F7片「職場//環境」
「は、羽張さん…、ちょっと良いですか…?」
「どうかした?」
「その…、羽張さんって、本当に男の人なんですか?」
はい今年も来ました、恒例の質問が。
俺がこの出版社…向出版社に勤めるようになって、新入社員がやってくると必ず聞かれるから、俺としては恒例の質問になっている。
だってそうだろう? 男としての名前で男として振る舞っている、見た目完全な女性と来れば、知らない人から見れば疑問にしかならないのは当然だ。
「男のつもりだけど、まぁさすがにね、無理があるよね」
「…でしたら、羽張さんはどうして自分を男だなんて言ってるんですか?」
「無理があっても俺は男として生まれたからね。…その後いろいろあって、この姿になってるけど」
「……それって?」
「解らないのも無理はないと思うけど、本当にわからないと思ったら理解しないのも手だよ?
あぁこの人はそういう人なんだ、っていう所で理解を止めておくのも、処世術だと思うな」
「はぁ…。でも、さすがにそれは難しいと思います…」
「おや、どうして?」
「だって、羽張さんは私の教育係じゃないですか…。ちょっとでも理解しておきたい…、っていうのはありますから」
かくいう彼女は、本条巴ちゃん。今年向出版社に入ってきたばかりの新入社員で、俺の初めての部下だったりする。
俺を採用してくれた向社長曰く、
「羽張君は1人の方が業績残してるけど、そろそろ部下持った方が良いよ」
とのことだ。確かに1人の方がやりやすいのだけれど、人間関係を切ろうとしても切れない関係上、どこかでこうなるのは必然だったのかもしれない。
巴ちゃんも俺の方を積極的に知りたいと思ってくれてるが、さぁ困った事になっている。
そもそも俺はあまり探られる事を好きな性質ではない。ゆったり、好きにしていたい所の方が大きいのだ。
「…まぁ、その姿勢は認めるけど、人にはあまり理解されたくない人間というのもいる事は、知っておいた方が良いよ?」
「それは、羽張さんみたいな人ですか?」
「そうとも言う」
新居先生の原稿待ちをしながら、喫茶店でだべる事しばし。のらりくらりと避け続けていても、巴ちゃんは逃がしてくれない感じだ。
「それで、…羽張さんは、その体にどこまで手を入れたんですか?」
あ、手術だと思ってる。まぁそうだよね。普通の人は能力なんて無いし、まず思い当たる所も無いだろう。
社内でこの能力を知ってる人は、向社長しか居ないし。
「全身隈なくって言ったら、信じてくれる?」
「…信じます。だって羽張さん、本当に女性みたいですし…、女性もののスーツ着てますし」
さもありなん。男物のスーツを着るよりこっちの方が体型に合ってるのだからしょうがない。
「じゃあ巴ちゃんは、俺の裸を女として見れる?」
「…それは、どうでしょう。本当に羽張さんが男の人なら、多分拒否感の方が強いと思います」
「それなら良かった。巴ちゃんがOK出すようなら、俺は君に危機感を抱いてた所だよ」
「それはもしかして…、私に危機感が無いという話ですか?」
「その通り。身の危険は自分で守らないといけない関係上、ね」
「…もしかして、新居先生はそういう人なんですか?」
「いや全然。むしろ描写にいちいち悩んでしまう位、物書きに真摯な人だよ」
ちょっと新居先生に矛先が向きそうだったので、ちょっとフォローを入れておく。
…まぁ、俺も俺で「じゃあ俺の服を脱がして確認してみるかい?」と言いそうになったのだから、全面的に俺が悪いわけだが。
「それはそれで…、原稿の進捗が不安になる人ですね」
「おかげで毎度ギリギリだよ。ただ、落としはしてないからそこは安心してる」
そうしてコーヒーを一口飲んで、息を吐きながら話を区切る。
「…多分巴ちゃんが最初に担当する作家さんは、女性になると思うから、その辺は安心してくれて良いよ」
「襲われる可能性…、とかですか?」
「同性の方が気を張らずに済む、と思うのが、社長の意向だからね。だから俺も新居先生に就いてるんだし」
「じゃあやっぱり…、羽張さんは男の人なんですね?」
「最初からそう言ってるつもりだよ?」
