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TS学園の男の娘

2019/08/14 13:53:41
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この日は重大な学校全体集会がある、くれぐれも欠席しないように、欠席したら大きく成績にひびくぞ。
担任にそう脅されたこともあってか、今日の全体集会には欠席者はいないようだ。
実のところ先生もその集会で何があるのかは詳しく知らないようだった。ただ、職員会議でそう伝えるようにとお達しがあったようだ。

で、いざ当日。全校生徒が体育館に集まり、男ばかりの暑苦しい空間ができあがる。
男子校だから女子がいないのは当然。そんなことはわかっている。逆にいたら問題だ。
でも教師まで女性がいないってのはどうかと思うんだよね。どうしてそこまでこだわってんだろうちの学校。

そんな男ばかりの空間の体育館に、さっそうと演壇にあがったのはものすごい美人。
びしっとレディーススーツに身を包み、ウェーブのかかったブロンドヘアが特徴的な美人に視線が集まった。
先ほどまでざわざわと落ち着きなく、私語に興じていた生徒たちは一瞬にして沈黙した。
美人の力は絶大だった。男ばかりの空間に一輪の美しい花が現れたからだ。それも極上の。

『初めまして。私は新しい校長の双葉です』

その自己紹介に静かだった生徒たちがざわつき始めた。
さて、これはどういうことだろう。別に新学期でもないのにどうして急に校長が変わるんだ?
あの髪の毛の後退が激しいいかにも中年な校長は一体どうなったのだ?
やたら厳しく小言が多いイメージだった校長だが、実は裏で何かやらかしたのかな? それで急に交代?
あれこれと憶測が飛び交うが、そんなものを吹き飛ばすとんでもないことを新校長は言い放った。

『今日からわが校は女子校になります!!』

おい、なに言っちゃってんだよ。
あまりにもひどい発言に体育館は静まり返った。だが、それは一瞬だけだった。
次の瞬間、美人の校長はいつの間に謎の物体を手にしていたのだが、鏡なのかスマホなのか、そう見えたと思った瞬間に――――


強烈な光が、体育館をつつんだ。


「うおっ!?」「わっ、眩しっ!!」「目が、目があぁぁぁっっっっ!!」

あちこちで起き上がる絶叫。手に持っていたちっぽけな物体が何でこんな強い光を、と考える間もなく。
あたりで響く絶叫や規制や悲鳴が次第に遠くなって、一瞬意識を失っていた。
だがそれは本当に一瞬。次第に強烈な光はおさまっていき、次第に視力も取り戻していく。
一体何だったんだ? と思ったところで、別の光景が目に飛び込む。
場所は同じ体育館。移動はしていないはずだった。
だが、その周りにいたのは―――大勢の女子だった。

「え、何?」「は、何で女の子が…」「だ、誰だよ?」

その反応は皆同じようなもの。突然の出来事に混乱しているものがほとんど。
それも皆レベルが高い。顔よしスタイルよし胸大きい。
どこかのアイドルグループか、はたまたグラビアアイドルだといわれても納得するぐらいの可愛い女の子ばかりだった。
しかも来ている制服はアイドル衣装にもなってそうな可愛いデザインで、それでいてミニスカートのちょっと魅惑的な。

何でそんなレベルの高い女子がこんなに、という疑問の前に、ふと違和感を感じる。
自分の体に違和感。足元がスースーする。そう思って下を見たら……
え? 何このふくらみ。胸になんか入ってる?
いや、入ってるんじゃない。肩にかかる重量感、そしてそこから神経を通して感覚が伝わってくる。
スースーするのは周りの女の子たち同様、僕もスカートを穿いているから。
これは、まさか……

「え? なんだこれっ!」「は? 何でスカート!?」「む、胸っ!?」「な、ないっ!?」

周囲の女の子たちも僕と同様の反応をしている。
はたと気が付き、隣に一番近くにいる女子と視線が合った。
驚いた表情で僕を見つめる。きっと僕も似たような表情だったろう。
うん、すごく可愛い。可愛いけど、僕の脳はその子が誰なのかを不思議と認識していた。

「と、トシアキ?」
「え、キヨヒコ?」

間違いなく、その子はクラスメイトのトシアキだった。

「は、アキマサなのか!?」「げ、ヨシムネがこんな……」「うわっ、タカユキめっちゃ可愛いっ!」「な! 先生が……」

周囲も同様の反応だった。
生徒たちが……いや、教師までも、みんな、女の子になってる!?

『は~いっ、これで皆さん今日から女の子でぇ~すっ』

どこか間の抜けた声が響き渡る。マイクを通して体育館に響くその声の主は校長。
突然のことに混乱していた生徒教職員たちはその声の主に一斉に振り向いた。
周囲で起こる混乱をわかっているのかわかってないのか、ニコニコとした表情を崩さない。
この感じからするとこの美人の校長も、もしや……

『みんなこぉ~んなに可愛くなったんだからぁ、これからの学校生活楽しんでいきましょうね~』

特に長ったらしい説明もなく、ただその一言で終わってしまった。そして校長はさっさとその場を去ってしまう。
残されたのは、呆然とする生徒教職員。

「うん、まあ……確かにいいかな?」
「だな。こんなに可愛くなったし」
「俺が、美少女? ブ男だといわれていた、俺が?」
「これはこれで、楽しくなりそうかな?」

なんとなく皆納得する。
周囲を見れば皆かわいい女の子になっていた。トシアキも、ツネヨシも、タダマサも。
それなら、僕も可愛くなってるよね?
自分、背が低くてさえない顔だってことは自覚している。それが、女の子になったけど、見た目良くなっているなら、それはそれでいい。
そうなったら早速、鏡を見に行かなきゃ!





それからはもう、女の子を楽しみましたよ。
さっそくとばかりに皆鏡に向かって自分の姿を確かめて。
といっても学校にそこまでたくさん鏡があるわけじゃない。だからトイレや廊下にある鏡の前には人だかりができて、なかなか自分の姿を確認できなかった。

そういうこともあってか、その日は早々に授業は終了、帰宅となった。といっても最初からその予定だったかもしれないけど。
で、僕もさっさと帰宅。しようとしたところではたと考えた。

家族に、なんて説明しよう。
今日学校で女の子になりました。なんて言ったとしても信じるか普通?
どう考えても頭のおかしい女の子がいきなりうちに来たとしか思えないだろう。
どうやって自分を証明するか、それって意外と難しいぞ。

と思っていたのだが、帰宅すると母さんは「あらお帰り、早かったのね」とごくごく普通だった。
あまりにも普通なので拍子抜けしてしまい、「ねえ、どこか変じゃない?」と聞いたけど、「うーん、すごく可愛くなったわねぇ」の一言。
いやいや、息子が娘になっているんですよ。もうちょっと驚こうよ何でちょっと髪切って来たね程度の反応なのさ。

不思議だったけどとりあえず無駄に心配しただけだった。
とにかくその時僕は少しでも早く自分の姿を確認したかった。
自室に入り、厳重に鍵をかけ、窓も閉めカーテンも閉め、緊張の中鏡の前に立つ。

