33片「暴露//完了」
「ふぅ、いい仕事した…」
「ネタ出しした甲斐があったぜ…!」
ちょっとだけ時間のかかる作業を行ったので、ひと段落。戻ってきた近衛さんが用意してくれたアイスコーヒーを飲みながら、撫子さんと共にサムズアップを交わす。
乙木の上着を脱がしたまま、首を『接続』で戻してカウンター側に座る。さて、後は起きるのを待つだけだ。
しばらくして乙木が頭を振りながら体を起こし、朦朧とする意識をはっきりとさせ始めた。
「ん、ぅ、あ…? あれ、那月は…、ん?」
「や」
俺の存在に気付かれたので、すっと手を挙げ存在を主張する。
「お前羽張! 何でここに…、っていうか那月をどこにやったんだ!」
「んー? 順番に言うのなら…、最初からいて、ちゃんと桂木さんは今でもいるよ」
「は? おいふざけたこと言ってんな、最初からって、俺が入ってきた時には那月と店員の奴しかいなかったんだぞ?」
乙木が近付いてきて胸倉を掴み、まぁいつものように俺を脅そうとしている。1人だけだと言うのに気丈な事で。
仕方ないので、ちゃんと説明してあげよう。ちゃぁんと、ね。
「まぁまぁ、順を追って説明するのでこの手を外してくれないかな?」
「そんな事必要ねぇ、聞かれた事だけ答えりゃ良いんだ、よ……、え?」
俺を掴んでいた乙木の手首に触れて、手だけを『分解』してあげた。
「…は? え、何だこりゃ!?」
「しばらく前から、不思議な力に目覚めてね。『分解』と『接続』っていうんだ。解る?
今乙木の右手みたいに、出来る筈の無いものでもつけ外しが出来るんだよ」
「え? は? …バ、バカなことは大概にしろよ!? 手品とかだろ!?」
「この手を見て、君が本当に手品だと信じられるなら、それでいいんじゃない?」
ほい、と弄んでいた右手を返すと、乙木は慣れぬ左手でそれをどうにか掴み、手首にくっつけようとしていた。
けれど、
「こんな、こんなこと、ある訳ねぇ…! この手だってトリックで、合わせればちゃんとくっつく筈だ…!」
どれだけ乙木が切断面を合わせても、接合する筈はなく、合わせては落としてを繰り返していた。
「バカなことは大概にしたら? 例え手品より信じられない事だとしてもさ」
「戻せこの野郎! 羽張! 俺の手を戻しやがれ!」
「はいはい。また『分解』されるリスクを考えずに掴もうとする乙木のバカさ加減には呆れるよ」
左手でもまた胸倉を掴んできた乙木だが、俺の手が左手に触れようとした瞬間、思い出してすぐに離れていった。
勿論その瞬間、ちゃんと右手は『接続』させてあげた訳だけど。
「…解るかな? ちゃんと右手は繋いであげたよ。…それじゃ、話をちゃんと聞いてよね」
後ずさり、椅子の家に座った乙木に手を触れ、椅子と身体を『接続』させる。
「っ! え、なん、だこれ! 動けない…っていうか、椅子から離れない!?」
「椅子と乙木の体を『接続』してあげたよ。あぁ、その椅子は据え付けらしいから、椅子を壊さない限り動けないね」
「笑うんじゃねぇ! 羽張、お前こんな事して何が目的だ!」
「……は?」
直前まで笑いをかみ殺していたんだけど、まぁまさかこんな言葉が飛び出てくるとは思いもよらなんだ。
てっきり気付いてると思ってたのにねぇ…。
「そっか、乙木はわからなかったんだ。本当に、バカだ、ね!」
「ぶげっ!?」
動けない乙木に向けて、顔に蹴りを叩きこんであげた。土足で、何度も。
「乙木が俺に、こんな事を、される理由なんて! 俺がこんな事を、する目的なんて! とっくに解ってると思ってたのにねぇ!」
何度も靴底で蹴ってやる。体重を乗せて、何度も何度も。
乙木が顔を晴らし始めた所で、荒くなる息と上下する肩を整える様に、大きく息を吸ってから伝えてやる。
「何をしたか思い出させてあげようか?
私物を隠すのは序の口で、机を汚す、ノートに落書きはする、人の着替えはゴミ塗れにする。
他人の金を盗んで俺が盗った事にさせる、その癖に俺にたかる、買ってこなけりゃ殴る、買ってきても蹴る。
暇潰しの相手で怪我だらけにされて、遊び気分で階段から落されて、そのくせお口の恋人要員にもされてさぁ!!
表に出してなかったけど、出さなかったけど、腸煮えくり返ってない訳がねぇだろうがこの屑野郎が!!」
言うたびに我慢できなくなり、はれ上がった顔をもう一度蹴り飛ばしてやった。
「う、ぐ、ぶ…」
「いっけね、これじゃ殺しちゃうな」
ちょっとだけ落ち着きを取り戻して、カウンターの方へ戻る。残ったアイスコーヒーを飲みながら一息ついて、ちゃんと説明してあげないと。
「…だからさ。この能力を身に付けて、使い方を考えた時、出来た目的が乙木達への復讐だったんだよね。
青海くんは退学になったろ? アレは俺が体を張って犯されて、強姦魔に仕立て上げてやったんだよ。
宇治くんは君から去っていったろ? 筋肉だけ『分解』してやったから、持ち前の筋力なんて無くしたから、自分が攻撃されると解ってたんだよ。
千草くんはよそよそしくなったろ? 彼は体を『分解』して、女の子の体を新たに『接続』してあげたんだ。乙木にバレたら犯されるって解ってたしね」
ここで先に来ていた千草ちゃんを、奥の部屋から出して乙木に見せてあげる。
コート一枚で、下着さえ付けずに生まれたままの姿を見せつけてあげて。
「で、乙木が俺を攻撃してたのも、自分が上に立つことで自信を持って、胸を張りたかったんだってね。好きな女に、桂木さんに自分を良く見せる為に、さ」
「う、ぐ…」
「あぁ勿論、桂木さんにも手を出したよ。その前に彼女の取り巻きにもね。今ではすっかり「俺」の一部になってるんだ。
2人とも気持ちいいんだよ、解るかい、ねぇお口の恋人相手に満足してた乙木?」
昏い笑いが止められない。溜めに溜めていざ暴露をする、と言うのは、とてつもない快感だ。股間の勃起が止まらない。
はれ上がった顔で、乙木はどうにかこうにか言葉を紡ぐ。
「は、ば…、なつき、は…」
「そうそう、桂木さんだけど、彼女の顔と身体を使わせてもらってね。
君を呼んだのも、ここで君と話したのも、桂木さんのフリをした俺だったんだけど、気付かなかったでしょ」
「じゃ、…どこ、に…」
「ちゃんと今、そこに、居るよ? はい鏡」
「…………」
鏡を見せられ、そこに映る自分を見て、乙木は言葉を失くした。
自分の体を見下ろしていなかった乙木が見た物。それは、顔が生えている自分の体。目があり、鼻があり、口があり、それらが確かに動いている。
「あ、あ、ああああああああ!!?」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
フリーズしていた桂木さんの顔が、見る見るうちに引きつり、そして恐ろしさを目の当たりにして破裂する。
1つの体から二つの声が上がった。“理解できない”という恐怖に急き立てられた、張り裂けんばかりの声が。
哄笑が、溢れる。
「あっはっはっはっはっはっは!! 解るかい乙木! 君の体に『接続』してあげたのは、君が気を惹こうとした桂木那月の顔のパーツだよ!?
