「うわ……!」
バイト初日、ふたばの体にログインして最初に口をついて出たのは驚きだった。
体の調子を確認し、店の女の子、つまりセクサロイドたちの控室兼更衣室に入ったのだが……
そこにいる人数に圧倒されたのだ。
ざっと数えても30人はいるだろうか。
店が用意している制服や、思い思いの可愛い衣装を身にまとい、お喋りに興じる女子の光景。
一瞬ここが風俗のお店だということを忘れさせるに十分すぎるものだった。
「あ、おはようございまーす!初めての子、かな?」
「ほんとだ新人だ、かわいーよろしくねー?」
「胸おっきぃーなまいきー(笑)」
呆気にとられ最低限の挨拶もできず固まっている所に一気に言葉を浴びせかけられては、ただ戸惑うしかない。
なにせ誰もがゲームのヒロインのように可愛い、というか登場人物そのものみたいな子もいる。
この中じゃ俺……じゃなくて、私の外見は埋もれはしないまでも、ごく普通のレベルの可愛さと言ったところだったから。
まぁ少し考えれば当たり前、自動人形なのだから外見は思いのまま理想の女の子に出来てしかるべきだろう。
そもそも、私だってアクセサリではない本物の猫耳尻尾がついているんだから。
「ひゃあっ!?」
その猫尻尾をいきなり掴まれ可愛らしい悲鳴が出てしまった。
振り向けば、犬のような耳と尻尾を持つ凛々しそうな子が私の尻尾をさわさわしているのが見える。
「へぇ可愛い声、ちゃんと尻尾にも感覚あるんだね」
「ちょ、急に触るのやめてください……」
いつの間に、と問いかける暇もあれば、その端正な手が何度も往復する刺激に肩をすくめそう言うのがやっと。
そもそも、その子も私と同じ獣少女タイプのセクサロイド、ちゃんと感覚があるって分かってるはずなのに。
お返しにその大きくてふわっふわな耳を触ってやろうか、って悪戯心が湧き上がってくる。
「どう?緊張ほぐれた?」
欲求に導かれるまま伸ばしかけた手だが、その言葉で動きが止まる。
あそっか、この子はこの子なりに気を使ってくれてたんだ、と言う事が分かったから。
「あ、はい!すいません気を使ってもらって……」
慌てて手を引っ込めて丁寧にお辞儀をする。
それに対し彼女は軽く手を振って
「いいっていいって、これから一緒に働く仲になるんだから……っていうか、入り口で立ってたら他の子に迷惑だね、こっち」
そのように言ったかと思うと、振っていた手で私の手を取ってくれた。
そして、その柔らかい感触に導かれるまま、女の子たちの間を縫って進むのだった。
彼女の名前は「かずは」。
私に色々と教えてくれる先輩とは彼女の事だったらしく、案内されたロッカーはそのお隣だった。
「ここにあるのはふたばちゃんが使う衣装だから、サイズもぴったり合ってるはずよ。
もし、それ以外の服に着替えたいなら隣の衣装室から好きに選んでいいけれど、サイズは自分で合わせてね」
慣れた手つきでロッカーの中から衣装を取り出し着替えつつ、かずはさんが色々教えてくれる。
メイド服をベースにしたミニスカートの可愛らしい服飾、これがこのお店の制服なんだそうだ。
それ以外にも学生の制服やらドレスやら、男を誘惑するためと思われる服が掛けられていてやっぱり風俗のお店なんだ、と言う事を感じさせた。
「あそうそう、五感レベル設定できるでしょう?初めてだから味覚と嗅覚は最小にしておいたほうがいいよ」
言われた言葉に頷きながら、自分だけに見える網膜ディスプレイを弄って味覚と嗅覚のレベルを下げる。
何故?と聞いても「すぐわかるから」とはぐらかして教えてくれないけれど、先輩の言う事だしそうしたほうがいい理由があるんだろう。
というか、私は初めての仕事、という理由で反応を楽しんている気がしなくもないけれど。
なにせ、着替えを手伝ってくれたり教えてくれると称して、弱いところ探しとか言って過剰にスキンシップしてくるし。
敢えて恥ずかしくなるような所を褒めてくれたりするし。
まあ、悪い気はしないからいいんだけど……。
「よしこれで終わり、うんかわいいかわいい、ふたばちゃん初めてなのにいきなり指名されたりしちゃうかもねー」
