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セクサロイド・オンライン

2018/08/02 13:47:49
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いわゆる風俗と呼ばれる業界への取り締まりは時代とともに厳しくなった。
特に、未成年に対するそれは顕著、発覚しようものなら厳罰は免れない。

これは俺でも知っている一般常識。

でも、人が人である限り需要というものが無くなる事はないらしい。
技術の進歩とともに手を変え品を変え生き延び、今は大まかに分けて二つ存在している。

一方はVR技術を用いた仮想空間でのサービス。
実際に店舗を用意して行っていた業務をデジタルの電脳空間に置き換えたもの。
サービス提供側はサーバを用意するだけ、客と女の子はそれぞれネット経由でログインして色々おもてなしをしたりされたりする。
VRネットゲームの大人版とでも言えばいいだろうか。
仮想感覚の実装も進んでいるものの、実際に感じられるそれとはあまりにかけ離れていて、おままごととの意見も多い。

もう一方は、人間そっくりな自動人形、セクサロイドがその役を担っているパターンだ。
こちらはとにかく投資が必要なお高いサービスだけど、相手は人形。
未成年の少女を模した造形であっても人権やら妊娠やらの問題が無い。
だけど、こっちはこっちで評判は芳しくないという。
いくら生きた体組織を使った人間そっくりな姿とは言え、作られた人形である事は覆しようがない事実。
AI技術が発達した今でも、人間と同じ反応を望むべくもないのが実情だからだ。
そのため、人間の女の子を自動人形と言い張り働かせていた、なんて実例が増えたに過ぎなかったと聞く。

前者はお手軽でそれほど制限はないが、物足りないという人が多い。
後者は後腐れなく肉体関係の満足感を得られるものの、女の子の反応を楽しむと言うのには向かない。
そこで、誰が思いついて誰が完成させたのかは知らないけれど、両方の良いところを取り入れた手法が編み出された。

それがVRゲームの技術応用。
本来であれば仮想空間に入り込むところを、セクサロイドという実体の電脳へ接続リンクする方法。
体はセクサロイドだがそれを動かすのは人間という、まさに両得の技術といっていい。

Real Intelligence SexAndroid。
RISAと仮称されるこの方法の利点は色々あるが、セクサロイドの体には五感が実装されているため、操作をする側にフィードバック可能である事が大きいだろう。
簡単に言えば、セクサロイドが感じる女の子の感覚を余すことなく味わえる、それも自分の体を汚すことなく。

そして、ここまでくれば大体察しが付くと思う。
RISA手法の一番いいところは、セクサロイドを演じる側は女の子に限らなくてもいいと言う事だ。
むしろ、男好みな理想の女の子になりきれるという意味で、男のほうが適役だ、とすら言われる程だ。
事実、肉体労働のバイトより時給はかなり安いにも関わらず、男の申し込みが後を絶たないとの噂が溢れている。

RISAは、セクサロイドサービスを行っていた業者なら既存技術の流用だけで済むため格安で始められる。
訪れる客は、好きにカスタマイズされた人間らしいセクサロイドを抱くことができる。
セクサロイドを演じるバイトは、報酬と女の子の気持ちよさを得られる。

まさにwin-win-win。

しかし、安全性やらの検証がなされていない技術ゆえか、法の目に触れ規制される事を防ごうと口コミ以外での情報がほとんど出ない知る人ぞ知るバイトだった。
俺はたまたまアングラサイトの情報筋から知ったものの、そうでなければ知らぬまま過ごしていただろう。


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「運がよかったなぁ」

アルバイトを知った経緯と、今日の出来事を思い出しながらベッドに寝転がる。
今日の出来事と言うのは、アルバイトの面接と説明、そして相性のよいセクサロイドの体を確認するための試験。
その結果、俺が操作する事になったのが、あの獣人タイプのセクサロイドだった。

「ふたば、かぁ……」

その名前を思い起こせば、さっきまで自分の体になっていた子の姿が脳裏に浮かぶ。
15歳くらいの体躯に不釣り合いなほど大きな胸、そして猫耳と猫尻尾、はっきり言って滅茶苦茶かわいかった。
それが自分の物になると思うと悪い気がするはずもないのだが、同時に不安も募るのは事実。

ちゃんとふたばとして、セクサロイドとして、仕事をこなすことが出来るだろうか。
男なのに、男相手に奉仕、つまりはエッチな事ができるだろうか。
いくら自分の体ではないにしても、味わった感覚は本物と言ってもいいものなのだから。

(本物の、女の子のイくっていう感覚……)
と、事前テストの事を思いだし、自分のお腹に手を添えてみる。
しかし、あのふにふにすべすべしたきめ細かいものとは程遠い男の肌触りしか感じられない。
当たり前と言えば当たり前、でも、ログアウトしてしばらくはお腹の中に指が入っているような違和感があった事は確か。
今はすっかり自分の感覚を取り戻しているものの、その差異こそがRISAの副作用ともいえる欠点なんだそうだ。
感覚の競合と混乱、下手をすると日常生活にも影響を与えかねないと言う。

メールで送られてきたシフト表を見てもそれが分かる。
時間は最長で6時間、勤務日も2日連続にならないよう調整されている。
とはいえ個人差もある、そのため申請さえすれば連続勤務のシフト変更も問題ないと言われていた。
まあ、感覚の混乱は俺が男でセクサロイドは女性だからなのだが。

改めてシフト表に視線を落とし、明日の欄にある「ふたば」の文字を確認する。
特に何もなければ、明日の今の時間はふたばとして初めての仕事をしているはずだ。
ちゃんと補佐をしてくれる子をつけてくれるらしいけれど、それでも不安なものは不安。
接客、それも男相手のなんてやった事ないし、体を捧げる事にもなるし……。

そこまで考えて小さな溜息を吐く。
何度も同じ不安な事を考えてたって仕方がない。
逆に、それ以上に期待するものだってあるだろ、とポジティブ思考で無理やり不安を押さえつける。
男より凄いと聞く女の子の性感、それに期待を馳せながら微睡みに沈んでいくのだった。


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