「…じゃあ、お休みが一緒になる日は出かけましょう! できれば服を脱げるような…、銭湯とかに!」
「なんでそうなるかな…」
「やっぱり気になるからです。羽張さんの体が、どこまで手を入れられてるのか」
巴ちゃんは好奇心旺盛だなぁ。
「それは構わないけど…、俺、男湯に入るからね?」
「危険ですよ羽張さん、そんな見た目で男湯だなんて…! 絶対襲われちゃいます…!」
「うん、襲われるね。だから別の場所にしよう」
「別の場所って…、プールとかですか?」
「そっちの方がまだ気が楽だけど、巴ちゃんと一緒に行くと浮気を疑われかねないのが恐いなぁ」
「…そうでした、羽張さん結婚してましたね」
「二児の父親だよ」
この調子だと巴ちゃんが心配だよ俺は。このまま勢いで突っ走ってポカしないか心配になってくるな。
「じゃあ、奥さんにお話し聞かせてください。その方が浮気やらなんやらを心配させないで済みますし! あと、ご挨拶もしておきたいです!」
「それは構わないけど…、所詮俺は仕事先の先輩だよ? そこまで気にする事も無いと思うけどね」
「私が気になるんです!」
…これは、どこかで巴ちゃんに洗脳をして、俺の体の事を気にしないようにしておくべきかもしれないな。
携帯のアラームが鳴り、新居先生の所に向かう時間になった。
今回も先生の原稿はギリギリでした。
F8片「交流//情交」
さて、俺が撫子さんと結婚するにあたって清算しなければいけない関係というものがあった。
迫間胡桃ちゃんと都築菫ちゃん。
2人とも桂木さんへの復讐のため、外堀埋めの為に洗脳した2人ではあるが、そこから妙に愛着がわいてしまってしばらく行動を共にしていたりした2人だ。
当然のことながら、俺は「日浦撫子」さんと結婚した為、相応の社会的責任というものが発生する。学生気分で彼女等と体を重ねていけば、どこでそれが露見して撫子さんに累が及ぶかわからないからだ。
その為、彼女等との関係を清算しなければならなくなった。
…とはいえ、完全に関係を無くすことにした訳じゃない。洗脳度合いを弱めるにあたって、「俺を一番に持ってくる」事を無くしたのが最たるものだろう。
彼女等は彼女等としてそれぞれ別の人生を歩み、それぞれが恋愛結婚をすることになった。
勿論子供も産んでるし、当然ながら我が羽張家との関係も持っている。
…学生時代のセフレという関係は、今や「子供を持つ親同士」に変わってしまっているわけだが。
「どうも、羽張さん」
「お久しぶりです~」
そしてそんな2人が、それぞれの子供を連れて我が家にお邪魔することになるのが今日になる。
「2人とも、久しぶり。…基樹くんと水奈ちゃんも、久しぶり」
「羽張さん、こんにちは」
「こんにちはー」
彼女等は現在子供が1人ずつ。胡桃ちゃんは基樹君という男の子を、菫ちゃんは水奈ちゃんという女の子を産んでいた。
基樹君が小学5年生で、水奈ちゃんが小学3年生。年齢的にはまるで兄妹のように見える。
その子供たちも俺にしっかり挨拶をしている辺り、ちゃんと教育は行き届いているようだ。
「縁ー、美月ー。2人ともきたよー?」
「ホントだ! 久しぶり、2人とも♪」
「…お、おぅ、縁ねーちゃん久しぶり」
「わーい水奈ちゃーん」
「美月ちゃーん」
2人を呼ぶと玄関にやってきて、それぞれ年の近い方に挨拶をする。それだけでも微笑ましいが、俺達は俺達で親同士の話をすることになる。
「基樹、縁ちゃんと仲良くね? 困ったからってイタズラなんかしちゃだめよ?」
「わかってるって、かーちゃん」
「それじゃあ水奈、お母さん少し羽張さんとお話があるから、良い子にしてるのよ?」
「はーい」
胡桃ちゃんも菫ちゃんも、それぞれの子供に声をかけて二階に上がっていった。かつてひとつ屋根の下で暮らしていた仲だ、家の構造は知ってるので躊躇なく上がっていった。
…まぁ、当然と言えば当然というか、少しばかり込み入ったことになる大人の話なのだ。
「…それで、胡桃ちゃんはいつも通りで良いのかな?」
「はいぃ…。最近ちょっとおなかの辺りにお肉が付いてきちゃって…」