と、そこでようやくコーデに満足したらしい。
猫耳と尻尾に飾り付けられた大きなリボンを確認しつつ私の頭を撫でてくれる。
デザインはかずはさんが身に着けているものと同じだけど色違いなリボン。
鏡の前に並んでみると、獣少女姉妹と言ってもいいくらいにお互い似合っていた。
「なんだか可愛いすぎて、自分じゃないみたいです……」
率直な感想、それを聞いたかずはさんがにこりと笑う。
それと控室内にもうすぐ開店のアナウンスが流れたのはほぼ同時。
皆がこぞって移動を始める中、私と視線を合わせ、大事な事だから、と念を押してかずはさんは口を開く。
「いいふたばちゃん、私達セクサロイドは男性に気持ちよくなってもらうための存在。だから、拒否だけは絶対にダメな事だからね?」
と。
この時は何となく返事をしたけれど、これが意外に大変なことだった。
────────────────────────────────
お店のホールにはカウンター席があり、いくつものテーブルあり、その周囲に高そうなソファーが配置されている。
スナック類やお酒も用意されているのが目に入り、いわゆるキャバクラみたいだ、というのが第一印象だった。
かずはさんに手を引かれるまま、私たち二人は一緒に奥まった場所のソファへ腰かける。
他の子達もそれぞれの場所に座り、前髪をいじったり服装を整えたり思い思いに過ごしているのが見て取れた。
私もそういう事すべきなのか、と思ってみても、どうすればいいという指標が分からず所在なく前髪をつまむくらいだ。
「別に自分らしくしていればいいのよふたばちゃん、お客様が求めるのはそれぞれが気に入った個性の女の子なんだから」
私の手に右手を重ねながら、そうフォローしてくれるかずはさん。
今度は、自分らしさ、というものが何なのかとの疑問が出てくるけれど、それを考える時間はないらしい。
入口から
「いらっしゃいませぇ♪」
「ようこそセクサロイドのお店《ピュア♡マータ》へ!」
等の声が響けば、客が来店したのは明らかだったから。
客層は本当に様々。
チャラチャラしたいかにもお金持ってる風な若い人もいれば、大企業の重役っぽい中年、髭を蓄えた資産家っぽいおじさん。
本当に多種多様な男の人が好色な視線で私たちを眺め、そして物色していく。
気に入った子の横に座りお酒を注文する人もいれば、いきなり指名してお店の二階にしけこむ人もいる。
かずはさんに聞いた事だけれども、お店の二階にはベッドルームが用意されていて、お客さんとの本番はそこでするんだそうだ。
このホールはあくまで女の子を探す場所であり、本番行為は禁止。
衆人環境で始めてしまうのは、いくらセクサロイドであっても色々と不味い事があるらしい。
「おや、そっちの子は初めてみるね、新人かい?」
そんな色情の色を帯びた喧噪の中、私とかずはさんに目を付けた客がいた。
私達を挟み込むように両隣に座ったのは、髪も薄くなり中年特有の太り方をしたおじさんが2人だった。
「はいそうです、今日から働き始めたふたばちゃん、御贔屓にしてあげてくださいね?もちろん私も一緒にですけれど」
必要以上に体を寄せ密着してくる客に、私は思わず及び腰になる。
でもかずはさんは違った、愛想よく笑い、控え目なアピールをしつつも自分から積極的に肌を寄せている。
これが経験の差か、と思っている所につんつんと肘でつつかれようやく我に返った。
「あ、よ、よろしくおねがいします、ふたばです!」
挨拶していない事にようやく気が付いて、少々キョドりながら頭を下げる。
いきなり失敗したか、と恐る恐る客の様子を伺うが……。
特に気分を害した様子は感じられず、むしろ何故か感心したかのような表情だった。
「ふたばちゃんか、確かに初々しいね」
続く言葉にも棘はなく、私はほっと小さく息を吐く。
その瞬間だった、私の口に何か生暖かい空気を感じたのは。
「んんっ!?」
とっさに目を見開けば、隣にいたおじさんの顔がすぐ目の前のあった。
そして、訳が分からないまま半開きになっている口に何かが侵入してくる感覚が続き、ようやく思い当たる。
(キス、されてる!?)