その時は本当に驚いたよ。なにこれどこのアイドル? って具合。
決してイケメンなどではない冴えない自分が、こんなかわいい女の子になっているなんて!
やたらかわいいデザインの制服がよく似合う。しかも、スタイルもいい。
男だったら気になるよね、このふくらみ。胸、おっぱい。
もちろん触ってみた。大きい、柔らかい。うんうん、ずっと揉んでいてもあきないぐらい。

それとスカートの中、そっとたくし上げて、中を見ちゃったら……ぱんつ! そしてまったいら!
う、うん。これはもっとよく観察しなきゃ……脱いでも、いいよね? 自分の体なんだし。
それからは制服脱いで、ブラ外して、おぱんつ脱いで鏡の前でくぱぁ、みたいな。

あ、はい。やっちゃいました。女の子ってすごく気持ちいいものですねぇ。
ショーツ汚してしまって……なんで汚したのはあえて言わないけど、着替えなきゃって思った。
それでタンス開いたらこれまたびっくり。服が、全部女の子ものになっていた!
下着もですよ! いつの間に!? 一体どうなってるのさ。


そのあたりはみんな同じだったみたい。翌日はなんだか寝不足な生徒が多かったし。
女の子になっても中身男子なんだから、エッチなことに興味はあるよね?
特に女子校化翌日は盛り上がったね。女の体ってすげーみたいな。

あとおっぱい自慢。みんなオッパイ大きいもんねぇ。EとかFとか普通で、トシアキはJカップだってよ、爆乳!!
ちなみに僕はDカップ。一応巨乳の域にはなってるし美乳だけど、みんなと比べると小さい方。うーん。
制服だってみんな大満足。可愛いデザインでアイドルっぽさが引き立ってるしねぇ。

ただスカートが短いのがちょっと気になるのは同意見。スースーするのがね。
女子ってこんなの着てるのかと改めて感心しちゃったよ。
ただしさらに強者がいて、そこからさらに腰の部分を折り曲げてぎりぎり短くしているのも。
男としてエロを追求するのは当然だろ! なんて言ってたけど、今は女の子だよね?

ところで体操着、どうしてブルマなのさ。
一体誰の趣味? これ誰が決めたんだ?
といってもエロい中身男子な面々は大半は好印象。
クラスメイトのブルマ姿にお互いに鑑賞しているから。まあいいけどね、僕も見ている分にはうれしいし。
そんなこんなで女の子になってちょっとエッチな話題に花開き、女子校化はおおむね盛り上がっていたのだった。

しかし、どこにも例外という者はあるんだよね。





「どうして……」

学校のトイレの個室の中で僕は茫然としていた。
女子校化して2週間ぐらいが立ったころだった。登校してしばらくすると、体に違和感を感じた。
下腹部が、ショーツの中が何だか苦しくなってきたから。急に締め付けられるような感じで。
なんでだろ、変なもの食べたかな? そう思いながらトイレに駆け込んでショーツをおろしてみたら……これだった。

ぼくに、おちんちんが生えていた。

どうして? だって僕女の子だよ? 今朝だってちゃんと座っておしっこしたし、昨日も……その、指入れてオナニーしちゃったし。
昨日指を入れていたその穴は、なくなってる?
どうして急に生えてきた? いやそうじゃなくて、ここだけ戻っちゃったということ?
びくびくと鼓動しているそれ。すごくグロテスクに見えてしまう。自分の体についているのに、別の生き物にも見える。

今までずっと自分にあったものなのに……そうだこれ自分についていたんだ。
僕は男だった。だからこれ、自分についていたもの、男だったら、あるはずのもの。
あ、この具合……確かに僕のだ。
手にするとしっかりした固さ、そして熱い。サイズ感、しっくりする感じ、間違いなく僕についていたもの。

うわすごい久しぶり。なんだか久々の再会みたいな、なつかしさみたいなものが。
あ、だめ。久々で、つい、手が……
んっ、無理っ、止められないっ。僕の、僕自身の女の子の匂いが、反応しちゃって……
でもこんな状態で、固くなった状態で戻ったら、危ないよね?
周りは女の子ばっかりなんだもん。そんな状態で、固くしたままでいたら、もっと危ないよね?

あ、やっ……気持ち、いいっ!
すごく久しぶりに……おちんちんっ、そう、その感じが、懐かしい………
うんっ、ぞくって……あ、ダメっ。この感じ……で、でちゃうっ……!!
ま、ずい。前かがみになって、中に、汚さないように……
声、声を出さないようにっ……!!

「んっ、んぅぅぅっっっっ………!!」

びくんびくんと、おちんちんが跳ね上がる。そして真っ白い液体を吐き出し続ける。
うわぁ、いっぱい出ちゃったぁ。便器の中が白い液体でいっぱいになっちゃって。
それと……すっきりした感。
あー、うん。男って抜いた後はなんだか虚無感になるよねぇ。
でもすーっと、体が軽くなった感じで、胸のつっかえているものがなくなってくみたいな。

ん、胸?
あ、あぁぁぁぁぁっっっっっ!! 僕のおっぱいが、なくなってるぅぅぅっっっっっ!!
Dカップが、僕の美乳が、まったいらに。
これってつまり、完全に男に戻ったってこと?
ど、どうしよう……





個室を出て鏡をチェックしたけど、完全に元に戻ったというわけではなかった。
顔は相変わらずカワイイ女の子のままだったし、体の骨格も男特有のごつごつした感じじゃない。
ぱっと見は女の子のままだ。だけど、間違いなく胸はなくなり下は生えているわけだから、男に違いはない。

これ、どうしよう。女の子に戻れるのかな? ていうか、他に同じように戻っちゃった人いるのかな?
でも、なんとなく聞きづらい。僕だけ男に戻ったなんて言ったら、どういわれるだろう。
仲間はずれされちゃう? それは、いやだ。
ここにきてこんな憂鬱になってしまうなんて……
はぁ、と盛大にため息ついて教室に戻ったら、それを友達のトシアキはしっかり見ていたようだった。

「どうしたキヨヒコ。ため息ついて」
「あ、うん。なんでない」
「そうか? 妙に気の抜けた顔してんぞ」

いえ、気が抜けたというより賢者タイムかもしれません。

「ところでよ、キヨヒコ。トシアキのやつすげーぞ」
「そーそー。今それで盛り上がってたんだよ」

ツネヨシとタダマサが会話に混ざってくる。というよりトシアキ含めて3人で盛り上がっていたようだ。
何に? と尋ねる前に会話で盛り上がっていたのだろうトシアキが話始める。

「ふふっ、キヨヒコも興味持つだろーよ」

ずい、と迫るトシアキにどきりとした。
トシアキは僕らのその手の関心が一番高いかもしれない。
おっぱいはJカップの爆乳で、シャツが苦しいのかわざとなのか第2ボタンまで外して谷間くっきりとさせて。
さらにスカートはギリギリまで短くして、露出が多い。

そしてこの接近。トシアキの女の子の匂いが僕の鼻をくすぐる。
魅惑だ。まずい、僕の男の子の部分が反応し始めている。さっき抜いたばかりなのに。

「な、なにさ。興味持つって?」

気分をそらすため、会話するようにする。が、それは逆効果だった。

「これだよこれ、じゃーん」
トシアキは、スカートをたくし上げた。
「……っ!?」

その中は、紐パンだった。
サイドに結び目が付いていて、布の面積がすごく少ない、エロいやつ。

「ついに買っちゃったぜー」

自慢するようにスカートをたくし上げたままぐるりと一回転。
後ろはさらに面積が少なくなっていてほぼ紐! お尻が丸出し状態!?

