうにも生理的な不快感が煽られる。
それが次々と自分の体に張り付いて来るのだから、何事もないように、など到底出来なかった。
拘束され逃げられないのは分かっている筈なのに、体は生理的な反射に素直に従ってしまう。
特に悩まされたのがむず痒さにも似た甘い刺激。
胸の先端と男根があった場所を蟲が這う都度、ぴりぴりと疼くような感覚に眉根を顰めずにはいられない。
何で、こんな……
まさか、感じているのか?
湧き上がる疑念に頭を振って否定する、そんな事はないただの生理反応だ、と。
そんな体と頭の中を駆け巡るいつ止むとも分からない嵐も、やがて静まり収まっていく。
這いずる音と刺激が波が引くごとく消えていき、それに変わるように体を締め付ける適度な圧迫感に気が付く。
痛みはない、むしろ体が引き締められるような心地よさもある。これは、何だ?
『ぐぷぷ、やはりこうでなくては……清姫よ、お前を犯すにはやはりこの衣装こそ相応しい』
衣装、というコイツの言葉でようやく自分の体の変化に気がついた。
体を覆うのは白い水着の如き服、その上に紫紺の胸当てを付け、首には巻きつくはマフラーのようなもの。
さっきまで蟲だったものがいつの間にか自分の身を包む服に擬態していたのだ。
しかし……これが清姫の衣装だとでも言うのか。
まるで漫画に出てくるくノ一のようだ、と正直な感想が頭に浮かぶ。
そして、同時にその清姫に対するコイツの異常な思い入れに気づき背筋が寒くなった。
封印の奥底で同じ魂を持つものを待ち続け、清姫と同じ性別に変え、なおかつ服装まで同じにする。
ここまでしなければ気がすまない、尋常ならざるコンプレックス。
それを抱えるコイツが魂を墜とすために何をするのか、衣装こそ相応しいとの言葉の前に何て言ったのか。
ざわり、と全身が総毛立つ。
するとまるでそれを待っていたかのように、衣装に擬態した蟲がいっせいに蠢きだした。
くそ、またか、と内心舌打ちする。
だけどついさっきまでされていた事、そして何とか耐えてきた事だ。
いくら不快感を煽られようと我慢する事はできる、そう、自分を奮い立たせる。
「あふっ!」
が、その思いはいとも容易く打ち砕かれた。
違った、先ほどまでと同じではなかったのだ。
蟲がその突起を蠢かせ刺激を与えてくるのは同様、だが、ただ無作為に這い回るだけではない。
まるで統一された意思があるかのように、強弱の付いた巧みな動きでまさぐられている。
服によってぐにぐにと形を変えられる乳房の頂と、コイツによって作られてしまった女の子の部分、その二箇所を重点的にだ。
「や、やめっ……ひ、んっ!」
自分の意思とは無関係に胸がきゅっと引き締まり、形のよい胸が上を向く。
その頂が引っ張られこねくり回され、次第に硬く立って行くなっていく。それを自覚するも止める事ができないのがもどかしい。
そして、胸からの刺激以上に心を悩ませるのが下からの疼き。
粘液質な音と共に、何本もの突起物が股間の筋を何度も何度も撫でる。
その都度、じんじんとした疼きとも、むず痒さとも取れる刺激が生まれ、それが背筋と頭を痺れさせた。
まるで弱火で脳を炙り焦がされているかのような、そんな錯覚すら覚えてしまう。
耳が熱い、体もじっとりと熱を帯びてくる。
体の中に灯された情欲の炎、それに当てられ溶け出した蝋が体の隅々まで流れ染みわたるかのようだ。
女の子の体は繊細で感じやすい、そう本などから知識としては知っていた。
知っていたけれどこんな……こんな、不気味で不快感しか感じないような相手にでも感じてしまうのか。
それとも、コイツが何かしたのか。
「んんっ!?」
突然、びくんと体が震え、腰が浮いた。
体を犯し始めた熱がお腹に回った瞬間、きゅんっと胎内の何かがわななき切なさにも似た感情が湧き上がる。
これ、は、あ……うそ、だろ……
理解したくないのに頭は勝手に知識から該当するものを検索し答えを出してしまう。
これも本や映像なんかで見聞きした事。
そう、よりにもよって自分のアソコは、女の子の性器は、触手の愛撫によって愛液で濡れ始めたのだ。
駄目だ、これは駄目だ……!眉根を顰め懸命に生理反応を抑えようとする、無駄だと分かっているはずなのにそうせずにはいられない。
『よい顔になってきたな清姫よ、我慢なぞ止めてもっと艶のある声を響かせてもよいのだぞ?』
「う、るさい……だま、れ……!」
見透かしたようなコイツの声にそう吐き捨てる。
そのとき自分では気づいていなかった、吐き捨てた言葉の中に反論するような単語が含まれていなかった事に。
乳首と割れ目をぐちゅぐちゅに弄られ女の子のように感じてしまっている、これは否定出来ない事を認めてしまっていたのから。
執拗な愛撫で充血し、ぷっくりとふくらみを増した陰唇の媚肉、そこを責める服触手の動きがさらに大きく激しく大胆になる。
舐めるだけだったのに加え、膣口の肉をつつき、押し、入り口の浅い部分をなぞるように擦り上げられてはたまらない。
湿る程度だった愛液が膣壁を流れ落ちるほどの量となり、自分の性器とそこを覆う触手服をしとど濡らせば、
もっと欲しいもっと、そう言わんばかりに更なる責めを与えられる、その繰り返し。
理性も思考も、溢れんばかりの性感に押し流されもう何も考えられない。
ただ白く白く、何もない色に染まっていく。
「ひ、あっ!あああっ、そこはぁ!」
そこへダメ押しとばかりにさらに強烈な刺激が突き抜けた。
今まで触れられなかった女の子の一番敏感な部分、女陰の肉芽を押し潰され腰が跳ねる。
出したくもない喘ぎ声が止まらない、止められない。
「んっ、ん……!なに、か、くる……溢れて……!」
電気に撃たれたかのような痛みにも似た強烈な痺れ、それが決壊を待つばかりの性感をいとも簡単に爆ぜさせた。
「ふ、んっ、あーーーっ!!」
背中が仰け反り体が硬直する、視界も意識も何もかもがホワイトアウトして何もわからない、気持ちいいという事以外何も感じない至福の時間。
これが、女の子のイくって言う事なのか……。
出せばあっという間に引いていく男の性感とは違う。
頂に押し上げられてもすぐには引かず、ゆっくりゆっくりと治まっていく波濤のようだ。
だから、そこにほんの少しの刺激を与えられただけで
「いひぃっ!」
火に油を注ぐがごとく、簡単に昂ぶりが再燃してしまう。
脳を痺れさせる甘美な疼きがクリトリスから断続的に送られては、つい今しがた感じたあの一瞬を思い起こさずにはいられない。
「く、あっ……そこ、ばっか、触ん……んんっ!」
静まりつつあった官能の波がざわめき立つ。
駄目だ、あれは強烈すぎてだめだ。
あんな感覚と二度も三度も、もっともっと味わわされでもしたら……。
ごくり、と喉が鳴る。
そしてそれに気づき愕然とした。
あの感覚を想像し一瞬期待した自分がいると言う事に。
『ほう……』
ぞくり。
耳に滑り込んでくるのは寒気を伴った感嘆の声。
ほんの些細な心のほころび、抜け目なくそれを見透かされた気恥ずかしさと怖さが寒気の原因。
『清姫は肉芽を責められ達するのが好きと見える』
コイツがこういう反応をし、更なる責めを受ける事に対する怖さではない。
「好きなわ、け……ふ、ん!あ……っ!やぁ!」
アイデンティティの喪失すら危惧するほどの麻薬じみた中毒性を体が覚え始めている事。
快楽を求め始めてしまっている事を見抜かれ、気恥ずかしさを感じるように精神が順応し始めている事。
それが分かるからこそ感じる本能的な恐怖。女の子の圧倒的な性感に男だった自分の意識が上書きされ消されてしまうのではないか、と。
「んっ!んんーーっ!」
だから、流されるわけには行かない。
二度目の絶頂の喜びに打ち震える体と、再び真っ白に塗り潰された頭でその意思だけを繋ぎ止める。
『ぐぷぷ……よき痴態を晒すのう清姫、さぞ我の手練手管を気に入ってくれたと見える、女陰から溢れる汁が止まらぬぞ』
コイツの言う事は本当だ。
今の自分の体は胸や割れ目を弄られる事に悦びを感じてしまっている。
お腹が、子宮が疼き、愛液が垂れ流れる事を止められない。
「ん、くぅん……!あ、ひんっ」
喘ぎ声が漏れないように我慢するつもりでも、口が勝手に悩ましく艶やかな旋律を奏でてしまう。
それでも、コイツにどんなに弄ばれようと、男である、男であった自分だけは失わない屈しない、と目で訴える。
『そうだそれでよい、それでこそ、だ……まだまだ楽しませて貰えそうだな』
きっと嗤ったのだろう、ひときわ大きい二本の触覚を震わせコイツが続ける。
『気が付いているかな清姫よ、己の体の変化に……』
女の体にされた以外で何か変化があるのか、
心の中で悪態をつくと、ぱちんぱちんと伸ばされた触手が胸と尻を叩いた。
「っく、こんなこと、で……」
僅かな痛み、それに倍する疼き。
あるいはこんな事も性感に変換してしまうような体に変わってしまった事、それを言っているのだろうか。
『分からぬか?ならば分かるようにしてやろう』
ざわり、と体を覆う清姫の衣服が蠢いた。
反射的に体を固くし唇を一文字に結ぶ。
来るであろう刺激に備えての事だったが、実際に訪れたのは予想とは無縁のもの。
まがいなりにも衣服の形を取っていた蟲が、まるで布を裂くように分かれ、隠されていた肌を晒していく。
粘液に濡れた肌が外気に触れた僅かな寒さが先に立ったのだ。
ぶるり、と僅かに身じろぎする。
その小さな動きが引き金となったのか、今まで触手に押さえ付けられていたモノが弾け出た。
同時に感じるずしりとした重みと肉が揺れる特徴的な感覚、知覚してしまっては閉じた目を空けずにはいられない。
「あ、あ……」
絶句した。
見下ろした自分の胸、今までの年相応で控えめな少女の乳房は既にない。
替わりに、たわわ、と言うにはあまりにも大きく育った胸がそこに張り付いている。
「ん、はっ……や、ああっ」
すると、それを思い知らせるが如く、モップ状の触手となった蟲が自由気ままにそこを揉みしだく。
マシュマロのように変形し、柔らかく弾む感覚が悦びとなって突き抜ければ、もう否定する事なんて出来ない。
胸、そしてお尻、太もも、少女然としていた体は肉欲を感じさせるそれに再び作り変えられてしまったと言う事に。
「ひっ、あ、ぐ……こん、な……ふうぅっ……あんっ」
そして、変わってしまった体に相応しい肉欲が中に灯っていると言う事に。
『ぐぷぷぷ……我が淫術の味はどうかな清姫、小細工ではあったが気に入って貰えたかな?』
「気に入るわけ、あっ……や、やめっ、ひっ、あっぁっ!」
喘ぎ声を、悦ぶ声を止めるのが難しい。
前よりも、さっきよりも、つい今しがたよりも感じてしまう。
耐えれたはずの刺激が耐えられない、押え込めたはずの女の性欲がどうしようもないほどに膨れ上がっていく。
なんでだ、確かにコイツに色々体に刷り込まれたのは確かだし慣れてしまったのはある。
それを差し引いても耐え切れない性感なんて男の時にもなかったのに。
『陰気とは女人の気よ、そなたには我のそれをたっぷり飲み込んでもらったであろう?