「い、んぷ……!んふ、んん!!」
口の中を縦横無尽に暴れまわる男の舌、そして生暖かい唾液の流動。
まさかいきなり唇を奪われるとは思ってすらいなかった。
だから、反射的に身をよじり相手を突き放そうと動いたとしても不思議ではない。
でも、私の手を掴む柔らかい感触がそれを押しとどめる。
隣に座るかずはさんの手、それが温かさだけで私に語り掛けてくるかのよう。
『拒否だけはダメ』
ついさっき言われた言葉が脳裏に響き、改めて思いなおす。
そうだった、今の私はセクサロイドのふたばだったんだ、と。
「はっ、ん、ぷぁ……むぅ、ん……!」
そして、控室で言われた事の理由も理解した。
味覚と嗅覚のフィードバックレベルを下げ切る、そうでなかったら舌の感覚と唾液の温かさ以外も味わう事になっていただろうから。
正直、今の状態でも相当な嫌悪感があるというのに……。
ここに煙草臭さやヤニの味がする唾液が加わってしまったら、拒否の感情を抑えつけることは出来なかっただろう。
そっと薄目を開けかずはさんを覗き見る。
彼女は彼女で、もう一人の客と濃厚なキスを交わしている真っ最中。
情感たっぷりの表情で、積極的に舌を絡め合わせ唾液を交換している様子に私は大人しくなるしかない。
あれがセクサロイドとしてあるべき行動なのだろうから。
「ふあ……ちゅ、んふ……」
握られるかずはさんの手に勇気をもらいながら、客から与えられる口虐をただ受け止める。
ずっと続くかに思われた行為だが、やがて男が離れようやく一心地つくことができた。
「ふふ、ふたばちゃん初めてだからびっくりちゃったかな?ごめんなさいねお客様」
と、放心してる私をすかさずフォローしてくれるかずはさん。
「いやいや、ちゃんとこんな初心な反応を返されるとは逆に新鮮だったよ、AIも日々進化しているのだね」
そして、そんな私の不甲斐なさをいい方向に捉えてもらったようで、またほっとする。
「はい!私達《ピュア♡マータ》のセクサロイドはどこよりも人間らしいAIがウリですから♡」
そうなのだ、この店を利用する客はセクサロイドを操っているのが本物の人間の意識だと言う事は知らない。
私達を普通のAIだと思っているのだから、いきなりキスしたりしても罪悪感なんか出てこない。
道具のように扱われる事があってもおかしくない、と言う事を私は想像していなかった。
「ごめんなさいお客様、私はまだまだ経験不足で……ご満足いただけるよう頑張りますから」
セクサロイドのAIになりきり、可能な限りお客様を満足させるように言葉を選ぶ。
とりあえずこれで終わりだろう、男ならかずはさんのような積極的な子が好きだろうし、と思いながら。
「なるほど、じゃあおじさんがふたばちゃんの経験を補うよう協力してあげようかな」
だから、この客が初物好きで私を指名する、というのは全くの予想外だった。
────────────────────────────────
手を繋ぎ肩を寄せて二階への階段を上る。
じっとりと汗ばんだ相手の手が気持ち悪いものの、これも仕事だと自分に言い聞かせて心を奮起させる。
なにせ、このアルバイトで一番期待していた「女の快楽を感じられる場面」それがすぐそこにあるのだから。
「緊張しなくてもいいよふたばちゃん、全部おじさんに任せておけばいいから」
言葉を発しない私の様子を緊張していると思ったのだろう、相手の男がそう声をかけてくる。
私は少し困ったような笑みを返し、そう思われているならそれはそれで好都合と繋ぐ手に力を込めた。
「はい、おじさまにお任せします」
そう呼んでくれ、との相手の要望に応えたものだけれど、お客様よりは大分言いやすくていい。
呼ばれることで相手の男も満足感を得られているようで、これに関しては特に嫌悪感はなかった。
割り当てられたベッドルームに入り、背中にオートロックの音を聞けばいよいよ後には引けない。
「おいでふたばちゃん」
相手の言葉に腹をくくり、言われるまま先にベッドに腰かけたおじさまの横に座る。
私の顎に添えられる男の手、それは唇を捧げろという合図だ。
拒否はダメ、との言いつけを心の中で繰り返し、目を閉じただ受け入れる。
「ふ、ちゅ……う」
粘り気のある音と共に、再び私の中に侵入してくるおじさまの舌。
でも、あらかじめ心の準備さえしておけば、さっきの不意打ちに比べたら大したことはない。
ゴム手袋をした歯医者の指で口の中を触られる、それと同じと思えばたやすく我慢できる。
「ん!?ふぅ……む!」
そう、ただそれだけなら何でもなかった。
キスに混じって感じられる胸の先が疼くような甘い刺激、それが無かったのなら。
(胸、揉まれてる……!)