「いいよなーこれ」
「俺も買っちゃおうかなー」

ツネヨシとタダマサも大いに盛り上がっているが、僕はそれどころではない。
別の部分が、体の一部が盛り上がり始めてきて……やばいっ!?

「ちょ、調子悪いから保健室行ってきまーーーーーすっ!!」
ダッシュで逃げた。





「男に戻った、ねぇ」
「はぁ……」

その後本当に保健室に来てしまった。
引き返すわけにもいかず、かといってこの悩みをそのままってわけにもいかず、少しは何とかなるかと思って保健室の先生に打ち明けたのだった。

保健室の先生も当然のごとく、元男現女。
野暮ったそーな、無精髭の生えた若いのかオッサンなのかよくわからなかった先生は今はすっかり美人。
しかし美人になったからといって野暮ったさがなくなったわけではなく。
くたびれたシャツとスラックスだった保健室の先生は、今はなぜか下着に白衣!?
それもガーターベルトのついた大人なデザインの下着。もう一度言います、その上に白衣です。服を着てください。

「見た感じはごくごく普通の可愛い女の子だけどねぇ」

カワイイ、って言わないでください恥ずかしい!
それと本当に服着てください。目のやり場に困ります。

「ちょっと失礼」
「わひゃっ!?」

いきなりスカートめくられた。

「あー本当についてるねぇ。久々に見たわぁ。しかも勃起」
貴方がそんな格好しているせいです! だから服着てくださいって!
「わ、ちょっと……」
さらにショーツ引っ張られ、おまけに触ってきた!?
「うーん、確かに本物だねぇ」
まさかの痴漢行為に顔を真っ赤にするしかなかった。この人、デリカシーなさすぎ。

「原因はわからないけどしばらくは様子見だね。とりあえず担任には俺から報告しておくよ」
「あの、秘密にしておくってのは……」
「そりゃ無理だろ。色々面倒が起きそうだからな」

そりゃそうだよね。報告って大事だよね。
まあ、そのあたりの面倒ごとを何とかしようとしてくれるあたり、ある程度この人は信用できるかな?
服さえ着てくれれば。

「とりあえず胸パッド貸しておこうか」
「…………」

迷ったけど、とりあえず借りることにした。





「というわけでキヨヒコ君は男の娘になってしまったようです」

ええー、と担任の発表にクラスからざわめきが立った。
いや男の娘って、あながち間違ってないか?
結局シークレットにしておくことなどできなかった。
教室に戻ると1時間目が既に始まっていたが、時間をとって僕のことが発表されてしまった。

そして集中する僕への視線。
気になってしまう。このクラスの中で僕が異質の存在となってしまった。
みんな女の子なのに、僕だけが男。女子校の中にたった一人男が混ざっているこの違和感。
一人だけ違う、この感覚がどれほどストレスを感じてしまうものなのか。

「なーなーキヨヒコ。本当に男になっちまったのか?」
そんな中身始めた僕にトシアキはさっそくとばかりに俺に確認をしてくる。
「あ、うん。本当だよ」
「まじかー」

驚きの度合いは人によって違うけど、今の返事はだいぶ軽い印象だよねトシアキ。
それとあんまり近づかないでくれるかな? 当たっちゃうんだけどそのおっぱい。
でもそうやって今までと変わらなく僕に接してくれるのは、嬉しかった。
少なくともトシアキは僕を異質なものとして扱うことはしないようだ。
それが何よりの安心。

「せっかくみんな女の子になったのになー」
「戻れるのかなーその体」

周囲のクラスメイトもトシアキへの反応を見つつ、僕に心配の声をかけてくる。
確かに今の心配はそれ。何故唐突に男になってしまったんだろう。
せっかく女のこの体になって、キャッキャウフフな感じだったのに。
ああ、僕、元に戻れるのかなぁ。

……戻る? いやでも考えてみれば元々僕たちは男だったじゃないか。
ここにいるクラス全員、女子だけど男だったじゃないか。
だとすると戻るってどっちだよ。男に? それとも一度なってしまった女の子に?
思考パターンがおかしい。どうして僕は女の子に戻るって考えているんだ?

「ところでどーすんだ2時限目?」
「え、なにが?」
「いや、2時限目水泳だろ?」
「………………ああっ!?」

そうだすっかり忘れてた! というよりも学校に来るまでは覚えていたけど。
今日から水泳♪ 水着だ水着♪ なんてルンルン気分だったけどそれどころじゃない。
今の僕では到底水着なんて無理! 持ってきているの女子用だし!
とてもそんなの着れる状態じゃない。これはもう、今日は諦めるしかない。

「見学します」
そうするしかない、はずなのだが……

に や り

「いやいやそう諦めるなよキヨヒコ」
「楽しみにしてたじゃねえか、なあ」
「そーそー一緒にお着換えしましょうねー」
「絶対面白がってるでしょみんな! いや、ちょっと無理だって待って引っ張らないでぇーーーーーっっ!!」

必死の抵抗むなしく、連行されてしまうのだった。





「うわーお前意外とでかいんだな」
「ていっ、いい触り心地ですなぁ」
「おいこら急に揉むなよっ!」

本物の女子だったらもうちょっと恥ずかしがったりするものだ、とどっかのマンガにあった気がする。
更衣室では言うほどスキンシップなどしないと。胸揉むなんて当然ないのだと。
見られないようにタオルで覆って、その中でうまく着替えるのだと。

しかし、ここにいるのは本物の女子ではない。中身男子だ。
だから遠慮などしない。恥じらいもない。エロハート全開。
おかげで僕の目の前ではおっぱいがいっぱい! という光景が広がっています。
みんなスタイル良すぎるんだよ! こんな極上の女体があちこちにあっては、どうにも……!