達すれば達するだけその体は陰気を吸い上げ淫肉へと変わっていく、心もまた肉に相応しいそれへと、な』
表情を読んだのか、あるいは心を読んだのか。
道理であろう?と、さも事も無げにコイツは言った。
もはや片隅に追いやられた思考がその意味を理解し悲鳴を上げる。
イケばイクだけより感じやすくより女として熟れた体になる、つまり……
「んはあっ!だ、だめ……もうイクの、は、だっ、やっいやぁ……!」
コイツはどこまでも追い詰めるのが好きなのか。
それを自分が理解するや否や、動きが緩慢になっていた触手が一斉に蜂起し体中を嘗め回す。
敏感になり過ぎた乳首とクリトリスを弾かれこねくり回されれば、甘美で抗い難い悦楽が広がり心を満たし犯していく。
「んっ、ひっ……!や、いやダメ……だめっなのに……なのに、ん、やあぁーーっ!」
無理だ、無理に決まっている。
こんな気持ちいいのに、逃げる事もできないのにイクなと言うのは不可能だ。
現にもう軽くなら何度もイってしまっている。
白い光が広がり目の奥でフラッシュが焚かれているかのような断続的な絶頂。
その都度、胸がお尻が、体の肉付きが良くなっていくのが感じられてしまう。
そしてより深くより高い頂へと押し上げられてしまう。
「んっ、あっ、あっ!クる、すごい……の、きちゃ、う……っ、ん!ああ!あはぁあああぁぁぁっ!!」
反らしたくもないのに背中が反れる、びくんびくんと体が大きく跳ねる。
愛液とは違う液体が勢いよく股を塗らした事も恥ずかしさより快楽が勝ってしまう。
さらに重みと感度を増した胸、乳房の大きさに比例してぷっくりと盛り上がる桜色の乳首に触手が群がれば
「やめっ、これいじょ、は……ひんっ!おかひ、く、おかひくなる……っ!んっ、んんんーーーっ!」
『いい、いいぞ清姫よ、その無様な体こそ我の精を受け入れる孕み腹に相応しい……!』
もう恥も外聞もなく乱れ、コイツが言った言葉の意味を理解する事無くただ悦楽を教授する他はなかった。
あれから何度イかされてしまったのだろう。
何もかもがぼんやりとした世界の中、さらに膨れ上がった自分の胸とそれを緩慢な動きで弄ぶ触手があった。
目に映るだけの映像を知覚する事により、ゆっくりとではあるが意識が覚醒し、ようやく現状を認識する。
激しく責め上げられていたのが嘘のように蟲や触手の動きは穏やかで、今は台風一過といった感じだ。
「ん、ふあぅっ……」
とは言え、少しでも身じろぎすれば敏感な部分がこすれ、滲み湧く愉悦が声となって漏れ出す。
そんな状況である事は変わらない。
うつわ一杯に張られている水が、水面が穏やかゆえにぎりぎりで溢れていないだけ。
ほんの些細な刺激で水は零れ、過ぎた官能に翻弄される事になる。
『……ようやく正気を取り戻したか、ぐぷぷ……よき痴態であったぞ』
だから、例え小さくても水面に波を立てられる物であればなんだっていい。
現にコイツの声だと言うのにゾクゾクとした疼きを感じてしまっている。
そんな体に仕上げられてしまった事が恨めしく、顔を上げて見る視線が自ずと険しいものになるのは無理からぬ事だった。
あどけない少女の顔とはアンバランスな、肉欲を掻き立てる肢体。
四肢を肉の管に呑み込まれ、蟲が擬態した衣服を身に纏いそれに熟れた体を弄ばれる。
陵辱に耐えるかのように、涎を垂らしながらも一文字に結ばれた口と睨み付ける様な視線。
『それでいてまだそのような顔が出来るとは見上げたものよ清姫』
コイツの言葉通り、まだ強情を張っているように、そしてまだ張り続けるように見えるんだろう。
でも正直な所、心が折れかけているという自覚はあった。
耐えても我慢しても何になる、いつ来るかも分からない助けを待ち、心と体が釣り合わない苦しみをずっと味わい続けるのか。
それならいっそ……と、何度考えただろう。
『だがそろそろ正直になるがよい、我に屈すれば気兼ねなく快楽を享受できるのだぞ?』
心を侵食するそんな誘惑の言葉に負けそうになる、屈すると言葉に出しそうになる。
でも、心の奥底がだめだと言い続ける。
たぶん意地みたいなものなんだろう。男の、ではなくきよひこという自分自身の意地だ。
負けが決まっていても最後まで抗う、自分で認める事だけはできない。
口を開いたら屈服の言葉が出てしまいそうで、ただ静かに頭を振り意思を示す。
つまらない意地だということも、こっちの答えなんて関係ないのも分かっている。
受諾も拒否もコイツにとっては満足感を刺激するためのスパイスでしかないんだから。
『つまらぬ意地を張るものよな……ならば、その強情さに免じてこれを使ってやろう』
言うが早いか、ぬるりと固い何かがお腹に触れる、固いだけではなく熱も帯びていた。
それが何か確認しようにも自分の胸が邪魔で分からない。
……いや、本当は分かっている、ただ目で見れていないだけで心と体はすでに察している。
ここまで女を辱められ昂ぶらされても、されるべきことをされていないのだから。
柔らかな胸の谷間をしたから押し広げ現れた粘液に塗れる姿、やはりと言う感想しか出ない予想通りのモノ。
もはや懐かしくすら感じられる強烈な男の臭気、肺を満たすその臭いに全身の女が歓喜に染まる。
そう、コイツに捕らわれる前の自分にはあった、男である事の象徴。
もっとも、大きさ、太さ、形の凶悪さは比較するのもおこがましい。
生殖する事よりも、いかに女を責め喘がせ悶えさせそして狂わせるか、目的はそっちと言わんばかりの凶器。
これがコイツの……
目が離せない。
これを突っ込まれよがる少女の、清姫の、自分の姿を想像し胸が高鳴ってしまう。
無論、男根を受け入れるなんて体験はした事がない、けれど女の本能がこれを求める。
こうして繋がる事が一番気持ちいいと脳裏に囁きかける。
体が熱い、子宮が疼く、性器が疼く、太ももをこすり合わせようとする自分がいる事にもう何も感じない。
いつの間にかこの感覚は完全に自分のものになってしまっていた。
「んっ、はぁ……」
膣口を覆っていた蟲がその場所を譲る刺激、そして凶悪な一物をそこへ押し当てられる感覚に熱い吐息が出た。
性交という未知の行為を前にしドキドキが止まらない、浅ましいと自嘲しながらも下の口から涎が垂れる事を制止できない。
あれだけ気持ち悪いと嫌悪し、自分の体を変えられてしまった事に憤っていたというのに。
そそり立つコイツの男根が今はただ欲しくて欲しくて、たまらず自分から性器をこすりつけてしまう。
『さあ清姫よ、我がお前を女として喰う時が来た……我の魔羅にどこまで抗えるか楽しみだな』
そんな姿にささくれ立った歯を剥き出しにし嗤う。
多分もうコイツには確信があるんだ、崖っぷちギリギリの堕ちる寸前まで歩みを進めてしまっていることを。
あとは少し背中を押させるだけで屈してしまう事を。
なら……
「すきに、しろ、よ……」
もう、焦らさず負けさせて欲しい、この男根で、ちんぽで屈服させて欲しい。
男言葉でそう吐き捨てたのはきっと最後の意地になるんだろう、これを突き刺されれば文字通り止めになる、そんな予感があったから。
ぐっ、とコイツの生殖器に力が篭るのが感じられる。自分の膣口がその大きさに広げられていくのが分かる。
今まで散々に濡れ解き解されて来たそこは、ようやく本番が来たとわななき練習で培われた柔軟さで男根を呑み込んでいく。
粘り気すらある特濃の愛液を潤滑油に、未だ男を受け入れた事がない膣を触手の亀頭が押し開ける。
少しずつゆっくりと確実に、ぴっちりと閉じた女の未開の地が開拓されていく。
女として始めて味わう感覚はとてつもなく刺激的で、気持ちよさはあまり無いにも関わらず始まったばかりの行為に酔っていた。
「いっ…た!」
そんなカリ首がちょうど胎内に収まった辺りで、気持ちよさとは全く異質の何かが背筋を駆け抜ける。
程よく弛緩していた体が萎縮する程の刺激、それが痛みだと理解するのは一瞬だったが、もう一つの事に思い当たるのは数瞬の後。
……処女、だったんだ……
初めての性交での痛み、それはつまりそう言う事。
この体勢では直接見ることは出来ないけれど、鼻をくすぐる血の臭いで実感する、純潔の証を失ったんだと。
男だった頃は結構なこだわりがあったものの、いざ自分がその対象に変えられたらすっかり失念している程度の事のはずなのに。
それなのに、なんで心に落胆と後悔の感情が渦巻くのか。
『我に女にされた感想はどうかな清姫、ぐぷぷ……言わずともよい、その顔がすべてを物語っておるわ』
初めては好きな人に、そんな本当かどうかも分からない女の子の理想像を思い描いていたからだろうか。
今の顔は、望まぬ形で処女を失った、と言う事にストレートな表情を浮かべているらしかった。
『だが気に病む必要はない、我の与える快楽に溺れれば些細な事と感じるようになる』
しかし、それ以上処女喪失の感傷に耽る時間は与えられない。
「う、あっ!」
破瓜の血すら潤滑剤に変えて、さらに奥へと触手を打ち込まれる。
自分のあそこがどんどんコイツの形に変えられていく。
「ひっ、ひい……こんな、深い……っ!」
胎内に進入した長さを測れたのなら、きっと大したことはない数値なのだろう。
でも、それを受け入れる身となった今だからこそ体験できる。
このまま脳天まで突き抜けてしまうのではないか、そう誤認してしまいそうになる程の衝撃を。
「あ、ああっ、でもこれ……!」
ただ、それだけではない。
押し広げられたところを中心にぼんやりと火が灯ったように熱くなる。
体の芯が燃え上がったかのような感覚、ぽっかり空いていた場所をずぶずぶと埋められていく充足感にも似た感覚。
それらが胸に満ち、どうしようもない程に締め付けられキュンキュンと鳴ってしまう。
「んうっ!ないぞ、持ち上げられ……んううっ!!」
そして、ズン、とひときわ大きい突き上げが体に響いたとき理解した。
たった今、膣の奥の奥までコイツの触手で蹂躙されてしまった、という事を。
「あぅ、はぁ……はいって、る、はいっちゃっ、た……」
自分の外見とは異なり、まだ青く熟れきっていない女性器は締め付けるようにきつく侵入者を包み込む。
けれどそれが逆に、自分の中に異性の、男のモノある、と言う事を強く強く自覚させた。
漫画やビデオで見た女の子のように、股に男を咥え込んでしまっている……
「ふ、あ……」
そんな行為をされる側になってしまった事に酔っているのか、男を受け入れた感覚に酔っているのか。
あるいはその両方なのか。
脳裏に浮かぶ映像の仕草と、今の自分の仕草がシンクロする。
熱い息と吐き瞳を伏せる、女である事、雌である事の本分を果たしているという本能的な幸せに身震いした。
快楽と言う意味ではまだそれほどではない、クリトリスを弄られていた方がずっと上だ。
でも、この気持ちはきっと、女として性交しなければ感じられないと思う。
男として女の子と繋がった事はないけれど、多分、それでは知ることが出来ない感覚。
ずるい……
自然に嫉妬にも似た感情が湧き上がる。
想像でしかなかった物を体感しているからこそ、そして、男であったからこそ比較できる女の性の深さ。
女の子はみんなこれを感じる事ができるなんて、男では感じる事ができないなんてそんなの不公平じゃないか。
しかし、その感情を消すのは容易かった。
だって、嫉妬する必要なんてないじゃないか、今の自分はそれを思う存分堪能できる体になっているんだから。
スイッチが切り替わるのを自覚する。
今までは強制的に与えられるだけの女の快楽に、ただ感じ、よがり、翻弄されるだけだった。
それを自分から知りたいと、もっと味わって見たいと。
女の子の性の最果てを見たい感じたいと。
なら、どうすればいい?これからどうされたい?