目と鼻と口と声帯と、あと眉毛と髪の毛も少し分けてあげたんだ! 良かったねぇ、好きな相手と文字通り一緒になれてさ!!」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! も、戻せ羽張! 那月を返せ!!?」
「何言ってるんだい、返すも何も君の体にくっついているじゃないか」
「どういう事よ羽張!? 私が何したってのよ、関係ないじゃない! 戻してよ、体を返してよ!!」
「何したって…、乙木をけしかけて俺を攻撃してた立場の分際で、よく言えたもんだよね桂木さんは」
上と下との口で一斉に喚き散らす2人。あぁ耳が痛い。
「俺達を元に戻せ、戻さないと…!」
「どうするの?」
声のトーンを落として、冷ややかに聞く。
「ど、どうするって…」
「何まごついてんのよ乙木! いつもみたいに殴って言うこと聞かせてやれば良いじゃない!」
「それが出来ないから聞いてるんだよ。乙木の体は、そこから動かせないんだから」
「え…?」
桂木さんも、ようやく自分の立場が分かったようだ。
「それに聞くけどさ、仮に俺を殴っていう事を聞かせようとした所で、俺が戻すと思ってる? 思ってるんだったら君たちは救いようのない考えなしだと言わざるをえないよ」
「でも、だって…、こんな姿じゃ…」
「仮に俺は乙木に殴り殺されても君達を元に戻しはしない。そして桂木さん、今の君は現代医学でどうにか出来るような状態じゃない事は理解してもらわないといけないね」
「……」
「桂木さん。君が自由に振る舞える立場じゃないのは、いい加減解ってもらわないとね。君は今や、乙木の体の、付属物なんだよ?」
「あ、あ…!」
もう一度鏡を見せて、今の2人の状態をより見せつけてあげる。俺の言った事に気付いたようで、桂木さんは小さな口を所在なさげに開いては閉じている。
「…良かったね、乙木。これで君はいつでも桂木さんと一緒だよ。その性悪の面倒を、ちゃぁんと見てあげてね」
カウンター席から立ち上がると、乙木達から見えない場所に隠していた桂木さんの体を取り出す。
俺の頭を『分解』して、女の体の上に乗せる。本来の体を鉢頭にすると、確かめる様に手を握りしめ、笑う。
「…それじゃ、使えなくなった桂木さんの体は俺が貰うから。大丈夫、ちゃんと家族ごと活用してあげるよ」
ぽん、と乙木の肩に触れて『接続』を解除してあげる。
それを合図に、この場に待機してた全員が帰る準備をし始めるので、俺も持っていたバッグと、俺本来の体を伴い外に出ようとする。
「か、返して、私の体!! 乙木、逃がさないでよ!!」
「あ、あ…! 羽張お前ぇぇぇぇ!!」
動けるのに気付いたので、乙木が迫ってくる。俺の体を掴もうと、両腕を前に突き出して。
「解ってない、ね!!」
わずかに小柄になった桂木さんの体で、懐に潜り込んで蹴りを見舞う。僅かなヒールの位置が、桂木さんの顔の、鼻の部分に当たる様に。
「ぶぎゃぁあ!?」
痛みに豚のような悲鳴を上げて桂木さんが叫ぶ。鼻の奥の鳩尾を突かれて、同時に乙木ももんどりうつ。
「戻らない事ぐらい理解してると思ったんだけど、ここまで君たちが馬鹿だとは考えてなかったよ。
……じゃあね、2人とも。あぁ乙木、“また学校でね?”」
痛みに喘ぎ、途方に暮れる1つの体の2人を残しながら。
俺は薄く笑いながら、喫茶店の扉を閉めた。
34片「終了//余談」
「やる事終わっちゃった」
「そんなみーくん、それだけが人生だって顔しないでおこうよ」
乙木の体を改造してしばし。まぁ、こちらの想像通りというか、乙木は学校を自主退学して姿を消した。
体に桂木の顔と脳を埋め込まれて、人前に出られなくなったのだから、まぁ居なくなるしかないよね。
がんばれ乙木。うまくいけば外科手術で摘出だけはできる筈だから。それまでの過程は知らないし、それをやったら桂木さんが絶対死ぬけど。
「あーもぅ…、なんかやる事ほんとに無くなっちゃったなぁ…」
俺達の家の自室。俺本来の体で、撫子さんと一戦終えた状態な訳だけど、どうにも張りが無くなった感じ。
繋がりあったままの状態で互いの体を抱きしめ合いながら、体温を交換し合っている。あぁぬっくい。やわっこい。
「これからどうするつもりなのさ、みーくんは?」
「どうしましょうかねぇ。ほんとにやる気が無いんですよね」
いつものように撫子さんが俺を焚きつけてくるが、本当に気力がわかないのだ、我が事ながらどうしてくれよう。
「まぁやる事終わったなら気が抜ける、ってことはよくあるしね。やりたい事が出来るまでのんびりしよっか」
ぎゅぅ、と抱きしめてくれる撫子さんは、少しとはいえ年上という事もあり、包容力を持ってる感じがする。
「んじゃちょっと呼び水になるよう聞いてみようか。みーくん何シたい?」
「…なんか今、ちょっとニュアンスが変だったんですけど」
「気にするなーい!」
猫だったら、喉を思い切り鳴らしているんじゃないかという勢いで抱き着いてくる撫子さんに、ちょっとだけ呆れてしまう。
けれどそれは結局、俺を気遣ってくれてるということなんだろう。とりあえず賢者タイムの余韻の頭で考えたことを言葉にしてみる。
「ルンバとサーキュレーターをくっつけて、ホバークラフト的な物を作ろうかと思ってます」
「それに意味は?」
「無いですよ。それが?」
「…ん、良いんじゃない、それで。やる事為すこと全部に意味を求めてたら、息苦しくなっちゃうからね」