しかもこの匂い。女の子特有の甘酸っぱい匂いが僕の鼻に到達する。
なんなのこれ、フェロモンってやつ? 芳香剤ってわけじゃないのにすごくいい匂いなんだけど。
ダメだ、身動き取れない。下半身にこれ以上血流が集中しないよう必死に抑えているので精一杯。

「キヨヒコー、着替えないのかー」

そんな僕を知ってか知らずか、意地悪な笑みを浮かべてトシアキが近づいてくる。
それもトップレスで、パンツ一丁で。歩くたびに爆乳おっぱいがプルンプルン揺れるし。
絶対にからかっているな、目に辛い。

「そーだぜ、早くしねーと」
「まだ上も脱いでねーじゃん」

ツネヨシとタダマサも一緒になって僕に近づく。勿論二人ともおっぱい丸出しだ。
こいつら。

「だから、僕今日見学で……ひゃわっ!?」
「ほーらほらぁ、早く着替えろって」
「かわりに脱がせてあげるねーキヨヒコちゃーん」
「だ、だからちょっとやめっ……」

あっという間にシャツもスカートも脱がされ、さらには下着にまで手にかけられていく。
いやちょっと待て、そこは止め……わあぁぁぁぁっっっっ!!

ぴーんっ

「「「……………………………」」」
「ううっ………」

襲われて、急速接近してきたおっぱいが目に入って、さらには女の子の匂いもあって、下が反応してしまった。
それを、ガッツリみられてしまうなんて……

「あ、うん。ハイ足を通して」
「ちょっと水着きついかもしれないけど、ぎゅーっとあげてねぎゅーっと」

さすがに悪いと感じたのか、みんな静かになった。
そして水着を丁寧に着せてくれる。ってこれどういう羞恥プレイ?
「ほ、ほら。早くしねーと授業始まっちまうぜ!」
せかされてしまった。
それにしてもトシアキ達の顔が赤かったけど……熱でもあるの?

(も、モロにみちまった……)
(すごい久しぶりに見ちまった。男のアレってあんな感じだったっけ?)
(お、落ち着け。俺にもついてたものだろうが)
(びくびくしてた。なんか、別の生き物みたいに……)
(アレが、入るんだよな……やべっ、ちょっと濡れてきた)

女子たちがどぎまぎしていたことなど、知る由もなかった。





「よーし全員揃ったかー?」

プールサイドにはスクール水着に身をつつんだ生徒たち。
学校指定のスク水は紺色のスタンダード。だけど最近増えている足の付け根まで覆うやつではなく、ハイレグタイプ。
それもけっこう食い込みが激しい気がする。妙なところで特注品なのだろうか。
さらに布面積が少ないのか、はたまたみんな胸が大きいせいなのか、胸元が谷間くっきりなんだけど。
こう、一部分だけが見えてるのって、逆にエッチな感じがするなぁ。
なお、トシアキは「海パンでよかったんだけどなぁ」と危険極まりないことを言っていた。

一方で教師もまた、例外なく美人になっている。
元はゴリラマッチョなんてあだ名されていた体育教師だが、見る影もない。
スポーツ選手のように引き締まった手足。それでいてお尻のボリュームもよく、当然のように胸も大きい。
その体をつつんでいるのは上下セパレートタイプの、スポーツビキニというやつだろうか?
確証はない。何故ならこちらも同様に布面積が少なく、谷間くっきりだからだ。
おまけにその下のやつ、さっき見えたけどTバックじゃありませんでしたか?
生徒といい、教師といい、どうしてこんなところで攻めているのだろう。

「あー……キヨヒコ」
「……はい」

そんなみんなの中で、僕は浮いているのかもしれない。
先生も含め、僕が男になってしまったことは知っている。そのせいだと思うけど、さっきからみんなの視線が痛い。

僕も同様に、スク水を着ている。
さっき鏡で見たけど、意外と違和感はない。やはり骨格が女の子のままだからだろうか?
だけど皆と比べて、巨乳ばかりの皆の中で僕だけは真っ平に近い。
近い、といっても事実まっ平なんだけど。とりあえず保健室の先生からもらったパッドを詰めているからそれとなくふくらみはある。
要するに偽乳です。

その一方で、別のところが膨らみがあるんだけど……
当然だけどこのスク水は女子用。女の子が着るためのものだ。男が着るためのものではない。そんな設計されているわけがない。
つまり何が言いたいかというと、男性特有の、女子には存在しないところに、その……股間に膨らみがあるのです。

僕のそれって、多分大きくはないけど小さくもないと思う。
それでも存在しない前提で作られている水着だから、その箇所は無理やりおさめられているわけで。

つまり、きついんです。

本来存在しないもの、その違和感に皆、視線が集まっているんだろうなぁ。
言いたいことはわかる。似合ってないとかそういうことなんだよね。
ほら、みんなして顔赤くしてるし。きっと女子ならではの、見ちゃいけないもの見ちゃったって顔だろう。
だからさ、あまり見ないでほしいよ。こっちも、恥ずかしいんだよ。

「なあ、キヨヒコ」

そんな中友達のトシアキは僕に近づき、声をかけてくれる。
うん、きっと僕のことを気遣っているのかもしれない。と思ったけど、その表情はどこか嬉しそう。
口元抑えて、必死にこらえてない? その表情。
先ほどは無理やりとばかりに僕にこれを着せてきたけど、結局いたずらってこと?

「お前、すっごくいい。スク水似合いすぎ」
そー褒めるたってしょーがないでしょ。まあ確かに鏡で見た時違和感はなかったけど。
「けどお前、今のは本当にヤバいって」
「何が?」
「その……タマ、はみ出てる」

「…………………………………」
「…………………………………」

えーと、タマって何の事でしょうね? はみ出るタマって、ねえ。
一つ思い当たるものはありますよ、はい。だからそっと下を向いたんですよ。
該当するたまって、まさかねーって思ってね。
そしたらさ、見えちゃったんですよ。
学校指定のスク水にしてはちょっとハイレグ気味な、角度が鋭利になっている水着のさ。
ちょうど足の付け根のところで、さっきからちょっと窮屈だなーって思っていた場所ですよ。
綺麗に両サイドに、ね。
はみ出てましたよ、タマ。

「◎△$♪×¥●&%#※$¥っ~~~~~~~~!!」
どばしゃーんっ!

「あー、キヨヒコ? 見学しててもいいんだそ?」
「……………」

先生から慰めとも思える気遣いをいただきましたが、もう水着を着て思わず飛び込んでしまったから、そのまま授業受けました。





水温ってのはある程度外に比べたら低いから、体を冷却するには都合がいいんだよね。
要するに何が言いたいのかというと……ほら、体が冷えると、特にアレが冷えると小さくなるでしょ?
だからつまり、面積が小さくてもうまいこと収納しやすくなるんだよね。

というわけでその後は先ほどのようなハプニングもなく、とりあえず無事に授業を受けることができました。
でもまあ、無事って言えるかどうか微妙だけどさ。
あんなことあったからそりゃあ周囲の目が恥ずかしいですけど。

しかも何人かはご丁寧に潜水して僕のあそこを観察しようとしていたし。
あれか、異性に対する関心ってやつ? いやいや元々あなたたちも持っていたものでしょ。
……単なるいたずらか? どっちにしても恥ずかしさだけが残っている

そんな気落ちしている僕に対し、トシアキは変わりなく接してくれるのはいいことだ。
うん、なんとなくスキンシップが多い気はするけど。
プールの時も妙に抱きついてきて、水着につつまれたJカップおっぱいを押し付けられてたけど。
ああはい、冷えてましたから固くならなかったけどさ。
とにかく、水泳の授業が終わった後もトシアキは変わらない。