ベッドの上で胡桃ちゃんが下着姿になって横になっている。俺はそれにまたがって手を動かしているのだが、なるほど確かに、ちょっとお腹の辺りにたるみが出てきている。
それに溜息を吐きながら菫ちゃんが忠告してくる。
「あなたのご飯がおいしいのは確かだけれど、いつまでも学生の時と同じペースで食べてたら太るのは当り前よ?」
「それはそうなんだけど、やっぱり食べるのって楽しくて…」
そんな学生の時から変わらない関係を滲ませる2人のやり取りを微笑ましく思いながら、俺は胡桃ちゃんのお腹を『分解』していく。
溜まり始めていた贅肉を『分解』し、なるべく太ってるように見せなくする為に、時折こうしてボディメンテをしているのだ。
「菫ちゃんの方は、大丈夫…?」
「私は…、最近ちょっと胸が垂れてきちゃったから、形を整えてほしいの」
そう言いながら菫ちゃんはブラを外し、胸をさらけ出す。
なるほど、子供を産んで少しカップサイズが上がった菫ちゃんの胸だけど、それゆえ確かに少し垂れ気味になってきた。
胸元を『分解』で割り開いて、ちぎれているクーパー靭帯を『接続』させていく。
ちょっと細かい作業だけど、ボディメンテの為には必要な事だ。
一しきり二人のボディメンテが終わると、お互いに服を着て…とはいかず。
「はぁ…、あの人のが良いけど、やっぱりあなたのモノも良いわ…」
「菫ちゃんがっつきすぎ…。でも、私も…」
そのまま俺のまんこを胡桃ちゃんが、ちんこを菫ちゃんがそれぞれが舐めている。
菫ちゃんと胡桃ちゃんの2人がやってくること。それ自体がえっちの合図なのだ。
とは言え、やっていいのはこうしたフェラのみ。実際にえっちした場合、それはお互いの浮気になってしまう。
それぞれの旦那さんに「嫁を裏切るな」という軽い洗脳をしたこともあり、それを俺の側から裏切るのも悪い気がしている。
だからクンニとフェラまで、という事にしているし、それ以上をする気は今の所一切無い。
2人の子供は正真正銘それぞれの夫との間にできた愛の結晶なのは間違いないのだから。
二つの性器をなめられた俺は、我慢できずにあっという間に射精し潮を噴いてしまう。
2人の夫相手に鍛え上げられてきたフェラテクはすごく、その度に俺は腰が抜けそうになるのだ。
それぞれの白濁に塗れた顔を見ながら、俺は再びちんこが元気になってくるのを感じながらも、2人のそれぞれのまんこを思い返していた。
…できる事ならまたシたいが、大人になるという事はしがらみに捕らわれていくことなのかもしれない。
そんな事を思いながら、今度は胡桃ちゃんのフェラと、菫ちゃんのクンニに身悶えることになった。
F9片「接触//認識」
「…ふむ、ふむふむ…」
「あのね巴ちゃん…?」
「何ですか羽張さん。このおっぱい…、人工にしては柔らかい…」
さて、俺と巴ちゃんだが、現在サシで飲んでいる最中である。
しかし巴ちゃんの方だが、どうにも酒に弱い気配であり、ビール2杯ですっかり絡み酒状態だ。
「それは良いんだけど、ちょっと、触り方がいやらしい感じ…」
俺に後ろから抱き着き、体を密着させながら巴ちゃんは俺の胸を後ろから揉んでいる。
これが意外と気持ち良くて困っているのだ。具体的には勃起しそうで困っている。
「いやらしく感じるのは羽張さんの気のせいじゃないんですかぁ? 私はですねぇ、羽張さんのこのおっぱいが本物かどうかを気になって気になって、夜も眠れてるんですからね」
「眠れてるなら良いじゃない…、はんっ!」
ついに巴ちゃんの指が俺の胸の先端を捉え、摘まみ始めてきた。服越しブラ越しとは言え、そこをピンポイントで突かれるとさすがに弱い。ここが個室で良かった。
「お? おぉぅ? なんですかぁ羽張さん、その甘い声はぁ…! 年下に攻められて感じてるんですかぁ!?」
「ちょ、ちょっと巴ちゃ、んっ、そこ弄るのやめ…!」
「やめませんー! だって羽張さんがこんなに疑惑を持ちたくなる体をしてるのが悪いんですぅー!」
そりゃそうだと思うけど、俺は君がこんなに酒癖悪かったのかと思い知ったよ。撫子さんより悪いぞこれ。
「お? おぉん? これは…、何ですかねぇっ!」