胎内に撃ち込まれた触手は奥までその身を捻じ込んだだけで動く気配がない。
初めて蹂躙した膣の感触を楽しんでいるのか、それとも、もしかして待っているのか。
……待っている、何を?
「あ、あっ……」
決まっている。
男だった時に得た都合のよい女の性知識と妄想で、女の子にこうして欲しいこうされたい、と言う男の理想。
女から、自分からおねだりするのを待っているんだ。
動いてと言えばコイツは期待通りにぐちゅぐちゅと触手を出し入れしてくれるだろう。
そうすればきっとまた新しい感覚が味わえる。
甘い声を出しながらちんぽをピストンされる女の子の感覚がすぐそこに待っている。
「これで、おわりか、よ……」
でも、それでも、それをそのまま言葉にする事はまだ出来なかった。
出たのは、自分がされたいのではなく相手がしたいから、との方向性に持って行きたいがための挑発の言葉。
屈服させたいコイツがそれを許すとは思えない。
だが、本当に意外な事に望みは叶えられてしまう。
「ん、んんっ!ひ、なかっひきずだされ……っ!」
微動だにしなかった触手が無造作に引っぱられたのだ。
性器ごと引っ張り出されるんじゃないかと思えるくらいの力と衝撃、
でも、膣が、膣の襞一枚一枚が、ちんぽを逃したくないと纏わり付いて締め付け抵抗している。
力任せにその抵抗を排除されれば、触手のイボイボが襞を引っかきびりびりとした刺激を生み出してくる。
「あひいっ!」
かと思えば、さっきと同じ強烈な突き上げに膣肉を掻き分けられ一番奥をノックされる。
たったこれだけの繰り返しなのに、なんでこうも喘ぎ声が止まらないのか。
ずっちゅずっちゅと愛液と先走り汁の水音が淫靡なBGMとなって耳を犯す。
何度も何度も繰り返される生殖のための行いに、気が付けば自分のアソコはリズムよく締め付けを繰り返すようになっていた。
受け入れるときは奥に導くように、引っ張られるときは名残惜しいとばかりに締め付けるように。
「い、いいっ……これ、いい……!」
膣壁が触手で擦れるのが気持ちいい、襞をイボイボで引っかかれるのが気持ちいい。
初めて挿れられた時に感じられなかった性的な快楽、それがここに来てようやく高まり始めたと理解する。
一度それが分かってしまえば、後はただされるがままに昂ぶり堪能するだけだ。
乳首とクリトリスへの愛撫で感じたあの至高の感覚、女の子の絶頂がすぐそこまで来ている。
初めての中イキへの期待にどうしようもなく胸が締め付けられる、どれだけ満たされるのか、どれだけ気持ちよくなってしまうのか。
「あああああっ!」
愛液を掻き出しながら、亀頭だけを中に残したところまで引っ張り出される触手ちんぽ。
これをもう一回挿れられたなら、きっとそれでイける。溜まりに溜まった性感を爆発させてくれる。
期待を胸にその瞬間を待ちわびる。
しかし、それはいつまでたっても訪れない。
ここに来てまた、コイツの触手は動きを止めてしまったのだ。
落ち着きなく腰が動く、下の口からだらだらと涎が溢れる。
まるで極上のご馳走の前でお預けを喰らった犬のようだ。
何とかしてイきたいと、膣を締め付け自由になる範囲で大きく腰をグラインドさせる。
でも足りない届かない。
それどころか逆に淫らな願望をより大きく増幅させていく事にしかならない。
イきたいイきたいイきたい!イきたい!!お願いイかせてぇ!!
もうそれしか考えられない、頭の中はただ快楽を貪りたいという一色に染まってしまっている。
「う、うごいて……」
心の堤防にヒビが入る。そこから水の変わり漏れ出したのはそんな懇願の言葉。
でもコイツは動かない。
どうすれば動いてくれるのだろうか、お願いが足りないのだろうか、お願いの仕方が悪いのだろうか。
そう考えたとき、自分の思考はもう完全に女の性欲に組み伏せられ支配されてしまったと自覚する。
堤防の綻びが深く大きくなれば、言葉もまたそれに比例した。
「挿れて……おねが、い……んん!」
お願い、と口にすれば触手が僅かに動き止まる。
採点している。
コイツは自分が満足する言葉を、清姫の、私の口から言わせたいんだ、と直感する。
言えばいい、ただ言葉にするだけで最高の悦楽を得られるならこんな簡単な事はない。
どんな言葉がいいかなんて考えるまでもなく分かっている、男を興奮させ支配欲を満たさせる言葉。
男だったときに幾度となく妄想したそれをそのまま口に出せばいい。
「あ……あっ、おねがい……します……」
またも触手が僅かに動き、切ない声が漏れる。
それが決定的な一撃、心の堤防が決壊しどうしようもない程の欲望の濁流が解き放たれる。
「ああ、お願い!お願いします!イかせて、イかせてください!触手で、ずぼずぼって、私のおまんこ掻き回してくださいっ!!」
言った、言ってしまった。
漫画やゲームの女の子のみたいに、私の口から淫乱な言葉で犯して欲しいとお願いをしてしまった。
「きゃふぅっ!あっ、ああっ!」
でも、それを悔やんだりする気持ちは思い浮かぶ前に心ごと押し流されてしまう。
来た来た、待ち望んだ続きが来た!
その悦びに比べたら屈服の言葉の一つや二つなんだというんだ。
こんな素晴らしい快楽が得られるのなら、意地なんて吹けば飛ぶようなくだらない事だった、と。
「ひんっ、いいっ!気持ちいい!おまんこいいっ!」
あ、そっか、私屈服しちゃったのか……。
男の欲望のままにアソコを、おまんこを滅茶苦茶に突かれまくりよがり狂いながら思う。
そして何時からだろう「わたし」なんて自分を考え始めたのは。
違和感なんてない、むしろそれが自然なように思えている。
だって、こんな女の子らしい可愛い声を出す子が、俺とか自分とか言う方が違和感を感じるじゃないか。
「ん!あっ!クるっ!しゅごいの、クる来ちゃう!いっ、イクぅぅぅぅぅっ!!!」
だって、女の子なら仕方がないじゃないか。
こんな気持ち良いことされてるんだから、たくさん感じてたくさん喘いで、犯されている相手を喜ばせても。
理想のエッチな女の子を妄想していた男だったからこそ、それを演じそれになりきる事に拒否感なんてない。
男であったが故に男であることを殺される、と言う事を実感ながら私は中イキの感覚を思いっきり堪能していた。
快楽に蕩け、女である事への嬉し涙を流し、舌を突き出した口から涎を溢れさせる雌の顔。
全身を朱に染め、絶頂の余韻に幾度となく痙攣を繰り返し大きな胸を揺らす雌の体。
コイツの表皮に写りこむそんな少女こそ今の私。
「あは……♥」
そんな顔に似合わぬ淫乱な笑みも
「もっと、もっと欲しいです……あるじさまの触手ちんぽ、私のおまんこに欲しいです……♥」
恥じらいながらもエッチな単語を口にし主人にセックスをおねだりすのも
『ぐぷ、ぐぷぷぷぁぷぁぷぁ!堕ちた、我を使役し封印した清姫が雌に堕ちおった!ああよき気分だ……
いいぞ清姫、そなたが望むのならいくらでも褒美を授け愛でてやるぞ』
男に屈服する喜びに身を震わせるのも紛れもなく今の私。
目から耳から入ってくるそんな情報が、決壊し押し長された私の心に新しい私を作り上げる。
「ああっ、嬉しい……胸も、クリトリスも一緒にいじめてくれるんですね……」
主様が望むような淫乱で淫靡でそれでいて美しい少女清姫。
きよひこという存在は記憶の中には残っているがそれだけの存在、今の私は主様に体を使ってご奉仕するだけの女だと。
濡れそぼった女性器に再度極太触手が突き入れられる。
「ああん!そんないきなり、んあっ、奥までぇ……」
一突きで私の女を埋め尽くされた喜びを、やわらかく締め付ける事とお尻を振る事で主様に伝える。
それで気を良くしたのか主様の触手が私の敏感な3つの豆を絞り上げた。
「ひん!あっ痺れる、乳首とクリトリス痺れて……!私のおまんこ、主様のおちんぽ締め上げちゃってるぅっ!」
ああ、ああ凄い。
私の言葉が私の脳をどんどん犯していく。
自分の淫乱な言葉でどうしょうもないくらい興奮してしまう。
「すごい、すごいぃ!なかっ、めちゃめちゃされて……!私のなか、くぅん、主様のおちんぽに壊されるぅ……」
きっと主様も興奮されてるんだろう。
突き上げる触手がさっきより太くて固くてそれに熱い。
私の体で感じてくれている、それが何よりも嬉しくてどんどん深みにはまっていく私が分かる。
「ひいっ!ひぃん!あるじさまっ、それ、それだめぇ!おまんこ、ねじきれちゃうぅ!」
上下に律動するだけだった肉棒に、更に回転する動きが加わった触手ちんぽならではの責めにどうしようもなく狂わされる。
手足の指の股、耳、首筋にわき腹に、体中を同時に愛撫されるのもまた人外だからこそ出来る犯し方。
思わず指の股を這う触手をぎゅっと握り締めた。愛おしい愛おしい、私を犯すこれがとても愛おしくてたまらない!