「キヨヒコ! 一緒にトイレいこーぜ」

訂正、変わったかもしれない。
さらにはツネヨシとタダマサも「あ、俺も行くー」とついてきた。
以前はトシアキを含め、皆は一緒にトイレ行こうなんて言わなかった。そういえば女子って妙に一緒にトイレ行きたがるよね。
トシアキ、変なところで女子にならないでくれるかな?
そして腕を組んで引っ張らないでくれる? 当たってるんですけど柔らかいものが。

未だかつてなくがやがやとした雰囲気で、「飯食おうぜ」的なノリでトイレに行くことになった。
まあ、さっきまで水泳だったから体が冷えて僕もちょっとトイレが近くなっていたのは事実だけど。
それはそうと女子校になってからトイレは混雑するようになった。
理由は個室が少ないから。

元々男子校だったうちはトイレも当然のように男子しかない。だから個室が圧倒的に少ない。
そして女子はトイレに時間がどうしてもかかってしまう。
そういうことも相まってか、休み時間はトイレに行列ができるようになってしまった。
それが唯一の問題点かな?

……あれ? ちょっと待て。僕は今、下についてんだよね?
男のアレが。ということは、わざわざ個室に入らなくていいってことだよね?
あれ、これって唯一僕が男に戻ってよかったこと?
混雑するトイレで、並んでいる生徒を横目にさっさと済ませることができるじゃん。

わっはー♪ やったね、みたいな。
皆と違う体になってしまって戸惑う僕にとってはちょっとした喜び。
どうでもいいように感じるけど、ポジティブになれるならいいじゃないか。
と、妙な優越感を感じていたところで違和感を感じる。

あれ、トイレ混んでない?
いつもだったら入口のところで行列になっているはずだけど。
意外と今の時間使う人少ないのかな? と思いながら中に入ったら……

なんだこれ。

男子用小便器のあった場所が、なんか変わっていた。
それぞれに簡易的にパーテーションで区切られているが、そこに設置してある便器の形状がおかしい。
いや小便器のはずなんだけど、普通の小便器に比べて妙に手前に飛び出しているような。
こう、普通のトイレと男子用の中間みたいな形状なんだけど?

「すげーよなこれ。今朝改装されたんだってよ!」
「は?」

トシアキがなんだか楽しそうに言われましたが、改装?

「これで女子も立ちションできるんだってさ!」
「……は?」

何言っちゃってんの? 女子も立ちション?
よく見たらそれぞれのブースに『使い方』って注意書きが書いてある。えーと、なになに……

「こーすんだってよ」
注意書きを目にしている僕をよそに、目の前でトシアキはごそごそとスカートの中に手を突っ込んでいる。
そしてしばらくして、中から紐のようなものを取り出した。

いや、紐じゃない。紐パンだ。
そういえばトシアキ、今日は買ってきたおニューの紐パンだといっていたが。
なるほど、サイドの結び目を解いてやれば足をくぐらせずに簡単に脱げるわけか……って!?

「よっ、と」
そしてスカートをがばっとたくし上げる。先ほど手にした紐パンは自分が穿いていたもの。
つまりスカートの下は、ノーパン
「……!!」

トシアキのあそこが、僕の目の前にさらされる。女の子の、神秘の場所。
いや考えてみれば今朝まで僕だってあそこはあーなってたんだよ。昨晩もじっくり観察したじゃないか。
その、指も入れて気持ちよくなっていたよね?
だから見たから別にどーってことは……

「以外とスカートって楽かもしれねえなぁ」
「確かに、パンツおろすだけでいいしな」

ツネヨシとタダマサまでもが、ショーツおろしてスカートたくし上げてノーパンさらしてる!!
突然のストリップに僕の頭はオーバーヒート気味だった。
しかもみんな、恥ずかしがることなくガッツリ僕にそれをさらす。「何で恥ずかしいんだ?」ぐらいの勢い。

「こーやって使うんだってよ」
トシアキはそういうと壁に背を向け、ちょうど僕に向いて、足を大きく開いて前かがみになる。
壁に向かってお尻を突き出しているような姿勢だ。そのせいで僕の目の前にはトシアキの谷間がくっきり。
見せつけている、のか? ノーパンに谷間ってすごすぎる組み合わせなんだけど。
一方でツネヨシとタダマサも同じようにしている。足首にショーツがあるからトシアキほど足は開いてないけど。
そして

「はぁ~~~~~っっ」

ちょろろろ………と用を足し始める。
ツネヨシとタダマサも同じだ。かの大事なところからやや後ろに向かって、黄色い液体が飛び出しているのがわかる。
どうやらトシアキはあえて僕に見せていたらしい。要するにこの不思議な形状の便器の使い方を。
確かに、これは立ちションだな。未だかつて見たこともない光景だけど。
女子の立ちション……すごい。

「いやぁ、ちょっとイケナイことしてるみたいだなぁ」

僕はイケナイものを見てしまっている気分です。
できればもうちょっと恥じらいってものを持ってほしいのですが。

「あーすっきりしたぁ」

そして終えると添え付けの紙で拭いて流すのは同じか。
にしても、これ絶対に一般的には無理だな。
常識的に考えて普通の女性がこんな方法で用を足すとは思えない。はっきり言って恥ずかしすぎる。
個室にすれば可能? かもしれないけど、こんな形で男子トイレ同様にオープンに並んだところでは絶対に無理だな。
多分この学校だから、元男子校で中身男のままだからできるだろう。
事実、トシアキ達は全く恥ずかしがる様子もなくこのトイレを使いこなしてしまったのだから。

「ん? そーいえばキヨヒコはいいのか?」

おもいっきりスカートたくし上げたまま、サイドの紐を調整しているトシアキは僕に気が付いてそう尋ねる。
ちなみにツネヨシとタダマサは足首までおろしていたショーツを上げるだけだが、トシアキは紐で結ばなきゃならない。
やや不憫さもある気がするけど、トシアキにとってはそれもまたいいのだろうか。
「あ、いや……別に大丈夫だけど」
正確には今はできない。ほら、アレが固くなってると、やりづらいでしょ?