「それはまぁ、確かに…」
撫子さんが言ってくれる事は、納得せざるをえない所がある。
この能力の使い方に、意味と理由を求めていたんだろう。だからそれが終わったら、この能力を使おうとも思わなくなってしまったのだと。
「好きに生きなよ、みーくん。この世の事象に理由はあるかもしれないけど、一々それを考えてたら、窮屈だよ。
囚われ過ぎないことって、楽しく生きる秘訣だと思うのよね」
「…好きに、かぁ」
少しだけ悩んだ後に、結合部分を解く。撫子さんのまんこから俺のちんこを抜くと、外気に触れて一気に冷えてきた。
「これ以上の復讐だって、する必要無いと思うしね」
「ん…、まぁ…。本当に必要無いでしょうし…」
言われて頭の中に思い浮かべてしまったのは、親戚連中の思い出したくもない顔。
親が死んで…、連中の作為的な行動に殺されて、溜め込んでいた遺産を俺の知らない間に、必要最低限さえ残さずに食いつぶした金の亡者ども。
気にしてないと言えばうそになるが、本当に忘れたいから内心ではどうでも良いと思ってる。
やろうと思えば連中にも復讐できるだろうけれど、それをやった所で何があるんだろう。
「…何にも、残りませんからね」
「そうだねぇ、何にも残らないかもね」
「連中に対する怒りも、復讐心も、すっかり削げ落ちてきたんだなぁって思いましたよ。
あいつらの為に時間を使ってやるなんて、バカバカしいにも程があるって」
「…じゃ、することが1つ決まったね。そいつ等とは関わらない、ってことがまず1つ」
「次は…、墓参りですかね」
「ご両親の?」
「えぇ。ちゃんと骨を仕舞われた墓に言って、俺は俺として生きるって言ってくるよ」
「足はいるかい?」
「いえ、1人で行きますから遠慮しておきます。撫子さんは自分の学校にちゃんと行ってください」
「えー、未来の姉さん女房候補も連れてってよー」
「生憎と、まだ結婚できませんから。…するつもりも今のところありませんし」
「うぉっみーくんひでぇ。私はこんなにもみーくんの事が好きなのにー」
「ありがとうございます。でも俺、まだ17ですんで法律的に無理ですから」
「女の体になれば出来るじゃん!」
「体が女になっても、法的には男のままですから。無理です諦めてください」
「諦めぬー! 他の誰を選んでも、絶対私の所に帰ってこさせるんじゃー!」
離れたくない、と言わんばかりに撫子さんが足を絡めて俺の体に抱きついてくる。股座からこぼれた精液が、俺の太ももにくっついてくる。
そんなに俺が良いのかなぁ。確かに俺も、撫子さんの事は好きだけどさ。
「…いやまぁ、いいんですけどね」
自身と撫子さんの首元に手を触れ『分解』、互いの体を交換して『接続』させる。
「おぉ? いきなり体を交換して、どうしたんだいみーくん?」
「いえ、今度は撫子さんの体を使ってもうちょっとシようかと思いまして。俺の体もまだイけますし、しましょうか?」
「あったぼうよー!」
俺の体になった撫子さんがちんこを滾らせて、俺の体を押し倒し、挿入を始める。
先ほどまで自分が挿入していたまんこは、行為の影響と出された精液で、子宮ごと疼いている。
「んふ、はぁ…!」
ずぐん、と子宮まで剛直が突き込まれた事で、声が漏れる。最近女の体を使ってないから、久しぶりでちょっと新鮮な感じがする。
「んふふー…、ちんこは使ってても、自分の体を犯すのは久しぶりだよ。準備はいいかい、みーくん?」
「えぇ…、いっぱい犯してください…」
腕を伸ばし、抱きついて、胸を押し付けるように体を寄せる。
何度も犯された自分の体だと言うのに、どうにも心地よい。
「んっ、っふ、はぁ…! あ、む、んちゅ…!」
長い髪を揺らしながら、獣のように俺に向けて腰を叩き付けてくる。手持無沙汰になった事に気付いた唇は、いつの間にか互いの口を啄んでいた。
俺の方も腰を軽く持ち上げ、奥へ奥へと進む俺のちんこを迎え入れる。
「んむ、っぷぁ、みーくん、みーくん…!」
「撫子さ、ん、っむぅ、ちゅる、ちゅ…!」
深く繋がる事は避けていた。無くなることが恐かった。無くなりそうな物を、別のモノに繋いで、完全に消える事を塞き止めた。
セックスフレンドという事で、恋人にならないよう、意識しないよう、体はともかく口は重ねなかった。
でも、今はこんなに気持ちいい。
もっと好きに生きなと伝える撫子さんの言葉には、従っても良いという程の魔性の魅力があった。
「射すよみーくん! 私の体で受け止めてぇ!」
「んふ、っふぅぅぅん!!」
注がれる精液の熱さが染み渡る。
それは俺の体が隠していた熱なのだろうか。
それとも、俺を活かそうとする彼女の言葉なのだろうか。
解らぬままに、夜が明けようとしていた。
35片「爾後//墓参」
荷物を引っ提げて、電車に揺られること2時間半。
実家だった筈の場所を追い出されて、戻ってくる事も無いと思ってた故郷に、戻ってくる事になった。
とはいえ、俺自身が望んだから来たんだけどね。
区画整理のおかげか駅前も数年前とはだいぶ変わっていて、ちょっと驚いてしまったくらいだ。
「…場所は変わってない筈だよな」
誰に言うでもない独り言をこぼしながら、目的の場所へ向かう。
正直な事を言うと、変に肩ひじ張らず、足を借りればよかった。墓参りに必要な諸々を手に持ったままの移動は、地味に面倒だ。
近衛さんの顔と身体、あと車を借りてくればよかった気もするが…、今となっては後の祭りか。