そして巴ちゃんは、勃起した俺のちんこを目ざとく見つけてきてそちらに標的を変えたようだ。
服越しとは言えズボンの中で膨らんでいるちんこを標的にすると、細く白い手で俺のちんこを撫でてくる。
「年下のっ、部下に弄られてっ、勃起ですか羽張さんっ。女の人みたいな体している羽張さんっ」
「ちょっ、胸もみながらそこは、ホントダメだってば!」
とうとう巴ちゃんの手が俺のブラウスの中に侵入してきて、生乳を揉み始めてきている。
このままではズボンの中にも手が差し入れられてしまうのはそう遠くは無いだろう。というか入ってきた。
「…、こ、こんなに、こんなに元気なんて…! これが奥さんを孕ませた逞しちんぽですかそうですか! そして下の金玉は元気に子種を作ってるんですね!」
「ちょっと待って巴ちゃん、ダメだってこんなの! いくら個室だからってやっていい事と悪い事があるってば!」
「それより何より、私は羽張さんの体に興味津々なのです! こんなに女の人みたいだけど全然男の人で! なんですか羽張さんは、シーメールってやつですか!」
それで良いのならそう説明したけどね。だけど今巴ちゃんが触ってるちんこの下には、女性としてのまんこが存在している。
シーメールよりふたなりかな。存在してたとしてもかなり珍しいと思うけどね。
…というか。されるがままというのも意外と腹の立つものだと思ったので、決定的な所が触られる前になんとか引きはがしました。
「巴ちゃん…、自分が何してるかわかってるかな…?」
「私はこれから何をされるんでしょうか…! ダメです羽張さんっ、浮気はいけませんっ!」
「できる事ならこの元気になったちんこを収めてほしいとは思ってるけどねっ! ここ居酒屋、騒がしくしすぎるのダメ。OK?」
「…じゃ、じゃあホテルなら?」
「浮気はダメって言った口で、TPOわきまえるならシても良いですよ、みたいな事言わないの」
どうにか押さえつけて落ち着かせ、ちんこの勃起が収まるのを待った。
…しかしされるがままにされた状況で、ブラを剥ぎ取られてしまったのは不徳の致すところだ。
「すぅーっ! くんかくんか! 不思議ですね、男の人なのに女の人の匂いがしますね!」
「こら、嗅がない! それもちゃんと返して!」
ダメだ、巴ちゃんに酒を飲ますのは良くない。こうまで暴走するとは思いもしなかった。
「やぁん、返してください私のブラジャー!」
「元々俺のでしょ! それ気に入ってるんだから!」
ちょっとお高い赤のブラジャーを取られたままというのは良くないので、これも無理やり剥ぎ取り返す。
「じゃあ羽張さん、下着交換しましょう! 取り替えればそれは私のモノです!」
ちょっと暴走状態が半端ないので、手を出した。具体的にはチョップをば。
「…………すみませんでした!」
「いや良いよ、醜態をさらしたのが俺の前でだけであるのなら」
さて、酔いが覚めた巴ちゃんだが、店の前で俺に土下座している。どうやら記憶はしっかりと保持しているようだ。
「以後気をつけます…。もうお酒は飲みません…」
「多分会社の飲み会とかもあると思うけど、俺から社長にちょっと言っておくよ…」
「お願いします…」
さて、いつまでも土下座をさせておくわけにもいかないので、ちゃんと彼女を立たせる。
「…それで、触ってみてどうだった? 俺がどっちかっていう疑問は晴れた?」
「お恥ずかしい限りですが、どうにか…。……羽張さん、本当に男の人だったんですね」
「だから二児の父だって言ったでしょ?」
流石にまんこを触られたら『接続』からの洗脳処理待ったなしだが、触られたのがちんこだけで済んだのは不幸中の幸いだろう。
溜息を吐いた後顔を上げると、巴ちゃんがじっとこちらを見ていた。
「…羽張さん」
「ん?」
「やっぱりホテル行きましょう! もう男の人でも大丈夫ですから、やっぱり全身見せてください!」
「こら! 実は全然酔ってるでしょ!」
「よ、酔ってませんよ!」
「酔ってる人は大体そういうの! 巴ちゃんの言動、酔った時の撫子さんとほぼ同じだからね?」
…うーん、ここまで酒癖が悪い人に引っかかったのは珍しい。ほんとに社長には一言いい含めておこう。