たった一日だが妙なまでに自分と周囲との差を感じてしまった。
女の子になった周囲。男に戻った自分。僕はこの空間で全くの異質な存在に感じられた。
その一方で思考も元に戻ったような気がする。

そう、考えてみればおかしなところばかりだ。
あの日、僕たちは全員女になってしまった。
それも一人二人じゃない。この学校にいる男子生徒、教師までもが全員女になったのだから。
たった一瞬、時間にして数秒程度のあの瞬間で全員が女の子になってしまうなんて、ありうるか?
しかも自宅にあった服までもがほとんどが女物になっていたなんて。
常識的に考えておかしすぎる。そんな怪奇現象聞いたことがない。

そして、女の子になってしまったことを普通に受け入れてしまっていた。
確かに最初は疑問を感じた、違和感を感じた。自分の体か異なるものになってしまったことに。
だけどそれもわずかのこと。戻りたいとも思うことなく、みんな普通に女の子になってしまったことを受け入れた。
そして女の子になったことを楽しんだ……ああ、うん。僕も当然ね。エッチなことに興味あったから。
なんでだ? どうしてだれも男に戻りたいと思わなかったんだろう。

そうした疑問が今日一日で徐々に積みあがっていく。
一部とはいえ、自分が男に戻った事で疑問がわいてくる。
そうなると真実を追求しなければならないだろうか。そうかもしれない。
こんな状況、そのままにしておくわけにはいかないだろう。
であれば、このと思われる人物と原因に対面しなければならない。
そう思っていた時だ。

「キヨヒコぉー、お前校長室に呼び出しされたぞぉー」

たまたま廊下ですれ違った担任からのお達しだった。
ちょうど僕を探していたんだろう。手っ取り早く見つけることができて助かったと安堵の様子で職員室に戻っていった。
一方、僕は緊張が走った。
今から対峙しようと思っていた人物から、呼び出されたのだから。





緊張する。目の前の扉、「校長室」と書かれた部屋の前に僕はいた。
特に何もなくても校長室に呼ばれたとあっては緊張するだろう。

しかし現在は平常時以上だ。何せ中にいるのはこの学校を女子校に変えてしまった人物。
当然僕が呼ばれたというのは、僕が男に戻ったことに関してだろう。
それを知っている、ということは僕に何をしてくるのだろうか。
絶対にいいことではないことは確かだ。最悪、殺されるなんてことも。

ごくり、緊張故につばを飲み込む。
だがいつまでもここで突っ立っているわけにはいかない。
覚悟を決め、進むしかない。

「失礼します」

礼儀に従い、ノックをして声をかけて中に入る。

「いらっしゃい、待ってたわ」

そしてその人物はいた。
ウェーブのかかったブロンドヘアに出るとこ出たスタイルのいい体。
体にフィットしたブラウスとタイトスカートがそれを引き立てる。
デスクにもたれかかり、真正面に来訪した僕をとらえている。
校長先生だ。

「よ、呼ばれたので来ました。何の用ですか?」

緊張していたからか、あまり言葉がうまく出てこない。
綺麗な校長先生にちょっと見惚れてしまったが、なんとか意識を保とうとする。

「ええ、貴方男に戻っちゃったんですってね」

やはり情報は伝わっていたか。保健室の先生に相談し、担任にも伝わっているのだから当然であるが。

「というわけで、ていっ!」
「うわっ!?」

前振りも何もなくいきなりスマートフォンを突き出し、そしてそこから発せられた強い光が僕を襲う。
ただの光のはずなのに僕の全身を包み込むような錯覚。
あの日、体育館でみんなが女の子になった、あの日と同じ光だ!
あの時と同じ、光は一瞬、数秒もしないでおさまっていく。
あれが生徒たちを女にした、ということは今の僕の体も……

「あれ?」
女になった、と思ったが、そうでもなかった。
先ほどと変わらず胸に物体がないから肩が軽いし、下に物体があるからショーツがきつい。
特に何も変わっていない、男の娘……男のままだ。

「お、女の子にならない!? まさかあんた、特異点!?」

一方で校長は驚きを隠せない。あの光を浴びせれば僕が女になると思っていたのだろう。
僕だって思った。あの時と同じ状況にあるのだから、そうなるとばかり。
しかし実際には違う。校長から特異点なんて言う聞きなれない言葉が出てきたけど、そういうことだろう。
理由はわからないけど、とにかく僕には効かない。そういうことだと思う。
そして思考も正常だ……だと思う。自身がないけど、状況は僕にとって有利かもしれない。
そうなれば、校長を問いただすのみ!

「校長先生、一体……!?」

どうやって、とか、なんでやった、とか。手段や理由を訪ねようとしたが、その前に校長が動いた。
服を脱ぎ始めた。

「え、校長……で、な!?」

色仕掛けでもするのか? なんて意味のないことを。と考えていたが違った。
部屋の空気が変わっていく。ざわざわとした嫌な空気。窓もドアも閉じているのに風がふいているような。
校長も姿が変わっていく。

どこからともなく現れた黒いものが校長の体をつつんでいく。黒い霧のようなものが。
それは次第に形を形成していく。校長の体にフィットし、衣装のようなものに。
膝上まで隠れるサイハイブーツ、グローブと。一方で手足はつつんでいるのに体の露出は多い。
下のショーツのようなもの、大事な部分をかろうじて隠している紐のような帯のような形状。
メロンみたいなバストは魔獣の手が揉んでいるように見える衣装。先端は隠してその大部分はこぼれていて、エロい。
そしてうしろからにゅる、と何かが生えてくる。あれは、尻尾?
さらには、頭にはブロンドヘアの中から2本の突起が、つまりは角のようなものが。
これは、まさか……

「さ、サキュバス!?」
「そういうこと」

なぜか魅惑のポーズを決め、自分の姿を見せつける校長。
言いようのない存在感、プレッシャーのようなものに押されて僕は引き気味だ。
しかし考えてみればこの学校の全員が女になったのって怪奇現象だ。こういうことも十分想定されるはずだったのでは?
それにしても、あの中年ハゲな校長が何故にまたサキュバスに。

「言っておくけどあなたの知っている校長と私は同一人物じゃないわよ」
「え?」
「私はあのハゲに召喚されたの。それでここにいるってわけ」

おっと違った。僕はてっきり校長がサキュバスになってしまったと思っていたけど、そうではないようだ。
なんだろ、ちょっと安心したようなそうでないような。

「じゃあ、本物の校長は……」
「あんなハゲ私の好みじゃないし。だからそのまま私の世界に逆送還してやったわ。今頃私の同族とキャッキャしてるかもね」

わーなにそれちょっとうらやましー。
こんなすごい美女に囲まれちゃうなんてよくない? よくない?
あ、でもサキュバスって相手の精力だか生命エネルギーだか搾り取るんだっけ?
ってことは死んじゃうじゃん。それはよくない。

それ以前にこの人が好みじゃないって言ったということはあっちの世界のサキュバスも……
あー、嫌われまくってるとしたらある意味地獄だな。まあいいや、あの校長嫌いだったし。
それと、この際あの校長が何故サキュバスなんて召喚したのかは放っておこう。

「それと、私は男なんて大っ嫌いなのよっ!!」

………………………ん?

「え、でもサキュバスって……」
「そういうサキュバスがいたっていいでしょっ! 私はカワイイ女の子が好きなのっ!!」
なにそれー。

「だというのにっ、どうしてここは男ばっかりなのよっ!」
そりゃ男子校ですからねぇ。

「だから私のフルパワーを使って皆を女の子に変えてあげたわっ!」
なんという力の無駄遣い。いや、無駄じゃないかな?