駅から出て、20分近く歩く。目的地が定まって、脳内におぼろげな地図があれば案外迷わないものだと思いながらも、墓地に辿り着く。
入り口付近の桶に水を入れ、柄杓と共に持とう…として、ちょっと気付いた。
右手に大きめのバッグを抱えており、左手には横倒しにできない献花がある。両手は塞がってしまっているのだ。
「地味に手が足りないな…、仕方ない」
わき腹に『接続』していた桂木さんの腕を外に出し、そちらの手で桶を掴んで持ち上げる。
他に見てる人がいないから、解る筈もないだろう。そこだけは墓地というロケーションに感謝するしかない。
目的地は墓地の一番奥。そこに向かうときちんと俺の家、羽張家の墓が存在している。
元々はここに住んでいた、まぁちょっとした地主だったわけで、自分で言うのもなんだがそれなりに「お坊ちゃん」の立場だったわけだ。
けれどそこを妬んだ親族…いわゆる分家筋によって、事故を装い両親は殺された。
遺されたのは俺だけで、分家連中は遺書が無かったのを良い事に家のアレコレを勝手に奪っていった。
結果として俺は、スズメの涙ほどの親の遺産を握らされ、遠くへ飛ばされた。
本家が山を二つ三つ持ってるからって、取った手段は短絡的だと言わざるを得ない。それを咎める人間も居なかった訳だが。
「…父さん、母さん、久しぶり」
両親が眠る墓に声をかけて、墓を綺麗にしていく。水をかけ、溜まっていた汚れを拭い、花入れの中身を新しくして。
生来の腕と桂木の腕の計4本を使っていくと、疲れはするがやっぱり動きは早かった。それ程時間はかからずに墓の御影石は綺麗になった。
バッグの中から線香とライターを取り出して、火をつけ、供える。
「…………」
上下二対の掌を合わせて、墓前に祈る。その中で眠る、本当にその場に居るかわからない父母の為に。そして自分なりに心中で言葉にして、納得する為に。
…まぁ、安らかに眠ってくれとか、そういう物じゃない、単純な今までの報告だけど。
「……」
線香が燃え尽きるのにしばしの時間がかかったが、それでも言いたいことは終わらなかった。
それだけ数年の密度が(悪い意味で)高かったこともある。正直愚痴になった事が大半だ。
燃えカスになった線香の臭いが消えて、ようやく顔を上げた。
「…これで墓参りはおしまい。さてと、ここから何をしようかな」
中に水のまだ入っている桶と、そこに差したままの柄杓を脇腹に『接続』した桂木の手で弄びながら、後の事を考え始める。
墓参りをしたいと考えてはいたが、いざそれも終わるとやっぱり出てくるのは、今後どうしようかという疑問だった。
分家の連中と会いたいとは思わないし、故郷で色々やると絶対どこかで知った顔が出てくるはずだ。やるなら別の場所か。
別の墓の後ろにある塔婆と、その台座を『接続』して離せなくしながら、次の行動を考えていた。
「今後の道は大別して二つだ。この能力を他人の為に使うか、それとも自分の為に使うか…」
とはいえ、純粋に他人の為に使用したことは一度も無いんだけどね。千草ちゃんの体を作る為に、ギブ&テイクの形で彼に男の体を与えたのも、もともとは俺の目的の為だったんだし。
これまでと同じ方向性を保ったまま使い道を変えるか、それとも方向性すら変えるか。
下地作りはそれなりにできているから、手持ちも不自由はないし。
軽くなったバッグを抱え、脇腹の腕は服の中に隠し考えながら歩いていると、脚は自然と一つの場所に向かっていた。
元々俺が住んでいた家、こと、羽張の本家だ。関わらないと決めていたのに、どうしてもここに来る。
「…ふぅ」
怒りも復讐心も消え失せてきて、連中と関わろうという気も無くなっていたのに、どうしても俺の中には実家の記憶があって、そこへの未練があるみたいだ。
「ごめんね撫子さん、関わらないって決めてたんだけどな…」
1人で来ていた甲斐があったというのだろうか、今の俺は他の「俺」達にもいろいろ言われることのない、身軽な状態だ。
だからこそ、抑えが無くなってきたのもあるんだろう。故郷に帰ってきて、燻っていた物に火がついてしまったのかもしれない。
もうちょっと復讐の為にこの能力を使おう。そして、誰憚る事の無い俺として、この家を取り戻そう。
俺が俺である為の、毟り取られ奪われた物を、恥知らずの分家連中から取り戻して、俺の身に再度接がせてもらおう。
駐車場に沢山の車が泊まっているのを確認すると大きな門の前に立ち、『接続』から鍵の『分解』。
バン!と開け放って中に入ると、庭には誰も居なかった。
家の扉も同様の手順で開かせて、様相の変わってしまった玄関に立ち入る。
今の時間で中にいる全員に解る位の大声で、宣言をした。
「ただいま!!因果応報の時が来たぞ!!」
「はぁ…、いい仕事した…!!」
俺の家の大広間に、異形の「何か」が蠢いている。
爺ちゃんの弟・大叔父を筆頭とした分家筋の連中が好都合で集まっていたため、『接続』で俺の一部にしたロープで掴んで順番に全員を、適当に『分解』。
そこからは首元から2つの体を『接続』させて生やしたり、一つの腰から2つ3つの上半身を生やしてあげたり、『分解』したパーツを別の個所に『接続』したり。
目の前には、全員の体を男女問わず、関節部分でとりあえず『接続』された、“人間だったものの塊”がもがいている。
総勢20人以上のパーツを付けるのは腕が4本あっても骨が折れた。バッグ頭の存在でも作って手伝わせればよかったかな?