恋人つなぎのような密着感を全身で味わいながら、私はあっという間に上り詰めていく。
「ご、ごめんなさいあるじさま、わたし、わたしもうっ……!」
イく、イってしまう。
もう我慢できない、そう臆面もなく言葉にして絶頂に身を任せようとしたとき
「ひああっ!」
また新しいところを刺激されて頂へ至る道から引き摺り下ろされてしまう。
そこはお腹の奥、女の子の一番大事な、子供を授かる場所の入り口。
触手の先っぽがその身を捻じ込ませようとぐりぐり擦り付けているんだ。
『達するか清姫よ、ならば我に屈した褒美をやろう……我の子種を受け取るが良い!』
中出し、中出しされる、中出しされちゃう。
主様の子種を私の子宮にたくさん注がれてしまう。
また、新しい女の子の性を体験できる、中出しの感覚を堪能することが出来る。
「はっ、はい……!くだひゃい、あるじさまのはらみだね、わたしの中にくださいぃ!」
私の胎内に収まった主様のちんぽがひときわ大きく膨れ、私はそれに負けじとおまんこを締め上げる。
子種をたくさん搾り取れるようにと、そして、そして……
「あっ!はあああああっっっっっ!!」
主様が射精すると同時に、私は絶頂の頂からその身を投げ出される。
その時、轟音と共に空間ごと揺れる様な振動を感じた気がしたけれど、それが何か確かめる事もなく私は意識を手放した。
それも奇妙なチューブ上の肉に拘束された状態で、だ。
「なんだ、ここ……」
まるで一本の洞窟のような、丸く掘り抜かれた道が先の先まで続いているように見える。
その先はただ闇が広がるばかりで奥行きがどれくらいあるか見当も付かない。
地面や天井、壁は、俺の手足を拘束しているものと同じブヨブヨとした赤黒い肉塊、それですべて構成されているように思えた。
まるで現実感がない光景。
だが、飲み込まれた手足や嗅覚を刺激する生々しい臭いが、これが現実である事を否応なく自覚させる。
「ん、ぐ、この!」
四肢に力を入れ動かそうと試みるもそれは徒労に終わってしまう。
よっぽど柔軟性があるのだろう、とても一人の力で引きちぎれる様な感じではない。
つまり、
「どうなってんだ……くそ……」
悪態をつくくらいしか出来ない、どうしょうもない状況と言う事だった。
荒げた息を整え、何かないかと改めて辺りを見回す。
しかし目ぼしいものは本当に何もなく、ただ静寂だけが耳朶を打つ。
「おい、誰か、誰かいないのか!としあき!ふたば!」
見知らぬ場所にただ一人と言う恐怖に駆られ、それを振り払うかのように反射的に声を上げる。
呼んだ名は親友であるとしあき、そしてその妹のふたば。
……そうだ。
それがトリガーになったのだろう、気を失う前の事を今更ながら思い出した。
俺は、いつもの様にとしあきとふたばの二人と学校から帰る途中だった。
としあきとふたばの兄妹は家族での付き合いもある俺の幼馴染であり、だからお互いの家に寄るのは特に珍しい事じゃない。
その日もまた、としあきの家で他愛のない話をしながら時間を潰していたのだ。
「な、きよひこ、俺の家が結構由緒正しい神社だってのは知ってんだろ?」
どういう話の流れだったか、としあきがそう切り出してくる。
としあきの言うとおり、なんでも千年は続く家系だとかなんとか。
俺の親もその遠縁に当たるので、小さい頃は耳にタコが出来るほど聞かされていた話だ。
「ああ、妖怪だの妖魔だの、そういうの退治してたって聞いたぞ」
半ば笑い話のつもりでそう切り返す。
しかしそれに対する反応は少しばかり意外性のあるものだった。
「実はな、それ封印した場所ってのがあるんだ、親父からは『お前の実力じゃまだ無理だ』なんて言われて近づくなって事になってんだけどな」
ここまでくれば俺もピンと来る。
用はその場所を三人で見てこようって事だ。
「ちょっとお兄!それにきよひこも止めなよ、行くなって言われてるでしょ?」
当然のようにふたばが反対するが、俺が乗り気になってる以上しぶしぶながら付いて来ざるを得ないのは明白。
そして即断即実行とばかりに境内の奥にある森へと足を踏み入れたんだ。
そのときに感じたのは突然足元がなくなる浮遊感と落下していく感覚、意識が薄れ視界が暗くなっていく、そして……。
「じゃあ、ここは地下か?」
反射的に上を見上げるがそこに穴はなく、ただグニグニと蠢く肉の天井があるだけ。
だが、ここに来た前の状況が分かればやるべき事も自ずと分かる。
二人も俺が落ちたところは見ているはず、なら上で何とかしようとしてくれているに違いない。
俺はありったけの声を張り上げる、希望する反応があることを信じて。
『ぐぷ』
だが、それは俺が期待していた事とはまるで正反対のものだった。
何か粘液質のモノが擦れる様な音、いや声。
ぐちゅぐちゅと何かを咀嚼するような響きの奥に間違いなく言葉が混じっている。
最初はそれがとしあきの声かと思った、この空間を構成する肉が細かく蠢動を繰り返しているためそう聞こえるのだと。
「とし……?じゃ、ない……だ、誰だ?」
しかし違う、まるで似ても似つかぬ音質。それどころか人間が発する物ではないと直感する。
『おやおや、ようやく目覚めたと思えば騒がしい事だな清姫よ』
「きよひめ……?」
なんだ、それは……と続けようとした所で言葉に詰まる。
今ようやく目の前の異変に気が付いたからだ。
頭を下に向けなければ捉えられない足元の肉床、その一部が異様に盛り上がり、なお成長している事に。
ぶちゅるぶちゅると粘液を吹き零し膨れ上がる肉の塊。
ただ不規則に増えるだけに思えたそれは、やがて一つの形に収束し始める。
敢えてその姿を例えるのなら……『蟲』だろうか。
普通の蟲と違うのは、表面は硬いキチン質ではなくぬめる肉であり、左右一対ずつある足の変わりにいくつもの管が蠢いている点。
まるで嫌悪感をそのまま形にしたような、醜い巨大な芋蟲、そんなモノが俺の目の前に現れのたりのたりとこちらへ近づいてくるのだ。
「う、あ……」
言葉が出ない、出るはずもない。
この場所も大概だったが、昔語りに出てくるかのような人の言葉を話す化け物ともなれば別格だ。
出したくもない汗が噴出し歯がカチカチと音を立てる。
でも俺はまだマシだろう、としあきとふたばから古来より存在する化け物、妖怪や妖魔について実際に存在する事を含め色々と聞いていたのだから。
『久しいのう清姫、貴様に封印されて以来、この日の事を意趣返しを行える時を一日千秋の思いで待ちわびたぞ……ぐぷぷぷぷ』
そしてもう一つの幸運はコイツが人の言葉を理解する相手だと言う事だ。
欲望のままに襲ってくるようなヤツなら、今頃俺は頭から食われていてもおかしくはない。
それでも言葉を出すには少なからぬ力を必要とした。ぐ、と噛み合わぬ奥歯に力を入れゆっくりと吐き出す。
「その、きよひめってヤツが誰かは知らないけど人違いだ、俺の名前はきよひこだ清姫なんかじゃない!」
ぐぷぷぷぷ、と蟲が口と思しき場所の触覚を蠢かした。それが俺の言葉に対する反応。
コイツ笑ってやがるのか。
『そうであろうそうであろう、我もお前など知らぬしな……だが、お前の魂の事は知っておる、それこそ我を封印した清姫と同じもの。
男に転生する事で我の目を晦まそうとしたのだろうが、小賢しい事よ。その色と匂い、見た目が変わろうと違えるはずもない』
はぁ?つまりコイツは俺の前世だったヤツに恨みがあるって事か。
そう理解すれば甚だ迷惑な話だと分かる、たとえ生まれ変わったのが本当だとしても俺自身が何かしたわけではないし、そんな昔の事まで責任を持てるはずもない。
「だとしたら残念だったな、魂が同じか分からないけど俺は前世の事なんか何も知らないし、それで恨み言を言われても困る」
嘘偽りのないストレートな心情が言葉に乗る。
家族や血縁者での恨みならまだ分からなくもないけれど、これは完全にとばっちりの類だ。
そう理で説けばひょっとしたら分かってくれるのではないか、そんな淡い期待と共に束縛から解放してくれる様に持ち掛ける。
だが、それに返って来たのは更なる嘲笑と
『ぐぷぷぷぷ、確かに今のお前にとっては過去の事など関係なかろう、だが……それは我も同じ事だと思わぬか。
今のお前の境遇など知った事ではない、我はただ目的のためにお前を喰らう……それだけだ』
「んな……む、んぶぐうううっ!?」
目に止まらぬほどの速さで俺の口に差し込まれた触手だった。
「ぐ、む……お、ご……」
口内を埋め尽くしたそれが、さらに喉の奥から食道へとその身を潜り込ませたのだろう。
強烈な吐き気と気持ち悪さに襲われ一瞬気が遠くなる、喉を広げられると言う異常な状況に脳が悲鳴を上げる。
『分かるぞお前の恐怖が、だが安心するがいい、まだ喰わぬ……まだ、な……』