「これでみんな仲良く百合百合の世界っ!!」
いやーとんでもない真相だったなー。

超化学か、はたまた怪奇現象か。だとしても動機は何なのか、僕は非常に難しいことを考えていたのかもしれない。
まさか女好きのサキュバスが自分のために百合の世界を作り上げることが目的だったとは。

あー、でも百合ってところはある意味成功しているかも。
なにせ全員中身は男子で、好きなのは男じゃなくて女なわけだし。
だから中身が男でも見た目が女であればオッケーということで。
結構エッチなことしてるしなぁ。おっぱい揉み合うのは日常茶飯事で、付き合ってるのか知らないけどキスしてるのも何人かいるし。
中には実際に百合百合まで発展してる人もいるみたいで。
うーん、僕も百合体験した方がよかったかなぁ。それやる前に元に戻っちゃったし。

「なのに……君は元に戻っちゃったみたいだねぇ」

自分の理想を熱く語っていたサキュバスは我に返ったかのように今度は僕を見る。
あ、その視線ヤバい。

「なんでだろうねぇ、私の魔法は完璧だったのに」

本当に、どうして戻っちゃったんでしょうねぇ。
ぶっちゃけ、僕も女の子のままでいたいなーって思ったけど。
だってさ、女の子の中に男一人だよ? 異質な感じがするじゃん。場違いな感じがするじゃん。
それに元々の容姿は微妙だし、女の子になってとびっきり可愛くなったし。
あ、でも胸とあそこ以外は女の子のままか。
よーするに男の娘な状態なわけでして。

「私の言いたいことわかる?」

少しずつ迫ってくるサキュバス。ああ、なんとなくわかっちゃいましたよ。

「ここに男はいらない。あんたは……消えてもらうっ!」

やっぱりね! そういう展開だよね!!

「どわっ!?」
サキュバスが一気に距離を縮めて僕に襲ってきたが、本能的によける。
「ちょっと、よけないでよ」

いつの間にかその手は爪が鋭くなって凶器と化していた。
いやいや、笑顔で僕に語りかけてますがいまのはよけなきゃ危ないでしょ。
あんなものに襲われたら、絶対に即死ですって!

「うわっ!!」
またしてもすんでのところで回避。
だが僕の立っていたところ、その後ろにあった校長室の立派な机が粉々に。
机はおろか、その上にあったものや引き出しに入っていたものまでもが周囲に散乱する。
その中にエロ本が入っていたような気がするのは絶対気のせいだろう。あのクソ校長

とにかくこのままではまずい。さっさとここから逃げるしか……
「って、開かないっ!?」
ドアを開けようとしたが、なにこれ動かないっ。
別に鍵がかかっているわけじゃない。大体これ、こっちから鍵をかける構造だし。
まさか……

「もちろん結界を張ってあるわ。私の許可なく出ていくことなんてできないの」

あぁぁーーーーーっっ! もう定番すぎる展開じゃん。
サキュバスとか魔物とか、そういうのに襲われたら結界なんてありすぎる話!
まさかド定番な手段を使ってくるとは。ひねりがないぞ!
それはそうとこれ完全に閉じ込められたってことだよね? 袋のネズミってこういうこと!!

「逃げられないわよ」

これはまずい。大ピンチっ!
こうなったら何かしら攻撃していくしかない。攻撃は最大の防御!
といっても、何か武器になるようなものは…

「よそ見している場合?」

しまった、探すために視線をそらしていたらいつの間にかサキュバスは攻撃態勢に。もう、ダメだ。
が……

「あ」
「え」

サキュバスが宙を舞う。自ら飛んだわけじゃない。
僕に向かって走り迫ってくる途中、先ほどの散乱した机の中のものを踏んで、足を取られて。
なんとなく一瞬見えた限りでは、それはエロ本(しかも熟女モノ)だったような気が。

「きゃあぁぁぁっっっっ!!」
「どわあぁぁぁっっっっ!!」

さっきまで余裕で回避していたのに突然の変則的な動きに反応が遅れ、突っ込んでくるサキュバスをよけられなかった。
体当たりにも思える攻動きに僕の体は支えきれずに、押し倒された。

「いつつ……」
派手に尻もちついてしまった。幸か不幸か、男に戻っても骨格は女の子のままだから自分の体がクッションになったようだ。
なにがって? お尻のボリュームだよ。ぷよんとしたお尻がさ。
でも打ったことにかわりはなく、痛いことは痛い。別にけがはしていないという意味で。
その一方で下腹部が重い。何かがのしかかって来てるような……

「げ」

上体を起こして気が付いた。僕のスカートの中に、サキュバスの顔面が埋まってた。

「わわわわわ………っ!!」

慌てて後退。なんとか距離を保つ。
どうやら僕に倒れこんできた時の勢いでスカートの中に顔面を突っ込んでしまったらしい。
なんというラッキースケベ……になるのか?
よりによって僕のあそこにのしかかってきたというのか。その余韻が、ちょっと残ってる。
ちょっと感じてしまった。意外と、弱いところだったのか。

「うう……」

倒れこんできたサキュバスがようやく体を起こす。まずい、またしても命の危険が。
だが………

「うう、らめぇ……」
おや? サキュバスの様子がおかしいぞ。
起き上がったサキュバスは、なんだか赤い顔をしているじゃないか。
え、なにあれ。いやな予感しかしないんだけど。

「だ、だめなのにぃ……」

完全に立ち上がったわけでなく、その場に前かがみになって胸をおさえている。
うわその姿勢、谷間がくっきりなんだけど。
それとなんだかびくんびくんと身悶えしているような気が。
まずい、いやな予感がどんどん膨れ上がってくる。

「だ、から……男はっ、イヤなのにぃ……」

実際にそうなったわけじゃないけど、目がピンク色している気がする。
比喩表現だ、と思っていたけど、本当にピンクになってないかおい。

「あ、あたし……男のニオイに敏感すぎてっ……ちょっと、でもっ、嗅いじゃうと……ダメなのぉ……!」

あーやっぱり。そういう展開ね。
そのあたりはサキュバスなんだねぇ。男を魅了する、ってだけあるね。
男のニオイを嗅ぐと発情しちゃう体質ってことか。それサキュバスのデフォルト設定なのかな?
それが嫌になって、反動で女の子好きになったのかな。

まーわからないでもないけどね。そういう心境。いやなのに体が勝手に……ってことかな?
ところでどうして僕がこうも冷静に分析しようとしているのか。
人って目の前の状況に現実逃避したくなることあるよね?
僕の場合、何故現実逃避しようとしているのか。というと……

「らめぇ……ガマン、できなぁいっ………!!」

発情したサキュバスが僕に襲い掛かろうとしているからさ。
つまり貞操の危機っ!!