男の手が私の服をはだけ、零れ落ちた大きな乳房を愛撫しているのだ。
「ぷふぅ……!は、むぅう!」
ぐにぐにと私の大きな胸の形が変えられていく。
男の指先が肉に埋もれるくらい力強く掴まれ、円を描くように全体を練りまわされる。
頂に対しては、親指と人差し指でつまみ上げ力任せに押し潰すように。
情欲に赴くままの乱暴な愛撫。
だというのに、私には痛みどころか気持ちよさしか感じられない。
指でつぶされた箇所が熱くなり、ぷつぷつと快楽の泡が弾け乳房全体に伝播していくかのよう。
(あ、ああ……ちくび、かたくなっちゃう……)
胸の頂が固くシコリ始めたのを感じ、恥ずかしさでぎゅっと目を瞑る。
だけど、こんな刺激を与えられて乳首がぷっくり固くなるのを誰が抑えられるだろうか。
「んぷぅ……はあぁっ……や、あ!」
そして、それはおじさまだって十分わかってる。
だから、虐める対象を私の口からコリコリになった乳首へと変えたに違いないんだから。
「ホントかわいいねふたばちゃん、おじさん好みの良い反応だよ」
「ひゃあっ、むね吸っちゃ……!ひぃん!」
おじさまの舌が、今度は私の胸を這いまわるのが分かる。
まるでナメクジが這った後のような唾液の光沢を残しつつ、下品な音を立てて丹念に塗りつぶすかのように。
気持ち悪い、でも……それ以上に膨らんだ胸の先っぽがじんじんと疼く。
気化熱でひんやりとする感触も疼きに変えて、私の、セクサロイドの体はガクガクと乳首責めに身を震わせる。
「やぁ、歯は、はで噛んじゃ、いぁあ……!!」
噛み千切られる、そんな恐ろしい妄想すら浮かぶほどの力強い咀嚼。
それなのに、やっぱり痛みはほとんど感じない。
ただ、絶えることなく甘いパルスだけが湧き上がり送られてくる。
ここに至って私はようやく悟った、これがセクサロイドの感じ方なんだ、って。
男性に奉仕するためだけに作られた体、きっとどんな事をされても快楽を強く感じるように出来ているんだ、って。
胸だけでこんなになってしまうのなら……と、濡れ始め、むずむずとこそばゆさを送り出すアソコを意識して思う。
それを察したわけではないだろうけど、不意におじさまの体が私に預けられ、私はそれを支え切れずベッドに倒れこんだ。
ううん、違う。ベッドに押し倒されたんだ。
背中に当たる柔らかい感触と、スプリングが大きくたわむ音。
そして、四つん這いのまま私の上に覆い被さる男の熱に、いよいよかと心が昂っていく。
いつの間にか、嫌悪感や男に抱かれるという違和感はすっかり消え去ってしまっていた。
この体の、セクサロイドとして感じる快楽にとっくに駆逐されてしまったのだろう。
「ああ、そんなに……大きいの……」
ごくりと喉が鳴る。
いつの間に服を脱いでいたのか、おじさまの股間に屹立するそれが目に飛び込んでくる。
男の体でなら毎日見ていたモノなのに、一瞬たりとも目を離せない。
人間の私の体についているのよりも格段に大きく、長く、そして黒ずんだ色が経験の豊富さを物語る。
きっと何度も女を抱いて、女のツボを知り尽くしているに違いない男性器。
「AIは経験がなくても、体の準備できているみたいだねふたばちゃん、こんなに濡らしていけない子だ」
「ふあ!そこ、は……!指、はいっちゃ……!」
湿った下着をずらされ円を描くように指が動けば、私にも聞こえるくらいの大きさで水音が響く。
もうすっかり受け入れる準備が整った私の女の穴、早く早くと涎を垂らしているかのようだった。
おじさまの手が私の足を持ち上げる。
大きく股を割り開かれた、いわゆるM字開脚、アソコが丸見えになるとても恥ずかしい格好。
熱い肉の棒が狙いを定めるように揺れ、そして私の穴の入り口を捉えたのようにぴたりと固定された。
「さあ、おじさんのちんぽで気持ちよくしてあげるね」
私はおじさまの言葉に小さく頷く。それが男女のまぐわいの合図だった。