途切れそうになる意識の中、コイツのそんな声を聞いて素直に安心なんかできるはずがない。
現に、今俺が着ていた制服は触手から漏れる粘液で音を立てながら溶かされていっている。
このまま喰われるのか、それとも別に何かされるのか、きっと意識せずともそんな顔をしていたのだろう。
『先が分からぬ恐怖に歪むよい顔だな、だがまだ我の求めるものではない……
後悔に歪み我に屈する、その顔でなくては溜飲は下がらぬ……!』
ごひゅっ、と、何かがこじ開けられるような音を聞いた気がする。
それは胃袋の中に触手の頭が進入した音、歓迎されぬ侵入者に内臓が痙攣し感じたくもない悪寒が全身を駆け巡った。
『ほう……』
そんな時、コイツが嘆息する気配を感じた。
霞む目を向ければそれが何を意味するか即座に理解する。
情けない事に、俺の体は死を感じて本能的に子孫を残そうとしているのだ。
『死の恐怖で魔羅が勃起しておるのか、丁度いい……そこから邪魔な陽気を吸い出させてもらおうか……』
満足な呼吸も出来ず朦朧とし始めた意識の中、新たな刺激を受け取る事によりほんの一瞬覚醒する。
口に突っ込まれているのとはまた別の触手、それがよりにもよって痛いほどに勃起している俺の男根をくわえ込んだ。
それが視覚と性感とで理解できた。できたものの、だからと言って何か打開策が思いつくわけでもなく。
出来る事と言えば、コイツの思い通りにならないようわずかな抵抗をするくらいだ。
「ん、ぐうううっ……!」
しかし、それも長く続かない。
自分でするのとはまるで違う、意図しない動きと責めにあっさりと負けを認め、俺の男根は精を吐き出してしまう。
『我慢など無駄よ、さっさとすべて吐き出すがよい。吐き出した分は我の陰気で補ってやろう……さすれば元に姿にも戻れよう、ぐぷぷぷ……』
その言葉通り、射精の快感に腰砕けになっている俺の胃袋へ向けて何かが大量に注がれる。
むせ返るような臭気、触手に埋め尽くされた食道のわずかな隙間を辿ったのだろう。
それが鼻腔に辿りつくなり強烈な嘔吐感に襲われ、反射的にえづかずにはいられない。
吐きたい、吐き出したいのにそれが叶わない。体の反応と心のギャップが辛い、苦しい。
ただただ搾り取られ、そして注がれる。
その繰り返しのみで消費された時間がどのくらいになっただろうか。
胃は限界にまで膨らみ、臭気だけではなく液体そのものが喉から溢れそうだ。
あそこはもう僅かな射精感しか感じない程に麻痺してしまっている。
これが、永遠に続くのでは……そんな錯覚すら覚え始める頃に、べちゃり、と何かが落ちる音で我に返った。
視線を落とした先、肉床の上でのたうつのは今まで男根を咥えていたそれに見える。
それが何故……外れた感覚は感じなかったのに。
今まであった支えを急に失ったかのような、ずるりとした落ち方、それに違和感を覚える。
「ぐぶぅ!?」
だが、その違和感の正体を考える間もないまま、胸の奥から喉、喉から口へと吐き気にも似た刺激が湧き上がる。
「かはっ!げほ、げほっ……えほっ、は、あ……」
それまでいくら吐き出そうとしても微動だにしなかった触手が、一気に引き抜かれたのだ。
そうと分かったのは喉の奥に残った粘液を咳と共に吐き捨てた後の事。
どうして今になって止めたのかは分からないが、分からないが、一時的に落ち着ける事に正直ほっとしていた。
『ぐぷぷぷ。気分はどうかな清姫よ……』
「……いいいわけ、ないだろ!」
大体俺は清姫なんて名前じゃない、いいかげんにしろ!
そう言うつもりだった。
言うつもりだったが、続く言葉は自分の戸惑いによって遮られ飲み込まれてしまう。
「えっ、あ、なんだ、声が、違う……?」
戸惑いの原因は声そのもの。
意識して高くしているわけでもなく、ヘリウムガスを使った悪戯のような不自然な高音でもない。
簡単に言えば女の子のような、そんな音質に変わってしまっている。
……まさか。
今までコイツが言った言葉が脳裏をよぎる。
清姫という名前、元の姿、そして股間からずるりと落ちた触手と、この女の子のような声。
不安に導かれるように恐る恐る下へと向かう視界の中、まず気が付いたのは黒い髪。
色自体は当たり前だが長さが違う、さらりと肩口か胸元へ流れるようにカーブを描いている。
そして、ふっくらとした質感をもつ胸の双丘と鮮やかに色づくその頂が目の前にあった。
どちらも自分にあるはずのない物。
「うそ、だ……」
さらにその下を確認して思わず声が漏れた。
腹の引き締まった腹筋は女性らしい柔らかなラインを持つお腹に変わり、股下にはなにも見えない。
今度は逆だ、あるはずの物がない。
さっきまでガチガチに固くなり存在感を示していた男根が、張り詰めた感覚と一緒に消えてしまっている。
いや、消えるなんて常識で考えればありえない、ただ萎えて見えてないだけに決まっている。
そんな藁にもすがる思いで不自由な体を揺らすも、期待したような答えは得られなかった。
股下に何かがぶら下がっている事も、それが揺れる事もない。
代わりに揺れたのは胸に実った二つの小さな果実。
体をよじると僅かに遅れてついてくる桜色の頂、弾むような乳房の動きが認めたくない現実を押し付けてくる。
「ひゃっ」
信じられない信じたくはない。
しかし、そんな現実逃避は許さないとでも言うかのようなタイミングで、べろん、と一本の触手が顔を這った。
『どうかな清姫、かつての美しき姿を取り戻した感想は』
ぎりっと歯を噛み締め、顔を上げ、声の主を睨み付ける。
てらてらと濡れ光る肉蟲の顔、その表面に水鏡のように写る自分の知らない自分の姿。
それを見てしまってはもう、コイツの言う事を認めざるを得なかった。
自分の体が、女の子のそれに作り変えられてしまった、と言う事を。
顔にへばりついていた触手が顎を持ち上げさせるように動く。
蟲の表情を読み取る努力なんかした事はないが、愉快でたまらない、コイツがそんな顔をしているのは直感で分かった。
悔しい、悔しいが、拘束が緩むような気配も見せない以上何をする事も出来ないのは変わらない。
「どうする、つもりだ……」
だから、吐き捨てるようにそう口にする。
正直声を出したくはなかった。
自分の声が自分の意識に、女になってしまった、と言う事実を痛いほどに突きつけるから。
『言っただろう、お前を喰らうと……この封印を作ったのは清姫つまりはお前の魂だ、それを堕としこの忌々しい封印から出る』
そのための下準備だ、とコイツは続けた。
魂を墜とす?その言葉の正確な意味はわからない、分からないが……喰らうと言う言葉に表れるように禄でもないことは確かなのだろう。
「ひっ……!?」
それを裏付けるかのように、突然、べたっ、と何かが自分の背中に落ち粘液を弾けさせた。
何だ、と落ちてきた物を見るべく視線を巡らせるも、それは無用の行動となった。
一つ二つ、そして数えるのも馬鹿らしいくらい降ってきたのだから。
「っ…!くっ……~~~ッ!!」
背中、肩、胸。
それが付着した部分から感じられる肌を這い回る感触に怖気が走る。
反射的に声が出そうになったものの、かろうじて押し殺した。
女の悲鳴のような声を出すのが嫌だった事もあるが、口の中にでも入られたら、と先の触手の事が思い出されたからだ。
『ほう、声は上げぬか……まあそれもよい、嫌悪感と屈辱に歪むその顔を見るのもまた至極よ』
それを抵抗と受け取ったのであろう言葉に内心憤りが沸き起こる。
とは言え、コイツにとってはどんな反応も愉悦の対称にしかならないのだろう、そう思えばただ何事もないように振舞うしかない。
しか、ないのだが。
「ふ、んっ……く……」
うぞうぞと自分の体の上を蠢く厚みの殆どない掌ほどの大きさの蟲。
腹の部分は内臓を思わせる色の無数の突起に覆われ、その見た目と細かい振動にいやがおうにも生理的な不快感が煽られる。
それが次々と自分の体に張り付いて来るのだから、何事もないように、など到底出来なかった。
拘束され逃げられないのは分かっている筈なのに、体は生理的な反射に素直に従ってしまう。
特に悩まされたのがむず痒さにも似た甘い刺激。
胸の先端と男根があった場所を蟲が這う都度、ぴりぴりと疼くような感覚に眉根を顰めずにはいられない。
何で、こんな……
まさか、感じているのか?
湧き上がる疑念に頭を振って否定する、そんな事はないただの生理反応だ、と。
そんな体と頭の中を駆け巡るいつ止むとも分からない嵐も、やがて静まり収まっていく。
這いずる音と刺激が波が引くごとく消えていき、それに変わるように体を締め付ける適度な圧迫感に気が付く。
痛みはない、むしろ体が引き締められるような心地よさもある。これは、何だ?