「ちょっと待てえぇぇっっっーーーーーーーー!!」





その後、なんとかサキュバスを鎮圧することに成功した。
具体的には襲ってきたサキュバスを周囲のものを使って手当たり次第に殴っていただけだが。
いやいや正当防衛ですよ? 相手は机を粉砕できるほどの腕力持ってるからねぇ。

そしてようやく静かになったと思ったら、今度は僕を見て「オネニーさまぁ」という謎の呼び方を始めた。
はい、何故か懐かれてしまいました。
まさかのドM属性開花です。そして僕の言いつけをよく聞く子になってしまいました。
まーおかげで僕の貞操も守られたんですけどね。
それでよかった……のかなぁ? ちょっともったいない?
けどその気になれでいつだって……げふんげふん。

「で、結局俺たちは女のままってことか」
「そうなんだよねぇ……」

トシアキの嘆きにうなづくしかなかった。
その後サキュバスを徹底的にお仕置き……いや、問い詰めたのだが、やはり僕たちを元に戻すことはできないのだと。
膨大な魔力を使って改変したためそもそももどすためのちからがもう残っていないという。
仮に力があったとしても既に世界はこの学校全員が女であることに書き換わってしまったのだそうだ。
だから男だった時の情報が存在しないから、完璧に元の姿に戻すということはできない、って。

たとえると、イラストのデータを別のイラストのデータで上書きしちゃったから、元々のデータを復元できない、みたいな?
その感じからすると男には戻れるけど、まったく別の男になってしまう、そういうことなのだろう。

「けど、俺は女のままでいいかな?」
「本当に?」
「ま、トイレがちょっと面倒だけど、な」

確かに、それは男女の体の構造上仕方ないことだしねぇ。

「ここでは楽だけどな」
……そうだねぇ。

この会話は井戸端会議でなく、トイレ端会議と呼べばいいだろうか?
女子特有の「一緒にトイレ行こう!」というやつだ。
普通なら個室だが、ここは個室じゃない。例の、女子用小便器。
ちっこい申し訳程度のパーテーションしかなく互いに壁などない。だからこうして男子の立ちションの感覚のまま使えてしまう。
隣にいるもの同士、会話など造作もないことだ。

事実、僕もトシアキもこうして用を足しながら先ほどの会話をしていたのだから。
いや本当に、もうちょっと壁作ってよ。
なお、皆が皆使えるというわけではなく、さすがに中には恥ずかしいからと個室しか使わない人もいるけど。

「便利なのになぁ」

トシアキは一向にかまわないらしい。むしろ気に入っているようだ。
僕の隣で壁に背を向け、お尻を突き出すような姿勢で用を足している。
正しい使い方らしい。ベストポジションらしい。

一方の僕はそれとは逆向き、壁に向かってたってしている。
要するに一般的な男子の使い方と何ら変わらないってことで。
正直、トシアキの姿勢は僕は無理だ。何故って? 逆向いたら飛んじゃうし、それに誰も持っていないアレをさらしちゃうし。

「んっ」
用を終え、ぶるっとするトシアキ。お尻丸出しでそのまま拭いている姿勢は、エロい。
……見ないようにしよう。

「トシアキは、戻りたいって思わないの?」
「え? 思わねーよ。だってこんなおっぱい大きいんだぜ?」

用を終えたトシアキはぽよんぽよんと自分のおっぱいをバウンドさせる。ところでまだノーパンだよね?
しかしそれは同意見。僕も元の容姿に比べたら今の方がいいかなって思う。
たとえ男の娘でも……

元に戻れない、それはすなわち僕の体も同じこと。男の娘のままだ。
あれから何度かサキュバスが僕に試しにと魔術をかけたけど、何度やっても僕は女の子にならなかった。
どういうわけか僕はあのサキュバスの力が中途半端にしか効かなかったらしい。
一時的には女の子になったけど、それが解けちゃった、みたいな?

おまけに困ったことに戸籍上は女になっている。
これはみんな同じだけど、この学校全員が、戸籍が男から女になっている。
それは僕も同じ。一度女になった時に変わったのだろう。

しかし僕の体は男だ。女ではない。
この矛盾、どうすればいいのか。状況的にはおちんちんの生えた女の子になるのだろうか?
中途半端もいいところだ。男のようで男でない。女のようで女でない。

「けどそれがいい!」
トシアキは肯定してくれた。

「女になってわかったけど、男の娘って魅力的だよね!!」
ちょっとよくわからない。ところでまだパンツ穿かないの?

「そーですっ! オネニーさまはさいこうですっ!!」
「どわっ! どこからわいて出たサキュバスっ!!」

いきなり背後からすべての元凶のサキュバス、フタバが抱きついてきた。
この前のボンテージでいかにもエロゲに出てきそうなサキュバスの服装ではなく、何故か制服を着ていた。
お前この学校の生徒じゃないだろ校長じゃないのか一応。
しかしスカートが異様に短く、ブラウスが小さいのでへそ出し状態。そういうところはやっぱりサキュバスか。
用を終えたところでよかった。大惨事になるところだった。しかしまだパンツを穿いてない。

「何言ってるんですか。ここは私のテリトリーですっ。だからいつでもこうしてオネニーさまのいるところへ……」
「来なくていいっ!」

直後は妙に懐いてきて、なんとか振り払ったのだがやっぱり懐いてきてしまっている。
しかもテリトリーの学校では好き放題みたいだ。つまり僕が学校にいる限りいつでもこんな感じで襲い掛かってくるということ。
うっとうしい以外何物でもない。とにかくさっさと離れてほしい。パンツが穿けない。

「おいそこの淫乱サキュバス。キヨヒコはお前のものじゃねーからな」

なんとか振り払い無事パンツを穿いたところでトシアキの言葉。
僕から事情を聴いているからなのか、それとも見ていてうっとうしいと思ったのか、フタバに真っ向喧嘩を売る状況。
にらみつけるその視線はあきらかに敵意を向けている。ところでパンツ穿いた?

「そ、それを言ったらあんたのものでもないわよね、はあはあ」

振り払った時に殴ったのだが、本人にはご褒美になってしまっている。なにそのトロンとした顔。
やめろもっと殴ってくれって顔するんじゃない。

「けどダチだからな。いこーぜキヨヒコ」

フタバを無視するように僕の腕に抱きつき、引っ張っていく。
あの、その立派なおっぱいが当たっているんですけど。当てているのですか? それとパンツ穿いてます?

「それを言ったら私はご主人様ですぅ。待ってくださいぃーーーーっ!」
誰がお前のご主人さまだ! そしてお前まで僕に抱きついてくるな当てて来るな!

「わー、キヨヒコったらモテモテだねぇ」
「両手に華だねぇ。けど自分も華だねぇ」

トイレを出たところでツネヨシとタダマサにからかわれた。うっさい!
二人に挟まれ、非常に歩きづらい中で教室に戻る。
どうやらこれから、僕に平穏の二文字は存在しなくなったようだ。





「ところでトシアキ。ちゃんとパンツ穿いてる? さっき穿いてるように見えなかったけど」
「え? ああ、今日はこれだから」
「うっっ!!」

何のためらいもなくスカート上げて中を見せつけた。
そこにあったのは、テープ!?

「ふふっ、今日はマエバリだぜ。ノーパンみたいで、ちょっとスリルがあって癖になりそうだぜ」

みたい、じゃなくて本当にノーパンです。
この友人は一体どこへ行こうとしているのだろうか、心配だ。


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