「んん!はいって……く、るぅ……!」
おじさまの肉棒が私のアソコを押し開け、中に侵入してくるのが分かる。
これが、女の子が男を受け入れるという感覚……。
そう思えば身震いするのを止められない。
ぬるぬると愛液を滴らせる媚肉が擦られるつど、心地よい快楽が湧き上がり私の心を満たしていく。
「あぁ、あああ……これ、これぇ……!」
きついとか痛いとか、そんな負の方向の刺激は一切ない。
初めから男への奉仕を目的として作られているセクサロイドだからこそ、なんだろう。
だからやばい、こんなの気持ちよすぎる。
「ひうっ!ぅあ!」
より強い痺れが走って反射的にお腹に力が入る。
きゅっと締め付けた私の粘膜と男根との接触面が増え、それが更なる快楽をもたらす。
「ふたばちゃんおじさんと相性いいみたいだね、きゅうきゅうと絡みついてくる……よ!」
それがおじさまにとっては堪らなく気持ちがいいんだろう。
最初はゆっくりだったピストン運動はどんどん早くなり、私のお尻を何度も何度も打ち据える。
「あっ、あっ!あぁ、ん!あ!」
じゅぱんじゅぱんじゅぱん、と水音と肉の弾ける音、そして勝手に漏れ出る私の声。
隠微な楽曲に耳を犯され、アソコから垂れ流される快楽に何も考えられなくなってしまいそう。
「気持ちいいかい?ほら、ちゃんと……おじさんに、言ってみなよ……!」
おじさまの声、私を気持ちよくしてくれる相手の声。
朦朧とし始めた意識では、その意味を断片的に理解するのが精いっぱい。
(ああ、言えば、言えばいいんだ……言えば……!)
こんなに気持ちよくしてくれるんだから、それくらいなら……
「き、もちいい……気持ちいいです……っ!おじさま!わたし、気持ちよすぎて、へん、変になるっ……!」
と、裏も表もない感じるままを叫んでしまっていた。
心の中にあった「セクサロイドを演じているだけ」「こう言えばセクサロイドらしい」
そんなフィルターに関係なく自分の心のままに。
「あ、ああっ!」
分からない、何も分からなくなる。
絶え間なく感じる愉悦にお腹と頭がふわふわとして、自分が何なのかも曖昧になってしまう。
ただ、セクサロイドの体から送られてくる快楽信号のままに喘ぎ、乱れる。
「ふたばちゃん、ふたばちゃん!出すよ……中に!」
私の意識が白く塗りつぶされる前に聞いたのは、そんなおじさまの声だった。
────────────────────────────────
「ふぁ、あっ、や!そこ、は……!」
たっぷりと私の中に出したばかりだというのに、おじさまはまだまだ精力が有り余っている様子だった。
初めて感じた中イキの快楽、流されて呆けている私は無理矢理うつぶせに倒される。
何が起きたのかを理解するよりも早く、精液と愛液でぬめったアソコは容易くおじさまに制圧されてしまう。
「いいっ!あっ、ん!やぁ、あぁん♡」
ベッドに這いつくばりお尻を高く上げた犬みたいな姿勢、いわゆる後背位。
一度目の正常位とは違う、まったく新しいところが刺激される悦びに私はただ喘ぐしかない。
その喘ぎもまた、一度目にはなかった積極性を持っている所が違う。
だって、こんなにも気持ちがいいんだから、もっともっと自分から楽しまないと損じゃないか。
受動的だった心がすっかり能動的なそれへと変化してしまっている。
でも全然嫌じゃない、むしろこんなにも感じられるセクサロイドの体が嬉しい。
「おやおや、自分から腰を動かして……大分セックスを学習出来てるみたいだね、ふたばちゃん!」
「だ、だってぇ、そこ、気持ちよくて……!ん!あぁ……!止められないの、ぉ……」
何度も何度も突っ込まれているうちに、すごく気持ちがいい場所がある事に気が付いていた。
多分これが話に聞くGスポット、女の子それぞれ違う私だけの性感帯。
知ってしまったが最後、そこを責められないと満足できそうにない。
そんな直感もあり、私はおじさまのピストンに合わせ積極的に腰を振っていた。