『ぐぷぷ、やはりこうでなくては……清姫よ、お前を犯すにはやはりこの衣装こそ相応しい』
衣装、というコイツの言葉でようやく自分の体の変化に気がついた。
体を覆うのは白い水着の如き服、その上に紫紺の胸当てを付け、首には巻きつくはマフラーのようなもの。
さっきまで蟲だったものがいつの間にか自分の身を包む服に擬態していたのだ。
しかし……これが清姫の衣装だとでも言うのか。
まるで漫画に出てくるくノ一のようだ、と正直な感想が頭に浮かぶ。
そして、同時にその清姫に対するコイツの異常な思い入れに気づき背筋が寒くなった。
封印の奥底で同じ魂を持つものを待ち続け、清姫と同じ性別に変え、なおかつ服装まで同じにする。
ここまでしなければ気がすまない、尋常ならざるコンプレックス。
それを抱えるコイツが魂を墜とすために何をするのか、衣装こそ相応しいとの言葉の前に何て言ったのか。
ざわり、と全身が総毛立つ。
するとまるでそれを待っていたかのように、衣装に擬態した蟲がいっせいに蠢きだした。
くそ、またか、と内心舌打ちする。
だけどついさっきまでされていた事、そして何とか耐えてきた事だ。
いくら不快感を煽られようと我慢する事はできる、そう、自分を奮い立たせる。
「あふっ!」
が、その思いはいとも容易く打ち砕かれた。
違った、先ほどまでと同じではなかったのだ。
蟲がその突起を蠢かせ刺激を与えてくるのは同様、だが、ただ無作為に這い回るだけではない。
まるで統一された意思があるかのように、強弱の付いた巧みな動きでまさぐられている。
服によってぐにぐにと形を変えられる乳房の頂と、コイツによって作られてしまった女の子の部分、その二箇所を重点的にだ。
「や、やめっ……ひ、んっ!」
自分の意思とは無関係に胸がきゅっと引き締まり、形のよい胸が上を向く。
その頂が引っ張られこねくり回され、次第に硬く立って行くなっていく。それを自覚するも止める事ができないのがもどかしい。
そして、胸からの刺激以上に心を悩ませるのが下からの疼き。
粘液質な音と共に、何本もの突起物が股間の筋を何度も何度も撫でる。
その都度、じんじんとした疼きとも、むず痒さとも取れる刺激が生まれ、それが背筋と頭を痺れさせた。
まるで弱火で脳を炙り焦がされているかのような、そんな錯覚すら覚えてしまう。
耳が熱い、体もじっとりと熱を帯びてくる。
体の中に灯された情欲の炎、それに当てられ溶け出した蝋が体の隅々まで流れ染みわたるかのようだ。
女の子の体は繊細で感じやすい、そう本などから知識としては知っていた。
知っていたけれどこんな……こんな、不気味で不快感しか感じないような相手にでも感じてしまうのか。
それとも、コイツが何かしたのか。
「んんっ!?」
突然、びくんと体が震え、腰が浮いた。
体を犯し始めた熱がお腹に回った瞬間、きゅんっと胎内の何かがわななき切なさにも似た感情が湧き上がる。
これ、は、あ……うそ、だろ……
理解したくないのに頭は勝手に知識から該当するものを検索し答えを出してしまう。
これも本や映像なんかで見聞きした事。
そう、よりにもよって自分のアソコは、女の子の性器は、触手の愛撫によって愛液で濡れ始めたのだ。
駄目だ、これは駄目だ……!眉根を顰め懸命に生理反応を抑えようとする、無駄だと分かっているはずなのにそうせずにはいられない。
『よい顔になってきたな清姫よ、我慢なぞ止めてもっと艶のある声を響かせてもよいのだぞ?』
「う、るさい……だま、れ……!」
見透かしたようなコイツの声にそう吐き捨てる。
そのとき自分では気づいていなかった、吐き捨てた言葉の中に反論するような単語が含まれていなかった事に。
乳首と割れ目をぐちゅぐちゅに弄られ女の子のように感じてしまっている、これは否定出来ない事を認めてしまっていたのから。
執拗な愛撫で充血し、ぷっくりとふくらみを増した陰唇の媚肉、そこを責める服触手の動きがさらに大きく激しく大胆になる。
舐めるだけだったのに加え、膣口の肉をつつき、押し、入り口の浅い部分をなぞるように擦り上げられてはたまらない。
湿る程度だった愛液が膣壁を流れ落ちるほどの量となり、自分の性器とそこを覆う触手服をしとど濡らせば、
もっと欲しいもっと、そう言わんばかりに更なる責めを与えられる、その繰り返し。
理性も思考も、溢れんばかりの性感に押し流されもう何も考えられない。
ただ白く白く、何もない色に染まっていく。
「ひ、あっ!あああっ、そこはぁ!」
そこへダメ押しとばかりにさらに強烈な刺激が突き抜けた。
今まで触れられなかった女の子の一番敏感な部分、女陰の肉芽を押し潰され腰が跳ねる。
出したくもない喘ぎ声が止まらない、止められない。
「んっ、ん……!なに、か、くる……溢れて……!」
電気に撃たれたかのような痛みにも似た強烈な痺れ、それが決壊を待つばかりの性感をいとも簡単に爆ぜさせた。
「ふ、んっ、あーーーっ!!」
背中が仰け反り体が硬直する、視界も意識も何もかもがホワイトアウトして何もわからない、気持ちいいという事以外何も感じない至福の時間。
これが、女の子のイくって言う事なのか……。
出せばあっという間に引いていく男の性感とは違う。
頂に押し上げられてもすぐには引かず、ゆっくりゆっくりと治まっていく波濤のようだ。
だから、そこにほんの少しの刺激を与えられただけで
「いひぃっ!」
火に油を注ぐがごとく、簡単に昂ぶりが再燃してしまう。
脳を痺れさせる甘美な疼きがクリトリスから断続的に送られては、つい今しがた感じたあの一瞬を思い起こさずにはいられない。
「く、あっ……そこ、ばっか、触ん……んんっ!」
静まりつつあった官能の波がざわめき立つ。
駄目だ、あれは強烈すぎてだめだ。
あんな感覚と二度も三度も、もっともっと味わわされでもしたら……。
ごくり、と喉が鳴る。
そしてそれに気づき愕然とした。
あの感覚を想像し一瞬期待した自分がいると言う事に。
『ほう……』
ぞくり。
耳に滑り込んでくるのは寒気を伴った感嘆の声。
ほんの些細な心のほころび、抜け目なくそれを見透かされた気恥ずかしさと怖さが寒気の原因。
『清姫は肉芽を責められ達するのが好きと見える』
コイツがこういう反応をし、更なる責めを受ける事に対する怖さではない。
「好きなわ、け……ふ、ん!あ……っ!やぁ!」
アイデンティティの喪失すら危惧するほどの麻薬じみた中毒性を体が覚え始めている事。
快楽を求め始めてしまっている事を見抜かれ、気恥ずかしさを感じるように精神が順応し始めている事。
それが分かるからこそ感じる本能的な恐怖。女の子の圧倒的な性感に男だった自分の意識が上書きされ消されてしまうのではないか、と。
「んっ!んんーーっ!」
だから、流されるわけには行かない。
二度目の絶頂の喜びに打ち震える体と、再び真っ白に塗り潰された頭でその意思だけを繋ぎ止める。
『ぐぷぷ……よき痴態を晒すのう清姫、さぞ我の手練手管を気に入ってくれたと見える、女陰から溢れる汁が止まらぬぞ』
コイツの言う事は本当だ。
今の自分の体は胸や割れ目を弄られる事に悦びを感じてしまっている。
お腹が、子宮が疼き、愛液が垂れ流れる事を止められない。
「ん、くぅん……!あ、ひんっ」
喘ぎ声が漏れないように我慢するつもりでも、口が勝手に悩ましく艶やかな旋律を奏でてしまう。
それでも、コイツにどんなに弄ばれようと、男である、男であった自分だけは失わない屈しない、と目で訴える。
『そうだそれでよい、それでこそ、だ……まだまだ楽しませて貰えそうだな』
きっと嗤ったのだろう、ひときわ大きい二本の触覚を震わせコイツが続ける。
『気が付いているかな清姫よ、己の体の変化に……』
女の体にされた以外で何か変化があるのか、
心の中で悪態をつくと、ぱちんぱちんと伸ばされた触手が胸と尻を叩いた。
「っく、こんなこと、で……」
僅かな痛み、それに倍する疼き。
あるいはこんな事も性感に変換してしまうような体に変わってしまった事、それを言っているのだろうか。
『分からぬか?ならば分かるようにしてやろう』
ざわり、と体を覆う清姫の衣服が蠢いた。
反射的に体を固くし唇を一文字に結ぶ。
来るであろう刺激に備えての事だったが、実際に訪れたのは予想とは無縁のもの。
まがいなりにも衣服の形を取っていた蟲が、まるで布を裂くように分かれ、隠されていた肌を晒していく。
粘液に濡れた肌が外気に触れた僅かな寒さが先に立ったのだ。
ぶるり、と僅かに身じろぎする。
その小さな動きが引き金となったのか、今まで触手に押さえ付けられていたモノが弾け出た。
同時に感じるずしりとした重みと肉が揺れる特徴的な感覚、知覚してしまっては閉じた目を空けずにはいられない。
「あ、あ……」
絶句した。
見下ろした自分の胸、今までの年相応で控えめな少女の乳房は既にない。
替わりに、たわわ、と言うにはあまりにも大きく育った胸がそこに張り付いている。
「ん、はっ……や、ああっ」
すると、それを思い知らせるが如く、モップ状の触手となった蟲が自由気ままにそこを揉みしだく。
マシュマロのように変形し、柔らかく弾む感覚が悦びとなって突き抜ければ、もう否定する事なんて出来ない。
胸、そしてお尻、太もも、少女然としていた体は肉欲を感じさせるそれに再び作り変えられてしまったと言う事に。
「ひっ、あ、ぐ……こん、な……ふうぅっ……あんっ」
そして、変わってしまった体に相応しい肉欲が中に灯っていると言う事に。
『ぐぷぷぷ……我が淫術の味はどうかな清姫、小細工ではあったが気に入って貰えたかな?』
「気に入るわけ、あっ……や、やめっ、ひっ、あっぁっ!」
喘ぎ声を、悦ぶ声を止めるのが難しい。
前よりも、さっきよりも、つい今しがたよりも感じてしまう。
耐えれたはずの刺激が耐えられない、押え込めたはずの女の性欲がどうしようもないほどに膨れ上がっていく。
なんでだ、確かにコイツに色々体に刷り込まれたのは確かだし慣れてしまったのはある。
それを差し引いても耐え切れない性感なんて男の時にもなかったのに。
『陰気とは女人の気よ、そなたには我のそれをたっぷり飲み込んでもらったであろう?