「き、きさま…! ワシ等の体をどうしたんだ…!」
白髪にまみれた大叔父が俺の存在を認識して声をかけてくるが、まぁ混乱するのも無理はないだろう。
そんな言葉は聞き逃した。だって、もがきの悲鳴が合唱を奏でているんだから、爺さんの声なんて解らないよねぇ。
おぞましい声の中で、とりあえず連中の記憶も必要な分だけ貰ってから、奥の間を目指す。
大叔父が自分の部屋にしていた、元・父さんの部屋には金庫があったので、適当に『分解』・『接続』した布を手袋代わりにして開ける。開錠方法なんて必要無しに、金庫の扉を『分解』してやった。
中には大量の現金と金のインゴットが数本。やぁ溜めこんでる事で。
札束を緩衝材代わりにインゴットをバッグの中に詰め込む。
中に入っていた土地の権利書なんかは、まぁくれてやって良いかと考える。どうせこんなになった連中には使えないしね。
金庫の扉を『接続』し直して、バッグを持って立ち上がる
「よ、っと」
解っていたけど、金塊は重い。来た時よりだいぶ重量の増えたバッグを抱えながら、大広間に戻った。
当然だけど“人の塊”はどうにか動こうともがいており、しかし全員の意志疎通が出来てないのでバラバラに動こうとしている。
無様なバケモノに向けて、大きな声でちゃんと教えてやった。
「よく聞け人殺しども!
お前等の体はとっても面白い事にしてやった! お前等の悪意が報いの結果を伴って返ってきたぞ!
だけど同じ所まで堕ちたくはないから、殺しはしないでおいてやる! 殺さないだけだがな!
全員仲良く一蓮托生で“バケモノ”のままに死ね!!」
こいつ等は今や、20人以上の体で構成された全員で一個の生命体だ。切り離すことは出来るだろうが、塊から切り離された存在は死ぬだろう。
もしそれが出来たとしても、結局だれ一人残らないような形で『接続』させてやったから。
「この家も何もかもお前等にくれてやるよ! その代わり、お前等の今後は何もかも貰う!
バケモノとして見つかって、バケモノとして処理されて、二度と来ない人間としての未来を夢見て、下衆の囁きに乗った自らの行為に臍を噛め!」
聞こえてくる後悔や意見の声を聴き流し、駅前の電話で警察に匿名で通報し、すっきりした気分で帰途についた。
その2日後。
「ヘイみーくん!」
「なんです?」
「みーくん、あの連中には関わらないって言ったよね。何この新聞記事!」
「あぁ、ちゃんと載ったんだコレ…」
撫子さんが地方紙の一枚を俺に見せてくると、前日の行為の結果がきちんと新聞の、奥の方のさらに片隅にだが、載っていた。
何をどうしたか解らない、人間で構成された謎の物体がある家で見つかった事。その人間達は全員が錯乱しており、詳しい話を聞けていない事が。
「どうしても抑えきれなかったんですよね。連中にもきちんと、やった事を返したかったというか…」
「…それがしたい事だったなら止めなかったんだけどさ。みーくんバカバカしいって言ってたじゃん!」
「言いましたよ、けどね…」
金塊の管理は、桂木の親に任せておいた。現金は桂木の口座の中に振り込まれており、貯金額の桁が増えている。
「それ以上に気になってしまったんですよ。…撫子さんに言われてからね」
「…………」
ちょっとだけ、沈黙があった。
「ねぇ撫子さん。俺を弄って遊ぶの、楽しかったですか?」
「…何を言ってるのかな、みーくん?」
どこかにんまりと笑っている彼女は、いつもと変わらないように見える。
けれどその背中に、人間ではありえない蝙蝠のような翼がついていた。
「これ、もう終わらせましょう」
俺は彼女の目を見て、ハッキリと告げた。
最終回 36片「接続//分解」
「えー、みーくんお気に召さなかった?」
「十分に楽しめましたよ。というより、それくっつけてると普通に服着れないでしょう?」
彼女の肩甲骨辺りに『接続』している、おもちゃの蝙蝠の翼を『分解』して取り外す。
「いやー実は寒くて寒くて。日ごろ暖かいけど、下着姿はさすがにね!」
「昨日の遊びは堪能できたようで何よりですよ」
実は先日、撫子さんに悪魔コスプレをさせる為に、おもちゃの角と尻尾と羽を彼女に『接続』して、それっぽくして遊んでいたのだ。
「羽根とか尻尾とか、動かせるようになるのって難しいね。やっぱ人間に無い器官だからかな」
「多分…? 俺もまだ、その辺は『接続』して遊んだ事は無いかな」
もともと人間が持っている器官であるなら、自分の体のように動かせることは出来るのはもうわかっていた。でなければわき腹に付けた腕とか普通に使えないって。
「じゃあ今度はみーくんが悪魔やろうぜ! 私が襲われる役やるから!」
どこから買ってきたのか解らないちんこケース(コテカ)を撫子さんは取り出してくる。
いやそれを使えってか、挿せってか。
「それ、挿す物じゃないですよね。どこのデジタル悪魔物語ですか」
「えー、淫魔がこれっぽいの股間に付けてたのにー」
「膣内とか人間の限界越えますよねそれ。内臓貫けますよ」
「…ゴメン、やめて。お腹キュっとした」
ちんこケースを引っ込めて、撫子さんは服を着始める。
「じゃあ最初から出さないで良いじゃないですか。…まったくもう」
ちょっとだけ溜息を吐きながらも、俺に背を向けて着替えをしている彼女を見る。