「へぇ、ここが弱いんだ……ふふ、突くとふたばちゃんの中がヒクヒクして悦んでるよ」
こんな浅ましい私に気づかれ恥ずかしい反面、嬉しいという気持ちも湧き上がる。
だって、私が一番欲しいところを小刻みに突いて刺激してくれるんだから。
でも、それは長くは続かない。
「でも、ふたばちゃんだけ悦んでたら不公平だよね?おじさんも喜ばせてほしいなぁ」
何故って、おじさまはそう言って私の中を掻き回すのを止めてしまったのだから。
「あ、ああ……やぁ、止まらないで、おじさま……ん!あ……やぁ……」
何とか自分でGスポットに擦り付けようとするも、がっちりと体を固定させられてしまっては全てが徒労。
もっともっと感じたいのに、それができないもどかしさに私は切ない声をあげてしまう。
でもおじさまは動かない。どうすれば、どうすれば……。
さっきおじさまは言っていた。喜ばせてほしいって。
きっとそれをすれば続きをしてもらえる、でも、体を捧げる以外で喜んで貰えそうな事って……。
「簡単な事だよふたばちゃん、ちゃんと何をどうして欲しいのか、正確におじさんに言ってごらん?」
ああそっか……そういう事なんだ、と思い当たる。
おじさまは私の口からおねだりして欲しいんだ。
「おじさまの、で……わたしの、や、ん!そこを……っ!」
それも、ただおねだりするだけじゃない。
「おじさんの、とか、そこ、とかじゃよく分からないなあ?」
きっと、男の人が喜ぶようなえっちな言葉で言え、と言う事に違いなかった。
くちゅくちゅくちゅと鳴る小さな水音は、私を急かすように動く小刻みな律動によるもの。
おじさまの動きが止まってからは、鈍くじんわりとしか得られなかった快楽が一気に加速する。
私を釣るための極上の撒き餌であることは明白だった。
でも、それに釣られる事にどんな不利益があるだろうか。
この気持ちよさを得られるのであれば、えっちな言葉でのおねだりが何だというのか。
「お、おじさまの……お、おち……ん」
そこで息をのみ、心の天秤を力任せに傾けて一気呵成に吐き出す。
「おちんぽです!おじさまのおちんぽで、私の、私の……おまんこ!おまんこ掻き回して!欲しいんですっ……!」
瞬間、ズンとお腹に響くような音が聞こえた気がした。
女の一番奥をえぐられるような衝撃が続き、私は顔を跳ね上げる事で応える。
これは快楽とか、そういう類のものではない。
女を、おまんこを、奥の奥まで余すところなく制圧されてしまった、そんな服従感。
それが私の、セクサロイドの体を駆け巡り、細胞の一片に至るまで「おちんぽには逆らえない」と刻み込まれるかのよう。
「いひっ!おまんこいい!おまんこ気持ちいいですぅ!おじさまおちんぽ、大好きになっちゃいますぅ!」
「やぁ!らめ、れす……いま、クリちゃん剥かれたらぁっ……きひいっ!!」
ごりごりと一番感じる場所をえぐられ、クリトリスの包皮を剥かれ、ビンビンに勃起したソコを遠慮なく押し潰されてしまったらもう
イキ果てる他に出来る事なんてない。
「イクっ!イキますぅっっ!もう……イッ……あ、あああっ!イっちゃうぅぅぅっっ!!!」
私の中でおじさまのおちんぽが爆発し、連鎖的に私の中の女が爆ぜる。
進んで男に屈服し生セックスを味わい中出しされる、これ以上の女の幸せなんて存在しない。
と、言わんばかりの圧倒的な絶頂だった。
余韻に震える体をベッドに投げ出し、何をする気も起きぬまま荒い息をするだけ。
そんな私の様子に男としての満足感を刺激されたらしく、
「よかったよふたばちゃん、次に見かけたらもっと別の事を教えてあげるからね」
そう囁き、おじさまは自分で身支度を整え機嫌よく部屋から出ていく。
(次、次かぁ……次は、どんな事されちゃうんだろう……♡)
ベッドの上に残された私は、セクサロイドの体に引っ張られた思考を巡らせながらその後姿を見送るだけだった。