達すれば達するだけその体は陰気を吸い上げ淫肉へと変わっていく、心もまた肉に相応しいそれへと、な』
表情を読んだのか、あるいは心を読んだのか。
道理であろう?と、さも事も無げにコイツは言った。
もはや片隅に追いやられた思考がその意味を理解し悲鳴を上げる。
イケばイクだけより感じやすくより女として熟れた体になる、つまり……
「んはあっ!だ、だめ……もうイクの、は、だっ、やっいやぁ……!」
コイツはどこまでも追い詰めるのが好きなのか。
それを自分が理解するや否や、動きが緩慢になっていた触手が一斉に蜂起し体中を嘗め回す。
敏感になり過ぎた乳首とクリトリスを弾かれこねくり回されれば、甘美で抗い難い悦楽が広がり心を満たし犯していく。
「んっ、ひっ……!や、いやダメ……だめっなのに……なのに、ん、やあぁーーっ!」
無理だ、無理に決まっている。
こんな気持ちいいのに、逃げる事もできないのにイクなと言うのは不可能だ。
現にもう軽くなら何度もイってしまっている。
白い光が広がり目の奥でフラッシュが焚かれているかのような断続的な絶頂。
その都度、胸がお尻が、体の肉付きが良くなっていくのが感じられてしまう。
そしてより深くより高い頂へと押し上げられてしまう。
「んっ、あっ、あっ!クる、すごい……の、きちゃ、う……っ、ん!ああ!あはぁあああぁぁぁっ!!」
反らしたくもないのに背中が反れる、びくんびくんと体が大きく跳ねる。
愛液とは違う液体が勢いよく股を塗らした事も恥ずかしさより快楽が勝ってしまう。
さらに重みと感度を増した胸、乳房の大きさに比例してぷっくりと盛り上がる桜色の乳首に触手が群がれば
「やめっ、これいじょ、は……ひんっ!おかひ、く、おかひくなる……っ!んっ、んんんーーーっ!」
『いい、いいぞ清姫よ、その無様な体こそ我の精を受け入れる孕み腹に相応しい……!』
もう恥も外聞もなく乱れ、コイツが言った言葉の意味を理解する事無くただ悦楽を教授する他はなかった。
あれから何度イかされてしまったのだろう。
何もかもがぼんやりとした世界の中、さらに膨れ上がった自分の胸とそれを緩慢な動きで弄ぶ触手があった。
目に映るだけの映像を知覚する事により、ゆっくりとではあるが意識が覚醒し、ようやく現状を認識する。
激しく責め上げられていたのが嘘のように蟲や触手の動きは穏やかで、今は台風一過といった感じだ。
「ん、ふあぅっ……」
とは言え、少しでも身じろぎすれば敏感な部分がこすれ、滲み湧く愉悦が声となって漏れ出す。
そんな状況である事は変わらない。
うつわ一杯に張られている水が、水面が穏やかゆえにぎりぎりで溢れていないだけ。
ほんの些細な刺激で水は零れ、過ぎた官能に翻弄される事になる。
『……ようやく正気を取り戻したか、ぐぷぷ……よき痴態であったぞ』
だから、例え小さくても水面に波を立てられる物であればなんだっていい。
現にコイツの声だと言うのにゾクゾクとした疼きを感じてしまっている。
そんな体に仕上げられてしまった事が恨めしく、顔を上げて見る視線が自ずと険しいものになるのは無理からぬ事だった。
あどけない少女の顔とはアンバランスな、肉欲を掻き立てる肢体。
四肢を肉の管に呑み込まれ、蟲が擬態した衣服を身に纏いそれに熟れた体を弄ばれる。
陵辱に耐えるかのように、涎を垂らしながらも一文字に結ばれた口と睨み付ける様な視線。
『それでいてまだそのような顔が出来るとは見上げたものよ清姫』
コイツの言葉通り、まだ強情を張っているように、そしてまだ張り続けるように見えるんだろう。
でも正直な所、心が折れかけているという自覚はあった。
耐えても我慢しても何になる、いつ来るかも分からない助けを待ち、心と体が釣り合わない苦しみをずっと味わい続けるのか。
それならいっそ……と、何度考えただろう。
『だがそろそろ正直になるがよい、我に屈すれば気兼ねなく快楽を享受できるのだぞ?』
心を侵食するそんな誘惑の言葉に負けそうになる、屈すると言葉に出しそうになる。
でも、心の奥底がだめだと言い続ける。
たぶん意地みたいなものなんだろう。男の、ではなくきよひこという自分自身の意地だ。
負けが決まっていても最後まで抗う、自分で認める事だけはできない。
口を開いたら屈服の言葉が出てしまいそうで、ただ静かに頭を振り意思を示す。
つまらない意地だということも、こっちの答えなんて関係ないのも分かっている。
受諾も拒否もコイツにとっては満足感を刺激するためのスパイスでしかないんだから。
『つまらぬ意地を張るものよな……ならば、その強情さに免じてこれを使ってやろう』
言うが早いか、ぬるりと固い何かがお腹に触れる、固いだけではなく熱も帯びていた。
それが何か確認しようにも自分の胸が邪魔で分からない。
……いや、本当は分かっている、ただ目で見れていないだけで心と体はすでに察している。
ここまで女を辱められ昂ぶらされても、されるべきことをされていないのだから。
柔らかな胸の谷間をしたから押し広げ現れた粘液に塗れる姿、やはりと言う感想しか出ない予想通りのモノ。
もはや懐かしくすら感じられる強烈な男の臭気、肺を満たすその臭いに全身の女が歓喜に染まる。
そう、コイツに捕らわれる前の自分にはあった、男である事の象徴。
もっとも、大きさ、太さ、形の凶悪さは比較するのもおこがましい。
生殖する事よりも、いかに女を責め喘がせ悶えさせそして狂わせるか、目的はそっちと言わんばかりの凶器。
これがコイツの……
目が離せない。
これを突っ込まれよがる少女の、清姫の、自分の姿を想像し胸が高鳴ってしまう。
無論、男根を受け入れるなんて体験はした事がない、けれど女の本能がこれを求める。
こうして繋がる事が一番気持ちいいと脳裏に囁きかける。
体が熱い、子宮が疼く、性器が疼く、太ももをこすり合わせようとする自分がいる事にもう何も感じない。
いつの間にかこの感覚は完全に自分のものになってしまっていた。
「んっ、はぁ……」
膣口を覆っていた蟲がその場所を譲る刺激、そして凶悪な一物をそこへ押し当てられる感覚に熱い吐息が出た。
性交という未知の行為を前にしドキドキが止まらない、浅ましいと自嘲しながらも下の口から涎が垂れる事を制止できない。
あれだけ気持ち悪いと嫌悪し、自分の体を変えられてしまった事に憤っていたというのに。
そそり立つコイツの男根が今はただ欲しくて欲しくて、たまらず自分から性器をこすりつけてしまう。
『さあ清姫よ、我がお前を女として喰う時が来た……我の魔羅にどこまで抗えるか楽しみだな』
そんな姿にささくれ立った歯を剥き出しにし嗤う。
多分もうコイツには確信があるんだ、崖っぷちギリギリの堕ちる寸前まで歩みを進めてしまっていることを。
あとは少し背中を押させるだけで屈してしまう事を。
なら……
「すきに、しろ、よ……」
もう、焦らさず負けさせて欲しい、この男根で、ちんぽで屈服させて欲しい。
男言葉でそう吐き捨てたのはきっと最後の意地になるんだろう、これを突き刺されれば文字通り止めになる、そんな予感があったから。
ぐっ、とコイツの生殖器に力が篭るのが感じられる。自分の膣口がその大きさに広げられていくのが分かる。
今まで散々に濡れ解き解されて来たそこは、ようやく本番が来たとわななき練習で培われた柔軟さで男根を呑み込んでいく。
粘り気すらある特濃の愛液を潤滑油に、未だ男を受け入れた事がない膣を触手の亀頭が押し開ける。
少しずつゆっくりと確実に、ぴっちりと閉じた女の未開の地が開拓されていく。
女として始めて味わう感覚はとてつもなく刺激的で、気持ちよさはあまり無いにも関わらず始まったばかりの行為に酔っていた。
「いっ…た!」
そんなカリ首がちょうど胎内に収まった辺りで、気持ちよさとは全く異質の何かが背筋を駆け抜ける。
程よく弛緩していた体が萎縮する程の刺激、それが痛みだと理解するのは一瞬だったが、もう一つの事に思い当たるのは数瞬の後。
……処女、だったんだ……
初めての性交での痛み、それはつまりそう言う事。
この体勢では直接見ることは出来ないけれど、鼻をくすぐる血の臭いで実感する、純潔の証を失ったんだと。
男だった頃は結構なこだわりがあったものの、いざ自分がその対象に変えられたらすっかり失念している程度の事のはずなのに。
それなのに、なんで心に落胆と後悔の感情が渦巻くのか。
『我に女にされた感想はどうかな清姫、ぐぷぷ……言わずともよい、その顔がすべてを物語っておるわ』
初めては好きな人に、そんな本当かどうかも分からない女の子の理想像を思い描いていたからだろうか。
今の顔は、望まぬ形で処女を失った、と言う事にストレートな表情を浮かべているらしかった。
『だが気に病む必要はない、我の与える快楽に溺れれば些細な事と感じるようになる』
しかし、それ以上処女喪失の感傷に耽る時間は与えられない。
「う、あっ!」
破瓜の血すら潤滑剤に変えて、さらに奥へと触手を打ち込まれる。
自分のあそこがどんどんコイツの形に変えられていく。
「ひっ、ひい……こんな、深い……っ!」
胎内に進入した長さを測れたのなら、きっと大したことはない数値なのだろう。
でも、それを受け入れる身となった今だからこそ体験できる。
このまま脳天まで突き抜けてしまうのではないか、そう誤認してしまいそうになる程の衝撃を。
「あ、ああっ、でもこれ……!」
ただ、それだけではない。
押し広げられたところを中心にぼんやりと火が灯ったように熱くなる。
体の芯が燃え上がったかのような感覚、ぽっかり空いていた場所をずぶずぶと埋められていく充足感にも似た感覚。
それらが胸に満ち、どうしようもない程に締め付けられキュンキュンと鳴ってしまう。
「んうっ!ないぞ、持ち上げられ……んううっ!!」
そして、ズン、とひときわ大きい突き上げが体に響いたとき理解した。
たった今、膣の奥の奥までコイツの触手で蹂躙されてしまった、という事を。
「あぅ、はぁ……はいって、る、はいっちゃっ、た……」
自分の外見とは異なり、まだ青く熟れきっていない女性器は締め付けるようにきつく侵入者を包み込む。
けれどそれが逆に、自分の中に異性の、男のモノある、と言う事を強く強く自覚させた。
漫画やビデオで見た女の子のように、股に男を咥え込んでしまっている……
「ふ、あ……」
そんな行為をされる側になってしまった事に酔っているのか、男を受け入れた感覚に酔っているのか。
あるいはその両方なのか。
脳裏に浮かぶ映像の仕草と、今の自分の仕草がシンクロする。
熱い息と吐き瞳を伏せる、女である事、雌である事の本分を果たしているという本能的な幸せに身震いした。
快楽と言う意味ではまだそれほどではない、クリトリスを弄られていた方がずっと上だ。
でも、この気持ちはきっと、女として性交しなければ感じられないと思う。
男として女の子と繋がった事はないけれど、多分、それでは知ることが出来ない感覚。
ずるい……
自然に嫉妬にも似た感情が湧き上がる。
想像でしかなかった物を体感しているからこそ、そして、男であったからこそ比較できる女の性の深さ。
女の子はみんなこれを感じる事ができるなんて、男では感じる事ができないなんてそんなの不公平じゃないか。
しかし、その感情を消すのは容易かった。
だって、嫉妬する必要なんてないじゃないか、今の自分はそれを思う存分堪能できる体になっているんだから。
スイッチが切り替わるのを自覚する。
今までは強制的に与えられるだけの女の快楽に、ただ感じ、よがり、翻弄されるだけだった。
それを自分から知りたいと、もっと味わって見たいと。
女の子の性の最果てを見たい感じたいと。
なら、どうすればいい?これからどうされたい?