背中からでもしっかりと解る、くびれた腰、丸いお尻、豊かな胸。余計な肉が殆ど無い、すらっとした手足。
美人と言って問題無い位の容姿だが、性格の明け透けさ加減は逆に親しみやすく、同時に人を選んでしまうのだろう。
「撫子さん」
「なーにー?」
「好きですよ」
「おぅ、私もみーくん大好きー!」
シャツの上しかボタンをしめてない状態で撫子さんがこちらに飛び込んできた。
今使っている桂木さんの体でぎゅっと抱きしめると、柔らかい身体同士が触れ合う。
「ん~…、やっぱり良いねぇ女の子の体って! 下にくっ付いてると、どっちも楽しめるからなお良い!」
彼女の太ももが触れてくる俺の股間にはちんこが『接続』されていて、その柔らかさに屹立していく。
当然のごとくそれには気づかれるので、どちらからともなく顔を見合わせ、唇を重ねていく。
「…みーくん、元気だよね。シよっか?」
「そりゃ勿論。今日もタップリシちゃいましょうか」
ベッドの上で座る俺と向かい合い、ショーツをずらして対面座位の状態になって、撫子さんが腰を折ろしていく。ぬるりとした柔肉に包まれ、背筋を快感が走る。
「ふぁ、んっ、っふぅ…! 奥、当たるぅ…!」
腰を突き上げると、撫子さんの子宮に当たっていく。彼女の方も貪欲に欲しがってきて、俺の方に腰を押し付けてくる。
眼前で揺れる胸を口に含みながら、大きな尻たぶを掴んで揉みながら、俺の方へ寄せながら、彼女の中を貪っていく。
「ん、っぅっ!?」
その瞬間、ちんこの下にあるまんこに接触される感触があった。
「んふふふー、みーくんの下のお口も、ちゃーんと使ってあげないとねー?」
ベッドの上に放られていた電動ディルドが、俺のまんこに挿入されていく。既に中が濡れているとはいえ、不意打ち気味の攻撃はさすがに効いた。
「ん~~…! っく、ぅん…!」
「ふふふ、今のみーくんの体は敏感だからね。動きが止まっちゃったよー。とりゃ!」
「わっ!」
押し倒され、騎乗位に変わると同時に、ディルドのスイッチを入れられる。電子音と同時に振動が走り、それがちんこにも伝わっていく。
「ん、んぅぅぅ……!」
「おぉぅ…、ちんこの振動がこっちにも…! もっと奥に、っふぅ…!」
ぐっと腰を押しつけられ、互いに手を動かして胸を揉み合った、激しい動きの無いセックスがしばらく続いた。
「出る…、っくぅ!!」
「おふぅ…! っはぁ~…、気持ちイイ…」
限界が近付いて、撫子さんの子宮目掛けて思い切り精液を吐き出す。
同時に彼女も軽いオーガズムを感じたようだ。
別の日、女の体を男の制服に押し込めて学校に通っている、保体の無い日。
特に運動が無い日は、女の体にちんこを付けて登校という千草ちゃんと同じような状態にしている。
そんな日の昼休み、空き教室内で菫ちゃんと胡桃ちゃんを横に侍らせながら食事をしていた。
「菫ちゃん、「俺」のお弁当もうちょっと頂戴?」
「食べきらないでよ、胡桃? …「俺」は良いかしら?」
「良いよ胡桃ちゃん、いっぱいお食べ」
互いに作ってきた弁当を、少しずつ分け合って食べている。こちらも女の体だから、男の体と比べて小食で済んでいる。
胡桃ちゃんが美味しそうに食べていると、
「はい、「俺」もどうぞ」
「…ん、あむ」
菫ちゃんがおかずを掴み、俺に差し出してくれた。彼女の箸を口に寄せ、租借して食べる。
「どうですか?」
「…ん、美味しいよ、菫ちゃん」
「あ、私も「俺」にやる! はい、あーん!」
「あー、ん」
それに触発された胡桃ちゃんが、同じことをやってくれる。菫ちゃんのヘルシーな味の薄めお弁当に比べて、胡桃ちゃんの方はやや濃い目。
男としての感覚なら胡桃ちゃんの方が好みだけど、体の事を考えると菫ちゃんの方が良い。甲乙つけがたいとはこのことか。
俺? 俺の方は撫子さんに、女の子の好む味を教えてもらったよ。
「「「ごちそうさまでした」」」
3人で同じ言葉を口にすると、それぞれ持ってきたお茶で口を潤す。
「それじゃ…」
「シよっか」
同時に2人が服を脱ぎはじめ、互いの服が混ざらない様に別の場所へ寄せる。俺も同時に服を脱ぎ、女の裸身を晒す。こんな時は桂木さんの薄い胸で有難いと思う。
全員で、別々に買って揃ってしまった“俺の好みの下着”を脱ぎ捨てると3人同時に唇を貪るように吸い付いた。舌が絡み合い、混じり合った唾液が受け止められず空き教室の床に落ちる。
体を寄せ合うと左右の胸が別々の胸に触れて、お互いに心臓の鼓動が伝わってくる。
菫ちゃんのCカップと、胡桃ちゃんのEカップの胸が俺のAカップを押しのける様に触れてくるため、何となく悲しい気分になった。
「は、んむ、ちゅ…っ」
「「俺」のになった、那月ちゃんのおっぱい…、んむぅ」
「っひ、ぃ…!!」
腰を突き出すような姿勢にして口を下にさげ、2人して俺の左右の胸を啄んできた。別々な力加減が断続的に胸に響き、声が出そうになるのを抑える。
「も、2人とも…。こっちも濡らしてきてるんでしょ…?」
手を伸ばし、突きだされた二人のまんこへ、お返しとばかりに指を滑らせる。
2人とも確かに濡れ始めていて、すんなりと指が入ってしまった。
「ん~、ん~~…!」
「「俺」の指が、入って、はぁ…!」
恍惚とした菫ちゃんと、気持ち良さで胸に吸い付いたまま耐えている胡桃ちゃん。
そんなに強く吸われると、気持ちよすぎる…!