胎内に撃ち込まれた触手は奥までその身を捻じ込んだだけで動く気配がない。
初めて蹂躙した膣の感触を楽しんでいるのか、それとも、もしかして待っているのか。
……待っている、何を?
「あ、あっ……」
決まっている。
男だった時に得た都合のよい女の性知識と妄想で、女の子にこうして欲しいこうされたい、と言う男の理想。
女から、自分からおねだりするのを待っているんだ。
動いてと言えばコイツは期待通りにぐちゅぐちゅと触手を出し入れしてくれるだろう。
そうすればきっとまた新しい感覚が味わえる。
甘い声を出しながらちんぽをピストンされる女の子の感覚がすぐそこに待っている。
「これで、おわりか、よ……」
でも、それでも、それをそのまま言葉にする事はまだ出来なかった。
出たのは、自分がされたいのではなく相手がしたいから、との方向性に持って行きたいがための挑発の言葉。
屈服させたいコイツがそれを許すとは思えない。
だが、本当に意外な事に望みは叶えられてしまう。
「ん、んんっ!ひ、なかっひきずだされ……っ!」
微動だにしなかった触手が無造作に引っぱられたのだ。
性器ごと引っ張り出されるんじゃないかと思えるくらいの力と衝撃、
でも、膣が、膣の襞一枚一枚が、ちんぽを逃したくないと纏わり付いて締め付け抵抗している。
力任せにその抵抗を排除されれば、触手のイボイボが襞を引っかきびりびりとした刺激を生み出してくる。
「あひいっ!」
かと思えば、さっきと同じ強烈な突き上げに膣肉を掻き分けられ一番奥をノックされる。
たったこれだけの繰り返しなのに、なんでこうも喘ぎ声が止まらないのか。
ずっちゅずっちゅと愛液と先走り汁の水音が淫靡なBGMとなって耳を犯す。
何度も何度も繰り返される生殖のための行いに、気が付けば自分のアソコはリズムよく締め付けを繰り返すようになっていた。
受け入れるときは奥に導くように、引っ張られるときは名残惜しいとばかりに締め付けるように。
「い、いいっ……これ、いい……!」
膣壁が触手で擦れるのが気持ちいい、襞をイボイボで引っかかれるのが気持ちいい。
初めて挿れられた時に感じられなかった性的な快楽、それがここに来てようやく高まり始めたと理解する。
一度それが分かってしまえば、後はただされるがままに昂ぶり堪能するだけだ。
乳首とクリトリスへの愛撫で感じたあの至高の感覚、女の子の絶頂がすぐそこまで来ている。
初めての中イキへの期待にどうしようもなく胸が締め付けられる、どれだけ満たされるのか、どれだけ気持ちよくなってしまうのか。
「あああああっ!」
愛液を掻き出しながら、亀頭だけを中に残したところまで引っ張り出される触手ちんぽ。
これをもう一回挿れられたなら、きっとそれでイける。溜まりに溜まった性感を爆発させてくれる。
期待を胸にその瞬間を待ちわびる。
しかし、それはいつまでたっても訪れない。
ここに来てまた、コイツの触手は動きを止めてしまったのだ。
落ち着きなく腰が動く、下の口からだらだらと涎が溢れる。
まるで極上のご馳走の前でお預けを喰らった犬のようだ。
何とかしてイきたいと、膣を締め付け自由になる範囲で大きく腰をグラインドさせる。
でも足りない届かない。
それどころか逆に淫らな願望をより大きく増幅させていく事にしかならない。
イきたいイきたいイきたい!イきたい!!お願いイかせてぇ!!
もうそれしか考えられない、頭の中はただ快楽を貪りたいという一色に染まってしまっている。
「う、うごいて……」
心の堤防にヒビが入る。そこから水の変わり漏れ出したのはそんな懇願の言葉。
でもコイツは動かない。
どうすれば動いてくれるのだろうか、お願いが足りないのだろうか、お願いの仕方が悪いのだろうか。
そう考えたとき、自分の思考はもう完全に女の性欲に組み伏せられ支配されてしまったと自覚する。
堤防の綻びが深く大きくなれば、言葉もまたそれに比例した。
「挿れて……おねが、い……んん!」
お願い、と口にすれば触手が僅かに動き止まる。
採点している。
コイツは自分が満足する言葉を、清姫の、私の口から言わせたいんだ、と直感する。
言えばいい、ただ言葉にするだけで最高の悦楽を得られるならこんな簡単な事はない。
どんな言葉がいいかなんて考えるまでもなく分かっている、男を興奮させ支配欲を満たさせる言葉。
男だったときに幾度となく妄想したそれをそのまま口に出せばいい。
「あ……あっ、おねがい……します……」
またも触手が僅かに動き、切ない声が漏れる。
それが決定的な一撃、心の堤防が決壊しどうしようもない程の欲望の濁流が解き放たれる。
「ああ、お願い!お願いします!イかせて、イかせてください!触手で、ずぼずぼって、私のおまんこ掻き回してくださいっ!!」
言った、言ってしまった。
漫画やゲームの女の子のみたいに、私の口から淫乱な言葉で犯して欲しいとお願いをしてしまった。
「きゃふぅっ!あっ、ああっ!」
でも、それを悔やんだりする気持ちは思い浮かぶ前に心ごと押し流されてしまう。
来た来た、待ち望んだ続きが来た!
その悦びに比べたら屈服の言葉の一つや二つなんだというんだ。
こんな素晴らしい快楽が得られるのなら、意地なんて吹けば飛ぶようなくだらない事だった、と。
「ひんっ、いいっ!気持ちいい!おまんこいいっ!」
あ、そっか、私屈服しちゃったのか……。
男の欲望のままにアソコを、おまんこを滅茶苦茶に突かれまくりよがり狂いながら思う。
そして何時からだろう「わたし」なんて自分を考え始めたのは。
違和感なんてない、むしろそれが自然なように思えている。
だって、こんな女の子らしい可愛い声を出す子が、俺とか自分とか言う方が違和感を感じるじゃないか。
「ん!あっ!クるっ!しゅごいの、クる来ちゃう!いっ、イクぅぅぅぅぅっ!!!」
だって、女の子なら仕方がないじゃないか。
こんな気持ち良いことされてるんだから、たくさん感じてたくさん喘いで、犯されている相手を喜ばせても。
理想のエッチな女の子を妄想していた男だったからこそ、それを演じそれになりきる事に拒否感なんてない。
男であったが故に男であることを殺される、と言う事を実感ながら私は中イキの感覚を思いっきり堪能していた。
快楽に蕩け、女である事への嬉し涙を流し、舌を突き出した口から涎を溢れさせる雌の顔。
全身を朱に染め、絶頂の余韻に幾度となく痙攣を繰り返し大きな胸を揺らす雌の体。
コイツの表皮に写りこむそんな少女こそ今の私。
「あは……♥」
そんな顔に似合わぬ淫乱な笑みも
「もっと、もっと欲しいです……あるじさまの触手ちんぽ、私のおまんこに欲しいです……♥」
恥じらいながらもエッチな単語を口にし主人にセックスをおねだりすのも
『ぐぷ、ぐぷぷぷぁぷぁぷぁ!堕ちた、我を使役し封印した清姫が雌に堕ちおった!ああよき気分だ……
いいぞ清姫、そなたが望むのならいくらでも褒美を授け愛でてやるぞ』
男に屈服する喜びに身を震わせるのも紛れもなく今の私。
目から耳から入ってくるそんな情報が、決壊し押し長された私の心に新しい私を作り上げる。
「ああっ、嬉しい……胸も、クリトリスも一緒にいじめてくれるんですね……」
主様が望むような淫乱で淫靡でそれでいて美しい少女清姫。
きよひこという存在は記憶の中には残っているがそれだけの存在、今の私は主様に体を使ってご奉仕するだけの女だと。
濡れそぼった女性器に再度極太触手が突き入れられる。
「ああん!そんないきなり、んあっ、奥までぇ……」
一突きで私の女を埋め尽くされた喜びを、やわらかく締め付ける事とお尻を振る事で主様に伝える。
それで気を良くしたのか主様の触手が私の敏感な3つの豆を絞り上げた。
「ひん!あっ痺れる、乳首とクリトリス痺れて……!私のおまんこ、主様のおちんぽ締め上げちゃってるぅっ!」
ああ、ああ凄い。
私の言葉が私の脳をどんどん犯していく。
自分の淫乱な言葉でどうしょうもないくらい興奮してしまう。
「すごい、すごいぃ!なかっ、めちゃめちゃされて……!私のなか、くぅん、主様のおちんぽに壊されるぅ……」
きっと主様も興奮されてるんだろう。
突き上げる触手がさっきより太くて固くてそれに熱い。
私の体で感じてくれている、それが何よりも嬉しくてどんどん深みにはまっていく私が分かる。
「ひいっ!ひぃん!あるじさまっ、それ、それだめぇ!おまんこ、ねじきれちゃうぅ!」
上下に律動するだけだった肉棒に、更に回転する動きが加わった触手ちんぽならではの責めにどうしようもなく狂わされる。
手足の指の股、耳、首筋にわき腹に、体中を同時に愛撫されるのもまた人外だからこそ出来る犯し方。
思わず指の股を這う触手をぎゅっと握り締めた。愛おしい愛おしい、私を犯すこれがとても愛おしくてたまらない!
恋人つなぎのような密着感を全身で味わいながら、私はあっという間に上り詰めていく。
「ご、ごめんなさいあるじさま、わたし、わたしもうっ……!」
イく、イってしまう。
もう我慢できない、そう臆面もなく言葉にして絶頂に身を任せようとしたとき
「ひああっ!」
また新しいところを刺激されて頂へ至る道から引き摺り下ろされてしまう。
そこはお腹の奥、女の子の一番大事な、子供を授かる場所の入り口。
触手の先っぽがその身を捻じ込ませようとぐりぐり擦り付けているんだ。
『達するか清姫よ、ならば我に屈した褒美をやろう……我の子種を受け取るが良い!』
中出し、中出しされる、中出しされちゃう。
主様の子種を私の子宮にたくさん注がれてしまう。
また、新しい女の子の性を体験できる、中出しの感覚を堪能することが出来る。
「はっ、はい……!くだひゃい、あるじさまのはらみだね、わたしの中にくださいぃ!」
私の胎内に収まった主様のちんぽがひときわ大きく膨れ、私はそれに負けじとおまんこを締め上げる。
子種をたくさん搾り取れるようにと、そして、そして……
「あっ!はあああああっっっっっ!!」
主様が射精すると同時に、私は絶頂の頂からその身を投げ出される。
その時、轟音と共に空間ごと揺れる様な振動を感じた気がしたけれど、それが何か確かめる事もなく私は意識を手放した。