「……胡桃」
「あ、うん…!」
俺の股間に気付いた菫ちゃんが、胡桃ちゃんを伴ってさらに頭を下に持っていく。
先走りを溢れさせたちんこを左右から舐めまわされる。
「はむ、はぷ…、ぢゅる…!」
「ん、ちる…、っちゅぅ」
「っは、あ、2人とも、良いよ…」
胡桃ちゃんに亀頭を優しく口に含まれ、菫ちゃんは竿や玉を舐めていく。体が下がられたので、もう手で弄られることは出来ない。
けれどそっと頭を撫でながら、彼女たちのくれる快感を享受していく。
「出すよ、胡桃ちゃん。そっちも独り占めしないでね」
「はーい。菫ちゃん、半分どうぞ」
「ありがとう。…れ、ろ」
亀頭の半分ずつを2人が舐め始めた所で、俺も我慢を解いて射精する。びゅぅと吹き出した精液が二人の顔にかかり、自分が少しでも多く貰うんだと言わんばかりに互いに付いた分を舐め始めていく。
その光景を見つめながら、鞄の中から双頭ディルドを取り出す。片方を俺のまんこに挿しこんで抜けないよう『接続』、上下に二本のちんこが生えたようになる。
「ふふ…。それじゃ2人とも、体を合わせてこっちに向けて?」
言われたままに貝を重ね合わせた2人に、俺は2本のちんこを挿しこんだ。
女の子の体を、何度も味わうために。
また別の日。
銭湯「銀の湯」にて、今日も営業時間は終了となった。
最近はバイトで入った千草ちゃんの事も考えて、22時で通常業務は閉店と相成る。
「お疲れ様、千草ちゃん。今日も人気だったわね」
「そんな事言わないでくれよ…」
藤花さんが、今日もオッサンたちに人気だったら千草ちゃんを横にさせて、マッサージで労っている。最近そっち方面での客はよく取られてしまって、少し不満らしい。
ちなみに言葉遣いは男のままで、女の物に矯正はさせていない。本当はさせても良いんだけど、男言葉のままの方が「元男」というのが解って良いと思う。
「あーぁ、千草ちゃんがこんなに人気なら、私も「俺」に付けてもらった方が良いのかしら」
「藤花さんにいきなり生えたら、多分他の人が驚くよ。それで認識弄るのも大変だしね」
「そうね、ごめんなさい、「俺」」
俺も千草ちゃんの体を、藤花さんの知識を使って揉みほぐしている。単純に作業効率は二倍になる事の他、やりたい事をする為にはマッサージの終わりは早い方が良かった。
裸のままで俺達2人に揉まれている千草ちゃんは、少し体を震わせている。丸くなったお尻の間にある菊座とまんこが、少しだけひくついている。
ふぅん、と感付きながら、俺は千草ちゃんの耳元に声をかけた。
「千草ちゃん、犯された感覚がまだ疼いてるんだね…?」
「う、うるさい…! 羽張の言いつけが無きゃ、こんな事するもんか…!」
「せっかく大きいのに使えないなんてね。千草ちゃんは可哀想だわ」
千草ちゃんは、一応「俺の赦しが無ければ女を犯せない」という、勃起しても、挿れようとしたら萎えるような刷り込みをしている。
必然的に女として犯されるしか道が無いのだ。だけどこのままだと、ちんこを持たせて「男」だという意識を持たせてる甲斐が無い。だから、
「…じゃあ、頑張ったご褒美として、今日は挿入していいよ?」
「ほ、本当だな!?」
俺の許しが出た瞬間、立ち上がった千草ちゃんのちんこは大きく勃起した。
「本当だとも。それに今日は…、俺に挿れて良いからね」
「……っ」
服を脱ぎ、ちんこの無い女の裸身を晒す。足を開いてまんこを手で拡げると、千草ちゃんは久しぶりの男の役目に、目を強く見開いてこちらを見ている。
ゆらゆらと近づいてくる千草ちゃんと、彼女のちんこ。先端が触れると、一気に中へ挿しこまれた。
「あぐ…っ、キ、つい…!」
「はぁ…、は、ぁ…! あぁ、女の…、女の中だぁ…!」
千草ちゃんのちんこは相変わらず大きく、押し広げられた影響で目がチカチカする。
荒い息を吐きながら、体と胸を揺らして抽送を行う千草ちゃんは、取り戻せないと思った「男」である事を自覚して、嬉しそうにしている。
まぁ当然、それだけで終わらせるわけもなく。
「あら、千草ちゃんは女の子でしょ? 男のままで終わると、思わないでよ!」
「っふぅん!?」
「はぁ…っ、奥、来たぁ…!」
俺のちんこを『接続』していた藤花さんが、夢中に腰を振っていた千草ちゃんのまんこに挿入していたのだ。
「ひ、ひでぇよ近衛さん…、俺、久々に男に戻れたと思ったのに…」
「ダメよ、いくら男役をしていても、千草ちゃんは女の子なんだもの。胸も、腰も、おまんこもぜぇんぶ、ね?」
藤花さんの手が、千草ちゃんの体に触れて女を再認識させる。千草ちゃんの体を介した、藤花さんの抽送は激しく、男の動きをさせる間もないままに、再び千草ちゃんを「女」にしていく。
「「俺」もどうぞ、おっぱいですよ?」
「わーい♪」
「あっ! やだやだやだ! 胸揉むなぁ、犯すなぁ…! 今日は俺、男なのにぃ!」
前後2人がかりで胸を揉んでいると、千草ちゃんは嫌がる様に身をよじる。
けれど前は挟まれ、後ろから挿されたものは挟み込んでいる。逃げられず、挿入している筈なのに、犯される女の立場から逃れられない。
ずんずんと藤花さんが遠慮知らずに腰を叩き付けていると、
「あ…っ!」
小さな喘ぎと共に、千草ちゃんに射精する。出された事を理解した千草ちゃんは僅かに青ざめて、
「や、あぁ、いやぁぁぁ!!」
女みたいに叫びながら、俺の中に射精した。
さらに別の日。
江美ちゃんが、学校の勉強で解らない事があると言う為に教えてほしいと言ってきた。
結城家にご案内され、両親が居ないという事で遠慮なく入らせてもらう。
「で、解らない所はどこかな?」
「ココよ」
と言われて教科書とノートを見ると、…あれ?
「江美ちゃん、これ、全部わかってるよね?」
数学の公式はしっかりと書かれており、教師の出しただろう問題もきっちりと正解している。
「えぇそうよ、勉強なんて口実。…実は今日は、「俺」に聞きたい事があったの」
「どうしたんだい? 急に改まって…」
背筋を正して座った江美ちゃんは、じっと俺の方を見てくる。少しだけの逡巡の後に、彼女が口を開いた。
「…「俺」は、アタシの処女を、いつ奪ってくれるの?」
そう、実は俺は江美ちゃんをしっかりと抱いてはいないのだ。
前に「俺」に引き込んだ時は、ちんこを『接続』させて男の快感を教えていた訳で、その分の快感は知っている。けれど本来の女としては、まだなのだ。
仕方ないなと内心思いながら江美ちゃんの目を見つめ返す。
「その“背伸び”が無くなってからかな? 急に大人になろうと、きっとどこかで反動が来ちゃうからさ」
「…でも、みんな「俺」に抱いてもらってズルいよ。アタシだけ仲間外れみたいじゃない!」
ちょっぴり子供みたいにダダを捏ねる江美ちゃんは、やっぱり可愛かった。
「…じゃあ、今日は抱いてあげるよ。お望みの形じゃないかもしれないけどさ」
「ホント!? 「俺」がヤってくれるなら、是非お願い!」
我が意を得たりとばかりに江美ちゃんは服を脱ぎ、私室の中で裸身を晒す。まだちょっと「成長途中」と言わんばかりの、括れも膨らみも少ない体だ。
俺も制服を脱いで裸になる。股間のちんこは江美ちゃんの体に反応してて、わずかに持ち上がりかけていた。
「でも今日は、これは使いません」
「あ…っ」
『分解』でちんこを外すと、落胆されてしまう。
「今日は女同士でだけれど、抱いてあげるよ。ほら、江美ちゃん」
「うぅ…、うん」
少しだけ膨れた顔を治すように、唇を重ね合わせる。舌を絡めて唾液を合わせ、リードする形で江美ちゃんの体を下に横たえさせる。
「江美ちゃんは急がなくていいんだよ。ちゃんとご両親が居て、愛情を受けていられるんだから」
「急がなくても良い…?」
「そうだよ、でないと…、俺みたいになっちゃうから」
「ひゃんっ」
体を寄せ、わずかに立った乳首同士を擦り合わせる。黄色い声が江美ちゃんの口から洩れた。
それと同時に俺も喘ぎが出そうになったが、しっかりと歯を噛み堪える。今日は俺がリードする側だからね。
しかし悔しいのが、今の俺の(桂木の体の)胸が、江美ちゃんより地味に小さいという事だ。これは別の意味で歯噛みしてしまう。
「あ、ん、「俺」の手付き、優しい…」
「江美ちゃんが可愛いからね。優しくしてあげたくなるんだよ」
そっと未成熟な身体に手を触れて、性感を煽る様に触れてあげる。何度も何度も手を添えて、優しく。
しばらく触れていると、彼女のおまんこが濡れているのが分かった。それを見計らって、そこに指を挿しこんだ。
「はふぅ…!」
「…ん、良い感じ。それじゃあ…!」
指に愛液が絡みついてくるのを確認すると、俺も自分のまんこを触って確かめる。こっちもちゃんと濡れている。
江美ちゃんの脚を広げさせて、俺の股間を江美ちゃんの股間と触れ合わせる。男女の結合とは微妙に異なる熱さが、2人の股間に伝わってきた。
「っは、あ、んふぅ…!」
「ほら、江美ちゃん…、そのまま、俺に委ねて、全部を…」
まんこ同士が愛液で滑り、じわじわと身体を頂へと押し上げていく。ちんこの分だけ深く繋がれない部分を埋める様に、身体同士を重ねたいけれどそれも出来ない。
そんな、もどかしい交わり。動く度に広がったまんこが触れ合って、時折クリを突き合わせる。
「ね、ねぇっ、手ぇ、握って…!」
「うん…、江美ちゃん、イっちゃう?」
「も、っ、ダメ…! っふぁぁ!」
手を握ると、安心したのか江美ちゃんが俺の下で潮を噴き上がり、俺のまんこにも掛かる。
じんわりと広がる女の絶頂に揺らされて、それでも江美ちゃんは幸せそうだった。
「ねぇみーくん」
「どうしたんです、撫子さん?」
乙木の代わりに調子に乗り始めた男から『分解』させた筋肉を、撫子さんの体に『接続』させている最中。
四肢を『分解』されて、トルソー状態になった彼女が、暇してますと言わんばかりに声をかけてきた。
「みーくんの能力って、誰が与えてくれたんだろうね」
「そうですね…、確かに気にはなるかな?」
この能力が無ければ、俺は今でも乙木達の攻撃に耐え、分家筋の連中の悪意に食まれたままだったろう。
この能力が無ければ、撫子さんともこんな関係にはならなかっただろう。
けれど、
「解らない限り、気にはしない事にします」
「ん、そっか」
どんな理由でこの能力が手に入ったかわからないが、それでも今俺の手の中にあるのだから、気にしないことにする。
そんな事を考えていれば、息苦しくなってしまうのだから。
「ねぇみーくん、今幸せ?」
「えぇ。…はい、繋げますよ」
幾分か力の強くなった四肢を撫子さんに『接続』させると、彼女はいつも通りに抱きついてきた。
ちょっとだけ痛い。
たとえこの力が神や悪魔が与えた物でも、繋ぎ止めた物は放すものか。
その生き方が無様だとしても、体だろうと関係だろうと心だろうと記憶だろうと、接いで解いて生きてやる。
まずは、目の前の悪魔みたいな誘惑をしてくる女性と繋がろう。性的にね。
エロシーンなどはかなりよかったと思うけど
誰が誰とどんな風にプレイをしているのかが少し読み取りにくい。